2017年4月13日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.214を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第52回】 「国会審議から租税法条文を読み解く(その1)」 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 はじめに 租税法の解釈は文理解釈を第一として行われなければならないといわれることが多く(酒井克彦『レクチャー租税法解釈入門』6頁(弘文堂2015))、また、文理解釈は租税法律主義の考え方に最も合致しているともいえよう。 租税は、国民の財産権を侵害するものであるから、租税法の解釈において恣意性や揺らぎができるだけ排除されなければならないことはいうまでもない。 もっとも、租税法には侵害規範的性質を有するものと、そうではない非課税や減免、控除などの規定もあることからすれば、財産権の侵害規範という性質論のみで、文理解釈を導き出すことには無理があるともいい得るが、他方で、特定の納税者に有利に働く租税特別措置といった減免規定こそ、例外的取扱いであるから文理に忠実な厳格な解釈がなされなければならないという考え方もある。 いずれにせよ、租税法においては文理解釈が第一義的に優先されるべき解釈姿勢であるとしても、さりとて、租税法が法である限り、その法の趣旨や目的を無視した解釈が許されないことも当然である。 文理解釈によって導出された結論の妥当性を判断するに当たって、法の趣旨や目的を確認することもまた重要である。そのような意味では、ただ単に「法律解釈は文理解釈によるべき」と強調しすぎることにも問題があるように思われる。 もっとも、文理解釈においても、法条に用いられている用語(概念)や文章の意義を明らかにするためには、さまざまなリーガルリサーチに基づいたアシストを必要とするのが常である。 すなわち、例えば、学説や判例の確認はもとより、通達や文書回答手続の回答結果等によって政府の見解を調査することも重要であろう。そのほか、立法当時の国会における審議や法条の解釈を巡る答弁なども極めて重要なリーガルアシストを提供するといえよう。 本稿においては、「国会審議を確認することによって租税法条文を読み解く」方法を検討してみたい。その一つの例として、実際の国会審議を参照し、所得税法72条《雑損控除》の規定の解釈に係るヒントを得てみたい。 Ⅰ 雑損控除の意義 所得税法72条1項は、次のように雑損控除を規定している。 このように、所得税法は、居住者らの有する資産について災害又は盗難若しくは横領による損失が生じた場合に、当該損失の金額のうちの一定額をその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除することとしている。なお、損失が生じた場合とは、その災害又は盗難若しくは横領に関連してその居住者が「政令で定めるやむを得ない支出」をした場合を含むとされている。 かかる「政令で定めるやむを得ない支出」は、所得税法施行令206条《雑損控除の対象となる雑損失の範囲等》において、次に掲げる支出が明定されている。 なお、雑損控除の趣旨は、「災害、盗難、横領という異常な損失により減少した担税力に即応して課税すること」にあるといわれている(前橋地裁昭和53年7月13日判決・訟月24巻9号1857頁)。 Ⅱ 雪下ろし費用に係る雑損控除の適用-国会答弁で国税庁の取扱いが決定 ところで、豪雪地域などでは家屋の倒壊を防ぐため屋根の雪下ろしは欠かせないと思われるが、かかる雪下ろしに要した費用(以下「雪下ろし費用」という)は雑損控除の適用対象となるのであろうか。この点について考えてみたい。 雪下ろし費用は、「災害による損失」とはいえないのではないかという疑問である。 雪下ろし費用が「災害による損失」に当たるといえるか否かについては疑問の余地があるところであるが、実は、すでに、昭和49年2月22日付け第72回国会衆議院・災害対策特別委員会において、国税庁の水口昭所得税課長(当時)が、雪下ろし費用の雑損控除の適用を認める趣旨の答弁を行っている。 そして、その翌日、同年2月23日付け国税庁直税部所得税課情報第309号「豪雪の場合の除雪費についての雑損控除の適用について」が連絡されていることは興味深い。 また、昭和52年3月31日付け第80回国会参議院・地方行政委員会においても、国税庁の高橋俊雄企画官(当時)が、豪雪の場合の雪おろし費用を雑損控除の対象としていたと説明している。 その際の答弁を確認してみたい。 豪雪の場合の雑損控除の適用対象をさらに拡大すべきとの意見に対して、「できるだけ弾力的な取り扱いをする」と答弁していることからも明らかなように、かかる国会審議が所得税法72条の解釈に極めて大きな影響を及ぼしていることが判然とする。 