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税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第22回】「相続税の財産評価における鑑定評価の位置付け」~財産評価基本通達による無道路地補正だけでは不十分とされた特別の事情~

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第22回】 「相続税の財産評価における鑑定評価の位置付け」 ~財産評価基本通達による無道路地補正だけでは不十分とされた特別の事情~   不動産鑑定士 黒沢 泰     1 大阪地裁平成29年6月15日判決のあらまし この判決は、無道路地を接道させ宅地として使用するためには財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます)に定める無道路地補正を行っただけでは不十分であり、評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情があると認められた事例です(※1)。 (※1) 裁判所ホームページ「裁判例情報」掲載資料によります。 本事例では、相続した不動産(6件の土地と1件のマンション)の相続税評価額が争点となり、そのうち5件の土地とマンションについては特別の事情はないとされましたが、残り1件の土地については「特別の事情あり」とする納税者の主張が認められています。 この土地は、戸建住宅に囲まれた住宅街の中にある相当不整形な土地で、建築基準法上の接道義務を満たしておらず、いわゆる無道路地でした。そして、この土地を接道させ実際に宅地として使用するためには、評価通達が定める無道路地補正(=無道路地であることによる減額割合の適用)だけでは著しく不十分である旨判定されています。 なお、(※1)の資料には対象地の図面が添付されておらず、かつ、評価額の算出過程も掲げられていないため、本解説は公開された資料から読み取れる範囲内でのコメントであることを予めお断りしておきます。 (1) 事案の概要 納税者(Xら)は、平成21年〇月、被相続人(Y)から甲土地をはじめとする6件の土地及び1件のマンション(以下「Fマンション」といい、6件の土地を合わせて「本件各不動産」といいます)を取得しました。そして、Xらは本件各不動産につき相続税評価額を算定の上、相続税の申告をしました。 その後、Xらは当初申告した本件各不動産の評価額が過大であったという理由で2度にわたり更正の請求をしたところ、課税庁(原処分庁)に受け容れられなかったことから、これを不服として争っていたものです。 以下、判決文の記載のうち、本件事例に特に関連する個所のみ掲げます。 (2) 当事者の主張 本件の争点は、本件各不動産(甲土地、乙土地、丙土地、A土地、D土地、E土地及びFマンション)の評価額が相続開始時の時価を上回っているかどうかでした。これに関する当事者の主張は以下のとおりです。 ① 課税庁(原処分庁)の主張 (※2) 筆者注。時価を意味しているものと推察されます。 ② 納税者(Xら)の主張 (3) 裁判所の判断 ① 一般的な考え方 ② 本件の場合 (※3) 本件審理においては、本件各不動産(甲土地、乙土地、丙土地、A土地、D土地、E土地及びFマンション)についてそれぞれ特別の事情の有無が検討されていますが、紙数の関係から本稿では特別の事情が認められた「丙土地」のみ掲げます。 〇丙土地について   2 上記判決における鑑定評価の位置付け 以下、本件審理に当たった裁判所が丙土地について下した判定結果につき、特別の事情との関連から筆者の見解を述べておきます。 本件裁判例で丙土地の評価が争点となったのは、丙土地が無道路地であることによる補正率(無道路地補正率)を評価通達の定めにより算定することが妥当か否かというところにありました。すなわち、丙土地の道路との位置関係からして通路開設費用相当額が著しく多額にのぼることから、評価通達の定めにより算定した無道路地補正率では丙土地の実情を反映できないのではないかという点です。 評価通達では、無道路地補正は、実際に利用している路線の路線価に基づき、不整形地補正をした価額から100分の40の範囲内で通路開設費用相当額を控除する方法で行うこととされています(実際に利用している路線が複数ある場合は、その路線に至る距離が最も短いものを選択します)。 本件裁決例の場合、((※1)の資料には図面や補正率等の算定過程が掲げられておらず、判決文から把握できる範囲内での推測となりますが)、客観的に見積もられた通路開設費用相当額が不整形補正後の価額の100分の40を大きく上回る状況であれば、最早、100分の40の範囲内で無道路地補正率を算定すべしとする規定はその根拠を問われることとなります。このような状況が、評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情に該当し、本件判決の結果に反映されたのではないでしょうか(本件においては納税者側で不動産鑑定士に鑑定評価を依頼したことが判決文から読み取れます)。 (了)

