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電子マネー・仮想通貨等の非現金をめぐる会計処理と税務Q&A 【第3回】「プリペイド方式の電子マネーにより経費決済を行った場合の税務上の留意点」

筆者:八代醍 和也

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電子マネー・仮想通貨等の非現金をめぐる

会計処理と税務Q&A

【第3回】

「プリペイド方式の電子マネーにより経費決済を行った場合の

税務上の留意点」

 

公認会計士・税理士 八代醍 和也

 

プリペイド方式の電子マネーを使用して経費決済を行った場合の税務上の留意点について教えて下さい。

前回は、プリペイド方式の電子マネーを使用して経費決済を行った場合の会計処理について解説を行ったが、今回は引き続き同じケースにおける税務上の取扱いについて解説する。

法人税、消費税並びに電子取引を行った場合の取引情報の保存方法の各論点から、ビジネスにおいて疑問が生じやすいと考えられる事項について順に考察してみたい。

 

1 法人税の取扱い

まず、法人税法及び関連法令においては、プリペイド方式の電子マネーを使用した際の処理について明確に定めた規定はない。そこで、基本的には法人税法第22条のいわゆる各事業年度の所得の金額の計算の通則に従って処理を行うことになると考えられる。

同条第3項では、損金の額に算入すべき金額として、以下の3つである旨を規定している。

法人税法第22条 (各事業年度の所得の金額の計算)

(中略)

3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

(以下略)

すなわち、法人における経費決済を前提とすると、上記通則中の二の「当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額」については損金の額とすべきということになり、さらにこの「債務の確定」が何を意味するのかということについて、法人税法基本通達2-2-12において以下のとおり規定している。

法人税法基本通達2-2-12(債務の確定の判定)

法第22条第3項第2号《損金の額に算入される販売費等》の償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。

(1) 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。

(2) 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。

(3) 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。

結局のところ、別段の定めがあるものを除いては、会計上のいわゆる「発生主義」に基づく経理処理によって損金に算入すべきことが求められていると考えられる。

つまり、前回解説を行った会計処理によって費用計上している場合においては、何ら調整を必要とすることなく、損金の額に算入することができるということである。

ここまでのところを図示すると、以下のように整理できる(勘定科目、金額は前回の設例による)。

プリペイド方式電子マネーのチャージ時
(借方)貯蔵品 15,000円  (貸方)現金預金 15,000円

プリペイド方式電子マネーの使用時
(借方)交際費 10,000円  (貸方)貯 蔵 品 10,000円

⇒ 税務においても上記の費用処理がそのまま認められる。(※)

(※) 複数年分の費用をまとめて前払いした場合には、当然ながら、法人税法基本通達2-2-14の規定により一時に費用処理する場合を除き、前払費用として資産計上される。

 

2 消費税の取扱い

法人税の場合と異なり、消費税法におけるプリペイド方式の電子マネーの取扱いは非常に明確である。

(1) チャージした際の取扱い

消費税法第6条において同条別表第一に掲げる物品の譲渡について消費税を課さないこととしており、プリペイド方式の電子マネーの購入は同表において非課税とされる「物品切手等の譲渡」に当たることから、消費税は課されない。

- 参 考 -

消費税法別表第一

(1) 土地の譲渡及び貸付け

(2) 有価証券等及び支払手段の譲渡

(3) 貸付金や預貯金の利子及び保険料を対価とする役務の提供等

(4) 郵便切手類、印紙及び証紙の譲渡

(5) 商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡

(6) 国及び地方公共団体等が行う一定の事務に係る役務の提供

(7) 外国為替業務に係る役務の提供

(8) 社会保険医療の給付等

(9) 介護保険サービスの提供

(10) 社会福祉事業等によるサービスの提供

(11) 助産にかかる資産の譲渡等

(12) 火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供

(13) 一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け

(14) 学校教育に関する役務の提供

(15) 教科用図書の譲渡

(16) 住宅の貸付け

ちなみに、プリペイド方式の電子マネーが上記の「物品切手等」に該当することについては、それほど違和感はないと思われるが、法文上の明確な規定はないものの、消費税法基本通達6-4-4において、以下の規定がある。

