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Profession Journal No.51 公開のお知らせ
2014年1月9日(木)AM10:30、Profession Journal No.51 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。
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monthly TAX views -No.12-「インボイスなき軽減税率は可能か」
monthly TAX views -No.12- 「インボイスなき軽減税率は可能か」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 1 ねじれている議論 与党税制改正大綱の決定寸前まで、自民党と公明党との間で、軽減税率の問題が議論された。 軽減税率反対論には、財源の問題や線引きの難しさといった課題があげられるが、最大の理由は、「(軽減税率に必要な)インボイスが導入されると事務が面倒」という点に集中していた(「軽減税率についての議論の中間報告」(平成25年11月12日、与党税制協議会)。 つまり、軽減税率というより「インボイスの導入」に反対なのだ。 そこで公明党側は、インボイスを導入しなくても軽減税率は可能と議論を展開し、現行の帳簿保存方式のもとでの軽減税率を主張した。 結果、「必要な財源を確保しつつ、関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入する」(平成26年度税制改正大綱)こととされ、結論は先送りされた。 2 インボイスの機能 このような議論の展開は、「そもそもインボイスとは何か」という本質論から考えると、非常に不可解な議論・論理といえる。 そこで、あらためてインボイスについて整理してみたい。 そもそも消費税(欧州の付加価値税)は、転々流通する取引のそれぞれの段階で、売り手(納入側)が買い手(仕入側)に、その取引価格に消費税額を上乗せし、買い手はその消費税額を(仕入税額)控除する、という仕組みをとっている。 これにより、「事業者は、納税義務者ではあるが税の負担者ではない」という消費税の間接税の仕組みが完結することになる。 その際重要なことは、納入側(売り手)と仕入側(買い手)の税額の認識を一致させることである。 このことを納税される国家の側から見ると、売り手から納税される消費税額と買い手側から控除される消費税額が一致していることを確認するということになる。 このようにして、事業者自らは消費税額の負担をせず、最終消費者まで負担を先送りしていく。 そしてこの一連の過程を、手間をかけずに可能にするツールがインボイスである。 つまりインボイスは、事業者間取引において、正確かつ簡便に税額計算のやり取りを行う、結果として国家へ正確に納税されるために考え出されたものである。 こういう認識に立つと、冒頭の「インボイスが導入されると事務負担が増加する」という認識は、どこか違和感がある。 このような認識がまかり通るのは、わが国の現行消費税制度が、「請求書等保存方式」という世界に類を見ない簡便法を採用しており、「売上から仕入を差し引いた差額に105分の5を乗じて」計算して消費税額を納付していることによる。 これが、インボイスの導入により、本来の消費税(付加価値税)の姿に戻るということである。 3 軽減税率とインボイス 軽減税率を導入した場合には、商品やサービスごとに税率が異なる場合が生じる。 その際、インボイスを発給することにより、仮に適用税率の判断に誤りがあったとしても、支払税額と仕入税額控除の額が一枚のインボイスによってつながっている(一致している)ので、相手側に請求した税額だけが仕入税額控除されることになり、国家税収には影響を与えないことになる。 国家(税収を受け取る側)にとってみれば、納税される金額(売り手が買い手に求める税額)と控除される金額(買い手が控除を受ける全額)が同じであることを確認することが重要で、それがインボイスを通じて可能になるのである。 つまり、軽減税率の適用税率にたとえ誤りがあったとしても、インボイスを通じて納税額と控除税額が等しくなるので、誤りは治癒されることになる。インボイスがクロスチェックの機能を持つといわれる所以である。 いずれにしても、軽減税率の導入の是非を今後1年かけて議論することになる。 軽減税率の導入は、事業者・消費者・納税者の3者にとって多大なコストがかかる。筆者は、できるだけ先送りにすべきという考えである。 しかし、これが政治的決断で導入となった際には、「インボイスがなければ納税事務はもっと大変になり、正確な納税を期待することはできなくなる」ということだけは、しっかり認識しておきたい。 (了)
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平成26年度税制改正における前年度への遡及適用(経過措置)について
