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《速報解説》 仮想通貨に関する所得の計算方法等について国税庁が情報(FAQ)を公表~仮想通貨の売却や交換、証拠金取引から分裂、マイニング等までの取扱いを示す~

 《速報解説》 仮想通貨に関する所得の計算方法等について 国税庁が情報(FAQ)を公表 ~仮想通貨の売却や交換、証拠金取引から分裂、マイニング等までの取扱いを示す~   税理士 仲宗根 宗聡   国税庁個人課税課は、平成29年12月1日付で、「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」を公表した。以下ではこの情報で明らかとなった取扱いについて解説する。 【総 論】 ビットコイン、イーサリアム、リップルなどの仮想通貨は、インターネットを通じて物品やサービスの対価の決済手段と使用でき、円やドル、ユーロなどの法定通貨とも交換することができる。 これら仮想通貨は、法的根拠に違いはあるものの、円やドル、ユーロなどの法定通貨と同じ役割であり、「広義の通貨」と解釈できる。 そのため、仮想通貨を売却又は使用することにより生じる利益については、ドルやユーロなどの外国通貨を売却又は使用することにより生じる利益(為替損益)と同じであり、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分され、所得税の確定申告(注)が必要となる。 (注) 年末調整済みの給与所得を有する方で、仮想通貨の売却又は使用による所得が20万円以下の方については、その他に所得がない場合、確定申告を不要とすることができる。この取扱いは、仮想通貨の所得に限ったものではなく、給与所得者の確定申告不要の特例として、従来からある取扱いである。  また、この取扱いは、確定申告を不要とできるもので、医療費控除や住宅ローン控除の適用のために確定申告を行う場合は、この20万円以下の所得を申告しなくてもよいという取扱いではない。確定申告をする場合は、この20万円以下の所得も含めて申告する必要がある。   【各 論】 1 仮想通貨の売却 仮想通貨には、相場(レート)があり、仮想通貨の購入時のレートと売却時のレートの差額が損益となる。 2 仮想通貨での商品購入(仮想通貨の使用) 使用した仮想通貨の取得価額と使用時の商品価額(決済金額)の差額が損益となる。 3 仮想通貨と仮想通貨の交換 交換した仮想通貨の取得価額と交換(使用)時の他の仮想通貨の時価(購入価額)の差額が損益となる。 4 仮想通貨の取得価額 同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合、その仮想通貨の取得価額の算定方法は、取得の都度、平均単価を算定する移動平均法を用いる。 ただし、継続適用を要件として総平均法を用いることもできる。 なお、移動平均法より計算した所得金額と総平均法で計算した所得金額は、異なることがあり、その結果に応じて、毎年、算定方法を選択できるものではない。 〔移動平均法〕 取得の都度、下記算式により平均単価を算定する。 〔総平均法〕 下記の算式により平均単価を算定する。 5 仮想通貨の分裂(分岐) 仮想通貨の「分裂」とは、仮想通貨の取引記録(台帳=ブロックチェーン)が2つに分かれることをいう。分裂により新たに作成された新台帳に記録されている仮想通貨は、新たに誕生(取得)した仮想通貨になる。 本年8月には、「ビットコイン」から分裂して、「ビットコインキャッシュ」が誕生した。 この新たに誕生した仮想通貨には、分裂時点では取引相場が存在しないため、価値0円の仮想通貨を取得したことになり、経済的価値があるものを取得していないため、分裂時点では所得は生じない。この新たな仮想通貨に取引相場が生じて、その後、仮想通貨を売却又は使用した時点で所得が生じることになる。 例えば、分裂により取得した仮想通貨が、その後、1通貨あたり100,000円の取引相場となった時点で売却した場合は、0円で取得した仮想通貨を100,000円で売却したことになるため、100,000円の所得が生じる。 6 仮想通貨に関する所得の所得区分 仮想通貨を使用することにより生じる損益は、原則として、雑所得になるが(タックスアンサーNo.1524)、事業所得等の各種所得の基因となる付随して生じる場合は、その事業所得等の各種所得に区分される。 例えば、事業所得の基因となる商品仕入の代金決済に仮想通貨を使用したことにより利益が生じた場合は、事業所得に区分される。 また、仮想通貨の取引により生じる収入によって生計を立てていることが客観的に明らかであるなど、仮想通貨取引が事業として行われていると認められる場合(注)も、その所得区分は事業所得となる。 (注) 事業についての明確な判断基準はなく、営利性、継続性、人的・物的設備の有無、精神的・肉体的労力の程度、自己の危険と計算における企画遂行性の有無など、様々な要素を総合的に勘案して、社会通念上事業として認められるものかを判断する。 7 損失の取扱い 仮想通貨の取引による損失は、雑所得の損失となる。 雑所得の損失は、他の所得との損益通算は認められていない。 損益通算が認められている損失は、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の計算上生じた損失のみとなる(株式や土地・建物の譲渡損失など、適用除外となる損失もある)。 なお、仮想通貨の取引による損失を、他の雑所得(年金の所得など)と通算することはできる。 8 仮想通貨の証拠金取引 仮想通貨の証拠金取引については、「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」の適用対象ではないため、総合課税により申告することになる。 総合課税のため、「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」による所得税15%・住民税5%の特例税率の適用はなく、給与所得や事業所得などの総合課税の対象となる所得と合算され、超過累進税率が適用される。 9 仮想通貨のマイニング等 仮想通貨の発行や取引はピアツーピア(P2P)いうネットワークシステム上で行われている。 「マイニング」とは、システム上で行われている仮想通貨の暗号システム、取引履歴の記録システムに参加することをいう。仮想通貨の新規発行は、このマイニングを通じて行われる。 マイニングの報酬として仮想通貨が与えられることがあり、マイニングより取得した仮想通貨は事業所得又は雑所得の収入金額(取得時点での時価)となり、マイニングに要した費用を差し引いて所得金額を計算する。 (了)

#No. 247(掲載号)
#仲宗根 宗聡
2017/12/07

《速報解説》 適用2年目を対象とした「監査役の視点によるコーポレートガバナンス・コードの分析」が公表される~「コンプライ」の比率が増加傾向に、初年度から変化が見られた開示事例の紹介も~

