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移転価格文書化におけるローカルファイルの作成期限前チェックポイント 【第2回】

移転価格文書化における ローカルファイルの作成期限前チェックポイント 【第2回】   太陽グラントソントン税理士法人 マネジャー 税理士 川瀬 裕太   (3) 使用した無形資産(措規22の10①一ハ) ① 記載内容 法人又は国外関連者が所有及び登録し、又は使用許諾している無形資産のうち、国外関連取引において使用した無形資産の種類、内容、契約条件等を説明する。 無形資産が法人及び国外関連者の貸借対照表上に計上されていない場合又は法人及び国外関連者がその無形資産の法的所有権を有していない場合であっても、国外関連取引において使用した無形資産については記載する必要がある。 ② 準備書類 保有する無形資産のリスト 特許権、商標等の登録内容が記載されている書類 無形資産の使用等に関して定めた契約書、稟議書 研究開発部署、製造技術部署及び生産技術部署等の業務内容が記載されている書類 (販売網が無形資産に該当する場合)営業部署の業務内容、店舗一覧及び代理店一覧 ブランドの維持・向上に係る広告宣伝等の企画書類 ③ チェックポイント (4) 契約関係(措規22の10①一ニ) ① 記載内容 非関連者間で取引を行う場合に通常記載される又は取り決められる取引条件等を説明する。 国外関連取引に係る条件が口頭や電子メールで定められており、特に契約書に記載されていなくても、国外関連者との間で遵守することとしている条件がある場合には、別途、これらの事項を説明した書類及びそれを裏付ける資料を用意する必要がある。 ② 準備書類 契約書及び付属書類 契約の内容を記載した書類 ③ チェックポイント (5) 取引価格の設定、事前確認等の状況(措規22の10①一ホ) ① 記載内容 国外関連取引において法人が国外関連者から支払を受ける(又は国外関連者に支払う)対価の額の明細を説明する書類並びに法人が国外関連者から支払を受ける(又は国外関連者に支払う)対価の額の設定方法及び当該対価の額を設定するに当たり国外関連者と行った交渉の内容を説明する。 価格を改定した場合には、改定の時期、改定の理由及び改定前後の価格設定方法等並びに価格設定時に参照した情報等を記載する必要がある。 ② 準備書類 商品のパンフレット、カタログ又はプライスリスト 契約書 契約締結に係る会議議事録、稟議書及び承認に関する書類 対価の額の設定及び改定に係る交渉記録について記載した記録やメモ及び社内メール 移転価格設定ポリシーが分かる資料 過去の対価の額の推移が分かる資料 外国の税務当局のみによる事前確認、相互協議を伴う事前確認、その他の税務ルーリングを記載した資料 ③ チェックポイント (6) 国外関連取引に係る損益の切り出し(措規22の10①一ヘ) ① 記載内容 法人及び国外関連者双方の国外関連取引に係る損益及び当該損益の額の計算の過程を説明する。 単体の損益計算書から国外関連取引に係る損益を区分し切り出すことにより作成し、明確に区分できない費用(共通費用)がある場合には、合理的な基準を用いてその費用の配賦を行い、営業損益まで算出する。 ② 準備書類 法人及び国外関連者の財務諸表 セグメント損益、事業部損益(取引の単位に区分されていることが必要) 国外関連取引に係る損益を区分する計算過程を示した書類 ③ チェックポイント (7) 市場の状況(措規22の10①一ト) ① 記載内容 国外関連取引の対象となる商品、製品、役務等に係る地理的市場の特性、政府の政策及び為替変動の影響等を説明する。 国外関連取引の対象となっている商品若しくは製品が販売されている又は役務が提供されている地理的市場を特定した上で、その市場の概要及びその市場特有の状況が国外関連取引に係る対価の額又は損益の額に与える影響を記載する必要がある。 ② 準備書類 有価証券報告書、アニュアルレポート 市場分析資料 市販の市場分析資料などの参考文献の写し 国外関連者の所在する国又は地域において適用される優遇税制の概要 ③ チェックポイント (8) 事業内容、事業方針及び組織の系統(措規22の10①一チ) ① 記載内容 法人及び国外関連者が行っている事業の詳細、事業の方針及び事業戦略並びに法人及び国外関連者の組織について説明する。 「市場シェアの獲得を目的に、競合相手よりも安価な小売価格とするため、国外関連者に輸出する価格については戦略的に〇%程度低い販売価格を設定している」、「市場に参入したばかりの段階のため、市場に浸透しブランドイメージを構築するために広告宣伝や販売促進を増加させている」といった事業の方針や事業戦略の詳細を記載する。 ② 準備書類 経営組織図、所属員数表、業務分掌表、業務フロー図、有価証券報告書、アニュアルレポート、会社案内及びホームページをアウトプットしたもの 中長期経営計画及び事業計画書 経営会議の資料及び稟議書 ③ チェックポイント (9) 密接に関連する取引(措規22の10①一リ) ① 記載内容 国外関連取引と密接に関連する他の取引が存在するか否か、存在する場合にはその取引の内容、その取引が国外関連取引にどのように関連するのかについて説明する。 ② 準備書類 取引フロー図(国外関連取引及び国外関連取引と密接に関連する取引の全体像を記載したもの) 複数の取引が密接に関連していることを示す資料 ③ チェックポイント (了)

