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「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」の徹底解説 【第7回】

「収益認識に関する会計基準」及び 「収益認識に関する会計基準の適用指針」の徹底解説 【第7回】   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   10 個別論点総論 ここまで5つのSTEPについて解説した。どの取引についても5つのSTEPに従って、収益を認識することになるが、以下の個別論点については、別に規定が設けられている。 そのため、以下の個別論点については、5つのSTEPにプラスして各個別論点で規定されている内容を検討しなければならない。 〈個別論点と関連【STEP】〉   11 本人か代理人か (1) 本人か代理人か ここでの論点は、収益(売上)を「総額」で認識するか、「純額」で認識するかである。 顧客への財又はサービスの提供に他の当事者が関与している場合、顧客との約束の性質が、企業が自ら提供する履行義務であるのか、あるいは財又はサービスが他の当事者によって提供されるように手配する履行義務であるのかを検討し、「本人」に該当するか、「代理人」に該当するか判定する(適用指針39)。自ら提供する履行義務である場合、「本人」に該当する。一方、手配する履行義務である場合、「代理人」に該当する。 具体的な判定は、以下の①から③のとおりである。 ① 本人か代理人かの判定 顧客への財又はサービスの提供に他の当事者が関与している場合、以下の(ⅰ)から(ⅲ)のいずれかを顧客に提供される「前」に企業が支配している場合、企業は「本人」に該当する(適用指針44)。企業が支配していない場合、企業は「代理人」に該当する。 ② 本人か代理人かの判定に当たっての具体的な指標 上記①だけでは、本人か代理人かの判定を行うことは難しいため、企業が財又はサービスを顧客に提供する前に支配しているかどうかを判定するにあたって、例示ではあるが具体的な指標(以下の(ⅰ)から(ⅲ))が、設けられている(適用指針47)。 なお、上記の指標は例示にすぎないため、特定の財又はサービスの性質及び契約条件により、財又はサービスに対する支配への関連度合いが異なり、契約によっては、説得力のある根拠を提供する指標が異なる可能性があるので注意が必要である(適用指針136)。 ③ 本人か代理人かの判定のその他の留意点 本人か代理人かの判定に当たっては、以下の点についても留意する必要がある。 ④ 会計処理 上記までの判定の結果、企業が「本人」に該当する場合、財又はサービスの提供と交換に企業が権利を得ると見込む対価の総額を収益として認識する(適用指針39)。 一方、企業が「代理人」に該当する場合、他の当事者により提供されるように手配することと交換に企業が権利を得ると見込む報酬又は手数料の金額(あるいは他の当事者が提供する財又はサービスと交換に受け取る額から当該他の当事者に支払う額を控除した純額)を収益として認識する(適用指針40)。つまり、売上と売上原価を相殺(NET)した金額を売上として計上するということである。 (2) 本人か代理人かの判定(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響がある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響 12 財又はサービスに対する保証 (1) 財又はサービスに対する保証 財又はサービスを販売した際に当該財又はサービスに対して保証を付ける場合がある。当該保証は、以下のとおり会計処理する。 ① 財又はサービスに対する保証に当該財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証に加えて、保証サービスが含まれているかどうかの判定 財又はサービスに対する保証に保証サービス(顧客にサービスを提供する保証)が含まれているかどうかにより会計処理が異なるため、まず、財又はサービスに対する保証に当該財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証に加えて、保証サービス(履行義務)が含まれているかどうかを判定する(適用指針37)。 この際、例えば以下の(ⅰ)から(ⅲ)の要因を考慮する(適用指針37)。 なお、上記の要因のとおり、無償の保証であるから、即、合意された仕様に従っているという保証というわけではないので注意が必要である。 ② 合意された仕様に従っているという保証のみである場合の会計処理 顧客に約束した財又はサービスに対する保証が、当該財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証のみである場合、当該保証について、引当金(例えば、製品保証引当金)として会計処理する(適用指針34、企業会計原則注解(注18))。 ③ 保証サービスを含む場合の会計処理 顧客に約束した財又はサービスに対する保証又はその一部が、当該財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証に加えて、保証サービスを含む場合には、保証サービスは履行義務であり、取引価格を財又はサービス及び当該保証サービスに配分する(適用指針35)。具体的には、保証サービスに配分した金額は契約負債として認識し、保証サービスの提供に応じて収益を認識する。 なお、合意された仕様に従っているという保証部分の会計処理については、上記②のとおりである。 【製品の提供に加えて合意された仕様に従っているという保証と保証サービスがセットの場合】 なお、財又はサービスに対する保証が、当該財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証と保証サービスの両方を含む場合で、それぞれを合理的に区分できないときには、両方を一括して単一の履行義務として処理し、取引価格の一部を当該履行義務に配分(【STEP4】参照、基準65~73)する(適用指針36)。 (2) 財又はサービスに対する保証(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響がある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響 (了)

