件すべての結果を表示
お知らせ
その他お知らせ
【特別公開】法人税の解釈をめぐる論点整理
このたび、「法人税の解釈をめぐる論点整理」の《役員給与》編、《寄附金》編を7月10日より7月31日までの期間、非会員の方でも閲覧いただける無料公開とさせていただきます。 この連載は、法人税の実務において、その解釈をめぐり論点となりやすい点を、法令通達・判例を用いて分かりやすく解説する長期連載です。 この機会にぜひご覧ください(No.27では《減価償却》編が連載中です)。 下記の目次をクリックすると、閲覧いただけます。
お知らせ
会計
会計情報の速報解説
監査
税務・会計
財務諸表監査
速報解説一覧
《速報解説》 「不正調査ガイドライン」(公開草案)の解説
《速報解説》 「不正調査ガイドライン」 (公開草案)の解説 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成25年7月2日、日本公認会計士協会は、経営研究調査会研究報告「不正調査ガイドライン」(公開草案)(以下「公開草案」という)を公表し、意見募集を行っている。 意見募集期間は平成25 年7月15 日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 公開草案の内容 1 公開草案の概要 公開草案の概要は、次のとおりである。 なお、日本弁護士連合会からは「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」が公表されている。 2 公開草案のポイント 公開草案の目次は、次のとおりである。 公開草案では、取締役や監査役だけでなく、企業等に関するステークホルダーについても述べている。 例えば、公開草案は、公認会計士が依頼者からの依頼を受けて不正調査業務を実施する場合や内部調査委員、外部調査委員に選任された場合に円滑に業務が行われ、不正調査業務の品質を担保し、ステークホルダーの要請にも企業等が適切に対応できるように助言することを第一義的な目的としていると述べている(Ⅰ、1、(2))。 また、公開草案は、法律上の責任が取締役・監査役にあることは当然前提とするものの、法的責任があるか否かを問わず、「不正を予防し発見する役割を果たす役割は、企業等だけではなく、企業等を取り巻くステークホルダーにもある。」という立場をとることとするとしている(Ⅰ、2、(3))。 このように、ステークホルダーに関連した記述が見られることは、公開草案の特徴と思われる。 (了)
税務
税務・会計
解説
解説一覧
monthly TAX views -No.6-「はじまる租税回避対応策の検討」
monthly TAX views -No.6- 「はじまる租税回避対応策の検討」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 英国スターバックス社(以下「スタバ社」)の租税回避問題が英国で大きく取り上げられ、不買運動にまで発展したが、米国多国籍企業を中心とする租税回避問題については、今回のG8サミットで取り上げられるなど、その後も議論は収束どころか拡大の方向で続いている。 このような国際的租税回避の広がりに対して、先進国の課税当局の集まりともいえるOECD租税委員会は、1998年の有害な租税競争プロジェクトの立ち上げ以降、さまざまなイニシアティブを発揮してきた。 最近では、2012年6月、OECD租税委員会においてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクトが始まった。 スターバックス事件が報じられて以降も、2012年11月に、英、独の財務大臣がBEPSに関する共同声明を公表し、2013年2月には、BEPSに関する現状分析報告書“Addressing BEPS”が作成され、G20財務大臣会合に報告された。2013年7月には、OECDが策定する「行動計画」をG20財務大臣会合に提出する予定となっている。 さらにタックスヘイブン対策として、情報交換協定の強化が行われてきた。 2005年にOECDモデル租税条約の改正による情報交換根拠規定の強化を皮切りに、2008年の金融経済危機、スイスUBS事件、リヒテンシュタインLGT銀行事件等を契機とした、情報交換の国際基準遵守を各国に求める動きが活発化している。 2009年4月のG20ロンドンサミットの声明で、情報交換の促進と、非協力国への対抗措置(非協力国への支払いに関し源泉徴収又は費用控除否認、政府開発援助の制限など)が示唆された。また、 OECDは実効的な情報交換に非協力な国のリストを公表、各国が国際基準の遵守をコミットした。2009年9月には、「税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム」を拡大・改組して、各国の透明性・情報交換に関する法制整備とその実施状況についての相互審査を2010年より実施している。 わが国も、スイス、ルクセンブルク、シンガポール等との租税条約の情報交換規定を、国際基準に沿ったものに改正するとともに、バミューダ、バハマ、マン島、ケイマン、リヒテンシュタインなどのタックスヘイブンとの情報交換協定を締結している。 問題の本質は、2つである。 それは、先進国からの資金を引きつけようとする低税率国やタックスヘイブンの存在、そして、特許権・著作権・商標権・ノウハウなどの無形資産の税務上の取扱いである。 この2つの問題が結び付き、企業価値の根源である無形資産を、低税率国・タックスヘイブンに作った子会社(IP Co.)に移転することによって、無形資産から生じる将来の収益(使用料、ロイヤルティー)を集中させて節税を図るプラニングが出来上がる。 