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《速報解説》 公益法人等に寄附をした場合の譲渡所得等の非課税制度(措置法40条)の見直し~平成26年度税制改正大綱~

 《速報解説》 公益法人等に寄附をした場合の 譲渡所得等の非課税制度(措置法40条)の見直し ~平成26年度税制改正大綱~   弁護士 木村 浩之   1 はじめに 平成26年度税制改正大綱では、個人所得課税に関する改正として、公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例について、一定の要件の見直し等の措置が講じられることになった。 本稿では、現行制度の概要を解説するとともに、主な改正の内容について概説することとしたい。   2 現行制度の概要 個人が不動産や株式などの現物資産を法人に寄附した場合、その寄附をした時点において時価で譲渡されたものとみなされ(みなし譲渡)、譲渡所得税が課されるのが原則である(所法59①一)。 これに対して、公益法人等(公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的として事業を行う法人)に財産を寄附した場合は、一定の要件の下で国税庁長官の承認を受けることにより、譲渡所得税を非課税とする特例が認められている(措法40)。 ただし、公益法人等が寄附財産を他に移転するなどして、公益目的に使用しないことになる場合には、承認の取消しがなされて、その公益法人等を個人とみなして譲渡所得税が課されることになる(いわゆる「取戻し課税」)。 今回の改正では、寄附財産が他に移転したとしても、この取戻し課税を受けない場合が拡充されるなど、承認(の取消し)に関する要件が整備されることになる。   3 主な改正の内容 (1) 株式交換等が行われた場合の非課税特例の継続 公益法人等が寄附財産を他に譲渡した場合でも、それが収容等の一定の事由による譲渡であり、その譲渡対価で代替資産を取得したときは、承認の取消しはなされず、その代替資産について非課税特例が継続するものとされている。 今回の改正では、この一定の事由に株式交換等(税制適格のものに限る)が追加されることになる。これにより、株式交換等によって交付を受けた株式についても、非課税特例の継続対象とされることになる。 なお、この改正は、平成26年4月1日以後に行われる株式交換等について適用されることになる。 (2) 寄附財産が株式である場合の非課税特例の適用 非課税特例の承認を受けるための要件のひとつとして、「寄附者の所得税等を不当に減少させる結果とならないこと」が定められている。これが認められるための具体的な条件として、寄附を受ける公益法人等の公益性が確保されていることといった条件が定められている。 今回の改正では、寄附財産が株式である場合に、上記条件に加えて、公益法人等が株式の2分の1超を保有することにならないという株式保有制限が追加されることになる。 これにより、株式の寄附の場合は、非課税特例の適用を受けるためには、上記株式保有制限に抵触しないように留意する必要がある。 なお、この改正は、平成26年4月1日以後に行われる株式の寄附について適用されることになる。 (3) 買換えや合併等による移転をした場合の非課税制度の継続 公益法人等が寄附財産について一定の要件の下での買換えや合併等による移転をした場合、国税庁長官に事前届出をすることで、非課税特例の継続が認められている。 今回の改正では、この事前届出の便宜を図るために、非課税特例の承認対象財産であるかどうかの確認を申請することができるようになるとともに、合併等による移転の場合に事前届出を欠いていたとしても、承継法人が引き継いだ財産の中に非課税特例の承認対象財産があることを知ってから2ヶ月以内に届出をすることにより、非課税特例の継続が認められることになる。 なお、この改正は、平成26年4月1日以後に行われる申請又は届出について適用されることになる。 (了)
#52(掲載号)
#木村 浩之
2014/01/20
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《速報解説》 「連結の範囲及び持分法の適用範囲に関する重要性の原則の適用等に係る監査上の取扱い」等の改正

