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AIで士業は変わるか? 【第18回】「AIで税理士業は変わるか」

AIで 士業は変わるか? 【第18回】 「AIで税理士業は変わるか」   デロイト トーマツ税理士法人  パートナー 税理士 橋本 純   今後、AI(人工知能)を中心とした技術開発によって、税務の世界、特に税理士を取り巻く世界はどのように変化するか、また変わらないものは何であろうか。 1 AIの進化と税務への関わり ① AIに取って代わられる職業 皆さんもご存知かもしれないが、「AIの進化により、将来なくなるかもしれない職業は何か?」といった情報は、しばしば巷で見聞きするであろう。そのリストに必ず上位にランクされている職業に税理士がある。 おそらくそれら記事を書いている者の多くが参考にしている元データは、「THE FUTURE OF EMPLOYMENT」というイギリスのオックスフォード大学のオズボーン博士らが書いた論文であろうと思われる。その論文では、「税理士」とは書かれておらず、「税務申告書作成者(Tax Preparers)」となっているものの、それが「税理士」として巷では言われているものになる。 確かに、税金の計算は、論理的に行われるものであるし、誰が計算しても、同じ前提であれば同じ金額が算定されるように税法で規定されているものであるから、早期より税務申告書作成ソフトが普及したように、税務AIも普及をして、その結果、税務申告書作成はすべてAIに置き換わってしまう、という想定は容易につく。 この予測を前提とすると、将来なくなるかもしれないと言われる職業をわざわざ目指す者も減ってくるであろうし、事実、わが国では、過去数年にわたって税理士試験の申込者数は減少しており、今後もその傾向が続くとすると、日本の税理士業界にとっても人材確保の面で先行きが危ぶまれる。 だからこそAIを活用しなければならないとも言えるし、そもそも労働生産人口が減少する中では税理士業界に限らずAIの活用は避けて通れない議論である。では、「果たして本当にAIにより税理士は脅威に追い込まれるのか?」を次項以降で考察する。 なお、余談であるが、税理士試験申込者数の減少は、税理士試験の合格者数が変わらない限り、合格率の相対的な上昇につながる話であり、真剣に勉強する者にとっては、むしろ試験には合格しやすくなっているという点で税理士試験の魅力が上がっているかもしれない、とは言いすぎであろうか。 ② 税理士の仕事がAIに取って代わられるか? そもそも税理士の立場からすると、確かに税務申告書作成は業務上重要な位置を占めているもの、我々はそれのみを業としているわけではなく、むしろ税務申告書に反映する前の会計上の取り扱いや、会計処理以前の取引形態の相談、契約書への反映のさせ方などの相談業務への対応が、より高い比重を占めているはずである。 これら相談業務において我々が最も時間をかける点は、『その取引や事案の前提条件は何か』といった理解である。これら前提条件の理解などをAIが代替して置き換わる、といった想定はオズボーン博士もしていない。その予測では、比較的単純な判断あるいは定型的な判断が置き換わることが前提であり、我々の業務で日常触れているような複雑な経済事象を十分理解して判断することは、当面の間AIにはできないと思われる。 したがって、我々が日ごろクライアントから受けるようなレベルの税務相談業務が主である限り、税理士業務がAIに取って代わられることはないと考える。少なくとも、前提条件を理解し、その条件を整理する部分までは人間が行う分野であり、税務AIは教科書的な回答をするための補助にすぎない使い方に留まるであろう。それでも、うまい使い方をすれば、相当に有用であるはずである。 また、仮にAIにより税務申告書作成業務の一部が置き換わったとしても、それは、昔、手書きの申告書作成に一生懸命であった計理士が(いかにきれいに数字を書くか、桁をそろえるかなどもその一部であったろう)、税務申告書作成ソフトを使うようになって、果たして廃業に追い込まれたか?と考えてみるとよい。 決してそのような事態は起きなかったわけであるし、税理士としての職分にも何ら変化は起きなかったわけであるから、税務申告書作成がAIにより自動化されたとしても、脅威にはならず、むしろ利便性を享受できる、といった前向きなとらえ方をすればよいと思う。 したがって、税理士の業務において、AIは脅威である、といった見方は間違いで、むしろ有効活用すべきツールである、と考えるべきであるし、その利便性を追求すべく努力すべきである。 ③ 国税の取り組み 日本の国税庁は、平成29年6月に、「税務行政の将来像~スマート化を目指して~」という国税の将来あるべき姿の考察を発表している。その中では、以下のように複数にわたり、AIの活用をうたっている。 上記のいずれも、現段階では実現していないし、今後2~3年で実現するようなものでもないが、5~10年後を考えると、一部が実用化されていると想定される。国税がAIの活用で目指しているものは、それにより限られた人的資源をより高度な業務(調査など)へ転用させることである。 国税がこのような取り組みをすでに構想として持っている以上、民間の税理士が同等あるいはそれ以上の対応を目指すことは当然である。いずれも視点は「業務の高度化」のためのAIの活用であり、比較的付加価値の低い業務あるいは時間がかかる業務を置き換えることを目標としている。税理士としても、同様の視点でAIの活用を考えるべきであろう。 ④ AIとの競合 高度な相談業務を執り行えるAIが出現した場合(前提条件などは人間が整理整頓したうえで質問等を投入することが必要と考えられるものの)、そのAIは税理士との知識レベルと競合するであろうか。おそらく、答えは「競合する」あるいは「凌駕する」であろう。 AIの学習量には制限がないのであるから、教科書的な質問対応に限れば、巷で出版されている問答集のすべてや、あるいは条文もすべて覚えたうえで回答を導き出そうとすることは、AIであれば可能である。税理士は生身の人間である以上、すべての条文を丸暗記している税理士などいない。よって、特定の分野に限っては、競合あるいは脅威である、と言えるだろう。 しかし、繰り返しになるが、企業あるいは個人が直面するあらゆる経済事象の背景を理解し、またその取引を行う心理背景、経済事情なども理解したうえで、回答を導き出すことは、人間ならではの能力であるし、その人間としての判断はAIに置き換わることはないだろう。したがって、やはり、AIとは競合するのではなく、活用する、といった姿勢で臨むべきである。   2 税理士としてあるべき姿とは ① 税理士の仕事のスタイルの変化 将来的に申告書作成がAIなどにより自動化すると、申告書作成プロセスのノウハウや、ソフトウェアの使い方、はたまた正確な電卓のたたき方、調書の作成など、従来、若手が学んでいた取り組みはだんだん不要になるだろう。 自分では申告書作成は行わない(ただしチェックはする)という税理士が増えてくると、相対的に、相談業務の比重が高まるはずである。それは税理士としての本分、税法に関わる法律家、といった側面が強まることにつながるし、税理士として望ましい方向性になると思われる。 ② AIに代替されない税理士としての役割 まずは、税法をしっかり理解することである。AIがどんなに進化した世界になっても、税法自体がなくなることは想像できない。また、AIの回答は100%正解ではない、という前提では、必ず専門家がチェックするプロセスが残されるはずである。また、そもそも税法を理解していなければ、AIにデータの正しい投入もできないし検証もできない。 したがって、税理士としては、「税法の専門家」として、条文の理解に努める重要性がますます高まるものと思われる。 ③ 税理士を目指す者へのメッセージ 冒頭に記載した通り、巷では「税理士」はなくなる職業の上位にランクされる常連であり、したがって若者がこれから目指す職業ではない、と思われる者も多いであろう。しかし、現場の第一線の税理士としては、そのような世界は来ないと考える。 税理士がなくなる世界が来たときは、いわゆる「シンギュラリティ」が訪れたときであり、税理士がなくなることを悲しんでいる場合ではないのだから、それを考えても仕方がない。 現在の技術予測を前提とすれば、税理士業界は、むしろ「AIを有効活用できる最前線にいる」と捉えて、これからの変化を楽しめばよいだろう。 今後数十年変わらないであろう職業の世界を楽しむか、大きく変わっていく世界を楽しむかは個人のし好の問題もあろうかと思うが、人間社会は進化していく、といった視点で、職業上の変化を味わいたいし、その最前線にある税理士業界は、きっと他の職業よりも楽しい職業かもしれない、と思いたい。 (了)

