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《速報解説》 「租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて」等の一部改正(7/12公表)について 【その1】

《速報解説》 「租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて」等の一部改正(7/12公表)について 【その1】   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   平成25年7月1日付で国税庁ホームページに「租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて」(法令解釈通達)が公表された(公表日は7/12)。 今回の改正の趣旨は、所得税法等の一部を改正する法律(平成25年法律第5号)等の施行に伴い、譲渡所得等に関する取扱いの整備を行ったものである。 これから2回にわたって、今回の通達改正の主な内容を解説することにする。本稿【その1】では、株式等に係る譲渡所得に関する改正を取り上げる。   (1) 通達改正の概要 いわゆるNISA(少額投資非課税制度、以下「NISA」という)が、平成26年1月1日から導入されることに伴い、関連する法令解釈通達が新設された。 なお、NISAの概要については、日本証券業協会ホームページ上に解説があるので参照されたい。   (2) 措法37の10の2「特定管理株式等が価値を失った場合の株式等に係る譲渡所得等の課税の特例」関係の取扱い 特定口座に保管されていた上場株式等が、上場株式等に該当しないこととなった日以後、特定管理株式又は特定保有株式に該当していた場合で、その株式を発行する会社に清算結了等の一定の事実が生じたことにより株式としての価値を失った時には、当該株式の譲渡があったものとして、その株式の取得価額を株式等の譲渡損失の金額とみなすという特例がある(措法37の10の2)。 この特例により譲渡損失とみなされた金額は、その年に生じた他の株式等の譲渡益から控除することができる。 今回の通達改正で、整理銘柄や監理銘柄、店頭監理銘柄株式として指定されている期間内にNISAの対象となる非課税口座から特定口座に移管された上場株式等は、この特例の対象となる特定管理株式からは除かれることが示された(措通37の10の2-1)。   (3) 措法37の14「非課税口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等の非課税」関係の取扱い ① 譲渡所得等の発生期間 NISAによる譲渡所得等の非課税は、受入期間内に取得した上場株式等の引渡しがあった日から、その引渡し日の属する年の1月1日から5年を経過した日までの間に当該上場株式等の譲渡による引渡しのあった日までの間に生じた譲渡所得等について適用があることが示された(措通37の14-1)。 なお、非課税口座内上場株式等を有する者が死亡した場合には、死亡日に遡って当該株式等の譲渡があったものとみなされ、非課税口座から払出しがなされることになる(措通37の14-1(注))。 ② 相続等により非課税口座内上場株式等を取得した場合の取扱い 非課税口座を開設した者から、相続、遺贈又は贈与により当該口座内の上場株式等を取得した相続人、受遺者又は受贈者が、当該上場株式等を5年以内に譲渡してもNISAに係る規定は適用されないことが示された(措通37の14-2)。 ③ 非課税口座内上場株式等に係る譲渡損失の取扱い 非課税口座内上場株式等を譲渡した場合に生じた譲渡損失の金額はないものとみなされるため(措法37の14②)、非課税口座内上場株式等の譲渡損失は「上場株式等の配当所得との損益通算」及び「譲渡損失の3年間の繰越控除」の規定の適用を受けることはできないことが示された(措通37の14-3)。 上記(2)、(3)の他、NISAに関連する法令上の用語の定義(「購入の範囲)、「払込みの範囲)、「取得対価の額」「他の年分の非課税管理勘定からの移管の範囲」等)について関連する取扱いが新設されている。 なお、【その2】では、株式等に係る譲渡所得に関するもの以外の改正について、主な内容を解説する。  (了)
#30(掲載号)
#篠藤 敦子
2013/08/05
税務 税務・会計 解説 解説一覧

