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〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第60話】「学資金と非課税規定」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第60話】 「学資金と非課税規定」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「・・・某税理士法人から質問があったのですが・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の机の前に立っている。 「・・・どんな?」 中尾統括官は、部下の調査報告書を見ながら尋ねる。 「はい・・・この税理士法人では、職員が税理士資格を取得するために、大学院に通うことを認め、その学資金を貸与する制度があります・・・」 中尾統括官は、調査報告書から目を離して、浅田調査官を見る。 「それって、あの・・・税理士試験の科目免除を目的とした大学院?」 中尾統括官は、税理士法7条を思い浮かべる。 「はい、税法の修士論文であれば、税法2科目免除、会計学の修士論文であれば、簿記論又は財務諸表論のうち1科目が免除になります・・・」 中尾統括官は、税理士法7条2項を開く。 「会計学の免除は、同条3項に書いてあります」 浅田調査官は、税務六法を覗きながら、付け加える。 「それで・・・質問は?」 中尾統括官は、質問の内容を催促する。 「ええ、この税理士法人では、一定の条件を満たした職員に対し、この学資金を免除することになっているらしいのです・・・」 浅田調査官は、更に言葉を続ける。 「・・・貸与規定には、税理士の資格を取得してから、3年間は、その税理士法人に勤務しなければならないという条件が付いています・・・」 「・・・すなわち・・・その学資金は、債務免除の条件が付されている貸付金という性格のものだな・・・ところで・・・大学院の授業料は、いくらぐらいなの?」 中尾統括官が尋ねる。 「そうですね・・・大学によって異なりますが・・・私立の場合・・・入学金も含めて、平均すると年間・・・100万円ぐらいだと聞いています・・・したがって、2年間で200万円ですか・・・」 中尾統括官は、浅田調査官の金額に頷く。 「この学資金を税理士法人が免除したとき、当該職員に対し、債務免除益という経済的利益を与えたとして、給与所得等の課税が発生するかという質問なのですが・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の顔を覗く。 「・・・ということは、その学資金が所得税法9条1項15号の非課税所得に該当するかどうかということか・・・」 そう言いながら、中尾統括官は、税務六法をめくる。 「・・・この通達の括弧書きの2つの・・・『除く・・』は・・・読みにくいですね・・・何をいっているのですか・・・」 浅田調査官は、顔をしかめる。 「・・・この条文については、所得税基本通達9-14で解説している・・・」 中尾統括官は、通達を開く。 「・・・ここでは、給与所得者が使用人から受ける学資金で非課税とされるものは、通常の給与に加算して給付されるものに限られるから、本来受けるべき給与の額を減額された上で、それに相当する額を学資金として給付を受けるものなどは、非課税とならないということを明らかにしている・・・」 中尾統括官は、通達を閉じながら、説明を終える。 「・・・ということは・・・基本的に、一定の条件を満たしている職員に対し、学資金を免除しても、非課税所得として取り扱えるということですね?」 浅田調査官は中尾統括官を見る。 「そうなるだろう・・・ただし、税理士法人は、免除の条件を満たしたときに、初めて、その債権(貸付金)を貸倒損失として損金算入することができる・・・」 中尾統括官は、浅田調査官にハッキリと伝える。 (つづく)

#No. 484(掲載号)
#八ッ尾 順一
2022/09/01

《速報解説》 投資性ICOに関する各種規定の整備を踏まえ、ASBJが「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」を確定

《速報解説》 《速報解説》 投資性ICOに関する各種規定の整備を踏まえ、ASBJが「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」を確定   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年8月26日、企業会計基準委員会は、「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」(実務対応報告第43号)を公表した。 これにより、2022年3月15日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対するコメント対応も公表されている。 2019年5月に成立した「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」(令和元年法律第28号)により、金融商品取引法が改正されている。 当該改正により、いわゆる投資性 ICO(Initial Coin Offering。企業等がトークン(電子的な記録・記号)を発行して、投資家から資金調達を行う行為の総称)は 金融商品取引法の規制対象とされ、各種規定の整備が行われた。 実務対応報告は、「金融商品取引業等に関する内閣府令」における電子記録移転有価証券表示権利等の発行・保有等に係る会計上の取扱いを示すものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 範囲 「金融商品取引業等に関する内閣府令」1条4項17号に規定される「電子記録移転有価証券表示権利等」を対象とする。 また、株式会社による発行及び保有の会計処理のみを対象とする。 株式会社以外の信託、持分会社、民法上の任意組合、商法上の匿名組合、投資事業有限責任組合及び有限責任事業組合についての会計処理は、実務対応報告の対象外である。   Ⅲ 会計処理の基本的な考え方 電子記録移転有価証券表示権利等は、その発行及び保有がいわゆるブロックチェーン技術等を用いて行われる点を除けば、従来のみなし有価証券(電子記録移転有価証券表示権利等に該当しないみなし有価証券を指す)と権利の内容は同一と考えられるため、電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理は、基本的に従来のみなし有価証券を発行及び保有する場合の会計処理と同様に取り扱う。   Ⅳ 電子記録移転有価証券表示権利等の発行の会計処理 電子記録移転有価証券表示権利等を発行する場合、その発行に伴う払込金額を実務対応報告5項及び6項の定めに従い、負債、株主資本又は新株予約権として会計処理を行う。 1 負債に区分される場合 電子記録移転有価証券表示権利等の発行に伴う払込金額が負債に区分される場合には、金融負債として、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号)7項の定めに従って発生の認識を行い、その金額は金融商品会計基準26項、又は36項、38項(1)及び「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」(企業会計基準適用指針第17号。以下「複合金融商品適用指針」という)の定めに従う。 「金融負債」とは、支払手形、買掛金、借入金及び社債等の金銭債務並びにデリバティブ取引により生じる正味の債務等をいう。 2 株主資本又は新株予約権に区分される場合 電子記録移転有価証券表示権利等の発行に伴う払込金額が株主資本又は新株予約権に区分される場合には、その内訳項目は「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(企業会計基準第5号)5項から7項の定めに従い、その金額は、会社法445条及び446条の規定、又は金融商品会計基準36項、38項(2)及び複合金融商品適用指針の定めに従う。   Ⅴ 電子記録移転有価証券表示権利等の保有の会計処理 前述の発行の場合とは異なり、 電子記録移転有価証券表示権利等の保有の会計処理については、 金融商品会計基準等上の有価証券に該当する場合と該当しない場合に分けて規定している。 1 金融商品会計基準等上の有価証券に該当する場合 2 金融商品会計基準等上の有価証券に該当しない場合   Ⅵ 開示 電子記録移転有価証券表示権利等を発行又は保有する場合の表示方法及び注記事項は、みなし有価証券が電子記録移転有価証券表示権利等に該当しない場合に求められる表示方法及び注記事項と同様とする。   Ⅶ 適用時期等 2023年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。 ただし、実務対応報告の公表日(2022年8月26日)以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用することができる。 (了)