#No. 253(掲載号)
#川瀬 裕太
2018/01/25

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第22回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第22回】   公認会計士 佐藤 信祐   (《第2章》 平成13年度税制改正) (13) 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入 『平成13年版改正税法のすべて』175-177頁(大蔵財務協会、平成13年)では、国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入について記載されている。その他の圧縮記帳の制度に対しても組織再編税制に伴う改正がなされているが、国庫補助金等における取扱いを理解しておけば、ある程度の応用は可能であろう。ただし、詳細については異なる部分もあるため、条文だけでなく、関連する課税当局の解説もそれぞれ確認されたい。 『平成13年版改正税法のすべて』では、①適格分社型分割等を行った場合の圧縮記帳(いわゆる期中損金経理)、②期中特別勘定の損金算入、③特別勘定の引継ぎ、④特別勘定を有している場合に適格分社型分割等を行ったときの圧縮記帳、⑤その他に分けて記載されている。このうち、⑤については、やや細かな内容になるため、本稿では解説を行わない。 そして、①②④については、前回解説した減価償却費に係る期中損金経理額の損金算入の制度を理解しておけば、同様の制度になっていることは理解できるであろう。いずれも2月以内の税務署長への届出が要求されている(法法42⑦、43⑦、44⑤、法規24の3、24の4、24の6)。これは、「会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方」の別紙において、 と記載されていたことを受けたものである。 最後に、③特別勘定の引継ぎであるが、適格合併と異なり、適格分割等の場合には、一部の事業のみが移転することがあるため、「分割法人等が国庫補助金等をもってその取得又は改良をした固定資産を移転する場合」「分割承継法人等が国庫補助金等をもってその交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良をすることが見込まれている場合」に限定したうえで、特別勘定及び期中特別勘定の引継ぎが認められた(法法43⑧)(※)。これは、「会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方」の別紙において、 と記載されていたことを受けたものである。 (※) なお、当時の法人税法では、分割型分割を行った場合には「期中特別勘定」を認識しないため、当然のことながら、「期中特別勘定」の引継ぎは認められていない。この点については、平成22年度税制改正により、分割型分割を行った場合におけるみなし事業年度が廃止されたことに伴い、改正がなされている。 なお、「会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方」の別紙では、 と記載されていた。この点につき、『企業組織再編成に係る税制についての講演録集』(日本租税研究協会、平成13年)や『平成13年版改正税法のすべて』を見ると、法律、政令では対応されなかったと思われる。 しかしながら、現行法人税基本通達10-1-4において、 と規定されたため、この点については通達による対応がなされたということが言える。 (14) 貸倒引当金 『平成13年版改正税法のすべて』182-186頁では、貸倒引当金について記載されている。そして、法人税法上、貸倒引当金は、(イ)個別評価金銭債権に係る貸倒引当金と(ロ)一括評価金銭債権に係る貸倒引当金に分けて規定されている。 このうち、(イ)個別評価金銭債権に係る貸倒引当金であるが、上述した「(13) 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入」と同様に、「移転する個別評価金銭債権と一体不可分のもの」を合併法人等に引き継ぐこととしている。そのため、期中貸倒引当金の損金算入(法法52⑤⑥)、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の引継ぎ(法法52⑦)がそれぞれ設けられている。 そして、(ロ)一括評価金銭債権に係る貸倒引当金であるが、『平成13年版改正税法のすべて』184頁では、 と記載されている。 これを理解するためには、事業年度末に貸倒引当金繰入額を計上したうえで、翌事業年度の期首に貸倒引当金戻入益を計上する制度になっていることを前提にすると分かりやすい。 期中には、貸倒引当金が存在しないのであるから、特段の規定がない限り、分割法人において貸倒引当金繰入額を計上することができず、分割承継法人において貸倒引当金繰入額を計上することになる。これに対し、適格合併、適格分割型分割を行った場合には、合併又は分割の日の前日でみなし事業年度を区切ることから、一括評価金銭債権に係る貸倒引当金を合併法人又は分割承継法人に引き継ぐことが可能になる。 ただし、平成22年度税制改正において、「期中一括貸倒引当金」の制度が定められたことから、現行法人税法では、適格分社型分割等の場合であっても、一括評価金銭債権に係る貸倒引当金を引き継ぐことが可能とされている(現行法人税法52⑧)。 さらに、法人税法施行令96条2項(現行法人税法施行令同条6項)では、適格組織再編成を行った場合における貸倒実績率の計算が規定され、同令97条には、貸倒実績率の特別な計算方法が定められた。この点は、やや細かな内容となるため、本稿では解説を省略する。 *   *   * 次回では、青色欠損金の繰越控除について解説を行う予定である。 (了)

