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連結会計を学ぶ 【第11回】「のれんと負ののれんの会計処理」

連結会計を学ぶ 【第11回】 「のれんと負ののれんの会計処理」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 資本連結では、親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本は相殺消去され、消去差額が生じた場合には当該差額をのれん又は負ののれんとして会計処理することになる(「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)24項、59項)。 今回は、のれん及び負ののれんの会計処理について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 投資と資本の相殺消去 支配獲得時における資本連結の手続には次のものがある(「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(会計制度委員会報告第7号。以下「資本連結実務指針」という)3項)。 なお、連結貸借対照表の作成に関する会計処理における企業結合及び事業分離等に関する事項のうち、連結会計基準に定めのない事項については、「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号。以下「企業結合会計基準」という)や「事業分離等に関する会計基準」(企業会計基準第7号)の定めに従って会計処理する(連結会計基準19項、資本連結実務指針7-2項)。 1 基本的な考え方 投資と資本の相殺消去に際して、親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本が同額の場合には、差額が生じず、のれん又は負ののれんは計上されない。 しかしながら、親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本が同額でない場合には、差額が生ずることとなり、当該差額がのれん又は負ののれんとして会計処理される(連結会計基準24項)。 作成のイメージは、おおむね次の図表のとおりである。 【図表:連結貸借対照表の作成プロセスのイメージ】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 2 連結精算表の作成 【設例1:親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本が同額のケース】 【設例2:親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本に差額が生ずるケース(のれんの計上)】 【設例3:親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本に差額が生ずるケース(負ののれんの計上)】   Ⅲ のれんの会計処理及び表示 のれんは、企業結合会計基準32項に従って会計処理する(連結会計基準24項)。 のれん又は負ののれん(純額)が発生する企業結合において、契約等により取得の対価がおおむね独立して決定されており、かつ、内部管理上独立した業績報告が行われる単位が明確である場合は、当該業績報告が行われる単位ごとにそれを分解してのれん又は負ののれんを算定し、処理する(資本連結実務指針22項)。 1 のれんの会計処理 のれんは、資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する。ただし、のれんの金額に重要性が乏しい場合には、当該のれんが生じた事業年度の費用として処理することができる(企業結合会計基準32項)。 のれんは、その効果の発現する期間にわたって償却し、投資の実態を適切に反映させる必要があり、のれんの償却に当たっては、その効果の発現する期間を見積もり、原則としてその計上後20年以内の期間において、子会社又は業績報告が行われる単位(資本連結実務指針22項)の実態に基づいた適切な償却期間を決定しなければならない(資本連結実務指針30項、企業結合会計基準32項、「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第10号。以下「結合分離等適用指針」という)382項)。 のれんの償却に際しては、次の事項に留意する(結合分離等適用指針76項、380項から382-2項及び448項)。 2 のれんの減損会計 のれんは「固定資産の減損に係る会計基準」(平成14年8月、企業会計審議会)の適用対象資産となることから、規則的な償却を行う場合においても、「固定資産の減損に係る会計基準」に従った減損処理が行われることになる(企業結合会計基準108項)。 特に、次の場合には、企業結合年度においても減損の兆候が存在すると考えられるときがあるとされているので、実務上、注意が必要である(企業結合会計基準109項、結合分離等適用指針77項)。 なお、のれんの減損損失を認識すべきであるとされた場合には、減損損失として測定された額を特別損失に計上することになる(結合分離等適用指針77項)。 3 のれんの表示 のれんは無形固定資産の区分に表示し、のれんの当期償却額は販売費及び一般管理費の区分に表示する(企業結合会計基準47項)。 連結財務諸表に注記する会計方針等には、重要な資産の評価基準及び減価償却方法のほか、のれんの償却方法及び償却期間が含まれる(連結会計基準43項(3)、73項)。 4 子会社株式の減損処理とのれん 資本連結実務指針32項は次のように規定しているので、実務上、当該会計処理に注意が必要である。 なお、のれんの減損処理は、資本連結実務指針33項に規定されている。   Ⅳ 負ののれんの会計処理及び表示 負ののれんは、企業結合会計基準33項に従って会計処理する(連結会計基準24項)。 1 負ののれんの会計処理 負ののれんが生じると見込まれる場合には、次の処理を行う。ただし、負ののれんが生じると見込まれたときにおける取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回る額に重要性が乏しい場合には、次の処理を行わずに、当該下回る額を当期の利益として処理することができる(企業結合会計基準33項)。 資本連結実務指針は、負ののれんが生じると見込まれる場合には、まず、すべての識別可能資産及び負債が把握されているか、また、それらに対する取得原価の配分が適切に行われているかどうかを見直し、それでもなお取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回り、負ののれんが生じる場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の利益として処理すると規定している(資本連結実務指針30項、企業結合会計基準33項)。 負ののれんの会計処理に際しては、次の事項に留意する(結合分離等適用指針78項)。 2 負ののれんの表示 負ののれんは、原則として、特別利益に表示する(企業結合会計基準48項)。 (了)

