平成29年度税制改正における 『組織再編税制』改正事項の確認 【第3回】 公認会計士 佐藤 信祐 (2) 全部取得条項付種類株式、株式併合及び株式等売渡請求 ① 基本的な取扱い 改正前法人税法では、現金交付型株式交換を行うと非適格株式交換として時価評価課税の対象になっていたことから、その代替的手法として、全部取得条項付種類株式、株式併合又は株式等売渡請求が利用されてきた。 これに対し、前回解説したように、平成29年度税制改正では、全部取得条項付種類株式の端数処理、株式併合の端数処理及び株式等売渡請求による完全子法人化について、株式交換と同様に、組織再編税制の一環として位置づけられた。 ただし、全部取得条項付種類株式又は株式併合を用いた手法では、一株に満たない端数の代り金として交付されることから、金銭等不交付要件に抵触しない。そして、株式等売渡請求を用いた手法では、取得の対価として金銭を交付したとしても、金銭等不交付要件に抵触しないことが、条文上、明記された(法法2十二の十七柱書)。そのため、事業継続要件及び従業者引継要件を満たせば、容易に税制適格要件を満たすことができる。 このように、スクイーズアウトを行ったとしても、時価評価課税が問題になる場合としては、支配関係継続要件に抵触する場合、すなわち、スクイーズアウトを行った後に、完全子法人株式を譲渡することが見込まれている事案がほとんどであると考えられる。 そして、会社法上、株式交換と異なり、スクイーズアウトの手法は、支配株主が法人ではなく、個人である場合であっても利用することができる。しかし、法人税法2条12号の16に規定する「株式交換等」は、全部取得条項付種類株式又は株式併合における最大株主等である法人又は株式等売渡請求における一の株主等である法人との間に完全支配関係を有することとなるものに限定されており、支配株主が個人である場合には、そもそも「株式交換等」に該当しない。その結果、支配株主が個人である場合には、法人税法62条の9に規定する時価評価課税の対象には含まれないことになる。 このように、スクイーズアウトを行ったとしても、時価評価課税の対象になることは稀であるように思われる。しかし、本稿では、スクイーズアウトを行った後に、逆さ合併を行った場合の取扱いについて指摘させていただきたい。実務上、MBO案件では、許認可等の問題により、完全親法人となるSPCを被合併法人とし、完全子法人となる事業会社を合併法人とする逆さ合併を行いたいというニーズが存在するからである。 この点につき、法人税法施行令4条の3第19項1号では、改正前法人税法施行令と同様に、適格合併後に、株式交換等完全子法人と適格合併に係る合併法人との間に、当該合併法人による完全支配関係が継続することが要求された。すなわち、株式交換等完全子法人が合併法人となることから、株式交換等完全子法人が自社の発行済株式の全部を直接又は間接に保有することは不可能であるため、50%超100%未満グループ内の株式交換等に該当しない。 その結果、支配株主が法人である場合において、スクイーズアウトにより少数株主を締め出してから逆さ合併を行うときは、時価評価課税の対象になる。 【逆さ合併を行うことが見込まれている場合】 ② 無対価スクイーズアウト 平成22年度税制改正により、無対価組織再編を行った場合における税制適格要件の判定は、原則として、非適格組織再編として整理しながらも、対価の交付を省略したと見ることができる場合には、例外として税制適格要件を満たすことができるように条文で限定列挙されていた。この考え方は、平成29年度税制改正でも踏襲されており、無対価株式交換を行った場合の取扱いは変わっていない。 これに対し、全部取得条項付種類株式、株式併合又は株式等売渡請求によりスクイーズアウトを行ったときも、同様の取扱いになるのかという点が問題となる。 まず、無対価スクイーズアウトとして想定されている典型的な手法は、全部取得条項付種類株式を利用して、100%減資をした後に、スポンサーの増資を引き受ける場合であると考えられる。このような手法は、法人税法2条12号の16で規定されている株式交換等に含まれるスクイーズアウトが、最大株主等である法人又は一の株主等である法人との間に完全支配関係を有することとなるものを言うことから、「株式交換等」に該当しない。そのため、税制適格要件を検討するまでもなく、時価評価課税の対象にならないと考えられる。 そして、債務超過であることを理由として、支配株主が少数株主を無対価で締め出す場合もあり得る。しかし、法人税法施行令4条の3第18項で規定されている無対価株式交換の定義には、スクイーズアウトは含まれていない。そして、同条19項では、「当該株式交換等が無対価株式交換である場合にあっては」と規定されていることから、無対価スクイーズアウトを行ったとしても50%超100%未満グループ内の株式交換等に該当するということが言える。そのため、支配株主が法人である場合において、無対価スクイーズアウトを行ったとしても、従業者引継要件及び事業継続要件を満たすのであれば、時価評価課税の対象にならないと考えられる。 ③ 連結納税制度への影響 さらに、本誌199号で述べたように、連結納税制度への影響についても留意が必要である。なぜなら、改正前法人税法では、買収会社が連結納税制度を導入している場合には、全部取得条項付種類株式、株式併合又は株式等売渡請求を利用しても、連結納税への加入に伴う時価評価課税は避けられなかった。これに対し、平成29年度税制改正により、時価評価課税を回避することができるようになった。 さらに、単純な株式購入により100%子会社化を行った場合であっても、時価評価を行う前の営業権や知的財産権の帳簿価額が0円であることが多いため、「帳簿価額が1,000万円未満の資産」として時価評価課税の対象から除外することができる。 