注目は、BEPSの報告を受けてのわが国の対応である。 米国では、租税回避があまりにもアグレッシブな場合には、税務上否認される。租税回避以外に事業目的がはっきりしない取引について否認できる包括規定があり、その要件が法律で決められている。 一方わが国では、米系企業を中心にプラニングは進んでいるものの、法律の否認規定がなく、あいまいなままである。 近年わが国でも、日本ガイダント事件など、一流弁護士事務所が租税回避スキームを綿密に練り上げ、日蘭租税条約の抜け穴を利用する、いわゆるダッチサンドイッチで、わが国の法人税負担を軽減させるという事例が起きている。 これに対しては直ちに法律的な手当てがなされ、あわせて日蘭租税条約が改定されることで何とか類似のケースを食い止めているが、法律の抜け穴を見つけ出して租税を回避しようとする事例は今後とも増えていくことが予想される。 租税回避は、 「(か弱い)納税者」 対 「(弱いものいじめの)税制当局」 という構図ではなく、 「(知恵も資金もある)法律家・会計士」 対 「(知恵も予算も限られた)税制当局」 という構図であることを忘れてはならない。 わが国でも、早急に租税回避に対する議論を行い対応していく必要がある。 筆者は、2010年10月1日、当時の政府税制調査会専門家委員会で、「無形資産と国際的租税回避」と題して、無形資産の課税ルールの明確化を求めるプレゼンテーションを行っているので、参照いただきたい。 またこれを踏まえて、2010年11月9日、政府税制調査会専門家委員会から「国際課税に関する論点整理」が公表されている。 (了)
法人税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
「生産等設備投資促進税制」適用及び実務上のポイント 【第4回】「別表6(18)記載のポイントと当初申告要件の確認」
「生産等設備投資促進税制」 適用及び実務上のポイント 【第4回】 「別表6(18)記載のポイントと 当初申告要件の確認」 マネーコンシェルジュ税理士法人 税理士 村田 直 ◆法人税申告書「別表6(18)」の記載方法 連載4回目となる今回は、本制度に係る別表の書き方や当初申告要件など手続規定を中心に解説する。 生産等設備投資促進税制の適用を受けるためには、特別償却の場合は、「確定申告書等に機械等の償却限度額の計算に関する明細書を添付」することが必要となる。 また特別控除の場合は、「確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に、控除の対象となる機械等の取得価額、控除を受ける金額及びその金額の計算に関する明細を記載した書類の添付」が必要となる。 特別償却については、7/2に国税庁ホームページにて公表された「租税特別措置法による特別償却の償却限度額の計算に関する付表の様式について(法令解釈通達)」により、特別償却の付表(6)「国内の設備投資額が増加した場合の機械等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表」が公表されている。 特別控除については、「国内の設備投資額が増加した場合の機械等に係る法人税額の特別控除に関する明細書」として、下記「別表6(18)」が公表されている。 別表6(18) 国内の設備投資額が増加した場合の機械等に係る法人税額の特別控除に関する明細書 ※画像をクリックすると、PDFファイルが開きます(国税庁ホームページへ)。 (国税庁ホームページより) この別表は、前回詳しく取り上げた下記の要件が判定できる構成となっている。 別表の最初には、「1」欄として「適用対象年度において取得等をした生産等資産のうち当該適用対象年度終了の日において有するものの取得価額の合計額」を記入する欄がある。 上記の要件でいうと、「国内における生産等設備への年間総投資額」がこれに該当し、生産等設備投資促進税制の要件判定において要となる数値である。 「1」欄の下には、他の特別控除と同様に、事業種目、資産区分、取得価額を記載する欄が「2」欄から「9」欄まで続く。 この欄には、生産等資産のうち、特別控除の計算対象となる機械等について記載する。法人税法上の圧縮記帳により積立金を計上している場合には、取得価額の改定が必要となる。 続く別表中段には、「法人税額の特別控除額の計算」欄(「10」~「16」欄)がある。ここで、「3%の税額控除」と「当期の法人税額の20%」の判定が行われ、特別控除額が決まる。 別表下段には、「償却費として損金経理をした金額の計算」欄が設けられており、構成は下記のようになっている。 「21」欄は、 (「17」+「18」)-(「19」-「20」) として計算し、これが「償却費として損金経理をした金額」となる。 冒頭①の要件は、「1」欄が「21」欄を超えているかどうかで判断する。 最下段には、「比較取得資産総額等の計算」欄が設けられている。 「25」欄を、「24」欄(=「22」欄×「23」欄)×110%として計算し、これが「比較取得資産総額の110%相当額」となる。 冒頭②の要件は、「1」欄がこの「25」欄を超えているかどうかで判断する。 なお、中小企業者等に限り、法人住民税及び法人事業税においても、特別償却や特別控除が適用されるため、地方税申告時には気を付けたい。 ◆当初申告要件と適用額の制限の見直し 確定申告書に明細書類の添付がない場合には、生産等設備投資促進税制の適用を受けることはできない。では、確定申告時に特別控除の適用を受けていない場合において、後日に修正申告書や更正請求書で適用を受けることは可能だろうか。 