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《速報解説》 法人税法における収益認識に関する取扱い、返品調整引当金の廃止等会計基準案を受け見直し~平成30年度税制改正大綱~

《速報解説》 法人税法における収益認識に関する取扱い、 返品調整引当金の廃止等会計基準案を受け見直し ~平成30年度税制改正大綱~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年12月14日、自由民主党と公明党は、「平成30年度税制改正大綱」を公表した。 企業会計基準委員会は、「収益認識に関する会計基準(案)」(企業会計基準公開草案第61号)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第61号)を公表し、基準化に向けて審議をしているところである。 実務では、法人税法における収益認識に関する取扱いの動向にも関心が高まってきたところである。 そこで、本稿は、「平成30年度税制改正大綱」のうち、収益認識に関する取扱いについて述べるものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 法人税における収益の認識等に関する措置 法人税における収益の認識等に関して、次の措置が講じられる予定である(89~91ページ)。 1 収益の額 2 収益が属する事業年度 資産の販売等に係る収益の額は、原則として目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入することを法令上明確化する。 資産の販売等に係る収益の額につき一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って上記の日に近接する日の属する事業年度の収益の額として経理した場合には、上記にかかわらず、当該資産の販売等に係る収益の額は、原則として当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入することを法令上明確化する。 3 返品調整引当金 返品調整引当金は廃止する。 平成30年4月1日において返品調整引当金制度の対象事業を営む法人について、平成33年3月31日までに開始する各事業年度については現行どおりの損金算入限度額による引当てを認めるとともに、平成33年4月1日から平成42年3月31日までの間に開始する各事業年度については現行法による損金算入限度額に対して1年ごとに10分の1ずつ縮小した額の引当てを認める等の経過措置を講ずる。 4 延払基準 長期割賦販売等に該当する資産の販売等について延払基準により収益の額及び費用の額を計算する選択制度は廃止する。 平成30年4月1日前に長期割賦販売等に該当する資産の販売等を行った法人について、平成35年3月31日までに開始する各事業年度について現行の延払基準により収益の額及び費用の額を計算することができることとするとともに、平成30年4月1日以後に終了する事業年度において延払基準の適用をやめた場合の繰延割賦利益額を10年均等で収益計上する等の経過措置を講ずる。 ファイナンス・リース取引並びに関西国際空港及び大阪国際空港に係る公共施設等運営権の設定の対価については、現行どおりとする。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 248(掲載号)
#阿部 光成
2017/12/19

《速報解説》給与所得控除及び基礎控除の見直し~平成30年度税制改正大綱~

 《速報解説》 給与所得控除及び基礎控除の見直し ~平成30年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   先週14日、与党による平成30年度税制改正大綱が公表された。 個人所得課税については、「働き方改革」を後押しする観点から、特定の収入にのみ適用される給与所得控除と公的年金等控除が引き下げられる一方、どのような所得にも適用される基礎控除が引き上げられる。 以下、給与所得控除と基礎控除の見直しについて解説を行う。なお、公的年金等控除の見直しについては他稿をご参照いただきたい。   【1】 給与所得控除の見直し (1) 給与所得控除の概要と現在の制度 給与所得の金額は、給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いて求められる(所法28②)。 この算式から明らかなように、給与所得控除は、所得税の課税ベースを自動的に引き下げる性質のものである。 給与所得 = 給与等の収入金額 - 給与所得控除額 平成24年度及び平成26年度の税制改正により、給与所得控除の上限額は、平成25年分の所得税から段階的に引き下げられている(所法28③六)。 〈各年における給与所得控除の上限額の推移〉 (注1) 住民税では、平成29年分に適用 (注2) 住民税では、平成30年分以後に適用 (2) 見直しの概要 給与所得控除について、次の見直しを行うことが示された。 〈給与所得控除の見直し〉・・・平成32年分以後 ① 控除額を一律10万円引き下げる。 ② 上限額が適用される給与等の収入金額を850万円、上限額を195万円に引き下げる。 見直しの結果、給与所得控除額は次のとおりとなる。   【2】 基礎控除の見直し 基礎控除については、次の見直しを行うことが示された。 〈基礎控除の見直し〉・・・平成32年分以後 ① 控除額を一律10万円引き上げる。 ② 合計所得金額2,400万円超2,500万円以下の個人:控除額が逓減 ③ 合計所得金額2,500万円超の個人:適用なし 見直しの結果、基礎控除の額は次のとおりとなる。   【3】 所得金額調整控除 今回の見直しについては、子育てや介護に対して配慮する観点から、同一世帯内に23歳未満の扶養親族又は特別障害者控除の対象となる扶養親族等がいる者について、負担増を生じさせない措置が講じられる。 具体的には、給与等の収入金額850万円を超える居住者が、以下の(ア)から(ウ)に該当する場合には、総所得金額の計算において給与所得の金額から下記〈調整額〉の金額が控除される。 +      【4】 本改正に伴う調整措置(配偶者控除等の所得基準額の調整) 給与所得控除の引下げ及び基礎控除の引上げに伴い、給与所得控除及び基礎控除の額等を踏まえて設定されている金額基準や控除額等について次の調整が行われる。 (※1) 控除額の基礎となる配偶者の合計所得金額の区分も10万円ずつ引き上げられる。 (※2) 申告期限内の電子申告等の要件を満たした場合には、控除額が65万円になる特例が設けられる。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 248(掲載号)
#篠藤 敦子
2017/12/19

