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「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」の徹底解説 【第3回】

「収益認識に関する会計基準」及び 「収益認識に関する会計基準の適用指針」の徹底解説 【第3回】   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   6 【STEP2】履行義務の識別 収益認識基準等では、契約書単位ではなく、履行義務単位で会計処理(収益を認識)する。 【STEP2】では、契約の中に含まれている履行義務を識別する。 (1) 履行義務の識別 契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、以下の①又は②のいずれかを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別する(基準32、33、128)。 (2) 別個の財又はサービス 別個の財又はサービスは履行義務として認識するが、「別個」として識別するための要件がある。 顧客に約束した財又はサービスは、以下の①性質の観点及び②契約の観点の要件のいずれも満たす場合には、別個のものとする(基準34、130、131、適用指針5、6、112)。 (3) 複数の約束が区分して識別できない場合 財又はサービスを顧客に移転する複数の約束が区分して識別できないことを示す要因として、例えば、以下の①から③がある(適用指針6、112、113)。 以下のような場合には、顧客に約束した財又はサービスは1つのもの(1つの履行義務)として結合する。言い換えると、以下の①から③に該当しない場合には、それぞれ別個の財又はサービス(別個の履行義務)として識別する。 (注) ①から③の要因は、相互に排他的なものではなく、複数が該当する可能性がある。 (4) 履行義務の識別(代替的な取扱い等) ① 重要性が乏しい場合 約束した財又はサービスが、顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合には、当該約束が履行義務であるのかについて評価しないことができる。言い換えると、重要性が乏しい場合、履行義務として別に認識する必要がないということである。 顧客との契約の観点で重要性が乏しいかどうかの判定は、約束した財又はサービスの定量的及び定性的な性質を考慮し、契約全体における約束した財又はサービスの相対的な重要性を検討する(適用指針93)。 ② 契約を履行するための活動 契約を履行するための活動は、当該活動により財又はサービスが顧客に移転する場合を除き、(別個の)履行義務ではない。例えば、サービスを提供する企業が契約管理活動を行う場合、当該活動によりサービスが顧客に移転しないため、当該活動は履行義務ではない(適用指針4)。 ③ 支配獲得後の出荷及び配送活動 顧客が商品又は製品に対する支配(※)獲得後に行う出荷及び配送活動は、当該商品又は製品の移転とは別の履行義務として識別される。しかし、実務におけるコストと便益を比較衡量し、顧客が商品又は製品に対する支配獲得後に行う出荷及び配送活動は、商品又は製品を移転する約束を履行するための活動(上記②参照)とし、履行義務として識別しないことができる(適用指針94、167)。 (5) 履行義務の識別(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響がある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響 (了)

#No. 292(掲載号)
#西田 友洋
2018/11/01

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《税効果会計》編 【第3回】「繰延税金資産の回収可能性」

〔事例で使える〕 中小企業会計指針・会計要領 《税効果会計》編 【第3回】 (最終回) 「繰延税金資産の回収可能性」   公認会計士・税理士 前原 啓二   はじめに 「中小企業会計指針」においても、繰延税金資産の計上には、上場企業等の場合と同様にその回収可能性について厳格かつ慎重な判断が要求されます。 《税効果会計》編の最終回となる今回は、繰延税金資産の回収可能性が認められなくなったと判断した年度の会計処理をご紹介します。 【設例3】 (1) 当社(3月31日決算、資本金30,000,000円)の×8年3月期(当期)における課税所得は、次のとおりです。 (2) 当期末貸借対照表の未払法人税等残高に含まれている未払事業税は0円です。 (3) ×7年3月末の繰延税金資産は、流動資産(賞与引当金に係るもの)10,880,000円、固定資産(退職給付引当金に係るもの)20,400,000円です。繰延税金負債はありません。 (4) 簡便的に、×8年3月期の実効税率は34%です。 (5) ×8年3月期の法人税等は、簡便的に0円とします。 (6) ×8年3月末時点において、業績回復の目途がたたず、将来減算一時差異や繰越欠損金が、将来の税金負担額を軽減する効果を有するとは見込まれません。 1 仕訳 ×8年3月期の期末における仕訳は、次のとおりです。 (ⅰ) 賞与引当金に係る繰延税金資産 (ⅱ) 退職給付引当金に係る繰延税金資産の取崩 繰延税金資産の計上により利益剰余金が増加し、その増加に対して会社法に配当制限の定めはないことなどにより、中小企業もその回収可能性を厳格かつ慎重に検討することが必要です。 「繰延税金資産の回収可能性がある場合」とは、将来減算一時差異又は税務上の繰越欠損金等が、将来の税金負担額を軽減する効果を有していると見込まれる場合をいいます(中小企業会計指針63)。 具体的には、将来減算一時差異の解消見込年度及びその解消見込年度を基準とした税務上の欠損金の繰戻・繰越期間に、一時差異等加減算前課税所得が十分に生じるものと見込まれる場合、または、含み益のある資産売却等のタックス・プランニングに基づき一時差異等加減算前課税所得が十分に生じるものと見込まれる場合です。 この設例では、業績回復の目途がたたず、将来減算一時差異や繰越欠損金が、将来の税金負担額を軽減する効果を有するとは見込まれないため、繰延税金資産の計上はできなくなったもの(下表⑥)とします。過年度に計上した繰延税金資産についても、将来の税金負担額を軽減する効果を有するとは見込まれなくなったため、当期において繰延税金資産を取り崩します。   2 決算書 決算書の金額は、次のとおりです。 ×8年3月期 〈貸借対照表〉 〈損益計算書〉 繰延税金資産の取崩しにより、当期純利益のマイナスに追い討ちをかける結果となりました。   3 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の法人税申告書別表四において、法人税等調整額31,280,000円を加算・留保します。 〈当期法人税申告書別表五(一)〉 ⑧の計=31,280,000:法人税等調整額 (《税効果会計》編 終了)

