2018年11月22日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.295を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第53回】 「消費税対策の問題点」 税理士 山本 守之 1 軽減税率減収分の財源 消費税の軽減税率による減収分1兆円の財源のうち4,000億円は、低所得者の医療や介護の負担を軽くする「総合合算制度」の見送りによるもので、3,000億円はたばこ増税と給与所得控除の縮小によるものです。 残りの3,000億円のうち2,000億円は、免税事業者への課税による増収分が充てられます。2023年10月にインボイス(税額票)制度が導入される予定ですが、そうなると、大企業や中堅企業と取引するためにはインボイスを出して課税事業者になる必要が出てきます。売上高が1,000万円以下で消費税を納税していなかった事業者はこれにより消費税を納税することになりますので、税収が増えることになります。 残る1,000億円は社会保障の効率化や給付の見直しで捻出した財源を活用することになります。また、低所得者向けの簡素な給付措置(臨時福祉給付金)による事務費の削減なども候補に挙がっています。 2 軽減税率の対象は税率が6%に 安倍首相は10月15日の臨時閣議で、予定通り消費税率を10%に引き上げる方針を改めて示しました。 景気の落ち込みを防ぐ対策として、中小小売店でキャッシュレス決済をした場合、次回から使えるポイントを増税分(2%)を還元するという制度が取り上げられています。 経済産業省は、キャッシュレス決済導入時の経費負担は、中小事業者のうち小売業に限らずサービス業も含めて行う方向です。還元方法としては、クレジットカード、電子マネー、QRコードなどを検討しています。還元率は増税分の2%となり、還元期間は半年から1年程度を予定しています。また、政府はポイント還元に係る費用を決済事業者に払い、機器の導入費用も補助する方針です。 今回は増税と同時に軽減税率が導入されますが、軽減税率で8%に据え置かれる飲食料品もこのポイント還元に含められるので、飲食料品の税率は6%となり、実質今よりも税率は低くなることになります。 3 消費税対策のバラマキ 自民党の支持者の多い中小企業者や公明党の支持者が多い低所得者層には、次のようなバラマキともいえる対策が検討されています。 プレミアム商品券は、購入額に一定額が上乗せされた商品券です。増額分は公費で賄うことになります。現在でも各自治体で発売されているところがありますが、商品券を大量に買い込む人がいるなどの問題点なども指摘されているため、所得制限を設けるなどの案も出ています。 例えば港区の場合は、港区内で使える1万円のプレミアム商品券があり、500円券が22枚(1万1,000円分)入っている商品券と500円券が24枚(1万2,000円分)入っている商品券(小規模店舗等でのみ使用可能)の2種類が用意されています。 今回の消費増税の低所得者対策として①軽減税率、②年金受給者に最大6万円を給付するバラマキ、③高齢者介護保険料の軽減などが決まっています。低所得者対策をどこまで行うかも問題となっています。 また、住宅や自動車の購入支援策の拡大も検討しています。住宅については、2014年の増税時には住宅ローン減税を大幅に拡充しましたが、消費税率10%時には住宅購入時にもらえる「すまい給付金」の上限額を現行の30万円から50万円(年収775万円以下の人を対象)に引き上げることも決めています。これに加えて省エネ性能が高い住宅の新築リフォーム時にもらえる「住宅エコポイント」も復活させる方向で検討しています。 なお、ここで考えるべきことは、消費増税対策と中小企業対策を混合しないことです。 4 金融所得課税 年末にかけての税制改正討論のうち、株式市場が特に神経をとがらせているのが金融所得課税の税率引き上げです。 現在の金融所得課税は株式の配当や譲渡益が課され、金融課税で20.315%(地方税を含む)です。これは、総合課税の最高税率55%(地方税含む)に比べてみると異常に低いのです。 所得階層別の所得税の負担割合を調べてみると次のようになっています。 ※画像をクリックすると別ページで拡大して表示されます。 (合計所得金額:円) (出所) 財務省資料 ひと目でわかるように、平成25年、26年とも所得税負担率は1億円近辺をピークに、それ以上稼ぐと徐々に低下していき、100億円以上では25年で11.1%、26年で17%しか負担していません。 給与所得に対しては、最高税率55%(地方税含む)の累進税が適用されるのに対して、キャピタル・ゲインや配当、債権・預金の利子などの金融所得に対しては、20%(国税)の軽減税率が適用される「分離課税」となっているためです。 分離課税のすべてを総合課税とすることは無理であっても、分離課税の税率を引き上げる程度のことはできるのではないでしょうか。 ところが、政府与党は来年度の金融所得課税の増税を見送ることにしました。金融資産の多い富裕層ほど所得税の実質的な負担が軽くなることが課題になっていましたが、株価を重視する首相官邸では金融所得課税の増税反対の意向が強かったのです。 政府与党は昨年末の税制改正で、高所得者の会社員らへの所得増税を決めました。その際、今後の課題として金融所得課税の見直しを挙げて、与党税制改正大綱に「税負担の公平性を担保する観点から総合的に検討する」としていました。低所得者ほど負担が重くなる所得税を増税し、富裕層への課税強化を見送ることは税の公平性から考えると問題があります。 5 日税連公開研究討論会 第45回日税連公開研究討論会で、北陸税理士会は所得税について次の4点の是正を提案しました。 これによる所得税の税収は13兆1,826億円になるとしています。 (了)
谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第4回】 「租税法律主義と要件裁量の結果的容認」 -租税債務関係説のパラドックス- 大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫 Ⅰ はじめに 前回は、課税要件法の解釈の場面における要件裁量否定論について、租税債務関係説との結びつきによる租税法律主義の厳格さ(「他律的」厳格さ)の観点から、検討したが、今回は、課税処分取消訴訟の場面における租税法律主義(合法性の原則)及び租税債務関係説の意義に関する検討を通じて、同説が「要件裁量」(Ⅲ1参照)を結果的に容認する事態に至ることがあるいわば「租税債務関係説のパラドックス」ともいうべき現象(【65】=拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)の欄外番号。以下同じ)を明らかにし、その克服の試みを検討することにしたい。 課税処分取消訴訟における審理の範囲・対象をめぐっては、同訴訟の訴訟物とも関連して、総額主義と争点主義との対立がみられる(【164】)。この対立が「租税債務関係説のパラドックス」の原因の1つであると考えるところであるが、そのパラドックスが何故あるいはどのような意味で「要件裁量」の結果的容認という事態に至ることになるのか。そのパラドックスはいかにして克服することができるか。これらが今回の検討課題である。 Ⅱ 総額主義と租税法律主義・租税債務関係説との調和 総額主義は、課税処分取消訴訟における審理の範囲は当該課税処分を根拠づける一切の理由に及び、課税標準等又は税額等の正当な総額がいくらであるかが、換言すれば、課税要件法に従って客観的に定まる税額との関係における、当該課税処分によって確定された税額の総額的適否が、審理の対象となる、という考え方である(【64】【164】)。 租税法律主義の内容を構成する合法性の原則によれば、課税要件の充足によって成立した納税義務の内容は、税法の定めに従って確定され履行されなければならない(【37】)。納税義務の確定のための事実認定は、課税要件の充足による納税義務の成立時(課税要件法上の成立時期。