#No. 441(掲載号)
#黒沢 泰
2021/10/21

《速報解説》 会計士協会、監基報580「経営者確認書」の改正案を公表~収益認識会計基準等の公表を受け、記載例における文例の改正等行う~

《速報解説》 会計士協会、監基報580「経営者確認書」の改正案を公表 ~収益認識会計基準等の公表を受け、記載例における文例の改正等行う~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年10月18日、日本公認会計士協会は、「監査基準委員会報告書580「経営者確認書」の改正について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、「収益認識に関する会計基準」などの公表を受けたものである。 意見募集期間は2021年11月18日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 経営者確認書の記載例において次の文例が示されている。 1 売上関連 次の文例が示されている。 なお、個別に確認すべき重要な検討事項(例えば、変動対価、独立販売価格や履行義務の充足に係る進捗度等の見積り)について確認項目として追加する必要があると判断した場合には、その内容を記載する。 2 金融商品関連 次の文例への改正が示されている。   Ⅲ 適用時期等 2022年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から適用する予定である。 (了)

#No. 440(掲載号)
#阿部 光成
2021/10/20

《速報解説》 改正監基報720で求められる「その他の記載内容」への対応に伴い、会計士協会が監査人の作業内容及び範囲に関する留意事項を示す

《速報解説》 改正監基報720で求められる「その他の記載内容」への対応に伴い、 会計士協会が監査人の作業内容及び範囲に関する留意事項を示す   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年10月12日付けで(ホームページ掲載日は2021年10月13日)、日本公認会計士協会 監査基準委員会は、「「その他の記載内容」に関する監査人の作業内容及び範囲に関する留意事項」を公表した。 これは、「監査基準の改訂に関する意見書」(2020年11月6日)で明確にされた「その他の記載内容」に対する監査人の作業内容及び「その他の記載内容」の範囲に関する論点について、会員の実務の参考に資するためのものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 概要 「その他の記載内容」とは、監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容をいう。 「監査基準の改訂に関する意見書」(2020年11月6日)を受けて、2021年1月14日に、監査基準委員会報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」(以下「監基報720」という)及び関連する他の監査基準委員会報告書の改正が行われている。 「その他の記載内容」を通読し、その他の記載内容と監査人が監査の過程で得た知識の間に重要な相違があるかどうかを検討する等、新たに改正後の監基報720 において求められる「その他の記載内容」への対応は法定監査又は任意監査にかかわらず求められており、監査人はそれぞれの監査業務における「その他の記載内容」の範囲、また「その他の記載内容」に対して監査人に求められる作業内容等を正しく理解した上で業務を実施する必要がある。 2 基本的な考え方 監基報720では、監査人はその他の記載内容を通読し、また、その通読の過程において、次のことを行わなければならないとされている(監基報720第13項)。 監査人は、監基報720 第13項に従ってその他の記載内容を通読する過程において、財務諸表又は監査人が監査の過程で得た知識に関連しないその他の記載内容について、重要な誤りがあると思われる兆候に注意を払わなければならない(監基報720第14項)。 監基報720 は、監査人の責任について、次のように規定している。 したがって、その他の記載内容を通読し、財務諸表や監査人が監査の過程で得た知識とそれぞれ相違があるかどうかの検討等を実施する際には、監査人は、保証業務や監査ではないということを認識した上で、作業の種類や範囲を決定するものと考えられるとのことである。 3 その他の記載内容と財務諸表の間に重要な相違があるかどうかの検討 その他の記載内容には、財務諸表の数値又は数値以外の項目と同一の情報、要約した情報又はより詳細な情報を提供することを意図した情報が含まれる場合があり、これらについて財務諸表との間に重要な相違があるかどうかを検討することになる(監基報720のA25項)。 次のことに留意する。 なお、具体的なイメージとして「検討の対象となる箇所(例示)」や「主な手続」が記載されている。 4 その他の記載内容と監査人が監査の過程で得た知識の間に重要な相違があるかどうかの検討 検討の際に、監査人は、その他の記載内容の誤りが重要な誤りとなり得る項目に焦点を当てることがある(監基報720のA33項)。 監査人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうかを検討する対象や実施する手続の種類及び範囲については、その他の記載内容に対する監査人の責任も考慮の上、職業的専門家として判断して決定するものと考えられるとのことである。 なお、具体的なイメージとして「手続の例」が記載されている 5 財務諸表又は監査人が監査の過程で得た知識に関連しないその他の記載内容について、重要な誤りがあると思われる兆候への注意 その他の記載内容には、財務諸表に関連しておらず、また、監査人が監査の過程で得た知識の範囲を超える事項に関する記述が含まれることがある。 これらの財務諸表又は監査の過程で得た知識に関連しないその他の記載内容については、監査人は一般的な知識との相違やその他の記載内容における不整合などに注意しながら、重要な誤りの兆候に注意を払うことになると考えられる(監基報720のA38項)。 次のことに留意する。 監基報720のA37項では、財務諸表や監査の過程で得た知識の範囲を超える情報として温室効果ガスの排出に関する記述が例示されている。 6 「その他の記載内容」の範囲 統合報告書等、英文アニュアルレポート等における取扱いについて、詳細に記載されている。 (了)

