顧客との面談が“ちょっと”苦手な 税理士のための面談術 【第4回】 「面談が苦手=実はビジネスマナー違反?」 有限会社コーディアル 代表取締役 坪田 まり子 皆さん、こんにちは。坪田まり子です。 突然ですが、今回はみなさんへ率直にお尋ねします。 皆さんは、どんな性格でいらっしゃいますか? 「明るい」とか「暗い」とか、はたまた「積極的」や「消極的」など、いろんな性格があろうかと存じます。ちなみに私の性格は、「明るい」、「いつも元気」、しかしながら「かなりの心配性」、そしてときに「短気」だと自覚しています。 私は、こんな自分の性格があまり好きではありません。 心配症のため、ときに落ち込みすぎて結構つらいときがあるからです。 また、ときに短気なところがあるので、未だに母と言い争いになることがあります。お互いに自分の言い分を譲らないため、翌日まで話をしない、目を合わせないこともしばしば。もうお恥ずかしい限りです。 皆さんは、ご自身の性格がお好きでしょうか。 もし、私みたいに好きではない自分の一面があるとしたら・・・ちょっと憂鬱ですよね、きっと。 ◆ ◆ ◆ 皆さんはご存知でしょうか。誰からも好印象を持たれるタイプは、「明・元・素」タイプで、その反対は「暗・病・短」タイプだと言われています。 「明」とは明るい、「元」とは元気、すなわち活き活きしているということ、「素」とは素直、爽やかという意味だと思います。 逆にマイナスイメージの「暗」とは、暗くどんよりしているということ、「病」とはぐったりしていつも疲れているように見えるということ、そして「短」とは短気で、すぐキレるということだと思います。 ここに私の性格を当てはめると、「明」「元」「短」・・・。 残念!2つは好印象を持たれる部分が入っていますが、1つだけマイナス要因が入っています。 言い訳をさせていただけるなら、短気なのは母に対してだけだと思ってくださいませ。なぜかというと、疲れて帰って来て、やっとくつろいでテレビを見ている私に、母は「あーでもない、こうでもない」と、どうでもいいことを突然、長々と言ってきます。また、私の都合も考えず、いつも自分勝手に用事を言いつけてきます。「まりちゃん、悪いんだけど・・・」のようなクッション言葉を添えることもなく、お構いなしに、「買い物行ってきて!」(母にはまったく悪気がないことは分かっているのですが・・・) 同じような親子関係の悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。 でも世の中には、良好な人間関係を築くための「ビジネスマナー」という素晴らしいものが存在するのです。 「面談がちょっと苦手」と悩んでいる皆さん。その悩みの理由が、初対面の相手には笑顔がなかなか作れなくて、とか、どちらかといえば暗い性格ゆえに、話を盛り上げたり明るく接するのが苦手、とか、人の目を見て話すことが苦手・・・などであるなら、大丈夫です! ビジネスマナーをフル活用することで、お悩みをすべて解決できるはずです! ◆ ◆ ◆ ここで皆さんに質問です。 ビジネスマナーとは、いったい何でしょうか? 学生や社会人の方々に対し、私はよく「皆さん、ビジネスマナーはお好きですか?」とお尋ねすることがあります。 その反応はいつも、「・・・・・・。」 好き、と手を挙げてくださるのは、1人か2人程度です。 なぜなのでしょうか。 おそらくそれは、マナーとは堅苦しいもの、規則やルールのこと、というイメージがあるからだと思います。もちろんそれもビジネスマナーに含まれますが、新米税理士の皆さんには、その意義を正しく認識していただくために、ちゃんと解説させていただきます。 ビジネスマナーの意義は、次の3つです。 ① 人に迷惑をかけないため ② 人に好感を与えるため ③ 人に敬意を表するため 規則やルールは世の中には必要です。それが①に該当します。小さい頃から、まずはご両親から、それからは学校という集団生活の中で教えられてきたものです。皆さんなら、人に迷惑をかけてはいけないことぐらい、もう分かっていらっしゃるはずです。 つまり、良好な面談ができるようになるためのポイントは、②と③。 こんなふうに考えていただけませんでしょうか。 僕は人に対して、常に好感を与えているだろうか? 私は人に対して、常に敬意を払っているだろうか? 「好感を与える」代表例が、相手の目を見て話すこと、そして笑顔で話すことです。「敬意を表する」代表例が、きちんとした敬語で話すこと、そして丁寧にお辞儀をすることです。 こう考えると、笑顔が作れない、人の目を見て話すことが苦手という人は、最大のビジネスマナー違反をしているということであり、ビジネスマナーをまったく活用していないことになります。 