〈会計基準等を読むための〉 コトバの探求 【第9回】 「会計基準の略称にも意味がある?」 公認会計士 阿部 光成 ◆はじめに 会計基準の名称は、省略した形で記載されることが多い。 だが、会計基準によっては略称を用いず、会計基準の番号をそのまま記載している場合もある。 今回は、会計基準の略称について取り上げ、略称の仕方の意味を考えてみる。 ◆略称の例 次のような略称の例が見られる。これらでは、会計基準の名称を利用しつつ、その内容がわかるように端的な記載をしているように思われる。 そのほか、次のような例も見られる。 ◆企業会計基準第24号の略称 企業会計基準第24号については、「正当な理由による会計方針の変更等に関する監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第78号)や、「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第63号)では、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)及び「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第24号)について、それぞれ、「過年度遡及会計基準」及び「過年度遡及適用指針」の略称を用いている。 前述のとおり、会計基準の略称を用いる場合には、会計基準の名称を利用しつつ、その内容がわかるように端的な記載をしているように思われる。 企業会計基準第24号は、公表された当時、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の名称であった。このため、会計基準の名称を利用しつつ略称を使用しようとすると、例えば、「変更・誤謬訂正基準」の略称も考えられたのではないだろうか。 しかしながら、「誤謬」や「訂正」の用語を使用することは、訂正有価証券報告書などを連想しかねないので、企業会計基準第24号で用いられている「過年度遡及修正に関する論点の整理」(27項)などを参考に、「過年度遡及会計基準」の略称を用いたのではないだろうか。 現在では、企業会計基準第24号は、「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の名称となっており、「会計方針の開示」が加わっているところである。 (了)
〈一問一答〉 副業・兼業に関する担当者のギモン 【第6回】 「簡便な労働時間管理の方法《管理モデル》」 弁護士法人東町法律事務所 弁護士 木下 雅之 ● ● ● 解 説 ● ● ● 1 管理モデルの趣旨 労働時間の通算規定(労働基準法第38条第1項)を前提とする副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方(原則的なルール)は【第5回】に述べたとおりであり、副業・兼業ガイドラインは、他の使用者の下での実労働時間の把握の困難等の事情に鑑み、労使双方の手続上の負担を軽減するための一定の配慮を示している。 それでも、副業・兼業の日数が多い場合や、本業先、副業・兼業先の双方において所定時間外労働がある場合等においては、労働時間の申告等や通算管理において、労使双方の手続上の負荷が大きくなることが考えられる。 そこで、副業・兼業ガイドラインは、労働時間の通算管理における通常の方法によることのほかに、労使双方の手続上の負担を軽減し、労働基準法に定める最低労働条件が遵守されやすくなる簡便な労働時間管理の方法として、いわゆる「管理モデル」の選択肢を提案している(副業・兼業ガイドライン3(2)オ(ア))。 2 管理モデルの内容 管理モデルの基本的な考え方は、次のとおりである(副業・兼業Q&A・Q1-6)。 これにより、使用者Aと使用者Bは、副業・兼業の開始後においては、それぞれあらかじめ設定した上限の範囲内で労働させる限り、他の使用者の事業場における実労働時間の把握を要することなく、労働基準法を遵守することが可能となる。 なお、管理モデルを採用した場合、他の使用者の下における実労働時間を把握する手続上の負担を回避することができるため、使用者としては、管理モデルの利用を副業・兼業の許可条件として設定する(管理モデル以外の副業・兼業を認めない)ことも考えられるが、副業・兼業ガイドラインは、そのような運用も許容している(副業・兼業Q&A・Q1-21)。 3 管理モデルの導入手順 管理モデルを実施するためには、使用者A、使用者Bおよび労働者の三者が管理モデルによって副業・兼業を行うことを了解し、それに従って行動することが前提となる。 そのため、副業・兼業ガイドラインは、管理モデルの一般的な導入手順として、副業・兼業を行おうとする労働者に対して使用者Aが管理モデルにより副業・兼業を行うことを求め、当該労働者がこれに応じるとともに、当該労働者を通じて使用者Bにも管理モデルにより副業・兼業を行うことが伝達され、使用者Bがこれに応じることによって導入されることが想定されるとしている(副業・兼業ガイドライン3(2)オ(ウ)a)。 副業・兼業ガイドラインは、このような導入手順に従って管理モデルを導入する場合、副業・兼業の開始後のトラブルを防止する等の観点から、管理モデルの実施にあたって必要となる情報は書面(電磁的方法でも可)により使用者A、使用者Bおよび労働者の三者間で共有しておくことが望ましいとしており、共有の方法として、使用者Aが労働者に対して管理モデルによる副業・兼業の実施にあたって必要な情報を通知し、当該通知を労働者が使用者Bに共有することが想定されるとしている(副業・兼業Q&A・Q1-9)。 なお、当該通知の様式例については、厚生労働省のウェブサイトから入手することが可能である。 4 管理モデル導入の留意点 管理モデルを採用した場合と採用しなかった場合(副業・兼業の原則的な労働時間通算が適用される場合)とでは、次の設例において、副業・兼業先の割増賃金の支払義務の有無に違いが生じ得る(副業・兼業Q&A・Q1-13)。 管理モデルを採用しなかった場合、原則的な通算方法の下では、A事業場における所定労働時間4時間→B事業場における所定労働時間3時間→B事業場における所定外労働時間1時間の順で通算することとなり(【第5回】参照)、通算の結果、1日の法定労働時間(8時間)の範囲内におさまるため、使用者Bの下で発生した所定外労働1時間は法定時間外労働には該当せず、使用者Bに割増賃金の支払義務は発生しない。 他方、管理モデルを採用した場合、管理モデルによる通算方法の下では、A事業場における所定労働時間4時間→A事業場における所定外労働時間の上限1時間→B事業場における所定労働時間3時間→B事業場における所定外労働時間1時間の順で通算することとなるため、使用者Bの下で発生した所定外労働時間1時間は法定時間外労働に該当し、使用者Bに割増賃金の支払義務が発生する。 この設例のように、使用者Aの所定労働時間および所定外労働時間の上限を合算しても法定労働時間に達しないような場合において、管理モデルを導入して労働時間通算を行うと、原則的な通算方法と管理モデルによる通算方法では通算順序が異なるため、使用者Bの割増賃金の支払義務の有無に違いが生じることがあり得る。したがって、副業・兼業先の企業の立場からは、管理モデルの採用を承諾するにあたり、この点は留意が必要である。 もっとも、副業・兼業ガイドラインは、設例のような場合においても、使用者Bが、労働者から、A事業場における日ごとの労働時間を申告等により把握しており、その把握の結果、A事業場において所定外労働が発生しなかったことが確認できた日(すなわち、A事業場における実労働時間が4時間以下であると確認できた日)については、B事業場における所定外労働1時間について、1日の法定労働時間の範囲内となるため、使用者Bがその1時間について割増賃金を支払わないとすることも差し支えないとしている(副業・兼業Q&A・Q1-13)。 (了)