このように、スクイーズアウト税制の影響は、スクイーズアウトそのものというよりも、連結納税制度を導入することに対するハードルが下がったという影響の方が大きいため、今後、連結納税制度を導入する企業が増えてくると考えられる。 (次号(5/11)に続く)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例49(相続税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(措法69の4) 相続により取得した財産のうちに被相続人の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等で建物や構築物の敷地の用に供されているものがある場合には、一定要件のもと、これらの宅地等につき一定割合の評価減が受けられる(下表参照)。なお、この特例は借地権にも適用がある。 ◆小規模宅地等の特例における申告要件(措法69の4⑥) 小規模宅地等の特例の適用に関しては、申告要件が付されており、相続税の期限内申告書(その申告に係る期限後申告書及び修正申告書を含む)にこの特例の適用を受ける旨を記載し、一定の書類の添付がある場合に限り適用することとされている。 したがって、当初申告において小規模宅地等の特例の適用がある宅地等に特例を適用しないで申告した場合には、更正の請求はできない。 ◆小規模宅地等の特例における宅地等の選択替えの可否(措令40の2⑤) 小規模宅地等の特例の適用において、特例対象宅地等が2以上ある場合又は特例対象宅地等を取得した者が2人以上あるときは、その選択に関する一定の書類を相続税の申告書に添付することとされている。 したがって、特例対象宅地等の選択は、相続税の申告において確定することとなり、その後において、宅地等についての選択替えは認められず、更正の請求もできない。 ◆国税通則法における更正の請求事由の場合(通則法23①) 申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときは、法定申告期限から5年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正の請求をすることができる。 したがって、例えば、小規模宅地等の特例の適用を満たしていない宅地等に誤って特例を適用し、後日これが判明した場合で、他に特例の適用を満たしている宅地等がある場合には、期限内の更正の請求により、改めて当該他の宅地等に小規模宅地等の特例を適用することができる。 (了)
国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第4回】 「非永住者の課税所得の範囲に関する改正のなぞ」 税理士 菅野 真美 - 質 問 - 平成29年度税制改正で、非永住者の課税所得の範囲について見直しがなされましたが、なぜこのような改正が行われたのかよくわかりません。理由を教えていただけませんでしょうか。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷非永住者と課税所得 「非永住者」とは、居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人のことである(所法2①四)。以前は日本国籍の人でも非永住者になることができたが、非永住者であることを利用した節税策が問題視され、現行ではこのような国籍条項が設けられている。 非永住者の課税所得の範囲は、平成29年度税制改正前は、第95条第1項(外国税額控除)に規定する国外源泉所得(以下「国外源泉所得」という)以外の所得及び国外源泉所得で国内において支払われ、又は国外から送金されたもの(旧所法7①二)とされていた。 この非永住者の課税所得の範囲が、平成29年度税制改正により、国外源泉所得の後にカッコ書きで「国外にある有価証券の譲渡により生ずる所得として政令で定めるものを含む」という規定が盛り込まれた。 なぜこのような改正が行われたのか、以下において推察してみたい。 ▷平成26年度税制改正前における非永住者の課税所得の範囲 平成26年度税制改正前における非永住者の課税所得の範囲は、所得税法161条に規定する国内源泉所得(以下「国内源泉所得」という)及びこれ以外の所得で国内において支払われ又は国外から送金されたもの(旧所法7①二)とされていた。 また、恒久的施設を有していない非居住者の株式の譲渡による所得については、原則的には国内源泉所得に該当せず、例外的に、事業譲渡類似株式や不動産関連法人株式の譲渡所得のように限定列挙された取引についてのみ課税されるという整理がなされていた(旧所令291)。 例えば一般的な日本の上場会社の株式1,000株を、日本に恒久的施設を有しない非居住者が譲渡した場合の所得は、国内源泉所得に該当しないことから、日本で課税されることはなかった。 それでは、非永住者が、一般的な日本の上場会社の株式を外国の証券取引所で売却した場合の所得はどうかというと、この所得が「国内源泉所得以外の所得」となり、日本に売却代金が送金されない限り課税対象にならなかったと考える。 ▷平成26年度税制改正で課税関係はどう変化したか? 上記の取扱いであったところ、平成26年度税制改正において、非永住者の課税所得の範囲が、「国内源泉所得+国内源泉所得以外の所得で日本に送金されたもの」から、「国外源泉所得以外の所得+国外源泉所得で日本に送金されたもの」というように定義づけが変更された。つまり、「国内源泉所得」を中心に非永住者の課税所得を整理するのではなく、「国外源泉所得」を中心として整理されることとなったのである。 国外源泉所得についての定義は、外国税額控除を定めた所得税法95条4項に規定されている。