#阿部 光成
2022/08/29

《速報解説》 東証、「IPO等に関する見直しの方針について」を公表~新規上場の品質維持・スタートアップに多様な新規上場手段を提供するための検討進める~

《速報解説》 東証、「IPO等に関する見直しの方針について」を公表 ~新規上場の品質維持・スタートアップに多様な新規上場手段を提供するための検討進める~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年8月24日、東京証券取引所は、「IPO等に関する見直しの方針について」を公表した。 これは、新規上場の品質を維持しながら、新たな産業の担い手となるスタートアップに多様な新規上場手段を提供する観点から、IPO等に関する諸施策について、順次、検討を進めるものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 主な内容は次のとおりである。 1 ディープテック企業に関する上場審査 いわゆるディープテック企業とは、宇宙、素材、ヘルスケアなど先端的な領域において新技術を活用して成長を目指す研究開発型企業である。 ディープテック企業は、相対的に企業価値評価が困難である特性も踏まえ、上場審査及びリスク情報等の開示について検討を進めるとし、次の対応が示されている。 2 IPOプロセス(上場日程の設定等) 上場日程の柔軟化に向けて、新規上場申請日、上場承認日及び上場日の設定の自由度を高めるための検討を進めるとし、次の対応が示されている。 3 ダイレクトリスティング ダイレクトリスティング(上場する際に、新株の発行を行わないで、既存の株式だけを上場する方法)に関して、次の対応が示されている。 4 引受証券会社の新規参入 引受証券会社の新規参入の円滑化に関して、次の対応が示されている。 5 スピンオフを行う場合の当事会社の新規上場 スピンオフ(分割型分割・株式分配)を活用するための環境整備に関して、次の対応が示されている。 6 その他 SPAC(特別買収目的会社)などに関する7項目について検討事項が簡潔に示されている。 (了)

#阿部 光成
2022/08/25

プロフェッションジャーナル No.483が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年8月25日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.483を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/08/25

