検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10856 件 / 1481 ~ 1490 件目を表示

空き家をめぐる法律問題 【事例57】「避難のため自宅を空き家にする場合の法的問題」

空き家をめぐる法律問題 【事例57】 「避難のため自宅を空き家にする場合の法的問題」   弁護士 羽柴 研吾   - 事 例 - 最大震度7の地震が発生し、自宅の瓦やブロック塀に被害が出ています。また、建物も傾いて倒壊の危険性があります。避難生活のため、自宅を空き家にすることになりますが、この場合にどのような問題がありますか。 また、隣人も避難しているようですが、隣家の瓦やブロック塀が自宅に向かって倒れてくる可能性があります。隣人に対して、どのような請求ができるでしょうか。   1 はじめに 大規模な地震等の災害によって自宅が損壊し、避難生活を余儀なくされる場合、自宅を空き家にせざるをえなくなる。余震が継続しているような場合では、修繕を行えないままに避難生活が長期化することもある。適切な処理が行われないままの空き家が増加すると、二次被害を発生させることもある。 そこで、地震によって自宅が損傷し、空き家とする場合を念頭に、その法的問題について検討することにしたい。   2 相隣関係において生じうる法的責任 (1) 隣家の所有権を侵害した場合 隣家の敷地に瓦やブロック塀が流入した場合、隣家の所有権を侵害することになるため、隣家の所有者から所有権に基づいて妨害排除請求や妨害予防請求を受ける可能性がある。請求を受けた場合、自ら費用を負担して撤去や予防措置を講じる必要が生じることになる。 流入物の撤去や建物やブロック塀の修繕を行うために、隣地を利用する必要がある場合、隣地を使用することができる(民法第209条第1項)。隣地を使用する際は、隣地の所有者と使用者に事前に通知する必要があるが、隣人が避難等をしており、事前通知が困難である場合には、事後的に遅滞なく通知することで足りる(同条第3項)。 (2) 隣家に損害を与えた場合 地震によって建物が崩れたり、瓦やブロック塀が損傷するなどして隣家に被害を与えた場合、土地工作物責任(民法第717条)の有無が問題となりうる。土地工作物責任が認められるためには、土地工作物の設置や保存に瑕疵のあることが要件となる。 ここでいう「瑕疵」とは通常有すべき安全性を欠いていることを意味するところ、瑕疵の有無は、建物やブロック塀等の土地工作物が、当時発生が予想された地震に耐えられる安全性を有していたかどうかを、諸般の事情を踏まえて総合的に判断することになる。 なお、不可抗力の場合に免責される余地もあるが、損害賠償義務があることを前提に、不可抗力の程度に応じて損害額を減額することで調整されることもある。 国土交通省によれば、住宅の耐震化率は全国的には約87%(平成30年時点)まで進んでいる(※)とのことであるが、異なる見方をすれば、現在でも耐震工事が進んでいない建物が少なからず存在することを意味する。 (※) 国土交通省「住宅・建築物の耐震化の現状と目標」 現在の基準に適合していない建物の瑕疵の有無は、そのことのみで判断するのではなく、法令上の改修義務の有無や、特別の事情(改修することが一般的に行われている等)の有無も考慮して判断することになるものと考えられる(仙台地判昭和56年5月8日判時1007号30頁参照)。 また、地震の発生時点で建物やブロック塀に、設置や保存の瑕疵がないと認められる場合でも、地震の発生後に損傷した建物やブロック塀の管理を放置し、隣人に新たな被害を発生させたような場合には、そのことを理由に建物やブロック塀の保存に瑕疵が認められることもあるので留意が必要である。   3 修繕・解体と行政上の支援 (1) 行政上の経済的支援 建物の所有者には上記2のような法的責任が生じうるため、避難生活のために自宅を離れる場合には、建物の状況に応じた修繕・解体等の措置を講じておくことが重要である。 また、被災後は生活再建のための資金も必要であることから、どのように修繕・解体費用を確保するかも重要な問題となる。この点に関して、次のものを含む行政上の支援が用意されていることから、個々の状況に応じて積極的に活用したいところである(内閣府「防災情報のページ」等)。 ① 災害救助法に基づく応急修理 災害救助法が適用される場合、地震によって、自宅の屋根、外壁、建具(窓・玄関)等に損傷が生じ、雨が降れば浸水を免れず、地方公共団体から準半壊以上と判断された世帯は、災害発生日から10日以内の期間に、1世帯5万円以内の範囲で、①ブルーシート、ロープ、土嚢等の資材の現物給付や、②修理業者によるブルーシート展張等の修理の提供を受けることができる。被災者は、申請時に、応急修理を受ける必要があることを明らかにできるように、発災直後の写真をスマートフォン等で撮影しておくことが重要である。 また、①住家が準半壊以上の被害を受け、自ら修理する資力がない世帯や、②大規模な補修を行わなければ居住することが困難である程度に住家が半壊した世帯は、災害発生日から3ヶ月以内の期間(災害対策基本法に基づく国の災害対策本部が設置された場合は6ヶ月以内)に、被災した住宅の居室、台所、トイレ等の日常生活に必要な最小限度の部分について、修理限度額の範囲内(半壊以上の場合:706,000円以内、準半壊の場合:343,000円以内)で、応急的な修理を受けることができる。全壊の場合は、修理することで居住することが可能となる場合には修理の対象になるものとされている。なお、スマートフォン等による発災直後の写真撮影の必要性は上記と同様である。 ② 被災者生活再建支援金の活用 被災者生活再建支援金は、政令で定める自然災害が生じた場合に、一定の被災世帯の世帯主に対して支給されるものである。次の区分に応じて支給されるものであり、これらを修繕費用に充てることも考えられる。 (出典) 内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」より抜粋 ③ 災害援護資金の貸付け 災害援護資金は、都道府県内に災害救助法が適用された市町村が1以上ある場合に、災害によって負傷し、住居、家財に被害を受けた世帯の世帯主に対して貸し付けられるものである。 貸付けを受けるに当たっては、世帯人員あたりの市町村民税における前年の総所得金額による所得制限が設けられているが、負傷や損壊の程度に応じて、最大350万円の範囲で貸付けを受けることができる。 (2) 公費解体の利用 建物は所有権の対象であるから、その解体を行う費用は原則として自ら負担する必要がある。しかし、解体費用は高額になることから、公費解体が行われる場合には、これを積極的に利用するべきであろう。 公費解体とは、地震によって被災した建物等を、所有者の申請に基づいて、市町村が所有者に代わって解体・撤去を行う制度である。一般的には、建物等が罹災証明において全壊と認定された場合を対象としているが、災害規模によっては、半壊の場合でも対象となることもあるため、行政機関からの情報提供に留意する必要がある。令和6年能登半島地震においても、大規模半壊、中規模半壊、半壊(住家)、大被害(住家以外)と認定された家屋等が公費解体の対象とされた。 なお、災害が広域に及ぶような場合、業者が対応するまでに長期間を要することもある。被災者の窮状に付け込んで不当に高額な費用で解体等を受注する業者もいることから、自費解体を行うような場合には消費者被害に遭わないように留意が必要である。   4 隣家に対する法的請求 地震によって隣家が自宅に向かって崩れていたり、崩れかかっている場合、隣家の所有者に対して、所有権に基づいて、撤去や予防措置を請求できる。もっとも、被災後には様々な理由によって現実的に請求できない場合もある。この場合に、隣家の所有者に無断で撤去や予防措置を講じることは原則的には認められないが、事務管理(民法第697条、第698条)の要件を満たす場合は、撤去等の措置を講じて費用を請求できることもある。 また、地震後に隣家の所有者が適切に対応しないため、現在も権利を侵害される状態が継続しているような場合には、管理不全建物管理人(民法第264条の14)の選任を申し立て、当該管理人に適切な措置を講じさせることも考えられる。なお、所有者と連絡がつかず所在が不明な場合には所有者不明建物管理人(民法第264条の8)の選任を申し立てることも考えられる。 (了)

