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〔“もしも”のために知っておく〕中小企業の情報管理と法的責任 【第8回】「電子データを営業秘密として管理する方法」

〔“もしも”のために知っておく〕 中小企業の情報管理と法的責任 【第8回】 「電子データを営業秘密として管理する方法」   弁護士 影島 広泰   -Question- 紙に印刷された情報については「秘」と記載しておけば営業秘密として管理できることは分かりますが、電子データの場合にはどうしたらよいでしょうか。 -Answer- ファイル名にマル秘表示をしたり、文書のヘッダーやフッターにマル秘表示をする方法のほか、ファイルが保存されているフォルダにパスワードを設定しておく方法なども考えられます。 自社の情報が他社に漏えいしてしまった際に、その情報が不正競争防止法の「営業秘密」の要件を満たすように秘密として管理してあれば、その会社に対して情報の廃棄や損害賠償の請求をすることができる。 「秘密として管理してある」といえるためには、「合理的な方法で管理する(秘密管理措置)」ことで、情報に接した人間にとって秘密であることが十分に認識できるようになっていることが必要である。具体的には、(ⅰ)対象情報の一般情報(営業秘密ではない情報)からの合理的区分と、(ⅱ)対象情報について営業秘密であることを明らかにする措置を講じることになる(詳細は【第7回】を参照されたい)。 秘密管理措置=「(ⅰ)合理的区分」+「(ⅱ)営業秘密であることを明らかにする措置」 今回は、具体的にどのように管理しておけば、営業秘密として保護されるのかを解説する。   1 紙媒体の場合 営業秘密として保護したいと考えている紙媒体(例えば、顧客リストをプリントアウトしたもの)については、専用のファイルに綴じ込んだ上で、ファイルの背表紙に「秘」と記載しておく、あるいは鍵のかかるキャビネットに保管しておくなどが典型的な方法であることは、【第7回】で述べたとおりである。   2 電子媒体の場合 電子媒体の場合も、記録媒体や保管ケースにマル秘の表示をしておくなど、基本的には紙媒体と同じ方法を用いることができる。 また、電子データの場合には、媒体にマル秘の表示をするのではなく、電子ファイルやフォルダの名前にマル秘と入れておくことも考えられる(例えば、「【秘】顧客一覧.xls」のようなファイル名にする)。 ファイルを開くためのパスワードを設定しておくことも1つの方法である。パスワードを設定してあれば、それを開こうとした人にとって、それが秘密として管理されている情報であることが十分に認識できることになるからである。 さらに、経済産業省の営業秘密管理指針によれば、電子ファイルそのものではなく、フォルダの閲覧にパスワードを設定しておくことも考えられるとされている。これは実務的には有効なヒントとなる。例えば、あるプロジェクトを始めるときに、最初は社内ルールに従ってエクセルファイルのヘッダーに「【秘密】」などと記載していたのに、プロジェクトが佳境にさしかかって忙しくなってくると、いつの間にかそのような記載がないファイルが増えてきてしまうことがあるのではないだろうか。 実際に、営業秘密の案件を取り扱っていると、一番肝心な最終バージョンのファイルに「【秘密】」と記載されていないことがある。そのような場合でも、せめてファイルが保存されていたフォルダにパスワードが設定されていれば、裁判になったときに「フォルダにはパスワードが設定されており、秘密管理措置が講じられていた」と主張することができる。 そのため、営業秘密を取り扱うことが考えられるプロジェクトを始める際には、そのプロジェクトのファイルを保存するフォルダにパスワードを設定しておくと安心である。 ◆電子媒体に対する秘密管理措置(営業秘密管理指針p.9)   3 物件に営業秘密が化体している場合 物件に営業秘密情報が化体している場合にはどうしたらよいであろうか。例えば、製造機械や金型、高機能微生物、新製品の試作品などである。これらにおいては、金型にマル秘と記載しておくわけにもいかないし、鍵のかかるところに保管しておくことも難しい。 このような場合には、物件がある部屋の扉に「関係者以外立入禁止」の張り紙をしておくなどとして、その物件を秘密として管理する意思があることを分かるようにしておくことが重要である。 そうしておけば、万が一その物件の形状等が盗まれた際に、それを盗んだ者は、「『関係者以外立入禁止』と記載された扉の向こうに保管されている物件が秘密であると思わなかった」などという不合理な言い訳をしなければならないことになる。 「秘密管理措置」とは、「合理的な方法で管理すること(秘密管理措置)により、秘密として管理された情報であることが分かるようにしておくこと」であることがお分かりいただけるであろう。 ◆物件に営業秘密が化体している場合の秘密管理措置(営業秘密管理指針p.10)   4 媒体が利用されない場合 無形のノウハウや従業員が職務として記憶した顧客情報のように、媒体が利用されていない情報であっても、営業秘密として保護することは可能である。 もっとも、何が営業秘密として保護されており、何が保護されていないのかが分からない状態で、無形のノウハウや記憶した顧客情報が営業秘密であるとされてしまうと、転職しようとする従業員の職業選択の自由を不当に侵害する可能性がある。 そこで、原則として、下記のような形でその内容を紙その他の媒体に可視化することが必要になるとされている。 ◆媒体が利用されない場合の秘密管理措置(営業秘密管理指針p.11) 一方で、情報量、情報の性質、当該営業秘密を知りうる従業員の多寡等を勘案して、その営業秘密の範囲が従業員にとって明らかな場合(例えば、未出願の発明や特定の反応温度、反応時間、微量成分、複数の物質の混合比率が営業秘密になっている場合など)には、必ずしも内容そのものが可視化されていなくとも、当該情報の範囲・カテゴリーを口頭ないし書面で伝達することによって、従業員の認識可能性を確保することができるものと考えられるとされている。 (了)