ビジネスマナーとは、社会の中で人間関係を良くするための潤滑油であり、ビジネスマナーが備わっている人には社会性が感じられ、周囲に対し安心感を与えることができるのみならず、誰からも感じの良い人と認めてもらえることができるはずです。 母と私の関係においては、「家族だから」という甘えから、相手の都合をまったく考えないで何かを依頼したり、ニコリともしないで用件だけをつっけんどんに言ってしまうのだと思います。 本当は、かけがえのない家族に対してこそ、敬意を表して大事にしなければいけないことくらい分かっているのに。。。 家族にこそ、ビジネスマナーをフル活用しましょう!と言いたいところですが、家庭では互いに楽に自然体でいたいですものね(苦笑)。 ◆ ◆ ◆ 心身ともに“大人になる”ということは、自分の苦手意識を自ら取り除き、周囲と良好な関係を築くことができるということだと思います。生まれたての赤ちゃんは、感情の赴くまま、ただ泣くことしかできませんが、大人は自分の気持ちも表情もしっかりコントロールすることができるはずです。 笑顔が作れない方、人の目を見るのが苦手な方、どうか頑張って、これから出逢うお客様に対してビジネスマナーを表現するということに チャレンジしてみてください。 そのすべてが、「相手に対する敬意」であるからです。 それができたときに、相手はきっと皆さんをもっと好きになってくださるはずだからです。 私も母との関係において、これからは心身ともに大人の振る舞いをすることをお約束します(ちょっと頑張ってみます!)。 ◆ ◆ ◆ 笑顔は自分のためというより、相手のためだと捉えてみてください。例えば、病院などで長く待たされてイライラしているときなど、見ず知らずの赤ちゃんが純粋無垢な笑顔でニコッと笑ってくれたとき、思わず周囲がつられて笑顔になるでしょう?これも「笑顔がもたらすマジック」だと思います。 笑顔は相手のためにある。そして相手も笑ってくれるから、結局、それを見た自分も笑顔になる。まさに「笑顔の連鎖反応」! 笑顔はビジネスマナーの中でも、最高レベルの表現方法なのです。 どうぞビジネスマナーの意義をしっかり認識していただき、一歩、皆さんの心と接客スキルを大人に近づけてみませんか? * * * 次回は、いよいよ「雑談」を得意にする方法についてお話します。これこそビジネスマナーの魔法をたくさん活用することで、あっという間に、苦手を得意に、変えられるかもしれませんよ。 次回もどうぞお楽しみに。 (続く)
《速報解説》 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する 財務諸表等規則等の改正案(公開草案)が公表 ~「公共施設等運営事業に関する注記」を新設へ~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成29年2月6日、金融庁は、財務諸表等規則及び連結財務諸表規則などを改正する公開草案を公表し、意見募集を行っている。 これは、企業会計基準委員会が、平成28年12月22日に公表し、平成29年2月22日まで意見募集している「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第48号)に対応するものである。 財務諸表等規則などの改正に関する意見募集期間は平成29年3月7日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 公開草案の主な内容 1 財務諸表等規則及び連結財務諸表規則の改正案 「公共施設等運営事業に関する注記」を新設する(財規8条の31、連結財規15条の25)。 公共施設等運営事業を行っている場合には、公共施設等運営事業ごとに、次の事項を注記する(財規8条の31第1項、連結財規15条の25第1項)。 更新投資については、次の区分に応じ、公共施設等運営事業ごとに注記する(財規8条の31第2項、連結財規15条の25第2項)。 ただし、財務諸表提出会社が連結財務諸表を作成している場合には、記載することを要しない(財規8条の31第3項)。 財務諸表及び連結財務諸表の表示に関して、次の規定を新設する(貸借対照表及び連結貸借対照表の様式も改正)。 2 財規ガイドライン及び連結財規ガイドラインの改正案 財規ガイドラインに次の規定を設ける(連結財規ガイドラインは15の25を新設し、財規ガイドラインを準用)。 Ⅲ 適用時期等 実務対応報告「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」の適用日と合わせ、同日から施行する予定である。 (了)
