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M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-法務編- 【第5回】「労務分野の調査(前編)」

M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -法務編-   弁護士法人ほくと総合法律事務所 弁護士 横瀬 大輝   ←(前回) | (次回)→   《第5章》 -労務- 【第5回】 「労務分野の調査(前編)」   はじめに 法務デューデリジェンスにおいては、対象会社における簿外債務の存在や金額を調査・検討することが行われる。労務分野の法務デューデリジェンスも、この簿外債務の存在や金額の調査・検討を行うことを主たる目的の1つとして行われる。 とりわけ、未払残業代や名ばかり管理職問題、正規・非正規の待遇格差などは、あらゆる業態で問題となり得るものであり、特に注意が必要な問題の1つである。以下の「1」では、簿外債務となる代表的な問題、すなわち、未払残業代、名ばかり管理職、定額残業代制度の問題を取り上げ、「2」では、簿外債務を発見した場合の対応策について取り上げる。 なお、次稿では、簿外債務の代表的な問題のうち、正規・非正規の待遇格差に関する問題を取り上げ、また、労務分野に関するそれ以外の諸問題を取り上げる。   1 簿外債務の調査-未払残業代- (1) 問題の所在 簿外債務の中でも特に問題となるのが、まず、未払残業代問題である。 使用者は、労働基準法37条により、労働者の労働時間に応じて、一定の割増率を掛けた残業代を支払う必要がある。労働基準法上の「労働時間」は、客観的に使用者の指揮命令下にあると評価できる時間を指すが、実務においては、客観的には使用者の指揮命令下にあると評価されるにもかかわらず、そのうち使用者が認めた時間のみを労働時間として計算することがある。 例えば、30分未満の残業は切捨て処理をしている場合(本来は45分残業しているにもかかわらず30分として計算するなど)、始業時間前の着替えや朝礼の時間は労働時間として計算しない処理をしている場合などが、これに当たる。あるいは、そもそもの労働時間の管理体制が不十分であるため、労働時間を計算することができないこともよくある。このような場合には、労働者には一定の残業代の請求権が存在することになる。 例えば、仮に基礎賃金が2,500円の従業員が30名存在する会社で、1ヶ月22日間の労働日数で、全員について一律1時間ずつ未払残業代があると仮定して試算すると、2年間の合計での未払残業代は、下記のとおり、実に4,950万円にもなる。なお、労働債務の消滅時効は、労基法115条により2年間とされている。 2,500円 × 1時間 × 1.25 × 22日 × 30人 × 24ヶ月 = 4,950万円 全従業員について1日1時間の未払残業代があるという極端な例ではあるが、金額のインパクトの程度のイメージは掴めるのではないだろうか。 (2) 未払残業代の算出方法 では、法務デューデリジェンスにおいて、どのような方法で未払残業代を試算するべきか。この点については、例えば以下のような方法が考えられる。 ①は、最も客観的かつ正確な未払残業代を計算することができるため、法務デューデリジェンスにおいては、本来的には①によって未払残業代を算出するのが望ましいといえよう。もっとも、①を採用するためには、十分な資料の収集とそれに基づく計算(労力)が必要となるため、資料の収集状況や法務デューデリジェンスに与えられた期間等との関係で、現実問題として①を採用することができないケースもあるし、そういったケースが多いこともまた事実である。そのため、②~④の方法などを用いて試算対象を限定せざるを得ないケースも多い。 ③は、労力を多少抑えつつも、想定され得る最大の金額を算出したい際に有用であろう。②は①の方法を簡便にしたもの、④は③を簡便にしたものであり、正確性は多少欠けることとなるが、①や③に比べれば労力を一定程度抑えることができる。 ①から④の方法の中で、どのような方法で試算をするかは、未払残業代を算定する目的を踏まえて、予想される未払とされる労働時間の長短、従業員の数、労働時間の管理状況(資料の状況)、従業員が未払残業代の請求をしてくる可能性の程度、調査に要する期間及び法務デューデリジェンス期間の長短、調査に伴う対象事業者への負担の程度、法務デューデリジェンスに充てることのできるコストなどの事情を総合的に考慮したうえで、いずれの方法が合目的的かをクライアントと協議し、クライアントが決定することになる。 ①から④は、タイムカードやパソコンのログなどの客観的な証拠によって労働時間を算出できることが前提となる。