《速報解説》 適用2年目を対象とした「監査役の視点によるコーポレート ガバナンス・コードの分析」が公表される ~「コンプライ」の比率が増加傾向に、初年度から変化が見られた開示事例の紹介も~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年12月1日、日本監査役協会のケース・スタディ委員会は、「監査役の視点によるコーポレートガバナンス・コードの分析-適用2年目における開示事例等の分析-」(以下「報告書」という)を公表した。 平成28年11月の「『コーポレートガバナンス・コード(第4章)』の開示傾向と監査役としての視点-適用初年度における開示分析-」に続くものであり、報告書では、開示傾向の変化、「コーポレートガバナンス・コード」の第4章以外の「監査役」が明記されている原則についても、開示事例の抽出と開示内容の傾向を調査している。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 第4章における初年度からの開示の変化の傾向 「コーポレートガバナンス・コード」の適用1年目からの変化を見ると、各原則により多寡はあるものの、概ね全体として、「コンプライ」する比率が増加している傾向が見られるとのことである。 適用1年目に「エクスプレイン」として開示した事例のその後の開示の傾向について調査すると、1年後の開示もほぼ同様の内容で「エクスプレイン」として開示したケースが全体の約5割、「コンプライ」したとして開示を取りやめたケースが全体の約4割との傾向である。 監査役等としても開示内容について検証を行うに際しては、例えば、「検討中である」との開示がなされていても、その後特段の対応がなされていないなど、開示されている内容に沿った運用がなされていないのであれば、経営陣に対して指摘し再考を促すなどの対応をすることも必要であると考えられるとしている。 報告書では、初年度から変化が見られた開示事例が記載されているので、各社において参考になると考えられる。 例えば次の開示事例が紹介されている。 2 第4章以外で監査役が明記されている原則の開示内容の傾向 今回調査した原則・補充原則は以下のとおりである。 報告書では、第4章以外で監査役が明記されている各原則の開示内容の傾向と開示事例が記載されているので、各社において参考になると考えられる。 3 監査役として関心の高い原則の開示事例等の分析 次の原則について分析している。 例えば、取締役会の実効性評価の必要性への認識は相当程度浸透していることがうかがわれるものの、開示事例を見ると実効性評価のプロセスや内容が必ずしも明確でないことに加え、評価の結果としての課題に対する改善策の実施とフォローアップについて十分な記載がなされていない事例が多く見られたとのことである。 監査役としては、これらの開示が適切になされているかと同時に、評価結果において抽出された課題に対する改善策実施のフォローアップについても注視していく責務があると述べられている。 (了)

#No. 247(掲載号)
#阿部 光成
2017/12/07

プロフェッションジャーナル No.247が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年12月7日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.247を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/12/07

monthly TAX views -No.59-「平成30年度税制改正の隠れた見どころ」

monthly TAX views -No.59- 「平成30年度税制改正の隠れた見どころ」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   平成30年度税制改正の議論が佳境にさしかかっている。所得税では、「働き方改革への対応」と「所得再分配機能の強化」の2つをメインテーマとして、給与所得者の経費控除である給与所得控除の上限の引下げと合わせて基礎控除の引上げが、ほぼ税収中立(若干のネット増税?)で決まりそうだ。この見直しで増税になる給与収入は800万円程度になる。 *  *  * わが国の給与所得者の概算経費控除である給与所得控除は、諸外国に類を見ない寛大なものとなっている。それは、事業所得のバランス(所得把握率の差の調整)という観点や、累次の所得税減税で控除を引き上げてきたことが理由で、冷静に見てみれば、経費の概算控除というには(個人事業主と比べて)あまりにも水膨れしていた。 そこで2015年からは控除限度額(1,500万円以上の給与収入に対して245万円の上限)が導入され、その後2度にわたって限度額を引き下げる(2017年以降は1,000万円の給与収入で220万円の上限)などの縮減策が行われてきたが、未だ高い水準にあるというのが政府税制調査会の認識である。 しかし連年の見直しで、これ以上の見直しは少し時間を置いて、という機運も出ていた。ところが、安倍政権の目玉である「働き方改革」で、クラウドソーシングなどによる「雇用的自営業者」やサラリーマンの副業・兼業を「推奨」したこともあり、その数の増加が予想され、彼らの税負担の見直し(減税)も安倍政権の大きな課題となった。 このような事情から、高所得者の給与所得控除引下げとセットで基礎控除の引上げを行えば、「働き方改革」「高水準の概算経費控除の見直し」「所得再分配機能の強化」という3つの目的が同時達成できるのである。 *  *  * 筆者が最も注目するのは、基礎控除は、引上げと同時に、配偶者特別控除のように「逓減・消失させていく」ことが決まりそうだという点である。 税制調査会は、ここ数年、所得税の再分配機能を強化するために、「所得控除から税額控除への変更」を議論してきた。次の図表は、税制調査会の議論によく出てくる資料である。 【図表】 (出典)政府税制調査会資料 この図表の言いたいことは、所得控除から税額控除への移行は、英米独仏など他の先進国でも行われてきたこと、そしてその具体的方法として、ドイツ・フランスはゼロ税率方式を取り、米国やイギリスは所得控除の逓減・消失方式で対応している(右端の図)ということである。 わが国では、所得控除が税制に定着して久しいことや、税収中立で所得控除と税額控除にすると、給与収入500万円程度から増税になることなどを踏まえて、まずは英米の方式で行う、ということなのであろう。その場合、配偶者特別控除のような階段状の方式になるので、どこから逓減が始まりどこで消失するのかという点が議論となるが、どうやら2,400万円の給与収入から逓減が始まり2,500万円で消失する案が有力となっている。 *  *  * このような所得税の控除の見直しの背景には、消費税率の引き上げで、低所得者の負担が相対的に増えるという逆進性をにらんでの思惑もあると考えられる。いずれにしても、所得再分配機能の強化ということは、現下のわが国の状況の下では必要な改革であろう。 これまで所得再分配の議論にはほとんど興味のなかった安倍官邸が、最終的にどこまで許容するのであろうか、興味深い。 (了)