monthly TAX views -No.7-「アベノミクス成長戦略とLLC(パススルー税制)」

monthly TAX views -No.7- 「アベノミクス成長戦略と LLC(パススルー税制)」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   1 ベンチャー投資・再チャレンジ投資の促進 今回の参議院選挙でいわゆる「ねじれ」が解消された。アベノミクス成長戦略の一層の充実が期待される。 ところで、6月14日に公表されたアベノミクス成長戦略の「日本産業再興プラン」の中で、注目すべき点がある。 「産業の新陳代謝の促進」という項目の中の、「内外の資源を最大限に活用したベンチャー投資・再チャレンジ投資の促進」という部分である。 具体的中身として、「個人からベンチャーへの資金の流れを一層太くすることに加え、民間企業等の資金と目利き能力を有効に活用するため、民間企業等によるベンチャーや新事業への投資を行いやすくする。こうした取組により、産業の新陳代謝を促すことで、開業率が廃業率を上回る状態にし、開業率・廃業率が米国・英国レベル(10%台)になることを目指す」と記されている。   2 本格的なパススルー税制の検討 実はこのような政策を裏打ちする税制として、米国型のパススルー税制をわが国にも導入しようという検討が、政府部内の一部で行われている。 周知のように、05年の会社法の改正に伴い、①出資者の有限責任が確保され、②会社の内部関係については柔軟な規律が適用され、③法人格を持つ新たな会社類型として、合同会社が創設された。 この会社形態は、米国のLLC(Limited Liability Company)をモデルとしたことから、日本版LLCと称されるが、米国LLCとの違いは、税制がパススルー税制(法人段階では課税せず、出資者・構成員の段階で課税する)になっていない点だ。 米国LLCの税制は、法人課税とパススルー税制の選択を納税者に委ねる、チェック・ザ・ボックス税制となっており、多くのLLCが、法人税のかからないパススルー税制を選択している。これが、資金はないが知恵のある者と、知恵はないが資金は豊富な者とを、利益分配の柔軟性によりつなぎ、ベンチャーの事業フォーマットとして活用されている。 さらに、法人段階と個人段階での二重課税を排除するので税引き後の収益率が向上するというメリットや、法人形態ではできない「損失」を分配することができるので、損益通算によるリスクテイク能力を向上させ、ファンドのビークルとして活用されている。 いずれにしてもこのような税制を持つLLCが、米国経済の活性化に一役買っている。   3 さまざまな課題 そこで、日本版LLCにも米国型のパススルー税制を導入して、ベンチャー事業の育成を図ってはどうか、ということになる。 だが、本格的なパススルー税制の導入には、さまざまな課題を乗り越える必要がある。 法人課税の適用されている人格なき社団、合資・合名会社の取扱いを含めて、根本的な検討が必要となる。 また、パススルー税制の計算方法等の課税ルールの明確化、租税回避防止措置などを検討する必要がある。 具体的には、資本勘定で所得の構成員への帰属を確保するために、分配(distribution:組合から組合員に現実にキャッシュが移動すること)と配賦(allocation:組合員の所得税の計算上組合所得が割り当てられること)の概念を分離させること、二重課税や二重非課税を避けるため資本勘定の計算規定(組合員それぞれの税務上の出資持ち分に対するルール)を定め、実質経済テストの導入など租税回避防止のルールも細かく規定するという米国の法制を持ち込むことなどである。 さらに、組合を通じて得られた所得区分についても規定を置かなければならない。 このような方向は、中長期的な課題としてはありうるが、短期的な課題とはならない。そこで、暫定的なアプローチとして、産業政策の一環として、新たな事業体を設け、パススルー税制にふさわしい要件を定める形での導入が検討課題となる。 例えば、出資比率と異なる配賦・分配は認めない、出資人数や持分譲渡を制限する、計算は純額方式に統一する、構成員に所得が直接帰属することを契約上明記するなどの制限を設ける、租税回避防止策はしっかり講じるといったことである。 このような制限は、合同会社の特色である内部自治の柔軟性を損なうことになり、使い勝手が多少悪くなるが、ベンチャー事業、さらには、震災がらみの漁業復興事業やTPPがらみの農業の共同事業には十分活用できる。 今後の検討を期待したい。 (了)
#30(掲載号)
#森信 茂樹
2013/08/01
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「生産等設備投資促進税制」適用及び実務上のポイント 【第6回】「新設された措置法通達について」