この問題については、平成23年12月改正の「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号)において、改正が行われている。 その結果、法人税法においては一部の制度で当初申告要件が廃止されたが、租税特別措置法においては、当初申告要件が依然として残っている。そのため、確定申告書に明細書類の添付がない場合には、修正申告書や更正請求書で適用を受けることはできない。 では、確定申告後に、税額控除に関係する金額に変更があった場合はどうなるだろうか。 条文には、「この場合において、同項の規定により控除される金額は、当該確定申告書等に添付された書類に記載された機械等の取得価額を基礎として計算した金額に限るものとする」との記載がある(措法42の12の2⑥)。 つまり、申告後に機械等の取得価額が増加した場合でも、更正の請求はできないこととなる。 ただし、「機械等の取得価額」以外の金額に変動がある場合には、更正の請求によってその金額を是正して、適用を受ける金額を増額させることができる。これは、上記平成23年12月改正によって見直しが行われている。 最終回となる次回は、設備投資を計画する際の注意点や、他の規定との有利不利など、実務上の留意点を中心に解説する。 (了)
法人税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
中小企業のM&Aでも使える税務デューデリジェンス 【第5回】「統合における税務デューデリジェンス及びケース・スタディ」
中小企業のM&Aでも使える 税務デューデリジェンス 【第5回】 「統合における税務デューデリジェンス 及びケース・スタディ」 公認会計士・税理士 並木 安生 第5回では、前回解説した各統合形態の内容及び税務上の取扱いを踏まえて、税務デューデリジェンスの具体的な内容について解説する。 1 税務デューデリジェンスが必要な理由 合併や株式移転では、統合前の事業年度に係る税務リスク(将来の税務調査で、統合前の事業年度を対象とする追徴課税を受けるリスク等)が統合後も残ることになる。つまり合併においては、消滅会社の税務リスクを存続会社が法的に引き継ぐことになり、また株式移転においては、持株会社の傘下となる統合対象会社の税務リスクは株式移転を行っても変化が生じないことになる(なお、買収形態における税務リスク承継については第2回を参照)。 したがって、統合当事者である各会社は、税務デューデリジェンスにより統合の相手会社の税務リスクを事前に把握し、統合を行うか否かの判断に活用させることが有効といえる。また、自社にとって不利な統合比率に着地してしまうことを避けるためにも、税務デューデリジェンスの実施によって税務リスク額を試算し統合価額へ反映させることは必要な手段であるといえる。 2 税務デューデリジェンスの具体的内容 統合における税務デューデリジェンスの手続は、買収の場合のものと基本的に大きな違いはなく、税金計算の正確性チェックやその根拠資料との突合のみならず、マネジメントや経理責任者へのインタビューや重要決定事項に関する資料の閲覧を通じて、税務処理の網羅性の検証手続まで行うこととなる。詳細については、第2回「具体的な調査項目とは」を参照されたい。 3 税務デューデリジェンスの活用(ケース・スタディ) 税務デューデリジェンスによる結果を具体的に活用する方法について、オーナー株主が保有するB社が合併により競合他社のA社に吸収されることを前提として、以下に記載する(A社とB社との間には、合併直前の時点において資本関係が全く存在しないとする)。 ① 税務リスクの性質毎の対応 まず、税務デューデリジェンスの結果発見した税務リスクの性質次第で、合併価額(合併比率)への反映方法、合併実行の是非を含む対応が異なってくる。 以下、関係会社間取引に係る寄附金認定の税務リスクが発見された場合を例として、パターン毎の対応例を記載する。 1) 税務リスク額が試算可能な場合 A社がB社に対して税務デューデリジェンスを実施した結果、過年度における関係会社への役務提供取引に関して、寄附金認定の税務リスクがあることが発見された(過年度の法人税確定申告書上で加算・社外流出処理を行っていなかったものとする)。 合併交渉の結果、最終的にB社オーナー株主もその税務リスクの内容について合意し、かつ税務上の時価が算定できる場合は、リスク金額を合併比率算定の基礎となるB社株式価額に織り込むことになる。 この点、株式価額の算定方法としていわゆるDCF法を用いる場合は、将来納税する可能性のある追徴税額を試算し、割引現在価値を算出する基礎となる将来のキャッシュ・フローを減額させることとなる。また、いわゆる時価純資産価額法を用いる場合は、税務リスク金額を未払法人税等へ反映させ、時価純資産額を減額させることとなる。 2) 合併交渉で見解の相違が生じた場合又は税務リスク額が試算不可能な場合 税務リスクの考え方について、A社とB社との間で見解の相違が生じてしまった場合、又は役務提供の適正な取引価額の試算・算出が困難な場合、実務上は合併契約書上に表明保証条項を織り込むことで対応することも考えられ得る。 つまり、買収後の税務調査で寄附金認定による追徴課税を受けた場合は、納税による金銭的負担をB社オーナー株主に負わせるという条項を織り込むことで、A社(及びA社株主)は税務リスクを回避・軽減することが可能となる。 3) 税務リスクが受入困難な場合 寄附金認定の税務リスクが定量的・定性的に非常に大きく、合併実行に著しい悪影響を及ぼすと判断された場合、合併自体を断念せざるを得ないケースもある。ただし、合併以外の統合形態に変更することで税務リスクを遮断するという解決策も考えられる。 