#No. 440(掲載号)
#阿部 光成
2021/10/14

《速報解説》 国税庁、「特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例(措法28)」の適用について会計検査院の改善要求受け様式新設等を対応

《速報解説》 国税庁、「特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例(措法28)」の適用について 会計検査院の改善要求受け様式新設等を対応   Profession Journal編集部   所得税法では共済契約に係る掛金の経費計上は認められていないが、「特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例」(措法28)では同条1項2号において、独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済法の規定による中小企業倒産防止共済事業に係る基金に充てるための同法第2条第2項に規定する共済契約に係る掛金については、必要経費への算入が認められている。 このたび会計検査院法第36条の規定に基づき、この特例措置(以下、倒産防止共済特例)の適用に関して会計検査院から国税庁長官に対し、改善の処置が要求された。 今回、倒産防止共済特例について会計検査院が指摘したのは次の2点。 1点目が、倒産防止共済特例を適用する際には、所得税の確定申告において、必要事項を記入した明細書の添付が必要となるが(措法28②)、その様式は定められておらず、確定申告書及びその添付書類において、①倒産防止共済特例に係る基金への拠出の事実が客観的に分かる記載、及び、②倒産防止共済特例に係る基金への負担金の額が他の必要経費科目に係る金額と明確に区分できる記載がある場合に、明細書の添付と同様の適用の意思表示に必要な記載があるものとし、これを適用の意思表示として認めていた。 (注) 中小企業基盤整備機構では以前よりホームページ上で、明細書の様式例が紹介されていた。 ただし、国税庁は、このような意思表示に係る考え方について納税者に周知するなどの措置をとっておらず、会計検査院が調査したところ、特例適用の旨の記載はあるが特例適用額の記載がなかったり、いずれの記載も確認できなかったりしていて、適用の意思表示が明確でないのに倒産防止共済特例を適用していると思料されるものが、調査対象1,567者(掛金納付額計12億7,414万余円)のうち906者(同計5億9,457万余円)に見受けられたとした。 なお、「特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例」は法人税においても規定されているが(措法66の11)、こちらは明細書の様式が定められている(法人税申告書別表10(7)のⅢ)。 この指摘を受け、国税庁は本年6月29日付け「「『個人課税事務提要(様式編Ⅰ)』の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)」(課個4-33他)において、「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」を新設した。 2点目の指摘が、この共済契約を解約した際の税務処理について。倒産防止共済特例を適用した場合、解約により支給される解約手当金(返戻金)の額を総収入金額に算入(収入計上)することとされているが、国税庁は納税者に対し具体的に周知していなかったと指摘。調査対象者464者(返戻金額計12億1,840万余円)のうち40.7%である189者(同計3億2,640万余円)について、税務署に確定申告書等が提出されていなかったり、確定申告書等において返戻金額の収入計上が確認できなかったりしていて、相当数の任意解約者の返戻金額の収入計上が適切に行われていないなどの疑義が認められるとした。 また、国税庁による書面審査の状況についても、税務署の書面審査の際に必要となる情報を入手するための資料情報制度を活用した資料の収集等の検討を行うなど、返戻金額の収入計上に係る審査体制を整備していなかったことから、税務署は、納税者が共済契約の解約者であることなどを判断するために必要となる情報を利用することができず、返戻金額の収入計上に係る審査を適切に行うことができない状況となっていたとした。 合わせて下記の事例が示されている。 この指摘に対し国税庁は、上記新様式の記載要領において「なお、解約返戻金の支払を受けた場合は、事業所得に係る総収入金額に算入する必要があります。」と記載するなど周知を図っているが、会計検査院からは下記の改善処置が要求されている。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 440(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/10/14

プロフェッションジャーナル No.440が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年10月14日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.440を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/10/14

