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これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第13回】「登記管理実践にむけた総まとめ」-登記管理体制の完成と法改正等への対応-

これからの会社に必要な 『登記管理』の基礎実務 【第13回】 (最終回) 「登記管理実践にむけた総まとめ」 -登記管理体制の完成と法改正等への対応-   司法書士法人F&Partners 司法書士 本橋 寛樹   はじめに 本連載最終回となる本稿では、これまでの各回で解説してきた、任期管理、定款・議事録管理、株主管理(以下、【第1回】で定義したとおり「登記管理」という)について、その実践方法の総まとめを以下の3ステージに分けて振り返る。 最終的にステージ③に達すれば、登記管理としての体制づくりが完成していることになる。 【登記管理の3ステージ+α】   ステージ①:会社が登記管理をすることを“知らない”から“知っている”へ 登記管理は、会社主導で行うものである。この点を知っているだけで、以下のような「気づいたときには手遅れになっている事態」を防ぐことにつながる。 登記管理を行わずに不利益を被るのは、会社やその代表者である。 これら不利益の詳細については、全体像は【第2回】、任期管理は【第7回】、定款・議事録管理は【第8回】、株主管理は【第10回】でそれぞれ解説しているので、あらためて読み返していただきたい。 会社主導で登記管理を行うことを知ったうえで、次に、登記管理に着手するステージ②に進もう。   ステージ②:登記管理にまず着手してみる 登記管理ができているかを総合的に確認する方法として、役員変更の登記手続に必要な情報を漏れなくスムーズに揃えられるかが1つの指標となる。 「役員変更の登記手続に必要な情報」とは、これまでの各回でみてきた、定款、議事録、株主名簿である。 《役員変更の登記手続の必要な資料を収集する手順》 以下の手順に沿って、チェックポイントを確認してみよう。 各実践方法については、任期管理は【第6回】、定款・議事録管理は【第9回】、株主管理は【第12回】の解説を参照してもらいたい。 ここまでを精査し、情報に漏れがなければ、登記管理としていったん完成された状態となる。しかし、その状態は一時的なものに過ぎないため、中長期にわたって管理するための循環を作る必要がある。 次のステージ③では、中長期にわたって登記管理を行うための観点となる。   ステージ③:登記管理の循環を作る 役員の任期が複数年であり、毎年役員の任期満了に伴う役員変更の登記手続を行う必要がない会社であっても、“毎年役員変更の登記手続があれば”という視点で、毎年定期的な登記管理を行う機会を設けることを推奨する。そのメリットは以下のとおりである。 【“毎年役員変更の登記手続がある”と仮定して、定期的な登記管理を行うメリット】 《実施時期》 “毎年役員変更の登記手続がある”と仮定して、定期的な登記管理を実施する時期としては、毎年決算期に行うことを推奨する。役員の任期到来の時期は、決算期から2、3ヶ月後が多く、決算期に登記管理を実施することで役員変更の登記手続の準備をしやすくなるからである。   +α:法改正等への対応 冒頭に述べたとおり、ステージ③への到達は、登記管理としての体制づくりが実質的に完成していることを意味する。 ただし、近年、商業法人登記に関連する制度等が頻繁に更新されており、中長期に登記管理を行ううえで、これら法改正等への対応が欠かせない。 例えば、平成26年度以降法務省により毎年実施されている「みなし解散」では、12年間にわたり登記手続をせずにいると、たとえ事業活動をしていたとしても、みなし解散の登記が入り、その会社は解散の状態となる。そのため、登記がそのままでは事業活動の継続が困難となる。 また、平成28年10月から登記手続の添付書面となった「株主リスト」が導入されてからは、株主の住所、氏名の情報が必要となり、株主名簿の正確性が、より問われるようになった。 もともと登記管理をしっかりと行っていれば、これらの法改正等への対応はしやすい。 例えば、任期管理を行っていれば、みなし解散になることはまず避けられるだろう。また、株主名簿を整備していれば、株主リストの作成は容易である。 現状の法改正等の頻度や内容からして、今後、登記管理の重要性がよりいっそう問われるのではないだろうか。 なお、登記管理に係る最新の法改正等の情報を入手する際は、下記を参照するとよい。 (連載了)