《速報解説》 厚生労働省「社会福祉法人制度改革に伴う租税特別措置法第40条の適用に関するQ&Aについて」を発出 ~定款改正等に伴い措置法第40条の適用要件を満たさなくなった場合の対応を示す~ 公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香 平成29年4月1日に改正法令が施行される社会福祉法人制度改革においては、高い公益性・非営利性を担保することを目的に、法人が自律的に適正な運営を確保するためのガバナンス強化が図られている。 例えば、次のような対応が求められることとなる。 上記の内容を前提として、平成29年1月24日付、厚生労働省社会・援護局福祉基盤課より、「社会福祉法人制度改革に伴う租税特別措置法第40条の適用に関するQ&Aについて」が公表された。 租税特別措置法第40条(国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)とは、土地建物等の現物財産を公益法人等に寄附した場合において、その寄附が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することなど一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときは、財産の取得時から寄附時までの値上がり益に対する所得税について非課税とする制度を規定した条文である。 Q&Aは、①社会福祉法人からの問い合わせへの対応と②所轄庁監査の際の対応の2問からなっている。 1問目の社会福祉法人からの問い合わせは、過去に租税特別措置法第40条の適用を受けていたにもかかわらず、失念等により、この適用を前提とせず、上記ガバナンス強化には対応する定款に改正した場合、直ちに国税庁長官の非課税承認が取り消されることになるのか、というもの。これに対し、直ちに取り消されることはなく、税務署等からの指摘の際に、租税特別措置法第40条の適用要件を満たす定款へ改正すればよいと回答されている。 2問目の所轄庁監査の際の対応は、租税特別措置法第40条の適用要件を満たす定款に改正したにもかかわらず、所轄庁の監査において、理事等に親族等特殊関係者(4~6親等以内の親族等)が3分の1を超えて含まれていることが判明した場合どのようにすればよいのかという問いに対し、直ちに文書指摘等を行うことはせず、次回の評議員会で理事を選任し直すよう助言することが適当と回答している。 なお、本事務連絡については、国税庁と協議済みであるとしている。 (了)
《速報解説》 eLTAXのシステム障害により期限後申告となった場合の対応について 各地方団体ごとの対応に留意 Profession Journal編集部 本年1月28日頃からアクセス集中やシステム障害によりサイトがつながりにくい状態が続いていた地方税ポータルシステムであるeLTAX(運営:一般社団法人地方税電子化協議会)は、昨日(2月1日)午後よりシステム障害が改善されたと公表した。 今回のシステム障害により、1月末を提出期限としていた申告書がeLTAXにおいて受信されず期限後申告になってしまった場合の対応について、東京都主税局は、今回に限り特別に行うものとして、「平成29年2月1日から2月3日に受け付けた申告(紙による提出分を含む)については、平成29年1月31日に申告書の提出があったものとして取り扱う」との情報(「eLTAX へのアクセス集中に伴う、法人事業税、地方法人特別税、法人都民税、事業所税(特別区)、固定資産税(償却資産・特別区)の申告書の対応について」)を公表した。 (※) 東京都主税局は当初(1月31日)「平成29年2月1日に受け付けた申告(紙による提出分を含む)については、平成29年1月31日に申告書の提出があったものとして取り扱う」としていたが、翌2月1日に上記の対応とするとの情報更新を行った。 ただし、埼玉県・県税事務所ではホームページ上で「埼玉県では、紙・eLTAXの別を問わず、提出期限が平成29年1月31日までに到来するものの期限を、平成29年2月10日(金)まで延長することとしました。」と公表するなど、各都道府県税事務所において期限内申告と認める期日に差異が生じているようだ。 なお本稿公開現在、大阪府は「大阪府では、eLTAX側の事情により、やむを得ず申告等の期限に間に合わない場合(紙による提出分を含む)にあっては、期限内に申告書の提出があったものとして取り扱うことといたします。