〔相続実務への影響がよくわかる〕 改正民法・不動産登記法Q&A 【第13回】 「新設された管理不全土地・建物管理制度の概要と手続」 司法書士 丸山 洋一郎 弁護士 松井 知行 【Q】 管理不全土地・建物の管理制度とはどのような制度ですか。 【A】 所有者が土地・建物を管理せずに放置していることで近隣住民などに危害が及ぶおそれがある場合に、裁判所の命令により土地・建物の管理人を選任し、所有者に代わって管理や処分をさせる制度である。 -《解説》- 1 制度創設の経緯 所有者の所在が判明している土地であっても、所有者による管理が適切になされず荒廃・老朽化することで近隣に危険や悪影響を生じさせることはありうる。現行法においては、このような土地や建物(以下、これらをあわせて「管理不全土地・建物」という)による侵害又はその危険が及ぶ近隣の土地所有者は、管理不全土地・建物の所有者に対し、所有権に基づく妨害排除請求等を行使することができるが、管理人による管理は想定されていないため、土地・建物について継続的な管理が必要であるケースなどには、必ずしも対応することができなかった。 そこで、管理不全土地管理人・管理不全建物管理人(以下、これらをあわせて「管理人」という)を通じて土地・建物の継続的な管理を図り、土地・建物の状態に応じた適切な管理措置を講ずることができるよう管理不全土地管理制度及び管理不全建物管理制度(以下、これらをあわせて「管理不全土地・建物管理制度」という)が作られることになった。 2 手続の流れ (1) 申立て・証拠提出 管理不全土地・建物管理制度を利用する場合、裁判所に申立てをする必要がある。 この申立ては対象不動産の所在地を管轄する地方裁判所にする必要がある(新非訟事件手続法第91条第1項)。 また、申立てをすることができるのは、利害関係人(新民法第264の9第1項、同法第264条の14第1項)とされている。利害関係人にあたるか否かは個別の事案ごとに裁判所において判断される。具体例として、ひび割れ・破損が生じている擁壁を土地所有者が放置しており、隣地に倒壊するおそれがあるケースにおける隣地所有者や、ゴミが不法投棄された土地を所有者が放置しており、臭気や害虫発生による健康被害を生じているケースにおける健康被害を受けている者は、利害関係人にあたると考えられる。 なお、所有者不明土地に関しては、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、地方公共団体の長等は地方裁判所に対し所有者不明土地管理命令を出すよう請求することができるとされているが(新所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法第42条第2項)、管理不全土地に関しては、地方公共団体の長等に管理不全土地管理命令の申立権を付与することの是非について、国土交通省において今後検討するものとされている。 (2) 所有者の陳述の聴取 管理不全土地・建物管理命令を発令するためには、裁判所は、原則として、管理不全土地管理命令の対象となるべき土地・建物の所有者の陳述を聴取することが必要であるとされている(新非訟事件手続法第91条第3項1号、同条第10項)。 ただし、緊急に修繕措置を施す必要があるケースなど、これにより申立ての目的を達することができない事情があるときには、所有者の陳述聴取は不要とされている(新非訟事件手続法第91条第3項ただし書、同条第10項)。 (3) 管理命令の発令・管理人の選任 裁判所は、所有者の陳述聴取の手続を経るなどした上で、要件が認められると判断した場合には、管理不全土地・建物管理命令を発し管理人を選任することになる。 管理不全土地・建物管理命令は、申立人並びに管理人及び管理不全土地・建物の所有者に告知しなければならない(非訟事件手続法第56条第1項)。 そして、管理不全土地・建物管理命令は、管理人又は管理不全土地・建物の所有者に告知することにより効力を生じる(非訟事件手続法第56条第2項)。 なお、所有者不明土地・建物管理命令とは異なり、管理不全土地・建物管理命令が発せられた場合であっても、その旨を登記することとはされていない。 (4) 管理人による管理 管理人の権限・義務等については後記3参照。 (5) 職務の終了(管理命令の取消) 裁判所は、管理すべき財産がなくなったときその他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、管理不全土地・建物管理命令を取り消さなければならないとされている(新非訟事件手続法第91条第7項、同条第10項)。 「財産の管理を継続することが相当でなくなったとき」には、当該不動産の管理不全状態が解消された場合や、管理に要する費用を支払うことが困難である場合において、申立人からの必要な金銭の追納もされないときなどが該当すると考えられる。 3 管理人の権限・義務等 (1) 権限 管理人は、対象となる財産を管理・処分する権限を有しているが、所有者不明土地・建物管理命令とは異なり、所有者が自ら管理処分権を行使することも考えられることから、このような管理処分権は管理人に専属するものとはされていない。 管理人は、①保存行為及び②管理不全土地・建物等の性質を変えない範囲内の利用・改良行為については、裁判所の許可を得ることなく行うことができるが、これを超える行為をする場合には裁判所の許可を得る必要がある(新民法第264条の10第2項本文、同法第264条の14第4項)。 