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《速報解説》 法人税基本通達等の一部改正(7/9公表)について
《速報解説》 法人税基本通達等の一部改正(7/9公表)について 弁護士 木村 浩之 1 はじめに 平成25年7月9日付けで、国税庁ホームページにおいて、平成25年度税制改正に伴う法人税関係の通達改正の内容が公表された。 平成25年度税制改正のうち、法人税に関するものについては、租税特別措置法の改正として各種の政策促進税制が創設され、又は既存の制度の拡充がなされたものの、法人税法において例年のような大きな改正はなく、比較的小幅な改正にとどまっていた。 そこで、これに伴う法人税関係の通達改正についても、それほど大きな改正がみられるわけではなく、通達改正の内容としては、基本的には、法令改正に伴う用語・引用条文等の整理、廃止された規定に関する定めの廃止、新たに創設等された規定に関する定め(既存の通達と同様の定め)の新設等を行うための一部改正がなされたものである。 ただし、一部の新たに創設された制度(①生産等設備投資促進税制及び②所得拡大促進税制)に係るものについては、既存の通達にはない定めもみられることから、以下では、これらについて簡潔に解説することとしたい。 2 生産等設備投資促進税制(措法42の12の2)に係る改正 平成25年度税制改正では、国内の設備投資を促進するために、「生産等設備」への年間総投資額が前年度と比較して10%超増加した場合には、その事業年度に新たに取得した機械装置について、30%の特別償却又は3%の税額控除の選択適用が認められる制度が創設された。 今回の通達改正では、この制度の投資対象である「生産等設備」に含まれる範囲が具体的に明らかにされている。 すなわち、工場、店舗、作業場のように収益を稼得するために行う活動(生産等活動)の用に直接供されるものが生産等設備に含まれるのであり、いわゆるバックオフィス機能のみを有する本店その他の直接には生産等活動の用に供されないものは生産等設備には含まれないという基本的な区分に加えて、これらの双方の機能を有する共用資産については、① 一部でも生産等活動の用に供されていれば全部が生産等設備になること、② 生産等活動とそれ以外の用に供される部分を合理的に区分して計算されている場合には、継続適用を要件として、それも認められることが明らかにされている。 3 所得拡大促進税制(措法42の12の4)に係る改正 平成25年度税制改正では、いわゆるアベノミクス経済政策の一環として、個人所得の拡大を図り、よって個人消費を促進するという観点から、給与等の支給額を増加させた場合に、その増加額の10%を税額控除できるという所得拡大促進税制が創設された。 この制度の適用に当たっては、給与等の支給額に含まれるかどうかに疑義が生じる場面があることから、今回の通達改正では、その取扱いが明らかにされている。 すなわち、①労働者の雇用に応じて国等から支給を受けた助成金相当額については、給与等の支給額から除かれることが明らかにされている。 また、出向元法人が出向者に給与等の支給をして、出向先法人が出向元法人に給与負担金を支払う場合には、②負担金の支払を受けた出向元法人においては、その負担金相当額が給与等の支給額から除かれること、逆に、③負担金の支払をする出向先法人においては、賃金台帳に出向者を記載していることを要件として、その負担金相当額が給与等の支給額に含まれることが明らかにされている。 (了)
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《速報解説》 「時価の算定に関する研究資料」の解説
《速報解説》 「時価の算定に関する研究資料」の解説 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成25年7月9日、日本公認会計士協会は「時価の算定に関する研究資料~非金融商品の時価算定~」(会計制度委員会研究資料第4号。以下「研究資料」という)を公表した。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 「研究資料」の意義 我が国の会計実務においては、資産の時価を算定する局面が増加している。 しかしながら、棚卸資産に関する正味売却価額の算定や固定資産の減損会計における正味売却価額の算定のように、非金融商品についての時価算定については判断に迷う論点が多いと思われる。 「研究資料」は、時価の算定方法について1つの見解や結論を見出すことは困難であるが、これまでの専門委員会での検討経過を研究資料として公表することは意義があると考えられて、公表されたものである。 「研究資料」については、次のことに注意が必要である。 Ⅲ 「研究資料」の内容 時価の定義について、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号)では、 としている(「金融商品に関する会計基準」6項)。 他の会計基準で時価を定義する際には、それぞれの会計基準が適用される状況に応じた表現を用いている。 時価の算定に際して、市場価格が観察できればそれに基づくことになる。 市場価格が観察できない場合には、合理的に算定された価額は、一般に、次の見積方法が考えられる。 「研究資料」は、有形固定資産、無形資産、企業結合に関連する論点について、これらの見積方法を用いつつ、【設例】により「時価算定のポイント」を説明している。 (了)
