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特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第15回】「買換資産を本人が居住の用に供しない場合の適用関係②(生計を一にする親族のみが居住している場合)」-居住の用の判定-

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第15回】 「買換資産を本人が居住の用に供しない場合の適用関係② (生計を一にする親族のみが居住している場合)」 -居住の用の判定-   税理士 大久保 昭佳   Q 譲渡資産や買換資産を、X(譲渡者本人)が日常生活の用に供せず、生計を一にする親族のみが居住しているときでも、「特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)」の適用を受けることができる場合があるそうですが、この場合の適用関係について説明してください。 A それぞれの態様に応じた適用関係を図解により説明しますと、次のとおりとなります。 ●○●○解説○●○● (1) 買換資産に本人と妻及びその他の扶養親族が同居する場合 譲渡資産の判定については、措通36の2-23(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱い等の準用)により、措通31の3-6(生計を一にする親族の居住の用に供している家屋)が準用されますから、譲渡資産について同通達で定める要件を満たす場合には、この特例の適用を受けることができます。 (2) 買換資産にその他の扶養親族のみが居住する場合 買換資産の判定については、措通36の2-17(買換資産を当該個人の居住の用に供したことの意義)(注)において、措通31の3-6(生計を一にする親族の居住の用に供している家屋)が準用されておらず、譲渡者本人が買換資産を居住の用に供したことにはなりませんから、この特例の適用を受けることはできません。 (了)

#No. 219(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/05/25

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例50(消費税)】 「移転補償金を課税売上としていたため、基準期間の課税売上高が5,000万円超となり、原則課税で設備投資に係る消費税の還付を受けたが、税務調査による減額更正により、簡易課税となり、設備投資に係る消費税の還付が受けられなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例50(消費税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆簡易課税制度の選択(消法37①) その基準期間における課税売上高が5,000万円以下である課税期間について「簡易課税制度選択届出書」を提出した場合には、原則として提出日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間については簡易課税制度の適用を受けることができる。 ◆簡易課税制度選択不適用届出書(消法37⑥) 簡易課税制度の適用をやめようとする場合には、適用をやめようとする課税期間の初日の前日までに「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出しなければならない。ただし、簡易課税制度の適用を受けた日の属する課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、この届出書を提出することはできない。 ◆補償金の消費税法上の取扱い 消費税は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等が課税対象となる。収用等については、事業者が、土地収用法その他の法律の規定により、その所有権その他の権利を収用され、かつ、当該権利を取得する者から当該権利の消滅に係る補償金を取得した場合には、対価を得て資産の譲渡を行ったものとして課税の対象になる。 収用等による補償金の種類及び、対価性の有無による消費税の課税区分は次のようになる。 ① 対価補償金 譲渡があったものとされる収用の目的となった所有権その他の権利の対価たる補償金であり、課税の対象となる。 ② 収益補償金 事業について減少することとなる収益又は生ずることとなる損失の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金であり、対価性がないため、課税の対象にならない。 ③ 経費補償金 休廃業等により生ずる事業上の費用の補てん又は収用等による譲渡の目的となった資産以外の資産について実現した損失の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金であり、対価性がないため、課税の対象にならない。 ④ 移転補償金 資産の移転に要する費用の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金であり、対価性がないため、課税の対象にならない。 ⑤ その他補償金 その他対価補償金たる実質を有する補償金は課税の対象となり、対価補償金たる実質を有しない補償金は課税の対象にならない。 〈まとめ〉 ◆補償金の内容が明らかでない場合 法人が交付を受けた補償金等のうちにその交付の目的が明らかでないものがある場合には、当該法人が交付を受ける他の補償金等の内容及びその算定の内訳、同一事業につき起業者が他の収用等をされた者に対してした補償の内容等を勘案して、それぞれ対価補償金、収益補償金、経費補償金、移転補償金又はその他補償金たる実質を有しない補償金のいずれに属するかを判定する。       (了)