なるほど、国会は立法府であるから租税法律主義の下で法律の制定に専権を有するものの、そのことは必ずしも、法解釈における影響という意味ではない。 しかし、かかる国会でのやり取りを無視しては、その後の国税庁の法解釈を理解することはできないといっても過言ではない。 現に、その後、昭和52年10月27日に、国税庁長官通達(直所3-21)「豪雪の場合における雪下ろし費用等に係る雑損控除の取扱いについて」が発遣され、前掲した昭和52年3月31日付け第80回国会参議院・地方行政委員会における国税庁企画官の答弁のとおり、雑損控除の範囲が拡大されている。 すなわち、雪下ろし費用、家屋の外回りの雪の取除き費用、雪捨て費用について雑損控除が適用できる旨通達されたのである。 ここでは、国会での議論が雑損控除の拡張的取扱いに係る解釈を主導した点を確認することができよう。 前述のとおり、そもそも「雪下ろし費用」が雑損控除の対象となるかについては疑問を挟む余地があると思われるところ、国会での議論を受けて、雪下ろし費用はおろか関連費用にまで、さらにその範囲を拡大した取扱いがなされてきたのである。 この解釈による取扱いが先行する形で、雪下ろし費用とそれに関連する費用について雑損控除が適用される運営がなされてきたのである。 国会議員の意見や発言を受けて、政府が参考人答弁の形で雑損控除の範囲を答弁し、それが契機となって通達が発遣されて全国に取扱いが命令されるという構図があるといえようか。 なお、その後、昭和56年度税制改正において、「まさに被害が生じるおそれ」がある場合の緊急必要措置を講ずるための支出についても雑損控除が適用されることとなり(所令206①三)、これを受けて、昭和56年1月29日付け国税庁長官通達(直所3-2)「豪雪の場合における雪下ろし費用等に係る雑損控除の取扱いについて」が発遣されているのである。 (続く)
平成29年度税制改正における 『組織再編税制』改正事項の確認 【第1回】 公認会計士 佐藤 信祐 1 概要 本誌198号で述べたように、平成28年12月8日に公表された与党税制改正大綱では、組織再編税制を大幅に見直すこととされており、具体的には、以下の点を改正することが明記されていた。 このうち、(2)から(5)までの改正は、平成29年10月1日の施行が予定されており、それ以外は、平成29年4月1日に施行されている。そして、平成29年3月31日の官報では、改正法人税法施行令が公表され、改正内容の全貌が明らかになった。 本稿は全5回にわたり、改正組織再編税制の解説を行うこととする。 2 スピンオフ税制 改正前法人税法では、支配株主の存在しない新設分割型分割や子会社株式の現物分配は、グループ内の組織再編にも該当せず、共同事業を営むための組織再編にも該当しないことから、非適格組織再編として取り扱われている。これに対し、改正法人税法では、以下の組織再編を対象としてスピンオフ税制が導入された。 本誌198号で述べたように、これらはいずれも、他の者による支配関係がないことを前提としていることから、非上場会社で適用されることは稀であり、実務上、上場会社がbad事業を切り離す場合にのみ適用される手法であると思われる。 まず、(1)単独新設分割型分割であるが、法人税法2条12号の11ニにおいて、 と規定したうえで、同法施行令4条の3第9項において以下の要件が定められている。 なお、上記①であるが、「他の者」には、親族が保有している株式、組合契約に係る他の組合員が保有している株式を含めて判定することとしている。すなわち、任意組合形式のファンドが支配している会社に対しては、スピンオフ税制を適用することができないこととなる。 次に、(2)100%子会社株式を対象とした現物分配であるが、法人税法2条12号の15の2において、株式分配の定義を と規定している。 なお、完全支配関係のある株主のみに対して現物分配を行うものは、株式分配に該当しないことから、同法2条12号の15に規定する適格現物分配に該当するかどうかを検討することになる。そのため、支配株主が法人である場合には適格現物分配、支配株主が個人である場合には非適格現物分配として処理されることになる。 このように定義された株式分配に対して、同法2条12号の15の3において、適格株式分配の定義を と規定したうえで、同法施行令4条の3第16項において以下の要件が定められている。 なお、①の「他の者」については、(1)と同様に、親族が保有している株式、組合契約に係る他の組合員が保有している株式を含めて判定することとしている。 最後に、(3)であるが、単独新設分社型分割については、法人税法施行令4条の3第6項1号ハにおいて、単独新設現物出資については、同条第13項において、それぞれ、完全支配関係継続要件の特例が定められている。 すなわち、適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その直前の時まで完全支配関係が継続していればよく、その後の完全支配関係の継続は要求されないこととされた。 (次号(4/20)に続く)