#No. 554(掲載号)
#羽柴 研吾
2024/02/01

電子書類の法律実務Q&A 【第15回】「契約書に「契約解除は書面による」と記載されている場合、メールで契約解除できるか」

電子書類の法律実務Q&A 【第15回】 「契約書に「契約解除は書面による」と記載されている場合、メールで契約解除できるか」   弁護士法人 咲くやこの花法律事務所 弁護士 池内 康裕   〔Q〕 事業者間の取引で、契約書に「契約解除は書面による」と記載されている場合、書面で契約解除しなければ、契約解除は無効でしょうか。メールで契約解除をすることは、できないでしょうか。 また、事業者間の取引で、契約解除などの意思表示の方法を契約書で決める場合の注意点を教えてください。 〔A〕 契約書に「契約解除は書面による」と記載されている場合は、書面で契約解除した方がよいです。 ただし過去の裁判例では、「契約解除は書面による」という趣旨の記載がされていても、メールによる解除が認められた事例もあります。このように、単に「書面による」とだけ定めていても、解釈により書面以外での方法が認められる可能性があります。 契約解除などの意思表示の方法を契約書で決める場合は、①重要性が低いものについて、電子メールでの意思表示も可能である旨明記すること、②書面に限定する趣旨の場合、書面以外の効力を否定する旨はっきり明記すること、がポイントです。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 1 法律上、意思表示の方法は決まっているのか そもそも、解除をどのような方法で行うかは、法律で決まっているのだろうか。 契約の申込・承諾・解除など一定の法律効果を欲する意思を表示する行為を「意思表示」という。法律上、意思表示の方法は決まっている場合がある。 例えば、保証契約は、民法上、「書面」又は「電磁的記録」でしなければ効力を生じないとされている(民法446条2項、3項)。そのため、口頭で保証契約を締結しても、無効だ。 ただし、意思表示の方法が法律で決まっているのは、例外的なケースだ。多くの場合、法律で、意思表示の方法は決まっていない。 本稿で取り上げる契約解除については、民法上、意思表示の方法は決まっていない(民法540条1項)。そのため民法上の売買契約、賃貸借契約、業務委託契約等について、どのような方法で解除するかは法律上、自由だ。契約書に意思表示の方法が定められていない場合、口頭での契約解除も有効だ。   2 契約書に「契約解除は書面による」と記載されている場合 契約書に「契約解除は書面による」と記載されている場合は、どうか。直感的には、契約で合意しているのだから書面で契約解除しなければならないように思う。 この直観は、正しい。たしかに、この場合、書面で契約解除した方がよい。筆者も弁護士として事前に相談を受けた場合、依頼者にこのようにアドバイスするだろう。 しかし、実は過去の裁判例では、契約書に「契約解除は書面による」と記載されていても、メールでの解除を認めた事例もある。過去の裁判例を確認してみよう。 まず、1つ目の裁判例を紹介する。 この事案は、指定する書面を交付しなかったという特殊性があるので、それほど重視できないという見方もあるだろう。 そこで、2つ目の裁判例を紹介する。 この東京地判平成30年1月5日のように、契約書等で意思表示の方法を書面によると定めていても、書面によらない意思表示を否定する趣旨の規定ではないと解釈される可能性がある。 また契約書等で「書面」と記載されていても、電子メールの場合、書面に近い側面もあるので、口頭で行う場合と比較して、意思表示が有効と認められやすくなる。   3 事業者間の取引で、契約解除などの意思表示の方法を契約書で決める場合の注意点 事業者間の取引で、契約解除などの意思表示の方法を契約書で決める場合には、契約書の文言上、意思表示の方法が書面に限定されているかどうか、確認する。 そのうえで、重要なやり取りかどうかで、対応を変える。 (1) 重要でないやり取りの場合 重要でないやり取りについて、全て書面で行うのは、煩雑である。書面にはやり取りを記録に残すことができるというメリットがあるが、電子メールでも同様の効果が期待できる。 例えば、重要性が低い契約の中途解約について、電子メールでやり取りする可能性がある場合、電子メールでの意思表示も可能であることを契約書にはっきりと明記した方がよい。明記することで契約当事者双方の認識にずれがなくなり、トラブルを防止することができる。 (2) 重要なやり取りの場合 他方、重要なやり取りなので、書面に限定したいというニーズもある。 この場合、単に書面によると決めていても、書面によらない意思表示を否定する趣旨の規定ではないと解釈される可能性がある(上記東京地判平成30年1月5日)。契約書上も、書面以外での意思表示を否定する趣旨であることを明確にした方がよい。   (了)

#No. 554(掲載号)
#池内 康裕
2024/02/01

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第77話】「居住用財産の3,000万円特別控除」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第77話】 「居住用財産の3,000万円特別控除」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   浅田調査官は、昨年、署内で、令和5年分所得税確定申告の注意事項として「誤りやすい事例集」が渡され、それを熱心に読んでいる。 「・・・これは・・・資産税の事例だけれど、間違いやすいなあ・・・」 浅田調査官は、1人で苦笑している。 「何を読んで、ニヤニヤしているの?」 いつの間にか、傍らに中尾統括官が立っている。 「・・・」 浅田調査官は、驚いて顔を上げる。 「これって・・・回答・・・わかりますか?」 浅田調査官は、誤りやすい事例を見せる。 中尾統括官は、事例を読むと、即座に答える。 「これは・・・特例の適用はできないだろう・・・マンションを売却するまでに他人に貸しているのだから・・・」 中尾統括官の答えを聞いて、浅田調査官は微笑む。 「統括官もそう思うでしょ」 中尾統括官は、浅田調査官の表情を見て、「違うの?」と尋ねる。 「ええ、この事例については、資産税部門の人も間違えると聞いていますから、所得税の人は当然でしょう」 中尾統括官は、プライドを傷つけられ、憮然とする。 「・・・居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例の適用条文は、措置法35条だろう」 そう言うと、中尾統括官は、机の上に置かれていた税務六法を掴み、措置法35条1項を開く。 「そして、同条2項2号で、次のように規定している」 「・・・すなわち、居住の用に供していた家屋を、居住の用に供さなくなった日以降3年を経過した日の属する年の12月31日までに譲渡した場合は、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例を適用することができるという規定だろう」 中尾統括官は、条文を読みながら、浅田調査官を見る。 「ええ、そうです・・・そして、この場合において、譲渡した家屋が居住用の家屋に該当するかどうかは、その家屋を居住の用に供さなくなった時点で判定します」 浅田調査官が答える。 「・・・その判定時期は・・・措置法の通達に・・・次のように書いています」 そう言うと、浅田調査官は、措置法通達31の3-9を読み上げる。 そして、浅田調査官は、罫紙に図を描く。 「そうか・・・判定の時期が居住の用に供さなくなった時点だから・・・その後に他人に貸してもかまわないということか・・・」 中尾統括官は、浅田調査官の描いた図を見ながら、呟く。 「・・・しかし、居住用土地等のみの場合は、貸し付けていたら駄目と書いている・・・」 中尾統括官は、措置法通達35-2を開く。 「・・・ということは、居住用土地等のみの場合は、貸し付けしてはいけないということか・・・」 中尾統括官は、真剣な顔で、通達を読み直す。 (つづく)