詳細については、改めてお知らせいたします。」と公表しており具体的な期限は示されていない。 このため今回のシステム障害の影響で申告書の提出が2月にずれこんだ場合、まずは所管の県税事務所ホームページにおいて情報を確認し、必要に応じ問い合わせを行うなどの対応を行っておきたい。 今回の件を受け日税連はホームページで周知した上で、「日本税理士会連合会では関係省庁等へ弾力的運用をしていただくよう要望していますが、1月末申告期限分の送信できなかった申告書の取扱いについては各地方団体にご確認ください。」としている。 また、eLTAXを運営する地方税電子化協議会は、「各地方団体に対し、eLTAXによる電子申告等について遅れる場合がある旨を連絡し、理解を求めております。※上記のeLTAX側の事情により、仮にやむを得ず申告等の期限に間に合わない場合にあっては、地方税法において特段の問題はないことを総務省に確認済みです。」としている。 なお、eLTAXホームページ上では、システム障害により送信途中で通信が切断される事態が今後も起こりうる可能性があり、現在原因究明中とのことだ。 (了)
2017年2月2日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.204を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
monthly TAX views -No.49- 「シェアリングエコノミーと税制」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 米国や英国では、「シェアリングエコノミー」(sharing economy)や「ギグ・エコノミー」(gig economy)と税制・社会保障制度をどのように調和させるかが大きな課題となっている。 Gigとは、ジャズなどのライブを行う際に、ネットを通じて単発の仕事を受注したり発注したりすることを意味するスラングで、Gig economyとは、そこで働く非正規の労働者によって成り立つ経済形態のことである。 企業としての評価額が10億ドル(約1,250億円)以上で、非上場のベンチャー企業は「ユニコーン企業」と呼ばれるが、そのランキングを見ると、Uber(ウーバー)や Airbnb(エアビーアンドビー、民泊仲介)など、「シェアリングエコノミー」の代表企業が上位に名を連ねている。 そこで働く人々も、専門的知識や経験を持つ者が、組織にとらわれることなく仕事を見つけることができる、というメリットがあるので、今後大きく発展していく可能性が高いという意味で、ポジティブな評価がされている。 このようなことから、新たなビジネスを生み出すシェリングエコノミー企業の発展を阻害しないようにしつつ、税収確保や社会保険料(年金、失業保険など)を適切に行い、働く人々の権利も保護して行こう(共存しよう)というのが英米の当局の問題意識である。 * * * ここでは、英国で取り上げられている代表例としてUber を取り上げ、筆者の問題意識を述べてみたい。 ご承知のように、Uberは、配車アプリを使って、一般人が自分の空き時間と自家用車で他人を目的地に運ぶサービスを提供する会社であり、ギグ・エコノミーの代表選手である。Uberは、運転手から20-30%程度の手数料を取ることにより収益を上げる。 問題は、このビジネスモデルから生じる、税金、社会保障の問題で、所得税、法人税、消費税、社会保険料と、極めて多方面にわたっている。 所得税の課題としては、ロンドンですでに3万人がUberの下で働いているが、税当局は彼らの所得情報をどうやって集めることができるのか、Uberに源泉徴収義務を課すことが可能かなど、徴税コストをかけずに公平な課税を可能にする工夫が必要だ。 消費税の課題もある。運転手が乗客から受け取る運賃には、通常のケースでは消費税がかかるが、運転手は免税事業者なのか。Uberは消費税の負担義務を負わないのか、などなどである。 そもそもUberは、運転手とどういう契約を結んでおり、社会保険料負担はどうなっているのか。失業保険や年金などの制度の埒外なのか。 さらに法人税の問題がある。Uberは、配車というプラットフォームを提供するのがメインの業務なので、低税率国やタックスヘイブンにその拠点を構えることは可能だ。 例えば「ポケモンGO」の配信や運営は、米国サンフランシスコに拠点を置くNiantic Labs社が行っている。 米国に本社を置くUberは、すでに、名うてのタックスヘイブンであるオランダに中間持ち株会社を作り、そこに無形資産を移しているようだ。これは、租税回避の典型例といってよい。 * * * このように、現行の税制と社会保険料が、この「ギグ・エコノミー」、ひいては「シェアリングエコノミー」に追いついていない。 わが国でも早急にこの問題を受け止めて、共存共栄となる道を模索する必要がある。 なお、英国財務省のOTS“Gig Economy Focus Paper”は[こちらのリンク]から入手できる (了)
