《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(平成29年4月~6月)」 ~注目事例の紹介~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 国税不服審判所は、平成29年12月18日、「平成29年4月から6月分までの裁決事例の追加等」を公表した。今回追加された裁決は表のとおり、全10件であった。 今回の公表裁決では、国税不服審判所によって課税処分等の一部が取り消された裁決が4件、棄却された裁決が6件となっている。税法・税目としては、国税通則法が3件、所得税法、相続税法及び消費税法が各2件、法人税法が1件であった。 【表:公表裁決事例平成29年4月~6月分の一覧】 ※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された7件の裁決事例のうち、国税通則法に規定する加算税に対する審判所の判断が示された2件の裁決①②と、消費税法における納税義務の免除が争われた裁決⑩について紹介したい。いつものお断りであるが、論点を整理するため、複数の争点がある裁決については、その一部を割愛させていただいていることを、あらかじめお断りしておきたい。 1 相続税の申告における無申告加算税と正当な理由・・・① (1) 争点 争点は、「請求人らには、期限内申告書を提出しなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する『正当な理由』があるか否か」である。 (2) 審判所の判断 国税不服審判所は、無申告加算税について、その趣旨を次のように説明した。 そのうえで、無申告加算税が課されない正当な理由について、次のように解釈した。 そして、本件のように、相続財産のすべてが判明していないような場合について、「正当な理由が」成立するかどうかについては、次のように述べた。 以上の解釈から、国税不服審判所は、本件では、請求人らは、法定申告期限より早い段階で、税理士から申告が必要であるとの説明を受け、国税庁のホームページなどで調べた結果、土地の価額のみで基礎控除額を超えることを認識していたと判断した。 したがって、法定申告期限において損害賠償金の額が確定していなかったとしても相続税の申告書を提出しなければならないと認識していたにもかかわらず、相続税の申告書を法定申告期限までに提出しなかったのであるから、請求人らが期限内申告書を提出しなかったことについて、「正当な理由」があるとは認められないとし、賦課決定処分は適法であるとして、請求人らの請求を棄却する裁決を言い渡した。 2 収入金額の一部が計上されていない試算表の作成が隠ぺい又は仮装にあたるか・・・② (1) 争点 争点は、「請求人の無申告は、課税要件事実を隠ぺい又は仮装したことに基づくものか」である。 (2) 審判所の判断 国税不服審判所は、無申告の場合に課す重加算税の制度について、次のように解釈した(下線は引用者による)。 そのうえで、原処分庁が重加算税を賦課した根拠について、審判所は、「原処分庁は、要するに、本件試算表の作成が、請求人による隠ぺい、仮装と評価すべき行為に該当する」という主張に基づくものであるから、試算表の作成経緯に関する事実認定を行い、以下の事実を認定した。 こうした事実関係から、審判所は、請求人が本件試算表に基づき申告するつもりがあったと考えることについて疑問が残るとしたうえで、請求人が、確定申告義務の生じないことの説明資料として本件試算表を税理士に作成させたとは認められないことから、本件試算表の作成が、請求人による隠ぺい、仮装と評価すべき行為に該当するとは認められないと判断した。 そして、重加算税の負荷決定処分を取消し、無申告加算税相当額を超える部分の金額は違法であると結論づけた。 3 消費税等の納税義務の免除(事業を開始した日はいつか)・・・⑩ (1) 争点 争点は、「同課税期間は、消費税法施行令第20条第1号に規定する『課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間』に該当するか否か」である。 (2) 審判所の判断 国税不服審判所は、新たに事業を開始した者による「消費税課税事業者選択届出書」の提出について、以下のようにその趣旨を説明した。 そのうえで、消費税法施行令第20条第1号に規定する「課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日」について、次のように解釈した。 こうした解釈のもと、審判所は、請求人が平成25年課税期間において、発電設備を建設する契約を締結して契約金を支払った後、再生可能エネルギー発電設備の認定申請などの手続を順次行っていることから、これらの行為は、請求人が再生エネルギー措置法に基づく太陽光発電事業を行うために必要な準備行為であると認定し、平成25年課税期間が課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間であると判断した。 したがって、請求人が提出した消費税課税事業者選択届出書に係る課税事業者選択の効力は、平成26年課税期間の翌課税期間から生じることとなり、平成26年課税期間について請求人は、免税事業者となることから、原処分庁の賦課決定処分は適法であると結論づけた。 (了)