《速報解説》 「連結の範囲及び持分法の適用範囲に関する重要性の原則の適用等に係る監査上の取扱い」等の改正   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年1月14日付で、日本公認会計士協会は次の実務指針等を公表した。 これらの改正は、平成25年9月に企業会計基準委員会から公表された「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号)等の改正を受け、現行の会計基準等との整合性を図るためのものである。 上記①の改正については公開草案を公表しており、その他のものについては用語の修正であるとして公開草案を公表せずに改正するものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正事項 1 特別目的会社に関するQ&A 特別目的会社の連結及び開示として、次の会計基準等を用いている(Q2等)。 いずれも現行の会計基準等に合わせるものであり、現行実務に影響はないものと解される。 財務諸表等規則8条7項に合わせて「譲渡会社等」の用語に修正している(Q3等)。 財務諸表等規則8条7項の特則は、特別目的会社が資産を譲り受ける場合のみに適用されるので(連結会計基準7-2項、49-3項、49-5項及び54-2項)、特別目的会社の利用として物件の開発行為を行うタイプについては財務諸表等規則8条7項の特則の適用はないことになる。 これも現行実務と同じなので、影響はないものと解される。 そのほか、「連結財務諸表に関する会計基準」及び「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」に従って、特別目的会社に関する開示に関する留意点(Q23)をあらためて整理したり、監査基準委員会報告書の参照箇所について、参照先の改正等に合わせて変更を行ったりしている。 適用は平成26年1月14日からとされている。 2 連結の範囲及び持分法の適用範囲に関する重要性の原則 「連結の範囲及び持分法の適用範囲に関する重要性の原則の適用等に係る監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第52号)が改正されている。 実際に改正された箇所は用語修正の範囲であるが、実務指針第52号1項の最後に次の記載があることに注意が必要である。 平成25年9月に、企業会計基準委員会から「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号)、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号)などの一連の会計基準等の改正が公表されている。 これらの会計基準等において、当期純利益の表示が改正されており、改正前の会計基準等の「少数株主損益調整前当期純利益」は、改正後の会計基準等では「当期純利益」となっている。また、改正前の会計基準等の「当期純利益」は、改正後の会計基準等では「親会社株主に帰属する当期純利益」となっている。 このように「当期純利益」の内容が変わっているが、実務指針第52号4項の「連結の範囲から除外できる重要性の乏しい子会社について」において、利益基準は、従来と同様に次の算式となっている(持分法については5項)。 これは、平成25年9月に改正された「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号)、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号)などの一連の会計基準等を考慮しても、従来の利益基準に係る算式を改正する必要がなかったためと解される。 実務上、「連結の範囲から除外できる重要性の乏しい子会社について」及び「持分法の適用範囲から除外できる重要性の乏しい非連結子会社等について」の適用に際しては、上記の利益基準、実務指針第52号4-2項及び5-2項に注意が必要である。 平成25年9月に改正された「企業結合に関する会計基準」等の適用時期について、連結会計基準第39項の表示方法に係る事項については、平成27年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用するものとし、早期適用は認められていない(連結会計基準44-5項)。 しかしながら、実務指針第52号の適用は平成26年1月14日からとされていることにも注意が必要である。 3 「個別財務諸表における関連会社に持分法を適用した場合の投資損益等の注記に関する監査上の取扱い」などについて Ⅰで述べた③から⑤については、次のような用語修正が行われている。 適用時期については、平成26年1月14日から適用されるものと、平成25年に改正された連結会計基準を適用する連結会計年度から適用するものとがあるので、各実務指針で確認していただきたい。 (了)
#52(掲載号)
#阿部 光成
2014/01/20
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産業競争力強化法の成立について(更新)

産業競争力強化法の成立について 12月4日に産業競争力強化法が第185回国会(臨時会)において可決・成立しました。公布後3ヶ月を超えない範囲内において、政令で定める日から施行されます。 〔追記2014/1/17〕 本日付の官報号外第9号において「産業競争力強化法の施行期日を定める政令」及び「産業競争力強化法施行令」等、関係政省令・告示が公布されました。 〔追記2014/1/14〕 「産業競争力強化法」の施行のための政令が閣議決定されました(経済産業省ホームページ)。 公布 平成26年1月17日(金)、施行 平成26年1月20日(月) 〔追記12/11〕 ◆12月11日付け官報(号外第269号)において、産業競争力法が公布されました。 ◆「産業競争力強化法施行令(案)等に対する意見募集について」(パブリックコメント) 10月1日に公表された「民間投資活性化等のための税制改正大網」における各特例措置については、この法律の施行の日から実質適用されるものもあります。下記に関連記事をまとめましたので、ぜひご覧ください。
#Profession Journal 編集部
2014/01/20
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《速報解説》 産業競争力強化法の施行日は平成26年1月20日~関係政省令の公布について~