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《速報解説》 「日本における公認会計士及び公認会計士制度のあるべき姿の提言プロジェクトチーム」(中間報告)の解説
《速報解説》 「日本における公認会計士及び 公認会計士制度のあるべき姿の 提言プロジェクトチーム」 (中間報告)の解説 公認会計士 阿部 光成 平成25年7月3日、日本公認会計士協会・日本における公認会計士及び公認会計士制度のあるべき姿の提言プロジェクトチームは、「日本における公認会計士及び公認会計士制度のあるべき姿の提言プロジェクトチーム」(中間報告)(以下「中間報告」という)を公表した。 なお、文中、意見に関する部分は私見であることを申し添える。 Ⅰ 中間報告の背景 平成15年公認会計士法改正、平成23年公認会計士法改正案の廃案の過程において、結果として、待機合格者問題もあり、近年、公認会計士試験の出願者が激減している状況にある。 これらの課題に対応するために、最も重要な要素としては、公認会計士制度のあるべき姿、公認会計士の存在意義などについての基本的認識を把握し、現状における問題点を指摘するとともに、それに対する公認会計士としての考え・解決策を継続的に表明していくことが必要と考えられている。 中間報告は、この基本的認識を踏まえ、協会自らが制度設計から法改正について提案することが、本来のあるべき姿ではないかと考えられると述べている。 そこで、「我が国における公認会計士及び公認会計士制度のあるべき姿提言プロジェクトチーム」が設置され、「公認会計士及び公認会計士制度のあるべき姿」について、その歴史的背景や現状を踏まえて考察するとともに、諸外国の制度に関する調査研究を行い、制度の国際競争力を高めるのに必要なビジョンとして継続して内外に広く提言するものである。 Ⅱ 中間報告の提言 中間報告では、「6.常設の調査研究機関設置について(提言)」において、いわゆるシンクタンク機能を有する調査研究機関を常設することを提言している。 当該機関は、公認会計士・監査制度について高い専門的知識と研究手法を有する人材を集め、現行の委員会及び事務局とは別に組織化するものであり、中長期的及び国際的観点から、内外の公認会計士制度及び監査制度の情報の収集及び整理並びに収集した情報の分析及び調査研究活動を行うことが予定されている。 (了)
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《速報解説》 「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い(案)」の解説
《速報解説》 「従業員等に信託を通じて 自社の株式を交付する取引に関する 実務上の取扱い(案)」の解説 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 従業員の福利厚生に資するために、信託を利用して自己株式を取得する取引が行われており、実務上、日本版ESOP(Employee Stock Ownership Plan)などと呼ばれることがある。 当該取引に関する会計処理は、実務上、バラツキがあるといわれている。 そこで、平成25年7月2日、企業会計基準委員会は、実務対応報告公開草案第39号「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い(案)」(以下「公開草案」という)を公表し、意見募集を行っている。 意見募集期間は平成25年9月2日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 範囲 従業員への福利厚生を目的として、① 従業員持株会に信託を通じて自社の株式を交付する取引及び②受給権を付与された従業員に信託を通じて自社の株式を交付する取引を対象とする。 つまり、公開草案は次の取引を対象としている。 公開草案は、当該取引に関する法律的な解釈を示すことを目的とするものではなく、当該取引が、法的に有効であることを前提としている(公開草案注1)。 Ⅲ 従業員持株会に信託を通じて自社の株式を交付する取引 1 個別財務諸表の会計処理 個別財務諸表上、総額法で会計処理する。すなわち、信託の資産及び負債を企業の資産及び負債として貸借対照表に計上し、信託の損益を企業の損益として損益計算書に計上する。 このため、信託の財産は、個別財務諸表に計上することになる。 総額法の会計処理は、次のように行われる。 2 自己株式処分差額の認識 信託による企業の株式の取得が、企業による自己株式の処分により行われる場合、企業は信託からの対価の払込期日に自己株式の処分を認識する(「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第2号)5項参照)。 3 連結財務諸表の会計処理 連結財務諸表上、次のように会計処理する。 Ⅳ 受給権を付与された従業員に信託を通じて自社の株式を交付する取引 1 個別財務諸表の会計処理 個別財務諸表上、総額法で会計処理する。 このため、信託の財産は、個別財務諸表に計上することになる。 総額法の会計処理は、次のように行われる。 