#No. 292(掲載号)
#前原 啓二
2018/11/01

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第78回】スルガ銀行株式会社「第三者委員会調査報告書(平成30年9月7日付)」(前編)

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第78回】 スルガ銀行株式会社 「第三者委員会調査報告書(平成30年9月7日付)」 (前編)   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   9月7日、スルガ銀行株式会社(以下「スルガ銀行」と略称する)が公表した第三者委員会調査報告書(公表版)は本文300ページを超える膨大な分量もさることながら、長期にわたり行われてきた不正な融資の実態や不正融資を引き起こした企業風土、行内におけるパワーハラスメントの実態などが詳細に綴られていた。 本稿では、スルガ銀行第三者委員会調査報告書について、まず【前編】として、第三者委員会により認定されたスルガ銀行の不正融資の手口とその発生原因について検証したうえで、次いで【後編】(11月15日公開)として、スルガ銀行取締役・監査役の法的責任、経営責任についての第三者委員会の評価を検証するとともに、調査報告書公表後の事態の推移を見ておきたい。   【第三者調査委員会の概要】   【スルガ銀行株式会社の概要】 スルガ銀行は、1887年4月、岡野喜太郎によって結成された貯蓄組合「共同社」を前身とする地方銀行。2004年10月に、駿河銀行からスルガ銀行へと商号変更。連結経常収益156,278百万円、連結経常利益10,525百万円、従業員数1,907名(数字は、いずれも2018年3月期)。本店所在地は静岡県沼津市。東証1部上場。   【調査報告書の概要(その1)】 1 調査に至る経緯 株式会社スマートデイズ(本店所在地:東京都中央区。旧社名はスマートライフ。以下、旧社名であった時も含めて、「スマートデイズ」と略称する)が運営しているシュアハウスのサブリース料をオーナーに支払えない事態に陥っていることが表面化したのは2018年1月下旬だった。 その後、スマートデイズの物件に関しては、オーナーの購入資金の多くをスルガ銀行が融資していたことが明らかになり、オーナーからスルガ銀行に対する返済停止が発表された。スマートデイズは、4月9日、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請、同日、監督命令を受けたことが報じられたが、同月18日になって、民事再生手続きは棄却され、破産手続きへの移行が決まった。 スルガ銀行が、スマートデイズ物件に関して開示を行ったのは、5月15日の「「シェアハウス関連融資問題」に関する経過のご報告と今後の対応について」(以下、「5月15日付リリース」と略称する)が最初であった。この日は、「危機管理委員会による調査結果の要旨」(以下、「危機管理委員会調査」と略称する)と第三者委員会の設置を公表した。 2 5月15日付リリースの内容 スルガ銀行は、リリース冒頭の謝罪に続き、シェアハウス関連融資の全体像として、スマートデイズ物件以外も含めたシェアハウス案件についての融資対象者は1,258名、融資残高は203,587百万円(いずれも2018年3月末時点)であることを開示し、2017年12月に設置した「お客さま対応チーム」により、融資対象者からの問合せや今後のご返済条件の見直しについての相談などを行っており、返済に延滞が生じたとしても法的措置等の対応はとっていないことを明言した。 また、「現時点での問題認識と対応策」として、(1)営業及び審査の体制、(2)コンプライアンス体制、(3)経営管理体制に分けて説明を行い、特に、コンプライアンス体制における問題点として、①自己資金の確認が疎かになっていたこと、②土地売買契約において二重契約があったこと、③フリーローンを「融資の条件」とするセット販売が行われていたことなどを挙げ、「営業成績を重視した結果、目先の成績の追求に走りコンプライアンス意識が低下し、お客さま本位の業務運営が不十分になった」という認識を示した。 