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被災したクライアント企業への実務支援のポイント〔法務面のアドバイス〕 【第1回】「災害に関する主な法律」

被災したクライアント企業への 実務支援のポイント 〔法務面のアドバイス〕 【第1回】 「災害に関する主な法律」   弁護士 岨中 良太   わが国では災害時において、非常時の対応を行うために、様々な法律が制定されている。 法務面のアドバイスにおける【第1回】は、それらのうち主要なものについて、その概要を紹介したい。   1 災害対策基本法 災害対策基本法は、我が国の災害対策関係法律の一般法である。 災害対策基本法は、防災に関する責務の明確化、総合的防災行政・計画的防災行政の整備、災害対策の推進、激甚災害に対処する財政援助等、災害緊急事態に対する措置等の災害対策に関する基本的事項を定めている。   2 激甚災害法(激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律) 激甚災害法は、激甚災害が発生した場合に地方公共団体及び被災者に対する復興支援のために国が通常を超える特別の財政援助や助成措置を行うことを定めている。 国によって激甚災害に指定されると、特別措置として、道路、河川、被災者住宅等の復旧・建設事業や農地等の復旧事業への財政援助、中小企業者等に対する融資等が行われることになる。   3 特定非常災害特別措置法(特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律) 特定非常災害特別措置法は、特定非常災害が発生した場合に比較的定型的に立法措置が必要となることが予想される特別措置について、あらかじめ制度化している。 国によって特定非常災害に指定されると、避難等のために運転免許証の更新等ができない被災者が特別措置により救済される。 具体的には、次に掲げるもののうち、政令によって指定された措置が適用されることになる。   4 大規模災害復興法(大規模災害からの復興に関する法律) 大規模災害復興法は、特定大規模災害が発生した場合に国と地方公共団体とが適切な役割分担の下に被災地域における生活の再建及び経済の復興を図ることを基本理念として制定された。 国によって特定大規模災害に指定されると、内閣総理大臣を本部長とする復興対策本部を置くことができるほか、政府に復興基本方針の策定を義務付け、道路か先頭の災害復旧事業について国が地方公共団体を代行することができることになる。   5 「激甚災害」「特定非常災害」「特定大規模災害」の違い 上記で紹介した「激甚災害」「特定非常災害」「特定大規模災害」は、いずれも発生した災害について国が指定する点は共通しているが、指定の目的はそれぞれが根拠とする法律の目的により異なっているため、定義や指定基準は次のとおり異なる。 「激甚災害」指定の目的は、復興支援のために国が通常を超える財政援助や助成措置を行うというものであり、①全国的に大きな被害をもたらした場合(本激)と②局地的に多額の復旧費用が必要となった場合(局激)とがある。いずれも災害復旧事業費による指定基準が設けられている。 「特定非常災害」指定の目的は、避難等のために行政手続等をとることができない被災者を救済するというものであり、「著しく異常かつ激甚な非常災害」と定義されている。具体的には①死者・行方不明者、負傷者、避難者等の多数発生、②住宅の倒壊等の多数発生、③交通やライフラインの広範囲にわたる途絶、④地域全体の日常業務や業務環境の破壊、といった要因が総合的に勘案される。 「特定大規模災害」指定の目的は、自治体単独で対応できない大規模な災害からの復興に関する組織、復興計画の作成・実施に国が関与するというものであり、「著しく異常かつ激甚な非常災害」であり、「緊急災害対策本部が設置されたもの」と定義されている。緊急災害対策本部は極めてまれに見る災害が発生し、政府が一体となって災害応急対策を推進する必要がある場合に設置される。 (了)