#No. 254(掲載号)
#阿部 光成
2018/02/01

被災したクライアント企業への実務支援のポイント〔会計面のQ&A〕 【Q2】「サプライチェーンを介した被災の影響(販売先の被災)」~棚卸資産の評価~

被災したクライアント企業への 実務支援のポイント 〔会計面のQ&A〕 【Q2】 「サプライチェーンを介した被災の影響(販売先の被災)」 ~棚卸資産の評価~   公認会計士・税理士 深谷 玲子   〈Q〉 当社は、一部特別仕様がある製品の製造を行っている製造業である。当期に発生した地震により、当社に直接の被害はなかったが、当社の販売先が被災した。 当期末における当社の製品評価について、どのように考えたらよいか。 なお、当社は棚卸資産の評価方法として個別法による原価法を採用し、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定している。 (※) 以下は会計に関する考察のみにとどめていることに注意されたい。   〈A〉 ◆販売先が値下げを要請している場合-正味売却価額の再考- 販売先の値下げ要請に応じると経営判断がなされた場合には、正味売却価額を再考する必要がある。つまり、取得原価に変化はないが、販売価格が変更 = 正味売却価額が通常時と比べて変化しているといえる。 正味売却価額が変更されたことにより、値下げ考慮後の正味売却価格が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とし、収益性の低下を認識する。   ◆販売先が納期の先延ばしを要請している場合 販売先の納期先延ばしに応じると経営判断がなされた場合、販売価格に変更がないならば、棚卸資産の評価をすぐに変更させることにはならないであろう。 ただし、以下の点について、慎重な判断が必要である。   ◆販売先が納入をキャンセルした場合 受注先の納入キャンセルを受け入れるという経営判断がなされた場合、製品を他社へ販売するか、廃棄するかの選択となる。 1 他社へ転売する場合 -正味売却価額を再考し追加製造費用も考える- 他社へ販売する場合、当社製品には一部特別仕様部分があるため、当初の販売先への特別仕様部分を撤去し、新しい販売先への特別仕様に製作しなおす必要がある。 そのため、当該製品は、完成品ではなく、転用準備のための仕掛品となり、追加製造費用を考慮する。 正味売却価額は、以下の算式で算定される。 上記計算要素のすべてが当初販売先の時とは変化すると想定されるが、この算式に基づいて正味売却価額を再計算する。再計算された正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とし、収益性の低下を認識する。 2 廃棄する場合 -棚卸資産廃棄損を計上する- 他社への販売ができない場合、あるいは他社への販売のためにかかる追加コストよりも廃棄コストの方が安いと判断された場合には、廃棄処分が選択されるであろう。 廃棄処分が決定された場合、会計処理上は、当該製品の取得原価分を  棚卸資産廃棄損 ××× / 棚 卸 資 産 ×××  と処理する。 今回の棚卸資産廃棄損は、被災の間接的影響による特別な事情であるため特別損失に計上するが、多額でない場合には、経常的な費用として計上することも認められると思われる。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ 当社が直接被災していなくても、間接的に災害の影響を受けることがある。当社の棚卸資産には物理的な直接の被害はなかったものの、サプライチェーンを介して災害の影響を受ける場合である。 前回の【Q1】では製品原材料の購入先が被災したケースについて解説したが、今回は製品の販売先が被災したケースを取り上げた。 一般に、販売先が被災した場合、当社製品の販売が通常どおりにできなくなる。 当社の棚卸資産の物理的な状況に変化はないにもかかわらず、 ・販売可能性が変わる ・売り先がなくなる ・他の売り先を探すまでに労力を要する こととなる。 その結果、通常時とは異なる状態(=正味売却価額の見直しの必要性)となっている棚卸資産の期末時評価はどうすべきであるか。 通常の販売目的で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とする(企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」第7項)。 そのため、取得原価に変化がない場合でも、正味売却価額が変化した棚卸資産については、正味売却価額まで収益性の低下を認識する。他社販売への転用のために追加製造費用がかかる場合にも考慮が必要である。 その結果、直接被災していない当社においても、上記の例のように損失が生じることとなる。 なお、簿価切下額の戻入れに関しては、当期に戻入れを行う方法(洗替え法)と行わない方法(切放し法)のいずれかを選択適用できるが、当ケースの場合は、「地震」という臨時の事象に起因するものであるため、洗替え法を適用していても、翌期に戻入れを行わないことに留意が必要である。 (了)