また、管理不全土地・建物管理命令の対象とされた土地・建物を処分する場合には、その所有者の同意がなければ、裁判所は処分についての許可をすることができないとされている(新民法第264条の10第3項、同法第264条の14第4項)。 管理人が、裁判所の許可を得るべきであったにもかかわらずこれを得ずに行った行為については効力を生じないと考えられるが、取引の安全を図るために、裁判所の許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできないとされている(新民法第264条の10第2項ただし書、同法第264条の14第4項)。 管理人が管理不全土地・建物等の売却等をした場合、管理人はそれにより生じた売却代金等の金銭を、土地・建物の所有者(共有持分権者)のために、対象不動産の所在地の供託所に供託することができるとされており、供託をした場合にはその旨を公告することとされている(新非訟事件手続法第91条第5項、同条第10項)。管理不全土地・建物等の売却等をしたケースでは、管理人による管理を継続する実際上の必要性がなくなることも少なくないと考えられるが、そのような場合には売却代金等を供託することで管理を終了することができると考えられる。 (2) 義務 管理人は、管理不全土地・建物等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならないとされている(新民法第264条の11第1項、同法第264条の14第4項)。 また、数人の者の共有持分を対象として管理不全土地・建物管理命令が発せられたときは、管理人は、当該命令の対象とされた共有持分を有する全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならないとされている(新民法第264条の11第2項、同法第264条の14第4項)。 (3) 対象となる財産 管理人による管理処分の対象となる財産は、①管理不全土地・建物管理命令の対象とされた土地・建物、②土地・建物にある動産で所有者(共有持分権者)が所有しているもの、③管理人が管理・処分等により得た金銭等の財産(売却代金等)のほか、建物の場合にはその敷地利用権(借地権等)にも及ぶとされている(新民法第264条の9第2項、同法第264条の10第1項、同法第264条の14第2項、同法第264条の14第4項)。 なお、区分所有建物については、管理不全建物管理制度は適用されない(新建物の区分所有等に関する法律第6条第4項)。 (4) 解任・辞任 管理人がその任務に違反して管理不全土地・建物等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、管理人を解任することができる(新民法第264条の12第1項、同法第264条の14第4項)。 また、管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て辞任することができる(新民法第264条の12第2項、同法第264条の14第4項)。 (5) 報酬 管理人は、管理不全土地・建物等から、裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる(新民法第264条の13第1項、同法第264条の14第4項)。 また、管理人による管理不全土地・建物等の管理に必要な費用及び報酬は、管理不全土地等の所有者の負担とされている(新民法第264条の13第2項、同法第264条の14第4項)。 4 管理不全土地・建物等に関する訴訟 所有者不明土地・建物管理命令とは異なり、管理不全土地・建物管理命令が発せられた場合には、管理不全土地・建物管理人が管理不全土地・建物等に関する訴訟における原告・被告となる旨は定められていない。 そのため、管理不全土地・建物管理命令が発せられた後でも、管理不全土地・建物等の所有者は自ら管理不全土地・建物等に関する訴訟を提起することができ、また、第三者が管理不全土地・建物等に関する訴えを提起しようとするときは、管理不全土地・建物等の所有者が被告となって応訴することになる。 (了)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例78】 株式会社カッパ・クリエイト 「代表取締役の異動に関するお知らせ」 (2022.10.3) 公認会計士/事業創造大学院大学教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、株式会社カッパ・クリエイト(以下「カッパ・クリエイト」という)が2022年10月3日に開示した「代表取締役の異動に関するお知らせ」である。田邊公己氏(以下「田邊氏」という)が代表取締役を退任し、山角豪氏(以下「山角氏」という)が新たな代表取締役に就任するという内容だが、その「選任の理由」は次のとおりである(下線は筆者による)。なお、カッパ・クリエイトと株式会社アトム(以下「アトム」という)はともに株式会社コロワイド(以下「コロワイド」という)の上場子会社であり、カッパ・クリエイトとアトムはともに回転寿司事業を運営している。 