税務判例を読むための税法の学び方【85】
〔第9章〕代表的な税務判例を読む
(その13:「一時所得の計算における所得税法34条2項の
「その収入を得るために支出した金額」の範囲③」(最判平24.1.13))
立正大学法学部准教授
税理士 長島 弘
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7 考察
第一審及び控訴審と最高裁で判断が最も大きく異なったのは、所得税法34条2項の「その収入を得るために支出した金額」の「支出」の主体が、明記されていなくとも当然の前提として、所得者本人とされているか否かという点である。
第一審及び控訴審は、法律上明らかではないとして、施行令から判断しており、施行令183条2項2号に「当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額は、その年分の一時所得の金額の計算上、支出した金額に算入する。」とあること及びその解釈通達である所得税基本通達34-4の柱書きに「令第183条第2項第2号・・・に規定する保険料・・・の総額には、その一時金又は満期返戻金等の支払を受ける者以外の者が負担した保険料又は掛金の額(略)も含まれる。」とあることから、法人の負担した保険料が所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に含まれると判断している。
一方最高裁は、下位規範である施行令によることなく、所得区分の意義等から、法律自体で解釈が可能なものとして、当然の前提から、所得者本人が支出したものだけが上記34条2項の「支出した金額」に含まれるとしている。
筆者も、最高裁同様、所得税における本件必要経費をはじめ必要経費に算入しうる支出の主体は、当然の前提として、所得者本人とされていると考える。
法34条には「その収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る)」とあり、このカッコ書きにより、「その収入を生じた行為をするため(直接)要した金額」「その収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額」に限定しているが、もし所得者以外が支払った金額を認めるとすれば、この限定が無意味なものになるからである。
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