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現代金融用語の基礎知識 【第14回】「不適当合併等」
現代金融用語の基礎知識 【第14回】 「不適当合併等」 事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹 1 「裏口」で始まる言葉とは? 「裏口」で始まる言葉といえば、多くの人は「裏口入学」を思い浮かべるのではないだろうか。しかし、筆者の場合は、証券会社に勤務していたこともあり、「裏口上場」を思い浮かべる。 裏口入学とは、学校関係者に金銭を支払うことにより入学試験の点数を改竄して、学校への入学を果たすことである。株式市場に上場するに当たっても、入学試験ではないが、証券取引所による上場審査がある。それでは、裏口上場とは、証券取引所関係者に金銭を支払うことにより上場審査を通過させてもらい、上場を果たすことなのだろうか。 裏口入学も裏口上場も、ともに正規でない方法により入学や上場を果たすことであるが、方法は異なる。裏口上場の方は、証券取引所関係者に金銭を支払うのではなく、上場企業を利用することにより上場を果たすのである。 例えば、非上場企業が上場企業に吸収合併してもらうといった方法をとる。そうすることにより、非上場企業の非上場株式が、証券取引所による上場審査を受けることなく、上場株式となるのである。 【図表】 裏口上場の方法 2 裏口上場を防ぐには 大学全入時代などといわれ、一昔前ほど受験競争が厳しくなくなったため、裏口入学の需要は減少傾向にあるのかもしれない(有名校等への裏口入学の需要は依然としてあるのかもしれないが)。それに対して、裏口上場の需要は、上場を目指す企業の数が最近また増えてきているため、増加傾向にあるのではないだろうか。 しかし、裏口上場が放置されたら、どうなるだろうか。上場を目指す全ての企業が、証券取引所による厳しい上場審査を避けて、裏口上場を選択することになるだろう。そうなれば、上場企業の質を担保できなくなる。株式市場に流通する株式はどれも不良品ばかりということになり、それらを購入しようとする投資家はいなくなり、株式市場は成立しなくなってしまうだろう。 そこで、証券取引所は、裏口上場を防ぐため、上場企業が「不適当合併等」を行った場合、あらためて上場審査に準じた審査を行い、その審査に通過しなければ、上場廃止にするという措置をとっている。不適当合併等とは、上場企業が実質的な存続企業とはいえないM&Aで、例えば、自社よりも規模の大きな非上場企業を吸収合併したような場合である。そうした場合、形式的には上場企業が存続企業でも、実質的には非上場企業の方が存続企業であると考えられるのである。 最近の事例では、上場企業の株式会社FXプライムbyGMOが非上場企業のGMOクリックホールディングス株式会社と平成27年4月1日に行う株式交換が不適当合併等に当たると判断されている。 3 非上場企業とのM&Aは要注意 ということは、不適当合併等に当たると判断されなければ、裏口上場は可能なのである。証券取引所による措置は、全ての裏口上場を防いでいるわけではない。例えば、ある非上場企業が、裏口上場を意図して、自社よりも規模の大きな上場企業に吸収合併される場合などは、特に問題とされないのである。 だからといって、ここで小規模な非上場企業の裏口上場を勧めているわけではない。上場企業が非上場企業とM&Aを行う場合、注意してほしいのだ。証券取引所による措置は、裏口上場の意図を問うわけではない(もとより、「裏口上場します」と宣言して裏口上場する企業などない)。あくまで上場企業の実質的存続性の有無が判断される。 裏口上場を意図してではなく、あくまで経営上の必要から行った非上場企業とのM&Aが、不適当合併等に当たると判断されてしまうことがあるのである。不適当合併等に当たると判断されると、あらためて上場審査に準じた審査を受けなければならなくなり、もしもその審査に通過しなければ、上場廃止になってしまう。非上場企業とのM&Aには、そうしたリスクが含まれていることを留意しなければならない。 なお、拙著『検証・裏口上場-不適当合併等の事例分析』は、不適当合併等に当たると判断された多くの事例を検証しており、証券取引所の考え方がわかるため、上場企業が非上場企業とのM&Aを検討する際に参考になると思われる。 (了)
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お申込受付は本日29日(木)17時まで! 2月2日(月)開催:笹岡宏保氏セミナー『【実務で留意しておきたい】みなし贈与の実務論点~裁決事例を判断材料として~」
プロフェッションネットワーク主催セミナー 「税理士 笹岡 宏保氏による【1日で理解する】セミナーシリーズ」 【実務で留意しておきたい】 みなし贈与の実務論点 ~裁決事例を判断材料として~ 株式会社プロフェッションネットワーク主催の笹岡宏保氏セミナー「【実務で留意しておきたい】みなし贈与の実務論点~裁決事例を判断材料として~」の開催が、2月2日(月)と近づいてまいりました。 お申込受付は、本日29日(木)の17時までとなりますので、ご注意ください。 ※受付は終了しました。 セミナー内容の詳細やお申込方法など、くわしくは下記からご覧ください。
