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平成26年度税制改正における消費税関係の改正事項 【第2回】「簡易課税制度のみなし仕入率の見直し②(法人の適用関係)」
平成26年度税制改正における 消費税関係の改正事項 【第2回】 「簡易課税制度のみなし仕入率の見直し② (法人の適用関係)」 税理士 金井 恵美子 シリーズの第2回は、簡易課税制度のみなし仕入率の見直しについて、その適用関係を整理してみよう。 1 適用時期 改正後のみなし仕入率は、平成 27 年4月1日以後に開始する課税期間について適用される(改正消令附則4)。 ただし、平成 26 年 10 月1日前に簡易課税制度選択届出書を提出した事業者でその課税期間につき簡易課税制度の強制適用を受けるものについては、簡易課税制度の適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の末日の翌日以後に開始する課税期間について改正後のみなし仕入率が適用される(改正消令附則4)。 これは、簡易課税制度はその選択から2年間継続して適用しなければならないことに配慮した経過措置であり、平成 26 年9月30日までに簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、その届出により、簡易課税制度の適用が強制される課税期間においては、改正前のみなし仕入率によることとしたものである。 したがって、平成27年4月1日以後に簡易課税制度の強制適用期間がある場合には、簡易課税制度選択届出書を本年9月30日までに提出した場合と10月1日以後に提出した場合とでは、納付すべき税額に差額が生じることとなる。 この改正は、単純に納付すべき税額を増額させるだけの改正であり、新たに簡易課税制度を選択する場合には、簡易課税制度選択届出書の提出の時期に注意する必要がある。 不動産業を営む法人について、ケース別に見てみると、次のようになる。 2 適用時期に関するケーススタディ(法人:不動産業の場合) (1) 3月末決算法人が平成25年3月31日までに簡易課税制度選択届出書を提出している場合 3月末決算法人が、平成25年3月31日までに簡易課税制度選択届出書を提出している場合には、経過措置の適用はなく、平成27年4月1日に開始する課税期間から改正後のみなし仕入率を適用することとなる。 (2) 3月末決算法人が平成26年4月1日から簡易課税制度を適用する場合 平成26年9月30日までに簡易課税制度選択届出書を提出した場合は、その届出により簡易課税制度の適用が強制される課税期間においては、改正後のみなし仕入率は適用されない。 したがって、3月末決算法人が、平成26年3月31日までに簡易課税制度選択届出書を提出し、平成26年4月1日に開始する課税期間から新たに簡易課税制度を適用する場合は、平成28年4月1日に開始する課税期間から改正後のみなし仕入率を適用することとなる。 (3) 3月末決算法人が平成26年9月30日までに簡易課税制度選択届出書を提出し、平成27年4月1日から簡易課税制度を適用する場合 平成26年9月30日までに簡易課税制度選択届出書を提出した場合は、その届出により簡易課税制度の適用が強制される課税期間においては、改正後のみなし仕入率は適用されない。 したがって、3月末決算法人が、平成26年9月30日までに簡易課税制度選択届出書を提出し、平成27年4月1日に開始する課税期間から新たに簡易課税制度を適用する場合は、平成29年4月1日に開始する課税期間から改正後のみなし仕入率を適用することとなる。 (4) 3月末決算法人が平成26年10月1日以後に簡易課税制度選択届出書を提出した場合 平成26年10月1日以後に簡易課税制度選択届出書を提出しているため、経過措置の適用はない。強制適用期間であるかどうかにかかわらず、平成27年4月1日に開始する課税期間から改正後のみなし仕入率を適用することとなる。 (5) 新規開業した3月末決算法人が平成26年9月30日までに簡易課税制度選択届出書を提出し、開業した課税期間から簡易課税制度を適用する場合 平成26年6月1日から簡易課税制度の適用を開始しているので、「簡易課税制度の適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日」は平成28年5月31日となり、この日の属する課税期間まで簡易課税制度が強制適用されることになる。 平成26年9月30日までに簡易課税制度選択届出書を提出しているので、その届出により簡易課税制度の適用が強制される課税期間においては、改正後のみなし仕入率は適用されないから、その後の課税期間、すなわち、平成29年4月1日に開始する課税期間から改正後のみなし仕入率を適用することとなる。 なお、強制適用期間は、事業年度ではなく課税期間ごとに判断する。課税期間を短縮する特例を適用している場合には、次の課税期間は強制適用期間とならないので、改正後のみなし仕入率を適用することになる。 (6) 新規開業した3月末決算法人が平成26年10月1日以後に簡易課税制度選択届出書を提出し、開業した課税期間から簡易課税制度を適用する場合 平成26年6月1日から簡易課税制度の適用を開始しているので、「簡易課税制度の適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日」は平成28年5月31日となり、この日の属する課税期間まで簡易課税制度が強制適用されることになる。 ただし、平成26年10月1日以後に簡易課税制度選択届出書を提出しているため、強制適用期間であるかどうかにかかわらず、平成27年4月1日に開始する課税期間から改正後のみなし仕入率を適用することとなる。 (7) 新規開業した3月末決算法人が平成26年9月30日までに簡易課税制度選択届出書を提出し、開業の翌課税期間から簡易課税制度を適用する場合 平成26年9月30日までに簡易課税制度選択届出書を提出した場合は、その届出により簡易課税制度の適用が強制される課税期間においては、改正後のみなし仕入率は適用されない。 したがって、平成29年4月1日に開始する課税期間から改正後のみなし仕入率を適用することとなる。 事業を開始した日の属する課税期間に簡易課税制度選択届出書を提出しているが、その翌課税期間から適用を開始しているので、継続する事業者と同様の判断となる。 (8) 新規開業した3月末決算法人が平成26年10月1日以後に簡易課税制度選択届出書を提出し、開業の翌課税期間から簡易課税制度を適用する場合 平成26年10月1日以後に簡易課税制度選択届出書を提出しているため、強制適用期間であるかどうかにかかわらず、平成27年4月1日に開始する課税期間から改正後のみなし仕入率を適用することとなる。 事業を開始した日の属する課税期間に簡易課税制度選択届出書を提出しているが、その翌課税期間から適用を開始しているので、継続する事業者と同様の判断となる。 (了)
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事業者等から質問の多い項目をまとめた「生産性向上設備投資促進税制」の『Q&A集』について 【第3回】「B類型(生産ラインやオペレーションの改善に資する設備)に係る留意点」