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第100回】「節税義務が争点とされた事例(その3)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第100回】 「節税義務が争点とされた事例(その3)」   中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦   遺産分割協議の成立に伴う相続税の修正申告を受任した税理士には、その事務処理に当たり延納許可申請手続をすることに関し、依頼者に納付についての指導・助言をする付随的義務があり、かかる義務の履行を怠った点に債務不履行があったと認めることができるとして、当該税理士に損害賠償義務があるとされた事例に東京高裁平成7年6月19日判決(判時1540号48頁)がある(※)。 (※) この事例を扱った論稿として、酒井克彦・税務弘報54巻1号105頁(2006)参照。 今回は、この事例を検討することとしよう。   Ⅰ 事案の概要 Xら(原告・控訴人)は、税理士であるY(被告・被控訴人)にXらの相続税修正申告に関する手続を委任したところ、Yは修正申告書を提出したのみで、かかる相続税の納期限までに、又は納付すべき日になすべきであった相続税延納許可申請を行わなかった。相続税を一括納付することができないXらは納付を延滞せざるを得ないこととなり、延滞税が発生することとなった。 本件は、Xらが、かかる延滞税額と延納許可を受けていれば負担することとなったであろう利子税額との差額相当の財産上の損害及び精神的苦痛を被ったと主張して、Yを相手取り、債務不履行に基づく損害賠償を求めた事案である。 なお、上記の相続税修正申告書の提出に先立ち、Xらから、委任事項を〈1〉亡Aの相続財産について所轄税務署長に対し相続税の修正申告をし、また当該申告に関わる税務調査に対して立会説明をすること、〈2〉上記の行為に付随する税理士法2条《税理士の業務》の一切の税理士業務を行うことの2点とする、「乙野会計事務所 公認会計士・税理士Y(被告)、公認会計士・税理士B」宛の各Xが作成した委任状がある。 原審横浜地裁平成6年7月15日判決(判タ904号145頁)は、「具体的な委任契約が如何なる範囲の業務を目的として締結されたかどうかの判断は、委任状表示の委任事項の記載及び委任に至る経緯等から、当事者の意思を合理的に解釈してこれを決すべきである。」と示した上で、「XらとYとの間に締結された委任契約は、前記委任状に明記されたとおり、『相続税修正申告、税務調査の立会、説明及びこれらに付随する税理士業務』であり、Xらの相続税延納許可申請をすることを含まないことが明らかである(相続税延納許可申請は、『相続税修正申告』に付随する税理士業務であるともいえない。)。」として、Xらの主張を排斥した。 すなわち、横浜地裁は、Yは「『相続税修正申告、税務調査の立会、説明及びこれらに付随する税理士業務』の委任の本旨に従って、委任された事務を適正に処理したものというべきであり、この点に債務不履行があったとはいえない。」としたのである。 これを不服として、Xらが控訴した。   Ⅱ 争点 XらとYとの間で、亡Aの遺産相続に伴うXらの相続税修正申告に関する一切の手続をYに委任する旨の契約が成立したか否か、及びかかる委任の範囲には、Xらの相続税の延納許可申請をすることも含まれていたか否か。   Ⅲ 判決の要旨 東京高裁は、税理士法1条《税理士の使命》を示し、税理士には法令の許容する範囲内で依頼者の利益を図る義務があるとする。 その上で、納付の時期及び方法についても依頼者へ周知する必要があるとする。 そして、本件においては税額が多額であることから、延納の許可の有無によって附帯税の負担も大きく異なると指摘する。 また、Xらの置かれていた状況についても次のように認定している。 そして、上記のような事情から、Yには、「単なるサービス」とは異なり、Xらが相続税を納付可能であるか等を確認する義務があったとし、かかる義務の履行を怠ったものとして債務不履行を認めている。 なお、東京高裁は、税理士法2条について、税理士の負うべき義務の範囲を限定するものではないとも説示している。   Ⅳ コメント 東京高裁は、税理士は税務の専門家であることを理由として、「税務に関する法令、実務の専門知識を駆使して、依頼者の要望に適切に応ずべき義務」があるとしている。税務の専門家であることが、なぜに「依頼者の要望に適切に応ずべき義務」につながるのであろうか。 この点につき、同高裁は、「善良な管理者として依頼者の利益に配慮する義務」が民法644条を根拠として導き出せるとの立場を採用している。 そのような理解の上で、税理士には、❶税理士法上の義務として、法令に適合した適切な申告をすべき義務と、❷法令の許容する範囲内で依頼者の利益を図る義務の2つの義務があるとするのである。 ここで、「税理士法上の義務」たるものが、❶の義務についてのみ生じるのか、あるいは❷の義務についても生じるのかについては議論の余地があろう。上記のとおり、❷の義務については、民法644条を根拠としていることからすれば、税理士法上の義務は❶の義務についてのみ論じられているようにも思われる。 そこで、❷の義務について考えるに、東京高裁は、本件においては、Xらが租税の申告(税額の確定作業)に伴い租税の納付が必要となる上、高額な延滞税負担を招来することになることから、YはXらに対して納付に関する周知をした上で、「延納許可申請の手続をするかどうかについてXらの意思を確認する義務」があるとしている。 この延納許可申請手続に関する納税者の意思確認義務は、上記❷の義務を根拠としたものであるが、❷の義務が民法644条を根拠としたものである点に鑑みれば、果たして、納税者と税理士との間に締結された委任契約における「委任の本旨」が奈辺にあったのかという点に関心を寄せるべきことになるように思われる。 もっとも、そもそも、延納許可申請手続に関する納税者の意思確認義務が確定申告書の作成提出に付随的に行われるべき業務であると認定されるのであれば、かかる確認作業は、「委任の本旨」たる確定申告書の作成提出に包摂されることにもなろう。 東京高裁は、そのような立場に立っていると思われる。けだし、同高裁は、「このような納付についての指導、助言を行うことは、本件の事情のもとにおいては、単なるサービスというものではなく、相続税の確定申告に伴う付随的義務であり、この懈怠については債務不履行責任を負うものと解するのが相当である」と論じるからである。 すなわち、Xらの主張を排斥した原審横浜地裁は、あくまでも委任の本旨を、委任状に明記されたとおり「相続税修正申告、税務調査の立会、説明及びこれらに付随する税理士業務」であると解し、かつ、「相続税延納許可申請は、『相続税修正申告』に付随する税理士業務であるともいえない。」としていたところであるが、この点において、控訴審東京高裁とは立場が異なるのである。 *なお、東京高裁も、あくまでも「委任契約の内容は、委任状の委任事項のとおり、相続税の修正申告及びこれに関する税務調査に立ち会い説明することということになる。」としており、この点の理解は地裁と高裁で同様のものと見受けられる。 (了)