#No. 272(掲載号)
#橋本 純
2018/06/14

《速報解説》 国税庁、「平成30年分給与所得の源泉徴収票の記載のしかた」等を公表~配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを受けた記載上の留意事項・記載例を示す~

 《速報解説》 国税庁、「平成30年分給与所得の源泉徴収票の記載のしかた」等を公表 ~配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを受けた記載上の留意事項・記載例を示す~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   国税庁は5月31日付けで、以下の情報を公表した。 平成30年から適用される配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに伴い、源泉徴収票の項目名や記載内容も平成30年分から変更される。今回公表された情報には、変更後の源泉徴収票の記載要領と記載に当たっての留意事項が説明され、記載例も示されている。 本稿では、配偶者控除と配偶者特別控除の見直しの概要をまとめた上、「給与所得の源泉徴収票」について、変更された項目と記載に当たっての留意事項の解説を行う。 なお、金額はすべて所得金額で記載する。給与のみの場合に給与収入ベースでいくらになるかについては、次の表をご参照いただきたい(給与所得=給与収入-給与所得控除額)。 また、平成30年度税制改正における所得控除の見直し(平成32年から適用)については下記拙稿を参照されたい。   【1】 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し (1) 見直しの概要 平成30年分の所得税(住民税は平成31年分)から、配偶者控除及び配偶者特別控除について次の見直しが行われている。 ① 配偶者控除の適用に、所得者本人の所得制限を設定(所法83①) ② 配偶者特別控除の適用対象者の拡大(所法83の2①) (※) 合計所得金額85万円以下の場合の控除額は配偶者控除と同額。 ③ 所得者本人の所得に応じ控除額が逓減する仕組みの導入(所法83①、83の2①) (※) 改正前後ともに、配偶者特別控除は、所得者本人の合計所得金額が1,000万円以下でなければ適用できない。 〈参考〉 平成30年分以後の配偶者控除額及び配偶者特別控除額の一覧表 (※) 国税庁ホームページより (2) 源泉徴収及び年末調整における配偶者の取扱い ① 源泉徴収における取扱い 平成30年1月以後は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下、扶養控除等申告書という)に源泉控除対象配偶者がいる旨の記載がある場合には、源泉徴収を行うときの扶養親族等の数に1人を加算する(所法185①)。 1人を加算する対象は、源泉控除対象配偶者であることから、配偶者控除の対象となる配偶者だけでなく、配偶者特別控除の対象となる配偶者のうち控除額が38万円となる者も含まれることとなる。 また、同一生計配偶者が障害者又は同居特別障害者に該当する場合には、これらの一に該当するごとに扶養親族等の数に1人を加算する(所法187)。 〈参考〉 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しにより、所得税法上、配偶者に関し3つの用語が定義されている(所法2①三十三・三十三の二・三十三の三・三十三の四)。 (※1) 配偶者控除額又は配偶者特別控除額 (※2) 改正前の控除対象配偶者とは定義が異なる。改正前は、控除対象配偶者の定義に居住者の合計所得金額の要件は設けられていなかった。控除対象配偶者のうち70歳以上の者を、老人控除対象配偶者という。 (※3) いずれも、青色事業専従者等は除かれる。 ② 年末調整における取扱い ①で示したとおり、毎月の源泉徴収では、配偶者が障害者である場合を除くと、源泉控除対象配偶者がいる場合のみ徴収税額に控除額が反映されている。 配偶者控除又は配偶者特別控除の適用対象となる配偶者は、源泉控除対象配偶者に限られない。また、改正後は、所得者本人の合計所得金額と配偶者の合計所得金額の両方が控除額に影響するため、給与等の支払者は所得者本人と配偶者の合計所得金額を正確に把握する必要がある。これらの事情から、平成30年分以後の年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受ける場合には、「給与所得者の配偶者控除等申告書」(以下、配偶者控除等申告書という)を、その年最後の給与等の支給を受けるまでに給与等の支払者へ提出することされた(所法195の2)。   【2】 「給与所得の源泉徴収票」の変更点(概要) 「平成30年分 給与所得の源泉徴収票」の項目名及び記載内容のうち、平成29年分から変更されているものは次のからである。 (※) 国税庁ホームページより   【3】 各変更点の解説  (源泉)控除対象配偶者の有無等 「(源泉)控除対象配偶者の有無等」の欄には、次の記載が求められる。 「有」欄の(ア)と(イ)は、年末調整を受けているか受けていないかの点で違いがある。(イ)に「〇」を記載するのは、源泉控除対象配偶者がいる受給者が年の中途で退職した場合等が考えられる。  配偶者(特別)控除の額 配偶者控除等申告書に基づいて計算された配偶者控除額又は配偶者特別控除額を記載する。 平成29年分以前の様式では、この欄は「配偶者特別控除の額」であった。平成30年分以後は、配偶者特別控除の額だけでなく配偶者控除の額もこの欄に記載することになる。  (源泉・特別)控除対象配偶者 控除対象配偶者又は配偶者特別控除の対象となる配偶者の氏名及びマイナンバー(※)を記載する。また、当該配偶者が非居住者である場合には、「区分」欄に「〇」を記載する。なお、年末調整を受けていない場合(年の中途で退職した受給者等)には、源泉控除対象配偶者の氏名及びマイナンバー(※)を記載する。 (※) マイナンバーは、受給者交付用の源泉徴収票には記載しない。 平成29年分以前の様式では、この欄は「控除対象配偶者」であり、年末調整で配偶者特別控除の適用を受けた配偶者の氏名等は摘要欄に記載していた。平成30年分以後は、控除対象配偶者だけでなく、年末調整で配偶者特別控除の適用を受けた配偶者の氏名等もこの欄に記載することになる。  配偶者の合計所得 控除対象配偶者又は配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額を記載する。なお、年の中途で退職した受給者が源泉控除対象配偶者を有している場合には、扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者の所得の見積額を記載する。 平成29年分以前の様式でもこの欄は「配偶者の合計所得」であった。しかし、記入するのは年末調整で配偶者特別控除の適用を受けた配偶者の合計所得金額であり、控除対象配偶者の合計所得金額は記載されていなかった。項目名は同じであるが、記載する対象が変わっていることに注意が必要である。  摘要 控除対象配偶者以外の同一生計配偶者が、障害者、特別障害者又は同居特別障害者に該当する場合に氏名を記載する。 障害者控除の適用対象となる配偶者は、障害者又は特別障害者に該当する同一生計配偶者である(所法79②)。③欄に氏名が記載される配偶者は、控除対象配偶者又は配偶者特別控除の対象となる配偶者(年末調整を受けていない場合は、源泉控除対象配偶者)であるため、障害者に該当する同一生計配偶者のうち控除対象配偶者以外の者については氏名が記載されない。 そこで、控除対象配偶者以外の同一生計配偶者が障害者、又は特別障害者に該当する場合には、摘要欄に氏名及び同一生計配偶者である旨を記載する(例:「〇〇〇子(同配)」)。  *  *  * 情報には、以下の記載例が示されているので参考にされたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 271(掲載号)
#篠藤 敦子
2018/06/14