#No. 293(掲載号)
#影島 広泰
2018/11/08

《速報解説》 6月公表のディスクロージャーWG報告を受け記述情報や役員報酬等の有報等記載事項を示した改正開示府令(公開草案)が公表される

《速報解説》 6月公表のディスクロージャーWG報告を受け 記述情報や役員報酬等の有報等記載事項を示した 改正開示府令(公開草案)が公表される   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年11月2日、金融庁は「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正案を公表し、意見募集を行っている。 これは平成30年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、「財務情報及び記述情報の充実」、「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」、「情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組」に向けて、適切な制度整備を行うべきとの提言を受け、有価証券報告書等の記載事項を改正するものである。 意見募集期間は平成30年12月3日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 主に次の改正を行う。具体的な規定については、第二号様式「有価証券届出書」の規定を示す。 1 財務情報及び記述情報の充実 2 建設的な対話の促進に向けた情報の提供 3 情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組   Ⅲ 適用時期等 改正後の規定は公布の日から施行する予定である。 改正後の規定は、以下の適用予定である。 (了)

#No. 292(掲載号)
#阿部 光成
2018/11/05

《速報解説》国税庁、初の自動的情報交換により64ヶ国・地域から55万超の非居住者金融口座情報を受領~国外財産調書等、現保有情報との分析により海外資産隠し・租税回避へ対応~