#No. 219(掲載号)
#齋藤 和助
2017/05/25

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第23回】「雑収入(立退料)」~立退料の雑収入計上が漏れていると判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第23回】 「雑収入(立退料)」 ~立退料の雑収入計上が漏れていると判断した理由は?~   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して行われた「立退料の雑収入計上漏れ」に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所昭和58年9月29日裁決(裁決事例集26巻119頁。以下「本裁決」という)及び東京地裁昭和60年7月17日判決(判タ604号105頁。以下「本判決」という)を素材とする。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) 本件理由付記は、素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工して作成したものである。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本裁決の判断 本裁決は、大要次のとおり、理由付記に不備はないと判断した。   4 本判決の判断 本件は、裁判所に訴訟提起された。本判決は、大要次のとおり、本件理由付記は、X社の帳簿の記載に信憑性がないことを挙示、引用の資料自体によって明らかにし、帳簿不記載の値引き保証金2,222万円を含む6,594万円の授受と本件立退きとの対価的牽連性を各資料中にも明示されている事実から経験則によって推認したものと解されるから、理由付記の趣旨目的に照らして、法の要求する最少限度の要件を具備しており、理由付記に不備はないと判断した。 (1) 理由付記の趣旨目的と記載の程度 (2) 理由付記の十分性 控訴審である東京高裁昭和61年4月25日判決(税資152号131頁)は、一審である本判決の判示の一部を要旨次のとおり改めた上で、理由付記に不備はないという判断を維持している。 これに対して、X社は、要旨次のとおり主張して上告した。 しかしながら、最高裁昭和62年9月3日第一小法廷判決(税資159号482頁)は上告を棄却している。   5 検討 (1) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、S(株)から賃借していたNアパートからの立退きに際しX社が同社から収受した8,094万円について、X社が、S(株)との間で昭和55年1月31日に取り交わした覚書及び金銭消費貸借契約書に基づいて、その一部を借入金として処理するなどし、雑収入に計上していないことに対して、その全額が立退料として雑収入に計上すべきものであり、計上漏れとなっている金額を所得金額に加算するものである。 そうであれば、雑収入に計上していないことの否認という広い意味において、また、覚書及び金銭消費貸借契約書が真意に基づいて作成されたものであるとは認めないという意味において、X社の帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当するものと考える(さらにいえば、X社は帳簿に記載していないものの、X社はS(株)から約束手形2,222万円を受領していることを認定している点も、X社の帳簿書類の記載自体を否認していることになろう)。 したがって、理由付記の程度としては、 ことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (2) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものではないと考える。 X社は、S(株)との間で昭和55年1月31日に取り交わした覚書及び金銭消費貸借契約書に基づき、次のとおり会計処理を行っている。 本裁決及び本判決によれば、金銭消費貸借契約書及び覚書には、それぞれ次のような記載がある。 X社の上記会計処理のうち少なくとも1~3については、覚書及び金銭消費貸借契約書がその根拠となることがわかる。そうすると、上記会計処理の根拠として、X社は、覚書及び金銭消費貸借契約書を示しているのであるから、課税庁は、覚書及び金銭消費貸借契約書が真意に基づいて作成されたものであるとは認めないという本件更正処分をする以上、本件理由付記に、更正処分の根拠をこれらの書類との関係において帳簿書類の記載以上の信憑力のある資料を摘示することによって具体的に明示しなければならないと考える。しかしながら、本件理由付記にはそのような資料の摘示がない。 また、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的という観点からも、覚書及び金銭消費貸借契約書が真意に基づいて作成されたものであるとは認められないこと並びに真意は立退料を8,094万円とすることにあったと認められることとしたその判断過程や根拠となる事実を記載すべきであるといえよう。したがって、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであるとはいえないと考える。 なお、審査請求において、課税庁は、覚書及び金銭消費貸借契約書に関して、要旨次のとおり主張している。 ここでは、覚書及び金銭消費貸借契約書が真意に基づいて作成されたものであるとは認められないこと並びに真意は立退料を8,094万円とすることにあったと認められることとしたその判断過程や根拠となる事実、とりわけ本件理由付記に記載のない事実として、金銭消費貸借契約に係る1,500万円の返済が済んでいないこと(なお、本件更正処分は、昭和54年10月1日から同55年9月30日までの事業年度について、昭和57年1月30日付けで行われたものである)及びいずれの書類も真意に基づいて作成されたものではなく8,094万円全額が立退料であるとする旨のS(株)の課税庁に対する申述が摘示されている。 原処分段階でどこまでの事実や資料を把握していたかは明らかではないが、上記主張に織り込まれている事実等を本件理由付記に摘示する必要があったといえよう。本件は、争訟段階における課税庁の主張立証の内容が、皮肉なことに、原処分に係る理由付記の不備を照らし出す一例であるといえる。 (3) 更なる議論 ~課税庁が摘示するべき「資料の信憑力の程度」と納税者の「帳簿書類の信憑力の程度」との関係~ 上記(1)③において示した「帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料の摘示」とは、厳密にいえば、【1】「資料の摘示」という形式的な要素と、【2】当該資料が「更正処分の根拠となるもの」であり、かつ、当該青色申告者の「帳簿書類の記載以上に信憑力があるもの」であるという実質的な要素の2つから成る。 覚書及び金銭消費貸借契約書の信憑性に関する本判決や審査請求における課税庁の主張に触れると、【2】に関して、理由付記において、更正処分の根拠として、課税庁が摘示するべき「資料の信憑力の程度」の問題、すなわちどの程度の信憑力のある資料を提示すべきかという点は、納税者の「帳簿書類の信憑力の程度」に左右されるという、相対的な一面を有することがわかる(もっとも、青色申告に係る更正という観点をひとまず離れて、理由付記の一般的な趣旨目的の観点から見た場合における理由付記に更正処分の根拠として摘示されるべき「資料の信憑力の程度」を考える際には、別途の検討を要すると思われる)。 このことを考慮すると、理由付記において、課税庁が摘示する「資料の信憑力の程度」のみならず、納税者の「帳簿書類の信憑力の程度」に関する記載を要する場合もあり得るであろう。 なお、本件訴訟の一審において、課税庁は要旨次のとおり主張している。 文書の記載内容の真実性を否定する更正処分に係る理由付記に関して、下線部分のような主張が他の事案で受容されるかどうか、今後においても議論されるべきであろう。 *  *  * 次回は、「受取利息計上漏れ」に係る法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 219(掲載号)
#泉 絢也
2017/05/25