【97】)に当該課税要件に該当している事実、すなわち、納税義務の成立時に客観的に存在した課税要件事実(課税要件を組成する法律要件要素すなわち課税要件要素[Steuertatbestandsmerkmale]に高められ抽象化された類型的事実[法律事実]に該当する個々の具体的事実[いわゆるナマの事実]。【56】)、を当該成立した納税義務の内容どおりに全て対象としなければならない。この要請を実体的真実主義と呼ぶならば、総額主義は、課税処分取消訴訟における事実認定の場面では、合法性の原則から導き出される実体的真実主義に合致するといえよう。 また、租税債務関係説の立場からは、課税処分取消訴訟は、納税義務の実体的内容(一種の法定金銭給付債務)を包む「鋳型」としての課税処分(【13】)について、その取消しを求めるための訴訟類型とみることができる。したがって、課税処分について、その「鋳型」それ自体の違法(手続的違法)は別にして、その実体的内容に関する違法(実体的違法)が争われる限りでは、課税処分取消訴訟は、実質的には、一種の債務不存在確認訴訟として性格づけることができる。債務不存在確認訴訟では、債務の総額的適否が審理の対象になる。その意味では、総額主義は租税債務関係説と親和性をもつといえよう。 Ⅲ 租税債務関係説のパラドックス 1 パラドックスの構造 ところが、総額主義は、次の2で述べる処分理由の差替えの問題について顕著にみられるように、事実認定に関する税務官庁の裁量を結果的に容認する場合がある。というのも、課税処分取消訴訟においては、民事訴訟一般に妥当する弁論主義の下で、課税要件事実の存否に関する主張・立証は原則として当事者に委ねられており(行訴法7条参照)、そこに事実認定に関する裁量が介在する余地が生じるからである。行政事件訴訟法は「裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、証拠調べをすることができる。」(24条本文)と定め職権証拠調べを認めているが、これは、当事者の主張する事実について裁判所の職権による証拠調べを認めるにとどまるものであって、実体的真実主義の実現を可能にする職権探知主義(裁判所が当事者の主張をまたずに職権で事実を探知し証拠資料を収集することを認める原則)とは区別されるべきものである。 前回Ⅲでみたように、そもそも、租税債務関係説は、租税権力関係説に対するアンチテーゼとして、納税義務の成立について税務官庁の形成的・裁量的判断を法理論上完全に排除するために構想されたものであり、課税要件法の解釈の場面では要件裁量否定論に帰結する。しかし、租税債務関係説は、課税要件事実の認定の場面では、以上で述べてきたように、総額主義及び弁論主義と結びつくことによって、事実認定に関する裁量の余地を生み出すことがある。 そうすると、課税要件法の解釈だけでなく課税要件事実の認定をも含めて「要件判断に関する裁量」の意味で要件裁量という概念を用いる場合には、租税債務関係説は、実際の課税処分取消訴訟において、要件裁量を結果的に容認する論理として、作用・機能することになる。ここに、「租税債務関係説のパラドックス」ともいうべき現象がみられるが、この現象については、次の2でみるとおり、租税法律主義の内容を構成する手続的保障原則(租税の賦課徴収に関する事前手続においても事後的な救済手続においても適正手続の保障を要請する原則。【27】)の観点から、そのパラドックスを克服しようとする試みが従来から展開されてきたところである。 2 パラドックスの克服の試み 課税要件事実の認定に関する税務官庁の裁量を排除するために、課税処分取消訴訟の場面では、特に処分理由の差替えの問題をめぐって、争点主義という考え方が唱えられてきた。これは、課税処分取消訴訟における審理の範囲が課税処分を根拠づける理由の一部(特に処分時の理由)に限定され、その理由との関係における課税標準等又は税額等の適否が審理の対象となる、という考え方である。 争点主義によれば、課税処分取消訴訟における審理の範囲が課税処分を根拠づける処分時の理由に限定されるので、総額主義による場合と異なり、訴訟段階における処分理由の差替えは認められないことになり、その意味において課税要件事実の認定における税務官庁の裁量が排除されることになる。このことは、とりわけ、手続的保障原則の具体化措置として重要な意味をもつ更正の理由附記(青色更正について所税155条2項・法税130条2項、白色更正については税通74条の14第1項括弧書。【148】)の観点から、肯定的に評価されるべきである。更正の理由附記の趣旨は、①税務官庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制すること(処分適正化機能)と②処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与えること(争点明確化機能)にある(最判昭和38年5月31日民集17巻4号617頁。【148】)。 争点主義は、このように、課税処分取消訴訟における納税者の権利救済に資するが、しかし、前記の実体的真実主義には適合しない結果をもたらすことがある。そこで、その間の調和・バランスを図ろうとする試みがされてきたが、そのような試みとして、まず、課税処分取消訴訟に前置される審査請求手続の争点主義的運営を挙げることができる。 国税不服審判所の創設前の審査請求手続における審理の範囲については、「総所得金額に対する課税の当否を判断するに必要な事項全般に及ぶ」(最判昭和49年4月18日訟月20巻11号175頁)として総額主義の立場が採られていたが、国税不服審判所の創設に関する国税通則法改正に当たって、参議院大蔵委員会は、昭和45年3月24日、「政府は、国税不服審判所の運営に当つては、その使命が納税者の権利救済にあることに則り、総額主義に偏することなく、争点主義の精神をいかし、その趣旨徹底に遺憾なきを期すべきである。」との附帯決議を行った。 この附帯決議の趣旨は、国税不服審判所において「新たな調査は争点で、審理は総額で」という争点主義的運営によって具体化されてきたが、これは、国税不服審判所を原処分の維持や課税漏れの発見のために運営するのではなく、納税者の権利救済の観点から、審査請求人たる納税者が自己の正当な権利利益を安心して主張することができるようにするために、総額主義による審理に一定の制限を加えようとする運営のあり方であると解される。なお、同様の試みは訴訟においても可能である。すなわち、訴訟技術論としては、総額主義の下で処分理由の差替えに係る国側(税務官庁)の主張を制限することによっても、課税処分取消訴訟のいわば「争点主義的運営」が可能である。 次に、「基本的課税要件事実の同一性論」ともいうべき考え方を挙げることができる。これは、納税者の権利救済を重視して争点主義の立場を基本にしつつ、基本的な課税要件事実の同一性が失われない限りにおいてのみ、理由の差替えを認めるという考え方(【165】、金子宏『租税法〔第22版〕』(弘文堂・2017年)1008頁参照。なお、最判昭和56年7月14日民集35巻5号901頁の傍論的判示も参照)であり、これを採用したものと解される裁判例もある。 東京地判平成22年3月5日税資260号順号11392/裁判所ウェブサイトは次のように判示している(下線筆者。同控訴審・東京高判平成22年12月15日税資260号順号1157/裁判所ウェブサイトもこれを基本的に引用し是認した)。 Ⅳ まとめ 租税債務関係説のパラドックスは、以上で述べたように、課税処分取消訴訟における総額主義及び弁論主義との結びつきによって要件裁量が結果的に容認されることになる現象であり、手続的保障原則の観点から、その克服が試みられてきた。その克服の試みとして、国税不服審判所の争点主義的運営や基本的課税要件事実の同一性論という制度的あるいは理論的な試みを若干検討した。 租税債務関係説のパラドックスを克服するためには、それらの制度的・理論的試みに加えて、納税者の側からは、課税処分取消訴訟において課税要件事実の認定に関する国側(税務官庁)の主張・立証に十分に対抗し得る説得力ある主張・立証(対等な攻撃防御)を尽くすことによって、事実認定に関する税務官庁の裁量の余地を狭め、以て、前回みた課税要件法の解釈の場面での要件裁量否定論の主張と相俟って、要件判断全体を通じて税務官庁の要件裁量の余地を狭めることを試みるべきであろう。 (了)
