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《速報解説》 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する財務諸表等規則等が改正~PFI事業の注記を新設~

《速報解説》 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する 財務諸表等規則等が改正 ~PFI事業の注記を新設~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年5月25日、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則及び連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第28号)が公表された。これにより、平成29年2月6日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 これは、企業会計基準委員会が、平成29年5月2日に公表した「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第35号)に対応するものである。 公開草案に対するコメントへの対応として、「「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」が公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 財務諸表等規則及び連結財務諸表規則の改正 「公共施設等運営事業に関する注記」を新設する(財規8条の31、連結財規15条の25)。 公共施設等運営事業における公共施設等運営権者である場合には、次に掲げる事項を公共施設等運営権ごとに注記しなければならない(財規8条の31第1項、連結財規15条の25第1項)。 更新投資については、次の区分に応じ、公共施設等運営権ごとに注記する(財規8条の31第2項、連結財規15条の25第2項)。 一定の場合には各事項を集約して記載することができること、財務諸表提出会社が連結財務諸表を作成している場合には記載することを要しないことも規定されている(財規8条の31第3項、4項、連結財規15条の25第3項)。 財務諸表及び連結財務諸表の表示に関して次の規定を新設する(貸借対照表及び連結貸借対照表の様式も改正)。 2 財規ガイドライン及び連結財規ガイドラインの改正 財規ガイドラインに次の規定を設ける(連結財規ガイドラインは15の25を新設し、財規ガイドラインを準用)。   Ⅲ 適用時期等 (了)

#No. 219(掲載号)
#阿部 光成
2017/05/30

プロフェッションジャーナル No.219が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年5月25日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.219を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/05/25