#No. 202(掲載号)
#岨中 良太
2017/01/19

顧客との面談が“ちょっと”苦手な税理士のための面談術 【第1回】「まずは知っておきましょう。税理士としての接客の重要性」

顧客との面談が“ちょっと”苦手な 税理士のための面談術 【第1回】 「まずは知っておきましょう。税理士としての接客の重要性」   有限会社コーディアル 代表取締役 坪田 まり子   このたびめでたく税理士として一歩を踏み出された皆さん、はじめまして。 坪田まり子と申します。 2016年6月に清文社様より『士業者が身につけたい顧客をつかむ面談術』を上梓させていただきました。ありがたいことに発売早々重刷になったこの本を、少なからず評価していただき、今回、こちらの連載の機会を頂戴いたしました。 私なりに少しでも“新米税理士”の皆さんのお役に立つべく、なりたての頃には誰もが苦手意識を持つ『面談』を中心に、執筆させていただきます。 「新米」という立場はどんな業界、どんな仕事でも、まずは実務を一人前にこなせるようになるまで、大変なご苦労があるはずです。受験中は机上の理論でよかったものが、税理士事務所で働きながら勉強していた方であっても、自らがお客様の前で「税理士」として名乗り、業務と責任を遂行していくことは、慣れるまではとにもかくにも大変だろうと拝察いたします。 私のこの連載では、そんな皆さんの“側面”支援をさせていただきたいと考えています。実務面そのものを補うものではなく、接客・接遇という面談シーンを中心にスポットを当てていきます。 実際に面談をなさるのは有資格者である皆さんですもの。その重要な面談シーンの中で、皆さんに一人前の接客・接遇スキルがあれば、お客様との良好な人間関係の構築にかなり役立つはずです。 ちょっと待ってください、坪田さん。 接客とか接遇は事務所の職員さんに任せておけばよいのでは?? そんなことより、まずは実務! というお声が聞こえてきそうですが、新米のうちから接客・接遇スキルをないがしろにするようでは、皆さんのこの先が心配です。きっとこれから出逢うお客様方から「マナーがなっていない=常識のない先生」と思われてしまうはずだからです。 皆さんの同期は今年何名合格なさったのでしょうか。2017年現在、税理士として登録されている人数は約7万6,000人もいらっしゃるそうですね。これから税理士に依頼しようという新規のお客様から言わせれば、その中の「誰に依頼するか」は自由なのです。 どれほど素晴らしい成績をおさめ税理士になったとか、大手税理士法人に所属しているからなどの理由だけで選ばれるのではおそらくなく、最終的には皆さんのお人柄を含め、お客様が「この先生にずっと見てもらいたい」と決めていくのだと思います。 それでもやはり、大手税理士法人や先輩方がたくさんいらっしゃる事務所に所属できた場合には、最初は有利もしれません。所長を筆頭にその法人や事務所が、長い時間をかけて培ってきた信頼と実績から、既にたくさんの顧問客がいらっしゃるはずだからです。 そんな環境下にある新米の皆さんには、仕事が自然と“与えられる”のではないかと拝察します。でも、それはただ与えられるだけであり、自分の実力と人脈で勝ち取ったものではありません。ここを勘違いしてしまい、仕事は自動的に、そして永遠に上から与えられるものだと高をくくってしまっては、これから先が思いやられます。 実は、私、日本公認会計士協会東京会や関東信越税理士会をはじめ、個別の士業の法人様からも講演や研修の機会を少なからず頂戴しています。そんな私に、打ち合わせの席で、まず所長様方がおっしゃるお言葉には共通点があります。 ため息交じりにおっしゃることは、 こんなに士業者を抱えているのに、新しい仕事を自分の手で取ってくるのはほんの一握り。 どうすれば彼らの意識を変えられるのか、どうすればお客様から仕事を取ってくることができる士業者になれるのか。。。 というものです。 新米税理士として、いきなり独立なさる方がどれほどいらっしゃるのか、私には分かりませんが、皆さんの所属した事務所や法人の規模の大小にかかわらず、いつも 自分の力でお客様をつかむためにはどうすればよいのだろうか? という意識を持っておかれることをお勧めします。ましてや皆さんが所属する最初の事務所が、皆さんを育ててくれたご両親の下であるならなおさらです。 と、常に前向きな意識を持ってくださいませ。 この意識を持てるかどうかが、いつしかライバルと大きな差を生むことにつながるはずです。 仕事は自分でつかみとってくるものです。 どこからか自動的に与えられるものでは決してありません。 実務面はどうぞ先輩方に、積極的にお尋ねください。私は、その「実務」と、接客・接遇という「対人関係能力」は、例えるならば「車の両輪」のようなものだと位置づけています。どちらが欠けても車は動きません。皆さんのお仕事も同じでないでしょうか。 さらにいえば、実務面以上に、お客様との面談スキルは汎用性が極めて高く、これから長い人生を、皆さんが社会人として“より良く”生きるためにも、ちゃんと身に付けておいて損をすることは決してありません。 「面倒くさいなあ・・・」なんてどうぞ思わないで、素直で、かつ、前向きなお気持ちで、私の連載と向き合っていただけましたら幸いです。 *  *  * この初回は総論として、面談術という対人関係能力がなぜ必要なのかをお話しました。 次回からは各論として、具体的なスキルについてお話していきます。 皆さん、どうぞ最後までお付き合い下さいね。 どうぞよろしくお願い申し上げます。 (続く)

#No. 202(掲載号)
#坪田 まり子
2017/01/19

《速報解説》 非永住者の有価証券の譲渡所得について、課税範囲を見直し~平成29年度税制改正大綱~

《速報解説》 非永住者の有価証券の譲渡所得について、課税範囲を見直し ~平成29年度税制改正大綱~   税理士 佐藤 善恵   1 平成29年度税制改正の内容 平成29年度税制改正大綱によれば、非永住者(※1)の課税所得の範囲から、「所得税法に規定する有価証券(※2)」で次に掲げるものの譲渡により生ずる所得(国内において支払われ、又は国外から送金されたものを除く)が除外されることとなる(国税及び地方税)。 (※1) 非永住者とは、居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいう(所法①四)。 (※2) 過去10年以内に非永住者であった期間内に取得したもので、平成29年4月1日以後に取得したものを除く。 この改正趣旨は次に述べるように、平成26年度税制改正に対する問題点の指摘を受け、手当てを行うものとなっている。   2 趣旨 平成26年度税制改正前は、非永住者の課税所得の範囲は、 であった(旧所法7二)。 これが平成26年度税制改正において、 と改正された(所法7二)。 そのため「国外源泉所得(所法95④)」として積極的に定義されていないものが、反射的に非永住者の課税所得の範囲に含まれることとなった。具体的には、例えば、非永住者がニューヨーク証券取引所で行われている株式の譲渡をした場合、それに係る所得が課税所得の範囲に含まれることとなったものである。 しかし、上記の改正は、国際課税原則の見直し(下記【補足】を参照)に伴うものであり、非永住者の課税所得の範囲を変更するための改正ではなかった。 このように結果的に課税所得の範囲が拡大したことに対し、外国人材の呼び込みの阻害要因となっているとの指摘があり、今回見直されることになったのである。 〈留意点〉 この改正は、「平成29年4月1日以後に行う有価証券の譲渡について適用される」が、上記の平成26年度改正事項は「平成29年分以後の所得税について適用される」こととされている(H26改正法附則3③)。 したがって、平成29年1月1日から同年3月31日までに行われた有価証券の譲渡に係る所得については、上記1の(1)から(3)に該当しても、非永住者の課税所得の範囲に含まれることになる。経過措置規定がなされるか等、今後明らかとなる改正の詳細に留意が必要である。 (了)