#No. 296(掲載号)
#西田 友洋
2018/11/29

税効果会計における「繰延税金資産の回収可能性」の基礎解説 【第10回】「繰延ヘッジ損益に係る一時差異の取扱い」

税効果会計における 「繰延税金資産の回収可能性」の 基礎解説 【第10回】 「繰延ヘッジ損益に係る一時差異の取扱い」   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明   1 はじめに 前回は、その他有価証券の評価差額に係る一時差異の取扱いについて、その他有価証券の評価差額が一時差異となる理由を説明した上で、スケジューリングが可能かどうかによって、一時差異の取扱いがどのように異なるかを説明した。特に、税効果会計が会計上の資産又は負債と税務上の資産又は負債の間の差に着目している点は非常に重要なため、ぜひ理解しておいていただきたい。 今回は、その他有価証券の評価差額と同様に、純資産の部の「評価・換算差額等」に計上される繰延ヘッジ損益に係る一時差異の取扱いについて、その他有価証券の評価差額に係る一時差異の取扱いとの比較を交えながら説明していきたい。   2 繰延ヘッジ損益とは何か 繰延ヘッジ損益とは、リスクヘッジしたい取引(ヘッジ対象)から生じる損益とリスクヘッジのための手段(ヘッジ手段)から生じる損益を、同じ会計期間の損益計算書に計上するために、ヘッジ対象の損益が認識されるまでの間、ヘッジ手段から生じる損益(時価評価に係る損益など)を直接、純資産の部に計上して“損益計算書への計上を一時待機”させる際の計上科目である。 【図1】  繰延ヘッジ損益のイメージ なお、ヘッジ会計の詳細については、次の連載を参照されたい。   3 なぜ繰延ヘッジ損益が一時差異となるのか 繰延ヘッジ損益が一時差異となる理由は、前回(その他有価証券の評価差額)の解説と同じである。つまり、会計上の資産又は負債と税務上の資産又は負債の間に差が生じているためである。 税効果会計が会計上の資産又は負債と税務上の資産又は負債の間の差に着目している点については、前回の解説を参照されたい。   4 繰延ヘッジ損益に係る一時差異の取扱い 前回の解説では、その他有価証券の評価差額に係る一時差異はいつ解消するかが不明確な場合が多いため、スケジューリング可能な場合とスケジューリングが不能な場合に分けて、一時差異の取扱いを説明した。 一方で、繰延ヘッジ損益は、ヘッジ対象に係る損益が発生するときに損益計算書に計上され、純資産の部から姿を消すが、ヘッジ対象に係る損益がいつ発生するかがあらかじめわかっていて、それにあわせてヘッジ手段(デリバティブ取引)を開始するため、一時差異がいつ解消するかがわからないといったことはあり得ない。 そのため、繰延ヘッジ損益に係る一時差異の取扱いは、その他有価証券の評価差額に係る一時差異と比べてシンプルなものとなっている。 繰延ヘッジ損益に係る一時差異は、これらをネットした純額で取り扱うのではなく、繰延ヘッジ利益と繰延ヘッジ損失に分けて取り扱う。 (1) 繰延ヘッジ利益に係る将来加算一時差異の取扱い 繰延ヘッジ利益は、将来の課税所得を加算させる効果があるため、将来加算一時差異となり、繰延税金負債を計上する。 (2) 繰延ヘッジ損失に係る将来減算一時差異の取扱い 繰延ヘッジ損失は、将来の課税所得を減算させる効果があるため、将来減算一時差異となる。繰延ヘッジ損失に係る将来減算一時差異は、連載【第2回】で説明した手順で回収可能性を判断し、繰延税金資産を計上する。 ① 分類1に該当する場合 〈繰延税金資産の回収可能性の判断指針〉 上記の判断指針に従い、繰延ヘッジ損失に係る繰延税金資産も含め、すべての繰延税金資産について回収可能性があると判断する。 ② 分類2に該当する場合 〈繰延税金資産の回収可能性の判断指針〉 すでに説明したとおり、繰延ヘッジ損益に係る一時差異はいつ解消するかが把握できるため、スケジューリングが可能である。そのため、繰延ヘッジ損失に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断する。 ③ 分類3に該当する場合 〈繰延税金資産の回収可能性の判断指針〉 分類3に該当する会社は、一時差異等のスケジューリングを行い、その結果、回収可能と判断される金額のみ繰延税金資産として計上するのが原則である。 しかし、繰延ヘッジ損失に係る繰延税金資産は、この判断を行わずに、いわば無条件に回収可能性があると評価され、ここに繰延ヘッジ損失に係る一時差異の取扱いの最大の特徴がある。 なぜ、このように取り扱われるかというと、前掲【図1】のように、繰延ヘッジ損益はヘッジ手段から発生し、ヘッジ手段には対になるヘッジ対象が存在するため、通常、ヘッジ対象に係る評価差益に関する将来加算一時差異とほぼ同時期に同額で解消されるものとみることもできると考えられるためである。 そのため、分類1及び分類2に加え、分類3に該当する会社においても、繰延ヘッジ損失に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとされている。 ④ 分類4に該当する場合 〈繰延税金資産の回収可能性の判断指針〉 分類4に該当する場合は、原則どおりの取扱いとなる。 すなわち、解消見込年度のスケジューリングを行い、その上で、翌期の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、繰延税金資産の回収可能性を判断する。 ⑤ 分類5に該当する場合 〈繰延税金資産の回収可能性の判断指針〉 分類5に該当する場合も、原則どおりの取扱いとなる。 すなわち、原則として、繰延ヘッジ損失に係る繰延税金資産も含め、すべての繰延税金資産に回収可能性がないと判断する。   5 まとめ 繰延ヘッジ損益に係る一時差異の取扱いを検討する際は、ヘッジ対象という対になる存在を意識する必要がある。 連載最終回となる次回は、法定実効税率と税効果考慮後の負担率の差異について説明する。 (了)