山本守之の法人税“一刀両断” 【第35回】「租税法の「解釈」を考える」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第35回】 「租税法の「解釈」を考える」   税理士 山本 守之   1 解釈手法の分類 税理士は税法規定を正しく解釈すべきですが、そこには厳しいルールがあることを知ってほしいと考えます。 租税法は侵害規範ですから、解釈の手法としては原則として文理解釈によるべきで、それが法的安定性の立場から当然と考えられており、みだりに拡張解釈や類推解釈をすることは許されません。しかし、文理解釈によっては規定の意味内容が不明確である場合に、規定の趣旨、目的等を考慮しながら管理的解釈をしなければならないことがあります。 法令の解釈手法を分類してみると、次のようになります。   2 法規的解釈 「法規的解釈」とは、法令の解釈上の疑問を立法的に解決し、その解釈を法規制定の権限ある機関が定めるもので、法令の定義規定などが代表的なものです。 例えば、法人税法2条3号で内国法人を「国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいう」として本店所在地主義を明らかにしていますが、管理支配基準を持ち出して反論しようとしても、ここにはいわゆる法令解釈の入り込む余地はありません。この意味では、法規的解釈は最も有権的なものといえましょう。 みなし規定も同様です。「人格のない社団等は法人とみなしてこの法律を適用する」(所得税法4、法人税法3、国税通則法3)は、本来法人でない人格のない社団等を法人とみなすことを法律のなかで規定するものです。   3 文理解釈 「文理解釈」とは、法令の規定をその文字や文章の意味するところに即して文法的に解釈することをいいます。 この場合に、私法上で用いられている概念で、一般的法律制度において確立している用語は租税法においてもそのまま用いられます。例えば民法における親族、配偶者、相続、遺贈、社団、財団、所有権、地上権、地役権などや、商法における会社、解散、合併、清算、社債、株式、出資などは、租税法でも同じ概念として用います(これを「借用概念」といいます)。 「借用概念」は租税法においても他の法分野と同義に解することが租税法律主義に基づく法的安定性の要請にも合致しています。もともと経済取引や経済現象は第一次的には私法によって規律されていますから、これらを納税義務の基因となる課税要件等に取り込むに当たって、租税法が私法上と同じ概念として用いることが法的安定性の点からも望ましいからです。 この点については、「現行の租税に関する法規が、一般私法において使用されていると同一の用語を使用している場合にはそれは勿論租税法上の概念として使用されているに相違ないけれども、特に租税に関する法規が明文をもって他の法規と異なる意義をもって使用することを明らかにしている場合もしくは租税法規の体系上他の法規と異なる意義をもって使用されていることが明らかな場合又は特に他の法規と異なる意義をもって使用されていると解すべき実質的な理由がない限り、私法上使用されていると同一の意義を有する概念として使用されているものと解すのが相当である」(昭和34年2月11日東京地裁)とする判示があります。 これに対し、他の法分野で用いられておらず、租税法が独自に用いている概念があります。これを「固有概念」といいます。 固有概念は租税法独自の見地からその内容を決めるべきです。租税法のなかで「所得」という概念があっても、所得税法上の「所得」は帰属を主体としてとらえ、法人税法上の「所得」は発生を主体としてとらえるといったように、異なる概念として用いることがあります。 同一の法律のなかでも似かよった表現をしていますが、異なる実体を示していることがあります。例えば、所得税法のなかの「納税義務者」と「納税義務がある者」は、明らかに異なる実体です。 所得税法では、居住者、非居住者、内国法人及び外国法人についてそれぞれ納税義務があることを規定しており、これらの規定に基づいて本来の納税義務者が定められていますが、これが「納税義務者」で、このほかに、源泉徴収義務があり、質問検査権の対象となるのは、本来の納税義務者のほかに源泉徴収義務のある者も含んでいるので「納税義務のある者」と表現しているのです。 このほかに、国税通則法では「納税者」という用語を使っていますが、これは所得税法の「納税義務のある者」から源泉徴収を受ける者を除いた概念です。 文理解釈は成文法の解釈においても最も重要なもので、用語、字句の解釈からはじまりますが、文章は法令の趣旨、目的、前後の関係に配慮して行うべきものといえましょう。用語についても多分相対的なもの多義的なものがあることを理解すべきです。   4 論理解釈 (1) その考え方 「論理解釈」は文理解釈と対立する解釈手法で、用語や文章だけでなく、条理や論理的思考に基づいて解釈する手法です。つまり、法令が制定された目的、趣旨に重点を置き、これに適合する妥当な結果を導き出せるよう配慮しながら解釈するもので、目的論的解釈ともいわれ、条理解釈といわれることもあります。 立法趣旨は、立法当時公表された理由書、提言者の説明、国会での質疑と答弁の議事録、税制調査会の答申などが参考となります。また、負担の公平が租税における社会正義ともいえますから、その趣旨に沿った目的論的な解釈といえるでしょう。 立法的解釈の手法のひとつとして確認規定があります。「確認規定」とは、新しい法律関係を創設する創設規定とは異なり、既存の規定によりすでに設定されている法律関係について問題が生ずる恐れのある部分を念のため補強し、確認的に規定することによって解釈上の疑義を防止するためで、「・・・適用があるものとする」「・・・は、第〇条〇に該当するものとする」という規定の仕方をします。 その意味では、「内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。」(法法37⑧)という規定は確認規定です。 もちろん、租税法律主義の下では、解釈によって法律に規定していないものまで課税物件に取り入れるという拡張解釈は許されません。 この点については、「税法の解釈適用に当たっては、法の予想を超えて実質的に新たな課税対象を創設し、もしくは課税対象を拡張しまたは納税者の不利益を来たすような方向において類推ないし拡張解釈を行うことは慎しまるべきものである」(昭和39年5月28日東京地裁)とした判示があります。 (2) 縮小解釈と反対解釈 「縮小解釈」とは、法令の規定の文字を通常意味するところよりも狭く解釈する方法で、制限解釈ともいいます。 例えば、「譲渡」というのはある者が有する権利を他の者に移転することをいい、通常の売買のほか交換、収用、贈与、現物出資なども含まれます。しかし、動産を担保の目的で形式的に譲渡する場合(譲渡担保)は、形式的には資産の譲渡ですが、その担保になった資産を債務者が従来どおり使用収益して利子相当額の支払を行っているという実態であるときは、譲渡所得課税の目的からいって、その「譲渡」には含まれないものと解して扱われていますが、これは縮小解釈の一例です。 「反対解釈」は、法令で一定の要件を付しているときに、その要件に該当しない場合はその規定の適用がないとする一種の類推解釈です。 例えば、法人税法33条では、資産の評価損を損金の額に算入しないことを定義していますが、「災害による著しい損傷その他の政令で定める事実」があるときは、時価を限度として評価額を損金の額に算入することにしています。この場合の反対解釈とすれば、「政令に定める事実」に該当しなければ、損金の額に算入する余地はないと解するのです。 (3) 類推解釈 「類推解釈」とは、類似した一方についてのみ規定があった場合に、規定のない類似の事柄について同じ趣旨の規定がされているものとして解釈する方法です。例えば、所得税法及び法人税法では「国内にある資産」とは何かにふれていませんが、相続税法10条では「財産の所在」について詳細な規定があるので、同条の規定を基にして類推解釈ができます。 「もちろん解釈」も類推解釈の一種といえます。例えば、譲渡所得の基因となる財産に行政庁の免許、許可等によって設定された権利が含まれるか否かについては、特に規定を置いていません。しかし、制限納税義務者である非住居者の納税義務にはこれらの譲渡による所得も含むことが明らかにされています。無制限納税義務者である住居者の譲渡所得の対策には、もちろんこれらの権利の譲渡を含むと解するのです。   5 実質主義と税法の解釈適用 租税法における最も重要な原則は負担の公平であり、租税は各種の課税物件に経済的な租税負担能力を認めて課せられるものですから、租税法の解釈に当たってもこのような租税の性質を考慮しなければならないという主張があります。 1976年に廃止されたドイツ租税調整法1条2項では、「租税法の解釈に当たっては、国民の通念、租税法の目的及び経済的意義並びに諸事情の発展が考慮されなければならない。」とし、同条3項では「要件争点の判定についても同様とする」としていました。 この条文は、複雑多岐にわたる経済事象に租税法が対処するためには、租税法の目的を確実に捉え、租税法の文言に捉われることなく、経済的、実質的意義を考えて合目的的に解釈すべきだというのです。 かつて、ベッカーは、税法の経済的意義を強調し、租税法の解釈に当たっては、その法条に用いられている文言の外形、概念に何ら拘束されることなく、むしろ、その文言によって表現された実質的な経済的意義を基礎として解釈すべきであると主張しましたが、これを経済的観察法(Wirtschaftliche Betrachtungsweise)又は経済的実質主義といいます。 経済的実質主義が租税法に内在する解釈原理であるという考え方には批判があります。 それは、経済的実質主義は立法の指向であって実定法上に条理として内在するものではないから、法的関係を離れ経済的実質によれば恣意的課税の温床となり、納税者の課税予測可能性が奪われ、ひいては租税法律主義からみて適当でないという考え方です。 確かに、租税法は侵害規範であり、租税法の文理的規定を離れ、論理的解釈が濫用されたり、取引の法的関係を離れて経済的観察法が優先されると、租税法の基本原則である租税法律主義が崩壊してしまいます。 ただ、租税公平主義の立場から、納税者が税法上の課税要件とされている私法上の形式と異なる形式を採ることによって結果的には同一の経済的効果を実現しながら租税負担を回避すること(租税回避行為)は防止しなければなりません。 例えば、旧法時代には被合併法人の繰越欠損金を合併法人から控除できなかったため、本来合併法人となるべき黒字法人を被合併法人とし、本来被合法人となるべき赤字法人を合併法人とするなど「逆合併」という租税回避行為が行われました。 (注) 合併法人は被合併法人との事業の継続性がなく、ペーパーカンパニーであり、逆合併は租税の軽減以外のその理由が見出せない場合です。 このような場合には、経済行為がどのような私法上の形式によって行われたかだけでなく、その行為の経済的実質によって租税法規の解釈適用をすべきでしょうが、これも無制限に行うのではなく、その否認根拠を法定すべきでしょう。 ドイツ租税調整法では、第6条に「納税義務は、民法の形式又は形成可能性を乱用することによって回避し又は軽減することはできない。乱用が存在する場合においては、租税は、経済上の行為・事実及び諸関係に適合する法的形態に即して徴収されるべき額において徴収しなければならない。」と規定されていました。わが国では、昭和36年7月の税制調査会答申において、次のように国税通則法に実質課税原則及び租税回避否認の一般規定を設けるように指摘しました。 ただ、この答申に対しては多くの税法学者から「恣意的課税の温床となる」との批判を受け、結局、国税通則法から実質課税の原則を外して制定したといういきさつがあります。 ドイツ法の規定がナチス時代に拡大的に解釈され国民の権利を無視した課税が行われたことへの反省とともに、経済的観察法を国税通則法に規定した場合に考えられる課税手続に対して信頼がなかったというべきでしょうか。 このため、わが国の実定法上は、所得の帰属に関する実質主義と認識に関する実質主義としては「同族会社等の行為計算否認規定」が存するに過ぎません。こうなると、明文の規定のない場合でも、解釈論として行為計算否認の規定を準用して否認権を認めることができるのかについて争いが起きます。これを否認している裁判例(昭和39年7月24日大阪高裁)もありますが、学説上は税法上の公平負担の原則をふまえて積極に解する見解と、租税法律主義の観点からは消極に解する見解とが対立しています。 同族会社等の行為計算否認規定とは、同族会社等の行為又は計算で、これを容認した場合においては、法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところによって、その法人の課税標準若しくは欠損金額又は法人税額を計算することができる(法人税法132)というものです。 その規定の趣旨は、「元来、法人税法は、法人が純経済人として、経済的に合理的に行為計算等を行なうべきことを前提として、かような合理的行為計算に基づき生ずべき所得に対し課税し、租税収入を確保しようとするものであるから、法人が通常経済的に合理的に行動したとすればとるべきはずの行為計算をとらないで法人税回避もしくは軽減の目的で、ことさらに不自然、不合理な行為計算をとることにより、または直接法人税の回避軽減を目的としないときでも、経済的合理性をまったく無視したような異常、不自然な行為計算をとることにより、不当に法人税を回避軽減したこととなる場合には、税務当局は、かような行為計算を否認して、経済的に合理的に行動したとすれば通常とったであろうと認められる行為計算に従って課税を行ないうることは当然である」(昭和40年12月15日東京地裁)と説明されています。 もっとも、「課税要件事実の認定にあたって、行為の実質及び経済的効果を参酌考量して租税負担の公平が図られねばならないが、納税義務者、課税標準及び徴収手続が法律で定められることを要請する租税法律主義のもとにおいて、右認定は不当に私的自治を侵すものであってはならない。」(昭和39年9月24日大阪高裁)という考え方も念頭に置かなければなりません。 (了)