最後に、経営責任については、第三者委員会の調査結果及び金融庁の検査結果を待って、厳しい対応をとる所存であることを述べて、リリースを締め括っている。 3 危機管理委員会調査結果の要旨 スルガ銀行危機管理委員会は、危機管理委員会調査の中で、「危機管理委員会の調査スコープ」「問題として指摘した事項(例)」「今回の事態を招いた原因として考えられる事項」について、調査内容を報告している。 最終項の「顧客本位の業務運営(コンダクトリスク)に対する意識の欠如」の中で、危機管理委員会は、次のようなコメントを出している。 融資実行残高至上主義の営業現場と営業優位という状況下で、牽制機能を十分に発揮できていなかった審査部門、コンプライアンス部門、内部監査部門を評して、危機管理委員会は、スルガ銀行では「3つのディフェンスライン」は機能不全状態にあったと断じている。 4 不正行為の概要(第三者委員会調査報告書要旨p.1) 第三者委員会による調査報告書は、9月7日に「第三者委員会の調査報告書の受領と今後の当社の対応について」と題されたリリースに添付された「調査結果要旨」と、同日に「公表版」として開示された調査報告書全文との2つが公表されている。 第三者委員会は、調査報告書要旨で、個別の不正行為等を(1)直接的な偽装行為、(2)偽装以外の不正行為等、(3)不正行為等の温床を醸成する行為の3種類に分類して例示している。 (1) 直接的な偽装行為 (2) 偽装以外の不正行為等 (3) 不正行為等の温床を醸成する行為 5 発生した問題の原因(第三者委員会調査報告書要旨p.4) 第三者委員会は、発生した問題の原因を以下の6つの観点から分析している。もっとも紙幅を割いて分析を行っているのは「審査体制の問題」である。 (1) 審査体制の問題 (2) 営業の問題 第三者委員会は、営業の問題として、「プレッシャー」「効率性志向とチャネルへの依存」「業者の管理の不徹底」「不法行為等の多様化」を挙げたうえで、こうした要素は、いずれもシェアハウスローンに固有のものというわけではなく、収益不動産ローン全般で見られた数々の問題点がシェアハウスにも等しく合致したことが、現在のような事態が生じている原因であると考えられるとまとめている。 (3) 内部監査体制の問題 第三者委員会は、内部監査について、以下のように指摘して、形式的・事務的なチェックリストの確認にとどまったことが、実効的な監査を阻害したと考えられると断じた。 そのうえで、実効的な監査が行われなかった要因を4項目、追加で指摘している。 (4) 統制環境(企業風土) 第三者委員会は、スルガ銀行において極端なコンプライアンス意識の欠如が認められ、統制機構(企業風土)の著しい劣化があったこと、また、人事評価制度にも問題があり、人事異動が恣意的に行われた結果、営業偏重の人事が行われてきたことを指摘している。 (5) ガバナンスの問題 第三者委員会は、取締役会について、①経営者に対するモニタリング、②内部統制システムの構築と監視、③重要な業務執行事項の意思決定の何れの点に関しても、十分な責務を果たしていなかったと指摘するとともに、監査役についても、往査に赴いた際にリスクの端緒を把握しながら適切な調査をしていない点、社外監査役への伝達を怠っている点等、少なからず問題があったと評価している。 (6) 本件の構図-パーソナル・バンクの聖域化とその本質的課題- 第三者委員会は、スルガ銀行では、パーソナル・バンクが業績を1人で背負っていたといっても過言でない状況があり、強度の依存構造があったことから、パーソナル・バンクの発言力が高まり、経営層自らは執行の現場に深入りしてこなかった点を指摘し、営業本部が逸脱行為を繰り返したことの大元の原因は、経営層による意図的と評価されてもやむを得ない断絶と放任・許容にあったとして、本件は、作り出された「限定的な聖域化」、「無責任・営業推進態勢」という経営層に都合のいい態勢の結末であったというべきであると断じている。 (後編に続く)