平成26年度税制改正における 前年度への遡及適用(経過措置)について 公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎 1 はじめに 平成25年12月12日、与党(自由民主党及び公明党)より「平成26年度税制改正大綱」が公表され、同24日に閣議決定された。これに先立ち、平成25年10月1日には「民間投資活性化等のための税制改正大綱」(以下「秋の大綱」という)が公表されており、これも合わせて平成26年度税制改正大綱として取り扱われる。 秋の大綱に盛り込まれている改正項目については、本誌においてもそれぞれ詳細な解説が行われており、具体的な内容についてはそれらを参照していただきたいが、一部の項目については、経過措置として適用が前年度(すなわち平成25年度)に遡及するものがあるので留意が必要である。 すなわち、改正項目のうち「産業競争力強化法の施行の日」から適用されるものについては、結果的に平成26年度を待たずして適用されるものがあるということである。 なお、「産業競争力強化法」は平成25年12月2日に成立し、現在はその施行令(案)についてe-GOVにて「パブリックコメントの募集」が行われているところである。 この施行令(案)によれば、平成26年1月中旬ないし下旬からの施行が予定されている(こちらを参照)。 そこで以下では、前年度に遡及適用される制度の取扱いについて取りまとめておきたい。 2 秋の大綱に盛り込まれた改正項目 秋の大綱は、企業等の投資行動を加速化させる等の観点から、日本再興戦略(平成26年6月14日閣議決定)に盛り込まれている民間投資を活性化させるための税制措置等について、通常の年度改正から切り離して前倒しで決定されたものである。 この中で決定された改正項目は、以下の通りである(詳細は論末の【参考記事】を参照されたい)。 3 遡及適用の概要 (1) 生産性向上設備投資促進税制 平成26年4月1日前に終了する事業年度において、産業競争力強化法施行日から平成26年3月31日までの間に、対象資産の取得等をした場合には、平成26年4月1日を含む事業年度において、特別償却相当額又は税額控除相当額の償却又は控除ができる。 すなわち、事業年度が平成26年3月31日以前に終了する法人であっても、適用期間中に対象資産の取得等をした場合には、その事業年度では特別償却又は税額控除の適用を受けることはできないが、翌事業年度(平成26年4月1日を含む事業年度)において特別償却又は税額控除の適用を受けることができるということである。 (2) 中小企業投資促進税制(中小企業者が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度) 平成26年4月1日前に終了する事業年度において、産業競争力強化法施行日から平成26年3月31日までの間に、特定機械装置等のうち生産性向上設備等に該当するものの取得等をした場合には、平成26年4月1日を含む事業年度において、特別償却相当額又は税額控除相当額の償却又は控除ができる。 内容的には生産性向上設備投資促進税制の取扱いと類似しており、特別償却に関してはいずれの税制の適用を受けても取得価額相当額までの特別償却が可能であるが、税額控除を適用する場合には、税額控除限度超過額の1年間の繰越しが認められる分、当税制のほうが有利であると考えられる。 (3) 事業再編促進税制 平成26年4月1日前に終了する事業年度において、産業競争力強化法施行日から平成26年3月31日までの間に、特定株式等の取得をした場合には、平成26年4月1日を含む事業年度において、その準備金積立相当額の損金算入ができる。 (4) 所得拡大促進税制 改正後の制度は平成26年4月1日以後に終了する適用年度について適用されるが、平成25年4月1日以後に開始し、平成26年4月1日前に終了する事業年度で改正前の所得拡大促進税制の適用を受けていない事業年度(経過事業年度)において、改正後の要件のすべてを満たすときは、その経過事業年度について改正後の規定を適用して算出される税額控除相当額を、改正後税制の適用年度において、その税額控除額に上乗せして法人税額から控除できることとされた。 例えば、平成26年3月期決算法人が【改正前の】所得拡大促進税制の適用要件を満たしておらず、当税制の適用を受けていない場合であっても、【改正後の】所得拡大促進税制の適用要件を満たしている場合には、【改正後の】規定により算出された税額控除相当額を翌事業年度(平成27年3月期)にて追加的に控除できるというものである。 (了)
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まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第1回】「前払費用の取扱いについて(その1)」
まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第1回】 「前払費用の取扱いについて(その1)」 アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 (監修) 税理士 小嶋 敏夫(執筆) いよいよ平成26年4月1日より、消費税率が8%に引き上げられるが、税率引上げに伴う実務上の問題点については国税庁ホームページやその他の情報でも未だフォローしきれていない問題も残されているため、本連載では税率引上げ後の誤りやすい点又はあらためて注意喚起したい点について、Q&A形式で確認していくこととする。 第1回及び第2回は、消費税率引上げと短期前払費用の特例の適用関係について、以下の具体的な事例を交えて解説することとする。 消費税の計算上、前払費用については、その役務の提供を受けていないことから、原則としてその支出した課税期間において仕入税額控除を行うことはできないが、一定の要件を満たした短期前払費用につき所得税法又は法人税法の規定により必要経費又は損金としている場合には、その支出した課税期間において仕入税額控除を行うことを認めている。 この短期前払費用の特例を適用している場合において、当該前払費用の支出をした日が施行日前でその対象期間が施行日以後にかかる場合に、どのように取り扱うかが問題となる。 【解 説】 それぞれのケースにおける処理方法は、以下のとおりである。 ◆ケース①(消費税においても短期前払費用の特例の適用を受ける場合) 《平成26年3月期》 支払対価12,870,000円のうち5%分を仮払消費税として処理する。 (*1) 12,870,000 × (100/105) 《平成27年3月期》 仕訳なし 新税率(8%)は平成26年4月1日以後に行う課税仕入れについて適用されるため、平成26年3月31日までに新税率を適用した税込対価を支払った場合において、当該対価につき短期前払費用の特例の適用を受けるときは、支払対価の5%相当額である612,857円が平成26年3月期における仕入税額控除の対象となる。 ◆ケース②(新税率対応分について仮払処理する方法) 《平成26年3月期》 法人税については1年分の家賃全額につき短期前払費用の特例を適用する。一方消費税については平成26年1月から3月までの3ヶ月分につき、平成26年3月期において仕入税額控除をする。なお、新税率適用分である4月から12月分に係る消費税については仮払金として処理し、翌期に仕入税額控除を行う。 《平成27年3月期》 前期において仮払金処理した消費税額については、平成27年3月期において仕入税額控除を行う。 ◆ケース③(新税率対応分について、翌期に仕入れに係る対価の返還等を受けたものとして処理する方法) 《平成26年3月期》 ケース①と同様に、課税仕入12,870,000円のうち5%分612,857円を仮払消費税として処理し、平成26年3月期の仕入税額控除の対象とする。 《平成27年3月期》 (*2) 9,720,000 × (100/108) (*3) 9,720,000 × (100/105) 前期において旧税率5%で仕入税額控除の適用を受けた平成26年4月から12月分の税込賃料9,720,000円について、当期において仕入れに係る対価の返還等を受けたものとして処理し、当該賃料について改めて新税率8%で仕入税額控除の適用を受ける。 * * * ケース①及びケース③のように、施行日前に支払った新税率対応分について、施行日前の課税期間である平成26年3月期において仕入税額控除の適用を受けるときは、当該課税期間が施行日前の課税期間であるため、新税率での仕入税額控除は行えないことに留意されたい。 (了)
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提出前に確認したい「国外財産調書制度」のポイントQ&A 【第1回】「調書の提出対象者」
提出前に確認したい 「国外財産調書制度」のポイントQ&A 【第1回】 「調書の提出対象者」 公認会計士・税理士 前原 啓二 Q 国外財産調書の提出の対象者とは、どのような者ですか。所得税法上の『居住者』と同じですか。また、所得税の課税所得の範囲がどのような者ですか。 A (1) 国外財産調書の提出の対象者 国外財産調書の提出の対象者は、次の①②いずれも満たす者である(調書法5①)。 ただし、上記①②のいずれも満たす者であっても、その年の翌年3月15日までの間に当該国外財産調書を提出しないで死亡し、又は出国をしたときは、提出する必要はない(調書法5①但書)。 ここでの「出国」とは、居住者については、納税管理人(通法117②)の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう(所法2①四十二)。 (2) 所得税法上の個人の区分における『居住者』 所得税法では、個人を居住者と非居住者に区分し、さらに居住者を非永住者と非永住者以外の居住者(ここでは「永住者」とする)に細分して、次のようにそれぞれを定義している。 (3) 国外財産調書提出対象の「居住者」とは 国外財産調書提出対象の「居住者」とは、所得税法第2条第1項第3号に規定する『居住者』(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人。