「生産等設備投資促進税制」 適用及び実務上のポイント 【第6回】 「新設された措置法通達について」   マネーコンシェルジュ税理士法人 税理士 村田 直   ◆生産等設備投資促進税制の関係通達は8本 平成25年度税制改正に係る法人税基本通達等の一部改正が平成25年7月9日に公表された。 本連載の最終回となる今回は、生産等設備投資促進税制について新設された通達について解説する。 生産等設備投資促進税制は、租税特別措置法42条の12の2に規定されており、今回の一部改正により、租税特別措置法関係通達として、下記8本の通達が新設された。   ◆生産等設備の範囲は、継続適用を条件に有利選択可 生産等設備の範囲については、42の12の2-1において、以下のように例示された。 逆に、生産等設備に該当しない例として、「本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、乗用自動車、福利厚生施設」などが挙げられている。 とはいえ、様々な用途に使用している設備の場合は、どのように生産等設備の判定を行うか迷う場面も出てくる。そのような場合に対応できるよう、注意書きが設けられている。 具体的には、一棟の建物が本店用と店舗用に供用される場合など、減価償却資産の一部が法人の生産等活動の用に直接供されるものについては、そのすべてが生産等設備とされる。ただし、法人がその有する共用資産を生産等活動の用に供される部分とそれ以外の用に供される部分とに合理的に区分して計算する方法も、継続適用を条件として認められる。 上記の方法のいずれを選択するかは、今後の設備投資計画にも左右されるだろう。 来期以降に、生産等設備投資促進税制を適用できるような設備投資計画がない場合には、基本的には110%増加要件を満たすように、当期の生産等設備の金額を大きくして、共用設備を区分しない方法を選択することが考えられる。ただし、前期の生産等設備についても同じ基準で計算する必要がある。 一方、来期以降も設備投資計画がある場合には、当期の生産等設備の金額が大きくなってしまうと、来期に要件を満たさなくなる恐れがあるため、共用設備を区分する方法を選択することもありうる。 継続適用が条件となるため、複数年にわたって設備投資計画がある場合には、慎重に判断する必要があるだろう。   ◆他の特別償却や圧縮記帳の適用を受ける資産の取扱い 42の12の2-2においては、「償却費として損金経理をした金額」の範囲について言及されている。 法人税基本通達7-5-1、7-5-2では、「償却費として損金経理をした金額」には、減価償却資産の取得価額に算入すべき付随費用の額のうち原価外処理をした金額等も含むものとされているが、生産等設備投資促進税制においては、上記金額は含まれないとしている。 つまり、「償却費として損金経理をした金額」が少なく解釈されていることになり、投資金額のハードルが下がるため、納税者にとっては有利な取扱いとなる。 また、42の12の2-3では、特別償却に関する他の規定の適用を受ける生産等資産の取扱いについて定められている。 この場合、そういった資産を生産等資産の取得価額の合計額に含めていいものか、判断に迷うところだが、本通達でこのような資産についても生産等資産の取得価額の合計額に含めたところにより要件判定することが明らかにされている。 42の12の2-4においては、圧縮記帳をした生産等資産の取扱いが定められている。 生産等資産のうちに法人税法又は措置法の規定による圧縮記帳の適用を受けたものがある場合、生産等設備投資促進税制の要件判定においては、生産等資産の取得価額は、圧縮記帳前の実際の取得価額によるものとされている。 なお、法人税法の規定による圧縮記帳の適用を受けた生産等資産が機械等に該当する場合には、圧縮記帳との重複適用を避けるため、特別償却限度額又は税額控除限度額の計算の基礎となる取得価額は、圧縮記帳後の取得価額とされる。 また、42の12の2-5においては、措置法の圧縮記帳の適用を受けた機械等については、生産等設備投資促進税制の適用がないことが明記されている。   ◆貸付けの例外・低額取得等の場合の取扱い 生産等設備投資促進税制においては、貸付けの用に供した資産や贈与による取得は適用対象外となるが、42の12の2-6、42の12の2-7においては、これらの場合について言及している。 法人が、その取得又は製作若しくは建設をした機械及び装置を自己の下請業者に貸与した場合において、その機械及び装置が専らその法人のためにする国内における製品の加工等の用に供されるものであるときは、その機械及び装置は国内にあるその法人の営む事業の用に供したものとして、生産等設備投資促進税制が適用される。 また、減価償却資産を著しく低い価額で譲り受けた場合には、時価との差額について贈与を受けたものとみなされるため、生産等設備投資促進税制の適用に当たっては、その譲受価額による取得があったものとされる。 また、逆に著しく高い価額で譲り受けた場合には、時価との差額について贈与したものとみなされるため、生産等設備投資促進税制の適用に当たっては、譲受けの時におけるその減価償却資産の価額(時価)による取得があったものとされる。 最後の42の12の2-8においては、機械等の対価につき事業供用年度後の事業年度において値引きがあった場合に、供用年度に遡って税額控除限度額の修正を行う旨が明らかにされている。 (連載了)
#30(掲載号)
#村田 直
2013/08/01
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〔理解を深める〕研究開発税制のポイント整理 【第1回】「過年度改正の流れを整理する」

