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預貯金債権の遺産分割をめぐる最高裁平成28年12月19日決定についての考察 【第4回】「今後の対応・方向性及び本件決定に対する疑問点」

預貯金債権の遺産分割をめぐる 最高裁平成28年12月19日決定についての考察 【第4回】 (最終回) 「今後の対応・方向性及び本件決定に対する疑問点」   弁護士 阪本 敬幸   前回は、最高裁平成28年12月19日決定(以下、「本件決定」という)における双方の主張・補足意見等、本件決定の内容をより詳細に確認した。最終回となる今回は、本件決定を踏まえた今後の対応・方向性、本件決定における疑問点等について論じる。   1 今後の対応・方向性 (1) 総論 本件決定を含め、近年、遺産分割の対象となる範囲を広げる方向の最高裁判例が続いている。その実質的な理由は、当事者間の公平にあると思われ、今後もこうした方向は続くものと思われる。 ただし、本件決定は預貯金債権に限定した判断であり、可分債権全般については、近々予定されている民法改正・新たな最高裁の判断を待つことになる(なお、国債・投資信託・定額郵便貯金等については、【第2回】で紹介した通り、当然分割とはならないとする最高裁の判断が既に出されている)。したがって、可分債権全般については、従前の当然分割を前提にした処理を行うべきであろう。 以下、本件決定の影響が生じると思われる点について述べる。 (2) 遺産分割前の預貯金払い戻しについて (ア) 遺言がない場合 本件決定によれば、遺産分割が終了するまで預貯金債権(本件決定は「預金契約上の地位」と呼んでいる)の準共有状態が続くということであり、相続人全員の同意がない限り、金融機関が払い戻しに応じることは原則として禁止されると解するほかないだろう。 金融機関が、被相続人死亡の事実を知りつつ、相続人全員の同意を得ないまま一部の相続人に払い戻しを行うようなことは、違法となる可能性が高く、非常に危険である。 なお、前回紹介したように、裁判官大谷剛彦ほか4名の補足意見では、特定の相続人の急迫の危険の防止(同居の家族が生活費不足に陥ったにもかかわらず、相続財産である預金の払い戻しについて共同相続人全員の同意が得られないような場合が考えられる)の際には、当該相続人において仮分割の仮処分申立等を行うことが提唱されている。しかし本稿執筆現在、このような仮処分申立は、一般的に利用されてはいない。 家庭裁判所において、仮処分申立を容易・迅速に利用できるような運用が行われ、仮処分申立が一般的になることを期待したい。 (イ) 遺言がある場合 「相続させる」旨の遺言がある場合、遺産分割方法の指定がされていると考えられ(最判H3.4.19)、相続財産である預貯金も遺言によって分割されることになると考えられるから、本件決定は影響しない。 一方、法定相続分と異なる相続分を指定する遺言(子2人が相続人のときに、1人に4分の3、もう1人に4分の1を相続させるといった遺言)がある場合には、本件決定を前提とすれば、預貯金債権は遺言で指定された相続分に応じて準共有となり、これまでのように当然に分割されることはない。 したがって、遺言がない場合と同様、遺産分割前に金融機関が預貯金の払い戻しに応じることは、原則としてできない。遺言執行者がいても同様である。 (3) 口座振替・振込入金受入れ等について 本件決定は、普通預金・通常貯金契約は、口座振替・振込入金受入れ等の委任ないし準委任事務処理の性質をも有するものであることをも考慮し、共同相続人全員で普通預金・通常貯金契約を解約しない限り同一性を保持しながら常にその残高が変動し得るものとして存在すると述べている。 裁判官岡部喜代子の補足意見では、この点を更に敷衍し、口座振替・振込入金受入れといった委任ないし準委任契約を解約することは、性質上不可分な形成権の行使であり、処分行為であるから、民法251条に従って相続人全員で行う必要があると述べられている。 これまで、多くの金融機関においては、金融機関が被相続人の死亡を知った場合、生前に行われていた口座振替・入金受入れも停止するという取扱いが行われてきたのではないかと思料する。しかし本件決定によれば、普通預金・通常貯金契約は、相続人全員で解約されない限り同一性を保持しながら存続するというのだから、金融機関は、被相続人の死亡を知った後も、相続人全員で解約されない限り、契約上、口座振替・入金受入れを継続すべき義務を負うということになるだろう。 (4) 遺産分割の対象となる預貯金の範囲について 本件決定は、普通預金・通常貯金債権は、1個の債権として同一性を保持しながら常にその残高が変動し得るところ、預金者が死亡した場合も、預金契約上の地位を準共有する相続人全員で普通預金・通常貯金契約が解約されない限り同様の状態が継続するから、当然分割とはならないという趣旨のことを述べている。 すなわち、普通預金・通常貯金契約は、相続人全員で解約されない限り、同一性を保持しながら存続するというのであるから、相続開始後の入出金による預貯金の変動部分を相続財産から区別する必要は無いと理解するのが素直と思われる。 裁判官鬼丸かおる補足意見でも、同様に、相続開始後の入金部分を含めて遺産分割の対象となると考えるべきと述べられている。 (5) 遺言書の作成・遺言執行について 上記2(2)(イ)でも触れたが、相続分を指定する内容の遺言書を作成した場合、相続人間で遺産分割が必要であり、預貯金であっても同様ということになる。 したがって、遺言執行者も、遺産分割がないまま、遺言書記載の相続分に応じて預貯金を解約して分配するなどということはできない。 せっかく遺言書を作成したのに、預貯金の遺産分割に争いが生じてしまうようなことがないよう、遺言者はこの点を考慮して遺言書を作成する必要がある。 遺言執行者は、遺言の執行に過誤があったなどと言われないように注意する必要がある。   2 本件決定の疑問点について 本件決定は、主として相続人間の実質的公平を理由に、預貯金債権の当然分割を否定した。相続人間の実質的公平という価値判断については理解できるところである。 もっとも、本件決定の普通預金・通常貯金に関する判断の法的な理由付けについて、その中心部分は というものであるが、以下の点については疑問も残る。   3 終わりに 現在、民法改正が進められているところでもあり、今後も、預貯金のみならず、遺産分割における取扱いについては変更の可能性がある。相続実務に携わる者としては、今後の動きにも十分注意しておくべきであろう。 (連載了)

