被災したクライアント企業への 実務支援のポイント 〔労務面のアドバイス〕 【第2回】 「災害時の特例措置」 特定社会保険労務士・中小企業診断士 小宮山 敏恵 災害が発生した場合、企業は、市区町村や厚生労働省等の公的機関が公表する災害への対応や特例措置について、報道やホームページ等で確認しなければならない。企業及び社員に必要な情報を収集・提供し、企業として対応可能な手続を速やかに行うことが必要である。 なお、災害の種類や規模、発生地域等によって、講じられる特例措置等の内容は様々である。下記で紹介するものがすべての場合において適用されるわけでないため、やはりその都度、確認することが必要となる。 災害時に講じられる主な労働保険・社会保険手続、各種助成金は次のとおり。 参考に、東日本大震災及び熊本地震における施策がまとめられた厚生労働省のホームページを紹介しておく。 (了)
税理士が知っておきたい [認知症]と相続問題 【第4回】 「認知症診断の医学的手順」 クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎 1 認知症診断の一般的手順 ―「認知症疾患治療ガイドライン」の存在 ある人の判断能力に問題がありそうだ、という疑いが生じた場合、「判断能力が減弱していること」や、ひいては「認知症を発症していること」の判断はどのようにして行うのか。 今回は、この点に関して医学的観点を踏まえて解説したい。 【第2回】で説明したように、ひとくちに認知症といっても、その原因となる疾患は多種多様である。原因疾患が異なれば発生する症状も異なるし、その治療方法も変わってくる。 また、そもそも(狭義の)認知症には該当しないような疾患によっても、認知症と同様の認知機能の低下・障害が発生する場合がある。 そのため、認知症の疑いがある患者の診断手順については、日本神経学会が「認知症疾患治療ガイドライン」を作成し、公開している。 同ガイドラインに基づく一般的な診断手順について、以下、概略を説明する。 2 第1ステップ:認知症であるか否かを診断する 診断手順においては、まず、認知症と誤りやすい「うつ状態」や「せん妄」を除外する必要がある。 「うつ状態」とは、気力の低下や気分の落ち込みといった症状に始まり、食欲不振や睡眠障害、絶望感や自死念慮が起こる状態をいう。そのきっかけは、家族との死別、経済的な損失等の喪失体験が多い。 この場合に、意欲や注意力が低下することで頭がぼうっとし、記憶力が低下するといった認知症類似の症状が発生することがある(ただし、うつ病の場合は、後述するHDS-Rの点数は高い)。 他方、「せん妄」とは、次のような特徴を有する急性の意識障害である。 【「せん妄」の特徴-認知症との違い】 (前記ガイドラインより) 医師は、患者の問診によって、 等を確認・実施する。 これにより、患者本人の記憶障害の有無(長期・短期記憶、エピソード記憶の障害)、認知機能障害の有無(失語、失見当、失認、失語等)や生活上の障害(対人関係や仕事上での支障等)を見ていくことになる。 問診の際に、我が国で最も広く用いられている神経心理学的検査が「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」である。 「長谷川式」という略称を聞いたことがある方も多いであろう。 これは、次のような口頭での質問から構成され、正解すれば1~2点、ヒントを与えられて正解した場合は1点、間違えば0点というように計算していく。 そして、総計点30点満点中で20点以下の場合には、認知症の疑いがあるとされる。 【長谷川式による質問内容】 3 第2ステップ:認知症の原因疾患の診断をする 以上の第1ステップにより認知症の疑いがあることが判明した場合、次はその原因疾患を特定する作業へと移る。原因疾患の違いにより、その後の治療やケアの方法が変わってくるからである。 まず、前記の長谷川式テストを実施した際には、どの質問の回答が不得意だったのかを見ることで、原因疾患の特定に役立つことがある。 たとえば、アルツハイマー型認知症の場合は、(4)や(7)のような即時再生・遅延再生を苦手とする場合が多い。 