2 従業員へのポイントの割当て等に関する会計処理 企業は、従業員に割り当てられたポイントに応じた株式数に、信託が自社の株式を取得したときの株価を乗じた金額を基礎として費用及びこれに対応する引当金を計上する。 信託による自社の株式の取得が複数回にわたって行われる場合には、従業員に割り当てられたポイントに関する費用及びこれに対応する引当金は、平均法又は先入先出法により算定する。 信託から従業員に株式が交付される場合、企業はポイントの割当て時に計上した引当金を取り崩す。引当金の取崩額は、信託が自社の株式を取得したときの株価に交付された株式数を乗じて算定する。信託による自社の株式の取得が複数回にわたって行われる場合、引当金の取崩額は、平均法又は先入先出法により算定する。 3 自己株式処分差額の認識 信託による企業の株式の取得が、企業による自己株式の処分により行われる場合、企業は信託からの対価の払込期日に自己株式の処分を認識する。 4 連結財務諸表の会計処理 連結財務諸表上、次のように会計処理する。 Ⅴ 開示等 次の注記を行う。 Ⅵ 適用時期等 平成26年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。 ただし、実務対応報告公表後最初に終了する事業年度から適用できる。 実務対応報告の適用初年度の期首より前に締結された信託契約に係る会計処理については、実務対応報告の方法によらず、従来採用していた方法を継続することができる。 この場合、各期において、以下を注記する。 (了)
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酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第1回】「馬券訴訟」
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第1回】 「馬券訴訟」 国士舘大学法学部教授・法学博士 酒井 克彦 はじめに 個人が得た競馬の馬券の払戻金に対しては所得税が課されることとなるが、その際の所得区分が争点となっている事案が注目を集めている。ここでは、札幌国税不服審判所平成24年6月27日裁決(札裁(所)平成23第9号)を取り上げてみたい。 裁決では、納税者の主張する雑所得ではなく一時所得に該当するとの判断が示されているが、その判断の妥当性について考えてみたい。まずは、事案の概要と国税不服審判所の裁決内容を紹介しよう。 1 事案の概要 X(請求人)は公務員であり、その余暇のほとんどの時間を競馬の馬券の購入に充てている。払戻金を原資に継続的に毎週馬券を購入しており、購入に当たっては、出走馬の過去の実績、競走への適合性、騎手の技量や騎乗馬との相性、その日の出走馬のコンディション、枠順、コースの特徴、馬場の状態など多種多様のファクターを組み合わせて着順を予想し、また、競走後には競走内容及び自らの予想の分析及び検討を繰り返して次の競走に生かし、高確率で馬券を的中させている。 Xは確定申告において、馬券の払戻金(本件競馬所得)について、これを雑所得として申告したが、税務署長Y(原処分庁)はこれを一時所得に当たるとして更正処分及び加算税賦課決定処分等を行った。 本件は、Xがこれを不服として審査請求した事案である。 争点は、本件競馬所得は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」に該当し一時所得となるか、これに該当せず雑所得となるか、また、本件競馬所得に係る所得金額の計算において、年間を通じた馬券の購入金額の全額を控除できるか否かである。 〔図表1〕 馬券の購入と払戻しの状況(概数) (注)概数での表記であるため、差引金額や合計金額は合致していない。 〔図表2〕 申告等の状況(概数) 2 国税不服審判所の判断 裁決は以下のように断じて、Xの主張を排斥し、処分を妥当なものと判断した。 すなわち、国税不服審判所は、 とする。 その上で、 というのである。 次回もこの裁決について、深く切り込んでみたい。 (続く)
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相続税対策からみた生前贈与のポイント 【第1回】「贈与契約・贈与財産管理と贈与税の課税方法の選択」
相続税対策からみた 生前贈与のポイント 【第1回】 「贈与契約・贈与財産管理と 贈与税の課税方法の選択」 税理士法人タクトコンサルティング 税理士 山崎 信義 1 税務トラブルを避けるための贈与契約と贈与財産の管理のポイント 相続税法においては、贈与により財産を取得した個人について贈与税の納税義務を課している。ただし、相続税法上、贈与についての定義規定は設けられておらず、実務上は贈与に関する民法の規定を踏まえ、贈与があったかどうかを判定している。 民法上、贈与は当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる(549条)。贈与契約は口頭でも可能だが、その契約が本当に成立したことを明確にするため、書面により贈与契約書を作成しておいた方がよい。 さらに、過去の国税不服審判所の裁決事例等をみると、税務上贈与として認められるためには、贈与を受けた財産を受贈者が管理し、使用することも必要である。