#No. 206(掲載号)
#阪本 敬幸
2017/02/16

税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第3回】「不当な不動産売却がなされた直後の救済方法」-審判前の保全処分-

税理士が知っておきたい [認知症]と相続問題 〔Q&A編〕 【第3回】 「不当な不動産売却がなされた直後の救済方法」 -審判前の保全処分-   クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎   [設問03] 私には2年前より認知症となっている父がおります。 元々、父は、自身が土地・建物を所有する大阪の実家で一人暮らしをしていました。私は東京に住んでいましたが、認知症が進行し一人では生活できなくなった父の面倒を看る必要があるということで、昨年より実家に戻って生活をしています。 私には神戸に住む妹が一人おりますが、妹は大阪の実家にはほとんど寄りつかず、父の世話もしようとはしません。 ◆  ◆  ◆ そのような妹が、「たまには私も父と話がしたい」ということで、珍しく実家を訪ねてきたのです。私も、気を遣って、半日ほど外出し、2人だけで話ができる時間を作ってあげました。 ところが、それから2週間ぐらい経ったころ、神戸の不動産業者より我々の所へ電話があり、「先日の売買契約ではお世話になりました。ついては建物からの退去日と取壊し工事の開始をいつにしましょうか」という問合せがあったのです。 ◆  ◆  ◆ 突然のことでまったく事情を飲み込めなかったので相手に確認したところ、「妹が父の元を訪ねてきた日に、父みずからが実家の土地・建物を不動産業者に売却するとの売買契約書に署名捺印していたこと」が判明しました。 私は大変驚き、すぐ妹に電話したところ、「お父さんは、長年離れて暮らしている私のことが気がかりだということで、実家を売ったお金の半分を私にくれると言っていた。もう半分はお父さんの口座に入ったのだから、別にいいじゃないの」と完全に開き直っていました。そのため、売買契約をすぐに取り消すよう強く迫りましたが、妹は全く聞く耳を持ちません。 ◆  ◆  ◆ 父は常々、「先祖代々の不動産をこの先も守っていきたい」と私に話していたことから、父が売却を了解するなどということはあり得ない話と思います。 実家の不動産を取り戻し、建物の取り壊しを防ぐために、私はどのような方法が取れるでしょうか。   1 緊急対応の必要性 【設問03】において、相談者の父は実家の売買契約書に署名捺印している以上、このままの状態で放置すれば、最悪の場合には、実家の建物が強制的に取り壊され、父や相談者が路頭に迷う事態ともなりかねない。 この点、状況的に見て、父の財産が判断能力を欠いた状態で売却された可能性が高いというのであるから、本来であれば元の不動産の所有者、すなわち父自身が売買契約の無効を主張し、不動産を取り戻していく必要がある。 実際には、父は認知症に罹患して判断能力に難がある以上、相談者が家庭裁判所に対して成年後見人の選任を求める申立てをし、選任された成年後見人が買主や妹に対して売買契約の無効を主張していくというのが本来の進め方である。 しかし、本件では、買主が実家の取り壊しを迫ってくるなどして時間的余裕がなく、緊急の対応を必要とする。 では、相談者としては、どのような対応を取るべきであろうか。   2 審判前の保全処分について 【設問03】のような場合に有効であるのが、「審判前の保全処分」による財産管理者選任の制度である。 通常、成年後見の申立てがされてから実際に後見人が選任されるまで、裁判所の審理にはどうしても1~3ヶ月前後の期間がかかる。 そのため、設問のような場合には、売買契約の存在が発覚してから急いで申立てをしたとしても、成年後見人の選任までに時間がかかり、その間に建物が取り壊され、土地は転々譲渡されてしまうという事態にもなりかねない。 そこで、家庭裁判所が成年後見を開始するかどうかの審理を行っている最中に、緊急的に仮の財産管理者を定めてもらうことで認知症患者の財産を保全しようとするのが「審判前の保全処分」による財産管理者の制度である。 設問の場合には、相談者は、成年後見の申立てをするのと同時に、審判前の保全処分を申し立てるべきであろう。 これに伴い、裁判所は、成年後見の開始の是非に関する審理に先立ち、財産管理者の選任を認めるか否かにつき短期間で申立人らから事情を聴取する等して審理を急ぎ、これを認める必要があると判断すれば、財産管理者(弁護士や司法書士等の専門職管理人が選ばれることも多い)の選任を決定することになる。   3 発令後の流れ 設問における父に対して財産管理者が選任された場合、将来的に成年後見人が選任されるまでの間は、この者が父の所有財産につき管理権を有する。 そして、管理者の選任前に父がなした売買契約については、「この契約は、父が判断能力を有しない状況で署名捺印したものである」と財産管理者が判断した場合には、買主や妹等の関係者に対して契約の無効を主張し、売却した不動産の取り戻しと受領した代金の返却という精算を行っていくことになる。 したがって、相談者としては、本件の経緯や売買契約の異常性等につき、財産管理者によく説明をし、必要な措置を取ってもらうよう促すべきである。 ここで問題となるのが、買主が、実家建物の取り壊しを進めようとしていることである。 買主としては、現実に売買契約が締結され、代金も既に支払い済みである以上、現時点では既に自分が土地・建物の所有権を取得しているとして、取り壊しを強制してくる可能性もないわけではない。 仮にそのような兆候が見られるようであれば、財産管理者は、地方裁判所に対して「建物取壊し禁止仮処分」の申立てをなし、裁判所の仮処分命令を得て、建物取壊しを阻止するといった手段を取る必要がある。   4 防止策 以上で説明したように、妹の主導により物件の売却が行われてしまった場合には、その取り戻しには大変な労力と手間がかかる。 これを阻止するためには、最低限、高齢者の身の回りの世話をする者が、①予め本人の了解も得た上で、実印や通帳、また各種契約書等の重要書類を取りまとめ、責任を持って保管しておくほか、②財産リストを作成し、財産管理の状況が一元化できるよう整理して管理する、③既に判断能力を喪失あるいは著しく減弱していることをすぐに立証できるよう、予め医師に診断書を発行してもらっておく(この点に関しては、解説編【第5回】の内容が参考となるだろう)等の準備を普段から励行する必要があろう。 なお補足するが、前述した「成年後見の申立て」及び「審判前の保全処分の申立て」ですら、申立ての準備にはそれなりの時間もかかる。 そこで、まずは緊急の権利確保のため、相談者としては、父の身の回りの世話をし、財産の管理を事実上していた立場として、妹及び買主に対し、「今回の売買契約は、判断能力を有しない父が締結したものであり無効であること、よって、売買代金を返却するので、土地の登記名義を復帰させる登記手続を至急行ってほしいこと、今後、買主からさらなる売却はしないこと、妹においては、受領した売買代金の半額をすぐに買主に返還すべきであること、仮に万一、これらに応じないということであれば、後日に買主及び妹を被告とした損害賠償請求をせざるを得ないこと」等を記載した警告書(内容証明郵便での送付が好ましいであろう)を送付し、先方が転売したり強行的手段に出ないよう、クギを刺しておくべきであろう。 (了)