例えば、合併や株式移転の場合は前述のとおり、統合前の事業年度に係る税務リスクを統合後も引き継ぐことになるが、事業譲渡やいわゆる複数新設分割等の方法を採用した場合は、原則として統合前の税務リスクを引き継ぐことはないため、解決策として適した代替的方法であると考えられる。 上記2)について、表明保証条項についてオーナー株主が難色を示し織り込むことが困難である場合等も、税務リスクを引き継がない代替的方法を提示することが1つの解決策になるといえる。 以上の1)から3)までをまとめると、次のとおりとなる。 〈税務デューデリジェンスにおける検討過程〉 ② 合併の実行可能性の検討 合併は税務上の組織再編行為に該当するため、組織再編税制適用下の影響を検討した上で、合併が統合形態として利用できるか否かを判断する必要がある。 主な検討ポイントは次のとおりであり、税務デューデリジェンスの過程において、その検討のための材料(例:適格要件判定のための数値・定性的情報等)を入手しておくことが効果的である。 1) 適格要件の判定、及び非適格再編時の課税への影響 本ケース・スタディは、合併直前の時点において、合併当事者A社・B社との間に資本関係がないことから、資本関係が50%以下の場合の適格要件、いわゆる共同事業要件(下表aからfまでのすべてを満たす必要あり。ただし、e-1とe-2はいずれか1つを満たせばよい)を判定する必要がある。 なお、この合併が非適格再編として判定される場合、B社が保有する資産・負債に関して譲渡損益を税務上認識しなければならない。特に譲渡益は課税対象となるため、納税による資金負担の影響は非常に大きくなる可能性がある。 そのため、統合前における事前判定の結果、非適格再編として認定される恐れがある場合は、あらかじめ譲渡対象となる資産・負債を洗い出しその譲渡損益を試算しておくこと、また、譲渡益と相殺可能な青色繰越欠損金がどの程度存在するか把握しておくことが有用であるといえる。 ③ 代替案の検討 上記①3)でも触れたとおり、税務デューデリジェンスの結果次第では他の統合形態へ変更せざるを得ないケースもある。その場合、同時並行的に代替案の検討も行っておくことが効果的である。 例えば、代替案として事業譲渡が考えられる場合、事業譲渡対象資産・負債の時価及び譲渡損益の試算、消費税計算に与える影響等を分析しておくことが望まれる。 (了)
法人税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
交際費課税Q&A~ポイントを再確認~ 【第4回】「「1人当たり5,000円以下の飲食費」の判定が難しいケース」
交際費課税Q&A ~ポイントを再確認~ 【第4回】 「「1人当たり5,000円以下の飲食費」の 判定が難しいケース」 公認会計士・税理士 新名 貴則 「1人当たり5,000円以下の飲食費」の特例とは、次の費用を税務上の交際費等から除くとするものである(措法61の4③二)。 つまり、事業に関係のある社外の者等との「飲食その他これに類する行為のために要する費用(以下、飲食等のために要する費用)」を、人数割りして5,000円と比較するということである。 しかし、そもそも「飲食等のために要する費用」にはどのような費用を含めなければならないのかが、実務上は重要なポイントとなる。 そこで、以下に「飲食等のために要する費用」に含めなければならない費用と、含めなくてよい費用の例を挙げて解説する。 (了)
国税通則
税務
税務・会計
解説
解説一覧
小説 『法人課税第三部門にて。』 【第11話】「質問検査権の範囲と留置き」
小説 『法人課税第三部門にて。』 【第11話】 「質問検査権の範囲と留置き」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一 「あの~、田村上席・・・」 山口調査官が田村上席に声をかける。 法人課税第三部門では、ほとんどの職員が昼食に出ており、2人しか残っていない。 田村上席は、昨日の税務調査の報告を書いている。 「この国税通則法74条の2第1項の規定なんですけど・・・」 田村上席は、まだ罫紙を見詰めながら、ボールペンを走らせている。 「・・・なかなか調査経緯を書くのも難しいな・・・」 と田村上席は、苦笑いしながらつぶやく。 そして、山口調査官に向かって確認をする。 「・・・それって、新しくできた質問検査権の規定でしたね・・・所得税、法人税などの質問検査権をまとめて、載せている条文だったかな」 田村上席は、山口調査官の顔を見つめて応える。 「ええ、そうなんです。・・・その規定の最後に、『提示若しくは提出を求めることができる』と書かれているんですが・・・」 と言いながら、税務六法を持っていた山口調査官は、傍らに置かれていた広辞苑に持ち換える。 「広辞苑では、『提示』は、差し出して相手に示すこと・・・と記載され、『提出』は、書類などを差し出すこと・・・となっていますが・・・これって、どう違うのですか?」 山口調査官は、困ったような表情を浮かべている。 田村上席は、広辞苑を山口調査官から受け取りながら、思案顔になる。 「・・・まあ、提示は相手に示すことなんだから、提出のように相手方に物件が渡されるということはないと考えるんだろう・・・」 そして、田村上席は、引き出しから、国税通則法の通達を取り出した。 「ここにこう書いてある・・・法第74条の2から法第74条の6までの各条の規定において、「物件の提示」とは、当該職員の求めに応じ、遅滞なく当該物件(その写しを含む。)の内容を当該職員が確認し得る状態にして示すことを、「物件の提出」とは、当該職員の求めに応じ、遅滞なく当該職員に当該物件(その写しを含む。)