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《速報解説》 平成27年4月1日以後開始の税務調査より再調査手続が見直しへ~実地調査以外の調査は「新たに得られた情報に照らし非違がある」事実なくとも質問検査等が可能に(平成27年度税制改正大綱)~
《速報解説》 平成27年4月1日以後開始の税務調査より再調査手続が見直しへ ~実地調査以外の調査は「新たに得られた情報に照らし非違がある」事実なくとも 質問検査等が可能に(平成27年度税制改正大綱)~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 1 はじめに 衆議院議員選挙の影響もあって決定が遅れていた、与党による平成27年度税制改正大綱が昨年12月30日に公表され、1月14日閣議決定された。 本稿では、平成23年度税制改正の目玉であった「税務調査手続(国税通則法第74条の2から第74条の13)」の一部に関し今回の大綱で示された改正点について、これまでの通達・事務運営指針の規定と比較検討しながら、概要をまとめておきたい。 2 平成27年度税制改正における調査手続の見直し 調査手続についての見直しは以下の2点である。 (1) 再調査について 調査終了後の再調査の要件である「新たに得られた情報に照らし非違があると認められる」という規定について、前回調査の範囲を「実地の調査」に限ることとしたものである。 (2) 複数の税務代理人がある場合の調査の事前通知について 複数の税務代理人がある場合の事前通知については、これまで特段の規定がなかったところ、納税者が「代表となる税務代理人」を定めることにより、代表となる税務代理人に事前通知を行えば、他の税務代理人への通知は不要であることを定めたものである。 3 これまでの調査手続規定と改正による変更点 (1) 再調査に関する規定の推移 再調査に関しては、通則法第74条の11第6項に規定が置かれ、「当該職員は、新たに得られた情報に照らし非違があると認めるとき」には、質問検査等を行うことができるとされている。 その後公表された国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達5-6において、「前回の調査」には、異議決定又は申請等の審査のために行う調査は含まれないこと、移転価格調査を行った後に移転価格調査以外の部分の調査を行うときは、移転価格調査外の部分の調査は再調査には当たらないことが、定められている。 本年の税制改正大綱により明確化が図られたのは、再調査の前提となる前回調査の範囲を「実地の調査」に限ることとした点にある。 つまり前回調査が、実地の調査以外の調査、例えば、行政指導や机上調査であった場合には、再調査の要件である「新たに得られた情報に照らし非違がある」という事実がなくとも、質問検査等が可能であるということとなる。 (2) 事前通知に関する規定の推移 税務調査の事前通知に関しては、通則法第74条の9の規定により、「あらかじめ、納税義務者(税務代理人を含む。)に対し、通知する」と定められていたところ、昨年3月の改正により、同条に第5項が加わり、納税義務者の同意がある場合には、納税義務者への通知は、税務代理人に対してすれば足りることとされ、当該改正に伴って、税務代理権限証書の様式が改定され、「調査の通知に関する同意」欄が設けられた。 本年の税制改正大綱では、複数の税務代理人がある場合の取扱いを明確化したものであり、現時点では、通則法第74条の9第5項の文言が修正されるのか、第6項が付加されるのかは不明だが、税務代理権限証書の様式が再度改定されるか、新たに、代表税務代理人を選任する届出書が定められることになろう。 4 適用時期と実務への影響 再調査に関する改正は、再調査の前提となる前回調査が平成27年4月1日以後に開始され、その前回調査後に行う再調査について適用することとされ、事前調査に関する改正は、平成27年7月1日以後に行う事前通知について適用することとされている。 再調査ができる場合を、「新たに得られた情報に照らし非違があると認められるとき」と制限した通則法の規定は、除斥期間が満了するまでは何度でも再調査される可能性があった改正前と比較すれば、納税義務者の予見可能性を高めることに寄与したものであると思料するものである。 しかし、「前回の調査」に該当しない調査の範囲がなし崩し的に拡大されるようであれば、規定が骨抜きになってしまう懸念が生じることになる。こうした懸念は、通則法改正後に、行政指導文書の発出が増加している現状を鑑みれば、根拠に乏しい懸念とも言えないのではないだろうか。 (了)
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《速報解説》 地方への本社機能移転・拡充を図る「地方拠点強化税制」が創設~オフィス減税と雇用促進税制の2本立て(平成27年度税制改正大綱)~
