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顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第35回】「個別決算業務のKPI(その② 決算承認)」
顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第35回】 「個別決算業務のKPI (その② 決算承認)」 株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦 はじめに 今回は、個別決算業務を構成する複数のKPIから、個別決算業務の効率性を評価するKPIを取り上げる。 個別決算業務に執りかかった経理財務部門の焦眉の急は、個別決算数値の確定である。その担当者は、個別決算数値が確定するまでは、逼迫した時間的制約の下で緊張を強いられながら仕事に当たる。しかし、経理財務部門の責任者が、心底から愁眉を開くことができるのは、個別決算数値が経営層によって正式に承認されたときであろう。経営層による個別決算数値の承認を取らないことには、仕事が経理財務部門の手から離れたとは言えない。 そこで、決算承認に関連する業務プロセスから、個別決算業務の効率性を評価するKPIを取り上げる。 KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 経済産業省スタンダードでは、個別決算業務と同義の単体決算業務において、会社が担う一般的な機能として、「決算準備」、「決算手続」、「役員報告」、「監査対応」の4個の機能を挙げている。 今回解説するKPIは、「役員報告」に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:単体決算業務で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より) さらに、経済産業省スタンダードでは、「役員報告」に関連して、付議資料作成という業務プロセスを次のようにまとめている。 〈経済産業省スタンダード:9.3.1付議資料作成〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より) 付議資料作成は、経理財務部門が、当会計年度の個別決算数値と経営管理のために使われる経営計画数値や過年度の個別決算数値等を併せて、決算報告資料を作成する業務である。この決算報告資料に記載された個別決算数値は、株主総会の承認を受けていない決算案である。 会社法によれば、決算案は、まず取締役会の承認を受けてから、決算案の承認に関する議案が定時株主総会に提出されてその承認を受けなければならない。但し、大会社のように会計監査人と監査役が各監査報告書で適正と認めた場合は、株主総会の承認事項ではなく報告事項とすれば足りる。 このような会社法の要請に限らず、決算案は、経営会議等の経営層による承認を受けることが実務の不文律である。 今回のKPIは、経営層による個別決算数値の承認を速やかに受けることが個別決算業務の効率性を反映していることに着目し、直前決算期末日から起算して、経営層による個別決算数値の承認日までの日数を問うものである。 定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 「個別決算数値」とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表をさす。 「経営層」とは、取締役会、代表取締役や取締役が出席した経営会議体をさす。 「経営層による個別決算数値の承認日」とは、取締役会による計算書類の承認日をさす。さらに、取締役会に先立ち開催される経営会議で実質的に承認されている場合には、その承認日を含む。 KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルでこのKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、個別決算業務を効率的に行い、ひとたび個別決算数値を確定したなら速やかに経営層による承認を受けることが望ましいという価値判断に基づいて設定されている。 では、経営層による個別決算数値の承認を早く受けることにどのような意味があるのか。 経営層による個別決算数値の承認を早く受けるためには、付議資料の作成と個別決算数値の確定を早期に完了する必要があり、いずれも、業務の効率性が雌雄を決する。 日常の経理財務業務と決算手続の両方が効率的な会社は、個別決算数値の確定が早い。 日常の経理財務業務の効率性が高くても決算手続の効率性が低い会社は、個別決算数値の確定が遅れる。この場合、個別決算業務自体の効率性が問われる。 日常の経理財務業務の効率性が低い会社は、決算の段階においてあらゆる残課題を処理しようとするため、決算手続の効率性を上げることは困難であるから、個別決算数値の確定が遅れる。この場合、日常の経理財務業務の非効率が個別決算業務の非効率を生ぜしめているのであるが、日常の経理財務業務の効率性を評価するKPIで個別決算業務の効率性の評価まで尽くされているとは言い難いので、問題の所在を切り分けるためには、別途KPIを設定する必要がある。 いずれも、個別決算業務における個別決算数値の確定、付議資料の作成、経営層による承認までの業務の流れを見た場合、個別決算業務自体の効率性が業務にかかる日数に表れてくることが分かる。つまり、経営層による個別決算数値の承認を早く受けることは、個別決算業務の効率性が高いことを意味すると考えられる。 そこで、スコアリングモデルでは、個別決算業務の効率性を比較するため、直前決算期末日から起算した経営層による個別決算数値の承認日の日数をKPIとした。この数値が小さい会社が大きい会社よりも相対的に望ましいと考えている。 顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、個別決算業務において、経理財務部門が付議資料を提出する業務プロセスが組み込まれていること、個別決算数値の承認を求める会議体を確認していただきたい。 例えば、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表を承認する経営会議議事録や取締役会議事録を閲覧し、その承認日を確認いただきたい。 さて、読者の顧問先において、直前決算期末日から起算して、経営層による個別決算数値の承認日までの日数は何日になったであろうか。 * * * 最終回は、「個別決算業務」を構成する複数のKPIから、期中対応に関連する業務プロセスに着目したKPIを取り上げる。 (了)
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税理士・公認会計士事務所[ホームページ]再点検のポイント 【第15回】「ネットの世界の取組みでホームページへの訪問者を増やす(その3)」~手っ取り早く効果を出すには?