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【第1回】 「法人税の課税所得計算と損金経理(その1)」 国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦 (※1) 平成30年度予算ベース(国税及び地方税合計103兆1,506億円)で、法人税・法人住民税・法人事業税の占める割合は21.5%である。 (1) 益金と損金の意義 それでは、そもそも「損金経理」とは何だろうか。これを理解するために、まずは「益金」及び「損金」の意義からみていきたい。 法人税の課税標準は、法人の各事業年度における所得の金額である(法法21)。ここでいう「所得」については、法人税法では、次の第22条においてその算定方法に関する基本的な原則を示した規定を置いている。 法人税法第22条の全体像は以下の表の通りとなる。 〇法人税法第22条の全体像 第22条では、まず「所得」については、各事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額とする、と定義している(法法22①)。これは、企業会計における法人の利益の算定方法である損益法、すなわち、一定期間における収益から費用を控除して利益を算定する方法に対応している。この関係を図示すると以下の通りとなる。 〇法人税法における所得と企業会計における利益との関係 上図の通り、益金と収益、損金と費用、所得と利益とはそれぞれ対応関係にあるが、異なる用語を用いているのは、類似しているとはいえ概念が異なるからである(※2)。損金と費用の具体的な相違点については、本連載において事例を交えながら詳述していきたい。 (※2) 金子宏『租税法(第二十二版)』(弘文堂・2017年)320頁。 まず「益金」とは何かをみていくと、第22条第2項によれば、別段の定めのあるものを除き、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受け、その他の取引で、資本等取引以外のものに係るその事業年度の収益をいう、とされている。当該益金は、所得税法にいう「収入金額」に相当するものと解される(所法36)。 次に、法人税法において「損金」の意義を規定しているのは、第22条第3項である。そこでは、損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、以下の各号に掲げる額とする、と規定されている(①~③にそれぞれ矢印(⇒)で示された用語は、企業会計における対応する用語である)。 ここから、損金というのは、費用のみならず損失を含めた広い概念であるということが言える。所得税法に言う「必要経費」及び「資産の取得費」に相当するものと解される(所法37、38)。 また、損金に該当するためには、必要性(necessary expense)の要件を満たせば十分であり、通常性(ordinary expense)の要件を満たす必要はないというのが通説である(※3)。そこから、通常性の要件を満たさない不法ないし違法な支出も、それが利益を得るために直接に必要なものである限り、損金に算入されることとなる。 (※3) 金子前掲(※2)書325頁。 しかし、不動産売買業を営む法人が架空造成費を計上して所得を圧縮する場合のように、架空の経費を計上して所得を秘匿するために要した支出は、所得を生み出すための支出とは言えず、公正処理基準(法法22④)に照らして否定されるべきものであるから、損金には算入されない(最高裁平成6年9月16日決定・刑集48巻6号357頁)。 なお、上記最高裁決定において損金性を否認する際の根拠とした「公正処理基準」とは、法人の各事業年度の所得の計算は原則として企業会計に準拠して行われるべきこと(企業会計準拠主義)を定めた法人税法の基本規定を指す(法法22④、前掲表参照)。 (2) 企業会計準拠主義と「別段の定め」 益金及び損金を規定する法人税法22条2項・3項には「別段の定め」という文言が付されているが、当該文言は法人税法の解釈上、極めて重要な意義を有する。すなわち、別段の定めは、法人税の課税所得計算の原則を定めた第22条の規定に優先して適用されるという関係にあるのである。したがって、法人の課税所得計算は、「別段の定め」があるもの以外についてのみ、企業会計における計算ルールに依拠すること(企業会計準拠主義)になるのである。 わが国の法人税法において企業会計準拠主義が採用(※4)された理由は、一般に、法人の利益(企業会計)と法人の所得(税務会計)とが概ね共通の概念であることから、二度手間を避ける(計算経済性)という意味で、当該手法が採用されたものと解されている(※5)。また、公正処理基準と企業会計準拠主義は、会計基準と法人所得計算との間において一定の調和を図り、便宜性向上や恣意的な課税所得算定の余地を狭め、もって適正な所得算定に寄与するという性格を現在においても有するといえるだろう(※6)。 (※4) 昭和42年度の税制改正で規定された。 (※5) 金子前掲(※2)書330-331頁。 (※6) 濱田洋「国際化の中の確定決算主義」『租税法研究』40号68頁。 一方、このような企業会計準則主義を修正する「別段の定め」とは、具体的にどのような規定を指すのであろうか。別段の定めは、法人税法のみならず租税特別措置法にも規定があるので注意を要する。 まず法人税法の規定においては、第23条(受取配当等の益金不算入)から第64条の4(公益法人等が普通法人に移行する場合の所得の金額の特例)までと、第81条の4(連結法人の受取配当等の益金不算入)から第81条の10(特定株主等によって支配された欠損等連結法人の連結欠損金の繰越しの不適用)を指すものと考えられる。さらに租税特別措置法においては、第42条の4(試験研究を行った場合の法人税額の特別控除)から第68条の3の4(課税所得の範囲の変更等の場合の特例)までと、第68条の9(連結法人が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除)から第68条の96(認定特定非営利活動法人等に対する寄附金の損金算入の特例)を指すものと考えられる。 このように、法人税法は相当なボリュームの別段の定めを有することから、これを「別段の定めの集合体」と称することもある(※7)。 (※7) 渡辺徹也『スタンダード法人税法』(弘文堂・2018年)35頁。 別段の定めは、益金に関する規定もあれば損金に関する規定もある。そのうち損金に関する主たる規定(法人税法第2編第1章第1節第4款(損金の額の計算))は以下の表のとおりであり、本連載で今後適宜触れることになると思われる。 〇損金の額の計算に関する主たる「別段の定め」 (出典) 増井良啓『租税法入門』(有斐閣・2014年)251頁 (※8) 法人税法31条(減価償却資産の償却費の計算及びその償却方法)は同法22条3項の費用計上の要件を定めたもので、別段の定めではないとする見解もある。酒井克彦『プログレッシブ税務会計論Ⅱ』(中央経済社・2016年)130頁参照。 ところで、各事業年度の所得の金額の細目に関する政令への委任を定めた法人税法65条は、果たして「別段の定め」に該当するのであろうか。 これについて通説では、65条は22条から64条の4までにかかる補足的な定め(技術的細目的事項)を政令に委任したものであり、当該規定をもって政令によって新たな「別段の定め」をすることができるものではないとしている(※9)。この点につき、裁判例では以下の通り判示している(大阪高裁平成21年10月16日判決・訴月57巻2号318頁)。 (※9) 渡辺前掲(※7)書34頁。 (了)
