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組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第38回】「その他の裁判例①」

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第38回】 「その他の裁判例①」   公認会計士 佐藤 信祐   第38回以降は、組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例について解説することとする。今回、解説する事件は、従業員持株会に対する貸付金の代物弁済により取得した自己株式についてみなし配当が発生するものとして、源泉所得税が課された事件である。   23 みなし配当に係る源泉徴収義務 (1) 平成23年3月17日大阪地裁判決(TAINSコード:Z261-11644) ① 事件の概要 本事件は、株式会社である原告が、その従業員持株会に対する貸付金を回収するため、同会が保有する原告の発行済株式を代物弁済により取得したところ、処分行政庁が、当該代物弁済により消滅した債権のうち、取得した株式に対応する資本等の金額を超える部分は「みなし配当」に該当し、原告には源泉徴収義務があるとして、原告に対し、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をしたことから、原告がこれらの処分の取消しを求めた事件である。 ② 原告の主張 本件持株会は、原告の従業員の財産形成に資することを目的として組織されたものであるところ、本件代物弁済は、多額の債務(本件借入金債務)を抱え危機に瀕していた本件持株会、ひいては、従業員持株制度を維持することにより従業員の福利厚生対策の危機を救済するために行われたものであり、原告にとって、単なる資本取引としての自己株式取得にゆえんするものではないから、所得税法25条1項5号に該当する事実関係は認められない。 仮に、本件代物弁済がみなし配当に該当するとしても、本件代物弁済が福利厚生目的でされたものであることからすれば、本件代物弁済において消滅した本件借入金債務の金額には、本件株式を取得するための正当な対価(本来の取得価額)に充てられた部分のみが資本等取引としてみなし配当に該当し、その余の部分は福利厚生費に充てられた損益取引とみるべきである。本件株式の時価は類似業種比準価額によれば1株当たり630円と評価することができ、これを上回る部分についてはみなし配当はなかったものとみるべきである。 上記のほか、従業員持株会が民法上の組合なのか、人格のない社団なのかについて争われているが、そもそも、人格のない社団であるとする原告の主張には無理があるし、被告が主張するように、人格のない社団であったとしても、源泉所得税について争われている本事件では結論は変わらないことから、本稿においては、その部分についての解説は省略する。 ③ 被告の主張 原告に対し本件借入金債務を負っており、本件代物弁済によって本件借入金債務が消滅したという事実関係がある以上、このような本件代物弁済は所得税法25条1項柱書き及び5号が規定する要件を充足し、このことは、原告が本件代物弁済を行った目的いかんによって左右されるものではない。 取得の対象とされた自己株式に対応する資本等の金額との間で比較の対象とすべきものは、株主等が交付を受けた金銭の額等であるから、法文上、取得の対象とされた自己株式の時価を比較対象としてみなし配当の額を計算すべきものと解釈する余地はない。 ④ 裁判所の判断 本件代物弁済の時点において、民法上の組合である本件持株会の会員らは、原告に対し本件借入金債務を負っており、本件代物弁済によって本件借入金債務が消滅したという事実関係がある以上、本件代物弁済は所得税法25条1項柱書き及び5号が規定する要件を充足しており、このことは、原告が本件代物弁済を行った目的いかんによって左右されるものではない。 取得の対象とされた自己株式に対応する資本等の金額との間で比較の対象とすべきものは、株主等が交付を受けた金銭の額等であって、法文上、取得の対象とされた自己株式の時価を比較対象としてみなし配当の額を計算すべきものと解釈する余地はなく、本件代物弁済の結果、原告の株主としての地位に基づき、本件借入金債務が消滅するという利益が発生しているのであるから、上記資本等の金額を上回る部分をみなし配当とみるほかないというべきである。 (2) 平成24年2月16日大阪高裁判決(TAINSコード:Z262-11882) ① 控訴人の主張 所得税法、法人税法で用いられる「資産」とは、少なくとも将来において便宜をもたらす能力としての用役潜在力を有するもので、かつ譲渡性があるものをいう。上記の資産の意義・性質から、この「資産」に「債務の消滅」が当たらないことは、明らかである。 本件代物弁済には、債務者である本件持株会が、本来の給付である借り入れた金銭の支払に代えて、債権者である控訴人の発行済株式を給付したところに特殊性がある。本件代物弁済において、本件借入金債務の消滅を享受するのは、源泉徴収義務者とされる控訴人ではなく本件持株会である。控訴人は、本件持株会に対し、私法上の支払債務を負担しているわけではないし、本件代物弁済によって、その「利益の配当」に係る支払債務が消滅したわけでもない。よって、本件代物弁済は所得税法181条1項の「支払」に当たらない。 上記のほか、第1審と同様に、「本件代物弁済にみなし配当に該当する部分があるとしても、その該当する部分(所得税法1条、法人税法24条1項)は、本件未配分株式と対価関係に立つ正常な時価の範囲に限られる」旨の主張がなされているが、第1審と同様の内容であるため、本稿ではその解説を省略する。 ② 被控訴人の主張 所得税法25条1項柱書きにいう「金銭その他の資産の交付を受けた場合」とは、金銭その他の資産が実際に交付された場合だけでなく、同様の経済的効果をもたらす債務の消滅等があった場合も含む。 同法181条1項が、「居住者に対し国内において・・・第24条第1項(配当所得)に規定する配当等・・・の支払をする者」と規定するとおり、同法24条が規定する「配当等」の支払をした者は、同法181条1項に基づく源泉徴収義務を負うとされている。そうすると、同法25条1項が規定するみなし配当に該当する場合は、同項柱書きにより、同法24条が定める「利益の配当」がされたものとみなされ、その結果、「利益の配当」をした場合の源泉徴収義務を定めた同法181条1項が当然に適用されることになる。 ③ 裁判所の判断 同柱書きにいう「金銭その他の資産の交付を受けた場合」とは、金銭その他の資産が実際に交付された場合だけでなく、同様の経済的利益をもたらす債務の消滅等があった場合も含むものと解される。 所得税法181条1項は、源泉徴収義務者を「居住者に対し国内において・・・第24条第1項(配当所得)に規定する配当等‥の支払をする者」と規定している。上記規定は、文理上、「配当等の支払」をする者が、源泉徴収義務者となるという趣旨であり、それ以上に、「配当等」と「支払」を分けた上、「支払」とは、源泉徴収義務者自身が株主等に対して負う支払債務を消滅させる場合に限られると解すべき根拠は、見当たらない。 (3) 評釈 このように、納税者の主張は、第1審でも、控訴審でも退けられ、敗訴している。さらに、最高裁判所に上告受理の申立てを行ったが、事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであるとして、受理されなかった(最高裁平成26年1月16日決定・TAINSコード:Z888-1843)。 実務上、代物弁済により自己株式を取得した場合であっても、源泉所得税の徴収が必要であるということは言うまでもない。すなわち、100百万円の債権がある場合には、源泉所得税を加味したうえで、例えば、110万円に相当する自己株式を取得する必要がある。この場合、自己株式の取得により相殺される債権が増加すると、源泉所得税も同時に増加する関係にあるため、いわゆるグロスアップ計算が必要になってくる。 これに対し、納税者側の主張としては、代物弁済による自己株式の取得につき、対価として「資産」を交付したわけではない、「支払」には該当しないといった主張をしているが、このような主張が認められないことは容易に想像できる。 それよりも重要なのは、本事件が時価で自己株式を取得したのかどうかという点をほとんど裁判所は検討しておらず、仮に時価を超える金額で取得したとしても、みなし配当の金額は時価を基礎に計算を行うのではなく、代物弁済により消滅した債務の金額を基礎に計算するものとしているという点である。すなわち、1株当たり時価が30円で、1株当たりの資本金等の額が10円である場合において、100円で自己株式を取得したときは、みなし配当の金額は70円ではなく、90円ということになる。 この点については、稲見誠一先生との共著である『組織再編における株主課税の実務Q&A(中央経済社、平成20年)』73-75頁にて、同族会社等の行為計算の否認の適用を受けるような特殊事案を除いては、実際の買取価額でみなし配当の金額を計算すべきであるということを指摘させていただいた。 本判決は、実際の税務実務における取扱いと変わらず、かつ、その理論構成にも問題がないことから、妥当な判決であったということができる。  (了)