#No. 258(掲載号)
#本橋 寛樹
2018/03/01

AIで士業は変わるか? 【第4回】「AIで不動産鑑定士の業界はどうなるか」

AIで 士業は変わるか? 【第4回】 「AIで不動産鑑定士の業界はどうなるか」   株式会社東京アプレイザル 代表取締役 不動産鑑定士 芳賀 則人   AIの進化による影響の前に、まず、「不動産鑑定士は何をやっているか」を知っていただく必要があります。 不動産鑑定士にとって最もと言っていいほど重要な業務として、地価公示法に基づく地価公示価格(毎年1月1日付けの評価額が公示される)の鑑定評価があります。 この業務に全ての不動産鑑定士が携わっているわけではありませんが、全国で約3,200人の鑑定士が行っている業務です(筆者も昭和58年~平成25年度まで公示価格の評価員でした)。 この公示価格が相続税評価の元になる路線価(公示価格の80%程度に設定)と固定資産税評価(公示価格の70%に設定)の大元を担っていることは周知の通りです。 公示価格は国土交通省より毎年3月20日頃に発表されますので、国がエイヤッと決めたかのように見えますが、実は公示地点を毎年毎年、不動産鑑定士が周辺の取引事例を収集・選択・分析して、対象不動産である公示地の鑑定評価を行っているのです。 公示地は更地(土地上に何も建っていない)であり、整形な土地を条件とします。ですから、鑑定評価の類型としては基本的な案件であり、難易度は高くありません。 しかし、1公示地点の評価において取引事例を5か所程度集めそれとの要因比較により公示価格を算定するのですが、1年前との時点修正率をどのように判断するのかが、やや難しい判断を必要とします。この取引事例が昨年度のものと比べて明らかに高ければ変動率はプラスになりますし、低ければマイナスになります。 この判断は人間でやっているのが現状です。 また、先ほど「要因の比較をする」と述べましたが、次の4つの要因があります。 これらが鑑定評価において最も重要で基本です。 この4つの項目のうち筆者がいつも悩むのは、③の環境条件です。他の3つは全て定量化(数値化)できますが、環境条件は人によって価値観が違うのと同様に、その地域の雰囲気とか居住性を数値化することを求められますので、この判断は極めて難しいと思っています。 つまり、人間の感性(この感性が人によって違うので困ります)に頼っているのが、現状の鑑定評価なのです。 また、商業地域はもっと複雑です。駅からの距離が50m、いや10m違うだけで、また、道路1本違うだけで人の流れが大きく異なることがあります。それだけで価格が倍になったり半分になったりします。 ただし、商業地域はそのビルの家賃が分かれば収益性が判断できます。収益価格が評価を決める大きなポイントであることは論を待たないでしょう。しかし、利回りも未だに不動産鑑定士の判断によるところが大きいのです。 ここで、今までの論についてAI化が可能かどうか考えてみます。 まずは取引事例の分析です。ただし、今のところ全ての売買取引を事例化する仕組みが確立されていません。国土交通省により取引当事者に「その値段はいくらだったか」をアンケ―ト方式によりお願いベースで聞くに止まっています。 このため、公示地1ポイントごとに比較可能なものはせいぜい10件ぐらいの事例しかなく、AIを使うほどのデータがそろっていないのが実情です。AIを使うには、すべての取引当事者に強制的に価格を提示させて、データベース化することが必要です。個人情報保護法との兼ね合いで、ここがネックになると思います。 逆にいうと、取引事例、例えば市区町村ごとに何千件単位の数がそろい、環境条件を町や丁ごとに数値化させ、さらに個別的な要因の格差付けを決めておけば、大いに可能性が出てきます。これは相続税の路線価評価も固定資産税評価も同様です。あくまでも筆者の感覚ですが、5年後には公示地のAI化が進んでいる気がします。 また、先に述べた収益価格を決める最も重要な還元利回りも、多くのデータベース(物件によってかなり異なるのでデータ化が困難かも)が必要になりますので、容易ではありません。 しかし、一般の鑑定評価において標準的な土地の鑑定は、それほど頻度が高くありません。特に郊外地主層が所有する土地は(元々の農地が切り売りされたり、道路や公園に取られたり、ハウスメーカーの言うままに建てたり等)、相続において相続人の間で分割する上でも難しい判断が求められる、かなり個性豊かな土地が多いのが実態です。 さらに、会社(中小企業や同族法人)所有地の場合、権利関係が複雑なケースが多いのが特徴です。親会社・子会社・社長親族共有などでぐちゃぐちゃな状態です。 つまり、公示地のような典型的な更地や標準的な土地は少ないのです。 いわば、個性の塊のような土地を持っている人々にとって、単なる土地評価をすれば良いわけではなく、人との関係性の中において土地評価の位置づけがあるということです。 分かりやすく言うと、コンサルタント的な要素が土地評価に組み込まれないと、そのお客様の役には立たないということです。 少し大げさですが、「人の心の中に土地評価がある」のかもしれません。 これは不動産鑑定の世界だけではないと思われます。建築の世界でも不動産の売買仲介の世界でも、生命保険の世界でも、その人の生活事情や資産背景などが大きく関わってきます。ただし、機械的な計算や判断で済む分野等、AIに任せることは今後どんどん進歩するでしょう。 (了)