《速報解説》 公的年金等控除の所得金額による控除額引下げ等 ~平成30年度税制改正大綱~ 税理士 内山 隆一 平成29年12月14日、平成30年度税制改正大綱が公表された。 デフレ脱却と少子高齢化の克服に向けた政策として、生産性向上による賃金上昇と、人生100年時代を見据えた働き方改革の1つとして、平成32年(住民税は平成33年度)から、公的年金等控除の制度を次のとおり見直すこととしている。 (※) 基礎控除及び給与所得控除の見直しについては他稿を参照されたい。 1 見直し前の公的年金等控除額 (※) 最低保障額 65歳未満:70万円 65歳以上:120万円 2 見直し後の公的年金等控除額 (1) 公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下である場合 (※) 最低保障額 65歳未満:60万円 65歳以上:110万円 (2) 公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円を超え2,000万円以下である場合 (※) 最低保障額 65歳未満:50万円 65歳以上:100万円 (3) 公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が2,000万円を超える場合 (※) 最低保障額 65歳未満:40万円 65歳以上:90万円 3 公的年金等に係る雑所得の速算表 実務上使用している公的年金等に係る雑所得の速算表は、次のとおりである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (了)
《速報解説》 少額減価償却資産(30万円未満)の取得価額の損金算入特例、 適用期限2年延長 ~平成30年度税制改正大綱~ 税理士 小谷 羊太 12月14日に公表された平成30年度税制改正大綱(与党大綱)において、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例について適用期限の2年延長が決まった(所得税についても同様)。 Ⅰ 概要 この制度は、青色申告法人である中小企業者等が30万円未満である減価償却資産を取得した場合に、その取得価額相当額をその事業年度の損金の額に算入することができる制度である。 通常の減価償却であれば、取得価額相当額を耐用年数に応じた率で按分した金額を当期の減価償却費として損金算入するが、この制度では、取得事業年度での即時償却が認められる。 この制度の適用を受けるためには、事業供用日の属する事業年度において取得価額相当額を全額損金経理し、明細書を確定申告書に添付することが必要である。 Ⅱ 沿革 少額な減価償却資産の取得価額の損金算入の特例については、昭和22年に「少額の減価償却資産の特例」が創設されたことから始まり、現在までに損金算入できる限度額の変更、「一括償却資産の損金算入」の創設、「青色申告法人である中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」の創設などがされてきた経緯がある。 その後、平成10年度の税制改正により「少額の減価償却資産の特例」による取得価額の上限額が20万円未満から10万円未満に引き下げられるとともに、「一括償却資産の損金算入」の制度が創設された。さらに、平成15年度の税制改正において、青色申告書を提出する中小企業者等に限り、租税特別措置法により創設された制度が、「青色申告法人である中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の特例」となる。 なお、この特例の適用を受けるにあたり、取得額の合計額について年300万円までの上限額が設定されたのは、平成18年度の税制改正以降である。 今回の税制改正においては、この租税特別措置法の「青色申告法人である中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の特例」の適用期限(現在は平成30年3月31日まで)が、平成32年3月31日まで2年間延長された。 〈少額な減価償却資産の損金算入特例の取得価額等の経緯〉 Ⅲ 適用対象法人 青色申告法人である中小企業者のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人又は農業共同組合等に限られる。 「中小企業者」とは、次の法人をいう。 (※) 増資や減資により資本金の額が事業年度中に増減した場合には、事業供用日の現況により判定する。 なお、適用対象法人については、平成28年度の税制改正により、「青色申告法人である中小企業者又は農業共同組合等」から「青色申告法人である中小企業者のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人又は農業共同組合等」に限られることとなったので、そちらも併せて留意されたい。 (了)