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第58回】昭光通商株式会社「特別調査委員会調査報告書(平成29年4月17日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第58回】 昭光通商株式会社 「特別調査委員会調査報告書(平成29年4月17日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【調査委員会の概要】   【昭光通商株式会社の概要】 昭光通商株式会社(以下「昭光通商」と略称する)は、1947(昭和22)年5月設立。化学品、合成樹脂、金属などの製造及び販売を主たる事業とする。資本金約80億円。売上高122,240百万円、経常利益2,120百万円(数字は、いずれも平成28年12月期)。従業員数550名。本店所在地は東京都港区。東京証券取引所1部上場。 今回、特別調査委員会が「資金循環取引」と判断した取引が判明した、株式会社ビー・インターナショナル(以下「ビー社」と略称する)は、化学品及び関連商品の輸入販売を業務内容とし、2014年1月、昭光通商が株式の100%を取得して連結子会社化した。資本金5,000万円、本店所在地は東京都港区。   【特別調査委員会調査報告書の概要】 1 調査に至る経緯 昭光通商は、平成28年第3四半期の決算概況説明会以降、会計監査人である有限責任あずさ監査法人(以下「監査法人」と略称する)より、連結子会社であるビー社の取引について、仕入先及び販売先になっているA社及びB社の代表取締役が同一人物であることから、商流の適正性・合理性等について、注意喚起及び調査依頼を受けた。 そこで、昭光通商監査役は、11月25日付でビー社への往査を実施するとともに、引き続き、関連部門を中心に本件取引の関係書類等の精査を行ったところ、受領していた船荷証券の写しに偽造又は変造を疑わせる痕跡が発見されたため、外部専門家をメンバ-とする特別調査委員会を設置して、調査を行ったものである。   2 調査結果の概要 (1) 本件取引の概要(調査報告書p.7以下) ビー社が行った資金循環取引には、B社を仕入先とし、A社を販売先とする「取引A」と、A社を仕入先としてB社を販売先とする「取引B」との2つの類型があった。 【図1:取引Aの商流】 取引Aでは、中国メーカーが製造した工業品を上海所在のG社が輸入し、最終顧客であるC社工場などに直接納品されることとなっていたため、ビー社においては、納品確認等は行っていなかった。 なお、取引開始当初は、ビー社とA社の間にE社が介在していたが、2013年7月ころから、E社は取引から外れ、昭光通商がビー社を子会社化したときには、上記【図1】の商流による取引となっていた。 【図2:取引Bの商流】 取引Bでは、ビー社の販売先・仕入先が真逆になっているだけで、A社とB社の間にビー社が入るという商流自体は変わらない。また、取引Aとは異なり、輸入を担当する商社名や最終顧客名などは、ビー社に明らかにされていなかった。 (2) 取引実績 年度別の取引実績は、【表1】のとおりである、取引Aについては2011年4月から2017年2月までの間、月1回、累計で160億円を超える取引があり、取引Bについては、2015年3月から2017年1月までの間、こちらも月1回、累計約15億円の取引があった。 昭光通商がビー社を買収した2014年12月期決算以降に限っていえば、取引A及び取引Bを除く売上実績は、一貫して減少傾向にあったことがわかる。また、2016年12月期決算においては、売上高の70%超が、資金循環取引(実体のない売上計上)である取引A及び取引Bによって構成されていた。 【表1:株式会社ビー・インターナショナル売上実績】 (3) 取引による効果 取引Aにおいては、ビー社は仕入代金を仕入れ月に決済してB社に支払う一方、売上代金がA社から入金されるのは3ヶ月後であったため、A社にとっては3ヶ月間の資金融資を受けているのと同様の効果が生じていた。 報告基準日現在において、2016年12月売上に係る代金の決済は未了であり(決済期限を過ぎている)、2017年1月及び2月売上代金の決済は到来していない。 一方、取引Bについては、仕入代金、売上代金の決済期限はともに納品書受領後3ヶ月とされていたため、金融機能があったわけではない。   3 資金循環取引と判断した理由(調査報告書p.11以下) 特別調査委員会が、取引A及び取引Bを資金循環取引であると判断した理由は、以下の4つであるが、昭光通商又はビー社の役員及び従業員において、本件取引が、対象物品のない資金循環取引であることを認識していたと認められる者はいない、としている。 (1) A社が提出した船荷証券の写しは、本来異なるはずのVoyage Numberがすべて同一であり、船名と運航ルートの照合により、存在しない運航ルートの記載があったことから、船積関連書類の写しについて、偽造又は変造の可能性が疑われること (2) 預金通帳の写しについて、A社代表者は、その真正性について説明を拒んでおり、偽造又は変造の可能性が疑われること (3) 取引Aの最終需要家であると説明されているC社に確認したところ、A社又はB社との間で数億円単位の取引が存在しない旨の供述を得られたこと (4) 中国側の輸出者であるはずのG社について、船積関連書類に記載された住所にはG社が存在せず、G社の実在を確認できなかったこと   4 原因分析(調査報告書p.26以下) 特別調査委員会による原因分析は、大きく、(1)ビー社買収時の検討不足、(2)ビー社における経営管理、(3)昭光通商による管理体制の3つのカテゴリーにより、検討されている。 (1) ビー社買収時の検討不足 昭光通商においては、ビー社買収検討時に、財務デュー・ディリジェンス及び法務デュー・ディリジェンスを行っているが、双方のレポート間の不整合が看過され、取締役会・経営会議においても、ビー社の管理方針について具体的に議論された形跡がないまま、ビー社株式のすべてを6億300万円で譲り受けることを決議しており、こうした一連の検討不足が、本件取引の実態が長く認識されなかった原因の一つである、としている。 (2) ビー社における経営管理 ビー社における経営管理の問題点としては、①介入取引に伴うリスクに対する感度及び理解の不足、②親会社派遣役員による監査・監督の機能の不足の2点を挙げている。 (3) 昭光通商による管理体制 昭光通商による管理体制の不備としては、①介入取引に伴うリスクに対する感度及び理解の不足、②ビー社に対する監査・管理体制の機能の不足、③派遣役員の機能の不足、④昭光上海に関する調査結果に基づく再発防止策の不徹底、⑤与信管理体制における不備の5点を挙げている。 このうち、④「再発防止策の不徹底」については、項目を改めて検討するとして、②「ビー社に対する監査・管理体制の機能の不足」として特別調査委員会が指摘しているのが、昭光通商内部監査部門の人員不足である。 昭光通商の内部監査規程では、子会社の内部監査を年1回行うこととされているが、当時の内部監査の専従者は1名しかおらず、十分な子会社監査ができていなかったことが挙げられている。 また、⑤「与信管理体制の不備」としては、ビー社のA社に対する与信額は昭光通商取締役会における決議事項となり、2015年3月以降、債権額の圧縮策や債権保全策が審議されてきたにもかかわらず、具体的な解決方法が示されるわけではなく、本件取引の実態が発覚直前の取締役会でも、当時の代表取締役社長による以下の発言により、現状追認の方向性が示され、出席取締役全員一致で与信枠が承認されている点を指摘する。 【平成28年(2016年)11月開催の取締役会における、当時の代表取締役社長による提案】(調査報告書p.24) この発言の問題点は2点。ひとつめは、昭光通商におけるA社の格付けは「E」で、これは、「常時警戒を有する債権とされており、取引継続が許容され得る中では最もリスクの高い与信先としての分類」である(調査報告書p.23)にもかかわらず、13億円を超える与信額を認めたことであり、もうひとつは、この時点では、すでに監査法人から、商流の適正性・合理性等について、注意喚起及び調査依頼を受けていたにもかかわらず、現状を追認する経営判断を行ったことにある。   5 再発防止策の提言 特別調査委員会は、再発防止策について、総論として、「昭光通商としての取組の検討・実施・検証・公表」として、経営陣の意識改革を求め、再発防止策の実施計画のみならず、実施状況も含め、ステークホルダーへの開示を求めている。そのうえで、具体的な提言(各論)として、以下の3項目を挙げている。 1.昭光通商の管理・牽制体制及び昭光通商による子会社の管理・牽制体制の高度化 2.管理の実効的な実施(特に与信管理) 3.M&Aによる子会社化に関する目的設定・調査・管理   【調査報告書の特徴】 調査報告書の中で何度となく言及されているのが、「中国子会社問題」である。これは、昭光通商の連結子会社である昭光通商(上海)有限公司(以下「昭光上海」と略称する)において、2015年5月に発覚した売掛債権の回収不能事件を指している。 昭光通商は、回収不能に伴う貸倒引当金繰入額128億円を特別損失として計上することとなった結果、2015年12月期決算で135億円を超える損失を発生させ、その後、特別調査委員会による調査と再発防止策の提言を公表した事件である。   1 「中国子会社問題」を受けた昭光通商の取組み 昭光通商による、2015(平成27)年7月30日付リリース「特別調査委員会の調査結果について」では、以下の6項目が列挙されている。 1.相互監視機能の強化 2.与信管理規程の見直し 3.与信決裁過程の整備 4.海外法人に対する与信審査の厳格化 5.リスク管理意識の向上 6.債権審議委員会の機動的な運営   2 「中国子会社問題」再発防止策の履行状況 特別調査委員会が再発防止策の冒頭に総論として挙げたのが、「当社としての取組の検討・実施・検証・公表」という項目であった。そこでは、昭光通商の取組みについて、次のような批判が語られている(調査報告書p.35)。 昭光上海における売掛金の回収不能という事態は、当時、「チャイナ・リスク」として説明されており、あくまで、中国企業相手の取引における特別な事案と考えられていたようであるが、「中国子会社問題」特別調査委員会が提言した、「取引実態の把握」や「与信管理手続」といった内容を履践していれば、本件取引についても、もっと早く実態が明らかになり、大幅な決算修正を行う必要はなかったかもしれない。   3 「中国子会社問題」特別調査委員会調査報告書を公表しなかった理由は何か 「中国子会社問題」においては、特別調査委員会の調査報告書は、昭光通商により作成されたと思われる「概要」が公表されたのみであり(A4にして約4ページ)、全文は公表されていない。また、調査対象も昭光通商と昭光上海における中国取引を中心に、両社に限定されており、連結子会社すべてを調査対象としていれば、本件取引の実態も1年以上前に明らかになった可能性がある。 今回の特別調査委員会報告書でも、「中国子会社問題」調査報告書が公表されなかった理由については言及がないが、ステークホルダーに対する説明責任の回避、事件を過少に見せようとする一種の隠蔽体質があったのではないか、それが、本件取引の実態解明を先送りしてきたのではないかという印象を与えてしまうことは否めないだろう。   4 特別調査委員会の人選について 今回の特別調査委員会にも、「中国子会社問題」特別調査委員会と同じく、常勤の社外監査役である酒井仁和氏(昭和電工出身)が委員として加わっている。このところ、会計不正事件の調査を日弁連ルールに依拠した第三者委員会ではなく、社外取締役・社外監査役を委員長又は委員とし、第三者である有識者(弁護士・公認会計士)とともに調査にあたらせる事例が増加している傾向にある。 前回の事例でも指摘したように、常勤監査役を委員に加えることで、社内の情報収集や関係者へのヒアリングがスムースに進むなどのメリットが期待できることは否定しないが、常勤監査役として「中国子会社問題」再発防止策の取組状況を監視・監督する立場にあった酒井氏が、「全社的なリスク評価を行っておらず、組織的な実施及びその評価、並びに、更なる施策の検討といったPDCAサイクルの実施が十分でなかった」とする調査報告書をまとめていることに違和感を抱かざるを得ない。 なお、酒井氏をめぐっては、昨年12月5日付「役員の異動のお知らせ」において、平成29年3月下旬開催の定時株主総会で退任の予定が伝えられたものの、3月6日付「役員の異動のお知らせ」において、「平成28年度決算発表が再延期となり、平成29年2月13日に設置した特別調査委員会の委員であることを鑑み、監査役辞任を見送る」という、異例の役員人事となっている。 (了)