#No. 296(掲載号)
#竹本 泰明
2018/11/29

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第144回】ストック・オプション⑤「未公開企業が発行する場合」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第144回】 ストック・オプション⑤ 「未公開企業が発行する場合」   仰星監査法人 公認会計士 渡邉 徹     〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① X4年3月期 《人件費の計上》 ⇒ 仕訳なし (注) 行使価格(75,000円)が割引キャッシュ・フロー法により算定された株式の評価額(50,000円)を上回っていることから、付与時の単位当たりの本源的価値は0円。 ② X5年3月期 《人件費の計上》 ⇒ 仕訳なし (注) 付与時の単位当たりの本源的価値が0円であるため。 ③ X6年3月期 《人件費の計上》 ⇒ 仕訳なし (注) 付与時の単位当たりの本源的価値が0円であるため。 《ストック・オプションの行使》 ストック・オプションの行使を受け、A社は新株を発行する。 (注1) 払込金額:75,000円/株×160株/名×5名=60,000,000円 (注2) 行使されたストック・オプション金額:付与時単位当たり本源的価値が0円であるため、0円。 ④ X7年3月期 《ストック・オプションの行使》 ストック・オプションの行使を受け、A社は新株を発行する。 (注1) 払込金額:75,000円/株×160株/名×3名=36,000,000円 (注2) 行使されたストック・オプション金額:付与時単位当たり本源的価値が0円であるため、0円。 《権利行使期間満了による失効分を利益に振替》 新株予約権のうち、権利行使期間中に権利行使されなかった(権利不行使による失効)分については、新株予約権戻入益として利益に計上する。 ⇒ 仕訳なし (注) 付与時の単位当たりの本源的価値が0円であるため。   〈会計処理の解説〉 ストック・オプションを付与し、これに応じて企業が従業員等から取得するサービスは、その取得に応じて費用として計上し、対応する金額を、ストック・オプションの権利の行使又は失効が確定するまでの間、貸借対照表の純資産の部に新株予約権として計上します(ストック・オプション会計基準4項)。 各会計期間における費用計上額は、ストック・オプションの公正な評価額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額です(ストック・オプション会計基準5項)。 未公開企業については、ストック・オプションの公正な評価額を損益計算に反映させるに足りるだけの信頼性をもって見積ることが困難な場合が多く、また一般投資家がいないことも考慮し、本則であるストック・ オプションの公正な評価単価に代え、その単位当たりの本源的価値の見積りによることが認められています(ストック・オプション会計基準60項)。 この場合、付与日現在でストック・オプションの単位当たりの本源的価値を見積り、その後は見直さないこととなります。ここで、「単位当たりの本源的価値」とは、算定時点においてストック・オプションが権利行使されると仮定した場合の単位当たりの価値であり、当該時点でのストック・オプションの原資産である自社の株式の評価額と行使価格との差額をいいます(ストック・オプション会計基準13項)。 なお、本源的価値によった場合には、ストック・オプションの行使価格がその原資産である自社の株式の評価額を上回る条件で付与された場合を除き、ストック・オプションの価値がゼロとなるため、費用が計上されません (ストック・オプション会計基準61項)。 ただし、ストック・オプションの各期末における本源的価値の合計額及び各会計期間中に権利行使されたストック・オプションの権利行使日における本源的価値の合計額については、注記で開示する必要があります(ストック・オプション会計基準62項、63項)。 【ストック・オプションの本源的価値のイメージ】 本事例においてA社は、付与日におけるストック・オプションの公正な評価単価を合理的に見積ることができないことから、ストック・オプションの単位当たりの本源的価値の見積りに基づいて会計処理を行っています。 なお、行使価格(75,000円)が割引キャッシュ・フロー法により算定された株式の評価額(50,000円)を上回っていることから、付与時の単位当たりの本源的価値は、0円となり、各期のストック・オプション付与に応じて企業が従業員等から取得するサービスは、0円と評価されます(各期の《人件費計上》仕訳、④ X7年3月期の《権利行使期間満了による失効分を利益に振替》仕訳を参照)。 また、ストック・オプションの各期末における本源的価値の合計額及び各会計期間中に権利行使されたストック・オプションの権利行使日における本源的価値の合計額については、注記で開示されます(各期の開示を参照)。   (了)