2017年12月21日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.249を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
日本の企業税制 【第50回】 「新経済政策パッケージから平成30年度税制改正へ」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 12月14日、平成30年度与党税制改正大綱が取りまとめられた。 今回の改正では、所得税改革、事業承継、3年に1回の土地の評価替えに伴う商業地等の負担調整措置、森林吸収源対策に係る地方財源の確保(森林環境税)、観光財源の確保(国際観光旅客税)、たばこ税、地方消費税の清算基準、などが主要課題となった。 とりわけ、法人税における賃上げ・設備投資促進等に係る税制措置は、12月8日に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」を具体化するものとして注目される。 「新しい経済政策パッケージ」策定に向け、11月17日の未来投資会議において、安倍総理は次のような発言をしていた。 この発言から、賃上げ・設備投資に積極的な企業への措置と消極的な企業への措置との2本立ての措置がとられることが予想された。 その後、12月8日には、「新しい経済政策パッケージ」が閣議決定されたが、その中で、「企業の収益性向上・投資促進による生産性革命」の筆頭の政策として、「賃上げ及び設備・人材投資の加速」が掲げられた。 その内容としては、 と、3つの具体的な措置が盛り込まれた。 このような政策を具体化するのが、平成30年度税制改正大綱に盛り込まれた、生産性革命税制の創設、IoT投資抜本強化税制の創設、租税特別措置の適用要件の見直し、の3点である(いずれも3年間の時限措置)。 (1) 生産性革命税制 生産性革命税制は、大法人向けの従来の所得拡大促進税制を改組したものである。したがって、中小法人向けの所得拡大促進税制は要件等の見直しを行った上で延長される。 生産性革命税制の適用要件は、①平均給与等支給額が前年度比3%以上増加、という賃上げ要件に加え、②当期の国内設備(減価償却資産)投資額が当期減価償却費の9割以上、をクリアする必要がある。従来の基準年度からの給与等支給総額の増額という要件は不要となる。 これらの要件を満たした場合には、給与等支給総額の前年度からの増加分に対して15%の税額控除(現行12%)が適用される。なお、前述の「特に人材投資に真摯に取り組む企業」への対応については、一定の教育訓練費の増加(当期の教育訓練費が前2期の教育訓練費の平均の1.2倍以上)を要件に、控除率を20%に上乗せすることとされている。 なお、税額控除限度額は法人税額の20%(現行10%)であり、この税額控除限度額まで税額控除が適用された場合には、法人税率23.2%が実質的には2割引き下げられた(つまり18.56%)のと同様の効果が生じることとなる。この場合には、法人実効税率に換算すると、ほぼ25%ということとなる。 (2) IoT投資抜本強化税制 IoT投資抜本強化税制は、企業の内外におけるデータの連携・高度利活用による生産性向上等、生産性向上の実現のための臨時措置法(仮称)上の要件を満たすものとして認定された計画に基づく投資(ソフトウェア・器具備品・機械装置)について、特別償却(30%)又は税額控除(3%)を認めるものである。なお、賃上げ要件(平均給与等支給額が前年比3%以上増加)を満たす場合には、税額控除の控除率が5%に引き上げられる。 この措置の税額控除限度額は法人税額の15%(賃上げ要件もクリアすれば20%)であり、生産性革命税制と併用すれば、最大で法人税額の40%を税額控除できるという結果となる。すなわち、法人税率13.92%(法人実効税率換算でほぼ20%)を適用したのと同等の効果が得られるわけである。 (3) 租税特別措置の適用要件の見直し 上述した生産性革命税制やIoT投資抜本強化税制により、賃上げ・設備投資に積極的な企業を後押しする一方、これらに消極的な企業は、一定の租税特別措置(研究開発税制、IoT投資抜本強化税制、地域未来投資促進税制)の適用対象から除外するという措置を講じる。 どのような企業が「消極的」とされるかというと、①平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額以下、かつ、②設備投資額が当期減価償却費の10%以下である企業である。ただし、所得金額が前事業年度の所得金額以下の場合には対象外とする。 (4) その他 賃上げ・設備投資関係のほかにも、前述の新経済政策パッケージで、「企業の事業再編を促進するため、リスクマネーの供給強化や、大胆な事業再編を行う際の株式対価M&Aの促進に必要な措置を講じる。」とされたことを踏まえ、組織再編税制の適格要件の見直しや株式対価M&Aにおける株式譲渡益の繰り延べ措置が講じられる。 (了)