事業者等から質問の多い項目をまとめた 「生産性向上設備投資促進税制」の『Q&A集』について 【第3回】 (最終回) 「B類型(生産ラインやオペレーションの改善に資する設備)に係る留意点」 経済産業省 経済産業政策局 産業再生課 課長補佐 矢口 雅麗 質の高い設備投資を促進するための大胆な税制である「生産性向上設備投資促進税制」について、第1回では本税制全体に共通する留意点、第2回ではA類型(先端設備)に係る留意点について説明を行ってきた。 今回は、最終回ということで、B類型(生産ラインやオペレーションの改善に資する設備)に係る留意点について解説を行いたい。 〈1 B類型の申請スキーム〉 B類型は、A類型と異なり、単品単位ではなく投資計画単位で申請を行う。投資計画に係る複数設備を丸ごと対象とする認定スキームである(〈図1〉参照)。 〈図1〉 (経済産業省「生産性向上設備投資促進税制について(平成26年7月)」p11) 設備ユーザーは、自身で投資計画を策定し、その内容についてまずは公認会計士又は税理士の事前確認を受ける。当該公認会計士や税理士と協力して一緒に投資計画を策定してもかまわない。なお、公認会計士や税理士については特に制限はなく、会計監査人や顧問税理士に事前確認を依頼してもよい【B-4】。投資計画やその添付書類等について問題ないと判断された場合は、公認会計士や税理士から事前確認書が発行される。 次に、設備ユーザーは、投資計画に事前確認書を添付し経済産業局に確認書発行申請を行う。要件を満たしている場合には、経済産業局から確認書が発行される。なお、申請は全国10箇所の経済産業局にて受け付けており、原則、設備導入場所の最寄りの経済産業局へ申請することとしている【B-5】。 なお、あくまで計画ベースで申請・確認を行うものとしており、具体的には設備の取得等の前に経済産業局からの確認書発行を受ける必要がある【B-2】。申請から確認書発行までは1ヶ月以内を目処としているので、時限的に余裕を持った申請をお願いしたい【B-1】。 〈2 B類型の対象設備〉 B類型の対象設備の特長は、非常に範囲が広いことである。車輌、航空機、船舶等を除く大半の減価償却資産が対象となる(〈表1〉参照)。 〈表1〉 ※ 器具備品のうち、サーバー用の電子計算機については、情報通信業のうち自己の電子計算機の情報処理機能の全部又は一部の提供を行う事業を行う法人が取得又は製作をするものを除く。 (経済産業省「生産性向上設備投資促進税制について(平成26年7月)」p4) A類型とは異なり、機械装置以外についても用途・細目について制限がないため、例えば器具備品のうち医療機器等も対象となり、また建物そのものについても対象となる。 〈3 投資利益率〉 B類型では、投資計画における投資利益率が15%以上(中小企業者等にあっては5%以上)であることが要件となっている。 ここで言う「投資利益率」とは、下記の〈算式1〉によって算出する。 投資利益率の算出にあたり、まず投資計画を策定する範囲について説明する。 原則、投資計画の策定単位は、全社ベースではなく、その投資計画における投資目的を達成するために必要十分な設備、言い換えれば、投資計画に記載した効果(収益)のために必要不可欠であり、かつ当該設備から生じる効果(収益)を正確に算出できる必要最小限の単位とする【B-8】。 例えば、工場の生産ラインの改善投資であれば生産ライン単位、新工場建設や新店舗出店であれば拠点単位、会社全体に係る販売・生産管理システム改善であれば会社単位が適切と考えられる。 注意点として、例えば新工場建設において、A工場を閉鎖して新工場であるB工場に移転する場合など、単なる物理的な生産体制の移動の場合は、A工場閉鎖とB工場新設を合わせて一つの投資とみなして効果を算定する必要がある。 また、複数年度にわたって設備投資を行う場合であっても、当該設備投資がその目的に照らして一つの事業として実施される場合は、複数年の投資について一つの投資計画として考える必要がある。一方、それぞれの投資目的や期待する効果が異なる場合は、それぞれ別の投資計画として考え、別々に申請をする必要がある【B-16】。 なお、設備の取得前に確認書発行を受ける必要がある旨は既に説明したが、一連の設備投資において、既に一部の投資が完了している場合は、基本的に申請は不可であるが、完了した投資分を除いて、未取得の部分のみで設備投資の効果(収益)を適切に算定できる場合は、未取得部分のみの申請を可とする【B-13】。 例えば、それぞれ独立した生産ラインを3つ新設する場合で、うち2ラインについては既に取得済であっても、残り1ラインはこれから取得するような場合は、残り1ラインだけの独立した効果(収益)が算定可能であり申請可であると考えられる。 一方、例えば3台の機械により構成される生産ラインの新設において、既に2台が取得済で、1台が未取得である場合は、あくまで3台がそろって初めて生産が可能となるものであり、未取得の1台だけの独立した効果(収益)は算定不可能と考えられるため、このような場合は申請は不可である。 次に、具体的に投資利益率を算出するための計算方法について説明する。 上記の「必要十分な」という考え方から、当該効果(収益)を計上するために本税制の対象外となっている設備(車輌や160万円未満の機械装置等)が必要である場合は、これらの本税制対象外設備の取得価額についても分母の設備投資額に加える必要がある【B-11】。 また、補助金を受けて圧縮記帳をする設備についても、投資利益率算出の際には圧縮記帳前の数字を使用する【B-15】。 注意いただきたい点として、投資利益率を良くするために、恣意的に一部設備を除くこと等は認めていない。例えば新工場建設案件において、金額の大きい建物部分を除いて申請することは一切不可である。 なお、あくまでA類型とB類型はそれぞれ全く別の認定であり、B類型の認定を受ける際には、A類型で必要とされている「最新モデル要件」や「生産性向上要件」を満たす必要はない【B-12】。 〈4 その他留意点〉 確認書の発行を受けた後、設備ユーザーは、3年間の投資計画期間中、決算確定後に毎年1回(合計3回)、状況報告書を提出する必要がある。 状況報告書では、実際に設備投資を行ったかどうか、計画ベースではなく実際の投資利益率がどう推移しているか等を報告いただくことになるが、あくまで税制措置の適用可否は計画ベースで判定することから、万が一計画未達成であったとしても、税制措置の取り戻し等の規定はない【B-14】。 また、確認書発行後から実際に設備を取得するまでの間に、投資額が増加する等、投資利益率が悪化する方向の変更があった場合には、変更申請書を提出し、悪化後でも投資利益率が15%以上(中小企業者等は5%以上)を満たしているかどうかを再確認する必要がある。 ただし、状況報告書や変更申請書については、公認会計士や税理士の事前確認は不要であり、作成後、直接経済産業局へ提出いただきたい【B-17】。 * * * 以上がB類型についての留意点であるが、個別案件についての相談は、実際に案件受付・確認を行っている最寄りの経済産業局までお願いしたい。 全3回にわたり「生産性向上設備投資促進税制」における留意点を解説してきたが、本税制の理解にあたり、本解説やQ&A集が、少しでも事業者の皆さんのお役に立つことができれば幸いである。 ぜひ本税制を活用し、生産性向上に向けた質の高い設備投資を積極的に決断・実行いただきたい。 (連載了)
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「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例17(消費税)】 「個別対応方式での申告が有利であったにもかかわらず、十分な検討を怠り、不利な一括比例配分方式で申告をしてしまった事例」
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例17(消費税)】 税理士 齋藤 和助 《事例の概要》 依頼者は不動産の売買、仲介業であり、土地の売買も行うことから、当初より課税売上割合が95%未満になることが予想された。 税理士は設立初年度から関与し、第1期の課税売上割合が95%未満となり、全額控除ができないため、本来であれば有利不利の検討を行い、個別対応方式か一括比例配分方式を選択すべきところ、十分な検討をしないまま一括比例配分方式で申告を行った。 しかし、実際には個別対応方式が有利であったことから、個別対応方式と一括比例配分方式との差額250万円につき損害が発生し、賠償請求を受けた。 なお、一括比例配分方式は2年間の継続適用要件があるが、第1期が1年未満であったことから、損害期は平成X4年3月期から平成X6年3月期までの3期にわたる。 《賠償請求の経緯》 依頼者は不動産の売買、仲介業を営む資本金1,000万円の新設法人である。 税理士は設立と同時に関与した。 設立初年度は8ヶ月であった。 第1期及び第2期の消費税を一括比例配分方式で申告。 依頼者からの問い合わせにより、個別対応方式が有利であることが判明。 継続適用要件のため、第3期も一括比例配分方式となる。 《基礎知識》 ◆課税売上割合が95%未満の場合(消法30②) 課税売上割合が95%未満の課税事業者は、課税売上に係る消費税額から課税仕入れ等の税額について個別対応方式又は一括比例配分方式のいずれかに基づいて計算した消費税額を控除する。 