《速報解説》 金融庁、「収益認識に関する会計基準」を受け財務諸表等規則を改正~「収益認識に関する注記」が新設される~

《速報解説》 金融庁、「収益認識に関する会計基準」を受け財務諸表等規則を改正 ~「収益認識に関する注記」が新設される~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年6月8日、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第29号)が公布された。これにより、平成30年4月13日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、平成30年3月30日に、企業会計基準委員会が公表した「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等に対応するものである。 財務諸表等規則等の改正に際して、「「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」(以下「コメント対応」という)が公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 1 収益認識に関する注記など 財務諸表等規則8条の32(収益認識に関する注記)として次の規定を設ける。 連結財務諸表規則、中間連結財務諸表規則などの改正は、主に財務諸表等規則の改正に伴う準用規定の改正である。 上記の他、たな卸資産及び工事損失引当金の表示の改正(財規54条の4)、売上高の表示方法の改正(財規72条)、割賦販売売上高の表示方法の削除(財規73条)がある。 2 財規ガイドラインの改正 改正後の主な財規ガイドラインは次のとおりである。 《8の2-7》 規則第8条の2第7号に規定する収益及び費用の計上基準には、ファイナンス・リース取引に係る収益及び費用の計上基準等、財務諸表について適正な判断を行うために必要があると認められる事項を記載するものとする。また、財務諸表提出会社が「収益認識に関する会計基準」を適用している場合には、その旨を記載するものとする。 (※) 改正前の財規ガイドライン8の2-7では、工事契約に関する工事進捗度を見積るために用いた方法の記載が求められている。 《8の32》 規則第8条の32に規定する注記とは、「収益認識に関する会計基準」が適用される場合の注記とし、同条に規定する顧客、契約及び履行義務とは、「収益認識に関する会計基準」にいう顧客、契約及び履行義務をいうものとする。 《72-1》 規則第72条第1項に規定する売上高については、各企業の実態に応じ、適切な名称を付すことに留意する。 (※) 改正前の財規ガイドラインでは、作業くず、手持原材料又は貯蔵品の売却に関する取扱いが規定されている。 《72-1-2》 削除する。 (※) 改正前の財規ガイドラインでは、売上値引、売上割引、売上割戻について規定している。  なお、売上割引については、改正後の財規ガイドライン93において、「売上割引(代金支払期日前の支払に対する売掛金の一部免除等をいう。)」と規定されている。 《79》 規則第79条の仕入値引とは、仕入品の量目不足、品質不良、破損等の理由により代価から控除される額をいい、代金支払期日前の支払に対する買掛金の一部免除等の仕入割引と区別するものとする。なお、一定期間に多額又は多量の取引をした得意先に対する仕入代金の返戻額等の仕入割戻は、仕入値引に準じて取扱うものとする。 連結財規ガイドライン、中間連結財規ガイドラインなどの改正は、主に財規ガイドラインの改正に伴う準用規定の改正である。 3 コメント対応の概要 公開草案に対しては、2団体より2件のコメントが寄せられたとのことである。 コメント対応(No.1)では、財務諸表等規則等の改正案では、企業会計基準79項の契約資産、契約負債又は債権に関する表示(同会計基準88項に規定する内容も含む)が示されていないことへのコメントに対して、次のように考え方を示している。 また、コメント対応(No.2)では、財務諸表等規則ガイドライン72-1の売上高の勘定科目に関するコメントに対して、次のように考え方を示している。   Ⅲ 適用時期等 公布の日(平成30年6月8日)から施行する。 経過措置が設けられているので、実際の適用に際しては注意が必要である。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 271(掲載号)
#阿部 光成
2018/06/11