#No. 219(掲載号)
#米澤 勝
2017/05/25

相続(民法等)をめぐる注目判例紹介 【第1回】「法定相続分の預金返還等請求事件」-最高裁平成29年4月6日判決-

相続(民法等)をめぐる注目判例紹介 【第1回】 「法定相続分の預金返還等請求事件」 -最高裁平成29年4月6日判決-   弁護士 阪本 敬幸   1 事案の概要 最高裁平成29年4月6日判決(以下、「本件判決」という)は、信用金庫に債権(普通預金債権、定期預金債権及び定期積金債権)を有していた被相続人の共同相続人の一部が、信用金庫を相手方として、法定相続分相当額の支払いを求めたという事案である。 原審(大阪高裁平成27年11月28日判決)は、従前の裁判所の判例に従い、預金債権は相続と同時に当然分割されるとして、相続人の請求を一部認容したため、信用金庫側が上告。   2 判決要旨 (1) 結論 「共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない」として、相続人(被上告人)の請求を棄却(原審破棄・自判)。 なお、普通預金債権については、既に最高裁平成28年12月19日決定(以下、「平成28年最決」という)(注)において、「相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる」旨判示されたため、平成28年最決を引用して相続人の請求を棄却。 (注) 平成28年最決については本誌掲載の下記拙稿を参照されたい。 (2) 理由 以下の通り、平成28年最決の定期貯金債権における判断と同様に、契約上、払い戻し制限がある(解約しない限り払い戻しを受けられない)ことを理由としている。 補足しておくと、相続により債権は準共有状態となり、その解約権の行使は準共有債権の処分にあたるため、共同相続人全員でなければできないということを前提とするものと思われる。   3 本件判決の意義 本件判決は、定期預金債権及び定期積金債権について、共同相続の場合に当然分割されることはないと判断された点に意義がある。 平成28年最決においては、普通預金債権並びにゆうちょ銀行の通常貯金債権及び定期貯金債権について、共同相続の場合に当然分割されることはないとの判断がなされていたが、定期預金債権及び定期積金債権についての判断はなされていなかった。 本件判決においては、定期預金債権及び定期積金債権についても共同相続の場合に当然分割されることがないと確認されたといえる。   4 本件判決の実務への影響 平成28年最決により、定期預金債権・定期積金債権についても当然分割されることはないと考えられていたものであり、実務上の影響は大きくはないと思われる。 金融機関・遺言作成者・遺言執行者等においては、預貯金債権(及びこれに類似する債権)は全て当然分割されることはないと認識して対応しなければならない。 (了)

#No. 219(掲載号)
#阪本 敬幸
2017/05/25

家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第13回】「家族信託におけるリスク・デメリット」

家族信託による 新しい相続・資産承継対策 【第13回】 「家族信託におけるリスク・デメリット」   弁護士 荒木 俊和   今回はこれまでの内容を踏まえ、家族信託を組成し、相続・資産承継対策を行うことについて、どのようなリスクやデメリットがあるのかについて解説する。   1 リスクを回避する柔軟な方法としての家族信託 家族信託は、相続・資産承継における様々なリスクを避けるために用いられる制度であることから、何ら相続・資産承継対策を行っていない場合に比べ、通常は相続・資産承継においてトラブルが発生するリスクを低減させるものである。 また、遺言や成年後見制度に比べても、遺言よりも受益者連続型信託(財産の元々の保有者である委託者兼当初受益者が死亡した後も信託を存続させ、二次受益者、三次受益者と受益権を承継させることによって遺贈と同様の効果を発生させるもの)のほうが二次相続、三次相続において柔軟に対応できるし、成年後見制度よりも不動産の売却や財産の積極的な活用の面で優れている部分があるといえる。 このように、家族信託はその内容の作り込みによって相当程度に柔軟に規定ができるため、リスクとなる事柄が予見できるのであれば、それを回避する形で設計することができる。 このため、家族信託を的確に活用できるとすれば、大きなリスクは回避できるといえる。   2 税務面でのメリットの不存在 一方で、基本的には家族信託の利用により、直接的な税務上のメリットは生じないという側面がある。 これ自体はデメリットとまではいえないが、家族信託の組成に関して一定の費用を要することを考慮すれば、コスト面での負担が生じることは避けがたいといえる。 また、税務についての十分な検討を行わずに家族信託のスキームを策定してしまった場合、思わぬところで課税が発生してしまう恐れがあるため、注意が必要である。   3 スキーム、信託契約の規定の作り込みの破綻 家族信託は事案に応じた柔軟な利用が可能である反面、事案に見合ったスキームの検討が不十分であると、信託の継続が破綻してしまう恐れがある。 例えば、「親が子に信託することが通常である」というセオリーを鵜呑みにして家族信託を設計した結果、病弱な子が受託者となり、親より先に子が死亡してしまうようなケースもありうる。 このような場合、子に万が一のことがあった場合のバックアップをどうするかを予め決め、信託契約に盛り込んでおかなければ、思った通りの相続・資産承継対策が実現できないばかりか、かえって混乱を生むだけの結果となってしまいかねない。 また、家族信託で用いられる信託契約はオーダーメイドのものであることから、信託法やその土台となる民法の知識が不十分な者が信託契約を作ってしまうと、信託契約が思った法律効果を生じない恐れがある。 例えば、譲渡が禁止されている預金(預金債権)を委託者から直接受託者に対して移すことにより信託財産としようとしたり、農地法の規制対象である田や畑を農業委員会との折衝もなしに信託の対象にしようとしたりするなど、ある程度の知識と経験があればできることができておらず、信託の組成が失敗するようなこともある。 このため、このようなリスクを回避するためには、家族信託に関する十分な知識と経験がある者に関与させなければならないものといえる。   4 受託者に対する監督 家族信託は、家族に財産を「信じて」「託す」仕組みである以上、受託者は基本的に委託者から見て信頼に足る者でなければならない。 そうであるとすると、委託者が吟味して受託者を選んだのであれば、そうそう受託者の資質や行動によって問題は生じないかのように思われる。 しかし、現実には成年後見制度において親族後見人による被後見人の財産の横領が多発したため、裁判所が親族後見人を選任する事案を限定し、専門家後見人の選任を主とする方針転換を行ったようなことからも、身近な親族であっても常に誠実に任務を全うするとは限らない。 また、受託者が積極的に横領行為を行う意思がなくとも、信託財産と自らの固有財産の分別管理義務を果たしていないがためにこれらの財産が混同してしまい、結果として信託財産が受託者の個人財産として費消されてしまうこともある。 このため、受益者は自らの財産を保護するために、信託法上、損害填補請求権(第40条第1項)や差止請求権(第44条)を行使するなど、受託者に対する種々の監督制度を利用することができる。 しかし、家族信託において基本的に想定されているのは、認知症対策等として財産を保有していた者が委託者兼当初受益者となるパターンである。 そうだとすると、この当初受益者が認知症になってしまう可能性は十分に存在するのであり、そうなってしまうと受託者の監督は十分に行えなくなってしまう。 このような場合には信託監督人を予め選任しておき、監督機能が低減してしまわないように仕組みを作っておくことが重要となる。   5 信託に対する関係者の認知度 家族信託は制度として一般市民まで完全に浸透しているものではないため、正当な内容の家族信託であったとしても、当事者の理解が及んでいなければうまくワークしないこともある。 例えば、他の家族に説明を行わず、父が長男に対して収益不動産を信託し、父が当初受益者となる場合、登記上の名義は長男のものとなるが、この登記を見た次男が、収益不動産が長男に(実質的な意味で)譲渡されたと誤信し、長男に対して悪感情を持つようなことがありうる。 また、信託を悪用して財産を隠したり、帳簿上の財産を消したりするようなことを企てるという例もありうるが、これも信託の本質的な意味を理解していないがために生じる問題であるといえる。 筆者個人としては、本来的には、財産を信託するということは何もやましいことではなく、家族全員に説明をしたうえで、オープンに行うことがベターなやり方ではないかと思う。 (了)