#No. 258(掲載号)
#芳賀 則人
2018/03/01

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第6話】「発信主義と到達主義」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第6話】 「発信主義と到達主義」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「中尾統括官、この申告書は・・・期限後申告になるのですか?」 浅田調査官は、席の後ろを通りかかった中尾統括官に、確定申告書の入った封筒を見せた。 「この納税者は『間違いなく3月13日に申告書を郵便局から送った!』と言っているのですが・・・税務署には16日に着いているのです・・・」 中尾統括官は封筒を確認すると、浅田調査官の机にあった税務六法を開く。 「・・・提出期限については、国税通則法22条に書いてあるだろう・・・」 そう言いながら、中尾統括官は、条文を読む。 「これが、いわゆる『発信主義』といわれているものだ。」 中尾統括官は、浅田調査官の顔を見る。 「しかし、申告等の効力の発生時期を判定する一般的基準については・・・税法では特別に規定がなく、民法97条が『到達主義』を採っているから・・・原則として、税法でも、到達主義になるのだけれど・・・」 中尾統括官は、今度はポケット六法を開いて確認する。 「もっとも、民法526条1項では、発信主義を採っている・・・」 中尾統括官は、再びポケット六法をめくる。 「・・・そうすると、国税通則法22条は、なぜ、発信主義を採っているのですか?」 浅田調査官が尋ねる。 「これは、平成18年度税制改正で・・・納税者と税務官庁との地理的間隔の差違による不公平を是正し、納税者の利便性の向上と円滑な申請ができるようにと・・・国税通則法22条が改正されたことによる。その意味で・・・同法は到達主義の例外といえるね。」 中尾統括官の説明に、浅田調査官は頷く。 「国が推進している電子申告(e‐Tax)などが納税者に普及してくると、瞬時に確定申告書などが送達されますから・・・今後このような規定は、重要ではなくなるのかもしれませんね。」 「・・・確かにそうだな。」 今度は、中尾統括官が頷く。 「ところで・・・この規定にある「郵便物又は信書便物」ですが・・・」 浅田調査官は、国税通則法22条を見ながら、尋ねる。 「・・・税務上の申告書や届出書は「信書」に該当するから、税務署にこれらを送付するときには、「郵便物」(第一種郵便物)又は「信書」として送付しなければならないとされていますよね。今回のケースは“ゆうパック”で申告書等が送付されたのですが・・・これについては・・・到達主義が適用されるのですか?」 「これはたしか・・・平成19年の郵政公社の民営化に伴う郵政法の改正で、郵便物は第一種郵便物から第四種郵便物のみとされて・・・これまでの小包郵便物は、郵便法に定める郵便物ではなくなり、荷物扱いとなったんだ。」 中尾統括官は、記憶を辿りながら説明する。 「ということは・・・ゆうパックに日付の印が押されているのですが・・・これは、提出日の判定には関係ない・・・ということですね。」 浅田調査官は、日付の印が押されたゆうパックを見る。 「それは・・・今言ったように、荷物扱いになるのだから、到達主義によって判断されることになる。」 中尾統括官はキッパリと言う。 「そうですね・・・ということは、この確定申告書は、3月16日に税務署に到達したのだから・・・期限後申告、ということになるのですね。」 浅田調査官は中尾統括官を見る。 「仕方ないな・・・もともと申告書等は、「郵便物」又は「信書」で送付しなければならないのに・・・ゆうパックなどで申告書等を送るからだろう・・・」 中尾統括官の声には、少し怒りが含まれている。 「・・・国税通則法22条では、発信主義が適用されている書類は、次の2種類に分類されている。」 そう言うと、中尾統括官は罫紙にペンを走らせる。 「実際に、ゆうパックで申告書等を提出して到達主義が採られ、期限後申告となったため、税法上の非課税の適用が受けられなくなり過大納付となったことに対して、税理士が損害賠償請求を受けたという事件もあったから、我々も気をつけなければ・・・」 中尾統括官の言葉に、浅田調査官は大きく頷いた。 (つづく)

