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法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載28〕 普通法人から公益法人等への移行時における別表5(1)利益積立金額の記載方法について

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載28〕 普通法人から公益法人等への移行時における 別表5(1)利益積立金額の記載方法について   公認会計士・税理士 濱田 康宏   〈解説〉 《1》 普通法人から公益法人等への移行時における課税関係 普通法人が公益法人等に移行する場合、みなし事業年度が設けられて(法法14①二十)、そこで課税所得範囲の変更に備えての課税関係の清算が行われる(法法10の3・法令14の11)。普通法人は全所得課税であるのに対して、公益法人等は収益事業課税であり、課税所得範囲が異なる法人に移行するためである。 普通法人である医療法人が公益法人である社会医療法人になる場合には、認定日の前日までをみなし事業年度として、そこで貸倒引当金の取崩し(法法52⑫、53⑨)・一括償却資産の損金算入(法令133 の2⑤)・繰延消費税額等の取崩し(法令139の4⑩)など、所要の調整が行われる。 このほか、例えば、以下の項目も調整が必要である。その金額によっては大きなミスとなり税賠問題につながりかねないので、要注意である。 ●欠損金の繰戻しによる還付(法法80④) 全所得課税時代の青色欠損金がここで切捨てになるため、認定日の前日前1年以内に終了した事業年度又は該当日の前日の属する事業年度において生じた欠損金について、繰戻し還付規定の適用を受けることができる。 ●国庫補助金等に係る特別勘定の金額の取崩し(法令81、90) 認定日の前日において、有している特別勘定の金額の全額を取り崩し、取り崩した日の属する事業年度の益金の額に算入する。 ●繰延デリバティブ取引等の決済損益額の計上時期等(法令121の5①) ヘッジ対象資産等の未決済により繰り延べた決算損益額を、認定日の前日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。 なお、本設例では、平成19年4月1日以後に設立される医療法人は全て出資持分の定めない医療法人であることに鑑みて、普通法人として出資持分の定めのない社団医療法人を前提としている。 しかし、現在の多くの医療法人は、経過措置型医療法人とも呼ばれる持分の定めのある社団医療法人である。このような持分の定めのある医療法人の場合、社会医療法人になる時点で定款変更により出資金を喪失し、会計上は、その出資金相当額が資本剰余金に振替処理がなされる(旧医療法施行規則30の39②・社会医療法人債を発行する社会医療法人の財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則36)。 法人税法上は、法人税申告書別表4において、①喪失された出資金相当額の益金認定処理を行うとともに、②益金不算入とする減算・社外流出処理して、利益積立金に振替処理をして、法人税の課税関係を生じないようにする(法令9①一チ・法令136の4②)。   《2》 社会医療法人移行後の別表5(1)記載の前提となる認定取消し時の調整 公益法人等に移行した後の法人税申告書別表5(1)については、会計と税務との期間差異調整の意味以外にも、将来の課税所得範囲の変更に備えて、課税済利益である利益積立金額を管理するとの機能がある。 この課税所得範囲の変更とは、収益事業課税である公益法人等が、その後に全所得課税である普通法人に該当することとなった場合に、普通法人移行前の収益事業以外の事業から生じた所得の累積額つまり累積所得金額を益金の額に算入することを意味する(法法64の4)。 累積所得金額は上記の計算式で算定すると規定されているので、社会医療法人が認定取消しになると、課税済利益である利益積立金額を除いた簿価純資産額を益金算入することで、未課税部分の清算を行うことになる。 ここで問題となるのが、この場合の「資産」「負債」の範囲である。この資産及び負債については、法人全体の資産及び負債ではなく、非収益事業部分だけの資産及び負債であるとの見解が示され、当惑することがある。 実は、筆者も課税実務の現場で、当初課税当局から提示されたのがこの考え方であった。確かに、法人税法64条の4第1項・法人税法施行令131条の4第1項では「収益事業以外の事業から生じた所得の金額の累積額として」との文言があるので、条文上はこのように解しても不思議ではない。 この見解からは、上記の控除される利益積立金額も、収益事業課税時代に稼得されたものだけが控除されるということになり、算式で控除できる利益積立金額で、当初の全所得課税時代で課税済である利益積立金額からなる部分もゼロになってしまう。「解散」「設立」との条文(法法10の3)の言葉から、別表5(1)の利益積立金額がリセットされるとの思い込みが、このような思考につながるのかもしれない。 だが、これが不都合を生じるのは、下記のような例を考えてみれば明らかである。 上記計算式が正しいとすると、[1]の全所得課税時代の課税済利益積立金相当額1,000に対して二重課税が生じてしまう。これは不合理である。 この資産・負債の範囲について、課税当局によって記載されたものは筆者の知る限りないが、『平成20年度税制改正完全対応 公益法人税制』(監修者朝長英樹、法令出版、平成20年8月11日発行)では、 「特に制限が付されていませんので、この場合の資産と負債は、収益事業と収益事業以外の事業の双方の事業に属する資産と負債となると考えられます。」(同書p161) としている。このように、収益事業に係る資産と負債ではなく、法人全体の資産と負債と考えるのならば、控除する利益積立金額は、[2]の収益事業課税移行後時点で、[1]の全所得課税時代の課税済利益積立金額も引き継がれ、控除することとなると考えるのが当然である。そうなれば、1,040-1,040=0で課税が生じず、穏当な結論となる。   《3》 社会医療法人移行後の別表5(1)記載方法 上述のとおり、移行時の別表5(1)期首は、普通法人時代のものをリセットするのではなく、それをそのまま引き継いだ上で、新たに収益事業課税分の利益積立金額をゼロからカウントするという、言わば利益積立金額の新旧二重構造になると考える。 実際の記入に際しては、移行時残高が残っていることが明確になるよう、区分欄で記入しておくことが望ましいだろう。   《4》 収益事業と非収益事業との区分に誤りがあった場合の税務調整 本論から外れるが、税務調査で、過年度処理した収益事業と非収益事業との区分に誤りが判明した場合の税務調整についても悩ましいところがあるので、ここで触れておきたい。 収益事業課税時代の過年度に処理した収益事業と非収益事業との区分に誤りが判明した場合、例えば、保健予防活動収益が収益事業だと思って申告していたところ、非収益事業であることが判明した場合である。 つまり、ここでは、まず、過年度の収益事業課税の申告書を更正・修正することとなるが、その際の調整は、社外流出処理ではなく、留保金額の調整であることに留意したい。収益事業だけが課税され、非収益事業は課税の対象外であるため、一見、別表4社外流出処理で調整してしまってよいようにも思える。 しかし、ここでは両者の区分だけでなく、会計と税務との区分の期ズレ問題をも含んでいる。よって、一旦留保で処理した上で、収益事業会計の前期損益修正損益計上時に期ズレ解消させることで対応させることになる。   つまり、ここでは、まず、過年度の収益事業の申告書を更正・修正することとなるが、その際には留保金額の調整である(社外流出処理ではない)ことに留意したい。 この場合、相手科目は、例えば、収益事業純資産・非収益事業純資産などとして別表5(1)に記載することが考えられる。   (認容期の処理) 【収益事業会計】 (了)
#28(掲載号)
#濱田 康宏
2013/07/18
会計 税効果会計 税務・会計 解説 解説一覧 財務会計