〔理解を深める〕 研究開発税制のポイント整理 【第1回】 「過年度改正の流れを整理する」   税理士法人山田&パートナーズ 税理士 吉澤 大輔   1 はじめに 平成25年度税制改正においても、研究開発税制に一部改正が行われている。 政策税制としての研究開発税制は、景気の波を受け、ここ数年で多くの改正が行われており、その制度内容が非常に複雑となってきている。 そこで本連載の第1回では、複雑となった制度内容を、制度の沿革と照らし合わせながら整理していきたい。 なお研究開発税制は、「所得税の税額控除」「法人税の税額控除」のそれぞれに規定が設けられているが、本稿では「法人税の税額控除」の規定にのみ焦点を当てることにする。   2 現行制度のあらまし 研究開発税制(試験研究を行った場合の法人税額の特別控除:措法42の4)は、本体部分(恒久的措置)の「試験研究費の総額に係る税額控除制度」「特別試験研究費に係る税額控除制度」「中小企業技術基盤強化税制」と上乗せ部分(時限措置)の「試験研究費が増額した場合等の税額控除制度」の4つの制度によって構成されており、本体部分の制度にはそれぞれ「税額控除限度超過額の繰越控除制度※」が設けられている。 ※本稿では、「繰越中小企業者等税額控除限度超過額の繰越控除制度」を含むものとする 本体部分は研究開発支出の「総額」の一定割合を税額控除する【総額型】と呼ばれ、現行の研究開発税制の柱となっている。 上乗せ部分は本体部分と別枠で計算し、税額控除の「型」としては、過年度に比べ増加した研究開発支出部分の一定割合を税額控除する【増加型】と、当期の売上高に対してより多く研究開発支出した部分の一定割合を税額控除する【高水準型】の2つが設けられており、税額控除をする上では、いずれか有利な「型」を選択適用することとされている。   3 制度創設から現在までの改正点を確認 (1) 平成15年度税制改正 平成15年度税制改正は、現行の研究開発税制の柱である「総額型」が導入された非常に重要な年度である。 創設された制度は「試験研究費の総額に係る税額控除制度」「特別試験研究費に係る税額控除制度」「税額控除限度超過額の繰越控除制度」であり、従来から設けられていた「中小企業技術基盤強化税制」は、その制度内容が拡充された。 【参考図】 (財務省「平成15年度税制改正パンフレット」より) なお、この平成15年税制改正に関する考え方について平成14年10月17日に税制調査会会長談話が公表されている。 (2) 平成18年度税制改正 研究開発税制が創設された昭和42年から本制度の柱であった「増加試験研究費の税額控除制度」(旧増加型)は、平成18年3月31日の適用期限の到来をもって廃止された。 一方で、今後も民間の試験研究費を増加させるインセンティブを付与するとの観点から、本体部分に上乗せする制度として「試験研究費が増額した場合等の税額控除制度」(増加型)が創設され、「総額型」と「増加型」が統合されたのである。 【参考図】 (財務省「平成18年度税制改正パンフレット」より) (3) 平成20年度税制改正 税額控除限度額まで税額控除を行っている企業が増加していることを鑑みて「試験研究費が増額した場合等の税額控除制度」が改組された。 「増加型」に加えて「高水準型」を設け、さらに「総額型」と「増加型・高水準型」の税額控除額を別枠で計算することにしたのである。 別枠で計算することで、改組前は「増加型」と「総額型」の税額控除の合計額について当期法人税額の20%相当額の税額控除限度額が設けられていたが、改組後は「増加型・高水準型」について新たに税額控除限度額を設け、「総額型」の税額控除制度と合わせて最大で当期法人税額の30%相当額まで税額控除が可能となった。 【参考図】 (財務省「平成20年度税制改正パンフレット」より)  (4) 平成21年度税制改正(経済危機対策による税制上の措置) 当時の社会経済情勢を踏まえ、需要不足に対処する観点から、次の「試験研究を行った場合の法人税額の控除の特例」が設けられた。 ① 平成21年度及び平成22年度に開始した事業年度の特例(税額控除限度額の引上げ) 平成21年4月1日~平成23年3月31日※までに開始する各事業年度については、本体部分のそれぞれの制度と「税額控除限度超過額の繰越控除制度」における税額控除限度額を当期法人税額の20%相当額から30%相当額に引き上げられた。 ※平成23年6月30日に公布された「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律」により、適用期限が1年(平成24年3月31日まで)延長された。 ② 平成23年度に開始した事業年度の特例 平成23年4月1日から平成24年3月31日までの間に開始する事業年度は、繰越控除の対象となる金額に平成21年度に生じた繰越税額控除限度超過額を含めることとし、繰越控除の適用を受けることができる限度額を当期法人税額の30%相当額に引き上げられた。 ③ 平成24年度に開始した事業年度の特例 平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間に開始する事業年度は、繰越控除の対象となる金額に平成21年度又は平成22年度に生じた繰越税額控除限度超過額を含めることとし、繰越控除の適用を受けることができる限度額を当期法人税額の30%相当額に引き上げられた。 【参考図】 (財務省「平成21年(『経済危機対策』における税制上の措置)パンフレット」より) (5) 平成25年度税制改正 平成25年1月11日にとりまとめられた「日本経済再生に向けた緊急経済対策」における具体的施策の1つに「成長による富の創出」がある。 これを実現させるための取組みのうち「民間投資の喚起による成長力強化」では「研究開発、イノベーション推進」を掲げており、そのうちの「企業のイノベーションを促進するための研究開発税制の拡充」を行うことを受けて次の改正が行われた。 【参考図】 (経済産業省「平成25年度税制改正について」より)   4 適用年の全体像(まとめ) ここまでの改正事項をまとめると、下図のようになる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   次回からは、研究開発税制の各制度における具体的な計算方法に入りたい。 (了)
#30(掲載号)
#吉澤 大輔
2013/08/01
相続税・贈与税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〔しっかり身に付けたい!〕はじめての相続税申告業務 【第2回】「申告業務の流れからみる相続人対応のおさえどころ」

〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第2回】 「申告業務の流れからみる 相続人対応のおさえどころ」   税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   前回は相続税申告業務の全体の流れと相続税申告期限について説明を行ったが、今回は相続税申告業務の全体の流れについて少し具体的に説明を行う。 ステップ1 相続税申告業務を納税者の方から依頼を受ける場合、初回ミーティング時に、報酬見積書、契約書案(*1)、業務スケジュールを提示し、契約内容などについて合意できた場合には、相続税申告業務に必要な資料(*2)を依頼することになる。 なお、相続税の納税が生じる可能性がある場合には、納税者の方は納税資金を準備する必要があるため、可能な限り早いタイミングで、相続税概算額を提示した方が良いであろう(*3)。   ステップ2 納税者の方から必要資料について提示を受けた後、その資料に基づいて業務を進めることになる。 なお、 いずれも納税者の方へ資料を再度依頼することになる(*4)(*5)。   ステップ3 入手した資料をもとに業務を進めていくことになるが、前回記載した相続税申告業務の全体の流れ(以下参照)のうち、まずは1及び2の作業を行うことになる。 具体的には、「1 相続人の確定作業」を行い、まず相続人となる個人を特定する(*6)。 「2 相続財産の範囲・評価作業」を行い、相続の対象となる財産・債務の特定、及びその評価を行う(*7)。 この1及び2の作業が完了した段階で、1の作業で確定した相続人の全員に対して、2の作業で確定した財産及び債務の一覧(評価額を含む。以下「財産目録」という)を提示し、3の分割協議の判断資料として利用してもらう(*8)。 なお、相続人全員に財産目録を提示する際には、(1)小規模宅地特例等の特例を適用しない、未分割の状況を前提とした相続税額の総額、各相続人別の相続税負担額、及び(2)小規模宅地特例及び配偶者の税額軽減などを適用できた場合の相続税額の総額(特例の前提となる財産分けを含む)、各相続人別の相続税負担額、についても、遺産分割協議の参考となるように、相続人全員に通知する(*9)。   ステップ4 相続人全員が遺産分割について合意できた場合には(*10)、その合意内容を遺産分割協議書として記載し、相続人全員が実印で押印し、印鑑証明を添付する(「3 相続財産の分割協議」)。 この分割協議内容に従い、相続税申告書を作成し、相続人全員に対して説明を行う。相続税申告書の内容につき相続人全員の了解が得られた後、相続税申告書に相続人全員が押印し、税務署へ添付書類と共に提出を行う(「4 相続税申告書の作成」)。 なお、相続税申告書の説明時に、相続人各人の相続税額を記載した納付書を準備し、納税期限を明示するとともに、納税の依頼を行う(「5 相続税納税準備」) *  *  * 以上で、相続税申告業務の全体の流れを説明した。次回以降は、各業務についてより詳しく見ていくこととする。 (了)
#30(掲載号)
#根岸 二良
2013/08/01
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