他方で、タイムカードやパソコンのログなどの客観的な証拠によって労働時間を算出できない場合はどうか。 筆者が経験した例では、建設会社における現場の現場代理人の例がある。現場代理人は、作業日には毎日日報を提出しているが、日報には毎日いわゆる「9時-5時」で作業をした旨が記載されているものの、毎日「9時-5時」で統一されることは明らかに不合理である。 そこで、マネジメント層のヒアリングにおいて、想定され得る1日の残業時間の平均時間を聴取したうえで、一定の残業があったものと仮定して、⑤の方法によって全体の未払残業代の見込み額を推計するという方法を採用したことがある。 これらを表で整理すると、下表のとおりである。 (3) 名ばかり管理職 未払残業代問題と同様に、よく問題となる類型として、いわゆる名ばかり管理職問題がある。労基法41条2号は、「監督若しくは管理の地位にある者」については割増の残業代を支払う必要はないとしているところ、名ばかり管理職とは、実際には労基法41条2号には該当しないにもかかわらず、会社独自の基準で管理職と定められていることで、割増賃金が支払われていない従業員のことを指す。 仮に会社独自の基準で管理監督者として処遇していたとしても、労基法上の管理監督者には該当しない場合には、割増賃金を支払う必要があるため、この点に簿外債務が存在することになる。労基法41条2号にいう管理監督者に該当するかどうかは、経営への関与の有無・程度、部署・部門を統括する権限の有無・程度、労働時間の裁量の有無・程度、管理監督者としての地位に見合った待遇の有無・程度などによって判断される。 労務に関する法務デューデリジェンスにおいては、基本的には、会社が管理監督者として処遇している人物・役職の全員について、労基法上の管理監督者に該当するかどうかについて業務実態等に関するヒアリングや資料の調査を踏まえて、検討することになるであろう(ただし、会社が管理監督者として処遇している人物・役職が相当多数に上るという例外的な場合は、職位が下位のもの、すなわち管理監督者に該当するかどうかの判断が変わり得る可能性が高い職位のものに限定してヒアリングを行うということも考えられる)。 そのうえで、労基法上の管理監督者に該当しないと判断された人物・役職については、上記(2)と同様の方法により、2年間分の未払残業代の金額を算定(試算)することになる。 (4) 定額残業代制度 定額残業代とは、残業代の金額を、就業規則等で定額(固定)にする制度をいう。多くの会社がこの定額残業代制度を導入しているが、この定額残業代制度が法的に有効といえるために、一定の要件が必要な点に注意が必要である。 例えば、就業規則に「主任職には、月額2万円の定額残業代を支払う。」と定めている例などがある。しかし、定額残業代が法的に有効と認められるためには、①定額残業代と通常の賃金とが明確に区別されていることや、②定額残業代分が具体的に何時間分の労働時間の残業代とされているのかが明確にされていることなどが必要となるため、上記の例では法的に有効な定額残業代制度とはならない。 仮に法的に有効でない定額残業代制度を採用していた場合には、たとえ定額残業代分を支払っていたとしても、それは労基法上の残業代の支払いには該当せず、追加で、残業代を支払わなければならなくなる。そのため、対象会社が定額残業代制度を導入していたとしても、当該制度が有効であるかどうかについて、法務デューデリジェンスにおいて十分な検討が必要である。 なお、定額残業代制度が法的に有効であったとしても、実際の労働時間によって算出される残業代が定額残業代を超過する場合には、当該超過分についても残業代の支払義務があるため、この点にも注意が必要である。   2 簿外債務を発見した場合の対応策 上記1(1)~(4)の調査の結果、簿外債務が発見された場合には、クライアントや財務デューデリジェンスチームとの間で、どのように企業価値評価や買収価格に取り込むか協議をすることになる。 もっとも、簿外債務の正確な金額が把握し得ない場合や金額の増額が見込まれる場合(あるいは増額の可能性があり得る不安がある場合)には、次善策として、表明保証条項による対応をすることが考えられる。 すなわち、対象会社との間のM&A契約において、未払残業代に関する簿外債務が存在しないことについての表明保証条項を追加し、事後、従業員から未払残業代の請求をされた場合に表明保証条項違反として対象会社に対して損害請求をするという方法である。筆者の知る限りは、表明保証条項での対応を採ることが多いようである。   おわりに 本稿では、簿外債務となる代表的な問題のうち、未払残業代、名ばかり管理職、定額残業代制度の問題を取り上げた。 次稿(後編)では、簿外債務代表的な問題のうち、正規・非正規の待遇格差に関する問題を取り上げ、また、労務分野に関するそれ以外の諸問題を取り上げる。 (了)