〈平成30年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第3回】 (最終回) 「配偶者控除及び配偶者特別控除に関するQ&A」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 シリーズ最終回も配偶者控除及び配偶者特別控除の改正に係る年末調整実務のうち、筆者が登壇したセミナー等で実際に質問の多かった事項を中心に、Q&A形式で解説を行う。 取り上げる事項は以下のとおりである。 なお、以下の拙稿にも年末調整に関係する事例を紹介しているので、あわせてご参照いただきたい。 - 解 説 - 平成29年分以前の年末調整では、配偶者が控除対象配偶者に該当する場合には、扶養控除等申告書の「控除対象配偶者」欄にその氏名等が記載されていれば、配偶者控除の適用を受けることができた。 しかし、平成30年分以後の年末調整で配偶者控除の適用を受けるには、扶養控除等申告書の「源泉控除対象配偶者」欄の記載の有無にかかわらず、給与等の支払者に配偶者控除等申告書を提出する必要がある(所法195の2①)。 - 解 説 - 源泉控除対象配偶者とは、合計所得金額が900万円以下の所得者と生計を一にする配偶者(青色事業専従者及び白色事業専従者(以下、青色事業専従者等という)を除く)のうち、合計所得金額が85万円以下である者をいう(所法2①三十三の四)。 一方、配偶者控除の対象となる控除対象配偶者とは、合計所得金額が1,000万円以下の所得者と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除く)のうち、合計所得金額が38万円以下である者をいう(所法2①三十三の二)。また、配偶者特別控除の対象となる配偶者は、合計所得金額が1,000万円以下の所得者と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除く)のうち、合計所得金額が38万円超123万円以下の者である(所法83の2①)。 これらの配偶者について、所得者本人と配偶者の合計所得金額に応じた関係を示すと次の表となる。本シリーズ【第1回】で解説したとおり、所得者と配偶者の合計所得金額が表の の部分に該当する場合には、源泉控除対象配偶者に該当しない配偶者について年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けることができる。 :扶養控除等申告書に源泉控除対象配偶者として記載 :扶養控除等申告書に源泉控除対象配偶者として記載不可 :配偶者控除等申告書により配偶者控除適用 :配偶者控除等申告書により配偶者特別控除適用 - 解 説 - 配偶者控除の対象となる控除対象配偶者とは、合計所得金額が1,000万円以下の所得者と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除く)のうち、合計所得金額が38万円以下である者をいう(所法2①三十三の二)。 特定口座の源泉徴収選択口座内で生じた上場株式等の譲渡による所得で、確定申告をしないことを選択したものは、控除対象配偶者を判定する際の合計所得金額に含まれない(所基通2-41、措法37の11の5①、措令25の10の12、措通37の11の5-1)。 本事例では、A(所得者本人)の合計所得金額が1,000万円以下であり、B(配偶者)の合計所得金額は0円となることから、BはAの控除対象配偶者に該当する。よって、Aは、給与等の支払者に配偶者控除等申告書を提出することにより、年末調整で配偶者控除の適用を受けることができる。 〈参考〉合計所得金額の計算に含まれない所得の例 - 解 説 - 配偶者控除等申告書に記載する合計所得金額は、当該申告書を提出する時点での見積額となることから、実際の額と異なる場合もあると考えられる。 見積額と実際の額とが異なることにより配偶者控除額又は配偶者特別控除額に増減が生じたことについて、所得者から、その年分の源泉徴収票を作成するときまで(翌年1月31日)に申出があったときは、給与等の支払者は税額の再計算を行うことができる(所法226①、所基通190-5)。 なお、年末調整後に異動した所得控除については、上記の再調整の方法によらないで、所得者が確定申告をすることにより税額を精算することもできる(所基通190-5(注))。 - 解 説 - 配偶者控除等申告書には、所得税法上、次の事項を記載することが求められている(所法195の2①)。 したがって、判定結果である「区分Ⅰ」欄へ記載するだけでなく、「あなたの合計所得金額(見積額)」欄及び「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」欄にも金額を記載することが必要となる。 国税庁ホームページで公開されている「配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに関するFAQ」も参考にされたい。 (連載了)
国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第23回】 「国外転出時課税と相続税」 税理士 菅野 真美 - 質 問 - 私(日本在住の日本人)は、同族会社のオーナー社長です。自社株は100%(時価3億円)私が保有しています。妻は既に他界しており、子供は2人で、長男は私の会社に勤務し後継者にしようと考えています。長女は外国人と結婚して外国に居住しています。 相続対策として税理士から生前贈与や事業承継税制の提案をされますが、あまりピンときません。相続が発生した時点で、子供たちで話し合って、株式は長男、金融資産は長女が受け取るようにすればいいかなと思っていますが、問題ありませんでしょうか。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷海外に在住の日本人が相続人の場合の相続税 相続税の納税義務者は、近年、頻繁に改正されている。被相続人も相続人も日本人である場合で、被相続人の相続時点の住所が日本にある場合は、相続人が相続時点で日本に住所を有していない場合も、相続により取得した国内財産・国外財産のすべてについて相続税が課されることになる(相法1の3①二イ、2①)。 相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内である(相法27)。相続人が日本に住所を有していない場合は、その者の相続税の申告納税については納税管理人が行わなければならない(国通法117)。また、相続税の納税地は、被相続人が日本に住所を有していたことから、被相続人の死亡時の住所地になる(相法62、相法附則3)。 ▷国外転出時課税の導入経緯 平成27年度の税制改正で、国外転出時課税制度(所得税)が導入された。これは制度導入前、日本国内で有価証券を譲渡した場合は所得税と住民税が課されるが、外国に移住して日本の非居住者となってから譲渡した場合は、日本での所得税課税は原則的には非課税となり(所法161①三、所令281)、また、日本での所得税課税がなされる場合であっても租税条約により非課税となる場合もある(所法162)。このことを利用して、一部の富裕層が海外に移住して有価証券を売却する行為が見受けられ、問題となったことがその背景にある。 なお、日本に限らず諸外国でも同様の問題が生じていたことから、その対策として欧米先進国ではすでに出国税等が設けられており、日本の国外転出時課税は他国に比べ遅れての導入といえる。 ▷国外転出時課税は相続時も対象 国外転出時課税は、1億円以上の有価証券等を有する人が国外に転出して日本の非居住者になる時点で、有価証券等の譲渡があったものとみなして課税されるものであるが(所法60の2)、有価証券所有者が非居住者となる場合だけでなく、居住者が非居住者に贈与や相続をした場合も対象とされた。 なぜなら現行の日本の税制では、贈与や相続時点では所得税の課税がされない代わりに(所法59)、受贈者や相続人は贈与者や被相続人の取得費を引き継ぎ(所法60)、将来、受贈者や相続人が資産を売却した時点で所得税課税を精算するような課税の仕組みだからである。 これは相続・贈与時点での二重課税の負担を回避しても、将来、売却した時点で課税ができることを前提に制度設計が行われたからと考えられるが、非居住者に資産が移った後では課税の精算ができない場合もあるため、相続・贈与時点を捉えて国外転出時課税を設計したものと考えられる。 