#No. 254(掲載号)
#深谷 玲子
2018/02/01

外国人労働者に関する労務管理の疑問点 【第11回】「外国人の転職者を採用するときの手続きと注意点」

外国人労働者に関する 労務管理の疑問点 【第11回】 「外国人の転職者を採用するときの手続きと注意点」   社会保険労務士・行政書士 永井 弘行     1 転職者の入社時には、原則、日本人と同様の手続きが必要 外国人の転職者が入社するときは、まず日本人と同様の手続きを行います。 つまり、本人から年金手帳や雇用保険被保険者証を提出してもらい、社会保険(厚生年金保険、健康保険(介護保険)、雇用保険)の加入手続きを行います。 前職の退職時に交付された源泉徴収票があれば、年末調整ができるように転職後の会社で受け取ります。給与から控除する住民税(特別徴収)があれば、必要な手続きを行います。 こうした手続きは日本人と同じものです。 外国人に特有の手続きとして、雇用保険の被保険者は、雇用保険被保険者資格取得届の備考欄に、外国人の国籍・地域、在留資格、在留期間、資格外活動の有無などを記入し、届出します。   2 在留資格の変更が必要なケースは、必ず入社前に変更すること 転職前の在留資格と異なる活動をする場合は、在留資格の変更が必要です。例えば、「教育」の在留資格で中学校の英語教師に就いていた外国人が、転職して民間企業で通訳・翻訳の担当者になるようなケースです。 このケースでは新しい勤務先に就職する前に、在留資格を「教育」から「技術・人文知識・国際業務」に変更することが必要です。在留資格を変更せずに就職すると「資格外活動を行う不法就労」になることがあります。 在留資格の変更が必要になるかどうかはケースバイケースですが、「経営・管理」、「研究」、「教育」などから「技術・人文知識・国際業務」に変更するケースが多いと思います。   3 転職前と同じ業務に就くケースでは転職後に「就労資格証明書」を得るのが望ましい 在留資格の変更が必要ない場合でも、新しい勤務先の従事業務について、転職後に「就労資格証明書」を得ておくのが望ましいです。 例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で、通訳・翻訳業務に従事する外国人がA社を退職し、転職後もB社で通訳・翻訳業務に従事するようなケースです。このケースでは、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を変更する必要はありません。転職後、B社で通訳・翻訳の業務を続けることが可能です。 しかし「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、外国人がA社で勤務する前提で審査され、許可されたものです。B社で勤務することを前提に許可されたものではありません。 そのため、新しい勤務先の活動内容が「現在の在留資格の活動に含まれる」ことを入国管理局に確認してもらうのが賢明です。入国管理局に「就労資格証明書」を申請し、認められれば交付されます。   4 就労資格証明書とは 「就労資格証明書」は、就労の在留資格を持つ外国人が転職などで勤務先が変わったような場合に、新しい勤務先での就労内容(従事業務、活動内容)が、現在の在留資格の活動に含まれていることを確認する目的で申請し、入国管理局から交付される証明書です。 外国人が、働くことのできる在留資格(または法的地位)を有していること、または特定の職種に就くことができることを証明する文書です。 この証明書は、新たに許可を受けて発行されるものではありません。外国人がすでに有している在留資格に基づいて、法務大臣が発行する証明書です(入管法第19条の2)。 証明書を得るには、外国人が入国管理局に申請することが必要です。交付時には手数料900円を納付します。 〈就労資格証明書の交付を受ける例(イメージ図)〉   5 転職前後に「在留期間の更新手続き」が必要になるケースも これは「技術・人文知識・国際業務」の在留期限(例示:3年)が、あと2ヶ月しか残っていない状態で転職したようなケースです。 転職後の会社で勤務を続けるためには、「技術・人文知識・国際業務」の在留期間の更新手続きが必要です。 転職せずに同じ会社で勤務を続ける場合の在留期間更新手続きに比べて、転職した場合は入国管理局に提出する書類が多くなります。 A社からB社に転職し、B社の社員として「技術・人文知識・国際業務」の在留期間を更新する場合は、入国管理局はB社の会社情報や、従事業務の内容を審査します。 上述したように、現在の在留資格は外国人がA社で勤務することを前提として許可されたもので、入国管理局はB社の会社情報や従事業務の内容について知りません。そのため「更新」の申請を行うときに、B社の会社情報や従事業務の内容について、書類を提出し説明することが必要です。 このように、転職に伴う「更新」手続きは、新たな勤務先の会社情報などを入国管理局に詳しく説明する必要があるため、実務上は留学生が就職するときの在留資格の「変更」手続きとほぼ同じ書類を提出することが必要になります。   6 転職後14日以内に外国人本人が「契約機関に関する届出」を行う 就労の在留資格の外国人が転職し、新しい勤務先に就職したときは、外国人本人が14日以内に入国管理局に届出することが必要です(入管法第19条の16)。この届出は平成24年7月の入管法改正により、新たに義務付けられたものです。 この手続きは「契約機関に関する届出(新たな契約の締結)」を、本人が届出します。届出書の様式は、次の法務省のホームページからダウンロードできます。 また、外国人が前職を退職したときにも、外国人本人による届出が必要です。つまり勤務先が変わったときは、転職の前後で本人による届出が必要になります。 *  *  * 次回は「外国人社員が退職するときの手続き」について説明する予定です。 (了)