#No. 296(掲載号)
#渡邉 徹
2018/11/29

今から学ぶ[改正民法(債権法)]Q&A 【第4回】「保証(その1)」

今から学ぶ [改正民法(債権法)]Q&A 【第4回】 「保証(その1)」   堂島法律事務所 弁護士 奥津  周 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 保証制度に関して改正があったようですが、具体的にどのような点が変更されるのでしょうか。 【A】 例えば、銀行から会社が金銭を借りたときに、その会社が中小企業のときには、代表者などがその借入債務を連帯保証することが多い。保証制度については、取引実務においてよく活用されているが、個人が会社の債務を保証する場合など、個人が過大な負担を強いられている場合があり、保証人保護の必要性を訴える声があった。 今回の改正では、そうした実情も踏まえて、主に次の点が改正されることとなった。 (※) ③については、次回に取り上げる。   1 包括根保証の禁止対象の拡大について 「包括根保証」とは、特定の債務を保証するのではなく、将来発生する不特定の債務を保証し、保証の期間について特に定めず、また保証金額の上限も特に定めないものである。債権保全の観点からすれば有用な制度といえるが、保証人としては予想外に過大な債務を負担することがあり、保証人の保護に欠けるとの批判がなされてきた。 金融機関からの借入れなどを主債務の範囲に含む「貸金等債務」に関する根保証契約(貸金等根保証契約)については、平成16年の民法改正で規制が導入されているが、その他の根保証契約(賃貸借契約の保証や継続的な商取引における保証)についても、今回の改正で規制を導入することとなった。 具体的には、保証人が責任を負う範囲を限定する「極度額」を定めなければならないとしたほか(改正法465条の2第2項)、次のとおり変更されることとなった。 (※1) 個人根保証契約:一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であって保証人が法人でないもの(改正法465条の2) (※2) 個人貸金等根保証契約:個人根保証契約であってその主たる債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という)を含むもの 個人根保証契約について、元本確定期日(保証期間)が設けられていないのは、個人根保証契約がアパートなどの賃貸借契約の保証人などに利用されていることに鑑みて、3年~5年で保証人がいなくなるような事態を避けるためである。 この改正により、個人根保証制度を利用している企業としては、契約書の見直しを行う必要が生じる。特に影響が大きいといわれているのが、不動産賃貸事業や医療機関であり、極度額を定めない契約書を使用している場合が多い。極度額を定めない個人根保証契約は無効となるため、弁護士等に相談のうえ、見直しの検討を進めるべきであろう。   2 公証人による保証意思の確認手続の新設 (1) 保証意思の確認 保証契約は、口頭による合意では成立せず、必ず書面にて保証契約を取り交わさなければ無効となる。保証人は重い負担を負うことから、保証契約の合意があったことを明確にするためである。 しかし、それでも保証人が十分に債務の内容や保証人としての責任を正確に理解せず、安易に保証契約を締結している場合も多いため、今回の改正では、公証人による保証意思の確認手続を新設した。 (2) 制度の内容 個人が主債務者の事業用の貸金等債務を対象に保証をする場合、保証契約を締結する日の1ヶ月以内に公正証書(保証意思宣明公正証書)を作成し、そのなかで保証人があらかじめ保証意思を表示しなければならないこととされている(改正法465条の2)。保証意思宣明公正証書は、保証契約の契約書とは別に作成する必要があり、作成がなされない場合には、当該保証契約は無効となる。 この規定については一部例外が設けられており、会社の代表取締役が会社の貸金等債務について保証人になる場合など、経営に密接に関わっている個人が保証人になる場合には、作成は不要となる(改正法465条の9)。保証意思の確認にあたっては、必ず保証人となる本人が意思表示しなければならず、代理人によることは認められない。 【一部の例外にあたる場合】 なお、これらの例外にあたるか否かは、登記簿や株主名簿等から判断することとなる。 (了)