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第17回】「外国組織体の法人該当性判断枠組み」-米国デラウェア州LPS法人該当性事件・最判平成27年7月17日民集69巻5号1253頁-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第17回】 「外国組織体の法人該当性判断枠組み」 -米国デラウェア州LPS法人該当性事件・最判平成27年7月17日民集69巻5号1253頁-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 前回は、課税要件事実の認定を、未経過固定資産税等相当額清算金の性質決定について検討したが、今回は、外国法に準拠して設立された組織体(以下「外国組織体」という)の性質決定について検討することにする。我が国の実定所得課税制度は、納税義務者を個人と法人とに二分し、それぞれに帰属する所得に課税する建前を採用しているが(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【219】参照)、そのため、外国組織体の性質決定の問題は、外国組織体の法人該当性に関する判断枠組み(以下「外国組織体の法人該当性判断枠組み」という)の中で検討されることになる。 外国組織体の法人該当性判断枠組みは、我が国の所得税法及び法人税法の解釈適用の一環として、税法がどのような法人概念を定めているかを解釈によって明らかにした上で、その明らかにした法人概念(規範)に該当する事実(課税要件事実)を外国組織体について認定する、という判断過程を包括するものである。本連載では、前掲拙著の叙述の順に従って、それぞれの箇所で取り上げている「税法基本判例」を順次検討していくことを基本方針としていることからすると、本来なら、今回は、上記の判断枠組みの後半で扱う外国組織体の性質決定に関する判例を取り上げることにすべきところ、その判例は、前掲拙著の第3版(2012年)及び第4版(2014年)では【60】(私法関係準拠主義)で取り上げていたのに対して、本判決の後に改訂した第5版(2016年)からは本判決を上記の判断枠組み全体からみて、まず(そして主として)、借用概念論を扱う【52】で取り上げることにしたので、今回は、本判決をⅡで借用概念論との関係で検討し、Ⅲで課税要件事実の認定との関係で、しかも私法関係準拠主義にも触れながら、検討することにする。 外国組織体の法人該当性判断枠組みについては、米国デラウェア州法に準拠して設立されたリミテッド・ハートナーシップ(LPS)の法人該当性をめぐる訴訟事件等を契機にして、外国組織体の設立準拠法を我が国の税法の解釈適用においてどのように考慮するかという形で、議論が展開されてきたが、その議論は、租税法律主義の支配する税法の世界においては珍しく、裁判例・学説ともに、「百家争鳴」の様相を呈していたといってよかろう(差し当たり、裁判例の整理については拙稿「判批」判評676号(判時2253号)2頁、学説も含めた整理については長戸貴之「判批」法協133巻10号(2016年)1685頁、1689-1697頁、衣斐瑞穂「判解」最判解民事篇平成27年度(下)349頁、356-359頁参照)。 そもそも、上記の議論の発端は、外国組織体をその準拠法によって性質決定することを認めてしまうと、準拠法の指定に係る国際私法上の当事者自治の原則の下では、我が国の税法の適用を回避する結果(租税回避)を招来することになる、という点にあったように思われるが(この点については岩品信明(司会)=川田剛=須藤一郎「座談会 デラウェア州LPS判決を受けて」税弘63巻12号(2015年)74頁、92頁[川田発言]等参照)、その議論が、租税回避の分野に限定してではなく一般的に展開され、しかも外国組織体の性質決定という課税要件事実の認定のレベルにとどまらず、税法特有の解釈論である借用概念論にまで波及し、借用元の私法には外国組織体の設立準拠法たる外国私法も含まれるかという問題も加わった形で、展開されるようになり、その結果、著しく錯綜した様相を呈するようになっていたように思われる(そのような議論に影響を与えたと思われる先駆的研究業績として、小柳誠「租税法と準拠法―課税要件事実の認定場面における契約準拠法の考察―」税大論叢39号(2002年)75頁参照)。 前記の米国デラウェア州法LPS法人該当性事件に関する最判平成27年7月17日民集69巻5号1253頁(以下「本判決」という)は、そのような錯綜した議論状況に一応「終止符」を打ったものといえるが、今回は、そのような議論に前掲拙著の前述のような改訂を通じて若干コミットしてきた者として、本判決の検討を通じて、外国組織体の法人該当性判断枠組みに関する筆者の理解を総括しておくことにしたい。   Ⅱ 税法上の法人概念の解釈と借用概念論 1 本判決と借用概念論 まず、本判決と借用概念論との関係については、例えば、「法人概念について、最高裁が借用概念論を離れたのか(つまり固有概念(租税法独自の概念)として捉えているのか)、それともなお借用概念論に依っているのかは、必ずしも明らかではないところです。」(㋐)、「借用概念論に対する本件最判の態度は微妙である。」(㋑)というような見方から、「本判決は、借用概念論の枠組みから自らを解放した」(㋒)、「本判決は、基本的には租税法独自の観点から『法人』概念の解釈に関する判断をしたと考えられる。」(㋓)、「借用概念論の不採用」(㋔)というような見方まで様々な見方がされてきたが、いずれにせよ、多くの論者は本判決を借用概念論の枠内に位置づけることに消極的あるいは否定的な立場に立っているといってよかろう(㋐は平川雄士「判批」租税研究793号(2015年)286頁、294頁、㋑は仲谷栄一郎=礒山海「判批」国際税務36巻1号(2016年)98頁、103頁、㋒は長戸・前掲「判批」1704頁、㋓は宮塚久=北村導人「判批」旬刊経理情報1426号(2015年)40頁、42頁、㋔は藤曲武美「判批」税弘64巻2号(2016年)173頁、179頁)。 これに対して、筆者は本判決を借用概念論しかも統一説の枠内に位置づけてきた(最初にそのような立場を示したのは前掲拙著の第5版(2016年)【52】においてであるが、ほぼ同時期のものとして拙著『税法創造論』(清文社・2022年)161頁[初出・2016年]参照。また、「租税法独自の観点から法人概念を導いているようだが、・・・・・・、実質的には統一説に立っているもの」と解する加藤友佳「判批」ジュリ1496号(2016頁)111頁、114頁のほか、秋元秀仁「判批」国際税務36巻3号(2016年)20頁、27頁も参照)。このような位置づけについて以下で敷衍しておこう。 本判決は、「本件各LPSが行う本件各不動産賃貸事業により生じた所得が本件各LPS又は本件出資者らのいずれに帰属するか」という争点を判断する前提として、外国組織体の法人該当性の問題を、「本件各LPSが所得税法2条1項7号及び法人税法2条4号(以下「所得税法2条1項7号等」という。)に共通の概念として定められている外国法人として我が国の租税法上の法人に該当するか否か」(下線筆者)という観点から、所得税法2条1項7号等に定める「外国法人」概念の解釈適用問題として設定し、その上で次のとおり判示した(下線筆者。以下「判旨❶」という)。 