〔平成30年度税制改正大綱からみた〕 組織再編税制・M&A税制の改正内容と留意点 公認会計士 佐藤 信祐 1 概要 平成29年12月14日に与党税制改正大綱が公表された。その概要は以下の通りである。 これらの詳細な内容は、改正法人税法施行令を確認しないと分からないが、本稿では、与党税制改正大綱から読み取れる実務上の留意事項について解説を行う。 2 産業競争力強化法の改正を前提とした株式譲渡損益の計上の繰延べ 与党税制改正大綱75頁では、 と記載されている。 平成29年8月に経済産業省が公表した「平成30年度税制改正に関する経済産業省要望 【概要】」6頁では、⾃社株式等を対価として、他の会社の株式を取得する事案が書かれており、この点について対応した税制改正であると思われる。 このような手法は、株対価TOBと言われており、産業競争力強化法の前身である産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の改正により、平成23年度にすでに導入されているものの、税務上の問題があったことから、ほとんど利用実績はなかった。 今回の税制改正は、税制上、株対価TOBに弊害が生じないようにしたものとして評価することができるが、産業競争力強化法の認定を受けた場合に限定されていることから、実際に利用されることはそれほど多くはないと思われる。ただし、新しい制度が整備されたという意味では、日本企業の組織再編成において、選択肢が増えたものとして評価することができる。 3 税制適格要件の見直し 与党税制改正大綱75頁では、組織再編税制の見直しとして、以下のものが列挙されている。 このうち、①については、平成29年度税制改正により、単独新設分社型分割又は単独新設現物出資後に、分割承継法人株式又は被現物出資法人株式の適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、完全支配関係継続要件を当該適格株式分配の直前までとする改正が行われていたが(法令4の3⑥一ハ・⑬一ロ)、平成30年度税制改正では、他の組織再編成にもその範囲を広げるものであると思われる。 次に、②については、50%超100%未満グループ内の組織再編成、共同事業を営むための組織再編成を行った場合において、合併法人等に移転した従業者、事業を当該合併法人等の100%グループ内の法人に移転したとしても、従業者引継要件、事業継続要件を満たすようにしたものであると思われる。 組織再編成を行った場合には、組織再編成により移転を受けた従業者や事業を他のグループ会社に移転したいというニーズは少なからず存在していた。とりわけ、従業者の転籍ができないというのは、組織再編成後の選択肢を狭めるものとして問題となっていた。今回の改正では、合併法人等の100%グループ内の法人に移転した場合に限定して、従業者引継要件、事業継続要件を緩和するものであるということが言える。 このように、100%グループ内の法人に移転した場合に限定した理由としては、平成22年度税制改正によりグループ法人税制が導入されたことと無関係ではない。なぜなら、グループ法人税制も、組織再編税制と同様に、「移転資産に対する支配の継続」という概念で設けられている(『平成22年版改正税法のすべて』189頁)。 すなわち、グループ法人が一体的に経営されている実態に鑑みれば、例えば、共同事業を営むための合併を行った後に、合併法人に移転した従業者や事業が当該合併法人の100%グループ内の法人に移転したとしても、被合併法人から合併法人に移転した資産に対する支配が継続していると考えることができるからである。 そして、③については、3月末に公表される改正法人税法施行令を確認しないと分からない。 現行法上、無対価組織再編成は、原則として非適格組織再編成として位置付けながらも、対価の交付を省略した場合として、法人税法施行令に列挙されたものについてのみ適格組織再編成として認めることとされている。しかしながら、法人税法施行令に列挙されたものは、対価の交付を省略した場合のすべてを想定したものとは言い難く、株式交付型組織再編成を選択しないと非適格組織再編成に該当してしまうものも少なくない。 そのため、法人税法施行令に列挙するものを増やすという程度であれば、それほど大きな改正ではないと思われる。これに対し、一歩進んで、対価の交付を省略した場合だけでなく、完全支配関係が成立している場合や、合併法人又は株式交換完全親法人が発行済株式総数の3分の2以上を保有している場合であっても、適格組織再編成として認めることとすれば、現行法における無対価組織再編成の取扱いは大きく変わることになる。