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〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第32回】「買い手による買い手自身の見方」~自社の状況と将来を見つめ、M&Aが有効な手段か否かじっくり検討する~

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕 対象企業の見方・見られ方 【第32回】 「買い手による買い手自身の見方」 ~自社の状況と将来を見つめ、M&Aが有効な手段か否かじっくり検討する~   公認会計士・税理士 荻窪 輝明   《今回の対象者別ポイント》 買い手企業 ⇒M&Aの検討にあたって買い手自身の見方を知るヒントを得る。 売り手企業 ⇒望ましいM&Aの買い手かどうかを知るためのヒントにする。 支援機関(第三者) ⇒買い手がM&Aの当事者として相応しいかを知るためのヒントを得て、M&Aの助言に役立てる。 その他の対象者 ⇒M&Aの買い手を見る際に押さえておきたいポイントを理解する。   1 買い手にとってM&Aが有効な手段かを問う 中小企業のM&Aが浸透し、多くの中小企業にとってM&Aへの抵抗感がなくなっていけば、これまでにM&Aを経営の手段として検討してこなかった新たな買い手候補が現れます。M&Aの当事者のすそ野が広がるのはマーケットの活性化にとって望ましい一方で、買い手にとってM&Aへのハードルが低くなるほど、かんたんにM&Aを考えてしまう恐れもあります。 買い手がM&Aを考えるのは望ましいことですが、個々の買い手からすれば、M&Aに臨む前に買い手自身の状況と将来のあり方を見つめてからでも遅くはありません。買い手にとってM&Aが有効な手段である、積極的にM&Aを考えて良いと自信を持って言えるためにも、まずはM&Aが自社にとって有効な手段かを問うのが大事です。 最低限、以下の事項についてはM&Aの実行の有無にかかわらず、買い手自身が事前に検討しておくのが良いでしょう。 (1) 自社がどうなりたいか、どのような企業でありたいか 決してM&Aありきではなく、自社自身がどうなりたいかを知るのが最も重要です。自力成長のみで良いのであれば、わざわざM&Aをしなくても良いかもしれませんし、M&Aが経営手段として最良、最善とは言えないかもしれません。 自社がどのような企業であり、何を目指して今後経営していくのか、将来どのような企業であり続けたいと願っているのか、そういったビジョンが無いままにM&Aを行えば、M&Aが単に高い買い物で終わってしまう可能性があるどころか、M&Aが経営危機につながる可能性だってあります。 将来像を描くために、定量化できる目標や計画を立てて、何年後、何十年後に何億円の売上高を達成しているといったように数字による見通しを立てるのでも構いません。M&Aは買い手にとっての大きな投資の1つですから、自社の経営の見通しにハマるピース、パーツであるかを探るためにも、自社がどうなっていくのかを見つめ直すところから十分に検討しておくと、M&Aの必要性や、M&Aをするにしてもどのような相手が望ましいかの発見につながりやすくなります。 まずは、M&Aを抜きにして自社の将来像を描く時間をつくる。できれば相応の時間をかけたい検討事項です。 (2) M&Aの目的は何か 「M&Aをしたい」というだけでは、M&Aをする理由になりません。なぜM&Aをしたいのか、第三者に対してハッキリと言えるでしょうか。 たとえば、「市場のここら辺に位置している当社が10年後に目標とする40億円の売上に対して、自力成長で到達可能とみるのはその7~8割程度です。ですから、不足分のおよそ8億円~12億円程度の売上を補う1つの手段としてM&Aも視野に入れて、同業の中から売り手候補を探すのを、今後の経営計画ないしは内部管理用の資料に盛り込みたい、と考えています。」という見解を会社から聞けたとします。このような見解が聞ければ、少なくともM&Aによって何をかなえたいかがわかり、どれくらいの規模のM&Aが当社にとって望ましいゾーンなのかも浮かんできます。 もちろん、これでは見通しが甘いだとか、M&Aによって売上の2~3割を補えると思ったら大間違いだ、との意見もあるでしょう。しかし、漠然でもいいから、このような願望、見解を出してこそ、経営層、経営幹部間でM&Aの必然性、有用性、可否、適否を検討できますし、議論、協議が進んでいけば、もっと具体的なM&A像が膨らんでくるはずです。 大切なのは、M&Aをする積極的な(場合によっては消極的な理由もありますが)目的が見つかることですから、将来の経営の中にM&Aがハマる絵が描けるのが重要です。 (3) M&Aが望ましい理由はあるか 経営の手段として、成長、発展、拡大の過程でM&Aという選択肢が含まれるのは今や自然です。問題はM&Aが自社にとって望ましい手段かどうかです。