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小説 『法人課税第三部門にて。』 【第13話】「優良法人の税務調査(その5(署長との面談)/完)」
小説 『法人課税第三部門にて。』 【第13話】 「優良法人の税務調査(その5(署長との面談)/完)」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一 「先生、税務署から連絡がきました」 齋藤課長から、吉田税理士事務所に電話が入った。 税務調査が開始されてから、2ヶ月が過ぎていた。 「それで、来週の木曜日の11時に税務署に来てくれと・・・」 齋藤課長が吉田税理士に伝える。 「会長も行かれるのですか?」 吉田税理士が確認する。 「もちろんです。会長と先生と私の3人で行く予定ですが・・・先生はその日、ご都合はよろしいですか?」 齋藤課長の質問に、吉田税理士は、予定表のボードを見た。 「ええ、特に予定が入っていませんから、私も同伴させていただきます。しかし、来週ということは、もう6月ですね」 吉田税理士は、予定表のボードの日付を見ながら言う。 「7月初旬に税務署の人事異動があるから・・・税務署内も忙しいのでは・・・」 吉田税理士が受話器を持ちながら、つぶやく。 「そうでしたね・・・7月は、国税局の人事異動の月ですね」 齋藤課長も思い出したように、吉田税理士の言葉を繰り返した。 待ち合わせ場所と時間の確認を終え、吉田税理士は電話を切ってから、独り言を言う。 「たしか今年は・・・7月10日が、人事異動の発令日か・・・」 税務署の玄関で、会長と齋藤課長が立っている。 午前10時45分である。 強い日差しが、会長と齋藤課長の足元に照っている。幸い、膝から上の部分は、ひさしの陰のおかげで日は当たらない。 しばらくして、吉田税理士が額に汗を浮かべながら、小走りでやってきた。 「お待たせして、すみません・・・」 吉田税理士は、腕時計を見る。 11時3分前である。 「それでは、そろそろ行きましょうか」 ネクタイをしている会長が吉田税理士に告げる。 齋藤課長は、ネクタイの喉元をしきりに触っている。 「会長、ネクタイを外してもよろしいですかね」 齋藤課長は、会長の紺色のネクタイを見ながら、尋ねた。 「そりゃ、かまわないだろう、今、税務署もクールビズだから、職員は誰もネクタイをしていないだろう」 「そうですか・・・先生も外されたらどうですか?」 齋藤課長は、自分だけネクタイを外すことに気が引けたのか、吉田税理士に対して、ネクタイを外すよう促す。 「会長も、こんなに暑いですから、外されたらどうですか」 吉田税理士が会長に言葉をかける。 「いや、私は、ネクタイをしていたほうが、逆に気が引き締まるから、このままで良いです。先生や齋藤課長は遠慮なく外してください」 税務署の前で、齋藤課長と吉田税理士はネクタイを外して、建物の2階にある法人税課税部門へ向かった。 2階に上がると、窓を背にしている渕崎統括官の姿が見えた。その前に置かれている机では、田村上席がパソコンに向かっている。 吉田税理士が渕崎統括官の机の近くまで行くと、統括官は顔を上げた。 「ああ、どうも、暑いところ、ご苦労様です」 渕崎統括官の額にも汗が見られる。 税務署内は節電のため、冷房の温度を低く設定していない。 「今、総務課長に連絡してきますから、そこでお待ち下さい」 3人は、渕崎統括官の座席から少し離れたところにある、パーティションに囲まれた応接セットに案内された。 「暑いですね・・・」 齋藤課長が吉田税理士向かってつぶやいた。 「節電だから仕方ないですね」 その時、若い男性職員が、冷たいお茶を運んできた。同時に、田村上席が、ニコニコしながら顔を見せる。 「暑いですねえ・・・もうすぐ統括官が皆さんを署長室にお連れしますから、少々お待ち下さい」 「田村さんは、来月の人事異動で、転勤されますか?」 吉田税理士が声をかけた。 「いえいえ、僕はまだ、この署に来て2年ですから・・・たぶん異動はないと思いますよ。もっともこればかりは、蓋を開けてみなければ、分かりませんけど・・・」 含み笑いをしている田村上席の後ろから、渕崎統括官が声をかける。 「お待たせしました。それでは署長室にご案内します」 渕崎統括官の後に、3人が続く。 署長室には、白髪の長身である署長と五十路過ぎぐらいの女性の副署長がいた。 テーブルを囲んで、10人ぐらい座れる大きな応接セットである。 署長の向かい側に、3人は並んで座った。 「今日は、わざわざ来ていただいて、ありがとうございます。統括官からは、調査の報告を聞いています。特に、問題はないということで・・・」 白髪の署長は、座りながら、頭を少し下げる。署長の顔は、ゴルフの日焼けか、浅黒い。 特一ポストの税務署長なので、今回の人事異動で、退職することになっている。 署長との面会は、5分ぐらいの雑談で終わった。 税務署の玄関まで来たとき、齋藤課長は、吉田税理士に言った。 「あっけなく終わりましたね・・・」 税務署から、会社に「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」(いわゆる、申告是認通知書)が送られてきたのは、6月末日であった。 (つづく)
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〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載30〕 防水工事費用の損金算入時期