同様に、レビー小体型認知症の場合は、上記の(7)は得意とするものの、(5)や(6)といった数字に関する問題になると誤答するといったような傾向があるとされる。 また、前記の問診において観察・聞き取りした事項全般も、原因疾患の特定と関連性を有する。 たとえば、診察室での様子ひとつをとっても、姿勢がどちらかに傾いている場合や小刻みにゆっくり歩くような場合にはレビー小体型認知症等が、能面のように無表情な場合には前頭側頭型認知症等が、挨拶もしてごく普通の様子に見えるが、本人には認知能力低下の自覚がないという場合にはアルツハイマー型認知症がそれぞれ疑われるといったようにである。 その他、日常生活におけるエピソードも、原因疾患特定につながる場合がある。 これらに加えて、①頭部CT画像による脳の萎縮度・形状の確認、②MRI検査による脳の形態学的変化の確認、③SPECT(スペクト)検査による脳血流量の確認、④一般的な尿や血液検査、⑤心電図検査等の各種データを総合的に把握し、原因疾患を特定していくことになる。 4 認知症の治療 以上のような診断を経て認知症の原因疾患を特定できて初めて、有効な治療を開始することができる。 認知症の治療は、通常、①薬物療法と②非薬物療法とに大別される。 ①薬物療法に関しては、現時点において、認知症を根本的に治療できる薬はないとされている。 そのため、認知症の進行を遅らせるための抗認知症薬が、原因疾患の類型に応じて処方される。 また、②非薬物療法に関しては、認知能力の維持・向上を目指す各種リハビリテーションや回想法、音楽療法、アニマルセラピーといったように多種多様な療法を組み合わせることで、認知症患者の生活の質の向上を目指していくことになる。 最近の世界的な潮流は、認知症患者の内的体験を尊重し、その人の「心の声」を聞きながら共感して寄り添うという「パーソンセンタード・ケア」の理念が重視されるに至っている。 以上のような認知症治療をめぐる状況は、長谷川式テストを開発され、現在も診療を続けておられる長谷川和夫博士が、『よくわかる認知症の教科書』(朝日新書、2013年4月刊)等の一般向け書籍においてわかりやすく説明されている。 同書は、認知症の病態や現在の治療体制、介護する家族の心構え、これからの認知症治療のあり方等を一般向けに解説しており、大変参考となる。 (了)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例9】 株式会社王将フードサービス 「『第三者委員会調査報告書提言に対する当社取り組みについて』の 報告終了に関するお知らせ」 (2016.8.12) 事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、株式会社王将フードサービス(以下「王将フードサービス」という)が平成28年8月12日に開示した「『第三者委員会調査報告書提言に対する当社取り組みについて』の報告終了に関するお知らせ」である。開示名だけでは、内容を推測するのは難しいかもしれない。今回の開示は、下表に示した一連の開示の最後に当たるものである。 同社は、まず平成27年12月28日に、第三者委員会の設置を決定したとする「当社におけるコーポレート・ガバナンスの評価・検証のための第三者委員会の設置について」を開示した。なお、前日27日の取締役会で第三者委員会の設置を決定したとされているため、この開示は遅延開示である。 そして、平成28年3月29日、第三者委員会から調査報告書を受領し(「第三者委員会からの調査報告書受領に関するお知らせ」)、そこで示された改善提言に対する取り組みを決定し、平成28年4月8日、「第三者委員会調査報告書提言に対する取り組みについて」において、その内容を開示している。なお、改善提言に対する取り組みは、4月1日と5日の取締役会において決定したとされているため、この開示も遅延開示である。 その後、改善提言に対する取り組みの経過について開示していたのだが、今回の開示がその最後に当たるものというわけである。 2 第三者委員会の目的 平成27年12月28日開示の「当社におけるコーポレート・ガバナンスの評価・検証のための第三者委員会の設置について」では、第三者委員会の目的について次のように記載されている。