中小企業のM&Aでも使える税務デューデリジェンス 【第7回】「清算における税務の取扱い」

中小企業のM&Aでも使える 税務デューデリジェンス 【第7回】 「清算における税務の取扱い」   公認会計士・税理士 並木 安生   1 はじめに 前回までは、中小企業が買収・統合される場合や、親族へ事業承継する際における税務上のポイント並びに税務デューデリジェンスの内容について解説したが、実際には買収・統合や事業承継に至らずに会社を消滅(清算)させるケースも非常に多い。 そこで、連載最終回となる今回は、その中でも代表的な手続である特別清算における税務上の取扱い、税務デューデリジェンスのポイント等について解説する。   2 特別清算における税務上の取扱い オーナー経営者(個人)が保有する会社(A社)について、当初は外部への売却(M&A)を希望していたものの買い手が見つからず、また自力だけでは今後は事業が縮小の一途をたどらざるを得ない状況にあったことから、M&Aを断念して特別清算により清算手続を行うとする。 その際の各当事者における税務は、次の通りとなる。 1) 清算会社(A社)の税務 残余財産確定時点でA社に負債が残っている場合、その全額を債務免除益として益金算入する必要がある。その際、債務免除益と相殺できる損金が充分存在していないと、清算事業年度(会社が消滅する年度)で債務免除益課税を受けることとなる。 その損金の代表例としては、リストラに伴う事業撤退損失や資産譲渡損、青色繰越欠損金が挙げられるが、清算事業年度等のみに使用できる特有の損金として、特例欠損金(いわゆる「期限切れ欠損金」であり、法人税確定申告書別表5(1)の利益積立金期首残高から前年度末時点の青色繰越欠損金額を差引いた額)も挙げられる。 ただし特例欠損金を損金として利用するためには、清算事業年度末時点におけるA社の時価純資産が実質的に債務超過の状態にあることが条件となる。 〔清算会社(A社)の税務〕 2) オーナー経営者の税務 上図の記載は実質債務超過の状況を前提としているため残余財産が存在していないが、仮にA社が資産超過の状況にあり株主であるオーナー経営者が残余財産の分配を受けた場合、その清算配当は所得税の計算上で配当所得として認識され、総合課税の対象となり累進税率(現行の最高税率は所得税・住民税合わせて50%)が適用される。 一方、会社清算に伴う役員退任によりA社からオーナー経営者へ役員退職慰労金を支給する場合、オーナー経営者側ではその支給額を退職所得として認識し申告分離課税の対象となり、課税所得の計算上も概ね受取額の半額が非課税とできる等、様々な税務上の優遇を受けることができる。 ただし、役員退職慰労金のうち過大と認定された部分については、給与所得として総合課税の対象となる恐れがある点に注意が必要である。 なお本ケースには当てはまらないが、A社の発行済株式総数のすべてをオーナー経営者の資産管理会社等が保有している場合、A社の設立当初からA社とその資産管理会社との間に支配関係(発行済株式総数の50%超を保有する関係)が継続している等の一定の条件を満たせば、A社において清算事業年度末に存在する青色繰越欠損金をその資産管理会社が引き継げることになる。   3 税務デューデリジェンスのポイント 残余財産確定時における負債の見込額、清算事業年度に損金として利用可能な額を清算の検討段階で予め試算した上で、債務免除益課税を受けるか否か、そして債務免除益課税を受ける場合にどれくらいの納税が生じるかを把握しておくことが有用である。 具体的なチェックポイントは、次の通りである。 1) 資産含み損益の状況 解散から清算結了に至るまでに処分・売却する予定の資産について時価を把握し、損金・益金の計上見込額を試算する。また、売却の対価として受領する予定のキャッシュを試算して負債をどの程度圧縮できるかを把握し、最終的な債務免除益相当額を見積もっておく。 なお、過年度において仮装経理を行った結果資産に含み損が生じている場合(例:架空在庫計上を行っていた場合)、仮装経理相当額に対して修正経理を行った上で更正の請求又は申し出を行い税務当局の認可を得ない限り、仮装経理相当額を損金として認識することはできないといえる。 なお、更正の認可を受けるための疎明資料としては、資産計上額のうち仮装経理相当額について実在性のないことの客観性が証明できるような水準の資料が少なくとも必要と考えられる。 2) 青色繰越欠損金の状況 更正可能期間に生じた青色繰越欠損金について、その発生年度の確定申告書や税務処理を改めてチェックし、今後の税務調査による否認リスクの発生可能性について検討した上で、税務リスク反映後の青色繰越欠損金額を把握しておく(ただし、加算留保を受けるリスクがある場合、青色繰越欠損金額が減少する恐れがあるものの、清算結了時点までに原則としてはその留保額は減算認容されると考えられるため、債務免除益と相殺可能な損金の総額は変らないといえる)。 3) 特例欠損金の状況 税務デューデリジェンスにより発見された税務リスクを考慮した特例欠損金額を試算しておく。また、上記1)を行うことにより、清算会社が実質債務超過の状況にあるか否かチェックし、特例欠損金が損金として利用可能となる条件をそもそも満たしているかどうかを検討する。   連載終了に当たって 昨今、中小企業においてもM&Aや事業承継を検討する場面が非常に多い。 それらにかかる税務は難解な印象があり、どの点から検討したらよいか分からないという方々も少なくないかもしれない。 しかし、本連載において7回にわたって解説してきたように、M&Aや事業承継において採用される取引形態は、株式譲渡、会社分割、合併、株式交換・移転、事業譲渡等のいずれとなる予定であるか、その取引形態は組織再編税制の対象となるかをまずは検討し、それを踏まえて税務デューデリジェンスを実施するか否か、実施する場合はどの範囲まで調査対象とするかを決定する、というプロセスを踏めば、筋道だった効率的な手続を行うことが可能となる。 その結果、やみくもに実施したのでは分からなかった税務リスクを把握することができ、不測の納税を避けることにも繋がるはずである。 本連載が、読者の方々のM&Aや事業承継手続の一助となれば幸いに思う。 (連載了)
#30(掲載号)
#並木 安生
2013/08/01
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