《速報解説》 国税庁、初の自動的情報交換により 64ヶ国・地域から55万超の非居住者金融口座情報を受領 ~国外財産調書等、現保有情報との分析により海外資産隠し・租税回避へ対応~   税理士・行政書士 島田 弘大   1 はじめに 国税庁は平成30年10月31日に「CRS情報及びCbCRの自動的情報交換の開始について」を公表した。 CbCR(Country by Country Report:国別報告事項)及びCRS(Common Reporting Standard:「共通報告基準」)はOECDによる国際基準やBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)プロジェクトに基づいたものであり、日本でも昨今の税制改正により対応が始まったものである。今回はそれらの自動的情報交換の状況について初めて公表が行われた。 なお、以下文中の意見に関する部分について私見が一部含まれることをご容赦いただきたい。   2 CbCRの自動的情報交換の状況 CbCR(Country by Country Report:国別報告事項)は、BEPSプロジェクトの勧告(行動13「多国籍企業情報の文書化」)に基づくもので、日本では平成28年度税制改正(参照:「移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし」)により、特定多国籍企業グループの最終親会社等がCbCRを国税庁に報告する制度が導入された。 報告されたCbCRは、平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度終了の日の翌日から18ヶ月以内(次年度以降は15ヶ月以内)に外国税務当局に提供することとされていたが、今回はその交換の状況が公表された形だ。 国税庁の公表によると、国税庁は日本に所在する最終親会社609社分のCbCRを39ヶ国・地域に提供した一方、558社のCbCRを29ヶ国・地域から受領したとのことだ(速報値:10月31日現在)。 (※) 国税庁ホームページより 受領したCbCRの情報は、移転価格のリスク評価等に使用することとされている。   3 CRSの自動的情報交換の状況 また、CRS(Common Reporting Standard:「共通報告基準」)に基づく非居住者金融口座情報(CRS情報)の自動的情報交換についても初回の交換状況について公表された。 CRS情報の初回交換において、国税庁は日本の非居住者に係る金融口座情報89,672件を58ヶ国・地域に提供した一方、日本の居住者に係る金融口座情報550,705件を64ヶ国・地域から受領したとのことだ(速報値:10月31日現在)。 (※) 国税庁ホームページより これらの受領した金融口座情報については、国外財産調書等の様々な情報と併せて分析を行い、海外への資産隠しや国際的租税回避行為等の問題の解決に活用される予定である。 日本において、CbCRについては平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度終了の日の翌日から18ヶ月以内に外国税務当局に提供することとされており、またCRS情報の交換に関しては平成30年9月までに初回交換を行うこととされていた。つまり、いずれも始まったばかりの制度であり、またこれらの情報交換の実施をこれから新たに開始する国・地域もあることを考えると、交換件数は今後も増えていくと考えられる。   4 (参考)平成29事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要 なお、同日に、「平成29事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」も公表されているため、こちらも触れておきたい。 租税条約等に基づく情報交換には、「要請に基づく情報交換」、「自発的情報交換」及び「自動的情報交換」の3つの類型がある。この情報交換は上記CRSやCbCRが導入される前から運用されていたものであるが、これらの情報交換について最新事務年度の状況が公表された。「自発的情報交換」については、ほぼ前年並みの件数となっているものの、「要請に基づく情報交換」及び「自動的情報交換」については、増加傾向が続いている。 CRS・CbCRの交換も始まり、またこれらの租税条約等に基づく従来からの情報交換も件数が増えているところを見ると、やはり国際的な脱税等の把握や防止に対する取組みは明らかに進んでいると言えるだろう。 (了)

#No. 292(掲載号)
#島田 弘大
2018/11/02

プロフェッションジャーナル No.292が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年11月1日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.292を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/11/01