《速報解説》小規模宅地等の計算特例、家なき子・貸付事業用宅地等に除外要件を追加~平成30年度税制改正大綱~

 《速報解説》 小規模宅地等の計算特例、 家なき子・貸付事業用宅地等に除外要件を追加 ~平成30年度税制改正大綱~   税理士法人トゥモローズ 代表社員 税理士 角田 壮平   1 はじめに 平成29年12月14日に公表された平成30年度税制改正大綱において、相続税における小規模宅地等の特例の見直しが盛り込まれた。 具体的には、 の3項目である。   2 改正の背景 家なき子については、生前に相続人が親族などに自己の持ち家を売却するなどして適用可能な状態を意図的に作出し、本来の政策目的に沿っていないとの指摘を是正するための改正である。 また貸付事業用宅地等の見直しについては、一時的に現金を不動産に換え、特例を適用して相続税負担を軽減しているケースを封じるために見直されることとなった。 最後の介護医療院とは、平成30年に創設される新しい形態の介護保険施設であり、新たな介護療養病床の医療機能を維持し、生活施設としての機能を兼ね備えた施設である。相続開始前に当該介護医療院に入所した被相続人について、病院や老人ホームに入所した場合等と整合性を担保するための改正と考えられる。   3 改正の内容 (1) 家なき子特例の見直し ① 現行の制度 家なき子特例の現行制度は、被相続人に配偶者又は同居相続人がいない場合において、その宅地等を取得した相続人等が相続開始前3年以内に自己又は自己の配偶者の所有する家屋に居住せず、かつ、当該宅地等を相続税の申告期限まで所有していたときは、被相続人の居住する宅地等につき330㎡まで80%の減額が認められている。 現行制度では、例えば、相続開始の5年前に相続人が所有する家屋を親族に売却等することにより、その相続人が家なき子特例の適用対象者に該当させることが可能となる。 ② 改正案 持ち家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から、次に掲げる者を除外する。 ③ 今後の留意点 上記②(イ)に該当する者は、今後、引越し等をし、「上記(イ)に掲げる家屋」及び「自己又は自己の配偶者の所有する家屋」以外に居住した場合において、3年経過後に相続が開始したときは、家なき子特例の適用が可能となるであろう。また、上記②(ロ)に該当する者が家なき子特例の適用を受けるためには、相続開始前までに「上記(ロ)に掲げる家屋」以外の家屋に引越し等をする必要があるだろう(ただし、上記②(イ)に該当する者は特例の適用対象外となる)。 (2) 貸付事業用宅地等の見直し ① 現行の制度 貸付事業用宅地等の現行制度は、被相続人等がその宅地等で貸付事業をしていた場合において、その宅地等を取得した相続人が相続税の申告期限までにその貸付事業を継続したときは、当該貸付事業用宅地等につき200㎡まで50%の減額が認められている。 例えば、相続開始の1ヶ月前に購入した貸付事業用宅地等であっても、申告期限まで所有及び事業継続していれば特例の適用は可能となる。 ② 改正案 貸付事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等(相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者が当該貸付事業の用に供しているものを除く)を除外する。 ③ 今後の留意点 改正案における事業的規模とは、所基通26-9(いわゆる「5棟10室基準」)が判断基準になるものと想定される。なお、下記4の適用時期にある通り、平成30年4月1日前に購入した貸付事業用宅地等については、被相続人の貸付規模が問われることはないため、駆け込みで賃貸物件等を購入するケースが増えるであろう。これに対し、平成30年4月1日以降に貸付事業に供した宅地等については、3年縛り(貸付期間及び事業的規模期間)が適用されることとなるため注意が必要だ。 (3) 介護医療院 介護医療院に入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等について、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして本特例を適用する。   4 適用時期 上記の改正は、平成30 年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用する。ただし、上記3(2)の改正は、同日前から貸付事業の用に供されている宅地等については、適用しない。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 248(掲載号)
#角田 壮平
2017/12/15

《速報解説》 一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し~平成30年度税制改正大綱~

 《速報解説》 一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し ~平成30年度税制改正大綱~   税理士 菅野 真美   平成29年12月14日に公表された平成30年度税制改正大綱(与党大綱)では、一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し案が明記された。以下では大綱の記載をもとに、改正内容と理由、改正前後の対応について解説する。   (1) 一般社団法人等に対して贈与等があった場合の贈与税等の課税の見直し ① 一般社団法人等の特徴 一般社団法人は、平成20年12月1日に施行された「一般社団法人及び一般社団法人に関する法律」に基づいて設立される法人である。その特徴として、資本金に相当する出資が不要であり、設立時に2人以上の社員がいれば設立が可能である。 同時期に一般財団法人の設立も可能となったが、こちらは300万円以上の財産の拠出が求められ、一般社団法人よりも多くの役員等の確保が必須であることから、設立件数は一般社団法人と比較すると少ない。公益社団法人や公益財団法人は、一般社団法人等のうち公益認定を受けたものである。 一般社団法人等のように出資が存在しない法人のことを「持分の定めのない法人」という。この一般社団法人等に財産を無償で提供した場合、法人側では持分がないことから資本取引となることはなく、受贈益について、法人税課税される。なお、公益法人や、非営利型一般社団法人等の場合は法人税課税がされないことが原則である。 ② 現行の租税回避防止規定 しかし、この一般社団法人等の特徴を利用した過度の贈与税や相続税の節税を防止するために相続税法66条4項で、持分の定めのない法人に対し財産の贈与又は遺贈があった場合において、その贈与又は遺贈により贈与又は遺贈をした者の親族等の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときについては、その法人を個人とみなして、これに贈与税又は相続税を課するとされている。法人税との2重課税となった部分については、法人税相当額を控除して調整される。 そして、相続税法施行令33条3項において、次のような要件を満たすときは、不当に減少する結果となると認められないとされた。 相続税法施行令においては、不当に減少する結果と認められない要件(白)を定めており、相続税法においては、不当に減少する結果となる場合(黒)は、法人に贈与税や相続税を課するとされ、白以外がすべて黒と読めず、グレーゾーンが曖昧であることから、実際に66条4項で課税される事案が頻繁に生じたということは確認されていなかった。 ③ 改正案 大綱における改正案を確認するに、おそらく、現行の相続税法施行令33条3項の要件のうち、いずれかを満たさない場合は贈与税等が課税されることになると改正されると考える。そうなった場合、これは、今までグレーゾーンであるような行為を行った一般社団法人等については、一律、黒であるとして贈与税等を課するという非常に厳しい改正である。 なお、この改正は平成30年4月1日以降に贈与又は遺贈により取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用される。   (2) 特定の一般社団法人等に対する相続税の課税 ① 現行税制での節税策 一般社団法人等は持分のない法人であることから、設立出資時等の財産の贈与について、法人側において原則は、法人課税であり、例外的に贈与税等の課税が行われる制度である。 しかし、いったん一般社団法人等に財産が移転した後、贈与者の相続が生じた場合も持分のない法人であることから一般社団法人等に移転した財産を取り込んで相続税課税することができず、この点を利用した相続税の節税策も散見された。 ② 改正案 大綱の改正案によると、特定一般社団法人等の理事である者(相続開始前5年以内のいずれかの時において特定一般社団法人等の役員であった者を含む)が死亡した場合には、次の算式(注)で計算した金額に相当する金額の財産について被相続人から遺贈により取得したものとみなして特定一般社団法人等に相続税が課されることになる。ただし、特定一般社団法人等について既に贈与税が課された場合は、その贈与税の額を控除して計算する。 (注) 下記の算式が一部表示されない不具合が生じておりました。深くお詫び申し上げます。 おそらく純資産額は相続時の一般社団法人の財産を相続税評価額で計算することになると考えられるが、時価と簿価の差額に対する法人税額控除が認められるかどうかは疑問である。また、特定一般社団法人等は、被相続人の配偶者や一親等の血族に該当しないことから、相続税の2割加算の対象になると考える。 ここで「特定一般社団法人等」とは、次の要件のいずれかを満たす一般社団法人等をいう。 また「同族役員」とは、一般社団法人等の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等内の親族その他当該被相続人と特殊関係がある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)である。3親等であることから曾祖父母、曾孫、おじ・おば、おい・めいは含まれるが、いとこは含まれない。「特殊関係のある者」というのは被相続人が会社役員となっている会社の従業員等であるが、この中に取引先や顧問税理士は原則的には含まれないと考える。 この改正案は、平成30年4月1日以後の一般社団法人等の役員の死亡に係る相続税について適用するが、平成30年3月31日以前に設立された一般社団法人等については、平成33年4月1日以後の一般社団法人等の役員の死亡に係る相続税について適用し、平成30年3月31日以前の期間は、特定一般社団法人等の要件となる2分の1を超える期間に含められない。 ③ 新制度への対応 改正案による新たな制度への対応としては、特定一般社団法人等になることを前提に同族役員の数を増やして、1人当たりの純資産額を少なくして相続財産に入れるという方法をとることが考えられる。しかし理事を増やすことにより運営が難しくなることも考えられる。 また、同族役員の数を減らして特定一般社団法人等の要件を満たさないようにすることも考えられる。そのために、相続が当分起きないことが予想される若い世代の親族へ理事を交代することも考えられる。 既存の一般社団法人等については、平成33年3月31日までの同族役員の相続については除外されるが、贈与をする日を決めることはできても相続する日を決めることはできない。平成30年3月31日までの期間は2分の1を超える期間に含まれないことから、平成30年3月31日までに同族役員の数を減らすという対応が可能であるならば、手堅い方法である。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 248(掲載号)
#菅野 真美
2017/12/15