例えば、親から子への預貯金の贈与について、名義だけを子に変更しても、通帳やキャッシュカードを親が管理している、子が預金を引き出して使った形跡がないというような場合は、“名義預金”として親の財産と認定され、相続税の課税対象とされるおそれがあるので、注意を要する。 なお、贈与税の申告及び納税を行うことは、贈与が行われたかどうかの事実を認定する上での証拠の1つにすぎない。贈与が行われたかどうかは、具体的な事実関係を総合勘案して判断されることになるので、この点についても注意したい。 2 相続税対策から見た贈与税の課税方法の選択 贈与税の課税方法には、「暦年贈与課税制度」と「相続時精算課税制度」の2種類がある。 暦年課税制度は、その年1月1日から12月31日の1年間に贈与でもらった財産につき、基礎控除の110万円を超える金額に税率を乗じて贈与税を計算する方法である。 贈与税は累進課税制度を採用しており、贈与を受けた金額の大きさに応じて税率も高くなるので、一度にまとまった額の財産の贈与を受けると贈与税の負担がかなり重くなる。このため、1回あたりの贈与額を小さくし、贈与する人数と回数(年)を多くすれば、子の贈与税負担を抑えながら親の財産を減らすことができ、安全確実な相続税の節税対策となる。 ただし、贈与した財産であっても相続税の対象とされる場合があるので注意が必要である。被相続人から財産を相続した人が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産は、原則、相続税の課税対象とされる。 相続税の節税を考えるなら、相続人となる子への贈与は早いうちから始めておくべきである。また、子の配偶者や孫など遺産を相続しない人へ贈与した財産は相続税の課税対象とならないので、贈与する相手は子以外にも広げておくとよいだろう。 相続時精算課税制度は、原則、その年1月1日現在で65歳以上の親(※1)から、同20歳以上の子(※2)が財産の贈与を受けた場合に、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に子がこの特例の選択する旨の届出書を贈与税の申告書に添付して住所地の税務署に提出したときは、贈与により取得した財産の額から2,500万円の特別控除を差し引き、差引後の金額に20%の税率を掛けて贈与税を計算するという税制である。 相続時精算課税制度の選択をした場合、子に贈与をした財産は最終的には贈与時の相続税価額により親の相続税の計算に取り込まれ、相続税の課税対象とされる。贈与財産も相続税の課税対象となるので、相続時精算課税制度による贈与については、基本的に相続税の課税対象額を減らす効果はない。さらに、贈与者が平成27年以降に死亡した場合には、相続時精算課税に係る贈与財産について、増税改正後の税制により相続税が計算される。 また、相続税の課税対象とされる財産の価額は贈与時の相続税評価額とされるので、贈与時よりも相続時の相続税評価額が高い場合はよいが、反対に贈与時よりも相続時の相続税評価額が低い場合であっても、贈与時の高い評価額で相続税の計算を行うことになり、結果的に税負担が増加することになる。 平成27年以降に実施される相続税増税を念頭に置けば、現時点での贈与について相続時精算課税制度を選択すると税務上不利となるケースが大半であろう。 相続時精算課税制度は選択制であり、いったん選択すると暦年課税制度への変更ができない。課税方法の選択については、慎重に検討したい。 (了)
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教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置について 【第5回】「個別論点~「学校等」「教育資金」の範囲、「領収書等」の取扱い」
教育資金の一括贈与に係る 贈与税非課税措置について 【第5回】 「個別論点~「学校等」「教育資金」の範囲、 「領収書等」の取扱い」 ミレニア綜合会計事務所 代表税理士 甲田 義典 1 はじめに 第3回及び第4回は、平成25年度税制改正で創設された「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」(以下「本制度」という)の適用を受けるために必要な手続とその留意点を中心に解説した。 連載最終回となる本稿では、個別の論点として平成25年3月30日に公表された政省令及び告示、平成25年4月に国税庁及び文部科学省から公表されたQ&A(その後文科省のQ&Aに関しては同年5月2日に改定されている。以下「文科省QA」)を中心に、「学校等」及び「教育資金」の範囲と、本制度適用するにあたり取扱金融機関へ提出する「領収書等」の取扱いについて解説する。 2 学校等の範囲 文科省QAによれば、本制度における学校等の具体例として【図表5-1】のようなものが挙げられている。 3 教育資金の範囲 文科省QAによれば、「学校等」(非課税限度額1,500万円)と「学校等以外」(非課税限度額500万円)の非課税限度額の区分に応じて、以下【図表5-2】【図表5-3】のとおり具体例を挙げている。 なお、同じ教育資金であっても学校等へ支払う場合と、学校等を経由せず業者へ直接支払う場合では、適用可能な非課税額が異なるため留意が必要である。 