#No. 206(掲載号)
#栗田 祐太郎
2017/02/16

顧客との面談が“ちょっと”苦手な税理士のための面談術 【第5回】「まずは雑談からはじめましょう」

顧客との面談が“ちょっと”苦手な 税理士のための面談術 【第5回】 「まずは雑談からはじめましょう」   有限会社コーディアル 代表取締役 坪田 まり子   皆さん、こんにちは。坪田まり子です。 先日、某セミナー会社主催の弁護士の方々を対象にしたセミナーで講演をしてまいりました。 テーマは、ズバリ、『弁護士のためのビジネスマナーと面談術』です。 ありがたいことに、予約は満席、97.7%の参加者から「とても役に立つ」という前向きな評価をいただくことができました。主催者曰く「これほど高い満足度のセミナーは、過去に10名程度の小規模セミナーを実施したとき以来です。今回のように50名をはるかに超える人数で多種多様な先生方がいらっしゃるセミナーでのこの高い満足度は、奇跡的な結果です!」とのこと。 常に、“誰かのお役に立ちたい”と思っている私にとって、非常に有意義な嬉しい機会となりました。 さて、私はこの話を通して、単なる自慢話をしたいのでありません。 弁護士こそ、「話す・説明する」ことのプロフェッショナルですが、法的な観点で話す(実務に関すること)ことは得意でも、面談やビジネスマナーについては少なからず苦手意識を抱いているということを皆さんにお伝えしたいと思ったからです。 2時間にわたるセミナーでしたが、お客様との良好な関係を築くための「話す・聞く」という理論と演習を通して、その重要性をしっかりと体感していただきました。 こちらの連載でも、重要な場面を想定し、皆さんが自分自身で振り返りつつ、適宜、トレーニングができるようにサポートしているつもりです。 改めて、日々のお仕事にしっかりと活かしていただければ幸いです。 ◆  ◆  ◆ 今回は「雑談を得意にする方法」についてお話します。 そもそも「面談」とは、「面会して話す」ことですが、このたった6文字で表される行為の中に、お客様と良好な関係を築くためのポイントがたくさん潜んでいます。 その一つが既にお話した「第一印象の重要性」で、次に大事なのが今回の、「本題に入る前の雑談シーン」です。 まずは、この面談や雑談が、いかにビジネスチャンス拡大のために重要であるかどうかを認識していただくために、次のフローチャートをご覧いただきましょう。相談者が皆さんの事務所を訪問し、面談を終えて事務所を出るまでの相談者側の心理を表しています。 いかがでしょうか。このような流れの中で相談者にご満足をいただくことができれば、ある相談者がスポット的な依頼者となり、スポット的な依頼者が顧客へと変わっていく理想的なケースにつながるはずです。 まさに面談とは、相談者に対する単なるマニュアル的作業ではなく、説明の内容自体よりももっと大切な場面であるということ。すなわち、皆さんご自身の接し方、話し方、立ち居振る舞いなどから、皆さんの人となりや仕事ぶりまでが相手に評価されるということです。 さあ、このフローチャートの中の『名刺交換後』にやるべきことが、『雑談』です。 どんな話で切り出せばいいか、まずはご自分で考えてみてください。頭の中で考えるだけでなく、お手元にペンがあれば、話題の項目だけでも書き出してみましょう。 ◆  ◆  ◆ さあ、書き出していただけましたか? 話題としてどれくらい思いつかれましたでしょうか。天気や交通手段などのテーマは、誰もが考えやすいことだと思います。とりたてて難しい話題や特別なことでなくてもよいのです。面談前の雑談時は、まだお互いが初対面であればなおさら、まずは相手を労うような会話がベストです。 例えば、 こんなふうに発展させることができます。 また、天気が悪い日であれば、 そんな言葉を受けた皆さんは、いかがなさいますか? 「ハハハ」と笑うだけではダメですよ。 さっと内線電話で職員さんに電話をしましょうか。 「悪いんだけど、〇〇様に新しいタオルをお持ちしてくれる?」と。 そんなさりげない配慮と温かい思いやりに、相談者は嬉しい驚きを感じるはずです。 さらにもう一つ忘れてはならない、大事な切り出し方があります。 それは、名刺交換後を見計らい職員さんがお茶を出してくれたときです。 案外、出されたお茶をお客様に勧めないまま、会話を続けてしまう士業者が少なくないのではないでしょうか。マナーをわきまえている相手なら、勧められるまで口をつけないはずです。寒い中、温かいお茶が目の前にあるのに、勧められないとちょっとイライラしてしまうものです。 そこで皆さんは「冷めないうちに、どうぞ」とさりげない口調でお茶をすすめて差し上げましょう。 たったそれだけでも、訪問者に対する労いの気持ちを表すことができます。 ◆  ◆  ◆ 雑談で大切なことは、皆さんがずっとイニシアチブをとって話し続けるということではありません。迎える側の皆さんが一人で勝手にだらだらと話したり、相手に矢継ぎ早に質問を投げかけるだけでは失礼です。 