monthly TAX views -No.70-「政府税調のアジェンダとなった日本版IRA(TEE型税制支援) 」

monthly TAX views -No.70- 「政府税調のアジェンダとなった日本版IRA(TEE型税制支援)」   東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 森信 茂樹   年末の税制改正大綱公表に向けて政府税制調査会の議論が始まった。10月23日の会合を見ると、「老後に備える資産形成」について議論が行われている。 安倍総理の3選目の政策テーマは「人生100年時代」であり、それに対応したものであろう。 わが国高齢者世帯の経済状況を見ると、その収入の65%は公的年金となっている。さらには、50%の世帯が公的年金のみで生活しているという状況である(国民生活基礎調査)。 しかし公的年金は、賦課制度の下で人口構成が変化していくので、マクロ経済スライドが発動され、その所得代替率は、平成62年(2050年)度には50%に落ち込む(厚生労働省試算)。 このような状況は他の先進諸国も似たり寄ったりであり、彼らは私的年金を充実させることで公的年金の不足を埋めようとしてきた。しかし、わが国の私的年金制度は歴史が浅く、高齢世帯の収入に占める割合もごく一部である。 *  *  * 昨今ではiDeCo(個人型DC)が人気を集めているが、加入期間が60歳までであったり払い込みの上限が低かったりと課題もある。iDeCoは後述するように、EET型、つまり払い込み時には所得控除があり、給付時には公的年金等控除があるので、大きな減税メリットがある。これは裏を返せば、税収が大きく脱漏しているということであり、税制当局としてはiDeCoの一方的な拡充には応じられないということでもある。 また、現行私的年金制度は、縦型に分立しており、働き方改革で多様になる勤労形態にフィットしていない。 そこで、現在ある貯蓄・投資非課税制度も含めて、見直し・充実していく必要がある、というのが問題意識だ。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出典)政府税制調査会「財務省説明資料(個人所得課税)」P13より *  *  * 税制の支援方法には、2種類ある。 第1が「拠出時課税」「運用・給付時非課税」のTEE型であり(Tは課税、Eは非課税)、第2が「拠出時非課税」「運用時非課税」「給付時課税」のEET型である。 なお、下図のとおり、おおむね私的年金はEET型、貯蓄・投資非課税制度はTEE型となっている。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出典)政府税制調査会「財務省説明資料(個人所得課税)」P14より 米国では、EET型のIRAとTEE型のロスIRAが併存し、勤労者の選択に応じて選択できるようになっている。税率が同じであれば、EET 型とTEE 型の経済的価値は同値である。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出典)政府税制調査会「財務省参考資料(個人所得課税)」P23より かつて金融庁は、TEE型の日本版IRAを検討してきた。 筆者は、金融界・証券界・経済界の有志と、ここ10年来、日本版IRAの提言を行ってきた。ようやくこの問題が政府税調でも取り上げられるのか、と感慨深いものがある。 なお、毎年の提言内容は、ジャパン・タックス・インスティチュートのホームページから入手できるので、是非一読在りたい。 (了)