カッパ・クリエイトの株主のうち、この「選任の理由」を読んで納得する者は、コロワイドを除いていないだろう。代表取締役の兼任以前に同業の会社間で取締役を兼任すること自体が、また、共通の親会社を持つ会社間で事業が重複すること自体が、いずれかの会社の非支配株主の利益を毀損する可能性を有している。子会社の上場を維持するならば、事業の重複は整理し、取締役の兼任も行わないくらいのことは必要かと思われるのだが。 2 異動の理由 「選任の理由」は、山角氏を後任の代表取締役にした理由である。田邊氏が代表取締役を退任した理由は、別に「異動の理由」に記載されている。その記載は次のとおりである。 田邊氏から「不正競争防止法違反による逮捕勾留されたことを理由」とした辞任の申し出があったとのことだが、2021年7月5日に開示された「当社役員に対する競合会社からの告訴について」には次の記載がある。 「当社の代表取締役個人」は田邊氏のことである。同氏はこの後逮捕され、2022年9月30日に「当社役職員の逮捕について」が開示されている。 3 10回の代表取締役の異動 田邊氏が不正行為に手を染めていたのは「2020年11月から12月中旬の期間」とのことだが、同氏は2020年11月にカッパ・クリエイトに入社し、翌月12月に同社の代表取締役になることが決まっている(2020年12月21日開示「代表取締役の異動に関するお知らせ」)。同氏は前職も他社の代表取締役だったため、代表取締役になることは既定路線だったのかもしれない。 田邊氏のカッパ・クリエイトでの代表取締役在任期間は特別な理由により1年半ほどになってしまったが、同社のこれまでの代表取締役の在任期間は短いのが通常だった。同社は、コロワイドの子会社になることが決まってから(2014年10月27日開示「株式会社コロワイドの連結子会社である株式会社SPCカッパによる当社株式に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」、2014年11月28日開示「株式会社SPCカッパによる当社株式に対する公開買付けの結果、第三者割当による新株式発行並びに親会社、主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ」)、今回の開示を含めて、以下のとおり実に10回の代表取締役の異動に関する開示を行っている。 このように代表取締役が頻繁に入れ替わっている(他の取締役も)。カッパ・クリエイトにおいて、代表取締役は短期間で結果を出すことが求められるようである。田邊氏の行為の原因は基本的に同氏の資質によるものだと思われるが、それだけで片付けていいのだろうか。 4 意識だけの問題? カッパ・クリエイトは、今回の件を受けて、2022年10月21日に「営業秘密の管理等に関する取組みについて」を開示し、「営業秘密管理を含むコンプライアンスに関する取組みをより一層強化し徹底」するとしているが、それで終わりなのだろうか。 不正行為の原因は、意識の低さや知識の欠如だけではない。人は追い詰められると、悪いと分かっていることでも、行わざるを得なくなることがある。同社は、独立した第三者によって、今回の件が発生した背景について調査してもらった方がいいのではないだろうか(同社だけでなくコロワイドのグループ会社全体において必要かもしれない)。場当たり的な対応で解決できる問題ではないように思われる。 (了)
プラス思考の経済効果 【第10回】 「秋祭りの経済効果」 ~ぎふ信長まつり~ 関西大学名誉教授・大阪府立大学名誉教授 宮本 勝浩 1 はじめに 毎年、秋には日本各地で「秋祭り」が開催されます。特に、今年は新型コロナウイルスの流行により中止、延期されていた秋祭りが3年ぶりに各地域で再開されています。今回は、この秋祭りのなかで大成功した「ぎふ信長まつり」の経済効果についてお話をしましょう。 岐阜市では、2022年11月5日(土)、6日(日)の両日、「ぎふ信長まつり」を「岐阜市産業・農業まつり」と共同で「岐阜市産業・農業祭~ぎふ信長まつり~」として、3年ぶりに開催しました。これまでにない人出で大いに盛り上がり、テレビなどのマスコミでもたびたび取り上げられました。 今年度は、来年1月上映予定の話題の映画「THE LEGEND&BUTTERFLY」に出演する人気俳優の木村拓哉さんと、地元岐阜市出身の伊藤英明さんが参加されたので過去にない盛り上がりになったと考えられます。 筆者は、まつりの前の10月22日に東京の某テレビ局からの依頼で「経済効果」を計算してテレビで放送されましたが、その時の経済効果の予想値は約148億8,116万円でした。そして、今回はまつりが終わった後、主催者の1人である岐阜市役所の経済政策課から入手した観客数や経費などの確定値と、国土交通省観光庁が発表した最新の「旅行・観光消費動向調査」の数値などの確定値に基づいて経済効果を検証しました。 その結果、2022年度の「岐阜市産業・農業祭~ぎふ信長まつり~」の経済効果は約150億2,412万円となりました。事前の予測値は約148億8,116万円でしたので、確定値はそれよりもさらに約1億4,296万円増加したことになります。2日間のまつりとしては非常に大きい経済効果でした。そして、このまつりはマスコミでも大きく取り上げられて大成功であったと言えます。 2 「ぎふ信長まつり」の直接効果の項目と金額 「ぎふ信長まつり」の直接効果の項目は、観光客の消費額と主催者・企業の消費・投資額の2種類です。 (1) 観光客の消費額 例年、まつりの2日間では約20~30万人の人が来場しましたが、今年は人気俳優の木村拓哉さんと、地元岐阜市出身の伊藤英明さんが参加しましたので、岐阜市役所の経済政策課の発表によると、初日は約16万人、2日目は約46万人、合計約62万人がこのまつりに参加しました。特に、木村拓哉さんが信長に扮した「信長公騎馬武者行列」には、観覧者をネットで募集すると、定員1万5,000人に対して、全国から96万6,555人もの応募がありました。これは、岐阜市の人口約40万3,000人の2倍以上の応募でした。 これらの観光客の消費額を推計します。まず、最初に参加者を日帰客と遠方から来た宿泊客に分けます。「岐阜観光コンベンション協会」のデータによると、岐阜市内のホテル、旅館、さらに公共の宿泊施設を合わせると、岐阜市内では合計5,632人が宿泊できるとのことでした。そして、市内の大きなホテルや宿泊施設のいくつかに問い合わせをすると、4日(金)、5日(土)の両日はほぼ満室で、6日(日)は約9割の宿泊であったとのことでした。その結果、岐阜市内の3日間の宿泊観光客は次のように16,333人となりました。 これらの宿泊者以外に、親類、友人の家に宿泊した人、さらに岐阜市外に宿泊した人もかなりいると思われますが、それらの人々の実数値は把握することができませんでしたので、今回は宿泊観光客としては数えないことにします。その結果、宿泊観光客は16,333人、日帰り観光客は60万3,667人となりました。 国土交通省観光庁の2022年9月26日発表の「旅行・観光消費動向調査2021年年間値」によると、岐阜県を訪れる宿泊客の1人平均の消費額は53,428円、日帰り観光客の消費額は1人平均で16,775円でしたので、消費総額は次のように約109億9,915万円となります。 (2) 主催者の消費額 岐阜市役所はじめ開催主催者の話では、当初予算が1,100万円、さらに警備費(3,150万円)を含めた補正予算が3,700万円の合計4,800万円が開催費用に充てられたとのことでした。 (3) 直接効果の合計 上記(1)と(2)より、直接効果の合計は約110億4,715万円となりました。 3 「岐阜市産業・農業祭~ぎふ信長まつり~」の経済効果 前節で分析した「ぎふ信長まつり」の直接効果約110億4,715万円を基にして、経済効果を推計します。岐阜県の最新の産業連関表(平成27年発表の37部門の産業連関表)を用いて推計しますと、経済効果は次のように約150億2,412万円となりました。 4 まとめ 前述のように、10月22日に公表した「岐阜市産業・農業祭~ぎふ信長まつり~」の経済効果の予想値は約148億8,116万円でしたので、確定値はそれよりもさらに約1億4,296万円増加したことになります。予測値と確定値の誤差は約1%でした。 これまでの「ぎふ信長まつり」は2日間で20~30万人の観光客を集めていましたので、30~40億円の経済効果があったと推察されます。したがって、今年の「ぎふ信長まつり」は非常に大きい経済効果をもたらしたと言えると思います。 大きな経済効果になったのには次のような理由が考えられます。 「信長公騎馬武者行列」だけではこのように大きな経済効果にはならなかったと考えられます。つまり、信長まつりの行列を見るだけでは、観客は多額の消費をしませんが、産業・農業祭を同時開催して、いろいろな店が出店して、農産物、特産品、クラフト、雑貨などを販売し、飲食店では岐阜特産の食事を提供したことが、観客の消費意欲を刺激して経済効果を大きくしたと考えられます。 今年の「岐阜市産業・農業祭~ぎふ信長まつり~」は大成功であったと言えます。このように独創的なアイデアによるイベントの開催によって地域が活性化することがわかれば、日本の各地域で有名タレントや地元の出身の人気者を招待して、1つの祭りだけではなく他のイベントとの共同開催を行うなどの試みが次々と行われることによって、日本全体が元気になっていくことになるでしょう。 今年の「岐阜市産業・農業祭~ぎふ信長まつり~」は、日本各地の活性化策のお手本になると考えられます。 (了)
《速報解説》 税理士等でない者が税務相談を行った場合の命令制度の創設等 ~令和5年度税制改正大綱~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 1 はじめに 与党(自由民主党・公明党)による令和5年度税制改正大綱(以下「令和5年度大綱」という)が、12月16日(金)に公表された。本稿では、令和5年度大綱において明記された「税理士等でない者が税務相談を行った場合の命令制度の創設等」について、その概要をまとめたい。 本項目は、これまで罰則による禁止条項のみが定められていた、いわゆる「ニセ税理士」等が行う税務相談について、財務大臣が税務相談の停止を命令できることとする制度を創設するものである。 2 令和4年度税制改正大綱における「税理士制度の見直し」 令和4年度税制改正大綱(以下「令和4年度大綱」という)では、税理士制度の見直しとして、下記の12項目(その他所要の措置を除く)が列挙されていた(令和4年度大綱82~85頁)。 