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税効果会計を学ぶ 【第15回】「その他有価証券の評価差額の取扱い③」
-お知らせ- 適用指針等を織り込んだ最新版の『税効果会計を学ぶ』が好評連載中です。 税効果会計を学ぶ 【第15回】 「その他有価証券の 評価差額の取扱い③」 公認会計士 阿部 光成 今回は、固定資産の減損損失に係る税効果会計の取扱いを解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅰ 固定資産の減損損失 固定資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号)が適用されている。 固定資産の減損損失についても、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第66号。以下「監査委員会報告第66号」という)に従って繰延税金資産の回収可能性を判断することとなる。 「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」(監査委員会報告第70号。以下「監査委員会報告第70号」という)は、その際の留意点を述べている。 Ⅱ 繰延税金資産の回収可能性の判断のポイント 固定資産の減損損失に係る将来減算一時差異に関する繰延税金資産の回収可能性の判断のポイントは、スケジューリングにあると考えられる。 監査委員会報告第70号は、将来減算一時差異の解消時期について、スケジューリング可能な一時差異であるか、スケジューリング不能な一時差異であるかの判定を行わなければならないと規定している(監査委員会報告第70号、Ⅱ2)。 スケジューリング不能な一時差異と判定されたものについては、監査委員会報告第66号の5(1)①会社分類(例示区分)の会社等の場合を除いて、回収可能性はないものと判断することになる。 なお、減損損失に係る将来減算一時差異については、監査委員会報告第66号の5「(2)将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い」にいう建物の減価償却超過額に係る将来減算一時差異と同様な取扱いを適用しない(監査委員会報告第70号、Ⅱ2(1))。 Ⅲ 償却資産 償却資産とは、減価償却計算による費用化を予定している固定資産であり、例えば、建物や機械装置などの有形償却資産、のれん(営業権)や自社利用のソフトウェアなどの無形償却資産等が該当する。 償却資産に係る減損損失に関する税効果会計については次のように取り扱われる。 Ⅳ 非償却資産 非償却資産とは、減価償却計算による費用化を予定しない固定資産であり、例えば土地等が該当する。 土地等の非償却資産に係る将来減算一時差異のスケジューリングは、売却処分等の予定がある場合はそれによることになるが、例えば、工場用地として現に使用中であるような場合は、通常、スケジューリングが困難な場合が多い。 このため、土地等の非償却資産に係る将来減算一時差異は、スケジューリング不能な一時差異と判定される可能性が高い。 また、「土地の再評価に関する法律」により再評価を行い、「再評価に係る繰延税金資産」を計上している土地について減損損失を計上した場合は、「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」、「土地再評価差額金の会計処理に関するQ&A」などの規定に注意が必要である。 (了)
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有効な解雇手続とは 【第1回】「解雇の基礎知識」
有効な解雇手続とは 【第1回】 「解雇の基礎知識」 社会保険労務士 井下 英誉 1 はじめに 本連載のテーマは「有効な解雇手続」である。 なぜタイトルに“有効”と“手続”という言葉を入れたのか、それは、解雇をめぐるトラブルの多くが感情論からスタートし、労使間で収拾できないまま大きなトラブルへと発展するケースが非常に多いからである。 解雇めぐるトラブルでは、手段の相当性(手続的理性)が重視される。つまり、会社が正しい手続を経て解雇を行えば“有効”になる可能性が高まり、正しい手続を経ないで行えば無効になる可能性が高いということである。 本連載では、4回にわたって解雇トラブルを防ぐための考え方や手続方法をお伝えするが、まず第1回目は、解雇をめぐる基本的な知識をお伝えする。 2 解雇とは何か? 「解雇」とは、有効に存続してきた労働契約を使用者側から一方的に解約することをいう。 つまり、「一方的な解約」とは、労働者の合意を要しないということであり、労働の対価としての賃金で生活をしてきた労働者にとってはその打切りを意味する。 3 解雇の種類 解雇の種類は、その理由から労働者の労働契約上の義務違反など労働者側の事由に基づくものと、事業の縮小や整理など使用者側の事由に基づくものに分けることができる。 また、労働者側の事由に基づく解雇は、就業規則等に定める懲戒規定に基づく懲戒解雇と、それ以外の不完全な労働力の提供ややむを得ない事由による普通解雇に分けることができる。 4 解雇をめぐるトラブルの現状 【図1】は、平成24年度の「個別労働紛争解決制度」施行状況である。 【図1】 総合労働相談件数及び民事上の個別労働紛争相談件数の推移 (「平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況」(厚生労働省)より) 「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主間での労働条件や職場環境などをめぐる紛争の未然防止や早期解決を促進するための制度であり、幅広い分野の労働問題を対象とする「総合労働相談」、個別労働紛争の解決につき援助を求められた場合に行う都道府県労働局長による「助言・指導」、あっせんの申請を受けた場合に労働局長が紛争調整委員会に委任して行う「あっせん」の3つの方法がある。 