例えば、学校等で使用する教科書代や学用品費、修学旅行費、給食費などであっても、学校を経由せずに業者等へ直接支払われるものは1,500万円の非課税の対象外となる。 ただし、そのうち、学校等の教育に伴い必要な費用で、学生等の全部又は大部分が支払うべきものと学校等が認めたものは、学校等以外の教育資金として500 万円の非課税の対象となる。 4 取扱金融機関へ提出する領収書等について (1) 領収書へ記載すべき事項 取扱金融機関へ提出する領収書には、以下①~⑥の事項が必要となる。 また、塾や習い事など、学校等以外の者に支払われる費用に関する領収書等に関しても、上記①~⑥の記載が必要である。また、塾や習い事などの費用は、上記「③摘要(支払内容)」として、何に使用したのか(○月分○○料として(○回又は○時間))の記載が必要となる。 したがって、領収書等を受領する際には、必要な情報が適切に記載されているかを確認することが求められる。 もし、領収書等に誤りや必要事項が記載されていない場合には、原則として領収書等の発行者(支払先)が修正・追記し、発行者(支払先)の押印が必要となる。 なお、学校等に対する支払いで、摘要(支払内容)及び支払先の住所(所在地)の記載もれがあった場合には、受贈者自身がその提出する領収書に摘要(支払内容)及び支払先の住所(所在地)を記載して、受贈者の署名押印をすることで手続が可能となる。 (2) 取扱金融機関へ提出する際の留意点 本制度の適用を受ける受贈者は、教育資金の支払いに充てた金銭に係る領収書等の原本を取扱金融機関へ提出しなければならない。 領収書の他に、上記①~⑥の記載内容が網羅されていれば、領収書の代わりとなる書類でも認められる場合がある。 例えば、その支払いが振込み、引落し、クレジットカード払い、月謝袋による現金払いなどでなされている場合には、別途領収書を受け取るは必要ない。しかし、支払記録だけでは上記①~⑥の項目が網羅されていない場合には、振込依頼文書など(例えば、振込依頼書兼受領書、ATM利用明細、通帳コピー、クレジットカード利用明細、上記①~⑥の情報を記載した月謝袋本体又はそのコピーなど)をあわせて添付し、必要な情報を明らかにしておく必要がある。 外国の教育施設の受領証については、支払先の学校名を英語で併記したものを提出する必要がある。ただし、英語名のみでは学校と判断することが難しい場合(例えば、kindergarten, elementary school, primary school, junior high school, high school, university, college等の記載がない)場合には、【図表5-4】の確認書を取扱金融機関へ提出することになる。 【図表5-4】 外国の教育施設に関する確認書 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイル(文部科学省ホームページ)が開きます。 出典:文部科学省ホームページ (連載了)
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企業不正と税務調査 【第12回】「粉飾決算」 (3)粉飾決算の防止と早期発見策
企業不正と税務調査 【第12回】 「粉飾決算」 (3) 粉飾決算の防止と早期発見策 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 企業が粉飾決算を行っている場合に、これを外部の人間が見抜くことは簡単ではない。 粉飾の結果は財務諸表、特に貸借対照表に表れていることが多いため、これを分析することによって、異常点や不審な数値の動きを発見することは可能であるが、実際にどういう手口で粉飾が行われ、どの程度の金額が不正に収益として計上され、又は、利益として表示されているかまでは、分かるものではない。 そこで今回は、前2回で取り上げた「棚卸資産の過大(架空)計上」と「架空売上、架空循環取引」による粉飾について、経営者又は経理部門・管理部門の担当者が、こうした不正をどうやって防止し、又は早期に発見するかについて検討したい。 1 棚卸資産の過大(架空)計上による粉飾 (1) 実地棚卸の励行による予防 基本は、実地棚卸を愚直に行うことによって、数量と保管状況を確認することである。 もちろん、営業部門や購買部門などに任せてしまっては効果も半減するので、必ず経理部門又は管理部門の担当者が立ち会い、実際に数量を確認することが必要である。空き箱だけを積み上げたり、外箱の表示とは異なるものが詰められたりといった偽装も考えられるので、棚卸実施者には、相応の経験と商品に関する知識が求められる。 数量の不一致が発見されたら、不一致の発生原因を追究し、業務プロセスの改善、発生防止策の検討など、必要に応じて関係部門と協議のうえ、対策を講じる必要がある。 (2) 「実地棚卸ができない」という説明を真に受けない 発見が遅れた棚卸資産の架空計上事例には、「すでに顧客(又は指定倉庫)に納入しており、実地棚卸ができない」という営業部門の言い訳を鵜呑みにし、棚卸資産残高の増加に不審感を持ちながらも放置してしまった結果、不正による損害額が増大したものが少なくない。 確かに、顧客事務所又は指定倉庫への立入りを顧客が容認しない場合、今後の商談なども考慮に入れ、無理を言うことが憚られるのは理解できる。 そこで活用したいのが、基本契約書又は売買契約書に「所有権留保」の特約を付しておくという方法である。 