自社に足りない何かを補う、自社に加えたいプラスの要素を獲得する、自社の描く未来をかなえるためにはM&A相手と手を組む必要性がある、といったM&Aによる効果が期待できる、言い換えればM&Aならば他の手段よりも効果が高いと言えそうだ、と考えられる状況であれば、M&Aを選択する積極的な理由になります。 しかし、M&A以外の手段によればいいところをあえてM&Aに頼る、M&A以外の手段を探さずして最初からM&Aをアテにするのは良くありません。 安易なM&Aにせず、M&Aを経営の武器として加えるならば、M&Aが良いと言える材料を集めなければなりません。可能なら、達成したい目標に対してM&Aによる場合と他の選択肢による場合との比較を行うのもアリです。 (4) M&Aを予算に計上しているか M&Aを検討している、というのなら、予算、計画にM&Aが計上されていなければ本気とは言えません。今後のM&Aのための予算としていくら計上していて、向こう何年間の予算を充てていると答えられるでしょうか。 このとき、有効な考え方の1つに最適資金配分があります。経営にとってキャッシュは生命線ですが、手元にある資金、稼いできた資金、調達した資金のキャッシュ総額を誰に、何に対してどのくらい配分、投資するのが有効かを、定期的に検討する機会が安定的な成長を遂げるために欠かせません。その資源配分先の1つにはM&Aも挙げられますので、自社の経営ウエイトを考える上でM&Aはどの程度の優先度なのか、いくら使えるのか、いくら使えば良いのかを検討する際にも役立つでしょう。 さらに、キャッシュ自体の管理のあり方として、常時手元に置いておく緊急資金、長期の投資資金、短期の投資資金といった具合に区分管理をしておき、資金ごとに最適な水準を計っておくと、この観点からもM&A資金(通常、長期の投資資金として検討されます)としてどのくらいの水準が妥当なのかを知ることができるようになります。 (5) M&Aが失敗してもやっていけるプランが描けるか M&Aを含めた投資を行う際に、多くの企業で検討が十分でないのが失敗リスク、事業リスクに対する備えと考え方です。M&Aが失敗しない保証はどこにもなく、内外の経営環境が変われば経営は良くもなり、悪くもなります。万が一失敗したときに、リカバリーを用意できるなら、M&Aに挑む価値はありますが、失敗してから考えるという安易な考えでは、買い手自身の経営も危ぶまれます。 仮にM&Aが失敗すると想定した場合に、なるべく傷が浅くなる対策を講じられるかどうか、最大損失はどの程度見込まれるか、うまくいかない場合の対処まで考えてこその投資です。かける金額、かける時間が少なくないからこそ、事前に十分に考えておきたいものです。   2 M&Aによって失うものがあると自覚する M&AにはPMI(Post Merger Integration)という分野があるくらい、M&A後まで影響が続き、売り手を買った、今日からグループになったから検討はこれでおしまい、とするわけにはいきません。 買い手が支払うべき代償と言えそうなものとして、たとえば、お金、時間、ヒトなどが挙げられます。 (1) お金 M&Aのための直接コストに留まらず、統合後のルールを統一するにも、システム統合をするにも、給与水準の見直しをするにも、売り手の販路拡大を手伝うにしろ、いずれにしても、売り手に対して負担するお金は、資金援助の形か、何らかの取引か、とにかく形式を問わず多額になっていきます。 お金という言い方をコストと言い換えれば、さらに対象は広がり、M&Aによって得るものがある一方、失うものも大きいかもしれません。かけるべきタイミングでお金をかけないと、売り手をグループの一員として軌道に乗せる・成長させる機会を逸してしまいますから、買って終わりというのはありえません。 (2) 時間 中小企業のM&Aでは、売り手を放置できる状況は少なく、売り手オーナー、経営幹部などの交代や引退などに伴う経営資源の不足をはじめ、買い手から売り手を見ると足りないものだらけだと思います。 経営の理念、経営に対する考え方も買い手と売り手では違うはずですから、経営文化、社風、経営哲学を理解してもらう時間も必要です。買い手の時間を売り手に割く、それも片手間ではなく全力で割くことができるかどうかが重要です。特にM&A直後の労力は大きく、負荷がかかるのを前提にM&Aを進めなければなりませんし、はじめてのM&Aでは慣れない中で手探りの対応をするために余計に時間がかかります。 (3) ヒト 売り手の経営資源の不足のうち、大きな不足要素になりそうなのがヒトの問題です。経営人材、管理人材といった主要なポジションで人材が不足していると考えられますので、買い手から応援に回らないといけませんが、手伝い程度の軽い気持ちでは務まりません。 売り手の経営そのものに働きかけるほどの大きな力を要しますが、気持ちの問題による場合も、人手の問題による場合も、能力の問題による場合もあるように、何の問題で買い手によるヒトの関与が求められるか、その場合のウエイトまで変わってきます。いずれにしても、買い手の人材が売り手に相当期間引っ張られるのは間違いありません。 (了)

