公開日: 2018/03/01 (掲載号:No.258)
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~税務争訟における判断の分水嶺~課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第18回】「従業員等の横領行為に係る損害賠償請求権の益金計上時期が争われた事例」

筆者: 佐藤 善恵

~税務争訟における判断の分水嶺~

課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から

【第18回】

「従業員等の横領行為に係る損害賠償請求権の益金計上時期が争われた事例」

 

税理士 佐藤 善恵

 

本連載の趣旨

課税庁の審理室や訟務官室が作成した「判決情報」や「判決速報」は、課税庁が、現場の調査担当者に向けて事例を紹介するための内部文書です。これらで取り上げられる事例には、あまり知られていない判決等も含まれていますが、どれもが税務調査の現場にフィードバックが必要と考えられているという点において重要な事例といえます。

本連載は、課税庁が調査担当者に向けて発信している判決等の要旨をご紹介するとともに、その判断の分水嶺がどこにあったかを検討し、さらに、実務上の留意点や裁判所の考え方を示唆しようとするものです。

なお、「判決情報」等は、TAINSデータベース(※)から取り出すことができますので、毎回、末尾にTAINSコードを記載いたします。

(※) 一般社団法人日税連税法データベースが運営する税務関連情報データベース

 

平成21年2月18日東京高裁(納税者敗訴確定)

平成21年7月10日最高最第二小(いわゆる「日本美装事件」)

(※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。

〔概要等〕

資本金5,000万円の同族会社であるX社は、その経理部長()の外注費の水増し計上等によって金員が詐取されていた(本件詐取行為)。そのため、X社の平成12年10月1日から平成13年9月30日までの事業年度及び平成14年10月1日から平成15年9月30日までの事業年度(これらの2事業年度を併せて「本件各事業年度」)に架空外注費も含めた金額が外注費として計上されていた。

原処分庁は、税務調査において本件詐取行為を把握し、架空外注費の損金算入を否認する内容の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行った(平成16年10月19日付)(なお、処分理由は、損害賠償請求権を損害発生時に益金計上すべきというものではない点に留意が必要である)。

X社の主張は、架空外注費計上による損害額は本件詐取行為のあった各事業年度の損金に算入される一方で、に対する損害賠償請求権は、同事業年度の益金には算入されないというものである。

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~税務争訟における判断の分水嶺~

課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から

【第18回】

「従業員等の横領行為に係る損害賠償請求権の益金計上時期が争われた事例」

 

税理士 佐藤 善恵

 

本連載の趣旨

課税庁の審理室や訟務官室が作成した「判決情報」や「判決速報」は、課税庁が、現場の調査担当者に向けて事例を紹介するための内部文書です。これらで取り上げられる事例には、あまり知られていない判決等も含まれていますが、どれもが税務調査の現場にフィードバックが必要と考えられているという点において重要な事例といえます。

本連載は、課税庁が調査担当者に向けて発信している判決等の要旨をご紹介するとともに、その判断の分水嶺がどこにあったかを検討し、さらに、実務上の留意点や裁判所の考え方を示唆しようとするものです。

なお、「判決情報」等は、TAINSデータベース(※)から取り出すことができますので、毎回、末尾にTAINSコードを記載いたします。

(※) 一般社団法人日税連税法データベースが運営する税務関連情報データベース

 

平成21年2月18日東京高裁(納税者敗訴確定)

平成21年7月10日最高最第二小(いわゆる「日本美装事件」)

(※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。

〔概要等〕

資本金5,000万円の同族会社であるX社は、その経理部長()の外注費の水増し計上等によって金員が詐取されていた(本件詐取行為)。そのため、X社の平成12年10月1日から平成13年9月30日までの事業年度及び平成14年10月1日から平成15年9月30日までの事業年度(これらの2事業年度を併せて「本件各事業年度」)に架空外注費も含めた金額が外注費として計上されていた。

原処分庁は、税務調査において本件詐取行為を把握し、架空外注費の損金算入を否認する内容の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行った(平成16年10月19日付)(なお、処分理由は、損害賠償請求権を損害発生時に益金計上すべきというものではない点に留意が必要である)。

X社の主張は、架空外注費計上による損害額は本件詐取行為のあった各事業年度の損金に算入される一方で、に対する損害賠償請求権は、同事業年度の益金には算入されないというものである。

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連載目次

~税務争訟における判断の分水嶺~
課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から

筆者紹介

佐藤 善恵

(さとう・よしえ)

税理士
京都大学MBA、京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学、税法学会会員

同志社大学大学院総合政策科学研究科非常勤講師等・近畿税理士会 調査研究部専門委員を経て、2010~2014年大阪国税不服審判所 国税審判官、2016年5月~大阪市行政不服審査会委員(会長代理・税務第1部会部会長)、2019年4月~神戸学院大学法学部教授

HP http://www.yoshie-sato.com/

【主な著書等】
『仮想通貨をめぐる法律・税務・会計』(共著)ぎょうせい
Q&A 実務に役立つ法人税の裁決事例選』清文社
『税制改正のポイント(小冊子)』(共著)清文社
Q&A 税務調査・税務判断に役立つ 裁判・審査請求読本』清文社
『判例裁決から見る加算税の実務(第2版)』税務研究会出版局
社長のギモンに答える法人税相談室』清文社
『税理士のための相続をめぐる民法と税法の理解』(共著)ぎょうせい
『税務訴訟と要件事実論』(共著)清文社

 

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