#No. 219(掲載号)
#山本 守之
2017/05/25

〔資産税を専門にする税理士が身に着けたい〕税法や通達以外の実務知識 【第2回】「土地の評価地目について」

〔資産税を専門にする税理士が身に着けたい〕 税法や通達以外の実務知識 【第2回】 「土地の評価地目について」 税理士 笹岡 宏保   基本的な論点 相続税等における財産評価の基礎とされる土地の価額は、原則として地目の別に評価するものと定められています。 この場合の「地目」は、評価実務においてどのように区別されているのでしょうか。また、この地目の具体的な認定はどのように行えば、良いのでしょうか。 これらの論点を実務上の目線から検討してみることにします。   解決への指針 (1) 原則的な土地の評価上の区分 評価通達7(土地の評価上の区分)の定めでは、土地の価額は、原則として次に掲げる9つの地目の別に評価するものとされています。 なお、地目は、課税時期の現況によって判定するものとされています。   (2) 具体的な地目の判定方法 上記(1)に掲げる地目の判定は、不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付民二第456号法務省民事局長通達)(以下「準則」といいます。)第68条(地目)及び第69条(地目の認定)に準じて行うものとされています。 そうすると、評価通達の定めに従って、地目の別に評価する場合においては、上記の準則の内容を理解しておくことが重要となります。 次に、準則第68条(地目の認定)をご紹介いたします。 なお、上記(1)④(評価通達に定める土地の評価上の区分に当たって山林と判定されるもの)には、上記準則第68条の「(20)保安林」を含むものとされ、また、上記(1)⑨(評価通達に定める土地の評価上の区分に当たって雑種地と判定されるもの)には、上記準則第68条の「(12)墓地」から「(23)雑種地」まで(「(20)保安林」を除きます。)に掲げるものを含むものとされています。   (3) 専門職への依頼 上記(1)及び(2)に掲げるとおり、税理士等が行う相続税等の土地の評価に当たっては、準則に従って土地の地目を認定する作業が不可欠とされます。ただし、当該地目の認定は税理士等の税務従事者の職域外であって適確にこれを遂行することには困難を伴うのが一般的であると考えられます。 そこで、このような場合に専門職として頼りになるのが「土地家屋調査士」です。 土地家屋調査士は、登記用紙の表題部の記載事項である「地目」の認定を行うことを業務の1つとしています。税理士等の税務従事者にとって判断が困難な土地の地目認定の良き相談相手としてお付き合いを深めておきたい専門職のお一人であると考えられます。   (4) 地目の判定事例 それでは、本稿のまとめとして事例を1つ検討してみることにします。下記の写真を参照してください。美しく整備された芝生やバンカーが確認できるゴルフ場を撮影したものです。   (了)

