税務判例を読むための税法の学び方【93】
〔第9章〕代表的な税務判例を読む
(その21:「文理解釈と立法趣旨①」(最判平22.3.2))
立正大学法学部准教授
税理士 長島 弘
〔追記:2016/11/14〕
本稿のタイトルにつきまして、公開当時「(その22:「文理解釈と立法趣旨②」(最判平22.3.22))」となっておりましたが、正しくは上記の通りです。お詫びの上、訂正させていただきます。
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1 はじめに
この判例は、立法趣旨からの課税庁の主張を是認した下級審の判決に対して、文理解釈による納税者側の主張を認めた事案である。
判例法としての射程は限定的であるが、法令解釈の基本的スタンスとして、立法趣旨等による論理解釈は文理からでは不明な点がある場合に限られるものであって、文理からその意味が明らかな場合には文理解釈によるべきことを示した判決といえる。
2 事案の概要
パブクラブ経営者(原告、控訴人、上告人)が、勤務するホステスに対する報酬(半月ごとに支払)の源泉徴収金額を算定するに当たり、ホステスが欠勤、遅刻等をした場合の「ペナルティ」の額を報酬の総支給額から控除した上で、所得税法施行令第322条の支払金額から控除し得る金額として「5,000円に当該支払金額の計算期間の日数を乗じて計算した金額」とあることから、出勤日数にかかわらず5,000円に半月の日数を乗じた額を差し引いた残額に100分の10を乗じていた。
これに対して課税庁は、「ペナルティ」の額を報酬の総支給額から控除し得ず、所得税法施行令第322条の控除し得る金額は、5,000円にホステスの出勤日数を乗じた額にとどまるとして、差額分の納税告知処分等を行った。そこでパブクラブ経営者が、その取消しを求めた事案である。
なお、各ホステスに対して支払う報酬の額については、「1時間当たりの報酬額」(本件各集計期間における指名回数等に応じて各ホステスごとに定まる額)に「勤務した時間数」(本件各集計期間における勤務時間数の合計)を乗じて計算した額に、「手当」(本件各集計期間における同伴出勤の回数に応じて支給される同伴手当等)の額を加算して算出していた。
なお、さいたま地裁を第一審とする類似の事案が同時に進行し、最高裁判決は同日にほぼ同様の内容の判決を下しているが、ここでは判決が公開されている東京地裁を第一審とする事案をもとに進めていく。
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