#No. 143(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/11/05

~税務争訟における判断の分水嶺~課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第6回】「契約書の記載内容と異なる合意が当事者間で成立していたとされた事例」

~税務争訟における判断の分水嶺~ 課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第6回】 「契約書の記載内容と異なる合意が 当事者間で成立していたとされた事例」   税理士 佐藤 善恵     (※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。 〔概要等〕 納税者は、A社との間で中古賃貸マンションを購入する旨の売買契約を締結した。 当該マンションは、12階建であるが、1階部分は第三者が区分所有し、残る部分をA社が区分所有していた。利用状況は、2階及び3階はA社事務所、4階以上は共同住宅38戸として使用される等していた。なお、売買対象となった区分所有部分の土地建物を併せて「本件不動産」という。 納税者は、本件賃料等については清算せず売主(A社)に帰属させる旨の合意があったことを前提とし、それを不動産所得の総収入金額に含めずに平成19年分の所得税及び消費税等の確定申告をした。 これに対して課税庁は、本件賃料等は納税者に帰属するとして平成19年分の所得税の更正処分をした。さらに、消費税に関して、本件賃料等を資産の譲渡等の対価の額に算入すると課税売上割合が95%未満になるとして、更正処分を行った。   〔事実関係〕 (1) 納税者は、平成19年11月29日付けで、A社との間で、本件不動産を購入する旨の不動産売買契約を締結した。その契約内容には、売買代金総額が2億8,288万円であること、所有権移転・引渡・登記手続の日が平成19年12月10日であること、手付金を除いた残代金は平成19年12月10日までに支払うことが含まれていた。 (2) 上記売買契約に係る契約書には、本件不動産から生ずる収益の帰属及び管理費、地代等各種負担金の分担については、引渡日の前後で売主(A社)及び買主(納税者)に帰属する旨の条項(13条)が含まれていた。 (3) 納税者、A社及び仲介業者は、平成20年8月20日付けで、上記売買契約に関して、納税者が平成19年12月分の固定資産税の日割分をA社に支払うほかは、賃料その他一切の清算をしないこと等を合意して、その旨を確認する旨の確認書(本件確認書)を締結した。 ▷解説 上記(2)のとおり、本件賃料等は、売買契約書(13条)によれば、引渡日(12月10日)の前後で、それぞれA社と納税者に帰属が分かれることになるが、本件確認書によれば上記(3)のとおり、全て売主(A社)に帰属することとなる。 課税庁は、売買契約書の13条を根拠に、本件賃料等を日割計算すべきと主張しており、一方、納税者は、本件確認書に基づき本件賃料等を清算しない旨の合意が成立していたと主張している。   〔双方の主張(要旨)〕   〔東京地裁の判断(要旨)〕 (1) 裁判所が認定した主な事実 (2) 裁判所の判断 以下のことからすると、本件合意の成立を認めることができる。 また、その時期については、納税者から12月分の賃料を清算しないことにしたい旨の提案をした((1)の①)後、間もなくA社から売渡承諾書が出ている((1)の②)ことからすれば、遅くとも平成19年11月初旬と推認することができる。   〔判断の分水嶺〕 本件の判断の分水嶺は、言うまでもなく本件合意の成立が認められたことである。 一般に、契約書は当事者間の合意の成立とその内容を証する証拠といえるが、本件では、他の事実関係(上記(2)の①~⑤の事情や、「納税者から12月分の賃料を清算しないことにしたい旨の提案をした後、間もなくA社から売渡承諾書が出ていること。」)から、契約書に記載された内容とは異なる当事者間の合意(本件合意)の成立があったと認められた。   〔本判決が示唆するもの〕 当事者間でどのような合意が成立していたのかが争われる場合、通常は、契約書が証拠となり、その記載内容どおりの事実が認定されることになる。しかし、契約は当事者間の意思表示の合致によって成立するものであるから、納税者が契約書の記載内容と矛盾する合意の存在を主張するのであれば、その主張に沿った意思表示の合致があったことが証明できればよい。本件では、納税者はその証明に成功した。 調査の際、調査担当者が、契約書の記載内容のみから形式的に事実を認定しようとした場合には、この基本に立ち返って反論することが重要である。 なお、課税庁の判決情報によれば、調査担当者向けに、次のようなポイントが記載されている。 (了)