#No. 286(掲載号)
#横瀬 大輝
2018/09/20

中小企業経営者の[老後資金]を構築するポイント 【第5回】「中小企業経営者のリタイア後の支出」

中小企業経営者の [老後資金]を構築するポイント 【第5回】 「中小企業経営者のリタイア後の支出」   税理士法人トゥモローズ   前回は、老後資金を構築するポイントとして、「中小企業経営者のリタイア後の収入源」について解説を行ったが、今回は収入に対する「支出」について確認をしていきたい。 総務省が毎年公表している「家計調査報告」によると、高齢者夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみ)の家計における収支状況は下図のとおり、実収入209,198円に対して支出263,717円(非消費支出28,240円+消費支出235,477円)と、高齢者夫婦無職世帯の平均値ではあるが、実質的に5万円以上の赤字となっている。 【高齢夫婦無職世帯の家計収支-2017年-】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出典) 総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)家計の概要」P28 さらに、中小企業の経営者の場合には、その生活水準は勤労者世帯に比べかなり高くなっており、無職世帯となったリタイア後においても、一度上がってしまった生活水準を下げることは難しいはずである。 リタイア後に一定水準の生活を維持するために、リタイア後の収入に対する支出を把握することで、事業承継の前にどれくらいのストックが必要となるか、もしくは前回確認したリタイア後の収入源の確保、そして、事業承継により最低限得ておきたい対価の目安とすることができるであろう。   1 居住費 ① 住宅ローン 中小企業経営者の場合には、事業が軌道に乗るまで自宅の購入を控えているケースが多い。というのも、実際にスタートアップ時期や赤字経営である場合には、住宅ローンの審査が厳しいため、住宅ローン自体が組めないケースが見受けられる。また、物件の購入金額自体も一般のサラリーマンと比較すると高額になる傾向にある。 このような場合には、事業承継後においても、未だ住宅ローンの支払いが残っていることが想定されるため、予め、繰り上げ返済やその分のリタイア後の支出を見計らっておく必要がある。 ② 役員社宅 中小企業経営者の場合、現役時代は役員社宅として法人契約の住居に低額で賃貸暮らしをしている場合がある。しかし、事業承継後には常勤役員を前提とする役員社宅への居住はできないため、そのまま居住を続けるためには、個人契約への切り替えを行い、通常の第三者として支払うべき家賃を支払っていく必要がある。 また、リタイア後に見込まれる家賃総額や個人の相続財産の状況によっては、買い取りや新たな居住用不動産の取得も検討すべきであろう。保有財産の状況に応じて、相続財産の分割状況や相続税の納税資金に問題がないようであれば、対策の一貫として小規模宅地等の特例の適用が採れるような特定居住用宅地等の検討もすべきであろう。 なお、不動産が法人所有である場合には、同族間とはいえ、法人から個人に対する不動産の譲渡として第三者間取引を前提とした時価設定となるので、留意する必要がある。   2 交際費 上述した「家計調査報告」の「世帯主の職業別1世帯当たり1か月間の収入と支出」によると、勤労者世帯における消費支出の内に占める教養娯楽支出の割合は「9.7%」であり、一方で法人経営者の同割合は「12%」となっている。個人支出として法人経営者の交際費が多くなっているのが分かるが、実際には、法人経営者の場合には、個人の財布以外に、むしろ法人の費用としての交際費の支出がより多く計上されている。 中小企業における1社当たりの交際費支出の金額は、下図を見て分かるとおり、資本金1,000万円以下~1億円以下の法人でその規模が大きくなるに応じて高額とはなるが、年間854千円~4,327千円となっている。その全てが経営者関連の交際費ではないとしても、かなりの金額が経営者に関連した交際費であることが想定される。 今までは事業に関連した会食や接待ゴルフ等であれば法人の財布から捻出できていたものが、リタイア後には法人の交際費としては計上できず、個人の財布から出ていくことになる。 【資本金階級別交際費等支出額の状況】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出典) 国税庁「会社標本調査結果(平成28年度分)」P20 ※下線筆者   3 老人ホーム 一言に老人ホームといっても、公的施設である特別養護老人ホームから民間が経営する有料老人ホームまで、その対象とする個人や役割に応じて様々な種類の施設が存在する。 費用については、入居一時金と月額利用料から構成される。介護保険施設は入居一時金の設定がなく月額利用料のみで入居できるが、民間の場合には多額の入居一時金が生じるケースがあり、その設定はゼロ円~数億円と施設によってかなりの幅がある。月額使用料についても、居住費、食費など数万円から数十万円、場合によっては100万円超といった高級老人ホームまで様々である。   4 不動産所得経費 現役時代又は引退後に資産運用の一環として投資用不動産を取得していた場合には、その賃料収入は老後の重要な収入源となり得るが、その一方で不動産の維持管理のための支出も見込んでおく必要がある。 通常の維持管理のための管理費はもちろんのこと、投資対象のマンションやアパートの老朽化が懸念される場合には、大規模修繕のための大きな支出が生じる可能性がある。物件の規模や築年数にもよるが、数千万円規模での修繕費用がかかることも珍しくはないので、現状の修繕積立金状況と今後の修繕計画の中で、リタイア後に必要となる支出をあらかじめ見積もっておくことが重要である。   5 相続税の納税資金 相続財産の多くが土地などの不動産である場合や中小企業経営者が事業承継において自社株式を引き継がず保有したままリタイアした場合には、相続財産の内に換銀性の低い資産の占める割合が高くなっていることが想定され、納税資金が不足する可能性がある。 相続税は相続人が納税義務を有するものではあるが、自らが遺した遺産が、むしろ相続人の負担とならないようにするためにも、できるだけ遺産の内で相続税の納税資金の確保ができるように準備する必要がある。不動産や自社株式の相続については、論点が多岐にわたるため「相続対策と老後資金の関係」の項において、改めて詳細を解説することとする。 (了)

#No. 286(掲載号)
#税理士法人トゥモローズ
2018/09/20

《速報解説》 ASBJ、「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等を改正~IFRS第9号適用在外子会社等の資本性金融商品に係る取扱いを規定~