#No. 292(掲載号)
#森信 茂樹
2018/11/01

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第61回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第61回】   公認会計士 佐藤 信祐   《第11章》 平成22年度から平成28年度までの議論 1 日本租税研究協会が公表した研究報告 日本租税研究協会から平成24年に「外国における組織再編成に係る我が国租税法上の取扱いについて」、平成26年に「外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)における課税上の取扱いについて」がそれぞれ公表された。いずれとも、外国で組織再編が行われた場合において、我が国の課税関係がどのようになるのかについて解説した内容である(なお、後者の報告書については、現地における連結納税制度、パススルー課税も対象とされている)。 例えば、米国子会社同士が合併した場合において、その株主が日本法人であるときに、当該日本法人が、株主として、日本でどのような課税関係になるのかについて検討されている。もちろん、米国における課税関係は米国法の問題であるため、本報告書の対象からは除外されている。 やや実務のニーズに対応するために強引な解釈をした報告書であるという批判もないわけでもないが、アカデミックな分析は置いておいて、実務においては、参考にすべき報告書であるということが言える。 2 国税局の見解 (1) 平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例 平成22年度から平成28年度までに公表された改正法人税基本通達では、条文から明確なものがほとんどであり、特記すべき事項はなかった。 そして、平成22年8月10日に公表された「平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例(グループ法人税制関係)」、同年10月6日に公表された「平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例(グループ法人税制その他の資本に関係する取引等に係る税制関係)」では、平成22年税制改正において導入されたグループ法人税制の取扱いが詳細に解説されている。 これらについても、基本的に、条文から明らかなものがほとんどであったが、後者の質疑応答事例のうち、問11では、実在性のない資産が貸借対照表に計上されている法人が解散した場合における期限切れ欠損金の取扱いについて記載されているため、一読しておく価値はあると思われる。 (2) 文書回答事例 国税庁文書回答事例として、平成22年2月22日「企業再生税制適用場面においてDESが行われた場合の債権等の評価に係る税務上の取扱いについて」が公表された。特記すべき事項としては、非適格現物出資により受け入れた債権の評価について明らかにされている点である。 具体的には、「債権者が有する債権のうちにDESの対象とされなかった債権が存在する場合、DESの対象となる債権が債務者の株式に変わるため、DESの対象とされなかった債権は、DESの対象となった債権(株式)に優先して回収される」ことを理由として、 と解説されている。 なお、本文書回答事例は、経済産業省経済産業政策局産業再生課長の私的研究会である「事業再生に係るDES研究会」が公表した「事業再生に係るDES(Debt Equity Swap:債務の株式化)研究会報告書」に基づいて行われたものである。 そして、平成25年9月26日「同一の者による支配関係がある法人間において、一方が民事再生計画に基づき、『100%減資』及び『債権の現物出資を受けて新株を発行するDES』を同日に行った場合の支配関係の継続について」では、100%減資前に支配関係があり、100%減資+DESにより完全支配関係が成立した事態に対して、100%減資により一瞬だけ支配関係が途切れたと解するのではなく、100%減資前から支配関係が継続していたと考えることが明らかにされている。 そのほか、平成23年12月26日「被合併法人から適格合併により移転を受けた減価償却資産に係る償却限度額の計算について」、平成24年8月3日「グループ法人税制における譲渡損益の実現事由について」、平成25年1月17日「複数回の適格合併等により移転を受けた特定資産の取得日の判定について」、平成26年11月12日「持株会社を株式交換完全親法人とする株式交換における事業関連性の判定について」が公表され、平成29年度でも、平成29年3月8日「議決権のない株式を発行した場合の完全支配関係・支配関係について」、平成29年3月30日「医療法人が行う吸収合併の登記が遅れた場合の取扱いについて」、平成29年11月7日「株主が個人である法人が適格合併を行った場合の未処理欠損金額の引継ぎについて(支配関係の継続により引継制限の判定をする場合)」、平成29年11月29日「グループ法人税制で繰り延べた譲渡利益の戻入の要否」、平成29年12月12日「株式の保有関係が変更している場合の支配関係の継続要件の判定について」、平成30年1月26日「合併法人の株主に公益財団法人が含まれている場合の支配関係の判定について」が公表されているが、条文により明らかにされているもの又は国税庁から既に公表されている公式見解で明らかなものがほとんどであったため、本稿では、詳細な解説は省略する。 (3) 質疑応答事例 国税庁質疑応答事例として、「分割と合併を同日に行う場合に当該分割により移転する資産及び負債に係る譲渡損益の取扱いについて」「事業の譲受けに伴い賞与支払債務の履行に係る負担を引き受けた場合の課税関係について」が公表された。 このうち、前者は、非適格分割により分割承継法人にその有する資産又は負債の移転をした場合には、原則的には、当該分割を行った日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入されるものの、分割の日と同日に、分割法人が合併により解散してしまうと、その最後事業年度は、事業年度開始の日から本件合併の日(本件分割の日と同日)の前日までの期間となってしまい、分割を行った日の属する事業年度がないという問題が生じる。この点につき、最後事業年度(本件合併の日の前日の属する事業年度)の益金の額又は損金の額に算入することが明らかにされている。 そして、後者については、本連載【第54回】で解説した通り、賞与引当金に相当する金額につき、短期重要負債調整勘定として処理することができないことが明らかにされている。 それ以外の質疑応答事例については、条文により明らかにされているもの又は国税庁から既に公表されている公式見解で明らかなものがほとんどであったため、本稿では、詳細な解説は省略する。 (※) ややマニアックな論点であるが、「被合併法人から引継ぎを受ける未処理欠損金額に係る制限の適用除外について」では、法人税法施行令112条2号イ~ハの最後に記載されている「同日が当該5年前の日以前である場合を除く。」の文言の読み方が解説されている。興味のある読者は、一読されたい。   3 ヤフー、IDCF事件 法人税法132条の2に規定されている包括的租税回避防止規定が最初に適用された事件であるヤフー・IDCF事件の最高裁判決(最一小判平成28年2月29日TAINSコードZ888-1984、最二小判平成28年2月29日TAINSコードZ888-1983)が公表された。 従来の経済合理性基準ではなく、制度濫用基準に基づいて租税回避を捉えていたため、多くの判例評釈が公表されている。特に、東京地裁判決が公表された後には、多くの批判があり、租税回避の定義が変わる可能性があるとも言われていた。 しかしながら、「行為・計算の不自然性が全く認められない場合や、そのような行為・計算を行うことの合理的な理由となる事業目的等が十分に存在すると認められる場合には、他の事情を考慮するまでもなく、不当性要件に該当すると判断することは困難である(徳地淳・林史高「判解」ジュリスト1497号86頁(平成28年))」という調査官解説が公表されたことにより、アカデミックにはともかくとして、実務上は、従来の経済合理性基準と変わらないということになり、本稿校了段階では、実務上、本件の最高裁判決の影響はほとんど見受けられない。 *   *   * 最終回となる次回では、第12章として平成29年度及び平成30年度税制改正について解説を行い、終章として本連載の総括を行う予定である。 (了)