#No. 554(掲載号)
#八ッ尾 順一
2024/02/01

《速報解説》 令和6年能登半島地震の損失に係る雑損控除等、令和5年分の所得税確定申告で適用可とする特例法案の概要が明らかに~自民・公明両党、今国会での早期成立を目指す~

 《速報解説》 令和6年能登半島地震の損失に係る雑損控除等、 令和5年分の所得税確定申告で適用可とする特例法案の概要が明らかに ~自民・公明両党、今国会での早期成立を目指す~   Profession Journal編集部   令和6年1月31日(水)、自由民主党・公明党は、令和6年能登半島地震における被災者の所得控除を前倒しで適用可能とする特例法案の早期成立を目指すとしたうえで、同法案の概要を公表した。 令和6年能登半島地震については同年1月1日に発生したため、本来であれば雑損控除や災害減免法特例等の措置は令和6年分の確定申告での適用対象となるが、臨時・異例の対応として、今般の災害で生じた損失について、令和5年分の確定申告における雑損控除等の適用対象とされる。 特別措置の概要については以下のとおり。 (了)

#Profession Journal 編集部
2024/01/31

《速報解説》 総務省、「個人住民税の定額減税(案)に係るQ&A集」を公表~控除対象配偶者以外の同一生計配偶者に係る定額減税を令和7年度分からとする詳細示す~

 《速報解説》 総務省、「個人住民税の定額減税(案)に係るQ&A集」を公表 ~控除対象配偶者以外の同一生計配偶者に係る定額減税を令和7年度分からとする詳細示す~   Profession Journal 編集部   既報のとおり令和6年1月22日に所得税の定額減税については、源泉徴収義務者に向けた実施要領案が公表されたところ、同月29日には、総務省ホームページにおいて「個人住民税の定額減税(案)に係るQ&A集(第1版)」が公表された。 これは、個人住民税における定額減税の経緯・概要や控除方法、徴収方法等についてQ&A形式で詳細を明らかにするもの。 令和6年度税制改正大綱においては、原則、令和6年度分の個人住民税につき定額減税を行い、例外として控除対象配偶者以外の同一生計配偶者に係る定額減税については令和7年度分からとすることが示されていたが、その理由等についても下記のとおり説明されている。 (了)

#Profession Journal 編集部
2024/01/30

《速報解説》 国税庁、インボイス制度に関して「多く寄せられるご質問」を更新~令和5年10月から課税事業者となった場合の令和7年における基準期間の取扱いなど4問追加~

《速報解説》 国税庁、インボイス制度に関して「多く寄せられるご質問」を更新 ~令和5年10月から課税事業者となった場合の 令和7年における基準期間の取扱いなど4問追加~   Profession Journal編集部   インボイス制度に関して「多く寄せられるご質問」は、既報のとおり令和5年11月13日に全13問で国税庁ホームページにて公表され、その後12月13日には設問が5問追加されたところ、本日(令和6年1月26日)付で新たに4問が追加された。 今回新たに公表されたのは次の4問。 このうち問㉒では、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者となった個人事業者(令和5年10月1日より前は免税事業者)につき、令和7年分の申告における基準期間(令和5年分)の課税売上高は、免税事業者であった期間(令和5年1月から9月まで)の金額を含むか否かについて取り上げている。 これに対する回答として、基準期間における課税売上高(税抜)は、個人事業者が免税事業者であった期間(令和5年1月から9月)の課税売上高を含む金額で計算することを明らかにしたうえで、免税事業者であった期間に係る課税売上高について税抜処理は行わず、その売上げ(非課税売上げ等を除く)がそのまま課税売上高となることを計算例とともに示している。 なお、インボイス制度開始後、最初の消費税確定申告時期が近いこともあってか、国税庁は同日、「2割特例」に関する情報をまとめた特設ページも公表している。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#Profession Journal 編集部
2024/01/26