《速報解説》 ASBJ、「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等を改正 ~IFRS第9号適用在外子会社等の資本性金融商品に係る取扱いを規定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年9月14日、企業会計基準委員会は、以下のものを公表した。これにより、平成30年5月28日から意見募集していた公開草案が確定することとなる。 これは、在外子会社等において国際財務報告基準(IFRS)第9号「金融商品」(以下「IFRS第9号「金融商品」」という)を適用し、資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合の連結財務諸表上の取扱いを規定するものである。 公表に際して、「主なコメントの概要とそれらに対する対応」が公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」 在外子会社等においてIFRS第9号「金融商品」を適用し、資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合、連結決算手続上、次のように修正する。   Ⅲ 「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」 持分法適用関連会社においては、「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」に準じて処理を行う場合には、当該修正を行う。   Ⅳ 適用時期等 (了)

#No. 285(掲載号)
#阿部 光成
2018/09/19

《速報解説》 総務省が「ふるさと納税に係る返礼品の見直し状況についての調査結果」を公表~総務省の自粛要請にもかかわらず高額返礼を行う地方団体は9月1日時点で246団体~

《速報解説》 総務省が「ふるさと納税に係る返礼品の見直し状況についての調査結果」を公表 ~総務省の自粛要請にもかかわらず高額返礼を行う地方団体は9月1日時点で246団体~   Profession Journal編集部   平成30年9月11日、総務省ホームページにて「ふるさと納税に係る返礼品の見直し状況についての調査結果」が公表された。 平成20年度の税制改正で創設された「ふるさと納税」は、納税者が自ら選択した地方自治体に対して寄附を行うことで、寄附した人の自己負担分の2,000円を除いた寄附金の額が住民税などから控除される制度であり、平成27年度改正では利便性向上のためワンストップ特例制度も導入された。 同制度が地方活性化に対して一定の成果を上げる一方で、「寄附のお礼」としての位置づけであった返礼品を目的に、各地方自治体を比較検討した上で寄附を行う納税者が急増している。 それに伴い、一部の地方自治体が、寄附を集めるために高額な返礼品や地場産品以外の返礼品を用意するなど、いわゆる「返礼品競争」が加熱し、ふるさと納税の「生まれ育ったふるさとに貢献できる制度」、「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる制度」という主旨からの乖離がみられたため、総務省より地方自治体に対して過度な返礼品の自粛を要請する通知が出されていた。 今回、総務省から公表された資料によれば、平成30年9月1日時点で返礼割合が3割を超える団体は246団体(全体の約14%)となっており、そのうち10月末までに返礼品を見直す意向のない団体は174団体と全体の約10%にのぼる。 【返礼割合3割超の返礼品を送付している団体数の推移】 (出典) 総務省資料「ふるさと納税に係る返礼品の見直し状況についての調査結果」より また、地場産品以外の返礼品を送っていた235の地方団体の見直し状況も公表されており、各団体の具体的な返礼品の内容を確認することができる。例えば、北海道由仁町の「スカイツリー搭乗関連コース」や東京都八王子市の「ベネチアレースグラス」、千葉県山武市の「スリランカ国の特産品詰合せ」などは特徴的な地場産品以外の返礼品といえよう。なお、9月1日時点で190団体において見直しが完了していない状況だ。 *  *  * 一部報道では、上記のような高額返礼や地場産品以外の返礼を行うケースを適用対象から除外するといった制度を見直す動きも報じられているが、制度の見直しが行われた場合、返礼品を提供している事業会社への影響も想定されることから、31年度の税制改正における議論を含め、今後の動向には注視が必要だ。 (了)

#No. 285(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/09/18

プロフェッションジャーナル No.285が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年9月13日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.285を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/09/13