「配偶者控除・配偶者特別控除の見直しによる総務実務の留意点」に関する正誤のお詫びとお知らせ
特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第10回】 「居住用家屋の取得に伴って建物附属設備や応接セット等を取得した場合」 -買換資産の範囲- 税理士 大久保 昭佳 Q Xは、居住用財産の買換資産として家屋を新築した際に、セントラルヒーティング設備を建物の請負先とは異なる他の業者に注文して取り付けました。 また、新築に際し、応接セットや書斎の家具、台所の電気器具を新調しました。 この場合、Xは、すべてが家屋に係る買換資産として「特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)」の適用対象とすることができるでしょうか。 A セントラルヒーティング設備は「買換えの特例」の適用対象となる買換資産に該当しますが、応接セット等は適用対象となる買換資産に該当しません。 ●○●○解説○●○● セントラルヒーティング設備は、建物とは別の「建物附属設備」に属するものです。居住用家屋の取得に伴って買換資産の取得期間内に取得されている場合には、その「建物附属設備」も買換資産に該当するものとして取り扱われています(措通36の2-12(買換資産の改良、改造等))。 しかし、応接セットや電気器具のような本来の家屋とは別の、しかも移動可能な家具類は、たとえ居住用家屋の取得に伴って、買換資産の取得期間内に取得したものであっても、買換資産に含めることはできません。 (了)
さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第25回】 「ペット葬祭業事件」 ~最判平成20年9月12日(集民228号617頁)~ 弁護士 菊田 雅裕 (了)
連結会計を学ぶ 【第1回】 「連結会計の全体像」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 連結財務諸表は、親会社及び子会社によって構成される企業集団に関する財務諸表であり、関連会社については持分法が適用される(「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号)1項。「持分法に関する会計基準」(企業会計基準第16号)4項、6項)。 連結財務諸表に関しては、以下の会計基準等が中心となるものの、「連結財務諸表に関する会計基準」の各規定に関して別途の会計基準等が設定されているものがあり、全体として少々複雑な構成となっている。 このため、実務上、連結財務諸表に関する会計処理及び開示に際しては、どこに規定があるのかを調べることがポイントとなる。 本シリ-ズでは、上記の会計基準等を中心に、連結会計に関する基本的な考え方について解説を行う。 上記以外には、例えば、次の会計基準等があり、本シリーズでは必要に応じて取り上げることとする。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 連結会計の全体像 親会社及び子会社は個別財務諸表を作成しているが、連結財務諸表は、これらの個別財務諸表を基礎として作成される企業集団に関する財務諸表である。 連結財務諸表に関する基本的なイメージは次の図のとおりである。 Ⅲ 連結財務諸表作成における一般原則 次のように、連結会計基準は一般原則を規定している(連結会計基準9項~12項)。 ① 連結財務諸表は、企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関して真実な報告を提供するものでなければならない。 ② 連結財務諸表は、企業集団に属する親会社及び子会社が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成した個別財務諸表を基礎として作成しなければならない。 ③ 連結財務諸表は、企業集団の状況に関する判断を誤らせないよう、利害関係者に対し必要な財務情報を明瞭に表示するものでなければならない。 ④ 連結財務諸表作成のために採用した基準及び手続は、毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。 Ⅳ 連結財務諸表作成に関する特有の論点 Ⅲの②で述べた一般原則(連結会計基準10項)は、連結財務諸表は親会社及び子会社の個別財務諸表を基礎として作成することを要請する規定であり、「基準性の原則」と呼ばれている(「「親子会社間の会計処理の統一に関する監査上の取扱い」に関するQ&A」(監査・保証実務委員会実務指針第87号)Q1)。 連結財務諸表の作成には、次の事項のように、個別財務諸表の作成とは異なる連結特有の論点がある。 ① 連結の範囲 ② 連結決算日 ③ 会計方針の統一 ④ 投資と資本の相殺消去 ⑤ 債権と債務の相殺消去 ⑥ 連結会社相互間の取引高の相殺消去 ⑦ 未実現損益の消去 ⑧ 持分法 次回以降では、これらについて取り上げることとする。 (了)