税効果会計を学ぶ 【第14回】「その他有価証券の評価差額の取扱い②」

-お知らせ- 適用指針等を織り込んだ最新版の『税効果会計を学ぶ』が好評連載中です。   税効果会計を学ぶ 【第14回】 「その他有価証券の 評価差額の取扱い②」   公認会計士 阿部 光成   前回に続き、その他有価証券の評価差額に係る税効果会計の取扱いについては、「税効果会計に関するQ&A」(以下「税効果Q&A」という)にも規定がある。 税効果Q&AのQ3は、過年度にその他有価証券の減損処理を実施し(税務上は有税処理)、その後、時価が上昇しその他有価証券評価差額金(評価差益)が発生した場合の税効果会計の適用について述べている。 そこで今回は、このQ3について取り上げることとする。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 税効果Q&AのQ3の基本的な考え方 税効果Q&AのQ3では、次の前提条件において、税効果会計の取扱いを示している。 税効果会計は資産負債法を採用しており、貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額との差額を「一時差異」と定義し、当該一時差異について繰延税金資産又は繰延税金負債を認識する会計処理である(「税効果会計に係る会計基準の設定に関する意見書」Ⅲ、1、「税効果会計に係る会計基準」第二、一、2、第二、二、1)。 税効果Q&AのQ3は資産負債法の考え方で整理しており、設例における減損処理したその他有価証券に係る当期末の将来減算一時差異は、会計上の簿価(貸借対照表価額)600と税務上の簿価1,000との差額である400となる。 この数値の関係については、資産負債法で考えて、減損処理により生じた将来減算一時差異600と、その後の時価上昇に伴う将来減算一時差異200の戻入という関係で整理されている。 つまり、一時差異が同一の有価証券から生じているため、減損処理後の時価上昇に伴い発生する評価差益は、将来加算一時差異ではなく、将来減算一時差異の戻入という整理である。   Ⅱ 会計処理 前述のように整理すると、過年度にその他有価証券の減損処理(税務上は有税処理)を実施し、減損処理後に、その銘柄の時価が上昇して、その他有価証券評価差額金(評価差益)が発生した場合には、期末における時価の回復が減損前の価額に達するまでは、次のように取り扱うことになる。 1 投資有価証券の減損処理に関して、前期に繰延税金資産を計上していたケース ① 前期末 ② 当期 2 投資有価証券の減損処理に関して、前期に繰延税金資産を計上しなかったが、当期に繰延税金資産を計上できると判断されたケース ① 前期末 ② 当期 3 投資有価証券の減損処理に関して、前期に繰延税金資産を計上しなかったが、当期も繰延税金資産を計上できないと判断されたケース ① 前期末 ② 当期 4 その他の留意点 税効果Q&AのQ3は、「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」(監査委員会報告第70号)に従い、その他有価証券の評価差額を評価差益と評価差損とに区分せず、各合計額を相殺した後の純額の評価差益又は評価差損について税効果会計を一括して適用することができるが、減損処理したその他有価証券に関しては、個別の銘柄ごとにスケジューリングを行うことが必要になるため、それ以外のその他有価証券に係る評価差額と一括して税効果会計を適用することはできないと考えられると述べている。 このため、前期以前に減損処理したその他有価証券については、原則どおり、減損処理後の株価の変動を踏まえて、個々の銘柄ごとに税効果会計を適用することになると述べている。 (了)
#28(掲載号)
#阿部 光成
2013/07/18
会計 棚卸資産 税務・会計 解説 解説一覧 財務会計