税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第15回】 「ネットの世界の取組みで ホームページへの訪問者を増やす(その3)」 ~手っ取り早く効果を出すには? データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥 ホームページのアクセス数を上げるための対策、SEO(エス・イー・オー)。 前回は「内部SEO」の具体的な方法についてお話しましたが、「外部SEO」についてもお話しておきましょう。 そして、費用をかけて手っ取り早く効果を上げる「リスティング広告」という方法についてご紹介します。 * * * 「内部SEO」は、事務所ホームページ内の記述を工夫するなど、ホームページ自体に手を加える対策でしたが、「外部SEO」は、事務所ホームページとは別の、外部のホームページで行う対策です。 この連載【第13回】で、検索サイトによる検索結果の順位付けは、そのホームページの内容や、被リンク(他のホームページからリンクされていること)の数などで決められているらしいということをお話しました。 この「被リンクの数」を増やしていくというのが、典型的な外部SEOです。 多くのホームページからリンクを張られているホームページ(被リンク数の多いホームページ)は、検索サイトにおいて、多くの人から支持されている社会的に有用なホームページであると判断されているようで、検索順位の上位に表示される傾向があります。 ここで注意しなければいけない点があります。 以前は、被リンク数さえ増やせば検索順位が上がったため、多くのSEO業者がまったく内容のないホームページ(例えば、ほとんど何も書いていないようなホームページ)を大量に作り、それらのホームページから「特定のホームページ」にリンクを張ることで、その「特定のホームページ」の検索順位を上げるという方法をとっていました。 例えば、ほとんど何も書いていないホームページを1,000個作って、そのすべてからあなたの事務所ホームページにリンクを張ります。そうすると、見かけ上、あなたの事務所ホームページは1,000個のホームページからリンクされているホームページということになり、検索サイトから「社会的に有用なページだ」と判断されるというわけです。 しかし、2013年半ばに検索サイト側が対策を施し、このような外部SEOの手法は通用しなくなりました。 リンク元のホームページが、単にリンク数を稼ぐだけのホームページと判断されると、いくらリンクを張ってもリンク先のホームページの検索順位が上がることはなくなりました。それどころか、そのような対策をしたホームページは、逆に検索順位を極端に下げられるというペナルティを受けるようになったのです。 これは、リンクを張られること自体が悪いというわけではなく、意味のないリンクを張って検索サイトを騙そうとすることが悪いという判断だと思われます。 現在でも、きちんとしたホームページから張られたリンクは、検索順位を上げるのに役立つと考えられています。ただ、外部SEOとして手っ取り早く効果を出す対策はとれなくなりました。 そのため現状は、SEOとしては内部SEOが主流となっており、効果が出るまでには、以前よりも長い期間が必要となっています。 * * * SEOの話はここまでとして、次に、自分の事務所ホームページを、お金を払って検索結果の1ページ目に表示させる方法、「リスティング広告」についてお話します。 まずは【第13回】で掲載した検索結果の画面を改めて確認しましょう。 〈Googleで「相続 税理士 東京」を検索したら・・・〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【①】と【③】は広告であるとお話しましたね。 実はこれらが「リスティング広告」と呼ばれるもので、前回ご紹介したGoogle(グーグル)のAdWords(アドワーズ)もリスティング広告の1つです。 リスティング広告とは、予めキーワードを登録することで、そのキーワードの検索が行われた時に、検索結果と共に広告が表示されるというものです。 広告が表示されただけでは広告料金は発生せず、広告がクリックされた時に、「1クリックいくら」という計算で広告料金が発生します。 つまり、広告を通じて自分の事務所ホームページに訪問者が来るタイミングで課金されるという仕組みです。 1クリックの値段は予め決めておくのですが、高く設定するほど順位が高く表示されます。また、上限金額を決めておき、広告料金が上限金額に達したら広告の表示が行われなくなります。 このようにリスティング広告を使えば、お金さえ出せば、検索結果の1ページ目の表示を獲得できます。ただし、上記のとおり外部SEOの効果が出にくくなって以来、リスティング広告の利用者が急増したようで、現在、上位表示をするための広告単価が高騰しています。 人気のあるキーワードだと、上位表示するためには1クリック3,000円程度の設定が必要な場合もあります。 この相場はGoogleのAdWordsで、無料で調べることができます。もしも、月10万円くらいの広告予算がとれるのなら、費用対効果の高いと思われるキーワードを探してリスティング広告を出してみるのもよいかもしれません。 また、どんなキーワードに人気が集まっているのかを調べて、内部SEOに活かすのも良いでしょう(これなら無料です)。 (了)