以上の判示(判旨❶)のうち(ⅰ)1つ目の文章では、所得税法2条1項7号等に定める「外国法人」は「内国法人に相当するものとして」解されており、また、(ⅱ)2つ目の文章では、「外国法人」該当性は「日本法上の法人との対比において」判断されることが予定されていると述べられており、さらに、(ⅲ)3つ目の文章では、「権利義務の帰属主体」という私法上広く承認されている「法人の最も本質的な属性」が「外国法人」該当性の判断基準として示されていることからすると、以上の3つの文章を整合的に理解するには、本判決が「内国法人」にいう「法人」の概念を「日本法上の法人」という意味で私法からの借用概念として捉え、しかも借用概念の解釈に関する統一説の立場に立つことを前提にして、外国組織体の「外国法人」該当性に関する判旨❶を判示したものと解するのが相当である。「外国法人」に関する所得税法2条1項7号等の定め(「内国法人以外の法人」)につき下記の「素直な読み方」をすれば、上記のような理解が論理的かつ自然であろう。しかもその理解が前提とするところには、学説上も(課税・裁判)実務上も異論はなかろう。 所得税法2条1項7号等が「外国法人」を「内国法人以外の法人」と定めている以上、「外国法人」該当性については、「順序として、外国の組織体が我が国における租税法上の『法人』に該当するかどうかが先ず決まり、その後に、その法人につき内国法人には該当しない法人という順序で消去法的に決定されると捉えるのが素直な読み方である。」(伊藤公哉「判批」大阪経大論集66巻6号(2016年)227頁、233頁)にもかかわらず、「本判決では、『法人』(内国法人と外国法人の両者を含む概念)の積極的な定義付けを行うことなく、また内国法人の法人該当性についてはとくに触れず、外国法人の法人該当性についてのみピンポイントに焦点を当てた基準を示している。」(同頁)と解するのは、上で述べた筆者の理解の仕方とは異なり、「素直な読み方」ではないように思われる(兼平裕子「判批」愛媛法学会雑誌42巻2号(2016年)127頁、134-135頁の説く「外国法人の定義の曖昧さ」についても同様の問題を指摘することができよう)。 なお、判旨❶のうち(ⅰ)1つ目の文章の冒頭の「我が国の租税法は組織体のうちその構成員とは別個に租税債務を負担させることが相当であると認められるものを納税義務者としてその所得に課税するものとしている」という説示(ⓐ)と(ⅱ)2つ目の文章の「外国法に基づいて設立された組織体が所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当するか否かは、当該組織体が・・・・・・我が国の租税法上の納税義務者としての適格性を基礎付ける属性を備えているか否かとの観点から判断することが予定されている」という説示(ⓑ)とを併せ読むと、本判決は借用概念論に依拠せず「租税法独自の観点から」法人概念を解釈したと解することもできるかもしれない(長戸・前掲「判批」1695頁、宮塚久ほか「判批」西村あさひ法律事務所ビジネス・タックス・ロー・ニューズレター2015年8月号1頁、3頁等参照)。 しかし、上記の説示(ⓐ)は、後続の説示と「ところ、」で接続されていることからすると、せいぜい、前記Ⅰの冒頭で述べた外国組織体の法人該当性判断枠組みの設定を宣明するためのいわば「枕詞」的な説示にすぎず、以下の判断を内容的に方向づけ指導する規範的な意味をもつものではないと解される。また、上記の説示(ⓑ)は、「・・・・・・」部分が「日本法上の法人との対比において」とされていることからすると、全体としてみると、前述のとおり、税法上の法人概念を「日本法上の法人」という意味で私法からの借用概念として捉えていると解される。 最後に、民法上の「外国法人」(本件当時36条、現行35条)との関係についても多くの論者が議論してきた(差し当たり中里実「課税管轄権からの離脱をはかる行為について」フィナンシャル・レビュー94号(2009年)4頁、14-18頁参照)ので若干付言しておくと、判旨❶によれば、本判決が所得税法2条1項7号等に定める「外国法人」の概念を、民法上の「外国法人」の借用概念として捉えていないことは明らかである。本判決はあくまでも「内国法人」及び「外国法人」に共通する「法人」概念を民法から借用していると解されるのである。 2 本判決における借用概念論の射程 以上の理解によれば、本判決は外国組織体の法人該当性を、日本の私法を基準とする借用概念論(統一説)の枠内で、判断したことになるが、ここで検討しておかなければならないと考えるのは、本判決が日本の私法を基準として借用概念論を措定した理由、換言すれば、借用概念論において外国組織体の設立準拠法たる外国私法を考慮する余地を認めなかった理由である(なお、本判決前の研究であるが、今村隆「外国事業体の『法人』該当性」税大ジャーナル24号(2014年)1頁、12頁は「租税法の公法としての性格」から原則として同様の結論を述べている)。 その理由は、判旨❶の1つ目の文章で説示されている、「ある組織体が法人として納税義務者に該当するか否かの問題は我が国の課税権が及ぶ範囲を決する問題であることや、所得税法2条1項7号等が法人に係る諸外国の立法政策の相違を踏まえた上で外国法人につき『内国法人以外の法人』とのみ定義するにとどめていることなど」にあるように思われるが、更に深掘りすれば、根本的には、この説示の基礎にある次のような考え方、すなわち、我が国の課税権の及ぶ範囲及びその範囲を納税義務者という課税要件に関して具体的に画定するための外国法人の概念は、専ら「日本法」及び「日本法上の法人」によって決せられるべきであり、外国組織体の設立準拠法としての外国私法によって左右されてはならないというような考え方が、その理由であるように思われる(なお、この点について、吉村政穂「判批」税弘63巻12号(2015年)100頁、104頁は「わが国の課税権のあり方にとって重大な問題であることを指摘し、これにより、外国法による法人格付与に係る決定に従属するのを回避する意図を(立法府が)有していたという推論を示唆したものと考えられる。」と述べている。また、落合秀行「外国事業体の税務上の取扱いに関する考察」税大論叢73号(2012年)87頁、125頁は「租税法における法人概念」を「我が国の公序に関わる概念」として「外国法上の概念は借用することなく、常に、我が国の私法における意義のみ借用すると考えられる。」と述べている)。 前記の考え方は、課税権(その多義性については第1回Ⅱ2参照)が「国家主権の中核に属する」(最判平成21年10月29日民集63巻8号1881頁)国家権力であることを考慮すると、原理的には、「国家権力が他のいかなる力にも制約されない最高独立であること」(高橋和之ほか編『法律学小辞典〔第5版〕』(有斐閣・2016年)621頁)という意味での国家主権の最高独立性(憲法前文3節参照)から導き出されるものであると考えられる。 借用概念論については、既にその伝統的・本来的な射程と形式的外縁とを区別し概念借用枠組みの「独り歩き」の問題性を指摘したが(第12回Ⅲ・Ⅳ参照)、本判決は、そこでの議論とはレベルを異にするものの、国家主権の最高独立性という原理的基準によって、借用概念論の射程を日本の私法を基準とする統一説の枠内に限定したものと評価することができよう(前掲拙著【52】参照)。   Ⅲ 外国組織体の性質決定(課税要件事実の認定) ところで、本判決は、判旨❶に「その一方で」で続けて、次のとおり判示している(下線筆者。以下「判旨❷」という)。 この判示(判旨❷)は、一見すると、外国組織体の法人該当性を「外国法」を基準にして判断することを認めているかのようである。