プロフェッションジャーナル No.271が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年6月7日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.271を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/06/07

monthly TAX views -No.65-「軽減税率と価格設定の自由度」

monthly TAX views -No.65- 「軽減税率と価格設定の自由度」   東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 森信 茂樹   新聞情報によると、6月中旬に予定されている「骨太の方針」に、「2019年10月1日の消費税率引上げにあたって、税率引上げの前後で、需要に応じて、事業者の判断によって、価格の設定が自由に行われることで、駆け込み需要やその反動減が抑制されるような方策について、具体的に検討する。」という文言が入るという。 これを受けて「価格設定に関するガイドライン」が新たに作られるという。「税率引上げ前」に本体価格を上げるとしても、それは「駆け込み需要などが見込まれるから強気の価格設定で行こう」という(事業者)の価格設定・判断であり、便乗値上げとはいえない、ということを明確化するのであろう。 また、「税率引上げ後」に、エコポイントや各種減税等の優遇措置(これから年末にかけて検討される)があることを説明せずに、駆け込み需要をあおるような行為も牽制されるようだ。 これは、筆者が本連載No.63で述べたように、2月20日の経済財政諮問会議での「消費増税に伴う経済の変動を少なくする方策について、欧州の事例にも学びつつ検討するように」という安倍総理の指示を受けたものである。背景には、消費増税に伴う経済変動が大きいのはわが国特有の事情なので、それを是正したいという事情がある。 *  *  * さて、以下は筆者からのクエスチョンである。 2019年10月から消費税率が10%に引き上げられる際には、食料品・新聞購読料について8%の軽減税率が導入される。一方、レストランサービスには標準税率の10%がかかる。そこで、コンビニでコーヒーを買う場合、イートインするのかテイクアウトするのかにより税率が異なり、事業者は、正しい消費税申告を行うために、顧客にその判断を尋ねて適用税率を区分する必要がある。 問題は、その際の価格である。税抜き100円のコーヒーを例にとって考えてみると、テイクアウトの場合は108円、イートインすると110円というのが「正しい」価格設定ということになるのだろうか。 このような事例について、ドイツのマクドナルドでは、テイクアウトでもイートインでも、税率は異なるが値段は同じに設定している。 値段を変えると、お客さんの常として、値段が安い方のテイクアウト(軽減税率)と言って購入し、その場で飲食(イートイン、標準税率)することを防ぐためだ、と説明されている。 *  *  * わが国で、来年10月以降、コンビニなどでこの点がどのような値付けになるのだろうか、大変興味深い。 「当店では、イートインもテイクアウトも同じ値段」というお店が現れたら、マスコミや国民は、「益税」、「損税」、「過剰転嫁」だと言うのであろうか。今回そのような議論が出ないようにと、事業者の価格設定の自由度を高めるのだから、そのような議論はやめるべきだろう。 (了)