この点については、改正法人税法施行令を確認されたい。 なお、④に記載されている通り、上記以外にも、組織再編税制の見直しが行われることが予想される。おそらく、法案が提出される平成30年2月頃までには明らかになると思われるが、平成29年度税制改正で対応しきれなかった課題や、平成29年度税制改正で新たに生じた問題点に対応したものであると思われる。 過去においても、税制改正大綱に出ていなかったような改正がなされていた事案もあるため、改正法人税法、法人税法施行令を確認したうえで、慎重に対応されたい。 4 中小企業等経営強化法の改正を前提とした登録免許税、不動産取得税の軽減 与党税制改正大綱52頁、58頁では、中小企業等経営強化法の改正を前提として、登録免許税(不動産の所有権移転登記)、不動産取得税の軽減を行うことが明らかにされている。 平成29年8月に経済産業省が公表した「平成30年度税制改正に関する経済産業省要望 【概要】」18頁で掲載されていたものであり、親族外承継の手段として事業譲渡、会社分割又は合併を行った場合において、登録免許税、不動産取得税の軽減を行うことが可能になる。 しかし、事業譲渡を行った場合には、不動産取得税は6分の1しか軽減されないし、登録免許税も2割しか軽減されない(本則1,000分の20、特例1,000分の16)。そうなると、実務上は、会社分割による手法を検討すべきであろう。現行地方税法においても、不動産取得税の非課税要件が定められているし(地法73の7二、地令37の14)、与党税制改正大綱では、登録免許税が8割も軽減することを予定しているからである(本則1,000分の20、特例1,000分の4)。 5 むすび 今回の組織再編税制の改正は、単なる平成29年度税制改正の追加的な修正に留まらず、今までの実務で問題とされていたことを、なるべく解決しようとする財務省主税局の意図が感じられる。 しかし、改正法人税法施行令を確認しないと分からないものが多いことから、3月末日に公表される改正法人税法施行令を確認することをお勧めしたい。 本稿が、組織再編税制に携わる方々のお役に立つことができれば幸いである。 (了)
組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第18回】 公認会計士 佐藤 信祐 (《第2章》 平成13年度税制改正) ③ 分割型分割 (ⅰ) 分割法人の税務処理 分割型分割を行った場合には、分割法人の純資産が減少し、分割承継法人の純資産が増加することになる。すなわち、分割法人で減少する資本等の金額(※1)、利益積立金額の計算、分割承継法人で増加する資本等の金額、利益積立金額の計算がそれぞれ必要になる。 (※1) 資本の金額と資本積立金額の合計金額をいう。現行法人税法では、「資本金等の額」に表記が変更されている。 まず、分割法人で減少する資本等の金額の計算であるが、非適格分割型分割を行った場合には、法人税法2条17号カ、18号リにおいて、プロラタ計算により、資本等の金額及び利益積立金額を減少させることが規定された。 具体的なプロラタ計算は、同法施行令8条の2第8項において、以下のように規定された。 このように、資本等の金額×移転純資産÷全体の簿価純資産価額により、減少する資本等の金額を計算することが明らかにされている。本来であれば、時価純資産価額をベースに計算すべきであるように思われるが、実務の簡便性に配慮したものと思われる(※2)。 (※2) この点について明記されたものは発見されなかったが、次回取り上げる「株式消却を伴わない有償減資、残余財産の一部分配」について、『企業組織再編成に係る税制についての講演録集』71頁(日本租税研究協会、平成13年)でその旨が記載されている。この点については次回解説を行う予定である。 なお、上記では小数点以下1位未満となっているが、その後の税制改正により、小数点以下3位未満と改正されている。そのほかにも、その後の税制改正により整備され、現在の形になったが、本連載のどこかで解説を行う予定である。 これに対し、適格分割型分割を行った場合にも、法人税法2条17号ヨ、18号ルにおいて、プロラタ計算により、資本等の金額及び利益積立金額を減少させることが規定された。具体的なプロラタ計算は、同法施行令9条4項において、以下のように規定された。 このように、利益積立金額×移転純資産÷全体の簿価純資産価額により、減少する利益積立金額を計算することが明らかにされている。非適格分割型分割の場合には、みなし配当の計算を正確に行うために、分割法人の株主に交付する交付原資である資本等の金額を計算したうえで(※3)、その残余としての利益積立金額を計算するという順番になっているのに対し、適格分割型分割の場合には、分割承継法人に引き継ぐ利益積立金額を計算した後に、その残余としての資本等の金額を計算するという違いがある。 (※3) 『平成13年版改正税法のすべて』157頁(大蔵財務協会、平成13年)。 