#No. 296(掲載号)
#奥津 周、北詰 健太郎
2018/11/29

《速報解説》 国内勤務期間のない中国の従業員が税制適格ストックオプションを権利行使した場合の株式の取得に係る経済的利益について税制非適格ストックオプションとして取り扱うことの可否に関し、関東信越局から文書回答事例が公表される

 《速報解説》 国内勤務期間のない中国の従業員が税制適格ストックオプションを権利行使した場合の株式の取得に係る経済的利益について税制非適格ストックオプションとして取り扱うことの可否に関し、関東信越局から文書回答事例が公表される   税理士 菅野 真美   関東信越国税局は11月22日に次の文書回答事例を公表した。以下ではそのポイントについて解説を行う。   [事前照会の内容] 中国子会社の従業員で日本での勤務期間もなく日本に恒久的施設もない者(日本の非居住者で中国の居住者)が税制適格ストックオプションを行使する予定であるが、従業員の権利行使による株式の取得に係る経済的利益について税制非適格ストックオプションとして取り扱って差し支えないか。   [ストックオプションの課税:国内法] ストックオプションとは、株式を一定の金額で取得する権利である。これを従業員や役員に付与し、業績が向上して株式の時価が権利行使価額よりも高い場合は、その株式を売却することにより利益を受けることができる。 従業員等のためのストックオプションの税制は2つある。1つは、権利行使時の給与所得課税等と株式譲渡時の譲渡所得課税による税制非適格ストックオプション(以下「非適格オプション」)であり、もう1つは、2段階課税が煩雑なこと等から一定の要件を満たした場合は経済的利益全部について譲渡所得課税のみとする税制適格ストックオプション(以下「適格オプション」)である(措法29の2)。 日本の居住者が株式を売却した場合は譲渡益に所得税等が課税されるが、恒久的施設のない非居住者が売却した場合、原則的には課税対象外で、一定の場合のみ課税される(所法161①三、164①二)。適格オプションを行使して株式を売却した者が非居住者の場合は日本での権利行使時の課税もできないことから、非居住者が売却した場合でも日本で課税されるとした(措令19の3⑭、所令281①四ロ)。 ただし、租税条約で別段の定めがある場合は、租税条約を優先させる(所法162)。租税条約の適用の場合の課税関係は、適格・非適格にかかわらず、経済的利益のうち権利行使益部分は給与所得や役員報酬、株式譲渡益部分は譲渡所得の条項に基づくと考えられている。   [ストックオプションの課税:日中租税協定] 日中租税協定の場合、従業員の給与所得は、日本国内の勤務期間がない場合は日本に課税権はないが、日本国内にある資産の譲渡所得は日本に課税権がある(日中租税協定15①、13④)。つまり、譲渡所得は日本の税法に従って処理できるから、この事例の適格オプションの場合は、権利行使益部分は非課税だが、株式の譲渡益部分は課税され、非適格オプションの場合は、権利行使益部分も株式譲渡益部分も課税されない。   [事前照会者はどのように考え、課税庁はどのように回答したか] このように課税関係に差異があり、適格オプションの場合は譲渡益について日中で2重課税となることから、非適格オプションを納税者が選択した場合は非適格オプションとして取り扱うことができるのではないかと事前照会者は考えた。しかし、課税庁は、権利行使時に要件を満たしていた場合は適格オプションとなり、納税者の選択によって非適格オプションとして取り扱うことはできないと回答した。 (了)