#No. 271(掲載号)
#森信 茂樹
2018/06/07

〔平成30年4月1日から適用〕改正外国子会社合算税制の要点解説 【第10回】「外国税額控除、関連別表及び添付・保存資料、実務対応について」

〔平成30年4月1日から適用〕 改正外国子会社合算税制の要点解説 【第10回】 (最終回) 「外国税額控除、関連別表及び添付・保存資料、実務対応について」   税理士 長谷川 太郎   1 押さえておきたいポイント   2 合算課税に伴う外国税額控除関連の改正 ① 外国関係会社が納付した日本の所得税等に関する取扱いの改正 合算対象となる外国関係会社の所得に対し、日本の所得税、復興特別所得税及び法人税等が課されている場合には、改正前であれば、外国関係会社が納付している「外国法人税額」とみなして、合算課税に伴う外国税額控除による二重課税の調整を行うとされていた(旧措法66の7、旧措通66の6-20)。 今回の改正により、外国関係会社が納付している日本の所得税、復興特別所得税及び法人税等については、外国税額控除制度ではなく、新たな枠組みで法人税額から控除されることになっている。 具体的には、外国関係会社が納付した日本の所得税、復興特別所得税及び法人税等のうち、課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額に対応する部分に相当する金額(以下、「控除対象所得税額等相当額」という)を独立した形で控除することとなった(措法66の7④、措通66の6-24)。なお、法人税の額から控除しきれなかった金額について、還付する制度は設けられていない。 「控除対象所得税額等相当額」は、以下の算式により計算される(措令39の18⑮~⑰)。 【控除対象所得税額等相当額】 (※) 「調整適用対象金額」とは、適用対象金額に子会社(持株割合25%以上等の要件を満たす子会社)配当の金額を加算する等の調整を加えた金額をいう。また、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額による合算課税の適用を受ける場合において、調整適用対象金額が部分課税対象金額または金融子会社等部分課税対象金額を下回る場合には、分母の金額は部分課税対象金額または金融子会社等部分課税対象金額となる。 法人税申告書(別表)の記載は以下の通りとなっており、別表4において「税額控除の対象となる外国法人税の額」の下の[31欄]において「外国関係会社等に係る控除対象所得税額等相当額」として別表17(3の12)で計算した金額を転記し、別表1(1)次葉の[11欄]において「外国関係会社等に係る控除対象所得税額等相当額の控除額」において、別表17(3の12)で計算した当期控除額を転記し、別表1(1)の「法人税額計」と「控除税額」の欄の間の「外国関係会社等に係る控除対象所得税額等相当額の控除額及び仮装経理に基づく過大申告の更正に伴う控除法人税額」の欄に転記して控除を行う形となっている。 【別表1(1)】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【別表1(1)次葉】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【別表4】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ② 部分合算課税における外国税額控除に関する改正 「部分課税対象金額 > 課税対象金額」の場合に、課税対象金額を合算金額の上限とする扱いが廃止されたことに伴い、部分合算課税や金融子会社等部分合算課税の適用がある場合における控除対象外国法人税額の計算における分母の「調整適用対象金額」が「部分課税対象金額」または「金融子会社等部分課税対象金額」を下回る場合には、分母の金額は「部分課税対象金額」または「金融子会社等部分課税対象金額」となる改正が行われている。   3 関連別表・付表、申告時添付書類及び保存資料 ① 関連する別表及び付表について 本稿執筆日現在、下記の国税庁HPにおいて改正後の外国子会社合算税制に関連する別表及び付表については、名称の記載はあるものの、実際の別表及び付表は一部を除きほぼ「作成中」と表示されている状況である。 外国子会社合算税制に関連する別表及び付表は以下の通りとなっており、別表17(3の7)以降の別表及び付表が今回の改正により新設されたものである。 なお、別表17(3の7)、同付表1及び2については、名称に「添付対象外国関係会社」との表記が見られるが、この「添付対象外国関係会社」とは、確定申告書に決算書等の添付が求められている外国関係会社を意味する(措規22の11⑳)。対象となる外国関係会社は、後述する「② 決算書等の添付要件」を参照されたい。 ② 決算書等の添付要件 外国子会社合算税制の適用を受ける内国法人は、実際の合算課税の有無に関わらず、以下の外国関係会社の各事業年度の貸借対照表及び損益計算書その他の書類を確定申告書に添付しなければならないこととされている(措法66の6⑪)。 【決算書等の添付が必要となる外国関係会社】 添付が必要となる書類は以下の通りである(措規22の11⑳)。 ③ 保存をしておくべき書類 税務調査等において、外国関係会社で租税負担割合が30%以上である事実が客観的に確認することができない場合には、実体基準又は管理支配基準を充足する(ペーパー・カンパニーに該当しない)事実を明らかにする書類等の提示または提出を求められることがあり、書類等の提示または提出をしない場合には、当該外国関係会社について、特定外国関係会社に該当すると推定されることとされている(措法66の6③)。 また、特定外国関係会社に該当しないことが確認され、かつ租税負担割合が20%以上である事実が客観的に確認することができない場合には、経済活動基準を充足する事実を明らかにする書類等の提示または提出を求められることがあり、書類等の提示または提出をしない場合には、当該外国関係会社について、経済活動基準を充足しないと推定されることとされている(措法66の6④)。 以上のこと及び租税負担割合が30%以上である外国法人が限定的であることを踏まえると、外国子会社等について、「特定外国関係会社に該当しない(実体基準又は管理支配基準を充足する)ことを確認した書類」及び「租税負担割合が20%以上であることを確認した書類」または「経済活動基準を充足していることを確認した書類」を保存しておくことが求められていると考えられる。   4 改正による実務への影響 今回の改正が企業における税負担へ与える影響もあるとは思われるが、最も大きい影響は実務面での対応にあると考えられる。実質支配基準、推計課税の導入や部分合算課税の拡大等により、実務担当者が申告時あるいは決算時までに対応すべき事項が増加したと考えられる。 移転価格については、BEPS行動計画13に伴う移転価格関連文書化の改正等の影響により、親会社である内国法人がこれまで以上に子会社等を税務面で管理していくことが求められているが、外国子会社合算税制においても、同様に子会社等の毎期の税務ポジション、収益の内容や事業実体等について、親会社である内国法人側で把握・管理していくことが求められるようになっている。 このような状況においては、親会社において外国子会社合算税制の検討において必要となる情報をタイムリーに入手し、かつ税務調査時に状況を説明することができるような情報を網羅的に収集する必要があり、例えば、外国関係会社向けに外国子会社合算税制用の質問表(questionnaire)を作成し、決算前に各子会社担当者に送付し、効率的かつ一貫性のある情報収集を行う等の対応が求められることになる。 (連載了)