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《速報解説》 「「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)」の公表~「家なき子」の同居判断について~
《速報解説》 「「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」の 一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)」の公表 ~「家なき子」の同居判断について~ 税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良 平成26年1月15日付で、国税庁から「「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)」が公表された(以下「情報」という)。 平成25年度税制改正で相続税の小規模宅地特例が改正され、それに関連して租税特別措置法通達も改正されているが、情報はその通達改正に関するあらましを示したものである。なお、通達改正のポイントについては下記拙稿をご覧いただきたい。 今回の情報については、租税特別措置法通達に示されているもの以上の追加的な情報は特に見当たらない。 ただし、二世帯住宅の小規模宅地特例について、3つの事例が設例として示されており、特に「家なき子」のケースにおける【事例3】は、通達改正の理解に役立つと考えられる。 そこで本稿では、情報のうち【事例3】について解説を行うこととする。 (事例3 区分所有建物の登記がされていない1棟の建物の敷地を措置法69条の4③二ロの親族が取得した場合) 〈問〉 被相続人甲は、自己の所有する宅地の上に一棟の建物を所有し、甲及び生計を別にする子乙の居住の用に供していた(建物は、区分所有建物である旨の登記がなく、甲単独で所有している。)。 相続人である子乙及び子丙は、当該宅地の2分の1の持分を各々相続により取得し、申告期限まで引き続き所有し、かつ、当該宅地を居住の用に供している。 なお、丙は、相続開始前3年以内に、丙又はその配偶者の所有する家屋に居住したことがない。 甲の所有していた宅地は、特定居住用宅地等に該当するか。 〈答〉 1 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の判定 被相続人甲の居住の用に供されていた一棟の建物の敷地には、甲の居住の用供されていた部分(以下「A部分」という。)と、生計を別にする親族乙の居住の用に供されていた部分(以下「B部分」という。)がある。 当該一棟の建物は、区分所有建物である旨の登記がされていないことから、生計を別にしていた丙の居住の用に供されていた部分についても、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の部分に含まれることとなる(措置法令40条の2④)。 したがって、敷地の全体が、措置法第69条の4第1項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当することとなる。 2 特定居住用宅地等の判定 (1) 乙が相続により取得した部分 乙は、甲の居住の用に供されていた一棟の建物(区分所有建物である旨の登記がされ ていない建物)の措置法令第40条の2第10項第2号に規定する「当該被相続人の親族の居住の用に供されていた部分」に居住していた者であって、相続開始から申告期限まで被相続人等の居住の用に供されていた宅地等を有し、かつ、当該建物に居住していることから、措置法第69条の4第3項第2号イの親族に該当する。 したがって、乙が取得したA部分(100㎡)及びB部分(100㎡)の持分の割合(2分の1)に応ずる部分(100㎡)は、特定居住用宅地等に該当する(措置法69条の4③二イ、措置法令40条の2⑨)。 (2) 丙が相続により取得した部分 措置法第69条の4第3項第2号ロに掲げる親族は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等を取得した者に限るとされている。 