#No. 258(掲載号)
#八ッ尾 順一
2018/03/01

本誌連載記事から事例を大幅に追加! 『金融・投資商品の税務Q&A』発刊のお知らせ

本誌連載記事から事例を大幅に追加! 『金融・投資商品の税務Q&A』発刊のお知らせ

#Profession Journal 編集部
2018/02/27

《速報解説》 民法(相続関係)等の改正に関する要綱が正式決定、今国会での改正法案審議へ~今後の遺産分割協議に影響のある改正項目も~

《速報解説》 民法(相続関係)等の改正に関する要綱が正式決定、 今国会での改正法案審議へ ~今後の遺産分割協議に影響のある改正項目も~   Profession Journal編集部   法務省の「法制審議会-民法(相続関係)部会」で審議が続けられていた「民法(相続関係)等の改正に関する要綱」が、2月16日の法制審議会総会において正式に決定された。 (※) 民法(相続法制)部会のページでは要綱案を確認することができる。 今回の改正へ向けた動きは、平成25年9月の最高裁判決(非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条規定を違憲と判断)等が契機とされ、時代に即した相続法制に向けた見直しが検討されてきたもの。相続法制検討ワーキングチームから法制審議会へと審議が引き継がれ、平成28年の中間試案及び昨年の追加試案と二度のパブリックコメントを経て決定に至った。 要綱で示された改正項目としては、まず、遺産分割の結果、被相続人の配偶者が住み慣れた居住建物から急に退去させられたり、居住建物を相続した結果老後の生活資金に問題が生じることのないよう、居住建物の所有権を相続により取得した者に対する「被相続人の配偶者の居住権」が創設される。 この居住権には存続期間が終身である「配偶者居住権」(居住建物の全部について無償で使用及び収益する権利)と、居住建物の帰属が決定した日又は相続開始の時から6ヶ月を経過する日のいずれか遅い日までの間に認められる「配偶者短期居住権」(居住建物について無償で使用する権利)とがあり、終身の「配偶者居住権」には被相続人と配偶者との間にこの権利を取得させる旨の死因贈与契約がある場合等、短期居住権に比べてハードルの高い要件が設けられる。 なお、配偶者短期居住権によって受けた利益については配偶者の具体的相続分からその価額を控除することを要しないとされているのに対し、配偶者居住権を取得した場合にはその財産的価値に相当する価額を相続したものとして扱うとしており、この評価方法については財産評価基本通達の改正動向にも注目しておきたい。 さらに配偶者保護の方策として、婚姻期間が20年以上の夫婦間において、被相続人から配偶者に対しその居住建物について遺贈又は贈与をした場合に、持戻し免除の意思表示があったものと推定され遺産分割の対象から除外される規律が追加される。 一方で、かねてより論点のあった、無償で被相続人の療養看護等を続けていた長男の配偶者など、被相続人の財産の維持又は増加に一定の貢献をした相続人以外の親族が、相続人に対しその寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払いを請求できる規律が盛り込まれる。 また平成28年12月の最高裁決定により預貯金債権が遺産分割の対象となったため、遺産分割前に遺産に属する預貯金の払戻しが原則禁止されたものの、相続債務の支払いや相続人の当面の生活費などの事情を踏まえ、遺産に属する預貯金債権の仮払い制度が創設される。仮払い制度には家庭裁判所の判断を要するものと判断を経ずに払戻しが認められるものの2つがあり、後者については払戻し額に上限がある。 上記の他には、自筆証書遺言について保管制度の創設や財産目録の自著を要しない改正が行われる。遺産分割協議における安全性を考慮すると実務家としては従前どおり公正証書遺言による遺言書作成を勧めることになるが、自筆証書遺言による遺言書作成が約7割という日本財団による遺言書に関する調査結果(2016.12)にもあるとおり、自筆にこだわる遺言作成者の要望にも応えることができるようになるともいえよう。 今後は2月20日の川上法務大臣記者会見にもあるように、現在会期中の第196回通常国会へ民法等の改正法案が提出され成立に向け審議されることになるが、改正法の施行時期が来年(2019年)となった場合には、今後の相続対策としてすでに検討を進めている方策に影響のある改正項目も含まれることから、改正内容と実務への影響については早めにおさえクライアントへ周知しておきたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 257(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/02/22

《速報解説》 日本取引所自主規制法人より「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」(案)が公表される~不祥事対応プリンシプルとの両輪で実効性の高い取組みを推進~