このうち株式の譲渡所得については、国内源泉所得の対象となる株式の譲渡所得と同様の規定ぶりになっている。例えば、事業譲渡類似に該当する株式の譲渡は外国法人の株式の一定の要件に該当するものの譲渡で、譲渡所得について外国の所得税が課されるものとなっている(所令225の4①四)。 つまり、一般的な日本の上場会社株式の譲渡所得は「国外源泉所得以外の所得」となり、平成26年度税制改正以後は、譲渡代金が国内に送金されない場合であっても、日本での譲渡所得の課税対象になったと考える。 ただし、この改正は平成29年分以後の所得税について適用とされた(平26改所法等附3③)。 ▷平成29年度税制改正をどう読むのか? このように譲渡所得に対する課税が突然変更されたことによる影響が大きかったものと思われるが、平成29年度税制改正において、非永住者の課税所得の範囲は、「第95条第1項(外国税額控除)に規定する国外源泉所得(国外にある有価証券の譲渡により生ずる所得として政令で定めるものを含む。以下この号において「国外源泉所得」という。)以外の所得及び国外源泉所得で国内において支払われ、又は国外から送金されたもの」とされ、下線部の規定が盛り込まれた。この改正は平成29年4月1日以後の有価証券の譲渡について適用される(平29改所法等附2)。 この「国外にある有価証券の譲渡により生ずる所得として政令で定めるもの」は、所得税法に規定する有価証券でその取得の日がその譲渡の日の10年前の日の翌日から当該譲渡の日までの期間(その者が非永住者であった期間に限る)内にないもの(特定有価証券)のうち、次に掲げるものの譲渡により生ずる所得とする(所令17①)。 例えば、非永住者であった期間で譲渡の3年前に取得した日本の上場株式を外国の証券取引所で売却した場合は、国外源泉所得以外の所得となることから、日本に売却代金が送金されなかったとしても課税対象となる(所令17)。 しかし、経過措置が設けられていて、平成29年4月1日前に取得した有価証券を10年内に譲渡した場合においては、特定有価証券であるとみなし、外国証券取引所で売買した場合は国外源泉所得となることから国内に送金しない限り、所得税の課税対象から除外されることになる(平29改所令附3)。 つまり、平成29年3月31日までに取得した日本の上場株式を非永住者が取得から10年以内に外国の証券取引所で譲渡し、譲渡対価を外国にプールし続けた場合は平成26年度の税制改正前と同様に日本では課税対象にならないということになる。 (了)
特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第12回】 「家屋は買換資産と認められず、土地のみが買換資産となる場合」 -買換資産の範囲- 税理士 大久保 昭佳 Q Xは、前々年の5月に居住用財産(所有期間が10年超で居住期間は10年以上)を売却し、前年中に居住用家屋とその敷地を取得する見込みで「特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)」の適用を受けて確定申告書を提出しました。 前年11月にようやく土地を取得して、翌月の12月初旬に居住用家屋の工事を建築業者に発注しました。 なお、その家屋は、請負契約で定めたとおり本年3月に完成したので、直ちに引渡しを受け、翌月の4月にXとその家族が入居しました。 この場合、Xは、家屋とその敷地の全部を同特例の適用対象とすることができるでしょうか。 A 家屋については「買換えの特例」の適用対象となる買換資産に該当しませんが、土地については適用対象となる買換資産に該当します。 ●○●○解説○●○● Xは、居住用家屋を買換資産の取得期限(譲渡の日の属する日の翌年12月31日)までに発注していますが、その期限までに取得(引渡しを受ける)をしていませんので、家屋については、適用対象となる買換資産に該当しないこととなります(措法36の2①②)。 しかし、その敷地は、①買換資産の取得期限までに取得し、かつ、②その居住の用に供すべき期限(買換資産の取得の日の属する年の翌年12月31日)までに、その上に自己の居住用家屋を建築し、X自身が入居していますから、Xの居住の用に供したことになり、買換資産に該当することとなります(措通36の2-17(買換資産を当該個人の居住の用に供したことの意義))。 なお、買換資産の取得に係る契約の締結後に生じた災害その他その者の責めに帰せられないやむを得ない事情によって遅れた場合には、措通36の2-16(やむを得ない事情により買換資産の取得が遅れた場合)の取扱いにより適用を受けることができるときがあります(【第5回】解説のなお書を参照)が、本事例の家屋の場合は、取得期間内に取得する契約を締結していた事実がありませんので、この取扱いの適用を受けることができません。 (了)
〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第15回】 「別表13(2) 保険金等で取得した固定資産等の圧縮額等の損金算入に関する明細書」 公認会計士・税理士 菊地 康夫 Ⅰ はじめに 本稿では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 第15回目は、実務で比較的採用するケースがあるにもかかわらず一般的な書籍等では解説される機会があまり多くない、「別表13(2) 保険金等で取得した固定資産等の圧縮額等の損金算入に関する明細書」を採り上げる。 Ⅱ 概要 この別表は、固定資産の滅失又は損壊により保険金等を取得した法人が、その保険差益金等に関し法人税法第47条から第49条まで(保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)の規定の適用を受ける場合に記載する。 