#No. 253(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/01/25

相続空き家の特例 [一問一答] 【第29回】「「相続税額の取得費加算の特例」との適用関係」-相続空き家の特例と他の特例との重複適用関係-

相続空き家の特例 [一問一答] 【第29回】 「「相続税額の取得費加算の特例」との適用関係」 -相続空き家の特例と他の特例との重複適用関係-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、昨年2月に死亡した父親の家屋100㎡(居住用部分:50㎡、店舗用部分:50㎡)及びその土地120㎡(居住用部分:60㎡、店舗用部分:60㎡)を相続により取得して、その家屋を取り壊し更地にした上で、本年9月に4,800万円で売却しました。 相続の開始の直前まで父親は一人暮らしをしながら雑貨屋を営み、その家屋は相続の時から取壊しの時まで空き家で、その土地も相続の時から譲渡の時まで未利用の状態でした。 また、Xは、父親のこの家屋及び敷地を相続するに当たって、当該相続に係る相続税を納付しています。 この場合、「相続空き家の特例(措法35③)」と「相続税額の取得費加算の特例(措法39)」の適用関係はどのようになるのでしょうか。 A 居住用部分については、「相続空き家の特例」と「相続税額の取得費加算の特例」の規定のいずれか一方を選択して適用することができます。 また、店舗部分については、「相続税額の取得費加算の特例」を適用することができます。 ●○●○解説○●○● 租税特別措置法第35条第3項は、「相続空き家の特例」について、同法39条の「相続税額の取得費加算の特例」と重複できない旨を規定しています(措法35③)。 したがって、「相続空き家の特例」の対象となる居住用部分について、「相続税額の取得費加算の特例」を適用する場合には、「相続空き家の特例」を適用することができないこととなります。 なお、「相続空き家の特例」の対象でない非居住用部分についてのみ「相続税額の取得費加算の特例」を受けるときは、居住用部分に相当するものの譲渡については、租税特別措置法第35条第3項の規定の要件を満たすものである限り、「相続空き家の特例」の適用は可能となります(措通35-8(相続財産に係る譲渡所得の課税の特例等との関係))。 本事例の場合は、居住用部分については「相続空き家の特例」を選択して、店舗部分については「相続税額の取得費加算の特例」を適用することも、又は、譲渡全体について「相続税額の取得費加算の特例」を適用することもできることとなります。 (了)

#No. 253(掲載号)
#大久保 昭佳
2018/01/25

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例58(法人税)】 「別表の添付漏れ及び適用額明細書への記載漏れを理由に、中小企業倒産防止共済掛金の損金算入が認められなかった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例58(法人税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆中小企業倒産防止共済 継続して1年以上事業を行っている一定規模以下の中小企業者を対象に、取引先事業者が倒産した際に、連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐため、無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れでき、掛金は損金又は必要経費に算入できる。 また、共済契約を解約した場合は、解約手当金を受け取ることができる。自己都合の解約であっても、掛金を12ヶ月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40ヶ月以上納めていれば、掛金全額が戻る。 ◆特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例(措法66の11) 法人が、各事業年度において、独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済法の規定による中小企業倒産防止共済事業に係る基金に充てるための共済契約に係る掛金を支出した場合には、その支出した金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。 この特例は、確定申告書等に同項に規定する金額の損金算入に関する明細書(別表10(6)特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書)の添付がない場合には、適用しない。ただし、当該添付がない確定申告書等の提出があった場合においても、その添付がなかったことにつき税務署長がやむを得ない事情があると認める場合において、当該明細書の提出があったときは、この限りでない。 ◆適用額明細書の提出義務(租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律3①) 法人税申告書を提出する法人で、当該法人税申告書に係る事業年度において法人税関係特別措置(税額又は所得の金額を減少させる規定その他の政令で定める規定によるものに限る)の適用を受けようとするものは、当該法人税関係特別措置につき記載した適用額明細書を当該法人税申告書に添付しなければならない。 適用額明細書を添付せず、又は虚偽の記載をした適用額明細書を添付した法人については、法人税関係特別措置の適用はないものとする。 ただし、添付がない又は記載に虚偽がある適用額明細書の提出があった場合においても、誤りのない適用額明細書の提出があったときは適用することができる。       (了)

#No. 253(掲載号)
#齋藤 和助
2018/01/25

〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第23回】「別表13(9) 平成21年及び平成22年に先行取得をした土地等の圧縮額の損金算入に関する明細書」

〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第23回】 「別表13(9) 平成21年及び平成22年に先行取得をした土地等の圧縮額の損金算入に関する明細書」   公認会計士・税理士 菊地 康夫   Ⅰ はじめに 本稿では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 第23回目は、過去に実施された特例措置関係でまもなくその適用期限が到来するために、ここ2~3年の間に実務上採用するケースが多くみられるであろうと予想される、「別表13(9) 平成21年及び平成22年に先行取得をした土地等の圧縮額の損金算入に関する明細書」を採り上げる。   Ⅱ 概要 この別表は、法人が措置法第66条の2(平成21年及び平成22年に土地等の先行取得をした場合の課税の特例)の規定の適用を受ける場合に記載する。 本制度は、いわゆる圧縮記帳と呼ばれるもののうち、期間限定の特例措置である。すなわち法人が、平成21年1月1日から平成22年12月31日までの期間内に土地又は土地の上に存する権利(以下「先行取得土地等」という)を取得し、その取得の日を含む事業年度終了の日後10年以内に、その法人の所有する他の土地等の譲渡をした場合に、その先行取得土地等について圧縮限度額の範囲内で、帳簿価額を損金経理により減額する方法等により、その課税の繰延べを認めるという制度である。 これは圧縮記帳の対象となる土地等の取得を譲渡より先行し、かつ平成21年と22年の2年間に限定することにより、集中的な土地取得を促進することで当時の低迷する市場の土地需要を喚起し、土地の流動化を図るための臨時的な特例措置であることに留意する必要がある。 圧縮記帳の対象となる先行取得土地等には、棚卸資産に該当するものは含まれず、さらに、(1)その法人と特殊の関係のある個人又は法人からの取得、(2)合併、分割、贈与、交換、出資又は適格現物分配による取得、(3)所有権移転外リース取引又は代物弁済による取得、の場合も除かれる。 また、 他の土地等の「譲渡」には、土地等を使用させることによりその土地等の価値が著しく減少する場合(施行令第138条第1項)のその使用させる行為を含む。 ▼ 注意!▼ ただし、次に掲げるものはこの場合の譲渡に含まれないので留意する。 (1) 土地収用法などの規定に基づく収用、買取り、換地処分、権利変換又は買収による譲渡 (2) 特定の長期所有土地等の所得の特別控除の適用を受ける譲渡(「平成21年及び平成22年に取得した長期所有土地等の1,000万円特別控除」については【第19回】の解説を参照のこと) (3) 特定資産の買換えの圧縮記帳等の適用を受ける譲渡 (4) 交換により取得した資産の圧縮記帳等の適用を受ける交換による譲渡 (5) 適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配による土地等の移転 圧縮限度額の計算方法は次のとおり。 (※1) 譲渡利益金額とは、先行取得土地等以外の土地等の譲渡に係る対価の額からその土地等の譲渡直前の帳簿価額に譲渡経費の額を加算した金額を控除した金額をいう。なお、譲渡の日を含む事業年度において先行取得土地等以外の土地等の譲渡が2つ以上ある場合には、譲渡利益金額はその合計額とする。 (※2) この規定により圧縮記帳をする先行取得土地等が平成22年中に取得されたもののみである場合には、80/100が60/100となる。 なお、この圧縮記帳の適用を受けるためには、先行取得土地等の取得の日を含む事業年度の確定申告書の提出期限までに、「平成21年及び平成22年に土地等の先行取得をした場合の課税の特例の適用に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出しておく必要がある。   Ⅲ 「別表13(9)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成29年4月1日以後終了する事業年度。 (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (4) 圧縮記帳に関する計算と仕訳例 (単位:円) 〔先行取得時の仕訳〕 〔譲渡時の仕訳〕 〔期末時の仕訳〕 〔圧縮限度額の計算〕 (5) 別表の各記載欄の説明 「先行取得土地等の明細」 「譲渡土地等の明細」 「圧縮限度額の計算」 (了)

#No. 253(掲載号)
#菊地 康夫
2018/01/25

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第13回】「非居住性の判断にあたっての注意義務」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第13回】 「非居住性の判断にあたっての注意義務」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 今般、わが社は、個人の方から不動産を購入しようと考えています。契約に際して、その方から提出された住民票等をみると日本に住所のある人のように思えますが、雑談では、海外と日本を往復しており、海外にも家があるようなことを聞きました。 