《速報解説》 日本取引所自主規制法人より 「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」(案)が公表される ~不祥事対応プリンシプルとの両輪で実効性の高い取組みを推進~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2018年2月21日、日本取引所自主規制法人は、「「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」(案)の策定について」を公表し、意見募集を行っている。 これは、近年、業種を超え、また、規模の大小にかかわらず、上場会社において多くの不祥事が表面化し報道されていることから、不祥事の発生そのものを予防する取組みについてプリンシプルを策定するものである。 日本取引所自主規制法人は、2016年2月に「不祥事対応のプリンシプル」を策定し、不祥事発生後の事後対応に重点を置いた指針を示していたが、今回は、これに加えて、事前対応としての「不祥事予防のプリンシプル」を策定するものである。 意見募集期間は2018年3月14日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 本プリンシプルにおける各原則は、各上場会社において自社の実態に即して創意工夫を凝らし、より効果的な取組みを進めていくためのプリンシプル・ベースの指針となっている。 仮に本プリンシプルの充足度が低い場合であっても、上場規則等の根拠なしに、日本取引所自主規制法人が上場会社に対する不利益処分等を行うものではないとのことである。 「上場会社における不祥事予防のプリンシプル(案)~企業価値の毀損を防ぐために~」として、次の6つの原則とその解説が記載されている。 各原則の内容と「不祥事につながった問題事例」は以下の通りである。 (不祥事につながった問題事例) ▷旧来の慣行を漫然と継続して違反行為を放置 ▷労働基準やハラスメントの認識に外部とのズレ ▷内部告発が適切に報告されず内部通報制度の実効性が欠如   (不祥事につながった経営陣に係る問題事例) ▷事業の実力とかけ離れた短期的目線での利益目標が設定され、会計不正が発生 ▷経営陣や現場マネジメントによって製造現場の実態にそぐわない納期が一方的に設定された結果、現場がこれに縛られ、品質コンプライアンス違反を誘発 (不祥事につながった監査・監督機関に係る問題事例) ▷品質保証部門の業務を実務上支援するために必要十分なリソースが確保されず ▷元財務責任者(CFO)が監査担当部門(監査委員)となり、自身が関与した会計期間を監査 ▷事業ユニットにおける製造部門と品質保証部門の責任者が同一となり、品質保証機能の実効性を毀損 ▷指名委員会等設置会社に移行するも、選解任プロセスにおいてトップの適格性を的確に評価・対処できないなど、取締役会、指名委員会、監査委員会等の牽制機能が形骸化   (不祥事につながった問題事例) ▷経営陣が独断的に利益目標を設定し、達成を繰り返し求めた結果、中間管理層や現場のモラルの低下を招き、全社的に職責・コンプライアンス意識の希薄化を招来 ▷経営陣から実態を無視した生産目標や納期の必達を迫られても現場は声を上げられず、次第に声を上げても仕方がないという認識が蔓延 ▷伝統的な「現場の自立性」を過度に尊重した結果、現場と経営陣の間にコミュニケーションの壁を生じさせ、問題意識や課題の共有が図れず   (不祥事につながった問題事例) ▷社内でコンプライアンス違反に係る指摘がなされても、これを是正する対処や業務改善を行わず ▷過去の不祥事を踏まえ再発防止策を講じたものの、機械的な対応に終始し自律的な取組みとして定着しなかったことから、不祥事予防につながらず   (不祥事につながった問題事例) ▷海外子会社との情報共有基準・体制が不明確で、問題が本社に報告されず ▷許容する独立性の程度に見合った管理体制が未整備 ▷買収先のリスクを事前に認識していたにも関わらず、それに対処する管理体制を買収後に構築せず   (不祥事につながった問題事例) ▷サプライチェーンのマネジメントを怠り、徹底的な原因解明もしないことでステークホルダーの不信感を増大 ▷発注者、元請、下請、孫請という重層構造において、極めて重要な工程であったにも関わらず、委託先の業務実態を把握しようとする意識が不十分 ▷外部委託先担当者に対するセキュリティ権限が適切に管理されず情報漏えいを招く ▷海外の製造委託先工場における過酷な労働環境について外部機関より指摘を受け、ブランド価値を毀損   Ⅲ 適用時期等 2018年3月下旬を目途に正式決定する予定とのことである。 (了)

#No. 257(掲載号)
#阿部 光成
2018/02/22

プロフェッションジャーナル No.257が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年2月22日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.257を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/02/22

山本守之の法人税“一刀両断” 【第44回】「平成30年度税制改正とその問題点」-改正ではなく改革を-

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第44回】 「平成30年度税制改正とその問題点」 -改正ではなく改革を-   税理士 山本 守之   Ⅰ 見直しの内容 平成30年度税制改正は、おおむね次の通りです。 これらをまとめてみると、次のようになります。 ところで、現実に行われたのは、所得税でいえば次のような各種控除の見直しだけです。 1 給与所得控除と公的年金等控除から基礎控除への振替 「働き方改革」を後押しする観点から、給与所得控除から基礎控除への振替を行います。特定の企業や組織に属さず専門分野の能力等を活かしフリーランスとして業務単位で仕事を請負う人や、子育てをしながら在宅で仕事を請負う人や自営業の人などは給与所得控除を受けられないため、基礎控除を手厚くすることで働き方の違いによる「格差」を少なくすることが目的です。 (出所) 財務省主税局資料 2 所得控除の適正化 給与所得控除については、控除額が頭打ちとなる給与収入を850万円超に引き下げますが、子育て世帯、介護世帯には負担が生じないような措置が講じられます。96%の人には負担増がありません。 (出所) 財務省主税局資料 3 公的年金等控除 公的年金等収入が1,000万円を超える場合の控除等に上限を設けます。年金以外に特に高額の副収入(1,000万円超)がある年金受給者(0.5%)の控除額を引き下げます。 (出所) 財務省主税局資料 4 基礎控除 基礎控除は生活保障的意味合いから設けられています。しかし、所得が高いほど税負担の軽減額が大きいという問題があります。また、生活に十分余裕のある人は措置する必要がないという考えにより、高額所得者(2,500万円超:0.3%)の基礎控除を逓減・消失させます。 なお、英国・米国も同様に、税負担の軽減額が過大とならないような仕組みをとっています。 (出所) 財務省主税局資料 5 見直しの効果   Ⅱ これでよいのか所得税 1 所得階層別の所得税の負担 申告納税者の所得税負担率(平成25年及び平成26年分) (出所) 財務省資料 現行の所得税では利子、配当等が分離課税になっているので、所得1億円を超えると負担が急激に下がります。 所得税法等の一部を改正する法律(昭和62年法律第96号)附則第51条では次のような見直し規定を置き、平成4年10月までに総合課税を含めた見直しをすることにしていました。 (※) 昭和62年10月施行⇒平成4年10月 ここで重要なことは、利子所得の総合課税化に向けた検討を法律の明文規定で約束したということです。 また、有価証券譲渡益についても利子所得課税と同じ考え方に基づいて、所得税法等の一部を改正する法律(昭和63年法律第109号)附則第81条によって、平成4年10月までに総合課税への移行をも含めて見直しをすることにしました。 しかし、このような法律に明記した総合課税に向けた「約束」は、平成4年11月に税制調査会から発表された「利子、株式譲渡益のあり方についての基本的考え方」によって簡単に破られてしまいました。 この報告書では次のように述べています。 ここでは、利子所得、株式譲渡益課税を分離課税としている理由について、専ら所得の把握体制が十分に調整されていないことを挙げています。 しかし、マイナンバーが成立している以上、これは言い訳になってしまいます。 所得税をはじめ、各税について「改正」ではなく「改革」を行わなければならないでしょう。 (了)