#No. 247(掲載号)
#森信 茂樹
2017/12/07

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第16回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第16回】   公認会計士 佐藤 信祐   (《第2章》 平成13年度税制改正) ② 適格組織再編成の場合の特例 (ⅰ) 適格合併及び適格分割型分割 平成13年度税制改正直後の法人税法62条の2第1項では、以下のように規定されている。 上記のように、資産及び負債を帳簿価額で引き継いだものとして計算し、当該資産及び負債の帳簿価額から計算される純資産価額により、株主への交付を行ったものとみなして計算するものとされている。ただし、次回(【第17回】)で解説するように、被合併法人の利益積立金額を合併法人に引き継ぐこととされているため、法人税法2条17号ハに規定する純資産価額とは、「被合併法人の当該適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時の当該移転資産の帳簿価額から当該移転負債の帳簿価額及び当該適格合併に係る次号ニに掲げる金額を減算した金額」を意味する(なお、次号ニに掲げる金額とは、適格合併により引き継ぐ利益積立金額のことをいう)。 そのため、適格合併を行う場合において、移転資産の帳簿価額が300であり、移転負債の帳簿価額が100であり、資本金等の額が50であるときに、以下の仕訳を行うということである。 【資産及び負債の移転】 【合併法人株式の交付】 適格分割型分割を行った場合も同様の処理を行うが、一部の事業のみを移転することもあるため、分割承継法人株式の交付において、減少する資本金等の額、利益積立金額の計算を行う必要があるという点が異なる(この点については、次回、解説する予定である)。 そして、合併法人及び分割承継法人では、法人税法62条の2第2項で委任された同法施行令123条の3において、「法第62条の2第1項(適格合併及び適格分割型分割による資産等の帳簿価額による引継ぎ)に規定するときにおいては、同項の合併法人又は分割承継法人は、同項に規定する資産及び負債の同項に規定する帳簿価額による引継ぎを受けたものとする。」と規定されている。 ここで留意が必要なのは、「引継ぎ」という用語の示す意味である。 この点につき、『平成13年版改正税法のすべて』150頁(大蔵財務協会、平成13年)では、 と解説されている。 本連載のどこかで解説を行う予定であるが、減価償却や引当金の計算をどのように行うのかという点は、「引継ぎ」と「取得」の違いを理解しながら条文解釈を行っていく必要がある。 例えば、現行法人税法施行令48条の3では、適格分割等により減価償却資産の移転を受けた場合には、分割法人等が当該減価償却資産の取得をした日において当該移転を受けた分割承継法人等により取得をされたものとみなすことが明らかにされている。これに対し、適格合併ではそのような規定は存在しない。これは、「引継ぎ」と規定されていることから、当然に、被合併法人が減価償却資産の取得をした日において合併法人が減価償却資産を取得したものとみなすからである。 (ⅱ) 適格分社型分割及び適格現物出資 法人税法62条の3第1項、同条の4第1項では、適格分社型分割及び適格現物出資を行った場合において、帳簿価額による譲渡を行ったものとして、課税所得の計算を行うことが規定されている。いずれの条文も、「引継ぎ」とは規定されておらず、「譲渡」と規定されている。そのことから、計算上の数額は、当然には、分割承継法人又は被現物出資法人には引き継がれない。 さらに、適格合併又は適格分割型分割と異なり、交付を受けた分割承継法人株式又は被現物出資法人株式を、分割法人又は現物出資法人が保有し続けるという違いがある。そのため、「純資産価額に相当する金額により取得し、直ちに当該株式を当該内国法人の株主等に交付したものとする」という規定は設けられていない。そして、法人税法施行令119条1項7号において、適格分社型分割又は適格現物出資により交付を受けた分割承継法人株式又は現物出資法人株式の取得価額についての規定が設けられている。 なお、平成13年当時では、適格事後設立についての規定(法法62の5)も設けられていたが、平成22年度税制改正により廃止されている。 *   *   * 次回からは、『平成13年版改正税法のすべて』156頁以降に記載されている資本積立金額、利益積立金額の計算について解説を行う予定である。 (了)