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載30〕 防水工事費用の損金算入時期 日本税制研究所研究員 朝長 明日香 【解説】 本件に関しては、①防水工事費用が修繕費と資本的支出のいずれかという問題と、②いずれの時期に損金の額に算入することができるのかという問題がある。 1 防水工事費用は修繕費と資本的支出のいずれとなるか まず、修繕費と資本的支出の判断基準を確認しておくこととする。 修繕費に関しては、法人税基本通達において、次のように述べられている。 また、資本的支出に関しては、同じく、法人税基本通達において、次のように述べられている。 本件の防水工事費用が修繕費と資本的支出のいずれとなるかということは、上記の基準によって判断することとなる。 ご質問文によると、本件の防水工事は、「屋根に亀裂が生じ、雨漏りのおそれがあった」ために行われたということであり、上記において引用した法人税基本通達7-8-2の「原状を回復する」ために行われた修繕となる可能性が高いと思われる。 しかし、例えば、防水工事が屋根全体を覆う屋根カバー工法(既存の屋根を撤去せずに上に新しい屋根材を被せる工法)によるものなどの場合には、その防水工事によって固定資産が「耐久性を増す」(上記の法人税基本通達7-8-1)ことになるため、その防水工事費用の全額が資本的支出となる。 本件の防水工事は、このように全額が資本的支出に該当するものではないと推測されるものの、防水工事の詳細が分からないため、正確な判断は、困難である。 このため、本件の防水工事費用は、基本的には修繕費となるが、資本的支出となる部分も存在する、という前提に立って、解説を進めることとする。 2 防水工事費用の損金算入時期はいつか (1) 修繕費の損金算入時期 法人税法22条3項2号(販売費・一般管理費等の損金算入)においては、周知のとおり、償却費以外の販売費・一般管理費その他の費用の額について、債務の確定した事業年度の損金の額に算入することとされている。 このため、修繕費である本件の防水工事費用は、この「債務の確定」を判断基準として損金の額に算入できる時期を判断することとなる。 この「債務の確定」とは、法人税基本通達2-2-12(債務の確定の判定)において、次の要件のすべてに該当することとされている。 上記①の「債務の成立」の要件は、一定の給付を受けることが契約で定められているのか否かということを問うものであり、本件においては、この要件は満たされている。 上記②の「給付原因事実の発生」の要件は、本件に即して言えば、修繕という役務のすべてが完了しているのか否かということを問うものである。 本件は、資産の引渡しを伴わない取引であるが、仮に、一旦、資産を修理業者に引き渡して、工事の完了後に修理業者から引渡しを受けるということがあったとしても、「修繕」という役務の提供を受ける取引である限り、「引渡し」によって「給付原因事実の発生」とすることにはならない、と考えられる。 「修繕」の取引が資産の引渡しを伴うものである場合には、一般的には、引渡しが「修繕」の完了を確認するものとなると考えられるが、引渡しが行われていたとしても、「修繕」が完了していなければ、「給付原因事実の発生」があったということにはならない。 本件においては、仕上げの塗装が終了しない限り、修繕が完了したということにはならないことから、塗装工事が終了する4月10日が修繕の完了日ということになる。 すなわち、本件の防水工事は、3月31日現在では、上記②の要件を満たしていない、ということになる。 このため、修繕費である本件の防水工事費用は、その全額を当期の損金の額に算入することはできず、翌期の損金の額に算入することとなる。 なお、上記③の「金額の合理的な算定」の要件は、本件においては、契約において1,000万円とされており、この要件は満たされている。 (2) 資本的支出に該当する部分の減価償却費の損金算入時期 本件の防水工事費用のうち、資本的支出に該当する部分がある場合には、その該当する部分の金額は、その金額を取得価額として種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとし、又は、既存の減価償却資産につき旧償却方法を適用している場合にはその取得価額に加算して減価償却を行うこととなる。 減価償却費に関しては、修繕費のように「債務の確定」ということによって損金算入時期を判断することとはされておらず、減価償却資産を事業の用に供したか否かによって損金算入時期を判断するこことなる。 本件においては、3月に店舗を事業の用に供しているため、防水工事費用のうち、資本的支出に該当する部分に係る減価償却費を当期の損金の額に算入することができることとなる。 ただし、防水工事費用のうち、4月に終了する塗装工事に係る部分が資本的支出に該当するという場合には、その資本的支出に該当する部分は、4月の資本的支出として取り扱うこととなる。 (了)
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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第14回】ソフトウェア会計①「市場販売目的のソフトウェアの会計処理」
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第14回】 ソフトウェア会計① 「市場販売目的のソフトウェアの会計処理」 仰星監査法人 公認会計士 大川 泰広 〈事例による解説〉 プロジェクトの進行過程と発生コストは以下のとおりです。 〈会計処理〉 ① ×1年4月1日から×1年12月31日までの開発コスト (*1) 諸口には材料費、労務費、経費等が該当します。 ② ×1年12月31日~×2年3月31日までの制作・改良コスト 〈会計処理の解説〉 本事例のような不特定多数の顧客向けに開発・販売されるソフトウェアは、会計上、市場販売目的のソフトウェアに分類されます。市場販売目的のソフトウェアの開発は、通常、市場ニーズの分析やソフトウェアの企画・設計等、その制作過程において、研究開発活動が先行して行われます。 