#No. 201(掲載号)
#佐藤 善恵
2017/01/12

プロフェッションジャーナル No.201が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年1月12日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.201を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/01/12

monthly TAX views -No.48-「トランプの“border tax”(仕向地課税法人税)の評価」

monthly TAX views -No.48- 「トランプの“border tax”(仕向地課税法人税)の評価」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   新年早々、トランプ次期大統領がトヨタのメキシコ工場計画に対して、 とツイートし、トヨタの時価総額4,000億円が失われた。 この件について日経新聞などは“border tax”を「関税」と訳していたが、それは間違いだ。 関税なら“custom duty”、“import duty”、“tariff”であり、“border tax”にはならない。 *  *  * わが国にも“border tax”はある。 消費税(VAT)である。 米国からわが国に輸入される米国車には8%の消費税が課せられる。トヨタ車にも8%の消費税が課せられ、双方に税制上の不公平は存在しない。また輸出時には、消費税は還付される。 このような仕向地課税をとる消費税が、国際競争力を損なわない税制として導入されているのである。 (※) 上記の詳細な説明については、拙著『税で日本はよみがえる』(日本経済新聞出版社)を参照願いたい。 一方、米国にはVATが導入されていないので、税制で国境調整はできない。これが米国の国際競争力を低下させている、とかねてから共和党は主張してきた。トヨタやベンツが米国に自動車を輸出する際には自国の消費税は還付されるが、米国のGMやフォードが輸出する際には還付制度はなく、(高い輸出価格となることが)競争条件を不利にしているというのである。 そこで、「仕向地課税法人税」(destination based approach)という形で、この国境調整システムを導入しようというのが、冒頭の“border tax”である。 この税制は仕向地課税なので、輸入時に税を課すことと、輸出時に還付することがセットになっている。 仕向地課税法人税というコンセプトは、古くはブッシュ大統領時の大統領税制諮問委員会「成長及び投資税制案」(05年)として提言され、また、英国シンクタンクIFSのマーリーズ・レビューの中でもリコメンドされてきたものである。 なお、マーリーズ・レビュー報告書の概要は、筆者が座長を務めた「マーリーズ・レビュー研究会報告書」がジャパン・タックス・インスティチュートのホームページから入手できる(第2部、一橋大学佐藤主光教授の論文参照)。 *  *  * 仕向地主義法人税のメリットを、共和党の選挙公約“A BETTER WAY”などから挙げると、次の通りだ。 第1に、法人税率が企業の立地選択に影響しないことである。企業が海外に生産拠点を移したとしても、製品を国内に輸入すればそこで課税される一方、国内で生産しても、海外に輸出すればその際還付されるからである。 第2に、企業の利益移転が少なくなり、税制が簡素になること。 第3に、仕向地主義法人税の課税ベースはキャッシュフローなので、設備投資は即時全額控除され、投資促進効果を持つこと。 第4に、税収的には、輸出還付の一方で、輸入産業から課税することとなるので、輸入超過の米国では増収になること、などである。 筆者が考える問題点は以下の点である。 第1に、国内生産をすべて輸出に充てる企業は巨額な還付を受けることになるので、輸出大企業は、国民から「優遇税制」との大きな批判を受ける。 第2に、中国から消費財を輸入するような小売業は法人税がかかるので、大幅な打撃を受ける。すでに米国小売輸入業界は、大反対のロビー活動を開始している。 第3に、価格体系が変わるので、それを通じて為替レート・貿易に大きな影響を及ぼす。 第4に、執行上の問題点である。消費税(VAT)は、インボイスによって個々の取引ベースで課税・還付することが可能であるが、法人税体系の中でこれを行おうとすれば、会社計算(決算)後にならざるを得ない。これが可能かという問題である。 第5に、輸出が還付されるので、膨大な不正が発生する可能性がある。消費税(VAT)はインボイスにより取引相互間のけん制が働く仕組みになっているが、その仕組みはないので、ここでも執行上の問題が生じる。 第6に、現行の法人税制度と大きく異なるため、例えばわが国の外形標準課税のように、居住地主義課税を行う外国政府からは法人税とみなされず、同国企業が支払った税金が外国税額控除の対象にならないという問題も生じかねない。 最後に、WTO違反という問題を惹起しかねない。輸出時に輸出にかかる法人税を還付することが輸出補助金とみなされ、WTO違反となる可能性が高い。もっとも共和党案では、「法人税の中身が消費課税となるので、国境調整をすることはWTO違反にはならない」と主張している。トランプにすれば、「仕向地主義の消費税(VAT)こそWTO違反だ」ということであろう。 筆者は、執行上の問題がネックとなって、導入には漕ぎつけないのではないかという見方である。 (了)