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第68回】「統計数値が租税法解釈に与える影響(その2)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第68回】 「統計数値が租税法解釈に与える影響(その2)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦   Ⅲ 租税法における統計数値が及ぼす影響 統計資料が立法や行政執行に用いられていることは既述のとおりであるが、以下では、統計数値が租税法解釈に影響を及ぼした具体的事例を確認しておきたい。 1 大島訴訟 租税法上の最も重要な判例の1つにいわゆる大島訴訟(サラリーマン税金訴訟)、最高裁昭和60年3月27日大法廷判決(民集39巻2号247頁)がある。これは、本件事件当時の昭和40年代における「サラリーマンの重税感」を背景に非常に注目を集めた事例であるが、裁判所の租税立法に対する違憲審査の基準や、租税法律主義、租税公平主義を論じた判例として、つとに有名である。 ここで大島訴訟のすべての論点を確認することはできないが、以下では裁判所の認定した統計数値と、それらが租税法解釈に影響を及ぼしたと推察される箇所を取り上げることとしたい(以下は、本件事件の第一審京都地裁昭和49年5月30日判決(民集39巻2号272頁)の判示である。)。 このように、京都地裁は、所得者数と納税者数から算出される納税者割合を確認し、給与所得者、事業所得者及び農業所得者の間に大きな開差が見られることを指摘する。 すなわち、京都地裁は、給与所得者、事業所得者及び農業所得者の間に大きな差があるとしており、その「右三所得間の昭和42年における所得税の課税範囲の比率は、給与所得の前記数字を10とすれば、事業所得は4.2、農業所得は0.96と非常に大きな相違がある」としている。 続けて、同地裁は、「給与所得と事業所得、農業所得との間の捕捉率の格差の有無を検討するには、さらに所得種類別の所得階級別分布状況、所得者の世帯構成等の事情を考察しなければならない」として、各種の統計数値を認定している。以下では、判示の数値を表にまとめたものを掲載しておきたい(比較の場合は給与所得者を100としたもの。以下同じ。)。 【図表1:所得金額等】 図表1によると、所得者一人当たりの所得水準については、農業所得者は給与所得者より幾分低く、事業所得者は、逆に給与所得者より幾分高いとの事実が分かる。 【図表2:世帯員数等】 続いて、京都地裁は、各世帯の扶養人数等についても統計数値を基に検討を加えている。図表2における*1及び*2については、「扶養人員のあるものの割合等の数字を直接に認めるに足りる証拠を欠く」としており具体的な数字は明らかにされていないが、結論において「事業所得者および農業所得者は一世帯当たりの世帯員数が給与所得者より0.9人(事業所得者)ないし1.8人(農業所得者)ほど多いという事実」に照らすと、「事業所得者および農業所得者のいずれとも、所得者のうち扶養人員のある者の一人当たり平均扶養人員は給与所得者におけるよりも、・・・多少の程度は多いものと認めるのが相当である。」と結論付けている。 【図表3:その他の統計数値】 そして、京都地裁は、このように各種数値を検討した結果、「一方において、給与所得と事業所得および農業所得との間には、納税者割合および所得税の課税範囲について著しく大きな差があるところ、他方において、所得者一人当たりの所得金額ないし国民所得、所得水準およびこれらの伸び率には特に大きな差はな〔い。〕」とする。 このように、京都地裁は、各種統計数値を基に三所得者間の所得の補足の程度の相違について言及しているのである。それによれば、給与所得の捕捉の程度は、事業所得及び農業所得の捕捉よりもある程度高いことが推察されるという。 もっとも、同地裁は、結論的には次のように述べており、結局において原告の主張は排斥されているが、各種数値を基に課税実務の現状を把握した裁判例として注目しておきたい。 2 総評サラリーマン税金訴訟 次に、いわゆる総評サラリーマン税金訴訟も確認しておきたい。この事例は、給与所得者に対する所得税の源泉徴収制度及び給与所得控除制度は給与所得者を事業所得者等に比して不当に不利益に取り扱っているものとはいえないから、憲法14条1項に違反しないとした事例である。 東京地裁昭和55年3月26日判決(行集31巻3号673頁)は、まず、給与所得者の年間収入と支出について次のようなデータを参考にしている。 また、給与所得者における職務関連費用は通常使用者が負担することや、通勤手当の一定範囲内の金額(所法9五)等については非課税とされていること、そして上記のような実態を踏まえ次のように述べる。 この事件は控訴されたが、東京高裁昭和57年12月6日判決(行集33巻12号2399頁)においても維持されている。 なお、憲法25条違反についても争われたが、最高裁平成元年2月7日第三小法廷判決(集民156号87頁)は、「本件の場合、上告人らは、もっぱら、そのいうところの昭和46年の課税最低限がいわゆる総評理論生計費を下まわることを主張するにすぎないが、右総評理論生計費は日本労働組合総評議会(総評)にとっての望ましい生活水準ないしは将来の達成目標にほかならず、これをもって『健康で文化的な最低限度の生活』を維持するための生計費の基準とすることができないことは原判決の判示するところ」とし、所得税法(昭和47年法律第31号改正前)中の給与所得に係る課税関係規定が、給与所得者の「健康で文化的な最低限度の生活」を侵害するとはいえず、憲法25条に違反しないとしている。 最高裁は、納税者(上告人)が主張する「総評理論生計費」について「健康で文化的な最低限度の生活」を維持するための生計費の基準とすることはできないとしている。統計数値を用いる際に、そのデータの意味するところや信憑性等についてまず判断しなければならないことはいうまでもない。 (了)