丙が取得したA部分(100㎡)の持分の割合(2分の1)に応ずる部分(50㎡)は、被相続人の居住の用に供されていた宅地である。 次に、B部分は、被相続人の生計を別にする親族の居住の用に供されていた宅地であるが、措置法令第40条の2第4項により被相続人等の居住の用に供されていた部分に含まれることから、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するものとして取り扱うことができ、丙は、措置法第69条の4第3項第2号ロに掲げる被相続人の居住の用に供されていた宅地等を取得した者に該当することとなる。 また、被相続人甲の居住の用に供されていた一棟の建物のうち、甲の居住の用に供されていた部分に甲と共に起居していた親族はいない。 以上のことから、丙は、措置法第69条の4第3項第2号ロに規定する他の要件を満たせば、同号ロに規定する親族に該当し、丙が取得したA部分(100㎡)及びB部分(100㎡)の持分の割合(2分の1)に応ずる部分(100㎡)は、特定居住用宅地等に該当することとなる(措置法69条の4③二ロ、措置法令40条の2⑨)。 上記のポイントは、改正前は、同居親族のケース(租税特別措置法69条の4第3項イ)と「家なき子」のケース(租税特別措置法69条の4第3項ロ)、とで同居の定義は一致していたが、改正後では、同居親族のケース(租税特別措置法69条の4第3項イ)と「家なき子」のケース(租税特別措置法69条の4第3項ロ)、とで同居の定義は一致しなくなった、という点にある。 改正前では、同居親族のケース(租税特別措置法69条の4第3項イ)として小規模宅地特例が適用される場合には、「家なき子」(租税特別措置法69条の4第3項ロ)としては小規模宅地特例の適用はされない。 これは、「家なき子」(租税特別措置法69条の4第3項ロ)の適用要件の一つに、「相続開始の直前においてイに規定する家屋に居住していた親族で政令で定める者がいない場合に限る」ということがあるためである(要するに、同居する親族(法定相続人)がいないことが要件とされており、この同居の定義は、同居親族のケースと家なき子のケースで一致していた)。 ただし、改正後においては、同居親族のケース(租税特別措置法69条の4第3項イ)として小規模宅地特例が適用される場合でも、同時に「家なき子」(租税特別措置法69条の4第3項ロ)として、小規模宅地特例が適用される可能性がある。 これは、以下改正による影響である。 結果として、情報の【事例3】のように、二世帯住宅(区分所有家屋でないものに限る)で構造上区分されたものに関し、構造上区分されるそれぞれの部分に、被相続人・相続人が各々居住し、かつ別居している他の相続人(自己及び自己の配偶者の所有する家屋に、相続直前3年間居住したことがない者に限る)がいるケースで、同居していた相続人、別居していた相続人が当該宅地等を相続する場合には、(他の要件を満たしている前提で)いずれの相続人も(前者は同居親族として、後者は家なき子として)小規模宅地特例を適用できる結果となる。 なお、「家なき子」(租税特別措置法69条の4第3項ロ)として小規模宅地特例を適用できるケースは、筆者の経験上、非常に限定的であると感じている。 ただ、平成27年1月1日以降は、相続税の基礎控除が引き下げられ、相続財産が従前よりも少額である場合にも相続税の対象となるケースが増加することが予想され、かつ相続財産である不動産は自宅のみというケースも大幅に増加することが予想される。 このような傾向のなかでは、平成27年1月1日以降に他界するケースにおいては、「家なき子」として小規模宅地特例を適用できるケースが増加する可能性がある。 「家なき子」のケースは限定的であるからといって、正確に理解せずに相続税申告業務を進めると、トラブルになる可能性もあるため、情報の【事例3】を含め、しっかりと理解をしておく必要があると思われる。 (了)
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Profession Journal No.55 公開のお知らせ
2014年2月6日(木)AM10:30、Profession Journal No.55 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。
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monthly TAX views -No.13-「法人税議論は課税ベース見直しの各論段階に」