#No. 493(掲載号)
#荻窪 輝明
2022/11/02

電子書類の法律実務Q&A 【第2回】「全ての契約を電子契約とすることは可能か」

電子書類の法律実務Q&A 【第2回】 「全ての契約を電子契約とすることは可能か」   弁護士法人 咲くやこの花法律事務所 弁護士 池内 康裕   〔Q〕 当社では、業務効率化の観点から、全ての契約を電子契約にしたいと考えています。そこで確認したいのですが、全ての契約を電子契約とすることはできるのでしょうか。書面の作成・交付が必要な契約があれば、教えてください。 〔A〕 2022年10月現在、多くの契約で書面の作成・交付は不要です。 ただし、例外的に一部の契約では、書面の作成・交付が必要とされています。そのため、全ての契約を電子契約とすることはできません。 書面の作成・交付が必要な契約には、①相手方の意向にかかわらず書面が必要な契約、②相手方が「承諾」すれば電子化することができる契約、③相手方が「希望」すれば電子化することができる契約、という3つのパターンがあります。まず問題となる契約がどのパターンに当てはまるかの確認が必要となります。 また、上記の3つのパターン以外にも、書面の作成・交付の有無により法的な効果が異なる契約もあるので、注意が必要です。 書面の作成・交付について問題となる代表的なケースとしては、①消費者を対象に訪問販売をする場合、②資本金1,000万円を超える企業が下請事業者に発注する場合、③採用時の労働条件を従業員に通知する場合、④相手方から贈与を受ける場合などがあります。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 1 原則:多くの契約で書面の作成・交付は不要 結論から言えば、多くの契約で書面の作成・交付は不要とされている。法律上、契約を成立させるために、原則として書面は必要ないからだ(民法522条2項)。 書面の作成・交付が必要ない契約の具体例は、以下のとおりである。 企業がビジネスで利用する多くの契約は、基本的に電子化できることが分かるだろう。 ◆書面の作成・交付が必要ない代表的な契約   2 例外:書面の作成・交付が必要な契約 上述したとおり契約をする場合、書面の作成・交付は、原則として必要ない。 ただし法律上、例外的に書面の作成・交付が必要とされている契約がある。書面の作成・交付をしないと、罰則の対象となる契約もあるので、特に注意が必要だ。 書面の作成・交付が必要とされている契約には、①相手方の意向にかかわらず書面が必要な契約、②相手方が「承諾」すれば電子化することができる契約、③相手方が「希望」すれば電子化することができる契約、という3つのパターンがある。問題となる契約がどのパターンに当てはまるかを確認して、②又は③であった場合は、事前に相手方の意向を確認したうえで、電子化を検討することになる。 それ以外にも、書面の作成・交付が不要でも、書面の作成・交付をするかどうかで法的な効果が変わる契約もある。この場合、書面の作成・交付を忘れると、自社に不利益になってしまうことがあるので、気を付ける必要がある。 例外等に当たる代表的な契約は、以下のとおりである。 ◆書面の作成・交付が必要である代表的な契約   3 書面の作成・交付との関係で特に注意すべき4つのケース 書面の作成・交付の有無が問題となる典型的な4つのケースを、以下でそれぞれ解説する。 (1) ケース1:消費者を対象に訪問販売をする場合 訪問販売とは、企業が消費者の自宅等に訪問して、商品の販売やサービスの提供を行う契約であり、相手方の意向にかかわらず書面が必要な契約である。 訪問販売をする場合、契約締結の際に、企業は、商品やサービスの種類、価格、クーリングオフなど重要事項を記載した「書面」を消費者に交付しなければならない(特定商取引法4条、5条)。書面を交付しないと罰則(6ヶ月以下の懲役又は100万円以下の罰金)があり(特定商取引法71条1号)、悪質なケースでは営業停止処分がされることもある(特定商取引法8条)。 本稿執筆時点(2022年10月時点)では、消費者が「承諾」しても「書面」交付が必要であり、電子契約に替えることはできない。ただし、2021年6月16日に公布された改正特定商取引法により、2023年以降、訪問販売についても消費者が「承諾」すれば、電子メールや電子契約サービスを利用して、契約できる可能性が高い。 少し話はそれるが、2022年6月から同改正法により、消費者の側からクーリングオフ(一定の期間であれば無条件で契約解除できる制度)する場合、電子メール、ウェブサイトの専用フォームなど書面以外の方法で行うことも可能になった。消費者の側から電子メールでクーリングオフをされても、原則として有効であることもおさえておこう。 (2) ケース2:資本金1,000万円を超える企業が下請事業者に発注する場合 資本金1,000万円を超える企業が物品の製造・修理の委託、プログラムの開発又はサービスの提供などの発注をする場合、下請事業者の規模によっては、下請法が適用される可能性がある。下請法が適用される契約については、下請事業者が「承諾」すれば電子化することができる。 下請法が適用される場合、親事業者は下請事業者に対して、発注の際に必要事項を記載した書面を交付しなければならない(下請法3条1項)。違反すると罰則(50万円以下の罰金)があるので注意が必要だ(下請法10条1号)。 下請法上の発注書面については、下請事業者が「承諾」すれば、書面ではなく、電子メールや電子契約サービスを利用して提供することもできる。そして、下請事業者の「承諾」を電子メールや電子契約サービスを利用して取得することもできる(下請法3条2項)。承諾の書式については、公正取引委員会・中小企業庁が発行する「下請取引適正化推進講習会テキスト」の148ページに書式例が掲載されている。 ただし、電子化に承諾しないことを理由に下請事業者との取引を停止すると、下請法に違反する可能性があるので、この点にも気を付けて、意向確認をしなければならない(公正取引委員会「下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項」)。 (3) ケース3:採用時の労働条件を従業員に通知する場合 雇用契約は、相手方が「希望」すれば電子化することができる契約である。 前提として、雇用契約自体は、書面を作成せずに口約束でも有効に成立する。 ただし労働基準法により、企業は、採用時に、労働者に対して賃金や労働時間などの労働条件を書面で明示しなければならない(労働基準法15条1項、同法施行規則5条4項本文)。違反すると罰則(30万円以下の罰金)があるので注意が必要だ(労働基準法120条1号)。 法改正により2019年4月から、労働者が「希望」すれば、採用時の労働条件を電子メール等で通知することもできるようになった(労働基準法施行規則5条4項2号)。 電子化を「希望」しない労働者との関係では、引き続き書面交付が必要である。そのため、電子メール等を用いて労働条件を通知する場合、事前に労働者の意向を確認しなければならない。労働者が特に望んでもいないのに、企業の都合で、一方的に電子メール等で労働条件を明示することはできないのだ。 (4) ケース4:相手方から贈与を受ける場合 贈与契約とは、財産をタダであげる契約のことだ。贈与契約は、書面(契約書)の有無により法的な効果が異なる契約である。 贈与契約は、書面を作成せずに口約束でも有効に成立する。そして上記3(1)~(3)のケースと異なり、書面を作成しない場合のペナルティもない。 ただし、書面なしで贈与契約を締結した場合、権利や物をもらっていない段階であれば、お互いにいつでも契約解除をすることができる(民法550条)。そのため、贈与を受ける立場であれば、解除されないように書面で契約を結んだ方がよい。 では、口約束ではなく、LINE等のSNSで約束した場合はどうだろうか。例えば、AがBに「誕生日だから10万円をプレゼントするよ」とLINEをして、Bが「分かった。ありがとう」とAにLINEで返信したとする。LINEは記録に残るが、この場合も解除することはできるのだろうか。 Bにとって酷な結論だが、10万円を支払う前であれば、Aは無条件で契約を解除することができる。 東京地判令和3年2月16日は、「LINE等のSNSにおけるやり取りは、一般的にみて、通常の会話を、インターネットを経由する文字媒体を用いて行うものであり、一般的な利用者の感覚からすれば電話による会話に準ずるものといえる」と判断している。つまりLINE等のSNSでのやり取りは、「電話による会話」に近く、書面と同様の効果は認められないのだ。 (了)