《速報解説》 産業競争力強化法の施行日は平成26年1月20日 ~関係政省令の公布について~   Profession Journal 編集部   平成26年1月17日付の官報号外第9号において「産業競争力強化法の施行期日を定める政令」及び「産業競争力強化法施行令」等、関係政省令・告示が公布され、産業競争力強化法の施行期日が平成26年1月20日と定められた(同法附則第1条第2号に掲げる規定(特許料の軽減措置等に係る規定)の施行期日は同年4月1日)。 「産業競争力強化法」(以下「本法」)は先の臨時国会において成立したもので、アベノミクス戦略として、日本経済の再生と産業競争力強化を目的に、企業の提案に基づく「規制改革」を実行するための新たな特例措置、「産業の新陳代謝」を促進するためのベンチャー投資や事業再編の促進などの措置が規定されている。 本法は昨年(平成25年)12月11日に公布されたが、附則第1条において「公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」と規定されていたところ、上記政令により施行期日が確定したことになる。 「税制秋の陣」として昨年10月に与党が公表した「民間投資活性化等のための税制改正大網」では、景気刺激策としての企業減税に係る特例措置が織り込まれており、「産業競争力強化法の施行の日から適用する」とされているものがあることから、その施行期日がいつになるのか、実務家の間で注目されていた。 詳しくは下記の解説記事をご覧いただきたい。 なお、上記大綱に関する改正法案は、「平成26年度税制改正大綱」(12月24日閣議決定)と合わせて、1月24日に召集される通常国会において審議される予定となっているが、「事業再編等に係る登録免許税の軽減措置」については、本法の附則第29条(租税特別措置法の一部改正)において既に規定されているので留意しておきたい。 なお、施行期日を定める政令と共に、要件や手続規定を定めた関係政省令等についても官報同号にて公布されており、主に以下のようなものがある。 なお、「経済産業省関係産業競争力強化法施行規則」の第5条においては、本法第2条第13項で定義されていた「生産性向上設備等」についてのより詳しい要件が規定されており(官報同号P49)、上記大綱における「生産性向上設備投資促進税制」の適用にあたり参考になると思われる。 (了)
#52(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2014/01/17
お知らせ その他お知らせ

Profession Journal No.52 公開のお知らせ

2014年1月16日(木)AM10:30、Profession Journal  No.52 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。
#Profession Journal 編集部
2014/01/16
所得税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第13回】「土地譲渡に係る所得税と相続税との二重課税問題(その1)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第13回】 「土地譲渡に係る所得税と相続税との二重課税問題(その1)」   国士舘大学法学部教授・法学博士 酒井 克彦   いわゆる『年金二重課税事件』と呼ばれる事例の上告審最高裁平成22年7月6日第二小法廷判決(判時2079号20頁。以下「平成22年最判」ともいう)は、相続人が取得した生命保険年金のうち、相続税の課税対象とされた年金受給権の額に相当する部分については、所得税が非課税であると判示した。このことは巷間知られているところである。 