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居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第50回】「「自己の居住用財産の特別控除の特例(措法35②)」との適用関係」-居住用財産の譲渡損失特例と他の特例との重複適用関係-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第50回】 「「自己の居住用財産の特別控除の特例(措法35②)」との適用関係」 -居住用財産の譲渡損失特例と他の特例との重複適用関係-   税理士 大久保 昭佳   Q 次の場合、本年分の確定申告にあたって、Xは「自己の居住用財産の特別控除の特例(措法35②)」の適用は可能でしょうか。 ■Xの前々年分及び前年分の措法41の5に係る確定申告状況は、本年分における措法35②の重複適用排除規定に該当するか? A 本年分の確定申告において、「自己の居住用財産の特別控除(措法35②)」の特例の適用を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 「自己の居住用財産の特別控除の特例(措法35②)」は、前年又は前々年において既に同法同項のほか、次の特例を受けている場合には適用を受けることができません。 そして、「居住用財産買換の譲渡損失特例」に係る繰越控除の特例は、損益通算の特例の適用を受けた年について期限内申告書を提出した場合であって、その後において連続して確定申告書を提出し、かつ、繰越控除の特例の適用を受ける年において通算後譲渡損失の金額及びその金額の計算の基礎その他参考となるべき事項を記載した明細書並びに取得をした買換資産に係る繰越控除の特例を受ける年の12月31日における住宅借入金等の残高証明書の添付がある場合に適用するとされています(措法41の5⑤、措規18の25②)。 したがって、本事例の場合、Xは前々年も前年も合計所得金額が3,000万円を超過していることから、「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受けておらず(措法41の5④ただし書)、本年分の確定申告については、「自己の居住用財産の特別控除」の特例を受けることができることとなります。 (了)