#No. 493(掲載号)
#池内 康裕
2022/11/02

空き家をめぐる法律問題 【事例44】「所在等が不明な共有者がいる場合の共有物の譲渡方法」

空き家をめぐる法律問題 【事例44】 「所在等が不明な共有者がいる場合の共有物の譲渡方法」   弁護士 羽柴 研吾   - 事 例 - 私の母Aは、Bと1/2ずつ共有している建物で生活しておりました。Aの死後、建物は空き家となっており、今後、建物を利用する者もいませんので、私と弟は建物を売却したいと考えています。 そこで、共有者のBと協議しようとしましたが、住民票の住所地にBはおらず、Bの所在を知るものはいません。このような場合に、どのような方法で建物を売却すればよいでしょうか。   1 はじめに 通常共有の関係を解消するためには共有物分割の手続等を経る必要があるところ、様々な事情によって共有者の一部が行方不明の場合や共有者を特定できない場合がある。これまでもこのような問題に対応する方法は存在したが、その利用に支障があることも指摘されていた。 そこで、本事例では、原則令和5年4⽉1⽇から施⾏される予定の改正⺠法等を踏まえて、共有者の一部が行方不明の場合の共有物の譲渡について検討する。なお、便宜上、改正前・後の⺠法を「改正前民法」「改正後⺠法」と表記する。   2 改正前民法を前提とした処分方法 通常共有と遺産共有が混在することになった場合、【事例43】のとおり、その共有関係の解消は通常共有の共有物分割の方法によることになる。もっとも、共有物分割の協議は、共有者全員で行う必要があるため、一部の共有者の所在等が不明な場合には成立しないことになる。 そこで、その他の共有者において、所在等の不明な共有者の不在者財産管理人の選任を申し立て、その管理人や申立人以外の共有者との間で換価分割を行う協議等を行うことや、共有者全員を相手にして共有物分割の訴えを提起することによって共有関係を解消することになる。なお、行方不明者の生死が7年間明らかではない場合には、失踪宣告の申立てを行い、その相続人との間の分割協議等によって共有関係を解消することも考えられる。 しかし、不在者財産管理人の選任申立てに際しては、管理人報酬相当額の予納金の納付を求められることがあり、手続的負担に加えて経済的負担も強いられることになる。また、共有物分割の訴えも、その性質は共有者全員を相手にしなければならない必要的共同訴訟とされており、共有者が多数人になるような事案においては、少なくない手続的負担を強いられることになる。   3 改正後民法による方法-所在等の不明な共有者の持分を譲渡する方法- 改正後民法においては、共有者の中に所在等の不明な共有者がいる場合に、共有物の管理等を容易にするため、裁判所の裁判によって、共有者が所在等の不明な共有者の共有持分権を取得する仕組みが規定された(改正後民法第262条の2)。この仕組みを利用することによって、共有持分権を取得した上で第三者に譲渡すること自体は可能であるが、一度、所在等の不明な共有者の共有持分権を取得しなければならないため手続的に迂遠である。 そこで、上記の仕組みとともに、共有者が、裁判所に対して、所在等の不明な共有者以外の共有者が共有持分権を特定の者に譲渡することを停止条件として、所在等の不明な共有者の共有持分権を譲渡する権限を付与することを申し立てる仕組みが設けられた(改正後民法第262条の3)。 申立人となった共有者は、裁判所による所在等の不明な共有者に対する公告と届出期間の経過後に、共有持分権の時価相当額の供託金を納付することによって、所在等の不明な共有者の共有持分権を特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判を受けることができる。当該裁判が確定すると、申立人は、2ヶ月以内に所在等の不明な共有者の共有持分権を譲渡する権限を有することになり、譲渡契約を締結して対価を取得することが可能となる。 当該仕組みは、申立人となった共有者に所在等の不明な共有者の共有持分権を譲渡する権限を付与するものであるから、所在等の不明な共有者は譲渡契約の当事者にはならない。そのため、所在等の不明な共有者は、譲渡の相手方から譲渡対価の一部を直接取得することはできない。その代わりに、所在等の不明な共有者は、譲渡権限を付与された共有者に対して、共有持分権の時価相当額の支払を請求することが認められている(改正後民法第262条の3第3項)。もっとも、申立人の共有者は、既に供託金を納付しているため、所在等の不明な共有者から支払請求を受けるのは、実際の供託金よりも高い金額で譲渡が行われているような場合に限られると考えられる。 所在等の不明な共有者の共有持分権を譲渡する仕組みは、所在等の不明な共有者の共有持分権が相続財産に属する場合には、相続開始の時から10年を経過した後でなければ使用することはできない(改正後民法第262条の3第2項)。これに対して、所在等の不明な共有者の共有持分権が相続財産に属さない通常共有の場合は、特別受益や寄与分等を考慮した遺産分割協議に対する期待を保護する必要がないため、当該仕組みを使用することができる。   4 本件について AとBは通常共有の関係にあったところ、Aの死亡によってAの通常の共有持分権は相談者とその弟が共同相続し、通常共有と遺産共有が混在した状態となる。相談者とその弟は建物を売却する方針で一致しているため、Bの所在について一定の調査を尽くして、それでもBの所在を把握できないような場合には、不在者財産管理人の選任を申し立て、当該管理人との間で建物を譲渡する協議を行うことが考えられる。 もっとも、このような方法は、申立てをする相談者や弟に予納金の負担等を求めることにもなるため、改正後民法の施行後は、所在等の不明な共有者の共有持分権を譲渡する仕組みを利用して、第三者に譲渡をする方が合理的であるように思われる。 (了)

#No. 493(掲載号)
#羽柴 研吾
2022/11/02

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第62話】「書面添付制度」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第62話】 「書面添付制度」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「・・・税理士法33条の2か・・・」 浅田調査官は、同条1項を見ながら、呟く。 そこに、中尾統括官がやってくる。 「なにを考えているの?」 浅田調査官の持っている税務六法を覗く。 「・・・この書面を添付した場合、税務署は、税理士に対して、税務調査前に、意見を述べる機会を与えなければならないのですが・・・」 浅田調査官は、税理士法35条1項のページを見せる。 「・・・この制度は、税務の専門家である税理士の立場をより尊重して、税務執行の一層の円滑化・簡素化を図ることを目的としたものだが・・・」 中尾統括官が、添付書類の趣旨を言う。 「・・・また、この制度は、税理士が作成等した申告書について、計算事項等を記載した書面の添付及び事前通知前の意見陳述を通じて、税務の専門家の立場からどのように調整されたかを明らかにすることにより、正確な申告書の作成及び提出に資するという、税務の専門家である税理士に与えられた権利の1つなんだ」 中尾統括官は、浅田調査官の顔を見る。 「・・・これって、納税者の代理人である税理士の権利なんですか・・・」 浅田調査官の問いに、中尾統括官は、大きく頷く。 「・・・事前通知前に意見陳述をするということは・・・この意見聴取それ自体は・・・『税務調査』に該当しないということですね」 「その通りだ」 中尾統括官は、応える。 「この意見聴取は、調査実地前に行われる確認すべき項目の整理作業であり、意見聴取後に調査が実地される場合には、改めて、事前通知が行われることになる」 浅田調査官は、国税通則法74条の9(納税義務者に対する調査の事前通知等)を開く。 「・・・この条文のおかげで、我々は、税務調査を行うたびに、毎回、お経のように、納税者に、日時等を唱えなければならない」 浅田調査官は、渋い顔をする。 「それは、平成23年度の税制改正で、事前通知等が法定化されたのだから、税務職員としては、仕方がないことだ・・・」 中尾統括官は、言葉を続ける。 「・・・とりあえず、意見聴取は、税理士の権利であり、質問検査権に該当しないことから、『調査』ではないということだ」 「・・・そうすると、申告書が誤っていても意見聴取後に、修正申告書を提出すれば、加算税は課されないということですか?」 浅田調査官が訊く。 「そうだ、調査ではないのだから、加算税は課されない」 中尾統括官の返事に頷きながら、浅田調査官は「・・・ところで、この書面添付に不正の記述があった場合、税務調査の開始後に、その不正の記述に対し、事実の隠蔽・仮装として、重加算税を課すことは可能なのですか?」と尋ねる。 「・・・うーん・・・それはないだろう・・・意見聴取それ自体、税務調査ではないのだから、基本的に、重加算税は課されないと思う」 中尾統括官は、曖昧に応える。 (つづく)

#No. 493(掲載号)
#八ッ尾 順一
2022/11/02

《速報解説》 会計士協会から「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」等の改正が公表される~税金費用の計上区分等の取扱いを示した法人税等会計基準等の改正に対応~