さて、この最高裁判決は、原告(被控訴人・上告人)の夫が訴外生命相互会社との間で締結していた生命保険契約(被保険者及び契約者:夫、受取人:原告)に基づき、夫の死亡により原告が受け取った年金払保障特約年金について、所得税法9条1項16号(訴訟当時は15号)の適用により所得税が非課税と判断された事例であるが、この判決の考え方が、他の二重課税が問題とされる事案にまで適用されると解するべきかが議論されている。 近時、この点を直接に争う事案が散見されるところ、本稿では、そのうちの代表的な事案の一つである東京地裁平成25年6月20日判決(判例集未登載。以下「本件東京地裁判決」ともいう)を素材にして、この点につき検討を加えることとしたい。 この事案では、相続した土地の譲渡において、当該土地に係る含み益のうち、被相続人が所有していた期間に係るものについては、相続税と譲渡所得に係る所得税との二重課税が生じているとして、所得税法の非課税規定が適用されると解するべきか否かが問題となっている。   Ⅰ 本件事案の概要 本件は、亡Aから相続により取得した不動産の譲渡に係る所得税を分離長期譲渡所得の金額に計上し、平成21年分所得税の確定申告をしたX(原告)が、上記譲渡に係る譲渡所得のうち、亡Aの保有期間中の増加益に相当する部分については所得税法9条1項15号(現行法16号。以下「本件非課税規定」ともいう)の規定により所得税を課されないことを理由に、S税務署長に対して、平成21年分所得税の更正の請求をしたところ、S税務署長から、更正をすべき理由がない旨の本件通知処分を受けたため、国Y(被告)を相手取り、かかる処分の取消しを求めた事案である。 本件の具体的事実関係はおおむね次のとおりである。 亡Aが平成19年10月7日に死亡したため、亡AとUとの間の子であるXは、本件土地及び建物(以下「本件建物等」という)の亡Aの共有持分を相続により取得した。その結果、XとUは、本件建物等をXが持分6分の5、Uが持分6分の1の割合で共有することとなった。X及びUは、平成21年7月31日に訴外Bに対して、代金2,100万円(Xの持分に相当する金額は1,750万円)で本件建物等を譲渡(以下「本件譲渡」という)した。 Xは、平成22年3月12日にS税務署長に対して、本件譲渡に係る譲渡所得の内訳として、譲渡価額1,750万円、取得費(昭和41年3月19日)282万1,237円、譲渡のための費用51万6,917円、譲渡所得金額1,416万1,846円を含む平成21年分所得税の確定申告を行った。 その後、Xは、平成23年3月2日に、S税務署長に対して、分離長期譲渡所得の金額を零円、還付金の額に相当する税額を48万3,195円とする平成21年分の所得税の更正の請求を行った。この更正の請求は、本件譲渡に係る譲渡所得のうち、亡Aの保有期間中の増加益に相当する部分については、本件非課税規定により所得税が課されないことを理由とするものである。なお、Xは、亡Aの相続に係る相続税の共有持分の相続税評価額を2,034万7,675円としていたところ、本件譲渡の代金2,100万円のうちXの持分に相当する金額は1,750万円であり、この金額は、上記相続税評価額を下回るものであるため、Xは、本件譲渡に係る譲渡所得の金額のすべてが非課税所得になると主張したのである。   Ⅱ 争点 本件の争点は、本件譲渡に係る譲渡所得のうち、亡Aの保有期間中の増加益に相当する部分については本件非課税規定により所得税を課されないか否かである。   Ⅲ 当事者の主張 1 Yの主張 次のとおり、本件譲渡に係る譲渡所得のうち、亡Aの保有期間中の増加益に相当する部分については本件非課税規定の適用はなく、この増加益に相当する部分については所得税が課される。 2 Xの主張 次のとおり、本件譲渡に係る譲渡所得のうち、亡Aの保有期間中の増加益に相当する部分については既に相続税が課税されているため、本件非課税規定が適用される。 さて、いずれの主張が妥当であろうか。 (続く)
#52(掲載号)
#酒井 克彦
2014/01/16
国税通則 税務 税務・会計 解説 解説一覧