#No. 143(掲載号)
#佐藤 善恵
2015/11/05

税務判例を読むための税法の学び方【72】 〔第8章〕判決を読む(その8)

税務判例を読むための税法の学び方【72】 〔第8章〕判決を読む (その8)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   (2 判決をみるポイント) (③ 判例の射程を見極める) (承前) 給与所得についての判断基準である従属性要件は、この最高裁昭和56年4月24日判決だけではなく、かの大島訴訟の最高裁大法廷昭和60年3月27日判決においても判示されているものである(もっともこの部分は主論部分ではないであろう)。 この判決の4ページ目下段に「給与所得者は、事業所得者等と異なり、自己の計算と危険とにおいて業務を遂行するものではなく、使用者の定めるところに従って役務を提供し、提供した役務の対価として使用者から受ける給付をもってその収入とするものである」と記されている。 これによれば、給与所得が、「非独立的な労務」ではなく、使用者の定めるところに従って提供する労務という従属的な労務の対価であることが示されている。 もっともこの前段赤字下線部分には、「自己の計算と危険とにおいて業務を遂行するものではな」いという独立性要件に該当しない点(すなわち「非独立性」)を指摘する。しかしそれは冒頭にある「事業所得者と異なり」を具体的に述べたものである。そのため事業所得の判断基準を示し、それを否定しているのである。 もっともこの書き振りからは、非独立性が前提条件と示され、従属性が直接的な判断基準とされているともいえる(すなわち給与所得といえるためには、非独立性と従属性が必要要件となるが、非独立性が最初のフィルターとして、いわば前提条件となっている)。この点からも、従属性要件を満たしていないにもかかわらず、非独立性要件を満たせば給与所得となり得るという見解に疑問を感じる。 ところで、この大島訴訟最高裁判決は、多くの税法判例集で必ず取り上げる最重要判例である。そこでこの大島訴訟最高裁判決を見てみよう。 なお、この大島訴訟最高裁判決において、もっとも注目すべき判示部分は、上記引用部分の直前にある判決に下線が記された以下の部分である。 もっとも大島訴訟は、私立大学の教授であった大島教授が、所得税法(昭和40年改正前の旧法である)の給与所得に関する諸規定が、給与所得者を他の所得者より不公平に扱うものであり憲法14条1項に違反するなどと主張した事案であり、判決は、①租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取り扱いの区別は、その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が当該目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、その合理性を否定することはできないとし、また、②所得税法が給与所得者の必要経費の控除について概算控除を採用し、事業所得者との間に区別を設けたことは、合理的なものであると判示している。 この①についての判示部分が上記引用箇所であるが、この判示の前提として、その前のページに「憲法の右規定〔憲法14条1項:筆者注〕は、国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく、合理的理由なくして差別することを禁止する趣旨であって、国民各自の事実上の差異に相応して法的取扱いを区別することは、その区別が合理性を有する限り、何ら右規定に違反するものではない」と過去の2つの最高裁大法廷判決(昭和25年10月11日、昭和39年5月27日判決)を踏襲し、各自の事実上の差異に相応した法的取扱いの区別を肯定する。 そのうえで、「租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は、その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、その合理性を否定することができ」ないと、租税立法については合憲性の推定に基づき、著しく不合理であることが明らかでない限り合憲となる「ゆるやかな合理性の基準」(金子宏「判批」別冊ジュリスト207号『租税判例百選(第5版)』7頁)を示している(しかし「性別や精神的自由・市民的自由に関連を有する租税法規の違憲性の審査にあたっては、より厳格な審査基準が必要」(金子宏『租税法(第20版)』2015年弘文堂103頁)であるとされる)。 そしてその根拠として、「租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ない」点を挙げている。 そしてこの「ゆるやかな合理性の基準」に基づいて、5ページ下線部分「旧所得税法が給与所得に係る必要経費につき実額控除を排し、代わりに概算控除の制度を設けた目的は、給与所得者と事業所得者等との租税負担の均衡に配意しつつ、右のような弊害を防止することにあることが明らかであるところ、租税負担を国民の間に公平に配分するとともに、租税の徴収を確実・的確かつ効率的に実現することは、租税法の基本原則であるから、右の目的は正当性を有するものというべきである」と、給与所得における実額控除を排した概算控除制度を、合憲と判断している。 この大島訴訟最高裁判決は、直接的には、この給与所得における実額控除を排した概算控除制度の合憲性を巡る争いであったが、租税立法における裁量的判断の尊重、そしてそれゆえ、違憲審査基準として、租税立法においては合憲性の推定に基づく「ゆるやかな合理性の基準」によることが示されており、この意味で大きな意義を持っている。 またこの判決の射程は、租税立法の合憲性が争われた場合の様々な事案において、判例として判断基準を提供している。 古くは資産所得の合算課税制度の合憲性が争われた最高裁三小昭和61年4月22日判決、自己消費を目的とする酒類製造の酒税法における処罰規定の合憲性が争われた最高裁一小平成元年12月14日判決、最近では施行日前になされた不動産譲渡に係る譲渡損失の損益通算を認めない改正規定が不利益遡及立法となるか合憲性が争われた東京高平成21年3月11日及び東京地裁平成20年2月14日、社会保険診療等 については制度上消費税の転嫁が不可能であることから不平等であるとして合憲性が争われた神戸地平成24年11月27日等、非常に多くの裁判で判断基準として機能している。 *  *  * なお、次回からは章を改め、実践編として、代表的な税務判例について、具体的に考察を進めていく。 (第8章 了)