#No. 219(掲載号)
#笹岡 宏保
2017/05/25

役員給与等に係る平成29年度税制改正 【第1回】「改正の全体像」-損金算入要件に関する横断的な整理-

役員給与等に係る平成29年度税制改正 【第1回】 「改正の全体像」 -損金算入要件に関する横断的な整理-   西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士・ニューヨーク州弁護士 柴田 寛子   1 はじめに 平成27年6月30日閣議決定による「『日本再興戦略』改訂2015」において、経営陣へのインセンティブ付与として、株式報酬及び業績連動報酬等の導入促進が謳われ、また、コーポレートガバナンス・コードにおいても、上場会社に対して、「中長期的な業績と連動する報酬の割合」や「現金報酬と自社株報酬との割合」の適切な設定を検証することが求められる(補充原則4-2①)等、株式報酬及び業績連動報酬の導入を促進する役員報酬制度改革が急務となっている。 これらを背景として、昨年度(平成28年度)税制改正により、日本版リストリクテッド・ストックと呼ばれる特定譲渡制限付株式が導入され、さらに平成29年度税制改正においては、役員給与税制全体に関するより抜本的な改正が行われ、また、新制度導入から1年を待たずに特定譲渡制限付株式の見直しもなされた。 そこで、本稿では、平成29年度税制改正における役員給与税制全体に関する重要な改正点を解説し、次回以降、法人税法34条1項各号に基づき損金算入が認められる役員給与の3類型(定期同額給与、事前確定届出給与及び利益連動給与)毎に、その重要な改正点について解説することとする。   2 役員給与の損金算入可能性に関する横断的な整理 平成29年度税制改正前から、法人税法34条1項各号は、損金算入が認められる役員給与の3類型(定期同額給与、事前確定届出給与及び利益連動給与)を定めていた。もっとも、これらは原則として金銭を支給するものを対象とし、平成28年度税制改正により、特定譲渡制限付株式による株式報酬については、事前確定届出給与として損金算入が認められたものの、これ以外の株式報酬やストック・オプションは、法人税法34条1項の対象外とされていた。また、退職給与についても、過大役員給与等(法人税法34条2項)に該当する場合以外は損金算入が認められ、法人税法34条1項の適用対象外とされていた。 平成29年度税制改正は、これを改め、金銭、株式又は新株予約権という報酬の支給手段を問わず、また、退職給与か否かとの支給名目を問わず、役員給与全般について損金算入の要件を統一化し、原則として法人税法34条1項各号の定める3類型のいずれかに該当する場合に損金算入を認めるとの横断的な整理を行うものである。 平成29年度税制改正後の定期同額給与、事前確定届出給与及び利益連動給与の3類型の要件の具体的内容については後述するが、各類型に該当する役員給与の概要及び具体例を平成29年税制改正前後で対比したものが〔図表1〕である。 〔図表1〕 (※1) 「業績連動指標」とは「利益の状況を示す指標」、「株式の市場価格の状況を示す指標」又は「これらの指標と同時に用いられる売上高の状況を示す指標」を指す(法人税法34条1項3号、同法施行令69条10項)。 (※2) 「業績連動要件の付された退職給与」とは、退職給与の支給額が業績目標達成度合いに応じて決まるものや、支給額の算定に株価を参照しているものが考えられる。一方、業績連動要件が付されていない退職給付(例えば、勤務期間×最終月額報酬×給付乗率(功績倍率)に基づき算定される退職給与)は、改正前同様、過大役員給与等に該当しない限り、損金算入が認められる。 (※3) 業績連動要件が付されたストック・オプションとしては、権利行使により取得可能な株式数が業績連動指標の達成度合いにより決まる等の行使条件が付されたストック・オプションが考えられる。   3 ストック・オプションに関する損金算入要件の整理 平成29年度税制改正により、実務上、もっとも大きな影響を受ける可能性がある報酬類型は、ストック・オプションであろう。 ストック・オプションは、平成29年度税制改正前は、税制適格ストック・オプションを除き、原則としてすべて損金算入可とされていた。しかし、平成29年度税制改正により、報酬の支給手段を問わず、損金算入の可否について横断的な整理がなされた結果、ストック・オプションについては、原則として事前確定届出給与又は利益連動給与(法人税法34条1項2号・3号)のいずれかの要件を満たす場合に限り、損金算入が認められることとなった。ストック・オプションに関しては、損金算入が認められにくくなる改正ともいえる。 平成29年度改正前後でのストック・オプションの損金算入可能性を対比したものが〔図表2〕である。 〔図表2〕 (※1) 退職給与となるストック・オプションとは、権利行使期間が退職から10日間等の限定が付され、所得税法30条1項に規定する「退職により一時に受ける給与」と認められるものをいう(株式会社伊藤園からの事前照会に対する平成16年11月2日付け東京国税局審理課長回答にて閲覧可能)。   4 適用時期 役員給与に関する平成29年度税制改正は、原則として平成29年4月1日以後に支給又は交付に係る決議(当該決議が行われない場合には、その支給又は交付)をする給与について適用される。 例外として、改正前は損金算入が認められていたものが、改正により認められなくなるもの、具体的には、①業績に連動した退職給与に係る改正、②無償取得事由に役務の提供期間以外の事由(業績の達成度合い等)を含む特定譲渡制限付株式に係る改正、又は③新株予約権に係る改正については、平成29年10月1日以後に支給又は交付に係る決議(当該決議が行われない場合には、その支給又は交付)をする給与から、改正法が適用される。 なお、改正法の適用時期を決める上記の「支給又は交付に係る決議」とは、報酬上限額等に関する株主総会決議や新株発行・自己株式処分の取締役会決議ではなく、株主総会又は取締役会等における役員報酬の具体的な内容を決定する決議又は決定を指すとされている(そのため、ストック・オプションに関しては、新株予約権の具体的な内容が決定される発行決議となる)。 (了)