「総合労働相談」に含まれる「民事上の個別労働紛争相談件数」の最近3ヶ年の内訳は【図2】のとおりである。また、「助言・指導」件数と「あっせん」件数の内訳は【図3】、【図4】のとおりである。 【図2】 最近3ヶ年度の主な紛争の動向(民事上の個別労働紛争に係る相談件数) (「平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況」(厚生労働省)より) 【図3】 最近3ヶ年度の主な紛争の動向(助言・指導申出件数) (「平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況」(厚生労働省)より) 【図4】 最近3ヶ年度の主な紛争の動向(あっせん申請件数) (「平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況」(厚生労働省)より) 「総合労働相談」、「助言・指導」、「あっせん」のすべての方法において、解雇に関する内容は減少傾向にあるが、「助言・指導」や「あっせん」という問題解決を含む方法では、第1位になっており、解雇に関するトラブルが多いことを示している。 「総合労働相談件数」とは、総合労働相談コーナー(都道府県労働局や各労働基準監督署等に設置)に寄せられた相談の件数である。また、「民事上の個別労働紛争相談件数」とは、労働条件その他の労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(労働基準法等の違反に係るものを除く)である。 4 解雇トラブルの予防方法 解雇トラブルを予防するには、以下の3つの要素に留意する必要があるが、これらの要素について「適正である」というためには、解雇に関する法規制を理解したうえで、就業規則等を整備する必要がある。 次回では、「解雇に関する法規制」を解説する。 (了)
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新たな高速バスの法規制と労働問題 【第1回】「業界を取り巻く状況」
新たな高速バスの法規制と労働問題 【第1回】 「業界を取り巻く状況」 特定社会保険労務士・運輸安全コンサルタント 山田 信孝 本稿の公開日となる平成25年8月1日より、「高速ツアーバス」の運行は廃止され、「新高速乗合バス」に移行し、一本化された。 これは平成24年4月29日に関越道で発生した高速ツアーバス事故を契機に、国土交通省が事故の再発防止と高速バス及び貸切バスへの信頼回復のために策定した「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」に基づき、当初の計画を前倒して、「新高速乗合バス」をスタートさせたものである。 本連載では3回にわたり、高速バス業界を取り巻く状況と併せて、新たな高速バスの法規制と労働問題を取り上げていく。 【参考図①】 (出典:国土交通省「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」(平成25年4月2日)) Ⅰ 「高速ツアーバス」登場の背景と関越道事故 バス事業は、一般路線バス、高速バス、貸切バスに分けられる。 高速バスは、一般道を運行する、いわゆる乗合バス事業者が、高速道路を運行して中長距離のサービスを提供することによって、年間の輸送人員が1億人を超える基幹的な公共交通機関として発展してきたもので、当初は高速乗合バスのみであった。 ところが、平成2年12月に貨物自動車運送事業において、需給調整規制が廃止され、その規制緩和の波が旅客自動車運送事業にも押し寄せ、平成12年2月には貸切バス事業、平成14年2月には乗合バス事業において、それぞれ需給調整規制が廃止されたことと、その後のインターネットの普及の後押しもあり、旅行業者が造成・販売する商品として、高速道路を経由する2地点間の移動を主たる目的とする「募集型企画旅行」の運行手段として、「高速ツアーバス」が登場することになった。 「高速ツアーバス」の輸送人員は、利用者に低価格と利便性の良さが受け入れられて、平成17年の僅か約21万人から、平成23年には750万人(推計値)と、急速に拡大したところである。 【参考図②】 (出典:国土交通省「「バス事業のあり方検討会」最終報告について」(平成24年4月3日)) しかしながら、「高速ツアーバス」は、乗合バスの規制が適用されない旅行業者が運送契約した貸切バスを使用して運行していたもので、その実態は高速乗合バスと同様のサービスを行っているにもかかわらず、旅行業者には道路運送業法に基づく安全確保の責任がないばかりでなく、委託先の貸切バス事業者に対する監督義務もないという、問題があった。 そこで、国土交通省は、平成19年2月に大阪府吹田市で起きた、あずみ野観光バスのスキーツアーバス事故及び平成22年9月の総務省の勧告(貸切バス事業における安全確保対策の徹底、収受運賃の実態把握の実施及び公示運賃の検証、旅行業者への指導・監督の強化など)などを踏まえ、検討を重ねていた「バス事業のあり方検討会」最終報告(平成24年4月3日)を受け、平成25年度までに「高速ツアーバス」事業を乗合バス業態へ移行する取組みを行うことにしていた。 その直後の、4月29日(日)午前4時40分頃、関越道上り線で、高速ツアーバスが運転者の居眠りにより、道路の左側壁に衝突し、乗客7名が死亡、乗客38名が重軽傷を負う悲惨な事故が発生したのである。 