プラス思考の経済効果 【第21回】 「阪神日本一の経済効果」 関西大学名誉教授・大阪府立大学名誉教授 宮本 勝浩 1 はじめに 2023年11月5日、阪神タイガース(以下「阪神」といいます)はオリックス・バファローズ(以下「オリックス」といいます)との「関西ダービー」を制して38年ぶりの日本一になりました。阪神ファンは歓喜に沸き返っています。今回は阪神が日本一になったことによる経済効果について解説しましょう。 2 阪神とオリックスのリーグ優勝の経済効果 今年阪神は18年ぶりのセ・リーグ優勝を達成し、オリックスは3年連続でパ・リーグの優勝を果たしました。その経済効果を最初に紹介しましょう。以下は項目別の直接効果の金額です(阪神の金額については、連載【第20回】もあわせてご覧ください)。 〈阪神とオリックスの優勝による経済効果〉 阪神とオリックスの優勝による経済効果の計算の基になる直接効果の主な項目と金額について、上記の表から検証してみましょう。 まず、阪神もオリックスもファンの飲酒代が1番多いのが分かると思います。つまり、ファンは応援するチームが勝利すると、気分が高揚して、飲み屋やビヤホールなどの外でも自宅でも飲酒量が増加するのです。本稿では、1人1回の飲酒料金を平均約3,350とし、優勝するとファンはシーズンとクライマックスシリーズを通して3回は飲酒回数を増やすと仮定して計算しています。 続いては、やはり球場に応援に来てくれる観客の消費額です。チケット代、交通費、飲食費、グッズ代などは2番目に大きな消費額になっています。 3番目は、百貨店などの「優勝祝賀セール」です。今年の阪神リーグ優勝の翌日には阪神百貨店には開店前から約2,000人が行列を作りました。日本シリーズに勝って日本一になった時も阪神百貨店は「日本一祝賀セール」を開催しましたが、やはり開店前に約2,000人の行列ができました。オリックスの優勝が決まった時も近鉄百貨店がセールを行いました。 今年の9月の阪神百貨店の売上は対前年同月比で58.6%の増加、阪急百貨店は26%の増加となりました。近鉄百貨店のオリックス優勝記念セールによる9月の売上増加額は対前年同月比で22.7%でした。そして、大阪では阪神百貨店と近鉄百貨店だけではなく、ほとんどの百貨店の9月の売上が対前年比で大幅なアップを記録しました。さらに多くのスーパーや商店街でも祝賀セールを開催して売上を伸ばしました。つまり、大阪では、優勝チームに関係した百貨店だけではなく、ほとんどすべての百貨店、多くのスーパー、商店街も関西の球団(特に阪神)が優勝すると、その経済効果の恩恵を受けるのです。これが関西の野球ファンの特徴です。 なお、オリックスの直接効果の項目で阪神を上回っているのは株価上昇による消費増加効果で、やはり近鉄グループホールディングスの株式会社としての大きな影響力が表れています。 阪神の経済効果がオリックスよりも大きいのは、阪神ファンが全国で約950万人、他方オリックスファンが約200万人と推定されているので、ファンの人数の相違が根本的な理由だと考えられます。また、阪神は18年ぶりの優勝で大いに盛り上ったことも影響しています。特に、阪神ファンは道頓堀に飛び込む人も出てくるなど非常にテンションが高いようで、喜ぶ時は財布のヒモが緩むのでしょうか。オリックスの優勝は3年連続で、ファンは優勝慣れしていて、盛り上がりが阪神ファンほどではなかったのかもしれません。 これらの消費額を基にして「産業連関分析」で経済効果を計算したところ、関西地域での優勝の経済効果は、阪神が約872億円、オリックスが約323億円となりました。 3 日本シリーズ「関西ダービー」の経済効果 阪神とオリックスの関西同士の対戦による日本シリーズで関西地域は大いに盛り上がりました。日本シリーズの直接効果の項目と金額は以下の通りです。 〈日本シリーズの経済効果(阪神・オリックス共通)〉 シーズンとクライマックスシリーズの球場での入場料などの売上は、基本的に主催球団の収入になりますが、日本シリーズの入場料の収入は主催者の一般社団法人日本野球機構(NPB)の収入になります。そして、その入場料の収入の一部が両球団と選手に分配されることになります。 4 阪神日本一の経済効果 阪神が日本一になった経済効果を、阪神のセ・リーグ優勝の経済効果、オリックスのパ・リーグ優勝の経済効果、そして日本シリーズ「関西ダービー」の経済効果の合計額で計算すると、以下の通り全国で1,449億円、関西地域で1,304億円となりました。つまり、関西チーム同士の日本シリーズは、大阪を中心とした関西地域に大きな経済効果をもたらしたのです。 〈全国の経済効果〉 〈関西地域の経済効果〉 5 まとめ 阪神のセ・リーグ優勝、オリックスのパ・リーグ優勝、阪神の日本一の経済効果をまとめると次のようになります。 阪神とオリックスの「日本シリーズ~関西ダービー~」は阪神の日本一で終わりましたが、関西地域は大いに盛り上がり、経済効果は大きな金額を記録しました。この勢いを来年の大阪・関西経済も引き継ぎ、日本経済の活性化につないでいってほしいと願っています。 (了)
《速報解説》 「企業のサステナビリティへの取組み及び監査等委員会の関与の在り方〈人的資本編〉」が監査役協会から公表される ~サステナビリティ等と関連付けて人材戦略の議論がされているプライム市場上場会社は41.2%~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023年11月27日、日本監査役協会 監査等委員会実務委員会は、「企業のサステナビリティへの取組み及び監査等委員会の関与の在り方 〈人的資本編〉」を公表した。 「人的資本」に関する議論を整理し、有価証券報告書における開示及びサステナビリティに関するアンケート結果が記載されている。 なお、2022年12月23日には、「企業のサステナビリティへの取組みおよび監査等委員会の関与の在り方 〈現状分析編〉」が公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 人的資本とは 「人的資本」とは、人材を付加価値創造の源泉である「資本」として捉える表現である。 「人的資本可視化指針」では、「人的資本」について、「人材が、教育や研修、日々の業務等を通じて自己の能力や経験、意欲を向上・蓄積することで付加価値創造に資する存在であり、事業環境の変化、経営戦略の転換にともない内外から登用・確保するものであることなど、価値を創造する源泉である「資本」としての性質を有することに着目した表現である。」としている。 従前からの人材への取組みを「人的資本」という観点から捉え直し、人材戦略と企業戦略を関連付けて中長期的な企業価値向上に結びつけていくこと、さらにそれらの取組みを対外的に開示することが求められているとしている。 Ⅲ 人的資本経営の取組み 人的資本経営を実践していくには、「経営戦略と連動した人材戦略」と「人的資本の情報開示」の取組みが重要である。 「経営戦略と連動した人材戦略」の取組み例として、トップのコミットメント、従業員との対話、バリューチェーンにおける取引先等との連携などが記載されている。 