第三者委員会は、粉飾決算の原因解明を目的として設置される場合がほとんどだが、この第三者委員会は、王将フードサービスと反社会的勢力の関係の有無の確認を目的として設置されたのである。 調査報告書にも次のような記載がある。マスコミ報道に後押しされて、ようやくの決断だったようである。 3 調査報告書の提言 調査報告書は、王将フードサービスと反社会的勢力の関係は確認されなかったと一応結論付けているが、それだけでなく、同社のコーポレートガバナンスにおける様々な問題点を指摘している。平成27年12月28日開示の「当社におけるコーポレート・ガバナンスの評価・検証のための第三者委員会の設置について」では、「当社においては、東京証券取引所第一部の上場会社の中でも最も進んだコーポレート・ガバナンス体制を整備している会社の一つであると自負しております」と記載されているが、調査報告書を読むと、まったくそうではなかったのだということがわかる。次の記載のように、現在の経営陣に対しても厳しい(OFSは王将フードサービスのこと。以下同じ)。 そして、以下のような改善提言を示している(タイトルのみを列挙)。今回取り上げた開示は、この改善提言に対する取り組みを終了したというものである(本当に終了し、同社は生まれ変わったのだと信じたい)。 4 A氏との関係 改善提言の中に「創業家との関係」と「A氏との関係」がある。創業家とA氏は、改善提言に対する取り組みを実効性あるものとするために、王将フードサービスが関係を解消しなければならない存在である。まず調査報告書の中でおそらく読者の関心を最も引くのは、A氏に関する記載だろう。例えば、次のような記載がある。 そして、同社は、改善提言に対して、平成28年4月8日開示の「第三者委員会調査報告書提言に対する取り組みについて」において、次のように取り組むとしている。平成28年3月30日開示の「電子交換電話設備の保守委託契約の解除について」は、A氏との取引を終了したことに関するものである。 上述のとおり、調査報告書は、同社と反社会的勢力との関係は確認されなかったと一応結論付けているため、A氏は反社会的勢力ではないのだろう。しかし、なぜA氏が同社に対して強い影響力を持ち得たのだろうか。調査報告書を読んでも、その理由を正確に理解することは難しい。 5 創業家との関係 創業家に関しては、調査報告書に次のような記載がある。 そして、同社は、改善提言に対して、平成28年4月8日開示の「第三者委員会調査報告書提言に対する取り組みについて」において、次のように取り組むとしている。平成28年7月27日開示の「当社の賃借終了物件の敷金の返還について」と「公益財団法人加藤朝雄国際奨学財団の移転について」は、創業家との関係解消に関するものである。 最近、上場企業とその創業家の関係について考えさせられる事例が多いように思われる。創業家の存在は、企業にとってプラスになる場合もあれば、マイナスになる場合もある(例えば、トヨタ自動車にとっての豊田家の存在は、プラスになっている場合なのだろうか)。王将フードサービスにとっての創業家は、結果として極めてマイナスな存在だったようである。 (了)
税務ピンポイント解説 【第4回】 「「配偶者控除」廃止で“103万円の壁”崩壊!? その先は・・・?」 Profession Journal 編集部 2016年9月15日に開催された政府税制調査会では、「配偶者控除」の見直しへ向けた検討が始まり、話題を呼んでいます。 配偶者控除とは一口に言えば「配偶者の年収が103万円以下の場合、扶養者の課税所得から38万円を差し引く」所得税法上の仕組みですが、元来、専業主婦を念頭においた制度とされ、女性の社会進出を阻んでいるとして長い間問題視されてきました。 そこで今、それに代わる制度として、政府税制調査会では各国の制度との比較を行うなどして、わが国の家族制度にフィットした新たな制度のビジョンを検討しています。 (※) 「税制調査会(2016年9月15日)資料」より 今後、年末の平成29年度税制改正にむけて具体的な議論が集約されるかも不透明な状況です。 というのも、制度を変えることにより納税者に“損・得”が生じることは致し方ないのですが、これまで恩恵を受けてきた専業主婦の世帯などからは大きな反発も想定され、政府税制調査会の議論を受ける形で論議に入る与党税制調査会は、改正後の選挙への影響なども考慮するとみられるため、改正に対する世論の動向も大きく影響するとみられます。 