#No. 201(掲載号)
#森信 茂樹
2017/01/12

「軽減税率制度」導入時期の延期による当面の対応

「軽減税率制度」導入時期の延期による当面の対応   税理士 金井 恵美子   Ⅰ 消費税増税延期法の成立 事業者は、消費に負担を求める消費税において -したがって事業者は消費税の負担を負うことを予定されていないが- 納税義務者として「『納税事務』という無償の役務の提供を行うこと」を法律上の義務として課せられている。コンプライアンスコストは日常業務に溶け込んでおり、その負担量を測定することは容易ではないが、確実に負担しているのであり、軽減税率の導入が、そのコンプライアンスコストを増幅させ、業務実務や経営に大きな影響を与えることは必至である。 第192回国会において成立した消費税増税延期法(社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律)により、消費税率の引上げ及び軽減税率の導入は2年半延期され、平成31年10月1日となった。 この2年半の延期をどう考えるべきか。3月末決算法人は、事業年度の途中の税率引上げを経験したことがない。加えて、複数税率制度への移行にも対応するためには、平成31年3月末までには、システムの改修や事業計画の策定を完了しておく必要がある。 与党税制協議会消費税軽減税率制度検討委員会において、財務省は、軽減税率の導入には、法律制定以後少なくとも1年半の準備期間が必要であると説明していた。2年半の延期は、本来与えられるべき準備期間が与えられたにすぎないと考えるべきであろう。 以下では、この準備期間において、企業が対応すべき事項を概観することとしたい。   Ⅱ 飲食料品の譲渡を行う事業者の対応 1 システムの改修等 軽減税率が導入され、消費税が複数税率制度となった場合には、複数税率対応レジの導入や、受発注システムの改修などを行う必要があり、補助金及び融資制度が措置されている。 (1) 軽減税率対策補助金 中小企業や小規模事業者等については、システム改修等の経費の一部を補助する軽減税率対策補助金制度が設けられている。軽減税率対策補助金には、A型(複数税率対応レジの導入等支援)とB型(受発注システムの改修等支援)の2つの類型がある。 軽減税率の導入時期は2年半延期されたが、補助金の申請期限は1年8ヶ月の延長であり、1年後に迫っている。 原則として、平成30年1月31日までに申請したものが対象となるが、B-1型(システムベンダー等に受発注システムの改修等を行わせる場合)については、平成30年1月31日までに事業完了報告書を提出したものが対象となる。 (2) 融資制度 軽減税率対策補助金の他に、レジの導入・改修やシステムの改修・入替等の費用については、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫の融資制度を最優遇金利で利用することができる。 2 適用税率の判断 飲食料品の販売等を行う事業者は、食品表示法に規定する食品、酒税法に規定する酒類、食品と食品以外の一体資産、外食等の範囲を確認し、適用される税率の判断を正確に行っておかなければならない。 軽減税率の適用が誤りであったことが税務調査で明らかになった場合、対消費者取引では、遡って取引額を修正し追加の支払いを求めることは不可能である。その増差税額(多くの場合、数年分の累計額)は、事業者の負担となり、財務諸表を傷つけ、資金繰りを悪化させることになる。 軽減税率が適用される課税資産の譲渡等に誤って標準税率を適用した場合には、たとえ事業者が標準税率によって納付すべき税額を計算していたとしても、公正な取引の見地から法的問題となる可能性があり、「税率を偽って不正な取引を行った企業」と批判されることも予想される。ホームページに掲載した「お詫び」をめぐって、企業の存続を脅かすほどの「炎上」があるかもしれない。 このようなリスクについても、十分検討し、適用税率を判断しなければならない。 3 消費行動の変化と事業計画 「軽減税率」という表示には割安感があり、したがって、軽減税率は、適用対象となった商品の販売促進力となるが、販売額を伸ばしてもそこから計算される事業者の納税額は標準税率のそれよりも小さく、事業者に対する優遇措置となる側面を持つ。 軽減税率の対象は、「外食を除く飲食料品の譲渡」とされている。外食を除くという線引きにより、消費者がファーストフード店よりコンビニの利用を増やす、店内飲食よりも出前や持帰りを増やすなど、消費行動に影響が出る可能性がある。 消費行動の変化は客層によって異なるから、現状の調査と分析を基礎として、設備投資、取扱商品、販売スタイル、人員配置の見直し等の多角的な視点で事業計画の検討を行わなければならない。 4 販売価格の設定 商品の販売価格については、その価格体系を見直すべきかどうか、検討する必要がある。 (1) 税込価格を統一する設定 例えば、ドイツでは、レストランサービスには標準税率(19%)、持ち帰る食料品の譲渡には軽減税率(7%)が適用される。しかし、マクドナルドは、客が支払う金額を同額に設定していて、「持ち帰る」と言っても安くはならない。軽減税率は、マクドナルドの納税額を減少させるだけである。 この方法では、販売価格が統一されているので、支払う金額をめぐる現場の混乱は回避できる。しかし、税制が予定したとおりの「価格転嫁が行われない」という問題が発生し、コンプライアンスの観点からは、申告した税率が適正であることの証明が難しいという点が指摘される。営業の観点からは、顧客が「持ち帰る」と言えば安く購入できるという期待感から不満を持つ、というデメリットもある。 また、広告や店内表示については、消費税転嫁対策特別措置法による規制に留意する必要がある。 (2) 本体価格に消費税等を上乗せする設定 改正法においては、食事の提供には、飲食料品を持帰りのための容器に入れ、又は包装を施して行う譲渡は含まないものとされている(改正法附則34①一イ)。 これに該当するかどうかについて、軽減通達11は、 とし、さらに と説明している。 店内で飲食する場合も含めてすべての販売につき持帰り用の包装を行うといった例を想定して示された解釈であると思われるが、この取扱いが法律の文理解釈として素直に出てくると考えるのは困難であろう。 ともあれ、本体価格に適用される税率に応じた消費税等の金額を上乗せして販売価額とする方法では、商品を皿にのせるかどうかにかかわらず、客の申告により金額が変化することになるから、支払う金額をめぐる現場の混乱が予想される。 消費者庁が行った「平成28年12月物価モニター調査結果(速報)」によれば、およそ98%の消費者が、店頭表示価格の表示方法として、「税込価格の表示が含まれていることが適当」と回答している。この価格設定であっても、「持帰り」又は「店内飲食」の別に、税込みの支払金額を表示しておく必要があろう。 5 社員教育 飲食料品を扱う小売業者は、軽減税率の線引きに対する消費者の不満の矢面に立たされることになり、接客担当の従業員一人ひとりに、軽減税率の線引きについて客を納得させる説明ができるだけの教育を行わなければならない。そのため、事業者の営業形態に応じた研修マニュアル、現場マニュアルの策定が必要である。 6 業務フローの見直し 取引ごとに税率を判断し、売上げと仕入れを適用税率別に管理するための業務フローの見直しが必要となる。 ただし、申告書の作成に当たり、中小事業者(基準期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者)には、次の特例がある。 7 作業工程の計画 具体的な事業計画が決定した後には、新システムへの移行、カタログや価格表の刷新、商品データベースへの適用税率の登録、値札の貼り換え等の作業工程の計画を立てることとなる。   Ⅲ 飲食料品の譲渡がない事業者の対応 飲食料品の販売を行わない事業者であっても、会議費や交際費として飲食料品を購入することがあるため、仕入れ(経費)を税率ごとに記帳するなどの区分経理が必要である。 そのため、複数税率に対応するためのシステム改修や業務フローの見直しが必要となる。   (了)