#No. 292(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/11/01

企業の[電子申告]実務Q&A 【第9回】「利便性向上のための施策の全体像」

企業の[電子申告]実務Q&A 【第9回】 「利便性向上のための施策の全体像」   SKJ総合税理士事務所 税理士 坂本 真一郎   ●○●○解説○●○● 平成30年度税制改正では、ICTの活用を推進しデータの円滑な利用を進めることにより、社会全体のコスト削減及び企業の生産性向上を図る観点から、法人税等の電子申告について、「大法人の電子申告の義務化」とともに、「中小法人も含めて申告データを円滑に電子提出するための環境整備の見直し」が行われました。 申告データの円滑な電子提出のための環境整備については、主に法人税や消費税の電子申告を対象として、(1)提出情報等のスリム化、(2)データ形式の柔軟化、(3)提出方法の拡充、(4)提出先の一元化、(5)認証手続の簡便化という観点から、制度・運用両面について見直しが行われました。 上記以外にも、下表に掲げる通り、様々な利便性向上のための施策を順次実施することとされています。 【利便性向上施策等一覧】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)

#No. 292(掲載号)
#坂本 真一郎
2018/11/01

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第64回】「印紙税法上の「判取帳」(第20号文書)に該当するか否かが争われた事例(平成26年10月28日裁決)」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第64回】 「印紙税法上の「判取帳」(第20号文書)に該当するか否かが 争われた事例(平成26年10月28日裁決)」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   [事例のポイント] ① 「一の文書」に該当するか 印紙税法における一の文書とは、その形態からみて1個の文書と認められるものをいい、文書の記載証明の形式、紙数の単複は問わない。 したがって、本件各文書が冊子形態であるからといって、直ちに全体として一の文書といえるものではないが、「お客様返金伝票(売場控)」には切取り線がなく、お客様返金伝票のみが本件伝票綴りに綴られており、各伝票には、連番となった伝票番号が印字されていたこと等を踏まえ、お客様返品伝票(売場控)のみが残された伝票綴りは1冊の冊子として、その伝票綴り全体をもって「一の文書」に該当すると判断する。 ② 「第17号に掲げる文書に証されるべき事項につき2以上の相手方から付込証明を受ける目的をもって作成」(第20号文書)されたものといえるか 返品・商品交換の申出に対応する際には売場担当者は、お客様返金伝票に「受付日」、「お買上日」、「返品商品の金額」及び「返品理由」を記入し、現金を顧客に渡し「ご返金受領サイン」欄に署名がされる。 顧客から返品伝票(売場控)に署名を受けることにより、顧客が返品した品物の代金額に相当する金銭を受領したことについて付け込み証明があったと認められる。また、顧客からも、返金された現金を受け取り、「ご返金受領サイン」欄に自ら署名することから、返品した代金相当額の金銭を受領したことを明らかにする趣旨で署名を行ったと認められる。 したがって、課税物件表第17号に掲げる目的をもって作成されたものと認められる。 ③ 「帳簿」(課税物件表第20号)に当たるか否か 伝票綴りは、返品を希望する不特定多数の顧客に対して返金をする都度、返金を受けた顧客から金銭を受領したことについて付込証明を受け、顧客の署名が記載されたお客様返金伝票(売場控)が綴られることが予定されていることから、継続的に顧客から金銭の受領について記載証明を受けることを目的として伝票綴りを使用している。 したがって、伝票綴りを用いて作成された文書は、継続的又は連続的に、課税事項である金銭の受領事実を記載証明する目的で作成された文書であるから、課税物件表の第20号に規定する「帳簿」に該当する。 ④ 「判取帳」に該当するか 当文書は、商品の販売という営業上の取引の一環として作成されたもので、金銭の受領事実を付け込んで証明する目的で作成する文書であり、第20号文書の「判取帳」に該当する。 (了)