#No. 440(掲載号)
#酒井 克彦
2021/10/14

〔疑問点を紐解く〕インボイス制度Q&A 【第7回】「適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する際の注意点」

〔疑問点を紐解く〕 インボイス制度Q&A 【第7回】 「適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する際の注意点」   税理士 石川 幸恵   【Q】 適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する際の注意点を教えてください。 〔ポイント〕 (1) インボイス制度のスタートは、令和5年10月1日ですが、適格請求書発行事業者の登録申請書は令和3年10月1日以降、提出が可能です。 (2) 書面又はe-Taxによる提出が可能です。 (3) 書面の郵送による提出先が所轄税務署ではなく、「インボイス登録センター」であるなど注意点があります。 *  *  * 【A】 (1) 申請書の提出時期 適格請求書発行事業者の登録申請書は、令和3年10月1日以降、提出が可能です。   (2) 申請書の提出方法 書面による提出のほか、e-Taxを利用した提出も可能です。   (3) 書面による提出の注意点 ① 郵送する場合の郵送先 各国税局(沖縄国税事務所を含みます)のインボイス登録センターに郵送します。 〈各局(所)インボイス登録センターの管轄地域〉 (出典) 国税庁「郵送による提出先のご案内」 所轄の国税局がわからなくても、納税地の所在する県によって、いずれのセンターに郵送すればよいか、わかるようになっています。 インボイス登録センターでは、持参による提出、電話や対面による個別相談は受け付けていません。 ② 持参する場合や、提出に先立って個別に相談したい場合は? 持参する場合は、所轄税務署の窓口及び時間外収受箱へ提出できますが、ホームページでは、郵送により、インボイス登録センターに提出することへの協力が呼びかけられています。 税務署で個別に相談した上で記載して提出したい場合には、所轄の税務署に電話して、予め相談日時等を予約してください。 ③ 個人事業者は本人確認書類の提示又は写しの添付が必要 個人事業者は、個人番号を記載しますので、持参の場合は本人確認書類の提示、郵送の場合は本人確認書類の写しの添付が必要です。 〈本人確認書類〉   (4) e-Taxを利用して提出する場合の注意点 国税庁の「インボイス制度特設サイト」には、e-Taxによる申請書の提出について、詳細なマニュアルが用意されています。 なお、以下の事前準備が必要です。 利用者識別番号については、税理士と顧問契約をしている事業者の方は、自ら利用者識別番号を取得する前に、取得済みの利用者識別番号がないか顧問税理士にご確認ください。新たに利用者識別番号を取得すると、従来利用していた利用者識別番号に係る情報を確認することができなくなります。   (5) 書面による提出とe-Taxによる提出の比較 登録申請書を提出してから登録の通知を受けるまでの期間に差があります。本稿執筆時点ではあくまで見込みですが、書面で提出された登録申請書については1ヶ月程度、e-Taxで提出された登録申請書については2週間程度とされています(インボイスQ&A問4)。 (了)