〔平成29年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第2回】 「「企業版ふるさと納税の創設」 「欠損金の繰越控除限度額の見直し」 「所得拡大促進税制」」 公認会計士・税理士 新名 貴則 平成28年度税制改正における改正事項を中心として、平成29年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。【第1回】は、「法人税率の引下げ」及び「法人事業税及び地方法人特別税の見直し」について解説した。 【第2回】は、「企業版ふるさと納税の創設」、「欠損金の繰越控除限度額の見直し」及び「所得拡大促進税制」について、平成29年3月期決算において留意すべき点を解説する。 1 企業版ふるさと納税の創設 平成28年度税制改正において、地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)が創設された。 青色申告法人が、地域再生法の認定地域再生計画に記載された「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」に関連する寄附を支出した場合、従来の損金算入措置に加えて税額控除(法人事業税、法人住民税、法人税)を受けることができる。 平成28年4月20日から平成32年3月31日までの間に支出した寄附金が対象となるので、平成29年3月期決算申告においては、対象となる寄附金がある場合は、申告時に注意が必要である。 【企業版ふるさと納税のイメージ】 (※) 法人道府県民税と法人市町村民税の合計 (※) 法人住民税から控除しきれなかった金額は、法人税から控除可能(上限あり) 2 欠損金の繰越控除限度額は28年度改正における再見直しに留意 平成27年度税制改正において、中小法人等を除き、欠損金の繰越控除限度額は繰越控除前所得の50%相当額にまで段階的に引き下げられることとされた。平成27年4月1日から平成29年3月31日までに開始する事業年度については繰越控除前所得の65%相当額、平成29年4月1日以後に開始する事業年度は50%相当額とされたのである。 しかし、平成28年度税制改正においてさらなる改正が行われ、より細かい段階を経て50%相当額まで引き下げられることとされた。具体的には、平成28年4月1日から平成29年3月31日までに開始する事業年度においては、繰越控除限度額は繰越控除前所得の60%相当額に引き下げられたのである。 その後は、平成29年4月1日から平成30年3月31日までに開始する事業年度においては55%相当額、平成30年4月1日以後に開始する事業年度においては50%相当額と、段階的に繰越控除限度額が引き下げられる。 一方で、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において発生した欠損金の繰越期間は、10年に延長される。 【欠損金の繰越控除】 (※) 資本金1億円以下の法人(資本金5億円以上の大法人の完全子会社を除く) 新設法人及び経営再建中の法人については、繰越控除限度額を引き下げることによる負担が大きいことから、一定の特例が設けられている。 なお、中小法人等については、引き続き繰越控除前所得の100%相当額を繰越控除限度額とし、引下げは行われていない。 3 所得拡大促進税制は中小企業者等以外の要件が変更されている 青色申告書を提出している法人が、給与等支給額を一定以上増加させた場合に、その増加額の10%の税額控除が認められる制度である。この制度を適用するには3つの要件を満たす必要があるが、そのうちの1つの要件が平成28年3月期とは少し異なっている。 具体的には、適用を受けようとする事業年度の給与等支給額が、基準事業年度と比較して増加していなければならない率が、3%ではなく、4%に変更されている(中小企業者等においては3%で変わらない)。 【所得拡大促進税制の適用要件】 (※) 平成25年4月1日以後に開始する事業年度のうち最も古い事業年度の、直前の事業年度(3月決算であれば平成25年3月期) (了)