新制度の検討は“1億総活躍社会”の実現の障害となる「103万円の壁」の撤廃を1つの課題とするとも考えられます。 しかしながら、女性の社会進出を阻む「壁」は一枚ではありません。 税金の壁とは別に、社会保険上の「106万円の壁」が存在します。 配偶者が扶養から外れる(=自分で社会保険料を払う必要が生じる)ラインは、元々は年収130万円でしたが、2016年10月施行の法改正により、会社規模等一定の要件を満たした場合には106万円に引き下がることとなりました。 「それなら106万円を超えないようにしよう」という考え方をいかに払拭し、年間最低で約10万円はかかる社会保険料を自分で支払っても十分生活力が残るレベルの本格的な就労に、いかに女性を導き出すか。育児や介護等、女性を家庭に留めてしまっている根本的な要因については、国や企業がどのようにサポートしていけるのか。配偶者控除にせよ夫婦控除にせよ、そうした視点を併せ持った上での議論が必要となるでしょう。 壁を取り払って終わりではなく、その先の道筋を照らせるような法改正に今後期待したいですね。 (了)
《速報解説》 法人税の申告期限、上場企業の株主総会期日設定柔軟化に対応し、 延長実現なるか? ~平成29年度税制改正要望 Profession Journal編集部 「日本再興戦略」等による国を挙げた取組みにより、日本の株式市場の整備を行い海外投資を呼び込もうとする動きが活発化している。昨年策定されたコーポレートガバナンス・コードもその1つだ。 ただし現在、海外投資家から日本市場への参入障壁として指摘されている問題の1つに、法人税の申告期限に関する現行制度が影響している。 現行の法人税法上、内国法人は原則として「決算日」から2ヶ月以内に、株主総会の承認を得て確定した決算に基づく法人税申告を行わなければならない。ただし、会計監査人の監査を受ける等一定の事由により、特例として1ヶ月間の期限延長が認められている(法人税法75条の2)。つまり3月末を決算日とした法人(3月決算法人)の場合、上記特例によると、6月末が申告期限となる。 一方、会社法上、株主総会は、毎事業年度終了後一定の時期に招集することが求められており、企業が議決権行使の「基準日」を定めた場合、その3ヶ月以内に株主総会を開催しなければならない(会社法296条1項、124条)。そして現在の企業実務では、その「基準日」を「決算日」と一致させているため、3月決算法人は6月末までに株主総会を開催しなければならず、6月に株主総会を開催する企業が集中しているのが現状だ。 ただし、会社法では、「決算日」を「基準日」として設定することを要請しておらず、基準日を決算日と異なる日に設定することが可能である。このため、企業は個々の事情に応じて、柔軟な総会日の設定を行うことが、会社法上は可能となっている。 このため3月決算法人(3月末が決算日)でも基準日を4月1日以降に設定し、7月以降に株主総会を開催することが可能なのだが、法人税の申告期限(6月末)までに、株主総会の承認を得て確定した決算に基づく申告ができないというリスクが生じることから、未だ6月に株主総会が集中開催される状況は緩和されていない。 このような現行制度に対し、海外機関投資家からは「決算から株主総会までの期間が短すぎる」「総会日が集中している」等により、株主・投資家の対話期間や企業の情報開示の準備期間が十分ではないとの指摘がなされている。 この点、コーポレートガバナンス・コードの補充原則1-2③においても とされている。 実際に経済産業省資料によると、日本企業の決算日から定時株主総会開催日までの日数は諸外国平均が「4~5ヶ月」であるのに比べ「2.8ヶ月」と短く、また総会開催日も、日本の総会日が突出して集中傾向にあることが示されている。 この問題を解決するため、このたび経済産業省が示した平成29年度税制改正要望には、 との項目が盛り込まれている。 上記の要望では具体的な延長期間等の制度設計は明記されていないものの、延長が実現し株主総会時期を変更することになれば、有価証券報告書の提出のタイミング等、上場企業の決算実務への影響は大きい。また、仮に早期実現となれば来年の株主総会へ向けたスケジュールも見直しを迫られる可能性があるため、企業実務担当者は今後の審議内容について注視しておきたい。 (了)