なお、贈与の場合については本連載【第21回】を参照されたい。 ▷相続時の国外転出時課税と準確定申告 相続時に国外転出時課税が生ずる可能性があるのは、被相続人が相続時点で有価証券等を1億円以上有している場合で、かつ、相続人等に非居住者がいる場合である(所法60の3)。 国外転出時課税は、準確定申告に含めて申告納税をする必要がある。本件のように相続人が2人いて、1人が非居住者、もう1人が居住者の場合、被相続人が遺言を残さず、また、遺産を相続人間でどのように分割するかが準確定申告期限までに決まっていない場合は、法定相続分で相続人が有価証券等を取得したものとして、非居住者が取得したものとみなされた部分が国外転出時課税の対象となる(※)。例えば、有価証券の評価額が3億円で取得費が5,000万円の場合は(3億円-5,000円)×50%=1億2,500万円の譲渡所得について所得税等が約1,900万円課されることになる。 (※) 準確定申告期限までに分割が決まり非居住者に財産の移転がない場合は、国外転出時課税の対象にはならないと考える。「平成28年度 税制改正の解説」(財務省)117頁では「被相続人の準確定申告書の提出期限において遺産分割が行われていない場合には、民法の規定による相続分により相続財産を取得したものとして「相続又は贈与等により非居住者に有価証券等が移転した場合の譲渡所得の特例(所法60の3。以下「相続等時課税制度」といいます。)」を適用することとなると考えられます。」と記載されている。 準確定申告であるから、本件の場合、相続人2名が被相続人の所得税を申告し、納税額の2分の1相当額を納付することとなる(国通法5)。この場合の自社株の評価額は財産評価基本通達でなく所得税基本通達59-6に基づくことから、譲渡者が中心的同族株主である場合は、小会社の評価となり、かつ、純資産価額については、土地、上場有価証券は相続時の時価で評価し、評価差額の法人税額等控除もできない。 ▷相続税の納税猶予を受ける場合の問題点 相続税の納税猶予を行うと、5年又は10年間国外転出時課税に対応する所得税等の納税を猶予することができる。しかし、この納税猶予を行うためには、担保提供等の手続きを準確定申告期限までに行わなければならない(所法137の3)。 ここで、国税通則法に基づき、他に担保提供できる資産がない場合は、非上場会社の株式も担保として提供することはできる(所基通137の2-8)。しかし、担保提供のためには株券を供託しなければならず(国通達54②)、通常、非上場会社においては株券を発行していないことから、株主総会の特別決議で定款変更を決議する必要がある(会社法466、309)。 これら一連の手続きを、相続開始から4ヶ月間で完了することは至難の業である。 ▷国外転出時課税を失念していた場合は・・・ 準確定申告期限までには分割が決まらなかったが、相続税の申告期限までに分割が決まり、日本の居住者である長男が自社株をすべて取得し、日本の非居住者である長女が自社株を取得しなかった場合、国外転出時課税の対象とはならない。それでは、このような場合、所得税の手続きは不要かというと、そのような制度設計とはなっていない点に注意が必要である。 この場合、一旦、国外転出時課税として申告納税し、遺産分割で非居住者が有価証券を取得しないと確定した日から4ヶ月以内に、更正の請求を行わなければならない(所法153の5)。このため準確定申告で国外転出時課税を行うことを失念し、更正の請求期限を過ぎた場合は納税だけ確定してしまうというリスクが生じ得る制度設計になっている。 では、このようなリスクを避けるためにどうすればいいかというと、長男に自社株を相続させる旨の遺言を作成することにより、相続発生時点から居住者が取得することになるので、国外転出時課税のリスクはないと考える。 (了)
企業の[電子申告]実務Q&A 【第12回】 「認証手続の簡便化」 SKJ総合税理士事務所 税理士 坂本 真一郎 ●○●○解説○●○● 平成30年度の税制改正前は、法人税等の書面申告書については、法人税法第151条の規定により、代表者及び経理責任者の自署・押印が必要とされ、電子申告についても、オンライン化省令第5条等により、原則として、代表者及び経理責任者の電子証明書で申告等データに電子署名を付与して送信することが必要でしたが、例えば、株主総会の決議等により法人代表者に変更があった場合、申告期限までに新代表者の電子証明書の取得が間に合わず、そのために電子申告できずに書面で申告書を提出するという事例も見受けられました。 このような状況を踏まえて、2018年4月以後の申請等からは、e‐Taxによる申告等データの送信について、法人代表者からあらかじめ委任を受けた当該法人の役員又は社員の電子署名等を付与して送信する場合には、当該代表者の電子署名等は不要とされました。ただし、この場合、適正な運用を担保するため、当該代表者から委任を受けたことを証する電子委任状(※)を申告等データに添付して送信する必要があります。 (※) 総務省及び経済産業省は2018年1月1日に「電子委任状の普及の促進に関する法律(平成29年法律第64号)」を施行し、代表者が電子契約や電子申請の権限を実務担当者に委任したことを電子委任状で証明できるようにしました。これにより「委任された権限が記録された電子委任状の機能を有する電子証明書」を取得した実務担当者が、代表者に代わって電子契約や電子申請をできるようになるので、デジタル化による生産性向上が期待されています。 電子委任状は、電子申告等の都度、申告等データに添付して提出する必要がありますが、例えば、委任期間を代表者任期中など長期間で指定して作成しておけば、申告・申請等の都度、代表者の電子署名を付与するという手間はなくなります。 なお、法人税等の書面申告書における経理責任者の自署・押印制度が廃止されたことに伴い、電子申告における経理責任者の電子署名等についても不要となりました。 【法人納税者の認証手続の簡便化】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出典:e-Taxホームページ) ~電子申告における電子委任状の取り扱いについて~ 【国税(e-Tax)の場合】 電子委任状について、国税庁はe‐Taxホームページ「平成30年度税制改正に伴い実施するe‐Taxの利便性向上施策について」において、以下の説明文を掲載しています(一部抜粋・下線筆者)。 【地方税(eLTAX)の場合】 一方、一般社団法人地方税電子化協議会はeLTAXホームページで「平成30年4月23日付 地電協第34号」により「法人の代表者から委任を受けた者の署名緩和について」という以下の周知文書を掲載しています(一部抜粋・下線筆者)。 【e-TaxとeLTAXにおける電子委任状の取り扱いの違い】 以上のように、現状、e‐Taxの場合には電子委任状への代表者の電子署名が必須とされているのに対し、eLTAXの場合には任意とされているため、企業担当者としては対応に苦慮するところです。 しかしながら、平成30年6月末に民間企業2社(セコムトラストシステムズ株式会社及び株式会社NTTネオメイト)が総務省及び経済産業省から「電子委任状取扱業務」の第1号認定を取得しており、この電子委任状は、代表者からの委任内容をあらかじめ受任者の電子証明書の中に記録しておく「電子証明書方式」と呼ばれるタイプですので、今後、当該方式がe‐TaxとeLTAX双方に採用されることになれば、申告等データに当該電子証明書で電子署名を付与するだけで送信することができ、別途委任状を作成して代表者の署名をもらう必要も無くなり、問題点は解消されるでしょう。 (了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例68(法人税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆確定申告書の提出期限の延長の特例(法法75の2) 申告書を提出すべき内国法人が、定款等の定めにより、当該事業年度以後の各事業年度終了の日の翌日から2月以内に当該各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合には、納税地の所轄税務署長は、その内国法人の申請に基づき、当該事業年度以後の各事業年度の当該申告書の提出期限を1月間延長することができる。 この特例の適用を受けようとする場合には、当該事業年度終了の日までに、一定の事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署に提出しなければならない。 ◆「青色申告の承認申請書」の提出(法法122①②) 「青色申告の承認申請書」は青色申告の承認を受けようとする事業年度開始の日の前日までに、設立初年度の場合には、設立の日以後3ヶ月を経過した日と設立後最初の事業年度終了の日とのいずれか早い日の前日までに、納税地の所轄税務署に提出しなければならない。 ◆青色欠損金の繰越控除(法法57①) 法人が欠損金の生じた事業年度において青色申告書を提出している場合には、法人税の計算上、最長で10年間(平成30年3月31日以前は9年間)繰り越して所得金額を計算することができる。 ◆無申告又は期限後申告の場合における青色申告の承認の取消し(国税庁平成12年7月3日付事務運営指針4) 青色申告の承認の取消しは、2事業年度連続して期限内に申告書の提出がない場合に行うものとする。この場合、当該2事業年度目の事業年度以後の事業年度について、その承認を取り消す。 ◆青色申告の承認申請の却下(法法123) 税務署長は、青色申告の承認申請書の提出があった場合において、その申請書を提出した内国法人につき、「青色申告の承認の取消し」の規定による通知を受け、又は「青色申告の取りやめ」に規定する届出書の提出をした日以後1年以内にその申請書を提出したときは、その申請を却下することができる。 (了)
M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -財務・税務編- 【第14回】 「労働債務の分析(その2)」 -従業員に対する退職給付債務- 公認会計士 石田 晃一 ←(前回) | (次回)→ ▷従業員に対する退職後給付 従業員に対する退職給付は、一定の期間にわたって労働を提供したこと等の事由に基づき、退職以後に支給されるものであり、積立方法として内部/外部積立、支給方法として一時金/年金支給の別に大別されるほか、事業主が外部積立する掛金の追加的な拠出義務を有するか否かによって、確定給付制度と確定拠出制度に区分される。 退職給付の性格としては功績報償、生活保障等とする考え方もあるが、日本の会計基準では労働対価の後払として整理されており、退職給付は、その発生が当期以前の事象に起因する将来の特定の費用的支出であるとされる。 確定給付制度の場合には、退職によって発生が見込まれる退職給付債務から、退職に備えて外部に積み立てられた年金資産等を差し引くことによって、未積立部分が「退職給付に係る負債」(もしくは退職給付引当金)として計上されることになるが、確定拠出制度の場合には、外部への要拠出額をもって費用処理すれば足りるため、未拠出の金額がある場合に限ってこれを未払金として計上することになる。 なお、小規模企業等で従業員数が少なく、数理計算上の見積もり計算の信頼性が維持できない場合等は、退職給付に係る負債(もしくは退職給付引当金)の計算を期末要支給額の見積もり計算等によることができる、とされている。 ◎退職給付債務の調査における留意点 こうした会計処理は、上場企業等では一般的なものとなっているが、非上場企業で採用されているケースは必ずしも多くなく、特に税務基準による決算を行っている中小企業等にあっては、従業員に対する退職後給付が貸借対照表に反映されていることは稀であろう。こうした場合、対象会社の規模に応じて、年金数理計算の実施を要請するか、期末要支給額の計算を要請する等の対応が必要となる。 なお、期末要支給額は通常、「自己都合退職」の場合の係数で試算されるが、中途退職者が少なく、定年まで勤務する従業員が多い会社の場合は、一般的には要支給額が多くなることの多い「会社都合退職」の場合の係数の採用も検討の余地があるだろう。 ◆中小企業の退職金支給月数 (出所:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(平成28年版)」) また、退職金の受給権が在職期間3年未満の従業員には発生しないケース等も多いが、例えば近年になって業容が急拡大している会社等の場合、受給権の発生していない従業員が多く在籍している場合もあるので、従業員の在職期間や入社年月等に関する情報にも留意が必要といえよう。 【実務事例14-1】 自動車部品の製造を行っていたM社は、業績の悪化に歯止めがかからず、同業他社に買収されることとなった。M社では退職給付会計を適用しておらず、退職給付債務が計上されていなかったため、M社の退職給付債務は簡便的に「期末自己都合要支給額」で算定された。 その後、買収スキームとして事業譲渡方式が採用されることとなり、全従業員がいったん会社都合で退職した後、再雇用されることとなったため、買収価格の算定上、「会社都合要支給額」で退職給付債務を改めて計算することとなった。 ▷複数事業主制度 複数の事業主が共同して1つの企業年金制度を設立する場合を「複数事業主制度」と呼ぶ。連合設立型厚生年金基金、総合設立型厚生年金基金等がこれに当たる。 複数事業主制度においては、退職給付債務等の合理的な基準により自社の負担に属する年金資産等の計算をした上で確定給付制度の会計処理を行うこととされているが、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができない場合には、確定拠出制度に準じた会計処理を行うこととされる。 ◎複数事業主制度に関する留意点 確定拠出に準じた会計処理が行われている場合であっても、年金資産の積立不足等が多額に存在する場合には、当該積立不足額について、加盟会社に対して穴埋めのための追加掛金の拠出等が要請される場合もある。さらに、一部の加盟会社が脱退する際、本来であればその会社が負担しておくべきであった積立不足が放置されたまま、残存会社に負担が課せられるケースが社会問題となり、新聞紙上を賑わせた例もあった。そのため、加盟している年金制度全体の直近の積立状況等についても留意が必要である。 ▷早期割増退職金 業績の悪化している会社等では希望退職・早期退職等を募るケースがある。こうしたケースでは通常の退職金に上乗せする形で割増退職金が一時的に支給されることが多い。 割増退職金は勤務期間を通じた労働の提供に伴って発生した退職給付という性格は有しておらず、むしろ将来の勤務を放棄する代償、失業期間中の補償等の性格を有するものとされることから、従業員が希望退職等に応募し、かつ、当該金額が合理的に見積もられることとなった時点で費用処理することとされている。 ◎早期割増退職金に関する留意点 M&Aに際してこうした希望退職等を募るケースは多くはないと思われるが、退職金の支払が買収後に行われるような場合には、割増部分を含めた総額が未払金として多額に計上されることになる。損益面では割増支給部分が一時的な支出として多額に発生する一方、将来におけるレガシーコストは大幅に削減されることから、いずれにしても大規模な希望退職等は将来の事業計画を通じて、買収価格に相応の影響を与えることになろう。 ▷退職給付債務の調査手続 M&Aデューデリジェンスにおける退職給付債務に関する主な調査手続を挙げると以下のとおりである。 (了)