#No. 285(掲載号)
#酒井 克彦
2018/09/13

外資系企業の税務Q&A 【第1回】「米国親会社が日本子会社の株式を譲渡した場合における課税関係(不動産保有なし)」

外資系企業の税務Q&A 【第1回】 「米国親会社が日本子会社の株式を譲渡した場合における課税関係(不動産保有なし)」   公認会計士・税理士・米国公認会計士 中島 崇賢     Q 当社は米国法人です。世界各国に子会社があり、日本にも100%子会社を有しています。今般、グローバルグループ内における資本関係の整理・再構築の一環として、日本子会社の株式をすべて同一グループ内の英国法人に売却することになりました。 今回の売却に関して、当社(米国法人)の日本における税務上の留意点について教えてください。 なお、当社と日本子会社の状況は下記のとおりです。   A 貴社(米国法人)による日本子会社株式の譲渡は、日本の法人税法上、事業譲渡類似株式の譲渡に該当し、譲渡益が発生する場合は、法人税が課されます。しかし、貴社が日米租税条約上の特典条項を満たし、租税条約届出書等を適時適切に提出する場合は、日本における課税は免除されます。   解 説 1 はじめに グローバル企業グループにおいて、事業の取得や売却等により、グローバルで資本関係を整理・再構築を行い、日本子会社株式についてもグループ内で譲渡されることがある。 グループ内で資本関係を整理する場合、第三者への売却ではないことから、外国親会社と日本子会社の双方において、日本における課税関係の検討等が十分に行われないまま実行されているケースが見受けられるので留意が必要である。   2 法人税法上の取扱い 日本の法人税法上、日本にPEを有していない外国法人は、一定の国内源泉所得のみが課税対象となる。 株式の譲渡は、原則として居住地国課税とされているが、例外として、源泉地国においても課税される場合がある。 課税される場合のひとつに、「事業譲渡類似株式の譲渡」がある。 事業譲渡類似株式の譲渡とは、次の(1)(2)の要件に該当する株式の譲渡をいう(法法138①三、法令178①四ロ・⑥)。 (注1) 特殊関係株主等とは、内国法人の株主等およびその株主等の同族関係者その他これに準ずる関係のある者をいう(法令178④)。 (注2) 「5%以上譲渡したかどうか」の判定においては、譲渡事業年度の中途においてその内国法人が増資等を行い発行済株式数の変動があった場合でも、その譲渡事業年度において最初にその株式を譲渡した直前のその発行済株式の総数に基づいて計算することになる(法基通20-2-9)ので、留意が必要である。 すなわち、内国法人の特殊関係株主等のグループが、過去3年以内のいずれかの時において持株割合が25%以上となっていた内国法人の株式を1事業年度中に5%以上譲渡した場合に、その特殊関係株主等のグループに含まれている外国法人の譲渡した株式等について、国内源泉所得として課税対象とされることになる。 今回のケースでは、上記2つの要件に該当するため、事業譲渡類似株式の譲渡に該当し、譲渡益が発生する場合は、日本において法人税が課されることとなる。 PEを有しない外国法人が、事業譲渡類似株式の譲渡等に係る国内源泉所得(法法141二)を有する場合には、事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に法人税申告書を提出する必要がある(法法144の6②)。ただし、当該国内源泉所得が、租税条約の規定により法人税を課さないこととされる場合は、法人税申告書の提出は必要ない(法法144の6②ただし書)。 納税地については、PEを有しない外国法人で、日本国内にある不動産等の貸付けによる対価を受けないものは、下記のとおりとなる(法法17、法令16)。 また、国内に事務所等を有しない外国法人が、納税申告書を提出する必要があるときは、納税手続きを代行させるため、納税管理人を選任し、所轄する税務署長に届け出る必要がある(通則法117)。   3 日米租税条約上の取扱い 租税条約が国内法と異なる定めをしている場合は、租税条約の定めが優先して適用される。 日米租税条約においては、株式の譲渡益のうち次の(1)(2)に該当するものを除き、譲渡者(本件では貴社)が居住者とされる締約国(本件では米国)のみで租税を課すことができるとされている(日米租税条約13②③⑦)。 今回のケースでは、日本子会社株式の譲渡は上記のいずれにも該当しない。したがって、貴社が日米租税条約の特典条項の要件を満たすのであれば、当該株式譲渡に係る譲渡益は、日本では課税されない。 貴社は、日米租税条約の規定に基づく免除を受けるためには、下記の租税条約届出書等を、免除を受けようとする事業年度終了の日の翌日から2月以内に法人税の納税地の所轄税務署長に提出する必要がある(実施特例法省令9の2⑨)。 今回のケースにおいて、貴社が、日本において日本子会社の株式譲渡にかかる国内源泉所得のみを有する場合は、当該国内源泉所得について日米租税条約の規定により法人税を課さないこととされるため、法人税申告書の提出は必要ない。   4 まとめ 今回のケースでは、米国親会社による日本子会社株式の譲渡について、法人税法上は事業譲渡類似株式の譲渡に該当し課税対象となるものの、日米租税条約の規定により日本において課税が免除される。 ただし、前提が変われば、課税関係も変わるため、外国親会社が日本子会社の株式を譲渡する際には、日本における課税関係について事前に十分に検討することが望まれる。   (了)

#No. 285(掲載号)
#中島 崇賢
2018/09/13

企業の[電子申告]実務Q&A 【第2回】「義務化の対象となる法人の範囲」

企業の[電子申告]実務Q&A 【第2回】 「義務化の対象となる法人の範囲」   SKJ総合税理士事務所 税理士 坂本 真一郎   ●○●○解説○●○● 電子申告の義務化の対象となる法人は、次のとおりです。 上記を表にまとめると、下表のとおりとなります。 【電子申告の義務化の対象法人】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (注) 1 資本金の額等の判定は事業年度開始の日で行う。 2 資本金、出資金、持分等の定めがない法人は、原則として義務化の対象外。 ▷[ポイント1] 資本金の額等が1億円超であるかどうかについては、「事業年度開始の時」に判定します。したがって、事業年度開始後に減資を行い資本金の額等が1億円以下となった場合でも、義務化の対象となります。なお、消費税の申告において、期間特例を受けている法人の各課税期間の消費税申告についても、課税期間開始の時ではなく「事業年度開始の時」に判定します。   ▷[ポイント2] 設立根拠法に、①その資本金又は出資金自体について規定されているもの、②その資本金又は出資金の出資について規定されているもの、③前記のほか、定款に出資持分に関する定めがあることを前提とした制度が規定されているものについては、資本金の額等が1億円を超える場合に義務化対象法人に該当します。   ▷[ポイント3] 「相互会社」、「投資法人」、「特定目的会社」、「国」及び「地方公共団体」は、一律義務化対象法人となります(国及び地方公共団体は、消費税及び地方消費税の申告について対象となります)。   ▷[ポイント4] 内国法人には、公共法人(消費税及び地方消費税のみ)・公益法人等・協同組合等を含みます。 なお、人格のない社団等及び外国法人は、資本金の額等の有無にかかわらず、電子申告の義務化対象法人には含まれません。 (了)