改正国税通則法、施行後1年を検証する~税務調査は変わったか?【前編】

改正国税通則法、施行後1年を検証する ~税務調査は変わったか? 【前編】   公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   はじめに 平成25年1月1日から改正国税通則法が施行され、1年が経過した。 この改正では、法施行後における税務調査手続等を円滑かつ適切に実施する観点から、その施行前である平成24年10月1日から事前通知、修正申告等の勧奨の際の教示文の交付手続等が「先行的取組」として実施されているが、改正国税通則法に基づく新しい税務調査制度が実施されて以降、税務調査の現場において、税務当局や納税者にどのような影響を及ぼしているのか、2回に分けて検証することとする。   1 税務調査の実地件数に対する影響 国税庁の平成24事務年度(平成24年7月から25年6月)の各税目の実地調査件数は、3割程度減少していると公表されている。すなわち、所得税の実地調査は、6万9,974件(前年9万8,687件)であり、前事務年度から3割減少している。 この減少の要因としては、「①1件当たりの調査日数増加(1件当たり1.3日増加)」や「②国税通則法の改正による研修や事務量の増加」が挙げられている。 法人税の実地調査も前事務年度より27.4%減少して、9万3,000件となっている。法人税の調査1件当たりの日数は2.6日増加し、11.7日となっている。 これらの減少原因は、国税通則法の改正による理由附記の範囲の拡大や法令遵守に係るチェック項目の増加による事務量の増加、改正国税通則法の研修などが挙げられている。 また、相続税の実地調査の件数も12,210件と、前事務年度に比べて1割強減少している。これは、改正による影響で事務量が増加し、さらに調査1件当たりの平均日数が13.9日(前事務年度12.7日)に増加したことが原因となっている。 相続税の実地調査の件数が減少していることから、国税庁は、平成26年1月から、所得税調査で行われている納税者に文書を送付し申告書の見直しを促す取組み(簡易な接触)を実施することになっている。 このように、所得税、法人税そして相続税の実地調査の件数は、国税通則法の改正によって、確実に減少しているのである。   2 事前通知の法定化 国税通則法74条の9では、 として、調査に際し、事前通知をする旨を定めている。 法定化された「事前通知事項」は、次のとおりである。 これらの「事前通知事項」の通知は、原則として、納税義務者と税務代理人(税務代理権限証書を提出した税理士等)の両者に対して行うことになる。 国税庁は、事前通知を行う際に、当該職員に対し、納税者が理解しやすく丁寧に説明すべきと指導していることや、当該職員がこのような対応に不慣れで、ナーバスになっているためなのか、当該職員が電話等で事前通知を行う際には、間違えないように、文面を機械的に読み上げることが多い。 また、税理士に事前通知を連絡するとともに、納税者に対しても同様に連絡することになっている。従前は、税務代理人に調査の連絡をすれば、税務代理人にその旨を納税者に伝えることを依頼すればよかったのであるが、改正国税通則法では、双方に直接連絡することが求められている。 もっとも、納税者から事前通知の詳細を税務代理人から聞く旨の申立てがあれば、納税者に対しては、実地調査を行う旨のみ通知すればよいことになっている。 このように、事前調査の法定化(実質的にはその内容は変わらないのであるが)だけでも税務当局の手間が従前と比べ増えていることは明らかである。   3 物件の提示・提出 国税通則法74条の2では、 と規定している。 ここでいう「物件の提示」とは、「当該職員の求めに応じ、遅滞なく当該物件(その写しを含む)の内容を当該職員が確認しうる状態にして示す」ことをいい、「物件の提出」とは、「当該職員の求めに応じ、遅滞なく当該職員に当該物件の占有を移転すること」をいう。 また、「必要があるとき」については、具体的な判断基準を法令等で明確に示すことができないことから、最終的には、その調査を担当している税務職員の判断によらざるを得ない。 しかしながら、事務運営指針において、 として、当該職員に対し、相手方の理解と協力の下で実施することを指導している。 このような物件の提示・提出は、従前と大きく変わるものではないが、事務運営指針等でその運用を具体的に文言化されると、当該職員は自ずと、物件の提示・提出を行う際には慎重にならざるを得ない。また、税務調査に非協力的な納税者等のケースでは、物件の提示・提出を拒否され、説得することに(従前以上に)時間を要することも予想される。 そうすると、結果的に冒頭で述べたように、税務調査の日数が増えることになるのである。 (了)
#52(掲載号)
#八ッ尾 順一
2014/01/16
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提出前に確認したい「国外財産調書制度」のポイントQ&A 【第2回】「対象となる国外財産の判定基準」

提出前に確認したい 「国外財産調書制度」のポイントQ&A 【第2回】 「対象となる国外財産の判定基準」   公認会計士・税理士 前原 啓二 Q 国外財産調書の提出対象となる「国外財産」か否かは、どのように判別するのですか。 A (1) 国外財産調書の提出対象となる「国外財産」とは 国外財産調書の提出対象となる「国外財産」とは、国外にある財産をいう(調書法2七)。   (2) 国外財産調書の提出対象となる「国外財産」の所在 国外財産調書の提出対象となる「国外財産」の所在については、次のとおりとし、国外財産の所在の判定は、その年の12月31日における現況により行う(調書法10③、相法10)。 (了)
#52(掲載号)
#前原 啓二
2014/01/16
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平成25年分 確定申告実務の留意点 【第2回】「平成25年分の申告から適用される改正事項②」