平成28年分 確定申告実務の留意点 【第3回】 「株式等、公社債等の課税方法の見直し」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 平成25年度税制改正において金融所得課税の一体化が図られ、平成28年1月1日から上場株式、株式投資信託、公社債、公社債投資信託の税務上の取扱いが統一された。 このため平成28年分の確定申告より改正後の取扱いとなることから、十分に留意が必要である。 (1) 公社債等の課税方法の見直し ① 公社債等の区分 平成28年1月1日以後、公社債等は税務上「特定公社債等」と「特定公社債等以外の公社債等(以下、「一般公社債等」という)」に区分される。 特定公社債等は、国債、地方債、外国国債、公募公社債投資信託等、市場で売買できる公社債等である。特定公社債等に係る所得は、今回の改正により、基本的に上場株式等に係る所得と同じ課税方法となった。 公社債等に係る所得としては、利子、譲渡損益、償還差損益がある。以下、それぞれの所得ごとに、課税方法の見直し内容について解説を行う。 ② 利子に対する課税方法 公社債等には利付債と割引債があり、利付債には定期的に利子が支払われる。公社債等の利子は、改正後も利子所得であるが、課税方法は次の通り改正されている(措法3①、8の4①)。 (※) 所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%(以下、申告分離課税の税率はすべて同じ) ③ 譲渡損益に対する課税方法 公社債等の譲渡損益は、改正前は非課税であったが、改正後は株式等に係る譲渡所得等に含まれることとなり、申告分離課税(譲渡所得)の対象となった(措法37の10、37の11①)。 したがって、特定公社債等の譲渡損失も上場株式等に係る譲渡損失として、上場株式等に係る配当所得等(特定公社債等の利子を含む)との損益通算の対象となる(措法37の12の2①)。 ④ 償還差損益に対する課税方法 公社債等の償還差損益は、公社債等の譲渡所得等に係る収入金額とみなして20.315%の税率による申告分離課税(譲渡所得)の対象となった(措法37の10③④、37の11③④)。 (※) 所得税18%、復興特別所得税0.378%、住民税なし (2) 損益通算の範囲の変更 平成28年1月1日からは、(1)で示した通り、上場株式等に係る譲渡所得等に特定公社債の譲渡損益及び償還差損益が含まれることになった。一方、申告分離課税の対象となる上場株式等の配当所得等に特定公社債等の利子が含まれることになった(措法8の4①)。 したがって、同日以後は、上場株式の譲渡損が生じた場合には、特定公社債等の譲渡益及び償還差益と通算できる。また、通算した結果がマイナスとなれば、その譲渡損失は特定公社債等の利子を含む上場株式等に係る配当所得等との損益通算及び繰越控除の対象となる(措法37の12の2)。 (3) 株式等に係る譲渡所得等の課税方法の見直し 平成28年1月1日以後の株式等に係る譲渡所得等は、「上場株式等に係る譲渡所得等」と「一般株式等に係る譲渡所得等」に区分されることとなった(措法37の10、37の11)。 この見直しにより、上場株式等と一般株式等(非上場株式等)と間で、譲渡損益の通算をすることができなくなった(措通37の10・37の11共-3)。 (4) 特定口座の対象の拡大 平成28年1月1日以後は、特定口座の対象商品に特定公社債等が加わる。特定口座の「源泉徴収あり」の口座であれば、口座内で損益通算と源泉徴収が行われる(措法37の11の3①、37の11の6)。 (5) 計算例 上記の改正を踏まえた計算例を示すと、次の通りである。 * * * 第4回(最終回)は、確定申告に関する実務的なポイントをQ&A方式で解説する予定である。 (了)
〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第45回】 「金銭の寄託に関する契約書(寄託契約と金銭の受取書)」 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 金融機関の担当者が、顧客から預金として金銭を受取った場合に「お預り証」を交付していますが、【事例1】と【事例2】の場合の印紙税の取扱いはどうなりますか。 【事例1】 【事例2】 【事例1】は第17号の1文書(売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書)に該当し、【事例2】は第14号文書(金銭の寄託に関する契約書)に該当する。 [検討1] 寄託とは(基通第14号文書の1) 「寄託」とは、民法第657条に規定する寄託をいい、当事者の一方が相手方のために保管をすることを約し、ある物を受け取ることによって、その効力を生じる契約をいう。寄託契約においては特定の目的物を保管した後、目的物そのものを返還することとなるが、寄託の一種である消費寄託についても同様に取り扱われている。 なお、消費寄託とは、受寄者が受託物を消費することができ、これと同種、同等、同量の物を返還すればよい寄託契約であり、銀行預金はこれに該当する。 [検討2] 金銭又は有価証券の受取書とは(基通第17号文書の1) 「金銭又は有価証券の受取書」とは、金銭又は有価証券の引渡しを受けた者が、その受領事実を証明するために作成し、その引渡者に交付する証拠書類をいう。したがって、受領事実を証明するすべての文書のことをいうため、文書の表題や形式にはこだわらない。 [検討3] 金融機関の担当者が作成する預り証等の区分・・・第14号文書に該当するか第17号文書に該当するか(基通第14号文書の2) 金融機関の担当者が、顧客から預貯金として金銭等を受け入れた場合に作成する「預り証」等は、預金を受け取ったことが明らかであるものは第14号文書に該当する。 ただし、預貯金として金銭を受け取った場合であっても、金銭の受領事実のみを証明するものである場合には、第17号文書に該当する。 第14号文書に該当するのか第17号文書に該当するかについては、おおむね以下のとおり区分される。 第14号文書 【作成目的】 預金として金銭等を受け入れた場合、その受入事実を証明するために作成、交付するもの 【文書例】 預り証 入金取次票 原則第14号文書 (注) 【事例1】のように、金額の記載しかなく、文書上預金の預かりであることが明らかではないものは第17号文書に該当する。 受取書 領収書 文書名が受取書、領収書などであっても受託文言・口座番号・預金期間など寄託契約の成立に結びつく内容が記載されているものは第14号文書に該当する。 第17号文書 【作成目的】 金銭の受領事実のみを証明目的として作成、交付するもの 【文書例】 受取書 領収書等 単に預金の種類が記載されているものは第17号文書に該当する。 ▷ まとめ (了)
金融・投資商品の税務Q&A 【Q30】 「個人が任意組合契約を通じて不動産に投資をする場合の損失の認識」 PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子 ●○ 検 討 ○● 1 組合損失の必要経費不算入規定 【Q28】の通り、日本の税務上、任意組合等において営まれる事業から生ずる利益や損失については、原則として分配割合に応じて、各組合員に直接帰属します。したがって、税務上は原則として、損失も各組合員に分配されることとなります。 しかしながら、任意組合の組合員で特定組合員に該当する個人が、組合事業から生ずる不動産所得を有する場合において、その年分の不動産取得の金額の計算上、損失の金額があるときは、当該損失金額は、不動産所得の計算上、生じなかったものとみなされます。 「特定組合員」とは、組合契約に係る組合員のうち組合事業に係る重要な財産の処分もしくは譲受け又は組合事業に係る多額の借財に関する業務の執行の決定に関与し、かつ、当該重要業務のうち契約を締結するための交渉その他の重要な部分を自ら執行する組合員以外の者をいいます。ただし、組合員である個人が、業務執行組合員又はそれ以外の者に当該組合事業の業務の執行の全部を委任している場合には、これにかかわらず、特定組合員に該当します。 この組合事業による不動産所得の損失金額は、各組合契約の組合事業ごとに計算されます。また、組合事業による不動産所得の損失金額は、他の所得との損益通算の規定の適用を受けられないのみならず、他の組合事業による不動産所得の金額(黒字額)から控除(不動産所得内の通算)することもできません。 その年において組合事業から生ずる不動産所得を有する個人が確定申告書を提出する場合には、一定の明細書を確定申告書に添付しなければなりません。 2 本件へのあてはめ 本件は主たる事業が不動産賃貸業ということですので、本件の組合事業から生じる所得は不動産所得となります。また個人組合員は組合の業務執行に関与しないということですので、特定組合員に該当すると考えられます。したがって、本件の組合事業から生じる損失は、不動産所得から生じる損失として上記の規制の対象となると考えられます。 したがって、組合損失を個人の他の所得と損益通算することはできず、また、他の黒字の不動産所得と損益通算することもできません。 (了)