の占有を移転することをいう・・・」(国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達1-6) 「新しい国税通則法74条の2第1項では、この『提示』と『提出』を求めることができると書かれているのですけど・・・それ以前の税務調査では、提示はともかく、提出を求めることはできなかったのですか?」 山口調査官は、尋ねる。 「相手の承諾があれば、提出を求めることはもちろんできるよ」 田村上席は答える。 「しかし・・・納税者が拒否すれば、提出を求めることはできなかった?」 山口調査官は質問を続ける。 「そりゃ、納税者が拒否すれば・・・できないだろう・・・もともと任意調査で、強制調査じゃないんだから」 質問を続けられた田村上席は、少し怒ったように言う。 「しかし・・・そうすると、今回の『提出を求めることができる』という条文ができたことによって、税務署が提出を求めた場合、納税者は、法律的にそれに従わなければならない義務を負うと考えられるのですかね」 山口調査官の質問に、田村調査官は、腕を組んで考える。 「・・・そうだなあ・・・」 さらに、山口調査官の質問は続く。 「そして・・・この提出は、『留置き』にも続くのですね」 山口調査官は、国税通則法74条の7を読み上げる。 「国税庁等又は税関の当該職員は、国税の調査について必要があるときは、当該調査において提出された物件を留め置くことができる・・・」 「・・・その提出は、占有が移転することだから、その占有移転された物件について、税務署がそのまま預ることを可能にした条文だね」 田村上席がコメントをする。 「この法律ができる前からも、税務調査では、このような留置きは存在したと思うのですけど、どのように違うのですか?」 「実質的には、従前と同じだろう・・・ただ、法律で明らかにしたというだけだ」 山口調査官の質問に答える。 「・・・ところで・・・留置きって、返還されることを含みますよね?」 「返還?」 田村上席が聞き直す。 「ええ・・・税務署が納税者から提出された書類を留め置いた場合、後日、それは、納税者に返還されなければならないですよね」 「そりゃ、そうだろう」 田村上席は大きく頷く。 「しかし、パソコンに入っているデータなんかは、どうなんですか?」 山口調査官は、少し笑みを浮かべて質問する。 「データか?」 田村上席は困った表情をする 「データの返還って・・・具体的にどうすればよいのですか?」 山口調査官は、たたみかけるように質問を続ける。 「フロッピーとかを返還すればよいのかなぁ」 田村上席が小さな声でつぶやく。 「でも、コピーなんかして、そのデータを改ざんされることもあるから・・・留置きされることは、納税者としても怖いですよね」 「そういえば以前、検察官がデータを改ざんした事件があったな」 田村上席は、持っていたボールペンを机の上にポンと投げた。 「ところで、田村上席は、昼食まだでしょ・・・まだ、お昼休みは20分ぐらい残っていますから、うどんでも食べに行きません?」 切り替えの早い山口調査官は、ニコニコしながら、まだ思案中の田村上席を連れて、部屋を出ていった。 (つづく)
法人税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
法人税の解釈をめぐる論点整理 《減価償却》編 【第5回】
法人税の解釈をめぐる論点整理 《減価償却》編 【第5回】 弁護士 木村 浩之 (前回はこちら) 6 償却限度額の計算 (1) 限度額計算の意義 減価償却資産に係る減価償却費を損金に算入するためには、①償却限度額の範囲で、②償却費として損金経理をする必要がある(法法31)。 このうち、②損金経理の要件については、他の科目で費用処理がなされていた場合などに問題となることがある。これについては、法人に償却の意思があることを担保するために償却費としての損金経理が要件とされているにすぎないことから、その意思を有していることが客観的にうかがわれるような一定の場合には、この要件を満たすものとして取り扱われることになる(法基通7-5-1参照)。 他方、①償却限度額については、その計算方法は多分に技術的であり、その適用を誤ると損金算入が否定されることになる。この償却限度額の計算に関しては、近年、大きな税制改正が相次いでなされていることから、その適用に当たっての留意点について整理しておきたい。 (2) 近年の税制改正と限度額計算 ア 改正の経過 減価償却資産の償却限度額に関する近年の税制改正の経過については、以下のとおり整理することができる。 ① 平成19年度改正 従前は、減価償却資産には残存価額が定められており、取得価額の95%相当額までが償却可能限度額とされていた。 平成19年度改正では、この残存価額が廃止され、平成19年4月1日以降に取得された減価償却資産については、従前よりも早い償却を可能とする新たな定額法、定率法(いわゆる250%定率法)等によって償却限度額を計算することとされた。 ② 平成20年度改正 平成20年度改正では、減価償却資産の法定耐用年数や資産区分が必ずしも実態に即していないとの指摘を受けて、耐用年数等に関する省令が改正され、機械及び装置を中心に、より実態に即した形での見直しがなされた。 ③ 平成23年度改正 陳腐化償却制度の廃止に伴い、耐用年数の短縮特例について、未経過使用可能期間で償却できるように制度が改められた。また、法人税の減税に伴い、定率法の償却の速度を一定程度緩めるため、その償却率が見直された(いわゆる200%定率法)。 イ 改正の適用関係 以上の償却方法に関する改正がなされたことにより、減価償却資産の取得時期によって、償却限度額の計算方法が異なることになる。 その適用関係について整理すると、以下のとおりである。 ① 平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産 平成19年度改正前の償却方法が維持され、旧定額法、旧定率法等による償却限度額の計算を続けることになる。ただし、累計償却額が取得価額の95%相当額の償却可能限度額に達した場合には、残存価額について5年間の均等償却が認められることになる。 ② 平成19年4月1日から平成24年3月31日までに取得した減価償却資産 平成23年度改正前の償却方法が維持され、定率法が採用されている場合については、250%定率法による償却限度額の計算を続けることになる。 ③ 平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産 平成24年度改正後の償却方法が適用され、定率法を採用する場合については、200%定率法による償却限度額の計算をすることになる。 ウ 資本的支出の取扱い 固定資産に対する資本的支出については、減価償却資産として償却することになる(前回参照)が、上記イのとおり、資本的支出の対象となる固定資産(本体資産)の償却方法がその取得時期によって異なることから、それに伴って資本的支出の償却方法も本体資産の取得時期によって異なることになる。その適用関係について整理すると、以下のとおりである。 ① 平成19年3月31日以前に取得した固定資産に対する資本的支出 償却方法として旧定額法又は旧定率法等が適用されている固定資産に対する資本的支出については、 (a) 新たな資産の取得として定額法又は定率法(200%定率法)等によって償却する方法と、 (b) 本体資産の取得価額に加算することで一体の資産として旧定額法又は旧定率法等によって償却する方法 のいずれかを選択することができる。ただし、いったん選択した方法を後で変更することはできない。 ② 平成19年4月1日から平成24年3月31日までに取得した固定資産に対する資本的支出 償却方法として定額法又は定率法(250%定率法)等が適用されている固定資産に対する資本的支出については、新たな資産の取得として定額法又は定率法(200%定率法)等によって償却することになる。 この場合、定率法の償却率が異なることから、本体資産の取得価額に加算して一体の資産として償却するという方法は選択することができない。 ③ 平成24年4月1日以後に取得した固定資産に対する資本的支出 償却方法として定額法又は定率法(200%定率法)等が適用されている固定資産に対する資本的支出については、 (a) 新たな資産の取得として定額法又は定率法(200%定率法)等によって償却する方法と、 (b) 本体資産の取得価額に加算して一体の資産として定額法又は定率法(200%定率法)等によって償却する方法 のいずれかを選択することができる。ただし、いったん選択した方法を後で変更することはできない。 (3) 増加償却について 償却限度額の計算には一定の特例が認められており、機械又は装置については、その平均的な使用時間を超えて使用した場合に、通常よりも損耗が著しいと認められることから、その超過使用時間に応じて償却額を増加するという増加償却の制度の適用が認められている(法令60)。 その適用要件は、以下のとおりとされている。 なお、この超過使用時間については、機械又は装置ごとに、同業種において通常の経済事情のもとで使用される平均的な使用時間を超えて実際に使用した時間を計算するのが原則である。 この点、通達においては、機械又は装置ごとに、通常の使用時間が定められており、この通常の使用時間を超える分が超過使用時間として取り扱われることになる(耐用年数通達付表5参照)。 《減価償却》編の最終回となる次回は、耐用年数の適用をめぐる論点について整理したい。 (了)
所得税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
租税争訟レポート 【第11回】配偶者が受給する年金から特別徴収された介護保険料(所得税更正処分取消請求事件)
租税争訟レポート【第11回】 配偶者が受給する年金から 特別徴収された介護保険料 (所得税更正処分取消請求事件) 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【事案の概要】 原告と生計を一にしている原告の配偶者は、平成18年においてその受給する国民年金(老齢基礎年金)の中から介護保険料4万6,600円を特別徴収の方法により徴収された。 原告は、平成19年2月26日、「社会保険料控除」の欄に、配偶者が特別徴収された介護保険料を含めた額である「33万5,400円」と記入した申告書を提出した。 西宮税務署長は、原告の平成18年分の所得税につき、社会保険料控除の額は、前記の確定申告における33万5,400円から介護保険料4万6,600円を差し引いた28万8,800円が正しいとして、平成19年12月10日付けで、課税総所得金額54万8,000円、還付金の額に相当する税額3万4,882円とする更正処分を行った。 【原告(納税者)の主張】 1 原告の配偶者の介護保険料を原告が支払ったとして原告の所得から控除できるか 特別徴収義務者は、介護保険料を市町村に支払う義務を課されていても、被保険者を代理して支払う権限は与えられていないので、特別徴収義務者が介護保険料を市町村に支払っても、それは市町村に対して特別徴収義務を履行したという法律効果が生じるだけで、被保険者との関係では無権代理行為であるから、被保険者本人が追認しなければ被保険者の介護保険料債務を弁済したという効果は生じない(民法113条)。 原告の配偶者は、自己に課された介護保険料を婚姻費用分担義務のある原告に負担させることを原告と合意することによって、社会保険庁による無権代理行為を原告と共同で追認した結果、配偶者の介護保険料債務を原告が第三者弁済をしたという効力が生じた。 