一般的に課税売上にのみ要する課税仕入れが多い場合や、課税売上割合が低い場合には、個別対応方式を採用した方が有利になる。 ◆一括比例配分方式(消法30④⑤) 一括比例配分方式は、課税仕入れ等に係る消費税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算する。そのため、個別対応方式に比べ一括比例配分方式の方が、手間がかからない。 ただし、一括比例配分方式を採用した事業者は、この方法により計算することとした課税期間の初日から同日以後2年を経過する日までの間に開始する各課税期間においてその方法を継続した後の課税期間でなければ、個別対応方式に変更することはできない。 《税理士の落とし穴》 《税理士の責任》 依頼者は不動産の売買、仲介業を営んでおり、土地の売却なども行っていたことから、設立初年度から課税売上割合が95%未満になることが予想された。 税理士はこれを念頭に設立初年度の決算期に個別対応方式と一括比例配分方式の有利不利の検討を行い、個別対応方式を採用すべきであった。にもかかわらずこれを怠り、安易に一括比例配分方式で申告を行ったため、結果として第3期まで一括比例配分方式での申告となってしまった。 設立初年度の期末までに有利不利の検討を行っていれば個別対応方式は採用できたことから、税理士に責任がある。 《予防策》 [ポイント①] 設立初年度は特に慎重な検討を 設立初年度から消費税の納税義務者となる場合には、設立初年度の実績しかないため、原則、簡易の判定はもとより、原則課税の場合においても、個別対応方式、一括比例配分方式のいずれが有利になるかの検討を依頼者を含めて必ず行う。 その際、2年間の継続適用要件のある簡易課税や原則課税における一括比例配分方式については、2年間のトータルで有利、不利の判断をする必要がある。 [ポイント②] 意思決定の証拠を書面に残す 上記検討の結果、最終的にどちらを選択するかの意思決定は依頼者に求め、その判断を「意思決定通知書」などを作成して依頼者に提出してもらう等、証拠として書面に残すことが重要である。 (了)
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組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第8回】「みなし共同事業要件の濫用(東京地裁平成26年3月18日判決)⑧」
組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第8回】 「みなし共同事業要件の濫用(東京地裁平成26年3月18日判決)⑧」 公認会計士 佐藤 信祐 前回までは、特定役員引継要件を満たしている場合について、包括的租税回避防止規定を適用することができるか否かについて、特定役員引継要件の趣旨からの分析を行った。裁判所の理論構成はやや乱暴であり、とても同意できるものではないが、「移転資産に対する支配の継続」というものが特定役員引継要件の制度趣旨であり、その制度趣旨に反した場合には、「不当」と評価され、包括的租税回避防止規定が適用される可能性があるというのが一応の整理となろう。 第8回に当たる本稿においては、本事件における取締役副社長の就任が「不当」と評価されるものであったか否かについて分析を行うものとする。 (ⅲ) 本件組織再編成における不当性要件の充足の有無 第4回で解説したように、本事件において、裁判所は以下の事実関係があるものと判断している。 このような事実関係の下で、 と判示している。 すなわち、買収・合併とは無関係のものではなく、買収・合併があるからこそ、事前に取締役副社長として送り込まれたのであり、買収前の資産に対する支配は継続していないという判断となっており、そこに、取締役副社長としての実態が存在したか否か、その就任に税目的以外の事業目的が存在したか否かということは、ほとんど裁判所の判断に影響を与えていないことになる。 また、裁判所は、①従業員との契約は会社分割により別のF社に移転されてしまっていること、②買収対価の450億円のうち、200億円が繰越欠損金の価値であること、③事業規模に著しい差が存在し、事業規模要件を満たしようもないことを挙げており、その実質において、単なる資産の売買に留まるものであり、みなし共同事業要件を満たす合併としての性格が極めて希薄であると指摘している。 そのほかにも、④本件買収は、C社の繰越欠損金を余すことなく処理することを出発点としていること、⑤取引に係る契約書のほかに、差入書が作成されており、原告とB社において、繰越欠損金の引継ぎが認められない可能性が相当程度あることを認識していたことも触れているが、ある程度の節税効果が認められるものについては、包括的租税回避防止規定が適用される可能性がほとんどない場合であっても、差入書を作成することは不思議なことでもないので、これは補足的に捉えるべきであろうし、裁判所の判断においても、大きな影響を与えていないように読み取れる。 すなわち、裁判所の判断としては、取締役副社長としての実態が存在したとしても、その就任に税目的以外の事業目的が存在したとしても、買収・合併前からの資産に対する支配が継続していたと認められないのであれば、包括的租税回避防止規定を適用することが可能であるとしている。 確かにこの理屈であれば、本事件において、原告が敗訴になるというのも分からなくもない。前回解説した「施行令112条7項5号に係る法132条の2の適用の在り方」については、もう少し納得感のある文章である必要もあるが、「移転資産に対する支配の継続」というものが特定役員引継要件の制度趣旨であるということだけを抜き出せば、一応の整合性は取れる内容となっている。 しかしながら、制度趣旨に反するものについて包括的租税回避防止規定を適用することができるという解釈については、法人税法132条に規定する同族会社等の行為計算において導入されず、経済合理性で判断するという解釈になったのはなぜであろうか。 斉木論文から推測すると、 というのが制度趣旨であると考えるのであれば、「少数の株主等の支配によって生じた所有と経営の分離を前提とする純経済人から乖離した行為又は計算が経済的合理性を欠くもの」(※2)として、本規定の適用対象になったということとして説明できるであろう。 そうなると、純経済人を前提とする包括的租税回避防止規定においては、経済合理性で判断するという理論構成にはならず(※3)、不当性の判断については、制度趣旨からの逸脱ということになってくる。 (※1) 金子宏(2013)『租税法(第18版)』弘文堂441頁 (※2) 斉木秀憲(2012)「組織再編成に係る行為計算否認規定の適用について」税大論叢73号30頁 (※3) 斉木秀憲(2012)前掲(※2)31頁 しかしながら、租税回避の定義については、従来から、 とされており(※4)、同族会社等の行為計算の否認に限って定義されたものではない。 (※4) 金子宏(2013)前掲書(※1)121頁 そのため、制度趣旨に反するという理由で包括的租税回避防止規定を適用することができるというのであれば、租税回避の考え方そのものを見直す必要があり、租税法律主義とのバランスからすると、より慎重な対応が求められることは言うまでもない。 従来の考え方であっても、租税回避のみを目的としているにもかかわらず、わずかな事業目的を外形的に作り出して、実行された組織再編成に経済的合理性があることを主張したとしても、租税回避に該当させる余地は十分にあり(※5)、その解釈の延長線上で、取締役副社長の就任が実態を伴ったものであったとしても、「わずかな事業目的」にしかならないものであり、不自然・不合理なものであれば、経済合理性がないと判断することも可能であったと考えられるし、もし不可能であるのであれば、平成13年度の税制改正当時には明らかにしてこなかった包括的租税回避防止規定の適用対象について、わざわざ10年経過したこのタイミングで同族会社等の行為計算の否認よりも広い範囲にするというのは如何なものであろうか。 (※5) 佐藤信祐(2009)『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』中央経済社12頁 租税法律主義とのバランスを考えると、いささか納得感の得にくい判決内容であり、控訴審、上告審においてより明らかになることを期待している。 次回以降においては、別訴において争われている資産調整勘定の計上について否認を受けた事件について解説を行う予定である。 (了)