以下「所得税法上の『居住者』」とする)をいい、同項第4号に規定する非永住者(所得税法上の『居住者』のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人)を除く(調書法5①)。 所得税法上の『居住者』にはその非永住者を含むが、国外財産調書提出対象の「居住者」は、非永住者を含まない。国外財産調書提出対象の「居住者」は、所得税法上の永住者(非永住者以外の個人)に該当する。 なお、国外財産調書提出対象の「居住者」であるかどうかの判定は、その年の12月31日の現況によることとされている(調書通5-1)。 (4) 国外財産調書の提出の対象者に対する所得税の課税所得の範囲 所得税法の個人の区分に応じて、所得税の課税所得の範囲が、次のように異なる。 国外財産調書提出対象の「居住者」は、所得税法上の永住者に該当するので、国内源泉所得と国外源泉所得すべてに対して、日本の所得税が課される。 (了)
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平成25年分 確定申告実務の留意点 【第1回】「平成25年分の申告から適用される改正事項①」
平成25年分 確定申告実務の留意点 【第1回】 「平成25年分の申告から適用される改正事項①」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 平成25年分の確定申告の受付は、平成26年2月17日(月)から3月17日(月)まで行われる。還付申告については、2月16日以前であっても行うことができる。 これから4回にわたり、平成25年分の確定申告における実務上の留意点を解説する。第1回目は、今回の確定申告から適用される改正事項の中から、給与所得に関係するものを取り上げる。 なお、給与所得者の確定申告に関する基本的事項については、拙稿「平成24年分 確定申告実務の留意点【第1回】『確定申告の種類と給与所得者の申告』」をご参照いただきたい。 (1) 給与所得控除の上限設定 給与等の収入金額が1,500万円を超える場合の給与所得控除額は、一律245万円となった(所法28③)。 改正内容の詳細については、拙稿「〈平成25年分〉おさえておきたい年末調整のポイント【第1回】『給与所得控除の上限設定』」をご覧いただきたい。 改正前は、給与等の収入金額が増加すると比例的に給与所得控除額も増加する仕組みとなっていたが、今回の改正により給与等の収入金額が1,500万円を超える場合には、給与所得控除額が245万円で固定される。 したがって、給与等の収入金額が1,500万円を超える者については、下記の通り給与等の収入金額が増加するにつれ、改正前に比べ所得税額が増加することとなる。 *所得控除額の合計額を340万円と仮定し試算している。復興特別所得税は考慮していない。 (2) 特定支出控除の見直し 給与所得者の特定支出控除について、適用の判定基準及び適用対象となる支出の範囲に見直しが行われた。 ① 制度の概要 給与所得者が一定の支出(以下「特定支出」という)をし、1年間の特定支出の合計額が一定金額(以下「判定基準額」という)を超える場合には、その超える部分の金額を給与所得控除後の給与等の金額から差し引くことができる(所法57の2①)。 つまり、特定支出控除を適用した場合の給与所得の金額は、次のように計算される。 特定支出控除の適用を受けるためには、確定申告をする必要がある。申告書には、「給与所得者の特定支出に関する明細書(平成25年分以降用)」及び給与等の支払者の証明書を添付し、特定支出について支出の事実及び金額を証明する書類(領収証等)を添付又は提示しなければならない(所法57の2③、④、所令167の5、所規36の5)。 ② 改正点:その1(判定基準額の引下げ) 改正前は、特定支出の合計額が給与所得控除額を上回った場合に限り、その超過額を追加で控除することができた。 改正後は、特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1相当額(給与等の収入金額が1,500万円を超える場合は125万円)を上回れば、その超過分を追加で控除できることとなり、改正前に比べ制度を利用できる機会が拡大した。 〈改正前と改正後の判定基準額の比較〉 例えば、給与等の収入金額500万円、特定支出の合計額100万円の場合、改正前と改正後の給与所得を比べると次の通りとなる。 ③ 改正点:その2(特定支出の範囲の拡大) 特定支出の範囲は、次の6つに限定されている(所法57の2②)。 このうち、平成25年分の申告から、(エ)資格取得費の範囲が拡大され、(カ)勤務必要経費が新たに追加された。 【資格取得費の範囲の拡大】 平成25年分以後は、資格取得費の範囲に、人の資格を取得するための支出(弁護士、公認会計士、税理士等の資格を取得するために専門学校に通った場合の支出等)が含まれることとなった(所法57の2②四)。 【勤務必要経費の新規追加】 平成25年分以後は、職務と関連のある書籍や新聞、雑誌等の購入費(図書費)、制服や事務服、作業服の購入費(衣服費)、交際費や接待費(交際費等)が新たに特定支出として扱われることとなった(所法57の2②六、所令167の3⑤⑥)。 ただし、勤務必要経費については65万円が限度となる。 なお、特定支出については、次の点にも注意が必要である。 * * * 次回は、給与所得以外の所得に関係する改正事項を取り上げる予定である。 (了)