《速報解説》 会計士協会から「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」等の改正が公表される ~税金費用の計上区分等の取扱いを示した法人税等会計基準等の改正に対応~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年10月28日、日本公認会計士協会は、次の実務指針等を改正している。 これにより、2022年3月30日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対するコメントは寄せられなかったとのことである。 これは、2022年10月28日に、企業会計基準委員会が公表した改正企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の公表を受けたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 税金費用の計上区分(その他の包括利益に対する課税) 企業会計基準委員会の「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)等では、原則的な方法として、当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、その発生源泉となる取引等に応じて、損益、株主資本及びその他の包括利益に区分して計上することとされた(法人税等会計基準5項、5-2項)。 そのため、外貨建取引等実務指針等を改正し、株主資本及びその他の包括利益の各項目(評価差額及び繰延ヘッジ損益等)について、従来の繰延税金資産又は繰延税金負債に対応する額を控除した金額を計上することに加えて、各項目に対して課税された法人税等の額についても控除した金額を計上することとする。   Ⅲ グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果 企業会計基準委員会の法人税等会計基準等では、グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果の取扱いについて、連結財務諸表上のみ、売却時に税金費用を計上しないようにすることとされた。 そのため、持分法適用会社における留保利益、のれんの償却額、負ののれんの処理額及び欠損金について、税務上の要件を満たし、課税所得計算において売却損益を繰り延べる場合(法人税法61条の11)に該当する当該持分法適用会社の株式売却の意思決定を行った場合には、税効果を認識しないようにする。   Ⅳ 適用時期等 改正後の「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)等を適用する連結会計年度及び事業年度から適用する。 (了)

#阿部 光成
2022/10/31

《速報解説》 ASBJ、「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の改正を確定~草案に寄せられたコメントを踏まえ、一部内容を変更し公表~

《速報解説》 ASBJ、「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の改正を確定 ~草案に寄せられたコメントを踏まえ、一部内容を変更し公表~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年10月28日、企業会計基準委員会は、次の会計基準等の改正を公表した(下記を合わせて「本会計基準等」という)。 これにより、2022年3月30日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 これは、次の2つの論点についての取扱いを示すものである。 上記の本会計基準等の改正を受けて、2022年10月28日、日本公認会計士協会の実務指針等も改正されている。 2022年10月18日に開催された第489回企業会計基準委員会の審議事項(1)-11では、公開草案に寄せられたコメントを分析し対応案の検討を行った結果、公開草案の提案から変更した箇所があると記載されている。 2022年11月9日、公開草案に対する主なコメントの概要とそれらに対する対応が公表されている。例えば、「論点の項目」の「11)株主資本及びその他の包括利益に計上する金額の算定についてのコメント」のように、具体的なコメントが寄せられるなど、本会計基準等の理解に資する内容のものが多いと思われる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 税金費用の計上区分(その他の包括利益に対する課税) 1 概要 その他の包括利益に計上された取引又は事象が課税所得計算上の益金又は損金に算入され、法人税、住民税及び事業税等が課される場合がある。 法人税等会計基準は、その他の包括利益に対して課される法人税、住民税及び事業税等のほか、株主資本に対して課される法人税、住民税及び事業税等も含めて、所得に対する法人税、住民税及び事業税等の計上区分について見直しを行っている。 2 本会計基準等の改正により影響を受けることが想定される企業 その他の包括利益に対して課税される場合に、本会計基準等の改正の影響を受ける例として、次のようなケースが考えられる。 株主資本に対して課税される場合については、すでに「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第28号)等において規定されており、次の③の場合を除いて、本会計基準等の改正による影響はない。 上記のほか、次の例も示されている(改正企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の公表の際の「参考」を参照)。 3 会計処理の見直し 原則的な方法として、当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、その発生源泉となる取引等に応じて、損益、株主資本及びその他の包括利益(又は評価・換算差額等)に区分して計上する(法人税等会計基準5項、5-2項)。 例外的な方法として、課税の対象となった取引等が、損益に加えて、株主資本又はその他の包括利益に関連しており、かつ、株主資本又はその他の包括利益に対して課された法人税、住民税及び事業税等の金額を算定することが困難である場合には、当該税額を損益に計上することができる(法人税等会計基準5-3項(2))。 これに該当する取引として、本会計基準等では、退職給付に関する取引が想定されている。 また、重要性が乏しい場合の取扱いとして、損益に計上されない当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等の金額に重要性が乏しい場合には、当該法人税、住民税及び事業税等を当期の損益に計上することができることとする(法人税等会計基準5-3項(1))。 4 株主資本又はその他の包括利益に計上する金額の算定に関する取扱い 株主資本又はその他の包括利益に計上する金額の算定に関する取扱いとして、次のことを規定している(法人税等会計基準5-4項)。 税効果適用指針28項では、子会社に対する投資を一部売却した後も親会社と子会社の支配関係が継続している場合において、親会社の持分変動による差額として計上される資本剰余金から控除する法人税等相当額は、売却元の課税所得や税金の納付額にかかわらず、原則として、親会社の持分変動による差額に法定実効税率を乗じて計算すると規定されている(法人税等会計基準29-8項)。また、当該取扱いは、税金の納付が生じていない場合に資本剰余金から控除する額をゼロとするなど他の合理的な計算方法によることを妨げるものではないとしている(税効果適用指針118項)。 このような子会社に対する投資の一部売却に関する取扱いは、税務上の繰越欠損金がある場合など複雑な計算を伴う場合があることから、実務に配慮しつつ、個々の状況に応じて適切な判断がなされることを意図したものであると考えられる(法人税等会計基準29-8項)。 子会社に対する投資の一部売却以外の株主資本又はその他の包括利益に対して課税される場合についても、同様に実務上の配慮が必要になると考えられることなどから、当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、株主資本又はその他の包括利益に区分して計上する場合についても同様に取り扱うこととしている(法人税等会計基準5-4項、29-8項)。 5 その他の包括利益の組替調整に関する取扱い その他の包括利益の組替調整(リサイクリング)に関する取扱いとして、次のことを規定している(法人税等会計基準5-5項)。 6 関連する繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していた場合の取扱い 税効果適用指針30項における、親会社の持分変動による差額に係る連結財務諸表固有の一時差異について、資本剰余金を相手勘定として繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していた場合で、当該子会社に対する投資を売却し、一時差異が解消した際の繰延税金資産又は繰延税金負債の取崩しについては、資本剰余金を相手勘定として取り崩す(税効果適用指針9項(3)、30項、31項)。 7 その他の包括利益の開示に関する取扱い 「包括利益の表示に関する会計基準」(企業会計基準第25号)8項における、その他の包括利益の内訳項目から控除する「税効果の金額」及び注記する「税効果の金額」について、「その他の包括利益に関する、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(以下「法人税等」という。)及び税効果の金額」に改正している(包括利益会計基準8項)。   Ⅲ グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果 グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却(連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益について、税務上の要件を満たし課税所得計算において当該売却損益を繰り延べる場合(法人税法61条の11))に係る税効果の取扱いについて、以下に述べるように改正している。 なお、本会計基準等の規定する会計処理により影響を受けるのは、100%子会社を所有する親会社の連結財務諸表において、その100%子会社同士あるいは当該親会社とその100%子会社との間で、当該親会社あるいはその100%子会社が所有する子会社株式等を売却し、当該売却に伴い生じた売却損益について、グループ法人税制が適用される場合が想定されている。 1 連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益を税務上繰り延べる場合の連結財務諸表における取扱い及び子会社に対する投資に係る連結財務諸表固有の一時差異の取扱い 連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益について、税務上の要件を満たし課税所得計算において当該売却損益を繰り延べる場合(法人税法61条の11)、連結財務諸表において次の処理を行う(税効果適用指針39項、143項、143-2項、22項、23項、105-2項、106-2項)。 2 連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益を税務上繰り延べる場合の個別財務諸表における取扱い 連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益について、税務上の要件を満たし課税所得計算において当該売却損益を繰り延べる場合(法人税法61条の11)、当該子会社株式等を売却した企業の個別財務諸表における処理については、現行の税効果適用指針17項の取扱い(当該売却損益に係る一時差異について、税効果適用指針8項及び9項に従って繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する)を見直さない(税効果適用指針143-2項)。   Ⅳ 適用時期等 2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。 ただし、2023年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる。 なお、会計方針の変更に関する取扱いに注意する。 グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果については、遡及適用が困難となる可能性は低いと考えられるため、特段の経過的な規定を定めない。 (了)