#No. 219(掲載号)
#荒木 俊和
2017/05/25

コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)の解説 【第1回】「CGSガイドラインの概要」

コーポレート・ガバナンス・システムに関する 実務指針(CGSガイドライン)の解説 【第1回】 「CGSガイドラインの概要」   PwCあらた有限責任監査法人 シニアマネージャー 公認会計士 北尾 聡子   〔CGSガイドラインの策定〕 経済産業省が、2017年3月31日に、「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」を公表した。これは、2017年3月10日に公表された「CGS研究会報告書-実効的なガバナンス体制の構築・運用の手引-」(CGSレポート)を踏まえたものであり、2015年6月から適用が開始された「コーポレートガバナンス・コード」(以下、CGコード)の内容を補完し、企業価値向上のための具体的な行動を取りまとめたものである。CGSガイドラインの別添として「経営人材育成ガイドライン」及び「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」も策定されており、これらを合わせると膨大な情報量となっている。 日本企業における中長期的な企業価値と「稼ぐ力」の向上を図ることを目標としてCGコードの策定など様々なコーポレートガバナンス改革が推し進められてきたものの、企業の立場からは、具体的に何をすれば有益なのか、実務上の参考となるガイダンスが必要であるという声が多く聞かれた。CGSガイドラインは、そのような企業側のニーズに応えるべく、上場企業に対するアンケート調査、ヒアリングの結果や、上場企業の経営経験者あるいは社外取締役の知見を得て取りまとめられたCGSレポートを踏まえて策定されたものであり、4つの項目に係る提言内容は、コーポレートガバナンス強化を目指す企業にとって参考になる事項が多いと考えられる。 本解説シリーズでは、CGSガイドライン策定に至るこれまでの取り組み、提言の主な内容、別添の「企業価値向上に向けての経営リーダー人材の戦略的育成についてのガイドライン」及び「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」の概要、並びに今後の取り組み・課題などを全5回シリーズにて解説する。 CGSガイドライン策定に至るまでには、関係省庁が様々な取り組みを実施してきた。本稿では、はじめにその様々な取り組みについて説明する。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておく。   〔コーポレートガバナンス改革に向けた様々な取り組み〕 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (PwCあらた有限責任監査法人作成) ▷CGSガイドライン策定の背景 <1> 経済産業省は、2008年12月、「企業統治研究会」を立ち上げた。経営層・機関投資家・学識者・金融庁・法務省の代表者が参集し、6回にわたる審議を重ね、「企業統治研究会報告書」が取りまとめられた。当報告書では、社外役員(取締役・監査役)の独立性や社外役員の導入についての考え方に関する提言などが盛り込まれた。 <2> 企業統治に関連する問題発生により、我が国のコーポレート・ガバナンス・システムの在り方について内外から批判を受けたことを受け、2012年3月、経済産業省は、「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」を立ち上げた。2015年7月24日、研究会報告書「コーポレートガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」が公表された。   <3> 経済産業省での取り組みが進められる中、2014年6月に閣議決定された『日本再興戦略』改訂2014において、CGコードの策定が施策として盛り込まれた。これを受け、金融庁と東京証券取引所を共同事務局とする「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」が設置され、全9回審議を経て、2015年3月、「コーポレートガバナンス・コード原案~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」を確定、公表した。その後、各証券取引所が、関連する上場規則等の改正を行い、このコード原案をその内容とする「CGコード」が2015年6月1日より国内すべての上場会社に適用されている。 CGコードの適用前は、2004年3月に東証によって公表された「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」(2009年12月改訂)において、「~することが期待されている。」といった尊重規定が定められ、上場会社に対し、一定のコーポレートガバナンスの維持が期待されていた。 一方、2015年6月から適用されている「CGコード」は、上場会社に対して、「~すべきである。」とし、法的拘束力を有する規範ではないものの、いわゆる『コンプライ・オア・エクスプレイン』(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)の手法を採用することにより、従前の尊重規定から一歩前進している。 <4> 「CGコード」が2015年6月1日より適用された後、金融庁は、2015年9月、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」を設置し、両コードの普及と定着状況をフォローアップしている。