#No. 201(掲載号)
#金井 恵美子
2017/01/12

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第49回】「限られた租税行政資源と『税務に関するコーポレートガバナンス』(その1)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第49回】 「限られた租税行政資源と『税務に関するコーポレートガバナンス』(その1)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦   1 コンプライアンス違反に対する企業と国民の意識 近年、ガバナンス(企業統治)の問題が大きな注目を集めていることは言を俟たない。 企業不祥事に係る原因究明の際には、内部統制システムが適切に働いていなかった点などが必ず指摘され、組織ぐるみの不祥事隠蔽が、企業価値減少という多大な損害をもたらした多くの事例がある。こうした企業不祥事は、これらの企業に、「コンプライアンス」、すなわち法令遵守の体制が定着していないことの表れであるといえよう。 三菱自動車のリコール隠し問題や、東芝の不正会計、マクドナルドの食品偽装問題など、大手企業のコンプライアンス違反に係る事例も枚挙に暇がない。それらの各種報道を通じて、消費者も企業コンプライアンスや、コーポレートガバナンスについて関心を抱いていることであろう。 このような企業不祥事の絶えない中、コーポレートガバナンスは、アベノミクスの議論の中において一層注目を浴びてきた。 例えば、平成27年6月30日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015―未来への投資・生産性革命―」において、「産業の新陳代謝を加速し、未来に向けた投資を増やしていくためには、最終的には、企業経営者自らの大胆な決断こそが必要」であるとし、そのためのアクションプランの1つとしてコーポレートガバナンスの強化が再確認されている。 また、経済産業省は、神田秀樹教授(東京大学)を座長とする「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」においてコーポレートガバナンスのあり方を検討してきており、平成27年7月24日に、その研究成果を「コーポレート・ガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」として公表するなどしている。 これら政府の方向性の下、具体的には、コーポレートガバナンス・コードが提示され、企業はそれをメルクマールとしながら自社のコーポレートガバナンスの策定に努めているものと思われる。例えば、社外取締役制度を導入する企業の増加などにその傾向を見て取ることができよう。 税務領域においても、こうしたコーポレートガバナンス論の動向は看過できない。申告納税制度における主体的納税者を論じるに当たっては、企業の内部統制のあり方が影響してくるであろう。 しかしながら、企業の社会的責任やガバナンスを論じるとき、「税務」というものはどこか隅の方に追いやられているようにも見受けられ、この辺りに危惧を覚えるのである。 カルテルや賄賂、食品偽装問題等、比較的、社会的関心の高い領域のガバナンスについては企業が自主的に相応の取組みを進めていると思われるが、脱税や所得の申告漏れ等についての企業の社会的責任やコンプライアンスのあり方については積極的に取り上げられていないようにも思われるのである。 時に企業の多額の売上脱漏などの報道がなされることがあるが、この場合の国民の関心の程度は、上記のカルテルや賄賂、食品偽装問題などと比較してどのようなレベルであろうか。 こうした報道がなされた場合、当該企業のスポークスマンから「税務当局からの指摘に基づいて、既に修正申告を終え納税を済ませております。」といったコメントがなされることがあるが、かかる売上脱漏問題等を原因として、消費者の不買運動が起こったり、ひいては企業ブランドの毀損等に繋がるケースはあまりみられない。 それに比べ、数年前のマクドナルドの食品偽装問題はかなりの期間にわたって報道紙面やワイドショーを賑わせ、その後同社の売上が急落したことも記憶に新しい。食品偽装という食品衛生法違反を起因として、結果的に不買運動のような現象が起きたものといえよう。マクドナルドの企業価値の毀損は著しく、同社は今でも企業価値の復元に力を注いでいるものと思われる。 このような他の法領域におけるコンプライアンス違反事例と比較すると、我が国では、「租税法領域におけるコンプライアンス違反について寛容である」と言っても、あながち間違いではないであろう。これは諸外国と比べれば一層明らかであるとも指摘し得る。 例えば、米国や英国においては、大規模な租税回避を行ったスターバックスに対して国民レベルの不買運動や抗議デモが生じているし、イタリアでは、いわゆる「グーグル税」として、インターネットを通じて国際的に事業を展開する企業を狙い撃ちするかのような特別法が制定されるなどしている。これら諸外国の例を取り上げてみると、租税法遵守に対する我が国の国民意識は後れを取っているともいい得るのではなかろうか。 もっとも、これだけコーポレートガバナンスが叫ばれている今日において、多額の加算税、すなわち行政上のペナルティを課された場合、それを起因として経営者の解任を要求する「物言う株主」も出現しているものと思われ、徐々にではあるが、企業によっては内部にそのような下地ができつつあるのではなかろうか。   2 「税務に関するコーポレートガバナンス」 国税庁では、平成23年ころから「税務に関するコーポレートガバナンス」について検討を始め、税務調査と関連したコーポレートガバナンスの維持・担保についての取組みを行ってきた。 対象となる法人は、国税局特別国税調査官所掌法人であり、おおむね資本金が40億円超の大企業である。こうした企業について、税務に関するコーポレートガバナンスが一定以上確保されていると認められる場合、税務調査の間隔を2年から3年に延長するなどのインセンティブを与えることで、企業自らが内部統制を通じて適正納税に努めることを促進することとしている。 このような税務調査の段階で税務に関するコーポレートガバナンスの問題を指摘し周知する取組みも、施行開始から5年が経過したため、国税庁は「税務に関するコーポレートガバナンスの事務実施要綱」を作成し公表したところである。以下では、その確認と、同制度が及ぼす影響を検討することとしたい。 平成28年6月14日に「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組の事務実施要領の制定について」として事務運営指針(長官通達)が発遣されている。 そして、平成28年7月1日から「税務に関するコーポレートガバナンス」の取組みが本格的に開始した。 上記のとおり、対象は大企業(国税局特別国税調査官所掌法人)であり、約500社程度と想定されているが、そのほとんどが上場企業であり、対象法人は何らかの形で自社の内部統制システムを構築していると考えられる。 事務運営指針では、同制度の趣旨について、 としている。 ところで、税務当局の職員数は、国際化・IT化・複雑高度な経済社会の変容の中にありながらも決して増加傾向にはない。むしろ、我が国の財政状況を考えれば、税務当局の職員等資源に予算を配分することは今後も難しい状況が続くことを踏まえれば、大口悪質な納税者にできるだけ税務職員を配分する必要性があろう。 国税局が所轄する大口な事案や、悪質事案に多くの人的資源を回すことになると、いってみれば、中小企業を対象とする税務署の職員は手薄になるため、中小企業には租税行政の手が回らないということになる。 数で見れば中小企業がほとんどである我が国において、多くの中小企業や中小企業を担当する税理士等からすれば、税務調査が来ない、もしくは税務調査の回数が減るということは事務量の軽減という観点から喜ばしいことといえる部分も否定できないが、殊更その面を強調してただ喜んでいるわけにはいかないであろう。 広く租税行政全般を俯瞰したとき、「税務当局の目」は、適正公平な課税の実現・納税の確保の観点において、抑止的効果をもたらすものとして一定の必要性が認められるのであって、悉皆的な調査が難しくなっているという現状において、ある種の監視監督の目が適正納税の担保となっていることを忘れてはならない。 さりとて、大企業の方には潤沢な人的資源を配分することができているかといえば、必ずしもそうした状況にはなく、結局同じことが大企業に対しても生じているのである。 このように租税行政全般において人的資源が限られている中、やはり、特に悪質な、あるいは大口な納税者に注力する必要があるところ、国税庁は、確定申告の内容やその後の様々な状況を踏まえ、税務に関するコーポレートガバナンスが良好な納税者とそうでない納税者とに二分し、後者に力を入れることとしている。 今日、資料情報制度を拡充し抑止力を高め、そこにマイナンバーを付与することで情報活用をよりスムーズにする等の流れがあるが、これも租税行政の人的資源の有効活用に資するものであろう。 これと同様の流れの中で、税務調査も、より「税務に関するコーポレートガバナンスが良好でない納税者」へ力を入れるベクトルへと向かっているのである。 (続く)