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こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第8回】「請求書の消費税の記載の仕方と源泉徴収」
こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第8回】 「請求書の消費税の記載の仕方と源泉徴収」 税理士・社会保険労務士 上前 剛 当社は、弁護士に訴訟案件の対応を54万円(税込)で依頼し、無事解決しました。先日、弁護士事務所より「弁護士報酬54万円(税込)」と記載された請求書が届きました。 また、当社は、税理士と月額5万4千円(税込)で顧問契約を締結しています。毎月、税理士事務所より「税理士報酬5万円、消費税4千円」と記載された請求書が届きます。 弁護士報酬と税理士報酬とでは請求書の消費税の記載の仕方が異なっています。所得税及び復興特別所得税を源泉徴収する上での注意点があればご教示ください。 弁護士報酬は、消費税込の54万円を源泉徴収の対象とする。税理士報酬は、消費税別の5万円を源泉徴収の対象とする。 弁護士報酬と税理士報酬は、所得税法204条1項の報酬に該当するため、報酬の支払い時に所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければならない。税率は、所得税率10%と復興特別所得税率0.21%の合計10.21%である。 また、所得税法204条1項の報酬の源泉徴収の対象とする金額は、原則は報酬に消費税を含めた消費税込の金額である。ただし、請求書等において報酬と消費税が明確に区分されている場合には、消費税別の金額を源泉徴収の対象として差し支えない(課法9-1)。 今回のケースでは、弁護士報酬は、請求書において消費税が別表記されておらず、報酬と消費税が明確に区分されていない。したがって、原則通り、消費税込の54万円を源泉徴収の対象とする。一方、税理士報酬は、請求書において消費税が別表記されており、報酬と消費税が明確に区分されている。したがって、消費税別の5万円を源泉徴収の対象とすることができる。 以上より、弁護士報酬と税理士報酬から源泉徴収する所得税及び復興特別所得税は、次の通りである。 ① 弁護士報酬から源泉徴収する所得税及び復興特別所得税 ② 税理士報酬から源泉徴収する所得税及び復興特別所得税 (了)
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〈条文解説〉地方法人税の実務 【第6回】「確定申告(第19条)の取扱い」
〈条文解説〉 地方法人税の実務 【第6回】 「確定申告(第19条)の取扱い」 税理士 小谷 羊太 税理士 伊村 政代 今回は、「第四章 第二節 確定申告(第19条)」について詳解する。 1 確定申告 【第19条第1項】 【第19条第2項】 2 提出期限 当課税事業年度が平成27年4月1日~平成28年3月31日の法人であれば、平成28年4月1日から平成28年5月31日の間に確定申告書を提出しなければならない。 3 申告書の内容 地方法人税法の確定申告書には、次の金額を記載することになる。 【第19条第1項第1号、第2号】 ①の課税標準法人税額、②の地方法人税の額の流れは、次の図のようになる。 【第19条第1項第3号、第4号】 中間申告書を提出している法人は、通常予定納税をしているので、その予定納税分の地方法人税額を確定申告による地方法人税額から控除することになっている。 ただし、前年度の実績により中間申告分の地方法人税額を納税している会社が、仮に当年度の実績が前年度に比べて大きく減少していたり、赤字であったりする場合には、確定申告による1年分の地方法人税額が中間申告分の地方法人税額よりも少なくなっていることが起こりうる。 その場合には、その控除しきれなかった地方法人税額は法人税法と同様に還付されることとなる。 【第19条第1項第5号】 課税標準法人税額、地方法人税の額、中間申告分の地方法人税の額などの記載にあっては、その金額を計算するために使用した数値なども記載する。またその他、法人の名称や所在地などを記載する。 (了)
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経理担当者のためのベーシック税務Q&A 【第18回】「欠損金の繰戻し還付」
経理担当者のための ベーシック税務Q&A 【第18回】 「欠損金の繰戻し還付」 仰星税理士法人 公認会計士・税理士 草薙 信久 1 欠損金の繰戻し還付制度とは 青色申告書を提出する事業年度において欠損金が生じた場合(以下、この事業年度を「欠損事業年度」という)に、次の3つの要件に該当すれば、欠損金として翌事業年度以降9年間(または7年間)にわたって繰越控除するのではなく、その欠損金額を事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度(以下「還付所得事業年度」という)の所得金額に繰り戻し、既に納めた法人税額から、欠損金に相当する金額の還付を受けることができます(法法80)。 2 適用対象法人 この制度は、解散等の事実が生じた場合を除き、適用が停止されています(法法80、法令154の3、措法66の13①)。しかし、平成21年度税制改正において、中小企業に対する支援を目的として中小法人等に対してのみ繰戻し還付制度の適用停止措置が廃止されました。 その結果、中小法人等の平成21年2月1日から平成28年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については、前事業年度に納付税額がある場合には、繰り戻すことが可能とされました。 3 還付請求できる金額 還付請求できる金額の計算は次のとおりです。 また、欠損金の繰戻し還付による繰戻しが可能な期間は1年間に制限されているため、欠損金額が還付所得事業年度の所得金額を上回る場合でも、前々事業年度以前に遡って欠損金を繰り戻すことはできません。したがって、還付請求できる金額は、分母の金額(=還付所得事業年度の所得金額)が限度になります。 例えば、欠損金額が600万円で、前事業年度の所得金額が400万円、法人税の額が60万円の場合には、還付請求できる金額は60万円が限度となります。 (※) 分子の「欠損事業年度の欠損金額」の限度額は、分母の「還付所得事業年度の所得金額」となります。 4 欠損金の繰戻し還付制度における留意点 欠損金の繰戻し還付制度は法人税についてのみ認められている制度であるため、地方税(法人住民税、事業税)については適用がありません。また、欠損金の繰戻し還付請求を行った場合には、確認のため、税務調査の対象となることがありますので留意が必要です。 5 繰戻し還付制度と繰越控除制度の比較 欠損金の繰戻し還付制度の適用対象法人である中小法人等においては、前回解説した欠損金の繰越控除制度(法法57)が規定されており、いずれかの選択適用が可能になります。 繰戻し還付制度と繰越控除制度の主な違いは、以下のとおりです。 繰戻し還付制度を選択した場合には、繰越控除制度と比べて比較的早く還付金を受け取ることができるため、資金繰りの点で有利といえます。また、発生した欠損金が多額で欠損金の繰越控除期間の9年(または7年)以内に所得金額から控除することができない場合には、欠損金は切り捨てられますので、繰戻し還付制度を選択した方が有利になる場合があります。一方、下記の6のように標準税率が適用される場合には、繰越控除制度を選択した方が有利になる場合があります。 いずれかの制度を選択するかにより、納付税額に有利不利が生じる可能性がありますので、個々の事実に即した試算を行い、慎重に検討を行うことが必要です。 6 繰戻し還付制度と繰越控除制度の計算例 A社は、資本金額2,000万円の内国法人(3月決算)であり、欠損事業年度(平成26年3月期)と還付所得事業年度(平成25年3月期)において、青色申告書である確定申告書を提出期限内に連続して提出しています。 また、各事業年度の所得と欠損の金額の実績および翌事業年度の所得金額の予想は次のとおりです。 繰戻し還付制度 (単位:万円) 繰越控除制度 (単位:万円) 繰越控除制度を選択した場合、繰戻し還付制度を選択した場合よりも、前事業年度から翌事業年度までの3年間の法人税額は、42万円(=894万円-852万円)少なくなります。 繰戻し還付制度において還付請求できる金額は、年800万円以下の所得に対して軽減税率が適用された前事業年度の法人税額を基に算定するのに対して、繰越控除制度において控除する欠損金額は標準税率が適用される前の所得金額から控除されるためです。 (了)