#No. 254(掲載号)
#永井 弘行
2018/02/01

これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第12回】「株主管理の仕組みづくり」-株主名簿整備〈運営編〉-

これからの会社に必要な 『登記管理』の基礎実務 【第12回】 「株主管理の仕組みづくり」 -株主名簿整備〈運営編〉-   司法書士法人F&Partners 司法書士 本橋 寛樹   はじめに 前回解説した株主名簿整備に着手した結果、あいまいな情報や、連絡が取れない株主の存在に気づいた読者がいるのではないだろうか。 今後の株主管理の見直しにあたって、「①会社と株主が接触する頻度」と「②株主に関する資料の保管方法」の観点は欠かせない。 本稿では、この2つの観点について解説する。 まず①会社と株主が接触する頻度についてみていこう。   ①会社と株主が接触する頻度 株主となる場面では、会社は株主の氏名、住所、株式数等の情報を取得し、これらの情報はその時点では最新のものである。しかし、その時点以後、株主と接触しない間に株主の事情が変われば、株主となる時点の情報は古い内容となりうる。 株主の事情が変わるケースとして、例えば、住所変更が挙げられる。もし住所変更があるにもかかわらず、株主がその旨を届出せず、会社も株主と接触しなければ、株主が株式を保有したまま所在が不明となってしまうおそれがある。 【会社と株主の関係】 住所変更や相続といった株主の事情の変化は常に起こる可能性がある。 しかし、会社は、いつ株主の事情が変化するかを予測することができない。また、株主の事情の変化があったとしても、株主が会社に変更の旨を届出するとは限らない。 そこで、会社主導で株主と接触し、株主に関する情報を取り入れる観点が必要となる。 株主と接触する頻度は、少なくとも1年に1回が目安となる。「1年に1回」の理由として、定時株主総会の招集通知や会社の創業記念日といった、会社と株主が接触しやすい場面がある点や、株主と接触する頻度があまりに低い場合に株主の事情の変化を見逃すおそれがある点が挙げられる。 それでは①を前提として、次に株主に関する資料の保管方法についてみていこう。   ②株主に関する資料の保管方法 「中長期にわたって株主管理を行う」イメージは、株主に関する情報の変更の都度、その情報を株主名簿に反映するという積み重ねである。 前回のように、ある一時にまとめて株主名簿を整備する際に、株主に関する資料が保管されていないとそこでつまずいてしまう。株主に関する資料の有無が株主管理のしやすさを左右する。 【株主名簿の内容更新のイメージ】 株主管理では、具体的に以下の書面を活用する。 【株主管理で活用する書面の一例】 《株主情報変更確認書》 株主情報変更確認書(以下、「変更確認書」という)は会社法等の法令で定められているものではないが、会社が株主の最新情報を取得、確認するための資料として活用する。本稿①で解説した、会社が株主に接触する際に、この変更確認書を株主に提供し、最新の株主に関する情報を収集する。 【参考書式:株主情報変更確認書】 変更確認書を郵送で提供する場合、宛先不明で返送されれば、会社は株主の住所が変更されたことに気づく。その際に、会社は電話番号やメールアドレス等の連絡先を控えていれば、株主に新しい住所を確認することができる。 また、変更確認書の備考欄の記載は、株主から会社に対して、自発的に住所変更等の情報を届出してもらうというねらいがある。 《株式名義書換請求書》 贈与、売買、相続等によって株式が移転する場合に、移転する株式の数、株式の移転日等の情報を書面として残す。この書面により、贈与、売買、相続等による株式の動きを後日遡って確認することが容易となる。 【参考書式:株式名義書換請求書】 前回解説した株式名簿を整備する際に、株主名簿の記載事項の1つである「株式取得年月日」の記載が困難であった読者は、株式名義書換請求書を株主から取り付けて保管すると、今後「株式取得年月日」を正しく把握することができるようになる。 《株主印鑑票》 会社が株主の本人確認の資料として活用する。新しく株主となる場面で株主から取り付ける。株主情報変更確認書や株式名義書換請求書の届出印欄には、株主印鑑票と同一の印影を株主に捺印してもらう。 【参考書式:株主印鑑票】   まずは書式の準備から これまでみてきた株主管理に関する活用と書式を用意することで、株主名簿の内容更新を積み重ねるための準備が整う。各書面の保管によって、株主に関する情報が目に見えるものとなり、あいまいな情報がなくなるだろう。 中長期的にわたる株主管理のための新たな一歩として、まずは株主管理に関する書式を用意し、そして会社と株主が接触する頻度を高めてみてはいかがだろうか。 (了)