「人的資本の情報開示」については、社内環境整備方針、自社が直面する重要なリスクと機会などについて、取締役・経営層レベルで密な議論を行った上で、自ら明瞭かつロジカルに説明することが期待されている。 Ⅳ 有価証券報告書における人的資本情報の開示 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等について説明し、2022年7月から2023年6月末までに提出された公開会社の有価証券報告書3,858社の分析結果が記載されている。 例えば、「管理職に占める女性労働者の割合」は、平均で9.0%であったとのことである。 アンケート結果も記載されている。 例えば、サステナビリティの目標等が中長期経営計画に組み込まれているかについては、「中期経営計画等(2025年まで目安)」に組み込まれているとする会社(78.5%)が最も多かったとのことである(前回の調査と比較して10.1ポイント増加)。 また、取締役会のアジェンダにサステナビリティに関する議題が含まれていることがあるかについては、85.2%の会社が「ある」と回答し、前回から11.3ポイント増加したとのことである。 有価証券報告書の「従業員の状況」の記載事項として、「管理職に占める女性労働者の割合」、「男性労働者の育児休業取得率」、「労働者の男女の賃金の差異」を記載することが義務付けられたが、そのほかに開示している人的資本に関する目標(KPI)などとしては、「従業員の状況(男女比率、平均年齢、平均勤続年数、平均給与など)」が66.6%、次に「人材教育への取組み、社員研修の内容・目標・実績など」が55.3%、「働き方改革への取組み(多様な働き方、ワークライフバランスなど)」が48.2%と続いているとのことである(有価証券報告書以外の開示媒体での開示も含めて質問)。 人材戦略に関して、採用計画や人員配置といった従来の枠を超えて、サステナビリティや中長期的な事業戦略と関連付けた議論が取締役会において行われているかについて質問したところ、「議論されている」会社は、プライム市場上場会社で41.2%にのぼり、スタンダード市場上場会社やグロース市場上場会社においても25~28%ほどあったとのことである。 Ⅴ 株主総会での株主からの提案・質問 直近の株主総会において、サステナビリティに関する株主提案があったかについて質問したところ、「なかった」会社が98.1%であったとのことである。 同じく直近の株主総会において、サステナビリティに関する質問があったかについては、「なかった」会社は87.5%であるとのことである。 Ⅵ 今後の課題 今後の課題として次のことが記載されている。 (了)
《速報解説》 四半期決算短信の一本化に伴い、 東証が「四半期開示の見直しに関する実務の方針」を公表 ~1Q・3Qの四半期決算短信の監査人によるレビューは原則任意~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023年11月22日、東京証券取引所は、「四半期開示の見直しに関する実務の方針」(以下「実務の方針」という)を公表した。 「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が2023年11月20日に成立し、2024年4月1日以後に開始する四半期から四半期報告書が廃止され、半期報告書の提出が義務付けられることとなる。 金融商品取引法上の四半期報告書(第1・第3四半期)は廃止され、四半期開示については、原則として、東京証券取引所の規則に基づく四半期決算短信に一本化されることとなるので、上記の方針が公表されたところである。 今後、制度要綱を公表のうえ、パブリック・コメント手続を実施する予定であり、その際には、改めてお知らせするとのことである。 また、金融庁、企業会計基準委員会及び日本公認会計士協会などの関係者において、今回の見直しに伴う必要な検討が進められていることから、それらの動向を踏まえ、本実務の方針の一部を変更して取引所の規則改正等の手続を進める可能性があるとのことである。 なお、日本公認会計士協会から次のものが公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 1Q・3Q決算短信の開示内容 1 サマリー情報 サマリー情報の内容として次の記載がある。「サマリー情報の変更イメージ」が記載されている(実務の方針14ページ)。 2 財務諸表及び注記事項など(添付資料) 連結貸借対照表、連結損益計算書及び連結包括利益計算書を開示する。 キャッシュ・フロー計算書は、投資判断に有用な情報として、投資者ニーズに応じた開示を要請する。 「財務報告の枠組みのイメージ」が記載されている(実務の方針13ページ)。 現行の注記事項に「セグメント情報等の注記」「キャッシュ・フローに関する注記」を追加し、次のようにする。 次の事項の開示についても記載されている。 「投資判断に有用と考えられる情報」の具体例が示されている。 Ⅲ 1Q・3Q決算短信の開示タイミング 1Q・3Qは、短信に一本化されることから、決算短信において開示を予定している事項(義務付けられる事項(実務の方針10ページ)のほか、投資判断に有用な情報として開示する事項(実務の方針11ページ)を含む)が定まった場合に開示する。 Ⅳ レビューの一部義務付け 1Q・3Qの四半期決算短信については、監査人によるレビューは、原則として任意とする。 監査人のレビューが行われる場合、レビュー対象は四半期連結財務諸表及び注記と記載されている(実務の方針13ページの※3を参照)。 ただし、会計不正等により、財務諸表の信頼性確保が必要と考えられる場合には、監査人によるレビューを義務付けるとし、義務付けの要件が記載されている(実務の方針16ページ)。 レビュー(任意でのレビューを含む)は、準拠性に関するレビューを基本としつつ、新制度の財規等に準拠し、開示を省略しない場合には、適正表示に関するレビューとすることも考えられるとのことである。 「新制度の財規等」については、実務の方針13ページを参照していただきたい。 また、「適正表示の枠組み」と「準拠性の枠組み」の定義、保証水準及びレビュー報告書の文言イメージは、実務の方針17から19ページに記載されている。 「適正表示の枠組み」と「準拠性の枠組み」の相違などについては、非常に分かりにくいとの意見が多く聞かれたとのことから、日本公認会計士協会は、前述の「東京証券取引所「四半期開示の見直しに関する実務の方針」の公表について(お知らせ)」を公表し、図表などを用いて詳細に解説している。 Ⅴ エンフォースメント 取引所における開示に係る審査にあたっては、上場会社への確認が基本となるが、取引所において、エンフォースメントをより適切に実施していくため、監査人との連携を強化し、会計不正の概要を早期に把握できる仕組みを構築する。 法令上の不公正取引(風説の流布)の禁止についても、適切に理解されるよう周知を行う。 Ⅵ 見直し後の2Q・通期決算短信の取扱い 2Q・通期は、法定開示が存続することから、2Q・通期の決算短信については、現行の取扱いを維持し、法定開示(半期報告書・有価証券報告書)に対する速報という位置付けも変わらない。 2Q・通期の短信は、レビュー・監査の対象外とする(1Q・3Qにおいて、規則によりレビューが義務付けられる場合も同様)。 1Q・3Q短信との連続性を踏まえて、「中間決算短信」等ではなく、「第2四半期(中間期)決算短信」とする。 開示内容については次のとおりである。 