monthly TAX views -No.13- 「法人税議論は課税ベース見直しの各論段階に」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 安倍総理は、1月22日のダボス会議で講演し、「さらなる法人税改革に着手する」と発言、メディアは「国際公約」とはやし立てている。経団連の榊原次期会長も、総理との会談で法人税率の引下げを要請した。早々に議論が始まりそうだ。 しかし、この問題は簡単には進まない。 法人実効税率引下げの議論については、昨年末の税制改正大綱で以下のような記述になった。 今年一年、この記述に沿って議論が進められるわけだが、問題は、財源確保の観点から、「ヨーロッパ諸国でも行われたように政策減税の大幅な見直しなどによる課税ベースの拡大」と「他税目での増収策による財源確保」という2つの事項が明記されたことだ。 ではこの2つは、具体的にどのようなことを指しているのであろうか。 * * * まず「ヨーロッパ諸国でも行われたように政策減税の大幅な見直し」である。 これを解くカギは、自民党税調で財務省が資料提出した、ドイツと英国の法人税改革が参考になる。 08年のドイツ税制改革は、償却制度の定額法への変更、支払利息の損金算入制限により減税財源を捻出している。08年、10年の英国の法人税率引下げも減価償却制度の見直しである。 そこで、わが国でも、減価償却の見直し(償却率を遅くすること)が問題になるだろう。 もう一つの参考としては、11年民主党菅政権時代の法人税改正が参考になる。 その際の課税ベース拡大策として、減価償却制度の縮小と並んで議論されたのは、欠損金の繰越控除制度の見直しである。具体的には、これまでの100%繰越しを80%に制限するとともに、期間を7年から9年に延長した。 もう一つ参考になるのが、昨年暮れ財務省が自民党税調に提出した「法人税の課税ベース」という資料である(下記)。 これを見ると、欠損金の繰越控除により2.3兆円の法人税収が脱漏していることが分かる。以下、受取配当益金不算入で1兆円、研究開発減税で3,000億円、中小事業特例で1,000億円程度の税収が脱漏していることも記されている。 このあたりが議論になりそうである。 法人税の課税ベース (注) 平成23年度会社標本調査などによる財務省試算。 * * * では次に、「他税目での増収策による財源確保」とは何であろうか。 わが国の法人実効税率を高止まりさせている主因が地方法人課税であることを考えると、法人住民税・均等割の拡大などの地方法人税の課税ベース拡大策が考えられる。外形標準課税の拡大も議論になろう。さらに、固定資産税の特別措置の廃止・縮小、個人住民税の課税最低限の引き上げ なども候補になりうるであろう。 * * * 以上のように、法人税率の引下げに向けて検討すべき論点は明確にされている。 あとは、関係者がそれをどう受け止め、どう解決していくのかという調整の話である。 結局最後は、政権に「課税ベースの拡大」という“苦い薬”を調整していくだけの意欲とキャパシティがあるかどうか、この点が問われることになる。 (了)
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平成26年3月期 決算・申告にあたっての留意点 【第1回】「生産等設備投資促進税制・環境関連投資促進税制の要件確認」
平成26年3月期 決算・申告にあたっての留意点 【第1回】 「生産等設備投資促進税制・環境関連投資促進税制の要件確認」 OAG税理士法人 税理士 中島 加誉子 もうすぐ始まる平成26年3月期決算・申告について、いち早くその留意点を本連載にて解説する。 今回の決算では、平成25年度税制改正の内容を受け、 などが留意点となろう。以下、項目ごとに解説していく。 【国内生産等設備投資促進税制】 平成25年4月1日から平成27年3月31日までに開始した事業年度においては、国内の生産等設備への投資に対し、特別償却または税額控除が適用されることとなる。 〈適用要件〉 〈特別償却限度額、税額控除額〉 【参考図】 (財務省「平成25年度税制改正」より) 【グリーン投資減税(環境関連投資促進税制)】 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却または法人税額の特別控除制度が、平成25年度税制改正により変更されているので留意が必要である。 【参考図】 (経済産業省「平成25年度税制改正について」) (了)
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損益通算廃止に伴うゴルフ会員権売却判断のポイント 【第2回】「損益通算による節税効果と売却判断の留意点」