研究開発活動は、将来の収益獲得のために、新たな技術やサービスを調査・探究する活動ではあるものの、そのすべてが実を結び、将来の収益を獲得できるわけではなく、成果を得られずに終了してしまうものもあります。 したがって、研究開発活動に係るコストは、発生時あるいは研究開発の進行過程において、将来の収益を獲得できるか否かが不明なため、資産として計上することは認められず、発生時に費用として処理しなければなりません。 市場販売目的のソフトウェアの制作過程で実施される研究開発は、会計上、製品マスターの完成をもって終了すると考えます。したがって、製品マスター完成までに発生した費用は研究開発費として費用処理します。 なお、製品マスターの完成時点は、販売の意思が明らかにされた製品マスター、すなわち「最初に製品化された製品マスター」が完成した時点とされており、具体的には次の2点を勘案して判断します。 これらの要件を満たした製品マスターは、ソフトウェアの操作性や処理速度など、一部改良等は要するものの、製品化する上での重要な問題はクリアしており、ソフトウェア開発における研究開発のステージは完了したと考えます。 最初に製品化された製品マスターの完成により、当該ソフトウェアは、将来の収益獲得が合理的に期待できるようになります。したがって、それ以降販売開始までに発生する改良等のコストは、原則として資産計上することとなります。 ただし、製品マスター完成後の制作コストであっても、資産計上が認められない場合があります。次回はこの点について解説します。 (了)
会計
税効果会計
税務・会計
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税効果会計を学ぶ 【第15回】「その他有価証券の評価差額の取扱い③」
-お知らせ- 適用指針等を織り込んだ最新版の『税効果会計を学ぶ』が好評連載中です。 税効果会計を学ぶ 【第15回】 「その他有価証券の 評価差額の取扱い③」 公認会計士 阿部 光成 今回は、固定資産の減損損失に係る税効果会計の取扱いを解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅰ 固定資産の減損損失 固定資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号)が適用されている。 固定資産の減損損失についても、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第66号。以下「監査委員会報告第66号」という)に従って繰延税金資産の回収可能性を判断することとなる。 「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」(監査委員会報告第70号。以下「監査委員会報告第70号」という)は、その際の留意点を述べている。 Ⅱ 繰延税金資産の回収可能性の判断のポイント 固定資産の減損損失に係る将来減算一時差異に関する繰延税金資産の回収可能性の判断のポイントは、スケジューリングにあると考えられる。 監査委員会報告第70号は、将来減算一時差異の解消時期について、スケジューリング可能な一時差異であるか、スケジューリング不能な一時差異であるかの判定を行わなければならないと規定している(監査委員会報告第70号、Ⅱ2)。 スケジューリング不能な一時差異と判定されたものについては、監査委員会報告第66号の5(1)①会社分類(例示区分)の会社等の場合を除いて、回収可能性はないものと判断することになる。 なお、減損損失に係る将来減算一時差異については、監査委員会報告第66号の5「(2)将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い」にいう建物の減価償却超過額に係る将来減算一時差異と同様な取扱いを適用しない(監査委員会報告第70号、Ⅱ2(1))。 Ⅲ 償却資産 償却資産とは、減価償却計算による費用化を予定している固定資産であり、例えば、建物や機械装置などの有形償却資産、のれん(営業権)や自社利用のソフトウェアなどの無形償却資産等が該当する。 償却資産に係る減損損失に関する税効果会計については次のように取り扱われる。 Ⅳ 非償却資産 非償却資産とは、減価償却計算による費用化を予定しない固定資産であり、例えば土地等が該当する。 土地等の非償却資産に係る将来減算一時差異のスケジューリングは、売却処分等の予定がある場合はそれによることになるが、例えば、工場用地として現に使用中であるような場合は、通常、スケジューリングが困難な場合が多い。 このため、土地等の非償却資産に係る将来減算一時差異は、スケジューリング不能な一時差異と判定される可能性が高い。 また、「土地の再評価に関する法律」により再評価を行い、「再評価に係る繰延税金資産」を計上している土地について減損損失を計上した場合は、「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」、「土地再評価差額金の会計処理に関するQ&A」などの規定に注意が必要である。 (了)
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有効な解雇手続とは 【第1回】「解雇の基礎知識」