本制度は、いわゆる圧縮記帳と呼ばれるものである。 そもそも法人が災害等により支払を受けた保険金等でも、滅失による損失等を上回る部分(保険差益)について、法人税法上は益金の額に算入されるものであるが、これをすべて課税対象とすると滅失等した資産に代わる新たな資産の取得が資金的に困難となり、本来の保険金としての意義が損なわれてしまうことから、一定期間内に滅失等した所有固定資産に代替する同一種類の固定資産(代替資産という)を取得等した場合に、保険差益金の額を基礎として計算した圧縮限度額の範囲内で、代替資産の帳簿価額を損金経理により減額する方法等により、その課税の繰延べを認めるという制度である。 圧縮記帳の対象となる保険金等とは、固定資産の滅失又は損壊により支払を受ける保険金、共済金又は損害賠償金で、固定資産の滅失等のあった日から3年以内に支払の確定したものをいう。なお、棚卸資産を対象とする保険金等は圧縮記帳の対象とならず、事業の休廃業等により減少する収益の補てん又は発生する費用の補てんに充てるものとして支払を受けるものも、圧縮記帳の対象とならない。 また、代替資産は保険事故等があった事業年度内に取得されることが原則であるが、その事業年度内に代替資産を取得することができない場合には、保険金等の支払を受ける事業年度の翌事業年度開始の日から2年以内に取得した代替資産についても圧縮記帳の特例が適用できる。この場合、保険差益金の額を特別勘定として経理しておき、実際に代替資産を取得した事業年度で圧縮記帳を行うことになる。 圧縮限度額の計算方法は次のとおり。 (※1) 保険差益金の額=(改訂保険金等の額)-(滅失した固定資産の被害直前の帳簿価額) (※2) 改訂保険金等の額=(取得した保険金等の額)-(滅失等により支出する経費の額) ▼ 注意!▼ 滅失等により支出する経費の額は、その滅失等があった所有固定資産の取壊費、焼跡の整理費、消防費等、直接関連して支出される経費のことであり、類焼者に対する賠償金、けが人への見舞金、被災者への弔慰金等といった固定資産の滅失等に直接関連しない経費は含まれない。 なお本別表は、各災害ごとに、かつ、滅失した固定資産の種類ごとに用紙を改めて記載することになる。 Ⅲ 「別表13(2)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成28年4月1日以後終了する事業年度。 (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (4) 圧縮記帳に関する計算と仕訳例 (単位:円) 〔前期〕 ◆事故発生時 ◆経費支出時 〔当期〕 ◆保険金取得時 ◆代替資産取得時 〔圧縮限度額の計算〕 ◆滅失等により支出した経費(焼跡の整理費)の建物への按分 ◆建物に係る改訂保険金額 ◆保険差益のうち建物に係る金額 ◆建物の圧縮限度額 (5) 別表の各記載欄の説明 「保険金等を受けた場合」 「代替資産の交付を受けた場合」 「帳簿価額の減額等をした場合」:「保険金等を受けた場合の計算」 「帳簿価額の減額等をした場合」:「代替資産の交付を受けた場合の計算」 「特別勘定に経理した場合」 (了)
連結会計を学ぶ 【第2回】 「連結の範囲・支配の概念」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 連結財務諸表は、支配従属関係にある2つ以上の企業からなる集団(企業集団)を単一の組織体とみなして、親会社が当該企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を総合的に報告するために作成するものである(「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)1項)。 【第2回】では、連結財務諸表の範囲を決定するための親会社と子会社の定義について述べる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 親会社と子会社 前述のとおり、連結財務諸表は、支配従属関係にある2つ以上の企業からなる集団(企業集団)に関する財務諸表なので、「支配」の概念がポイントになる。 連結会計基準は支配の概念を中心にして、親会社及び子会社などについて、次のように定義している(連結会計基準5~6項、8項)。 【企業】 会社及び会社に準ずる事業体をいい、会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む)を指す。 【親会社】 他の企業の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう。以下「意思決定機関」という)を支配している企業をいう。 【子会社】 ① 上記の「親会社」の定義における「他の企業」をいう。 ② 親会社及び子会社又は子会社が、他の企業の意思決定機関を支配している場合における当該他の企業も、その親会社の子会社とみなす(いわゆる孫会社。「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第22号)17項)。 【連結会社】 親会社及び連結される子会社をいう。 また、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」は、次の用語について定義している(連結財務諸表規則2条1号、4号、5号、6号、4条1号)。 【連結財務諸表提出会社】 法の規定により連結財務諸表を提出すべき会社及び指定法人をいう。 【企業集団】 連結財務諸表提出会社及びその子会社をいう。 【連結会社】 連結財務諸表提出会社及び連結子会社をいう。 【連結子会社】 連結の範囲に含められる子会社をいう。 