#No. 143(掲載号)
#長島 弘
2015/11/05

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第38回】「平成28年分源泉徴収税額表の変更点」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第38回】 「平成28年分源泉徴収税額表の変更点」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   平成28年1月から源泉徴収税額表が変更になるそうですが、どこが変更になるのかわかりません。 平成28年分源泉徴収税額表の変更点についてご教示ください。   変更点は、次の通りである。 1 給与所得の源泉徴収税額表(月額表)の変更点 ① 甲欄 1,010,000円未満の表記は、平成27年分と同じである。1,010,000円以上の表記が平成27年分と異なる。 【平成27年分の甲欄の一部】 【平成28年分の甲欄の一部】 ② 乙欄 404,000円未満の表記は、平成27年分と同じである。404,000円以上の表記が平成27年分と異なる。   2 給与所得の源泉徴収税額表(日額表)の変更点 ① 甲欄 33,000円未満の表記は、平成27年分と同じである。33,000円以上の表記が平成27年分と異なる。 【平成27年分の甲欄の一部】 【平成28年分の甲欄の一部】 ② 乙欄 13,600円未満の表記は、平成27年分と同じである。13,600円以上の表記が平成27年分と異なる。 ③ 丙欄 33,000円未満の表記は、平成27年分と同じである。33,000円以上の表記が平成27年分と異なる。   3 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表の変更点 ① 甲欄 16.336%以下の表記は、平成27年分と同じである。18.378%以上の表記が平成27年分と異なる。 【平成27年分の甲欄の一部】 ※クリックすると大きい画像が開きます   【平成28年分の甲欄の一部】 ※クリックすると大きい画像が開きます ② 乙欄 24,1000円未満の表記は、平成27年分と同じである。241,000円以上の表記が平成27年分と異なる。   4 退職所得の源泉徴収税額表の速算表の変更点 変更点はない。   5 電子計算機等を使用して源泉徴収税額を計算する方法を定める財務省告示の別表の変更点 別表第1~第3のうち、別表第2と別表第3は、平成27年分と同じである。 別表第1の833,333円以下の表記は、平成27年分と同じである。833,334円以上の表記が平成27年分と異なる。 【平成27年分の別表第1】 【平成28年分の別表第1】 なお、電算機計算の特例については前回を参照されたい。 (了)