《速報解説》 地方への本社機能移転・拡充を図る「地方拠点強化税制」が創設 ~オフィス減税と雇用促進税制の2本立て(平成27年度税制改正大綱)~ 税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 小幡 修大 地方創生のためには、地方で生まれ、地方で育ち、地方で働きたい若者のための働く場が不可欠である。 「平成27年度税制改正大綱」(2015年1月14日閣議決定)では、本社機能(※)の地方への移転や地方の本社機能の拡充、雇用の創出に取り組む企業を支援するために、本社等の建物に係る特別償却制度等が創設されるとともに、雇用促進税制の特例が時限立法として設けられることが明らかとなった(大綱57頁)。 (※) 本社機能とは、経営意思決定、経営資源管理(総務、経理、人事)、各種業務統括(研究開発、国際事業等)などの事業所をいう。工場及び当該地域を管轄する営業所棟は含まない。 (1) 地方拠点建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(オフィス減税)の創設 ① 制度概要 (※1) 承認は、地域再生法の改正法の施行の日(平成27年8月10日:追記)から平成30年3月31日までに受ける必要がある。 (※2) その地方拠点強化実施計画(仮称)がその法人の同法の特定施設(仮称)の同法の特定地域(仮称)から同法の大都市等(仮称)以外の地域への移転に関するものである場合に適用される。 ② 平成29年3月31日までに取得等した場合の特別控除の上乗せ 地域再生法の改正法の施行の日(平成27年8月10日:追記)から平成29年3月31日までの間に地方拠点強化実施計画について承認を受けた法人が取得等をしたものについては、特別償却との選択の上、税額控除額がその取得価額の4%(その地方拠点強化実施計画がその法人の特定施設の特定地域から大都市等以外の地域への移転に関するものである場合には、7%)とされる。 ③ 地方税への適用 法人住民税及び法人事業税について、特別償却は適用される。税額控除については中小企業者等に係る法人住民税に適用される。 【参考図】 オフィス減税のイメージ (※) 経済産業省ホームページ (2) 雇用促進税制の拡充 ① 制度概要 (※1) 承認は地域再生法の改正法の施行の日(平成27年8月10日:追記)から平成30年3月31日までに受ける必要がある。 (※2) 法人全体の増加雇用者数が上限とされる。 (※3) この控除を受ける場合には、現行の雇用促進税制の適用の基礎となる増加雇用者数から、この措置の適用の基礎となる増加雇用者数を控除する必要がある。 ② 特定施設の特定地域から大都市等以外の地域への移転に関するものである場合の特例 上記適用対象年度のうちその適用を受ける事業年度以後の各事業年度(その特定施設である事業所における雇用者数又は法人全体の雇用者数が減少した事業年度以後の事業年度を除く)において、適用対象年度のうちその事業年度以前の各事業年度のその特定施設である事業所における増加雇用者数の合計数に30万円を乗じた金額の税額控除ができる措置が講じられる。 ただし、この措置は、事業主都合による離職者がある場合及び風俗営業等を行っている場合には適用されない。 ③ 税額控除の上限 上記①及び②による税額控除は、当期の法人税額の30%から現行の雇用促進税制による税額控除と上記(1)の税額控除制度による税額控除との合計額を控除した残額が上限とされている。 ④ 地方税への適用 中小企業者等に係る法人住民税について同様に適用される。 【参考図】 雇用促進税制(特例措置)のイメージ (※) 経済産業省ホームページ (了)
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《速報解説》 JICPAより「職業倫理に関する解釈指針」の改正(公開草案)が公表~英文財務諸表への移行に関する助言・指導等、IFRS適用を想定した内容も~
《速報解説》 JICPAより「職業倫理に関する解釈指針」の改正(公開草案)が公表 ~英文財務諸表への移行に関する助言・指導等、 IFRS適用を想定した内容も~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年1月19日付で、日本公認会計士協会は、「「職業倫理に関する解釈指針」の改正について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 「職業倫理に関する解釈指針」は、日本公認会計士協会の会員のために、職業倫理に資する適切な事案等を解釈指針として取りまとめたものである。 解釈指針には、一般事業会社が公認会計士等に業務を依頼するに際して、参考となる記載内容も見られるので、本稿で取り上げることとする。 意見募集期間は、平成27年2月19日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 以下では、主な改正内容を取り上げるが、項目によっては、従来から記載されているものもある。 1 英文財務諸表への移行に関する助言・指導 Q23では、「英文財務諸表への移行に関する助言・指導」について記載されている。 