#No. 440(掲載号)
#大久保 昭佳
2021/10/14

〔顧問先を税務トラブルから救う〕不服申立ての実務 【第6回】「再調査の請求と審査請求の「件数」と「認容割合」の実際」

〔顧問先を税務トラブルから救う〕 不服申立ての実務 【第6回】 「再調査の請求と審査請求の「件数」と「認容割合」の実際」   公認会計士・税理士 大橋 誠一   1 令和2年度の統計情報 (1) 統計情報は毎年6月に公表される 2021年6月23日、国税庁は、令和2年度(会計年度)における「再調査の請求」「審査請求」「訴訟」の概要をそれぞれ公表した。 本稿では、このうち、再調査審理庁(原処分庁)が審理する「再調査の請求」と国税不服審判所が審理する「審査請求」という行政判断に属する二者の審理機関が行った原処分の取消し状況について解説する。 (2) 再調査の請求 ① 発生状況 (※) 国税庁「令和2年度における再調査の請求の概要」より抜粋。 平成28年度以降の申立件数が減少しているのは、従前は青色申告書に係る更正等以外の処分については必ず異議申立て(現在の再調査の請求)を経なければ審査請求を行うことができなかったが、平成28年4月1日以後の処分については、納税者の選択により、再調査の請求を経ずに直接審査請求できるように国税通則法が改正され、そのようにした納税者が多くなった(令和2年度の直接審査請求割合は71.5%)からである。 令和元年度及び令和2年度の申立件数の減少は、新型コロナウイルス感染症の影響により、税務調査件数の減少に伴う不利益処分数の減少が影響しているものと考えられる。 ② 処理状況 (※) 国税庁「令和2年度における再調査の請求の概要」より抜粋。 認容割合(処分の全部又は一部が取り消された割合)は10.0%であり、例年10%前後の数値を示している。 国税庁の業績目標である標準審理期間の3ヶ月以内処理件数割合は99.9%と急上昇しているが、令和2年度は災害等による調査の中断や納税者の都合によって3ヶ月以内に処理できなかった事案を除外して算出しており、当該影響を含めた割合は87.9%であったことから、やはり新型コロナウイルス感染症の影響はあったとみられる。 (3) 審査請求 ① 発生状況 (※) 国税庁「令和2年度における審査請求の概要」より抜粋。 平成28年度以降の請求件数が増加しているのは、前述の直接審査請求の増加による請求時期の前倒しの影響とみられる。 令和元年度及び令和2年度の申立件数の減少は、新型コロナウイルス感染症の影響により、税務調査件数の減少に伴う不利益処分数の減少が影響しているものと考えられる。 ② 処理状況 (※) 国税庁「令和2年度における審査請求の概要」より抜粋。 認容割合(処分の全部又は一部が取り消された割合)は10.0%であり、例年10%前後の数値を示している。 国税庁の業績目標である標準審理期間の1年以内処理件数割合は83.5%と急減しているが、3名の審判官の合議によって審理する国税不服審判所の性格から、新型コロナウイルス感染症の蔓延防止に対応した審理態勢の構築に一定の時間を要した影響とみられる。   2 不服申立て件数に係る誤解 (1) 納税者ベースではなく処分件数ベース 上記1の統計情報を見ると以下のように理解されるかもしれないが、それは誤りである。 理由は、上記の各件数は「納税者ベース」ではなく「処分件数ベース」だからである。 (2) 不利益処分の単位と実際の事件数 ① 法人税の例 法人税や個人事業者の事業所得の税務調査は、1回に数年度(例えば3事業年度)分を対象に行われることが通常であり、たとえ同じ論点に係る否認であっても、年度が異なれば各年度を単位として3件の更正処分が行われる(更正通知書も別々に起案される)。 ② 相続税の例 我が国の相続税は法定相続分課税方式を採用しており、課税価格が増加した相続人が1人のみであっても、超過累進税率の適用によって他の相続人(例えば4人)の相続税額まで反射的に増加する仕組みとなっている。 このうち、課税価格が増加した相続人のみならず、他の相続人4人も含めて不服申立てすれば、1人の被相続人に係る相続税申告であっても、件数のカウントは5件となる。 ちなみに、上記のようなケースでは、通常は総代を選任して「総代Aほか4名」というようにまとめて審理されることになり、再調査決定書又は裁決書も1通のみ発出されることになる。 ③ 本税に付随する税目 平成25年度から、東日本大震災の復興財源に充てるための「復興特別所得税」「復興特別法人税」が創設された。 このうち、復興特別所得税は令和19年度まで継続される一方、復興特別法人税は2年間で廃止されたが、法人税の一部を切り出す形によって「地方法人税」が創設された。 また、消費税は、平成9年度の税率引上げ時から、その一部を切り出す形によって「地方消費税」が創設された。 これら「復興・・・税」・「地方・・・税」は、本税の税額が確定されると自動的に算出される性質があるものの、あくまで本税とは別の税目であり不利益処分も本税と区分してなされる。 ④ 附帯税 過少申告(無申告・不納付)加算税・重加算税の加算税についても、本税と区別して処分がなされる。 このうち、過少申告(無申告・不納付)加算税について本税と併せて不服申立てする場合には、加算税の取消しの可能性は原則として本税が取り消されるか否かに依存することから、本税に含めてカウントされる。 しかし、重加算税については、「隠ぺい又は仮装」といった他の加算税とは異なる課税要件があり、それによって「過少申告加算税を超える部分の重加算税の取消し」の可能性があることから、本税とは区別してカウントされる。 ⑤ 実際の事件数は公表ベースの数分の1 このように、再調査の請求における再調査決定書及び審査請求における裁決書の各発出件数は、統計情報として公表されている処分件数ベース(公表ベース)の数分の1程度であることが推察される。   3 認容割合は低いのか (1) 不服申立ては「同じ穴のムジナ」か 上記の1のとおり、再調査の請求も審査請求も認容割合は概ね「10%前後」であるが、この数値だけを捉えると、「ほとんど救済されていない(原処分を維持している)ではないか。やはり課税庁寄りで『同じ穴のムジナ』ではないか。」と思われるかもしれない。 しかし、実際に国税不服審判所を経験した者から見ると、「認容割合はもう少し高く顕れても良いのではないか?」とも感じる。 それは、実際に審理を進行しなければ「行司軍配をいずれに挙げられるかわからない」事案は、全体の数分の1くらいしかないというのが経験者の印象としてあるからである。 (2) 本当に勝負になる事案はどれくらいか 例えば、再調査の請求書や審査請求書の「請求の理由」を見ると、以下の内容で構成されているものが相応の割合で存在するが、このような原処分の当否(課税等要件)に直接関係の乏しい主張は、審理機関としても取扱いに難儀し、結果として満足な救済を受けられる可能性も低くなる。 審理機関としては、実質の審理次第で判断が分かれる可能性のある全体の数分の1の事案にエネルギーを集中させるのが人的資源の観点から適切であり、こういった事案のみを分母とすれば、実質的な認容割合は数倍に跳ね上がるが、統計情報としては「10%前後」という数値しか顕れない。 代理人を選任されていない(本人審査請求)が全体に占める割合も相応にあり、苦情処理機関であるとの誤解が多いのかもしれないが、「本当に勝負になる事案」はそれなりに取り消しているともいえる。 したがって、認容割合が10%(競争率10倍)だからといって、端はなから期待薄という先入観を持つ必要はないと思われる。 (了)