#No. 247(掲載号)
#佐藤 信祐
2017/12/07

中小企業特別措置の適用停止に係る「平均所得金額」の算定方法 【第2回】「「平均所得金額」の算定方法」

中小企業特別措置の適用停止に係る 「平均所得金額」の算定方法 【第2回】 「「平均所得金額」の算定方法」   弁護士・公認不正検査士 下尾 裕   本稿では【第1回】の内容を前提に、「平均所得金額」の具体的な算定方法について解説する。   1 平均所得金額の算定方法 (1) 原則的計算方法 【第1回】で述べたとおり、平成31年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税に関し、「平均所得金額」が年15億円を超える中小企業者については、所定の特別措置の適用が停止されることになった。 平均所得金額の原則的算定方法は以下の計算式のとおりである(措法42の4⑧六の二)。ここでの「所得」とは、課税所得の金額、すなわち、欠損金の繰越控除制度等の適用後の金額であり、欠損金額が生じた基準年度においては、所得の金額は零円となる。 【算定のイメージ】 (※) 財務省「平成29年度税制改正の解説」P535より筆者一部変更 かかる所得金額は、基本的には提出した確定申告書記載の所得金額によることになるが、仮に平均所得金額の判定時点で基準年度について提出した確定申告書が存在しない場合には、後日提出する確定申告書に記載するであろう所得の金額を用いることになる。また、確定申告による所得が事後に修正申告又は更正決定により変更された場合には、当然に変更後の金額をもって平均所得金額を算定することになる。 なお、上記計算においては、国税通則法第118条に基づく課税標準(所得金額)の端数計算は行わないので注意が必要である。 また、冒頭に述べたとおり、この改正は平成31年4月1日以後開始事業年度より適用されることから、3月決算法人の場合、適用初年度における平均所得金額は、平成29年3月期(H28.4.1~29.3.31)、平成30年3月期(H29.4.1~30.3.31)及び平成31年3月期(H30.4.1~31.3.31)における所得金額を元に算定されることとなる。このため、平成30年3月期末の時点で、適用停止を受けるか否か、ある程度予測が可能とも考えられる。 (2) 特例的計算方法(調整計算) 基準年度において、以下に定める事由が存在する場合の平均所得金額については、以下に述べる計算方法によりそれぞれ算定する。 (※1) 特定合併等 「特定合併等」とは、合併、分割、現物出資、事業の譲受け又は特別の法律に基づく承継(以下「合併等」という)で以下のいずれかに該当するものをいう(措令27の4⑮一)。 なお、会社分割がある場合の分割法人や現物出資がある場合の現物出資法人については、所定の所得減算調整等は行わない建付けになっていることに注意が必要である。 (※2) 各基準年度の合計月数が36月を超える場合には、当該金額をその合計月数で除し、これに36を乗じた金額、すなわち36月分に相当する金額に再計算する。 (※3) 合併等調整額 「合併等調整額」とは、各対象特定合併等に係る各被合併法人毎に算出される次の(1)(2)に掲げる金額の合計額(合計額の中に加算調整額の計算の基礎とされた金額がある場合には、当該金額を除く)をいう(措令27の4⑭三ロ)。 【イメージ図】 修正基準期間の月数 ≦ 修正基準期間内に終了した被合併法人等の各事業年度の月数の合計数の場合 修正基準期間の月数 > 修正基準期間内に終了した被合併法人等の各事業年度の月数の合計数の場合 (※) 財務省「平成29年度税制改正の解説」P544より 【イメージ図】 (※) 財務省「平成29年度税制改正の解説」P545より (※4) 加算対象連結所得金額 加算対象所得金額とは、簡潔に整理すれば、次の〔1〕の金額に〔2〕の金額を加算した金額をいう(措令27の4⑭四ロ)。 【イメージ図】 (※) 財務省「平成29年度税制改正の解説」P548より   2 連結納税制度における「平均所得金額」 連結納税制度においても、原則として、以下の計算式により計算された金額が15億円を超える連結親法人及びその連結子法人は、措法に基づく特別措置の適用除外事業者とされている(措法68の9⑧五の二、措令39の39⑫~⑯)。 ここでの連結所得については、各連結法人の個別所得金額で判定するのではなく、連結グループ全体を1つの法人に見立て、1の項で述べたところに準じて、連結欠損金の繰越控除後の連結所得の金額を基準に計算するものとされている。 また、調整事由の該当性についても、同様の見立てにより、連結納税の承認は新設合併と、連結グループへの加入は吸収合併と、また、連結納税の承認の取消し等(連結納税制度の終了・離脱)は単独新設分割とそれぞれ同様のものと観念して制度設計がなされている。   3 最後に 以上のとおり、平均所得金額による措法に基づく特別措置の適用停止は、平成31年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるが、当該平均所得金額の算定にあたっては、上述のとおり、原則として、平成28年4月1日以後に開始した事業年度の各課税所得の金額が考慮されるから、今後は自社の課税所得の金額を注視していく対応が求められよう。 (連載了)

#No. 247(掲載号)
#下尾 裕
2017/12/07

相続空き家の特例 [一問一答] 【第23回】「「相続空き家の特例」の譲渡価額要件(1億円以下)の判定⑤(「適用前譲渡」又は「適用後譲渡」が著しく低い価額による譲渡の場合)」-譲渡価額要件の判定-

相続空き家の特例 [一問一答] 【第23回】 「「相続空き家の特例」の譲渡価額要件(1億円以下)の判定⑤ (「適用前譲渡」又は「適用後譲渡」が 著しく低い価額による譲渡の場合)」 -譲渡価額要件の判定-   税理士 大久保 昭佳   Q X(兄)は、昨年5月に死亡した父親の居住用家屋(昭和56年5月31日以前に建築)とその敷地(200㎡)を相続により取得し、その家屋を取り壊し更地にした上で、その敷地の半分(100㎡)を、同年9月に不動産会社へ6,000万円で売却しました。 また、Xは、本年1月に、残りの敷地(100㎡)を通常の取引価額が6,000万円であるところ、Y(妹)へ2,000万円で売却しました。 この場合、Xの譲渡は、「相続空き家の特例(措法35③)」の譲渡価額要件(1億円以下)を満たすこととなるのでしょうか。 A Yへの譲渡は「著しく低い価額の対価による譲渡」となるため、通常の取引価額で判定され、「対象譲渡」と「適用後譲渡」の合計額が1億円を超えることから、「相続空き家の特例」の適用を受けることができません。 ●○●○解説○●○● 「相続空き家の特例」は、被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡の対価の額が1億円以下であることが、その適用要件の1つとされています(措法35③)。 そして、居住用家屋取得相続人が「適用前譲渡」又は「適用後譲渡」をした場合において、その「適用前譲渡」又は「適用後譲渡」が贈与(著しく低い価額の対価による譲渡として財務省令で定めるものを含む)によるものである場合における譲渡価額要件の判定については、その贈与の時における価額に相当する金額をもってその対価の額とする旨が規定されています(措令23⑩)。 おって、財務省令で定めるところの「著しく低い価額の対価による譲渡」とは、その対価の額がその譲渡の時における通常の取引価額の2分の1に相当する金額に満たない金額である場合の譲渡とされています(措規18の2③)。 また、「贈与(著しく低い価額の対価による譲渡を含む)の時における価額」とは、その贈与の時又はその著しく低い価額の対価による譲渡の時における通常の取引価額をいうこととされています(措通35-24(被相続人の居住用財産の一部を贈与している場合))。 したがって、本事例の場合、XからYへの譲渡価額は2,000万円であるものの、通常の取引価額が6,000万円であることから、「対象譲渡」と「適用後譲渡」の合計額が1億円を超えて譲渡価額要件を満たさず、「相続空き家の特例」の適用を受けることができないこととなります。 (了)