#No. 254(掲載号)
#本橋 寛樹
2018/02/01

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第5話】「重加算税の適用」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第5話】 「重加算税の適用」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「中尾統括官!」 浅田調査官が声をかける。 せわしなく机の書類を整理していた中尾統括官は、顔を上げる。 「・・・なに?」 浅田調査官は、平成28年分の確定申告書を差し出す。 「税理士署名欄に市役所の人の名前が書いてあるのですが・・・これって、この人が確定申告書を作成した・・・ということですか?」 浅田調査官が尋ねる。 中尾統括官は、差し出された確定申告書を見ながら、頷く。 「これは・・・税理士法50条1項の規定によるものだ。」 そう言いながら、中尾統括官は税務六法を開く。 「へえ・・・こんな規定があったのですか・・・」 浅田調査官は感心した様子で六法を覗き込む。 「ところで、なにか他に・・・問題でも?」 中尾統括官は、訝しそうにしている浅田調査官の顔を見る。 「ええ・・・この納税者の税務調査をしているのですが・・・確定申告書の下書用の収支内訳書に、虚偽記載があったのです。」 そう言うと、浅田調査官はもう一枚右手に持っていた用紙を見せる。 「・・・それで納税者は、この市役所の職員に、毎年、虚偽記載した下書用の収支内訳書を手渡して、申告書を作成してもらっていたらしいのです。」 浅田調査官は税務調査の状況を説明する。 「調べてみると、申告相談において、市役所の職員は何も疑問に思わず、その下書用の収支計算書に基づいて確定申告書を作成していたということなのです。」 中尾統括官は腕を組みながら聞いている。 「納税者は、市役所の職員から収支計算書の内容に疑問を抱かれなかったことを奇貨として・・・7年間も不正を行っていた・・・」 説明を続けながら、浅田調査官は少し興奮している。 「それで君は・・・この納税者の不正所得に対して、重加算税を賦課すべきだと考えているんだね。」 中尾統括官は確認する。 「ええ。重加算税を賦課するのはもちろんですが・・・その他に『偽りその他不正の行為』にも該当すると思いますから、除斥期間一杯の7年間の更正処分をしたいと思うのですが・・・統括官、どう思われますか?」 今度は浅田調査官が中尾統括官の顔を見る。 「なるほど・・・『隠ぺい・仮装』と『偽りその他不正の行為』か・・・」 中尾統括官は少し考えてから、話し始める。 「これは君も知っているように、重加算税の一般的な考え方だが・・・」 そう前置きしながら、中尾統括官は言葉を続ける。 「・・・重加算税を賦課するためには、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別に、隠ぺい又は仮装と評価すべき行為が存在することを要するが、重加算税制度の趣旨からすると、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要ではない・・・と言われている。そして、納税者が、当初から所得を過少に申告すること、又は法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき、過少申告をし、又は法定申告期限までに申告しなかったような場合には、重加算税の要件が満たされる。」 中尾統括官は一気に話す。 「このケースでは、過少申告する意図はあったと判断できると思いますし、長期間にわたって、農産物の販売金額を過少に記載するなどした下書用の収支内訳書を自ら作成し、これを市職員に提示することによって、農産物の販売金額を過少に記載させ、各収支内訳書及び各確定申告書を作成させ続けていたことを考慮すると、これらの行為は、納税者の過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当すると思うのですが・・・」 浅田調査官の説明に、中尾統括官は満足そうに頷く。 「それで・・・偽りその他不正の行為は・・・どうでしょうか?」 浅田調査官が尋ねる。 「『隠ぺい・仮装』と『偽りその他不正の行為』については、学問上はともかく、実質的な差違はないから・・・それに、君の調査している納税者の状況を聞いていると、7年間の更正処分をしてもかまわないよ。」 中尾統括官は再び税務六法を開き、国税通則法70条4項1号を見る。 「分かりました!」 浅田調査官は、中尾統括官の回答に、元気よく応じる。 (つづく)