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第13回】棚卸資産会計③「棚卸資産評価の会計処理」-正常な営業循環過程から外れた棚卸資産

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第13回】 棚卸資産会計③ 「棚卸資産評価の会計処理」 -正常な営業循環過程から外れた棚卸資産   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   〈事例による解説〉 期末に正常な営業循環過程から外れた滞留在庫(帳簿価額1,000)がある。また、この滞留在庫は売却することが難しい状況で、近年においても販売実績はない。さらに、今後も販売できないと予測されることから、当該在庫は処分する方針である。 〈会計処理〉 〈会計処理の解説〉 正常な営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の在庫は、販売実績が乏しく、期末日前後の正味売却価額を把握することができないと考えられます。 そのため、このような在庫は、帳簿価額を正味売却価額まで切り下げるのではなく、以下の2つの方法により収益性の低下の事実を適切に財務諸表に反映するように会計処理します(棚卸資産の評価に関する会計基準9項)。 上記(1)の方法は、例えば、在庫自体が物質的に劣化しており、今後、販売できる見込みがなく、処分することしかできない場合等に採用することが考えられます。 一方(2)の方法は、例えば、商品のライフサイクルが短く、一定の期間を超えると、販売可能ではあるものの、市場価格が下がることにより、値引きしないと販売することが困難な場合等に採用することが考えられます。 (2)の方法では、例えば以下のように、正常な営業循環過程から外れた在庫について、それぞれの会社が独自で、その実態を適切に財務諸表に反映させるように在庫評価のルールを定め、評価損を計上します。 本事例の正常な営業循環過程から外れた滞留在庫は、売却することが難しい状況であり、近年においても販売実績がないことから、正味売却価額を把握することができません。 そのため、前回解説した棚卸資産会計②「棚卸資産評価の会計処理-収益性の低下による簿価切下げ」と同様の会計処理を行うことはできないため、上記の(1)又は(2)の方法により帳簿価額を切り下げることになります。 本事例では、売却すること自体が難しく、さらに今後も販売することができない(在庫の販売により得られる収入はない)と予測されていることから、在庫を処分する方針であるため、(2)ではなく、(1)の方法により、「一度に」帳簿価額を切り下げる方が、収益性の低下の事実を適切に財務諸表に反映することができると考えられます。 なお、本事例で(2)の方法を採用した場合、会社の定めたルールによっては、一定期間、在庫が財務諸表に計上されるため、販売により得られる収入がないにもかかわらず、在庫が財務諸表に計上されてしまいます。したがって、(2)の方法よりも(1)の方法の方が、在庫の評価方法として適切であると考えられます。 以上から、本事例では(1)の方法により備忘価額(1円)まで、帳簿価額を切り下げています。なお、備忘価額を残さず、当該在庫の評価を0円まで切り下げることも妥当な会計処理です。 本事例の棚卸資産評価損も前回同様、原則、売上原価(又は製造原価)として計上します。 ただし、正常な営業循環過程から外れた原因が、臨時の事象(例えば、重要な事業部門の廃止、災害損失の発生等)によるものであり、かつ評価損の金額が多額である場合には、特別損失に計上することができます(棚卸資産の評価に関する会計基準17項)。 (了) ※8月はソフトウェア会計を取り上げます。
#28(掲載号)
#西田 友洋
2013/07/18
労働基準関係 労務 労務・法務・経営