#No. 201(掲載号)
#酒井 克彦
2017/01/12

金融・投資商品の税務Q&A 【Q27】「個人が匿名組合契約に基づき利益の分配を受ける場合の課税関係」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q27】 「個人が匿名組合契約に基づき利益の分配を受ける場合の課税関係」   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子   ●○ 検 討 ○● 1 匿名組合とは 匿名組合契約とは、当事者の一方が相手方の営業のために出資を行い、その営業から生ずる利益の分配を約する契約をいいます(商法第535条)。匿名組合契約は、匿名組合員と営業者との間の双務契約によって成り立っており、匿名組合員は、営業者の営業から生じる利益の分配を受ける権利(利益配当請求権)を有しています。 匿名組合契約が終了した場合、営業者は匿名組合員にその出資の額を返還する必要があります(商法第541条)。   2 匿名組合の税務上の取扱い概要 日本の税務上、人格のない社団等は法人とみなされ、法人税法の規定が適用されますが、商法第535条に規定される匿名組合は、人格のない社団等には含まれないとされており、匿名組合自体に法人税が課されることはありません。匿名組合の損益は、匿名組合の営業者及び匿名組合員の損益として法人税又は所得税の課税対象となります。 匿名組合事業は一義的には営業者が行う事業であるため、組合事業に係る所得は一旦営業者に帰属しますが、営業者が匿名組合契約により匿名組合員に分配すべき利益の額又は負担させるべき損失の額については、営業者の損金の額又は益金の額に算入されます。   3 匿名組合員の所得税課税 匿名組合員たる個人(居住者)が匿名組合契約に基づき営業者から受ける利益の分配は、20.42%(所得税及び復興特別所得税)の源泉税が課された上で、所得税課税の対象となります。所得分類は、原則として雑所得とされます。 ただし、匿名組合員が匿名組合契約に基づいて営業者の営む事業(組合事業)に係る重要な業務執行の決定を行っているなど組合事業を営業者と共に経営していると認められる場合には、営業者から受ける利益の分配は、当該営業者の事業の内容に従って事業所得又はその他の各種所得に所得分類されます。 雑所得として取り扱われる匿名組合に基づく利益の分配は、所得税法上、総合課税の対象とされます。損失の分配については、他の所得との損益通算はできません。匿名組合に基づく利益の分配に源泉税が課される場合における当該源泉税額は、所得税額から控除することができます。 なお、国税庁が公表している個人課税課情報「平成17年度税制改正及び有限責任事業組合契約に関する法律の施行に伴う任意組合等の組合事業に係る利益等の課税の取扱いについて(情報)」によれば、匿名組合事業の損益計算上利益が生じた場合、現実に利益の分配がなされておらず、当該組合に留保することとされている場合であっても、匿名組合員は利益配当請求権による利益の分配を請求することができ、「収入すべき金額」は確定していることから、当該金額は匿名組合員たる個人の収入金額に算入される、とされています。 また、上記情報によれば、匿名組合事業に損失が生じた場合は、各計算期間に損失の負担を求めず、匿名組合契約の終了時に損失分担義務を負うこととしている場合、当該損失は各計算期間において未だ確定していないことから、当該計算期間の各種所得の計算上匿名組合員たる個人の必要経費に算入することはできない、とされています。 したがって、翌営業年度以降に当該匿名組合事業に利益が生じた場合については、出資の欠損額を填補した後に分配を受ける利益が、各種所得の金額の計算上総収入金額に算入されることになります。   4 本件へのあてはめ 匿名組合員たる個人が匿名組合契約に基づき営業者から受けるべき利益の分配は、原則として雑所得として総合課税の対象となります。確定申告により、利益の分配に課された源泉税を控除することができます。   (了)