当該事故を起こした有限会社陸援隊は、その後の運輸局の監査において、点呼の不実施をはじめ、運転者の健康状態の把握の不適切、運転者の過労防止に関する措置の不適切、運転者として禁止されている日々雇用者の選任及び名義貸しなど、法令違反行為が28件もあることが判明し、改めて杜撰な安全管理体制が明らかになった。 (注) 関越道高速ツアーバス事故の行政処分 1 バス事業者{(有)陸援隊}は、平成24年6月、貸切バス事業許可の取消処分 2 旅行業者{(株)ハーヴェストホールディングス}は、平成24年7月、業務停止処分 Ⅱ 貸切バス業界の現状と課題 高速ツアーバスを運行していた貸切バス業界について、俯瞰して見ることにする。 貸切バスは平成12年2月の需給調整規制の廃止以降、事業者数と車両数は共に大幅に増加した。事業者数は平成11年度2,336から平成23年度には約2倍の4,533事業者に急増している。また、車両数については、平成11年度37,661両から、平成23年度47,693両と、約1.3倍の増車となっている。 その一方で、1事業所当たりの平均車両数は平成11年度16.1両から、平成23年度10.5両と大きく減少し、貸切バス事業者の零細化が進行している。 貸切バスの輸送人員は3億人程度で、全体の需要は横ばいである一方で、事業者数や車両数が増加したことに伴い、事業者間の競争は激化し、事業者間での取引では仲介業者や他の貸切バス事業者が介在するなど、取引の多重構造化が進み、実働日車当たりの営業収入は、ピーク時の平成4年度109,165円から年々減少しており、平成11年度80,519円、平成23年度には62,129円(対平成4年度比約43%減)となっている。 この厳しい経営状況の影響により、事業の廃止、縮小のほか、使用車両の高経年化、安全管理の手抜きや運転者の過労運転などの労働条件の悪化を招いているといえ、貸切バス業界は、まさに“負のスパイラル”の状況にあるといえる。 【参考図③】 (出典:国土交通省「「バス事業のあり方検討会」最終報告について」(平成24年4月3日)) また、乗客の大切な命を預かるバス運転者(民営)の所得は、ピーク時の平成8年631万円から年々低下し、平成23年では全産業平均(男子)よりも84万円低い、443万円(公益社団法人日本バス協会調べ)となっている。 加えて、全産業労働者の総労働時間は平成24年1,765時間であるのに対し、貸切バス運転者1人当たりの平均年間総労働時間は2,364時間であり、平成11年2,357時間から横ばいの状態が続いている。 バス業界では、長時間労働、賃金の低下に加え、大型二種運転免許の取得者が減少し、慢性的な運転者不足に陥っていることから、今後は運転者不足により、バス路線の維持ができなくなる事態が想定される。 (了)
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親族図で学ぶ相続講義 【第8回】「公正証書遺言を薦めるワケ」
親族図で学ぶ相続講義 【第8回】 「公正証書遺言を薦めるワケ」 司法書士 Wセミナー専任講師 山本 浩司 [被相続人甲野太郎 相続関係説明図] 前回お話した自筆証書遺言は、自宅にて一人で書けるのでたしかに気軽です。 しかし、ど素人が一人で書くので、次のような事態が生じる懸念が拭えません。 というわけで、自筆証書遺言には、以上の欠点があることを承知の上で実行すべきであって、それでも大丈夫という確信を持てないときは、そして、本気で遺言内容を実現したいのなら、遺言者は公正証書遺言を作成すべきなのです。 公正証書遺言は、その作成に少々、手間がかかります。 まず、証人2人の確保が必要です。 近親者には、たいてい証人の資格がないので第三者を呼んでくる必要があります(「証人の欠格事由」民法974条参照)。 次に、たいていは、公証人役場に遺言者と証人で出向きます(なお、例えば、病気の場合に病院で作成することも可)。 それから、もちろん有料です。 しかし、先に挙げたような自筆証書遺言の欠点は、以下のように見事にクリアできます。 (了)
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改正金融検査マニュアルのポイントと中小企業へ与える影響 【第5回】「本当の経営改善計画(事業計画)はどうあるべきか」
改正金融検査マニュアルのポイントと 中小企業へ与える影響 【第5回】 「本当の経営改善計画(事業計画)は どうあるべきか」 OAG税理士法人 税理士 山下 好一 1 何のために経営改善計画(事業計画)を作成するのか 「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」における債務者区分の判定で、経営改善計画(事業計画)によるものがある。 金融機関に提出する場合を別にすると、中小企業等の多くは、経営改善計画の必要性や重要性を認識していない傾向にある。 加えて、記帳についても同様である。 記帳については、税務申告の必要性から行っている場合が多く、極端な例を挙げれば、借入れのために申告しているような企業もある。 また、自計化できない企業も多く存在し、これができなければ、経営改善計画を策定しても、リアルタイムで進捗状況の管理ができない。 そもそも経営改善計画(事業計画)は、業績の如何によらず作成すべきものである。 計画を作成することで、目的をもった経営ができることに加え、経営成績を客観的に見ることができ、悪ければ即座に対応策を講じるができる。 経営者自身が思い描く3年後5年後の自社の業績を数字として可視化(見える化)することが重要である。 2 「バラ色計画」はいらない 筆者が金融庁の検査官として見てきた経営改善計画は、そのほとんどが、売上が右肩上がりのまさに「バラ色計画」であった。それでも達成状況が概ね8割を保っていれば良いが、現実には計画とはかけ離れた惨憺たるものであった。 中小企業等は、大企業と違い経費削減による経営改善計画では削減金額に限度があり、たとえ計画通りに削減できたとしても改善される収益は僅かな金額となってしまう。 