#No. 292(掲載号)
#米澤 勝
2018/11/01

空き家をめぐる法律問題 【事例8】「共同相続した空き家の管理・費用に関する問題」

空き家をめぐる法律問題 【事例8】 「共同相続した空き家の管理・費用に関する問題」   弁護士 羽柴 研吾   - 事 例 - 父の相続が開始してから数年経過していますが、私は、共同相続人の兄弟と遺産分割協議をしていません。というのも、父の相続財産は生前1人で居住していた自宅くらいで、相続税の申告も不要のため、私も兄弟も、相続放棄をする必要も遺産分割をする必要も特に感じていなかったからです。 ただ、築年数も古く、空き家となった父名義の自宅をこのまま放置するわけにもいかず、今後どのように管理していくか悩んでいます。空き家の管理に関する法律上のルールについて、教えてください。   1 はじめに 相続人が複数存在する相続が開始した場合、共同相続人は、被相続人の一身に専属したものを除いて、同人に属した一切の権利義務を承継する。この場合、共同相続人は、相続財産を共有することになるが、この共有の性質は、民法第249条以下に規定する「共有」と同じものと解されている。もっとも、相続財産の共有を解消して個々の相続人の単独所有とするためには、遺産分割協議等を経なければならない。 空き家の相続に関して、共同相続人間で遺産分割協議が行われない場合や、他の相続財産との関係で遺産分割協議が紛糾している場合では、空き家の共有状態が長期間にわたって継続するため、その管理の方法等が問題となる。 そこで今回は、共同相続が生じた場合の空き家の管理に関する法的問題を取り上げることとしたい。   2 相続財産の管理について 共有されている相続財産の管理方法について、民法の相続編に特別の規定はない。そのため相続財産の管理は、民法第251条及び同法第252条に基づいて行われることとなる。 (1) 保存行為 共有物の保存行為は、単に現状を維持する行為を意味し、各共有者が単独で行うことができる(民法第252条ただし書)。例えば、空き家が老朽化して危険な状態になっている場合に行う修繕行為や、空き家に不法に侵入している者に対して明渡し等を求めるなどの行為がこれに当たる。 このような保存行為は、本連載の【事例1】から【事例4】で見たような法的責任や不利益を回避する意味で、重要である。 なお、共同相続人の1人が単独で相続登記の申請を行うことができるのは、当該行為が保存行為に当たると解されているからである(東京高判昭和35年9月27日下民11巻9号1993頁など)。 (2) 管理行為 共有物の管理行為は、共有物の変更にならない程度に共有物を利用し、改良するなどしてその価値を高めることをいうところ、共有者は、持分価格の過半数で管理行為を決する必要がある(頭数の割合ではないことに留意。民法第252条本文)。例えば、建物の短期(3年以下)賃貸借の締結(民法第602条)や賃貸借契約の解除が管理行為に当たると解されている。 なお、ここでいう「持分」は、相続の場合、法定相続分又は指定相続分の割合を意味する。 では、近年、空き家の管理を代行する事業者が増加しているが、空き家の管理を事業者に委託する行為は管理行為に当たるのだろうか。 この点、相続財産の管理委託が管理に関する事項であることから管理行為と見る余地もある。しかしながら、本来、相続財産は、遺産分割の終了までの間、共同相続人の共同管理に服するものであり、少数派の相続人の管理権を尊重する必要もあることから、管理人を選任すること自体は、処分行為に準じて全員の同意が必要と考えるべきであろう(共同相続人の中から遺産管理人を選任する場合に、全員の同意が必要と判断した裁判例として、東京地判昭和47年12月22日判例時報708号59頁がある)。 (3) 変更行為 共有物を物理的に変更することや法律的に処分する行為は、全員の同意が必要となる(民法第251条)。例えば、空き家の解体、大規模な修繕、長期の賃貸借契約(上記(2)の短期賃貸借以外のもの)を締結するような行為がこれに当たる。 ところで、近時、空家等対策の推進に関する特別措置法第14条に基づく除却命令や代執行が話題となっているが、空き家の相続人が多数にのぼり、一部の相続人の所在を特定できないと、除却命令を発令することが困難となる。このような場合、行政機関によっては、同条第10項に基づく略式代執行が行われ、その後、共有者として把握されている相続人の一部に対して代執行費用に係る求償請求が行われる可能性があるので、留意が必要である。 なお、特定の相続人が全員同意を得ることなく解体を行ったことによって、他の相続人に損害が生じた場合、損害賠償請求の対象となりうる。   3 相続財産の管理費用の清算方法について 相続財産の管理費用(固定資産税、水道光熱費等)は、原則として、相続財産の中から支出される(民法第885条)。しかしながら、相続財産の中に管理費用に充てられるだけのものがない場合も少なからずある。このような場合は、原則に戻って、共同相続人の法定相続分又は指定相続分の割合に基づいて、各自がそれぞれ負担することとなる(民法第253条)。 もっとも、特定の相続人が、被相続人の死亡後、空き家を自分用の倉庫代わりに利用しているような場合には、空き家の管理費用を他の相続人にも負担させることが相続人間の公平性を欠くこともありうる。このような場合には、空き家を利用している相続人が空き家の使用利益を得ているものと見て、管理費用も負担させるべきであろう。 なお、遺産分割協議や遺産分割調停・審判において、空き家の管理費用の清算が問題になることがある。というのも、原則論としては、相続財産の管理費用は、相続開始後に生じたものであるため、遺産分割の対象にならないからである。 この点、遺産分割協議や遺産分割調停のように、当事者間の合意をベースにしている手続については、相続財産の管理費用も遺産分割の内容に含めることは可能である。 これに対して、遺産分割審判の場合、原則に戻って、相続財産の管理費用の清算は行われないものとされている(もっとも、当事者の合意があれば、審判で清算することも可能とする見解もある)。   4 対応方法 本件の場合、共同相続人間では遺産分割協議が行われていないため、空き家は共有状態のままである。空き家の遺産分割を行うことが好ましいが、管理不足による不利益を回避するため、当面の対応として、共同相続人の間で、空き家の管理方法を協議するべきである。 また、共同相続人が被相続人の自宅から遠方に居住しているような場合には、特定の共同相続人が管理をすることは過重な負担となることもあるため、全員同意の上で、第三者の専門業者等に管理を委託することも検討されてよいと思われる。ただし、管理事業者に委託した範囲以外の管理権限は共同相続人にあり、自ら対応する必要が生ずる場合があるため留意されたい。 (了)