すなわち、適格分割型分割の場合には、資本等の金額を分割承継法人に引き継ぐのではなく、資産、負債及び利益積立金額を引き継いだ結果として、資本等の金額が分割承継法人に引き継がれたのと同じ結果になるに過ぎないという点に留意が必要である(※4)。 (※4) 前掲(※3)。 (ⅱ) 分割承継法人の税務処理 前回、解説した合併と同様に、非適格分割型分割を行った場合には、分割承継法人で利益積立金額を増加させず、すべて資本等の金額として取り扱い、適格分割型分割を行った場合には、分割法人で減少した利益積立金額が分割承継法人に引き継がれる(法法2十七ニ・十八ホ、法令9②)。 ④ 分社型分割、現物出資 【第5回】で解説したように、分社型分割、現物出資を行った場合には、分割法人、現物出資法人の利益積立金額を引き継ぐことはあり得ないため、分割承継法人、被現物出資法人で増加した純資産価額に相当する資本等の金額が増加することになる(法法2十七イ・ホ・ヘ)。 ここで留意が必要なのは、いずれの条文でも、適格組織再編成に該当する場合には、移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を減算した金額とされているという点である。【第17回】で解説したように、減算と規定していることから、100から150を減算すると、△50になる。すなわち、マイナスの資本積立金額が発生することがあり得るということになる。このことは、『企業組織再編成に係る税制についての講演録集』57頁(日本租税研究協会、平成13年)でも明らかにされている。 なお、平成17年改正前商法では、債務超過の事業を分割対象とすることが認められていなかったため、「資産に大きな含み益があるケース」が想定されていたが、会社法の施行により、債務超過の事業を分割対象とすることが認められるようになった。これに対し、平成17年改正前商法の考え方と大きく変わってしまうことから、債務超過会社が組織再編を行った場合には、寄附金、受贈益の認識を行うべきであるという少数説もあったようである。この点について、本稿では詳しく触れないため、興味のある読者は、佐藤信祐・岡田貴子著『債務超過会社における組織再編の会計・税務』(中央経済社、平成23年)を参照されたい。 * * * 次回では、減資又は残余財産の一部分配・株式の消却・退社又は脱退等について解説を行ったうえで、組織再編成における株主課税について解説を行う予定である。 (了)
社葬をめぐる税務上の留意点 【後編】 太陽グラントソントン税理士法人 マネジャー 税理士 川瀬 裕太 Ⅲ 香典収入の取扱い 社葬に伴い、受け取ることとなる香典の税務上の取扱いについては、社葬を行った会社側の取扱いと遺族側の取扱いに分けて説明していくこととする。 1 会社側の取扱い ① 会社の収入にした場合 香典を会社の収入に計上した場合には、法人税法上は益金の額に算入され、課税の対象となる。 ② 会社の収入としなかった場合(遺族の収入とした場合) 社葬費用を会社が負担する以上、会葬者から受け取る香典についても会社の収入に計上すべきではないかという疑問が生じるが、法人税基本通達9-7-19の注書きにおいて、「会葬者が持参した香典等を法人の収入としないで遺族の収入としたときは、これを認める」とされている。 したがって、社葬費用を会社が負担している場合であっても、香典等は、遺族に対する弔いのしるしとして供されるものであるから、会社の収入に計上しないで、遺族に渡したときは、香典等を遺族の収入とすることが認められる。 2 遺族側の取扱い 贈与税において、社交上必要と認められる香典は、法律上贈与に該当するものであっても、社会的な相互扶助あるいは儀礼的な性格のものであるため、贈与税は課税されない(相基通21の3-9)。 所得税においても、葬祭料、香典でその金額が社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、所得税は課されない(所基通9-23)。 したがって、原則として、社会通念上相当であると認められる金額の香典であれば、香典収入に対して贈与税や所得税は課税されないことになる。 Ⅳ 社葬費用の消費税法上の取扱い 社葬のために通常要する費用が課税仕入れに係る支払対価に該当するかどうかは、個々の取引ごとに判断することとなる。 ① 課税仕入れになる場合 葬儀場の使用料、送迎費用、新聞広告料、案内状の印刷費用、会葬御礼品等は、資産の譲受けや役務の提供に対する対価の支払いであるから、課税仕入れに該当することとなる。 ② 課税仕入れにならない場合 読経料は、読経という役務提供の対価というより、喜捨金、すなわち寄進であり、対価性がないと判断されるため、課税仕入れには該当しないので留意が必要である。 Ⅴ 社葬費用の相続税法上の取扱い 1 相続税法上の取扱い 被相続人に係る葬式費用は、相続開始時に現存する被相続人の債務ではないが、被相続人の死亡に伴う必然的出費であり、社会通念上も相続財産そのものが担っている負担ともいえることを考慮し、相続税の課税価格の計算上、相続によって取得した財産の価額から、葬式費用を控除することとされている(相法13①二)。 