交際費課税Q&A~ポイントを再確認~ 【第6回】「交際費と広告宣伝費を区別する」

交際費課税Q&A ~ポイントを再確認~ 【第6回】 「交際費と広告宣伝費を区別する」   公認会計士・税理士 新名 貴則   交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう(措法61の4③)。 ここで、カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用は、広告宣伝費に該当し交際費等には含まれないとされている(措法61の4③三、措令37の5②一)。 また、ここでいう「これらに類する物品」とは、次の要件をすべて満たすもののことである(措通61の4(1)-20)。 仮に少額の物品であったとしても、不特定多数の者に配るのではなく、得意先等の特定の者に渡すことを目的としている場合は、やはり交際費等に該当する。 また、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図する費用は、広告宣伝費の性質を有するものとされる。したがって、次のような費用は広告宣伝費に該当し、交際費等に含まれないものとする(措通61の4(1)-9)。 ただし、次のような場合は、一般消費者を対象としていることには当たらないとされるので、注意が必要である(措通61の4(1)-9注書)。 このような場合は、対象となる者が業者にとって継続的な取引の相手となり、一般消費者とはいえないからである。 (了)
#30(掲載号)
#新名 貴則
2013/08/01
国税通則 税務 税務・会計 解説 解説一覧

小説 『法人課税第三部門にて。』 【第13話】「優良法人の税務調査(その5(署長との面談)/完)」

小説 『法人課税第三部門にて。』 【第13話】  「優良法人の税務調査(その5(署長との面談)/完)」  公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「先生、税務署から連絡がきました」 齋藤課長から、吉田税理士事務所に電話が入った。 税務調査が開始されてから、2ヶ月が過ぎていた。 「それで、来週の木曜日の11時に税務署に来てくれと・・・」 齋藤課長が吉田税理士に伝える。 「会長も行かれるのですか?」 吉田税理士が確認する。 「もちろんです。会長と先生と私の3人で行く予定ですが・・・先生はその日、ご都合はよろしいですか?」 齋藤課長の質問に、吉田税理士は、予定表のボードを見た。 「ええ、特に予定が入っていませんから、私も同伴させていただきます。しかし、来週ということは、もう6月ですね」 吉田税理士は、予定表のボードの日付を見ながら言う。 「7月初旬に税務署の人事異動があるから・・・税務署内も忙しいのでは・・・」 吉田税理士が受話器を持ちながら、つぶやく。 「そうでしたね・・・7月は、国税局の人事異動の月ですね」 齋藤課長も思い出したように、吉田税理士の言葉を繰り返した。 待ち合わせ場所と時間の確認を終え、吉田税理士は電話を切ってから、独り言を言う。 「たしか今年は・・・7月10日が、人事異動の発令日か・・・」 税務署の玄関で、会長と齋藤課長が立っている。 午前10時45分である。 強い日差しが、会長と齋藤課長の足元に照っている。幸い、膝から上の部分は、ひさしの陰のおかげで日は当たらない。 しばらくして、吉田税理士が額に汗を浮かべながら、小走りでやってきた。 「お待たせして、すみません・・・」 吉田税理士は、腕時計を見る。 11時3分前である。 「それでは、そろそろ行きましょうか」 ネクタイをしている会長が吉田税理士に告げる。 齋藤課長は、ネクタイの喉元をしきりに触っている。 「会長、ネクタイを外してもよろしいですかね」 齋藤課長は、会長の紺色のネクタイを見ながら、尋ねた。 「そりゃ、かまわないだろう、今、税務署もクールビズだから、職員は誰もネクタイをしていないだろう」 「そうですか・・・先生も外されたらどうですか?」 齋藤課長は、自分だけネクタイを外すことに気が引けたのか、吉田税理士に対して、ネクタイを外すよう促す。 「会長も、こんなに暑いですから、外されたらどうですか」 吉田税理士が会長に言葉をかける。 「いや、私は、ネクタイをしていたほうが、逆に気が引き締まるから、このままで良いです。先生や齋藤課長は遠慮なく外してください」 税務署の前で、齋藤課長と吉田税理士はネクタイを外して、建物の2階にある法人税課税部門へ向かった。 2階に上がると、窓を背にしている渕崎統括官の姿が見えた。その前に置かれている机では、田村上席がパソコンに向かっている。 吉田税理士が渕崎統括官の机の近くまで行くと、統括官は顔を上げた。 「ああ、どうも、暑いところ、ご苦労様です」 渕崎統括官の額にも汗が見られる。 税務署内は節電のため、冷房の温度を低く設定していない。 「今、総務課長に連絡してきますから、そこでお待ち下さい」 3人は、渕崎統括官の座席から少し離れたところにある、パーティションに囲まれた応接セットに案内された。 「暑いですね・・・」 齋藤課長が吉田税理士向かってつぶやいた。 「節電だから仕方ないですね」 その時、若い男性職員が、冷たいお茶を運んできた。同時に、田村上席が、ニコニコしながら顔を見せる。 「暑いですねえ・・・もうすぐ統括官が皆さんを署長室にお連れしますから、少々お待ち下さい」 「田村さんは、来月の人事異動で、転勤されますか?」 吉田税理士が声をかけた。 「いえいえ、僕はまだ、この署に来て2年ですから・・・たぶん異動はないと思いますよ。もっともこればかりは、蓋を開けてみなければ、分かりませんけど・・・」 含み笑いをしている田村上席の後ろから、渕崎統括官が声をかける。 「お待たせしました。それでは署長室にご案内します」 渕崎統括官の後に、3人が続く。 署長室には、白髪の長身である署長と五十路過ぎぐらいの女性の副署長がいた。 テーブルを囲んで、10人ぐらい座れる大きな応接セットである。 署長の向かい側に、3人は並んで座った。 「今日は、わざわざ来ていただいて、ありがとうございます。統括官からは、調査の報告を聞いています。特に、問題はないということで・・・」 白髪の署長は、座りながら、頭を少し下げる。署長の顔は、ゴルフの日焼けか、浅黒い。 特一ポストの税務署長なので、今回の人事異動で、退職することになっている。 署長との面会は、5分ぐらいの雑談で終わった。 税務署の玄関まで来たとき、齋藤課長は、吉田税理士に言った。 「あっけなく終わりましたね・・・」 税務署から、会社に「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」(いわゆる、申告是認通知書)が送られてきたのは、6月末日であった。 (つづく)
#30(掲載号)
#八ッ尾 順一
2013/08/01
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〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載30〕 防水工事費用の損金算入時期