【非連結子会社】 連結の範囲から除かれる子会社をいう。 基本的なイメージは次の図のとおりである。 Ⅲ 支配の概念 1 持株基準と支配力基準 平成9年6月に改訂された「連結財務諸表原則」以前の連結原則では、子会社の判定基準として、親会社が直接・間接に議決権の過半数を所有しているかどうかにより判定を行う「持株基準」が採用されていた。 これに対して、平成9年6月に改訂された「連結財務諸表原則」では、①議決権の所有割合が100分の50以下であっても、その会社を事実上支配しているケースもあること、②国際的には、実質的な支配関係の有無に基づいて子会社の判定を行う「支配力基準」が広く採用されていたことを踏まえ、子会社の判定基準として、議決権の所有割合以外の要素を加味した「支配力基準」を導入し、他の会社(会社に準ずる事業体を含む)の意思決定機関を支配しているかどうかという観点から、連結会計基準は設定されている(連結会計基準54項)。 2 支配の概念の具体的な適用 連結会計基準は、「他の企業の意思決定機関を支配している企業」とは、次の企業をいうとしている。ただし、財務上又は営業上もしくは事業上の関係からみて他の企業の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる企業は、この限りでない(連結会計基準7項)。 なお、より具体的な規定については、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第22号)などに規定されているので、これらについては次回以降で解説する。 【他の企業の意思決定機関を支配している企業】 (了)
税理士が知っておきたい [認知症]と相続問題 〔Q&A編〕 【第8回】 「相続人が認知症であった場合の対応」 クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎 [設問08] 私が同居している父は5年前より認知症が始まり、現在ではほとんど判断能力のない状態です。 父には兄と弟がおりますが、先月、この兄、すなわち私の伯父さんが亡くなりました。 ◆ ◆ ◆ 伯父さんは遺言書を特に残してはおらず、妻を先に亡くし子供もいなかったため、兄弟である父と父の弟の2人が法定相続人となりました。 伯父さんの遺産は、約2,000万円の預貯金と自宅の土地建物(時価約2,000万円)です。 父の弟とは、判断能力がない父に代わって私が遺産分割に関する話合いを進めていますが、今のところ、預貯金はすべて父の弟が、土地建物は父が相続することになりそうです。 ◆ ◆ ◆ この内容に沿った遺産分割協議書を作成し、私が父の名前を代筆する形で進めることで問題ないでしょうか。 1 高齢社会と相続をめぐるもう一つの側面-“相続人自身の高齢化” 「高齢化が進む」ということは、人が亡くなる年齢、つまり「相続が発生する年齢も高齢化する」ことを意味する。 そうなれば必然的に、「相続する側=法定相続人」の年齢もまた高齢化することになり、今後、相続人自身において、判断能力が低下したり、認知症にかかっているというケースが増えることが予想される。 これが【設問08】のテーマである。 【設問08】では、被相続人である相談者の伯父は遺言書を残していないということであるから、法定相続人間で、伯父の遺産について遺産分割協議を行う必要がある。 この際、遺産分割も法律行為である以上、分割協議を有効に行うためには、法定相続人(ただし、相続放棄した法定相続人は除く)の各人が判断能力を有する必要がある。 2 判断能力が失われている場合の対応(1)-成年後見人の選任 【設問08】のように、相続人自身が相続発生時点で既に判断能力をほとんど失っている場合、原則的な対応方法としては、家庭裁判所に対し、成年後見人の選任を求めて申立てを行うことになる(実際、遺産分割協議の際の必要性を動機として、成年後見の申立てへと踏み切るケースは少なくない)。 成年後見人が選任された後は、後見人が本人に代わり、他の法定相続人との間で遺産分割協議に臨むことになる。 その際の留意点としては、成年後見人は本人の権利確保を図る立場にあるから、原則として、法定相続分に見合う価値の遺産は最低でも確保するようにしなければならない。つまり、成年後見人の独自の判断で相続放棄をしたり、法定相続分を大きく下回るような内容での遺産分割協議を成立させることは許されない。 そして、協議がまとまれば、成年後見人が本人の法定代理人として遺産分割協議書に署名捺印する。法定代理人以外の者が署名捺印しても無効である。【設問08】のケースでは、成年後見人ではない相談者(私)が遺産分割協議書に代筆しても、法的効力は生じない。 その後、相続した不動産の維持管理は、本人の他の財産と一緒に成年後見人が行っていくことになる。 この点、成年後見申立ての動機が遺産分割協議の必要性にあった場合でも、いったん成年後見人が選任されたならば、遺産分割協議が完了して以降も引き続き成年後見人としての活動を継続しなければならないことに留意する必要がある。 3 判断能力が失われている場合の対応(2)-特別代理人の選任 以上が原則的な対応方法であるが、成年後見の申立て準備から行うとなれば、実際に後見人が選任されるまでには、どうしても数ヶ月程度の期間が必要となってしまう。 中には、時間的余裕がなく、緊急を要するケースもあり得る。この場合、遺産分割調停ないし審判の場合で家事事件の手続が遅滞することにより損害が生ずるおそれがあるときは、家庭裁判所に特別代理人の選任を求めて申立てを行う方法が考えられる。 この場合には、当該遺産分割に限っての特別の代理人を選任してもらうことになる。実務上は、特別代理人選任の申立書の附属書類として、遺産分割協議書の文案を添付することとされている。 