損益通算廃止に伴う ゴルフ会員権売却判断のポイント 【第2回】 (最終回) 「損益通算による節税効果と売却判断の留意点」 税理士 内山 隆一 平成26年3月31日までにゴルフ会員権を譲渡し、譲渡損が発生した場合の取扱いは次のように整理することができる。 1 損益通算をした場合の効果(節税額) ゴルフ会員権の譲渡損による損益通算の順序は次のとおりである。 なお、ゴルフ会員権の譲渡損は、土地建物等の譲渡による所得や株式等の譲渡による所得とは損益通算できない。 ※1 一時所得については損益通算後に2分の1する。 ※2 経常所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得及び雑所得をいう。 《例1》 ・給与所得:500万円 ・一時所得:なし ・総合長期譲渡所得:△300万円(ゴルフ会員権) [損益通算] 500万円-300万円=200万円(損益通算によって課税所得が300万円減少する) 300万円×税率=節税額 ※所得税・・・超過累進税率、住民税・・・10% 《例2》 ・給与所得:500万円 ・一時所得:200万円 ・総合長期譲渡所得:△300万円(ゴルフ会員権) [損益通算] 200万円-300万円=△100万円 500万円-100万円=400万円(損益通算によって課税所得が200万円減少する(注)) (注) 損益通算がなかった場合・・・500万円+200万円×1/2=600万円 200万円×税率=節税額 ※所得税・・・超過累進税率、住民税・・・10% 上記の計算例から、ゴルフ会員権の譲渡損が発生した場合に一時所得があると、損益通算による節税効果が半減してしまうことがわかる。 これは、もともと2分の1課税の一時所得と通算する場合に、2分の1をする前の金額と通算しなければならないためである。 なお、損益通算しきれない譲渡損を繰り越して控除する場合には、一時所得の金額は2分の1をした後の金額から控除されるため、「控除額×税率」により節税額を算定することができる。 2 値上がりリスクについて 平成26年4月1日以後にゴルフ会員権を譲渡した場合には損益通算ができないが、必ずしも今すぐ焦って売却し、損だしをしなければならないということでもないようである。 最近の動向では、値上がりするゴルフ会員権も出てきており、今後の経済情勢によっては回復の見込みもあるかもしれない。 最もバブル期のような金額にまで回復することは考えにくいであろうから、比較的最近のところで購入したゴルフ会員権に限定して検討すれば足りると思われる。 3 売却判断の流れ(フローチャート) ここまで検討してきた内容をまとめると、以下のようになる。 判断の参考にしていただければ幸いである。 (連載了)
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まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第3回】「リース取引の取扱いについて」
まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第3回】 「リース取引の取扱いについて」 アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 (監修) 税理士 吉田 知至(執筆) 第3回である今回は、消費税率引上げとリース取引の適用関係について、以下の具体的な事例を交えて解説することとする。 消費税の計算上、通常の賃貸借取引について、指定日(平成25年10月1日)の前日までに締結した契約に基づき、施行日(平成26年4月1日)前から施行日以後引き続き貸付けが行われている場合で、下記①及び②、又は、①及び③の要件を満たすときは、経過措置の対象となり、旧税率によることとされる。 また、平成20年4月1日以後に締結された所有権移転外ファイナンス・リース取引は、税法上「売買取引」に該当するため、経過措置の対象とならず、賃貸借処理を行っている場合であっても引渡時の税率が適用される。 なお、平成20年3月31日以前に締結された所有権移転外ファイナンス・リース取引は、税法上、基本的には「賃貸借取引」に該当するため、経過措置の対象となることがある。 したがって、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース取引の開始時期により取扱いが異なるため、注意が必要である。 【解 説】 (ケース①)リース契約が平成20年3月31日以前に締結された場合 平成26年3月及び4月以降の処理は次のようになる。 《平成26年3月》 《平成26年4月以降》 平成20年3月31日以前に締結された所有権移転外ファイナンス・リース取引は「リース期間がリース資産の法定耐用年数に比べ相当の差異があるもの」として一定のものを除き、税法上「賃貸借取引」に該当するため経過措置についての検討を要する。このケースでは経過措置の対象となるため、旧税率により消費税を認識する。 (ケース②)リース契約が平成20年4月1日以後に締結され、平成26年4月1日前に貸付けが行われた場合(賃貸借処理) 平成26年3月及び4月以降の処理は次のようになる。 