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載30〕 防水工事費用の損金算入時期   日本税制研究所研究員 朝長 明日香   【解説】 本件に関しては、①防水工事費用が修繕費と資本的支出のいずれかという問題と、②いずれの時期に損金の額に算入することができるのかという問題がある。   1 防水工事費用は修繕費と資本的支出のいずれとなるか まず、修繕費と資本的支出の判断基準を確認しておくこととする。 修繕費に関しては、法人税基本通達において、次のように述べられている。 また、資本的支出に関しては、同じく、法人税基本通達において、次のように述べられている。 本件の防水工事費用が修繕費と資本的支出のいずれとなるかということは、上記の基準によって判断することとなる。 ご質問文によると、本件の防水工事は、「屋根に亀裂が生じ、雨漏りのおそれがあった」ために行われたということであり、上記において引用した法人税基本通達7-8-2の「原状を回復する」ために行われた修繕となる可能性が高いと思われる。 しかし、例えば、防水工事が屋根全体を覆う屋根カバー工法(既存の屋根を撤去せずに上に新しい屋根材を被せる工法)によるものなどの場合には、その防水工事によって固定資産が「耐久性を増す」(上記の法人税基本通達7-8-1)ことになるため、その防水工事費用の全額が資本的支出となる。 本件の防水工事は、このように全額が資本的支出に該当するものではないと推測されるものの、防水工事の詳細が分からないため、正確な判断は、困難である。 このため、本件の防水工事費用は、基本的には修繕費となるが、資本的支出となる部分も存在する、という前提に立って、解説を進めることとする。   2 防水工事費用の損金算入時期はいつか (1) 修繕費の損金算入時期 法人税法22条3項2号(販売費・一般管理費等の損金算入)においては、周知のとおり、償却費以外の販売費・一般管理費その他の費用の額について、債務の確定した事業年度の損金の額に算入することとされている。 このため、修繕費である本件の防水工事費用は、この「債務の確定」を判断基準として損金の額に算入できる時期を判断することとなる。 この「債務の確定」とは、法人税基本通達2-2-12(債務の確定の判定)において、次の要件のすべてに該当することとされている。 上記①の「債務の成立」の要件は、一定の給付を受けることが契約で定められているのか否かということを問うものであり、本件においては、この要件は満たされている。 上記②の「給付原因事実の発生」の要件は、本件に即して言えば、修繕という役務のすべてが完了しているのか否かということを問うものである。 本件は、資産の引渡しを伴わない取引であるが、仮に、一旦、資産を修理業者に引き渡して、工事の完了後に修理業者から引渡しを受けるということがあったとしても、「修繕」という役務の提供を受ける取引である限り、「引渡し」によって「給付原因事実の発生」とすることにはならない、と考えられる。 「修繕」の取引が資産の引渡しを伴うものである場合には、一般的には、引渡しが「修繕」の完了を確認するものとなると考えられるが、引渡しが行われていたとしても、「修繕」が完了していなければ、「給付原因事実の発生」があったということにはならない。 本件においては、仕上げの塗装が終了しない限り、修繕が完了したということにはならないことから、塗装工事が終了する4月10日が修繕の完了日ということになる。 すなわち、本件の防水工事は、3月31日現在では、上記②の要件を満たしていない、ということになる。 このため、修繕費である本件の防水工事費用は、その全額を当期の損金の額に算入することはできず、翌期の損金の額に算入することとなる。 なお、上記③の「金額の合理的な算定」の要件は、本件においては、契約において1,000万円とされており、この要件は満たされている。 (2) 資本的支出に該当する部分の減価償却費の損金算入時期 本件の防水工事費用のうち、資本的支出に該当する部分がある場合には、その該当する部分の金額は、その金額を取得価額として種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとし、又は、既存の減価償却資産につき旧償却方法を適用している場合にはその取得価額に加算して減価償却を行うこととなる。 減価償却費に関しては、修繕費のように「債務の確定」ということによって損金算入時期を判断することとはされておらず、減価償却資産を事業の用に供したか否かによって損金算入時期を判断するこことなる。 本件においては、3月に店舗を事業の用に供しているため、防水工事費用のうち、資本的支出に該当する部分に係る減価償却費を当期の損金の額に算入することができることとなる。 ただし、防水工事費用のうち、4月に終了する塗装工事に係る部分が資本的支出に該当するという場合には、その資本的支出に該当する部分は、4月の資本的支出として取り扱うこととなる。 (了)
#30(掲載号)
#朝長 明日香
2013/08/01
会計 研究開発費 税務・会計 解説 解説一覧 財務会計

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第14回】ソフトウェア会計①「市場販売目的のソフトウェアの会計処理」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第14回】 ソフトウェア会計① 「市場販売目的のソフトウェアの会計処理」   仰星監査法人 公認会計士 大川 泰広   〈事例による解説〉 プロジェクトの進行過程と発生コストは以下のとおりです。 〈会計処理〉 ① ×1年4月1日から×1年12月31日までの開発コスト  (*1) 諸口には材料費、労務費、経費等が該当します。 ② ×1年12月31日~×2年3月31日までの制作・改良コスト 〈会計処理の解説〉 本事例のような不特定多数の顧客向けに開発・販売されるソフトウェアは、会計上、市場販売目的のソフトウェアに分類されます。市場販売目的のソフトウェアの開発は、通常、市場ニーズの分析やソフトウェアの企画・設計等、その制作過程において、研究開発活動が先行して行われます。 研究開発活動は、将来の収益獲得のために、新たな技術やサービスを調査・探究する活動ではあるものの、そのすべてが実を結び、将来の収益を獲得できるわけではなく、成果を得られずに終了してしまうものもあります。 したがって、研究開発活動に係るコストは、発生時あるいは研究開発の進行過程において、将来の収益を獲得できるか否かが不明なため、資産として計上することは認められず、発生時に費用として処理しなければなりません。 市場販売目的のソフトウェアの制作過程で実施される研究開発は、会計上、製品マスターの完成をもって終了すると考えます。したがって、製品マスター完成までに発生した費用は研究開発費として費用処理します。 なお、製品マスターの完成時点は、販売の意思が明らかにされた製品マスター、すなわち「最初に製品化された製品マスター」が完成した時点とされており、具体的には次の2点を勘案して判断します。 これらの要件を満たした製品マスターは、ソフトウェアの操作性や処理速度など、一部改良等は要するものの、製品化する上での重要な問題はクリアしており、ソフトウェア開発における研究開発のステージは完了したと考えます。 最初に製品化された製品マスターの完成により、当該ソフトウェアは、将来の収益獲得が合理的に期待できるようになります。したがって、それ以降販売開始までに発生する改良等のコストは、原則として資産計上することとなります。 ただし、製品マスター完成後の制作コストであっても、資産計上が認められない場合があります。次回はこの点について解説します。 (了)
#30(掲載号)
#大川 泰広
2013/08/01

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