消費税法基本通達6-4-4(物品切手等に該当するかどうかの判定)

法別表第一第4号ハ《物品切手等の譲渡》に規定する「物品切手等」とは、次のいずれにも該当する証書及び資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)第3条第1項《定義》に規定する前払式支払手段に該当する同項各号に規定する番号、記号その他の符号(以下6-4-4において「証書等」という。)をいうものとして取り扱う。

(1) 当該証書等と引換えに一定の物品の給付若しくは貸付け又は特定の役務の提供(以下6-4-4において「給付等」という。)を約するものであること。

(2) 給付等を受けようとする者が当該証書等と引換えに給付等を受けたことによって、その対価の全部又は一部の支払債務を負担しないものであること。

(注) いわゆるプリペイドカードは、物品切手等に該当する。

プリペイド方式の電子マネーが資金決済法に規定する前払式支払手段であることは前回の解説で述べたとおりであり、上記規定から、課税庁が物品切手等と捉えていることがわかる。

(2) プリペイド方式の電子マネーを使用した際の取扱い

では、プリペイド方式の電子マネーを使用した場合に、どのような税務上の取扱いになるかということについて、消費税法基本通達9-1-22は以下のように規定している。

消費税法基本通達9-1-22(物品切手等と引換給付する場合の譲渡等の時期)

物品切手等と引換えに物品の給付若しくは貸付け又は役務の提供(以下9-1-22において「物品の給付等」という。)を行う場合には、当該物品切手等が自ら発行したものであるか他の者が発行したものであるかにかかわらず、当該物品の給付等を行う時に当該物品の給付等に係る資産の譲渡等を行ったこととなるのであるから留意する。

すなわち、商品の引渡し時や役務提供完了時において、課税取引が行われたと考えるわけである。

ここまでのところを図示すると、以下のように整理できる(勘定科目、金額は前回の設例による)。

プリペイド方式の電子マネーのチャージ時
(借方)貯蔵品 15,000円  (貸方)現金預金 15,000円

プリペイド方式の電子マネーの使用時
(借方)交際費 10,000円  (貸方)貯 蔵 品 10,000円

税務上はこの段階で課税取引が発生する。

 

3 まとめ

を踏まえた結論としては、プリペイド方式の電子マネーを使用した場合、前回解説した発生主義に基づく費用計上及び法人税法における損金算入並びに消費税法における課税仕入の発生のタイミングはすべて同一のものとなる。

 

4 電子取引を行った場合の取引情報の保存方法

プリペイド方式の電子マネーを使用した際には、通常の現金による経費決済の場合と異なり、領収書が発行されないこともある。

このような場合において、取引事実を証明するためには、納税者が具体的に何を保存する必要があるのだろうか。

この点について、電子帳簿保存法10条は以下のように定めている。

電子帳簿保存法第10条(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)

所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。ただし、財務省令で定めるところにより、当該電磁的記録を出力することにより作成した書面又は電子計算機出力マイクロフィルムを保存する場合は、この限りでない。

すなわち、プリペイド方式の電子マネーの使用を含む、電子取引を行った場合には、加盟店からその情報が電子マネー発行会社に伝達・蓄積される。これらの蓄積された取引情報の記録は、利用者側でもダウンロードすることにより保存することができる。

電子取引を行った場合においては、こうした取引情報を電磁的記録として保存することが求められることになる。

一方で、これらの情報を書面で出力するか、電子計算機出力マイクロフィルムの状態で保存することも認められており、柔軟な対応が図られている。

(了)

次回は5/18の公開予定です。

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筆者紹介

  • 八代醍 和也

    (やしろだい・かずや)

    公認会計士・税理士
    八代醍会計事務所

    同志社大学経済学部卒業。
    税理士法人勤務を経て、2008年(平成20年)公認会計士試験合格後に大手監査法人に入社。主に国内上場企業に対する法定監査業務に従事。2012年(平成24年)に公認会計士登録。
    2016年(平成28年)に税理士登録、独立開業。現在は、税務・会計両面の経験を活かし、各種コンサルティング業務に従事。

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