#No. 143(掲載号)
#上前 剛
2015/11/05

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第39回】株式会社SJI「社外委員会検証報告書(平成27年8月7日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第39回】 株式会社SJI 「社外委員会検証報告書(平成27年8月7日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   株式会社東芝の会計不正事件は、役員の責任をどう追及するかという局面を迎えているところであるが、昨年10月、元代表取締役による資金流用問題が表面化した株式会社SJIにおいては、社外委員会による役員の法的責任の認定、元取締役との間の和解が公表されている。 今回は、SJI第三者委員会による事実認定、東京証券取引所・証券取引等監視委員会の処分、SJI社外委員会による責任認定といった一連の流れを検証したい。   【調査委員会の概要】   【株式会社SJIの概要】 株式会社SJI(以下「SJI」と略称する)は、1989(平成元)年7月創業の情報サービス事業会社。旧社名は株式会社サン・ジャパン。連結売上高30,340百万円、連結経常利益251百万円(数字はいずれも平成27年3月期)。従業員数1,444名。本店所在地、東京都品川区。JASDAQ上場。   【第三者委員会調査報告書のポイント】 1 元代表取締役による架空取引等 第三者委員会は、取引発生時に代表取締役社長であった李堅氏(第三者委員会設置と同じ日に代表取締役を辞任。以下「李氏」と略称する)が部下に指示して行った取引の中に、取引の実態を伴わない李氏個人に対する資金融通があると認定した。 また、李氏が、正式な社内手続・承認を得ることなく、債務保証を行い、あるいは融資を受けたことにより、簿外の債務保証・債務が存在していたことを認定した。 (1) 国内におけるSJIグループ会社のハードウェア取引のうち10件 SJIグループによる仕入代金として仮想仕入先口座に入金された金員は、その後、李氏個人の借入金返済等に充当された後、李氏が新たに工面した資金をもとに、3ヶ月から1年5ヶ月後に利息相当額を上乗せしてSJIの口座に入金されたものである。 SJIから李氏に対して資金融通された金額は10回で約20億6,000万円であり、李氏からは約2.5%の利息相当額を附した約21億1,000万円が返済されている。 SJIはこの差額約5,000万円を売上計上しているが、この会計処理は実態を正しく反映しておらず、適正とは評価し難い。 (2) SJI香港が行ったハードウェア取引のうち1件 SJI香港は仮想仕入先口座に前渡金名目で約12億円を支払い、その後、販売代金名目で1年後に約7億円、その5ヶ月後に5億5,000万円と、2回に分けて入金を受けているが、これは、李氏個人への資金融通を目的とするものであり、ハードウェアの譲渡の実態を伴わない取引である。 SJIはこの差額約6,000万円について売上計上しているが、この会計処理は実態を正しく反映しておらず、適正とは評価し難い。 (3) SJI香港による取引先に対する債務保証 SJI香港の董事長であった李氏は、取引先のE社がG社から1億円を借り入れるにあたり、SJI香港により連帯保証を行ったが、SJI香港及びSJIに対して債務保証の事実が伝達されておらず、会計処理はなされなかった。 なお、董事長として保証行為を行ったことは内部手続違反ではなく、また、E社が借入金を全額弁済したため、連帯保証債務もすでに消滅している。 (4) 承認手続を得ることなく融資を受けた件 SJIは、平成26年3月期において、①銀行から19億円の融資を受け、約3週間後に全額を返済し、②事業会社2社から9億2,500万円を4回に分けて借り入れ、同期中に全額を返済したが、これらの借入金は一時的に李氏の資金繰りに充てられており、また、必要な会計処理がなされていない。 2 再発防止策の提言 第三者委員会は、SJIにおける発生原因及び問題点を指摘したうえで、以下の6つの項目を再発防止策として提言している。 そのうえで、第三者委員会は、「本事象がSJIグループの経営トップである李氏によるものであり、SJIグループにおいては、コンプライアンス委員会を含めた内部統制システムが十分機能していたとは言い難い状況である」として、次のように社外委員会の設置を提言している。   【東京証券取引所による特設注意市場銘柄の指定及び 上場契約違約金の徴求】 2015年2月24日、東京証券取引所は、SJI株式を特設注意市場銘柄に指定するとともに、同社に上場契約違約金2,000万円を徴求することを発表した。 特設注意市場銘柄指定の理由として、SJIについて、 と事実を指摘したうえで、原因として、 を挙げて、「同社の内部管理体制等については、重大な不備があると認められ、その改善の必要性が極めて高いことから、同社株式を特設注意市場銘柄に指定する」と結論づけている。 一方、上場契約違約金の徴求理由としては、 ことにより、「当取引所市場に対する株主及び投資者の信頼を毀損したと認められる」としている。   【証券取引等監視委員会による課徴金納付命令勧告】 2015年3月27日、証券取引等監視委員会(SESC)は、SJIの提出した有価証券報告書等に虚偽記載があったとして、1億9,426万円の課徴金納付命令を発出するよう、勧告した。 SESCは、勧告の中で、事実関係について、以下のとおり認定している。 「重要な事項につき虚偽の記載がある」とされた有価証券報告書の記載内容を一部抜粋すると、以下のとおりである。   【定時株主総会における取締役・監査役の退任】 2015年6月29日開催のSJI第26期定時株主総会において、代表取締役副社長である劉天泉氏以外の取締役全員(李氏含む)が任期満了によって退任するとともに、新たに6名の取締役が選任された。同時に、監査役2名が辞任し、新たに監査役2名が選任された。 なお、代表取締役会長兼社長の地位にあった石濱人樹氏の退任理由としては、6月1日付「代表取締役、取締役および監査役の異動並びに選任に関するお知らせ」の中で次のように説明されている。   【社外委員会の検証報告書のポイント】 1 社外委員会設置の経緯-第三者委員会報告による再発防止策 上述のとおり、SJI第三者委員会の提言に基づく再発防止策の実行に際し、設置することが望ましいとされた社外委員会について、SJIは調査報告書の公表と同日において、委員の選任及び設置を公表している。設置後約半年に及ぶ作業を終えて、8月7日に公表されたのが「検証報告書」である。 2 社外委員会の検証により新たに判明した事実 (1) 李氏以外の役職員の不正行為への関与 社外委員会は、 が判明し、さらに、事務処理担当者2名は、不審点を感じ、あるいは、不審点を発見し得たにもかかわらず、漫然と李氏の指示に従って社内の事務処理を行ったことなどの事実が認められた、としている。 (2) 東京国税局による税務調査結果の隠蔽 さらに、社外委員会は、平成24年10月から開始されたSJIに対する東京国税局による税務調査の過程で、ハードウェアの譲渡等を伴わない架空取引があったとの疑いが発覚した。その後、平成25年7月30日付けでSJIに送付された、品川税務署長名義の「消費税及び地方消費税の加算税の賦課決定通知書」には、当時の海外事業開発本部長が仕入先及び販売先の担当者に指示して、架空の証憑を作成させるなどして、架空取引を行っていた旨明記されていた。しかし、当時のコーポレート統轄本部長であった大槻氏が、取締役会等に報告せず、公表も避けるなどして、表面化することを回避しようとし、隠蔽を図った、という事実があったことを指摘している。 3 社外委員会が認定した法的責任 (1) 李氏の責任について 社外委員会は、李氏の不正行為は、「刑事上の責任に問われる可能性のある極めて悪質な行為」であり、李氏は、「既にSJIの取締役を退任しているものの、各行為は取締役の善管注意義務等に違反していることは明白であり、本件に関連してSJIに発生した損害について賠償する義務を負うべきである」と結論づけている。 (2) 琴井氏の責任について 次いで、琴井氏の責任については、取引の詳細については把握していないこと、一部取引に関与していない点から、「琴井氏の責任は李氏に比べて、軽いと評価すべき」であり、琴井氏も、SJIの取締役を退任しているものの、「取締役の善管注意義務等に違反しており、本件に関連してSJIに発生した損害について、李氏と共に賠償する義務を負うべきである」としている。 (3) 大槻氏の責任について 取引発生時、大槻氏は常務執行役員であり、経営企画本部長あるいは経営統轄本部長等として特命案件を担当するとともに、李氏らに対するSJIの仮払金の管理を任されており、こうした役割の重要性等に照らせば、取引に関与した点につき、「本件に関連してSJIに発生した損害について、不法行為に基づき、李氏及び琴井氏と共同して賠償義務を負わせるべきである」としている。 また、大槻氏はコーポレート統轄本部長として、平成24年10月から始まった国税当局の税務調査において、架空取引の疑いがある旨指摘されたこと、賦課決定通知書にはハードウェア取引のうち10件は明らかに架空取引であり、担当者が架空の証憑等の作成に関与していたことが明記されていたにもかかわらず、取締役会に報告して、開示の要否も含め、あえて、取締役会の判断に委ねるなどの対応を行わず、意図的に、その隠蔽を図った。 以上の事実に基づき、社外委員会は、大槻氏の責任は重く、「一連の隠蔽行為につき、取締役就任以前については、不法行為責任により、取締役に就任した平成25年8月上旬以降については、取締役の善管注意義務違反等により、SJIが被った損害につき賠償義務を負うべきである」と結論づけている。 (4) その他の担当者の責任について 李氏の指示に基づき、事務処理を担当していた者については、「担当社員として相応の責任を負うべきである」としながらも、民事上の責任を負わせることは適切ではないとしている。 4 再発防止策の実施状況 社外委員会は、「SJIのコーポレートガバナンスの再構築」のために、弁護士や公認会計士といった外部の専門家から構成される経営監視委員会の設置を提言している。 そして、経営監視委員会の役割について、 と説明している。 そのうえで、SJIが検討した個別的な再発防止策の有効性・妥当性については、 とまとめている。 5 経営監視委員会の発足 SJIは、8月14日、「社外委員会の検証結果を受けた当社の対応等について」と題するリリースを出し、弁護士と公認会計士からなる経営監視委員会の発足を発表している。   【元取締役に対する損害賠償請求】 2015年8月31日、SJIは「元取締役に対する損害賠償請求にかかる合意書の締結および特別利益の計上見込みに関するお知らせ」というリリースを出した。そこでは、次の4点が明らかにされている。 なお、「合意書を締結した」ということであるが、請求した損害賠償金が元取締役3名によって実際に支払われたかどうかは、リリースには明記されていない。 (了)