#No. 247(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/12/07

租税争訟レポート 【第35回】「専ら従業員の慰安のために行われた「感謝の集い」に要した費用の交際費等該当性(福岡地方裁判所判決)」

租税争訟レポート 【第35回】 「専ら従業員の慰安のために行われた「感謝の集い」に要した費用の交際費等該当性(福岡地方裁判所判決)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝     【事案の概要】 本件は、養鶏事業、食肉等食料品の販売事業等を営む原告が、原告の役員及び従業員並びに下請先である協力会社等の役員及び従業員合計1,000人程度が参加する「感謝の集い」を年に1回、大型リゾートホテルの宴会場で行っていたところ、熊本国税局調査課の税務調査において、「感謝の集い」に要した費用は交際費等に該当するとの指摘を受け、処分行政庁である高鍋税務署がその指摘に従った更正処分を行った。当該更正処分を不服とした原告は、異議申立、審査請求を経て、本件訴訟の提起に踏み切ったものである。 争点は、原告が福利厚生費とした「感謝の集い」に要した費用が、交際費等に該当するか否かである。 各事業年度における「感謝の集い」の参加者は約1,000人、参加率は71%から75%程度であり、1人当たりの費用は概ね2万円台前半であった。   【被告の主張】 次の1及び2のとおり、本件各事業年度の「感謝の集い」に係る費用は、いずれも租税特別措置法(平成24年改正前のもの。以下「措置法」という)61条の4第3項柱書の「交際費等」に当たり、交際費等から除かれる費用には該当しないから、本件各更正処分は適法である。 1 「感謝の集い」に係る費用は、いずれも「交際費等」に該当すること 「感謝の集い」は、原告及び協力会社等の全従業員を対象としており、これらの従業員は、措置法61条の4第3項の「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」に該当することから、「交際費等」に該当する支出の相手方となる。また、「感謝の集い」は、参加者の慰安を目的として飲食の提供及びコンサート鑑賞を行ったものである。 したがって、「感謝の集い」に係る支出は、措置法61条の4第3項柱書の「交際費等」に該当する要件を満たしている。 2 「感謝の集い」に係る費用は、措置法61条の4第3項1号の「通常要する費用」の範囲を超えていること 措置法61条の4第3項並びに措置法通達61の4(1)-10及び同(1)-18によれば、会社の従業員等の慰安行事に係る費用は、「通常要する費用」の範囲内である限り、福利厚生費として「交際費等」から除外されるところ、当該費用が「通常要する費用」の範囲内であるか否かについては、当該行事が、法人が費用を負担して行う福利厚生事業として社会通念上一般的に行われていると認められるものであることを要し、その判断に当たっては、行事の規模、開催場所、参加者の構成及び1人当たりの費用額、飲食の内容等を総合して判断すべきである。 「感謝の集い」については、 などから、平日の昼の時間帯に、開演から終了まで4時間ないし4時間50分という比較的短い時間で行われた慰安行事に費やされた額としては極めて高額であることは明らかであり、法人が費用を負担して行う福利厚生事業として社会一般的に行われていると認められる行事の程度を著しく超えているといわざるを得ない。 よって、「感謝の集い」に係る費用については、「交際費等」から除かれる福利厚生費(除外費用)には該当せず、「交際費等」に該当するというべきである。   【原告の主張】 次の1及び2によれば、「感謝の集い」に要した費用が「交際費等」に該当しないことは明らかであるから、本件各更正処分等は違法である。 1 全従業員を対象とした慰安目的の行事に係る費用は福利厚生費に該当し、「通常要する費用」であるか否かを問わず「交際費等」には該当しないこと 措置法61条の4第3項は、「交際費等」の支出の相手方を「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」と規定していることから、従業員に対する支出は福利厚生費であって、「交際費等」には該当しないものの、特定の一部の従業員を対象とする場合には、法人の冗費が増大し、損金不算入制度の趣旨に反するから、福利厚生費ということはできず、例外的に「交際費等」に該当するものと解すべきである。 この点、措置法通達61の4(1)-1においても、「福利厚生費」は交際費等には含まれないものとするとされており、福利厚生費が「通常要する費用」を超える場合を除くとは規定されていない。このような通達の規定からも、福利厚生費は、費用の多寡にかかわらず、「交際費等」には含まれないというべきである。 「感謝の集い」は、原告及び協力会社等の全従業員に受益の機会が保障されたものであって、特定の一部の従業員を対象とするものではない。したがって、「感謝の集い」に係る費用は、福利厚生費に当たり、「交際費等」には含まれないというべきである。 2 被告主張のとおり、福利厚生費について、「通常要する費用」を超える場合には「交際費等」に含まれると解されるとしても、本件各福利厚生費は「通常要する費用」の範囲内であると認められること 福利厚生費が「通常要する費用」の範囲内であるか否かについては、実際の支出に即して、その目的達成との関係において通常要する費用かどうかという観点から、行事の規模、開催の場所、参加者の構成、飲食等の内容、1人当たりの費用額、会社の規模を判断要素として、判断すべきであって、実際の支出の目的達成とは無関係に、抽象的一般的に判断すべきではない。 「感謝の集い」については、「感謝の集い」の目的が全従業員に対して感謝の意を表するとともに、労働意欲の向上を図ることなどにあって、1,000人を超える従業員全員を一堂に集める必要があること、工場での操業を2日以上停止させることはできないことなどに照らせば、上記判断要素のどの点についても「通常要する費用」の範囲に含まれるというべきである。 したがって、本件各福利厚生費は除外費用に該当し、措置法61条の4第3項の「交際費等」には該当しないというべきである。   【裁判所の判断】 こうした主張を受け、福岡地方裁判所は、次のように判示した。 1 「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」の意義と「交際費等」該当性 (1) 措置法61条の4第3項による除外規定の趣旨 裁判所は、措置法61条の4第3項が、「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」について、損金不算入の取扱いを受ける「交際費等」から除外した理由について、 と説明したうえで、こうした行事が、 として、「社会通念上一般的な福利厚生費」であれば、「交際費等」から除外されるとの見解を示した。 そのうえで、その判断基準については、「当該法人の規模や事業状況等を踏まえた上で、当該行事の目的、参加者の構成、開催頻度、規模及び内容、効果、参加者1人当たりの費用額等を総合して判断するのが相当である」とした。 (2) 原告の主張に対する判断 上記【原告の主張】1のとおり、原告は、従業員全員を対象とした慰安目的の行事に係る費用は、福利厚生費に該当し、費用の多寡にかかわらず、「交際費等」に該当しないと主張しているが、この主張に対して裁判所は、 として、「従業員の慰安行事に係る費用については、対象が従業員の全員であるか、一部であるかを問わず、当該費用が「通常要する費用」を超える場合には「交際費等」に該当するというべきであり、原告の上記主張を採用するのは困難である」と斥けた。 2 原告による「感謝の集い」行事に係る費用 (1) 「感謝の集い」の開催趣旨 裁判所は「感謝の集い」の開催趣旨について、次のように認定した。 