《速報解説》 平成30年度税制改正大綱(与党大綱)が公表される~事業承継税制は2027年末までの特例で要件緩和、給与所得控除等見直しは他控除にも影響、賃上げ・設備等投資強力推進の税制措置、一般社団・小規模宅地特例に係る節税防止策など織り込む~

《速報解説》 平成30年度税制改正大綱(与党大綱)が公表される ~事業承継税制は2027年末までの特例で要件緩和、 給与所得控除等見直しは他控除にも影響、 賃上げ・設備等投資強力推進の税制措置、 一般社団・小規模宅地特例に係る節税防止策など織り込む~   Profession Journal編集部   自由民主党・公明党は昨日(平成29年12月14日)、「平成30年度税制改正大綱」(与党大綱)を公表した。 今回の大綱では安倍内閣が「新しい経済政策パッケージ」で示した「生産性革命」と「人づくり革命」の断行を前提に、企業に対しては生産性向上のための設備投資と持続的な賃上げを強力に後押しし、中小企業の代替わりを促進するための税制上の措置が講じられた。また昨年の配偶者控除等の見直しに続き「働き方改革」を後押しする観点から、基礎控除や給与所得控除等の個人所得課税を見直し、さらに経済社会のICT化の急速な進展を受け、税務手続電子化の一層の促進に向けた措置等が示されている。 以下、特に実務への影響の大きい改正事項を紹介する。なお、例年同様、重要な改正事項については個別に速報解説を順次公開していくので、そちらも合わせて参照されたい。 また、こちらの資料リンク集ページも今後更新を重ねていくので、ログインの上、ブックマークボタンを押すなどして確認できるようにしていただきたい。   〇事業承継税制、10年限定の特例で要件緩和へ 平成21年の制度創設以降、これまで何度も適用要件等が見直されてきた「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予制度」、いわゆる事業承継税制は、平成30年1月1日から平成39年(2027年)12月31日までの間に贈与等により取得する財産に係る贈与税又は相続税について、次の特例措置が講じられる(大綱p45)。 つまり以下で紹介する事項は、承継時までの経営見通し等を示した「特例承継計画(仮称)」を都道府県に提出し認定を受けた特例認定承継会社(仮称)のみ適用できる納税猶予の特例制度という位置づけである(この計画作成に当たっては税理士等の認定経営革新等支援機関の助言・指導が必要)。 まず入口の要件の抜本緩和として、特例認定承継会社において事業承継税制を適用する場合、後継者が取得した全ての非上場株式に係る課税価格に対応する贈与税又は相続税の全額について、その後継者の死亡の日等まで納税が猶予される。 雇用確保要件(5年間平均8割維持)については、「現行の事業承継税制における雇用確保要件を満たさない場合であっても、納税猶予の期限は確定しない」と明記。この場合、その満たせない理由を記載した書類の提出を要し、当該理由が正当なものと認められない場合は認定経営革新等支援機関からの助言・指導を受けることとされている。 また、複数の承継パターンにも対応する。後継者が代表者以外の者から贈与等により取得する特例認定承継会社の非上場株式についても、特例承継期間(仮称)(5年)内に申告期限が到来するものに限り特例の対象となる(この点、現行の事業承継税制についても複数の贈与者からの贈与等が対象とされる)。さらに後継者が贈与者の推定相続人以外の者(20歳以上)であり、贈与者が60歳以上の場合には相続時精算課税制度の適用を受けることができる。 次に、承継後の負担の抜本軽減として、特例認定承継会社が特定承継期間(5年)経過後に、赤字や売上減少が続く等一定の経済環境の変化を理由に、その非上場株式を譲渡したり、合併による消滅や解散する場合には、譲渡等時点における株式価値で税額を再計算し、差額については免除される措置が手当てされる。 これまで事業承継税制はその要件の厳しさから適用を躊躇する企業も多かったが、今回の改正案は適用後の経営等環境変化にも配慮するものとなっており、また複数のパターンによる承継策にも対応していることから、特例制度の適用を一考する価値はあると思われる。この場合、特例承継計画の作成などの場面で税理士の活躍する場が出てくるだろう。   〇所得控除の適正化は平成32年から いわゆるフリーランスや起業、在宅で仕事を請け負う子育て中の女性等、働き方の多様化を支援する観点から、平成32年分以後の所得税(及び平成33年度分以後の個人住民税)より、基礎控除、給与所得控除及び公的年金等控除の見直しが行われる。 まず、上記のフリーランス等による収入には給与所得控除・公的年金等控除が適用されないことから、給与所得控除・公的年金等控除の一部をすべての納税者に適用される基礎控除に振り替えるという考えにより、基礎控除の控除額を一律10万円引き上げ、合計所得金額2,400万円超より控除額を次のように段階的に逓減、2,500万円超で適用不可とする(大綱p19)。 ・合計所得金額が2,400万円以下である個人・・・48万円 ・合計所得金額が2,400万円超2,450万円以下である個人・・・32万円 ・合計所得金額が2,450万円超2,500万円以下である個人・・・16万円 ・合計所得金額が2,500万円超である個人・・・適用なし 給与所得控除については、上記の基礎控除引上げと連動して控除額を一律10万円引き下げ、控除の上限が適用される給与等の収入金額を850万円(現行1,000万円)とし、その上限額を195万円(現行220万円)に引き下げる(大綱p17)。 給与収入850万円以下の世帯は基礎控除額との合計が103万円で改正による変動はなく、850万円超の世帯においても子育て世帯(※1)及び介護世帯(※2)に対しては負担増が生じないよう「所得金額調整控除」が適用される(大綱p20)。 (※1) 23歳未満の扶養親族が同一生計内にいる者 (※2) 特別障害者控除の対象者が同一生計内にいる者 なお、上記の給与所得控除の見直しに合わせ、特定支出控除において、その範囲に「直接必要な旅費等で通常必要と認められるもの」が追加され、単身赴任者の帰宅旅費について限度回数(月4往復)を撤廃する等の見直しが行われる。 また、かねてより指摘のあった高所得の年金受給者に対する課税の見直しとして、公的年金等控除は次の点が見直される。 ① 控除額を一律10万円引き下げる。 ② 公的年金等の収入金額が1,000万円を超える場合の控除額に195万5,000円の上限を設ける(現行は上限なし)。 ③ 公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が (イ) 1,000万円超2,000万円以下の場合・・・①②の見直し後の控除額から一律10万円引下げ (ロ) 2,000万円超の場合・・・①②の見直し後の控除額から一律20万円引下げ 今回の基礎控除及び給与所得控除の見直しにより、これらの控除額等を踏まえて設定されている他の控除等においては、制度上、調整が必要となる。 例えば、青色申告特別控除(現行65万円)は、給与所得者とのバランスに配慮し給与所得控除の最低保障額に設定されていることから、控除額が55万円に引き下げられる(基礎控除との合計は103万円で改正による変動なし)。