令和5年度大綱に盛り込まれた「税理士等でない者が税務相談を行った場合の命令制度」は、上記(10)に掲げる「税理士法に違反する行為又は事実に関する調査の見直し」をさらに補完するものであることから、当該項目の詳細を令和4年度大綱より引用しておきたい。 令和5年度大綱では、上記①の「税理士業務の制限又は名称の使用制限に違反したと思料される者を加える」措置の具体策として、本命令制度が創設されたものであると説明している。 3 税理士等でない者が税務相談を行った場合の命令制度の創設等(令和5年度大綱108頁以下) 「税理士等でない者が税務相談を行った場合の命令制度」の概要を、令和5年度大綱から引用しておきたい(注書き、括弧書きを省略している)。 4 まとめ 以上より本命令制度のポイントをまとめると、次のとおりとなる。 なお、本命令制度は、令和6年4月1日から施行することとされている。 (了)
《速報解説》 電子帳簿等保存制度の見直し ~令和5年度税制改正大綱~ 辻・本郷税理士法人 税理士 安積 健 ◆はじめに 電子帳簿保存法は平成10年に制定されたが、ほとんど利用されない状況が長らく続いた。平成27年・28年にはスキャナ保存について大きな改正があり、ようやく利用状況に改善が見られ、令和2年には電子取引について改正が行われた。続く令和3年では制度全体を見直す大きな改正が行われ、令和4年は電子取引に関して2年間の経過措置が設けられた。 先に公表された税制改正大綱によると、令和5年度税制改正では、経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、テレワークの推進、税務情報のデジタル化、優良な電子帳簿の普及・一般化に資する観点から、電子取引の取引情報に係るデータや所得税、法人税等の帳簿書類を電子的に保存するための手続について、更なる見直しが行われることとなった。 1 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度の見直し (1) システム対応が間に合わなかった事業者等への対応 改 正 前 申告所得税及び法人税の保存義務者は、電子取引を行った場合には、保存要件に従って、その電子取引の取引情報に係る電磁的記録(データ)を保存しなければならないこととされている。 令和4年度税制改正により、令和5年12月31日までに電子取引を行う場合には、事実上、電子取引の取引情報に係るデータを出力することにより作成した出力書面の保存をもって、そのデータの保存に代えることができることとされている(経過措置)。 改 正 案 令和5年度税制改正では、以下の見直しが行われる。 令和4年で整備された経過措置は、出力書面を保存しておけば、データの保存がなくても認められたが、新たな猶予措置では、データの保存は必要となる点に注意が必要である。 また、経過措置では「やむを得ない事情」があれば認められたが、新たな猶予措置では「相当の理由」があることが必要とされる。 ここで「相当の理由」とは、「合理的な理由」ということであり、「やむを得ない事情」よりも強い客観的合理性があるとされている(荒井勇『税法解釈の常識』税務研究会、1975年)ため、この点にも留意が必要と思われる。 (2) 検索機能の確保の要件の見直し 改 正 前 ① 検索機能の確保 次の要件を充足した検索機能を確保しておくことが必要とされている。 ② 検索機能の確保の緩和 ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、上記(イ)及び(ウ)の要件が不要となり、さらに「売上高が1,000万円以下」である事業者は、全ての検索機能の確保の要件が不要となる。 改 正 案 令和5年度税制改正では、以下の見直しが行われる。 適用時期 上記の改正は、令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録について適用する。 2 スキャナ保存制度の見直し 改 正 前 決算関係書類を除く国税関係書類(取引の相手方から受領した領収書・請求書等)については、以下の要件の下で、スキャナにより記録された電磁的記録の保存により、その書類の保存に代えることを可能とする制度。 (注1) 決算関係書類以外の国税関係書類(一般書類を除く) (注2) 資金や物の流れに直結・連動しない書類として国税庁長官が定めるもの (注3) スキャナ保存制度により国税関係書類に係る電子データ保存をもって当該国税関係書類の保存に代えている保存義務者であって、その当該国税関係書類の保存に代える日前に作成又は受領した重要書類 改 正 案 令和5年度税制改正では、以下の見直しが行われる。 スキャナ保存に関する今回の見直しは、事業者の事務負担や要件の効果に対する疑問などを考慮したものである。 適用時期 上記の改正は、令和6年1月1日以後に保存が行われる国税関係書類について適用する。 3 電子帳簿等保存制度の見直し(優良電子帳簿の範囲) 改 正 前 次の要件を満たす場合、修正申告等に係る過少申告加算税が5%軽減される。 改 正 案 令和5年度税制改正では、優良電子帳簿の対象範囲について、以下の合理化・明確化が行われる。 「その他必要な帳簿」については、以下の記載事項に係るもの(補助帳簿)に限ることとする。 (注1) 優良な電子帳簿に位置づけられない「その他必要な帳簿」の取引に関する記載事項の例・・・現金出納帳、当座預金出納帳、上記以外の資産台帳 (注2) 所得税の場合は、費用(経費)に関する事項のうち、雇人費、青色専従者給与額及び福利厚生費(賃金台帳)も優良な電子帳簿の対象とする。 適用時期 上記の改正は、令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用する。 (了)