#No. 440(掲載号)
#大橋 誠一
2021/10/14

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第118回】OKK株式会社「特別調査委員会調査報告書(開示版)(2021年9月17日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第118回】 OKK株式会社 「特別調査委員会調査報告書(開示版)(2021年9月17日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【OKK株式会社特別調査委員会の概要】   【OKK株式会社の概要】 OKK株式会社(以下「OKK」と略称する)は、1915(大正4)年10月設立。2015(平成27)年10月に社名変更(旧社名は大阪機工株式会社)。工作機械の製造・販売を主たる事業とする。連結売上高12,083百万円、連結経常損失2,474百万円、従業員数758人(いずれも、2021年3月期実績)。東京証券取引所1部上場。本店所在地は兵庫県伊丹市。会計監査人は、EY新日本有限責任監査法人大阪事務所(以下「新日本監査法人」と略称する)。   【調査報告書の概要】 1 特別調査委員会設置の経緯 OKKは、会計監査人である新日本監査法人から、仕掛品残高の費用処理に関する問題点、具体的には、滞留仕掛品の売上原価による費用処理について、その適正性について検証が必要である旨の指摘を受け、調査を行った結果、仕掛品残高の確定につき、過去の会計処理に誤りがある可能性を確知し、2021年5月21日、会計監査人との協議の上、当該事実の解明については社内調査委員会による調査が必要であると判断し、速やかに専門性を有する有識者からなる社内調査委員会を設置して調査を行った。 しかし、社内調査委員会による調査(ヒアリング等)の過程で、当初誤りがある可能性が指摘されていた会計処理以外についても、誤った会計処理がなされていた可能性があること、これらの会計処理の誤りについて、2020年5月頃、代表取締役社長である浜辺義男氏(報告書上は「A氏」と表記。当時は代表取締役専務執行役員。以下「浜辺社長」と略称する)がその誤りを認識し得た可能性があるにもかかわらず、適時に適切な会計処理がされていなかったとの内部統制上の問題の有無について疑義が生じるに至ったことから、公正性を確保しつつ事実の解明を行うため、より客観性・独立性の高い社外の有識者からなる調査委員会による調査が必要であるとして、2021年6月24日、特別調査委員会を設置した。 2 不適切な会計処理の概要 特別調査委員会は、問題行為の概要は次のとおりとした。 特別調査委員会が認定した仕掛品残高の過大計上額は、2016年3月期の期首段階で969百万円。この残高が不適切なものであることを隠蔽する行為(不適切会計処理)を繰り返した結果、2021年3月期第3四半期末現在の過大計上額では805百万円であった。 3 原因に関する考察(調査報告書89ページ以下) 特別調査委員会は、OKKにおいて、不適切会計処理が続けられてきた原因として、次のようにまとめている。 ここでは、原因の1つとなっている基幹システムの移行時の問題点を取り上げておきたい。新システムへの見切り発車での移行、システム改修に否定的な経営陣の態度、業績低迷に伴う人員の削減・流出の影響もあり、場当たり的に不適切な会計処理を繰り返すという悪循環に陥っていたことが次のように分析されている。 4 再発防止策の提言(調査報告書100ページ以下) 上記の問題点を踏まえて、特別調査委員会は、再発防止策の提言を次のようにまとめている。 ここでは、特に内部監査部門に対する再発防止策の提言を見ておきたい。 OKKの有価証券報告書に記載されたコーポレート・ガバナンス「体制図」では、内部監査室(3名)は監査等委員会の直轄組織とされ、次のように説明されている。 また、内部監査室の他にも、内部監査を担当する部署として社長直轄の経営管理室(1名)及びコンプライアンス室(2名)があり、体制を見る限り、監視(モニタリング)機能を果たせるのではないかと思料するが、実際の内部監査部門の状況は、上記「3 原因に関する考察」の「(5) 内部監査部門の問題点」では、以下のように分析されていた。 そして、そうした状況を改善するための特別調査委員会の提言は主に次のとおりである。 特別調査委員会は、「内部監査室ないしそれに相当する組織について、その位置づけ及び権限を明確化しておく必要がある」と提言しているが、これは、内部監査室が、監査等委員会直轄である組織の位置づけに問題があるということを示唆しているのか、内部監査室、経営管理室及びコンプライアンス室といった組織それぞれの位置づけや権限が明確でないことを意図しているのか、提言からは読み取れなかった。   【調査報告書の特徴】 創業100年を超える老舗の工作機械メーカーOKK。かつては400億円を超える売上高があったものの、最近の売上高は200億円台で推移。一方、仕掛品残高は50億円を超える状態が続いていた。2016年6月にOKKの取締役監査等委員に就任した三浦善弘氏(報告書上の表記は「H氏」。以下「三浦監査等委員」と略称する)は、就任の際に「決算書を見て、異様に在庫が多いなという印象」を持ったということである。特別調査委員会は、調査の結果、公認会計士でもある三浦監査等委員に対して、「不適切な会計処理が行われていた等の疑義を持ち得る端緒はなかった」と結論づけている。 本件は、改めて基幹システムの移行の難しさと、システム移行の結果、誤ってしまった会計処理を正すことの難しさを教える事案であった。