#No. 292(掲載号)
#羽柴 研吾
2018/11/01

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第14話】「内縁の妻と配偶者控除」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第14話】 「内縁の妻と配偶者控除」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「統括官・・・どうして内縁の妻は、所得税法で配偶者控除の適用はないのでしょうか?」 浅田調査官は、中尾統括官に尋ねる。 昼休みで、今日も所得課税第三部門には2人しかいない。 「・・・配偶者控除の規定か・・・」 中尾統括官は、そう言いながら、税務六法を開く。 「配偶者控除については所得税法83条1項で規定していて・・・居住者が控除対象配偶者を有する場合には、その居住者の合計所得金額が900万円以下の場合は38万円(老人控除対象配偶者は48万円)、900万円超950万円以下の場合は26万円(老人控除対象配偶者32万円)、950万円超1,000万円以下の場合は13万円(老人控除対象配偶者16万円)の控除があり、1,000万円超になると控除はできない・・・こういう制度になっている・・・」 中尾統括官は、条文を読みながら、内容を確認する。 「ええ、その控除対象配偶者の定義は、所得税法2条1項33の2号で、次のように規定しています。」 「この配偶者については、所得税では、内縁、事実婚の配偶者は認められず、法律上の婚姻関係のみ控除ができる・・・とされていますが、私なんかは、実質的に夫婦関係があれば控除を認めてあげてもいいように思うのですが・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の様子を伺うように見る。 「・・・そうだなあ・・・たとえば、離婚して・・・その後、再婚しようとする場合、子供や遺産相続などいろいろとやっかいな問題があると、入籍できないこともあり得るしなあ・・・」 中尾統括官はそう言いながら頷く。 「税法は法律婚主義を採っていますから、互いに婚姻意思を備えている内縁関係については、配偶者控除は適用できないとされています・・・でも・・・」 浅田調査官は不満そうに言う。 「これについてはたしか・・・最高裁の判決があったと思うが・・・」 そう言いながら、中尾統括官はノートパソコンを開いて判例を検索する。 「この最高裁平成9.9.9判決では、配偶者は、法律上の婚姻関係にある者に限るとしている。」 中尾統括官は、浅田調査官にパソコンの画面を見せる。 「その理由について・・・この判決では、次のように述べているね・・・」 「ちなみに、最高裁で上告棄却されているけれども、納税者は上告理由として、次のように主張している。」 中尾統括官は、画面を切り替える。 「なるほど・・・私も上告人と同じ考えで、配偶者控除等の制度の趣旨を鑑みると、事実上の配偶者も法律婚と同様に、その対象にしたらいいと思いますね・・・」 浅田調査官は頸を傾げる。 「・・・それに・・・年金の制度では、事実上の配偶者も対象になっています。ちょっといいですか・・・」 浅田調査官はそう断りを入れると、中尾統括官のパソコンを使って厚生年金保健法を検索する。 「・・・厚生年金保健法3条2項では、次のようになっています。」 「厚生年金保健法では、事実婚も配偶者として認めているんです。」 浅田調査官は、パソコンの画面を見ながら言う。 「・・・しかし、事実婚については・・・その判定が難しいなあ・・・たとえば、一週間前に2人で一緒に生活を始めたとか言われて、確定申告の時に配偶者控除を認めてくださいと言われても・・・現場でどのように判断をしてよいのか分からないし・・・収拾がつかなくなるよ。それに、内縁関係は、基本的に2人が婚姻意思を備えていれば成立してしまうことになる・・・2人の内心なんて・・・税務署じゃあ、とても判断できない・・・」 中尾統括官は渋い顔になる。 「でも・・・年金では認めています・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の顔を見る。 「年金は、厚生年金保健法1条でその目的を次のように規定しています。」 浅田調査官は続けて説明する。 「遺族の生活の安定等を目的とする厚生年金保健法と・・・適正な課税(徴収)を目的とする税法は・・・基本的に異なるからなあ・・・」 そう言うと、中尾統括官は苦笑しながら、浅田調査官を見る。 (つづく)