#No. 219(掲載号)
#柴田 寛子
2017/05/25

電子マネー・仮想通貨等の非現金をめぐる会計処理と税務Q&A 【第5回】「ポストペイ方式の電子マネーにより経費決済を行った場合の税務」

電子マネー・仮想通貨等の非現金をめぐる 会計処理と税務Q&A 【第5回】 「ポストペイ方式の電子マネーにより経費決済を行った場合の税務」   公認会計士・税理士 八代醍 和也   A 前回はポストペイ方式の電子マネーを使用した経費決済に係る会計処理について解説を行ったが、続いて今回は、同様のケースにおける税務上の取扱いがテーマである。 なお、ポストペイ方式の電子マネーによる経費決済に関して、消費税に関する特有の論点はないことから、今回は法人課税を中心に、税務上の論点となりそうなポイントを解説していく。   1 法人税の取扱い (1) 通常の経費決済のケース ポストペイ方式といっても、その本質はクレジットであるということは前回述べたとおりである。したがって、法人でもクレジットカードの利用が広く普及した今日においては、通常の経費決済の場面で問題となるべき事項はそれほど多くはないのではないかと思う。 すなわち、【第3回】でも述べたとおり、法人の損金の額に算入すべき金額とは「当該事業年度の販売及び一般管理費」で「債務の確定」したものであり、また、債務の確定は通常の場合、物品の引渡し・役務提供の完了時点であると考えられることから、税務上の損金算入のタイミングは会計上の費用認識のタイミングと一致することになる。 このことを、前回の設例を用いて図示すると以下のようになる。 【通常の物品購入】 ◆ポストペイ方式電子マネーの利用時(物品購入時点) (借方)消耗品費 10,000円  (貸方)未払金 10,000円 ⇒ 税務においても上記の費用処理がそのまま認められる。 ◆ポストペイ方式電子マネーの代金支払時 (借方)未払金 50,000円  (貸方)現金預金 50,000円 (2) インターネット注文による決済のケース 今日においては、販売者のウェブサイト上で商品を購入したり、Amazonや楽天が運営するオンライン通販を利用する場面が増えており、法人においてもこれらのサービスを利用して物品を購入するケースが増加している。またその際には、ポストペイ方式の電子マネーを利用して決済を行うことも多いと思われる。 そこで以下では、こういったウェブサイトを利用した物品購入において、電子マネー決済を行った際に生じる特有の留意点について説明する。 ウェブサイト上での物品購入時にポストペイ方式の電子マネーを利用した場合、通常の物品購入時とは異なり、注文時に決済が行われ、決済と納品との間に時間的なズレが生じることになるが、税務上の損金算入及び会計上の費用認識が行われるのはいつだろうか。 前述のとおり、法人税法において経費が損金に算入されるのは通常、物品の引渡し・役務提供の完了時点であり、当然ながらオンラインによる物品購入取引にも妥当する。したがってオンライン上で発注・決済を行っただけでは、法人税法上、その時点で債務が確定しているとは認められないことが一般的であると考えられる。また、発生主義を前提とした企業の会計の立場からも同様に、ウェブサイトにおける発注段階で費用を認識させることは通常はしない。 上記を図示すると以下のようになる(説明の便宜上、勘定科目及び金額は前回の設例と同様にしている)。 【ウェブサイトにおける物品購入】 ◆発注時(ポストペイ方式電子マネー決済時) (仕訳は発生しない) ◆納品時 (借方)消耗品費 10,000円 (貸方)未払金 10,000円 ⇒ 損金が発生するタイミングも同じ。 ◆ポストペイ方式電子マネーの代金支払時 (借方)未払金 50,000円 (貸方)現金預金 50,000円 当然のことではあるが、例えば電子マネーのサービス提供者が発行する利用実績データ等を利用して仕訳データを作成しているような場合、実務上、決済日を取引発生日として仕訳起票を行っているケースも多いと考えられる。 事務処理上の便宜からこうした日次処理・月次処理として経費計上を行っている場合には、決算処理上、期末日において発注済・未納品のまま経費計上された取引を何らかの方法で把握・集計し、経費から除外する調整が必要になる。 (3) 支払金額の減免 前回も述べたとおり、ポストペイ方式の電子マネーでは利用実績に応じて支払金額の減免が受けられるケースがある。この点に関し、法人税法上の取扱いを説明する。 当該減免はその性質上、いわゆる値引取引と同様のものと考えることができる。また、販売者との仕入割戻し契約に基づくものではなく、通常は、法人税基本通達2-5-4の(1)に定める「算定基準が購入価額又は購入数量によっており、かつ、その算定基準が契約その他の方法により明示されている仕入割戻し」に類するようなものではないと考えられることから、利用代金の減免の通知を受けた事業年度において収益計上することになると考えられる。   2 消費税の取扱い 上記のとおり、ポストペイ方式の電子マネーを利用した経費決済の場面において、消費税法上、特段留意すべきポイントはない。基本的には次のとおり、法人税法における費用が認識されるタイミングで、課税取引を認識することになる(勘定科目、金額は前回の設例による)。 【通常の物品購入】 ◆ポストペイ方式電子マネーの利用時(物品購入時点) (借方)消耗品費 10,000円  (貸方)未払金 10,000円 ⇒ 税務においても上記の費用処理がそのまま認められる。 ⇒ 消費税法上、この段階で課税取引が発生する。 ◆ポストペイ方式電子マネーの代金支払時 (借方)未払金 50,000円  (貸方)現金預金 50,000円   3 電子取引を行った場合の取引情報の保存方法について 【第3回】で解説したプリペイド方式の電子マネーの場合と同様、販売者から領収書等の取引関連の書類を入手できない場合、電子帳簿保存法10条に基づき、取引情報を電磁的記録として保存することになるものと考えられる(詳細は【第3回】を参照)。 (了)