担当者にとっては、正しい仕掛品残高とするために経営陣を説得するよりは、データを偽装して会計監査人を欺き続ける方が、易しかったということなのかもしれない。 1 基幹システムの検証/改修に向けた動き 特別調査委員会の調査によれば、基幹システムであるG2については、システム移行後、三浦監査等委員は、G2システムの検証に関与した事実はあるものの、独立性の問題があることに加え、調査の入口の段階で根が深いことがわかり、三浦監査等委員のもとでのシステムの検証は継続されずに、OKKがその後別の外部専門家に依頼して、システム検証のプロジェクトが進められたことが認められ、三浦監査等委員自身も「システムについては、不具合が断続的に発生し、会社から依頼を受けて自分も会計士として協力することになったが、結論としては、出てきた数字を分析してもわからない、根本的にシステムを一から検証していかないとわからないということになり、当社が外部の専門家に依頼することになった。」と述べているということである。 その後、OKKでは、G2の導入以降、貸借対照表に計上されている棚卸資産(特に仕掛品)が増加しており、システムの不具合が疑われたことから、2017年夏ごろから外部専門家により分析が開始された。その結果システムの不具合ではなく、マスター設定の不備や人の手の運用が周知されていないことが原因として発注が過大となり結果的に仕掛品を増加したことが判明した。その後、マスターの整備を進め、人の手の運用方法を確立して周知することで、過大な発注は抑制されて仕掛品は減少した。 その後、原価計算担当者となった企画管理課課長らを中心に、システム改修の提案を行ったが、当時の管理本部長であった道岡常勤監査等委員から強い否定を受けて断念したことは、上記「3 原因に関する考察」の〈基幹システムの機能不全〉に記載のとおりである。 2 取締役の異動 OKKの取締役5名の選任議案は、特別調査委員会による調査が継続中の6月25日に開催された第163回定時株主総会で、原案どおり可決された(2021年6月25日「第163回定時株主総会決議ご通知」参照)ものの、調査の進行に伴い、異動の公表が行われることとなった。異動内容は以下の表のとおりである。 (※1) 2021年8月13日「代表取締役の異動に関するお知らせ」参照。 (※2) 2021年10月6日「代表取締役および取締役(社長交代を含む)の異動に関するお知らせ」参照。 まず、調査継続中の8月13日に、浜辺社長が代表権を返上し、取締役常務執行役員の森本佳秀氏(報告書上の表記は「J氏」)と取締役上席執行役員の足立圭介氏(報告書上の表記は「I氏」)の2人が、代表権を有するとする異動を公表した(2021年8月13日「代表取締役の異動に関するお知らせ」参照)。この異動の理由について、次のように説明されている(一部文章を省略し、文言を補っている)。 そして、調査結果に基づく有価証券報告書等の提出が完了した10月6日、OKKは、浜辺社長と道岡常勤監査等委員の退任とともに、11月10日開催予定の臨時株主総会の決議を経て、新たに選任される取締役及び取締役(常勤監査等委員)を公表した(2021年10月6日「代表取締役および取締役(社長交代を含む)の異動に関するお知らせ」参照)。 3 会計監査人の異動 特別調査委員会による調査中の8月13日、OKKは、48年間継続して会計監査を担当してきた新日本監査法人から、2020年9月17日に、次期以降の監査工数の増加見通しを考慮すると報酬希望額が増加していくこと等を理由に、2021年3月期有価証券報告書の監査業務終了の時をもって、会計監査人を退任する旨の正式な申し出を受けて同意し、2021年6月開催の第163回定時株主総会をもって任期満了により退任させる方向で検討するとともに、後任会計監査人の選任及びその開示の準備を進めていた(2021年8月13日「会計監査人の異動に関するお知らせ」参照)。 ところが、不適切な会計処理が発覚し、その調査のため、2021年3月期有価証券報告書の提出期限の延長申請を行ったことから、OKKは、第163回定時株主総会では後任会計監査人の選任を議案として提出せず、新日本監査法人には、2021年3月期有価証券報告書の会計監査業務の継続を依頼した。 有価証券報告書等の提出後、OKKは、株主総会決議までの間、会計監査人が不在となるため、一時会計監査人の選任が必要となり、10月6日に、監査法人やまぶきを一時会計監査人として選任したことをリリースした(2021年10月6日「一時会計監査人選任に関するお知らせ」参照)。 4 特別損失の計上 10月6日、OKKは、棚卸資産の残高確定の過程で不適切な会計処理が行われていたことが判明し、社内調査委員会、特別調査委員会による調査費用及び過年度決算の訂正に要する費用等が発生したことから、2022年3月期第2四半期において650百万円(概算額)を特別損失として計上する見込みとなったことを公表した(2021年10月6日「特別損失の計上見込みに関するお知らせ」参照)。 会計不正に係る調査費用及び過年度決算訂正費用などを公表する上場企業はあまり多くないのだが、OKKの会社規模に比して、この特別損失計上額はかなり多額である。特別調査委員会による調査期間が約3ヶ月、先行する社内調査委員会も約1ヶ月調査を行っていたため調査費用がかさんだこと、有価証券報告書に係る監査報告書がすべて限定付適正意見になったこと(2021年10月6日「有価証券報告書に係る監査報告書の限定付適正意見に関するお知らせ」参照)から、監査報酬の請求が多額であったことなどが理由ではないかと推察するが、特別損失の内訳については公表されていない。 いずれにしても、2021年3月期の業績が低迷しているOKKにとって、大きな負担となったであろうことは間違いない。 (了)