《速報解説》 「倫理規則」及び「倫理規則に関するQ&A」の改正案がJICPAより公表される~上場事業体及び社会的影響度の高い事業体の定義に関する規定等を改正~

《速報解説》 「倫理規則」及び「倫理規則に関するQ&A」の改正案がJICPAより公表される ~上場事業体及び社会的影響度の高い事業体の定義に関する規定等を改正~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年1月24日、日本公認会計士協会は、「倫理規則」及び「倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」」の改正に関する公開草案を公表し、意見募集を行っている。 これは、国際会計士倫理基準審議会(The International Ethics Standards Board for Accountants: IESBA)の倫理規程の改訂等を踏まえた対応である。 倫理規則に関しては、「公開草案に対する質問事項」がある。 意見募集期間は、2024年3月8日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 1 上場事業体及び社会的影響度の高い事業体の定義に関する規定 会計事務所等は、本パートを適用する上で、事業体が次の類型のいずれかに該当する場合には、その事業体を社会的影響度の高い事業体として取り扱わなければならない(倫理規則R400.22項)。 社会的影響度の高い事業体に該当する場合、例えば、報酬依存度(特定の社会的影響度の高い事業体に対する報酬依存度が5年連続して15%を超える場合には、原則として監査人を辞任する)に関する規定の遵守が求められる。 2 業務チームの定義及びグループ監査業務に関する規定 用語集の「監査業務チーム(Audit team)」について、例えば、「監査業務の結果に直接的に影響を及ぼすことができる、会計事務所等内の、又は会計事務所等と契約しているその他の全ての者」が対象となるように規定する。 用語集において、グループ監査業務(Group audit)に関連する定義を設ける。また、セクション405「グループ監査業務」を新設する。 3 テクノロジーに関する規定 例えば、「テクノロジーの利用に伴う阻害要因の識別」などが規定されている。 倫理規則における「テクノロジー」の範囲は広範であり、将来的な未知のテクノロジーを含むあらゆるテクノロジーを包含することを意図しているとのことである。 4 「守秘義務の原則」の用語変更 現行の倫理規則では、「守秘義務」の用語を用いて規定しているが、それを「秘密保持」に変更する提案である。「守秘義務の原則」は「秘密保持の原則」に変更される。 今回の変更は、情報の秘密保持がいっそう重要となっていることなどの趣旨について会員の理解を促進するために用語の表現を修正するものであり、従来の考え方を変えるものではない。 現行の倫理上の基本原則では、「守秘義務」は業務上知り得た秘密を守ることとされているが、「秘密保持」は業務上知り得た情報の秘密を守ることとする。 用語集は、秘密情報(Confidential information)について、形式や媒体を問わず(文書、電子、映像、口頭を含む)、公に入手可能となっていない情報、データ又はその他の文書とし、業務上知り得た秘密情報とは、会員が、会計事務所等又は所属する組織から知り得た秘密情報並びに専門業務を行うことにより知り得た依頼人及びその他の事業体の秘密情報をいうとしている。 5 「倫理規則に関するQ&A」(倫理規則実務ガイダンス第1号)の改正 倫理規則の改正案を踏まえ、「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」(倫理規則実務ガイダンス第1号)についても所要の改正を行う。 例えば、「守秘義務」を「秘密保持」に変更することなどである。   Ⅲ 適用時期等 2025年4月1日から適用する。早期適用できる。 (了)

#阿部 光成
2024/01/26

《速報解説》 ASBJが「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」を公表~IIRに係る取扱いの見直し予定を踏まえ、2024年3月末までに実務対応報告の改正を想定~

《速報解説》 ASBJが「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」を公表 ~IIRに係る取扱いの見直し予定を踏まえ、2024年3月末までに実務対応報告の改正を想定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年1月24日、企業会計基準委員会は、「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第68号(実務対応報告第44号の改正案))を公表し、意見募集を行っている。 グローバル・ミニマム課税の所得合算ルール(IIR)については2023年3月28日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第3号)に規定されており、これに対応し、「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」(実務対応報告第44号)が公表されているところである。 グローバル・ミニマム課税のルールには、所得合算ルール(Income Inclusion Rule(IIR))のほかに、軽課税所得ルール(Undertaxed Profits Rule(UTPR))及び国内ミニマム課税(Qualified Domestic Minimum Top-up Tax(QDMTT))があり、公開草案は、今後法制化された場合のこれらの取扱いも含めたグローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の取扱いを定めるものである。 なお、令和6年度の税制改正において所得合算ルール(IIR)に係る取扱いの見直しが行われる予定であることを踏まえて、2024年3月31日までに実務対応報告の改正を想定しているとのことである。 意見募集期間は2024年2月26日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 公開草案は、当面の間、必要と考えられる特例的な取扱いを継続することを提案している。 会計処理について、現行の「改正法人税法の成立日以後に終了する」と「(四半期連結決算及び四半期決算を含む。)」の文言を削除し、次のように規定する(3項、3-2項)。   Ⅲ 適用時期等 改正後の実務対応報告は、公表日以後適用することを提案している。 (了)