#No. 440(掲載号)
#石川 幸恵
2021/10/14

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第7回】「小規模宅地等の特例の選択替え等の可否」

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第7回】 「小規模宅地等の特例の選択替え等の可否」   税理士 柴田 健次   [Q] 小規模宅地等の特例の適用について、それぞれ次の場合には、選択替え等は認められることになりますか。 [A] 小規模宅地等の特例(以下、単に「特例」という)は、特例対象宅地等の中から納税者が選択することになりますが、申告後に当初の選択を変更すること(以下、単に「選択替え」という)は、原則として認められていません。 ①については選択替えが認められませんが、②については当初申告が不適法に行われていますので、修正申告事由に該当し、修正申告による選択替えを行うことができます。 また、③の場合は、特例の場所の変更ではなく、面積の変更となり、選択替えではありませんが、面積の変更が「やむを得ない事情」に該当すれば、面積を変更して更正の請求を行うことができると考えられます。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 適法の選択からの選択替え 下記の国税通則法23条1項1号に該当するか否かを検討することになりますが、計算に誤りがあったことにはなりませんので、本問の場合には、更正の請求事由に該当しないため、更正の請求はできません。 国税通則法 第23条 (※) 本稿で引用している条文等につき、一部括弧書等を省略している。以下同様。 平成5年12月13日(TAINSコード:J46-1-01)の裁決事例においては、国税不服審判所は、相続税の申告期限内に特例を適法に選択した後の選択替えの更正の請求の可否について、下記の通り、判断しています。   2 不適法の選択からの選択替え 本問の当初申告においては、特例の要件を満たさないため、特例の減額は認められないことになります。したがって、納付すべき税額に不足額があるときに該当し、下記の国税通則法19条1項の修正申告事由に該当しますので、更正があるまでは、修正申告を行うことができます。 国税通則法 第19条 特例は、期限後申告や修正申告の場合にも認められています(措法69の4⑦)ので、修正申告書の提出において、限度面積内で特例対象宅地等を選択して修正申告をすることが可能となります。この考え方については、【第6回】の「限度面積を超えた場合の小規模宅地等の特例の適用の適否」で解説した修正申告と同様になります。   3 申告後に地積が変更になったことによる適用面積の変更 特例は、相続税の申告書(期限後申告書及び修正申告書を含む)に特例の適用を受けようとする旨を記載し、小規模宅地等に係る相続税の課税価格に算入すべき価額の計算に関する明細書(以下、単に「課税価格の計算明細書」という)その他の書類を添付した場合に限り、適用するとされています。 なお、税務署⻑は、相続税の申告書の提出がなかった場合又は特例の適用を受けようとする旨の記載がなかった場合若しくは課税価格の計算明細書その他の書類の添付がなかった場合においても、その提出又は記載若しくは添付がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、必要な追加資料の提出があった場合に限り、特例の適用ができるとされています(措法69の4⑦⑧、措規23の2⑧)。 本問の場合には、正しい面積を記載した課税価格の計算明細書の提出がなかった場合に該当しますので、やむを得ない事情があり、かつ、適切な課税価格の計算明細書を提出すれば、特例は認められるべきであると考えられます。やむを得ない事情に該当するかどうかについての判断ですが、当初申告時においては、実測をしておらず、納税者が確認できる地積が登記上の面積のみであり、申告後にはじめて実測を行い、地積が増減したことを認識しているため、後発的事由としてやむを得ない事情に該当すると判断できます。したがって、土地の地積を変更し、小規模宅地等の特例として特定居住用宅地等(313.5㎡)、貸付事業用宅地等(10㎡)を選択して特例を適用することができると考えられます。 なお、本問の場合には、税額が減少しているため、更正の請求となりますが、仮に税額が増加して修正申告であったとしても、特例の面積変更は同様に認められるべきと解釈するのが相当です。 特例の面積修正が認められた事例として、相続税の申告書を提出した後、選択適用した小規模宅地等の地積につき相違があったことを認識した場合、小規模宅地等の選択替えという場所の変更を行うものではないため、「やむを得ない事情」として、小規模宅地等の地積の変更を認めるのが相当であるとした平成14年11月19日の裁決事例(TAINSコード:F0-3-079)があります。   ★実務上のポイント★ 適法に特例を選択した場合には、原則として、選択替えによる更正の請求は認められませんので、選択の適用にあたっては、慎重に判断する必要があります。   (了)