有効な解雇手続とは 【第1回】 「解雇の基礎知識」 社会保険労務士 井下 英誉 1 はじめに 本連載のテーマは「有効な解雇手続」である。 なぜタイトルに“有効”と“手続”という言葉を入れたのか、それは、解雇をめぐるトラブルの多くが感情論からスタートし、労使間で収拾できないまま大きなトラブルへと発展するケースが非常に多いからである。 解雇めぐるトラブルでは、手段の相当性(手続的理性)が重視される。つまり、会社が正しい手続を経て解雇を行えば“有効”になる可能性が高まり、正しい手続を経ないで行えば無効になる可能性が高いということである。 本連載では、4回にわたって解雇トラブルを防ぐための考え方や手続方法をお伝えするが、まず第1回目は、解雇をめぐる基本的な知識をお伝えする。 2 解雇とは何か? 「解雇」とは、有効に存続してきた労働契約を使用者側から一方的に解約することをいう。 つまり、「一方的な解約」とは、労働者の合意を要しないということであり、労働の対価としての賃金で生活をしてきた労働者にとってはその打切りを意味する。 3 解雇の種類 解雇の種類は、その理由から労働者の労働契約上の義務違反など労働者側の事由に基づくものと、事業の縮小や整理など使用者側の事由に基づくものに分けることができる。 また、労働者側の事由に基づく解雇は、就業規則等に定める懲戒規定に基づく懲戒解雇と、それ以外の不完全な労働力の提供ややむを得ない事由による普通解雇に分けることができる。 4 解雇をめぐるトラブルの現状 【図1】は、平成24年度の「個別労働紛争解決制度」施行状況である。 【図1】 総合労働相談件数及び民事上の個別労働紛争相談件数の推移 (「平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況」(厚生労働省)より) 「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主間での労働条件や職場環境などをめぐる紛争の未然防止や早期解決を促進するための制度であり、幅広い分野の労働問題を対象とする「総合労働相談」、個別労働紛争の解決につき援助を求められた場合に行う都道府県労働局長による「助言・指導」、あっせんの申請を受けた場合に労働局長が紛争調整委員会に委任して行う「あっせん」の3つの方法がある。 「総合労働相談」に含まれる「民事上の個別労働紛争相談件数」の最近3ヶ年の内訳は【図2】のとおりである。また、「助言・指導」件数と「あっせん」件数の内訳は【図3】、【図4】のとおりである。 【図2】 最近3ヶ年度の主な紛争の動向(民事上の個別労働紛争に係る相談件数) (「平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況」(厚生労働省)より) 【図3】 最近3ヶ年度の主な紛争の動向(助言・指導申出件数) (「平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況」(厚生労働省)より) 【図4】 最近3ヶ年度の主な紛争の動向(あっせん申請件数) (「平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況」(厚生労働省)より) 「総合労働相談」、「助言・指導」、「あっせん」のすべての方法において、解雇に関する内容は減少傾向にあるが、「助言・指導」や「あっせん」という問題解決を含む方法では、第1位になっており、解雇に関するトラブルが多いことを示している。 「総合労働相談件数」とは、総合労働相談コーナー(都道府県労働局や各労働基準監督署等に設置)に寄せられた相談の件数である。また、「民事上の個別労働紛争相談件数」とは、労働条件その他の労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(労働基準法等の違反に係るものを除く)である。 4 解雇トラブルの予防方法 解雇トラブルを予防するには、以下の3つの要素に留意する必要があるが、これらの要素について「適正である」というためには、解雇に関する法規制を理解したうえで、就業規則等を整備する必要がある。 次回では、「解雇に関する法規制」を解説する。 (了)
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新たな高速バスの法規制と労働問題 【第1回】「業界を取り巻く状況」
新たな高速バスの法規制と労働問題 【第1回】 「業界を取り巻く状況」 特定社会保険労務士・運輸安全コンサルタント 山田 信孝 本稿の公開日となる平成25年8月1日より、「高速ツアーバス」の運行は廃止され、「新高速乗合バス」に移行し、一本化された。 これは平成24年4月29日に関越道で発生した高速ツアーバス事故を契機に、国土交通省が事故の再発防止と高速バス及び貸切バスへの信頼回復のために策定した「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」に基づき、当初の計画を前倒して、「新高速乗合バス」をスタートさせたものである。 本連載では3回にわたり、高速バス業界を取り巻く状況と併せて、新たな高速バスの法規制と労働問題を取り上げていく。 【参考図①】 (出典:国土交通省「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」(平成25年4月2日)) Ⅰ 「高速ツアーバス」登場の背景と関越道事故 バス事業は、一般路線バス、高速バス、貸切バスに分けられる。 高速バスは、一般道を運行する、いわゆる乗合バス事業者が、高速道路を運行して中長距離のサービスを提供することによって、年間の輸送人員が1億人を超える基幹的な公共交通機関として発展してきたもので、当初は高速乗合バスのみであった。 ところが、平成2年12月に貨物自動車運送事業において、需給調整規制が廃止され、その規制緩和の波が旅客自動車運送事業にも押し寄せ、平成12年2月には貸切バス事業、平成14年2月には乗合バス事業において、それぞれ需給調整規制が廃止されたことと、その後のインターネットの普及の後押しもあり、旅行業者が造成・販売する商品として、高速道路を経由する2地点間の移動を主たる目的とする「募集型企画旅行」の運行手段として、「高速ツアーバス」が登場することになった。 