#No. 292(掲載号)
#山端 美德
2018/11/01

~税務争訟における判断の分水嶺~課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第22回】「遺留分減殺請求が行われた場合に、各相続人に承継される被相続人の納税義務(税額)が影響を受けるのかについて判断した事例」

~税務争訟における判断の分水嶺~ 課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第22回】 「遺留分減殺請求が行われた場合に、各相続人に承継される被相続人の 納税義務(税額)が影響を受けるのかについて判断した事例」   税理士 佐藤 善恵     〔概要等〕 本件の被相続人は、本件の原告(相続人A)以外の相続人らに特定の財産を「相続させる」旨の遺言をしたため、相続人Aは、自己の遺留分が侵害されているとして遺留分の回復を求める訴えを提起して和解により終結した。 相続人Aは、被相続人に係る準確定申告書を提出していなかったところ、原処分庁(税務署長)は、原告の法定相続分(10分の1)で按分して計算した金額は原告が被相続人の納税義務を承継したとして原処分を行った。その後、国税不服審判所の裁決において原告の承継した納税義務は遺留分減殺請求の結果20分の1であるとして、処分が一部取り消された。 裁判での争点は、次の2点である。   〔原処分庁の主張〕 (争点①) (争点②)   〔納税者(相続人A)の主張〕 (争点①) (争点②)   〔裁判所の判断〕 (争点①) (争点②)   〔判断の分水嶺〕 本件では事実関係に争いはなく、判断の分水嶺は、本件遺言の解釈と遺留分減殺請求の法的性質についての解釈である。 まず、本件遺言が「相続分を定めたもの」か「遺産の分割の方法を定めたもの」かについて検討され、「相続分を定めたもの」と判断された(争点①)。 そして、争点②については、遺留分減殺請求によって遺留分権利者に帰属した権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しないとの解釈のもと、結論が導かれたものである。   〔本判決が示唆するもの〕 本件は、遺留分減殺請求により取り戻された財産の性質について真正面から判断を示した事例といえる。原処分庁は、相続財産性は失われないと主張したが、裁判所は、その主張を採用しなかった。 なお、本件では遺言の解釈として相続分の指定を行うものと判断されたが、遺言解釈については、個々のケースにおいて慎重に判断する必要がある。この入口部分の判断が異なると、結論は異なることになるであろう。   〔審理室のコメント〕 (了)