したがって、中小企業等では、収益を高めるために、売上の増加(経費削減含む)による収益改善の計画を策定することとなる。 筆者が見てきた計画は、外部の専門家等のみが作成したもので、何ら根拠もなく売上が増加する計画や、根拠があった場合でもその方法が実現不可能な計画など、単に債務者区分のランクアップのために策定しているものであった。 これが「バラ色計画」になってしまう理由である。 当時は、金融機関主導のもと、外部の専門家に策定を依頼するのが一般的であったため、このようなものとなっていた。 だが、経営改善計画は、必ずしも精緻なものでなくても良いので、中小企業等が自ら策定すべきである。 これを金融機関や外部の専門家に依頼する場合であっても、必ず策定に参画し、自社の技術力や販売能力などを加味した実現可能なものとしなければならない。 そうすることによって、経営者の積極的な取組み姿勢を金融機関に対して明らかにすることができる。 なお、経営改善計画は、経営が改善するまでの期間が5年(進捗状況が良好であれば10年)以内であること、かつ、実現可能な計画であることが要件となる。 数ページに及ぶ見た目が立派な計画書であろうが、A4のペーパー1枚の計画書であろうが、どのような計画書であれ、その計画が実現可能か否かに尽きる。 3 PDCAで計画を実行する 売上を増加させるためには、売値を上げるか数量を増やす、又はこの両方である。数式で示せば「売上=売値×数量」と簡単である。 ただし、売上の増加は、数式では簡単であるが、現実には容易ではない。 売値を下げて数量を増やし、売上を増加させる計画は避けたい。かといって、売値を上げるのは難しい。 したがって、数量を増やすことが最善の計画ということになる。 しかしながら、経営難に陥る企業の経営者は、「なぜ売れないのだろう。」と考えてしまい、その結果、売値を下げてしまう。その分を数量で補えればよいが、多くの場合さらに業績が悪化し悪循環となる。 筆者は、国税職員時代に、税金を正しく納めるのが馬鹿らしいと考えていた企業を多く見てきた。その中の、いわゆる悪徳商法(悪徳業者)と呼ばれる企業を例にとると、彼らは、「いかにして売りつけるか」ということしか考えていなかった。 粗末なものを「誰に」「より高く」「より多く」売りつける。それが問題化すれば、商品や場合によっては社名を変えて売りつける。 これは決して、悪徳商法を推奨しているわけではない。 「売れない理由を考える」時間を「売る方法を考える」時間に充て、その方法を織り込んだ経営改善計画を策定し、実践し、見直し(モニタリング)、そして改善を繰り返す、つまり「PDCAサイクル」が必要なのである。 検査官は、経営改善計画がある場合、必ず進捗状況を確認する。その達成状況が悪ければ、実現不可能な計画として債務者区分の判定を行う。 これを避けるためにも、経営改善計画を策定した場合には、進捗状況の管理(モニタリング)を行う必要がある。このモニタリングにより、進捗状況の如何によっては目標地点等の見直しを行うなど、再改善等の措置を講じなければならない。 4 実現可能な計画策定へ向けて 経営改善計画による債務者区分の判定は、すべての要件が盛り込まれるため、最も効果的である。 繰返しになるが、経営改善計画は、経営が改善するまでの期間が5年(進捗状況が良好であれば10年)以内であること、かつ、実現可能な計画であることが要件となる。 したがって、経営者は、計画が「バラ色計画」の絵に描いた餅とならないよう、また、制度そのものが延命措置とならないよう、企業再建に向けて、熱意をもって取り組んでいただきたい。 なお、経営改善計画の策定において、中小企業等が自ら策定できない場合、策定料金の2/3(上限200万円)を補助する政策がある。 金融機関や多くの外部専門家が「認定支援機関」として登録されているので、メイン金融機関や顧問税理士等に相談のうえ、積極的に活用することが望ましい。 (了)
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顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第9回】「スコアリングデータから優秀な会社の傾向を読み取る」 ~業務の有効性・効率性スコア~
顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第9回】 「スコアリングデータから 優秀な会社の傾向を読み取る」 ~業務の有効性・効率性スコア~ 株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦 はじめに 前回は、優秀な会社の傾向を読み取るにあたり、スコアリングモデルにおける「財務諸表の信頼性スコア」を取り上げた。 今回取り上げるのは、「業務の有効性・効率性スコア」である。なお、今回が本連載における総論部分の最終回となる。 業務の有効性・効率性スコアは、5つの視点のうち、「効率性」、「戦略性」から適切なKPIを抽出して算出されるもので、経理財務部門の業務が効率的に行われており、さらに企業価値の向上に貢献しているレベルを表すスコアである。 では、実際の会社を評価した業務の有効性・効率性スコアから、どのような傾向を読み取ることができるだろうか。 業務の有効性・効率性スコアの全体分布 今回も、平成18年に行った134社によるスコアリングデータを紹介する。母集団は134社である(図表11)。 図表11 スコアリングモデルに参加した会社 (再掲) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 まず、134社の業務の有効性・効率性スコアの分布を見ていただきたい(図表20)。 