#No. 271(掲載号)
#長谷川 太郎
2018/06/07

海外移住者のための資産管理・処分の税務Q&A 【第3回】「事業的規模の不動産所得があり移住前に検討が必要な場合」

海外移住者のための 資産管理・処分の税務Q&A 【第3回】 「事業的規模の不動産所得があり移住前に検討が必要な場合」   税理士・行政書士 島田 弘大   Question 私は来年、海外への移住を検討しています。現在、事業的規模の不動産所得がありますが、移住後も引き続き個人で日本での不動産事業を継続する予定です。税務上気をつける点はありますか。   Answer 1 はじめに 海外への移住を検討している日本の居住者(個人)が日本で事業的規模の不動産所得を得ている場合、移住後も日本での不動産事業を継続しても問題は生じないだろうか。国際税務の観点から留意点を検討する。   2 移住時の日本での課税関係(国外転出時課税) 日本に不動産を保有し続ける場合、まず検討しなければならないのが『国外転出時課税制度』である。国外転出時課税制度(いわゆる出国税)とは、平成27年7月1日以後に出国する「一定の高額資産家」を対象に、出国時に未実現のキャピタルゲインに対して特例的に課税を行う制度である(所法60の2)。 「一定の高額資産家」とは、下記2つの要件を満たす居住者をいう(所法60の2⑤)。 詳細は本連載の【第1回】「移住後に国内不動産を賃貸する場合の留意点」でも検討しているため割愛するが、対象資産は限定列挙されており、その中に不動産は含まれていない。 つまり、現行法(2018年5月16日時点)においては、今回のケースである不動産は国外転出時課税の対象資産には含まれない。 したがって、不動産を所有したまま出国して税務上の非居住者となったとしても、国外転出時課税制度の影響はない。   3 移住後に日本の不動産を賃貸・売買した場合の取扱い それでは、海外に移住して税務上の非居住者に該当することになった後に、日本の不動産を賃貸又は売却した場合、どのような課税関係になるのか。日本でも確定申告が必要になるのか。 この点についても本連載の【第1回】で詳細を確認しているため割愛するが、賃貸収入・譲渡収入いずれの場合も、原則として納税管理人を選任し日本で確定申告を行う必要があるため、この点は注意したい。 それでは、今回のテーマである「事業的規模」の不動産所得がある場合、他にどのような点に注意する必要があるだろうか。 それは、今まで役員給与などの給与所得等と不動産所得の計算上生じた損失を損益通算していたケースである。   4 役員給与などの給与所得と不動産所得の損益通算 損益通算とは、各種所得金額の計算上生じた損失のうち、①不動産所得、②事業所得、③譲渡所得、④山林所得についてのみ、一定の順序に従って、総所得金額、退職所得金額等を計算する際に他の各種所得の金額から控除することをいう(所法69、所令178)。 さて、上記のとおり、役員給与などの給与所得等を計算する際には不動産所得に係る損失を控除することとされている。ではなぜ、この損益通算について、税務上の非居住者になる場合には注意が必要なのだろうか。 以下では、税務上の非居住者が日本の内国法人から役員給与を受け取り、また日本での事業的規模の不動産所得に係る損失も引き続き生じているケースをご紹介したい。   5 2016年以前までの取扱い 事業的規模の不動産所得を得ている場合、「恒久的施設」を日本に有すると認められる。また、非居住者に対する内国法人からの役員給与については「国内源泉所得」に該当するため、まずは源泉徴収されることとなる。 2016年以前は、日本に「恒久的施設」を有する場合には、すべての国内源泉所得が総合課税とされる。したがって、内国法人から支払われる役員給与も源泉分離課税ではなく「総合課税」の対象になることから、不動産所得に係る損失との損益通算が可能となる。   6 2017年以後の取扱い 2016年以前であれば、上述のとおり、移住前も移住後も給与所得と不動産所得に係る損失の損益通算は可能であったが、2017年以後は平成26年度税制改正により取扱いが変わっているため注意が必要だ。 事業的規模の不動産所得を得ている場合、「恒久的施設」を日本に有すると認められる。また、非居住者に対する内国法人からの役員給与については「国内源泉所得」に該当するため、まずは源泉徴収されることとなる。ここまでは、2016年以前と取扱いは変わらない。 その「国内源泉所得」が、その非居住者の日本における「恒久的施設」に帰せられる所得かによって、2017年以後は課税関係が変わる。 具体的には、非居住者に対する支払いの対価が「恒久的施設」に帰せられる所得である場合には、原則として源泉徴収の上、「総合課税」の対象とされる。一方で、「恒久的施設」に帰せられない所得である場合には、原則として「源泉分離課税」の対象とされ、源泉徴収により課税は完結する。 さて、本件に当てはめてみるが、その「国内源泉所得」に該当する内国法人からの役員給与はその非居住者が有する恒久的施設(このケースでは事業的規模の不動産所得)に帰せられる所得に該当するだろうか。答えはNoである。 つまり、「恒久的施設」を有していたとしても、今回のケースでは役員給与はその「恒久的施設」に帰せられない所得であるため、源泉分離課税の対象とされる。総合課税の対象にはならないため、源泉徴収により課税関係は完結し、この給与所得と事業的規模で行う不動産所得に係る損失を損益通算することはできない(所法164)。 (※) 上記改正の詳細については、財務省「平成26年度税制改正の解説」のp783以下を参照されたい。   7 結論 「移住する前と同様に、内国法人から支払われる役員給与について事業的規模の不動産所得に係る損失と損益通算できるだろう」とシミュレーションしていたものの、実際に移住して税務上の非居住者となった後に損益通算できないことが判明し、日本で納税すべき所得税額が増えてしまったということにならないように、事前にこの取扱いは考慮しておく必要があるだろう。 (了)

#No. 271(掲載号)
#島田 弘大
2018/06/07

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第40回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第40回】   公認会計士 佐藤 信祐   《第6章》 平成19年度税制改正 1 三角組織再編成 平成19年度税制改正では、会社法における合併等対価の柔軟化に対応し、以下の改正が行われた(財務省「平成19年度税制改正の大綱」より抜粋)。 三角組織再編成を適格組織再編成として整理した理由は、100%親法人株式を組織再編成の対価として交付した場合には、その株式の保有を通じて実質的な支配が継続できることから、組織再編成の前後で経済実態に実質的な変更がなく、移転資産に対する支配が継続していると考えられるからであると説明されている(※1)。 (※1) 『平成19年版改正税法のすべて』272頁。 なお、合併法人等となる法人は、組織再編成の対価としての親法人株式を交付することになるが、原則として、当該親法人株式の譲渡により譲渡損益は実現しないこととされている。しかし、契約日以前に取得をした親法人株式については、契約日において時価による譲渡をし、直ちにその価額で取得をしたものとすることになった。 これは、親法人株式を一般的に保有する場合には、相当の時期に処分すべきこととされ、その処分による譲渡損益が実現することから、このような親法人株式の処分と整合的な取扱いをするためである(※2)。 (※2) 前掲(※1)272頁。 このように、三角組織再編成を行った場合にも課税関係が生じないように整理されたものの、国境を挟む組織再編成も可能であることから、上記(2)(3)の改正がなされている。この内容についてはやや特殊であることから、本稿では解説を行わない。   2 事業の明確化 事業関連性要件の判定において、「事業」「関連性」の定義が曖昧であったことから、平成19年度税制改正では、納税者の予測可能性を高めるために、「事業」「関連性」の明確化を行っている。 これに対応し、平成19年4月に国税庁から「共同事業を営むための組織再編成(三角合併等を含む)に関するQ&A~事業関連性要件の判定について~」が公表され、従前よりも事業の定義が狭く解されるようになった。 しかし、リーマンショックにより投資法人の再編を進める必要が生じたことから、平成21年3月に、国税庁から文書回答事例「投資法人が共同で事業を営むための合併を行う場合の適格判定について」が公表され、 と書かれており、事業の定義を緩やかに捉えるようになっている。 そのため、現行実務では、法人税法施行規則に規定されている事業の定義を参考にしつつも、会社法における事業の定義である「一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産(最大判昭和40年9月22日民集19巻6号1600頁)」を参考にしながら、事業の範囲を広く捉えることが多いと思われる。   3 計算要素にゼロ又はマイナスがある場合の規定の整備 平成19年度税制改正では、計算要素にゼロ又はマイナスがある場合における資本金等の額、利益積立金額、みなし配当、有価証券の譲渡損益の規定が整備された。これにより、債務超過会社が組織再編成を行う場合の取扱いが明確化されたということが言える。 基本的な考え方としては、 と解説されている(※3)。 (※3) 前掲(※1)362頁。 なお、これらの規定を読み込む際に「控除」と「減算」の違いについて留意しておく必要がある。100から150を控除した場合には0となるが、100から150を減算した場合には△50になるからである。 そのほか、法人税法施行令9条1項1号以外の事由により利益積立金額が増減した場合にも、資本金等の額と同様に考えるべきであるため、これらの計算要素に加味されることになった(※4)。 (※4) 前掲(※1)363頁。   4 その他 そのほか、『平成19年版改正税法のすべて』368頁以降では、①株式交換又は株式移転に係る資本金等の額の整備、②新株予約権を対価とする費用等、③欠損等法人、④特定資産譲渡等損失額の損金不算入、⑤資産調整勘定につき、若干の改正が行われている。 この頃から顕著になり始めているが、大きな改正が行われた翌年度に、前年度の税制改正の不具合を修正するような税制改正が行われるようになっている。大きな税制改正が行われた場合には、必ず翌年度の税制改正も目を通す必要があるということが言える。 *   *   * 次回では、第7章として、平成20年度から平成21年度までの税制改正について解説を行う予定である。 (了)