当フォローアップ会議からは、現在までに意見書(1)・(2)・(3)が公表されている。   <5> 各企業によるコーポレートガバナンス改革が進められる中、『日本再興戦略2016-第四次産業革命に向けて-』において、「攻めの経営」の促進に向けた具体的施策の一つとして、“実効的なコーポレートガバナンス改革による企業価値の向上”が掲げられ、「取締役会の役割・運用方法、CEOの選解任・後継者計画やインセンティブ報酬の導入、任意のものを含む指名・報酬委員会の実務等に関する指針や具体的な事例集を、本年度内を目途に策定する」こととされた。なお、コーポレートガバナンス改革は、過去20年以上におよぶ企業価値の低迷という現状から脱却し、企業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図ることのできる経済システムの構築を目指すものであるとされている。 日本再興戦略2016を受け、経済産業省は、2016年7月から、法務省及び金融庁からオブザーバーとしての参加を得て「CGS(コーポレート・ガバナンス・システム)研究会」(座長:神田秀樹学習院大学大学院法務研究科教授)を立ち上げた。CGS研究会は、全9回にわたり開催され、2017年3月10日、「CGS研究会報告書-実効的なガバナンス体制の構築・運用の手引-」(CGSレポート)を公表した。 さらに、経済産業省は、CGS研究会での検討結果を踏まえ、2017年3月31日、コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針として、「CGSガイドライン」を策定、公表した。また、本指針の別添として産業人材政策室より「企業価値向上に向けた経営リーダー人材の戦略的育成のガイドライン」、経済社会政策室より「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」が策定された。本解説シリーズは、これらのガイドラインも解説に含める予定である。   〔CGSガイドラインの概要〕 CGSガイドライン策定の背景からもわかる通り、CGコードの適用により、上場会社のコーポレートガバナンス改革は、形式面の整備がほぼ完了したと言える。この改革を「形式」から「実質」へと深化させるためには、問題を先送りせず、現状を改革する果断な経営判断を行えるように我が国企業の伝統的な経営システムを変化させていくことが求められている。 このような問題意識の下で策定されたCGSガイドラインは、CGコードによって示された実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を企業が実践するに当たり検討すべき内容を補完するとともに、「稼ぐ力」を強化するために有意義と考えられる具体的な行動を取りまとめたものである。企業が各社に適したコーポレートガバナンスの在り方を検討する際に、CGSガイドラインで示された検討事項を考慮して議論することが期待されている。 したがって、CGSガイドラインは、その中で提示した内容を各社が取り入れることを期待しているというよりは、各社が自社に適したガバナンスについて議論する際の参考情報として活用することを想定したものである。各社の置かれた状況に応じてCGSガイドラインの活用方法は異なるものの、CGSガイドラインの内容を企業に押し付けるものではないことが強調されている。 ▷CGSガイドラインの構成 CGSガイドラインで示された提言は以下の4項目であり、各企業がそれぞれの項目について検討することが促されている。 取締役会への付議事項の見直しなどを行うことで、経営戦略に関する議論や監督機能に関する議論を充実させる必要がある 社外取締役への情報提供や意見交換を行うための工夫を行う コーポレートガバナンス対応を一元的に統括する部署・担当者の配置を検討する 取締役会の実効性評価に際して、第三者的な視点を取り入れながら取締役会の在り方について議論することが必要 社外取締役に期待する役割・機能を明確にし、役割・機能に合致する資質・背景を検討する 求める資質・背景を有する社外取締役候補者の適格性、就任条件について検討する 就任した社外取締役が実効的に活動できるようにサポートする 社外取締役の活躍の状況に関する対外的な情報発信の充実を検討する 社外取締役の評価を踏まえて、社外取締役の再任・解任等を検討する 経営陣の選解任や評価、報酬に関する基準及びプロセスの明確化 社外者中心の指名・報酬委員会の設置・活用(社長・CEOの選解任、後継者計画及び報酬について、指名委員会や報酬委員会の諮問対象に含めるなど) 役員候補者の育成・選抜プログラムの作成と実施 退任社長・CEOが相談役・顧問に就任する際の役割・処遇(報酬等)の明確化 退任社長・CEOの就任慣行(人数、役割、処遇等)について積極的に情報開示 取締役会長の権限・肩書(代表権の付与等)を検討する CGコードが施行されて1年以上が経過し、各社の取り組みが注目されている。コーポレートガバナンス改革を推し進めることが、本当に企業価値の向上につながるのか、半信半疑で取り組んでいる人も少なからずいるだろう。 これらの取り組みは、本来、短期的な効果を期待するというよりも、中長期的な視点で行われるべきものであろう。企業が、持続的な企業価値向上のため、試行錯誤しながら積極的にガバナンス改革を進めること、また外部情報発信について前向きに取り込むことが望まれていると考えられる。 先進的な事例や成功事例が開示されることで、他社がそれを参考にし、切磋琢磨することで、日本企業のコーポレートガバナンス全体の質的向上が期待される。企業の積極的な開示により、プラスの連鎖が広がり、我が国企業全体の「稼ぐ力」が向上することを期待したい。 なお、CGSガイドラインの各提言内容については、本シリーズの次号以降において詳しくご説明する。次号(第2回)では、「提言2:社外取締役の活用」について、ご説明する。 (了)