#No. 219(掲載号)
#八代醍 和也
2017/05/25

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第5回】「在留資格と税制」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第5回】 「在留資格と税制」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 平成29年度税制改正における相続税の納税義務者の改正や、2年前に創設された国外転出時課税において、在留資格の有無が課税関係に影響を及ぼしているようですが、この在留資格とは何でしょうか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷日本の在留資格制度 日本人は、日本において、学校に通って勉強し、多様な職業について収入を得ることについて基本的には制限はない。しかし、外国人が日本で長期間滞在し、学校に通い、職業に就くことに関しては、活動範囲や活動期間について制限がかけられていることが多い。 外国人がどのような活動ができるか、その範囲については、27種類の資格によって定められている。これが在留資格というもので、日本国政府が外国人に活動範囲を許可したものである。 在留資格の制度は、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)に基づいている。日本は世界の多くの国と比較すると、受け入れる移民や難民の数が少ないといわれるが、これは、日本が島国で、かつ日本語という非常に難しい言語を使っていることなどの理由のほかに、この在留資格制度とその運用の厳格さに起因しているとも考えられる。 しかし、少子高齢化と人手不足から、この制度も税制ほどではないにせよ頻繁に改正され、今後の日本の行方に大きな影響を与える制度の一つである。   ▷27種類の在留資格 27種類の在留資格は次のようなものである。 まず、入管法の「別表第1の在留資格」として、次の23種類がある。 続いて、「別表第2の在留資格」として次の4つがある。 「別表第1の在留資格」と「別表第2の在留資格」の大きな違いは、活動できる範囲に制限があるか否かという点である。 別表第1の在留資格は、それぞれの資格に応じて活動できる範囲が異なる。例えば、「留学」という在留資格で日本にやってきた留学生は、学校に通って勉強することは認められるが、アルバイト等については制限が設けられている。 別表第2の在留資格は、永住者以外は在留期間について制限があるが、身分を表す在留資格であることから、日本での活動に関しては、特に制限は設けられていない。 つまり、別表第1の在留資格は日本での活動に制限があることから、これらの在留資格で滞在している外国人の日本での課税範囲については、一般的な日本の居住者と同等に扱うことは不合理であると考え、異なる取扱いがなされている。   ▷国外転出時課税と在留資格 国外転出時課税は平成27年度に創設された制度である。有価証券を持って外国に移住し、その後、有価証券を売却した場合、日本での課税ができないことが問題となり、国外転出時に1億円以上の有価証券等を有する人については、国外転出時に譲渡があったものとみなして課税がなされる制度である(【第3回】を参照)。 この制度の対象となる者は、国外転出をする日前10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計額が5年超であることとされているが(所法60の2⑤)、例外として、別表第1の在留資格を持って在留していた期間は除かれるとされている(所令170③一)。 つまり、別表第1の在留資格をもって日本に滞在していた1億円以上の有価証券を有していた外国人が本国に帰国した場合においては国外転出時課税の対象にはならないが、例えば別表第2の「日本人の配偶者等」の在留資格を有して日本に滞在していた1億円以上の有価証券を有していた外国人が、夫とともに母国に帰国した場合においては、原則的には国外転出時課税の対象となる。 ただし、例外として、平成27年6月30日以前に別表第2の在留資格で在留していた期間がある場合は、その期間は日本に住所又は居所を有していた期間に含まれない(平成27年所令附則8②)。   ▷相続税・贈与税の納税義務者と在留資格 平成29年度の税制改正で、相続税・贈与税の納税義務者が大幅に改正された。この改正理由の1つが、一時的に日本に住所を有する外国人同士の相続等の場合には、国外財産に日本の相続税が課税されないことになり、高度外国人材等の受入れ促進につながるというものである。 そのために、例えば、相続時に被相続人と相続人等が日本に住所を有していた外国人であった場合においても、相続人が「一時居住者」、被相続人が「一時居住被相続人」に該当する場合は、相続税の課税対象は国内財産に限られる。 「一時居住者」とは、相続開始の時において在留資格(別表第1)を有し、相続の開始前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの(相法1の3③一)である。 また「一時居住被相続人」とは、相続開始の時において上記在留資格を有し、かつ、相続時に国内に住所を有していた被相続人であって、相続の開始前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの(相法1の3③二)である。 このようなことから、在留資格の確認は外国籍の人の所得税や相続税・贈与税の計算をする際において、今後重要な手続きとなると考える。 (了)