《速報解説》 残余財産が確定した通算子法人の確定申告書の提出期限の見直し ~令和5年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸 令和4年12月16日(金)、与党(自由民主党・公明党)より令和5年度税制改正大綱が公表された。 グループ通算制度については、次のように、残余財産が確定した通算子法人の確定申告書の提出期限の見直しが明記された。 [国税] これは、残余財産が確定した通算子法人について、残余財産の確定の日が通算親法人の事業年度終了の日以外の日である場合、その残余財産の確定の日までの事業年度(最終事業年度)では、通算子法人のステータスではあるが、損益通算等のグループ通算制度を適用せずに単独で申告を行うことになるため、その確定申告書の提出期限も通算子法人以外の法人と同様に、その最終事業年度終了の日の翌日から1ヶ月以内又は同日から1ヶ月以内に残余財産の最後の分配若しくは引渡しが行われる場合には、その行われる日の前日までとすることとなる。 一方、残余財産の確定の日が通算親法人の事業年度終了の日である場合、その残余財産の確定の日までの事業年度(最終事業年度)では、他の通算法人とともに損益通算等のグループ通算制度が適用される申告を行うこととなる。 そこで、通算子法人の残余財産の確定の日が通算親法人の事業年度終了の日である場合は、その確定申告書の提出期限について通算親法人の確定申告書の提出期限と一致させることが令和5年度税制改正大綱において明記されることとなった。 また、残余財産が確定した通算子法人について、法人事業税の申告期限についても同様の見直しが行われることが明記されている。 [地方税] 〈見直しのイメージ〉 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (※) 「自由民主党税制調査会資料」(令和4年11月29日)の図を基に一部変更 (了)
《速報解説》 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し ~令和5年度税制改正大綱~ 税理士 徳田 敏彦 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は平成25年4月から始まり、平成31年と令和3年にそれぞれ改正が行われ、今回が3回目の改正となる。 令和4年12月16日に公表された「令和5年度税制改正大綱」(与党大綱)における本制度の改正点は4点である。 1 改正点 (1) 適用期限の延長 適用期限が3年延長され、令和5年3月31日の期限は令和8年3月31日まで延長される。 (2) 相続財産5億円を超える者の管理残高への相続税課税 贈与者が死亡した場合において、贈与者の相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、受贈者が23歳未満である場合等であっても、教育資金の管理残高(非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額)を相続税の課税対象とする。 この改正は令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る相続税について適用する。 (3) 管理残高への贈与税課税 受贈者が30歳に達した場合等において、管理残高に贈与税が課税されるときには、贈与税の一般税率を適用する。 この改正は令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について適用する。 (4) 教育資金の範囲の拡充 都道府県知事等から国家戦略特別区域内に所在する場合の外国の保育士資格を有する者の人員配置基準等の一定基準を満たす旨の証明書の交付を受けた認可外保育施設に支払われる保育料等を加える。 この改正は令和5年4月1日以後に支払われる教育資金について適用する。 2 本制度の改正推移 今までの本制度の改正推移を一覧表にすると以下となる。 (※1) 贈与者の死亡前3年以内の拠出分が相続財産への加算対象となるが、受贈者が贈与者の死亡日において、以下のいずれかに該当する場合には相続財産には加算しないものとする。 (ⅰ) 23歳未満である場合 (ⅱ) 学校等に在学している場合 (ⅲ) 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合 (※2) 贈与者の拠出日と死亡日までの年数にかかわらず、管理残額が相続財産への加算対象となるが、受贈者が贈与者の死亡日において、以下のいずれかに該当する場合には相続財産には加算しないものとする。 (ⅰ) 23歳未満である場合 (ⅱ) 学校等に在学している場合 (ⅲ) 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合 (出典) 国税庁発表資料を一部加工 3 今後の動向 本制度創設時点では管理残額があっても相続税の対象とはならず、受贈者が30歳になった時点で管理残額がある場合に贈与税だけが課税される仕組みであったため、父母、祖父母等の高齢者で金融資産を所有する者の相続税対策として利用されていた。 