#No. 271(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/06/07

租税争訟レポート 【第37回】「架空の業務委託契約に係る消費税の仕入税額控除と源泉所得税の納税告知処分(東京地方裁判所平成29年5月11日判決)」

租税争訟レポート 【第37回】 「架空の業務委託契約に係る消費税の仕入税額控除と 源泉所得税の納税告知処分 (東京地方裁判所平成29年5月11日判決)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   2011年3月3日、さいたま地検特別刑事部は、消費税などを脱税した容疑で、東京都豊島区の警備会社社長と、同社の顧問税理士を逮捕した。当時の新聞報道によれば、逮捕容疑は、両容疑者が、会社の設立2年間は消費税が免除される制度を悪用するために設立したダミー会社から警備員を派遣されたように装うなどの行為により、2007年3月期から2009年3月期の消費税と法人税計約5,600万円を脱税したということであった。 その後、社長と顧問税理士は起訴され、2011年6月22日、さいたま地方裁判所で執行猶予のついた有罪判決が出されて、確定した(別件刑事事件判決)。 本訴訟は、逮捕された当時の社長が、〔1〕修正申告の有効性と、〔2〕処分行政庁による納税告知処分及び重加算税等の賦課決定処分の違法性を争ったものである。   【事案の概要】 本件は、警備業を営む株式会社である原告が、処分行政庁から、①修正申告に対する法人税及び消費税等に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分を受けるとともに、②原告が支払った給与に対する源泉所得税の各納税告知処分並びに不納付加算税及び重加算税の各賦課決定処分を受けたのに対し、①上記修正申告が無効であると主張して、上記過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分の取消しを求めるとともに、②上記各納税告知処分等が、原告の関連会社に対する課税との二重課税であり違法であるなどと主張して、上記各納税告知処分並びに不納付加算税及び重加算税の各賦課決定処分の各取消しを求める事案である。 本稿では、[争点1]の修正申告が無効であるかどうか点については、原告及び被告の主張並びに裁判所の判断に関する論評を省略して、[争点2]以下に絞って、裁判所の判断を中心に検討したい。 なお、TAINSで公開されている判決文は、情報公開法第9条第1項による開示情報であるため、固有名詞や金額等が非開示となっており、適宜、筆者によってこれを補い、また、役職名等についても、混同を避けるため統一していることをお断りしておきたい。   【原告及び顧問税理士による節税対策スキームと処分行政庁による課税処分】 原告による消費税額等の節税を目的としたと思われる取引の流れは【図1】のとおりである。 【図1】 関連会社を使った消費税節税スキーム 原告会社は、消費税の免税事業者である関連会社を設立して、業務委託契約を締結して、警備業務を委託して外注費(消費税の計算における課税仕入れ)を支払うことにより、納付すべき消費税額等を減少させていた。同時に、顧問税理士名義の遊休口座に、役員報酬を振り込むことにより、法人税における所得の金額の計算上損金の額を増加させて、納付すべき法人税額を減少させていた。 これに対し、処分行政庁は【図2】のとおり、上記の節税スキームを否定した。 【図2】 処分行政庁による課税処分 すなわち、関連会社は実体のないダミー会社であるから、業務委託契約は架空のものであり、原告会社と警備員は雇用関係にあると判断して、消費税額の計算上、課税仕入れに係る仕入税額控除を認めず、また、警備員に対する給与に係る源泉所得税の納付義務を負うのは原告会社であるとして、納税告知処分を行った。 同時に、顧問税理士名義の口座に振り込まれていた役員報酬については、この口座を管理し、振り込まれた金員を引き出していたのは原告会社代表であると認定して、顧問税理士に対する役員報酬ではなく、代表に対する役員報酬であると判断した。 また、いずれの行為も、国税通則法68条1項所定の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の仮装が認められるとして、重加算税の賦課決定処分を行った。   【裁判所の判断】 1 [争点1]本件各修正申告の有効性について 裁判所は、原告による、「修正申告書を提出した税理士が無権代理である」【修正申告書に虚偽表示がある】といった主張を一蹴して、修正申告は有効なものであると判断した。 2 [争点2]本件納税告知処分等が二重課税として違法か否か 裁判所は、処分行政庁の判断を、「本件納税告知処分等は、本件関連3社は事業実態がないとして、①関連3社が警備員に対して支払った給与は、原告が警備員に対して支払った給与である、②本件関連3社が代表及び顧問税理士に対して支払った役員報酬は、原告が代表及び顧問税理士に対して支払った給与であると認定されて行われた」ものであるとした。 そのうえで、納税告知処分等に先立って、関連3社は、それぞれの法人の給与の支払事務所を管轄する税務署長に対して源泉所得税を納付したものであるが、原告に代わって、その源泉所得税を納付したものではないのであるから、原告は、処分行政庁に対してこれを納付すべき義務を免れるものではない。 また、本件関連3社に対しては、誤納金に係る請求権の時効が完成していなかった源泉所得税が返還されており、実質的にみても本件納税告知処分等が二重課税であるということはできない。不納付加算税及び重加算税の額等が高額であるとしても、原告が納付すべき源泉所得税を納付していなかったという以上、原告において受忍すべきものであり、この点をもって二重課税であるなどということはできない。 3 [争点3]本件警備員外注費について 裁判所は、原告による外注費の支出について、以下のとおり事実認定を行った。 こうした事実認定によって、裁判所は、警備員外注費は、雇用契約に基づく給与等であったと認めるのが相当であると判断した。 4 [争点4]本件役員報酬について 裁判所は、以下のとおり、関連会社による顧問税理士に対する役員報酬の支払いについて、事実認定を行った。 以上の事実認定から、裁判所は、原告代表又はその意を受けた原告の事務員が本件各出金をしたものと認められ、顧問税理士の供述によれば、本件役員報酬の計上は実態のない架空のものであるというべきであり、原告代表に対する支払であると認めるのが相当であると判断した。 5 重加算税の賦課決定処分が妥当であると判断された修正事項 裁判所は、以下の修正事項に関し、いずれも、「国税通則法68条1項所定の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の仮装が認められる」として、処分行政庁による重加算税の賦課決定処分を是認した。   【解説】 脱税容疑で代表が逮捕された原告が、代表が別件刑事事件で有罪判決を受けているにもかかわらず、課税処分の取消しを求めて提起した訴訟は、原告の主張はまったく認められず、棄却の判断を示した第一審判決が確定した。 判決文を読んで気になった点をいくつか指摘しておきたい。 1 顧問税理士に対する査察の参考人調査 判決によれば、原告は、2010年1月、処分行政庁である豊島税務署の調査を受けた後、いったん修正申告に応じている。その後、5月25日になって、関東信越国税局調査査察部により、顧問税理士を嫌疑者とする国税犯則取締法に基づく犯則調査に関して、原告を参考人とする調査を受け、さらに、翌年2月2日、今度は原告自身が、法人税法、消費税法及び地方税法違反の嫌疑があるとして、国税犯則取締法に基づく犯則調査を受けるこことなった。 顧問税理士に対する査察の参考人であったものが、原告自身が嫌疑者となった経緯については詳らかではないが、豊島区に本店がある原告の代表は、こうした経緯によって、さいたま地検特別刑事部によって逮捕、起訴されたようである。 2 再度の修正申告と原告代表の保釈 原告代表は、2011年3月3日に逮捕され、同月24日まで勾留されている。 勾留中、代表は、接見した弁護士に対し、原告の事業のために1日も早く身柄拘束を解いてもらいたいこと、身柄拘束を解いてもらうべく、査察部の調査内容を踏まえ修正申告をする意向があることを話した。 当時、原告の税務代理権限を有していた別の税理士は、3月17日、査察部に連絡し、修正申告をする用意があるから、調査内容や修正すべきと考えている内容を教えてほしいと伝え、同月18日、査察部職員と面会し、修正すべき事項を聴取した上、項目ごと、事業年度ごとの金額のメモを作成し、メモに基づき、本件各修正申告書を作成した。 同税理士は、同月22日、代表に接見し、査察部から指摘されている非違項目や、修正申告をした場合のおよその増税額について説明して、代表の記名と原告代表印の押印がある本件各修正申告書を同月23日に提出した。 原告代表の勾留が解かれたのは、勾留期限であるとともに、修正申告書提出日の翌日であった。否認をしていると「証拠隠滅のおそれ」を理由に勾留の延長が認められるといわれている「人質司法」の現状を考えると、修正申告により脱税の事実を認めなければ、さらに勾留が延長された可能性はあったかもしれない。   (了)