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居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第13問】「譲渡前に新たな居住用財産を取得している場合」-居住用財産の範囲-
居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第13問】 「譲渡前に新たな居住用財産を取得している場合」 -居住用財産の範囲- 税理士 大久保 昭佳 Q Xは、12年ほど前から住んでいた家屋Aを買い換えるため不動産仲介業者に売却と購入を依頼していたところ、家屋Aの買い手が見つかる前に希望どおりの物件が見つかったのでその家屋Bを購入し、昨年の11月に家屋Aから家屋Bに転居しました。 転居後、家屋Aは空家となっていましたが、本年3月になって買い手が見つかり、家屋Aを売却しました。 この場合、「3,000万円特別控除(措法35)」の特例を受けることができるでしょうか? A 家屋Aは、その居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されているので、「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができる(措法35①)。 〈解説〉 その居住の用に供していた家屋をその居住の用に供されなくなった後に譲渡した場合、その譲渡した家屋がその者の主として居住の用に供していた家屋に該当するかどうかは、売却の時の現況で判定するのではなく、その家屋を居住の用に供されなくなった時の現況により判定する(措通31の3-9(「主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋」の判定時期)(2))。 (了)
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税務判例を読むための税法の学び方【26】 〔第5章〕法令用語(その12)
税務判例を読むための税法の学び方【26】 〔第5章〕法令用語 (その12) 税理士 長島 弘 9 量や金額を示す表現 ① 「以上」と「超」及び「以下」と「未満」 物の量や金額の範囲を示す表現において、「以上」と「超」、そして「以下」と「未満」が使われるが、この「以上」と「超」、そして「以下」と「未満」は明確に使い分けられている。 法令上、基準となる数値を含む場合には「以」の字を含んだ「以上」とか「以下」という表現を用い、基準となる数値を含まない場合には「超える」とか「未満」という表現が用いられる。 所得税法第89条第1項には、以下のようにある。 例えば195万円ちょうどの場合には、税率は100分の5である。そして100分の10の税率を適用されるのは、1,950,001円からということになる。 ② 「達するまで」 なお「未満」という表現ではなく、「満たない」と書かれている場合もあるが、意味は「未満」の場合と同じである。 法令用語の意味として、「満たない」と同様と解されているものに「達するまで」がある。 通常、法令用語として「達するまで」は、「未満」と同様、基準となる数値を含まないとされているが、税法の条文においては、基準となる数値を含んでいるものと解釈せざるを得ないものがある。 以下に「達するまで」の使用例を見てみる。 まず、税法ではないが、児童福祉法で「未満」の意味の使用例を見てみる。 この条文では、18歳未満の中での区分であるから、第3号にある「18歳に達するまで」は当然18歳は含んでいないことになる。 では次に、法人税法第31条第1項を見てみよう。 この条文にある通り、減価償却費の損金算入限度額は 法人税法施行令第48条以下で規定された方法により、そして減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表に基づいて、その表中の償却率等を用いて算定することになる。 そして、この計算の結果算定された損金算入限度額を上限として損金算入することとなるが、その場合、法人税法第31条に「計算した金額に達するまで」とありながら、その計算された算入限度額を含んでいるのであるから、この場合の「達するまで」は、基準となる数値を含んでいることになる。 もし「未満」の意味であるとすれば、1円が損金不算入とされることになってしまう。 もう1つ、国税通則法の例を見てみる。 これは、過誤納金として納付した金額の還付に係る加算金について定めている条文であるから、過誤納金全額を対象とするものである。したがって条文には「その過誤納の金額に達するまで」とあるが「その過誤納の金額」そのものを含んでいる。 このように、税法の条文では、「達するまで」とありながら基準の数値を含んでいる例が多くあるが、以下の相続税法における使用例は、「未満」の意味である。 この条文では前段に「20歳未満の者である場合においては」とあることから、「20歳に達するまでの年数」には当然20歳は含まれない。 このように「達するまで」という用語は、基準となる数値を含む場合と含まない場合があり、いずれの意味で用いているかは、内容から判断せざるを得ない点は、注意しなければならない。 (了)