#No. 295(掲載号)
#菅野 真美
2018/11/28

《速報解説》 税制適格ストックオプションについて、一定の事由による権利行使期間内の権利行使条件を付した場合の税務上の取扱いに関し文書回答事例が公表される

 《速報解説》 税制適格ストックオプションについて、一定の事由による権利行使期間内の権利行使条件を付した場合の税務上の取扱いに関し文書回答事例が公表される   税理士 中尾 隼大   本稿では、東京国税局が平成30年10月18日(ホームページ公表は11月19日)に回答した文書回答事例「税制適格ストックオプションについて、一定の事由が生じた場合には権利行使期間内の一定の期間に限り権利行使ができる旨の条件を付した場合の税務上の取扱いについて(以下、『本件文書回答事例』という)」について解説を行う。   1 概要 所得税法では、低廉又は無償にて権利等の経済的利益を得た場合にも課税対象とされるが、その価額は「権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額」となる(所得税法36条2項)。 上記のとおりであれば新株予約権も付与時に課税対象となるが、個人が付与時点で経済的利益を算定することは事実上困難である。そこで新株予約権のうち一定のストックオプションについては例外的措置が存在し、付与時ではなく権利行使時点で課税対象となる(所得税法施行令84条2項)。 さらに、一定の適格要件を満たすストックオプションについては権利行使時点ではなく、権利行使後、株式売却時点まで課税を繰り延べることができる(租税特別措置法29条の2)。その適格要件の1つに、権利行使を「付与決議の日後2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過する日までの間に行わなければならないこと(以下、「権利行使期間要件」という)」として、権利行使する期間を定めるものがある。 本件文書回答事例は、「権利行使期間要件内の期間において、発行法人が権利行使できる期間を別途定めた場合」における税務上の取扱いを示したものである。   2 事前照会内容 (※) 照会内容の詳細は、国税庁ホームページを参照されたい。 「新株予約権割当契約書」において、以下内容を定めた場合、権利行使期間要件を充足するか否か。   3 事前照会者の見解 上記2のような新株予約権割当契約を行うことにより、権利行使期間要件が定める期間の範囲内で、更に権利行使できる期間が制限されるケースもある。 権利行使期間要件は、その期間外の権利行使を除外する趣旨であると考えられることから、その権利行使期間要件に定められた期間内であれば、その付与契約において権利行使期間を短く定めたとしても権利行使期間要件に反することにはならず、権利行使期間要件を満たすものと考える。   4 本件文書回答事例の結論 上記前提において、照会内容のとおり取り扱って差し支えないとの回答がなされた。 本件文書回答事例はストックオプションに係る税制適格要件を拡充するものではないが、要件充足の判断の指標となるものであろう。税制適格要件の充足は権利者にとって大きなインセンティブとなり得るため、慎重に判断したいところである。 (了)

#No. 295(掲載号)
#中尾 隼大
2018/11/27

《速報解説》 東京局、外部金融機関を活用した積立貯蓄制度に係る貯蓄奨励金の課税関係について文書回答事例を公表

 《速報解説》 東京局、外部金融機関を活用した積立貯蓄制度に係る貯蓄奨励金の課税関係について文書回答事例を公表   税理士 仲宗根 宗聡   東京国税局は、平成30年10月18日付(ホームページ公表は11月19日付)で、「外部金融機関を活用した積立貯蓄制度において支給される貯蓄奨励金の課税関係について」の事前照会に対し、照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えないとする回答文書を公表した。 以下では、その内容について解説する。   【事前照会の趣旨】 当組合は、当組合の加盟会社等の従業員及び役員を組合員として、当該組合員の相互共済福利を目的として組織された共済組合であり、従来は、当該組合員に対して、金銭消費寄託契約により金銭の寄託を受け、利息を支出する、いわゆる社内預金制度(旧制度)を実施していた。 しかし、今般、当組合の事務軽減及び組合員へのサービス拡充(ATMの利用可能等)を目的として、金融機関の預金等を活用した積立貯蓄奨励金支給規則(本制度)を制定し、旧制度から移行した。 本制度では、金融機関から支払われる預金等の利息とは別に、当組合から組合員に対し一定の奨励金を当該金融機関を通じて支給することとを予定している。   【事前照会の要約】 当組合から組合員に対して支給される本件奨励金は、所得税法上、雑所得に該当し、当組合は、本件奨励金の支払の際に源泉徴収を要しないと解して差し支えないか。   【事前照会の見解の理由】 (1) 奨励金の所得区分 ① 利子所得について 所得税法第23条第1項では、利子所得とは、公社債及び預貯金の利子並びに合同運用信託の収益の分配等に係る所得と限定列挙により規定しており、一般的に、元本債権から発生する法定果実を指すものと考える。 本件奨励金は、元本債権は金融機関が有するものであり、当組合に対して元本債権を有しないことから、当組合から組合員に対して支給される本件奨励金は、元本債権から発生する法定果実には該当しない。したがって、本件奨励金は利子所得に該当しないものと考える。 ② 給与所得について 所得税法第28条第1項では、給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう旨を規定している。 本件奨励金は、当組合と組合員との間に雇用関係及びこれに類する関係はないことから、本件奨励金は給与所得に該当しないものと考える。 ③ 一時所得について 所得税法第34条第1項では、一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう旨を規定している。 本件奨励金は、本制度に基づき、一定の貯蓄を有する場合に、当組合から組合員に継続的に支払われることとされていることから、本件奨励金は一時所得に該当しないものと考える。 ④ 雑所得について 所得税法第35条第1項では、雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得と規定している。本件奨励金は、上記①~④までの検討に加え、配当所得、不動産所得、事業所得、山林所得及び譲渡所得にも該当しないことが明らかなため、雑所得に該当するものと考える。 (2) 源泉徴収の要否 源泉徴収が必要となる支払については、所得税法上に下記の①~⑤限定的に列挙されているところ、本件奨励金は、所得税法に規定されている源泉徴収を要する支払のいずれにも該当しないことから、当組合は本件奨励金の支払の際に、源泉徴収を要しないと考える。 (了)