通常、商品は、買主に引き渡した段階で所有権は移転し、その効果として、売主は売上を認識するのであるが、この所有権移転時期を、「売買代金の決済の時」とする特約を付すことによって、商品引渡し後も、売主は所有権を主張することが可能となる。 こうしておけば、決算期末間際に引き渡し、顧客の検品作業が翌期にずれ込むため、売上計上自体は翌期となるような場合であっても、売主は自らの所有権に基づき、買主に対して、決算期末時点での実地棚卸を申し入れることが可能となる。 なお、私見であるが、こうした実地棚卸の日程調整などは営業部門に一任するのではなく、経理部門又は管理部門が、顧客の経理部門又は管理部門と直接連絡をとって行う方が、かえって無用な軋轢を生じさせることなく、実施できるのではないだろうか。 社内の不正を未然に防止したいという思いは、同じ経理部門・管理部門を担当している人間であれば共通の思いであるので、「この忙しい時期に」とか「面倒だ」といった被害者意識を与えずに、いわば相身互いの気持ちで、実施できることが多いようである。 2 架空売上・架空循環取引による粉飾 (1) 社内規程の整備 架空売上の計上を許さないためには、それを防止するルールを整備することから始めたい。 例えば、 というルールを作り、これを徹底する。 売上計上基準に何を採用するかという問題はあるが、出荷基準であれ、着荷基準であれ、出荷伝票や物品受領書をもって売上の計上を認めるというのは、ごく一般的なルールであるから、例外を認めないことで、期末の架空売上や早期売上の防止は可能になる。 架空循環取引についても、同じことが言える。架空循環取引の首謀者になるのは論外としても、こうした不正に巻き込まれてしまうリスクは、どの企業にもある。 そこで、 というルールを作っておく。 こうしたルールがあれば、「商流の中に入ってほしい」とか「名義だけ貸してもらえないか」といった、帳合取引やスルー取引の誘いに対して、何らかの歯止めになるだろうし、社内規程違反で処分をしたり、内部告発を受けたりすることも可能となる。 また、こうした商流に参加することのリスク――例えば、代金回収ができなくなったり、商流参加社の中の反社会的勢力が加わっていたりする可能性――を、ルール策定と同時に、営業部門に理解させることにより、不正に巻き込まれないよう予防することも可能になろう。 企業によっては一律に禁止することが難しい場合も考えられるが、そうした場合でも、 などの仕組みを作って、営業担当者にインセンティブを与えないという方策も考えられる。同時に、自社債権の保全のためには、売上代金が入金されるまでは仕入代金を支払わないことも徹底しなければならない。 (2) 取引に潜在している不審点を発見する 架空売上の計上による粉飾の致命的な欠陥が売掛金を回収できないことであることは前回にも指摘したが、架空売上を計上した者が、翌期にその売上の取消処理をしないための方策は、架空売上計上に伴う架空仕入代金を支払ったことにし、これを売掛金の回収に仮装する工作をせざるを得ない。そうすると、これは、架空循環取引を構築したことに他ならなくなる。 ということで、ここでは、架空循環取引が形成する不審点について検討する。 架空循環取引が発覚しづらい不正であることは繰り返し言われてきたことであるが、それでも、社内の人間から見れば、不審点に気付くのは難しくない。 最も端的な特徴は、架空循環取引を続けている間は、必ず売上・利益とも増加傾向を示すという点である。 架空循環取引を続ければ続けるほど、参加社の利益分だけ、取引額は拡大していかざるを得ない。したがって、架空循環取引が続いている間は、マーケットや景況感に関係なく、売上・利益は増加し続ける。特定の部門又は担当者が、いつも予算を上回る実績を残し続けているようなとき、これを称賛するだけではなく、何か不審な取引はないかと考えないようでは、不正発見にはつながらないだろう。 他にも、 といった現象は、架空循環取引に巻き込まれているのではないかという懸念を示すものであり、個別の取引について、十分な検証が必要である。 3 外部専門家の活用 経営者が、何らかの不審点に気付き、従業員が架空在庫や架空売上の計上により業績をかさ上げしているのではないかという疑念を抱いたとしても、特に中小企業では、不正かどうかを調査できる人材がいなかったり、十分な時間がとれなかったりして、結果的に、不正が見過ごされる可能性も考えられる。 そこで、活用したいのが、顧問税理士である。 本連載第9回でも言及したとおり、顧問税理士には、経営者と共に、従業員の不正を発見し、防止策を策定する役割が期待されている。経営者が抱いた不信感・疑念に基づき、取引内容を精査して、実態を解明するために、経営者の最も身近な相談相手である顧問税理士が、職業的懐疑心を発揮することが求められている。 (了)
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法人税の解釈をめぐる論点整理 《減価償却》編 【第6回】