#No. 143(掲載号)
#米澤 勝
2015/11/05

金融商品会計を学ぶ 【第14回】「時価を把握することが極めて困難と認められる株式・債券の減損処理」

金融商品会計を学ぶ 【第14回】 「時価を把握することが極めて困難と認められる 株式・債券の減損処理」   公認会計士 阿部 光成   前回に引き続き、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)に規定する有価証券の減損処理について解説する。 本稿では、「時価を把握することが極めて困難と認められる株式・債券」の減損処理を対象とする。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 時価を把握することが極めて困難と認められる株式の減損処理 1 減損処理の規定 金融商品会計基準21項は、時価を把握することが極めて困難と認められる株式の減損処理について、次のように規定している。 上記の規定では、 がポイントになるものと解される。 2 財政状態・実質価額 上記「財政状態」及び「実質価額」に関して、金融商品実務指針92項では次のように規定している。 3 実質価額の回復可能性 金融商品会計基準21項は「発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額をなし」と規定しており、時価のある有価証券と異なって、実質価額の回復可能性は減損処理の要否の判定要件とはしていない。 これは次の理由によると考えられている(「金融商品会計に関するQ&A」Q33)。 この趣旨に鑑みると、子会社・関連会社の場合には、財務諸表を実質ベースで作成したり、事業計画等を入手したりすることが可能であり、実質価額の回復可能性が十分な証拠によって裏付けられるのであれば、期末において相当の減額をしないことも認められることになると解される。 金融商品実務指針は、実質価額の回復可能性に関して次のように規定している。 上記によると、実質価額の回復可能性の判断のポイントは次の事項であると考えられる。 4 超過収益力等 「金融商品会計に関するQ&A」Q33では、企業買収においては、会社の超過収益力や経営権等を反映して、財務諸表から得られる1株当たり純資産額に比べて相当高い価額で当該会社の株式を取得するケースがあることについて述べている。 企業買収における売買価額が、第三者による鑑定価額又は一般に認められた株価算定方式による評価額に基づいて、両者の合意の下に決定されたとしても、その後、超過収益力等が減少したために実質価額が大幅に低下することがある。 この場合、たとえ発行会社の財政状態の悪化がないとしても、将来の期間にわたってその状態が続くと予想され、超過収益力が見込めなくなったときには、実質価額が取得原価の50%程度を下回っている限り、減損処理をしなければならない。 なお、この取扱いは、時価のある株式について、超過収益力等の減少により時価が下落して取得原価を下回った場合についても同様とされている(「金融商品会計に関するQ&A」Q33)。   Ⅱ 社債その他の債券の減損処理 1 時価が著しく下落した場合 金融商品会計基準20項では、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式並びにその他有価証券のうち、時価を把握することが極めて困難と認められる金融商品以外のものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除いて、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理しなければならないと規定している(前回を参照)。 時価の下落に関する「回復する見込みがある」と認められるときについて、金融商品実務指針91項は、債券の場合は、単に一般市場金利の大幅な上昇によって時価が著しく下落した場合であっても、いずれ時価の下落が解消すると見込まれるときは、回復する可能性があるものと認められるが、格付の著しい低下があった場合や、債券の発行会社が債務超過や連続して赤字決算の状態にある場合など、信用リスクの増大に起因して時価が著しく下落した場合には、通常は回復する見込みがあるとは認められないと規定している。 2 時価を把握することが極めて困難と認められる社債その他の債券 時価を把握することが極めて困難と認められる社債その他の債券については、その貸借対照表価額は、債権の貸借対照表価額に準ずると規定されている(金融商品会計基準19項(1))。 このため、時価を把握することが極めて困難と認められる(市場価格がなく、かつ、時価を合理的に算定できない)債券の貸借対照表価額は、債権の貸借対照表価額に準じて評価され、償却原価法を適用した上で、債権の貸倒見積高の算定方法に準じて信用リスクに応じた償還不能見積高を算定し、会計処理を行うことになる。償還不能見積高の算定は、原則として、個別の債券ごとに行う(金融商品実務指針93項、285-2項)。 (了)

#No. 143(掲載号)
#阿部 光成
2015/11/05

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第99回】1株当たり情報①「1株当たり当期純利益」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第99回】 1株当たり情報① 「1株当たり当期純利益」   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明 日本公認会計士協会準会員 永井 智恵   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① 普通株式の期中平均株式数の算定 次の【方法Ⅰ】又は【方法Ⅱ】により算定する。 【方法Ⅰ】 [期中平均発行済株式数] [期中平均自己株式数] 【方法Ⅱ】 ② 1株当たり当期純利益の算定   〈会計処理の解説〉 1株当たり当期純利益の算定及び開示の目的は、普通株主に関する一会計期間における企業の成果を示すことにあると考えられます。市場で流通する株式の多くは普通株式であり、また、同一企業の他の会計期間との経営成績の比較(時系列比較)及び他企業との経営成績の比較(企業間比較)等を向上させるための情報の開示を行うことが、投資家の的確な投資判断に資すると考えられているためです(会計基準 第37項)。 普通株式に係る1株当たり当期純利益の算定方法は〈会計処理〉のとおりですが、本事例のように普通株式のみを発行しており、連結財務諸表を作成していない会社では、期中平均株式数の計算がポイントとなってきます。 普通株式の期中平均株式数は、普通株式の期中平均発行済株式数から期中平均自己株式数を控除して算定します。具体的には、以下の2つの方法が考えられます。 (1)は次のように図示でき、上記の〈会計処理〉①【方法Ⅰ】はこの方法で計算しています。 ◆期中平均発行済株式数 ◆期中平均自己株式数 ◆期中平均株式数 また、(2)は次のように図示でき、上記の〈会計処理〉①【方法Ⅱ】はこの方法で計算しています。 ◆発行済株式数から自己株式数を控除した株式数 ◆期中平均株式数 いずれの方法によっても、期中平均株式数は5,446,575株となり、同様の計算結果となります(会計基準 第50項)。 *   *   * 次回は、1株当たり情報のうち、1株当たり純資産額の算定方法について解説します。 (了)