#No. 219(掲載号)
#菅野 真美
2017/05/25

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第15回】「買換資産を本人が居住の用に供しない場合の適用関係②(生計を一にする親族のみが居住している場合)」-居住の用の判定-

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第15回】 「買換資産を本人が居住の用に供しない場合の適用関係② (生計を一にする親族のみが居住している場合)」 -居住の用の判定-   税理士 大久保 昭佳   Q 譲渡資産や買換資産を、X(譲渡者本人)が日常生活の用に供せず、生計を一にする親族のみが居住しているときでも、「特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)」の適用を受けることができる場合があるそうですが、この場合の適用関係について説明してください。 A それぞれの態様に応じた適用関係を図解により説明しますと、次のとおりとなります。 ●○●○解説○●○● (1) 買換資産に本人と妻及びその他の扶養親族が同居する場合 譲渡資産の判定については、措通36の2-23(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱い等の準用)により、措通31の3-6(生計を一にする親族の居住の用に供している家屋)が準用されますから、譲渡資産について同通達で定める要件を満たす場合には、この特例の適用を受けることができます。 (2) 買換資産にその他の扶養親族のみが居住する場合 買換資産の判定については、措通36の2-17(買換資産を当該個人の居住の用に供したことの意義)(注)において、措通31の3-6(生計を一にする親族の居住の用に供している家屋)が準用されておらず、譲渡者本人が買換資産を居住の用に供したことにはなりませんから、この特例の適用を受けることはできません。 (了)

#No. 219(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/05/25

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例50(消費税)】 「移転補償金を課税売上としていたため、基準期間の課税売上高が5,000万円超となり、原則課税で設備投資に係る消費税の還付を受けたが、税務調査による減額更正により、簡易課税となり、設備投資に係る消費税の還付が受けられなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例50(消費税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆簡易課税制度の選択(消法37①) その基準期間における課税売上高が5,000万円以下である課税期間について「簡易課税制度選択届出書」を提出した場合には、原則として提出日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間については簡易課税制度の適用を受けることができる。 ◆簡易課税制度選択不適用届出書(消法37⑥) 簡易課税制度の適用をやめようとする場合には、適用をやめようとする課税期間の初日の前日までに「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出しなければならない。ただし、簡易課税制度の適用を受けた日の属する課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、この届出書を提出することはできない。 ◆補償金の消費税法上の取扱い 消費税は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等が課税対象となる。収用等については、事業者が、土地収用法その他の法律の規定により、その所有権その他の権利を収用され、かつ、当該権利を取得する者から当該権利の消滅に係る補償金を取得した場合には、対価を得て資産の譲渡を行ったものとして課税の対象になる。 収用等による補償金の種類及び、対価性の有無による消費税の課税区分は次のようになる。 ① 対価補償金 譲渡があったものとされる収用の目的となった所有権その他の権利の対価たる補償金であり、課税の対象となる。 ② 収益補償金 事業について減少することとなる収益又は生ずることとなる損失の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金であり、対価性がないため、課税の対象にならない。 ③ 経費補償金 休廃業等により生ずる事業上の費用の補てん又は収用等による譲渡の目的となった資産以外の資産について実現した損失の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金であり、対価性がないため、課税の対象にならない。 ④ 移転補償金 資産の移転に要する費用の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金であり、対価性がないため、課税の対象にならない。 ⑤ その他補償金 その他対価補償金たる実質を有する補償金は課税の対象となり、対価補償金たる実質を有しない補償金は課税の対象にならない。 〈まとめ〉 ◆補償金の内容が明らかでない場合 法人が交付を受けた補償金等のうちにその交付の目的が明らかでないものがある場合には、当該法人が交付を受ける他の補償金等の内容及びその算定の内訳、同一事業につき起業者が他の収用等をされた者に対してした補償の内容等を勘案して、それぞれ対価補償金、収益補償金、経費補償金、移転補償金又はその他補償金たる実質を有しない補償金のいずれに属するかを判定する。       (了)