#阿部 光成
2024/01/26

プロフェッションジャーナル No.553が公開されました!~今週のお薦め記事~

2024年1月25日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.553を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2024/01/25

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第34回】「過少申告加算税の減免に係る「正当な理由」の意義と類型」-過少申告加算税減免の実質的正当根拠理由の検討-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第34回】 「過少申告加算税の減免に係る「正当な理由」の意義と類型」 -過少申告加算税減免の実質的正当根拠理由の検討-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 前々回、前回と2回にわたって重加算税の賦課要件に関する判例を検討したが、今回は、それらと並ぶ加算税に関する重要論点として、過少申告加算税の減免に係る「正当な理由」要件(税通65条5項1号)の解釈適用の問題を検討する(なお、無申告加算税や不納付加算税についても同様の問題(税通66条1項柱書但書・7項、67条1項但書)があるが、以下では過少申告加算税について検討する)。 この問題については、従来から、「正当な理由」の意義をめぐって「(イ)不可抗力説」、「(ロ)不当・苛酷事情説」、「(ハ)帰責事由不存在説」、「(ニ)故意・過失不存在説」、「(ホ)故意・過失必要立証説」、「(ヘ)比較衡量説」等さまざまな見解が唱えられてきた(石倉文雄「過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税-制度の目的・内容、学説・判例とその検討-」日税研論集13号(1990年)23頁、44頁以下参照)。 また、「正当な理由」の類型については、「① 税法解釈の疑義に関するもの」、「② 事実関係の不知・誤認に関するもの」及び「③ 税務官庁の対応に関するもの」に大別され(品川芳宣「税務官庁の対応に起因する『正当な理由』と最近の最高裁判決の問題点」石島弘ほか編『山田二郎先生喜寿記念 納税者保護と法の支配』(信山社・2007年)221頁、226-227頁参照。以下「類型①」、「類型②」及び「類型③」という)、類型③は更に「イ 税務官庁の言動と信義則」、「ロ 税務職員の誤指導」、「ハ 税務官庁の不作為」、「ニ 税務官庁の見解の変更・通達の記載内容」、「ホ 公刊物における担当職員の見解」及び「へ その他」に区分されることがある(品川芳宣『附帯税の事例研究』(財経詳報社・2012年)111-148頁参照。以下「類型③イ」、「類型③ロ」等のように表記する)。 以上のような議論状況を踏まえた上で、以下では、過少申告加算税の減免に係る「正当な理由」に関する判例を検討することにする。   Ⅱ 「正当な理由」の意義に関する確立した判例 従来、課税実務や裁判例の立場について、次のような分析・整理がみられた(石倉・前掲論文32-33頁。傍点原文)。 このような状況の下、最高裁もまだ「『正当な理由』の意義についての一般論を判示してはいなかった」(川神裕「判解」最判解民事篇(平成18年度(上))579頁、604頁)が、その後、税理士虚偽申告「税理士任せ」事件・最判平成18年4月20日民集60巻4号1611頁(以下「平成18年最判A」という)は、最高裁として初めて、下記の一般論を判示した(下線筆者)。 この一般論は、従来の裁判例の立場(前記の分析・整理にいう「(ロ)不当・苛酷事情説」あるいは判決文の文言に着目して酒井克彦『裁判例からみる加算税』(大蔵財務協会・2022年)65頁以下等にいう「不当・酷説」)を採用したものと解される。その理由は次のとおりである。 平成18年最判Aは、前記の判示では、「正当な理由」を「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情」として捉えつつ、これに「上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合」という限定を加えているが、そのような限定は、帰責事由不存在説すなわち「加算税制度あるいは『正当な理由』を責任主義....の立場より捉える説」(石倉・前掲論文45頁。傍点原文)によれば、不当・苛酷事情説ないし不当・酷説よりも「『正当な理由』の認められる範囲が広くなる」(同頁)ことを考慮したものと解される。このことは、前記の判示が過少申告加算税について「主観的責任の追及という意味での制裁的な要素は重加算税に比して少ない」として、「その例外としての『正当な理由があると認められる』場合についてはある程度厳格に解するべき」(川神・前掲「判解」604頁。下線筆者)旨を明らかにしていることから、読み取ることができよう。 