そうすると、前記Ⅱで判旨❶について検討してきたところと矛盾する内容の判示であるということになりそうであるが、しかし、そのように理解すべきではない。判旨❷は、外国組織体の法人該当性判断枠組みのうち外国組織体の性質決定という課税要件事実の認定についてその基準を示したものと解すべきである。 既に述べたように、本判決は「内国法人」及び「外国法人」に共通する「法人」概念を「日本法上の法人」という意味で私法からの借用概念として捉え、しかも借用概念の解釈に関する統一説の立場に立つことを前提にして、外国組織体の法人該当性判断枠組みを示したものと解されるが、その前提において示した「法人」概念に関する借用概念論(統一説)的解釈によって定立した規範(以下「法人該当性判断規範」という)は、「日本法上の法人」すなわち「権利義務の帰属主体」という「法人の最も本質的な属性」を有する組織体が税法上の「法人」概念に該当する、というものであると解される。そうすると、法人該当性判断規範においては、「日本法上の法人」が要件事実ということになる。 判旨❷は、「日本法上の法人」という課税要件事実の認定に当たっては、「設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから、日本法上の法人に相当する法的地位が付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白である」という事実を間接事実として考慮する、という事実認定基準(性質決定基準)を示したものと解される。つまり、間接事実の認定のレベルでは「外国法」を考慮することを認めたものと解されるのである。 判旨❷がこのような事実認定基準を示したのは、「諸外国の多くにおいても、その制度の内容の詳細には相違があるにせよ、一定の範囲の組織体にその構成員とは別個の人格を承認し、これを権利義務の帰属主体とするという我が国の法人制度と同様の機能を有する制度が存在することや、国際的な法制の調和の要請等」を踏まえたからであるが、ここには、国際的経済活動や国際課税の実際に対する本判決の配慮が認められる。 ただ、本判決は、前記の事実認定基準を示すだけでなく、次のとおり判示して(下線筆者。以下「判旨❸」という)、もう1つ別の事実認定基準も示している。 この判示(判旨❸)では、「①」と「②」という2つの事実認定基準(以下「事実認定基準①」と「事実認定基準②」という)が示されているが、事実認定基準①は判旨❷で示された観点(「後者の観点」)から導き出されたものであり、事実認定基準②は判旨❶で示された観点(「前者の観点」)から導き出されたものであると解される。 いずれの基準も、法人該当性判断規範に該当する事実(「日本法上の法人」すなわち「権利義務の帰属主体」であることという課税要件事実)を外国組織体について認定するための基準であるが、事実認定基準②の前半部分すなわち「当該組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かを検討して判断すべきものであり」という部分は、課税要件事実を直接認定する場合について説示したものと解される。ただ、課税要件事実を外国組織体について直接認定することは困難を伴うことから、本判決は、事実認定基準②の「具体的には」以下の部分では、事実認定基準①に準じて、「外国法」すなわち「当該組織体の設立根拠法令の規定の内容や趣旨等」から間接的に課税要件事実を推認することを認めたものと解される(岡村忠生「判批」ジュリ1486号(2015年)10頁、11頁は、正当にも、「本判決は、同法[=デラウェア州改正統一有限責任組合法]の規定とその作用を、事実の問題として捉え、『権利義務の帰属主体とされているか否か』という自ら設定した基準に当てはめたと考えられる。」(下線筆者)と述べている)。 こうして検討してくると、判旨❸が示した事実認定基準(①及び②)は、私法関係準拠主義(前掲拙著【60】)に基づく事実認定の基準とみることができる。私法関係準拠主義は、経済的成果に係る「ナマの事実」を私法上の法律関係によって把握することを要請する税法の根本規律・構造的規律であるが、そこでいう「私法」は日本の私法である以上、外国私法を設立準拠法とする外国組織体の法人該当性の判断に当たっては、当該外国組織体に関する「法律が法人格を有すると規定する以前の、いわば生の法人格」(仲谷栄一郎=藤田耕司「海外事業体の課税上の扱い」金子宏編『租税法の発展』(有斐閣・2010年)639頁、641-642頁)を日本の私法からみて把握し認定すべきことになるのである。 以上の理解に基づき、判旨❸が示した外国組織体の性質決定(課税要件事実の認定)の手法ないし手順を述べておくと、事実認定基準①と事実認定基準②とを比較すると、前者による方が「より客観的かつ一義的な判定が可能である」ことから、「まず」(判旨❸)、事実認定基準①を第一次的基準として事実認定を行い、「次に」(判旨❸)、事実認定基準②を第二次的基準として事実認定を行う、ということになろう。 事実認定基準①と事実認定基準②については、両者の意義・性格が「形式基準」と「実質基準」(仲谷=礒山・前掲「判批」104頁、109頁、藤曲・前掲「判批」179頁、180頁、高橋美津子「判批」月刊税務事例48巻10号(2016年)63頁、65頁)、「形式テスト」と「実質テスト」(酒井克彦「判批」判評696号(判時2314号)7頁、11頁)、「形式的なアプローチ」と「実質的なアプローチ」(岩品=川田=須藤・前掲「座談会」81-82頁[岩品発言])、「形式的な審査」と「実質的な審査」(伊藤・前掲「判批」235頁、236頁)等の様々な表現で述べられているが、いずれも、事実認定基準①を「より客観的かつ一義的な判定」を可能にする「簡便な判断手法」(吉村・前掲「判批」104頁)ないし「スクリーニング的な判断要素」(衣斐・前掲「判解」360頁)として位置づけることに異論はなかろう。   Ⅳ おわりに 以上、今回は、外国組織体の法人該当性判断枠組みについて、本判決に則して検討してきた。 「判断枠組み」という言葉は、これが用いられる場面によって異なる意味をもつことがあるが、判例における「判断枠組み」は、法的三段論法に従った判断の過程で用いられる基準、すなわち、法解釈によって定立する規範と事実認定の基準を含むものでなければならない。これを外国組織体の法人該当性判断枠組みについてみると、本判決は、判旨❶で、税法上の「法人」概念に関する、日本の私法を基準とする借用概念論(統一説)的解釈によって規範(法人該当性判断規範)を定立し、判旨❷及び判旨❸で、外国私法に係る事実を間接事実として考慮する事実認定基準(判旨❷と❸の①)及び外国私法に係る事実から要件事実を間接的に推認する事実認定基準(判旨❸の②)を示したものと解される。 筆者は外国組織体の法人該当性判断枠組みに関する理解を以上のとおり総括するものであるが、その判断枠組みをめぐる「百家争鳴」的議論状況はなお本判決の理解に痕跡を残しているように思われる。例えば、本判決の調査官解説は下記のとおり述べているが(衣斐・前掲「判解」359頁)、外国組織体の法人該当性判断枠組みにおいては、法人該当性判断規範のレベルで日本の私法を基準にすることと、事実認定基準のレベルで外国の私法を考慮することとは区別して論ずるべきであるにもかかわらず、そのような区別をしないまま本判決を解説しようとしていると解されるところに、「百家争鳴」的議論状況の痕跡がみられるように思われる。その意味で、本判決がそのような錯綜した議論状況に最終的かつ明確な「終止符」を打ったとはなおいえないであろう。 (了)