#No. 440(掲載号)
#米澤 勝
2021/10/14

ハラスメント発覚から紛争解決までの企業対応 【第19回】「セクハラと社内恋愛の見分け方」

ハラスメント発覚から紛争解決までの 企 業 対 応 【第19回】 「セクハラと社内恋愛の見分け方」   弁護士 柳田 忍   【Question】 当社の社員A(女性)から、「上司B(男性)から性交渉を強要されるなどのセクハラ被害を受けた」との申告がありました。 そこで、上司Bに対して事情聴取を行ったところ、上司Bから、「私と社員Aとは恋愛関係にあり、性交渉についても社員Aの同意があるから、セクハラではない」との反論がなされました。 上司Bから提示された社員Aから上司B宛てのメールには「Bさんのことが好きです」などと記載されていることから、上司Bが説明するとおり、社員Aと上司Bは恋愛関係にあり、セクハラではないのではないかと考えているのですが、そのような判断でよいでしょうか。 【Answer】 被害者から加害者に対する好意を表しているともとれる表現が見られるからといって、必ずしも両者が恋愛関係にあるとは限りません。周辺事情をも考慮した上で、当該表現がなされた真意について慎重に検討した上で、判断を下すべきであると思われます。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 1 総論 セクハラ事案の事実調査において、加害者が被害者への性的接触を認めた上で、「被害者とは社内恋愛関係にあるため、セクハラではない」との抗弁を持ち出してくることは少なくない。更に、被害者・加害者間でやりとりされたメール等において、被害者から加害者に対する好意を表しているともとれる表現が見られることも多く、セクハラなのか、社内恋愛に過ぎないのかの判断に迷ったことがある調査担当者は多いのではないかと思われる。 そこで、本稿においては、セクハラと社内恋愛との区別に際してポイントとなる点を解説する。 なお、女性から男性に対するセクハラや同性に対するセクハラも存在することから(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号)2(1))、社内恋愛の抗弁が問題となるのも、男性を加害者、女性を被害者とするセクハラ事案には限られないが、依然としてセクハラ事案の多くが加害者を男性とし、被害者を女性とするものであることから、本稿においても、男性が加害者、女性が被害者であるとの前提で論ずるものとする。   2 セクハラと社内恋愛の区別においてポイントとなる点 セクハラと社内恋愛の区別に際しては、以下のような事情に着目すべきである。 (1) 加害者・被害者間の年齢差が大きい場合や加害者に妻子がある場合 例えば、X社事件判決(東京地判平成24年6月13日(労経速2153号3頁))は、加害者に妻子があることなどから、被害者が加害者に対して好意を寄せるだけの理由は特に認められないと認定し、東京地判平成15年6月9日は、妻子ある加害者が女性部下である被害者に対して異性として好意を寄せていることを表現した内容の手紙を渡すことは、社会的に相当であると認められる限度を超えて、女性部下に対し異性として接するものであるとして、セクハラを認めている。 また、同東京地判平成15年6月9日は、加害者が被害者よりも約20歳も年上であることもセクハラを認める1つの理由としている。 年齢差や妻子の有無は常に社内恋愛の存在を否定するものではないが、まずは社内恋愛の存在を疑うポイントであると考えてよいであろう。 (2) 加害者が異性から好意を寄せられるタイプではないと思われる場合 前掲X社事件判決は、加害者が普段から性的な発言をしたり粗暴な言葉使いをしたりしている者であることからも、被害者が加害者に対して好意を寄せるだけの理由は特に認められないと認定している。異性に対する好みは様々ではあるが、加害者が周りから恋愛対象として見られるタイプではない場合には、社内恋愛ではない可能性を疑うべきであろう。 (3) 被害者から加害者に対して好意ともとれる表現がなされている場合 ① 被害者から加害者に対して好意ともとれる表現がなされる背景事情 上記のとおり、被害者・加害者間でやりとりされたメール等において、被害者から加害者に対する好意を表しているともとれる表現が見られることがあるが、そのような表現を額面通りに捉えて一足飛びに結論に至るべきではない。その理由は、前掲東京地判平成15年6月9日が以下のとおり述べるところである(下線は筆者による)。 よって、被害者から加害者に対する好意を表しているともとれる表現が見られる場合であっても、以下の点に注意して、その真意を慎重に検証しなければならない。 ② 被害者の真意を判断する際のポイント まず、被害者から加害者に対する好意を表しているともとれる表現が、異性としての好意からなされたものではなく、尊敬の念や同情等の感情からなされたに過ぎない場合があることに留意する必要がある。 例えば、東京地判平成27年6月26日(判時2278号129頁)は、被害者が加害者の頬にキスしたことについて、加害者が「精神的に不安定で酷く落ち込んでおり、憔悴した様子で、正常な精神状態ではないように見えたことから、慰めの意味で、ぎりぎりの好意として行ったものと認められるのであって、恋愛感情に基づくものとは認められない」と判断している(下線は筆者による)。 また、メール等においてハートマークが使われることもよくあるが、被害者が加害者に対してハートマークを付したメールを送信したことについて、かかる事実から加害者に対する恋愛感情を有していたことまで推認することができるものではなく、加害者がハートマークを使用したことに対応したものと見ることもできるし、そもそもメールを送信する際、単なる感情表現の手段としてハートマーク等の絵文字を用いることも通常あり得ることであるから、かかる事情をもって、性的行為の容認を含めた恋愛感情を抱いていたということはできない、と判断がなされた例がある(東京高判平成31年2月27日(判タ1466号67頁))。 他方で、京都地判平成25年1月29日(判時2194号131頁)は、被害者が、加害者との性交の直後に、性交を振り返って肯定的な感想を述べるメールを加害者に送信したことについて、性交を強要された者の行動として不自然であり、単に表面上の恋愛関係を装うものや、セクハラ加害者との関係を当面つなぎ止めておくためのものとは明らかに性格が異なるとして、被害者が加害者との性的関係について同意していたと認定するに至っている。同判決は、被害者が、通常の交際相手に対してするように、加害者の容姿や発言を茶化すようなメールを送信した事実についても、被害者の同意を肯定する根拠としている。 上記のとおり、被害者から加害者に対する好意を表しているともとれる表現が見られるのは、女性労働者が、管理職の男性等から必要以上に異性として扱われるなどしても、不本意ながらも、管理職にある男性等に迎合し、これらの言動を受忍してこざるを得なかったという背景事情があるためである。この点、「単に表面上の恋愛関係を装うメールや、加害者との関係を当面つなぎ止めておくためのメール」等の最低限の好意の表明であれば、加害者に対して不本意ながら迎合するものであると評価することができるため、必ずしも社内恋愛の存在を肯定する方向には働かない。 しかし、加害者との性交の直後に性交を振り返って肯定的な感想を述べるメールや、加害者の容姿や発言を茶化すようなメールについては、最低限の好意の表明の枠を超えていると見ることも可能である。前掲京都地判平成25年1月29日は、このような判断に基づき、セクハラの存在を否定したものと考えられる。   3 結語 上記のとおり、加害者側が社内恋愛の抗弁を持ち出すことは多いが、被害者側が、別れ話が拗れた腹いせ等により虚偽のセクハラ被害の申告を行うことも少なくない。調査担当者においては、これらの可能性を念頭において、慎重な対応を心がけるべきである。 (了)