申立てを受けた裁判所は、文案の内容も考慮した上で(例えば、当該文案による分割協議の内容が、申立人本人の法定相続分を確保できているか等)、特別代理人の選任を許可することになる。 特別代理人が有効に選任された後は、この者の調停への出席により、遺産分割協議が有効に成立する。 なお、相続の以前から既に成年後見人が選任されていた場合で、後見人自身が法定相続人の立場を有している(つまり「2つの立場を兼ねている」)という場合には、利益相反を防ぐため、やはり特別代理人の選任が必要である。 4 “相続人自身の高齢化”に向けた予防策 以上のように、相続人自身が高齢となり、判断能力に問題が生じているケースでは、原則として成年後見人等の選任が必要となるため、余計な時間と労力を要する。 そこで、【設問08】における伯父としては、やはり生前に遺言書を作成しておくことが、このような事態を回避する最も良い方法といえる。 適切な遺言書が作成されていれば、仮に相続発生時において相談者の父が判断能力をほぼ失っている場合でも、遺言書を使って相続登記の申請が可能となる。 ただ、厳密に言えば、相談者の父が登記申請を依頼する司法書士に対して有効な委任を行い得るのか(司法書士への委任状が有効か)という問題は残る。 しかし、遺産分割を一から行うのと異なり、「遺産となる不動産を自分がもらうことを承諾し、登記申請を依頼するかどうか」というように、内容が単純で、かつ、本人にとって有利な事項が問題とされるのであるから、この場合における司法書士への依頼に際しては、それほど高度な判断能力は要求されないものと思われる(判断能力が、問題となる行為や契約毎に個別に判断されるものであることについては、解説編【第3回】の2を参照)。 よって、仮に遺言者が生前から、法定相続人の各人に対して法定相続分通りの割合で分配することを考えていたとしても、適切な遺言書を作成しておくことは、無用な紛争と労力を回避するために大きな意味を有するのである。 (了)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例14】 クックパッド株式会社 「平成28年12月期決算短信」 (2017.2.9) 事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、クックパッド株式会社(以下「クックパッド」という)が平成29年2月9日に開示した「平成28年12月期決算短信」である。この連載で同社の開示を取り上げるのは2回目であり、【事例4】において同社が平成28年3月24日に開示した「代表執行役の異動に関するお知らせ」を取り上げた。 前回【事例13】で取り上げた株式会社あみやき亭の「平成29年3月期第3四半期決算短信」は、開示時期の早さにおいてすごい開示であったが、このクックパッドの開示は特にすごい開示というわけではない。 この開示で目を引くのは、業績予想に関する記載である。 サマリー情報の「3.平成29年12月期の連結業績予想(平成29年1月1日~平成29年12月31日)」には、次のように記載されている。 また、同社は、これと同時に開示した「2016年12月期決算説明資料」の中の「今後のディスクロージャーに関する考え方」においても、「長期の目線にたった大胆、かつ柔軟な意思決定を行っていくため将来のコミットメントにしばられる経営は目指しません。」とした上で、「将来の業績目標、予測・見通しは開示しません。」と記載している。 2 これまでも クックパッドは、この決算短信から業績予想を開示しないこととしたようである。といっても、これまでも業績予想の開示に対して積極的ではなかったようである。「平成27年12月期決算短信」の「3.平成28年12月期の連結業績予想(平成28年1月1日~平成28年12月31日)」には、次のように記載されているだけである。 「平成24年4月期決算短信」までさかのぼると、もう少し積極的な姿勢がうかがえた。その「3.平成25年4月期の業績予想(平成24年5月1日~平成25年4月30日)」には、次のように記載されている。 そして、「添付資料3ページ」には、次のような記載がある(下線部は筆者による)。 しかし、「合理的に予想可能となった時点で速やかに開示いたします。」としておきながら、結局、業績予想は開示せず、平成25年6月7日、「平成25年4月期決算短信」と同時に「2013年4月期業績の前期との差異に関するお知らせ」を開示している(こうした開示が適切とはいえない理由は【事例5】を参照)。 このように業績予想を「合理的に予想可能となった時点で速やかに開示」することができなかったからなのか、「平成25年4月期決算短信」からは、添付資料の中の「合理的に予想可能となった時点で速やかに開示いたします。」という記載もなくなっている。 そして、ついに「平成28年12月期決算短信」において、売上や利益が前期を上回る見込みであるという記載すらせず、「業績予想をまったく開示しない」という宣言を行うに至ったのである。 3 最低限の開示だけ 決算短信を開示する時点において、業績予想を合理的に算定できないのならば、決算短信に業績予想を記載すべきではない(合理的でない業績予想を記載すれば、むしろ投資家の投資判断を誤らせてしまう)。しかし、業績予想を合理的に算定できる時点になったら、業績予想を開示すべきである(どんなに遅くても、決算期末後、業績の概算額を算定できれば、開示できるはず)。クックパッドはそうした開示も行わないつもりなのだろうか。そうだとしたら、上場会社の適時開示に対する姿勢として、いかがなものだろうか。 「2016年12月期決算説明資料」の中の「今後のディスクロージャーに関する考え方」では、「長期の目線にたった大胆、かつ柔軟な意思決定を行っていくため将来のコミットメントにしばられる経営は目指しません。」