このような場合、住民票があることを根拠に、日本の居住者との取引と判断して、源泉徴収せず、譲渡代金をすべて買主に払って問題ありませんか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷非居住者が国内不動産を売却した場合 非居住者の日本での所得税の課税範囲は国内源泉所得に限られ(所法7①三)、本件のような日本の不動産の売却による所得は、もちろん、日本の国内源泉所得(所法161①五)に含まれる。この不動産の譲渡所得については、日本国内に恒久的施設のある非居住者だけでなく(所法164①一ロ)、恒久的施設を有しない非居住者(所法164①二)についても確定申告をしなければならない。 さらに、非居住者が不動産を売却した場合には、原則的には、譲渡対価の10.21%の源泉所得税等を徴収し、確定申告で精算が行われることになる(所法212①、213①二、復興財源法28)。これは、非居住者に確定申告を強制することは、現実的には困難なこともあるので、確実に税金を徴収できるようにするためと考える。しかし、例外として、買主が個人で譲渡対価が1億円以下であるもののうち、その個人又は親族の居住の用に供されるものは、源泉徴収の対象から除かれる(所令281の3)。 このように、非居住者から不動産を購入した場合は、原則として源泉徴収義務がある。しかし、相手が外国法人であるならば分かりやすいが、個人が非居住者かどうかというのは非常に分かりにくいところがある。 もし、税務調査で誤りが見つかった場合、買主は、源泉徴収税額に不納付加算税等を加えて納付しなければならないし、売主が非居住者であることから、売主から税金分を回収するのは難しい場合も多い。 このような場合、買主には、売主が非居住者であることを確認しなければならない義務がどこまであるのだろうか。   ▷東京地裁平成28年5月19日判決の検討 以下では、東京地方裁判所平成26年(行ウ)第114号所得税納税告知処分取消請求事件(平成28年5月19日判決、TAINSコード:Z888-2035)を例にとって検討する。 この事案は、米国籍で社会保障番号を取得していた個人が、日本に滞在している時に生活の場所としていた不動産(売買代金7億6,000万円、固定資産税等精算金215万円9,273円)を平成20年3月14日に売却した際、買主である法人が、この売主を居住者と認識して所得税の源泉徴収を行わなかったことから問題となった事案である。 ここで問われるのは、買主が、売主が非居住者か否かの確認について、いわゆる善管注意義務を尽くしたか否か、ということである。   ▷居住者か否かの判断のポイント その個人が居住者か否かを判断するポイントは、前回、前々回の解説にもあるように、滞在日数や、生計を一にする親族がどこにいるか、職業、資産の有無等の状況によるとされ、特に重視されているのが、滞在日数及び生計を一にする親族ではないかと考えられる。 本事案にあてはめると、次のようになる。 上記に基づくと、この売主は日本の非居住者であり、米国に住所を有する居住者と判断されるが、実務では、これらの情報が目の前にまとめて出されることはまずない。このため与えられた情報から推定することになるが、本事案では、なぜ買主はこの人物を居住者と判断したのだろうか。   ▷居住者と判断する根拠となった資料 本事案において、買主が売主を居住者と判断した根拠として、次のような書類の提示があった。 まず、契約締結時には「住民票」「印鑑登録証明書」「固定資産評価書類」が出され、これらの書類には、住所として、売却した建物所在地(杉並区β×番31号)ないし、旧住所(世田谷区α×30号)が記載されていた。 また、代金の送金先として複数の外国の銀行口座の指定があったことから、居住者の判断に疑問を感じた法人の経理部の担当者が再度居住者確認を行ったが、その確認に対し、売主本人からは、日本で所得税や住民税を納めていると回答があり、介護保険被保険者証の交付を受けていることを確認、国内居住者であることを否定する事情はない旨を報告した。 また、売却後はどうするのかという質問に対し、米国のヘンダーソンというところで、犬や猫と一緒に1人で暮らすという回答を得ていたが、米国における生活、家族関係に関する具体的な質問はせず、売却後の連絡先も確認しなかった。   ▷判決は・・・ 判決では、売却交渉前(平成19年8月)、電話がつながらず、3、4回訪問しても不在であった。売却交渉後も1ヶ月渡米しており、ヒアリングでは、以前、米国に居住していたと言われていた。さらに送金先についても、依頼書には米国住所を記入していた。 このような状況証拠から、日本の非居住者(米国の居住者)と疑い、具体的な生活状況(出入国の有無、頻度、米国における滞在期間、米国における家族関係や資産の状況等)に関する質問をするなどして、非居住者か否かを確認すべき注意義務を負っていたというべきとした。また、住民票等の公的な書類を確認したからといって、そのことをもって、買主側が注意義務を尽くしたということはできないとした。 契約書によれば、不動産を売却した後においても、相互に協議することがありえると記載されていた。つまり、買主担当者が不動産売却後における居住関係等を確認していないこと自体、売買契約に基づく注意義務を尽くしていなかったことをうかがわせる事情があるとされ、買主である原告の主張は退けられた。 上述のように、状況証拠をすべてそろえてみると非居住性は明らかであるが、本事案のように、税の専門家でもない企業の一担当員に非居住性の的確な判断を求めるのは非常に酷な話である。この事件は現在、控訴中であり、次の判決がどのようになるか興味があるところである。   (了)