法人税の解釈をめぐる論点整理 《減価償却》編 【第6回】 弁護士 木村 浩之 (前回はこちら) 7 耐用年数表の適用 (1) 耐用年数の意義 耐用年数は、減価償却費を計算する場合の重要な要素の1つであるが、その決定を法人の自主性に委ねた場合には、恣意性が介入するおそれがあることから、耐用年数省令別表により、減価償却資産ごとに、その耐用年数が画一的に法定されている。 この法定耐用年数については、通常の維持管理、補修等に要する費用を加えた上で、本来の用途・用法により使用する場合に、その本来の機能を発揮することができると認められる年数が法定されたものである。 (2) 耐用年数をめぐる基本論点 耐用年数をめぐっては、耐用年数表の適用関係が問題となることが多いといえるが、ここでは、基本的な論点をいくつか取り上げ、解説することとしたい。 ア 資産の用途が複数ある場合 耐用年数表の適用に当たっては、その減価償却資産の用途によって適用関係が異なる場合がある。例えば、建物についていえば、事務所用、住宅用、店舗用など、その用途に応じて耐用年数が異なることになる(耐令別表第1)。 その場合は、基本的には、その使用の実態により、用途の判定をすることになる。 資産の使用の実態として、複数の用途に供されている場合には、按分計算をするのではなく、その資産の使用目的や使用状況等に照らして、主たる用途を認定した上で、その耐用年数を適用することになる(耐通1-1-1参照)。 イ 賃貸借に係る資産の場合 法人が他者に賃貸している資産に係る耐用年数表の適用に当たっては、貸付用の資産として特に掲げられているもの(貸付用の自動車、植物など)については、それによることになる。それ以外のものについては、その資産の実際の使用状況等に照らして用途を判定することになる。 したがって、賃貸資産については、賃借人における使用状況等がどのようなものであるかによって、耐用年数表の適用関係が定まることになる(耐通1-1-5参照) また、法人が他社から賃借している資産に対する資本的支出については、自己の資産に対する資本的支出と同様に、本体資産の耐用年数が適用されることになる(耐通1-1-4参照)。これに対して、賃借建物に対する造作については、原則として、合理的に見積もった耐用年数によるものとされている(耐通1-1-3参照)。 ウ 中古資産の場合 中古資産に係る耐用年数表の適用に当たっては、①新品と同じ法定耐用年数によるのが原則であるが、耐用年数省令により、②見積法、③簡便法によることも認められている(耐令3)。 なお、③簡便法については、②見積法の適用が困難な場合にのみ適用が認められ、無形減価償却資産等には適用されない。また、中古資産を事業の用に供するためになされた資本的支出の額が取得価額の50%を超える場合にも適用が認められない。 (3) 耐用年数の短縮について 耐用年数については、省令によって画一的に定められている結果、現実に資産の効用が持続する年数と乖離する場合(法定耐用年数が実態に即さない場合)が生じうる。 そこで、資産の陳腐化によって使用可能期間が法定耐用年数に比べて著しく短くなった場合など一定の要件を満たす場合には、国税局長に対して、耐用年数の短縮についての承認申請をすることができるものとされている(法令57)。 承認を受けた後は、未経過使用可能期間をもって法定耐用年数とみなすことになり、その短縮された期間で償却することになる。 8 除却損失の計上 (1) 除却損失の意義 老朽等によって使用に耐えなくなった機械装置を廃棄した場合、また、使用しなくなった建物、構築物等を取り壊した場合など、減価償却資産を除却した場合には、その除却によって当該資産が失われるので、その資産の帳簿価額が除却損失として損金に算入されることになる。 (2) 有姿除却の要件 通常は、実際に資産の取壊し等をすることによって損失が確定することになるが、現実の取壊し等がない場合であっても、その使用を廃止して今後通常の方法で事業の用に供する可能性がなくなった場合には、いわゆる「有姿除却」として、除却損失の計上が認められる(法基通7-7-2参照)。 すなわち、取壊し等の処分に多額の費用を要する場合、あるいは、将来ごく僅かに再使用の可能性があるといった理由で処分をしない場合でも、その使用を廃止することによって経済的には価値がなくなるといえることから、除却損失の計上が認められる。 この有姿除却が認められるための要件は、上記通達では、今後通常の方法により事業の用に供する「可能性がない」と認められるものとして定められているが、ここでいう「可能性」については、抽象的な可能性ではなく、社会通念に照らして実質的に判断することになる。 例えば、実際にはまだ使用することが抽象的には可能であるとしても、他の条件からみて現実的な再使用の見込みが乏しい場合には、いったん法人の判断によって廃止の処理をしたものについて再使用される可能性は実質的にはないといえることから、除却損失の計上が認められる(東京地判平成19年1月31日・税資257号順号10623参照)。 (3) 除却損失と取得価額 固定資産の取壊し等が別の固定資産の取得のためと認められる場合(典型的には、更地の土地を取得するために、土地建物を一括取得した上で建物の取壊しをする場合)には、その取壊し等をした固定資産の帳簿価額については、除却損失として損金に算入するのではなく、新たに取得した固定資産の取得価額に算入することになる(第2回3(4)ウ参照)。 9 おわりに 減価償却資産をめぐる問題は、要するに、費用計上のタイミングの問題であるともいえるが、費用計上していたものが減価償却資産に該当するなどとされた場合には、その資産の種類によっては相当長期にわたる償却が必要であり、支出時の損金とされる場合との差は大きいものとなり得る。 その判断は事実認定の問題でもあり、減価償却に関する規定の適用に当たっては、本稿も参照されつつ、事実関係を正確に整理して把握した上で、適正に判断されたい。 (《減価償却》編 終了)