#No. 285(掲載号)
#坂本 真一郎
2018/09/13

特別事業再編(自社株対価M&A)に係る課税繰延措置等特例制度の解説 【第3回】「課税関係の整理」

特別事業再編(自社株対価M&A)に係る 課税繰延措置等特例制度の解説 【第3回】 「課税関係の整理」   太陽グラントソントン税理士法人 マネジャー 税理士 川瀬 裕太   1 法人株主の譲渡損益の繰延べ ① 制度概要 法人が、認定特別事業再編事業者(※1)の行った産業競争力強化法の認定に係る特別事業再編計画(※2)に係る特別事業再編によりその有する他の法人(以下「特別事業再編対象法人」という)の株式等を譲渡し、認定特別事業再編事業者の株式の交付を受けた場合には、特別事業再編対象法人の株式等の譲渡について算入すべき益金の額又は損金の額は、ないこととされている(措法66の2の2①)。 (※1) 認定特別事業再編事業者とは、産業競争力強化法第25条第1項に規定する特別事業再編計画について認定を受けた法人をいう。 (※2) 特別事業再編計画とは、特別事業再編に関する計画をいい(産業競争力強化法25①)、特別事業再編とは、産業競争力強化法第2条第11項に規定する事業再編のうち、2以上の事業者が、それぞれの経営資源を有効に組み合わせて一体的に活用して、それぞれの事業の全部又は一部の生産性を著しく向上させることを目指したものであって、一定の要件に該当するものとされている(産業競争力強化法2⑫)。なお、特別事業再編計画の認定要件については前回参照。 ② 交付を受けた株式の取得価額 特別事業再編により交付を受けたその認定特別事業再編事業者の株式(以下「交付株式」という)の取得価額は、譲渡した株式等(以下「譲渡株式等」という)の譲渡直前の帳簿価額(交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)に相当する金額とされている(措令39の10の3①一)。 ③ 売買目的有価証券に該当していた場合 交付株式で、その交付の基因となった特別事業再編に係る譲渡株式等が売買目的有価証券とされていたものは、売買目的有価証券として処理する(措令39の10の3①二)。 ④ 100%グループ法人間の取引の損益 内国法人が完全支配関係のある他の法人に対して譲渡損益調整資産に該当する特別事業再編による譲渡株式等を譲渡した場合には、法人税法第61条の2第1項第1号に掲げる金額とされる譲渡原価の額を、譲渡に係る収益の額として譲渡損益調整資産の譲渡利益額又は譲渡損失額を計算することとされている(措令39の10の3①三)。   2 個人株主の譲渡損益の繰延べ ① 制度概要 個人が、認定特別事業再編事業者の行った産業競争力強化法の認定に係る特別事業再編計画に係る同法の特別事業再編によりその有する他の法人の株式等を譲渡し、交付株式の交付を受けた場合には、その株式等の譲渡はなかったものとみなし、その譲渡に係る事業所得、譲渡所得及び雑所得の課税を繰り延べる(措法37の13の3①)。 ② 交付株式の取得価額 個人が交付株式をその後に譲渡した場合の事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算において、収入金額から控除する取得費の計算の基礎となる交付株式の取得価額は、その特別事業再編に係る譲渡した株式等の取得価額(その交付株式の交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)となる(措令25の12の3)。   3 認定特別事業再編事業者が取得した特別事業再編対象法人の株式等の取得価額及び認定特別事業再編事業者における増加資本金等の額等 ① 特別事業再編対象法人の株式等の取得価額 特別事業再編計画に係る特別事業再編により取得した譲渡株式等の取得価額は、次の場合の区分に応じそれぞれ次の金額とされている(措令39の10の3②一)。 (※3) 前期期末時とは、特別事業再編対象法人の取得の日を含む事業年度の前事業年度終了の時をいう(措令39の10の3②一)。ただし、同日以前6月以内に中間申告書を提出し、かつ、提出の日から取得の日までの間に確定申告書を提出していなかった場合には、取得の日を含む事業年度開始の日以後6月の期間終了の時とされている(措令39の10の3②一)。 (※4) 簿価純資産価額とは、資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額をいい、前期期末時から取得の日までの間に資本金等の額又は利益積立金額が増加し、又は減少した場合には、増加した金額を加算し、又は減少した金額を減算した金額とされている(措令39の10の3②一)。 (※5) 発行済株式の総数は、出資の場合には総額とされている。ただし、特別事業再編対象法人が有する自己の株式又は出資を除く(措令39の10の3②一)。 ② 認定特別事業再編事業者における増加資本金等の額等 認定特別事業再編事業者におけるその交付株式の交付により増加する資本金等の額は、その特別事業再編により移転を受けた特別事業再編対象法人の譲渡株式等の取得価額とされている。ただし、取得をするために要した費用の額が含まれている場合には、その費用の額を控除した金額とされている(措令39の10の3②二)。 認定特別事業再編事業者に該当する法人が交付株式の交付の直後に2以上の種類の株式を発行している場合には、交付株式の交付に係る増加した資本金等の額を交付株式の交付の直後の価額の合計額で除し、これにその交付株式のうちその種類の株式の交付の直後の価額の合計額を乗じて計算した金額を、その種類の株式に係る種類資本金額に加算する(措令39の10の3②三)。   【課税関係のまとめ】 *  *  * 連載最終回となる次回は、上記課税関係を踏まえた具体例の紹介と特別事業再編計画の認定手続について解説する。 (了)