#No. 253(掲載号)
#菅野 真美
2018/01/25

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第40回】「寄附金(貸倒損失・債権放棄)」~債権放棄に基づく関係会社支援損が寄附金に該当すると判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第40回】 「寄附金(貸倒損失・債権放棄)」 ~債権放棄に基づく関係会社支援損が寄附金に該当すると判断した理由は?~   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して行われた「債権放棄に基づく関係会社支援損が寄附金に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所平成18年9月22日裁決(非公開裁決。以下「本裁決」という)を素材とする。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) 素材とした本裁決の裁決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本裁決の判断 本裁決は、大要次のとおり、理由付記に不備はないと判断した。 (1) 求められる理由付記の程度 (2) 理由付記の十分性   4 検討 (1) 関係法令等の確認 本件更正処分の関係法令等を簡単に確認しておく(詳細は、本連載【第11回】「寄附金と貸倒損失」参照)。 貸倒損失について、法人税基本通達9-6-1(4)は、「債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額」は、貸倒損失として損金の額に算入する旨定めている。 損金算入が制限される寄附金について、法人が支出した寄附金とは、金銭その他の資産や経済的な利益の贈与又は無償の供与であり、いわば事業関連性の有無を問わず、対価を伴わない支出であると解されている(法法37⑦)。 また、直接的・個別的な対価を伴わない支出で、かつ、形式上、寄附金の額から除かれる広告宣伝費等の費用に該当しないものであっても、その支出を行うことにより、①対価的意義を有するものと認められる経済的利益の供与を受けている場合、又は②営利法人としてこれを受けることなくその支出相当額の利益を手離すことを首肯するに足りる何らかの合理的な経済目的等がある場合には、寄附金の額に含まれないと解されている。 子会社等の整理・再建に際し、相当の理由(経済的合理性)がある場合のその子会社等に対する債権放棄は寄附金ではなく、そのまま損金の額に算入される旨を明らかにした通達もある(法人税基本通達9-4-1、9-4-2)。 (2) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、X社が関係会社支援損として計上した金額は平成13年8月31日に行ったS社に対する債権金額1,150,000,000円の放棄であるという、X社の帳簿書類の記載又はその前提たる事実を、処分の前提事実としている(以下、A社に対する債権放棄に係る処分については記載を省略する)。その上で、この債権放棄が法人税法37条の寄附金に当たるものであるとの法的評価を加えることにより、損金不算入となる金額を所得金額に加算するものである。 したがって、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当すると考える(ただし、X社の帳簿書類にS社の資産状況や支払能力などに関する事実が記載されていた場合に、本件更正処分が、これらの記載を否認することになるようなときは、帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当する余地がある)。 すると、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものではないと考える。 本件理由付記は、S社に対する債権放棄に係る経済的利益の供与は、S社の倒産を防止するためにやむを得ず行われたものであるとか、合理的な再建計画に基づいてなされたものではなく、その債権放棄を行うことに相当な理由があるとは認められないとするものである。 本件理由付記には、このほかに寄附金と判断するに至った具体的ないし個別的な事実の記載はない。もっとも、X社において、S社が倒産の危機にあることを示す資料やS社を再建する計画に基づいて債権放棄を行ったことを示す資料を作成・保管していないことを前提とするならば、本件理由付記のようにやや消極的な処分理由の記載となることも、やむを得ない面がある。 しかしながら、課税庁は、審査請求段階において、S社に対する債権放棄が、S社の倒産を防止するためにやむを得ず行われたものであるとは認められないと主張し、その理由として次の(1)~(3)を挙げている。 これを読むと、課税庁が、S社に対する債権放棄はS社の倒産を防止するためにやむを得ず行われたものであるとは認められないと判断した具体的な理由を理解することができる。 また、課税庁は、審査請求段階において、S社に対する債権放棄は合理的な再建計画に基づく再建支援ではないと認められるため、債権放棄を行うことに相当な理由はない旨主張し、その理由として、次の(1)~(4)等を挙げている。 これを読むと、課税庁が、X社によるS社に対する債権放棄は合理的な再建計画に基づいてなされたものではないと判断した具体的な理由を理解することができる。 このように課税庁の審査請求における主張と対比すると、本件理由付記は、処分の根拠となる事実や判断過程を省略して記載していることが浮き彫りとなる。本件理由付記程度の記載で十分であるとすると、課税庁が、処分時に確固たる事実を把握しないまま、恣意的ないし主観的に、上記の判断をすることが事実上許されてしまうのではないか、という懸念も生じる(なお、再建計画の合理性のように一義的な判断が難しい場面においては、判断者の主観に左右されやすいことに留意)。 してみると、本件理由付記は、少なくとも更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するという理由付記の趣旨と必ずしも適合しないという評価も成り立つであろう。よって、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものではないと考える。 もっとも、本件理由付記の十分性については、①実際に、課税庁は、原処分時にどこまでの事実を把握し、処分理由として考慮していたかという点に加えて、②S社が倒産の危機にあることを示す資料やS社を再建する計画に基づいて債権放棄を行ったことを示す資料のX社における実際の作成・保管状況、③S社に対する債権放棄による経済的利益の供与が、同社の倒産を防止するためにやむを得ず行われたものであるとか、合理的な再建計画に基づいてなされたものであることの立証責任はX社にあることを踏まえて、更なる検討を行う余地もある。 なお、貸倒損失や債権放棄の損金算入を否認するような処分に係る理由付記に関して、①法令のみならず関連する通達(本件では法人税基本通達9-4-2等)までも理由付記に記載しなければならないのか、②理由付記の趣旨目的と守秘義務(国家公務員法100条、国税通則法126条)との間でどのような調整を図るべきか、という議論がある(本連載【第38回】参照)。 *  *  * 次回は、「子会社再建支援のための債権放棄は寄附金に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 253(掲載号)
#泉 絢也
2018/01/25