ここでは、被監査会社等が日本基準で作成する財務諸表の英文財務諸表への移行(以下「英文財務諸表への移行作業」という)に関する助言・指導に当たっては、次の点に留意する必要があるとしている。 いずれの場合にも、会計事務所等においては、監査の独立性が確保されるよう、業務内容について、明確な品質管理方針及び手続を定め、これを適切に実施することが必要であるとしている。 2 「大会社等」である監査業務の依頼人への就職 Q4-2では、「大会社等」に適用される規制の内容として、「「大会社等」である監査業務の依頼人への就職」について記載されている。 監査業務の主要な担当社員等であった場合には、自らが当該監査業務の主要な担当社員等でなくなった後に、「大会社等」が1年以上を対象とした監査済みの財務諸表を発行するまでは、当該大会社等である監査業務の依頼人の役員等に就いてはならないとされている。 これについて、公認会計士法等の法令においては、業務執行社員は翌会計期間の終了の日まで監査関与先への就職が制限されているが、独立性指針において就職が制限される期間は法令で定める期間とは異なることに留意が必要であると述べている。 例えば、監査役として、公認会計士に就任を依頼する場合には、上記の記載に注意が必要と考えられる。 3 社員等の就職制限 Q30-1では、「監査業務の主要な担当社員等が、監査法人を退職後に、関与していた監査業務の依頼人(大会社等)の役員等に就任することは可能でしょうか。」との質問に対して、次のように記載されている。 4 セカンド・オピニオン Q9では、セカンド・オピニオンを取り上げている。 倫理規則20条及び注解17のセカンド・オピニオンは、特定の取引等における会計、監査、報告又はその他の基準もしくは原則の適用について、依頼人の要請に基づいて、現任会員以外の会員が意見の表明を行うことであるとしている。 セカンド・オピニオンの表明においては、現任会員が入手した事実と同一の事実に基づかないで意見を表明してしまうことなどにより、正当な注意の原則の遵守を阻害する要因を生じさせる可能性がある点に十分に留意する必要があるとし、倫理規則20条注解17では、セーフガードとして以下を挙げているとしている。 (了)
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《速報解説》 ふるさと納税、控除限度額を2倍に引き上げ「ワンストップ納税制度」を創設~都道府県等への要請により確定申告が不要に(平成27年度税制改正大綱)~
《速報解説》 ふるさと納税、控除限度額を2倍に引き上げ「ワンストップ納税制度」を創設 ~都道府県等への要請により確定申告が不要に(平成27年度税制改正大綱)~ 税理士 仲宗根 宗聡 1 はじめに 「平成27年度税制改正大綱」(平成27年1月14日閣議決定)において、ふるさと納税を促進し、地方創生を推進するため、個人住民税の特例控除額の控除限度額の上限を引き上げとともに、ふるさと納税を簡素な手続きで行える「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の創設が明記された(大綱p28)。以下ではその内容についてまとめることとする。 (※) 2015/1/23 編集部追記 上記下線部について、本稿公開時点では「控除限度額」としていましたが、正しくは「特例控除額の控除限度額」です(以下同様)。 2 ふるさと納税とは 都道府県又は市区町村に対して寄附をした場合、その寄附金合計額から2,000円を控除した額が控除限度額まで、個人住民税の計算上、税額控除される。 3 控除限度額の引上げ 平成28年度分以後の個人住民税については、特例控除額の控除限度額が個人住民税所得割額の2割(現行1割)に引き上げられる。 4 「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の創設 現行では、個人住民税の寄附金税額控除の適用を受けるためには、確定申告が必要である。 しかし、手続きの簡素化のため、確定申告が不要な給与所得者等が寄附を行った場合、次のとおり寄附先の都道府県又は市区町村が、寄附者に代わって税額控除の手続きを行うことができるようになる。 5 地方団体への良識ある対応を要請 なお、ふるさと納税が活況を呈している現況に対し、大綱では以下のような表記がある(大綱p28)。 (了) ↓お薦め連載記事↓
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《速報解説》 「会社法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」が公布~改正会社法は「平成27年5月1日」施行で確定~