#No. 257(掲載号)
#山本 守之
2018/02/22

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第26回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第26回】   公認会計士 佐藤 信祐   (《第2章》 平成13年度税制改正) 3 朝長鑑定 (1) はじめに ヤフー・IDCF事件では、法人税法132条の2に規定されている包括的租税回避防止規定のみが注目されることが多いが、制度濫用基準を採用していることから、税制適格要件やみなし共同事業要件の制度趣旨についても争われている。 その中で、国側の立場で朝長英樹氏が書かれた鑑定意見書(以下、「本鑑定意見書」という)は、朝長英樹氏が組織再編税制の立案に関与されていたことから、当時の制度趣旨を知るうえで、貴重な文献であることは疑いがない。もちろん、退官後に書かれたものであるため、当時の財務省主税局の見解と一致していない部分もあり得るが、それを差引きしたとしても、組織再編税制の制度趣旨を探るうえで重要な文献である。 本稿は、組織再編税制の制度趣旨を探っていくことを目的としているため、包括的租税回避防止規定の内容については触れずに、それ以外の税制適格要件やみなし共同事業要件の制度趣旨について触れていきたい。具体的には、平成23年10月28日付鑑定意見書に記載されている「法人税法施行令112条7項5号の解釈」、平成24年5月14日付鑑定意見書に記載されている「完全支配関係継続要件における『継続することが見込まれている』の解釈」について触れることとする。 (2) 法人税法施行令112条7項5号の解釈 ① みなし共同事業要件の制度趣旨 当時の法人税法施行令112条7項には、みなし共同事業要件が定められており、本鑑定意見書では、以下のように述べられている。 (※1) 朝長英樹『組織再編成をめぐる包括否認と税務訴訟』331頁(清文社、平成26年)。 (※2) 朝長前掲書332頁。本誌都合により原文の傍点部分を下線に置き換えている。 (※3)  朝長前掲書335頁。 このように、みなし共同事業要件を事業の継続といった概念で捉えているというところに特徴がある。これがヤフー事件第一審判決における「移転資産に対する支配の継続」という概念に繋がっていくわけであるが、租税法学者や実務家から強い批判があったため(※4)、控訴審判決では「経営面からみて、合併後も共同で事業が営まれているとみることができる」と補正されている。 (※4) この点についても、いずれ本連載で触れる予定である。 すなわち、岡村忠生教授が「立案時のオリジナルな趣旨・目的、税制調査会で『支配の継続』という考え方が採用された時点の理念と、その後できあがった法律から読み取られる趣旨・目的は、必ずしもイコールになっていないと思います。」(※5)と指摘されたように、みなし共同事業要件は、事業継続要件、従業者引継要件が課されていないことから、合併後においても、移転資産に対して支配が継続していることを要求する要件であると考えるのには無理がある。この点については、立案担当者である朝長英樹氏の見解であるとはいえ、裁判所が採用しなかった部分であるということが言えるし、そもそも、そこまでの厳密な制度趣旨を争わなくても、結論が変わらない事件であったからということも言える(※6)。 (※5) 明石英司ほか「座談会 東京地裁平成26年3月18日判決の検討」(岡村忠生発言)税務弘報62巻7号31頁(平成26年)。 (※6) この点については、実務家からも批判の多い点である。本事件をきっかけにして、制度趣旨を理解する重要性が言われるようになったことは良いことであるが、そもそも制度趣旨を知らなくても、ヤフー・IDCF事件のような経済合理性に疑義のある取引を行う納税者が僅かであるという指摘である。すなわち、私見ではあるが、制度趣旨を理解することにより、個別の条文解釈が正確に行えるというメリットはあるにせよ、包括的租税回避防止規定の検討においては、そもそも制度趣旨を知らなくても、包括的租税回避防止規定が疑われる取引をしないのであるから、実務上、それほど重要ではないということが言える。 これに対し、「特定資本関係の発生以後も被合併法人等の事業を組織再編成の時まで従前どおりに続けて引き継ぐこと」を求めているという点は注目に値する。なぜなら、支配関係発生日後に退任した特定役員を合併前に呼び戻すことにより、支配関係発生日の直前において役員であり、合併の直前で特定役員である者を、合併後に合併法人の特定役員にすることで特定役員引継要件を満たすことが可能かどうかという判断に繋がっていくからである。 この点については、支配関係発生日前の役員が、支配関係発生日後に、いったん退任したということは、支配関係発生日前の事業内容と大きく変わったと解するべきであるため、特定役員引継要件に抵触すると考えられる。 ② 特定役員引継要件の制度趣旨 (ⅰ) 「特定役員」 本鑑定意見書では、「社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役」の定義に、「常務に従事」といった文言や「経営に従事」という文言も付されていない点について、「常務取締役以上の役員に関しては、通常、常務に従事し、経営に従事することとなっているため、そのような理解の下に『特定役員』の上記の定義が設けられており、基本的には、『特定役員』が常務に従事していなかったり経営に従事していないという状態は予定されていない。」(※7)と解説されている。 (※7) 朝長前掲書339頁。 この点につき、「常務に従事」という日本語については、専属である必要まではないと考えられる。なぜなら、役員たる職務は時間の切り売りではなく、委任契約に基づき、株主から期待されている成果を達成することを職務としていることから、週に1日程度の出勤であったとしても、その職務の執行に支障がないのであれば、特段問題視する必要はなく、「常務に従事」という日本語については柔軟に解釈すべきであろう。 (ⅱ) 「特定役員」の就任時期 本鑑定意見書では、特定役員引継要件は、双方の規模が異なる場合であっても、被合併法人と合併法人の特定役員が適格合併の後に特定役員であり続けるのであれば、共同で事業を営むという状態となると考えても良いという制度趣旨に鑑みれば、支配関係発生日前において、「常務」に従事していた役員である必要があると述べられている(※8)。 (※8) 朝長前掲書339-340頁。 しかし、合併法人に引き継ぐべき合併前の特定役員は、特定資本関係発生日前においては「特定役員」である必要はなく、「役員」であれば足りるのに対し、「役員」という定義のなかに、「常務」という意味まで持たせることは、条文の解釈としては行き過ぎである。さらに、本鑑定意見書でも触れられているように、支配関係発生日前に役員であり、合併の直前までに特定役員に昇進することを容認している(※9)ことからも、このような解釈が成り立たないのは明らかである。 (※9) 朝長前掲書342頁。 これは、ヤフー事件において被合併法人に送り込まれた副社長が、支配関係発生日前に常務に従事していなかったことを強調したかったためであると思われる。それが故に、 と記載されている(※10)。 (※10) 朝長前掲書340頁。 すなわち、ここでの記載内容は、立案当初から想定していた内容ではなく、国側の立場の鑑定意見書であるが故に書かれた内容であると思われる。 (ⅲ) 「特定役員」の在任期間 また、本事件の中心となる論点であるが、朝長英樹『企業組織再編成に係る税制についての講演録集』90頁(日本租税研究協会、平成13年)において、「課税の特例の適用を受けるために、短期間だけ役員にするといったような不自然、不合理なものは別にして」と述べられている点を紹介されている。 この点につき、本鑑定意見書では、立案時において、合併後の特定役員の在任期間についての議論はあったものの、支配関係発生日前の役員の在任期間についての議論はなかったと述べられている(※11)。これはある意味当然であり、立案当初の議論の隙間をくぐるような行為は租税回避として認定されやすいということになる。 (※11) 朝長前掲書341頁。 (3) 完全支配関係継続要件における「継続することが見込まれている」の解釈 税制適格要件の判定上、グループ内再編に該当するかは、組織再編の直前とその後の継続見込みで判定することが多い(法令4の3)。そして、本鑑定意見書では、完全支配関係継続要件の判定では、平成13年改正前法人税法に規定されていた「特定の現物出資により取得した有価証券の圧縮額の損金算入制度」と同様に解することが明らかにされている(※12)。 (※12) 朝長前掲書366頁。なお、特定の現物出資により取得した有価証券の圧縮額の損金算入制度については、本連載の【第8回】を参照されたい。 そして、「株式を『継続して保有することが見込まれる』ということになっているのか否かの判定は、『予定されている』という状態であるのか否かということ、更に具体的に述べると、『売却計画が事前に決定された』という状態となっているのか否かということによって行うこととされている」(※13)と記述されている点に注目したい。 (※13) 朝長前掲書369頁。 以前から、完全支配関係継続要件の判定は、蓋然性の高い事項のみで判定すると言われていたが、本鑑定意見書の記述により、求められる蓋然性はかなり高いものであったということが分かる。 *   *   * 次回では、平成13年当時において、阿部泰久氏が述べられていた内容から、組織再編税制の制度趣旨を探る予定である。 (了)