税効果会計における「繰延税金資産の回収可能性」の基礎解説 【第1回】「税効果会計の目的と繰延税金資産の回収可能性が論点になるワケ」

税効果会計における 「繰延税金資産の回収可能性」の 基礎解説 【第1回】 「税効果会計の目的と繰延税金資産の回収可能性が論点になるワケ」   仰星監査法人 公認会計士 田中 良亮   ◆連載開始にあたって◆ 本稿より始まる新連載「税効果会計における「繰延税金資産の回収可能性」の基礎解説」では、経理初心者が理解しにくい税効果会計について、会計処理を行うにあたって一番重要な繰延税金資産の回収可能性に関する考え方を中心に解説していく予定である。ぜひ参考にしていただきたい。 第1回目のテーマとして「税効果会計の目的と繰延税金資産の回収可能性が論点になるワケ」について取り上げる。   1 はじめに 読者の中には「税効果会計」と聞くと、拒否反応を示す方も少なからずいるのではないだろうか。税効果会計を取り上げた書籍や解説は世に多く出回っているものの、経理初心者には読解困難な言葉で記載された会計基準の解説になっているものが多いことが、その要因のひとつになっていることは間違いないだろう。 そこで本連載では、理解しやすいようになるべくかみ砕いた表現で税効果会計の本質を解説することを心がけたい。本連載をお読みいただいた読者の“税効果会計アレルギー”が少しでも取り除かれれば幸いである。   2 税効果会計の目的 「税効果会計の目的は?」と聞かれて一言で説明するとすれば、「会計と税務の差を調整するため」と答えることになるであろう。 例えば、翌期に支給予定の賞与について、支給額を算定するための対象期間が当期に属している場合には、通常、引当金の計上要件を満たすため会計上は賞与引当金の計上が求められるが、税務上は原則的に見積項目の計上を認めていないことから、賞与引当金は計上できない。そのため、この時点で会計と税務の処理に差が生じることになる。 しかし、実際の賞与支給時には税務上も損金計上が認められることになるため、その時に会計と税務の差が解消される(事業年度をまたいで会計と税務の処理が一致する)。 このように、会計と税務に一時的な差が生じるものの、最終的には解消される項目等(「一時差異等」という)が税効果会計の対象となる(【図1】参照)。 【図1】 ここで、『なぜ会計と税務の差を調整しなければならないのか』といった疑問が出てくるだろう。 実は、そのヒントが【図1】にある「将来減算一時差異」というワードに隠れていることにお気づきだろうか。 つまり、税額計算は会計上の当期利益を基礎とするが、賞与引当金の例でいえば、当期に会計処理した賞与引当金は税務上の計上が認められないため、その金額を別表4において加算(否認)したうえで課税所得を算出し、別表1において、当該課税所得に税率を乗じて税額を算出することになる。 しかし、賞与引当金の否認額は実際支給時に税務上の計上が認められる(認容される)ため、その時の税額負担を軽減させることになる(【図2】参照)。 【図2】 このように、将来において課税所得を減算させる一時差異を「将来減算一時差異」という。 一方で将来において課税所得を加算させる一時差異は「将来加算一時差異」というが、我が国の税制では、将来減算一時差異が発生することの方が多い。 【図2】にあるように、将来減算一時差異が発生した事業年度においては、税金を前払いすることになる。言い換えれば、その分だけ将来事業年度において税額を軽減できることになるのである。 この場合、会計上は将来の便益と捉えて、貸借対照表において「繰延税金資産」を計上し、損益計算書において税引前利益と税金費用を合理的に対応させるため「法人税等調整額」を計上する(【図3】参照)。 これこそが、会計と税務の差を調整しなければならない理由であり、税効果会計の目的なのである。 【図3】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   3 繰延税金資産の回収可能性が論点になるワケ まずはここまでの解説で、税効果会計の目的についてご理解いただけただろうか。将来減算一時差異が発生すると繰延税金資産の計上について検討しなければならないことは前述のとおりだが、ここで留意しなければならないのが繰延税金資産の回収可能性という論点である。 【図3】にあるとおり、将来の税額負担を軽減する効果がある部分につき繰延税金資産を計上することになる。つまり、繰延税金資産を貸借対照表に資産として計上するということは、その金額に見合った価値(将来の便益)があるということに他ならない。 したがって、将来減算一時差異のうち、将来の税額負担を軽減する効果がない部分については繰延税金資産を計上することができないのである。 では、具体的にどのような場合に将来の税額負担を軽減する効果がないと判断するのであろうか。最も理解しやすい例としては、毎期継続的に当期損失を計上し、課税所得が発生していない場合が挙げられる(【図4】参照)。 【図4】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【図4】のように、企業の状況に応じて繰延税金資産の回収可能性(将来の税額負担を軽減する効果の有無)について検討しなければならないが、実務上その判断には様々な将来の不確定要素を考慮する必要があるため、繰延税金資産の回収可能性が論点になりやすいのである。 このような多くの判断を要する会計処理には一定の指針が必要であることから、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(企業会計基準適用指針第26号)」(以下、「回収可能性適用指針」という)が企業会計基準審議会より公表されている。 繰延税金資産の回収可能性について理解を深めるためには必須の指針であるため、次回は回収可能性適用指針について概括的に説明することとしたい。 (了)

#No. 253(掲載号)
#田中 良亮
2018/01/25

税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第23回】「高齢者向け施設の概要と留意点」

税理士が知っておきたい [認知症]と相続問題 〔Q&A編〕 【第23回】 「高齢者向け施設の概要と留意点」   クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎   【設問20】 私の父は、5年前から認知症の症状が出始めましたが、昨年あたりから症状が次第に悪化し、今では常時の付き添いが必要な状態となりました。 これまでは同居する私たち家族が交代で身の回りの世話をしてきましたが、近い将来、父を高齢者向け施設に入居させることを検討しています。 認知症高齢者を家族に持つ者として、どのようなことに注意したらよいでしょうか。   1 高齢者向け施設にも様々な種類がある 高齢者と住まいをめぐる問題は、非常に複雑な状況にある。 日本の伝統的な家制度のもとでは、高齢者となってからは、身の回りの世話をしてくれる親族とともに同居して生活するケースが多かったといえる。しかし、長寿化や婚姻率の低下が進む現代社会では、ひとくちに高齢者と言っても、心身の状況や資力は人それぞれであり、ライフスタイルや余生の過ごし方に関する本人・家族の希望も多様化している。 このため、身近な親族がおらず独居生活を送る、あるいは、いわゆる「老人ホーム」に入居して余生を過ごすというケースも既に一般的なものとなっている。 そのような現状を踏まえ、現在では、多様なニーズに対応すべく、各種の根拠法令に基づく多種多様な高齢者向け施設が運用されている。 そこでまず、【設問20】を解説する前提として、現在の代表的施設について概略を整理しておく。 【代表的な高齢者向け施設】   2 入居に際しての一般的注意事項 高齢者向け施設は、高齢者自身の生活の本拠となり、同時に、介護する家族にとっても自身の生活や仕事のあり方に大きな影響を与えるものとなる。 そのため、いったん入居や利用を始めれば、後日に契約の解約・清算を行って利用を中止し、代わりに新たな施設を選定していくことは相当の労力を要する場合が多い。 そこで、入居先の検討・契約にあたっては、次のような事項を十分に確認したうえで慎重に行うべきである。 その他の一般的な注意事項については、下記サイトの解説が参考になる。   3 入居中に起こり得る事故・トラブルについて 高齢者施設の入居・利用に際して起こり得る事故・トラブルとしては、どのようなものがあるか。 認知症高齢者自身が原因となるもので実務上よく見受けられるものは、 ①他の入居者に対する暴言・暴力、 ②施設スタッフに対する暴言・暴力、 ③施設を抜け出しての徘徊、他人の居室への侵入、 ④施設内での転倒・転落、誤嚥等の事故といったものである。 このうち、①~③のような迷惑行為については、これによる被害の程度が大きければ損害賠償の問題にも発展する。 まずは本人及び家族に対して、施設運営者から再発防止のための注意がなされることが大半であろう。ただし、本人の認知能力に問題があることから、本人に何度よく注意したとしても限界があるというのが実情である。 迷惑行為が繰り返され、改善がみられない場合には、施設からの退去を求められる可能性もあり得る。また、最悪の場合、被害者側が原告となり、認知症高齢者と施設運営者とをあわせて被告とする民事訴訟が提起されることもあり得る。 決定的な予防策をとることはなかなか困難であるが、家族が施設側スタッフと綿密なコミュニケーションを取り、改善に向けた対策を検討していくほかないであろう。 (了)