《速報解説》 「会社法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」が公布 ~改正会社法は「平成27年5月1日」施行で確定~ Profession Journal編集部 監査等委員会設置会社や多重代表訴訟制度の導入、社外取締役の準義務化などが織り込まれた改正会社法の施行期日は政令委任となっており、法務省ホームページではすでに「平成27年5月1日から施行することを予定しています。」との記載がみられたが、本日(平成27年1月23日)の官報号外第14号において「会社法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」が公布され、「平成27年5月1日」であることが確定した。また官報同号では「会社更生法施行令の一部を改正する政令」が公布されている。 なお、改正会社法に係る法務省令はパブリックコメントに付されていたが、昨年12月25日をもって募集は終了している(法務省令案の概要については以下を参照)。 (了)
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《速報解説》 地方法人税の創設に係る改正実務対応報告「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い」が確定
《速報解説》 地方法人税の創設に係る改正実務対応報告「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い」が確定 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年1月16日、 企業会計基準委員会は次の実務対応報告を公表した。これにより、平成26年9月26日の公開草案が改正実務対応報告として確定することになる。 今回の改正は、平成26年度税制改正において、地方法人税が創設されたことを受けたものである。地方法人税法は平成26年10月1日から施行されており、施行日以後開始する課税事業年度から適用されている。 公開草案に対するコメントとして、実務対応報告第5号の改正案と実務対応報告7号の改正案とを1つにまとめるという意見が寄せられたが、従来どおり、2つの実務対応報告のままとなっている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正事項 平成26年度税制改正における地方法人税の創設に伴い記載内容を改正しているが、連結納税制度を適用している場合の税効果会計の考え方を変更するものではない。 地方法人税法では、連結納税制度を適用している場合、地方法人税の課税標準である基準法人税額は、連結事業年度の連結所得の金額から計算した法人税の額とするとされている。 1 連結納税主体における連結財務諸表上の取扱い 地方法人税に係る繰延税金資産の回収可能性の判断は個別所得見積額だけでなく、連結所得見積額も考慮して行うこととなるため、連結財務諸表において、地方法人税に係る繰延税金資産の回収可能性は、連結納税主体を一体として判断する。 2 連結納税会社における個別財務諸表上の取扱い 連結納税制度を適用する場合の地方法人税の個別帰属額は連結納税会社ごとに把握できるため、連結納税会社の個別財務諸表において、地方法人税に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の金額は、連結納税会社ごとに計算する。 Ⅲ 適用時期 (了) お薦め連載記事↓↓
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Profession Journal No.103が公開されました!~今週のお薦め記事~
2015年1月22日(木)AM10:30、 Profession Journal(プロフェッションジャーナル) No.103 が公開されました。 - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
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日本の企業税制 【第15回】「成長戦略としての平成27年度税制改正」
日本の企業税制 【第15回】 「成長戦略としての平成27年度税制改正」 一般社団法人日本経済団体連合会 常務理事 阿部 泰久 1 はじめに 平成27年度税制改正は、アベノミクスの第3の矢としての成長戦略に色濃く縁取られたものとなった。 昨年末12月30日にとりまとめられた与党平成27年度税制改正大綱の「基本的考え方」では、デフレ脱却・経済再生をより確実なものにしていくため、「企業収益の拡大が速やかに賃金上昇や雇用拡大につながり、消費の拡大や投資の増加を通じてさらなる企業収益に結び付くという、経済の好循環を着実に実現していくことが重要である。」として、法人税改革が冒頭に掲げられている。 このほかにも、高齢者層から若年者層への資産移転に関する様々な措置も、住宅投資や個人消費の活性化という成長戦略に沿うものである。また、地方創生関係の措置も、成長の成果を地方へ波及させようとするものにほかならない。 そこで、本稿では、今回の法人税改革を成長戦略の中での位置づけを通して読み込んでいくこととしたい。 