#No. 201(掲載号)
#箱田 晶子
2017/01/12

被災したクライアント企業への実務支援のポイント〔税務面(法人税・消費税)のアドバイス〕 【第8回】「大規模災害時の特例措置(その3)」~その他の特例~

被災したクライアント企業への 実務支援のポイント 〔税務面(法人税・消費税)のアドバイス〕 【第8回】 「大規模災害時の特例措置(その3)」 ~その他の特例~   公認会計士・税理士 新名 貴則   【第6回】においては災害損失特別勘定、【第7回】においては固定資産に関連する特例について解説した。【第8回】においては、大規模災害時におけるその他の特例について解説する。 以下で解説する各特例は、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(震災特例法)に基づいて解説していく。 これらの特例は、あくまで東日本大震災のときに設定されたものであって、今後の大規模災害発生時に設定される特例も全く同じ内容になるとは限らない。しかし、同様の内容となることが予想されるため、参考にしていただきたい。   1 災害損失の繰戻しによる法人税額の還付 ① 特例の概要 大規模災害の発生日から1年の間に終了する各事業年度又は半年の間に終了する中間期間(災害欠損事業年度)において、繰戻対象災害損失金額が生じている場合には、災害欠損事業年度の開始の日前2年以内に開始したいずれかの事業年度(還付所得事業年度)の、法人税額の還付を受けることができる。 還付所得事業年度が2以上ある場合、どの還付所得事業年度にいくら繰り戻すかは法人の任意判断となるが、一般に還付所得事業年度における税負担割合(法人税額÷所得金額)が高い事業年度に繰り戻すと、還付税額が多くなる。 ② 繰戻対象災害損失金額 繰戻対処災害損失金額とは、災害欠損事業年度の欠損金額のうち、災害損失金額に達するまでの金額をいう。 災害損失金額とは、棚卸資産、固定資産又は固定資産に準ずる繰延資産について生じた次の損失の額(保険金、損害賠償金等により補填されるものを除く)の合計額をいう。 ▷ 滅失、損壊等による損失 大規模災害により当該資産が滅失し、若しくは損壊したこと又は大規模災害による価値の減少に伴い当該資産の帳簿価額を減額したことにより生じた損失の額(当該資産の取壊費用又は除去費用その他付随費用に係る損失の額を含む) ▷ 原状回復費用 大規模災害により当該資産が損壊し、又はその価値が減少し、その他当該資産を事業の用に供することが困難となった場合において、これらの被害があった日から1年以内に当該資産の原状回復のために支出する修繕費、土砂等の障害物の除去費用その他これらに類する費用(その損壊又は価値減少を防止するための費用を含む)に係る損失の額 【事 例】 (※) 内訳(棚卸資産の滅失損:20,000,000円、機械及び装置の除却損10,000,000円、建物修繕に係る災害損失特別勘定50,000,000円) (※) 青色申告書を提出している中小企業者等においては、災害損失の繰戻し還付と併行して、通常の欠損金の繰戻し還付も行うことができる。 ③ 適用可能な法人 災害損失の繰戻し還付を請求するためには、次の要件をいずれも満たす必要がある。 還付所得事業年度から災害欠損事業年度の前事業年度まで、連続して確定申告書(青色申告書である必要はない)を提出していること 災害欠損事業年度の確定申告書又は仮決算による中間申告書の提出と同時に、還付請求書を所轄税務署長に提出すること 青色申告書を提出している法人である必要はなく、また、資本金1億円超の法人であっても適用可能である。   2 仮決算の中間申告による源泉所得税額の還付 法人税の申告においては、利子や配当等に係る源泉所得税の還付を受けられるのは、通常は確定申告時のみであり、中間申告時に還付を受けることはできない。 しかし、大規模災害の発生日から半年の間に終了する中間期間において災害損失金額が発生しており、仮決算による中間申告を行う場合、中間期間に係る源泉所得税額で法人税額から控除しきれなかった金額につき還付を受けることができる。ただし、災害損失金額を限度とする。 ここで災害損失金額とは、棚卸資産、固定資産又は固定資産に準ずる繰延資産について生じた次の損失の額(保険金、損害賠償金等により補填されるものを除く)の合計額をいう。 ▷ 滅失、損壊等による損失 大規模災害により当該資産が滅失し、若しくは損壊したこと又は大規模災害による価値の減少に伴い当該資産の帳簿価額を減額したことにより生じた損失の額(当該資産の取壊費用又は除去費用その他付随費用に係る損失の額を含む) ▷ 原状回復費用 大規模災害により当該資産が損壊し、又はその価値が減少し、その他当該資産を事業の用に供することが困難となった場合において、これらの被害があった日から1年以内に当該資産の原状回復のために支出する修繕費、土砂等の障害物の除去費用その他これらに類する費用(その損壊又は価値減少を防止するための費用を含む)に係る損失の額   3 中間申告書の提出不要の特例 国税庁長官、国税局長、税務署長等は、災害その他やむを得ない理由により、国税に関する申告・納付等をその期限までにできないと認められる場合、その理由がやんだ日から2ヶ月以内に限り、申告・納付等の期限を延長することができる(通法11)。この延長には、「地域指定による期限延長」と「個別指定による期限延長」がある。 この申告期限の延長により、中間申告書の提出期限と、その中間申告書に係る事業年度の確定申告書の提出期限が同一の日となる場合は、中間申告書の提出は不要とされている。   4 消費税の「課税事業者選択届・選択不適用届」、「簡易課税選択届・選択不適用届」の提出に関する特例 ① 提出日に関する特例 消費税の課税事業者選択届・選択不適用届及び簡易課税選択届・選択不適用届は、通常その適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに所轄税務署長に届出書を提出する必要がある(消法9④⑤)。 しかし、大規模災害の被災者である事業者(被災事業者)が、被災日を含む課税期間以後の課税期間について、課税事業者の選択又は選択不適用、簡易課税の選択又は選択不適用の適用を受けたい場合は、国税庁長官が定める指定日までに所轄税務署長に届出書を提出すれば認められる。 被災日後に課税事業者の選択又は選択不適用、簡易課税の選択又は選択不適用の適用を受けようとしても、本来は早くても翌課税期間からしか適用を受けることはできない。しかし、上記の特例により、指定日までに届出書を提出すれば、被災日を含む課税期間からでも適用を受けることができることになる。 ② 選択不適用の際の特例 課税事業者の選択又は簡易課税の選択を行った場合、原則としてこれを2年間継続した後でなければ選択をやめることができない。しかし、消費税の届出に係る上記の特例の適用を受ける場合は、2年間継続した後でなくても、選択をやめることができる。つまり、被災直後の1年間だけ課税事業者又は簡易課税の選択を行い、その後すぐに選択をやめることも可能となる。   (了)