#No. 440(掲載号)
#柳田 忍
2021/10/14

〔一問一答〕税理士業務に必要な契約の知識 【第22回】「法務と税務にまたがる契約の類型別ポイント」

〔一問一答〕 税理士業務に必要な契約の知識 【第22回】 「法務と税務にまたがる契約の類型別ポイント」   虎ノ門第一法律事務所 弁護士 高橋 弘行   〔質 問〕 契約において、法務、税務、それぞれにまたがる問題があると思いますが、それぞれの観点で問題が異なることがあるのでしょうか。また、契約書の表現によって、課税関係や法的効力に影響があるのでしょうか。 〔回 答〕 税務的には問題となるが法的な効力には影響のないもの等、税務と法務で効果が異なるものがあります。契約スキームの選択や契約書の表現が、課税関係及び法的効力にどのような影響を与えるかについて、「売買契約」「請負・委任」「消費貸借契約」の場合における具体例は以下のとおりです。 ◆◆◆◆ 解 説 ◆◆◆◆ 1 売買契約 ~土地建物の一括売買を行う際の代金表示について(消費税)~ (1) 設例 土地及びその土地上の建物を代金総額1億円で売買する際、契約書に以下の記載がある場合、どのような取扱いとなるか。なお、土地の時価は8,000万円、建物の時価は2,000万円とする。 (2) 税務の観点 消費税法上、土地の売買は非課税だが(消費税法6条、別表第一第1号)、建物の売買は課税対象となる取引である(消費税法4条1項)(ただし、売主が事業者でない場合は、建物の売買についても、消費税は課税されない)。 (3) 法的な観点 それでは、建物と土地の代金の内訳の記載がない場合、売買契約の法的効力になにか影響があるのであろうか。 この点について、法的には、合計金額やその支払方法等の契約の要素が定められていれば、代金の内訳記載がなくとも、法的効力には影響がない。 税務上、消費税の金額に争いが生じる契約であっても、法的な効力には影響がなく問題ない場合も多いのである。   2 請負・委任契約 ~請負と委任の区別(印紙税)~ (1) 設例 甲が経営する飲食業について、乙にコンサルティングを委託する際、契約書に以下の記載がある場合、どのように取り扱われるか。 (2) 税務の観点 請負契約書は、印紙税法別表第一「課税物件表」2号の文書に該当し、印紙税の課税対象となる。他方、委任契約書は印紙税の課税対象とはならない。 このように、請負と委任では、印紙税法上の取扱いが異なるが、実際の契約書では両者が混在して記載されている等、その区別が容易でない場合も多い。このような契約書は、請負に該当する文書と扱われ、課税対象とされる(印紙税法別表第一 課税物件表の適用に関する通則2)。 (3) 法的な観点 コンサルティング契約の法的性質としては、請負契約(民法632条)、委任契約(民法643条)、両者の混合契約等が考えられる。 請負と委任の違いは、仕事を完成させる義務があるか否かである。法的にどちらの規律が適用されるか否かは、業務の実態及び特定の業務の完成義務が明記されているか否か等による。 《ア》の場合、契約書において報告書の作成が明記されている。他の事情にもよるが、報告書を成果物として完成させることに意味のある契約であれば、請負契約に該当すると考えられる。 《イ》の場合では、報告方法が契約書において定められていない。口頭での助言のみが想定される等、特定の業務の完成義務を負わないものであれば、委任契約と認定されることになると考えられる。 法的には、業務の実態によっては、《ア》《イ》ともに請負と準委任の混合契約に該当するとされる可能性も考えられる。どちらの要素も含む場合には、混合契約として、その性質に応じて双方の規定が適用される。   3 消費貸借契約 ~債務承認弁済契約(印紙税)~ (1) 設例 甲が乙に1億円を貸し付け、乙は2,000万円を弁済したものの、約定の期日までに残額を弁済できなかったため、残債務を承認し、新たな支払期日を合意する契約を締結しようとしている。契約書に以下の記載がある場合、どのように取り扱われるか。 (2) 税務の観点 債務承認弁済契約書は、印紙税法別表第一「課税物件表」1号の3文書(消費貸借に関する契約書)に該当する(印紙税法別表第一 課税物件表の適用に関する通則5)。この場合における契約金額については、原契約の締結状況等で決まり、印紙税の取扱いが異なる。 (3) 法的な観点 金銭消費貸借契約(民法587条)において、約定通りに支払いがなされない場合、債務承認弁済契約書を締結することがある。これは、①その時点での残債務の額を相互に確認して、残額に関する争いを未然に防止し、②その債務を債務者が承認することにより時効を中断させ、新たな弁済条件を合意するという意味をもつ。 原契約の金銭消費貸借契約と同一性があり、残額と支払条件を定める場合には、債務承認弁済契約は法的には準消費貸借契約(民法588条)と解される。 他方、当事者間の紛争が存在し、互譲して、紛争を終結させる合意という側面が強い場合(原契約の金銭消費貸借契約と同一性は不要である)、和解契約(民法695条)と解される場合もある。 (了)