#No. 143(掲載号)
#竹本 泰明、永井 智恵
2015/11/05

中小企業事業主のための年金構築のポイント 【第16回】「遺族給付(2)」-遺族厚生年金-

中小企業事業主のための 年金構築のポイント 【第16回】 「遺族給付(2)」 -遺族厚生年金-   特定社会保険労務士 佐竹 康男   厚生年金保険に加入していた人やすでに老齢厚生年金を受給している人が死亡したときには、一定の遺族に遺族厚生年金が支給される。したがって、厚生年金保険に加入していた法人の役員等もその対象になる。   1 遺族厚生年金を受給するための要件 遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者又は被保険者であった人が次のいずれかに該当する場合に、一定の要件を満たすその人の配偶者、子、父母、孫、祖父母に支給される。 ただし、上記①から③に該当するときは、国民年金の遺族基礎年金と同様に「一定の保険料の納付」が必要である(前回参照)。   2 遺族の範囲 遺族厚生年金を受給することができる遺族は、被保険者又は被保険者であった人の死亡当時、その人によって生計を維持(※)されていた配偶者、子、父母、孫、祖父母であり、妻以外の人については、次の要件に該当していることが必要である。 (※) 「生計維持関係」については、前回参照。 なお、妻が夫の死亡時に30歳未満で子がいない場合、遺族厚生年金は、その受給権が発生したときから5年間しか受給できない。 〈事例1〉 10年間厚生年金保険に加入していた夫が死亡したため、上記1の①の要件に該当する。また保険料の納付要件も満たす。 妻は専業主婦であるため、生計維持関係はある。 したがって妻に遺族厚生年金が支給される。   3 遺族の優先順位 遺族の優先順位は、①配偶者と子、②父母、③孫、④祖父母となっている。 先順位者が受給権を取得した場合は、次順位者には遺族厚生年金は支給されない。 配偶者と子は、遺族厚生年金を受ける順位は同順位であるが、配偶者は子に優先して支給される。 〈事例2〉 妻と子は、遺族の優先順位が同じなので、両方に遺族厚生年金を受ける権利が発生するが、妻は子に優先して支給を受けることができるので、妻に遺族厚生年金が支給される。 また、厚生年金保険に加入している夫は同時に国民年金にも加入していることになるので、妻には子がいるため、遺族基礎年金も支給される(前回参照)。 〈事例3〉 妻が死亡した場合であったとしても、夫に遺族厚生年金が支給される場合がある。   4 遺族厚生年金の年金額 遺族厚生年金の年金額は、老齢厚生年金の計算に用いる報酬比例部分(平均標準報酬額×一定率×加入期間の月数)の4分の3に相当する額である。 被保険者が死亡したときは、死亡時までの加入期間に応じて支給されるが、その加入期間が300月に満たないときは300月として計算する(老齢厚生年金の額については、【第7回】及び【第9回】を参照)。   5 中高齢の寡婦加算(遺族厚生年金に加算されるもの) 一定の要件を満たした妻には、遺族厚生年金に中高齢の寡婦加算額が加算される。 ① 中高齢の寡婦加算が加算される妻 妻が遺族厚生年金の受給権を取得したとき、次のいずれかに該当するときに加算される。 ただし、遺族基礎年金を受けることができる間は、加算されない。 ② 中高齢の寡婦加算額 定額で、585,100円(27年度価額)が加算される。 〈事例4〉 遺族厚生年金として夫の報酬比例部分の年金の4分の3に相当する額に加え、妻は上記①の(イ)に該当することから、中高齢の寡婦加算として585,100円が加算される。 ただし、妻が40歳に達した時点では子が未だ18歳未満で、妻は遺族基礎年金を受給しているため中高齢の寡婦加算は加算されず、子が18歳に達したときから妻が65歳に達するまでの期間、加算されることとなる。   6 経過的寡婦加算 中高齢の寡婦加算は、妻が65歳になると支給されなくなる。 65歳以後は、経過的寡婦加算として、妻が昭和31年4月1日以前生まれであるときは、妻の生年月日に応じて、585,100円から19,500円が支給される。   《おさらいQ&A》 (了)