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税務判例を読むための税法の学び方【42】 〔第5章〕法令用語(その28)
税務判例を読むための税法の学び方【42】 〔第5章〕法令用語 (その28) 立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘 14 不確定概念と宥恕規定 (3) 「相当の(な)理由」 「相当の理由」と「特別の事情」は、前回述べた「正当な理由」や「やむを得ない事情」等とは異なり、通常、公権力の行使における裁量権、例えば税法においては、税務署長等課税庁に何らかの裁量権が与えられている場合に、その裁量権を行使するか否かの限界を画する基準として規定されている。 前々回、「正当の理由」の「正当」とは、正しいこと、道理にかなっていることで、一般的な正しさや、正当性を指すものである旨記した。 では「相当の理由」の「相当」とは何であろうか。 【第39回】で述べたように、一般的に、「相当」は「ふさわしいこと」、「つりあうこと」を意味している(なおこの回に、税法においては「相当する」という語が「対応する」というようなニュアンスの語としても使われている旨述べたが、当然この場合はその意味ではない)。 したがって「相当の理由」は、「それにふさわしい理由」「合理的な理由」という意味で使われる。 どのような場合が「それにふさわしい理由」といえるのか、あるいは「合理的な理由」といえるのかということは、その言葉が使われている条文の立法趣旨に応じて判断されることになるが、「合理的な理由」という意味である以上、客観的に、経験則や条理に従って合理的であると認定される理由でなければならない。 例えば、刑事訴訟法には以下の用例がある。 これは通常逮捕の要件の一つであり「逮捕の理由」といわれるものでるが、具体的には、特定の犯罪の嫌疑を肯定しうるような客観的・合理的な根拠があることをいい、すでに捜査機関が集めた捜査資料に基づいて相当高度の嫌疑が経験則上認められるということが必要である。 しかし、刑事訴訟法第210条にある「緊急逮捕」の要件とされる「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由」ほど確実な嫌疑である必要はないとされる。 また同様の規定として、警察官職務執行法第2条第1項には、以下の条文がある。 ここにあるように、警察官の職務質問は合理的に疑い得る理由が必要であり、同法の1条2項において禁じられている権限の行使の濫用のみならず、警察法第2条第1項所定の目的を逸脱して行われた職務質問も違法とされる。 その他、自衛隊員の武器の使用について定めている自衛隊法第95条にも、この「相当の理由」という用語が使用されている。 税法には、国税徴収法に以下の規定がある。 この第1項において、原則日没後の捜索は禁止されているが、夜間捜索を実施せざるを得ないと客観的、合理的に認定されうる理由がある場合には、許されることになる。 このように「相当の理由」には、客観性、合理性が求められるのであるから、その意味では前回取り上げた「やむを得ない理由」よりも、さらに明確であることが要求されているものとされる。 もう1つ、国税通則法第23条第5項を見てみよう。 この場合には「正当な理由」よりは幅が広いが、「相当の理由」として猶予すべき理由に客観性、合理性が求められるために、「やむを得ない理由」よりも限定的であるとされる。 (4) 「特別の事情」 「特別の事情」というのは、「普通の事情とは異なった困難な事情」を意味している。 納税の猶予の要件等を規定した国税通則法第45条第5項を見てみよう。 この場合の、担保徴することができない「特別の事情」とは、一般的には担保を徴収すべきところ、金融機関の与信等の関係から担保を徴取すると事業経営に回復困難な影響を与えるおそれがあるというような特別の事情を指す。 (了)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第8回】「持分法会計」
フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第8回】 「持分法会計」 仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋 【はじめに】 前回は持分法会計を除く連結会計を解説した。今回は、持分法会計を解説する。 【連結・持分法会計の全体イメージ】(再掲) ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 連結会計は、個別財務諸表を単純合算して、そこに連結修正仕訳を追加する。いったん、すべて合計して、そこから修正を行うことから、「全部連結」ともいう。 一方、持分法会計は、持分法を適用する関連会社又は非連結子会社(持分法適用会社)のうち、投資会社(関連会社又は非連結子会社の株式を保有している会社)持分を基本的に という一行の仕訳で連結財務諸表に取り込む。そのため、「一行連結」ともいう。 なお、個別財務諸表では、関連会社又は非連結子会社は、関連会社株式又は子会社株式で表示されるが、連結財務諸表では、持分法適用会社に対する投資勘定は、投資有価証券で表示される。 持分法会計は、以下の7つのステップに分けることができる。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (次ページ【STEP1】へ進む) (前ページ【はじめに】へ戻る) まず、持分法の適用範囲を決定しなければならない。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (1) 関連会社とは 出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の企業の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えている場合における当該子会社以外の他の企業は、関連会社に該当する。 具体的には、以下の①~③に該当する場合、関連会社に該当する。 ただし、更生会社、破産会社その他これらに準ずる企業であって、かつ、当該企業の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができないと認められる企業は除く(企業会計基準第16 号「持分法に関する会計基準」(以下「持分法基準」という)5、5-2)。 (2) 非連結子会社とは 非連結子会社とは、子会社であるが、連結の範囲に含まれなかった子会社である。詳細は、第7回【STEP1】参照。 (3) 持分法の適用範囲 関連会社及び非連結子会社については、原則として持分法を適用する(持分法を適用した会社を「持分法適用会社」という)。ただし、以下の①及び②は、持分法の適用範囲に含めない(企業会計基準適用指針第22 号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」25、26)。また、以下の③の会社は、持分法の適用範囲に含めないことができる(監査・保証実務委員会報告第52号「連結の範囲及び持分法の適用範囲に関する重要性の原則の適用等に係る監査上の取扱い」5)。 持分法の適用から除いた会社を「持分法非適用会社」という。 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) 持分法の適用にあたっては、持分法適用会社の直近の財務諸表を使用する。そのため、仮決算は必ずしも求められていない。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 ただし、投資会社と持分法適用会社の決算日に差異があり、その差異の期間内に重要な取引又は事象が発生しているときには、必要な修正又は注記を行う(持分法基準10)。 (注) なお、以下では、基本的に関連会社を前提に解説する。 