2 本件更正処分は憲法14条に違反しているか 介護保険料を普通徴収している市町村に居住している納税者は、他の親族の介護保険料について所得控除を申告できるのに、特別徴収している市町村に居住している納税者は、他の親族の介護保険料について所得控除を申告できない場合があり、居住地が異なるという理由又は転居したという理由だけで、納税者には何の責任もないのに所得控除の可否について差別されることになり、これらの差別を許容できる合理的な理由がないので、不合理な差別を許さない憲法14条に違反する。 3 本件更正処分は憲法29条に違反しているか 特別徴収される介護保険料について、親族の社会保険料控除の対象とすることを認めないことは、親族が協力して介護保険料を支払うことが全く認められず個人の自由な財産権行使を禁止することになり、憲法29条に違反する。 【被告(課税庁)の主張】 1 原告の配偶者の介護保険料を原告が支払ったとして原告の所得から控除できるか 原告の配偶者が平成18年中に特別徴収された介護保険料を原告が支払った、又は給与から控除されたものであるとみる余地はない。 介護保険法の各規定に従って特別徴収の処理がされれば、当該被保険者の介護保険料支払義務は消滅するのであって、原告が主張するような無権代理行為に該当することはなく、また、その後に追認が必要とされることもない。 夫婦相互間の婚姻費用分担義務を定めた民法760条は、第三者との権利義務関係を定めるものではないから、上記規定を根拠に、一方の配偶者が第三者に負う義務について他方の配偶者が共に義務を負うことにはならない。 仮に、原告と配偶者との間で、配偶者が特別徴収された介護保険料を原告が負担するという合意があったとしても、原告には上記介護保険料債務の消滅に結びつく出捐が存在しない以上、原告は配偶者の介護保険料を支払ったと認めることはできない。 2 本件更正処分が憲法に違反するとの原告の主張は争う。 【裁判所の判断】 以下の理由により、本件更正処分は適法である。 1 原告の配偶者の介護保険料を原告が支払ったとして原告の所得から控除できるか 配偶者の介護保険料債務は、特別徴収(納入)により消滅しており、原告による第三者弁済の余地はない。また、保険料債務の消滅は配偶者の負担により生じたというべきであり、原告には上記債務消滅に結び付く出捐が存在しないから、原告が配偶者の介護保険料を支払ったと解することはできない。 したがって、原告が配偶者の介護保険料について負担する旨又は弁済する旨配偶者と合意したとしても、当該合意に基づいて配偶者の介護保険料を原告が支払った又は給与から控除されたということはできず、原告による配偶者の介護保険料額についての所得控除は認められない。 2 本件更正処分は憲法14条に違反しているか 憲法14条は、国民に対し絶対的な平等を保障したものでなく、差別すべき合理的な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、事柄の性質に即応して合理的と認められる差別的取扱いをすることは、何ら同条の否定するところではない(最高裁判所昭和39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁)。 特別徴収の制度は、市町村が介護保険料を確保し、徴収手続を簡便にしてその費用と労力とを節約し得るのみならず、被徴収者の側においても、介護保険料の納付に関する煩雑な事務から免れることができるもので、年金所得者に対する介護保険料の徴収方法として能率的かつ合理的で、公共の福祉の要請にこたえるものといわなければならない。そうすると、自己と生計を一にする配偶者の介護保険料が特別徴収の方法により徴収されたため、所得額から介護保険料の支払額を控除することが認められず、そのため普通徴収の方法により介護保険料を支払ったものとして控除がなされた場合と比して、所得税額が増加することがあったとしても、そのことをもって直ちに合理的理由なく差別しているとはいえない。 本件においても、普通徴収の方法によっていれば、原告が配偶者の介護保険料の支払をし、原告の所得額からの社会保険料控除が認められた可能性があるが、特別徴収の方法によることに合理性があること、特別徴収の方法による場合は被保険者が自ら介護保険料を支払ったと評価できることや、原告の還付金の額に相当する税額の差額は年額4,230円にすぎないことなどを考慮すると、特別徴収の方法によることが、原告を合理的理由なく差別するものであるとはいえず、憲法14条に違反するということはできない。 3 本件更正処分は憲法29条に違反しているか 特別徴収された納税者の親族の介護保険料について、当該納税者において社会保険料控除が認められないとしても、当該納税者がその親族の社会保険料を補てんすることまでも制約されているわけではなく、個人の自由な財産権行使を禁止することにはならないから、憲法29条に違反するものということはできない。 【解説】 確定申告時期には、税務署と税理士会が共同して、納税者が確定申告書を作成するお手伝いをしている。筆者も毎年、そうした会場で納税者のみなさんから相談を受けているのだが、ここ数年、目立った質問が、本件のような事例である。 このようなやり取りの後、おもむろに、平成24年度所得税の確定申告の手引き(確定申告書B用)を取り出して20ページを開き、以下のような記述を説明する。 ここで、納税者の方から、「口座振替ならよくて、年金から引かれていると認められないって、おかしくないですか?」という質問が出ると返答に窮してしまうところだが、今のところ、みなさん、筆者の説明に納得して、申告書を提出してお帰りいただいている。 