しかし3度の改正を経て、贈与者が死亡した場合にその者の相続税課税価格が5億円を超える場合には、受贈者が23歳未満あるいは学校在籍中であっても、管理残額が相続税課税の対象となり、富裕層の本制度の利用には一定の制限がかかることになる。 そもそも本制度の利用件数も近年減少しており、次の期限到来時には利用件数、利用実態等を踏まえ制度の在り方について改めて検討することが令和5年度税制改正大綱の「基本的考え方」に記述されているため、今後は廃止含め改正があることが予想される。 また、税理士業務として相続税申告を受託した場合には、本制度の利用を必ず確認し、どのタイミングで拠出された教育資金かで課税が異なることにも十分に留意する必要がある。 (了)
《速報解説》 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し ~令和5年度税制改正大綱~ 税理士 徳田 敏彦 「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」は、父母、祖父母等の直系尊属が18歳以上50歳未満の子、孫等へ結婚・子育て資金を信託等により一括して拠出した場合に、受贈者ごと1,000万円(うち、結婚に際して支払う金銭は300万円)まで贈与税が非課税となる制度である。 令和4年12月16日に公表された「令和5年度税制改正大綱」(与党大綱)における結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の改正点は2点である。 1 改正点 (1) 適用期限の延長 適用期限が2年延長され、令和5年3月31日の期限は令和7年3月31日まで延長される。 (2) 管理残高への贈与税課税 受贈者が50歳に達した場合等において、管理残高(非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額)に贈与税が課税されるときには、贈与税の一般税率を適用する。 この改正は令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について適用する。 2 改正の推移 改正の推移を一覧表にすると以下となる。 (出典) 国税庁発表資料を一部加工 3 今後の動向 令和5年度税制改正大綱の「基本的考え方」で、以下のとおり記載されている。 今後も利用件数は伸び悩むことが予想され、廃止も含めさらなる改正が予想される。 また、税理士業務として相続税申告を受託した場合には、過去の本制度の利用を必ず確認する必要があることに留意したい。 (了)
《速報解説》 相続時精算課税制度及び 暦年課税制度の生前贈与の加算期間の見直し ~令和5年度税制改正大綱~ 太陽グラントソントン税理士法人 パートナー 公認会計士・税理士 岩丸 涼一 令和4年12月16日に公表された「令和5年度税制改正大綱」(与党大綱)において、資産移転時期の選択により中立的な税制の構築を目指し、「相続時精算課税制度」及び「相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算期間等」について以下のとおり見直しがされた。 1 「相続時精算課税制度」についての見直しの概要 相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除(2,500万円)とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除(110万円)をした後の残額にすることとされた。 (注) 令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用。 例えば、5,000万円相当の不動産に相続時精算課税制度を適用した場合、贈与税額は以下のとおりとなる。 (※) 「110万円基礎控除」は毎年110万円まで、「2,500万円基礎控除」は累積2,500万円までとなる。 そして、相続時に加算される金額は以下のとおりとなる。 また、相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した一定の土地又は建物が当該贈与の日から当該特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に災害によって一定の被害を受けた場合には、当該相続税の加算の基礎となる当該土地又は建物の価額は、当該贈与の時における価額から当該価額のうち当該災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とされた。 (注) 令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用。 〈相続時精算課税制度の見直し〉 2 暦年課税における「相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算期間等」についての見直しの概要 相続又は贈与により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとされた。 (注) 令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用。 〈暦年課税における相続前贈与加算〉 〈加算期間の経過措置〉 (了)