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税務判例を読むための税法の学び方【14】 〔第4章〕条文を読むためのコツ(その7)
税務判例を読むための税法の学び方【14】 〔第4章〕条文を読むためのコツ (その7) 自由が丘産能短期大学専任講師 税理士 長島 弘 (前回はこちら) (4 主文の主要素を見極める方法) ⑦ 句点の使い方 今回は、句点(、)の使い方について確認する。 ある限定や修飾がどこまで及ぶかを誤れば、解釈が誤ってしまう。その限定、修飾の理解に欠かせないものが、この句点である。 前回述べた「・・・で・・・もの(者、物)」においても、「A及びBで・・・のもの」と「A及びBで、・・・のもの」という場合がある。 この両者は明確に異なっている。 「A及びBで・・・のもの」という場合には、通常、「・・・のもの」はBだけに掛かるので、「A」及び「Bで・・・のもの」という意味である。 これに対し「A及びBで、・・・のもの」という場合には、「・・・のもの」はAとBの両方に掛かり、結局、「A及びBで」、「・・・のもの」を意味することになる。 同様に、「A又はBで・・・のもの」と「A又はBで、・・・のもの」という場合がある。 「及び」の場合と同様、「A又はBで・・・のもの」という場合には、通常、「・・・のもの」はBだけに掛かるので、「A」又は「Bで・・・のもの」という意味である。 これに対して「A又はBで、・・・のもの」という場合には、「・・・のもの」はAとBの両方に掛かり、結局、「A又はBで」、「・・・のもの」を意味することになる。 ではまず、「A及びBで・・・のもの」の例を、所得税法第45条第1項第1号から見てみる。 この所得税法第45条第1項は、家事関連費等の必要経費不算入等を規定した条文である。 この第1号には「家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの」とあるが、これは「家事上の経費」と「これに類する経費で政令で定めるもの」である。 「家事上の経費」は、政令によるまでもなく必要経費に算入しないが、「これに類する経費」は明確ではないため、除外するものを政令で定め、必要経費から除くことになる。 もっとも、この所得税法第45条を受けた所得税法施行令第96条では、「法第45条第1項第1号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。」として、「次に掲げる」として1~2号に規定されているもの以外はすべて必要経費とされない旨定められているのであるから、「政令で定めるもの」が「家事上の経費」に掛かっていると読んでも、この限りでは大差はない。 では次に、もう少し複雑な例を、退職手当等とみなす一時金を規定した所得税法第31条第1号から見てみよう。 まず、この第1号の括弧を外し とした上で見てみよう。 この条文では、「及び」と「又は」が重層的に存在しているため「A及びBで・・・のもの」なのか「A又はBで・・・のもの」なのかが判断し難くなっている。 したがって、一見しただけでは、最後の「政令で定めるもの」が掛かるのが直前の「一時金」だけなのか、分かりにくい。 しかし、最初の「及び」は「国民年金法、厚生年金保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法及び独立行政法人農業者年金基金法」といった一時金について規定した法律を並列的に並べた中での接続詞であるため、 が1つのまとまりとなる。 また、次の「又は」は、これに続く の中の「社会保険」と「共済」という選択肢を結び付けた接続詞として使われている。 したがって、主要部だけを見るなら「法の規定に基づく一時金」と、「その他社会保険又は共済に関する制度に類する制度に基づく一時金で政令で定めるもの」が並んでいる。 前者の「法の規定に基づく一時金」に関しては特に政令によることを要しないが、後者の「社会保険又は共済に関する制度に類する制度に基づく一時金」の場合には「類する制度」が明確ではないため、内容を政令で定める必要があることから、「政令で定めるもの」とされている。 なおこの条文は、「A及び(又は)Bで・・・のもの」の内容ではあるが、前者「法の規定に基づく一時金」と後者「社会保険又は共済に関する制度に類する制度に基づく一時金」の間には、「及び(又は)」という接続詞が使われていない。 これは、先に「A、B、その他C」という用法を説明したが(第9回参照)、この用法として、「Aその他B」という形で示されている。 では次に、「A及びBで、・・・のもの」の例を、所得税法第9条第1項第17号から見てみる。 この所得税法第9条第1項は、非課税所得を定めた条文である。 まず、この第17号の括弧を外し とした上で見てみよう。 すると、「A及びBで、・・・のもの」となっていることがすぐ分かるが、後段の「心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するもの」は、「~で、」に続いており、前にある「保険金」と「損害賠償金」の両方に掛かっている。 (了)