図表20 業務の有効性・効率性スコアの分布 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 総合スコアや財務諸表の信頼性スコアの場合と同様、業務の有効性・効率性スコアの分布を見ても、全体として平均値周辺に集中し、正規分布に近い形状が形成されており、134社のサンプルであっても、母集団の傾向を十分説明できるだけのモデルであることを示している。 次に、財務諸表の信頼性スコアの分布(図表16)と業務の有効性・効率性スコアの分布(図表20)を比較してみる。 図表16 財務諸表の信頼性スコアの分布 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 いずれも一定程度のバラツキが見られるが、業務の有効性・効率性スコアの分布の方が、平均値から著しく低い会社の数が相対的に多くなっている。 これは、財務諸表の信頼性は、会計監査などの過程で最低のレベルが担保される保証が整備されているが、業務の有効性・効率性は、会社独自の創意工夫によるところが多いためバラツキが生じやすいという経験則を反映していると考えられる。 業種別、株式公開別に見た業務の有効性・効率性スコアの傾向 次に、業務の有効性・効率性スコアの傾向を、製造業と非製造業の業種別、株式公開別に分析した結果を見てみよう(図表21)。 図表21 業務の有効性・効率性スコアの業種別、株式公開別傾向 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 まず、業務の有効性・効率性スコアについて製造業と非製造業を比較すると、製造業の平均値が高いものの、スコアのバラツキや分布から判断すると、いずれが優れているとは判断できない。 次に、上場企業と非上場企業を比較すると、上場企業の平均値が高いだけでなく、標準偏差、最大最小差、尖度から判断できるスコアのバラツキが小さく、上場企業の業務の有効性・効率性レベルが、非上場企業に比べて高い水準に収斂している。つまり、スコアリングデータでは、上場企業の方が、非上場企業よりも、業務の有効性・効率性スコアが高いという結果が出ている。 これを経験則に照らしてみると、上場企業は、業務改善の継続の成果で相応の規模の経済を達成することにより、非上場企業に比べて業務の有効化と効率化が進んでいることが多い。スコアリングモデルによる業務の有効性・効率性スコアの分布は、そのような経験則を裏付けている。 他の指標との関係分析 スコアリングモデルで算出した業務の有効性・効率性スコアが持つ意味をさらに理解してもらうため、経営者や読者のような外部のステークホルダーになじみのある他指標とスコアの関係を分析した結果を紹介する。 今回は、業務の有効性・効率性スコアとの関係を検討する他指標として、「営業利益平均成長率(過去3期)」、「経理部門に占める派遣の割合」を使ってみる。 今回も、総合スコア(前々回)や財務諸表の信頼性スコア(前回)と同様、平均の差の検定で関係分析を行う。 業務の有効性・効率性スコアと他指標の関係 業務の有効性・効率性スコアの上位25社、全134社、下位25社の3グループについて、2つの他指標の平均値を算出し、業務の有効性・効率性スコアと平均値の関係を分析した結果を以下にまとめた。 前回と同様に、「正」とは、業務の有効性・効率性スコアが高いグループほど他指標の数値が大きくなり、業務の有効性・効率性スコアが低いグループほど他指標の数値が小さくなる関係が、グラフにおいて見られることを意味する。 また「負」とは、業務の有効性・効率性スコアが高いグループほど他指標の数値が小さくなり、業務の有効性・効率性スコアが低いグループほど他指標の数値が大きくなる関係が、グラフにおいて見られることを意味する。 結論から言えば、業務の有効性・効率性スコアが高い会社ほど、営業利益平均成長率が高く、経理部門に占める派遣の割合が低いという結果となった。 以下、その結果が示唆する意味を読み解いてみよう。 (1) 営業利益平均成長率 業務の有効性・効率性スコアと営業利益平均成長率に、一定の関係が見られるだろうか(図表22)。 図表22 業務の有効性・効率性スコアと他の基本的指標との関係 (営業利益平均成長率) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 筆者の経験則では、継続的に利益成長を達成する会社は、全社的観点では企業価値の最大化に向けた戦略を策定し浸透させ、業務プロセスの観点では価値連鎖に関連する業務プロセスの最適化を図っており、経理財務部門も全社的視点で経営管理に役立つ情報提供や業務改善の提言を通じて、経営戦略に貢献していることが多い。 つまり、経理財務の業務の有効性と効率性のあり方が、会社の利益成長に影響を与える。 そこで、グラフを見てみると、業務の有効性・効率性スコア上位25社の営業利益成長率が最も高く、業務の有効性・効率性スコア下位25社の営業利益成長率が最も低いという正の関係が見られる。まさに、経理財務の業務の有効性・効率性が高い会社の収益の成長率が高まるという仮説が、客観的なデータとして証明されているといえる。 (2) 経理部門に占める派遣の割合 次に、業務の有効性・効率性スコアと経理部門に占める派遣の割合に、一定の関係が見られるだろうか(図表23)。 図表23 業務の有効性・効率性スコアと他の基本的指標との関係 (経理部門に占める派遣の割合) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 これも筆者の経験則では、経理財務に係る人件費の削減だけを求めて派遣社員を使う会社では、派遣社員のスキルと業務知識が不十分なままであったり、職務範囲が限定されるために視野が狭くなっていたりするため、経理財務の業務の有効性と効率性が低下していることが多い。 そこで、グラフを見てみると、業務の有効性・効率性スコア上位25社の派遣の割合が最も低く、業務の有効性・効率性スコア下位25社の派遣の割合が最も高いという負の関係が見られる。 負のグラフは、経理財務業務において派遣社員の比率を高めることには、業務の有効性と効率性の観点から限界があり、全体的な視点で職責を全うする正社員の確保が必要であるという仮説を支える証左となっている。 (了)