本件は、こうした説明に納得がいかなかった納税者が、本人訴訟を提起したものである。 本人訴訟ゆえの主張の甘さはあったかもしれない(訴えの利益のない部分まで取消しを求めて、裁判所に訴えの一部は却下されている)が、特別徴収されると社会保険料控除が認められず、口座振替だと認められるのはなぜかという、納税者の素直な疑問が伝わってくる主張である。 しかし、裁判所は、特別徴収が、「年金所得者に対する介護保険料の徴収方法として能率的かつ合理的で、公共の福祉の要請にこたえるもの」であるから、「普通徴収の方法により介護保険料を支払ったものとして控除がなされた場合と比して、所得税額が増加すること」を「もって直ちに合理的理由なく差別しているとはいえない」し、「原告の還付金の額に相当する税額の差額は年額4,230円にすぎない」として、この訴えを退けている。 (了)
法人税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載26〕 適格分割型分割の計算事例 ─資本金等の額<0の場合など、各要素がマイナスとなる場合─
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載26〕 適格分割型分割の計算事例 ─資本金等の額<0の場合など、各要素がマイナスとなる場合─ 税理士 竹内 陽一 適格分割型分割を行った場合、分割法人で減少する資本金等の額は、法令8条1項15号において、次表のように規定されている。この資本金等の額を決定して、減少する利益積立金額を決定する。 この算式は、分割型分割の分割法人の減少資本金等の額の計算においては、適格と非適格で共通であり、分割法人の株主の譲渡対価及び譲渡原価の額の計算において共通であり(法令119の8①)、非適格分割型分割において、みなし配当金額の計算において所有株式対応資本金等の額を計算する場合において同じである(法令23①二)。 なお、この問題は、本誌No.19(2013年5月16日)掲載の「〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載19〕 債務超過の適格分割型分割を行った場合の資本金等の額と利益積立金額の計算」(掛川雅仁著)においても、同じ趣旨について、債務超過の適格分割型分割として、特に下記【事例3】について詳しく論じられている。 本稿では、上記図表のうち、各特殊な場合について検討する。 計算事例としては、以下の完全兄弟型で無対価適格分割型分割を行う場合で検討する。 法人Pの100%子法人Xより、同じく100%子法人のYにA事業を移転する。 【事例1】 通常の場合 Pの有するX株簿価=100、Y株簿価=100(これらの株式簿価は以下の事例において同じ)X1の分割前帳簿価額は下記とする(厳密には、下記移転純資産割合の計算において分母は期末、分子は分割直前の簿価である。以下同じ)。 減少資本金等の額=100×0.484=48.4 〈分割法人Xの分割移転仕訳〉 〈承継法人Yの承継受入れ仕訳〉 株主PのX株 100-48.4=51.6 株主PのY株 100+48.4=148.4 【事例2】 資本金等の額がマイナスの場合 資本金等の額≦0 のため、特に移転純資産割合の計算は不要。 減少資本等の額=△100×0=0 〈分割法人Xの分割移転仕訳〉 〈承継法人Yの承継受入れ仕訳〉 株主PのX株 100-0=100 株主PのY株 100+0=100 株主の計算においては、法令23条1項2号及び法令119の8の1項において、分割法人の資本金等の額が0以下の場合、移転純資産割合が0とされるので、株式取得価額の訂正はない。 【事例3】 分割法人の簿価純資産がマイナスの場合でかつ、資本金等の額>0、移転簿価純資産>0の場合 分子>0 分母≦0 のため、 移転純資産割合=1 減少資本金等の額=100×1=100 〈分割法人Xの分割移転仕訳〉 〈承継法人Yの承継受入れ仕訳〉 株主PのX株 100-100=0 株主PのY株 100+100=200 この事例では、株主について、分割法人株式の簿価は0に改定される。 なお、この【事例3】で、下記のように、上記の要件のとおり簿価純資産≦0であるが、さらにその中身として、資本金等の額>0で、さらに、移転純資産<資本金等の額の場合、移転純資産の額を超えて資本金等の額を減少させることになる。 分子>0 分母≦0 のため 移転純資産割合=1 減少資本金等の額=300×1=300 〈分割法人Xの分割移転仕訳〉 〈承継法人Yの承継受入れ仕訳〉 このように、移転純資産が100なのに、資本金等の額が300の全部を減少させることになる。この点は前述した記事で記載したとおりである。なお、非適格の場合は、減少資本金等の額は、移転簿価純資産の100が限度となる。 株主PのX株 100-100=0 株主PのY株 100+100=200 【事例4】 移転簿価純資産>簿価純資産>0の場合 分子>分母>0 のため、割合の算式的解は1を超えるが、1とされている。 移転純資産割合=1 減少資本金等の額=100×1 〈分割法人X分割移転仕訳〉 〈承継法人Yの承継受入れ仕訳〉 株主PのX株 100-100=0 株主PのY株 100+100=200 【事例5】 移転簿価純資産<0の場合 分子の移転純資産の計算が控除規定のため、分子=0、移転純資産割合=0となる。 分子<0のため、分子=0 移転純資産割合=0 減少資本金等の額=100×0=0 〈分割法人X分割移転仕訳〉 〈承継法人Yの承継受入れ仕訳〉 株主PのX株 100-0=100 株主PのY株 100+0=100 以上、最初に表示した図表に基づいて、計算例を検討した。 (了)