#No. 295(掲載号)
#仲宗根 宗聡
2018/11/26

《速報解説》 「監査品質の指標(AQI)に関する研究報告」が公表される~監査品質の向上に向けた取組状況を定量情報として示す~

《速報解説》 「監査品質の指標(AQI)に関する研究報告」が公表される ~監査品質の向上に向けた取組状況を定量情報として示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年11月21日、日本公認会計士協会は、「監査品質の指標(AQI)に関する研究報告」を公表した。これにより、平成30年3月7日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、上場会社の監査を担う監査事務所が、監査品質の向上に向けた取組を外部に公表する場合や被監査会社の監査役等に説明する場合に用いる監査品質の指標(Audit Quality Indicator:AQI)について検討を行ったものである。 「『監査品質の指標(AQI)に関する研究報告(公開草案)』に対するコメントの概要及び対応について」も公表されている。 公開草案からの主な変更点としては、監査事務所レベル及び監査業務レベルのAQIそれぞれの開示方法に関する説明と図の追加、AQI項目の記載例について、グラフ等の図表を用いることが考えられる旨を加筆し、表形式が標準という印象を与えないような変更などがあげられる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 概要 監査品質は直接的に測定することは困難であるが、間接的ではあるものの監査品質に関連する定量情報をAQIとして示すことにより、監査品質の向上に向けた取組状況に関する説明に具体性が付与されるものと考えられる(1項)。 被監査会社の監査役等に対しては、監査事務所レベルと監査業務レベルのAQIを説明することとなるが、説明の時期は、従来行われているコミュニケーションの一環として、監査計画時や監査完了時に行われることが多いと考えられる(19項)。 次のような特徴がある。 付録として、「監査品質の指標(AQI)に関する各国の取組」も記載されている。   Ⅲ 監査品質の指標(AQI) AQIには、監査事務所レベルの指標と個々の監査チームの業務レベルの指標がある(8項)。 次のことに留意する。 研究報告11から12ページではAQIの一般的項目が例示されており、AQIの項目について、項目ごとに見出しを付して、(a)監査品質との関連、(b)記載例、(c)参考情報を記載していることが説明されている。 (了)

#No. 295(掲載号)
#阿部 光成
2018/11/26

《速報解説》 会計士協会、監査法人GCを受け「監査法人の計算書類及び監査報告書の文例に関する研究報告」を公表~「監査法人の計算書類に係るひな型」は廃止へ~

《速報解説》 会計士協会、監査法人GCを受け 「監査法人の計算書類及び監査報告書の文例に関する研究報告」を公表 ~「監査法人の計算書類に係るひな型」は廃止へ~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年11月21日、日本公認会計士協会は、「監査法人の計算書類及び監査報告書の文例に関する研究報告」を公表した。これにより、平成30年3月23日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、平成20年3月に公表した研究報告「監査法人の計算書類作成に係るひな型」について、「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)の公表を契機として、見直しを行ったものである。 「『監査法人の計算書類及び監査報告書の文例に関する研究報告(公開草案)』に対するコメントの概要及び対応について」も公表されている。 研究報告の公表に伴い、公認会計士法改正対策プロジェクトチームからの研究報告「監査法人の計算書類に係るひな型」は廃止された。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 監査法人の説明書類 監査法人は、会計年度ごとに、業務及び財産の状況に関する事項を記載した説明書類(以下「説明書類」という)を作成し、監査法人の事務所に備え置き、公衆の縦覧に供することが義務付けられている(公認会計士法34条の16の3、公認会計士法施行規則39条)。 すべての監査法人は、説明書類の公衆縦覧に加え、会計年度経過後2ヶ月以内に業務報告書とともに計算書類を内閣総理大臣に提出することが求められている(公認会計士法34条の16第2項、公認会計士法施行規則31条)。 業務報告書には、業務の概況、社員、使用人等の概況、事務所の概況及び被監査会社等の内訳等を記載する(公認会計士法施行規則38条)。 計算書類は、貸借対照表、損益計算書、社員資本等変動計算書、注記表及び附属明細書から構成される(公認会計士法34条の16、公認会計士法施行規則31条)。   2 計算書類の作成例 研究報告は、以下の計算書類の作成例を示している。 また、有限責任監査法人は、会計期間における収益の額が10億円以上の場合、当該計算書類について、特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人により監査を受けることが求められている(公認会計士法34条の32、公認会計士法施行令24条)ことから、監査法人の計算書類に添付する監査報告書の文例も示されている。 (了)