#No. 219(掲載号)
#北尾 聡子
2017/05/25

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例15】株式会社フュートレック「監査等委員会設置会社への移行中止に関するお知らせ」(2017.4.21)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例15】 株式会社フュートレック 「監査等委員会設置会社への移行中止に関するお知らせ」 (2017.4.21)   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、株式会社フュートレック(以下「フュートレック」という)が平成29年4月21日に開示した「監査等委員会設置会社への移行中止に関するお知らせ」である。タイトルのとおり、監査等委員会設置会社への移行を中止することにしたという内容だが、その理由について、「1.中止の理由」には次のように記載されている。   2 なぜ監査役会設置会社で? 監査等委員会設置会社へ移行しようとしたが、役員が金融商品取引法違反を犯したため、監査役会設置会社でコーポレート・ガバナンス体制を再検討した方がよいと考えたとのことである。しかし、この理由はわかりにくい。 「取締役会の監査・監督機能の強化をもってコーポレート・ガバナンス体制の一層の充実と企業価値のさらなる向上を図ること」が、監査等委員会設置会社移行の目的とされている。ならば、こうした状況においてこそ、早急に監査等委員会設置会社に移行した方がよいのではないだろうか。   3 監査等委員会設置会社移行の本当の理由 中止の理由がわかりにくいのは、おそらくそれが本当ではないからだろう。つまり、本当の理由は違うのに、何とか表向きの理由を作り出そうとして、このようにわかりにくくなっているのではないだろうか。 本当でないといえば、そもそも監査等委員会設置会社への移行の理由も、おそらく本当ではないだろう(そのため、余計に中止の理由がわかりにくくなっている)。上掲の中止の理由の記載と重なるが、フュートレックが平成29年1月23日に開示した「監査等委員会設置会社への移行に関するお知らせ」の「1.移行の目的」には、次のように記載されている。 現在、多くの会社が監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しているが、その移行に関する開示に記載された目的はどれもこのように簡潔で抽象的である。おそらく本当ではないため、具体的な記載とはなり得ないのだろう。 監査等委員会設置会社への移行は、コーポレートガバナンス・コードの次の原則を踏まえたものだと思われる。 この原則を踏まえ、本当は次のように考えて、監査等委員会設置会社へ移行しているのだろう。 コーポレートガバナンス・コードで社外取締役を複数置くべきとしているが、監査役会設置会社のまま複数の社外取締役を入れるとしたら、社外監査役と合わせて最低4名以上社外から人材を調達しなければならない。それは大変だ。監査等委員会設置会社ならば、最低2名の社外取締役だけでいい。指名委員会等設置会社のように指名と報酬の委員会を置かなくてもいいし(役員の人事と報酬の決定をそれらの委員会に委ねるなんて)、場合によっては現在の社外監査役を横滑りさせればいいのでは。   4 中止の本当の理由 役員による金融商品取引法違反という事態に遭遇し、監査等委員会設置会社への移行を躊躇するとしたら、誰だろうか。フュートレックの社外監査役である。 監査等委員会設置会社へ移行している他の会社と同様に、おそらく同社においても、2名の社外監査役が社外取締役に横滑りして、監査等委員に就任する予定だったと思われる。そうなった場合、彼らは、これまで求められてきた監査機能に加えて、取締役としての監督機能も求められることとなり(適法性だけでなく妥当性も監視)、責任が重くなる。 あくまで推測だが、彼らは、役員による金融商品取引法違反という事態に遭遇し、同社の取締役に就任することにリスクを感じて、監査等委員会設置会社への移行に反対したのではないだろうか。もしもそうだとしたら、監査等委員会設置会社へ移行する前に役員による金融商品取引法違反が判明したことは、彼らにとって不幸中の幸いだったといえるだろう。 (了)

#No. 219(掲載号)
#鈴木 広樹
2017/05/25

プロフェッションジャーナル No.218が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年5月18日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.218を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/05/18

日本の企業税制 【第43回】「国際課税に関する今後の改正動向を探る」

日本の企業税制 【第43回】 「国際課税に関する今後の改正動向を探る」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   国際課税に関しては、平成28年度税制改正においては移転価格税制に係る文書化制度の整備(国別報告事項等)、平成29年度税制改正においては外国子会社合算税制の抜本見直しなど、連続して大きな改正が行われている。 今後、国際課税に関しどのような改正が行われる可能性があるのか、各動向から探ってみたい。   1 「BEPS包摂的枠組み」による各国の法整備の動き これらは、国際的なBEPS(税源浸食と利益移転)への取組みを背景にしたものである。本年3月17日から18日にかけて開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議声明においても、次のように述べられている。 ここで触れられている「BEPS包摂的枠組み」とは、BEPSプロジェクトを推進してきたOECD加盟国34ヶ国に加盟申請中の4ヶ国(うち2ヶ国はとりまとめ段階で参加)及びOECD非加盟のG20諸国8ヶ国を合わせた46ヶ国に加え、新たに、低所得国を含む国・地域が、既存メンバーと対等な立場でBEPS最終報告書に盛り込まれた勧告にコミットするものである。 これは、昨年6月末に京都で開催されたOECD租税委員会の際に開かれた第1回「BEPS 包摂的枠組み会合(Inclusive Framework on BEPS)」で立ち上げられ、プロジェクト参加国・地域数は合計96ヶ国・地域に及んでいる(本年4月現在)。 したがって、わが国の国内法の整備のみならず、各国の法整備の状況から目が離せない。 また、「税の透明性に関して合意された国際的基準の、満足のいく水準での実施に向けて十分な進捗が見られない法域のリスト」については、平成29年度税制改正において抜本見直しが行われた外国子会社合算税制において、上記リストに記載された国・地域にある外国関係会社は「特定外国関係会社」(措法66の6②二ハ・⑭)として、いわゆるペーパーカンパニーと同様に、そのことをもって、その所得が合算対象となることとされている。   2 与党大綱に示された「中期的に取り組むべき事項」から見えること 昨年12月8日に決定した与党の平成29年度税制改正大綱では、「補論」として、一連の国際課税の見直しの背景と今後の課題について整理している。特に、「中期的に取り組むべき課題」として、次のように記されている。 ここで挙げられている課題は、移転価格税制、過大支払利子税制、義務的開示制度の3つであるが、これらのうち、移転価格税制に関しては、特に利益分割法のガイダンスをOECDで検討途上であり、また、義務的開示制度については「制度導入の可否」とあるように、他の課題より一歩引いた取り扱いとなっていることからすれば、過大支払利子税制が、当面の課題として浮上する可能性があると見られる。 過大支払利子税制とは、所得金額に比して過大な利子を関連者間で支払うことを通じた租税回避を防止するため、関連者への純支払利子等の額のうち調整所得金額の一定割合(50%)を超える部分の金額につき当期の損金の額に算入しないこととする制度で、平成24年度税制改正で創設されたものである(措法66の5の2)。 これを見直す場合、OECDのBEPS最終報告書を踏まえれば、上記の「調整所得金額」の算定における受取配当の取扱いと、調整所得金額に乗じる「一定割合」の水準、第三者への支払利子の取扱いなどが大きな課題となろう。 (了)

#No. 218(掲載号)
#小畑 良晴
2017/05/18
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