#阿部 光成
2022/10/31

プロフェッションジャーナル No.492が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年10月27日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.492を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/10/27

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第19回】「課税要件事実の認定における「疑わしきは納税者の利益に」」-明文の規定がない場合における推計課税の許容性-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第19回】 「課税要件事実の認定における「疑わしきは納税者の利益に」」 -明文の規定がない場合における推計課税の許容性-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 第10回では、「納税者に有利な類推解釈」との関連において「疑わしきは納税者の利益に(in dubio contra fiscum)」が税法の解釈原理として認められるかどうかを検討したが、今回は、課税要件事実の認定において「疑わしきは納税者の利益に」が事実認定原理として認められるかどうか、認められるとして法的に何らかの制約ないし修正を受けることはないのかを検討する。 まず、この問題に関して筆者の知る限りで最も詳細に検討していると思われる次の見解(中川一郎編『税法学体系〔全訂増補〕』(ぎょうせい・1977年)89-90頁[中川一郎執筆]。下線筆者。以下「見解A」という)をみておこう。 この見解Aでは「要件事実の認定について、・・・・・・in dubio contra fiscumを認める者も極めて少ない」と述べられているが、確かに、この問題を意識的に取り上げ論ずる者(清永敬次『税法〔新装版〕』(ミネルヴァ書房・2013年)37頁、拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【63】参照)は今日では少ないとはいえ、しかし、「疑わしきは納税者の利益に」を税法の解釈原理として認めない論者(金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)125頁参照)でも、次のとおり(同149頁。下線筆者。以下「見解B」という)、これを事実認定原理としては認めていることは、注目すべきである。 この見解Bについてもう1つ注目すべきは、「疑わしきは納税者の利益に」という事実認定原理が推計課税(所税156条、法税131条)との関係で修正を受けるとしている点である。ただ、この点については、見解Aも同様の立場に立つものと考えられる。というのも、見解Aも、「税務行政の段階」において課税庁は、推計課税を認める明文の規定があれば、直接資料から得られる証拠がなくても、その規定に基づき、間接資料から得られる証拠によって要件事実を認定し課税することができるし課税しなければならない、という点については異を唱えるものではないと解されるからである。 なお、ここで注意しておかなければならないのは、見解Bが推計課税によって修正されるとする「疑わしきは納税者の利益に」にいう「疑わしい場合」は、課税要件事実を直接的証拠資料(要件事実、間接事実等の事実を証明する証拠を直接的に示す資料)によって認定することができない場合という意味での「疑わしい場合」であって、見解Aのいう「証拠のない場合」という意味での「疑わしい場合」一般を意味するものではない、ということである。推計課税は、課税要件事実を間接的証拠資料(要件事実、間接事実等の事実を証明する証拠を間接的に示す資料)によって認定して課税するものであり、「証拠がない場合」に課税要件事実を認定して課税するものではないのである。   Ⅱ 明文の規定のない場合における推計課税の許容性とその修正 さて、問題は、推計課税を認める明文の規定がない場合である。この問題については、①そのような場合に推計課税が許容されるかどうかという問題と②許容されるとして、そのような推計課税は「疑わしきは納税者の利益に」という事実認定原理とどのような関係にあると考えるべきかという問題に分けて検討することにする。 まず、前記①の問題については、推計課税を定める明文の規定がなかった昭和25年度改正前の所得税法の下での事件に関する判断であるが、最判昭和39年11月13日訟月11巻2号312頁は次のとおり判示し(下線筆者)、明文の規定のない場合における推計課税の許容性を「当然の事理」として認めた。 また、特別地方消費税(平成12年3月末廃止)に関する事件において、神戸地判平成9年3月24日行集48巻3号188頁は次のとおり判示し(下線筆者)、明文の規定のない場合における推計課税の許容性を「課税負担の公平の見地」から認めた。 これらの判断によれば、推計課税規定の基本的性格は確認規定ということになろう。すなわち、「本条[=所税156条]の意義は、推計課税を創設的に認めたものではなく、青色申告者に対する推計課税を禁止したところにある。」(武田昌輔監修『DHCコンメンタール所得税法』(第一法規・加除式)7035頁)といえよう。 しかし、推計課税が「租税負担の公平の見地」から「当然の事理」として認められるべきものであるとしても、租税法律主義が支配する税法の分野では、租税負担の公平は租税法律を通じて実現されなければならず、租税法律を離れて実現されてはならないこと(という意味での「含み公平観」については前掲拙著【21】【81】参照)からすると、推計課税については、これを定める明文の規定がやはり必要であると考えられる。 これを別の観点からいえば、課税要件事実を直接的証拠資料によって認定することができない場合という意味での「疑わしい場合」につき租税負担の公平の見地から推計課税を認めるかどうかは、租税法律主義の下では、立法者が判断すべき問題であるにもかかわらず、それを「調査官の良識」(見解A)に委ねると、推計課税が「租税行政の自己防衛の手段」(南博方『租税争訟の理論と実際〔増補版〕』(弘文堂・1980年)103頁)である以上、「国庫収入を早期に確保し、税務そのものを防衛するために」(同104頁)、「往々にして証拠によらず、調査官の良識により課税要件に該当するように要件事実の認定がなされ」(見解A)、その結果、租税法律主義(合法性の原則)の下での厳格な事実認定の要請(前掲拙著【41】参照)が潜脱されるおそれがあると考えられるのである。 