なお、後述するように、電子申告等を行った場合には特別控除額が10万円上乗せされる措置が設けられる(大綱p21)。 他にも同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件を48万円以下(現行38万円以下)とするなどの調整も行われることから(大綱p21)、本改正の施行時には企業の源泉等実務への影響も大きくなることが予想される。   〇過度な相続税節税策への防止措置 今回の税制改正に向けた税制調査会における審議の中で、一般社団法人や小規模宅地等特例を使った租税回避が問題視され、それぞれ次のような対応がとられることとなった。 一般社団法人は株式会社等に比べ設立の手続が簡易で、かつ、企業の株式に当たる持ち分の概念がないことから、一族で支配する一般社団法人へ財産を移転させ、相続人となる親族が理事等になることで実質的に代々財産を受け継ぎ課税の機会を逃れるケースが広がっていた。 大綱では、現行規定の明確化を図るとともに、相続開始直前に同族役員が総役員数の2分の1超を占める等の特定の一般社団法人又は一般財団法人(公益社団法人等、非営利型法人その他一定の法人を除く。以下「特定一般社団法人等」という)の「同族役員」が死亡した場合、その特定一般社団法人等の純資産額を死亡時の同族役員(被相続人を含む)の数で除して計算した金額に相当する額を被相続人から遺贈により取得したとみなして、その特定一般社団法人等に相続税を課税するとした(大綱p49)。 この場合の「同族役員」とは、一般社団法人等の理事のうち被相続人、その配偶者又は3親等内の親族その他被相続人と特殊の関係がある者(被相続人が役員となっている会社の従業員等)をいう。この改正は平成30年4月1日以後の一般社団法人等の役員の死亡に係る相続税について適用される。 次に小規模宅地等特例においては、まず、「相続開始前3年以内に自己又は自己の配偶者の所有する家屋に居住したことがない者」がその他要件を満たす場合に特定居住用宅地等として課税価格が80%減額される(限度面積300㎡)、いわゆる「家なき子」の特例(措法69の4③二ロ)について、相続人が親族等に自己の持ち家を売却する等して意図的にこの状況を作出するケースがあるという指摘があった。 このため「相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者」及び「相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者」が、対象から除外される。 また、50%減額となる貸付事業用宅地等においても、この適用をねらい一時的に現金を不動産に換え貸付事業を行うケースを防止するため、「相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等」が対象から除外される(ただし、相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者がその貸付事業の用に供しているものを除く)。 これらの改正は平成30年4月1日以後の相続又は遺贈により取得する相続税より適用される(大綱p55)。 なお、貸付事業用宅地等をめぐっては、既報のとおり、相続税の申告期限後1年以内に宅地等を譲渡するケースがあること等について会計検査院からの指摘があったものの、今回の改正案ではその対応は見送られている。 相続税関係では他に、相続税申告書の添付書類として提出できる書類の範囲に、戸籍謄本を複写したもの等、被相続人のすべての相続人等を明らかにする書類が加わり、これにより本年5月に制度が開始された法定相続情報証明制度における法定相続情報一覧図の写しによる提出も可能となる(平成30年4月1日以後に提出する申告書から適用)(大綱p67)。 また農地に係る納税猶予制度について、一定の貸付けがされた生産緑地の適用を可能とし、三大都市圏の特定市以外の地域内の生産緑地について営農継続要件を終身(現行20年)とするなどの見直しが行われる(大綱p53)。 さらに、空き家対策として法務省が要望していた「土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置」、文部科学省が要望していた「特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度」の創設がそれぞれ明記された(大綱p50)。   〇「賃上げ及び生産性向上のための税制パッケージ」を存置 企業税制においては、生産性向上のための設備投資と持続可能な賃上げを強力に後押しする観点から、これらの取組みに積極的な企業の負担は軽減する一方、取組みに消極的な企業に対しては適用要件の見直しが行われる。 この方策の肝となる所得拡大促進税制は、大企業と中小企業それぞれに適応した税制へと改組され、設備投資や人材投資の要件が絡む構造となる。 まず大企業に向けては、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度において、①平均給与等支給額が前年度比3%以上増加し、②国内設備投資額が当期の減価償却費の90%以上である場合において、給与等支給増加額の15%の税額控除ができる。また「当期の教育訓練費の額」の「前期・前々期の教育訓練費の平均額」に対する増加割合が20%以上であるときは控除率が5%上乗せされ20%の税額控除が可能となる(当期の法人税額の20%を限度)(大綱p70)。 (※) 教育訓練費の定義については大綱p70-71を参照されたい。 中小企業に向けては、上記と同じ事業年度(H30.4.1~H33.3.31)において、平均給与等支給額が前年度比1.5%以上増加した場合に、給与等支給増加額の15%の税額控除が認められ、平均給与等支給額が対前年度比2.5%以上増加し、かつ、教育訓練費の対前年比10%増又は中小企業等経営強化法の経営力向上計画に係る要件をクリアした場合には控除額が10%上乗せされ25%となる(当期の法人税額の20%を限度)(大綱p73)。このように中小企業にも1.5%増という賃上げの数値要件が設けられた。 さらに大企業に対しては、賃上げ・設備投資を推進するため、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度において、以下のいずれの要件にも該当しない場合は、その事業年度については、一部の税額控除の適用対象から除外される(ただし所得金額が前事業年度以下の場合を除く)(大綱p72)。 ① 平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えること ② 国内設備投資額が減価償却費の総額の10%を超えること 適用除外となる税額控除は次の特別措置。 ① 研究開発税制 ② 地域未来投資促進税制 ※平成29年度改正で創設 ③ 情報連携投資等の促進に係る税制【新設】 ③の「情報連携投資等の促進に係る税制」は30年度改正で創設される特別措置であり、生産性向上の実現のための臨時措置法(仮称)の制定を前提に、認定を受けた革新的データ活用計画(仮称)に従い同法の施行日から平成33年3月31日までに間に一定の情報連携利活用設備の取得等を行った場合に30%の特別償却又は3%の税額控除が認められる。