長時間労働と労災適用 【第3回】「安全配慮義務違反をめぐる裁判例」

長時間労働と労災適用 【第3回】 「安全配慮義務違反をめぐる裁判例」   特定社会保険労務士 大東 恵子   労働安全衛生法は、労働基準法と相まって、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成することを目的として定められている。 企業は労働災害を防止するために、法で定められた最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境を作り、労働条件を改善することで、労働者の安全と健康を守らなければならない。 《事例1》 電通事件 【概要】 A氏は24歳で電通に入社し、ラジオ局に配属され企画立案等の業務に携わっていたが、長時間残業・深夜勤務・休日出勤等の過重労働が続いた結果、うつ病になり、自宅で自殺した。 【結論】 以下の内容で合意に至った。   《事例2》 システムコンサルタント事件 【概要】 B氏(33歳)はソフト開発会社でSEとしての業務に従事していた。 入社以来、年間総労働時間は平均して約3,000時間近くに達していた。 B氏は就任してから死亡するまでの約1年間、プロジェクトリーダーとしてプロジェクトの進捗管理、要因管理、品質管理及び発注元及び協力会社との調整作業にあたっていた。 クライアントと作業者の間での板挟み状態の中、労働時間だけでなく、精神的負荷まで強いられていた。 その後、B氏は自宅で倒れ、脳幹部出血により死亡した。 【結論】 安全配慮義務を尽くさなかった債務不履行がある旨主張し、逸失利益、慰謝料等の損害賠償を求められ、3,200万円の損害賠償責任となった。   労働基準監督署が労災認定した場合、被災した従業員又はその遺族に対して、労災保険から、治療費、休業補償、あるいは遺族への保障など一定の給付が支払われる。 この場合、労災保険から受けた給付は、損害補填とみなされ、その給付は損害賠償額から差し引かれる。 しかし、損害賠償請求では、逸失利益、葬儀代金、慰謝料など全損害の賠償を求めることができるのに対して、労災保険からの給付で賄えるものはそのうちの一部に限られるため、企業が負う損害賠償リスクが膨大であることに変わりはない。 〈労災差額リスクの具体例〉 35歳(被扶養家族2人)、年収500万円の従業員が死亡した場合   (了)
#28(掲載号)
#大東 恵子
2013/07/18
労務・法務・経営 経営

〔税理士・会計士が知っておくべき〕情報システムと情報セキュリティ 【第5回】「IT監査の基礎的な理解」

〔税理士・会計士が知っておくべき〕 情報システムと情報セキュリティ 【第5回】 「IT監査の基礎的な理解」   公認会計士 中原 國尋   IT監査の目的・意義 「IT監査」という用語はしばしば利用されているものの、その意味するところについて明確に説明することは難しい。 IT監査は、何の目的で行われることが多いのだろうか。 ITは情報技術(Information Technology)であり、コンピュータを用いて情報処理を行う一連の仕組みを指す。組織における業務では、現業からバックオフィスに至るまで何らかの形でITを用いている場合が多く、今や組織活動においてITは不可欠な存在である。 そのようなITが、突然使えなくなってしまったら? あるいは、処理の方法が間違ってしまっていたら? 業務処理に与える影響は大きくなる一方である。 そこで、ITを用いた情報システムが行う処理が正確なのか、ITが継続的に利用可能な状況にあるのか、などについて独立的な立場で評価を行うことで不意なトラブルを事前に防ぐことなどを目的に、IT監査は実施されることが多い。 このように、ITの維持管理からITを用いた業務処理の方法に至るまで、IT監査が対象とする領域は広い。そのため、目的に応じて様々な観点でIT監査が行われることが一般的である。 主な観点は次の3つに整理される。 (3) は、ITを用いた情報システムを対象にしたものではないが、電子データを用いて様々な検証を行うことによって、監査の有効性や効率性を高めることができる手段になり得るため、近年ではIT監査の1つとして説明されることもある。   (1) ITを用いた情報システムが継続的に稼働し続けられること 会計システムをはじめとした情報システムは一般に、サーバと呼ばれるコンピュータで稼動しており、それら情報システムに対してネットワークを介して接続し利用されている。このように業務で利用されている情報システムは、情報システム部門等によって管理され、メンテナンスが行われている。 情報システム部門がどのように管理することによって情報システムの利用可能性を維持しているのか、という観点での監査を行うことにより、情報システムが業務において不都合なく利用できるように運営されていることを検証することができる。 ところで、情報システムの管理を全般的に監査対象とする場合、例えば次の3つの分野に大きく分けることができる。 すなわち、ITを用いた情報システムが継続的に稼働できる状況にあるのかという観点での監査は、情報システム部門が日々の業務をどのように行っているかについての視点が比較的大きいことが見て取れる。一方、情報セキュリティについては、昨今では情報システム部門だけでは対応できないケースも多くなっているため、専門の部署が設置されているケースが増加傾向にある。 このように、情報を管理・運営する部門及びその担当者が、どのような意識・視点で日々の業務を行っているのかに対する評価によって、ITを利用した情報システムが継続的に利用可能な体制にあるのか判断することが可能になるのである。   (2) ITを用いた情報システムが適切な処理を行っていること 情報システムを(1)のように全般的に評価することは、全体的な管理水準の評価には繋がるが、情報システムの個別の処理が正確に行われていることを直接的に検証するわけではない。情報システムの処理の正確性を検証することも、IT監査の目的の1つである。 例えば、自動化された債権消込みの処理や、月末在庫の評価額の算定、固定資産の減価償却計算、業務システムと会計システムとの連携などについて、個別の機能を明らかにし、処理の正確性を検証することが想定される。 特に、情報システムから出力された情報の正確性の検証が通常行われているケースはそれほど多くないと思われるが、設定条件があるべき定義とは異なること等を理由にして、本来出力されるべき情報と異なった情報が出力されている可能性は否定できない。出力帳票に基づいて、経営意思決定を行い、開示情報を作成することを想定すれば、重要な出力帳票については第三者たる監査人が検証することが望まれる。   (3) データを用いて検証を行うこと 例えば、情報システムで保持しているデータを入手し、あるべき処理をした結果を情報システムの処理結果と照合することで取引記録を対象にした分析を行うことにより、直接的に情報システムの処理の正確性を検証することができる。 データを用いて監査手続を適用することをCAAT(Computer Assisted Audit Techniques:コンピュータ利用監査技法)といい、内部統制の有効性検証や実証的検証、処理の正確性検証などに用いられている。CAATを効果的に利用することによって、検証手続の有効性や効率性の向上が見込まれている。 データを用いて検証を行うことで、特定の取引の一部ではなく、取引全体を対象に網羅的に検証することも可能になる。そのため、不正の兆候や、不正が行われた履歴を発見することが可能な場合もある。 このように、データを用いて検証を行うIT監査は監査手続を適用するための技法の1つであるが、情報技術の進展と、情報システムの高度化に伴い、採用される局面が増加している。   まとめ これまで述べたように、IT監査は目的や対象によって複数の観点で行われる。 IT監査は抽象的な表現であるため、IT監査を行うときに、何を目的としてどのような検証を行うことが最も必要性が高いのかを適切に判断し、実施することが求められる。 データを用いた検証はIT監査の1つと考えられるが、必ずしも情報システムの管理体制や処理方法を監査対象にしているわけではなく、適用範囲は非常に広い。 そのため、監査に携わる人もそうでない人も、データを用いた検証の技術を習得することはスキルアップにもつながると考えられる。 (了)
#28(掲載号)
#中原 國尋
2013/07/18
労務・法務・経営 経営