「感謝の集い」は、原告及び協力会社等の従業員全員を対象とし、原告代表者が従業員に対する感謝の意を表し、従業員の労働意欲を向上させるために、他の従業員との歓談や交流の機会、コース料理及びコンサート鑑賞の機会を提供するものである。 「感謝の集い」の特徴は、 などが挙げられ、裁判所は、こうした特徴から、「感謝の集い」は従業員全員を対象とする「日帰り慰安旅行」であったといえる、と判断した。 (2) 「感謝の集い」に要した費用が「通常要する費用」に該当するか否か 裁判所は、「感謝の集い」の開催目的について、原告が債務超過による倒産の危機を乗り越え、グループ会社を含めて黒字経営となったという経営再建の歴史的経緯を踏まえて、原告代表者が、その原動力となった従業員に感謝の気持ちを伝えて労苦に報いるとともに、従業員の労働意欲を更に向上させ、従業員同士の一体感や会社に対する忠誠心を醸成することにあったと認定したうえで、従業員の一体感や会社に対する忠誠心を醸成して、更なる労働意欲の向上を図るためには、従業員全員において非日常的な体験を共有してもらうことが有効、必要であると考えられるとして、「感謝の集い」を開催することの必要性を認めた。 そのうえで、「従業員の慰安目的の福利厚生事業においては、慰安目的を達成するために、従業員に対し感動や感銘をもたらすような非日常的な要素が含まれているのが通常」であるとして、非日常的な要素として、「県外や国外への旅行、普段味わう機会のない食事や生の音楽鑑賞等が考えられる」とした。そして、慰安旅行については、 と判断した。 そのうえで、年間稼働日数が300日を超える原告の事業状況や従業員の女性比率の高さに照らせば、原告の事業に支障を来すことなく、可能な限り全員参加が可能な慰安旅行としては、宿泊を伴う旅行は現実的ではなく、日帰り旅行にせざるを得ない状況にあったことから、裁判所は、「感謝の集い」について、 と判断した。 そして、「感謝の集い」が、原告のような事業規模を有する優良企業が年1回の頻度で行う福利厚生事業として社会通念上一般的に行われている範囲を超えるものであると認めるのは困難であると判断できるとともに、「感謝の集い」に係る参加者1人当たりの費用である2万1,972円から2万8,726円についても、通常要する費用額を超えるものとは認め難いと結論づけた。 その結果、裁判所は、「感謝の集い」について、福利厚生事業(慰安行事)として社会通念上一般的に行われている範囲を超えており、当該行事に係る費用が社会通念上福利厚生費として認められる程度を超えているものと認めることは困難であると判断し、原告の主張を認めた。 (3) 被告の主張に対する判断 さらに、被告による、①「酒食等の提供を主としてなされる慰安行事」と②「移動や宿泊等を伴う旅行を主としてなされる慰安行事」とは、その一般的に必要となる1人当たりの支出費用が異なるのであり、酒食等が旅行等より安価だからといって当然に当該支出が福利厚生費(通常要する費用)に該当するということはできないという主張について、裁判所は、「感謝の集い」は「日帰り慰安旅行」であると認められるとしたうえで、被告による上記①及び②の各要素は、いずれも従業員の慰安目的達成のために必要な非日常的要素であり、互いに排他的なものではなく、当該法人の規模や事業状況等によって、両要素を含む慰安行事も一般的に行われていると説明して、「感謝の集い」に係る費用は、「日帰り慰安旅行」に係る費用額と比較すれば、通常要する程度であるといえることから、被告の主張を採用することは困難であると判断した。   【解説】 「養鶏業」という生物相手の事業であり、年間300日を超える工場稼働日数、1,000名を超える参加者とそのうち過半数を超える女性社員の存在などから、宿泊を伴う慰安旅行が企画できない原告が催した「感謝の集い」に対して、税務調査に当たった熊本国税局の調査担当者は、その内容から、福利厚生費として「通常要する費用」の範囲を超えているとして、「交際費等」として損金の額に算入しないという判断を下し、所轄税務署の高鍋税務署長がその判断に従った更正処分等を行った事案で、福岡地方裁判所は、原告の主張を認めて、「感謝の集い」に要した費用を福利厚生費として損金の額に算入することを認めた。 1 措置法通達の確認 まず、被告が課税処分を行うにあたり、依拠したと思われる措置法通達を確認したい。 福利厚生費とすることができる社内行事に係る費用としては、以下の規定がある(一部、かっこ書き等を省略している。以下、引用する通達について同じ)。 通達の文言にある「社内において」については、「社内に適当な場所がないため、社外で行う場合であっても、その内容が社内で行う場合と同程度」であれば福利厚生費として損金の額に算入することができると解されており、また、「通常の飲食に要する費用」とは「社会通念上一般に供与される程度」であり、「会議に際して提供する昼食の程度を超えない飲食」という説明が一般的である(※1)。 (※1) 「実務問答式 交際費等の税務(平成28年版)」編者:駒崎清人・若林孝三・有賀文宣・吉田行雄・鈴木博(一般社団法人大蔵財務協会、平成28年6月)265頁以下 また、会社の周年行事などについては、宴会費用は「交際費等」に該当する旨の通達が存在している。 被告は、こうした通達の規定を根拠に、「酒食等の提供を主としてなされる慰安行事」と「移動や宿泊等を伴う旅行を主としてなされる慰安行事」ではその通常要する費用の判断基準は異なるとして、「酒食等が旅行等より安価だからといって当然に当該支出が福利厚生費(通常要する費用)に該当するということはできない」という主張を展開したものと思われるが、すでに【裁判所の判断】で見たように、こうした主張は裁判所によって一蹴されている。 2 慰安旅行としての「感謝の集い」 本件では、裁判所は「感謝の集い」を「日帰り慰安旅行」と判断し、福利厚生事業(慰安行事)として社会通念上一般的に行われている範囲を超えていないため、福利厚生費とすることを認めた。そこで、所得税基本通達から、レクリエーション費用の取扱いについて規定したものを確認しておきたい。 この通達の解説として、国税庁が公開しているタックスアンサーでは、従業員レクリエーション旅行について、「旅行の期間が4泊5日以内であること」と「旅行に参加した人数が全体の50%以上であること」を要件としており(※2)、原告の「感謝の集い」はこれらの要件に合致するため、所得税課税の面からみても、福利厚生費として損金の額に算入することは問題ないものと解釈できる。 (※2) 国税庁タックスアンサーNo.2603「従業員レクリエーション旅行や研修旅行」 3 国税不服審判所はどうして課税処分を取り消す裁決を出せなかったのか 本件は、原告による異議申立、審査請求を経て、訴訟が提起されたものである。国税不服審判所による裁決の内容は公表されていないため、その要旨を検索したところ、概ね次のような判断のもとに棄却されているようである(一部、抜粋のうえ、文章を改めた)。 この裁決要旨を見る限り、国税不服審判所は、本件訴訟における被告の主張を大筋で認めたものであると言えよう。このように、宴会時間と1人当たり費用にのみ着目し高額と判断した課税庁の社会通念のずれについては、以下のような批判もある(※3)。 (※3) 『リゾートホテルにおける「感謝の集い」と交際費』林仲宣・髙木良昌、税務弘報2017年10月号、150頁以下 こうした批判については、筆者も同感であり、課税庁(税務調査担当者)の社会通念が世間一般とずれているのであれば、本来は、国税不服審判所がそのずれを修正する役目を担うはずであると思料するが、残念ながら、本件では(本件でも、と言うべきか)、審判所はそうした機能を発揮できず、納税者の救済は法廷の場に委ねられてしまった。 国税不服審判官の半数に民間人を登用して、国税不服審判所の改革が図られてすでにかなりの年月が経過し、成果をあげているという評価もあるようだが、本件については、そうした民間人の視点は裁決に活かされず、社会通念・社会常識については、国税不服審判所は課税庁にかなり近かったということであろう。   (了)