2016年9月15日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.185を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
日本の企業税制 【第35回】 「各省庁の税制改正要望からみた 平成29年度税制改正の課題(法人課税)」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 8月末に各府省庁が取りまとめた平成29年度税制改正要望が、財務省ホームページで公開されている。 この要望から、平成29年度税制改正の主な課題(法人課税)を整理したい。 1 研究開発税制 法人課税の大きな課題は、研究開発税制である。上乗せ措置である高水準型・増加型の期限到来に併せて、恒久措置である総額型も含めて制度の見直しが行われそうである。経済産業省の他7省が要望しているが、具体的には、 の4点が掲げられている。特に、②の控除率25%が掲げられているように、企業の研究開発投資の増加に向けて大胆なメリハリをつけることが伺われる。 2 設備投資促進 設備投資については、中小企業投資促進税制の拡充・延長が、経済産業省の他5省が要望している。また、経済産業省単独では、地域未来等投資促進税制(仮称)の創設を要望している。これは、地域経済を牽引する地域中核企業による地域の強みを活かした事業拡大を支援するため、改正を検討している企業立地促進法に基づき、地域中核企業等による未来投資を支援するための措置とされている。 また、特定事業用資産の買換特例の延長も、国土交通省と経済産業省とから要望されている。 3 役員報酬 28年度税制改正で一定の譲渡制限付株式について損金算入が認められるなどの見直しが行われた役員報酬について、もう一段の見直しが経済産業省から要望されている。 4 国際課税 国際課税については、いわゆるタックスヘイブン税制が平成27年度改正、28年度改正と連続で与党大綱で見直しが検討課題として掲げられており、今回の国際課税の改正課題の目玉といえる。 タックスヘイブン税制に関しては、経済産業省要望では、「BEPSプロジェクトを踏まえた外国子会社合算税制の見直しに当たっては、軽課税国を利用した課税逃れを的確に防止しつつ、日本企業の過度な負担により国際競争力の低下を招くことがないよう、合理的で簡素な制度とする」との観点から、次の5点が要望事項である。 金融庁も、租税回避目的がない事業(外国で価値創造を行っている金融・保険業、航空機リース業など)が合算対象とならないよう要望している。 5 企業年金等積立金に対する特別法人税 厚生労働省の他6省庁から、企業年金等(厚生年金基金、確定拠出年金、確定給付企業年金、勤労者財産形成給付金及び勤労者財産形成基金)の普及を図るため及びこれらの健全な運営を確保するため、これらの積立金に対する特別法人税の撤廃を行うことが要望されている。 (了)
相続税の実務問答 【第3回】 「生前贈与の有無及び贈与金額の確認」 税理士 梶野 研二 [答] お父様から弟さんに対する相続開始前3年以内の贈与の有無及びその金額を確認するために、所轄税務署の署長宛てに贈与税の申告内容の開示請求を行うことができます。 なお、被相続人から共同相続人への生前贈与の内容については、相続税の申告のためばかりではなく、相続財産の分割を行う上でも特別受益として明確にしなければならない場合があります。そのため、生前贈与の内容の確認を含め兄弟間でよく話し合うべきでしょう。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続税の計算方法 相続税は、相続人や受遺者(相続税の納税義務者とならない法人を除く)ごとに相続又は遺贈により取得した被相続人の財産の価額の合計額(債務がある場合には債務の金額を控除した後の金額。この金額を相続税の課税価格といいます)を計算し、その相続税の課税価格を合計した金額を基に、基礎控除額を控除し、控除後の金額を民法に定める各相続人が民法に定める相続分に応じて取得したものと仮定して相続税の総額を計算し、それを各相続人の取得財産の価額に応じて按分して、各相続人の相続税額を算出するという方法を採用しています。 