「収益認識に関する会計基準」及び 「収益認識に関する会計基準の適用指針」の徹底解説 【第6回】 仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋 9 【STEP5】履行義務の充足による収益の認識 【STEP5】では収益認識の時点及び方法を決定する。 企業が履行義務を一定の期間にわたり充足するものであると判断したには、当該履行義務は一定の期間にわたりで充足される(一定の期間で収益を認識する)ものとされ、一定の期間にわたり充足するものではないと判断した場合には、当該履行義務は一時点で充足される(一時点で収益を認識する)ものとされる(基準38、39)。 そのため、【STEP2】で識別した履行義務のそれぞれについて、企業は、契約開始時に、企業が履行義務を一定の期間にわたり充足するのか、それとも一時点で充足するのかを判断しなければならない。 具体的には、【STEP5】では以下の3つを検討する。 (1) 一定の期間にわたり充足する履行義務かどうか 以下の①から③のいずれかの要件に該当する場合には、資産に対する支配(6(連載第3回)(4)参照)が顧客に一定の期間にわたり移転することにより、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する(基準38)。 ① 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること 当該要件には、仮に他の企業が顧客に対する残存履行義務を充足する場合に、企業が現在までに完了した作業を当該他の企業が大幅にやり直す必要がない(※)場合には、企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受するものに該当する(適用指針9)。 例えば、清掃サービス、輸送サービス、経理事務の請負業務等の日常的又は反復的なサービスの提供が該当する(適用指針115)。 (※) 大幅なやり直しがないかどうかを判定する場合には、以下の両方の仮定を置く(適用指針9)。 ●企業の残存履行義務を他の企業に移転することを妨げる契約上の制限又は実務上の制約は存在しない。 ●残存履行義務を充足する他の企業は、企業が現在支配する資産からの便益を享受しない。また、当該他の企業は、履行義務が当該他の企業に移転した場合でも企業が支配し続けることになる当該資産の便益を享受しない。 なお、当該①の要件は、企業の履行によって顧客が便益を直ちに享受しない契約に適用されることを意図しておらず、企業の履行によって仕掛品等の資産が生じる又は資産の価値が増加する契約については、基準第38項(2)(上記②参照)又は(3)(上記③参照)の要件を満たすかどうかを判定する(基準135)。 ② 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じる又は資産の価値が増加し、当該資産が生じる又は当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当該資産を支配すること 当該要件を判定するにあたっては、基準第37項(資産に対する支配)の定め(6(連載第3回)(4)参照)を考慮する(基準136)。 例えば、顧客の土地の上で建物の建設を行う工事契約の場合や顧客の建物内で行うシステム開発は、通常、顧客が建物やシステムを物理的に占有していることから、顧客は企業の履行から生じる仕掛品を支配している。 なお、企業が顧客との契約における義務を履行することにより生じる資産又は価値が増加する資産は、有形又は無形のいずれの場合もある(基準136)。 ③ 企業が義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じ、かつ、義務の履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有していること 例えば、コンサルティングサービスのように顧客固有のサービスなどに適用できる可能性がある。 一部の財又はサービスについては、上記①又は②の要件を満たすことが困難な場合があるため、当該要件が定められている(基準137)。 ③の要件については、2つに分けることができるため、以下で(ⅰ)と(ⅱ)の2つに分けて解説する。 (ⅰ) 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること 資産を別の用途に転用することができるかどうかの判定は、契約における取引開始日に行う。契約における取引開始日以後は、履行義務を著しく変更する契約変更がある場合を除き、判定を見直さない(適用指針10)。また、顧客との契約が解約される可能性は考慮しない(適用指針116)。 (ⅱ) 企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること 履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有している場合とは、契約期間にわたり、企業が履行しなかったこと以外の理由で契約が解約される場合(例えば、顧客が契約を顧客側の理由で解約した場合)に、少なくとも履行を完了した部分についての補償を受ける権利を有している場合をいう(適用指針11、121)。 履行を完了した部分についての補償額は、合理的な利益相当額を含む、現在までに移転した財又はサービスの販売価格相当額である。合理的な利益相当額に対する補償額は、以下のいずれかによる(適用指針12)。 また、履行を完了した部分について対価を収受する権利の有無及び当該権利の強制力の有無の判定にあたっては、契約条件及び当該契約条件を補足する又は覆す可能性のある法令や判例等を考慮する。 当該考慮にあたっては、例えば、以下を評価することも含まれる(適用指針13)。 なお、契約で示される支払予定は、顧客が支払う対価の時期及び金額を定めているものであるが、必ずしも、企業が履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有しているかどうかを示すものではない。例えば、契約により顧客から受け取った対価が、企業が履行しなかったこと以外の理由により返金されることが定められている場合もある(適用指針122)。 (2) 一定の期間にわたり充足する履行義務(進捗度の測定) 一定の期間にわたり充足される履行義務の場合、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき一定の期間にわたり収益を認識する(基準41)。 進捗度の見積り方法には、「アウトプット法」と「インプット法」がある。見積り方法の決定にあたっては、財又はサービスの性質を考慮する(適用指針15、17、20)。 原価比例法が原則的な方法ではないため、各社で売上取引種類ごとに実態に即した方法を選択する必要がある。 また、進捗度の見積り方法は、類似の履行義務及び状況については、首尾一貫した方法を適用する(基準42)。 ① アウトプット法の留意点(適用指針18、19、123) ▷選択したアウトプットが履行義務の充足に係る進捗を忠実に描写するような方法で、アウトプット法を適用する。 ▷例えば、生産単位数又は引渡単位数に基づくアウトプット法において、企業の履行により顧客が支配する仕掛品又は製品が決算日に生産されるが、当該仕掛品又は製品がアウトプットの見積りに含まれていない場合には、企業の履行を忠実に描写していない。したがって、この場合、アウトプット法は適切でない。 ▷アウトプット法の欠点は、履行義務の充足に係る進捗度を見積るために使用されるアウトプットが直接的に観察できない場合があり、過大なコストを掛けないと必要な情報が利用できない場合があることである。 ▷【簡便法】提供したサービスの時間に基づき固定額を請求する契約等、現在までに企業の履行が完了した部分に対する顧客にとっての価値に直接対応する対価の額を顧客から受ける権利を有している場合には、請求する権利を有している金額で収益を認識することができる。 ② インプット法の留意点(適用指針20、21、22、125) ▷企業のインプットが履行期間を通じて均等に費消される場合、収益を定額で認識することが適切となることがある。 ▷顧客に財又はサービスに対する支配を移転する際の企業の履行を描写しないものの影響は、インプット法に反映しない。 ▷インプット法の欠点は、インプットと財又はサービスに対する支配の顧客への移転との間に直接的な関係がない場合があることである。