電子マネー・仮想通貨等の非現金をめぐる 会計処理と税務Q&A 【第2回】 「プリペイド方式の電子マネーにより経費決済を行った場合の会計処理」 公認会計士・税理士 八代醍 和也 A 1 電子マネーの意義と特徴 まず、「電子マネーとはいかなるものか?」という点について、簡単に説明する。 電子マネーには正式な定義はないものの、一般的には、電子的なデータのやり取りによって行う決済サービスをいう。つまり、通常の決済が実体通貨を媒介として行われるのに対し、電子マネーによる決済は電子データのやり取りで決済が完結するため、決済時に現金としての通貨を要しない。また、クレジットカードのように決済時のサインが不要であることもその特徴である。 また、電子マネーは利用代金の支払方式により大きく2つに分類される。すなわち、利用代金を後払いするタイプの「ポストペイ方式」と、前もって料金を入金(チャージ)しておき、買い物等を行った都度、チャージした金額から使った金額が差し引かれていくタイプの「プリペイド方式」である。 ポストペイ方式の代表としては、iD、QUICPay、Smartplus、Visa Touchのほか、公共交通機関系電子マネーのPiTaPaなどがあり、プリペイド方式の代表的なものとしてはWAON、楽天Edy、nanacoのほか、公共交通機関系電子マネーのSuica、PASMOなどがある。 今回は、後者のプリペイド方式の電子マネーにより経費決済を行った場合の会計処理について解説を行う。なお、税務上の留意点については次回取り上げる。 2 電子マネー使用に伴う会計処理 (1) 電子マネーの有する会計的特性 プリペイド方式の電子マネーの会計処理を検討するに当たっては、この電子マネーがどのような会計的特性を有するかを明確にする必要がある。平たく言えば、「何の勘定科目で計上するか?」という論点である。 まず1つ目として、資金決済法に規定されている「前払式支払手段」としての性格である。 プリペイド方式の電子マネーがその性質上、資金決済法の上記定義を満たすことは明らかである。また、一般社団法人日本資金決済業協会は、この前払式支払手段の具体例として商品券、ギフト券、プリペイドカード、iDなどを挙げている。したがって、プリペイド方式の電子マネーの会計処理を検討するにあたっては、ここに例示されたものについての会計処理を斟酌することが有効であると考えられる。 なお、「電子マネー」という名称のとおり、貨幣的特性にも注目すべきではないかという考え方もあろう。 すなわち、プリペイド方式の電子マネーは日常の買い物から交通機関を利用する場面においてまで、あたかも財布からお金を気軽に取り出すような感覚で決済を行うことができる。これはまさにお金そのものであるといっても、確かにそれほど違和感はないように思える。 しかしながら、感覚的には違和感がなくても、会計理論的に電子マネーを現金そのものと考えるのは少し無理があると筆者は考える。なぜなら、現金と同質のものであると考えるにはやはり、「現金への換金が容易であること」が必要であるからである。 もし、電子マネーが現金に容易に換金可能であれば、小切手のように事業者間での資金決済にも利用されるはずだが、そうはなっていない。また、基本的にはいったんチャージした金額は、特殊な場合を除き、返金は困難なことが多く、購入やサービスの利用により消費することよりほかに使用方法がない。 すなわち、会計的には電子マネーは、お金ではないのである。 (2) プリペイド方式の電子マネーに関する会計処理 では、上記のような会計的特性を前提として、その会計処理を検討してみよう。 ① チャージした際の会計処理 上記でも述べたとおり、プリペイド方式の電子マネーを使用するためには、その前提として、利用料金を前もってチャージしておく必要がある。そこでまず、このチャージを行った際の会計処理から考えてみることにする。 ここからは具体的なイメージをつかんでもらうため、設例を用いて説明したい。 (1)で検討した会計的特性、すなわち、プリペイド方式の電子マネーを「前払式支払手段」と捉えるのであれば、電子マネーにチャージするという行為は、言ってみれば「電子的な商品券を購入した」ことと同じであるという評価が可能となる。 