#No. 271(掲載号)
#米澤 勝
2018/06/07

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第49回】「過収電気料金等の返戻額に係る収益」~電力会社から過大に徴収された電気料金等の返戻額の収益計上が漏れていると判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第49回】 「過収電気料金等の返戻額に係る収益」 ~電力会社から過大に徴収された電気料金等の返戻額の収益計上が漏れていると判断した理由は?~   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して行われた「電力会社から過大に徴収された電気料金等の返戻額の収益の計上が漏れていること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた新潟地裁平成2年7月5日判決(税資180号1頁。以下「本判決」という)を素材とする。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注)  素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本判決の判断 本判決は、大要次のとおり、理由付記に不備はないと判断した。   4 検討 (1) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、【1】T電力に対する電気料金等の過払いが判明し、X社とT電力との間で、昭和60年3月29日、過払額を1億5,000万円(本件過収電気料金等)とする合意を行ったこと、【2】同日付で確認書(本件確認書)を取り交していること、【3】X社は同日にT電力から本件過収電気料金等の支払いを受けていること及び【4】X社が昭和60年12月期の収益に計上していないことを前提として、本件過収電気料金等を同事業年度の収益に計上すべきであるとして行うものである。 【1】ないし【3】との関係では、本件更正処分は、X社の帳簿書類の記載を否認せずに、そのまま処分の前提とするものである。他方、【4】との関係では、本件更正処分は、X社が昭和60年12月期の収益に計上していないことの否認という広い意味において、X社の帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当する(もっとも、受領した本件過収電気料金等について、X社がどのような受け入れ処理を行っていたのかという点は必ずしも明らかではない)。 したがって、理由付記の程度としては、 ことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (2) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件理由付記は、本件更正処分の根拠となる事実として、上記(1)【1】~【4】を記載するとともに、根拠資料として本件確認書を摘示している。その上で、本件過収電気料金等の返戻額は本件確認書で合意がなされた同日を含む事業年度の益金の額に算入すべきであるという判断結果を記載している(なお、法人税法上の収益の帰属時期の議論については、本連載【第20回】参照)。 であれば、本件理由付記は、その記載内容から処分の根拠となる法令及び具体的な事実を理解することができるものであり、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものであるといえる。したがって、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであると考える。 また、本件理由付記は、単に更正に係る勘定科目とその金額を示すだけではなく、更正処分の根拠を帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示することによって具体的に明示するものである。 したがって、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 *  *  * 次回は、「国保収入を減額する決算修正仕訳を否認する」法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 271(掲載号)
#泉 絢也
2018/06/07
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