改正金融検査マニュアルのポイントと中小企業へ与える影響 【第4回】「債権者区分の判定要件における注意点」

改正金融検査マニュアルのポイントと 中小企業へ与える影響 【第4回】 「債権者区分の判定要件における 注意点」   OAG税理士法人 税理士 山下 好一   前回、「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」(以下「マニュアル別冊」という)を分かりやすく解説した「知ってナットク! 中小企業の資金調達に役立つ金融検査の知識」(以下「検査の知識」という)及びこの「事例集」があること、そして、マニュアル別冊には金融機関から高く評価されるヒントがあり、これを知っていれば、中小企業等の資金調達に役に立つことを紹介した。 今回は、この「検査の知識」及び「事例集」を用いて、マニュアル別冊の運用上の注意点等について解説をする。 はじめに、「検査の知識」の2ページ目に「金融機関が金融検査を理由に、貸出を断ることはありません。」とある。 しかし残念ながら、実際にはこのような理由で貸出しを謝絶した事例も存在する。 検査においては、金融検査マニュアルの「留意事項」に「金融機関が経営判断で決すべき個別の与信判断の是非には介入しないよう留意する必要がある。」と記載があるように、金融機関の正当なルールに則って行われた貸出しであれば、たとえ信用リスクが大きくても、それに見合った引当てが積まれていれば問題としない。 また、前々回(第2回)の最後で述べたとおり、金融検査マニュアルにおいては、金融機関には、顧客説明の適切性や十分性の確保が求められており、顧客の理解と納得が得られることを目的とした説明を行わなければならないことになっている。 したがって、十分な説明が行えないなどの理由から、安易に金融庁検査を理由とするのである。謝絶理由に納得ができない場合には、納得できるまで説明を求めることができる。 * * * マニュアル別冊による債務者区分の判定は、一定の要件のもと、中小企業等の将来の経営状態を予測して判断するものである。 したがって、以下に掲げる要件により、その企業の経営状態の改善が見込めるものでなければならない。 経営者と企業を一体として判断 (「事例集」p1~p4) 中小企業等は、「株主=経営者」となっている場合が多い。したがって、中小企業等の債務者区分の判定において、代表者やその家族(以下「代表者等」という)の財産や収入を企業の財務諸表に反映させて判断するというものである。 ここは、定量的な判定ができるところであり、実際の判定でも多く使われている。 ここで特に注意すべき点は、以下のとおりである。 いずれにしても、金融機関に対し、個人の資産・負債や生活費等(家計簿があればベスト)のすべてを包み隠さず正直に開示し、信頼関係を保持することが重要である。 技術力・販売力のある中小企業を高く評価 (「事例集」p5~p8) 中小企業等の「技術力や販売力」(以下「技術力等」という)を客観的に評価し、将来の収益予測を行って、債務者区分を判断するというものである。 ここは上記と異なり定性的な判定となるため、誰もが納得できるような技術力等でなければならない。 ここで特に注意すべき点は、以下のとおりである。 金融機関等が技術力等を評価し、それを将来の収益予想に反映させることは容易ではない。 したがって、金融機関に対し、事業計画書等を用いることなどにより、新規受注契約の状況等や技術力による収益性の高い新商品の開発及び業界内シェアの拡大などを積極的にアピールすることが重要である。 努力する経営者を高く評価 (「事例集」p9) 経営者の資質を評価するというものであるが、筆者の経験では、この判定による債務者区分のランクアップは記憶にない。 そもそも、経営者の資質が良くなければ、貸付け自体が行われず、また、経営改善に対する取組み姿勢についても、これを加味した技術力等や事業計画書の策定などによる評価の方が、客観的な判定がしやすいことが理由と考えられる。 しかしながら、他の要件がすべて良好であったとしても、最終的に経営に資質が備わっていないと判断されてしまえば、すべてが徒労に終わる。 そのため、より一層の「再建の熱意」、「返済の誠意」などを見せることが重要である。 業種の特性を勘案・中小企業の特性を踏まえ柔軟に判断 (「事例集」p10・p22) 中小企業等は、自己資本額が少額であるため、債務超過に陥りやすい。特にホテル・旅館業や不動産賃貸業などの業種は、多額の設備投資や改築費用を必要とするとともに、投資資金回収に長期間を要し、また減価償却費も多額となる。 このような場合には、定量的な判定において、運転資金と異なり、債務償還年数も長期に設定することになる。 また、例えば、資産等の除却損など、一過性の要因によっても債務超過に陥ることがある。 このような特性を勘案して、債務者区分を判断するというものである。 ただし、退職金のようなキャッシュアウトを伴うものは注意が必要である。 経営改善に向けた取組みを高く評価 (「事例集」p11~p15) 中小企業等の経営改善に向けた取組みを評価し、債務者区分を判断するというものである。 経営改善に向けた取組みは、技術力等の要件を織り込んだ経営改善計画書や事業計画書などの進捗状況から判断する。 なお、経営改善計画の重要性や策定における注意点は、次回に予定しているので、ここでは省略する。 貸出条件の変更等 (「事例集」p16~p22) これは、債務者区分の判定ではないため、詳細は省略するが、債権の分類の判断を行うための要件である。 債務者区分が「要注意先」である場合、債権の分類は「Ⅱ分類」となるが、貸出条件の緩和を行っている場合には、その債権は同じ「Ⅱ分類」であっても債権の種類が「要管理債権」(不良債権)となってしまう(第1回参照)。 このように、借手企業の支援のための条件変更は不良債権となるが、同じ条件変更であっても、例えば、他行との競争による金利の減額などはこれには当たらない。 また、支援のために金利の引下げを行った場合でも、引下げ後の金利が金融機関の基準金利を上回っていれば(信用リスクに見合った金利の確保)、これも不良債権とはならない。 (了)
#28(掲載号)
#山下 好一
2013/07/18
労務・法務・経営 経営

顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第7回】「スコアリングデータから優秀な会社の傾向を読み取る」 ~総合スコア~

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第7回】 「スコアリングデータから 優秀な会社の傾向を読み取る」 ~総合スコア~   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 前回までに述べたとおり、スコアリングモデルは、会社の経理財務部門のサービスレベルを評価する標準的な手法として、経済産業省の実証事業により構築された手法である。 読者が顧問先にスコアリングモデルを活用すれば、スコアリングモデルによる評価結果は、「総合スコア」、「財務諸表の信頼性スコア」、「業務の有効性・効率性スコア」、「5つの視点別スコア」、「18種類の業務プロセス別スコア」、「137個のKPI別スコア」として提供され、顧問先の経理財務部門のサービスレベルが「見える化」される(図表3)。 図表3 スコアリングモデルの概要(再掲) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   そこで、今回から3回にわたり、実際のスコアリングデータを紹介しながら、スコアから読み取られた優秀な会社の傾向について紹介する。 今回取り上げるのは、「総合スコア」である。総合スコアは、第3回で述べた「正確性」、「効率性」、「安定性」、「リスク管理」、「戦略性」から見た経理財務のサービスレベルの総合力を表すスコアである。   総合スコアの全体分布 まず、平成18年に行った134社によるスコアリングデータを紹介する。 参加した会社名は、図表11のとおりである(いずれも当時の呼称)。 図表11 スコアリングモデルに参加した会社 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 では、134社の総合スコア分布を見ていただきたい(図表12)。 図表12 総合スコアの分布 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 全体として平均値周辺に集中し、正規分布に近い形状が形成されている。これをスコアリングモデルの有効性の観点から見ると、134社のサンプルであっても、母集団の傾向を十分説明できるだけのモデルであることを示している。   業種別、株式公開別に見た総合スコアの傾向 次に、総合スコアの傾向を、製造業と非製造業の業種別、株式公開別に分析した結果を見てみよう(図表13)。 図表13 総合スコアの業種別、株式公開別傾向 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 結論を先取りすれば、業種別の優劣の傾向は見られなかったが、株式公開別には、上場企業の方が非上場企業よりも優れているという結果が出た。 以下のとおり、このスコア結果は、経験則に照らして納得感があると考えられる。 まず、総合スコアについて製造業と非製造業を比較したが、いずれかが絶対的に優れていることを示す有意な差は見られない。 次に、上場企業と非上場企業を比較すると、上場企業の平均値が高いだけでなく、上場企業のスコアのバラツキが小さく、一定レベルに収斂している。つまり、スコアリングデータでは、上場企業の方が、非上場企業よりも、総合スコアが高いという結果が出ているのである。 これを経験則に照らしてみると、一般的に、上場企業は、外部からの監視によるガバナンスが働くだけでなく、監査法人による会計監査によって、経理財務部門の経営管理レベルが高い水準に維持されていると考えられる。 スコアリングモデルによる総合スコアの分布は、そのような実態を反映しているのである。   他の指標との関係分析 スコアリングモデルで算出した各スコアが持つ意味をさらに理解してもらうため、経営者や読者のような外部のステークホルダーに馴染みのある他指標とスコアの関係について分析した結果を紹介する。 今回は、総合スコアとの関係を検討する他指標として、「営業利益平均成長率(過去3期)」、「個別決算数値確定日数」を使ってみる。 他指標との関係分析では、総合スコアの上位25社、全134社、下位25社の3グループで他の指標の平均値をグラフで比較し、グラフにおいて総合スコアと他指標に一定の関係が見られるか否かを確認する。一般的に、このような分析の仕方は「平均の差の検定」と呼ばれている。   総合スコアと他指標の関係 総合スコアの上位25社、全134社、下位25社の3グループについて、2つの他指標の平均値を算出し、総合スコアと平均値の関係を分析した結果を以下にまとめた。 上表の「正」とは、総合スコアが高いグループほど他指標の数値が大きくなり、総合スコアが低いグループほど他指標の数値が小さくなる関係が、グラフにおいて見られることを意味する。 また「負」とは、総合スコアが高いグループほど他指標の数値が小さくなり、総合スコアが低いグループほど他指標の数値が大きくなる関係が、グラフにおいて見られることを意味する。 結論から言えば、総合スコアが高い会社ほど、営業利益平均成長率が高く、個別決算数値確定日数が短いという結果となった。 以下、その結果が示唆する意味を読み解いてみよう。 (1) 営業利益平均成長率 総合スコアと営業利益平均成長率に、一定の関係が見られるだろうか(図表14)。 