#No. 201(掲載号)
#新名 貴則
2017/01/12

裁判例・裁決例からみた非上場株式の評価 【第23回】「租税法上の評価⑦」

裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第23回】 「租税法上の評価⑦」   公認会計士 佐藤 信祐   前回では、最高裁平成7年12月19日判決について解説を行った。 本稿では、東京高裁平成22年12月15日判決について解説を行う。本事件は、法人税法上、有利発行に該当するか否かについて争われた事件である。   7 東京高裁平成22年12月15日判決・TAINSコード:Z260-11571 (1) 事実の概要 本事件は、総合商社であり、B株式会社が製造する自動車の完成品や組立部品の輸出及び海外での販売事業等を行っている原告が、タイ王国(以下「タイ」という)において上記販売事業を行う関連会社であるタイ法人2社(D社、E社)が発行した株式を額面価額で引き受け、これらを基に法人税の確定申告をしたのに対し、麹町税務署長が、上記各株式が法人税法施行令119条1項3号所定の有利発行の有価証券に当たり、その引受価額と時価との差額相当分の利益が生じていたなどとして、法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした事件である。 本事件の争点は、①本件E社株の取得に係る被告の主張が処分理由の差し替えであっても許されるか、②新株の発行における株式の時価と払込価額との差額が法人税法22条2項の「益金の額」を構成するか、③本件各株式の時価と払込価額の差額が原告の「益金の額」を構成するか、の3つであるが、本稿では、②と③についてのみ解説を行う。 なお、上告審(最高裁平成24年5月8日判決・TAINSコード:Z262-11945)では、上告不受理となっている。 (2) 第一審(東京地裁平成22年3月5日判決・TAINSコード:Z260-11392) (3) 裁判所の判断 控訴審は、第一審の判断をそのまま踏襲しているため、詳細な解説は省略する。 (4) 評釈 このように、裁判所は納税者の主張を認めず、国側の課税処分を認めた。 本事件の争点②については、納税者側の主張がかなり強引なものであり、有利発行における株式の時価と払込価額との差額が益金の額に算入されるということに疑いはない。 そして、本事件の争点③であるが、まず、 としたうえで、 としている。 すなわち、法人税基本通達9-1-13、9-1-14により算定された時価との差額が10%を超える場合について、税務上、有利発行とすると判示しており、通達に従った解釈と言える。ただし、10%という数字は、新株の消化可能性のために割り引く必要があるという実務慣行によるものであるが、少なくとも、ファイナンスや会社法の観点からは批判があるところである。 さらに、「発行価額を決定した日は、上記各臨時株主総会の決議が行われた日というべきである。」とし、「本件社長室会の日である」という納税者の主張を認めなかった。これは、 としている。 この点、株主総会決議の日を基準日として株価の算定を行うことは不可能であり、この裁判所の判断には疑問を感じるかもしれない。しかし、本事件は、社長室会から株主総会まで1年以上も経過していることから、例外的な判断であるということができる。 さらに、驚愕すべきは、直前期末ではなく、直前四半期末の決算書を基に株価を算定すべきとしている点である。 この点につき、裁判所は、 としている。言っていることはその通りであるが、これを突き詰めれば、なるべく直近の月次決算に基づいて株価を算定すべきということになる。 実務上は、法人税基本通達9-1-13(1)が半年以内の売買事例としていることから、半年くらい前なら直前期末でも良く、半年を大幅に超えるのなら、なるべく直前にという対応をしていることが多いように思える。本事件は、社長室会から臨時株主総会までの期間が長すぎたが故に否認され、否認するとすれば、直前四半期末の情報が最も信用に足るということで、その数値により否認をしたものと思われる。実務上は、可能な限り、直前の会計情報を入手することが必要になると考えられる。 次回では、国税不服審判所平成11年2月8日裁決について解説を行う予定である。 (了)

#No. 201(掲載号)
#佐藤 信祐
2017/01/12
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