#No. 253(掲載号)
#栗田 祐太郎
2018/01/25

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例21】株式会社東芝「当社株式の特設注意市場銘柄及び監理銘柄(審査中)の指定解除に関するお知らせ」(2017.10.11)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例21】 株式会社東芝 「当社株式の特設注意市場銘柄及び監理銘柄(審査中)の指定解除に関するお知らせ」 (2017.10.11)   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、株式会社東芝(以下「東芝」という)が平成29年10月11日に開示した「当社株式の特設注意市場銘柄及び監理銘柄(審査中)の指定解除に関するお知らせ」である。 この連載で同社の開示を取り上げるのは、今回で4回目になる(【事例1】の平成27年11月17日「当社子会社であるウェスチングハウス社に係るのれんの減損について」、【事例11】の平成28年12月27日「CB&Iの米国子会社買収に伴うのれん及び損失計上の可能性について」、【事例16】の平成29年5月15日「2016年度通期業績見通しに関するお知らせ」に続いて)。 同社は、東京証券取引所と名古屋証券取引所(以下「両取引所」という)により、内部管理体制等について改善の必要性が高いと認められたため、平成27年9月15日から特設注意市場銘柄に指定されていたが、内部管理体制について「相応の改善がなされたと認められたため」、平成29年10月12日に指定が解除されることになったという内容である。   2 内部統制監査の結果は不適正意見だったが 両取引所が、東芝の内部管理体制について「相応の改善がなされた」と判断した根拠となったのは、東芝が両取引所に対して平成29年3月15日に提出した内部管理体制確認書である。しかし、監査法人による平成29年3月期の内部統制監査の結果は不適正意見だった。 東芝による内部統制報告書は、平成29年3月31日現在の財務報告に係る内部統制は有効であると表示していた。それに対して、監査法人は、東芝の平成29年3月31日現在の財務報告に係る内部統制は、開示すべき重要な不備があり、有効ではないため、東芝による内部統制報告書の表示は不適正であると意見表明したのである(東芝は平成29年8月10日に「財務報告に係る内部統制監査報告書における不適正意見に関するお知らせ」を開示)。 監査法人が平成29年3月31日において存在すると指摘した開示すべき重要な不備は、当然、平成29年3月15日においても存在しており、その時点において内部統制は有効でなかったはずだが、両取引所は、その時点で提出された内部管理体制確認書を見て、内部管理体制について「相応の改善がなされた」と判断したことになる。 「監査法人が内部統制を有効でないと判断しているのに、なぜ?」と思われるかもしれないが、両取引所の判断は、「あり得る」判断である。なぜなら、両取引所の上場審査基準において、内部統制監査報告書の適正意見は求められていないし(監査法人に内部統制が有効でないと判断された会社の新規上場は、規則上、一応「あり得る」)(注)、上場廃止基準においても、内部統制監査報告書の不適正意見は要件とされていないからである(監査法人に内部統制が有効でないと判断されても、上場廃止となるわけではない)。 (注) 他の証券取引所に上場している会社の場合、内部統制監査の結果が意見不表明でないことが求められる(東京証券取引所・有価証券上場規程205条7号d(b)・212条6号d(b))。   3 本当に公正な判断がなされたのか? しかし、両取引所の判断が「あり得る」判断であったとしても、「やはり東芝側に立った判断だったのでは?」という疑念は残るだろう。公正な判断だったのか、それとも、やはり東芝側に立った判断だったのか、本当のところはわかり得ない。 東芝の内部管理体制確認書の審査を行った日本取引所自主規制法人の理事長(金融庁長官を務めたこともある人物)が、雑誌等でその審査について発言されているのだが(「文藝春秋」平成29年12月号・170~177頁や「週刊東洋経済」2012年12月2日号・48~49頁)、筆者はそれを読む前、「監査法人が指摘する内部統制上の不備は認識しているが、審査の結果、上場会社として最低限の内部管理体制は認められた」といった、監査法人の意見を踏まえた上で公正な審査を行った結果であるという発言をされているのだと予想していた。 しかし、そうではなかった。監査法人を批判する発言を続けたうえで(元金融庁長官でありながら、監査制度についてよく理解されていないようである)、ついには次のような監査制度を否定する発言をされているのである(「文藝春秋」平成29年12月号・176頁)。こうした発言に真実が映し出されているように見えるのだが。 元金融庁長官・日本取引所自主規制法人理事長によるこうした発言こそ、資本市場のあり方を歪める危険なもののはずである。 (了)

#No. 253(掲載号)
#鈴木 広樹
2018/01/25
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