「高速ツアーバス」の輸送人員は、利用者に低価格と利便性の良さが受け入れられて、平成17年の僅か約21万人から、平成23年には750万人(推計値)と、急速に拡大したところである。 【参考図②】 (出典:国土交通省「「バス事業のあり方検討会」最終報告について」(平成24年4月3日)) しかしながら、「高速ツアーバス」は、乗合バスの規制が適用されない旅行業者が運送契約した貸切バスを使用して運行していたもので、その実態は高速乗合バスと同様のサービスを行っているにもかかわらず、旅行業者には道路運送業法に基づく安全確保の責任がないばかりでなく、委託先の貸切バス事業者に対する監督義務もないという、問題があった。 そこで、国土交通省は、平成19年2月に大阪府吹田市で起きた、あずみ野観光バスのスキーツアーバス事故及び平成22年9月の総務省の勧告(貸切バス事業における安全確保対策の徹底、収受運賃の実態把握の実施及び公示運賃の検証、旅行業者への指導・監督の強化など)などを踏まえ、検討を重ねていた「バス事業のあり方検討会」最終報告(平成24年4月3日)を受け、平成25年度までに「高速ツアーバス」事業を乗合バス業態へ移行する取組みを行うことにしていた。 その直後の、4月29日(日)午前4時40分頃、関越道上り線で、高速ツアーバスが運転者の居眠りにより、道路の左側壁に衝突し、乗客7名が死亡、乗客38名が重軽傷を負う悲惨な事故が発生したのである。 当該事故を起こした有限会社陸援隊は、その後の運輸局の監査において、点呼の不実施をはじめ、運転者の健康状態の把握の不適切、運転者の過労防止に関する措置の不適切、運転者として禁止されている日々雇用者の選任及び名義貸しなど、法令違反行為が28件もあることが判明し、改めて杜撰な安全管理体制が明らかになった。 (注) 関越道高速ツアーバス事故の行政処分 1 バス事業者{(有)陸援隊}は、平成24年6月、貸切バス事業許可の取消処分 2 旅行業者{(株)ハーヴェストホールディングス}は、平成24年7月、業務停止処分 Ⅱ 貸切バス業界の現状と課題 高速ツアーバスを運行していた貸切バス業界について、俯瞰して見ることにする。 貸切バスは平成12年2月の需給調整規制の廃止以降、事業者数と車両数は共に大幅に増加した。事業者数は平成11年度2,336から平成23年度には約2倍の4,533事業者に急増している。また、車両数については、平成11年度37,661両から、平成23年度47,693両と、約1.3倍の増車となっている。 その一方で、1事業所当たりの平均車両数は平成11年度16.1両から、平成23年度10.5両と大きく減少し、貸切バス事業者の零細化が進行している。 貸切バスの輸送人員は3億人程度で、全体の需要は横ばいである一方で、事業者数や車両数が増加したことに伴い、事業者間の競争は激化し、事業者間での取引では仲介業者や他の貸切バス事業者が介在するなど、取引の多重構造化が進み、実働日車当たりの営業収入は、ピーク時の平成4年度109,165円から年々減少しており、平成11年度80,519円、平成23年度には62,129円(対平成4年度比約43%減)となっている。 この厳しい経営状況の影響により、事業の廃止、縮小のほか、使用車両の高経年化、安全管理の手抜きや運転者の過労運転などの労働条件の悪化を招いているといえ、貸切バス業界は、まさに“負のスパイラル”の状況にあるといえる。 【参考図③】 (出典:国土交通省「「バス事業のあり方検討会」最終報告について」(平成24年4月3日)) また、乗客の大切な命を預かるバス運転者(民営)の所得は、ピーク時の平成8年631万円から年々低下し、平成23年では全産業平均(男子)よりも84万円低い、443万円(公益社団法人日本バス協会調べ)となっている。 加えて、全産業労働者の総労働時間は平成24年1,765時間であるのに対し、貸切バス運転者1人当たりの平均年間総労働時間は2,364時間であり、平成11年2,357時間から横ばいの状態が続いている。 バス業界では、長時間労働、賃金の低下に加え、大型二種運転免許の取得者が減少し、慢性的な運転者不足に陥っていることから、今後は運転者不足により、バス路線の維持ができなくなる事態が想定される。 (了)
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親族図で学ぶ相続講義 【第8回】「公正証書遺言を薦めるワケ」
親族図で学ぶ相続講義 【第8回】 「公正証書遺言を薦めるワケ」 司法書士 Wセミナー専任講師 山本 浩司 [被相続人甲野太郎 相続関係説明図] 前回お話した自筆証書遺言は、自宅にて一人で書けるのでたしかに気軽です。 しかし、ど素人が一人で書くので、次のような事態が生じる懸念が拭えません。 というわけで、自筆証書遺言には、以上の欠点があることを承知の上で実行すべきであって、それでも大丈夫という確信を持てないときは、そして、本気で遺言内容を実現したいのなら、遺言者は公正証書遺言を作成すべきなのです。 公正証書遺言は、その作成に少々、手間がかかります。 まず、証人2人の確保が必要です。 近親者には、たいてい証人の資格がないので第三者を呼んでくる必要があります(「証人の欠格事由」民法974条参照)。 次に、たいていは、公証人役場に遺言者と証人で出向きます(なお、例えば、病気の場合に病院で作成することも可)。 それから、もちろん有料です。 しかし、先に挙げたような自筆証書遺言の欠点は、以下のように見事にクリアできます。 (了)
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改正金融検査マニュアルのポイントと中小企業へ与える影響 【第5回】「本当の経営改善計画(事業計画)はどうあるべきか」