相続税法の取扱いにおいて、葬式費用として認められているのは、下記の費用である(相基通13-4)。 また、相続税の取扱いで葬式費用として認められていないものは、下記の費用である(相基通13-5)。 会社が負担した社葬費用(社葬のために通常要すると認められる金額)以外で、相続人が負担した葬式費用については、相続税の債務控除の対象になる。 2 社葬費用と自社株評価 取引相場のない株式を評価する際に、1株当たりの純資産価額の計算上、社葬費用も負債として計上できることが判例により明らかにされている。 最高裁平成9年9月4日判決に基づくものであるが、その前提となる大阪地裁平成7年3月28日判決の判決文において、 とされている。 Ⅵ 税務調査対策 社葬費用については、社葬を行うことが社会通念上相当な場合であるかどうか、その負担した金額が社葬のために通常要する金額であるかどうかが問題となりやすいため、疎明資料として下記のような資料を整備する必要がある。 ① 社葬に関する社内規定 社葬に関する社内規定があるからといって、負担費用のすべてが損金に認められるわけではないが、社内規定で社葬に関する対象者や範囲といった執行の基準と費用負担の範囲を定めておくほうが望ましい。 ② 取締役会議事録 社葬の決定については、必ず事前に取締役会を開き、死亡の事情や職歴等を考慮して社葬を行うべきかどうかを判断した過程を議事録に記載しておき、負担費用についても取り決めておくべきである。 ③ 領収書、支出内容が分かるもの 読経料など領収書がもらえないものもあるため、支出した費用の内容が分かるような資料を作成しておくべきである。 (連載了)
相続税の実務問答 【第18回】 「相続税の申告期限前に相続人が死亡した場合の申告書の提出」 税理士 梶野 研二 [答] あなたがお兄様の遺産を相続したことによる相続税の申告書は、あなたがお兄様の亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に提出しなければなりません。しかしながら、もう1名の相続人であるお姉様がお兄様の遺産を相続したことによる相続税の申告書については、お姉様が相続税の申告書の提出期限内にお亡くなりになったことから、お姉様の相続人であるお子様が、お姉様の相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に提出すればよいこととされています。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続があった場合の国税の納付義務の承継 相続の開始があった場合、相続人(包括受遺者を含みます)は、被相続人に課されるべき又はその被相続人が納付し、若しくは徴収されるべき国税を納める義務を承継することとされています(通法5①)。 相続人に承継される国税は、相続開始時において被相続人が滞納していた国税や申告又は決定若しくは更正により確定していた税額に限られず、その被相続人に課されるべき国税、すなわち被相続人が死亡しなければ被相続人が申告し、納付すべきであった税額も、その相続人に承継されることとなります。 したがって、ある人に相続が開始し(第一次相続)、その者の財産を相続した相続人(第一次相続人)が亡くなった場合(第二次相続)には、第二次相続人の相続人(第二次相続人)が、第一次相続人が申告し納付すべきであった相続税を納付する義務を承継することとなります。 2 第二次相続が発生した場合の第一次相続に係る相続税の申告 相続又は遺贈により財産を取得した者は、被相続人に相続が開始したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告書を提出し(相法27①)、その申告書に記載した相続税額を納付することとされています(相法33)。 しかしながら、相続又は遺贈により財産を取得し、相続税の申告書を提出しなければならない者(第一次相続人)が、相続税の申告書を提出せずに亡くなった場合には、その者の相続人(包括受遺者を含みます)(第二次相続人)が、第一次相続に係る第一次相続人の申告及び納付の義務を承継することとなります。この場合、その相続税の申告書は、第二次相続人が第一次相続人について相続(第二次相続)の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に提出し(相法27②)、申告書に記載した相続税額を納付することとされています(相法33)。 なお、この場合の申告書の提出先は、第一次相続に係る被相続人の死亡の時の住所地を所轄する税務署です。 3 ご質問の場合 (1) 第一次相続に係る相続税の申告 ご質問の場合、今年の3月25日にお兄様がお亡くなりになり、その遺産をあなたとお姉様が相続しましたので、本来は、あなたとお姉様は来年の1月25日までに相続税の申告書を提出し、相続税を納付しなければならなかったわけです。 