そこで、そのような「疑わしい場合」については、推計課税の実質的根拠である「租税負担の公平の見地」と厳格な事実認定の要請との調整原理として、「疑わしきは納税者の利益に」という事実認定原理が妥当すると考えられる。つまり、明文の規定のない場合における推計課税は、「疑わしきは納税者の利益に」の限度で、その許容性が認められる、換言すれば、「疑わしきは納税者の利益に」によって修正を受けると考えられるのである(納税者に有利な推計課税)。これが、前記②の問題についての筆者の考え方である。   Ⅲ 納税者に有利な推計課税 納税者に有利な推計課税に関しては、推計による仕入税額控除の可否が議論されることがあるが、学説の中には、次のとおりこれを肯定する見解がある(清永・前掲書190頁。以下「見解C」という。これを支持するものとして田中治『田中治 税法著作集 第4巻 租税実体法の諸相と論点-相続税、消費税、地方税』(清文社・2021年)289頁[初出・2010年]参照)。 これに対して、裁判例においては推計による仕入税額控除を認められていない。例えば、神戸地判平成26年7月29日税資264号順号12511は、最判平成16年12月16日民集58巻9号2458頁の次の判示(ⓐ。下線筆者)を引用し、これを前提にして次のとおり判示している(ⓑ)。 このように、見解Cと上掲神戸地判とは結論の点では明らかに異なる。ただ、両者は、その説くところを特に「主語」に着目して読むと、そもそも議論のレベルを異にしているように思われる。すなわち、見解Cは推計による仕入税額控除を租税実体法のレベルで問題にしているのに対して、上掲神戸地判は租税手続法のレベルで問題にしている(はずである)と解される。 仕入税額控除は、税法の体系上、課税要件法の領域に属する措置ではないが、消費税の課税標準である課税資産の譲渡等の対価の額(消税28条1項)に税率(同29条)を適用して算出される税額(成立した納税義務の金額)から控除されるという意味で納税義務の成立と連動する特殊な形態の免除(拙著【95】参照)であるから、租税実体法の領域に属する措置ではある。見解Cは、仕入税額控除を適用する主体に言及せず推計による仕入税額控除について論じていることからすると、推計による仕入税額控除を納税義務者と国との実体的権利義務関係のレベル(租税実体法のレベル)で問題にしていると解される。 これに対して、前掲神戸地判が前提とする前掲最判は、消費税法30条7項を「税務職員による検査」に関する事実認定規範(事実認定に関する行為規範)として捉え、課税庁は「帳簿又は請求書等」という直接的証拠資料を用いて仕入税額控除の適用のための事実認定を行わなければならないとしたものと解されるが、そうすると、前掲神戸地判はそのような租税手続法のレベルで、課税庁が課税仕入れに係る支払対価の額の推計により仕入税額控除を行うことを認めなかった(はずである)と解されるのである。もっとも、前掲判示ⓑの書きぶりを読むと、推計による仕入税額控除を租税実体法のレベルで認めないかのように思われるかもしれないが、その判示の前提として引用されている前掲最判と併せ読むと、上述のように解することができるように思われるのである。 このように検討してくると、推計による仕入税額控除は、消費税法30条7項による事実認定資料の限定により租税手続法のレベルでは許容されないが、租税実体法のレベルでは許容されると考えられるので、課税処分取消訴訟等の訴訟においては納税者には仕入税額控除に係るいわば「推計反証」が認められると解される。   Ⅳ おわりに 以上、今回は、事実認定原理としての「疑わしきは納税者の利益に」について検討した。以上の検討を踏まえ、その中で取り上げた見解A、見解B及び見解Cをもう一度整理しておくと、以下のように整理することができよう。 見解Aは、「疑わしきは納税者の利益に」を一般的に論じこれを支持するものであるが、特に「税務行政の段階」におけるこの原理の意義ないし役割を重視するものであるように思われる。 見解Bは、見解Aと基本的に同じ立場に立つが、(明文の規定のある場合の)推計課税による修正を説いていることからすると、その限りでは、租税手続法のレベルにおけるこの原理の妥当性を否定していると解される。 見解Cは、推計による仕入税額控除を租税実体法のレベルで認めているが、ただ、「課税標準である課税資産の譲渡等の対価の額が推計により計算されるときは」という条件の下で認めていることからすると、消費税の課税上は事実認定原理を「疑わしきは納税者の利益に」に限定しているわけではなく、租税実体法のレベルでは、納税者にとって有利であるかどうかにかかわらず、直接的証拠資料を用いた事実認定だけでなく間接的証拠資料を用いた事実認定をも許容するものと解される。 以上の整理を踏まえ私見を述べておくと、税務行政による事実認定については「疑わしきは納税者の利益に」が、推計課税を認める明文の規定がある場合を除き、妥当する。また、裁判所による事実認定については、直接的証拠資料がなくても間接的証拠資料から得られた証拠がある場合には、それに基づく事実認定の結果は、納税者にとって有利であるかどうかにかかわらず、認められる。 もっとも、「証拠のない場合」という意味での「疑わしい場合」につき、見解Aは「疑わしきは納税者の利益に」を事実認定原理として説くが、しかし、その場合には裁判所は事実認定をすることができないだけのことであり、しかも「証拠のない場合」は納税者が自己に有利な事実を主張する場合にもあり得るのであるから、その場合には「疑わしきは納税者の利益に」という事実認定原理は成り立たないと考えられる。 なお、上記に関連して付言しておくと、見解Aのいう「疑わしい場合」としての「証拠のない場合」は、その3つ前の文章で「往々にして証拠によらず」と述べられていることからすると、「証拠によらない場合(直接的証拠資料の調査だけでなく推計課税においては間接的証拠資料の調査をも十分に尽くしていない場合を含む)」を意味しているのではないかと思われる。 (了)