の後に続けて、「一方で、投資家向けにタイムリー、かつ正確な情報の開示は確実に実施していきます。」と記載されている。要するに、「必ず行わなければならない開示は仕方なく行うが、それ以上の積極的な開示を行うつもりはない」ということのようである。 4 実施していないのでは? クックパッドは平成29年3月24日に「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を開示しているが、その【コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由】には、「当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則について、全て実施しています。」と記載している。しかし、コーポレートガバナンス・コードの次の原則を実施しているといえるのだろうか。 「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を訂正し、この原則を実施しない理由をきちんと記載すべきだろう。 5 佐野氏の本音 【事例4】で、筆者は次のように述べたが、クックパッドの適時開示に対する姿勢を見ていると、「クックパッドは自分の会社だ。株主にとやかくいわれたくない」というのが、同社の創業者で現取締役・執行役の佐野陽光氏の本音だということがわかる。やはり上場会社の経営者には相応しくない人物であるといわざるを得ないだろう。 6 開示漏れ? 最後に、この開示を見て気になった箇所がもう一つあったので、触れておく。 連結経営成績の対前期増減率だが、売上収益はプラス26.3%、税引前利益はマイナス36.2%、当期利益はマイナス74.8%、親会社の所有者に帰属する当期利益はマイナス77.2%である。 業績予想を開示していない場合でも、売上については10%以上、利益については30%以上、前期の実績値と当期の実績値との間に乖離が生じた場合、それに関して開示が必要になる(クックパッドが平成25年6月7日に開示した「2013年4月期業績の前期との差異に関するお知らせ」のように)。 売上収益、税引前利益、当期利益、親会社の所有者に帰属する当期利益、いずれも前期の実績値と当期の実績値との間で開示が必要となる乖離が生じている。しかし、同社はそうした開示を行っていないようである。 (了)
《速報解説》 法人税法施行規則等の改正により、平成29年度税制改正を踏まえた 法人税申告書(別表)の新様式が明らかに ~中小企業経営強化税制に係る別表6(22)等が新設 Profession Journal編集部 平成29年度税制改正等を受けた法人税申告書(別表)様式を定めた改正法人税法施行規則が4月14日付官報号外第82号で公布され、その内容が明らかとなった。これら改正後の様式は原則として平成29年4月1日以後終了事業年度から適用される(改正法規附則2)。 (※) 官報同号にて地方法人税及び租税特別措置の適用額明細書の様式改正も行われている。 以下、主な様式の変更内容を紹介する。 まず今年度改正で創設されすでに4月1日からの適用が始まっている中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の12の4))に係る税額控除の様式が、次の別表6(22)「中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」だ。 〈別表6(22) 中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉 次に、こちらも創設制度である地域中核企業向け設備投資促進税制(地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の11の2))に係る税額控除の様式は、別表6(17)「地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」として次のように示された。 なおこの制度は、本稿公開日現在、国会(衆議院)で審議中の「企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の一部を改正する法律案」の施行日から平成31年3月31日までの適用となる。 〈別表6(17) 地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉 所得拡大促進税制(措法42の12の5)は29年度改正において、中小企業者等以外の法人については適用要件の見直し等、中小企業者等については控除税額の上積みが措置されており、改正箇所を反映した別表6(23)(改正前:別表6(19))が示された。 〈別表6(23) 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉 研究開発税制については既報の通り、増加型の廃止(H29.3.31までの間に開始する事業年度まで)に伴い、試験研究費の増減に準じて総額型の控除率にメリハリがつく仕組みが導入され2年間の拡充措置も織り込まれるなどの見直しが行われている。 様式の変更点としては、昨年本誌上でお伝えしたように、繰越税額控除限度超過額等に係る税額控除制度の廃止に伴い従前の3つの様式が別表6(6)「試験研究費の総額に係る法人税額の特別控除は中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除及び特別試験研究費に係る法人税額の特別控除に関する明細書」に統一されていたのだが、今回再び以下の3様式へ分割されることとなった。 