なお、この部分においても賃上げ要件が関係し、平均給与等支給額の対前年度増加率が3%以上の場合に5%の税額控除が認められる。この特別措置は、いわゆるIoTやAIシステム等を導入し、データの連携・高度利活用することで生産性やセキュリティの向上を図ることを目的とする(大綱p71)。 このように、大企業が上記の特例適用を検討する際は、賃上げ及び国内への設備投資に関しこれまで以上の積極性が求められることになるが、適用した場合の恩恵も大きい。措置ごとに検討するのではなく、パッケージとしての税制措置全体による企業への効果という判断が求められよう。 なお中小企業の設備投資を促進する施策として、先端設備等導入計画(仮称)に基づき行った対象設備投資への固定資産税の軽減措置(最初の3年間、課税標準のゼロ以上2分の1以下の範囲で自治体の条例で規定)が講じられる(大綱p57)。 法人税関連では他に、経済産業省が要望していた「特定事業再編を行う法人の株式を対価とする株式等の譲渡に係る所得の計算の特例」が創設(大綱p75)。一方で、環境関連投資促進税制、次世代育成支援対策資産の割増償却(いわゆる「くるみん税制」)、雇用促進税制のうち同意雇用開発促進地域に係る措置は、それぞれ適用期限(H30.3.31)の到来をもって廃止となる(所得税も同様)。 なお、平成30年3月までに最終基準化することが予定とされている「収益認識に関する会計基準」への対応により、法人税における収益の認識等について、返品調整引当金制度の廃止などを含む措置が講じられている(大綱p90)。 平成30年3月31日で適用期限を迎える法人税関係の特別措置について、まず、交際費課税制度は損金不算入等の現行制度をすべて2年延長(平成32年3月31日まで)。中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例及び中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻し還付の不適用措置もそれぞれ平成32年3月31日までの2年延長が決まった。   〇大法人は平成32年4月1日以後開始事業年度から電子申告を義務化 国税庁が6月に公表した「税務行政の将来像」や政府税制調査会による「中間報告②」(11月公表)の流れを受け、今回の大綱でも法人・個人共に、税務手続の電子化に向けた改正が示されている。 まず、企業の生産性向上を推進する観点から、申告データの円滑な電子提出に向けた環境整備を進めつつ、大法人のe‐Taxによる電子申告(法人税、地方法人税及び消費税の確定申告、中間申告及び修正申告)が平成32年4月1日以後開始事業年度から義務化される(大綱p79、p100)。 ここでいう大法人とは、内国法人のうち事業年度開始の時において資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人並びに相互会社、投資法人及び特定目的法人をいう。ただし、電子通信回線の故障や災害等一定の理由による場合には書面での提出を認める。 上記の開始に向けた環境整備として提出情報等のスリム化やデータ形式の柔軟化、提出先の一元化などが示されているが、企業側も既存システムへの改修等が必要になると推察され、官民ともその影響は小さくない。 次に個人については、上述した所得控除の見直しによる控除額の引下げと合わせ、青色申告者(自営業者や個人事業主)が電子帳簿保存又はe‐Taxによる電子申告を行う等要件を満たした場合に、青色申告特別控除(改正後55万円)に、控除額が10万円上乗せされる措置が講じられる(複式簿記によらない場合の10万円控除については上乗せなし)(大綱p21)。過去、平成19年から24年にかけて、個人が電子申告を行った場合に3,000~5,000円の税額控除が行われていたが、今回の上乗せ措置は、個人の電子申告移行のきっかけとしてインパクトのあるものといえよう。   〇土地住宅関係措置の延長等 本年12月31日が適用期限となる「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等の特例」及び「特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の特例」は適用期限を2年延長(平成31年12月31日まで)。また「特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例」は一部要件を見直し平成31年12月31日まで2年延長。「大規模な住宅地等造成事業の施行区域内にある土地等の造成のための交換等の場合の譲渡所得の課税の特例」は廃止となる(大綱p30)。 新築の認定長期優良住宅に係る固定資産税の税額の減額措置は平成32年3月31日まで2年延長(不動産取得税に係る特例措置も同様)、耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修を行った住宅に係る固定資産税の減額措置は一部床面積要件を見直しこちらも平成32年3月31日まで2年延長となった(大綱p61)。さらに特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置も2年延長(認定低炭素住宅に係る軽減措置も同様)(大綱p54)。   〇その他 上記以外の改正事項としては、消費税の簡易課税制度について、農林水産業のうち軽減税率が適用される食用の農林水産物を生産する事業を第2種事業としそのみなし仕入率が80%(現行70%)とされる(平成31年10月1日を含む課税期間から)(大綱p107)。また地方消費税の清算基準における統計データ・カバー率等の見直しが行われ(大綱p99)、東京都の小池知事からは「到底容認できない」とのコメントが発表されている。 印紙税関係では、不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置が2年(平成32年3月31日まで)延長され(大綱p55)、預貯金通帳等に係る印紙税の納付特例について、毎年税務署長へ承認申請書を提出し承認を受ける必要があったが、その申請内容に変更がない場合には再度の承認申請書の提出を不要とする措置が講じられる(平成30年4月1日以後に作成する預貯金通帳等に係る承認より適用)(大綱p68)。毎年実務を担当していた方にとっては朗報だ。 国際課税では恒久的施設(PE)の定義について、国際的スタンダード(BEPS報告書・新OECDモデル租税条約)に合わせた見直し案が示された(大綱p108)。 また新設の税制として、森林吸収源対策に係る地方財源として「森林環境税(仮称)」(大綱p32)(年額1,000円)が平成36年(2024年)度から、観光財源の確保を目的とした「国際観光旅客税(仮称)」(大綱p92)(出国1回につき1,000円)が平成31年1月7日以後の出国から、それぞれ施行される。 たばこ税では加熱式たばこの課税区分が新設され、紙巻たばこの税率引上げ時期に合わせ平成30年10月から段階的に実施されることが決まった(大綱p96)。 (了)