図表14 総合スコアと他の基本的指標との関係(営業利益平均成長率) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 筆者がこれまで複数の会社に対するコンサルティングで見聞した経験則では、経理財務のサービスレベルの総合力が高い会社は、原価低減や販売管理費の低減等を行い、営業利益を持続的に増やすことができるが、経理財務のサービスレベルの総合力が低い会社は、売上成長率に見合う営業利益の増加を確保できない事例が多く見られる。 そこで、グラフを見てみると、総合スコア上位25社の営業利益成長率が最も高く、総合スコア下位25社の営業利益成長率が最も低いという正の関係が見られる。まさに、経理財務のサービスレベルの総合力が高い会社ほど営業利益を持続的に増やしていく状況が、スコアリングモデルによって、客観的なデータとして証明されている。 (2) 個別決算数値確定日数 次に、総合スコアと個別決算数値確定日数に、一定の関係が見られるだろうか(図表15)。 図表15 総合スコアと他の基本的指標との関係(個別決算数値確定日数) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 これも、筆者が複数の会社に対するコンサルティングを通じて見聞した経験則であるが、個別決算数値確定日数を短くするには、戦略性をもって、決算方針やマニュアルの策定を行うこと、人員の教育を行うこと、そして、日常の経理・財務業務を正確かつ効率的に行う必要があり、経理財務のサービスレベルの総合力が高い会社ほど、決算数値を早期に確定できていることが多い。 そこで、グラフを見てみると、総合スコア上位25社の日数が最も短く、総合スコア下位25社の日数が最も長いという負の関係が見られる。 このグラフは、経理財務のサービスレベルの総合力が高い会社ほど決算数値の早期確定ができるという経験則を、客観的なデータとして証明しているといえよう。 次回は、引き続きスコアの優秀な会社の傾向を読み取るにあたって、「財務諸表の信頼性スコア」を取り上げる。 (了)
#28(掲載号)
#島 紀彦
2013/07/18
読み物 連載

税理士・公認会計士事務所[ホームページ]再点検のポイント 【第1回】「事務所ホームページの費用対効果って、どうなっているの?」

税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第1回】 「事務所ホームページの費用対効果って、 どうなっているの?」   データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥   そう考えて、事務所のホームページを公開して10年。 最初の頃こそ、「ホームページを見た」という問合せが時々あったけれど、ここ3年くらいは1件の問い合わせもない。 ホームページの維持費もばかにならないし、「こんなもの公開するんじゃなかった」とお考えの人はいらっしゃいませんか? 税理士に限らず、公認会計士、弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、およそ士業と呼ばれる人たちで独立開業している場合、ご自分の事務所のホームページを公開している人も多いかと思います。 ホームページを公開する目的はもちろん「集客」ですが、その期待する程度は人それぞれ異なっています。 例えば、紹介の見込み客が見てくれて住所や電話番号を確認してくれればそれでよいという人から、1年に1件くらい新規顧客が獲得できればよいという人、さらには毎月数件の新規顧客を獲得したいという人まで。 ホームページの制作は、それなりにお金のかかることですし、公開し続けるためには毎月の費用も発生します。これらの「費用」と「集客」という効果を天秤にかけて、最低でも釣り合いがとれるようにしなければならないのですが、費用はかかるけれどそのわりに集客に役立っていない、ということが多いようです。 その原因は明確です。 みなさんのホームページに関する知識が不足しているのです。 さらに、あなたの事務所のホームページが、あなたの事務所のイメージを傷つけている場合もあります。 もしそうなら集客にマイナスの効果となる恐れがありますので、すぐにでもホームページを改修することをお薦めします。 この連載では、まず、費用の話として、ホームページ管理会社に毎月支払う費用について考えていきます。 その上で、効果の話として、ホームページによる集客について考えていきます。 そして、指摘した問題点については、改善するための具体的な方法を提示します。 ホームページに関する知識のない人でもお読みいただけるよう、ホームページの基本的な知識や用語を解説しながら進めますので、気楽に読んでいただき、少しでもお役に立つことがあれば幸いです。 なお、すでにご自身の事務所のホームページを公開している人が対象ですが、これからホームページを制作する人の参考にもなると考えています。 (了)
#28(掲載号)
#河村 慎弥
2013/07/18
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《速報解説》 平成25年度税制改正の事業承継税制の見直しに伴う 「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則の一部改正」について