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) 投資会社と関連会社間で会計方針に違いがある場合、持分法の会計処理を行う前にその違いを統一しておく必要がある。また、決算日が異なることによる修正の検討も必要である。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (1) 会計方針の統一による修正 同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、投資会社と持分法を適用する関連会社の会計方針は原則として統一しなければならない(会計制度委員会報告第9号「持分法会計に関する実務指針」(以下「持分法指針」という)5)。 上場会社の株式を関連会社としたときなど、支配力が及ぶ子会社とは異なり、修正のために必要となる詳細な情報の入手が極めて困難なことがあり得る。 このような場合、投資会社と持分法適用会社である関連会社の会計処理方法を統一しないことが認められる(実務対応報告第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い 本実務対応報告の考え方(2)」。 (※) 在外関連会社における会計方針の統一については、本フロー・チャートでは解説していない。 (2) 決算日が異なることによる修正 連結決算日と持分法適用会社の決算日に差異があり、その差異の期間内に重要な取引又は事象が発生しているときには、影響する時期により、以下の修正又は注記を行う(持分法基準10)。 ① 当期に影響 その差異の期間内に発生した取引又は事象のうち、その影響を持分法適用会社の当期の損益又は純資産に反映すべきもので、かつ連結上重要なものについては修正を行う。 ② 次期以後に影響 また、持分法適用会社の次期以後の財政状態及び経営成績に影響を及ぼすもので、かつ連結上重要なものについては注記を行う(持分法指針4)。 例えば、以下のような場合に修正が必要となる。 連結決算日が3月末で関連会社の決算日が12月末の場合に、3月中に関連会社が重要な土地を外部に売却した。この場合に何ら修正しないと、関連会社の土地売却という取引は連結財務諸表に反映されない。 そのため、関連会社の12月末の個別財務諸表に土地売却取引の会計処理を追加する必要がある。 (次ページ【STEP4】へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) 在外関連会社の場合、個別財務諸表は外貨で表示されているため、日本円に換算する必要がある。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 具体的には、以下のように換算を行う(外貨建取引等会計処理基準第三、会計制度委員会第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(以下「外貨指針」という)39、44)。 (*1) 在外関連会社の決算日が連結決算日と異なる場合、在外関連会社等の貸借対照表項目の換算に適用する決算時の為替相場は、在外関連会社の決算日における為替相場とする(外貨指針33)。なお、連結決算日との差異期間内において為替相場に重要な変動があった場合、在外関連会社は連結決算日に正規の決算に準ずる合理的な手続による決算を行い、当該決算に基づく貸借対照表項目を連結決算日の為替相場で換算する(外貨指針33、71)。 (*2) 在外関連会社の決算日が連結決算日と異なる場合、在外関連会社の損益計算書項目の換算に適用する期中平均相場は、連結会計期間に基づく期中平均相場ではなく、当該在外関連会社の会計期間に基づく期中平均相場とする(外貨指針34)。 換算したことによる差額のうち、投資会社持分は「為替換算調整勘定」として連結貸借対照表の純資産の部に計上する(外貨指針46)。 (次ページ【STEP5】へ進む) (前ページ【STEP4】へ戻る) 連結会計と同様に、持分法会計においても資本連結と同様の項目について会計処理する(第7回【STEP6】参照)。 本フロー・チャートでは、以下のような項目を「持分法会計における資本連結」とする。 (※) 他にも応用的な論点として、株式売却による関連会社でなくなった場合、増資の場合等あるが、本フロー・チャートでは解説していない。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 持分法会計は一行連結ともいうが、考え方は連結会計と同様のため、以下の解説では、まず連結会計と同様に考えた上で(実際に会計処理するのではなく、あくまでも考え方である)、持分法における会計処理(実際の会計処理)を解説している箇所がある。当該箇所には、【連結会計と同様の考え方】と記載している。 (1) 持分法適用時の資本連結 持分法会計における資本連結も大きく持分法適用時と持分法適用後に分けることができる。 また、持分法適用時の資本連結は「一括取得」と「段階取得」に分けて考えることができる。 ① 一括取得における資本連結 一括取得とは、例えば関連会社株式を一度で20%以上取得した場合などが該当する。 一括取得における資本連結では「のれん(又は負ののれん)を認識(計上ではない)」するために、以下の4つを検討する。 (ⅰ) 関連会社の資産・負債の時価評価 通常、資産を購入するときに、時価を考慮する。したがって、関連会社株式を取得する時も時価を考慮するはずである。 したがって、持分法適用時には、関連会社の資産・負債のすべてを持分法適用時の時価で評価する(持分法基準8)。関連会社は「部分時価評価法」という方法で評価する(持分法指針6-2)。 なお、非連結子会社は連結子会社と同様に「全面時価評価法」で評価する。詳細は、第7回【STEP6】参照。 部分時価評価法には、原則法と簡便法がある。 時価評価の金額と個別貸借対照表上の金額の差額のうち、投資会社持分に対応する部分の金額(税効果額控除後)は評価差額として認識する。 【連結会計と同様の考え方】 (*1) (時価-帳簿価額)×投資会社持分比率 (*2) (*1)×(1-法定実効税率) (*3) (*1)× 法定実効税率 上記で認識した評価差額及び繰延税金負債は、連結財務諸表に計上されることはない。あくまでも、のれん(又は負ののれん)を認識するためのものである。 (ⅱ) 投資と資本の相殺 投資会社の投資(関係会社株式の取得)は企業グループで見ると、単に金銭が投資会社から関連会社へ移動しているにすぎない。つまり、企業グループ内の内部取引にすぎない。 したがって、投資会社の投資と関連会社の資本を相殺する必要がある。 ここで、関連会社の資本には、連結子会社と同様に以下が含まれる。 (※) 資本には新株予約権は含まれない。 なお、取得関連費用(外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等)は、連結会計では、連結財務諸表上、発生した事業年度の費用として処理するが、関連会社株式を取得(追加取得を含む)した場合、個別財務諸表及び連結財務諸表とも、取得関連費用は関連会社株式の取得原価に含まれる(持分法指針36-4)。 (ⅲ) 非投資会社持分の認識 関連会社の資本(評価差額を除く)のうち投資会社に帰属する部分を「投資会社持分」という。また、本フロー・チャートでは、投資会社に帰属しない部分(投資会社以外の株主に帰属する部分)を、「非投資会社持分」とする。 のれん(又は負ののれん)を認識するため、非投資会社持分を認識する。 (ⅳ) のれん(又は負ののれん)の認識 投資会社が関連会社株式を取得するとき、関連会社の資本の金額よりも高く購入したり、安く購入したりする。投資会社の関連会社への投資額=関連会社の資本になるとは限らない。 そのため、投資会社の関連会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本との相殺消去をすると、差額が生じる。この場合に、借方に生じた差額を「のれん」という。貸方に生じた差額を「負ののれん」という(持分法基準11)。会計処理の考え方は連結会計と同様である。 【連結会計と同様の考え方】 (*1) 取得原価 (*2) 関連会社の資本(評価差額を除く)×非投資会社持分比率 (*3) 関連会社の株主資本 (*4) (時価-帳簿価額)×投資会社持分比率×(1-法定実効税率) (*5) 差額 持分法会計上、のれん(負ののれん)は認識するが、連結貸借対照表に計上されることはない。 