2 成長志向の法人税改革 今回の法人税改革は「「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」ことにより、法人課税を成長志向型の構造に変えるもの」(大綱)と位置付けられている。 税率引下げにより「稼ぐ力のある企業」の税負担の軽減を図る一方で、課税ベースの拡大(特に欠損金繰越控除の制限)や外形標準課税の拡大により、赤字企業や収益力の乏しい企業には厳しい内容となっている。 事実、経団連の推計では、赤字企業では外形標準課税の拡大により税負担が増加することはもとより、所得計上企業の中でも結果的に税負担が増大する企業が現れ、収益力の高い企業ほどみかけ以上の減税となることが予想される。 3 法人実効税率の引下げと先行減税 平成27年度改正の最大の課題は法人実効税率の引下げであったが、実際の検討過程では、まず財源としての課税ベース拡大の方策を課税当局と経団連との間で可能な限り実務的に詰め切り、最終段階で税率をどこまで下げて「先行減税」を確保するかが政治的に決定された。 経団連では、まずは平成27年度で実効税率2.5%以上の引下げを求めていたが、結果として、現行34.62%(標準税率)から平成27 年度に2.51%引き下げ32.11%に、平成28 年度に3.29%引き下げ31.33%となり、両年度でそれぞれ2,100億円の先行減税とされた。 この先行減税とは、課税ベースの拡大のうち欠損金の制限が平成29年度に50%まで拡大されることで税収中立となるまでの間の先行との意味である。 【法人実効税率引下げと先行減税の関係】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 大綱では、平成29年度以降においても、「引き続き、法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指して、改革を継続する。」とされているが、その財源策として、 などが明記されている。 4 賃上げの原資としての法人税減税 成長戦略の中に法人実効税率引下げが明確に位置づけられたのは、平成26年度改正において復興特別法人税の前倒し廃止されたことから始まるが、その際に、賃金引上げがその条件とされた。その結果、昨年の春闘の結果は、厚生労働省調べによれば、民間主要企業で賃上げ率は2.19%(前年比0.39ポイント増)、平均妥結額は6,711円(前年比1,233円増)との大幅なアップとなった。 法人税減税が、企業の内部留保の増大ではなく設備投資や研究開発投資に向かうことは従来から期待されていたが、それにとどまらず賃金引上げにより経済の好循環を促すとの考えは、平成26年度改正からであり、今回はこの傾向がより明確に示されている。 大綱では、法人税改革を通じて「企業が収益力を高めれば、継続的な賃上げが可能な体質となり、より積極的な賃上げへの取組みが可能となる。」とした上で、極めて異例だが、「経済界においては、今般の改革がもたらす経営環境の変化も踏まえ、収益力や生産性の向上に向けて一層の企業努力を行い、得られた利益を従業員や株主に適切に還元するとともに、取引先企業への支払単価を改善することを通じて、経済の好循環の実現に向けて積極的に貢献していくことを求めたい」との言及がなされている。 また、賃金引上げを促すための仕組みが税制の中でも取られている。法人税における所得拡大促進税制の要件緩和と、法人事業税の外形標準課税における所得拡大促進税制の導入である。経団連では外形標準課税の拡大について、法人実効税率20%台への引下げのためには不可避と考えつつ、その大半が賃金課税であるところから、少なくとも政府の要請に応えての賃金引上げ部分については課税対象から除くことを求めてきたが、ほぼ要望が充たされたものと考える。 平成27年度税制改正を受けて、今期の賃金引上げは経団連としての政治的な公約となっており、昨年12月16日開催の政労使会議において経団連は次期賃金改定での賃金引上げを了解するとともに、本年1月20日公表の経営労働委員会報告書の中では、ベースアップを含めた賃金引上げを会員企業に対して呼び掛けている。 5 課税ベースの拡大 法人税減税財源については、昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略2014」に中では、課税ベースの拡大とアベノミクスの成果としての自然増収がともに示されていたが、実際には「2020年度の基礎的財政収支黒字化目標との整合性を確保するため制度改正を通じた課税ベース等により、恒久財源をしっかり確保する」(大綱)との方針が貫かれていた。 具体的な課税ベース拡大については、昨年8月末に、法人事業税外形標準課税の拡大と併せて欠損金繰越控除の制限、受取配当益金不算入の制限、研究開発税制の縮減を平成27年度・28年度に行い、さらに減価償却制度の定額法一本化を29年度に行うとの方針が、財政当局より自民党税調幹部に対して示され、既報のように、9月初めより経団連と財務省主税局との折衝が続けられ、11月中にはほぼ合意をみていた。ここに改めてその概要を整理しておく。 【課税ベース拡大の概要】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (了)