会話や雑談は、互いの会話が上手なキャッチボールのようにテンポよくなされることが重要です。そのためにも、皆さんが切り出した会話が、相手にとって興味のないことのようであれば、いつまでも引きずらないで、さっと切り上げてしまうのも一案です。 雑談の効果は、上手に相手の気持ちをほぐしてあげることにあります。そうすれば、初の訪問で緊張している相手の心を開かせ、“この先生を選んでよかったかもしれない”という安心感を、“本論に入る前に”与えることができます。 だからこそ雑談は、相談に訪れたお客様が来所して間もないタイミングですることが大切です。年齢や出身県など、相手との共通点を事前にさりげなく見つけておくことも、相手と打ち解けるきっかけになるはずです。また紹介者がいれば、互いが知っているその紹介者の“良い”面などを話題になさることもいいでしょう。 ここで雑談のポイントをまとめてみましょう。 ◆皆さんは、気の効いた質問を投げかけるだけです(きっかけを与えるだけ)。 ◆そのあとは、皆さんが話すのではなく、相手に話をさせましょう。 ◆雑談中はできるだけ互いにたくさん笑い合いましょう。 雑談の主役は皆さんではなく、来訪者側であることをしっかりわきまえることをお忘れなく。そして、相手の話を聞くときは、皆さんの感じの良い表情や声音で優しく受けとめましょう。 皆さんの税理士としての印象や存在感を、“本論に入る前”のこの雑談の場面で、相手の心に“心地良く”捉えてもらうことが大切だからです。相手との共通点を見つけるなど、早い段階で相手との距離を縮めるためにも、ぜひ雑談を得意にして、ビジネスシーンでご活用くださいませ。 *  *  * 次回は、「傾聴」にチャレンジしていただきます。 どうぞ次回もお楽しみに。 (続く)

#No. 206(掲載号)
#坪田 まり子
2017/02/16

《速報解説》 有価証券報告書等に「経営方針」の記載を定めた改正開示府令等が公布~平成29年3月31日以後終了事業年度の有報等から適用~

《速報解説》 有価証券報告書等に「経営方針」の記載を定めた改正開示府令等が公布 ~平成29年3月31日以後終了事業年度の有報等から適用~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年2月14日、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第2号)が公布され、次の改正が行われた。 これにより、平成28年11月8日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 これは、平成28年4月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告において、企業と投資家との建設的な対話を促進していく観点から、より効果的かつ効率的で適時な開示が可能となるよう、決算短信、事業報告等、有価証券報告書の開示内容の整理・共通化・合理化に向けた提言がなされたことを受けたものであり、有価証券報告書等の記載を改正するものである。 なお、同報告の提言を踏まえた決算短信・四半期決算短信の記載事項の見直しについては、平成29年2月10日に、東京証券取引所から公表されている。 また、上記②の臨時報告書の改正は、平成28年6月に閣議決定された規制改革実施計画を踏まえたものである。 「「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」も公表されており、「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」について詳細に考え方が述べられているので、実務の参考になると考えられる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 内容 1 有価証券報告書等に関する主な改正の内容 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告において、決算短信の記載内容とされている「経営方針」について、決算短信ではなく有価証券報告書において開示すべきとされたため、以下のように、【対処すべき課題】から【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】へ改正されている。 2 臨時報告書に関する主な改正の内容 「企業内容等の開示に関する内閣府令」19条(臨時報告書の記載内容等)2項1号に、次の規定を加える。   Ⅲ 適用時期等 改正内閣府令は、公布の日(平成29年2月14日)から施行する。 上記改正事項のうち有価証券報告書の記載内容に「経営方針」を追加する部分については、平成29年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書及び同事業年度を最近事業年度とする有価証券届出書から適用する。 (了)