#No. 247(掲載号)
#米澤 勝
2017/12/07

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第37回】「寄附金(貸倒損失)」~貸倒損失が寄附金に該当すると判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第37回】 「寄附金(貸倒損失)」 ~貸倒損失が寄附金に該当すると判断した理由は?~   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して行われた「貸倒損失が寄附金に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた東京地裁昭和54年3月5日判決(訟月25巻7号1941頁。以下「本判決」という)を素材とする。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注)  素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本判決の判断 本判決は、大要次のとおり、理由付記に不備はないと判断した。   4 検討 (1) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、X社が貸倒金△△△円を計上していることを前提としているものの、これが関与税理士A個人の債務弁済のためのものであり、X社とは何ら関係がないので貸倒金としては認められず、A税理士に対する贈与として法人税法37条の寄附金に当たるとするものである。 貸倒金に係る債務は、後で見るように、X社の帳簿書類上、関与税理士A以外に対する債務として記載されていたことを前提とするならば、本件更正処分はX社の帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当する。 したがって、理由付記の程度としては、 ことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (2) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものではないと考える。 本件理由付記には、貸倒金の債務者名や損失として計上した日付などの記載がない。したがって、本件理由付記の記載から、否認の対象となる貸倒金が特定できるかが問題となる。素材とした本件訴訟において、課税庁は、貸倒金△△△円の特定性について、要旨次のとおり主張している。 このことを踏まえ、本件理由付記について、貸倒金に係る債務者名等の記載を欠くとしても、更正処分の対象となる貸倒金△△△円の特定性には問題がないものとして、検討を進める。 本件理由付記は、本件更正処分の理由として、「関与税理士A個人の債務弁済のためのものであり、貴法人とは何ら関係ありませんので貸倒金としては認められません。上記金額は関与税理士Aに対する贈与となり寄附金の限度計算をなし、所得に加算しました。」と記載するのみである。貸倒金△△△円について、関与税理士A個人の債務弁済のためのものであり、X社と何ら関係がないと判断した根拠となる具体的事実やその証拠資料は示されていない。 また、本件理由付記は、X社が債務免除・債権放棄をした事実やその証拠資料を示していない。貸倒金として認めないにとどまらず、A税理士に対する贈与に当たるとして寄附金と処理する具体的な根拠が記載されていないのである。いわば、X社が内部的に貸倒れ処理をしたことをもって、A税理士との関係においても債権債務関係がなくなったと認定するための具体的事実や証拠資料が示されていないと言い換えてもよいであろう。A税理士に対する贈与に当たると記載されてはいるが、私法上の贈与と判断したのか(民法549)、私法上の贈与ではないが実質的な贈与に該当すると判断したのか(法法37⑧)が、わかりづらいという指摘もできる。 もちろん、帳簿書類上、貸倒金△△△円についてA税理士個人の債務弁済のためのものであることが明らかな場合には、かような記載のみでも理由付記の趣旨目的に反しないと見る余地もある。この点、本件訴訟において、課税庁は、貸倒金の内訳はOM、K(株)及びB(株)に対する貸付金であることを述べた上で、貸付金の事実上の債務者は「いずれもAであり、同人は、X社代表者Nの娘婿で税理士業務を営み、X社の関与税理士でもあるほか、H市〇番の山林1983平方メ-トルを所有し、資力が十分あったのであるから、X社が同人に対する右貸付金を単純に貸倒れとして処理したことは、同人に対し右貸付金債務の免除をしたものというべきである」と主張している。 上記主張と本件理由付記とを比較してみると、本件理由付記は、貸倒金に係る各債務ついて、A税理士に対する債務であると認定するための具体的事実、その根拠資料、その判断過程を記載していないことが浮かび上がってくる。 以上からすると、本件理由付記は、上記(1)①ないし③のいずれも満たさず、法の求める理由付記として十分なものではないと考える。 (3) 更なる議論 ~借地権相当額の売却益に係る理由付記~ 本件訴訟においては、要旨次のように記載された理由付記の十分性も争われている。 上記理由付記について、否認対象である取引の特定の可否の問題を措くとしても、どのような理由から、取締役NがD信金から受領した27,000,000円の中に、X社の借地権相当額の売却益2,000,090円が含まれていると判断したのか、その根拠資料はいかなるものか、借地権相当額の売却益の算出根拠はいかなるものか、という点が記載されていないという問題がある。 本判決は、次のとおり、取引当事者として容易に理解できる事項や一般に了知されている事項などを勘案して、理由付記に不備はないと判断した。 本判決は、売却益の金額の算出根拠についての記載がない上記理由付記についても不備はないと判断するにあたり、売却益の算出方法が一般に了知されていることのみならず、本件はX社の帳簿書類に計上されている売却益の数額を否認する場合でないことを指摘している点にも注意が必要である。 *  *  * 次回は、「子会社に対する貸倒損失が寄附金に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 247(掲載号)
#泉 絢也
2017/12/07