#No. 292(掲載号)
#佐藤 善恵
2018/11/01

海外移住者のための資産管理・処分の税務Q&A 【第8回】「移住後に内国法人から役員報酬を受け取る場合」

海外移住者のための 資産管理・処分の税務Q&A 【第8回】 「移住後に内国法人から役員報酬を受け取る場合」   税理士・行政書士 島田 弘大   Question 私は来年、海外へ移住することを検討しています。現在、日本の非上場会社の代表取締役として役員報酬を受け取っていますが、移住後、税務上の非居住者になった後も継続して内国法人から役員報酬を受け取る予定です。 その役員報酬について、移住後の課税関係を教えて下さい。   Answer 1 はじめに 海外への移住を検討している日本の居住者(個人)が日本の内国法人の取締役として役員報酬を受け取っており、移住後も引き続き取締役として役員報酬を受領するケースはよく見られる。 【第6回】では移住後に日本の非上場会社から配当を受け取った場合の課税関係を、【第7回】では移住後に非上場会社の株式譲渡を行う場合の課税関係についてそれぞれ検討したが、今回は移住後に内国法人から役員報酬を受け取った場合の課税関係を検討する。   2 非居住者が内国法人である非上場会社から役員報酬を得る場合の課税関係 今回もクロスボーダーの課税関係であるため、【第6回】・【第7回】と同様の流れで検討できる。まずは日本の所得税法(国内法)を確認し、さらに居住地国の所得税法を、最後に日本と居住地国との間の租税条約を確認して、各国での課税関係の結論を導き出すことになる。 なお、検討の流れが分かりやすいように、今回も具体的に移住先がシンガポールであった場合を例にとって説明したい。 (1) 日本の所得税法 ① 非居住者の課税所得の範囲 日本の所得税法上、居住者は原則として、日本国内だけでなく国外も含めた全世界所得が課税対象とされるが、非居住者は日本国内で稼得した「国内源泉所得」のみが課税対象とされる(所法161)。 ② 国内源泉所得の範囲 上記①の通り、非居住者は「国内源泉所得」のみが課税対象になるが、平成29年分以降の「国内源泉所得」の範囲は下記の通りである(所法161①~⑰)。 ⑫にあるように、給与等に対する報酬は原則として、日本国内において行う勤務に基因するものが国内源泉所得とされているが、括弧書きにて、役員報酬については「国外において行う勤務も含む」とされている(所法161⑫イ)。 つまり、非居住者が受領する内国法人からの役員報酬はその勤務場所を問わず、国内源泉所得に該当することになる。 ③ 課税方法と税率 上述の通り、内国法人から受領する役員報酬は原則としてその全額が国内源泉所得に該当し、20.42%の税率により源泉徴収する必要がある。源泉分離課税であるため、20.42%の源泉徴収により課税関係は完結し、所得税の確定申告を行う必要はない。 なお、この非居住者が受領する役員報酬に係る源泉徴収20.42%について、「確定申告をすることによって、役員報酬の給与所得と日本の不動産所得(損失)とを相殺して所得税の還付を受け取ることができるか?」という質問をよく受けるが、現行制度において、そのような処理は認められていない。詳細については、【第3回】(事業的規模の不動産所得があり移住前に検討が必要な場合)をご参照いただきたい。 ④ 使用人兼務役員については注意が必要 上記取扱いについて、使用人兼務役員の場合には注意が必要である。例えば、日本本社の取締役が海外支店の支店長として海外赴任する場合である。 上記⑫(所法161⑫イ)を受けた所得税法施行令285条1項1号では、下記の通り規定されている。 したがって、海外支店長という立場で国外において使用人として常時勤務を行う場合に受領する報酬については国内源泉所得から除かれることになるため注意が必要である。 (2) 居住地国(シンガポール)の所得税法 次に、居住地であるシンガポールの所得税法を確認する。 シンガポールの居住者が日本の内国法人から受領する役員報酬について、シンガポールの所得税法上、課税対象には含まれていない。つまり、シンガポール側では受領した役員報酬について課税は生じない。 (3) 日本・シンガポール租税条約 最後に、日本・シンガポール租税条約の規定を確認する。役員報酬については下記の通り規定されている。 つまり、租税条約においても法人の所在地国(この場合は日本の内国法人からの役員報酬であるため、日本)での課税を認めている。つまり、租税条約の規定により取扱いが変わることはなく、日本の所得税法に従って課税できるということになる。 (4) 質問に対する回答 ① 日本側の課税関係 まずは日本の国内法であるが、内国法人からの役員報酬は国外での勤務についても国内源泉所得に含まれ、20.42%の源泉徴収(源泉分離課税)が必要になる。 次に、日本・シンガポール租税条約であるが、租税条約においても日本での課税が認められていることから、そのまま日本の国内法の規定が適用される。つまり、20.42%の源泉徴収(源泉分離課税)が必要である。 ② シンガポール側の課税関係 シンガポールの居住者が日本の内国法人から受領する役員報酬について、シンガポールの所得税法ではそもそも課税されないことになっている。したがって、特にシンガポール側で課税が生じることはない。 (了)

#No. 292(掲載号)
#島田 弘大
2018/11/01
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