ただし、のれんは、原則として、20年以内に、定額法その他合理的な方法により償却する。負ののれんは、発生時の損益として計上する(持分法指針9)。そして、のれん償却額、負ののれんの発生額は、「持分法による投資損益」に含めて表示する(持分法指針10)。 (イ) のれんの償却 のれんの償却の会計処理は以下のとおりである。 【連結会計と同様の考え方】 【会計処理】 (*1) 償却額 (ロ) 負ののれんの計上 負ののれんの計上は以下のようになる。 【会計処理】 (*2) 負ののれん発生額 《設例》持分法適用時の資本連結 持分法適用時の資本連結の会計処理は以下のようになる。 【当期(連結会計と同様の考え方)】 以下の仕訳によりのれんを認識する。 (*1) 取得原価(=個別上の簿価) (*2) 800×80%=640 (*3) 持分法上の簿価300(=800×20%+20+120) (*4) 差額 【翌期(のれんの償却のみ)】 (*1) のれん120÷10年=12 (注) 「個別上の簿価」とは、個別財務諸表上の関連会社株式の金額をいう。「持分法上の簿価」とは、「関連会社の資本(評価差額を除く)に対する投資会社持分」、「評価差額」と「のれん未償却残高」の合計をいう。なお、持分法適用時には、個別上の簿価=持分法上の簿価となる。 ② 段階取得における資本連結 段階取得とは、例えば関連会社株式を二度以上の取得により20%以上保有した場合などが該当する。 段階取得における資本連結でも「のれん(又は負ののれん)を認識(計上ではない)」するために、以下の5つを検討する。 (ⅰ) 持分法適用開始年度よりも前に発生した取得後利益剰余金 当期において持分法の適用となった関連会社の利益剰余金のうち、株式の段階的取得に伴い生じた取得後利益剰余金の持分法適用日における投資会社持分額は、連結株主資本等変動計算書の利益剰余金の区分に「持分法適用会社の増加に伴う利益剰余金増加高(又は減少高)」等の科目をもって表示する(持分法指針32)。 【会計処理】 (*1) 持分法適用開始年度よりも前に発生した取得後利益剰余金(のれんの償却額控除後) (ⅱ) 関連会社の資産・負債の時価評価 通常、資産を購入するときに、時価を考慮する。したがって、関連会社株式を取得する時も時価を考慮するはずである。 したがって、持分法適用時には、関連会社の資産・負債のすべてを持分法適用時の時価で評価する(持分法基準8)。関連会社は「部分時価評価法」という方法で評価する(持分法指針6-2)。詳細は、上記①(ⅰ)参照。 (ⅲ) 投資と資本の相殺 投資会社の投資(関係会社株式の取得)は企業グループで見ると、単に金銭が投資会社から関連会社へ移動しているにすぎない。つまり、企業グループ内の内部取引にすぎない。したがって、投資会社の投資と関連会社の資本を相殺する必要がある。詳細は、上記①(ⅱ)参照。 (ⅳ) 非投資会社持分の認識 のれん(又は負ののれん)を認識するため、非投資会社持分を認識する。詳細は、上記①(ⅲ)参照。 (ⅴ) のれん(又は負ののれん)の認識 投資会社が関連会社株式を取得するとき、関連会社の資本の金額よりも高く購入したり、安く購入したりする。投資会社の関連会社への投資額=関連会社の資本になるとは限らない。 そのため、投資会社の関連会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本との相殺消去をすると、差額が生じる。この場合に、借方に生じた差額を「のれん」という。貸方に生じた差額を「負ののれん」という(持分法基準11)。会計処理の考え方は連結会計と同様である。詳細は、上記①(ⅳ)参照。 (2) 持分法適用後の資本連結 持分法適用後の資本連結では、例えば、以下のような検討が必要である。 ① 当期純損益の按分 関連会社が獲得した利益のうち、投資会社の持分相当額を連結財務諸表に取り込む。 具体的には、持分法適用日以降における関連会社の純利益又は純損失のうち投資会社の持分相当額を算定して、投資の額(投資有価証券勘定)を増額又は減額し、当該増減額を「持分法による投資損益」に含める(持分法指針10)。 【会計処理】 (*1) 関連会社の当期純利益×投資会社持分比率 ② 配当金の消去 配当は、関連会社の過去の利益から行われる。そして、過去の利益は、その利益が発生した時点で投資会社に帰属している。帰属した時には、 として連結財務諸表に計上している。 他方、関連会社から投資会社へ配当が行われた時に受取配当金として計上してしまうと、既に利益を取り込んでいる上に、受取配当金も取り込んでしまい、二重計上になってしまう。そのため、受取配当金を消去する必要がある。 また、配当により利益剰余金(資本)が減少し、投資会社持分も減少するから、投資勘定(投資有価証券勘定)を減少させる(持分法基準14)。 【会計処理】 (*1) 関連会社の配当金総額×投資会社持分比率 ③ その他の包括利益の按分 上記①の当期純損益と同様に、持分法適用日以降に発生したその他の包括利益(その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定、退職給付に係る調整累計額等)のうち、投資会社の持分に相当する額を算定して、投資の額(投資有価証券勘定)を増額又は減額する(持分法指針10-2)。 また、持分法会計では、単純合算を行わないため、投資有価証券の相手科目はその他の包括利益の各勘定科目を使用する。 (ⅰ) その他有価証券評価差額金の場合 【会計処理】 (*1) 「当期末のその他有価証券評価差額金-前期末のその他有価証券評価差額金」×投資会社持分比率 (ⅱ) 退職給付に係る調整累計額の場合 【会計処理】 (*1) 「当期末の退職給付に係る調整累計額-前期末の退職給付に係る調整累計額」×投資会社持分比率 ④ のれんの償却 のれんは、原則として、その計上後20年以内に、定額法その他合理的な方法により償却しなければならない(持分法指針9)。詳細は、上記(1)①(ⅳ)参照。 (3) 追加取得 追加取得とは、前期末に20%株式を取得し、関連会社となった後に、当期末にさらに10%取得した場合等の、持分法適用後にさらに株式を取得した場合(子会社になる場合を除く)をいう。 追加取得すると、非投資会社の持分比率が減少し、投資会社の持分比率が増加するため、関連会社の資本に対する非投資会社持分が減少し、投資会社持分が増加する。 また、関連会社の時価評価は、部分時価評価法により行われるため、追加取得持分について、株式の取得の都度、時価評価する。 そして、追加取得によって増加した投資会社持分は、追加投資額と相殺する。この相殺によって生じる差額はのれん(又は負ののれん)として認識する(持分法指針16)。連結会計と異なり、資本剰余金として認識するわけではない。 【連結会計と同様の考え方】 (*1) (時価-帳簿価額)× 追加取得比率 (*2) (*1)×(1-法定実効税率) (*3) (*1)× 法定実効税率 【連結会計と同様の考え方】 (*4) 追加取得した関連会社株式の取得原価 (*5) 関連会社の資本(評価差額を除く)×追加取得比率 (*6) 差額 【会計処理】 追加取得時には、のれんを認識するのみであり、特段の会計処理は行わず、その後、償却を行う。負ののれんを認識した場合には、発生時の損益として計上する。会計処理は上記(1)①(ⅳ)と同様である。 (4) 一部売却(売却後も持分法を適用) 一部売却(売却後も持分法を適用)とは、前期末に30%の株式を保有していて、当期末に10%売却した場合等の、売却後も影響力が続き、持分法を適用する場合をいう。 一部売却すると、投資会社の持分比率が減少し、非投資会社の持分比率が増加するため、関連会社の資本(評価差額を除く)に対する投資会社持分が減少し、非投資会社持分が増加する。また、評価差額及びのれん未償却残高のうち、売却した部分も取り崩す。 そして、売却した株式と「一部売却によって減少した投資会社持分、評価差額及びのれん未償却残高の売却部分の合計額」の差額は、売却損益の修正として会計処理する。 なお、当該差額のうち、関連会社が計上しているその他の包括利益累計額に係る部分については、売却損益の修正には含めず、連結財務諸表に計上したその他の包括利益累計額(上記(2)③参照)のうち、売却した持分に相当する金額を消去する(持分法指針17)。 