#No. 248(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2017/12/15

《速報解説》 「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」がパブコメに~開示府令、税効果会計基準の改正案に対応~

《速報解説》 「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」がパブコメに ~開示府令、税効果会計基準の改正案に対応~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年12月14日、法務省は、「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」を公表し、意見募集を行っている。 これは、金融庁の「企業内容等の開示に関する内閣府令の改正案」(平成29年10月24日)と、企業会計基準委員会の「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(案)」(企業会計基準公開草案第60号、平成29年6月6日)及び当該税効果に関する改正案に対応する「財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」(平成29年10月13日)を受けたものである。意見募集期間は平成30年1月19日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 会社法施行規則の改正の内容 金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループによる「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告-建設的な対話の促進に向けて-」(平成28年4月18日)を受け、金融庁の「企業内容等の開示に関する内閣府令の改正案」(平成29年10月24日)では、株主総会日程の柔軟化のための開示の見直しとして、有価証券報告書における「大株主の状況」の記載時点を、事業年度末から、原則として議決権行使基準日へ変更することを提案している。 会社法施行規則改正案は、次のように会社法施行規則122条2項を新設するとともに、会社法施行規則の附則8条について所要の整備を行う予定である。 ◆会社法施行規則122条2項の新設   Ⅲ 会社計算規則の改正の内容 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(案)」(企業会計基準公開草案第60号、平成29年6月6日)では、繰延税金資産は投資その他の資産として表示し、繰延税金負債は固定負債として表示することとしているので、これに対応し、次のように改正することを提案している。   Ⅳ 適用時期等 施行期日は、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等の公表日程を踏まえ、定める。 次の経過措置が規定される予定である。 (了)