改正金融検査マニュアルのポイントと 中小企業へ与える影響 【第5回】 「本当の経営改善計画(事業計画)は どうあるべきか」 OAG税理士法人 税理士 山下 好一 1 何のために経営改善計画(事業計画)を作成するのか 「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」における債務者区分の判定で、経営改善計画(事業計画)によるものがある。 金融機関に提出する場合を別にすると、中小企業等の多くは、経営改善計画の必要性や重要性を認識していない傾向にある。 加えて、記帳についても同様である。 記帳については、税務申告の必要性から行っている場合が多く、極端な例を挙げれば、借入れのために申告しているような企業もある。 また、自計化できない企業も多く存在し、これができなければ、経営改善計画を策定しても、リアルタイムで進捗状況の管理ができない。 そもそも経営改善計画(事業計画)は、業績の如何によらず作成すべきものである。 計画を作成することで、目的をもった経営ができることに加え、経営成績を客観的に見ることができ、悪ければ即座に対応策を講じるができる。 経営者自身が思い描く3年後5年後の自社の業績を数字として可視化(見える化)することが重要である。 2 「バラ色計画」はいらない 筆者が金融庁の検査官として見てきた経営改善計画は、そのほとんどが、売上が右肩上がりのまさに「バラ色計画」であった。それでも達成状況が概ね8割を保っていれば良いが、現実には計画とはかけ離れた惨憺たるものであった。 中小企業等は、大企業と違い経費削減による経営改善計画では削減金額に限度があり、たとえ計画通りに削減できたとしても改善される収益は僅かな金額となってしまう。 したがって、中小企業等では、収益を高めるために、売上の増加(経費削減含む)による収益改善の計画を策定することとなる。 筆者が見てきた計画は、外部の専門家等のみが作成したもので、何ら根拠もなく売上が増加する計画や、根拠があった場合でもその方法が実現不可能な計画など、単に債務者区分のランクアップのために策定しているものであった。 これが「バラ色計画」になってしまう理由である。 当時は、金融機関主導のもと、外部の専門家に策定を依頼するのが一般的であったため、このようなものとなっていた。 だが、経営改善計画は、必ずしも精緻なものでなくても良いので、中小企業等が自ら策定すべきである。 これを金融機関や外部の専門家に依頼する場合であっても、必ず策定に参画し、自社の技術力や販売能力などを加味した実現可能なものとしなければならない。 そうすることによって、経営者の積極的な取組み姿勢を金融機関に対して明らかにすることができる。 なお、経営改善計画は、経営が改善するまでの期間が5年(進捗状況が良好であれば10年)以内であること、かつ、実現可能な計画であることが要件となる。 数ページに及ぶ見た目が立派な計画書であろうが、A4のペーパー1枚の計画書であろうが、どのような計画書であれ、その計画が実現可能か否かに尽きる。 3 PDCAで計画を実行する 売上を増加させるためには、売値を上げるか数量を増やす、又はこの両方である。数式で示せば「売上=売値×数量」と簡単である。 ただし、売上の増加は、数式では簡単であるが、現実には容易ではない。 売値を下げて数量を増やし、売上を増加させる計画は避けたい。かといって、売値を上げるのは難しい。 したがって、数量を増やすことが最善の計画ということになる。 しかしながら、経営難に陥る企業の経営者は、「なぜ売れないのだろう。」と考えてしまい、その結果、売値を下げてしまう。その分を数量で補えればよいが、多くの場合さらに業績が悪化し悪循環となる。 筆者は、国税職員時代に、税金を正しく納めるのが馬鹿らしいと考えていた企業を多く見てきた。その中の、いわゆる悪徳商法(悪徳業者)と呼ばれる企業を例にとると、彼らは、「いかにして売りつけるか」ということしか考えていなかった。 粗末なものを「誰に」「より高く」「より多く」売りつける。それが問題化すれば、商品や場合によっては社名を変えて売りつける。 これは決して、悪徳商法を推奨しているわけではない。 「売れない理由を考える」時間を「売る方法を考える」時間に充て、その方法を織り込んだ経営改善計画を策定し、実践し、見直し(モニタリング)、そして改善を繰り返す、つまり「PDCAサイクル」が必要なのである。 検査官は、経営改善計画がある場合、必ず進捗状況を確認する。その達成状況が悪ければ、実現不可能な計画として債務者区分の判定を行う。 これを避けるためにも、経営改善計画を策定した場合には、進捗状況の管理(モニタリング)を行う必要がある。このモニタリングにより、進捗状況の如何によっては目標地点等の見直しを行うなど、再改善等の措置を講じなければならない。 4 実現可能な計画策定へ向けて 経営改善計画による債務者区分の判定は、すべての要件が盛り込まれるため、最も効果的である。 繰返しになるが、経営改善計画は、経営が改善するまでの期間が5年(進捗状況が良好であれば10年)以内であること、かつ、実現可能な計画であることが要件となる。 したがって、経営者は、計画が「バラ色計画」の絵に描いた餅とならないよう、また、制度そのものが延命措置とならないよう、企業再建に向けて、熱意をもって取り組んでいただきたい。 なお、経営改善計画の策定において、中小企業等が自ら策定できない場合、策定料金の2/3(上限200万円)を補助する政策がある。 金融機関や多くの外部専門家が「認定支援機関」として登録されているので、メイン金融機関や顧問税理士等に相談のうえ、積極的に活用することが望ましい。 (了)
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顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第9回】「スコアリングデータから優秀な会社の傾向を読み取る」 ~業務の有効性・効率性スコア~
顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第9回】 「スコアリングデータから 優秀な会社の傾向を読み取る」 ~業務の有効性・効率性スコア~ 株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦 はじめに 前回は、優秀な会社の傾向を読み取るにあたり、スコアリングモデルにおける「財務諸表の信頼性スコア」を取り上げた。 今回取り上げるのは、「業務の有効性・効率性スコア」である。なお、今回が本連載における総論部分の最終回となる。 業務の有効性・効率性スコアは、5つの視点のうち、「効率性」、「戦略性」から適切なKPIを抽出して算出されるもので、経理財務部門の業務が効率的に行われており、さらに企業価値の向上に貢献しているレベルを表すスコアである。 では、実際の会社を評価した業務の有効性・効率性スコアから、どのような傾向を読み取ることができるだろうか。 業務の有効性・効率性スコアの全体分布 今回も、平成18年に行った134社によるスコアリングデータを紹介する。母集団は134社である(図表11)。 図表11 スコアリングモデルに参加した会社 (再掲) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 まず、134社の業務の有効性・効率性スコアの分布を見ていただきたい(図表20)。 図表20 業務の有効性・効率性スコアの分布 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 総合スコアや財務諸表の信頼性スコアの場合と同様、業務の有効性・効率性スコアの分布を見ても、全体として平均値周辺に集中し、正規分布に近い形状が形成されており、134社のサンプルであっても、母集団の傾向を十分説明できるだけのモデルであることを示している。 次に、財務諸表の信頼性スコアの分布(図表16)と業務の有効性・効率性スコアの分布(図表20)を比較してみる。 図表16 財務諸表の信頼性スコアの分布 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 いずれも一定程度のバラツキが見られるが、業務の有効性・効率性スコアの分布の方が、平均値から著しく低い会社の数が相対的に多くなっている。 これは、財務諸表の信頼性は、会計監査などの過程で最低のレベルが担保される保証が整備されているが、業務の有効性・効率性は、会社独自の創意工夫によるところが多いためバラツキが生じやすいという経験則を反映していると考えられる。 業種別、株式公開別に見た業務の有効性・効率性スコアの傾向 次に、業務の有効性・効率性スコアの傾向を、製造業と非製造業の業種別、株式公開別に分析した結果を見てみよう(図表21)。 図表21 業務の有効性・効率性スコアの業種別、株式公開別傾向 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 まず、業務の有効性・効率性スコアについて製造業と非製造業を比較すると、製造業の平均値が高いものの、スコアのバラツキや分布から判断すると、いずれが優れているとは判断できない。 次に、上場企業と非上場企業を比較すると、上場企業の平均値が高いだけでなく、標準偏差、最大最小差、尖度から判断できるスコアのバラツキが小さく、上場企業の業務の有効性・効率性レベルが、非上場企業に比べて高い水準に収斂している。つまり、スコアリングデータでは、上場企業の方が、非上場企業よりも、業務の有効性・効率性スコアが高いという結果が出ている。 これを経験則に照らしてみると、上場企業は、業務改善の継続の成果で相応の規模の経済を達成することにより、非上場企業に比べて業務の有効化と効率化が進んでいることが多い。スコアリングモデルによる業務の有効性・効率性スコアの分布は、そのような経験則を裏付けている。 他の指標との関係分析 スコアリングモデルで算出した業務の有効性・効率性スコアが持つ意味をさらに理解してもらうため、経営者や読者のような外部のステークホルダーになじみのある他指標とスコアの関係を分析した結果を紹介する。 今回は、業務の有効性・効率性スコアとの関係を検討する他指標として、「営業利益平均成長率(過去3期)」、「経理部門に占める派遣の割合」を使ってみる。 今回も、総合スコア(前々回)や財務諸表の信頼性スコア(前回)と同様、平均の差の検定で関係分析を行う。 業務の有効性・効率性スコアと他指標の関係 業務の有効性・効率性スコアの上位25社、全134社、下位25社の3グループについて、2つの他指標の平均値を算出し、業務の有効性・効率性スコアと平均値の関係を分析した結果を以下にまとめた。 前回と同様に、「正」とは、業務の有効性・効率性スコアが高いグループほど他指標の数値が大きくなり、業務の有効性・効率性スコアが低いグループほど他指標の数値が小さくなる関係が、グラフにおいて見られることを意味する。 また「負」とは、業務の有効性・効率性スコアが高いグループほど他指標の数値が小さくなり、業務の有効性・効率性スコアが低いグループほど他指標の数値が大きくなる関係が、グラフにおいて見られることを意味する。 結論から言えば、業務の有効性・効率性スコアが高い会社ほど、営業利益平均成長率が高く、経理部門に占める派遣の割合が低いという結果となった。 以下、その結果が示唆する意味を読み解いてみよう。 (1) 営業利益平均成長率 業務の有効性・効率性スコアと営業利益平均成長率に、一定の関係が見られるだろうか(図表22)。 