《平成26年3月》 《平成26年4月以降》 平成20年4月1日以後に締結された所有権移転外ファイナンス・リース取引は「売買取引」に該当し、引渡時の税率が適用されるため、施行日前にリース取引を開始した場合には、旧税率により消費税を認識する。 なお、同じ賃貸借処理であっても、オペレーティング・リース取引を行っている場合とは処理が異なるため注意されたい。 【解 説】 再リース料支払時の処理は次のようになる。 《再リース料の支払時》 施行日以後に締結する再リース契約に基づき支払われる再リース料については、原則として通常の賃貸借取引と同様、新税率(8%)により消費税を認識する。 なお、平成20年3月31日以前に締結されたリース契約について再リース料を支払う場合も同様である。 【解 説】 リース取引開始時及び割安購入選択権行使時の処理は次のようになる。 《リース取引開始時(平成21年10月1日)》 《割安購入選択権の行使時》 割安購入選択権が付されたファイナンス・リース取引は所有権移転ファイナンス・リース取引に該当し、税法上「売買取引」として引渡時に割安購入選択権を含めた金額の資産の譲渡等が行われたこととなる。したがって、割安購入選択権の行使に伴い支払う金額については、支払時には消費税を認識しないため、結果として新税率は適用されない。 なお、同様のケースであっても、割安購入選択権以外の購入選択権を行使した場合、新税率(8%)が適用されることに注意されたい。 【解 説】 資産に係るリース契約の残価保証額の定めに基づき賃貸人が賃借人から収受する金銭は、その収受すべき金額が確定した日の属する課税期間における資産の譲渡等の対価の額に加算するものとされている(消費税法基本通達9-3-6の4)。 したがって、残価保証額の精算金に係る消費税はリース資産の引渡時には資産の譲渡等の対価に含まれず、賃貸人がリース資産を売却して精算金額が確定した時の税率が適用される。 (了)
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租税争訟レポート 【第16回】弁護士の必要経費(上告受理申立て不受理決定)
租税争訟レポート【第16回】 弁護士の必要経費(上告受理申立て不受理決定) 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【事案の概要】 弁護士を開業している納税者(相手方、控訴人、第一審原告)の所得税並びに消費税及び地方消費税の確定申告について、仙台中税務署長は、納税者が仙台弁護士会会長及び日弁連副会長としての職務に関係して支出した費用(主に会務の前後に行われた懇親会、慰労会等の支出)は、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできず、また、消費税法における課税仕入にも該当しないとして、所得税及び消費税等の更正処分を行った。 納税者は、異議申立及び不服審査を経て、東京地裁に提訴。第一審では、国(処分行政庁)の主張をほぼ全面的に支持して、納税者が敗訴したが、控訴審では、納税者側の訴えを認容する判決を下した。 具体的には、弁護士が弁護士会等の役員等としての活動に要した費用であっても、弁護士会等の役員等の業務の遂行上必要な支出であったということができるのであれば、その弁護士の事業所得の一般対応の必要経費に該当するとし、個別の支出内容を検討したうえで、懇親会等の費用は特定の集団の円滑な運営に資するものとして社会一般でも行われている行事であり、費用の額も過大であるとはいえないときは、社会通念上、その役員等の業務の遂行上必要な支出であったとして、必要経費算入を認めたものである。 控訴審判決を受けて、国は、上告受理申立てを行い、平成24年12月21日、上告受理申立て理由書を最高裁判所に提出するが、最高裁判所第2小法廷は、平成26年1月17日、これを受理しないと決定し、控訴審判決が確定したものである。 本稿は、控訴審判決に対する国側の上告受理申立て理由を検討することにより、事業所得における必要経費について、論考を進めることを目的とする。 【争点】 原判決は、第1審が、「所得を生ずべき事業と直接関係し、かつ当該業務の遂行上必要であること」とした部分をことごとく「事業所得を生ずべき業務の遂行上必要であること」と書き改めたうえで、国側の主張を、「事業の業務と直接関係を持つことを求めると解釈する根拠は見当たらず、「直接」という文言の意味も必ずしも明らかではない」として退けている。 これに対し、上告受理申立て理由書は、原判決における所得税法第37条の法令解釈の誤りを指摘している。 【上告受理申立て理由書の概要】 申立人である国が提出した上告受理申立て理由の骨子を要約する(下線は筆者による)。 