#No. 483(掲載号)
#谷口 勢津夫
2022/08/25

令和4年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第4回】

令和4年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第4回】   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸     Ⅲ 投資簿価修正制度の見直し 1 令和4年度税制改正の趣旨・背景 投資簿価修正制度は、通算子法人が通算グループから離脱する場合、その離脱法人の株式を所有する通算法人において、その離脱法人の株式の帳簿価額を離脱法人の離脱直前の簿価純資産価額に修正することとしており、株式の取得価額に企業買収時のプレミアム相当額が含まれている場合、そのプレミアム相当額が株式譲渡原価に算入されず、その分、株式譲渡益が増加又は株式譲渡損が減少してしまう問題があり、グループ通算制度の適用がM&Aの障害となることが懸念されていた(一方、企業買収時に簿価純資産価額よりも低い金額で株式を取得するなどディスカウント相当額がある場合、そのディスカウント相当額が株式譲渡原価に算入され、その分、株式譲渡益が減少又は株式譲渡損が増加することになる)。 例えば、下記のように、プレミアム付きで通算子法人を買収していた場合に「買った値段と同じ値段で売っても課税されてしまう問題」がある。 〈図表3〉 プレミアム付きで通算子法人を買収していた場合に「買った値段と同じ値段で売っても課税されてしまう問題」が生じるケースと解消されるケース ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 このような状況の中、令和4年度税制改正によって、企業買収時のプレミアム相当額を資産調整勘定等対応金額として離脱法人の離脱直前の簿価純資産価額に加算することで、企業買収時のプレミアム相当額が株式譲渡原価に算入されないという問題が生じないよう見直しが行われることとなった。 これを「投資簿価修正の加算措置」という。 なお、ここでは、投資簿価修正の対象について便宜的に「離脱法人」と表現しているが、例えば、通算親法人が他の内国法人の100%子法人となるなど、グループ通算制度の取りやめとなる場合についても、通算子法人のすべてに通算終了事由が生じるため、各通算子法人の株式を有する通算親法人又は他の通算子法人においてその通算子法人の株式(取りやめ子法人の株式)を対象に投資簿価修正(加算措置を含む)が行われることとなる。 また、投資簿価修正の対象となる「株式」には「出資」も含まれる。   2 投資簿価修正の加算措置の取扱い 投資簿価修正制度について、通算子法人の離脱時にその通算子法人の株式を有する各通算法人が、その株式(離脱法人株式)に係る資産調整勘定等対応金額について離脱時の属する事業年度の確定申告書等にその計算に関する明細書を添付し、かつ、その計算の基礎となる事項を記載した書類を保存している場合には、離脱時に離脱法人株式の帳簿価額とされる離脱法人の簿価純資産価額にその資産調整勘定等対応金額を加算することができる。 具体的には、投資簿価修正の加算措置は次の取扱いとなる(法令119の3⑥⑦⑧、法規27①、令4改法令附6、令4改法規附2)。 (1) 加算措置の対象となる離脱法人 この場合、連結納税制度の適用をグループ通算制度の適用とみなして、連結納税制度からグループ通算制度に移行した通算子法人の株式について通常どおり資産調整勘定等対応金額を計算する。 〈図表4〉 連結納税制度からグループ通算制度に移行した場合のみなしの取扱い (2) 計算対象となる株式(対象株式) (3) 加算措置を適用した場合の離脱法人株式の投資簿価修正後の帳簿価額の計算方法 加算措置を適用した場合の離脱法人株式の投資簿価修正後の帳簿価額の計算方法は次のとおりとなる。 〈図表5〉 離脱法人株式の投資簿価修正後の帳簿価額(加算措置適用) ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※1) 通算承認の効力を失う直前の発行済株式(その離脱法人が有する自己の株式を除く。以下「発行済株式等」という)の総数(出資の場合は総額。以下同じ)のうちにその通算法人がその効力を失う直前に有するその離脱法人の株式の数(出資の場合は金額。以下同じ)の占める割合となる。   (続く)

#No. 483(掲載号)
#足立 好幸
2022/08/25

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例113(法人税)】 「収用等の圧縮記帳と特別控除を重複適用したため、税務調査により修正申告となったが、「特別控除は当初申告の金額を変更できない」として圧縮記帳が不可となった部分につき損害が発生した事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例113(法人税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例(措法64) 法人の所有する資産が収用等され、交付を受けた補償金等により代替資産を取得した場合において、次の条件の全てを満たしているときは、代替資産について圧縮限度額の範囲内で帳簿価額を損金経理により減額等したときは、その減額した金額を損金の額に算入する圧縮記帳の適用を受けることができる。 ◆収用等による圧縮限度額の計算(措法64) 収用等に伴い代替資産を取得した場合の圧縮限度額は、次の算式により計算された金額である。 ◆収用換地等の場合の所得の特別控除(措法65の2) 収用換地等によって補償金等を取得した場合において、次の条件の全てを満たしているときは、その資産の譲渡益(補償金額から譲渡直前の帳簿価額及び譲渡経費の額の合計額を控除した金額)のうち年5,000万円までの金額を損金算入することができる。       (了)

#No. 483(掲載号)
#齋藤 和助
2022/08/25

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第50回】「店舗併用住宅に係る配偶者居住権がある場合の小規模宅地等の特例の適用」