#No. 292(掲載号)
#八ッ尾 順一
2018/11/01

《速報解説》 関係4団体から中小企業会計指針の改正(公開草案)が公表される~改正税効果会計基準等を受け見直し、収益認識基準に係る見直しは行わず~

《速報解説》 関係4団体から中小企業会計指針の改正(公開草案)が公表される ~改正税効果会計基準等を受け見直し、収益認識基準に係る見直しは行わず~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年10月30日、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所、企業会計基準委員会は、「中小企業の会計に関する指針」の改正に関する公開草案を公表した。 これは、主に「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号、平成30年2月16日)等の公表に伴い、繰延税金資産と繰延税金負債の貸借対照表上の表示について見直しを行うものである。 なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号、平成30年3月30日)等が公表されているが、今回、「収益・費用の計上」の見直しは行っていない。 コメント募集期間は平成30年11月30日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 1 繰延税金資産及び繰延税金負債等の表示方法(65項等) 従来、繰延税金資産及び繰延税金負債は、これらに関連した貸借対照表上の資産・負債の分類に基づいて流動区分と固定区分とに分けて表示するなどと規定していたが、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等に合わせて、次のように改正する。 2 その他 軽微な修正として次のものがある。 (了)

#No. 291(掲載号)
#阿部 光成
2018/10/31

《速報解説》 会計士協会、最近のIT技術発展を踏まえた研究報告「次世代の監査への展望と課題」(公開草案)を公表~AIやビッグデータ等を活用した監査に当たっての諸問題等を整理~