#No. 257(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/02/22

「使用人兼務役員」及び「執行役員」の税務をめぐる考察 【第3回】「使用人兼務役員に関する税務上の留意点②」

「使用人兼務役員」及び「執行役員」の税務をめぐる考察 【第3回】 「使用人兼務役員に関する税務上の留意点②」   税理士 大塚 進一   1 使用人兼務役員給与の「不相当に高額な部分」とは 役員に対して支給する給与において、「不相当に高額な部分」の給与の判定には、(イ)実質基準と(ロ)形式基準があり、そのいずれかの額のうち多い金額をいう(法令70一)。 使用人兼務役員給与に対して不相当に高額な部分を判定する場合、上記(イ)の実質基準において、その役員に対して支給した給与の額には、役員分の給与のほか、使用人分の給与、手当等を含めた総額で判断する(法基通9-2-21)。 実質基準による使用人兼務役員給与の不相当に高額な部分を図示すると、〈図3-1〉のようになる。 〈図3-1〉 実質基準による使用人兼務役員給与の不相当に高額な部分 上記(ロ)の形式基準において、使用人兼務役員の給与のうち使用人としての給与を除いて、役員給与の限度額等を定めている場合、不相当に高額な部分は、使用人兼務役員の給与総額から使用人分の給与の適正額(法基通9-2-23(後述)参照)を除いた役員分の給与と、定款や株主総会等による支給限度額等の比較により判定する(法令70一ロ)。 よって反対に、使用人兼務役員の給与のうち使用人としての給与を除く規定なしに、役員給与の限度額等を定めている場合、不相当に高額な部分は、使用人兼務役員給与の総額により判断するものと解される。 このため、形式基準による使用人兼務役員給与の不相当に高額な部分は使用人分給与の規定により、〈図3-2〉と〈図3-3〉に区別して考える必要がある。 すなわち、〈図3-1〉と〈図3-2〉又は〈図3-3〉の不相当に高額な部分のち、大きい方の額が損金不算入となる。 〈図3-2〉 形式基準による使用人兼務役員給与の不相当に高額な部分 (使用人分の給与を除いて、役員給与に限度額等を定めている場合) 〈図3-3〉 形式基準による使用人兼務役員給与の不相当に高額な部分 (使用人分の給与の規定なしに、役員給与に限度額等を定めている場合) 使用人分の給与の適正額について、法人税基本通達9-2-23(使用人分の給与の適正額)では次のように規定している(下線筆者、括弧書等省略)。 ここには、「~額等を参酌して適正に見積った金額によることができる」とあることから、使用人分の給与は、上記内容に類する合理的な算定根拠があればよいと解される。   2 士業法人の使用人兼務役員について 国税庁の質疑応答事例「税理士法人の社員に係る使用人兼務役員への該当性」において、税理士法人の社員は、役員の範囲を定めた法人税法施行令第7条第1号の「法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る)以外の者でその法人の経営に従事しているもの。」にあたり、法人税法上の役員に該当する。 使用人兼務役員になれない者を例示した法人税法施行令第71条第1項各号に示されていないが、合名会社の業務を執行する社員と同様と解され、使用人兼務役員になることはできない、とされている。 その理由として、税理士法人においては、 とある。これは、税理士法第48条の11(業務を執行する権限)の「税理士法人の社員は、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う。」という規定からの解釈である。 しかし、弁護士法では第30条の12(業務の執行)に「弁護士法人の社員は、定款で別段の定めがある場合を除き、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う。」とあることから、定款で別段の定めをすれば、業務執行をする権利を有しない社員を置くこともでき、その社員は使用人兼務役員となることができると考えられる。 よって、各士業法人の社員が使用人兼務役員となることができるか否かの判断は、各士業法によって異なると解される。 また、弁理士の場合は「特許業務法人の社員は使用人兼務役員ではなく役員」とした事例がある(平成29年1月18日東京地裁判決(控訴中)・平成26年6月12日国税不服審判所裁決)。 なお、弁理士法第46条(業務を執行する権限)には「特許業務法人の社員は、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う。」とあり、税理士法と同様、定款で業務を執行する権利を制限することを認める規定はない。判決裁決理由も上記に即している。 * * * ここまで3回にわたり使用人兼務役員に関する規定等についてみてきたが、次回からは執行役員について、法令上の規定や留意点を整理していくこととしたい。 (了)

#No. 257(掲載号)
#大塚 進一
2018/02/22
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