したがって、会計処理も商品券などの「物品切手」を購入した場合と同様の処理を行うこととなり、以下のような仕訳になると考えられる。 言うまでもないが、商品券たる電子マネーの購入(チャージ時点)は、未だモノの納品や役務提供を受けておらず、この時点では経費は計上されない。 ② プリペイド方式の電子マネーを使用した際の会計処理 この場合も、上記と同様、商品券を使用して物品の購入や役務の提供を受けた場合と同様に考えることになり、仕訳は以下のとおりとなる。 「飲食」という役務提供を受けた時点で費用が計上される。 この結果、残高は5,000円となり、この時点で期末を迎えた場合、貸借対照表上、電子マネーに係る貯蔵品が5,000円計上されることになる。 ③ その他の会計処理・論点 枝葉な論点について、以下にまとめて解説する。 ◆デポジットの会計処理について 公共交通機関系の電子マネーは、その申込にあたり、いくらかのデポジットを払うことが多いようである。これは、解約時に返金されることから、支払時には預託金や預け金勘定で資産計上し、解約返金時にこれを消滅させる。 ◆入会手数料の会計処理について デポジットやチャージ以外のもので、入会時に支払うことになる入会手数料は、支払手数料として支払時に費用処理することになる。 ◆仕訳の記帳について 会計処理の論点とは少し外れることになるが、経費精算をはじめとする事務処理の効率化を企図して、プリペイド方式の電子マネーの導入を検討されている会社もあろう。そのような場合であればなおさら、こうした電子マネーを利用した取引が増加することで、記帳事務に膨大な時間を要することになる可能性もある。 このような事態に陥らないよう、事前の環境づくりも必要になろう。前回も少し触れたが、インターネット経由で電子マネー発行会社から利用データを会計システムへ直接取り込んだり、また、CSVファイルで出力したデータから会計仕訳を行えるサービスも存在する。 これらをうまく利用することで、事務処理効率を大きく高めていくことも期待されている。 * * * 次回は、同じ「プリペイド方式の電子マネー」により経費決済を行った場合の税務上の留意点について解説する。 (了)
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第57回】 株式会社ブロードリーフ 「調査委員会最終報告書(平成29年1月31日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【調査委員会の概要】 【株式会社ブロードリーフの概要】 株式会社ブロードリーフ(以下「ブロードリーフ」と略称する)は、2005(平成17)年12月創業、2009(平成21)年9月法人設立。業務支援用ソフトウエア・ITソリューションをはじめとする各種サービスの提供を主たる事業とする。資本金7,147百万円。売上高16,760百万円、税引前利益2,921百万円(数字は、いずれも平成28年12月期)。従業員数772名。本店所在地は東京都品川区。東京証券取引所1部上場。 【調査委員会報告書の概要】 1 発覚の経緯 最終報告書によれば、ブロードリーフが販売協力店等に対して支払う販売手数料及び顧客又はリース会社に対して支払う下取残債(※)に関する業務について、職務分掌による相互牽制の観点から、2015年に、業務部がすべての業務を担う体制から、残高管理業務を経理部に移管することとしたところ、当該移管の過程において、取引関係のない名義人の口座に対する支払いが行われていることが判明した(当初判明した金額は約310万円)ことを契機に社内調査を行ったところ、従業員Xによる支払処理が行われていた疑義が判明した。 (※) 下取残債とは、リース会社が顧客に代わって当社のシステムを購入し、当該リース会社からリースを受ける方法で当社のシステムを使用している顧客が、当社の旧システムから新システムに切り替える場合に、リース会社と顧客との間で締結しているリース契約に基づき顧客がリース会社に対して負担することとなる中途解約金支払債務又はリース料支払債務を、当社が顧客又はリース会社に対して負担することを合意することにより生じる当社の債務を意味する(最終報告書p.8)。 社内調査を進めた結果、Xによる不正は2006年5月~2013年6月までにわたって行われ、不正に送金した金額は6,000万円を超えることが判明したが、調査の途上でXは無断欠勤を続けて所在不明となり、ブロードリーフは9月30日付でXを懲戒解雇とした。 その後、ブロードリーフは、10月28日開催の取締役会において、本件不正行為に係る事実関係の調査等のために、常勤監査役に法律や会計に深い知見を有する外部専門家を加えた調査委員会を設置することを決議したものである。 