#No. 492(掲載号)
#谷口 勢津夫
2022/10/27

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第3回】「グラクソ事件(最判平21.10.29)(その3)」~租税特別措置法66条の6、日星租税条約7条1項、ウィーン条約法条約32条~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第3回】 「グラクソ事件(最判平21.10.29)(その3)」 ~租税特別措置法66条の6、日星租税条約7条1項、ウィーン条約法条約32条~   税理士 中野 洋     9 補足意見 本判決には涌井裁判官の補足意見が出されている。これは、P社における事業所得の大部分が株式譲渡益から構成されている点に触れたもので「仮に本件における上告人の日星租税条約違反の主張に理由があるとされた場合においても、それによって本件課税処分が違法とされるのは、そのうち子会社に留保された未処分の『企業の利得』(事業所得)に対応する部分だけであって」という涌井裁判官の補足意見は、事業所得の中に株式の譲渡収益が含まれている場合、7条1項の事業所得の問題ではなく、日星租税条約第13条の譲渡収益(以下、単に「13条」)の問題であることを指摘している(※9)。 (※9) 日星租税条約7条6項では、利子・配当・譲渡収入など、他の特定の所得条項に該当するものについては、7条1項に優先して適用されることが規定されている。 判示がいう株式の譲渡は、平成10年3月にシンガポール法人のP社が、その所有するシンガポール子会社の株式を譲渡した取引を指している。このような株式譲渡は、日星租税条約が適用される場面ではないことから、13条の譲渡収益が問題となる場面ではないとの指摘がある(※10)。 (※10) 前掲(※5)書178頁。「13条は本件の事実関係のような場合に適用されるものではない。」と述べている。 〈図4〉7条1項に優先して適用される所得   10 浅妻論文の紹介 OECDモデル7条1項とCFC税制の関係について、浅妻教授はドイツの議論を紹介する。ミハイル・ラング(Lang)は「ドイツでは、CFC税制の適用が租税条約違反となるという説もあるものの、通説は租税条約第10条(配当条項)の問題であるとし、親会社居住地国のCFC税制の適用は租税条約違反とならない」(※11)という議論であり、ルスト(Rust)によれば「CFC税制が、国内法上、株主を所得獲得者とみなしているならば、租税条約違反とならない・・・・・国内法により所得が外国法人に帰属するとされていても、租税条約は株主レベルでの課税を制約しない」(※12)というものである。 (※11) 浅妻章如「タックス・ヘイヴン対策税制(CFC税制)の租税条約適合性-技術的な勘違いと議論の余地のある領域との整理-」立教法学第73号(2007年)369頁。 (※12) 前掲(※11)書383頁。   11 占部教授の見解 占部教授は、わが国のCFC税制について「『みなし配当』として『配当』に近似するものである」と述べ、「しかし、配当所得としての明文が存しないことから『その他』所得として位置づけることも十分に可能であろう(※13)」とする。確かに、CFC税制の課税ベースが特定外国子会社に留保された所得(課税対象留保・・金額)であるとされてきたことから、事業所得の問題ではなく、配当に類似した所得という理解が腑に落ちる。 (※13) 占部裕典『租税法における文理解釈と限界』慈学社(2013年)431頁。   12 小括 上記10及び11の議論は、CFC税制の本質を考える上で非常に参考になる。すなわち、CFC税制は、法人・株主間取引における株主課税の問題である。株主課税の問題は、居住地国の立法に委ねられているため、租税条約ではそもそも制限の対象として予定していない。 重要なのは、損益取引(事業所得)の問題ではなく、資本等取引の問題として整理できていれば、コメンタリーの解釈に頼らずとも解決できたと思われる点である。すなわち、ドイツにおいては、法人・株主間の所得移転について、資本等取引(出資・配当)とされてきたことから、租税条約7条1項の問題ではなく、みなし配当という整理になろう。法人税法22条2項と寄附金の組合せにより損益取引として課税してきたわが国の国内法とはその土台が異なる。 CFC税制は、軽課税国に設立した子会社へ所得を移転し、わが国の課税を回避することを規制するための租税回避否認規定である(※14)。一方で、CFC税制は、法人・株主間の取引であり、居住地国における株主課税の問題である。わが国の国内法では、法人・株主間の取引について、その本来の性質に応じた整理をしきれないことが、CFC税制の本質論にも混乱を生じさせる要因になっているのではないか。 (※14) 村井正『入門 国際租税法 [改訂版]』清文社(2020年)335頁。   13 総括 最後に、CFC税制の趣旨について、一審(平成19年3月)及び控訴審(平成19年11月)では、わが国への配当を繰り延べることが租税回避であると説明していた。これに対し、平成21年度税制改正では外国子会社からの配当が、わが国で益金不算入となる制度の創設が予定されていた(法人税法23条の2)。そのような流れの中で出された本最高裁の判示は、誠に違和感のある内容であった。 なぜなら、同制度の導入により、配当をせず、海外子会社に所得を留保することをCFC課税の根拠にすること、ましてや、それを租税回避とすることができなくなるからである。最高裁が、CFC税制の本質論を採り上げた理由を考えた場合、平成21年度の税制改正以後は、擬制配当に対する課税という解釈には無理があると考えたからであろう。つまり、CFC税制の本質論に対する明言を避けつつ、原審までの流れを変更する必要があったと考えられ(※15)、そのような点から判示には物足りなさを感じるとする向きもある(※16)。 (※15) 弘中聡浩、采木俊憲「グラクソ事件最高裁判決-租税条約との関係」『タックスヘイブン対策税制のフロンティア』有斐閣(2013年)57頁。本件最高裁の判示について「CFC税制の本質についての説明は殊更に回避し、あえて租税条約の条文の形式的な当てはめと、法的二重課税・経済的二重課税という概念的説明を中心とした論証にとどまっているように読める」と述べる。 (※16) 前掲(※2)書324頁。 しかし、平成21年度税制改正後は「課税対象留保・・金額」という用語が廃止され、特定外国子会社の決算に基づく所得を基礎として親会社で合算されることとなった。合算対象となる所得が「留保した所得」から「決算に基づく所得」に変更され、擬制配当課税の解釈では説明できなくなった。このような点からも、本最高裁においては明確に示されなかったものの、CFC税制が何に対する課税であるのかについては、擬制収益に対する課税と解さざるを得なくなったように思われる。 〈図5〉CFC税制は国内法の問題 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   (了)

#No. 492(掲載号)
#中野 洋
2022/10/27

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例115(相続税)】 「期限内申告書の提出を失念したため、「直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の適用が受けられず、相続税の税務調査で修正申告となった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例115(相続税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税(措法70の2) 平成27年1月1日から令和5年12月31日までの間に、直系尊属から一定の住宅用家屋の新築又は取得等のための金銭の贈与を受け、贈与年の翌年3月15日までに住宅用家屋の新築又は取得等をして同日までに居住の用に供し、又はその後遅滞なく居住の用に供することが確実であると見込まれる場合で、同年12月31日までに居住の用に供し、一定要件を満たす場合には、贈与を受けた金銭のうち以下の金額までは贈与税が非課税となる。なお、この特例の適用を受けるためには期限内申告(贈与年の翌年3月15日まで)が要件となる。 【消費税率10%適用者】 【上記以外の者】 (注) 令和4年1月以降については、新築等に係る契約時期にかかわらず、住宅用家屋の区分に応じ、以下の金額になる。なお、消費税率10%適用者か否かの判定が不要になる。 ◆相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額(相法19) 相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内に被相続人から暦年課税贈与により財産を取得した場合には、その取得財産の価額を相続税の課税価格に加算する。 ◆加算しない贈与財産の範囲 被相続人から生前に贈与された財産であっても、次の財産については加算しない。 ◆相続の放棄等をした者が相続開始前3年以内に贈与を受けた財産(相基通19-3) 相続開始前3年以内に被相続人から暦年課税贈与により財産を取得した者が被相続人から相続又は遺贈により財産を取得しなかった場合には、生前贈与加算の適用はない。       (了)

#No. 492(掲載号)
#齋藤 和助
2022/10/27
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