前記の一般論は、その後、税理士虚偽申告「税務職員共謀加担」事件・最判平成18年4月25日民集60巻4号1728頁(以下「平成18年最判B」という)、外国親会社ストック・オプション[加算税]事件・最判平成18年10月24日民集60巻8号3128頁(以下「平成18年最判C」という)、逆パターン養老保険[医療法人]事件・最判平成24年1月16日判タ1371号125頁(以下「平成24年最判」という)、匿名組合通達改正事件・最判平成27年6月12日民集69巻4号1121頁(以下「平成27年最判」という)、課税仕入れ用途区分[エー・ディー・ワークス]事件・最判令和5年3月6日民集77巻3号440頁(以下「令和5年最判A」という)、課税仕入れ用途区分[ムゲン]事件・最判令和5年3月6日判タ1511号104頁(以下「令和5年最判B」という)等で採用されてきた。ただ、その当てはめの判断は、以下のとおり事案ごとに異なる。 平成18年最判Aは、類型②の事案について、下記の判示(下線筆者)のとおり、納税者側の税理士任せの「落ち度」等を考慮して、「正当な理由」があると認めなかった。 平成18年最判Bは、類型③ヘの事案について、下記の判示(下線筆者)のとおり、脱税に関する税理士・税務職員の共謀加担等を考慮して、「正当な理由」があると認めた。 平成18年最判Cは、類型③ホの事案について、下記の判示(下線筆者)のとおり、公刊物における課税庁の職員の見解等を考慮して、「正当な理由」があると認めた。 平成24年最判は、類型③ホの事案について、下記の判示(下線筆者)のとおり、所得税基本通達34-4の文言や市販の解説書に係る下記の事情のみをもっては、「正当な理由」があると認めなかった。 平成27年最判は、類型③ニの事案について、下記の判示(下線筆者)のとおり、課税庁の公的見解の変更等を考慮して、「正当な理由」があると認めた。 令和5年最判Aは、類型①の事案について、下記の判示(下線筆者)のとおり、課税仕入れの用途区分に関する消費税法の解釈をめぐる客観的事情を考慮して、「正当な理由」があると認めなかった。 令和5年最判Bも、類型①の事案について、令和5年最判Aの上記引用中の破線の下線部に相当する判示において「それ[=平成17年]以前に税務当局が作成した部内資料や税務当局関係者が編者である公刊物」等に言及する以外は、令和5年最判Aと基本的に同じ表現で同じ判断を示したが、いずれにせよ、これによって原審・東京高判令和3年4月21日税資271号順号13551の下記の判断(下線筆者)は否定された。 以上において、「正当な理由」の意義に関する一般論(不当・苛酷事情説ないし不当・酷説)と各事案におけるその当てはめの判断をみてきたが、その判断は、例えば最後に取り上げた令和5年最判Bの判断(令和5年最判Aと基本的に同じ判断)とこれによって否定された原審の判断とを比較してみただけでも、事実関係等に対する微妙な評価を伴うものであることは確かである。そうであるからこそ、税法に基づく法的判断に対して予測可能性・法的安定性を強く要請する租税法律主義の下では、そのような事実評価の基準となる考え方を明らかにしておくことが不可欠である。以下では、その考え方を申告納税制度の趣旨に照らして明らかにしておきたい。   Ⅲ 過少申告加算税制度の仕組み解釈と「正当な理由」の意義 「正当な理由」の意義に関して判例で確立された前記の一般論では、その意義は、過少申告加算税の趣旨に照らして解釈されているが、その解釈に係る論理操作については、過少申告加算税の趣旨と「正当な理由」の意義とを媒介する論理を補って理解する必要があるように思われる。つまり、過少申告加算税の趣旨に関する判示のうち「これによって、当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図る」(太字筆者)という部分から「正当な理由」の意義が明らかにされたものと解されるが、その部分で説示されている趣旨をどのように理解すれば、「正当な理由」があると認められる場合を「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合」(太字筆者)と解することができるかを更に検討しておく必要があるように思われるのである。 その検討に当たって注目されるのが、山本英幸弁護士の見解である(同「過少申告加算税における『正当な理由』」水野武夫先生古稀記念論文集刊行委員会編『水野武夫先生古稀記念論文集 行政と国民の権利』(法律文化社・2011年)689頁参照)。 その見解は、申告納税制度をその趣旨に照らし「納税者と税務官庁がともに、適正に納税義務が確定するように役割を分担し合う制度」(山本・前掲論文691-692頁)として理解し、その理解に基づき「申告納税制度の下での納税者と税務官庁の責務」(同693頁)の観点から、過少申告加算税の趣旨を下記①のとおり理解し(同694頁)、その趣旨に照らして、「正当な理由」が下記②の場合に認められると解すべきであるとする見解(同696頁。以下「納税者・税務官庁役割分担説」という)である。 納税者・税務官庁役割分担説による過少申告加算税の趣旨理解(上記①)は、判例によるそれ(川神・前掲「判解」604頁も参照)と同じものであると解されるが(山本・前掲論文694-695頁参照)、同説はそのことを前提にして、判例による趣旨理解にいう「当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平」について、「納税者間に不平等があることを意味するのではなく、正義の観点から不相当であるということを意味すると解すべきである」(山本・前掲論文697頁。