なお、最終報告書の中では、Xが所在不明で懲戒解雇されていることから、「調査委員会は、X氏に対しては、インタビューを実施できていない」ことが述べられている。 2 調査結果の概要 (1) 本件不正行為の発生経緯(最終報告書p.13以下) Xは、2005年12月31日から2013年4月1日まで、当初は業務部販売在庫課課長代理として、2006年7月16日以降は課長として、販売手数料及び下取残債の支払業務全体を統括する立場にあり、他の役職員でこの支払業務の全容を把握している者はいなかった。 Xはこうした自身の立場を悪用し、本来は各営業所からの受注データ入力によって発生する販売手数料及び下取残債の支払業務を、受注データが入力されていないにもかかわらず追加で入力し、ブロードリーフとは取引関係のない名義人の口座を4口座利用して、振込金額を支払情報として追加入力することにより、不正な送金を行っていた。 (2) Xによる隠蔽工作 Xは、業務部長から作成した書類のもととなる資料を提出するように求められると、「確認作業に時間がかかること」や「支払総額が一致しているため確認の実益は乏しいこと」などを説明して資料の提出を回避して、業務部長の承認を得ていた。 また、内部監査室への異動後の不正送金は、Xが、元部下である後任の担当者に対し、「この件は経理部長も知っている案件である」などと述べて、支払先情報を追加で入力させたものである。 3 不正行為の発生原因(最終報告書p.18以下) 調査委員会が、Xによる不正行為が発生し、かつ、長期間露見しなかった原因として認定した事象は、次の7つであった。 (1) 長期間にわたる業務の属人化 (2) 業務フロー等を記した社内規程等の不存在・業務フローの脆弱性 (3) 業務部における監督・牽制不足 (4) 支払先別の未払費用残高明細の不存在 (5) 内部監査室によるモニタリング・牽制不足 (6) 「取引先マスター」の網羅性の欠如 (7) ITシステム統制上の問題 この中でも、Xによる不正行為を長く発見できなかった理由の最大の原因は、(4)支払先別未払費用残高明細の不存在ではなかったかと思料する。最終報告書の一部を引用する。 販売手数料は、各営業所での受注データ入力によって未払計上が行われるものの、実際には販売協力店等から請求がないものがあり、未払費用として多額の債務が滞留していたため、Xが支払データを追加入力して、販売手数料を過剰に支払ったとしても不正行為が発覚しなかったということであろうと考えるが、管理上は大いに問題である。 Xが不正行為を始めた2006年度は、ブロードリーフはMBO実施前で、翼システム株式会社が設立し、その後増資を引き受けたアイ・ティー・エックス株式会社の子会社となった時期と重なっているが、未払費用の支払先ごとの残高が把握できない状況で、決算を適正に行うことができたのだろうか。 4 会計処理に及ぼす影響(最終報告書p.22) 調査委員会が認定したXによる不正送金は、2006年度から2013年度までの8年間にわたり、計222回、61,689千円に及ぶ。年度別にみると、最も多いのは、2007年度の48回、15,249千円であり、Xが業務部から内部監査室に異動した後の2013年度においてもなお13回、3,601千円が不正に送金されていたことが判明している。 1回当たりの平均不正送金額は277千円程度で、販売手数料や下取残債の金額が大きくなり過ぎないように調整していたのではないかと推測できる。 なお、本件不正による損失について、調査委員会は、「2016年12月期第3四半期決算以前の各期の損益に与える影響額には重要性は認められない」として、「過年度の遡及修正は行わず、2016年12月期第4四半期に一括して処理すれば足りる」と判断している。 5 再発防止策の提言(最終報告書p.23以下) 調査委員会は、本件不正発覚後、ブロードリーフでは、業務部と経理部とで支払リストと請求書との突合手続きを行い、未払費用残高管理業務を経理部へ移管する作業を進めるなど、「再発防止策がすでに一定程度進められている」と評価したうえで、さらなる再発防止策の提言として、以下の8項目を挙げている。 1.業務フロー等の明確化・見直し 2.定期的な人事ローテーションの実施 3.支払先別の未払費用残高明細の継続的な更新及び確認 4.内部監査体制の強化 5.網羅的な「取引先マスター」の作成 6.ITシステムによる統制の強化 7.コンプライアンス教育の徹底 8.断固たる措置 【調査報告書の特徴】 従業員不正の特徴として、「経理担当者の不正は単独犯」であることが多いが、「それ以外の部門担当者の不正には共犯者が必要」という特徴があると、筆者もセミナーなどでお話させていただくのであるが、本件は、会社の管理体制があまりにお粗末であったため、経理部門の犯行でないにもかかわらず、社内に共犯者を必要とせず、単独での不正が可能となった事例である(預金口座の名義を貸した協力者が社外にいたようだが)。 