〔経営上の発生事象で考える〕会計実務のポイント 【第17回】「工事進行基準案件で見積りの変更が必要な場合」

〔経営上の発生事象で考える〕 会計実務のポイント 【第17回】 「工事進行基準案件で見積りの変更が必要な場合」   仰星監査法人 公認会計士 田中 良亮   1 工事契約に係る認識の単位 《解説》 建設業では、施工を進めていくなかで、施主の要望に応じた設計変更や追加工事を行う場合がある。このうち、当初の契約とは別の認識の単位とすべき工事の追加、内容の変更等については、既存の契約部分とは独立して会計処理を行うことになる。 例えば、工事の追加がなされた場合で、追加部分に関する対価の確定的な請求権が、当初の契約の対象とされた工事に関する対価と独立して獲得されるときには、追加部分は当初の契約に係る部分とは別の認識の単位を構成することになる。 一方、工事の追加、内容の変更等が当初の工事契約とは別の認識単位として扱われないものは、見積りの変更として会計処理を行うことになる(工事契約に関する会計基準の適用指針20)。 実務的には、別の認識の単位を構成するような追加契約が締結される例はあまり多くないものと考えられるが、当該変更契約が実質的に別の取引単位を構成しているか否か、慎重に検討する必要がある。   2 工事契約に係る認識基準 《解説》 (1) 工事収益総額の信頼性をもった見積り 信頼性をもって工事収益総額を見積るためには「対価の定め」が必要であり、今回の場合のように設計変更・追加工事が見込まれる場合には、当事者間で合意されていることが明確な契約書等で定められている金額に加えて、一部又は全部が将来の不確実な事象に関連付けて定められている金額も合わせて検討する必要がある。 なお、工事契約の変更により対価の定めが変更される場合には、そのことが当事者間で実質的に合意され、かつ、合意の内容に基づいて、対価の額を信頼性をもって見積ることができることとなった時点で工事収益総額の見積りに含めるものとする(工事契約に関する会計基準の適用指針5)。 【図1】 工事収益総額の見積り (2) 工事原価総額の信頼性をもった見積り 工事原価総額は、工事契約に着手した後も様々な状況の変化により変動することが多い。このため、信頼性をもって工事原価総額の見積りを行うためには、こうした見積りが工事の各段階における工事原価の見積りの詳細な積上げとして構成されている等、実際の原価発生と対比して適切に見積りができる状態となっており、工事原価の事前の見積りと実績を対比することによって、適時・適切に工事原価総額の見積りの見直しが行われる必要がある。 この条件を満たすためには、当該工事契約に関する実行予算や工事原価等に関する管理体制の整備が不可欠であると考えられる。このため、工事契約に金額的重要性がない等の理由により、個別にこうした管理が行われていない工事契約については、工事進行基準の適用要件を満たさないことに留意する必要がある(工事契約に関する会計基準50)。 通常、建設業においては、長期間かつ大規模の工事を受注する前段階において積算部門等で実行予算を作成していると考えられることから、進捗に応じて当該実行予算の見直しを実施し、適時に工事原価総額の見積りに反映しなければならず、追加工事等が発生した場合には、当該追加工事も含めた工事原価総額の見積りを行う必要がある。 (3) 決算日における工事進捗度 決算日における工事進捗度を見積る方法として原価比例法を採用する場合には、工事原価総額の信頼性をもった見積りの要件が満たされれば、通常、決算日における工事進捗度も信頼性をもって見積ることができる(工事契約に関する会計基準13)。 しかし、工事契約の内容によっては、原価比例法以外にも決算日における工事進捗度をより合理的に把握する方法もあり得ると考えられる。このような場合には、直接作業時間や施工面積を基準とした原価比例法以外の方法が適用されることがある。 また、原価比例法による場合であっても、発生した工事原価が工事原価総額との関係で、決算日における工事進捗度を合理的に反映しない場合には、これを合理的に反映するように調整が必要となる。 (4) 工事完成基準の会計処理 工事進行基準を適用する要件を満たさないため工事完成基準を適用している工事契約について、その後、単に工事の進捗に伴って完成が近づいたために成果の確実性が相対的に増すことがある。しかし、このことのみをもって途中で工事契約に係る認識基準の変更を容認することは、収益認識の恣意的な操作のおそれがあり、適切ではないと考えられている(工事契約に関する会計基準55)。 しかし、当初に成果の確実性が認められないために、工事進行基準を適用できないケースの中には、本来、工事の着手に先立って定められるべき工事収益総額や仕事の内容等といった工事契約の基本的な内容の決定が遅れる場合もあり、その後、工事契約の基本的な内容が決定されるなど、工事進行基準適用上の障害が取り除かれた時点から、工事進行基準を適用することになる。 さらに、当初に成果の確実性が認められ、工事進行基準を適用していた工事契約についても、事後的な事情の変化により成果の確実性が失われた場合には、それまでに計上した工事収益及び工事原価の修正をすることなく、それ以降の工事収益及び工事原価について工事完成基準を適用することとなる(工事契約に関する会計基準の適用指針13~19参照)。 【図2】 工事契約に係る認識の概念フロー   3 工事契約から損失が見込まれる場合 工事損失引当金の計上の要否は、企業会計原則注解18で定められている引当金の認識要件に照らして検討する。 工事損失の発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、工事契約の全体から見込まれる工事損失(販売直接経費を含む)から、当該工事契約に関して既に計上された損益の額を控除した残額(すなわち、当該工事契約に関して、今後見込まれる損失の額)について、工事損失引当金を計上することになる(工事契約に関する会計基準63)。 当初契約で採算のとれている工事であっても、設計変更や追加工事の発生により、工事損失の発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、その時点から工事損失引当金の計上が必要となる点に留意が必要である。 【図3】 追加契約に伴う将来損失の発生   【検討事項のチェックリスト】 ~工事進行基準案件で見積りの変更が必要な場合~ ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)

#No. 247(掲載号)
#田中 良亮
2017/12/07
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