#No. 248(掲載号)
#阿部 光成
2017/12/15

プロフェッションジャーナル No.248が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年12月14日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.248を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/12/14

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第59回】「日本税理士会連合会の建議から租税法条文を読み解く(その2)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第59回】 「日本税理士会連合会の建議から租税法条文を読み解く(その2)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦     Ⅱ 税理士会等の建議権(承前) 前述のとおり、日本税理士会連合会(以下「日税連」ともいう)及び税理士会は、税理士法の定めにより、税務行政その他租税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、又はその諮問に答申することができる(税理士法49の11)。 税理士法49条の11は、税理士会の建議、答申等について規定した条文である。 税理士は、税務に関する職業専門家として、税務行政及び税制について、広い知識と深い見識を有するものであることから、税理士の自治的団体である税理士会に、その意見をまとめ、権限ある官公署に建議し、又はその諮問に答申することが認められているのである。 ここにいう、税務行政及び税制についての権限のある官公署とは、国税庁及びその下にある国税局、税務署若しくは都道府県、市町村及びその下にある税務公署並びに財務省主税局、総務省税務局などである。 建議できる事項は、税務行政に関する事項その他国税及び地方税又は税理士に関する制度についての事項である。 かかる建議の対象については、関税、とん税及び特別とん税に関する事項以外の一切の国税及び地方税に関する制度及びその執行並びに税理士に関する制度について建議することができるとする見解がある(日本税理士会連合会『現行税理士法逐条解説』140頁(第一法規1970))。 これに対し、建議の対象となる租税については、税理士法2条《税理士の業務》に規定する税理士業務の対象となる税目のすべてをいうとする見解もある(日本税理士会連合会『新税理士法要説〔6訂版〕』168頁(税務経理協会1999)、同『新税理士法〔4訂版〕』251頁(税務経理協会2015)、鳥飼重和監修『税理士の業務・権限・責任』174頁(中央経済社2002))。 やはり、税理士の属する税理士会の権利として建議が設けられていることと併せ考えれば、後者による説明の方が税理士法内部における整合性を保つことができると考えられよう。そのように考えると、都道府県法定外地方税なども、建議の対象からは除かれることになろう(坂田純一『新版実践税理士法』392頁(中央経済社2015))。 建議とは、自ら希望を申し出て開陳することであるが、権限のある官公署が、税理士会に対して、その税務行政その他国税若しくは地方税又は税理士に関する制度について諮問することもあり、税理士会は、その諮問について答申することもできるとされている。 このように税理士会に建議権があることは税理士法の定めるとおりであるが、税理士会の支部単位で建議をすることができるかについては疑義のあるところである。 この点、税理士法基本通達49の11-1は、「税理士会の支部は、税理士会内部の一機構にすぎず、税理士会の代表機関ではないから、支部限りで法第49条の11の規定による建議をすることはできない」とする。 (注) なお、平成14年の税理士法基本通達制定前の昭和31年8月27日付け官総6-187「改正税理士法の運用上の疑義について(建議等)」においては「官公署に対する建議は、だれに対しても禁止されてはいないから、税理士会支部が行った建議は、当該支部に所属する税理士会員有志の建議であると見ることはできると考える。」との注書きが付されていたが、上記通達では削除されている。 また、税理士会が会員となっている日税連が行った内容と異なる内容で、税理士会が建議できるか否かという問題もあるが、この点については、「日本税理士会連合会、すなわちすべての税理士会が決定した事項について、各税理士会はその決定に従って建議することが当然の事理である」と解説されているにとどまる(坂田・前掲書392頁)。 日税連では、税理士法49条の11に基づき、税制改正に関する建議書を毎年とりまとめている。税務に関する専門家として税制・税務行政の改善に努めることが税理士の社会的使命であり、責任であるとの認識の下で、同条に基づく立法提言を行っているのである。 具体的には、行政における立法提案担当者との懇談に加え、関係省庁との意見交換も踏まえて、建議書という形で立法提案を行っており、日税連では、「建議書の重要性や影響力が従来以上に増してきた」と認識されているようである(日税連は、「公平かつ合理的な税制の確立と申告納税制度の維持・発展に寄与することを希求」する立場から建議を行っていると説明している(日本税理士会連合会「平成29年度税制改正に関する建議書」1頁))。   Ⅲ 平成29年度税制改正に関する建議書 1 建議書における重要建議項目 ここからは、具体的な建議内容を確認してみよう。 例えば、日税連により、平成28年6月23日に発出された「平成29年度税制改正に関する建議書」では、「本建議書における重要建議項目」として、①「災害税制に関する基本法」の立法化について、②中小法人税制について、③消費税制について、④取引相場のない株式等の評価の適正化についての4項目を掲げ、これらを特に強く主張している。 そのうち、例えば、①「『災害税制に関する基本法』の立法化について」として、次のような建議を行っている。 そして、そうした背景を踏まえ次のように建議する。 上記の内容は、同建議書において、次のような表現により強調されてもいる。 2 平成29年度税制改正 (1) 災害対応税制の創設とその趣旨 自由民主党・公明党が平成28年12月8日付けで公表した「平成29年度税制改正大綱」は、上記の日税連の建議書を受けて、以下のような「災害に関する税制上の措置」を提示している。 そして、上記の税制改正大綱を踏まえて、平成29年度税制改正がなされた。同改正における災害関連規定の常設化(以下「災害対応税制」という)の趣旨については、立法担当者が次のように説明している。 このように、被災者に対する従来の税制の対応を述べた上で、この度の改正趣旨を説明する。 すなわち、今までも災害の際にはその都度様々な税制上の特例措置を設けてきたものの、税制上の対応が復旧や復興の動きに遅れることがないようにする観点から、一般化することなどが可能なところについては、あらかじめ立法上の措置を講じておこうとするものである。 このように、日税連の建議書における重要建議事項の4つのうちの1つが税制改正として実現しており、かくも高い確率で具体的な税制改正が実現している点をみれば、それだけ、日税連の建議が実効性の高いものであることを意味しているといってもよいと思われる。 (2) 災害対応税制の具体的内容 さて、災害対応税制の具体的内容について、代表的な取扱いを簡単に確認しておきたい。 (ア) 被災市街地復興土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の特例 上記の趣旨に則り、被災市街地復興土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合を特例の対象に追加している。 すなわち、災害関連規定の常設化に当たり、租税特別措置法31条の2《優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例》における「優良住宅地等のための譲渡」の範囲に、「土地開発公社に対する次に掲げる土地等の譲渡で、その譲渡に係る土地等が独立行政法人都市再生機構が施行するそれぞれ次に定める事業の用に供されるもの」が追加された(措法31の2②二の二)。 これは、東日本大震災の際、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律、いわゆる「震災特例法」によって講じられた措置と同様のものである(震災特例法11の5 ⑤)。 この措置は、災害からの復興を支援する観点から規定されたものであることから、災害からの復興のための市街地の整備改善等を目的とした事業が行われる場合に適用できることとされたのである。 具体的には、東日本大震災の際と同様に、災害が発生し、被災市街地復興特別措置法の枠組みである被災市街地復興土地区画整理事業又は住宅被災市町村における第二種市街地再開発事業が行われる場合に特例の適用ができることとされている。 (イ) 特定非常災害の場合の確定優良住宅地等予定地のための譲渡の予定期間の延長の特例 また、特定非常災害の場合の確定優良住宅地等予定地のための譲渡の予定期間の延長の特例にも改正がなされた。 この措置は、災害により、予定期間内に優良住宅地等のための譲渡に該当することが困難となった場合にその期限の延長を行うものであり、特定非常災害の指定により「被害者の権利利益の保全等を図るため、行政上の権利利益に係る満了日の延長」が行われることと同様に被災者の権利利益に係る期限の延長を行うものである。 すなわち、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律の枠組みである「特定非常災害に基因するやむを得ない事情」により、予定期間内に優良住宅地等のための譲渡に該当することが困難となった場合を期限延長の対象とすることとされたのである。 具体的には、確定優良住宅地等予定地のための譲渡に該当するものとして特例の適用を受けた土地等の譲渡につき、特定非常災害に基因するやむを得ない事情により、予定期間内における譲渡が困難となった一定の場合において、その予定期間の初日からその予定期間の末日後2年以内の一定の日までの期間内にその譲渡が優良住宅地等のための譲渡に該当することが確実であると認められることについて証明がされたときは、「予定期間の末日」を「予定期間の末日後2年以内の日であって税務署長が承認の際に認定した日の属する年の12月31日」まで延長することができることとされた(措法31の2⑦、措令20の2)。 なお、ここにいう「特定非常災害」とは、著しく異常かつ激甚な非常災害であって、その非常災害の被害者の行政上の権利利益の保全等を図ること等が特に必要と認められるものが発生した場合に指定されるものをいう(特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律2①)。 (ウ) 住宅ローン税額控除の継続適用及び重複適用 さらに、租税特別措置法41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》に規定する住宅借入金等特別控除(以下「住宅ローン控除」という)に関して、災害により居住の用に供することができなくなった場合の同控除の継続適用及び重複適用に係る改正がなされた。これは、非常にインパクトのあるものであるといえよう。 住宅ローン税額控除は、自己の居住用家屋の取得を促進する観点から措置されている租税特別措置であり、家屋を住宅の新築取得等の日から6月以内に自己の居住の用に供し、居住日以後その年の年末(その者が死亡した日の属する年又は家屋が災害により居住の用に供することができなくなった日の属する年にあっては、これらの日)まで引き続き居住の用に供している年に限り、その適用を受けることができることとされていた。 つまり、住宅ローン税額控除の適用を受けていた者が、災害により、その家屋を居住の用に供することができなくなった場合には、その居住の用に供することができなくなった日の属する年においては住宅ローン税額控除の適用を受けることができるが、その翌年以降は、住宅ローン税額控除の適用を受けることができないとされていたのである。 そこで、災害関連規定の常設化に当たり、災害の規模にかかわらず、一般的な災害により家屋を居住の用に供することができなくなった場合において、災害がなければその控除の適用を受けることができた期間については、継続して住宅ローン税額控除の適用を受けることができることとされたのである。 災害により家屋を居住の用に供することができなくなったような場合は、本人の責めに帰するところではない。 そうした場合にまで、「居住の用に供していない」ことをもって、住宅ローン税額控除の適用を認めないとすることは、要件として厳格すぎると考えられることを踏まえ、住宅ローン税額控除の残存期間について控除の適用を受けることができるという期待権に配慮する観点から、措置されたと説明されている(田名後正範=篠田和哉「租税特別措置法(所得税関係の住宅・土地税制関係)の改正」藤山智博ほか『改正税法のすべて〔平成29年版〕』188頁(大蔵財務協会2017))。 すなわち、従前家屋(住宅の新築取得等をして引き続きその個人の居住の用に供していた家屋をいう)が災害により居住の用に供することができなくなった場合において、居住年以後の控除期間の各年のうち、その居住の用に供することができなくなった日の属する年以後の各年につき、適用年とみなして、住宅ローン税額控除の適用を受けることができることとされたのである(措法41)。 (3) 小括 地震大国であり、また、毎年のように台風の被害等を受ける我が国において、これまで恒久的な災害対策税制が十分に整備されていなかったことの方がむしろ不思議であったといってもよかろう。 日税連の建議を基礎とした上記改正によって、住宅ローン税額控除をはじめ、災害に関連する多くの税制上の取扱いが恒久化されることになったのは、大きな前進であったといえよう。 (続く)