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税理士・公認会計士事務所[ホームページ]再点検のポイント 【第2回】「ホームページの維持費が高すぎる?」
税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第2回】 「ホームページの維持費が高すぎる?」 データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥 ホームページを制作する時には制作費がかかりますが、完成して公開した後も毎月費用が発生します。 この毎月の費用について、この連載では「維持費」と「更新料」に大別してご説明します。 「維持費」は何もしなくてもかかる費用、「更新料」はホームページの記載内容を書き換えたり追加したりした時にかかる費用だと考えてください。 更新料の説明は次回に譲り、今回は維持費について考えていきます。 * * * ホームページの公開後何もしなくても、毎月ホームページ管理業者に料金を支払っていることと思います。その金額は、管理業者により、月額数千円から数万円まで開きがあります。 この維持費については、内訳を知ることにより、その相場も自ずと分かってきます。 維持費の最低限の内訳は、通常は以下の3つです。 「サーバー」、「ドメイン」、聞き慣れない言葉が登場しましたね。 ここでは、ホームページを「壁新聞」に例えて説明しましょう。 壁新聞を掲示板に貼って公開するとして、その掲示板を立てるための区画が第1番~第100番まで、100区画用意されているとします。 仮に、これらの中の「第38番区画」に掲示板を立てて壁新聞を貼った場合、その壁新聞を読みたい人は、第38番区画を訪ねて行って、掲示板に貼ってある壁新聞を読むことになります。 この例の中の「掲示板」が①の「サーバー」であり、この「第38番区画」が②の「ドメイン」にあたります。そして、③の「管理」とは、壁新聞が剥がれたりして読めなくなったら、読めるように修復することをいいます。 サーバー(掲示板)は、通常はサーバー管理会社からレンタルして使います。 ホームページに必要充分な性能のサーバーのレンタル料は月額数百円~数千円程度です。また、ドメイン(第38番区画)の利用料は、年額1,000円弱~数千円程度です。 税理士や公認会計士の事務所のホームページで必要な機能等を考えると、サーバーもドメインも安いモノで充分なため、両者合わせて最安で月額500円程度です。 これに③「管理」のための人件費と若干の利益が上乗せされるため、ホームページ管理業者の料金としては、最低価格ラインの維持費で月額1,000円程度になるかと思われます。 ただし、ホームページの制作費を極端に安くする代わりに維持費を高めに設定している場合もありますし、上記①~③以外のさまざまなサービスが付加されて、維持費が高くなっている場合もあります。 例えば、ホームページと同じドメインのメールアドレスが利用できるようになっていたり、ホームページに通信販売のページが付いていたり等、多種多様なサービスがあるのです。 ご自身の事務所のホームページの維持費が高いと感じるのであれば、維持費に含まれているサービス内容を確認の上、必要のないものを外して維持費を下げられないか、ホームページ管理業者と交渉してみましょう。 ただし、ホームページの制作費が極端に安い代わりに維持費が高い場合には、「維持費」という名目で「制作費」を回収していますので、一定期間(例えば1年)は解約や契約変更ができないことになっているはずです。 どうしてもホームページ管理業者と折り合わない場合には、ホームページ管理業者を変更することもできるのですが、これはやや複雑なことになるため、第4回以降でご説明します。 次回はホームページの運営に係るもう1つの費用、「更新料」についてお話します。 (了)
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《速報解説》 相続税関連通達の一部改正(7/10公表)について
《速報解説》 相続税関連通達の一部改正(7/10公表)について ミレニア綜合会計事務所 代表税理士 甲田 義典 国税庁は、平成25年度税制改正の施行に伴い、平成25年7月10日に『「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」等の一部改正について(法令解釈通達)』(以下「本通達」という)を公表し、「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」(法令解釈通達)及び「相続税法基本通達」(法令解釈通達)の一部改正について明らかにした。 また、7月24日には本通達に関し、「「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」等の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)」を公表した。 本通達の主な改正点は、以下の2点である。 (1) 「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税(措法70の2の2)」関係の通達の整備(措通70の2の2-1~12) 今回の改正では、教育資金を受ける者(受贈者)に関して、国籍や住所に制限は設けられていないことから外国国籍を有する者や相続税法の施行地に住所を有しない者であっても適用可能であること(措通70の2の2-2)や、取扱金融機関へ提出を要する領収証が外国の通貨で記載されている場合の円換算の方法(措通70の2の2-8)などが明らかとされたほか、教育資金管理契約が終了した場合に教育資金の使い残しがあった際の贈与税の課税関係(措通70の2の2-9)が整理された。 (2) 特定障害者扶養信託契約に係る贈与税の非課税限度額の計算上、一般障害者と特別障害者の区分に変更があった場合の取扱い(相基通21の4-2) 平成25年度税制改正において、特別障害者扶養信託契約に係る贈与税の非課税措置について、適用対象者に特別障害者のほか「一般障害者」が加えられ、「一般障害者」に係る非課税限度額が3,000万円(特別障害者は6,000万円)とされることとなった。 また、これに伴い適用対象となる信託契約が「特別障害者扶養信託契約」から「特定障害者扶養信託契約」に名称が改められた。 通達では、①一般障害者から特別障害者になった場合及び②特別障害者から一般障害者になった場合の非課税金額は、信託受益権の贈与があった時点において適用を受ける者が一般障害者もしくは特別障害者に該当するかにより、非課税限度額(3,000万円又は6,000万円)を判定して、既に他の信託受益権で適用を受けた部分の価額を控除した残額が非課税の適用可能額になることが明らかにされた。 また、②に該当するケースにおいて、その残額がマイナスになったとしても遡及して適用されないことが明らかにされた。 (了)
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酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第2回】「馬券訴訟(その2)」~一時所得・雑所得の判定要件~
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第2回】 「馬券訴訟(その2)」 ~一時所得・雑所得の判定要件~ 国士舘大学法学部教授・法学博士 酒井 克彦 1 本件事案の重要論点 前回に事案の概略を紹介したとおり、馬券収入が一時所得に該当するとするY(国側)と雑所得に該当するとするX(納税者側)との間で争われたのであるが、国税不服審判所は一時所得に該当するとのYの主張を妥当と判断している。 ここでの問題点は、一時所得に該当することになると、所得金額の計算上控除することができるのが「その収入を得るために支出した金額」とされ、その金額が、「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」と限定されることにある。 すなわち、仮に、Xが主張するように雑所得に該当するのであれば、その必要経費が控除できることになるところから、その場合にははずれ馬券も控除の対象となり得るという大きな違いが生じるのである。 次に、一時所得と雑所得の違いについて考えてみたい。 2 一時所得の意義 (1) 所得税法34条1項 一時所得とは、次のような所得をいう。 このように、一時所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得に限定されている。 これは、昭和22年に一時所得に対する課税がなされることになる前に非課税とされていた、「第9条第1項第8号に規定する所得(他の所得に該当しない所得(事業等所得))のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」と同じ規定の仕方である(旧所法6)。つまり、昭和22年の第二次改正において、この非課税規定を廃止し、新たにその非課税所得に相当する所得を課税所得に取り込むに当たって、これを「一時所得」として分類したことに由来しているのである。 したがって、やや大括りで捉えれば、一時所得の範囲とは、その淵源(えんげん)を辿れば、昭和22年の第二次改正前に非課税とされていた範囲と重なるということになる。 ところで、当時、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」について、課税対象外とされていた理由はどこにあるのであろうか。 当時の所得税法においては、継続的ないし反覆的な利得を課税対象とするという考え方である所得源泉説的所得概念が支配していた。そのため、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」は、このような所得概念に合致せず課税対象外とされていたのである。 つまり、一時所得の範囲とは、所得源泉説的所得概念の下では課税対象所得とするにはなじまないものであったと言い換えることができるのである。 このような点からみても分かるように、一時所得とは、それ自体積極的な内容を持った所得区分ではなく、他の所得類型に該当しない所得をいわば補充的に分類したもの(いわゆるバスケット・カテゴリー)であるということも可能である。 なお、一時所得の金額とは次により計算された金額をいう。 (2) 所得税法35条1項 他方、雑所得とは次のような所得をいう。 つまり、「他の所得区分」からこぼれると「一時所得」に入り、さらに「一時所得」からこぼれると「雑所得」に入る構造となっている。 そして、雑所得に該当することになると、所得金額の計算上、必要経費が控除されることになる。 ここで、必要経費とは次のようなものをいう。 (3) 所得源泉性による判断 一時所得であるか否かの判定基準は、しばしば所得源泉性の有無に求められることがある。すなわち、所得源泉を有する場合は雑所得とし、所得源泉を有しない場合は一時所得とする考え方である。 例えば、利息の定めのない一時的な資金の貸付けに基因して受けた元本額を超える謝礼金が一時所得に該当するか否かが争点とされた事例として、国税不服審判所昭和46年5月21日裁決(裁決事例集2号5頁)がある。 同審判所は、 として、一時所得該当性を否定しているのである。 この裁決で、一時所得と雑所得とを画するメルクマールが所得源泉の有無にあるとするように、一時所得とは所得源泉を有しない所得であると理解されている。 (4) 一時所得該当性の課税要件 所得税法34条1項の文理に従えば、一時所得の要件は次のとおりである。 ここで注意が必要なのは、これらすべてが必須要件であるということである。 すなわち、①ないし④の各要件がすべて充足して初めて一時所得に該当すると規定されているという点をあらかじめ強調しておきたい。 (続く)