《速報解説》 会計士協会、最近のIT技術発展を踏まえた 研究報告「次世代の監査への展望と課題」(公開草案)を公表 ~AIやビッグデータ等を活用した監査に当たっての諸問題等を整理~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2018(平成30)年10月25日、日本公認会計士協会は、IT委員会研究報告「次世代の監査への展望と課題」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、「ITを利用した監査の展望~未来の監査へのアプローチ~」(IT委員会研究報告第48号)の内容を踏まえつつ、最近のIT技術の進化を考慮して2030 年頃の次世代の監査の在り方を展望するとともに、それを現実のものとするに当たって想定される諸問題について取り扱っている。 意見募集期間は2018(平成30)年11月25日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 研究報告の概要 研究報告は、目次を含めて61ページに及ぶものであり、主に次の内容を扱っている。 以下では、主な内容について解説する。 1 次世代の会計業務と監査への影響 ERPシステム、クラウド化、AI(Artificial Intelligence:人工知能)、RPA(Robotics Process Automation)、ブロックチェーンの活用などについて、会計業務と監査への影響が広範に取り上げられている。 RPAとは、これまで人が行っていた作業を機械学習やAIを含むコンピュータによる認知技術の活用により、自動化することである(12ページ)。 ブロックチェーンとは、仮想通貨であるビットコインの基盤となる技術として生まれた概念であり、分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology)の一形態と考えられている(15ページ)。 2 AIと会計・監査 現状のAIが得意な分野は、十分な訓練データがあり、それに基づく機械学習が可能であるといった分野であるとし、ある会計事象に対して、取引先や摘要や過去のデータから自動的に仕訳を生成するような会計システムについては、AIが活用しやすい世界と考えられている(25ページ)。 監査業務は、過去の数字を分析するだけでなく、将来の予測をしたり、見積りを行ったり、非定型的かつ高度な専門的な能力を必要とするものであり、また、経営者をはじめとする、被監査会社とのコミュニケーション能力も必要となるとのことである(25ページ)。 監査とは、場の雰囲気や個別の状況を踏まえた高度な判断が必要な業務と言え、現状、こういった役割を代替できるほど、AIの機能は進化していないことから、過去情報を活用した比較的定型的な判断は別にして、経営者の意図の理解や、会社の状況を踏まえた会計基準適用の妥当性判断といった事項は、引き続き監査人が担うことになると考えられるとしている(25ページ)。 監査の各フェーズに関して、AI等による代替可能性の難易度が図表化されている。 3 被監査会社の協力 監査人が被監査会社から経営活動に関する大容量のデータを受領して分析しようとする場合、被監査会社において分析目的に適したデータが取得及び保管されていること、監査人が被監査会社から当該データの提供を受けることが前提となる(45ページ)。 被監査会社において、真正性・完全性、検索性、機密性、見読性を満たす電子媒体の情報の管理を実施することや、ブロックチェーンの情報の帰属主体の検討に協力することなどは、監査人においては、信頼性ある監査証拠を効率的に入手することに寄与する(45ページ)。 4 次世代の監査実施のための監査報酬の在り方 次世代の監査の実施に当たっては、新たなデータ分析ツールの開発や活用、データ分析の専門家といった人材確保が不可欠なため、各法人における間接費が大きく増大すると考えられるとしている(49ページ)。 このため、従来のように各社への監査に費やされた時間を積み上げることによって計算されてきた監査報酬の計算に関する考え方を、大きく変える必要が生ずる可能性があるとのことであり、監査事務所内の原価計算はもとより、公認会計士は被監査会社とコミュニケーションを十分に行い、理解を図ることに努める必要が生ずるものと思われるとのことである(49、50ページ)。 5 監査技法の変化の時代に必要とされるスキル 例えば、以下のような知識、能力を身に着けることが、公認会計士には必要であると想定されている(50、51ページ)。 (了)

#No. 291(掲載号)
#阿部 光成
2018/10/26

プロフェッションジャーナル No.291が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年10月25日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.291を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/10/25