【最高裁判所による不受理決定】 上記の申立て理由について、最高裁第2小法廷が下した判断は、民事訴訟法第318条(上告受理の申立て)第1項の規定により受理すべきものとは認められないとして、不受理決定を出した。 同条により受理することができる事件とは「原判決に最高裁判所の判例と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件」であることから、控訴審の判決は、最高裁の判例とは反しないものであり、かつ、法令の解釈にも誤りはないことを認めたものである。 【今後の実務に与える影響】 本決定により、控訴審判決が確定し、同判決が事実上の判例として、士業における必要経費のあり方を判断するため根拠となると思料する。 本連載の【第1回】でも述べたように、必要経費について「事業と直接関係する」ことを繰り返し申立人側は求めているが、控訴審判決でも引用されているとおり、サラリーマン税金訴訟として知られている大島訴訟の控訴審判決(大阪高裁昭和54年11月7日)では、必要経費を、「事業を営むため、すなわち収入を終局の目的として直接あるいは間接に支出を余儀なくされたもの」と判示しており、「業務と直接関係」することは要求していない。 控訴審判決は、この点を明確にしたうえで、必要経費該当性について、「社会通念上、その役員等の業務の遂行上必要な支出であった」かどうかを判断基準とし、慰労会会費、役員への立候補費用などを必要経費に該当すると判断する一方、過大な負担をした場合や2次会費用、不可欠とまではいえない費用については個別に否認しており、本決定により、あらためてその妥当性が担保されたといえるのではないだろうか。 課税庁は、上告受理申立て理由書で自らが認めているように、本決定は、「本件の個別事案にとどまらず、弁護士会はもとより、医師会、司法書士会、弁理士会等の他の士業会の会務活動に付随する支出に係る課税実務全般にも多大の影響を与える」ことを十分に理解し、ちょうど確定申告時期でもあることから、早急に個別通達を発遣するなどして、課税実務の適正化に努めるべきであろう。 (了)
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提出前に確認したい「国外財産調書制度」のポイントQ&A 【第5回】「調書の記載漏れ・不提出・偽記載等による影響」
提出前に確認したい 「国外財産調書制度」のポイントQ&A 【第5回】 「調書の記載漏れ・不提出・偽記載等による影響」 公認会計士・税理士 前原 啓二 Q 国外財産調書の記載の有無、不提出・偽記載等による影響を教えてください。 A (1) 過少申告加算税の軽減と加重 国外財産調書に納税者本人の国外財産を網羅的により正確に報告させる誘因となるよう、国外財産に関する所得等の申告漏れが発覚した場合に、所定の過少申告加算税又は無申告加算税の軽減(優遇措置)と加重(加罰措置)を行うこととなった。 この所定の過少申告加算税又は無申告加算税の軽減(優遇措置)と加重(加罰措置)を要約すると、次のとおりである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 過少申告加算税又は無申告加算税の特例(軽減(優遇措置)と加重(加罰措置))は、平成26年1月1日以後に提出すべき国外財産調書に記載する国外財産に係る所得税又は国外財産に対する相続税について適用される(平24改正法附則60)。 (2) 国外財産調書の不提出・偽記載等に対する罰則 国外財産調書の不提出、偽記載等に対しては、次のような罰則が規定されている。 (3) 国外財産調書の提出に関する調査に係る質問調査権 国税庁、国税局又は税務署の職員は、国外財産調書の提出に関する調査について、必要があるときは、国外財産調書を提出する義務のあるものに質問し、その者の国外財産に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又はその物件の提示若しくは提出を求めることができる(調書法7②)。また、提出された物件を留め置くことができる(調書法7③)。 この質問調査権は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならないと明記されている(調書法7⑤)。 国税庁、国税局又は税務署の職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者(調書法9三)や、国税庁、国税局又は税務署の職員からの物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件を提示し、若しくは提出した者(調書法9四)に対しては、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金の規定が設けられた。 (了)