#No. 440(掲載号)
#高橋 弘行
2021/10/14

《編集部レポート》 第47回日税連公開研究討論会が、コロナ禍による1年延期を経て広島・松山からライブ配信で開催

《編集部レポート》 第47回日税連公開研究討論会が コロナ禍による1年延期を経て広島・松山からライブ配信で開催 Profession Journal 編集部   2021年10月8日(金)、日本税理士会連合会(神津信一会長)は、第47回日税連公開研究討論会を開催した。 昨年は新型コロナウイルスの影響を受け開催が延期されたことから、2年ぶりの開催となり、日本税理士会連合会・中国税理士会・四国税理士会による共催という形がとられた。 なお、今回の開催においても感染予防の徹底を図る観点から、ライブ配信にて実施され、広島と松山を中心とした複数の会場から各会の発表が行われた(四国税理士会の研修ライブ・オンデマンド視聴システムの他、YouTubeでも配信)。また、冒頭挨拶を行った神津会長も東京都内の日税連会館内からのリモート参加となった。 公開研究討論会は、税理士による研究成果の発表、討論の過程を通じて、税制・税務行政及び税理士業務の改善・進歩並びに税理士の資質の向上を図るとともに、本会が行う研修事業に資することを目的として実施する、との理念の下、毎年開催されているもの。 今回の担当は、中国税理士会が「給与の源泉徴収制度と年末調整制度のあり方」、四国税理士会が「技術革新と税理士の将来像」というテーマで、それぞれ発表を行った。また年末調整の必要性について、中国会・四国会の間で意見を交わす場面もあった。 また、両会の研究発表後の総括では、四国会のテーマに関係して、今年6月に国税庁が公表した「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0-」を取り纏めた永田寛幸広島国税局長(当時、国税庁長官官房企画課長)による本報告の概要説明が行われるサプライズもあった。 当日はパネルディスカッション参加者の間にアクリル板を設置する、一部を録画とし映像技術を駆使する、来賓者挨拶をビデオメッセージとするなど、感染防止対策が徹底された。 (中国会の発表の様子) (四国会の発表の様子) 当日の研究発表の模様は、後日、日税連HP(会員専用ページ)から視聴できる。 (了)

#No. 440(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/10/14

《速報解説》 法務省が「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」を公表~事業報告及び計算書類に表示すべき事項の一部をウェブ開示によるみなし提供制度の対象に~

《速報解説》 法務省が「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」を公表 ~事業報告及び計算書類に表示すべき事項の一部をウェブ開示によるみなし提供制度の対象に~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021(令和3)年10月12日、法務省は、「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」を公表し、意見募集を行っている。 これは、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、事業報告に表示すべき事項の一部並びに貸借対照表及び損益計算書に表示すべき事項をいわゆるウェブ開示によるみなし提供制度の対象とするためのものである。 意見募集期間は2021(令和3)年11月12日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ ウェブ開示によるみなし提供制度に関する改正 ウェブ開示によるみなし提供制度に関して次の改正を行う(会社法施行規則133条の2、会社計算規則133条の2)。   Ⅲ 施行時期等 1 施行期日 公布の日から施行する予定である。 2 失効 (了)

#No. 439(掲載号)
#阿部 光成
2021/10/12

《速報解説》 金融庁、「企業内容等開示ガイドライン」の改正を確定~第三者割当に係る有価証券届出書につき提出会社ごとの状況にあわせた適切な対応・開示を求める~

《速報解説》 金融庁、「企業内容等開示ガイドライン」の改正を確定 ~第三者割当に係る有価証券届出書につき提出会社ごとの状況にあわせた適切な対応・開示を求める~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年10月7日、金融庁は、「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の改正を公表した。これにより、2021年6月30日から意見募集していた改正(案)が確定することになる。改正(案)に対するコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方も公表されている。 これは、第三者割当に係る有価証券届出書について、重点的に行う審査対象や審査要領を、より一層明確化するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 重点的に行う審査対象の明確化 次の改正を行う。 2 審査要領の明確化 次の改正を行う。   Ⅲ 適用時期等 2021年10月7日付で適用する。 (了)

#No. 439(掲載号)
#阿部 光成
2021/10/11

プロフェッションジャーナル No.439が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年10月7日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.439を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/10/07
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