1 調査委員会の構成 不正行為の調査にあたり、ブロードリーフは、常勤監査役を委員長とし、外部の弁護士と公認会計士を委員とする調査委員会を設置した。常勤監査役を委員長とすることは、社内の情報収集や関係者へのヒアリングがスムースに進むなどのメリットが期待できることは否定しないが、本件においては、不正行為が行われていた期間である2007年3月に常勤監査役に就任し、その後ずっと常勤監査役の職務にある(付言すれば4,200株の株式を所有する株主でもある)青木伸也氏は、調査に利害関係を有する者であることは間違いなく、同氏を委員長としたことには疑問が残る。 最終報告書を公表した際のリリースで、同氏も他の複数の取締役同様月額報酬の10%を3ヶ月間減額する申出を行ったことが記載されているが、その一方で、最終報告書には、不正行為を防止できないばかりか、長く発見できなかった内部管理体制を放置してきた取締役やこれを監督できなかった監査役の責任について、まったく言及がないのは、うがった見方をすれば、常勤監査役を委員長とする調査委員会の構成に原因があるのではないだろうか。 2 再発防止策における「断固たる措置」 不正を行った従業員に対して厳正な処分を行うことで、不正への抑止力とすることを再発防止策として提言している報告書は多いが、最終報告書の記載は相当に厳しいものとなっている。以下に全文を引用する(調査報告書p.26)。 もちろん、不正行為に対する責任は厳しく追及すべきである。ただ、不正実行者であるXが所在不明であり、元従業員の自殺というリスクを考慮しなければならない本件において、損害賠償請求や刑事告訴を行うことが、果たして、再発防止策につながるのであろうか。むしろ、経営陣が襟を正し、従業員に不正を起こさせない管理体制の構築に向けた決意を示すことの方が、再発防止策として有効なのではないかと思料する次第である。 しかし調査委員会の提言した「再発防止策」には 経営陣自らが法令遵守の重要性を示す 経営陣が率先垂範して、不正を許さない組織風土を醸成する といった項目は見当たらない。 3 中間報告書の公表 最終報告書の公表に先立つ平成28年12月29日において、ブロードリーフは、調査委員会による中間報告書を公表している。この段階では、まだ、不正送金に使用された銀行預金口座の調査に協力が得られていないことから、「一部の調査の完了にはまだ時間を要する見込みである」ことを理由に作成されたようであるが、結果的に、調査が年末年始を挟むこととなってしまった状況で、当初予定していた調査終了時期が徒過して、投資家をはじめとするステークホルダーに不要な懸念を与えなかったという点で、中間報告書をこの時期に公表したことは評価していいのではないだろうか。 (了)
税理士業務に必要な 『農地』の知識 【第6回】 「耕作権とその税務」 税理士 島田 晃一 今回のテーマは「耕作権」である。限られたページの中ですべてを網羅することはできないが、より深い理解の一助となるよう、重要と思われる部分をピックアップし、簡潔に説明していくことにする。 1 耕作権の概要と農地基本台帳(農地台帳) 「耕作権」とは、農地の所有者に小作料を支払いその農地を耕作(又は採草放牧地で養畜)する権利をいう。農地法においては第16条から第29条にわたり農地の利用関係の調整の項目において、その取扱いが述べられている。 耕作権を設定、移転、解除するためには、農業委員会又は都道府県知事の許可が必要である。また、その農地に耕作権が設定されているか否かは、農地基本台帳を閲覧して確認する。 「農地基本台帳(農地台帳)」とは、各市町村が区域内の農地を管理するために、農業委員会に備え付けてある台帳である。農地基本台帳には、世帯員及び就業者、営農の状況、一筆ごとの面積、現況、所有者、利用者(小作人)、経営意向・経営計画等が記載され、農地法の許可申請を受けた際などにおける参考資料になる。 2 小作権と永小作権 耕作権は、賃借権としての「小作権」と、物権としての「永小作権」とに区分される。 永小作権はそれ自体が資産価値を持ち、農地所有者の意向にかかわらず、その所有者が自由に第三者に譲渡することが可能である。また、不動産登記を行うことができ第三者に対抗することができる。ただし、現状においては永小作権はほとんどなく、大半は賃借権としての小作権である。 賃借権としての小作権については、不動産登記はされないが、前述した農地基本台帳の小作人としての記載が不動産登記と同様の価値を持つことになり、新たに底地を取得した第三者に対抗できるが、農地所有者の同意なしにはこれを第三者に売却や贈与することはできない。 小作料の金額は小作人と農地所有者との交渉により決められるが、農業委員会で標準小作料を定めており、この標準小作料が小作契約を締結する際の目安になっている。 