#No. 254(掲載号)
#八ッ尾 順一
2018/02/01

《速報解説》 開示内容の共通化・合理化、非財務情報の開示充実を図る改正開示府令等が確定~経営者の視点による経営成績の認識・分析を求める~

《速報解説》 開示内容の共通化・合理化、非財務情報の開示充実を図る 改正開示府令等が確定 ~経営者の視点による経営成績の認識・分析を求める~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年1月26日、「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第三号)が公布された。これにより、平成29年10月24日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 これは、平成28年4月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告の提言を踏まえたものであり、開示内容の共通化・合理化や非財務情報の開示充実などに関する改正である。 公開草案に寄せられたコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(以下「コメント対応」という)も公表されており、改正内容の理解に資するものと考えられる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 開示内容の共通化・合理化・非財務情報の開示充実 次のものが改正された。 1 大株主の状況に係る記載の共通化 有価証券報告書等の「大株主の状況」における株式所有割合の算定の基礎となる発行済株式について、事業報告と同様に自己株式を控除することとする。 2 新株予約権等の記載の合理化 次の改正が行われた。 3 株主総会日程の柔軟化のための開示の見直し 有価証券報告書における「大株主の状況」等の記載時点を、事業年度末から、原則として議決権行使基準日へ変更する。 4 非財務情報の開示充実 「業績等の概要」及び「生産、受注及び販売の状況」を「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に統合した上で、記載内容の整理を行う。 併せて、経営成績等の状況の分析・検討の記載を充実させる観点から、以下について記載する。 これまで、「提出会社の代表者」による分析・検討内容の記載が求められていたが、今回、「経営者の視点」へと改正された。 これは、現在の開示の状況について、経営者の視点による分析・検討が欠けている例が多いとの指摘があり、前述の「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告では、「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の見直しの方向性として、事業全体及びセグメント別の経営成績等に重要な影響を与えた要因について「経営者の視点」による認識と分析などを記載することとされているためである(コメント対応3)。 また、「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」の開示は、投資者が投資判断を行う上で重要な情報であることから、これまでも、分析・検討内容の例として示されていた。 しかしながら、現在の開示の状況は、単にキャッシュ・フロー計算書の要約を文章化したものの記載にとどまり、本来求められる開示が行われていない例が多いとの指摘がある。 このため、「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」で本来求められる開示内容をより充実させる観点から、「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」について、記載が求められている(コメント対応4)。 改正の趣旨を踏まえ、記載に当たっては、単にキャッシュ・フロー計算書の要約を文章化したものを記載するだけではなく、企業の経営内容に即して、例えば、重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源は何であるかなどについて、具体的に記載することが期待されている。 そのほか、経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等がある場合には、当該経営方針・経営戦略等又は当該指標等に照らして、経営者が経営成績等をどのように分析・検討しているかを記載するなど、具体的に、かつ、分かりやすく記載することが規定されているので、実際の記載に際しては、注意が必要である(コメント対応5)。   Ⅲ 追加型投資信託に係る有価証券届出書の翌日効力発生手続の見直し 次のものが改正された。 追加型の投資信託に係る有価証券届出書の翌日効力発生のための手続における提出者からの申出を不要とする。   Ⅳ 適用時期等 Ⅱは、平成30年1月26日付で施行され(一部、平成30年4月1日施行)、ガイドラインも適用となる。改正後の規定は、平成30年3月31日以降に終了する事業年度を最近事業年度とする有価証券届出書及び当事業年度に係る有価証券報告書から適用される。 Ⅲは、平成30年2月1日から適用される。 (了)

#No. 253(掲載号)
#阿部 光成
2018/01/30

《速報解説》 会計士協会及び監査役協会、近年の制度改正を受け「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」を改正~実効性確保のため会計監査以外でも相互連携強化を求める~

《速報解説》 会計士協会及び監査役協会、近年の制度改正を受け 「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」を改正 ~実効性確保のため会計監査以外でも相互連携強化を求める~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年1月25日、日本公認会計士協会と日本監査役協会は、「「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」の改正について」を公表した。これにより、意見募集を行っていた公開草案が確定することになる。 これは、会社法の改正(平成26年6月改正)、コーポレートガバナンス・コードの策定(平成27年6月策定)などを受けたものである。 また、「「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」の改正について(公開草案)」に対するコメントの概要及び対応も公表されているので、研究報告の理解に資するものと考えられる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 研究報告の位置付け 監査役等と監査人は、それぞれ監査をその職務とし、コーポレート・ガバナンスの一翼を担い、その職務を通じて企業不祥事の発生防止をはじめとした企業活動の健全化を図り、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に貢献している。 近年では子会社等における不祥事が目立ってきており、企業集団の観点からのコーポレート・ガバナンスの考え方が重要となってきているとのことである。 なお、日本監査役協会の「会計不正防止における監査役等監査の提言-三様監査における連携の在り方を中心に-」では、監査役等、内部監査部門、会計監査人の三者間の連携に当たって、監査役等は三様監査を統括する意識を持って、主体的な役割を果たすべきであると記載されているとのことである。 2 監査役等と監査人との連携と効果 監査役等と監査人の連携は会計監査が中心となる。 しかしながら、監査役等が業務監査から得る情報は監査人の監査にも有用であり、また、監査人から得られる情報は監査役等にとって会計監査だけでなく業務監査にも有用である。 このため、両者の連携の目的としては会計監査の観点にこだわることなく、監査役等と監査人それぞれが担う監査の実効性を確保し、有効性及び効率性を高めるとの観点からも、相互の連携を強化することが求められるとしている。 3 会社法における関連規定 監査役等による株主総会に提出する会計監査人の選任・解任・不再任議案の決定に関する規定について述べている(会社法344条1項3項、399条の2第3項2号、404条2項2号)。 4 コーポレートガバナンス・コードにおける規定 コーポレートガバナンス・コードは、監査役会が対応を行うべきこととして、「外部会計監査人候補を適切に選定し外部会計監査人を適切に評価するための基準の策定」(補充原則3-2①(i))、「外部会計監査人に求められる独立性と専門性を有しているか否かについての確認」(同3-2①(ⅱ))を求めている。 また、取締役会及び監査役会に対し、「十分な監査時間の確保」、「経営陣幹部へのアクセス(面談等)の確保」、「監査役、内部監査部門や社外取締役との十分な連携の確保」、「不正を発見し適切な対応を求めた場合や、不備・問題点を指摘した場合の会社側の対応体制の確立」(同3-2②)など、監査人の監査環境の整備を求めている。 上記のほか、監査法人のガバナンス・コードにおける規定などについても述べている。 (了)