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第50回】 「店舗併用住宅に係る配偶者居住権がある場合の小規模宅地等の特例の適用」   税理士 柴田 健次   [Q] 被相続人である甲の相続発生に伴い、甲が所有していた下記の土地建物について、配偶者乙が配偶者居住権を取得し、土地建物の所有権を乙、長男丙及び二男丁が共有で1/3ずつ取得しました。 相続開始の直前において、乙及び丙は2階で甲と同居しており、小規模宅地等に係る特定居住用宅地等の特例対象者ですが、丁は甲と別居していたため、特定居住用宅地等の特例対象者ではありません。なお、1階部分については、被相続人である甲が飲食店を営んでおり、相続後は、その飲食店の事業を丙が承継していますので、丙は小規模宅地等に係る特定事業用宅地等の特例対象者となります。 小規模宅地等の特例の選択にあたって、丙から優先的に特例を適用するとした場合には、乙及び丙の特例の適用面積はそれぞれ何㎡になりますか。 [A] 丙を優先的に適用した場合の選択特例対象宅地等の面積は、それぞれ次のとおりとなります。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 配偶者居住権等が及ぶ範囲 配偶者居住権が設定された場合には、居住建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得することになります(民法1028)。したがって、居住建物の全部について配偶者居住権が及ぶことになりますので、飲食店の事業の用に供していた部分についても配偶者居住権が及ぶことになります。 ただし、居住建物の一部が賃貸用である場合には、賃借人に権利を主張することはできないため、配偶者居住権の評価額の計算の基礎となる金額から賃貸の用に供されている部分を除くこととされています(相法23の2①一かっこ書、相令5の7)。   2 利用区分ごとの相続税評価額の算定と面積の計算 本問の場合には、居住用と事業用の利用区分についてそれぞれ敷地利用権と敷地所有権がありますので、4つの区分に分けてそれぞれの相続税評価額及び面積を下記のとおり算定することになります。計算手順としてステップ❶で居住用と事業用に区分して計算し、ステップ❷で敷地利用権と敷地所有権に区分して計算することになります。 ステップ❶ 土地の相続税評価額と面積について、居住用と事業用に区分します。 具体的には、建物の床面積を基に居住割合(100㎡/200㎡)と事業割合(100㎡/200㎡)で按分して相続税評価額と面積を計算します。 ・居住用の土地の相続税評価額 ・事業用の土地の相続税評価額 ・居住用の土地の面積 ・事業用の土地の面積 ステップ❷ 居住用と事業用部分のそれぞれについて敷地利用権及び敷地所有権に区分し、相続税評価額と面積を計算します。具体的には、敷地利用権の居住部分及び事業部分の割合はステップ❶で求めた土地の面積を基に居住割合(450㎡/900㎡)、事業割合(450㎡/900㎡)を使用して計算します。 ・居住用の敷地利用権の相続税評価額 ・居住用の敷地所有権の相続税評価額 ・事業用の敷地利用権の相続税評価額 ・事業用の敷地所有権の相続税評価額 ・居住用の敷地利用権の面積 ・居住用の敷地所有権の面積 ・事業用の敷地利用権の面積 ・事業用の敷地所有権の面積   3 本問の場合の特例対象宅地等の面積 取得者ごとの宅地等の面積を整理すると、下記のとおりとなります。 〔特定居住用宅地等の特例対象宅地等の面積〕 特定居住用宅地等の特例対象者は、乙及び丙となりますので、乙が250㎡(150㎡ + 100㎡)、丙が100㎡となります。 〔特定事業用宅地等の特例対象宅地等の面積〕 特定事業用宅地等の特例対象者は、丙のみとなりますので、丙が100㎡となります。   4 本問の場合の選択特例対象宅地等の面積 〔特定居住用宅地等の選択特例対象宅地等の面積〕 特定居住用宅地等の限度面積は、330㎡となりますので、その範囲内で選択をすることになります。なお、相続税の計算に当たっては、同一の被相続人の相続人等に係る相続税の課税価格の合計額は、一致させる必要があるため、相続人が1人である場合などを除き、特例対象宅地等を取得した相続人等の全員の同意が必要とされています(措令40の2⑤)。したがって、乙及び丙は、話し合いにより取得した特例対象宅地等の面積の範囲内で選択することになります。 本問の場合には、優先的に丙が特例適用をすることが前提となっていますので、丙が100㎡を適用し、残りの面積230㎡(330㎡ - 100㎡)を乙が適用することになります。 〔特定事業用宅地等の選択特例対象宅地等の面積〕 特定事業用宅地等の限度面積は、400㎡となりますので、丙が取得した事業用の敷地所有権部分に係る面積である100㎡となります。 〔実務における検討事項〕 本問のように事業用と居住用がある場合には、1階と2階で区分登記を行い、敷地権割合を設定することにより2階部分に対応する部分を乙及び丙が取得し、1階部分に対応する部分を丙が取得することにより特定居住用宅地等は330㎡、特定事業用宅地等は400㎡の適用を受けることができます。 配偶者居住権を設定した方がいいかどうか、区分登記及び敷地権割合を設定した方がいいかどうかについては、配偶者の将来の相続税も含めて総合的に検討する必要があります。 ★実務上のポイント★ 配偶者居住権の及ぶ範囲を正確に理解しておく必要があります。配偶者居住権を設定することで小規模宅地等の特例金額が少なくなることもありますので、配偶者居住権を設定した場合と設定しない場合を比較して納税者にアドバイスをすることが重要となります。   (了)

#No. 483(掲載号)
#柴田 健次
2022/08/25

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第20回】「納税者の無申告により課税庁が固定資産税について特例を適用せずに賦課した事案において国家賠償法上の違法性が認められるかが争われた事例」