Ⅶ 事業環境の変化に関する開示のポイントなど 事業環境の変化の発生後速やかに、影響の見込まれる領域の事業規模や利益感応度等の投資判断の前提となる客観的な事実を開示することや、影響を把握次第、その影響に関する定性的又は定量的な情報について適時に開示することが望まれるとのことである。 開示が望まれる事項の例、期待される開示のタイミングなどが記載されている。 また、バスケット条項の補足的説明の見直し(イメージ)が記載されている(実務の方針29ページ)。 Ⅷ 四半期開示の見直しに伴う監査及び四半期レビュー契約書への影響 冒頭で述べたとおり、2023年10月20日に開会した第212回臨時国会において、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が11月20日に成立している。 金融商品取引法(以下「金商法」という)の改正事項のうち、四半期報告書制度の廃止(金商法24条の4の7、24条の4の8の削除)は、2024年4月1日以降に開始する四半期から施行される(金融商品取引法等の一部を改正する法律附則1条3号、2条1項)。 上場会社(12ヶ月決算の場合を想定)との間の監査及び四半期レビュー契約書について、2023年10月1日以降に開始する事業年度に係るものが、当該改正の影響を受けるとのことである。 次の例が記載されている。 このため、上場会社との間で、2023年10月1日以降に開始する事業年度に係る監査及び四半期レビュー契約書を締結する場合、例えば、法規・制度委員会研究報告第1号「監査及びレビュー等の契約書の作成例」様式1~3の契約書において、「1.本業務の目的及び範囲」や「4.監査報告書等の提出時期」等の記載の調整や、場合によっては法規・制度委員会研究報告第1号「監査及びレビュー等の契約書の作成例」の改正後に覚書等で内容を追加することが必要となるとのことである。 (了)
《速報解説》 国税庁、インボイス制度に関し「多く寄せられるご質問」全13問を公表 ~従業員立替や出張旅費の取扱いなど、一部柔軟な対応が可能であることが明らかに~ 税理士 石川 幸恵 令和5年11月13日、国税庁はホームページで、適格請求書等保存方式(以下「インボイス制度」)に関し「多く寄せられるご質問」全13問を公表した。 今回の公表資料では、「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(以下、「インボイスQ&A」)」のうち、「問合せの多いQ&A TOP10」とそのリンクのほか、「多く寄せられるご質問」として追加問や既存問の改訂である合計13問が収録されている。「多く寄せられるご質問」はインボイス制度が開始されて1ヶ月半という時期を反映し、実務に寄り添った問が中心となっている。特に下記の4点に関しては、制度開始前から運用面での困難が予想されていた事項について、柔軟な対応が可能であることが明らかとなった。 ◆買手による適格請求書等、区分記載請求書の記載事項の修正 適格請求書等の記載事項に誤りがあったときは、売手が修正した適格請求書等の交付をするのが原則であり、買手が正しい事項を記載した仕入明細書を作成して売手の確認を受ける方法も可能とされてきた。そのため、架電により修正事項を伝えてお互いに適格請求書や適格請求書の写しに加筆・修正することは不可と考えられてきた。 問⑥では、受領した適格請求書に買手が自ら修正を加えたものであったとしても、その修正した事項について売手に電話等で修正事項を伝え、売手が保存している適格請求書の写しに同様の修正を行ってもらえば、その書類を保存することで仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えないとされた。 ただし、連絡により売手・買手両者が修正さえすれば、どの記載項目についても追記・修正が可能なのかはまだ疑義が残るところである。 区分記載請求書については、今後も「軽減対象資産の譲渡等である旨」と「税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額」について受領者が自ら請求書等に追記して保存することが認められる。 ◆適格請求書発行事業者が交付する適格請求書としての記載を満たさない書類の扱い 適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号のない請求書等についても仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けられることが示された。 特に10月初旬の制度開始直後には、適格請求書発行事業者の登録番号は書かれているものの、消費税率や消費税額の記載が漏れているなど適格請求書としての記載事項を満たさない領収書やレシートが見受けられた。売手に連絡をして修正を受けることが難しい場合は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けることになろう。 ◆従業員立替 経費を立て替えてもらった場合は、立替払いをした者宛の適格請求書及び立替払いをした者が作成した立替金精算書を保存することで仕入税額控除が可能とされている(インボイスQ&A問94、消基通11-6-2)。 このため、従業員が小売店などで事業に必要なものとして消耗品を購入した際に、適格簡易請求書の宛名が会社ではなく従業員本人となっていた場合には立替金精算書が必要と考えられてきたが、従業員の名簿等(電子データによる名簿も含む)の保存が併せて行われていれば、従業員が宛名となった適格簡易請求書の保存により仕入税額控除が認められることが確認された。 ◆実費精算の出張旅費 従業員に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、通常必要であると認められる部分の金額については、適格請求書の交付を受けることが困難な取引として一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる(消令49①、消規15の4)。旅費に関しては、旅費規程で、概算払いではなく交通機関やホテルから交付される領収書等の提出を必要とする実費精算としている企業も多く、適格請求書ではない新幹線の利用票やホテルの宿泊予約の資料が提出された場合には仕入税額控除ができないのではないか、という疑義があったが、問⑪にて、実費精算に係るものであっても、その旅行に通常必要であると認められる部分(所得税法基本通達9-3に基づき判定)の金額については帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能であることが確認された。 なお、出張旅費につき帳簿保存のみで仕入税額控除を受ける場合は、帳簿に「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨」の記載が必要(インボイスQ&A問110)となることにも注意されたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓
2023年11月22日(水)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.545を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第32回】 「納税申告義務の履行担保措置としての加算税」 -「つまみ申告」重加算税賦課肯定判例と二重処罰禁止違反否定判例- 大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫 Ⅰ はじめに 前回は租税手続法の領域における税法基本判例として、申告納税制度の下で、納税義務の確定手続の最初の段階にある納税申告について、その効力に関する判例を取り上げ検討したが、今回は、納税申告義務という私人の公法上の義務の履行を担保するための措置としての加算税(税通65条以下。以下では国税の納付義務違反に対する不納付加算税は検討の対象としない)について、特に重加算税(同68条)の賦課要件の解釈適用をいわゆるつまみ申告に関して検討することにする。 「つまみ申告」とは、「主に課税実務で用いられている言葉で、納税者が自己の所得の一部を抽出して(つまんで)、税額を過少に申告すること」をいう(小貫芳信「判批」法務省訟務局内行政判例研究会編『平成6年行政関係判例解説』(ぎょうせい・1995年)110頁、112頁。同じ内容は同「連載課税訴訟研究 附帯税をめぐる訴訟(1)~重加算税の賦課要件を中心として」税理38巻14号(1995年)198頁、201頁以下にも収録されているが、以下の引用・参照は上記「判批」によることにする)。 つまみ申告は、特に会計帳簿を備え付けている納税者を念頭に置く場合には、「納税者において、正確に記載された会計帳簿に基づく真実の所得金額とは異なることを知りながら、所得金額又は収入の一部をつまみ出し(『つまみ行為』という。)、殊更過少に記載した納税申告書を提出する行為」(川神裕「判解」最判解民事篇(平成6年度)586頁、589頁。下線筆者)と表現され、「殊更の過少申告」と呼ばれることもある。なお、この点については、「『つまみ申告』等については、事実行為として理解し得るのであるが、『ことさらの過少申告』という用語にはそれ自体作為的な概念を有し、法68条に規定する『隠ぺい・仮装』との異同が問題となる。従って重加算税の賦課要件を論じるに当たっては、『ことさらの過少申告』というような中間的概念をあえて使用する必要もないように考えられる。」(品川芳宣「判批」TKC税研情報5巻6号(1996年)1頁、7頁)との指摘もある。 殊更の過少申告は、最判昭和48年3月20日刑集27巻2号138頁(以下「昭和48年最判」という)によって、所得税の逋脱罪の構成要件である「偽りその他不正の行為」に該当すると判断されたが、最判平成6年11月22日民集48巻7号1379頁(以下「平成6年最判」という)は、「前記会計帳簿類から明らかに算出し得る所得金額の大部分を脱漏し、所得金額を殊更過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出したこと」が殊更の過少申告として重加算税の賦課要件である「税額等の計算の基礎となるべき所得の存在を一部隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき納税申告書を提出した場合」に該当すると判断し、この判断に関して昭和48年最判を参照した。 つまみ申告ないし殊更の過少申告は、従来から、「不申告・虚偽申告・虚偽答弁等」の「必ずしも積極的な不正工作を伴わない行為」のカテゴリーに属する行為として重加算税の賦課要件を充足するか否かが議論されてきた(この議論については差し当たり品川芳宣『附帯税の事例研究〔初版〕』(財形詳報社・1989年)264頁以下参照。なお、同書264頁は見出しを「不申告・虚偽申告・虚偽答弁等」としていたが、平成6年最判の後改訂された同書の新版(1996年)279頁では見出しを「不申告・虚偽申告・つまみ申告・虚偽答弁等」としてその中に「つまみ申告」を明記するようになった。第4版(2012年)349頁も同じ)。 当時の議論の状況は、平成6年最判に関する調査官解説の中で次のように整理されている(川神・前掲「判解」594頁。小貫・前掲「判批」113-114頁、武田昌輔監修『DHCコンメンタール国税通則法』(第一法規・加除式)3643の5-3643の7頁も参照)。 ここでは、上記の各見解を説く論者及び文献として上記の調査官解説が注で参照しているもののうち、以下の叙述との関係で必要な限りにおいて、(1)の見解については碓井光明「重加算税賦課の構造」税理22巻12号(1979年)2頁、5頁、(2)の見解については品川・前掲書(初版)283頁、(3)の見解については小貫・前掲「判批」116頁を挙げておこう。 他方、国税の課税実務や国税不服審判所の裁決例、さらには判例はつまみ申告につき重加算税の賦課要件該当性を肯定し積極説の立場を採ってきたが(川神・前掲「判解」594-597頁、岩橋健定「判批」法学協会雑誌114巻4号(1997年)462頁、466頁等参照)、そのような状況の下で、平成6年最判の原審・大阪高判平成5年4月27日訟月40巻4号856頁は、消極説の立場から次のとおり判示し、「右租税実務取扱を正面から否定するとともに、隠ぺい・仮装行為と過少申告との間に因果関係が主張・立証されなければならないという新しい判断を示した点で注目され」(岩﨑政明「判批」ジュリスト1069号(1995年)153頁、154頁)、「大きな話題」(岩橋・前掲「判批」467頁)となった。 この判断を受けて、最高裁はこの問題にいわば本腰を入れ、最判昭和52年1月25日訟月23巻3号563頁や最判昭和63年10月23日税資166号370頁のような単なる原審判断是認のいわゆる例文判決ではなく、平成6年最判で明示的に理由を示して積極説の立場を判示し、さらに最判平成7年4月28日民集49巻4号1193頁(以下「平成7年最判」といい、平成6年最判と合わせて「『つまみ申告』重加算税賦課肯定判例」という)で積極説に関する一般論を判示した。 「つまみ申告」重加算税賦課肯定判例については、「過度に厳格な解釈をすることにより重加算税制度の趣旨に反する結果となることを避けるため、文理に完全には反しない限度で国税通則法68条1項の合目的的解釈をしたものと解されるが、他方、その趣旨とするところを超えて重加算税の賦課対象が安易に拡大されることは避けなければならないであろう。」(川神・前掲「判解」607頁。下線筆者)と解説されているところであるが、以下では、この解説を踏まえてそれらの判決を検討することにしたい。 すなわち、この解説は、重加算税の賦課要件について「文理解釈」(川神・前掲「判解」597頁)、「実質論」(同599頁)及び「ほ脱罪との関係」(同600頁)に関する議論をみた後、「以上の議論を前提として、文理上の問題点を意識しつつ、文理に反しない限りで、重加算税制度の制度趣旨等に照らして妥当な解釈が考えられないかどうかが問題となる。」(同601頁)として問題を設定した上で、行われたものであることをも踏まえて、以下では、税法の解釈論の観点から平成6年最判と平成7年最判を比較検討した上で、両判決を重加算税と刑罰との併科が二重処罰の禁止に違反しないものとする判例(最大判昭和33年4月30日民集12巻6号938頁、最判昭和45年9月11日刑集24巻10号1033頁等。以下「二重処罰禁止違反否定判例」という)との関係で位置づけ、それらの射程を明らかにすることにしたい。 Ⅱ 「つまみ申告」重加算税賦課肯定判例の解釈論 1 平成6年最判の立場 まず、平成6年最判の判決理由は次のとおりである(下線筆者)。 この判決理由については、前記Ⅰでみた議論状況を踏まえて、次の解説がされている(川神・前掲「判解」604-605頁)。 