山本守之の法人税“一刀両断” 【第52回】「消費増税を考える」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第52回】 「消費増税を考える」   税理士 山本 守之   1 消費増税と経済対策 2019年度(平成31年)の税制改正は、同年10月から消費税率が10%に増税となることが予定されているため、その改正を下支えする税制に重点が置かれています。 2014年度に税率を5%→8%に引き上げた際、増税後の4~6月期の個人消費は、実質ベースで前期比年度率17.2%減となり、景気回復まで4年近くを要しました。この反省から、2019年度の税制改正では、消費増税前の駆け込み需要とその反動による消費消え込みを抑えることが最大のテーマとなり、今回は特に住宅、自動車の消費冷え込み対策に力を入れることになります。 消費増税に対する政府の需要の反動減を抑える対策は、早々にメニューが固まってきました。 菅官房長官は10月15日の臨時会議後の記者会見で「来年10月の消費税増税(8%~10%)は、リーマン・ショツクのようなものがない限り引き上げる」と述べました。 ただし、増税に向けた事業者の準備が遅れていることもあり、安倍首相は消費増税について「あらゆる政策を総動員し、経済に影響を及ぼさないように全力で対応する」と述べ、関係閣僚に対して駆け込み需要と反動減を抑えるための経済対策をまとめるよう以下のように指示しました。 また、「消費増税による税収のうち半分を国民に還元する」とし、「全世代型の社会保障制度へと大きく転換し、同時に財政健全化も確実に進めていく」と強調しています。19年10月1日からは幼児教育を認可・無認可あわせて無償化すると言明しました。 財務省では、過去の増税時には認めていなかった「消費税は私共が負担します」というような「消費税還元セール」を認めるようです。 2021年12月に期限が到来する住宅ローンの控除の延長や住宅資金贈与の特例を拡充する予定です。   2 軽減税率への懸念 2019年10月の消費税率10%への引き上げと同時に、食料品などの税率を8%に据え置く「軽減税率制度」が導入されます。この軽減税率制度により家計負担額は前回の5%→8%の引き上げ時では8兆円だったのに対し、今回は2.2兆円とも試算されており、消費者の負担を抑えているとしています。 軽減税率制度では商品の種類によって税率が変わるため、小売店ではレジや受発注システムの改修が必要になります。このため政府は、複数税率に対応できるよう早期の改修対応などを促すとしています。 ただし、準備に着手していない企業も多く、日本商工会議所が9月にまとめた中小企業約3,200社へのアンケート調査によると、軽減税率制度への対応について、約8割の企業は「準備に取りかかっていない」と回答しています。 特に小売りの現場では、消費者との直接の接点になるので、混乱を避けるよう関係業界は準備を迅速に進める必要があります。政府も制度の運用上、不明確な点は業界の意見なども聞きながら早期に明確にすべきでしょう。 酒を除く飲食料品は軽減税率の対象になりますが、外食(店内での飲食)は対象になりません。最近、コンビニやスーパーで急速に普及しているイートインコーナーでの飲食は外食とみなされ10%の標準税率がかかります。また外食店でもテイクアウトの場合は8%の軽減税率が適用されます。 欧州では既に付加価値税に軽減税率を導入していますが、初めて導入する日本では現場での混乱も予想されます。今年5月に政府は店内飲食への対応など軽減税率の価格表示法についての指針をまとめていますが、その指針では消費者が店内飲食と持ち帰りの2種類の価格で混乱しないように、事業者の判断により税込み価格で店内飲食と持ち帰りの金額を表示することも可能としています。 いずれにせよ、コンビニの現場などでは、販売時に店内で飲食するか持ち帰るかを客に確認する必要があるため、できるだけ簡便な仕組みを整えるべきです。これを契機にイートインコーナーが廃止されるようでは、消費者の利便性は損なわれてしまいます。 筆者は、EUではどうなっているかを調べるため、パリの外食店を訪ねたところ、会計の際に店員から「店内で飲食するのか、持ち帰りか」と尋ねられました。フランス語が分からない筆者が答えられないでいると、店員はパンとサンドイッチを紙に包んでくれ、軽減税率(5.5%)の支払いを求められました。 筆者が周りを見てみると、トレーで食べている人(標準税率10%)と紙に包んだものを食べている人(軽減税率5.5%)に分かれていました。とはいうものの、半数くらいは紙に包んでもらいながら外食をしています。しかし「脱税だ!」と指摘する人は誰もいません。 これは洒落を知るフランス人の国民性でしょう。日本で洒落が分からず現場で岡っ引きのように対応すると、現場が混乱を生じないか心配です。 (了)

#No. 291(掲載号)
#山本 守之
2018/10/25

企業の[電子申告]実務Q&A 【第8回】「義務化の例外規定」-特例の申請-

企業の[電子申告]実務Q&A 【第8回】 「義務化の例外規定」 -特例の申請-   SKJ総合税理士事務所 税理士 坂本 真一郎   ●○●○解説○●○● 電子申告義務化後において、災害その他の理由(注)によって、e‐Taxにより法定申告期限までに申告書を提出することが困難な場合には、所轄税務署長の承認を得た上で、書面により提出することで、例外的に申告義務が履行されたものとみなされ、その書面による申告書は有効なものとして取り扱われます。 この承認を得るためには、事前に「e‐Taxによる申告が困難である場合の特例の申請書」及び「添付書類(e‐Taxを使用することが困難であることを明らかにする書類)」を提出する必要があります。 なお、この申請に対する承認(却下)の処分については、所轄税務署長が書面によりその旨を通知することにより行われますが、申請書に記載した指定を受けようとする期間の開始の日までに承認(却下)の通知がなかったときは、その日においてその承認があったものとみなされます。 また、災害その他やむを得ない理由により、法定申告期限までに申告・納付できない場合は、従来からある「災害等による期限の延長(国税通則法第11条)」に基づく期限延長の申請が可能です。 (注) 「災害その他の理由」及び申請書とともに提出する必要がある e‐Taxを使用することが困難であることを明らかにする書類の具体例は以下のとおりです。 【記載例・・・経営成績の悪化によりインターネット契約を解約した場合】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)

#No. 291(掲載号)
#坂本 真一郎
2018/10/25
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