#No. 248(掲載号)
#酒井 克彦
2017/12/14

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第17回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第17回】   公認会計士 佐藤 信祐   (《第2章》 平成13年度税制改正) (6) 資本の部の金額の取扱い ① 概要 平成13年度税制改正では、資本積立金額、利益積立金額の抜本的な改正がなされている。具体的には、平成13年度税制改正前は、商法等の規定による金額をそのまま法人税法上も追認していたのに対し、平成13年度税制改正により、法人税法独自の計算を行うことになった。これは、【第5回】、【第6回】で解説したように、法人税法の観点から、資本・利益区分の原則を突き詰めたからであると考えられる。 なお、平成13年当時では、法人税法2条17号、18号に規定されていたが、その後の税制改正により、資本金の額と資本積立金額を合計して「資本金等の額」と表記の変更を行ったうえで、法人税法施行令8条にて資本金等の額、同令9条にて利益積立金額の計算のほとんどが委任されることになる。 なお、平成13年度税制改正により、法人税法2条17号柱書では、 と規定され、同条18号柱書では、 と規定された。 そして、『企業組織再編成に係る税制についての講演録集』52頁(日本租税研究協会、平成13年)では、 と解説されている。つまり、100から150を「減算」した場合には、△50になる。さらに、100から△150を減算した場合には、250になる。 このような資本積立金額、利益積立金額の計算の明確化により、債務超過会社の組織再編や平成22年度税制改正前の清算所得課税にそれぞれ影響を与えるようになった。 ② 合併 (ⅰ) 資本積立金額 平成13年度税制改正により、法人税法2条17号ハでは、合併を行った場合における資本積立金額の増加額について、以下のように規定された。 分かりにくいため、適格合併の場合と非適格合併の場合とに分けてみよう。 まず、適格合併の場合において、「次号ニに掲げる金額」とされているのは、後述するように、「合併法人が適格合併により被合併法人から引継ぎを受ける利益積立金額」を意味する。そのため、適格合併の場合には、移転資産の帳簿価額から①移転負債の帳簿価額、②被合併法人の利益積立金額、③合併により増加した資本の金額を減算した金額により、資本積立金額の増加額を計算することになる。すなわち、被合併法人の資本の金額と資本積立金額を合計した金額が、合併により増加する資本の金額と資本積立金額の合計金額となる。 なお、厳密には、③については、「資本の金額その他の政令で定める金額」も減算する必要があり、具体的には、法人税法施行令8条の2第2項において、(ⅰ)合併により増加した資本の金額、(ⅱ)合併により交付した自己株式の帳簿価額、(ⅲ)合併により交付した金銭の額と金銭及び合併法人株式以外の資産の価額と規定されている。このうち、(ⅰ)(ⅱ)は説明するまでもないと思われるが、(ⅲ)が規定されているということは、配当の代り金として交付したもの以外の合併交付金については、資本積立金額の減算要因になるという点は重要である。利益積立金額の計算を正確に行うためには、資本積立金額の調整項目とせざるを得なかったということが言える。 次に、非適格合併の場合には、合併により移転を受けた資産及び負債の純資産価額を「当該合併により交付した当該法人の株式その他の政令で定める資産の当該合併の時の価額をいう。」と読み替えているという点に留意が必要である。すなわち、交付した合併法人株式の時価を基礎に、合併法人において増加する資本金等の額を計算する形になっている。 また、やや読みにくい規定となっているが、法人税法施行令8条の2第1項により「政令で定める資産」には合併交付金が含まれ、同条第2項により「政令で定める金額」にも合併交付金が含まれることから、結局は、合併法人株式の時価がそのまま合併法人において増加する資本の金額及び資本積立金額の増加額となる。 この考え方が、平成13年当初は、多くの実務家にとって違和感のあるものとなっており、非適格合併の税務処理を分かりにくくさせた要因の1つであったと思われる。しかし、平成18年度税制改正により、資産調整勘定(税務上ののれん)の考え方が整理されてくると、増加する純資産の部の考え方が、同時期に公表された企業結合に関する会計基準と同じ考え方となっており、本稿校了段階では、多くの実務家にとって納得感のある条文になったように思われる。 (ⅱ) 利益積立金額 平成13年度税制改正直後の法人税法2条18号ニでは、適格合併を行った場合における利益積立金額の増加額について、 と規定し、同法施行令9条第1項では、 と規定されている。すなわち、被合併法人の利益積立金額をそのまま引き継ぐとしながらも、配当見合いの合併交付金を交付した場合には、その部分の金額を控除することとされている。 これに対し、非適格合併を行った場合における利益積立金額の増加額については、何ら規定されていないことから、非適格合併により利益積立金額は増加しないことになる。 このように、非適格合併を行った場合には、資本の金額又は資本積立金額の増加額として処理し、適格合併を行った場合には、被合併法人の利益積立金額をそのまま引き継ぎ、その結果、被合併法人の資本の金額及び資本積立金額の合計金額が合併法人の資本の金額及び資本積立金額の合計金額として処理されることになったため、資本金の部の取扱いが明確になったということが言える。 *   *   * 次回では、分割型分割を行った場合における資本金の部の計算について解説を行う予定である。 (了)

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#佐藤 信祐
2017/12/14

社葬をめぐる税務上の留意点【前編】

  社葬をめぐる税務上の留意点 【前編】   太陽グラントソントン税理士法人 マネジャー 税理士 川瀬 裕太   Ⅰ はじめに 中小企業などの創業者であり、代表取締役を長年務めていた方が亡くなったときは、その会社において「社葬」を執り行うことがある。 代表取締役の死亡によって、事業が健全に継承されるかということは、社内の方だけでなく、取引先などの社外の方にとっても関心が高く、社葬を行う態勢がきちんとしているかどうかで大きく評価が分かれるケースもある。 このように、社葬は会社にとっても重要なものであるが、本稿では税務上どういったところに留意すべきかについて確認していきたい。   Ⅱ 社葬費用の法人税法上の取扱い 1 法人税法上の取扱い 社葬費用について、法人税法上は、次のように取り扱うこととされている。 法人が、その役員又は使用人が死亡したため社葬を行い、その費用を負担した場合において、その社葬を行うことが社会通念上相当と認められるときは、その負担した金額のうち社葬のために通常要すると認められる部分の金額は、その支出した日の属する事業年度の損金の額に算入することができるものとする(法基通9-7-19)。 当該通達の適用に当たっては、①社葬を行うことが社会通念上相当であるかどうか、及び、②負担した金額が社葬のために通常要すると認められる金額であるかどうか、ということがポイントとなる。 ① 社葬を行うことが社会通念上相当であるかどうか 「社葬を行うことが社会通念上相当であるかどうか」は、死亡した役員等の死亡の事情、生前における法人に対する貢献度合等を総合勘案して判断することになる。 会社の創業者社長が亡くなった場合であれば、職務上の地位、会社への貢献度合を考慮すれば、社会通念上相当と認められる場合に該当すると考えられる。中小企業では、親族を役員としているケースもあるが、名前だけの役員の場合には、会社への貢献度合という点で社葬を行う十分な理由がないこともあるため、留意が必要である。 一方で、一般社員が業務外の事由で亡くなった場合であれば、職務上の地位や会社への貢献度合という点から、社葬までは行わないのが一般的である。ただし、建築現場での作業中の事故、海外出張の際の飛行機事故など業務上の死亡の場合には、職務上の地位や会社への貢献度合に関わらず、社葬を行うのに十分な理由があることから、社会通念上相当と認められる場合に該当する余地があると考えられる。 ② 負担した金額が社葬のために通常要すると認められる金額であるかどうか 「社葬のために通常要すると認められる費用」とは、通常は、会葬のための費用が該当し、密葬の費用、墓石、仏壇、位牌等の費用、院号を受けるための費用など個人が負担すべきであると認められる費用は、これには該当しない。 社葬のために通常要すると認められるものとしては、下記のような費用が該当すると考えられる。 2 合同葬 個人と会社が合同で行うものや、関連会社が共同で社葬を行うような「合同葬」という葬儀の形式がある。 この場合に、税務上留意すべき点は、費用の分担である。 個人と会社が合同で行った場合には、親族などに係る分を区分して計算根拠を作成しておくことが必要と思われる。関連会社が共同で社葬を行う場合には、単に関連会社であるという理由だけで費用の分担がなされるときは、本来負担しなければならない会社に対する寄付金とみなされるケースもあるため、各関連会社にとって社葬を行うだけの十分な理由があるかどうかを検討する必要がある。 3 代表的な判決・裁決 上記で述べた事項に関する代表的な判決・裁決の事例を紹介しよう。 (【後編】(12/21公開)に続く。)

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#川瀬 裕太
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