この解説(特に「少なくとも」以下)は、平成7年最判に関する調査官解説の中で平成6年最判と合わせて「『事実関係総合判断説』とでもいうべき見解・・・・・・に近い見解を示したもの」(近藤崇晴「判解」最判解民事篇(平成7年度)471頁、481頁)と解する解説と基本的に同じ内容を説くものと解される。ここでいう「事実関係総合判断説」は前記の(3)の見解であり、その主唱者は次のように説いている(品川・前掲書(初版)283頁、同(第4版)380頁。伊藤暢男「判批」月刊税務事例25巻5号(1993年)27頁、30頁も参照)。 平成6年最判の前記判決理由については、事実関係総合判断説に基づく理解を前提にして次のような厳しい批判が加えられた(岡村忠生「判批」民商法雑誌113巻1号(1995年)96頁、108-109頁。下線筆者)。平成6年最判の本質的問題点を鋭く抉り出す批判であるから、少し長くなるが主な部分を引用しておこう。 この批判の核心にあると解される重加算税賦課判断の「主観化」は、平成6年最判が先に引用した判決理由の末尾の括弧書で昭和48年最判を参照しているところからも、窺い知ることができる。この点について次の指摘(住田裕子「判批(下)」商事法務1420号(1996年)9頁、11頁)は正鵠を射たものといえる(川神・前掲「判解」611頁(注24)も参照)。 平成6年最判は、このように重加算税賦課の判断を「主観化」し、もってつまみ申告をもその対象に取り込み重加算税の賦課対象を拡大したものと解されるが、ただ、そのための一般論まで示すものではなく、その判断は「本件事案に応じた事例判断」(川神・前掲「判解」605頁)すなわち事例判決と解されている(岩﨑・前掲「判批」155頁は「本判決によっては、右の論争点に関する最高裁としての具体的見解ないし方針が示されているとは解されないのである。」とする)。 2 平成7年最判の立場 これに対して、平成7年最判は、次の「三」のとおり重加算税の賦課要件の解釈に関する「一般論」(近藤・前掲「判解」481頁)を判示し、税理士による確定申告書の作成・提出の事案ではあるが広い意味でつまみ申告に属する事案(「税理士に対する秘匿行為の評価」については同484頁、住田・前掲「判批(下)」13頁参照)について、次の「四」のとおり重加算税の賦課要件該当性を肯定した。 平成7年最判が判示した上記の「一般論」については次の解説(近藤・前掲「判解」481-482頁。下線筆者)が加えられている(川神・前掲「判解」606-607も参照)。 この解説によれば、「本判決[=平成7年最判]は、重加算税の賦課要件について一般論を示してはいるが、既に述べたとおり完結的にその必要十分条件を明らかにしているものではなく、基本的には、〔判例④=最三小判平成6・11・22民集48巻7号1379頁〕と同様に事例判決の性質を有するものである。」(近藤・前掲「判解」485頁)ということになろうが、その点はともかく、平成7年最判が示した一般論は、同最判が基本的には平成6年最判と同じく事実関係総合判断説に近い立場に立ちつつも、重加算税賦課判断の「主観化」に対して一定の歯止めをかけようとしたものであると解される(そうであるからこそ、平成7年最判は、基本的には同じくつまみ申告の事案でありながら、平成6年最判を参照しなかったのではないかと考えられる)。 その歯止めは、第1に、「重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要するものである。」という判示に見出すことができる(岡村忠生「判批」税法学534号(1995年)110頁、114頁参照)。ここでは、「隠ぺい、仮装と評価すべき行為」(これは「架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為」に限らない)と「過少申告行為」は別の行為として把握され、しかも後者は前者に「基づき」されたものであることまでは要しないものの「合わせた」ものであることを要するものとされている。 第2の歯止めは、平成6年最判が強調した「真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図」がある場合を、「納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合」(下線筆者)と表現し直すことによって、「その意図」を推認するための総合判断の対象を「特段の行動」に限定し(住田・前掲「判批(下)」11頁参照)、かつ、「その意図」と「過少申告」との因果関係を要求したものと解される点に、見出すことができる。この点について補足しておくと、平成7年最判が前記の「合わせた」という表現を用いたのは、「過少申告」が「基づく」のが「特段の行動」(これは「隠ぺい、仮装と評価すべき行為」を意味すると解される)ではなく「その意図」であるという論理構成に基づき、重加算税の賦課要件としての因果関係(「基づき」)について、「・・・・ような場合には」という表現とも相俟って、「いたずらに厳格な解釈」(近藤・前掲「判解」482頁)ではなく「国税通則法68条1項の合目的的解釈」(同頁)を行った結果であると解される。 問題は、平成7年最判が平成6年最判の打ち出した重加算税賦課判断の「主観化」の方向に対して一定の歯止めをかけようとしたのはなぜかである。この問題を解く手がかりは、重加算税と逋脱罪との関係をどのように考えるかにあるように思われるので、その関係について次のⅢで検討することにする。 Ⅲ 重加算税賦課判断の「主観化」に対する二重処罰禁止違反否定判例の意義 平成6年最判に関する調査官解説では、「ほ脱罪との関係について」(川神・前掲「判解」600頁)次のように述べられている(同601頁。下線筆者)。 この解説の最後の1文は、つまみ申告の重加算税賦課要件該当性に関する消極説に反対する論拠として「両者の均衡」と「重加算税制度の趣旨」を援用しているが、前者すなわち「偽りその他不正の行為」と「隠ぺい・仮装」との均衡は、事実関係総合判断説に基づく重加算税賦課判断の「主観化」を支持する論拠となり得るかもしれない。というのも、「偽りその他不正の行為」に関する判例において「逋脱の意図」(最大判昭和42年11月8日刑集21巻9号1197頁等)という主観的要素を重視する傾向が定着してきた中で、重加算税賦課判断の「主観化」及びこれによる重加算税の賦課対象の拡大は、「偽りその他不正の行為」と「隠ぺい・仮装」との均衡の観点からみると、次の見解(佐藤英明『脱税と制裁〔増補版〕』(弘文堂・2018年)397-398頁[初出・2000年]。傍点原文、下線筆者)の説くように、「自然なこと」、「必然的なもの」であるという理解も論理的には成り立ち得るからである(もっとも、後述するように、そのような理解は妥当でないと考えるところである。なお、次の引用文中の「制度としての統一性と一体性」は、同391頁にいう「脱税に対する租税制裁制度の統一性」と同義であり、加算税と租税犯を「『脱税に対処するための制度』として統一的に考察する」(同13頁[初出・1989年])「『租税制裁法』という機能的な考察の枠組み」(同14頁)に基づく観点である)。 これに対して、後者すなわち「重加算税制度の趣旨」は、事実関係総合判断説に基づく重加算税賦課判断の「主観化」に対して一定の歯止めをかける論拠と考えるべきである。というのも、「重加算税制度の趣旨」は、二重処罰禁止違反否定判例において次の判示(最判昭和45年9月11日刑集24巻10号1033頁。