別表6(6) 試験研究費の総額に係る法人税額の特別控除に関する明細書 別表6(7) 中小企業者等の試験研究費に係る法人税額の特別控除に関する明細書 別表6(8) 特別試験研究費に係る法人税額の特別控除に関する明細書 その他、災害に伴う税制上の措置の常設化により法人税法27条に規定された「中間申告における繰戻しによる還付に係る災害損失欠損金額の益金算入」制度に伴い「別表4 所得の金額の計算に関する明細書」において該当欄([36])の追加が手当てされている(「別表7(1) 欠損金又は災害損失金の損金算入に関する明細書」においても同様に該当欄を手当て)。 また、過年度改正に係る様式改正として、平成28年1月1日以後の公社債課税の見直しにより(詳しくはこちら)、適用時期の前後で明細を分けたため本表と付表に分割されていた「別表6(1) 所得税額の控除に関する明細書」及び「別表6(1)付表 所得税額の控除に係る元本所有期間割合の計算等に関する明細書」は適用時期を過ぎたことで再び1枚の「別表6(1) 所得税額の控除に関する明細書」へ統合された。 〈別表6(1) 所得税額の控除に関する明細書〉 さらに「別表5(2) 租税公課の納付状況等に関する明細書」では、住民税の利子割の廃止や復興特別法人税の廃止に伴い該当欄の削除等が行われている。 (了) ↓お薦め連載記事↓
《速報解説》 中小企業向け租税特別措置の要件見直し、 基準年度の平均所得金額15億円超の判定に係る改正措置法施行令が公布 ~設立3年以内の法人は適用除外事業者に該当せず Profession Journal編集部 既報の通り、大企業並みの多額の所得のある中小企業への課税強化として、中小企業向けの租税特別措置の適用要件に一定の所得制限を設けることが平成29年度税制改正大綱に明記された。 具体的には「法人税関係の中小企業向けの各租税特別措置について、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円を超える事業年度の適用を廃止する措置を講じる。」というもので(大綱p75)、平成31年4月1日以後に開始する事業年度から適用される(法人住民税関係も同様)。 上記の改正については、3月31日公布の改正措置法に続き、4月7日の官報号外第75号においても「租税特別措置法施行令の一部を改正する政令」(以下、改正措令)が公布され、新設法人や合併等一定の場合の平均所得金額の計算方法等が規定された。 * * * まず、3月31日公布の改正措置法における本改正の規定については、中小企業に係る租税特別措置規定の多くが中小企業者(又は中小企業者等)の定義として流用する(※)、研究開発税制を規定した措置法42条の4に着目したい。 (※) 例えば商業等活性化税制(措法42条の12の3)では同条第1項において「中小企業者」の定義を「・・・第42条の4第8項第6号に規定する中小企業者又は・・・」としており、所得拡大促進税制(措法42の12の5)では同条第2項7号において「中小企業者等」の定義を「第42条の4第3項に規定する中小企業者又は農業協同組合等をいう」としている。 この研究開発税制(措置法42条の4)のうち、中小企業向けの特例措置である中小企業技術基盤強化税制を規定した同条第3項で、この制度の適用対象について「中小企業者(適用除外事業者に該当するものを除く)」と括弧書き部分が追加され、この「適用除外事業者」が同条8項6号の2において、次のように定義されている(なお、「中小企業者」の定義自体は内容に変更なし(同条8項6号))。 (※) 上記の改正は法人の平成31年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用される(H29改正法附則62条1項)。 括弧書き部分以外については大綱の表記と概ね同じ内容だが、括弧書き部分については政令に委任している箇所(下線部)があり、4月7日公布の改正措令はこの委任箇所を規定したものとなっている。 改正措令では、基準年度となる前3事業年度内に新設された法人や欠損金の繰戻し還付を受けた場合、合併等を行った場合や連結法人に該当していた場合等について、それぞれのケースで平均所得金額15億円超を判定するための計算方法等を明らかにしている 例えば、判定対象年度の開始の日において法人の設立の日の翌日以後3年を経過していない場合は平均所得金額をゼロとし適用除外事業者に該当しないこと(新措令27条の4第13項1号、14項1号)や、欠損金の繰戻し還付を受けた場合にはその欠損金額を控除した額で判定すること(新措令27条の4第13項2号、14項2号)などが詳細に規定されている(改正措令の施行も平成31年4月1日)。 * * * なお、今回の改正により適用除外事業者に該当し適用除外とされる租税特別措置については、大綱では具体的な制度名が明記されず、中小企業庁の資料に次の図が示されているのみであった。 【参考図】 (※) 中小企業庁ホームページより 今回の一連の法改正において、上記の中小企業技術基盤強化税制を含め、適用対象となる中小企業者のうち「適用除外事業者に該当するものを除く」という規定が織り込まれたのは、次の制度となっている(いずれもH31.4.1以後開始事業年度より適用)。 このように今回の一連の法改正では中小法人の軽減税率や少額減価償却資産の特例、所得拡大促進税制の上乗せ措置等については「中小企業者のうち適用除外事業者を除く」規定が設けられていないが、冒頭に述べたとおり本改正の適用は平成31年4月1日以後開始事業年度であることから、今後の法改正で手当てされる可能性が高く注視が必要だ。 また既報の通り、3月決算法人の場合、すでに前期(平成29年3月期)及び今期(平成30年3月期)は最初に適用除外事業者の判定を行う基準年度に含まれている点にも留意しておきたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