#No. 205(掲載号)
#阿部 光成
2017/02/15

《速報解説》 名古屋局、職務発明制度の導入に伴い発明者たる使用者に支払われる「相当の利益」に係る税務上の取扱いについて文書回答事例を公表

 《速報解説》 名古屋局、職務発明制度の導入に伴い発明者たる使用者に支払われる 「相当の利益」に係る税務上の取扱いについて文書回答事例を公表   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 平成29年1月27日、名古屋国税局より文書回答事例『職務発明による特許を受ける権利を使用者に原始的に帰属させる制度を導入した場合の「相当の利益」に係る税務上の取扱いについて』が公表された。 これは、平成27年の特許法の改正により設けられた職務発明制度に関して「使用者原始帰属制度」を採用する場合において、「相当の利益」として使用者が職務発明を行った従業者等に支払う各種補助金に係る税務上の取扱いについて、事前照会者の求める見解に対して回答されたものである。 本稿では、この文書回答事例について紹介する。   2 使用者原始帰属制度の概要 「使用者原始帰属制度」とは、従業者等がした職務発明について、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生したときから使用者等に原始的に帰属することとされる制度をいう(特許法35③)。 このとき、職務発明をした従業者等は、使用者等から「相当の利益」の支払を受ける権利を有することとされている(特許法35④)。 なお、平成27年改正前の特許法では、職務発明によって生ずる特許を受ける権利は自然人である発明者(従業者等)に帰属することを前提に、使用者等は、従業者等に帰属する特許を受ける権利について、事前に定めた契約・勤務規則等により、従業者等から承継することができるものとし、従業者等は、使用者等から「相当の対価」の支払を受ける権利を有することとされていた。   3 事前照会者の職務発明規程等 事前照会者は「使用者原始帰属制度」を導入することとし、職務発明規程等を見直した上で、以下のとおり、事前照会者の従業員等がした職務発明に係る特許を受ける権利は事前照会者に原始的に帰属することとし、特許法第35条第4項の規定により「相当の利益」の内容として以下の(ハ)の区分に応じた各補償金(以下「本件各補償金」という)を支払うこととする。 なおこれ以後、特に断りのない限り、事前照会者のことを単に「会社」と称する。 (イ) 定義 職務発明とは、発明がその性質上会社の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為が会社における従業員等の現在又は過去の職務に属する発明をいう。 (ロ) 権利の帰属 職務発明は会社が特許を受ける権利を取得する(ただし、会社がその権利を取得する必要がないと認めたときは、この限りではない)。 なお、会社が取得するに当たっては当該職務発明の発明者に対し相当の利益を付与するものとし、次の(ハ)の区分に応じ、本件各補償金を支払うものとする。 (ハ) 補償金の支払 (ニ) 退職等したときの補償 本件各補償金の支払を受ける権利は、当該権利に関わる発明者(従業員等)が退職した後も存続し、また、当該権利に関わる発明者(従業員等)が死亡したときは、当該権利は、その相続人が承継する。   4 事前照会の要旨 本件各補償金について、支給を受けた従業員等及び会社における税務上の取扱いは、それぞれ以下の通りで差し支えないか、照会する。   5 本件各補償金の支給を受けた従業員等に係る所得税の取扱い   6 本件各補償金を支給した会社に係る法人税の取扱い   7 事前照会に対する回答(名古屋国税局審理課長) (了)

#No. 205(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2017/02/14

《速報解説》 東証、決算短信・四半期決算短信の様式に関する自由度の向上のため有価証券上場規程を一部改正~施行は2017.3.31~

《速報解説》 東証、決算短信・四半期決算短信の様式に関する自由度の向上のため 有価証券上場規程を一部改正 ~施行は2017.3.31~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29(2017)年2月10日、株式会社東京証券取引所は、「決算短信・四半期決算短信の様式に関する自由度の向上のための有価証券上場規程の一部改正について」を公表した。 これは、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループから、会社法、金融商品取引法、上場規則に基づく3つの制度開示について、全体としてより適時に、よりわかりやすく、より効果的・効率的な開示が行われるよう、開示に係る自由度を向上させるという提言を受けたものであり、決算短信・四半期決算短信の様式について使用強制をとりやめることで、自由度を高めるものである。 決算短信・四半期決算短信の様式に関する自由度の向上については、平成28年10月28日から意見募集されていた。意見募集の結果に関して、「「決算短信・四半期決算短信の様式に関する自由度の向上について」に寄せられたパブリック・コメントの結果について」が公表されている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 内容 改正の概要は次のとおりである。 平成29(2017)年2月10日、「決算短信・四半期決算短信作成要領等」についても、決算短信・四半期決算短信の開示の自由度を高めるとともに、速報としての役割に特化するため、改定されている。 具体的な内容については、「決算短信・四半期決算短信作成要領等」(2017年2月版)をご覧頂きたい。 なお、2017年2月版の作成要領は、平成29(2017)年3月末日以後に終了する連結会計年度又は四半期連結累計期間の決算又は四半期決算に係る決算短信又は四半期決算短信から適用する(早期適用はできない)。 前述の「パブリック・コメントの結果」では、次のことが述べられている。   ① 【コメントの概要】 短信の様式(サマリー情報)に関する自由度の向上について 【コメントに対する考え方】 当取引所としては、サマリー情報の様式の使用は、元来、強制ではなく、要請してきたものであるという経緯も踏まえ、今後も引き続き、当取引所の定める参考様式に基づいて決算短信等の作成・開示を行っていただくよう、要請いたします。   ② 【コメントの概要】 通期の決算短信に連結財務諸表を添付する義務がなくなることについて 【コメントに対する考え方】 従来、連結財務諸表等は決算短信等の添付資料としてサマリー情報等と同時に開示することを要請しているだけで、開示を義務付けてはおりません。今後も、原則として、サマリー情報等との同時の開示を要請してまいります。 金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの提言では、それぞれの企業の状況に応じたより早期の決算発表を可能とするため、投資判断を誤らせるおそれがない場合には、サマリー情報等を連結財務諸表に先行して開示ができるようにし、そうした場合でも連結財務諸表は開示ができるようになった時点で直ちに開示を要請することとしています。 通期決算において、連結財務諸表が速やかに提供されることが株主総会における議決権行使のためにも重要であるというご指摘は、上場会社にも周知いたします。   Ⅲ 適用時期等 (了)