#No. 295(掲載号)
#阿部 光成
2018/11/26

《速報解説》 国税庁、仮想通貨関連FAQを公表~仮想通貨を相続等により取得した場合の課税関係・評価方法についても言及~

《速報解説》 国税庁、仮想通貨関連FAQを公表 ~仮想通貨を相続等により取得した場合の課税関係・評価方法についても言及~   Profession Journal編集部   〇仮想通貨交換業者による年間取引報告書の交付へ 国税庁は11月21日付けで「仮想通貨関係FAQ」ページを公表し、平成30年の確定申告時期を前に、仮想通貨取引に関する所得計算の方法等について周知を行っている。また本年分から、仮想通貨交換業者による年間取引報告書について、記載内容を統一した形で各利用者へ交付されることを明らかにした。 仮想通貨取引においてはこちらの解説にあるとおり、複数の交換業者を通じた取引や交換業者をまたがっての口座間の移転等が行われ、また年間の取引報告書を利用者に交付していない交換業者もいるなど、利用者が損益(所得)状況を正確に把握することが困難であった。これらの問題を受け国税庁は本年4月より「仮想通貨取引等に係る申告等の環境整備に関する研究会」を設置し政府税制調査会でも「納税環境整備に関する専門家会合」において日本仮想通貨交換業協会などを交え議論が行われていたが、このたび各仮想通貨交換業者による統一された様式の年間取引報告書が来年1月末をめどに各利用者へ提供されることとなり、利用者にとってその損益状況が把握しやすくなる。 【参考】年間取引報告書の様式例 (※) 国税庁ホームページより (※) 国税庁ホームページより さらに国税庁は、年間取引報告書に記載された各項目を入力することで申告に必要な所得が自動計算されるエクセルデータを同ページ内においてダウンロードにて提供、その利用を呼びかけている。 (※) 国税庁ホームページより これらの制度整備によって仮想通貨の利用者にとっては所得の把握から確定申告手続までが行いやすくなった一方、国税当局としては今回公表されたページにおける下記記述のように、仮想通貨取引による所得の申告漏れについてはこれまで以上に徹底した対応をとるものと見られる。 さらに仮想通貨取引による収入が多額となった場合に気になるのが「財産債務調書」及び「国外財産調書」だが、両制度に関するFAQも同日更新されており関連通達の一部改正も行われている。 更新された「財産債務調書の提出制度(FAQ)(平成30年11月)」では、「国内外の仮想通貨取引所に保有する仮想通貨は財産債務調書の対象になりますか。」との問いに対し仮想通貨取引所の所在が国内か国外かにかかわらず財産債務調書への記載が必要としたQ10が追加され、また「国外財産調書の提出制度(FAQ)(平成30年11月)」では「国外の仮想通貨取引所に保有する仮想通貨は国外財産調書の対象になりますか。」との問いに対し居住者が国外の仮想通貨取引所に保有する仮想通貨は「国外にある財産」とはならず国外財産調書の対象にはならないとしたQ11が追加されている。   〇FAQで新たに示された内容 今回の公表に合わせ、国税庁は上記研究会における議論や国税当局へ問い合わせのあった事項等をまとめた「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」を公表している。全21問の内容は、昨年12月に公表され「仮想通貨を売却した場合」や「仮想通貨同士の交換を行った場合」などの計算例を示した「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」をアップデートしたものが中心となっているが、さらに年間取引報告書の記載内容(問10)や上記自動計算ソフト(エクセルデータ)の紹介(問9)などのほか、次のような内容が示されている。 まず、仮想通貨の売却による所得を申告する場合に必要経費として認められる費用の例として、売却した仮想通貨の取得価額や売却の際に支払った手数料のほか、インターネットやスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の購入費用などについても、仮想通貨の売却のために必要な支出であると認められる部分の金額に限り必要経費に算入することができるとした(問8)。 (※) 仮想通貨を売却又は使用することにより生じる利益については、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として雑所得に区分され、所得税の確定申告が必要となる。 また、まだレアケースの可能性もあるが、仮想通貨を相続や贈与により取得した場合の課税関係について、被相続人等から仮想通貨を相続若しくは遺贈又は贈与により取得した場合には相続税又は贈与税が課税されることを示した問15や、その評価方法については評価通達に定めがないことから、評価通達5《評価方法の定めのない財産の評価》に基づき評価通達に定める評価方法に準じて評価するとした問16などが公表されている。 具体的には、①活発な市場が存在する仮想通貨については、外国通貨に準じて、相続人等の納税義務者が取引を行っている仮想通貨交換業者が公表する課税時期における取引価格(仮想通貨交換業者が納税義務者の求めに応じて提供する残高証明書に記載された取引価格など)によって評価し、②活発な市場が存在しない仮想通貨の場合には、客観的な交換価値を示す一定の相場が成立していないため、その仮想通貨の内容や性質、取引実態等を勘案し、個別に評価する(例えば、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する方法など)としている(詳細はこの問16を参照されたい)。 (※) 国税庁ホームページより さらに、こちらもレアケースかもしれないが、月々の給与等の一部を取引所で売買可能な仮想通貨で支払うこととした場合の給与に係る所得税の源泉徴収方法について問17で解説されている。 (了)

#No. 295(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/11/22
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