#No. 219(掲載号)
#齋藤 和助
2017/05/25

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第23回】「雑収入(立退料)」~立退料の雑収入計上が漏れていると判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第23回】 「雑収入(立退料)」 ~立退料の雑収入計上が漏れていると判断した理由は?~   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して行われた「立退料の雑収入計上漏れ」に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所昭和58年9月29日裁決(裁決事例集26巻119頁。以下「本裁決」という)及び東京地裁昭和60年7月17日判決(判タ604号105頁。以下「本判決」という)を素材とする。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) 本件理由付記は、素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工して作成したものである。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本裁決の判断 本裁決は、大要次のとおり、理由付記に不備はないと判断した。   4 本判決の判断 本件は、裁判所に訴訟提起された。本判決は、大要次のとおり、本件理由付記は、X社の帳簿の記載に信憑性がないことを挙示、引用の資料自体によって明らかにし、帳簿不記載の値引き保証金2,222万円を含む6,594万円の授受と本件立退きとの対価的牽連性を各資料中にも明示されている事実から経験則によって推認したものと解されるから、理由付記の趣旨目的に照らして、法の要求する最少限度の要件を具備しており、理由付記に不備はないと判断した。 (1) 理由付記の趣旨目的と記載の程度 (2) 理由付記の十分性 控訴審である東京高裁昭和61年4月25日判決(税資152号131頁)は、一審である本判決の判示の一部を要旨次のとおり改めた上で、理由付記に不備はないという判断を維持している。 これに対して、X社は、要旨次のとおり主張して上告した。 しかしながら、最高裁昭和62年9月3日第一小法廷判決(税資159号482頁)は上告を棄却している。   5 検討 (1) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、S(株)から賃借していたNアパートからの立退きに際しX社が同社から収受した8,094万円について、X社が、S(株)との間で昭和55年1月31日に取り交わした覚書及び金銭消費貸借契約書に基づいて、その一部を借入金として処理するなどし、雑収入に計上していないことに対して、その全額が立退料として雑収入に計上すべきものであり、計上漏れとなっている金額を所得金額に加算するものである。 そうであれば、雑収入に計上していないことの否認という広い意味において、また、覚書及び金銭消費貸借契約書が真意に基づいて作成されたものであるとは認めないという意味において、X社の帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当するものと考える(さらにいえば、X社は帳簿に記載していないものの、X社はS(株)から約束手形2,222万円を受領していることを認定している点も、X社の帳簿書類の記載自体を否認していることになろう)。 したがって、理由付記の程度としては、 ことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (2) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものではないと考える。 X社は、S(株)との間で昭和55年1月31日に取り交わした覚書及び金銭消費貸借契約書に基づき、次のとおり会計処理を行っている。 本裁決及び本判決によれば、金銭消費貸借契約書及び覚書には、それぞれ次のような記載がある。 X社の上記会計処理のうち少なくとも1~3については、覚書及び金銭消費貸借契約書がその根拠となることがわかる。そうすると、上記会計処理の根拠として、X社は、覚書及び金銭消費貸借契約書を示しているのであるから、課税庁は、覚書及び金銭消費貸借契約書が真意に基づいて作成されたものであるとは認めないという本件更正処分をする以上、本件理由付記に、更正処分の根拠をこれらの書類との関係において帳簿書類の記載以上の信憑力のある資料を摘示することによって具体的に明示しなければならないと考える。しかしながら、本件理由付記にはそのような資料の摘示がない。 また、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的という観点からも、覚書及び金銭消費貸借契約書が真意に基づいて作成されたものであるとは認められないこと並びに真意は立退料を8,094万円とすることにあったと認められることとしたその判断過程や根拠となる事実を記載すべきであるといえよう。したがって、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであるとはいえないと考える。 なお、審査請求において、課税庁は、覚書及び金銭消費貸借契約書に関して、要旨次のとおり主張している。 ここでは、覚書及び金銭消費貸借契約書が真意に基づいて作成されたものであるとは認められないこと並びに真意は立退料を8,094万円とすることにあったと認められることとしたその判断過程や根拠となる事実、とりわけ本件理由付記に記載のない事実として、金銭消費貸借契約に係る1,500万円の返済が済んでいないこと(なお、本件更正処分は、昭和54年10月1日から同55年9月30日までの事業年度について、昭和57年1月30日付けで行われたものである)及びいずれの書類も真意に基づいて作成されたものではなく8,094万円全額が立退料であるとする旨のS(株)の課税庁に対する申述が摘示されている。 原処分段階でどこまでの事実や資料を把握していたかは明らかではないが、上記主張に織り込まれている事実等を本件理由付記に摘示する必要があったといえよう。本件は、争訟段階における課税庁の主張立証の内容が、皮肉なことに、原処分に係る理由付記の不備を照らし出す一例であるといえる。 (3) 更なる議論 ~課税庁が摘示するべき「資料の信憑力の程度」と納税者の「帳簿書類の信憑力の程度」との関係~ 上記(1)③において示した「帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料の摘示」とは、厳密にいえば、【1】「資料の摘示」という形式的な要素と、【2】当該資料が「更正処分の根拠となるもの」であり、かつ、当該青色申告者の「帳簿書類の記載以上に信憑力があるもの」であるという実質的な要素の2つから成る。 覚書及び金銭消費貸借契約書の信憑性に関する本判決や審査請求における課税庁の主張に触れると、【2】に関して、理由付記において、更正処分の根拠として、課税庁が摘示するべき「資料の信憑力の程度」の問題、すなわちどの程度の信憑力のある資料を提示すべきかという点は、納税者の「帳簿書類の信憑力の程度」に左右されるという、相対的な一面を有することがわかる(もっとも、青色申告に係る更正という観点をひとまず離れて、理由付記の一般的な趣旨目的の観点から見た場合における理由付記に更正処分の根拠として摘示されるべき「資料の信憑力の程度」を考える際には、別途の検討を要すると思われる)。 このことを考慮すると、理由付記において、課税庁が摘示する「資料の信憑力の程度」のみならず、納税者の「帳簿書類の信憑力の程度」に関する記載を要する場合もあり得るであろう。 なお、本件訴訟の一審において、課税庁は要旨次のとおり主張している。 文書の記載内容の真実性を否定する更正処分に係る理由付記に関して、下線部分のような主張が他の事案で受容されるかどうか、今後においても議論されるべきであろう。 *  *  * 次回は、「受取利息計上漏れ」に係る法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 219(掲載号)
#泉 絢也
2017/05/25
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