例えば、履行義務を充足するために生じた想定外の金額の材料費、労務費又は他の資源の仕損のコストは、契約の価格に反映されていない著しく非効率な企業の履行に起因して発生したコストであるため、当該コストに対応する収益は認識しない(以下(ⅰ)参照)。 ▷コストに基づくインプット法を使用するにあたっては、以下の(ⅰ)又は(ⅱ)の状況において、履行義務の充足に係る進捗度の見積りを修正するかどうかを判断する。 (ⅰ) 発生したコストが、履行義務の充足に係る進捗度に寄与しない場合 例えば、契約の価格に反映されていない著しく非効率な履行に起因して発生したコストに対応する収益は認識しない。 (ⅱ) 発生したコストが、履行義務の充足に係る進捗度に比例しない場合 インプット法を修正して、発生したコストの額で収益を認識するかどうかを判断する。例えば、契約における取引開始日に以下の(ア)から(エ)の要件のすべてが満たされると見込まれる場合には、企業の履行を忠実に描写するために、インプット法に使用される財のコストの額で収益を認識(財のコスト=収益の認識額と)することが適切である可能性がある。 (ア) 財が別個のものではないこと (イ) 顧客が財に関連するサービスを受領するより相当程度前に、顧客が当該財に対する支配を獲得することが見込まれること (ウ) 移転する財のコストの額について、履行義務を完全に充足するために見込まれるコストの総額に占める割合が重要であること (エ) 企業が財を第三者から調達し、当該財の設計及び製造に対する重要な関与を行っていないこと(ただし、企業が本人に該当する場合(11.(連載第7回)参照)) ③ 進捗度を合理的に見積ることができない場合 進捗度を合理的に見積ることができない場合の会計処理として「(ⅰ)原価回収基準」と「(ⅱ)契約初期段階の会計処理」がある。 (ⅰ) 原価回収基準 履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができないが、当該履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれる場合には、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる時まで、一定の期間にわたり充足される履行義務について原価回収基準により処理する(基準45)。つまり、回収することが見込まれる費用(原価)の金額と同額の収益を認識する(基準15)。 (ⅱ) 契約初期段階の会計処理 原価回収基準にかかわらず、一定の期間にわたり充足される履行義務について、契約の初期段階において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができない場合には、当該契約の初期段階に収益を認識せず、当該進捗度を合理的に見積ることができる時から収益を認識することができる(適用指針99)。これは、契約初期段階のみ認められている会計処理である。 ④ 進捗度の測定値の見直し 履行義務の充足に係る進捗度は各決算日に見直し、当該進捗度を合理的に見積ることができるか否かについても各決算日に見直す(基準43、154)。 この見直しにおいて、契約における取引開始日後に状況が変化し、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができなくなった場合で、当該履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれるときは、その時点から原価回収基準により会計処理する(基準154)。 ⑤ 代替的な取扱い 代替的な取扱いとして、「工事完成基準」と「船舶による運送サービス」が規定されている。 (ⅰ) 工事完成基準 工事契約について、原則、工事完成基準は認められない。しかし、工事契約について、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合には、一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができる(適用指針95)。つまり、工事完成基準により収益を認識できるということである。 「ごく短い場合」について詳細な規定がないため、各社で「ごく短い場合」とはどれくらいかを決定する必要がある。 受注制作のソフトウェアについても、工事契約に準じて会計処理することができる(適用指針96)。 なお、当該代替的な取扱いは工事契約及び受注制作のソフトウェアに限ったものである。 (ⅱ) 船舶による運送サービス 船舶による運送サービスについて、原則は、1つ1つの顧客に対する貨物の輸送サービスごとに履行義務として認識し、かつ、それぞれの履行義務ごとに収益をいつ認識するかを決定する必要がある。しかし、このような方法は非常に煩雑であるため、以下の代替的な方法が認められている。 一定の期間にわたり収益を認識する船舶による運送サービスについて、一航海の船舶が発港地を出発してから帰港地に到着するまでの期間が通常の期間(運送サービスの履行に伴う空船廻航期間を含み、運送サービスの履行を目的としない船舶の移動又は待機期間を除く)である場合には、複数の顧客の貨物を積載する船舶の一航海を単一の履行義務としたうえで、当該期間にわたり収益を認識することができる(適用指針97)。 (3) 一時点で充足される履行義務 履行義務が一定の期間にわたり充足されるものではないと判定された場合には、一時点で充足される履行義務として、資産に対する支配を顧客に移転することにより当該履行義務が充足される時に、収益を認識する(基準39)。 ここで、一時点(支配)がどの時点かを判断する必要がある。 ① 資産に対する支配 資産に対する支配を顧客に移転した時点を決定するにあたっては、「資産に対する支配」(6(連載第3回)(4)参照)を考慮する。また、支配の移転を検討する際には、例えば、以下の(ⅰ)から(ⅴ)の指標を考慮する(基準40、適用指針14、80~83)。 なお、以下の指標は例示であるため、これをすべて満たさないといかなる場合も支配が移転していないというわけではないし、すべて満たしたからといっていかなる場合も支配が移転しているというわけでもない。 ② 代替的な取扱い 上記①の(v)のとおり、収益認識において出荷基準、着荷基準は原則、認められない。しかし、以下の代替的な取扱いが設けられている。 商品又は製品の国内の販売において、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時(例えば顧客による検収時)までの期間が通常の期間である場合には、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することができる(適用指針98)。 通常の期間である場合とは、当該期間が国内における出荷及び配送に要する日数に照らして取引慣行ごとに合理的と考えられる日数である場合をいう(適用指針98)。具体的には、国内における配送においては、数日間程度の取引が多い(適用指針171)。 上記の取扱いは、国内の販売においてのみ認められるものである。また、数日間程度が何日間かの規定はないため、各社で日数を決定する必要がある。 なお、割賦販売取引について、従来認められていた割賦基準(回収(期限到来)日基準)により収益を認識することは認められない(基準104)。したがって、支配の移転時(商品販売時)に収益を認識し、取引価格に重要な金融要素がある場合は、割引計算等が必要(7(連載第4回)(3-1)参照)となる。 (4-1) 一定の期間にわたり充足される履行義務(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響がある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (4-2) 一時点で充足される履行義務(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響がある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響 (了)