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設備投資減税を正しく活用して強い企業をつくる~設備投資における管理会計のポイント~ 【第1回】「平成26年度税制改正と設備投資に潜む落とし穴」
設備投資減税を正しく活用して強い企業をつくる ~設備投資における管理会計のポイント~ 【第1回】 「平成26年度税制改正と設備投資に潜む落とし穴」 公認会計士・税理士 若松 弘之 以下は、ある企業の社長と顧問税理士の会話の1コマである。 かなり大げさな感じにしてあるが、筆者が聞き及ぶところ、決算が近づくと、このような状況に似た会話が行われることもあるようだ。 この2人の話には、大きな誤りがあるが、賢明な読者であれば気が付いているであろう。 本連載では、設備投資やその回収における経営管理の留意点を管理会計の基本を交えながら解説していく。 この時期に、設備投資に関する経営管理手法や管理会計の基本的枠組みを再確認しておくべき意味は、平成26年度税制改正による設備投資の拡大増加が予想される点にある。 設備投資の促進自体は経済の底上げに必要なことであるが、その趣旨を十分理解し、落とし穴にはまらないことが大事である。 〈設備投資に関連する平成26年度税制改正の概要〉 「民間投資活性化等のための税制改正大綱」(平成25年10月1日与党発表)において、中小企業・小規模事業者の設備投資を応援する中小企業投資促進税制が延長・拡充されることが予定されている。 また、これに加えて今回の大綱では、企業の設備投資をさらに促進させるべく「生産性向上設備投資促進税制」が新規創設されることとなった。この税制の概要は以下のとおりである。 これは、平成25年12月11日に公布され、早ければ平成26年1月下旬に施行されるとされている「産業競争力強化法」の制定に伴い、青色申告書を提出する法人が、同法施行日から平成29年3月31日までの間に、生産等設備を構成する機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、構築物及びソフトウエアなどの「生産性向上設備等」に該当する一定規模以上の資産を取得して事業の用に供した場合には、その取得価額の50%(建物及び構築物については25%)の特別償却、または、その取得価額の4%(建物及び構築物については2%)の税額控除(当期法人税額の20%を上限)、を選択適用できるものである。 さらに、同法施行日から平成28年3月31日までの間に取得等をしたものについては、普通償却限度額との合計でその取得価額(全額)までの特別償却、またはその取得価額の5%(建物及び構築物については3%)の税額控除のどちらかを選択適用できる。 なお、例えば、3月決算法人が同法施行日から平成26年3月末までに、対象資産を取得した場合においても、翌事業年度において、特別償却相当額の償却、または税額控除相当額の控除ができることになっている(下記図表参照)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます 【留意ポイント】 ■「生産等設備」とは、その法人の事業の用に直接供される減価償却資産で構成されているものをいう。本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、福利厚生施設等は該当しない。 ■「生産性向上設備等」とは、「先端設備」及び「生産ラインやオペレーションの改善に資する」設備として産業競争力強化法に規定するものをいう。 ■本措置の適用対象となる「一定の規模以上のもの」とは、それぞれ次のものをいう。 平成26年4月からの消費増税も相まって、平成26年3月までに、いわゆる「駆け込み設備投資」が行われることも想像に難くない。 しかしながら、この税制はあくまでも、設備の老朽化や陳腐化が生産性の伸び悩みの要因となっている企業に対して、本制度を利用することにより、「生産性の向上につながる」新型の設備や生産ライン改善のための設備投資を促す趣旨であることを十分に理解しておく必要がある。 くれぐれも「節税ありき」で本末転倒になることだけは避けなければならない。 〈その「節税」は「課税の先送り」ではないか?〉 一般的に「節税」とは、納税額が減少することを意味するが、厳密にいうと次の2つのパターンに分けられる。 先の会話にあった「減価償却の前倒し」をはじめとして、世の中の多くの「節税」が、②に該当する。 もちろん、現状十分な資金が手許になく、納税のために銀行借入れをしなければならないようなケースでは、とにかく目前の納税額を減らすことは意味のあることであろう。 しかしながら、長い期間を通して見れば、課税所得や支払うべき税額は基本的に同じになるのである(現在のように、復興特別法人税の廃止により将来の法定実効税率の引き下げが予定されている状況では僅かであるが、永久節税効果はある)。 * * * 次回は、①と②の違いについて正確に理解するため、設例も使って詳細に解説していきたい。 (了)