図表22 業務の有効性・効率性スコアと他の基本的指標との関係 (営業利益平均成長率) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 筆者の経験則では、継続的に利益成長を達成する会社は、全社的観点では企業価値の最大化に向けた戦略を策定し浸透させ、業務プロセスの観点では価値連鎖に関連する業務プロセスの最適化を図っており、経理財務部門も全社的視点で経営管理に役立つ情報提供や業務改善の提言を通じて、経営戦略に貢献していることが多い。 つまり、経理財務の業務の有効性と効率性のあり方が、会社の利益成長に影響を与える。 そこで、グラフを見てみると、業務の有効性・効率性スコア上位25社の営業利益成長率が最も高く、業務の有効性・効率性スコア下位25社の営業利益成長率が最も低いという正の関係が見られる。まさに、経理財務の業務の有効性・効率性が高い会社の収益の成長率が高まるという仮説が、客観的なデータとして証明されているといえる。 (2) 経理部門に占める派遣の割合 次に、業務の有効性・効率性スコアと経理部門に占める派遣の割合に、一定の関係が見られるだろうか(図表23)。 図表23 業務の有効性・効率性スコアと他の基本的指標との関係 (経理部門に占める派遣の割合) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 これも筆者の経験則では、経理財務に係る人件費の削減だけを求めて派遣社員を使う会社では、派遣社員のスキルと業務知識が不十分なままであったり、職務範囲が限定されるために視野が狭くなっていたりするため、経理財務の業務の有効性と効率性が低下していることが多い。 そこで、グラフを見てみると、業務の有効性・効率性スコア上位25社の派遣の割合が最も低く、業務の有効性・効率性スコア下位25社の派遣の割合が最も高いという負の関係が見られる。 負のグラフは、経理財務業務において派遣社員の比率を高めることには、業務の有効性と効率性の観点から限界があり、全体的な視点で職責を全うする正社員の確保が必要であるという仮説を支える証左となっている。 (了)
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税理士・公認会計士事務所[ホームページ]再点検のポイント 【第2回】「ホームページの維持費が高すぎる?」
税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第2回】 「ホームページの維持費が高すぎる?」 データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥 ホームページを制作する時には制作費がかかりますが、完成して公開した後も毎月費用が発生します。 この毎月の費用について、この連載では「維持費」と「更新料」に大別してご説明します。 「維持費」は何もしなくてもかかる費用、「更新料」はホームページの記載内容を書き換えたり追加したりした時にかかる費用だと考えてください。 更新料の説明は次回に譲り、今回は維持費について考えていきます。 * * * ホームページの公開後何もしなくても、毎月ホームページ管理業者に料金を支払っていることと思います。その金額は、管理業者により、月額数千円から数万円まで開きがあります。 この維持費については、内訳を知ることにより、その相場も自ずと分かってきます。 維持費の最低限の内訳は、通常は以下の3つです。 「サーバー」、「ドメイン」、聞き慣れない言葉が登場しましたね。 ここでは、ホームページを「壁新聞」に例えて説明しましょう。 壁新聞を掲示板に貼って公開するとして、その掲示板を立てるための区画が第1番~第100番まで、100区画用意されているとします。 仮に、これらの中の「第38番区画」に掲示板を立てて壁新聞を貼った場合、その壁新聞を読みたい人は、第38番区画を訪ねて行って、掲示板に貼ってある壁新聞を読むことになります。 この例の中の「掲示板」が①の「サーバー」であり、この「第38番区画」が②の「ドメイン」にあたります。そして、③の「管理」とは、壁新聞が剥がれたりして読めなくなったら、読めるように修復することをいいます。 サーバー(掲示板)は、通常はサーバー管理会社からレンタルして使います。 ホームページに必要充分な性能のサーバーのレンタル料は月額数百円~数千円程度です。また、ドメイン(第38番区画)の利用料は、年額1,000円弱~数千円程度です。 税理士や公認会計士の事務所のホームページで必要な機能等を考えると、サーバーもドメインも安いモノで充分なため、両者合わせて最安で月額500円程度です。 これに③「管理」のための人件費と若干の利益が上乗せされるため、ホームページ管理業者の料金としては、最低価格ラインの維持費で月額1,000円程度になるかと思われます。 ただし、ホームページの制作費を極端に安くする代わりに維持費を高めに設定している場合もありますし、上記①~③以外のさまざまなサービスが付加されて、維持費が高くなっている場合もあります。 例えば、ホームページと同じドメインのメールアドレスが利用できるようになっていたり、ホームページに通信販売のページが付いていたり等、多種多様なサービスがあるのです。 ご自身の事務所のホームページの維持費が高いと感じるのであれば、維持費に含まれているサービス内容を確認の上、必要のないものを外して維持費を下げられないか、ホームページ管理業者と交渉してみましょう。 ただし、ホームページの制作費が極端に安い代わりに維持費が高い場合には、「維持費」という名目で「制作費」を回収していますので、一定期間(例えば1年)は解約や契約変更ができないことになっているはずです。 どうしてもホームページ管理業者と折り合わない場合には、ホームページ管理業者を変更することもできるのですが、これはやや複雑なことになるため、第4回以降でご説明します。 次回はホームページの運営に係るもう1つの費用、「更新料」についてお話します。 (了)