#No. 205(掲載号)
#阿部 光成
2017/02/14

記事部分だけ印刷できるようになりました!~印刷機能改善のお知らせ~

記事部分だけ印刷できるようになりました! ~印刷機能改善のお知らせ~

#Profession Journal 編集部
2017/02/09

プロフェッションジャーナル No.205が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年2月9日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.205を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/02/09

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第50回】「限られた租税行政資源と『税務に関するコーポレートガバナンス』(その2)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第50回】 「限られた租税行政資源と『税務に関するコーポレートガバナンス』(その2)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦     3 国税庁における「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」 (1) 事務運営指針 限られた税務行政資源の中で適正公平な課税を担保するため、特に悪質な、あるいは大口な納税者に対して資源を集中している昨今の税務行政の傾向は前回述べたとおりである。すなわち、国税庁は、税務に関するコーポレートガバナンスが良好である納税者と、そうでない納税者について、「メリハリ」をつけて対応していくこととしているのである。 以下では、平成28年7月1日より本格的に運用が開始されている、国税庁による「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」について概観することとしよう。 税務に関するコーポレートガバナンスの取組みは、平成23年ころから始まったものであるが、5年の試行期間を経たのち、平成28年6月14日に「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組の事務実施要領の制定について」として事務運営指針が制定された。 同指針は、「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組の事務実施要領」に加えて、「税務に関するコーポレートガバナンスの確認項目の評価ポイント」(別紙1)、「自主開示について」(別紙2)と、様式編として、「税務に関するコーポレートガバナンス確認表」(様式1)、「税務に関するコーポレートガバナンス評価書」(様式2)、「自主開示事項確認事績整理票」(様式3)から構成されている。 (2) 事務実施要領における評価の流れ 事務実施要領では、調査の機会を利用した働きかけとして、(ア)税務に関するコーポレートガバナンスの確認、(イ)税務に関するコーポレートガバナンスの判定を行った上、(ウ)トップマネジメントとの面談を通じて、(エ)その判定結果の活用をすることとされている。 判定の結果、税務に関するコーポレートガバナンスの状況が良好であり、調査結果に大口・悪質な是正事項がなく調査の必要度が低いと判定された法人については、調査省略対象とする事業年度の申告書審理を行う際に、一般に国税当局と見解の相違が生じやすい取引等を自主的に開示し、当局がその適正処理を確認することを条件に次回調査までの調査間隔を延長することとしている(例えば2年から3年の延長)。 このように、確認と判定の結果、「良好」と判断された企業には、調査間隔の延長というインセンティブが与えられるのであるが、あくまでも「一般に国税当局と見解の相違が生じやすい取引等を自主的に開示し、当局がその適正処理を確認することを条件に」認められるものであることに留意しておく必要があろう。 この自主開示については後述するが、判定の結果のみで調査間隔の延長が認められるものではない。 (ア) 税務に関するコーポレートガバナンスの確認 税務に関するコーポレートガバナンスの確認項目として、事務運営指針では次の5つが掲げられている。 これらの項目につき、調査を担当する国税局特別国税調査官(担当特官)は、調査着手後の早い段階で、この取組みの趣旨を調査法人に説明した上で、上記(ⅰ)ないし(ⅴ)が示された「税務に関するコーポレートガバナンス確認表」の作成を依頼する。 この確認表の作成は、行政指導として依頼するものであるが、作成について調査法人の協力を得られなかった場合には、当然のことながら、(イ)以下の判定手続等には進まず、調査間隔延長を受けることはできない。 (イ) 税務に関するコーポレートガバナンスの判定 調査法人から提出された上記確認書について、担当特官は、「税務に関するコーポレートガバナンスの確認項目の評価ポイント」(別紙1)に基づき、前掲の確認項目について、法人の取組みが形式的なものではなく、実効性が確保されているかなどの観点から、評価・判定を行う。 なお、判定の際の基本方針として、事務運営指針では次のように述べられている。 担当特官は、確認表に記載がない場合や、取組みに係る運用状況が明確でないものについては、法人にその状況を聴取するとともに、税務調査に対して適切に対応しているか、帳簿書類等が適切に保存されているかなどを勘案し、「税務に関するコーポレートガバナンス評価書」(様式2)を作成する。 具体的な評価ポイントとして、例えば、「(ⅰ) トップマネジメントの関与・指導」項目については、①税務コンプライアンスの維持・向上に関する事項の社訓、コンプライアンス指針等への掲載の有無、②税務コンプライアンスの維持・向上に関する方針のトップマネジメントによる発信の有無やその浸透具合、③税務調査の経過や結果、社内監査結果のトップマネジメントへの報告の状況、④問題が把握された時の再発防止策に対するトップマネジメントの指示の的確性などが挙げられている。 紙幅の都合上すべてを掲載することはできないが、そのほかにも上記(ⅰ)ないし(ⅴ)の確認項目に対して、それぞれ具体的な評価ポイントが設けられており、例えば「(ⅴ) 不適切な行為の抑制策の整備・運用」については、仮装・隠ぺいを行った社員に対する懲戒処分などのペナルティ制度の整備と運用等が評価のポイントとされている。 これらに基づき作成された評価書は、実地調査検討会等の際に、国税局の調査(査察)部長又は次長(以下、「部次長」という)に調査法人の税務に関するコーポレートガバナンスの状況として報告される。