しかしながら、相続税の申告の準備中にお姉様がお亡くなりになったということですので、お姉様が行うべきであった相続税の申告は、お姉様の相続人であるお姉様のお子様が、お姉様の相続開始を知った日(本年12月10日)の翌日から10ヶ月以内、すなわち来年10月10日までに行い、申告書に記載した相続税額を納付することとなります。 なお、お兄様の遺産を相続したことによりあなたが行う相続税の申告については、申告期限が延長されることはありませんので、お兄様の相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内、すなわち来年1月25日までに行う必要があります。 (注) 相続人が2名以上いる場合に、2名以上の相続人が、相続税の申告書を共同して提出することが多いと思われます。ご質問の場合にも、あなたの相続税の申告書の提出期限である来年1月25日までに、お姉様のお子様と共同して相続税の申告書を提出することができます。 (2) 第二次相続に係る相続税の申告 お姉様の遺産についての相続税の申告は、お姉様の相続人であるお姉様のお子様が、お姉様の相続開始を知った日(本年12月10日)の翌日から10ヶ月以内、すなわち来年10月10日までに行い、申告書に記載した相続税額を納付します。 この申告書には、お姉様が従前から有していた固有の財産及び債務に加えて、お姉様がお兄様から相続により承継した財産及び債務を記載することになります。この場合、上記(1)によりお姉様のお子様が申告した第一次相続に係る相続税額も、お姉様の相続開始後に確定した税額ではありますが、債務として記載することとなります(相法14②)。 (3) 申告書の提出先税務署 第一次相続に係る相続税の申告書は、お兄様の住所地S県U市を管轄する税務署に提出しますが、第二次相続に係る相続税の申告書は、お姉様の住所地K県Y市を管轄する税務署に提出することになります。 (了)
相続空き家の特例 [一問一答] 【第25回】 「「相続空き家の特例」を受けようとする際の 通知を要する相続人の範囲」 -他の相続人への通知- 税理士 大久保 昭佳 Q X(姉)は、昨年3月に死亡した父親の居住用家屋(昭和56年5月31日以前に建築)を単独で相続し、その敷地300㎡については、その庭部分150㎡をY(弟)が相続して、残り150㎡をXが相続しました。 Xは、その家屋を取り壊し更地にした上で、相続した土地150㎡を本年9月に売却しました。 相続の開始の直前まで父親は一人暮らしをし、その家屋は相続の時から取壊しの時まで空き家で、その敷地も相続の時から譲渡の時まで未利用の土地でした。 この場合、Yは父親の居住用家屋を相続していないことから「相続空き家の特例(措法35③)」を受けることができないということですが、Xが同特例を受けようとする際のYへの通知は必要でしょうか。 A 通知を要する「居住用家屋取得相続人」には、被相続人居住用家屋のみ又は被相続人居住用家屋の敷地等のみの取得をした相続人も含まれることから、XからYへの通知は必要です。 ●○●○解説○●○● 「相続空き家の特例」を受けようとする者は、他の「居住用家屋取得相続人」に対し、①対象譲渡をした旨、②対象譲渡をした日、③その他参考となるべき事項の通知をしなければならないこととされています(措法35⑦)。 この場合において、その通知を受けた他の「居住用家屋取得相続人」は、既に「適用前譲渡」をしていた場合、その通知を受けた後遅滞なく、①その譲渡をした旨、②その譲渡をした日、③その譲渡の対価の額(特例対象外の部分を含む)、④その他参考となるべき事項の通知をしなければならないこととされ、その通知を受けた後に「適用後譲渡」をした場合には、その者は遅滞なく、同通知をしなければならないこととされています(同項)。 そして、同項における「居住用家屋取得相続人」とは、「相続空き家の特例」の適用を受ける個人を含むほか、被相続人居住用家屋のみ又は被相続人居住用家屋の敷地等のみの取得をした相続人も含まれるとされています。 したがって、例えば、被相続人居住用家屋の敷地等のみを相続により取得した者が、その相続の時から本特例の規定の適用を受ける者の対象譲渡をした日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに行ったその被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡は、「適用前譲渡」又は「適用後譲渡」に該当すると定められています(措通35-21(居住用家屋取得相続人の範囲))。 本事例の場合、Yは、被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の両方を取得していないことから、「相続空き家の特例」の適用を受けることはできませんが、どちらか一方を取得した相続人となることから、「居住用家屋取得相続人」に該当し、Xが同特例を受けようとする際のXからYへの通知、及び、Yが譲渡した際のYからXへの通知をしなければならないこととなります。 (了)