《速報解説》 平成25年度税制改正の事業承継税制の見直しに伴う 「中小企業における経営の承継の円滑化に関する 法律施行規則の一部改正」について   ミレニア綜合会計事務所 代表税理士 甲田 義典   平成25年度税制改正において事業承継税制(非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予制度)の適用要件等の見直し(緩和)がされたことに伴い、平成25年7月1日に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則等の一部の改正する省令」が公布された。 事業承継税制の適用にあたっては、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下「円滑化法」)に規定された要件(経済産業大臣の確認・認定等)が必要となることから、従前より両法令の改正は呼応して行われてきたため、上記税制における要件の見直しが、今回の円滑化法施行規則の一部改正へ至ったこととなる。 なお、今回の改正については、事前にパブリックコメントが実施されていた。 事業承継税制の主な改正点の全体像と今回の円滑化法施行規則の改正項目との関係を示すと、以下のとおりになる。 上記の改正は、事業承継税制について定めている租税特別措置法の改正内容が施行される平成27年1月1日にあわせて施行する。 (了)
#27(掲載号)
#甲田 義典
2013/07/18
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《速報解説》 法人税基本通達等の一部改正(7/9公表)について

《速報解説》 法人税基本通達等の一部改正(7/9公表)について   弁護士 木村 浩之   1 はじめに 平成25年7月9日付けで、国税庁ホームページにおいて、平成25年度税制改正に伴う法人税関係の通達改正の内容が公表された。 平成25年度税制改正のうち、法人税に関するものについては、租税特別措置法の改正として各種の政策促進税制が創設され、又は既存の制度の拡充がなされたものの、法人税法において例年のような大きな改正はなく、比較的小幅な改正にとどまっていた。 そこで、これに伴う法人税関係の通達改正についても、それほど大きな改正がみられるわけではなく、通達改正の内容としては、基本的には、法令改正に伴う用語・引用条文等の整理、廃止された規定に関する定めの廃止、新たに創設等された規定に関する定め(既存の通達と同様の定め)の新設等を行うための一部改正がなされたものである。 ただし、一部の新たに創設された制度(①生産等設備投資促進税制及び②所得拡大促進税制)に係るものについては、既存の通達にはない定めもみられることから、以下では、これらについて簡潔に解説することとしたい。   2 生産等設備投資促進税制(措法42の12の2)に係る改正 平成25年度税制改正では、国内の設備投資を促進するために、「生産等設備」への年間総投資額が前年度と比較して10%超増加した場合には、その事業年度に新たに取得した機械装置について、30%の特別償却又は3%の税額控除の選択適用が認められる制度が創設された。 今回の通達改正では、この制度の投資対象である「生産等設備」に含まれる範囲が具体的に明らかにされている。 すなわち、工場、店舗、作業場のように収益を稼得するために行う活動(生産等活動)の用に直接供されるものが生産等設備に含まれるのであり、いわゆるバックオフィス機能のみを有する本店その他の直接には生産等活動の用に供されないものは生産等設備には含まれないという基本的な区分に加えて、これらの双方の機能を有する共用資産については、① 一部でも生産等活動の用に供されていれば全部が生産等設備になること、② 生産等活動とそれ以外の用に供される部分を合理的に区分して計算されている場合には、継続適用を要件として、それも認められることが明らかにされている。   3 所得拡大促進税制(措法42の12の4)に係る改正 平成25年度税制改正では、いわゆるアベノミクス経済政策の一環として、個人所得の拡大を図り、よって個人消費を促進するという観点から、給与等の支給額を増加させた場合に、その増加額の10%を税額控除できるという所得拡大促進税制が創設された。 この制度の適用に当たっては、給与等の支給額に含まれるかどうかに疑義が生じる場面があることから、今回の通達改正では、その取扱いが明らかにされている。 すなわち、①労働者の雇用に応じて国等から支給を受けた助成金相当額については、給与等の支給額から除かれることが明らかにされている。 また、出向元法人が出向者に給与等の支給をして、出向先法人が出向元法人に給与負担金を支払う場合には、②負担金の支払を受けた出向元法人においては、その負担金相当額が給与等の支給額から除かれること、逆に、③負担金の支払をする出向先法人においては、賃金台帳に出向者を記載していることを要件として、その負担金相当額が給与等の支給額に含まれることが明らかにされている。  (了)
#27(掲載号)
#木村 浩之
2013/07/18
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