この際、部次長は、必要に応じ、判定結果や所見等について指導・指示を行うこととされている。 (ウ) トップマネジメントとの面談 税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた実効性ある取組みを促進する上で、トップマネジメントとの面談は極めて重要であると解されるため、国税局調査部の部次長は、トップマネジメントがリーダーシップを発揮しガバナンスの充実に取り組むことを促すため、トップマネジメントと意見交換を行う(面談は、原則として、部次長が担当することとし、担当特官が同席する)。 面談においては、調査結果の概要を説明するとともに、その是正事項の再発防止に向けた取組みを含め、評価が低かった事項について、効果的な取組事例を紹介しつつ意見交換を行うこととされている。 なお、事務運営指針において、トップマネジメントとは、「法人の代表取締役、代表執行役のほか、法人の業務に関する意思決定を行う経営責任者等」と定義されている。 これらの者が率先してガバナンスの充実に取り組むことこそ、税務に関するコーポレートガバナンスの実効性担保に資するものとなるといえよう。 (エ) 税務に関するコーポレートガバナンスの判定結果の活用 上記の流れで確認された調査法人の税務に関するコーポレートガバナンスの判定結果は、調査法人の調査必要度の重要な判断材料の一つとして活用することとされている。 (3) 自主開示 (ア) 自主開示への同意と調査間隔の延長 前述のとおり、税務に関するコーポレートガバナンスの状況が良好であり、調査結果に大口・悪質な是正事項がなく調査必要度が低いと判断される法人については、調査省略対象とする事業年度の申告書審理を行う際に、一般に国税当局と見解の相違が生じやすい取引等を自主的に開示し、当局がその適正処理を確認することを条件に、次回調査までの調査間隔が延長される。 上記条件に同意するか否かについては、トップマネジメントとの面談時において確認を行うこととされているが、その際、自主開示は、調査間隔を延長した結果、1回の調査の事務負担が法人及び国税当局双方にとって過重とならないために行うものであり、当局の確認の結果、処理に誤りがあると思料される場合は、行政指導として自発的な見直しを要請するものであることを説明することとされている。 このような、自主開示に同意した法人には、次回調査までの間隔を前回調査と今回調査の間隔より、1年延長することを説明する。 すなわち、前回調査の間隔が2年であった場合には3年に、3年であった場合には4年に延長されることになるが、更正期限が5年間であることを考慮して、延長される調査間隔は、当面の間最大4年とすることとされている(したがって、現時点では、4年が5年に延長されることはない)。 もっとも、後発的な事情などにより、緊急を要する場合は、調査が実施されることがある。 加えて、調査間隔延長後の実地調査において、ガバナンスの状況が良好でなくなったと判断された場合や、調査結果に大口・悪質な是正事項があった場合並びに自主開示の履行状況が不十分であった場合には、調査間隔を延長する直前の調査間隔に戻すこととされている。 (イ) 自主開示の内容 調査間隔の延長を受けるためには、「一般に国税当局と見解の相違が生じやすい取引等を自主的に開示」することとされているが、対象となる取引等として、例えば次のようなものが挙げられている。 もっとも、自主開示は「一般に国税当局と見解の相違が生じやすい取引等」が対象とされていることから、上記事項に該当する場合であっても、「国税当局に事前相談を行い、事実関係に変更がないもの」については見解の相違が生じるおそれがないため、自主開示の範囲から除外されている。 そのほか、前回調査で是正された事項の再発防止や申告調整等の状況についても自主開示が求められている。 (ウ) 自主開示事項の確認 担当特官は、自主開示された事項について、適正に処理されているか否かを確認し、それらの判断結果を取りまとめ、必要に応じて国税局の調査審理課等と協議を行う。 自主開示事項の適否判断に必要な資料が提出されない場合や、深度ある調査、取引先等への反面調査など事実認定を要する場合は、延長対象法人に対し、当該事項は次回調査で確認する旨連絡することとされている。 自主開示事項の確認の結果、処理に誤りがあると思料される場合は、延長対象法人に対し、自発的な見直しを要請した上で、修正申告書又は更正の請求書の自発的な提出を要請することとされている。 なお、あくまでもこの確認は行政指導であって、調査ではないから、加算税賦課要件である「更正の予知」の判定には影響しないと解される。 他方で、上記の連絡をするにあたり、自主開示事項を次回調査で確認した結果、追徴税額が生じることとなった場合には、加算税が賦課決定されることを併せて説明することとされている。 すなわち、自主開示がなされていたからといって、その内容について非違が発見された場合は、加算税が免除されるわけでないことに注意が必要であろう。 (4) 小括 このように、国税庁による「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」は、「確認⇒判定⇒面談⇒結果の活用⇒自主開示⇒判定」といった一連の流れを繰り返すことによって、トップマネジメントのリーダーシップを通じた企業の自主的取組みに期待を寄せる手続であるといえよう。 繰り返しになるが、「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」では、企業の自主的取組みが良好であると判断された場合に、調査間隔の延長というインセンティブが与えられることとしている。 調査間隔の延長は、調査対象法人にとって事務負担の軽減などのメリットになることはもちろんであるが、前回確認したとおり、我が国の限られた税務行政資源を最も効率的かつ効果的に分配すべきという文脈において、税務当局サイドにも十分なメリットがあるのである。 適正公平な課税の実現のために、税務当局の監視監督の目が一定程度必要であることも事実であるが、限られた税務行政資源を、特に大口・悪質な納税者に集中させることは、我が国全体にとって非常に有益であることは間違いない。 現時点では、「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」が適用される企業は、おおむね資本金が40億円超の大企業であって、数で見れば、まだ500社程度しかその対象にはなっていない。 しかしながら、かかる取組みが、企業にとっても税務当局にとってもWin-Winの関係になるものであることからすれば、現在の我が国の財政状況や、国際間取引・ITC化による経済状況の複雑化等に鑑みると、今後、その対象企業の範囲が広げられていく可能性もあるのであって、租税専門家はこうした国税庁の取組みを十分注視しておくべきであろう。 (続く)