税務上は、小作料を支払った場合は農業所得計算において必要経費に算入される。一方、小作料を受け取った場合には、農業所得ではなく不動産所得の収入金額になる。 3 小作契約の解除 小作契約の解除については、賃借人及び賃貸人双方の合意があった場合のみ可能であり、賃貸人もしくは賃借人からの一方的な請求で解除することはできない。また、解除の際には離作料を払う必要がある。この点については借地権の取扱いと似ている。ただし、賃借人が農地の保全を怠り農地として維持されていないときなどは、一方的な解除理由になりうる。 期間の定めのある契約の場合、その期間の満了の1年前から6ヶ月前までに相手方に更新をしない旨の通知をしないときは、従前の賃貸借と同一条件で更に賃貸借をしたものとみなされる(農地法第17条)。また、合意解約が解約に基づく農地の返還前6ヶ月以内に成立したものであり、かつ、その旨が書面において明らかであるなどの事由がある場合を除き、契約を解除するためには都道府県知事の許可を受けなければならない(農地法第18条)。 離作料の金額は、その農地が所在している地域やその農地の耕作状況などによって異なり、一概には定められない。参考事例としては、平成元年12月の東京地方裁判所の判決があり、その中では としている。ただし、農地維持のための管理が不十分であるようなときは、離作料の減価要因になりうる。 離作料を受け取った場合、耕作権の譲渡として譲渡所得(分離課税)の対象になる。ただし、使用貸借により借り受けていた農地に対する離作料の受領は、次項にあるように耕作権の価額が0であり贈与税の課税が行われるため注意が必要である。一方、農地所有者が離作料を支払い、その後その農地を売却したときは、その離作料はその土地の取得費になる(譲渡費用には該当しない)。 なお、農業委員会又は都道府県知事の許可を受けず賃貸借契約を結んでいる場合がある。これを“ヤミ小作”といい、農地法においてその権利が保護されないため、農地所有者からの申出があれば一方的に契約解除されてしまう。もちろん離作料も原則として受け取ることはできない。 4 耕作権の相続と財産評価 耕作権は相続税の課税対象になる。耕作権の評価は、純農地や中間農地については、財産評価基本通達に定める方式によって評価した金額に、所在する地域の耕作権割合を乗じた金額とされる。 市街地周辺農地・市街地農地に係る耕作権の価額は、その農地が転用される場合に通常支払われるべき離作料の額、その農地の付近にある宅地に係る借地権の価額等を参酌して求めた金額とされる。ただし、都市部の農地については、その農地が所在する都府県ごとに定められた割合を乗じた金額により評価しても差し支えないとされている。当該割合及び各地域の耕作権割合は、国税庁ホームページにおいて検索できる。 なお、その農地が使用貸借契約であるときは、耕作権の価額は0とされる。一方、耕作権の目的となっている農地(底地)の価額は、財産評価基本通達に定める方式によって評価した農地の価額から耕作権の価額を控除した金額になる。 耕作権は農地の納税猶予の対象になる。ただし、納税猶予を受けるための担保として提供することはできないため、仮に耕作権について納税猶予を受ける場合、他に担保を用意しなければならない。 5 固定資産の交換特例の適用 小作人が耕作地の一部を地主に返還し、地主から残りの部分の底地を取得した場合、耕作地と底地の交換であるので、固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例(所得税法58条)の適用を受けられる。 ただし、農地の移転を伴うため、農地法に基づく許可が必要である。【第2回】で説明したように、農地の移転に関する許可については、3条許可(農地のままの移転)もしくは5条許可(非農地化するための移転)がある。 3条許可による移転は農地のままの移転であり、交換特例の適用要件の1つである「交換直前の用途と同一用途に供されること」を満たす。一方、5条許可は非農地化を前提とした許可であるので、その土地を交換直前の用途に供していないことになる。しかし、3条許可を受けるためには相当規模の農地を耕作していなければならない。 そこで、3条許可が受けられない場合について、便宜的に5条許可を受けて所有権移転を行い、交換後もその農地を耕作しているときには交換特例の適用が認められる。なお、ヤミ小作については、交換の特例の適用は認められない。 * * * 以上、耕作権とそれに関わる税務について簡単に見てきた。 耕作権の設定や解除については複雑な事例も多く、慎重な対応を要する。特に小作料や離作料の金額については、農地の所在する地域や農地の状況によってそれぞれ異なるので、まずは該当地域の農業委員会に相談し、何らかの回答を得てから動く必要があろう。 (了)