この場合、被相続人から次の贈与を受けた相続人や受遺者(以下「相続人等」という)がいる場合には、その贈与を受けた価額をその相続人等の課税価格に加算して、上記の計算を行うこととなります。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 したがって、共同相続人や受遺者が相続開始前3年以内に被相続人から財産の贈与を受けている場合や相続時精算課税制度を選択している場合には、その価額が明らかにならない限り、正しい相続税の計算をすることができないこととなります。 2 贈与税の申告内容の開示請求 わが国の相続税が、上記1のとおり、被相続人から相続や遺贈により財産を取得した者や相続時精算課税適用者の当該被相続人からの生前贈与の金額が明らかにならないと相続税の計算をすることができない仕組みとなっていることから、相続税法には、正しい相続税額の計算を担保する措置として、贈与税の申告内容の開示請求の制度が設けられています(相法49①)。 (1) 贈与税の申告内容の開示請求の趣旨 この贈与税の申告内容の開示請求の制度は、平成15年度税制改正において、相続時精算課税制度が創設されたことに伴い導入されたものです。 相続時精算課税制度の下では、特定贈与者の相続開始に伴う相続税の計算においては、同制度の選択届出書を提出した年分以降の特例贈与者からの贈与財産の価額が、相続税の課税価格に算入されることとされています。贈与時から相続開始時までの間が相当長期に及ぶことも容易に想定され、また、贈与税の申告件数及び金額も増加することが見込まれたことから、従来以上に、被相続人から共同相続人等の生前贈与の有無及びその金額の確認が困難なケースが増えることが予想されました。 相続人同士で生前贈与の情報を連絡し合えれば相続税の申告に支障をきたすこともないのですが、必ずしも良好な状態が存している家族ばかりではないと考えられたことから、相続時精算課税制度の導入を契機に、贈与税の申告内容の開示制度が導入されました(『平成15年版 改正税法のすべて』513頁参照)。 (2) 開示請求制度の内容 贈与税の申告内容の開示請求制度の概要は次のとおりです。 3 贈与税の申告内容の開示請求についての留意点 (1) 開示されるのは申告又は課税処分がされた贈与財産の価額 開示請求により開示されるのは、納税者からの申告又は課税処分によって確定している贈与税の課税価格です。申告等のされていない贈与財産がある場合や申告等がされていたとしてもその価額に誤りがある場合には、開示請求によって入手した情報のみでは、相続税の正しい計算はできません。 そのため、他の共同相続人等と意思疎通を図り、相続税の課税価格に算入されることとなる贈与の有無やその価額を正確に把握することが必要となります。 (2) 開示される時期 開示請求を受けた税務署長は、請求者に対して、請求後2ヶ月以内に開示をすることとされています(相法49②)。 したがって、相続税の申告期限まで2ヶ月以上の余裕がないと、開示請求をしたとしても相続税の期限内申告に間に合わないことがあり得ます。 (3) 自分の行った贈与税の申告内容等の開示請求 上記2(2)の〈2〉のとおり、贈与税の申告内容の開示請求の対象となる贈与は、当該相続又は遺贈により財産を取得した他の共同相続人等が被相続人から受けた贈与です。したがって、贈与税の申告内容の開示請求を活用して自身が行った贈与税の申告内容を確認することはできません。 (注) 自身が行った贈与税の申告内容は、申告書の閲覧サービスを活用することにより、確認することができます。閲覧の具体的な手続きは、「申告書等閲覧サービスの実施について(事務運営指針)」(平成17年3月1日、官総1-15他)に定められています。 (4) 税理士の責任について 相続税の申告について委任を受けた税理士は、適正な申告を行う義務があり、相続税の課税価格に算入される贈与の有無についても相続人等に聴取したり、贈与税の申告内容の開示請求を活用するなどして確実に確認を行わなければなりません。 相続税の課税価格に算入すべき贈与がありながら、それを確認する努力を怠り、結果的に相続税の申告が適正になされず、そのことが後日の税務調査により判明し、相続税の修正申告や更正処分に至った場合には、税理士に対する損害賠償請求が行われることも考えられます。 税理士としては、相続税の申告書の作成に際しては、開示請求の活用も視野に入れて、生前贈与の有無を確実に把握すべきでしょう。 (了)