#No. 253(掲載号)
#阿部 光成
2018/01/26

プロフェッションジャーナル No.253が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年1月25日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.253を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/01/25

山本守之の法人税“一刀両断” 【第43回】「業界団体の費用の具体的取扱い」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第43回】 「業界団体の費用の具体的取扱い」   税理士 山本 守之   〔事例〕 A社は甲製品の製造業を営んでいますが、期中に次のような費用を支出しました。 上記について、調査官の主張は次の通りです。   〔検証〕 (1) 入場券の交付 入場券の交付は、その催しによって受けるサービスが娯楽性の高いものであれば、交際費等に該当します。例えば、商業演劇、プロ野球、プロサッカーなどの入場券がこれに該当します。現にテーマパークのDランドの入場券の贈与が交際費等として課税され、訴訟においても課税庁が勝訴した事案もあります。 しかし、事例のように娯楽性の乏しい催しの場合は、入場券の交付をもって相手方の個人的歓心を買うというものではないですから、交際費等とする調査官の主張には無理があるように思われます。 なお、『国税庁質疑応答集』(国税庁課税部審理室・法人課税課)では、事例のようなケースについて「交際費等に該当しない」と回答しており、その理由について次のように述べています。   (2) 大阪における会議費用 交際費等の支出は、法人が直接支出したものか間接支出したものかは問わないことになっています。したがって、法人が次のような費用を分担した場合であっても交際費等の支出があったものとして取り扱われます(措通61の4(1)-23)。 これらは、いずれも「負担金」、「会費」、「会議費」等として経理してあったとしても、その支出実態が交際費等の支出であることが明らかである場合は支出交際費等となることに疑問はないが、念のため取扱いを置いたものと考えられます。 ところで、事例のような国際会議場の参加費や負担金については、次のような視点から税務上のチェックが行われます。 これを事例によって検討してみると、①大阪市で行われる国際会議では、特定取引に係る諸問題を討議し、情報交換も行うというのであるから、甲製品の特定取引に携わる者として、この会議に積極的に参加する意義はあるでしょう。 また、②会議費用は登録料(参加者負担金)を主体としていますが、これで賄えない分は主催国の業界が負担するということは、国際会議としてはよくあることで、これを不合理と決めつけるわけにはいきません。 さらに③会議費用のうち交際費と認められる部分を抽出して損金不算入額の計算をしているのですから、A社の処理は適正といえます。 事例と似たケースについて、『国税庁質疑応答集』(国税庁課税部審理室・法人課税課)では、次のように回答しています。   (3) 京都大会の費用 国際会議京都大会は、甲製品の国際基準(規格等)を討議するための会議であるから、A社が業界負担金のうち合理的な基準によって割り当てられた金額を負担したことは適正といえます。 ただし、A社は負担金拠出した時に全額損金としているのが税務上適正か否かについて、次の点を検討する必要があります。 このうち①については、A社は、フェアウェルパーティーは会議日程にも組み込まれていて、国際会議における儀礼的費用の範囲であるとともに、その金額も少額(7.1%)であるという理由で交際費等として抽出していなかったのでしょう。 パーティー費用は一般に交際費等として抽出すべきものであり、調査官もそのような視点から抽出すべきであると主張しているようですが、フェアウェルパーティーは国際的儀礼から会議そのものと考えることもでき、開催費用に占める割合も少ないこともあり、パーティー自体が参加者の個人的歓心を買う意図がないものであるから、強いて交際費として抽出する必要はないのではないかと思います。 次に、②について調査官が「負担金拠出時と支出時(会議開催時)にタイムラグがあるから前払費用とすべきだ」と主張しているのは、同業者関係に対する会費等の処理を定めた法人税基本通達9-7-15の3が念頭にあったからでしょう。 同通達では、同業者団体の会費等について次のような取扱いを定めています。 まず、加入金については、構成員としての地位を他に譲渡することができず、出資の性格を有しないものは繰延資産とし、5年で償却します。地位を他に譲渡することができる場合及び出資の性格を有する場合の加入金は、その地位を他に譲渡し、又はその同業者団体を脱退するまで損金の額に算入しません(法基通8-1-11、8-2-3)。 次に経常会費は、その組合又は教会等がその構成員のために経常的に要する費用の負担額ですから、原則として支出事業年度の損金の額に算入されます。 しかし、その同業者団体等においてその受け入れた経常会費について不相当に多額の剰余金が生じていると認められるときに、その剰余金が生じた以後に法人が支出する経常会費は、その剰余金が適正な額に減少するまでは前払費用とされます。 調査官が問題にしているのは「その他の会費」で法人が経常会費以外の会費(特別会費)を負担したときは前払費用とし、その後は同業者団体から支出された日に、その費途に応じてその法人が支出したものとして扱うとしている点です。 しかし、事例では負担金の拠出時(平成X年5月)と使用時(平成X年10月)まで短期間ですので、拠出時の損金としても課税上の弊害はないのではないかと考えます。 なお、『国税庁質疑応答集』(国税庁課税部審理室・法人課税課)では、負担金を拠出時全額損金としたケースについて、 と回答し、その理由を次のように述べています。 (了)