#No. 285(掲載号)
#川瀬 裕太
2018/09/13

〈平成30年度改正対応〉賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の適用上の留意点Q&A 【Q10】「比較雇用者給与等支給額に関する調整計算」-(1)「基準日」の意義-

〈平成30年度改正対応〉 賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の 適用上の留意点Q&A 【Q10】 「比較雇用者給与等支給額に関する調整計算」 -(1)「基準日」の意義-   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   [Q10] 平成30年度の税制改正によって、組織再編を行った場合の比較雇用者給与等支給額に関する調整計算はどのように変更されたのでしょうか。   [A10] ◆新たに「基準日」という概念が設けられ、基準日から適用年度開始の日の前日までの期間が「調整対象年度」と定義されました。 ◆具体的な調整計算については大きな変更はありませんが、計算期間が「前年度」から「各調整対象年度」に変更されています。 【解説】 (1) 「基準日」の意義 比較雇用者給与等支給額に関する調整計算の基礎となる計算期間に関連する概念として「基準日」という用語が新たに導入されている。そのうえで、「基準日」から「適用年度開始の日の前日」までを「調整対象年度」として、これに含まれる各事業年度の給与等支給額を基礎として比較雇用者給与等支給額を計算することとされた。 基準日は原則として前事業年度等(適用年度開始の日の前日を含む事業年度等)の開始の日とされるが(措令27の12の5⑫二)、前事業年度等の月数と適用年度の月数が異なる場合には、その大小関係に応じて基準日の取扱いが以下のように異なる。 ① 前事業年度等の月数が適用年度の月数に満たない場合で、かつ、月数が6月に満たない場合 ➡基準日は以下(ⅰ)(ⅱ)のいずれか早い日とされる(措令27の12の5⑫一)。 (※1) 当該適用年度が1年に満たない場合には、当該適用年度の期間。 (※2) 当該現物分配が残余財産の全部の分配である場合には当該設立の日から当該前事業年度等の終了の日の前日までの期間内においてその残余財産が確定したものとし、その分割、現物出資又は現物分配に係る移転給与等支給額が零である場合における当該分割、現物出資又は現物分配を除く。 (※3) 当該設立の日から当該合併、分割、現物出資又は現物分配の日の前日(当該現物分配が残余財産の全部の分配である場合には、その残余財産の確定の日)までの期間に係る給与等支給額が零である場合に限る。 (※4) 当該被合併法人又は分割法人等の設立の日以後に終了した事業年度に限る。 ② ①以外の場合 ➡前事業年度等の開始の日(措令27の12の5⑫二) ・・・下図の【C】 特に①については難解なため、以下に図示しておく。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 前事業年度の月数が6月に満たない場合について複雑な取扱いとなっているのは、前事業年度が短すぎるため賞与等を含めた1年間の給与等支給額の月平均額が適用年度における状況と整合せず、それだけでは適切な比較を行うことができないおそれがあるためである。 そこでこのような場合には、前事業年度の開始日とは別の「基準日」を定めたうえで「基準日から適用事業年度開始日の前日」までの期間(調整対象年度)を設定することによって、少なくとも1年以上の集計期間を確保して適切な金額比較を可能せしめるという趣旨による。 次に、上図の【A】【B】【C】について、それぞれ詳しく確認していく。 【A】のケース ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【A】のケースは、設立後間もなく合併等が行われた場合であって、設立事業年度が6月に満たない場合を想定している。 このときの基準日は、適用年度開始の日前1年以内の日を含む被合併法人等の各事業年度のうち、最も古い事業年度の開始の日となる。 ただし、条文上はカッコ書きが複数含められており(上記(※1)~(※4)参照)、実際の適用に当たってはこれらカッコ書きに記載されている制限等に十分留意する必要がある。 【B】のケース ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【B】のケースは、みなし事業年度が設定されて前事業年度が6月に満たない場合を想定している。 このときの基準日は、適用年度開始の日前1年以内に終了した各事業年度のうち、最も古い事業年度の開始の日となる。 【C】のケース ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【C】のケースは、【A】【B】以外の一般的な場合を想定しており、このときの基準日は前事業年度の開始の日となる。   (了)

#No. 285(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2018/09/13
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