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財務会計
減損会計を学ぶ 【第6回】「減損の兆候の例示①」~営業活動から生ずる損益等が継続的なマイナス~
減損会計を学ぶ 【第6回】 「減損の兆候の例示①」 ~営業活動から生ずる損益等が継続的なマイナス~ 公認会計士 阿部 光成 「固定資産の減損に係る会計基準」(以下「減損会計基準」という)及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(以下「減損適用指針」という)では、減損の兆候を例示している。 今回は、例示されている減損の兆候のうち、資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益等が継続的なマイナスのケースについて解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅰ 減損の兆候の例示 減損会計基準及び減損適用指針では、減損の兆候として、資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益等が継続的なマイナスのケースを例示している。 以下では、上記の減損の兆候を識別する際の留意点を解説する。 1 営業活動から生ずる損益 「営業活動から生ずる損益」とは、次のような項目であるので、おおむね損益計算書の営業損益に相当するものと解される(減損適用指針12項(1))。 実務上、「営業活動から生ずる損益」の把握は、基本的に企業が行う管理会計上の損益区分に基づいて行われると規定されている(減損適用指針12項、78項)。 このため、管理会計がどのように行われているのかについても、減損会計の適用に際してはポイントになるものと解される。 2 継続してマイナス 「継続してマイナス」とは、おおむね過去2期がマイナスであったことを指すと規定されている(減損適用指針12項(2))。 次のことに注意する。 減損適用指針は、当期以降についての具体的な年数を示していないので、例えば、翌期はマイナスとなる見込みだが、翌々期はプラスになるなど、いくつかのケースが考えられる。このため、減損の兆候について、経理規程に定める場合でも、前々期、前期、当期、翌期、翌々期などについて、それぞれプラス・マイナスの組み合わせを考慮し、複雑な組み合わせとして規定してしまうことが考えられる。 しかしながら、本連載【第5回】で述べたように、減損の兆候の識別は、実務上、幅広く行うようにし、減損会計基準及び減損適用指針の例示に限らず、その趣旨を踏まえて判定することになると解される。 したがって、実務においては、減損会計基準及び減損適用指針の趣旨を斟酌し、画一的な運用にならないように注意する必要がある。例えば、翌期はマイナスの見込みだが、翌々期はプラスとなる見込みとなるような場合でも、他の減損の兆候がある可能性を考慮する必要があるので、画一的に2期にわたるかどうかだけに着目して減損の兆候の識別を行わないように留意する。 3 営業活動から生ずるキャッシュ・フロー 減損の兆候の把握には「営業活動から生ずる損益」によることが適切である(減損適用指針12項(3))。 次のことに注意する。 このため、管理会計がどのように行われているのかについても、減損会計の適用に際してはポイントになるものと解される。 なお、「営業活動から生ずるキャッシュ・フロー」によって、減損の兆候を識別する場合、設備の大規模な増強のための支出は、減損の兆候があるかどうかを判断するための「営業活動から生ずるキャッシュ・フロー」に含める必要はないと考えられると述べられている(減損適用指針80項)。 4 事業の立上げ時 事業の立上げ時など予め合理的な事業計画が策定されており、当該計画にて当初より継続してマイナスとなることが予定されている場合、実際のマイナスの額が当該計画にて予定されていたマイナスの額よりも著しく下方に乖離していないときには、減損の兆候には該当しない(減損適用指針12項(4)、81項)。 固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、減損損失は当初投資の失敗を意味していると解される(本連載【第4回】を参照)。 したがって、事業の立上げ時などあらかじめ合理的な事業計画が策定されている場合に、当初の投資時点から「営業活動から生ずる損益」又は「営業活動から生ずるキャッシュ・フロー」が継続してマイナスとなることが予定されている場合には、当初投資の失敗という考え方にはなじまず、投資後の収益性の低下により減損が生じている可能性を示す事象ではないと解される。 (了)