平成25年分 確定申告実務の留意点 【第2回】 「平成25年分の申告から適用される改正事項②」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   第2回目は、平成25年分の所得税から適用される改正事項のうち、給与所得以外の所得に係るものについて主な内容を解説する。 【1】 退職所得課税の見直し 特定役員退職手当等に係る退職所得の金額は、退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した額とされた(所法30②)。 「特定役員退職手当等」とは、次の2つの要件を同時に満たす退職手当等をいう(所法30④)。 この改正により、退職所得の金額は次の通りとなる。   【2】 事業所得関係の改正 (1) 経営改善設備を取得した場合の特別償却、所得税額の特別控除の創設 ① 制度の対象者 青色申告書を提出する中小企業者に該当する個人(※) (※) 「中小企業者に該当する個人」・・・常時使用する従業員が1,000人以下の個人事業者(措令5の3⑥) ② 制度の概要 平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に、経営改善設備(※1)の取得等をして、指定事業(※2)の用に供した場合には、取得価額の30%の特別償却又は取得価額の7%の特別税額控除(その年分の事業所得に係る所得税額の20%を限度とし、控除限度超過額は1年間の繰越可)を選択適用することができる(措法10の5の3)。 (※1) 「経営改善設備」・・・「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」別表第1の建物附属設備(60万円以上のもの)及び器具及び備品(30万円以上のもの)であり(措令5の6の3②)、中古品は対象外となる。 (※2) 「指定事業」・・・卸売業、小売業、農業、林業、漁業、水産養殖業、情報通信業、運送業、倉庫業、損害保険代理業、不動産業、その他一定のサービス業等(措令5の6の3③、措規5の10②) ③ 適用要件 この制度の適用を受けるには、次の要件をすべて満たす必要がある。 (2) 特別償却等の適用期限の延長 次の各制度について、適用期限が延長されている。   【3】 譲渡所得関係の改正 (1) 債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の課税の特例の創設 ① 制度の対象者 中小企業者に該当する内国法人(※)の取締役等である個人で、その内国法人の債務の保証人である者 (※) 「中小企業者に該当する内国法人」・・・資本金の額が1億円以下の法人(資本金1億円超の大規模法人の子会社を除く) ② 制度の概要 平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に、①の個人が有する資産(有価証券を除く)でその資産の使用又は収益を目的とする権利がその内国法人の事業の用に供されているものを、その内国法人に贈与した場合には、当該贈与によるみなし譲渡課税は適用されない(措法40の3の2①)。 ③ 適用要件 この制度の適用を受けるには、次の要件をすべて満たす必要がある。 (2) 特定居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例の見直し 特定居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用対象となる買換資産の範囲に、既存住宅売買瑕疵保険に加入している一定の中古住宅である家屋が追加された(措法36の2)。 これに伴い、確定申告書に添付する、その家屋が地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることを証する書類の範囲に、家屋が既存住宅売買瑕疵保険に加入していることを証する書類(加入後2年以内のものに限る)が追加された(措法36の2、措規18の4②)。 この改正は、平成25年1月1日以後に居住用財産を譲渡し、同年4月1日以後に買換資産を取得する場合に適用される。   【4】 その他の改正 (1) 財産債務明細書の記載事項の改正 平成25年分以後の所得税について、財産債務明細書に記載すべき公社債等の価額は、その年の12月31日における価額(市場価格のない公社債等でその価額の計算が困難なものは、その取得価額)とすることとされた(所規104②)。 (2) 電子証明書等特別控除の廃止 電子証明書等特別控除は、適用期限の到来(平成24年分まで)をもって廃止された(旧措法41の19の5)。 (3) 東日本大震災の復興支援のための措置 東日本大震災の復興を支援するため、次の措置が創設され又は制度の見直しが行われている。各制度の詳細については、国税庁ホームページ「東日本大震災により被害を受けた場合等の税金の取扱いについて」をご参照いただきたい。 *   *   *  次回は、確定申告に係る住宅税制について解説を行う予定である。 (了)
#52(掲載号)
#篠藤 敦子
2014/01/16
所得税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第14問】「一時的に居住の用に供した家屋の譲渡」-居住用財産の範囲-

居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第14問】 「一時的に居住の用に供した家屋の譲渡」 -居住用財産の範囲-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、長らく住んでいた家屋Aが老朽化したので、これを取り壊し、その跡地に家屋Bを建築しました。Xは、家屋Bの新築にあたり、長男に貸していたX所有の家屋Cから長男を立ち退かせ、新築家屋Bが完成するまでの約5ヶ月間、Xは家屋Cに入居しました。 Xは、家屋Bの完成後、直ちに家屋Bに移り、家屋Cをその敷地と共に売却しました。 この場合、「3,000万円特別控除(措法35)」の特例を受けることができるでしょうか? A 家屋Cは、一時的に居住の用に供した家屋であることから、「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることはできない。 〈解説〉 家屋Cは、家屋Bの建築期間中だけの一時的な仮住まいとして利用することを目的としていたものであり、また、家屋Bの完成後、Xは直ちに家屋Bに入居しており、家屋Cへの入居期間はわずか5ヶ月間に過ぎないので、家屋Cは、Xの居住用家屋には該当しない(措通31の3-2(居住用家屋の範囲)(2)イ)。 (了)
#52(掲載号)
#大久保 昭佳
2014/01/16
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