#No. 253(掲載号)
#山本 守之
2018/01/25

〔平成30年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第1回】「「法人税率の確認」及び「中小企業向け設備投資減税の見直し」」

〔平成30年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第1回】 「「法人税率の確認」及び「中小企業向け設備投資減税の見直し」」   公認会計士・税理士 新名 貴則   平成30年3月期の決算申告においては、平成29年度税制改正における改正事項を中心として、いくつか留意すべき点がある。本連載では、その中でも主なものを解説する。 【第1回】は、適用される法人税率の確認、及び、中小企業の設備投資減税の見直しについて、平成30年3月期決算において留意すべき点を解説する。   1 法人税率は平成29年3月期と同じ 中小法人等において800万円までの課税所得に適用される軽減税率は本来19%だが、平成29年3月期決算申告においては、特例措置により15%に引き下げられていた。この措置は平成29年3月31日までに開始する事業年度が対象であったが、平成29年度税制改正により2年間(平成31年3月31日までに開始する事業年度まで)延長された。したがって、平成30年3月期決算申告においても、15%が適用される。 中小法人等以外の法人の課税所得や、中小法人等において800万円を超える課税所得に適用される法人税率は、平成27年度税制改正、平成28年度税制改正と連続して引き下げられており、平成29年3月期決算申告においては23.4%が適用されていた。平成30年3月31日までに開始する事業年度については23.4%が適用されるため、平成30年3月期決算申告においても23.4%が適用されることになる。 【法人税率(平成29年3月期と変化なし)】 (※) 資本金1億円以下の法人(資本金5億円以上の大法人の完全子会社を除く) なお、平成30年4月1日以後に開始する事業年度においては、法人税率が23.4%から23.2%に引き下げられる。したがって、平成31年3月期決算申告においては23.2%が適用される。   2 中小企業の設備投資に対する優遇税制の見直し ① 「中小企業投資促進税制」の見直しと期間延長 「中小企業投資促進税制」とは、青色申告書を提出している中小企業者等が、特定の機械装置などを取得又は製作して、指定事業(風俗営業や娯楽業等を除くほぼ全業種)の用に供した場合に、その事業の用に供した事業年度において、30%の特別償却又は7%の税額控除を認める制度である。 平成29年3月31日までに取得等をして事業供用した資産が対象であったが、平成29年度税制改正により、その期限が平成31年3月31日まで2年間延長された。ただし、改正後は適用対象資産から「器具及び備品」が除かれている。 したがって、平成30年3月期決算申告においては「中小企業投資促進税制」の適用が継続され、その適用対象資産は次の通りである。 ② 「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」の期間延長 「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」とは、青色申告書を提出する中小企業者等が認定経営革新等支援機関等の指導及び助言を受け、一定の器具備品及び建物附属設備を取得等した場合に、30%の特別償却又は7%の税額控除を認める制度である。この制度の適用を受けるためには、指導及び助言を受けた旨を明らかにする書類の提出が必要となる。 平成29年3月31日までに取得等をして指定事業に供用した資産が対象であったが、平成29年度税制改正により、その期限が平成31年3月31日まで2年間延長されている。したがって、平成30年3月期の決算申告においては適用が継続される。 ③ 「生産性向上設備投資促進税制」の終了 「生産性向上設備投資促進税制」とは、青色申告法人が「生産性向上設備」を取得等して国内の事業の用に供した場合に、特別償却又は税額控除を認める制度である。 この特例は、当初の予定通り平成29年3月31日をもって終了した。したがって、平成30年3月期において取得等及び事業供用した資産には適用されない。 ④ 「中小企業経営強化税制」の創設 「中小企業経営強化税制」とは、青色申告書を提出する中小企業者等が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、一定の設備を取得等し指定事業に供用した場合に、即時償却又は税額控除(7%又は10%)を認める制度である。 平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に取得等して事業供用した資産が対象となるため、平成30年3月期の決算申告においては適用があることになる。 (※1) 情報通信業や医療保険業においては、一定の場合に制限あり。 (※2) 医療保険業を行う事業者が取得等するものは除く。 (※3) 複写販売用の原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く。 ⑤ 適用関係の整理 平成30年3月期決算申告における、中小企業の設備投資に対する優遇税制の適用関係は次の通りである。 (了)

#No. 253(掲載号)
#新名 貴則
2018/01/25
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