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第20回】 「納税者の無申告により課税庁が固定資産税について特例を適用せずに賦課した事案において国家賠償法上の違法性が認められるかが争われた事例」   税理士 菅野 真美   ▷固定資産税は賦課課税方式 納付する税額がいくらなのか確定する方法として、申告納税方式と賦課課税方式がある。申告納税方式は、納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とし、申告がない場合や申告に係る税額が、税法に従っていないこと等により税務署長等が調査したところと異なる場合に限って、税務署長等の処分により確定する方式(国通法16①一)である。 日本の代表的な国税である所得税、法人税、消費税、相続税、贈与税も申告納税方式で税額を確定させている。日本の国民の多くが納税意識を持ち、自発的に申告納税をするからこそ円滑な運用が可能な制度である。 一方、賦課課税方式は、納付すべき税額が専ら税務署長又は税関長の処分により確定する方式(国通法16①二)である。多くの地方税がこの方式をとっており、固定資産税も賦課課税方式である。賦課課税方式の場合でも、納税者に申告義務が課される場合もある。しかし、その申告で税額確定されるのではない。あくまでも税額を確定させるのは課税庁側であり、税額を確定させるために職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさなければならない。   ▷住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例 固定資産税について、課税客体である土地のうち住宅用地については、課税標準の特例が設けられていて、住宅用地でその面積が200㎡以下であるものについては価格の6分の1の額を課税標準とし、200㎡を超える宅地は価格の3分の1の額を課税標準とする(地法349の3の2)。このような住宅用地に該当する場合、市町村長は条例で必要な事項を住宅用地の所有者に申告させることができる(地法384①)とされている。 東京都では、住宅用地の所有者に申告書の提出を義務付けており(都条例136の2①)、もし正当な事由なく申告しなかった場合は、10万円以下の過料を科す(都条例137)とされている。   ▷固定資産税の更正期限と国家賠償 住宅用地の申告をしなかったことから行政庁が内容を検討することができず、そのために誤った賦課処分をすることがある。誤りが指摘された場合の更正期限は法定納期限から5年(地法18①)であり、それを超える期間については国家賠償法により訴えることになる。 国家賠償法による賠償責任が認められるのは、公務員が故意又は過失によって他人に損害を加えたとき(国賠法1①)である。これは、公務員が職務を執行するに際し、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしたかどうかで判断される。 今回は、納税者が住宅用地の申告をしなかったことから、課税庁が認知症高齢者グループホームの固定資産税について特例を適用せずに賦課した事案において、国家賠償法上の違法性が認められるか否かが争われた事例を検討する。   ▷どのような事案か、主たる争点は何か これは次のような事案である。 争点は、Yに国家賠償法上の違法性が認められるか、Xに生じた損害額はいくらか、過失相殺の可否及び割合はどうなのかである。   ▷地裁の判断は 地裁はXの請求を主に次の理由から棄却した。 この判決に不服なXが控訴した。   ▷高裁の判断は 高裁は過失相殺3割で、Xの請求を一部認容した。認容の理由としては主に次のとおりとしている。 *   *   * このように、固定資産税が賦課課税方式であることから、納税者が申告をしなかったことにより税額が誤りであったとしても、誤りの責任は行政側にあるとし、納税者の無申告が誤りを誘発したことも事実であるため過失相殺3割とした。 税理士は日ごろ、申告実務に携わり、日々、税額を確定させているが、税理士が行った処理のミスを調査等で指摘される期間には期限があることから考えると、過失相殺があったとしても、かなり厳しい責任といえるだろう。   (了)

#No. 483(掲載号)
#菅野 真美
2022/08/25

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第85回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第85回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也     〈Q10〉 無償譲渡の場合の収益の計上時期・計上額 A社は、創業以来、取引をしている顧客B社が倒産の危機に瀕しているため、A社の商品を贈与(無償の譲渡)した。この場合、A社には法人税法22条の2の適用があるか。 〈A10〉 無償譲渡の場合にも、法人税法22条の2の適用がある。よって、A社は、その商品を引き渡した日の時価で、その引渡しの日の収益に計上することになる。なお、別途、寄附金や交際費等の損金不算入規定(法法37、措法61の4)の適用の有無を検討する必要がある。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 例えば、次の点を考慮すると、法人税法22条の2第1項~第4項は、無償による資産の譲渡にも適用があるといえる。 よって、無償による資産の譲渡の場合には、その収益の額について、その譲渡をした資産の引渡しの時における価額(時価)で計上する(法法22の2④)。また、収益の計上時期について、その譲渡に係る目的物の引渡しの日の属する事業年度に計上する(法法22の2①)。 なお、無償による資産の譲渡に対して、法人税法22条の2第2項の近接日基準、とりわけ契約効力発生日基準の適用があるか否かという問題がある。この点に関しては、無償取引に係る一般に公正妥当と認められる会計処理の基準が存在するか否かという点のほか、次のような疑問がある(本連載第27回参照)。 ◆有償取引と無償取引で適用する収益計上基準は異なると解すべきか。有償取引について、契約効力発生日基準を法人が継続的に採用していた場合に、単発的に発生した無償取引についても契約効力発生日基準を適用すべきであろうか。 ◆無償取引には近接日基準の適用はなく、引渡・役務提供基準のみが適用されることになるか。 ◆固定資産の譲渡に係る収益の帰属の時期について、引渡基準を原則としつつも、契約効力発生日による近接日基準も許容している法人税基本通達2-1-14は、無償取引にも適用があるのであろうか。 ◆そもそも、同通達による収益経理を採用した場合、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従ったことになるのであろうか。 ◆時価よりも低い金額(極端な例では1円)で譲渡する低額譲渡の場合には、どうなるのか。   *  *  *   〈Q11〉 申告調整による引渡基準の採用 売主であるA社(3月決算)は、X1年3月末に、買主であるB社に、B社が購入したA社の商品を引き渡した。決算後、税務申告の作業時に、会計上、この収益の計上をしていなかったことが発覚した。申告調整により、この収益をX1年3月期の益金の額に算入することはできるか。 〈A11〉 申告調整により、収益をX1年3月期の益金の額に算入することができる。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 引渡基準を定める法人税法22条の2第1項は、確定決算による収益経理を要求していない。この点は、2項とは異なる。 1項の文面上、同項に優先して適用される2項の適用がない場合には、引渡日又は役務提供日の属する事業年度で収益経理をしていないとしても、申告調整により、引渡・役務提供基準に基づく収益計上を認める(求める)ものと解してよいと考える。 もっとも、1項を適用することで、申告調整により、引渡・役務提供基準に基づいて収益計上を行う処理が常に認められるわけではない。 例えば、2項は、一定の要件を満たした場合には、1項に優先して適用される。このため、確定決算において、目的物の引渡日よりも前の近接日の属する事業年度の収益として計上した場合、後になって、引渡日の属する事業年度の収益として申告調整することは認められないことになろう(本連載第15回参照)。 ただし、このような場合に国税庁がどのように取り扱うかという点は明らかではない。 (了)

#No. 483(掲載号)
#泉 絢也
2022/08/25
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