#No. 205(掲載号)
#酒井 克彦
2017/02/09

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第1回】「「買換えの特例」の譲渡価額要件(1億円以下)の判定①(居住用の家屋等の一部を前々年に贈与している場合)」-譲渡価額要件の判定-

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第1回】 「「買換えの特例」の譲渡価額要件(1億円以下)の判定① (居住用の家屋等の一部を前々年に贈与している場合)」 -譲渡価額要件の判定-   税理士 大久保 昭佳   Q X(夫)は、本年6月に居住用の土地家屋(所有期間が10年超で居住期間は10年以上)を、その共有者であるY(妻)と共に1億2,000万円(Xが1億円、Yは2,000万円)で譲渡しました。 Yが譲渡した土地及び建物の持分(1/6)は、前々年3月にXから贈与により取得したものであり、その贈与のときにおける時価額は2,000万円でした。 この場合、X及びYは、「特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)」の譲渡価額要件(1億円以下)を満たすこととなるのでしょうか。 なお、X及びYも、上記の贈与以外には、当該譲渡した土地及び家屋と一体としての居住の用に供されていた他の建物又は土地に係る譲渡はありません。 A Xは、持分(5/6)に係る譲渡対価の額1億円と当該譲渡年の前3年以内の譲渡(贈与を含む)に係る対価の額2,000万円との合計額が1億円を超えることから、譲渡価額要件を満たさないことになります。 Yについては、居住の用に供している部分に対応する譲渡に係る対価の額はYの持分(1/6)に対する2,000万円であり、1億円を超えないことから、譲渡価額要件を満たすこととなります。 ●○●○解説○●○● 特定の居住用財産の買換えの特例(以下「買換えの特例」という)は、その譲渡資産の譲渡に係る対価の額が1億円以下であることが、その要件の1つとされています(措法36の2①かっこ書)。 そして、この譲渡に係る対価の額が1億円を超えるかどうかについては、譲渡年と譲渡年の前年若しくは前々年に、当該譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地等の譲渡(収用交換等による譲渡を除く。以下「前3年以内の譲渡」という)がある場合は、「前3年以内の譲渡に係る対価の額」と「当該譲渡資産の譲渡に係る対価の額」の合計額により判定することとされています(措法36の2③)。 また、譲渡年の翌年若しくは翌々年に、当該譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地等の譲渡(収用交換等による譲渡を除く。以下「翌年と翌々年の譲渡」という)がある場合には、「前3年以内の譲渡に係る対価の額」と「当該譲渡資産の譲渡に係る対価の額」と「翌年と翌々年の譲渡に係る対価の額」の合計額により判定することとされています(措法36の2④)。 そして、上記の「前3年以内の譲渡」及び「翌年と翌々年の譲渡」が、贈与(著しく低い金額の譲渡を含みます)による場合には、当該贈与等の時における価額に相当する金額(時価(=通常の取引価額))をもって、譲渡価額要件の判定を行うこととされています(措令24の2⑨、措規18の4③、措通36の2-6の4(居住用財産の一部を贈与している場合))。 また、「買換えの特例」の適用に係る譲渡資産が共有である場合、譲渡価額要件の判定に当たっては、所有者ごとの譲渡対価の額により判定することとされています(措通36の2-6の2(譲渡に係る対価の額が1億円を超えるかどうかの判定)(1))。 (1) Xの譲渡に係る対価の額について Xは、前々年に、当該譲渡資産と一体としてXの居住の用に供されていた家屋及び土地の持分(1/6)をYに対し贈与しているため、また、譲渡資産が共有である場合は、各所有者ごとの譲渡対価により判定することとされていることから、譲渡価額要件の判定における譲渡に係る対価の額は次の算式のとおりとなり、譲渡価額要件を満たさず、特例を受けることができません。 (2) Yの譲渡に係る対価の額について Yには、「前3年以内の譲渡」がないことから、「当該譲渡資産の譲渡に係る対価の額」のみで判定を行うこととなり、また、譲渡資産が共有である場合は、各所有者ごとの譲渡対価により判定することとされているので、次の算式のとおりとなり、譲渡価額要件を満たし、特例を受けることができます。 (了)

#No. 205(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/02/09
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