#No. 440(掲載号)
#柴田 健次
2021/10/14

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第34回】「民事信託を活用した株式承継」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第34回】 「民事信託を活用した株式承継」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 西田 尚子   相談内容 私は、不動産賃貸業を行うX社の代表取締役のAです。X社の株式は私が100%保有しています。私には一人息子のBがおり、Bが後継者候補として1年前から会社に入っています。 X社の業績は、前期と今期はコロナの影響で一時的に下向きましたが、来期以降は売上の回復が見込まれています。X社の株価を算定したところ、保有する財産の評価額が下がっていることもあり今までにない低い価額となりました。来期以降は株価が上昇すると予測されるため、株価が低い今のうちにBに株式を贈与したいと考えています。 しかし、Bは若く経験が浅いため、会社の議決権を渡してしまうことには不安を感じています。また、できることならX社の株式はBの死後はBの子供、Bの子供の死後はBの孫といった具合に、私の直系の尊属に承継させたいと考えているのですが、何か良い方法はないでしょうか。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 具体的な信託契約の内容   [2] 信託関係図   [3] X社株式の取扱い (1) 株式の名義 信託契約によりX社株式はAからYに信託譲渡されますので、AとYはX社に対して名義変更手続きを行い、Yが株主になります。 (2) 議決権の行使 受託者であるYは、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有します。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることもできます(信託法26)。 信託財産である株式の議決権の行使は、株主であるYが行うことになりますが、信託契約において議決権行使の指図権者をAと定めることによって、Aの意思に基づき議決権行使を行うことが可能になります。 (3) 配当金の受領 X社はYに対して、配当の支払いを行います。信託財産と受託者の固有財産は分別管理する必要があるため、YはX社からの受取配当をY固有の銀行口座とは別の口座を設けて管理し、受益者であるBに分配します。   [4] 信託の税務上の取扱い (1) 信託設定時 信託(退職年金の支給を目的とする信託その他一定の信託を除きます)の効力が生じた場合において、適正な対価を負担せずにその信託の受益者等(受益者としての権利を現に有する者及び特定委託者をいいます)となる者があるときは、その信託の効力が生じた時において、信託の受益者等となる者は、信託に関する権利を信託の委託者から贈与(その委託者の死亡に基因してその信託の効力が生じた場合には、遺贈)により取得したものとみなされます(相法9の2①)。 消費税法上は、信託行為に基づき信託の委託者から受託者へ信託する資産の移転は資産の譲渡等には該当しません(消基通4-2-1)。 本件では、信託契約において「委託者A≠受益者B」と定めるため、信託契約を締結したときに、受益者Bに対して贈与税が課税されます。 (2) 信託財産運用時 信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限ります)は、その信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、信託財産に帰せられる収益及び費用は受益者の収益及び費用とみなして、所得税又は法人税及び消費税が課税されます。ただし、集団投資信託、退職年金等信託又は法人課税信託の信託財産に属する資産及び負債並びにその信託財産に帰せられる収益及び費用については、この限りではありません(所法13、法法12、消法14)。 本件信託は、集団投資信託、退職年金等信託、法人課税信託のいずれにも該当しない受益者等課税信託になりますので、信託財産であるX社からの配当金については受益者であるB又はBの子孫の所得として所得税が課税されます。 (3) 信託終了時 受益者等の存する信託が終了した場合において、適正な対価を負担せずに信託の残余財産の給付を受けるべき、又は帰属すべき者となる者があるときは、給付を受けるべき、又は帰属すべき者となった時において、信託の残余財産(当該信託の終了の直前においてその者が当該信託の受益者等であった場合には、当該受益者等として有していた当該信託に関する権利に相当するものを除く)を信託の受益者等から贈与(当該受益者等の死亡に基因して当該信託が終了した場合には、遺贈)により取得したものとみなします(相法9の2④)。 消費税法上は、信託の終了に伴う受託者から受益者又は委託者への残余財産の給付としての移転は資産の譲渡等には該当しません(消基通4-2-1)。 本件では、受益権に信託終了時の残余財産の受給権が含まれますので、受益者が残余財産を受け取る場合には課税関係は発生しません。しかし、受益者に相続が発生したことにより信託が終了する場合において、帰属権利者が残余財産を受け取る際には、帰属権利者は信託の終了直前の受益者から、残余財産を遺贈により取得したものとして相続税が課税されます。   [5] 受益者連続型信託 (1) 受益者連続型信託とは 受益者の死亡等により、その受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡等により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含みます)のある信託をいい、信託設定時から30年を経過したとき以降に新たに受益権を取得した受益者が死亡するまで、又は信託が消滅するまで効力を有します(信託法91)。 (2) 課税関係 第二受益者以降は、新たに受益者になった時に信託に関する権利を直前の受益者から贈与又は遺贈により取得したものとみなされます。 本件では、Bの死亡により受益権がBの子供に引き継がれた時には、Bの子供は信託財産であるX社株式をBから遺贈により取得したものとみなされ、相続税が課税されます。 (3) 受益者連続型信託のメリット 受益者連続型信託のメリットは、主に次の3つとなります。   [6] 結論 ご質問の場合、株価が低いうちにX社の株式をAからBに贈与する一方で、Bが後継者として成長するまでは、Aが議決権を支配しておき、B以降の後継者もAが予め定めておくという目的を叶えるために、Aを委託者、Yを受託者、Bを第一受益者、Bの子供を第二受益者、Bの孫を第三受益者とする受益者連続型信託契約を締結し、信託契約においてX社の議決権行使の指図権者をAとする旨を定めておくことが有用です。 議決権行使の指図権の承継は、AがBに経営を安心して任せられることになるタイミングで、信託契約を変更して、Bを指図権者とすることにより可能となります。 受託者を一般社団法人Yとしているのは、受託者が個人の場合には、個人の死亡等により受託者の変更が必要になりますが、法人であれば、信託の終了まで継続して管理を任せることができるためです。受益者連続型信託の場合、信託期間が長期にわたることが考えられるため、受託者を持分のない一般社団法人にしておけば安心です。また、一般社団法人の理事を親族にすることによって、信託財産の管理・運営・処分を親族の合意で決めることができます。ただし、一般社団法人の設立・運営のための管理コストが発生しますのでご留意ください。 信託契約作成の際には、信託法に準拠しているか、みなし受益者に該当する者がいないか、法人課税信託に該当しない設計となっているか、遺留分の問題は考慮されているか、など注意を要する点が多々ありますので、具体的な対策については、弁護士や税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。   (了)