下線筆者)と説いている(山本・前掲論文697頁の見出し「7」における「客観的不公正」という語は「客観的不公平」を「正義の観点から」表現したものと解される)。同説はこの理解を次のとおり敷衍している(山本697-698頁。下線筆者)。 このようにみてくると、納税者・税務官庁役割分担説は、法解釈方法論の観点からは、過少申告加算税制度の仕組み解釈によって「正当な理由」の意義を明らかにしようとする見解とみることができる。仕組み解釈は、とりわけ行政法規の解釈方法として、「法制度は目的―手段の構造で矛盾なく設計されているという前提にたち、その構造を『法の仕組み』と呼んで着目する解釈方法」(中川丈久「行政法解釈の方法―最高裁判例にみるその動態」山本敬三=中川丈久編『法解釈の方法論-その諸相と展望』(有斐閣・2021年)65頁、99頁)であり、「解釈対象の条文を包みこむ法制度が、この[目的達成手段の]重層構造と並立構造-『法の仕組み』-の中でどのような位置付けをもつかを明らかにする作業を通して、当該法制度の趣旨目的を特定し、それにより条文の意味を解釈することができるのである。」(同100頁)と敷衍されることがある。 つまり、納税者・税務官庁役割分担説は、「正当な理由」を「包みこむ法制度」として過少申告加算税制度と申告納税制度という相互に関連する2つの法制度を前提にして、まず、申告納税制度の趣旨から同制度の納税者・税務官庁役割分担構造を明らかにし、次に、その構造から過少申告加算税制度の趣旨を明らかにした上で、その趣旨に照らして「正当な理由」を解釈する見解とみることができるのである。 なお、納税者・税務官庁役割分担説は、「客観的不公平の実質的な是正」を先にみたように「正義の観念に反するという意味での『不公平』」の是正の意味で理解しながら も、これを「過少申告加算税の果たす機能であって目的ではない」(山本・前掲論文698頁)とした上で、「『客観的不公平の実質的な是正』は解釈要素となり得ないというべきである。」(同699頁)と述べている。ここで「解釈要素」という語がどのような意味で用いられているかは必ずしも明らかでないが、ただ、同説が前記②の解釈を繰り返し述べた後で次のとおり述べていること(山本・前掲論文699-700頁。下線筆者)からすると、「解釈要素となり得ない」ということは、正義の観念による実質的判断を「正当な理由」の解釈において行うことを排除するものではないと解される。 そうすると、納税者・税務官庁役割分担説は、過少申告加算税制度及びその前提となる申告納税制度の「内在的理念」としての正義の観念(井上達夫『法という企て』(東京大学出版会・2003年)3頁[初出・1997年])までをも視野に入れた仕組み解釈によって「正当な理由」の意義を明らかにしようとするものであるといえよう。   Ⅳ おわりに 今回は、過少申告加算税の減免に係る「正当な理由」の意義と類型について、確立された判例における一般論を基軸にして、検討を行った。 「正当な理由」があると認められる場合を過少申告加算税の趣旨に照らして「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合」と解する一般論それ自体は妥当であるが、問題は、それに具体的事案を当てはめる場合、どのような考え方を基準としてその当てはめの判断を行うかである。この問題については、納税者・税務官庁役割分担説の意味を検討し、その検討を通じて、同説が採用するものと解される仕組み解釈は、過少申告加算税制度及びその前提となる申告納税制度の趣旨や構造だけでなく正義の観念をも視野に入れた仕組み解釈であることを明らかにした。 以上の検討結果を踏まえて、最後に、納税者・税務官庁役割分担説について以下の2つの点を指摘しておきたい。 1つには、納税者・税務官庁役割分担説は、「正当な理由」の意義に関して判例で確立された一般論において、過少加算税の趣旨と「正当な理由」の意義とを媒介する論理として、申告納税制度の趣旨に照らして明らかにした同制度の構造(納税者・税務官庁役割分担構造)を援用する点に、独創性が認められる。ただ、その構造は、筆者が以前から説いてきた「納税者と税務官庁との相互チェック構造」(谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」第5回Ⅱ2、同「国税通則法の構造と手続」第15回1・2参照)と同様の考え方に基づくものであると解される(山本・前掲論文691-692頁、特に注6、注7参照)。 もう1つには、納税者・税務官庁役割分担説は、「正当な理由」の意義に関して、過少申告加算税制度及びその前提となる申告納税制度の趣旨や構造だけでなく正義の観念をも視野に入れた仕組み解釈を行ったものと解されるが、そうすることによって、「正当な理由」の存否の判断を正義の観念に基づいて行う可能性ないし途を拓くものと評価することができよう。その可能性ないし途は、「正当な理由」という不確定法概念の解釈を通じて、過少申告加算税減免の実質的正当根拠理由を法創造根拠理由に準ずるものとして形成するに至るであろう。ここで「法創造根拠理由」というのは、「法創造の拠りどころとなる法の原理・原則、特別の事情等の個別的救済理由の総称」(拙著『税法創造論』(清文社・2022年)132頁脚注(57))である。 (了)

#No. 553(掲載号)
#谷口 勢津夫
2024/01/25
#