【連結会計と同様の考え方】 (*1) 関連会社株式の取得原価×売却比率÷売却前投資会社持分比率 (*2) 売却時の関連会社の資本(評価差額を除く)×売却比率 (*3) 売却時の評価差額×売却比率÷売却前投資会社持分比率 (*4) 売却時ののれん未償却残高×売却比率÷売却前投資会社持分比率 (*5) 連結財務諸表に計上している関連会社のその他有価証券評価差額金×売却比率÷売却前投資会社持分比率 (*6) 差額 【会計処理】 (*7) 差額 (次ページ【STEP6】へ進む) (前ページ【STEP5】へ戻る) 連結会計と同様に、連結会社と持分法適用会社間の取引、持分法適用会社同士の取引により未実現損益が生じている場合、重要性が乏しい場合を除き、未実現損益を消去する必要がある(持分法基準13)。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 例えば連結会社と持分法適用会社間で商品や固定資産を売却側の帳簿価格より高い(又は安い)金額で売買した場合、未実現損益の消去が必要となる。 なお、未実現損失の場合、売手側の帳簿価額のうち回収不能と認められる部分の消去は行わない(持分法指針11)。回収可能と認められる部分まで消去することになる。 消去すべき未実現損益及び使用する勘定科目は以下のとおりである(持分法指針11~13)。 (注) 状況から判断して、他の株主の持分についても実質的に実現していないと判断される場合には、全額消去する。 未実現損益の実現は連結会計と同様である。実現の態様を資産の種類ごとにまとめると以下のように異なる。 (次ページ【STEP7】へ進む) (前ページ【STEP6】へ戻る) 持分法会計で考慮する一時差異は以下の2つである。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (1) 資産・負債の評価差額に係る一時差異 連結会計と同様に持分法適用会社は、時価評価に伴う評価差額についても税効果を認識する。詳細は、第5回【STEP1】(2)①及び上記【STEP5】(1)①参照。 (2) 未実現損益の消去に係る一時差異 未実現損益の消去に係る一時差異における税効果の上限に関する考え方は、第5回【STEP4】(2)と同様である。ただし、ダウンストリームとそれ以外で使用する勘定科目が異なる。 ① ダウンストリームの場合 ダウンストリームの場合、投資会社で未実現損益を消去するため、投資会社で税効果を認識する(持分法指針26)。そのため、「繰延税金資産(繰延税金負債)」及び「法人税等調整額」の勘定科目を使用する。 投資会社が関連会社に商品を販売し、関連会社がその商品を保有している場合の会計処理は以下のとおりである。 【会計処理】 (*1) 投資会社から購入した商品の期末残高×利益率×投資会社持分比率 (*2) (*1)×法定実効税率 ② ダウンストリーム以外の場合 ダウンストリーム以外(アップストリーム、持分法適用会社間の取引)の場合、持分法適用会社で未実現損益を消去するため、持分法適用会社で税効果を認識する(持分法指針25)。 ただし、持分法会計では、持分法適用会社の個別財務諸表を合算せず、「投資有価証券」の増減で持分法適用会社に対する持分の増減を表すため、税効果についても「投資有価証券」及び「持分法による投資損益」の勘定科目を使用する。 関連会社が投資会社に建物を販売し、投資会社がその建物を保有している場合の会計処理は以下のとおりである。 【会計処理】 (*1) (売却価額-関連会社で計上していた際の帳簿価額)×投資会社持分比率 (*2) (*1)×法定実効税率 * * * 以上、7のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)
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〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《貸倒損失・貸倒引当金》編 【第1回】「個別評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入」
〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領 《貸倒損失・貸倒引当金》編 【第1回】 「個別評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入」 公認会計士・税理士 前原 啓二 はじめに 個別注記表の重要な会計方針において、貸倒引当金の計上基準として、「一般債権については法人税法の規定する貸倒実績率(法人税法の法定繰入率が貸倒実績率を超える場合には法定繰入率)により計上するほか、個々の債権の回収可能性を勘案して計上している」という記載を見ることがあります。 この「個々の債権の回収可能性を勘案して計上している」ケースには、法人税法の規定する個別評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入の損金算入ができる事業年度以前の事業年度において、決算書上は貸倒引当金計上すべきとされる場合がよくあります。 今回は、このような有税引当となる貸倒引当金の繰入についてご紹介します。 1 当期末の引当計上の仕訳 〈A社〉 〈B社〉 〈C社〉 〈D社〉 破産更生債権等(経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権)に係る取立不能見込額の原則的な算定方法は、債権金額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を取立不能額とします(中小企業会計指針18)。 A社、B社、C社をこの方法により取立不能見込額を算定すると、会計上の貸倒引当金繰入額は次のとおりです。 貸倒懸念債権(経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権)に係る取立不能見込額の原則的な算定方法は、債権金額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して算定します(中小企業会計指針18)。 D社をこの方法により取立不能額を算定すると、会計上の貸倒引当金繰入額は下記のとおりです。 2 決算書の金額 〈当期損益計算書〉 〈当期末貸借対照表〉 3 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 〈当期法人税申告書別表四〉 〈当期法人税申告書別表五(一)〉 税務上は、金銭債権に係る債務者につき次に掲げる事由が生じている場合におけるその金銭債権の額(その金銭債権の債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額及び担保権の実行、金融機関又は保証機関による保証債務の履行等により取立て又は弁済の見込があると認められる部分の金額を除く)の50%に相当する金額は、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入限度額に含められます(法令96①)。 この設例では、税務上の個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる債務者に、A社・B社・C社は該当しますが、D社は該当しません。貸倒引当金に係る税務上の加算調整は次のとおりです。 (注) 期末資本金が1億円を超える法人で、かつ、貸倒引当金の適用法人に該当しない場合など所定の法人については、平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間に開始する事業年度において、上記の繰入限度額の4分の3、平成25年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する事業年度において、上記の繰入限度額の4分の2、平成26年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度において、上記の繰入限度額の4分の1が損金算入限度額となります(平成23年度税制改正)。 (了)