#No. 440(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2021/10/14

金融・投資商品の税務Q&A 【Q68】「株価指数先物取引を行った場合の課税関係」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q68】 「株価指数先物取引を行った場合の課税関係」   PwC税理士法人 金融部 ディレクター 税理士 西川 真由美   ●○ 検 討 ○● 1 株価指数先物取引の課税上の取扱い (1) 申告分離課税の対象となる先物取引 一定の先物取引について決済したこと(差金等決済)による所得は、他の所得と区分し、先物取引による事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額(以下、「先物取引に係る雑所得等の金額」)として、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率にて課税されます。 この申告分離課税の対象となる先物取引とは、商品先物取引等、金融商品先物取引等及びカバードワラント取引をいいます。株価指数などの有価証券指数を利用した有価証券の先物取引として、TOPIX先物や日経225先物は、有価証券株価等先物取引(※)として、金融商品先物取引等に含まれます。 (※) 有価証券市場において、有価証券市場を開設する者の定める基準及び方法に従い、当事者があらかじめ有価証券指数(株券その他一定の有価証券について、その種類に応じて多数の銘柄の価格の水準を総合的に表した株価指数その他の指数で有価証券市場を開設する者の指定するもの)として約定する数値(約定指数)又は有価証券(株券その他一定の有価証券のうち有価証券市場を開設する者の指定するもの)の価格として約定する数値(約定数値)と将来の一定の時期における現実の当該有価証券指数の数値(現実指数)又は現実の当該有価証券の価格の数値(現実数値)の差に基づいて算出される金銭の授受を約する取引をいいます。 また、先物取引に係る雑所得等の金額について確定申告書を提出する場合には、その金額に関する計算明細書(先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書)を添付することとされています。 (2) 他の所得との損益通算不可 先物取引に係る雑所得等に該当する投資について損失が生じた場合、先物取引に係る雑所得等の金額の範囲内で損益通算することができます。ただし、その損益通算後に、なお損失の金額が生じる場合には、原則として、当該損失の金額は生じなかったものとみなされますので、他の種類の所得との損益通算は認められません。 (3) 損失の繰越控除 先物取引に係る雑所得等の金額の計算上、損失の金額が生じる場合には、他の所得との損益通算は認められませんが、確定申告書の提出を要件として、その年の前年以前3年内の各年において生じた先物取引の差金等決済に係る損失の金額は、当該年分の先物取引に係る雑所得等の金額の計算上控除する特例が認められています(損失の繰越控除)。 この特例を適用するためには、損失の金額が生じた年分について、損失の金額の計算に関する明細書(平成・令和 年分の所得税及び復興特別所得税の申告書付表(先物取引に係る繰越損失用))を添付した確定申告書を提出し、その後において、連続して確定申告書を提出し、さらに、この特例を受ける年分の確定申告書にこの繰越控除を受ける金額の計算に関する明細書(様式は上記と同じ)を添付することが必要です。   2 本件へのあてはめ 日経225miniに係る先物取引は、有価証券株価等先物取引に該当するため、その先物取引の決済から生じた所得は、先物取引に係る雑所得等の金額として申告分離課税の対象となります。したがって、他の所得と区分して、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率にて課税されることとなります。 また、損失が生じた場合には、先物取引に係る雑所得等のなかで損益通算が認められるのみで、他の種類の所得と通算することはできませんが、先物取引に係る雑所得等の金額の範囲内で3年間にわたって繰越控除することが認められます。繰越控除の適用を受けるためには、損失の金額の計算に関する明細書を添付してその損失が生じた年分の確定申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出し、さらに、繰越控除を受ける年分の確定申告書に、繰越控除金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。 (了)

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#西川 真由美
2021/10/14
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