《速報解説》 国際最低課税額に対する法人税の創設について ~令和5年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 霞 晴久 OECD/G20を中心に約140ヶ国の国と地域が参加する「BEPS包摂的枠組み」では、2021(令和3)年10月8日、第1の柱(市場国への新たな課税権の配分)及び第2の柱(国際最低課税(※1))による解決策が合意(※2)され、後者については、同年12月20日にGloBE(※3)ルール、2022(令和4)年3月14日には、同ルールのコメンタリーが公表され、各国の取組みとして2022年中の国内法の改正が予定されていたところ、我が国では、去る今月16日、政府与党による令和5年度税制改正大綱の一環として、「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の創設」が公表された。 (※1) 英:Global Minimum Tax (※2) 令和4年度与党税制改正大綱では、この合意につき、「税制の不確実性をもたらす一国主義的な課税措置の拡散を防止する観点から、100年来続いてきた国際課税原則を見直し、市場国に新たな課税権を配分するものである。加えて、グローバル・ミニマム課税の導入は、法人税の引下げ競争に歯止めをかけるとともに、わが国企業の国際競争力の維持及び向上にもつながるものである。わが国は、BEPSプロジェクトの立上げ時から、国際課税改革に関する議論を一貫して主導してきたところであり、本国際合意を強く歓迎する。」と述べられていた。 (※3) Global Anti-Base Erosion 1 基本的な仕組み 国際最低課税の対象となる特定多国籍企業グループ等とは、企業グループの最終親会社の連結財務諸表の作成に係る期間(以下、「対象会計年度」)について、直前4年度のうち2以上の年度の総収入金額が7.5億ユーロ以上であるものをいい、一定の適用除外を除く所得について各国ごとに最低税率15%以上の課税が確保される仕組みとなる。国際最低課税額に対する同法人税の申告及び納付は、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3ヶ月(例外的に1年6ヶ月)以内に行わなければならないとされる(※4)。 (※4) 同時に国際最低課税の地方法人税版(特定基準法人税額に対する地方法人税)も創設された。 2 最初に導入されるGloBEルール GloBEルールでは、最終親会社で課税を受ける①所得合算ルール(IIR(※5))が基本とされており、同ルールでは捕捉しきれない所得がある場合に②軽課税所得ルール(UTPR(※6))が適用される。さらに、自国に所在する事業体全体の実効税率が15%未満の場合に、他国において上乗せ課税されるのを防ぐため、各国が導入できる制度として③国内ミニマム課税(QDMTT(※7))が提案されている。 (※5) Income Inclusion Rule (※6) Undertaxed Payment Rule (※7) Qualified Domestic Minimum Top-up Tax 我が国においては、国税の租税特別措置の税額控除等の適用により各企業グループの実効税率が15%を下回った場合に、③により実効税率を15%まで引き戻す効果があるといわれている。②の国際的な実施目標は、元々、①より1年遅れるとされており、また②③の実施細目が国際的に引き続き議論されている現状を踏まえ、我が国では、今般、①を最初に導入することとなった。②③については、令和6年度改正以降で法制化される方向で検討されている。 ①「所得合算ルール」は、軽課税国に所在する子会社等の税負担が国際的に合意された15%の最低税率に至るまで、親会社の所在する国で課税を受ける仕組みで、そのイメージを図で示せば、以下のとおりとなる。 (出所) 「自由民主党税制調査会資料」(令和4年12月7日) 上図のとおり、上乗せ課税部分には有形固定資産(簿価)及び支払給与の一定額を除外することとされており(カーブアウトと呼ばれる)、この趣旨は、実体のある活動に対する一定割合は通常利益に該当し、それを超えた「超過利益」を上乗せ課税の対象とする点にあるとされている(※8)。なお、ここでいう有形固定資産(簿価)及び支払給与に対する一定割合は10年間で段階的に引き下げられ、最終的には、それぞれの5%とされる。 (※8) 本年3月14日公表のコメンタリー第5章パラ25参照。 3 外国子会社合算課税との関係 国際最低課税額に対する法人税が導入された後も、我が国の外国子会社合算税制はそのまま引き続き適用されるが、当該措置により我が国親会社に合算されることとなる外国子会社留保所得については、一定の方法により当該外国子会社に配分されることで、両制度は調整され、併存することとなる。 4 適用開始時期 国際最低課税額に対する法人税は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用される。 (了)