金融・投資商品の税務Q&A 【Q11】 「外貨建定期預金の利子及び満期時の課税関係」 PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子 ●○ 検 討 ○● 1 外貨預金の利子に対する課税 外貨預金の利子については、利子所得として、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の源泉分離課税が適用されます。申告の必要はありません。 2 満期時の為替差損益の取扱い 個人が外貨預金を保有している場合において、預金の満期時に元本部分の為替の変動損益(為替差損益)を税務上認識する必要があるかどうかについては、個別の検討が必要です。 所得税法上、居住者が外貨建取引を行った場合には、その外貨建取引の金額の円換算額は、その外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額として、その者の各年分の各種所得の金額を計算するものとされています(所得税法第57条の3)。 「外貨建取引」とは、外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れその他の取引をいいます。 どういったものが「外貨建取引」に該当するかについての説明として、所得税法施行令第167条の6第2項では以下のように記載されています。 国税庁の質疑応答事例(「外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い」)によれば、A銀行に米ドル建で預け入れていた定期預金を満期日に全額払い出し、同日、本件預金の元本部分をB銀行に預け入れた場合については、B銀行に預け入れた時点で本件預金の元本部分に係る為替差益は所得として認識する必要はない、とされています。 この理由として、以下の通り述べられています(下線筆者)。 上記から、外貨預金が満期に払い出しが行われたとしても、以下のような要件を備えていれば、為替差損益を認識する必要はないと考えられます。 一方、外貨預金を引き出し、他の金融商品に投資を行う場合は、為替差損益が実現したものとして取り扱われる可能性が高いと考えられます。 その理由として、国税庁の質疑応答事例(「預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合の為替差損益の取扱い」)によれば、 とされています。 したがって、おたずねの場合、米ドル建定期預金を引き出して他通貨に交換又は預金以外の他の金融資産に投資を行う場合は、その時点での外貨建の金額を円換算した金額と取得時の円換算の金額との差額が、為替差損益として取り扱われると考えられます。 為替差益は雑所得として確定申告による総合課税の対象になります。一方、為替差損は、雑所得の範囲内で控除できますが、他の所得区分との損益通算はできません。 (了)
マイナンバーの会社実務 Q&A 【第18回】 「本社の移転や社名の変更をした場合の手続き」 税理士・社会保険労務士 上前 剛 〈Q〉 当社は、東京都渋谷区から東京都港区へ本社を移転し、同時に社名を変更しました。先日、法務局にて登記が完了しました。これから税務署と都税事務所へ異動届出書を提出する予定です。 法人番号に関して必要な手続きがあれば教えてください。 〈A〉 法人番号に関して必要な手続きはない。法務局で手続きをした変更情報は、一定期間経過後、国税庁の「法人番号公表サイト」で確認できるようになる。また、本社を移転したり、社名を変更しても法人番号の変更はない。 参考までに、個人が引越しをして住所が変更になったり結婚して氏名が変更になった場合、14日以内に市区町村に届け出てマイナンバーカードの記載内容を変更してもらわなければならない。なお、個人番号の変更はない。 (了)