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「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例4(消費税)】 「合併事業年度の簡易課税制度の判定を納税義務の判定と同じであると思い込み、被合併法人の基準期間の課税売上高で行ってしまった事例」
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例4(消費税)】 税理士 齋藤 和助 《事例の概要》 合併法人である依頼者(以下「A社」という)と被合併法人(以下「B社」という)の合併事業年度の基準期間の課税売上高は、それぞれ800万円と2億円であった。 税理士は、納税義務の判定はB社の2億円で行い、課税事業者と判断した。しかし、簡易課税制度の判定を、A社の800万円ですべきところ、納税義務の判定と同じであると思い込み、B社の2億円で行ったため、原則課税と判断して申告書を作成、提出してしまった。 A社は過去に「簡易課税制度選択届出書」を提出していたため、正しく判定すると、簡易課税制度での申告であった。これを税務署から指摘され、更正処分を受けた。 これにより、原則課税と簡易課税との差額300万円につき損害賠償請求を受けた。 《賠償請求の経緯》 ・税理士は合併以前よりA社に関与しており、A社、B社の基準期間の課税売上高を確認していた。 ・A社は過去に「簡易課税制度選択届出書」を提出していた。 ・A社とB社の合併事業年度の基準期間の課税売上高はそれぞれ800万円と2億円であった。 ・税理士は、納税義務の判定はB社の2億円で行い課税事業者と判断した。 ・税理士は、簡易課税制度の判定もB社の2億円で行い原則課税と判断した。 ・合併事業年度は原則課税の方が有利であった。 《基礎知識》 ◆合併があった場合の納税義務(消費税法基本通達1-5-6) 法第11条各項《合併があった場合の納税義務の免除の特例》の規定は、合併により被合併法人の事業を承継した合併法人について、次に掲げる場合に該当するときは、納税義務を免除しないとする趣旨であることに留意する。 (1) 合併があった日の属する事業年度においては、合併法人の基準期間における課税売上高又は各被合併法人の当該基準期間に対応する期間における課税売上高のうちいずれかが1,000万円を超える場合 (注) 合併法人の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても被合併法人の当該基準期間に対応する期間における課税売上高が1,000万円を超える場合には、当該合併法人の当該合併があった日から当該合併があった日の属する事業年度終了の日までの間における課税資産の譲渡等について納税義務が免除されない。 (2) 合併があった日の属する事業年度の翌事業年度及び翌々事業年度においては、合併法人の基準期間における課税売上高と各被合併法人の当該基準期間に対応する期間における課税売上高との合計額が1,000万円を超える場合 ◆合併法人が簡易課税制度を選択する場合の基準期間の課税売上高の判定(消費税法基本通達13-1-2) 吸収合併又は吸収分割があった場合において、当該吸収合併に係る合併法人又は当該吸収分割に係る分割承継法人の法第37条第1項《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》に規定する基準期間における課税売上高が5,000万円を超えるかどうかは、当該合併法人又は当該分割承継法人の基準期間における課税売上高のみによって判定するのであるから留意する。 〈合併があった場合の判定に用いる基準期間の課税売上高〉 《税理士の落とし穴》 《税理士の責任》 A社は過去に「簡易課税制度選択届出書」を提出していた。そして合併事業年度の消費税の申告の際、B社の基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていたことから、課税事業者と判断した。 申告に当たり、簡易課税制度の判定も納税義務の判定と同じであると思い込み、B社の基準期間の課税売上高で判断し、5,000万円を超えていたことから、原則課税で申告書を提出した。 そして所轄税務署から、A社の基準期間の課税売上高が5,000万円以下のため、簡易課税での修正申告を慫慂され、はじめてその事実に気付いた。 過去に提出された届出書を確認し、提出期限までに不適用届出書を提出していれば原則課税は採れたことから、税理士に責任がある。 《予防策》 [ポイント①] 組織再編には注意する 組織再編の場合には、再編後の消費税の納税義務の判定等が複雑になるため、担当者だけでなく、所長もしくは有資格者等とチームを組んで複数人で検討を行うことが必要である。 [ポイント②] 選択不適用届出書提出の検討 当初、有利選択で提出した消費税の届出書は、その目的が達成された場合には不適用届出書を提出して、当初の状態に戻しておく。そして、改めて毎期末に翌期の消費税の検討を行えば、過去に提出した届出書の効力による事故を防ぐことができる。 (了)