下線筆者)のとおり刑罰との併科による二重処罰の禁止違反を否定する論拠(の1つ)として援用されていることからすると、重加算税賦課判断の「主観化」を、逋脱犯に関する「逋脱の意図」という主観的要素重視の傾向の延長線上に展開するための論拠とすることはできず、むしろそのような傾向とは異なる意味であるいは一線を画する形で展開するための論拠とすべきであると考えられるからである。 重加算税賦課判断の「主観化」を上述のような意味あるいは形で展開するものと解される見解として、その「主観化」を重加算制度と過少申告加算税制度との区分(実質上・制度趣旨上の区分と要件上の区分)の文脈で展開する次の見解がある(①=住田裕子「判批(上)」商事法務1419号(1996年)2頁、5頁、②=同6頁。下線筆者)。 この見解は、重加算税と過少申告加算税とを実質上・制度趣旨上は過少申告の認識・意図(故意)の有無により区分しながら、要件上は「納税者の過少申告の意図を外部からうかがい得る特段の行動」、「過少申告の意図を認定・推認し得る客観的事実」、「過少申告の意図を推認し得る間接事実としての行為」(以上は住田・前掲「判批(下)」11頁)の有無により区分するものと解される。この見解は上記②の引用にもあるように「故意不要説」と自称しているが、それは、「その隠ぺい、仮装行為を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に、申告に際し、納税者において過少申告を行うことの認識を有していることまでを必要とするものではない」(最判昭和62年5月8日裁判集民151号35頁)とする判例の立場を踏まえたものと解される(住田・前掲「判批(上)」5頁、同「判批(下)」11頁等参照)。 以上のように検討してくると、このⅢの冒頭で取り上げた調査官解説の「消極説のように、申告前の帳簿操作等がない限り一切『隠ぺい』には当たらないと解することには、両者の均衡、重加算税制度の趣旨に照らして首肯し難い面があることは否定できない。」(下線筆者)という1文は、二重処罰禁止違反否定判例との関係を重視し「両者の均衡」よりも「重加算税制度の趣旨」に重点を置いた上で、理解するのが妥当であると考えられる。そして、そのような理解に基づき、前記の見解(住田裕子説)を重加算税賦課判断の「主観化」に対する歯止めの論拠として支持しておきたい。 もっとも、租税法律主義の下での税法の解釈論(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【44】以下参照)の観点からは、侵害規範である租税法規の中でも制裁の要素が強い重加算税の賦課要件については特に厳格な解釈が要請されることを考えると、重加算税賦課判断の「主観化」とこれによる重加算税賦課範囲の拡大に対しては、解釈上の歯止めだけでなく、むしろ手続的統制(差し当たり佐藤・前掲書403頁以下参照)も含め立法による歯止めこそが必要であると考えるところである(前掲拙著【128】参照)。 Ⅳ おわりに 今回は、納税申告義務の履行担保措置としての加算税のうち重加算税の賦課要件の解釈適用をつまみ申告に関して検討することとし、平成6年最判が重加算税賦課判断の「主観化」の方向を打ち出したこと、平成7年最判がこれに一定の歯止めをかけたこと及びその歯止めについては二重処罰禁止違反否定判例が重要な意味をもつことを明らかにした。 最後に、平成7年最判に関する調査官解説で従来の最高裁判例を総合して示された「判例理論」を以下に引用しておこう(近藤・前掲「判解」480頁。下線原文。判例①=最判昭和45年9月11日刑集24巻10号1333頁、判例②=最判昭和58年10月27日民集37巻8号1196頁、判例③=最判昭和62年5月8日裁判集民151号35頁、判例④=平成6年最判、判例⑤=昭和48年最判)。 この「判例理論」では平成7年最判が考慮されていないが、これを「判例⑥」として、「納税者が、・・・・・・ような場合には、殊更の過少申告として重加算税の賦課要件が満たされる〔判例④⑤〕。そして、どのような場合に殊更の過少申告として重加算税の賦課要件が満たされるかについては、」の部分を、「納税者が、・・・・・・ような場合には、重加算税の賦課要件が満たされる〔判例④⑤〕。ただし、納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合に限る〔判例⑥〕。そして、それが具体的にはどのような場合であるかについては、」と加筆修正することによって、平成7年最判が重加算税賦課判断の「主観化」に一定の歯止めをかけたことを明示すべきであろう。 (了)
〈もうすぐ適用開始〉 令和6年1月から適用される 加算税の加重措置 【第1回】 「これまでのインセンティブ措置の傾向と帳簿不提出に係る加重措置」 公認会計士・税理士 大橋 誠一 はじめに 加算税は、申告納税制度の定着と発展を図るため、申告義務が適切に履行されない場合に課されるものであり、一種の行政制裁的な性格を有するものとされている。 昨今の加算税に係る税制改正の特徴として、インセンティブとしての効果がより表れるように、誠実に申告義務を履行しようとしている者については軽減を、相対的に悪質と認めるものについては加重をそれぞれ志向するという傾向にある。 本稿では、令和6年1月から適用されることが法定されている令和4年度及び令和5年度の税制改正における加算税の加重措置を中心に、最近の加算税に係る税制改正の概要と特徴を確認することにしたい。 * * * 1 加算税の概要 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (出典:財務省ホームページ「納税環境整備に関する基本的な資料」の「加算税の概要」) 上記の図表の(注)が最近の税制改正において増加しているインセンティブ措置である。 2 加算税に係る最近の税制改正の概要 (1) 国外財産調書制度の創設 国外財産の捕捉を進めるために、平成24年度税制改正において国外財産調書制度が創設されるとともに、提出期限までに提出された調書に記載のある国外財産に係る申告漏れの場合には5%軽減、そうでない場合には5%加重の措置が設けられた。 (2) 財産債務調書制度の創設 これまでの「財産債務明細書」の提出率が芳しくなかったことから、平成27年度税制改正において財産債務調書制度が創設されるとともに、上記(1)に類似したインセンティブ措置が設けられた。 (3) 調査通知以後・更正決定予知前の段階における区別 税務調査の過程でいきなり多額の修正申告又は期限後申告を行うことにより加算税の賦課を回避する事例が散見されていたことから、平成28年度税制改正において調査通知以後・更正決定予知前の段階を区別することにより、従前よりも5%ずつ加重する措置が設けられた。 (4) 繰り返しの無申告・仮装隠ぺいに対応した加重措置 加算税の税率は無申告・仮装隠ぺいの回数にかかわらず一律であり、納税者がこれらを繰り返す事例がみられたことから、行政制裁としての牽制効果を高めるため、平成28年度税制改正において、過去5年以内に無申告加算税又は重加算税を課せられた者が再び無申告等を行った場合には、10%加重する措置が設けられた。 (5) 国外財産に係る書類を提出しない場合の加重措置 国外財産は、把握に時間的・物理的な制約が加わり、更正決定の期間制限により捕捉に制約が生じるといった特徴があることから、より納税者による自主的な資料の提出を促すために、令和2年度税制改正において、国外財産に係る資料を所要の日数までに提出しない場合には、従来の上記(1)の5%加重を更に5%加重する措置が設けられた。 (6) 電子帳簿保存法に関係する加重措置 令和3年度税制改正において、優良な電子帳簿の水準における帳簿保存を普及するために、優良な電子帳簿に記録された事項に関して生じた申告漏れについて過少申告加算税を5%軽減するとともに、痕跡が残りにくいことが特徴のスキャナ保存が行われた電磁的記録に記載された事項に関して仮装隠ぺいがあった場合に重加算税を10%加重する措置が設けられた。 3 記帳水準の向上に資するための過少申告加算税等の加重措置 (1) 加重措置創設の議論 納税者が信頼性のある記帳をしない場合には、 その取引実態を確認するための反面調査等の追加的な対応が税務調査において必要となる。 また、記帳や帳簿保存義務を果たさなくても、その記帳や帳簿保存が不十分であることのみでは仮装隠ぺいの事実に該当しないことから重加算税の賦課が困難となる場合があり、記帳義務不履行に対する経済的な不利益が少ないことが記帳の動機付けを乏しくさせているという問題が国税当局において問題視されていた。 (2) 加重措置の概要 納税者が調査担当職員から帳簿の提出を求められたにもかかわらず、収入金額(売上)について以下に該当するときには、過少申告加算税又は無申告加算税を10%加重する。 なお、収入金額の3分の1以上(5割未満)について不記載であった場合には、加重措置は5%となる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (出典:財務省ホームページ「令和4年度税制改正の解説」の「国税通則法等の改正」762頁) (3) 収入金額(売上)を基準とした趣旨とその具体的な範囲 例えば、所得については、日々の記帳段階ではその具体的な額を予見することが困難である(決算段階になって初めて把握できる)ことから基準に採用されなかった。 また、経費については、通常は税額を圧縮するものであることから収入に比して事業者の自主的な記帳が期待できるほか、その計上にあたっては、減価償却費の計算や資本的支出に該当するかどうかの判断など、一定水準以上の税・会計の知識が必要となる点などを踏まえつつ、税務当局における税務調査の執行可能性にも配意して基準に採用されなかった。 そこで、本措置の適用要件である上記(2)の①又は②に掲げる場合に該当するかどうかの判断にあたっては、売上を用いることとなった。 なお、 事業者ごとの会計リテラシーの違い等に配慮する観点から、売上に含まれない収入金額(損益計算書上の営業外収益、特別損益に係る収入等の営業に直接関係のないもの)については、対象外とされている。 また、本措置は「帳簿に記載すべき事項等」であることが前提とされており、例えば、消費税法上の事業者が保存しなければならないこととされる帳簿については、その帳簿に記載すべき事項に含まれない国外売上(不課税取引)は含まれないことになる。 (4) 適用時期 令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用される。 したがって、例えば、通常、所得税については令和5年分から、法人税については10月決算法人の場合には令和5年10月決算期分から、それぞれ適用される場面が生じ得ることになる。 なお、収入金額(売上)についての不記載・不記帳を課税要件とするため、所得税、法人税の他に、課税売上を扱う事業者の消費税も対象になると考えられる。 (了)
〈令和5年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第2回】 「各種控除と所得要件の整理」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 本連載第1回では、令和5年分の年末調整に影響する改正事項として、控除対象となる国外居住親族の範囲の見直し等を取り上げた。第2回(今回)は、各種控除について所得要件を中心に整理する。 【1】 所得金額調整控除 所得金額調整控除には、①子ども等を有する場合の調整と②給与所得と公的年金等に係る雑所得の両方がある場合の調整の2つがある(措法41の3の3①②)。 これらの調整はいずれも確定申告で適用されるものであるが、①の調整は、年末調整においても適用を受けることができる(措法41の3の4①)。 ①の調整の適用があるのは、所得者本人のその年中の給与等の収入金額が850万円を超え、かつ下記のいずれかに該当する場合である。 年末調整で①の調整を適用する場合において、給与等の収入金額が850万円を超えるかどうかは、年末調整の対象となる主たる給与等のみを対象として判定する。すなわち、年末調整の対象とならない従たる給与等(主たる給与等の支払者以外の給与等の支払者から支払を受けた給与等)は含めずに判定することになる。 【2】 配偶者控除、配偶者特別控除 配偶者控除と配偶者特別控除の適用を受けるには、所得者本人及び配偶者の所得要件があり、控除額は所得者本人の合計所得金額に応じて段階的に縮小する(所法2①三十三の二、83①、83の2①)。 配偶者控除及び配偶者特別控除における、所得者本人と配偶者の所得要件は、次のとおりである(所法2①三十三の二、83①、83の2①)。なお、所得者本人に所得金額調整控除の適用がある場合には、適用後の金額をもとに合計所得金額を算出する(措法41の3の3①②)。 (注) 配偶者控除の対象となる配偶者を控除対象配偶者という(所法2①三十三の二)。 所得者本人の合計所得金額に応じた配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額は、次のとおりである(所法83①、83の2①)。 〈配偶者控除〉 (※) 国税庁タックスアンサー「No.1191 配偶者控除」より抜粋 〈配偶者特別控除〉 (※) 国税庁タックスアンサー「No.1195 配偶者特別控除」より抜粋 【3】 扶養控除 居住者が控除対象扶養親族を有する場合には、扶養控除が適用される(所法84)。 控除対象扶養親族とは、扶養親族(所得者本人と生計を一にする親族のうち、合計所得金額が48万円以下の者)のうち、次に該当する者をいう(所法2①三十四、三十四の二)。 【4】 障害者控除 所得者本人が障害者である場合、同一生計配偶者又は扶養親族が障害者である場合には、障害者控除が適用される(所法79)。 同一生計配偶者とは、生計を一にする配偶者のうち合計所得金額が48万円以下の者をいう(所得者本人の所得要件はない)(所法2①三十三)。 【5】 寡婦控除、ひとり親控除 寡婦控除及びひとり親控除の適用を受けるには、所得者本人の合計所得金額が500万円以下でなければならない(所法2①三十、三十一)。 また、離婚した女性が寡婦控除の適用を受けるには、扶養親族を有することが要件となる(所法2①三十イ(1))。ひとり親控除の適用を受けるには、生計を一にする総所得金額等が48万円以下の子を有することが要件となる(所法2①三十一イ、所令11の2②)。 【6】 勤労学生控除 勤労学生控除の適用を受けるには、所得者本人の合計所得金額が75万円以下(うち、非勤労所得10万円以下)でなければならない(所法2①三十二)。 【7】 基礎控除 基礎控除は、合計所得金額が2,400万円を超えると段階的に縮小し、2,500万円を超えると適用されない(所法86①)。 合計所得金額に応じた基礎控除の額は、次のとおりである。 【8】 各種控除と所得要件のまとめ (1) 所得金額調整控除 (2) 所得控除 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (※) 総所得金額等 * * * 次回(最終回)は、実務上の留意点をQ&A方式で解説する予定である。 (了)