#No. 143(掲載号)
#佐竹 康男
2015/11/05

養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第11回】「養子縁組の取消し」

養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第11回】 「養子縁組の取消し」   弁護士・税理士 米倉 裕樹   [1] はじめに 養子縁組が取り消される原因としては、 が法定されており、養子縁組が取り消されるのは、これらの場合に限られる(民803)。 これらの多くは形式的に判断できる場合が多いため、通常は届出の時点で受理されることは少ないものの、誤って受理された場合には、一定の要件のもとで取り消すことができる。なお、縁組の無効については【第1回】を参照されたい。   [2] 縁組取消しの方法 縁組の届出は、受理されると有効なものとして扱われ、養子縁組の取消しを確認する審判、または養子縁組取消しの訴えが確定するまでは、何人もその効力を争うことができない。この点、縁組意思を欠くような無効な養子縁組は、訴訟や審判で確定されなくとも当然に無効であるのとは大きく異なる。 縁組の取消しを請求する者は、養子縁組取消しの訴えを提起する前に、家庭裁判所に調停の申立てを行わなければならない(家法257①・調停前置主義)。調停において、当事者間で取消しに関する合意が成立し、かつ、この合意が正当と認められる場合には、養子縁組の取消しを確認する審判が行われる(家法277①)。 調停で合意が成立しない場合、または審判に対して2週間以内に異議の申立てがなされた場合には、当事者が普通裁判籍を有する地(被告の住所地等)、またはその死亡の時に有していた地を管轄する家庭裁判所に養子縁組取消しの訴えを提起することとなる(人訴2一・4①)。   [3] 各取消原因における取消権者・取消期間 [1]で挙げた養子縁組が取り消される原因ごとに、その取消権者や取消期間等をまとめると以下のとおりである。   [4] 取消しの効果 養子縁組が取り消されると、その効果は将来に向かってのみ生じ、遡及効は認められない(民808①・748①)。すなわち、縁組が初めからなかったことになるのではなく、離縁のように、縁組が取り消されたときから縁組関係が消滅することとなる。 縁組取消しの効果として遡及効が認められない場合には、取消しが確定するまでに形成されていた法律関係はすべて有効であり、その後もその効力を争うことはできない。したがって、財産上の効果についても、縁組取消しに伴う清算を行う必要はない、というのが論理的帰結となるが、財産上の効果については、不当利得の返還に関する規定が準用されている(民808①・748②③)。 すなわち、過去になされた法律関係は有効であるとしながらも、当事者が縁組よって得た財産については、縁組のときに取消原因があることを知らなかった当事者は、その得た財産のうち現に利益を受けている限度で返還すれば足り(民808①・748②)、縁組のときに取消原因があることを知っていた当事者は、その得た財産の全部を返還しなければならず、さらに相手方が善意(相手方が取消原因を知らなかった場合)であったときは、損害賠償責任も負わなければならない(民808①・748③)。 例えば、第三者による詐欺が養親に対してなされ、養子は当該詐欺をまったく知らない状態(善意)で縁組がなされたような場合において、その後、養親が死亡し、相続により養子が遺産を取得した後に、養子縁組が取り消されたとしても、養子が取消原因たる詐欺を知らなかった以上、養子が遺産をギャンブル等で浪費してしまい何も残っていない場合には、遺産を返還する必要はないこととなる。 もっとも、東京高裁平成19年7月25日判決は、詐欺による養子縁組の取消権は、養親または養子だけが有することを理由に、養親の実子からなされた縁組取消しの訴えを却下している。つまり、この判決では、承継人も取消請求権を有すると定める民法第120条第2項の適用は排除される結果、実親の承継人(相続人)である実子には取消権は承継されないと判断した。 したがって、上記例では、養親がすでに死亡している以上、養子が取消権を行使しない限り、そもそも取り消されることはない。 (了)

#No. 143(掲載号)
#米倉 裕樹
2015/11/05

企業の不正を明らかにする『デジタルフォレンジックス』 【第1回】「あらゆる不正調査に使われるようになった「デジタルフォレンジックス」とは何なのか?」

企業の不正を明らかにする 『デジタルフォレンジックス』 【第1回】 「あらゆる不正調査に使われるようになった 「デジタルフォレンジックス」とは何なのか?」   プライスウォーターハウスクーパース株式会社 シニアマネージャー 池田 雄一   1 デジタルフォレンジックスの定義 『デジタルフォレンジックス』という分野が発生したのは米国および英国を中心とする欧米諸国で、1980年代まで遡る。コンピュータの飛躍的な増加とともに、それを使った犯罪行為も増加したことにより、法整備からコンピュータ犯罪の専門部隊の組織が欧米諸国で開始されたのが1980年代後半から1990年代前半のことである。 日本でフォレンジックスという言葉が聞かれるようになったのは、ライブドア事件で東京地検特捜部が捜査の一環として消去されたメールデータの復元を行った2006年頃からかもしれない。その後、2011年に発覚した大相撲八百長問題、まさに現在報道されている野球賭博問題などにおいて、携帯電話の調査にフォレンジック技術が使用されたことなどで注目を浴びている。 「フォレンジックス」という言葉は、科学的手法を用いて犯罪に関係する情報(証拠)を得ることを意味しており、犯罪捜査を含む司法の現場を起源としている。日本語でいうところの「鑑識」と考えれば分かりやすいかもしれない。 現在、フォレンジックスは50程度の分野に分かれており、これをまとめて「フォレンジックサイエンス」(法科学)と呼ぶ。法科学は、法生理学、法社会学、犯罪捜査学、デジタルフォレンジックスなどの大きな分野に分かれており(図1を参照)、米国の「CSIシリーズ」や日本の「科捜研シリーズ」などに代表されるように、フォレンジックサイエンスに特化した国内外のテレビドラマやニュースなどでもしばしば取り上げられることから、法医学、司法解剖、DNA鑑定、指紋分析などのフォレンジックサイエンスに関係する言葉を知っている読者も少なからずいるであろう。 本連載で紹介するデジタルフォレンジックスも、コンピュータフォレンジックス、ネットワークフォレンジックス、モバイルフォレンジックスなどを含む分野の総称である(図2を参照)。 【図1】 フォレンジックサイエンスの分野 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 筆者作成。 【図2】 デジタルフォレンジックスの分野 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 筆者作成。 もともと「デジタルフォレンジックス」という言葉は、コンピュータフォレンジックスの同義語として使用されていたが、電子データの保存機能を持つ媒体の種類の増加に伴い、デジタルフォレンジックスの分野も細分化され、現在へと至る。 筆者がデジタルフォレンジックスに関わり始めた10年ほど前は、デジタルフォレンジックスという言葉はほとんど聞かれず、筆者の指導教官だった米国の元司法機関出身者もコンピュータフォレンジックスという言葉を使っていたと記憶している。 現在でも、筆者の米国の同僚とコミュニケーションする際は、デジタルフォレンジックスではなくコンピュータフォレンジックスいう言葉を使用しており、デジタルフォレンジックスという言葉は、日本で広く普及している印象を受ける。 デジタルフォレンジックスは、フォレンジックスの法則に則り、電子データを含む媒体の証拠保全、調査・分析から特定した証拠の報告までの一連の流れを指す(図3を参照)。 【図3】 デジタルフォレンジック調査のプロセス 本連載の【第3回】(デジタルフォレンジックスとeディスカバリー)で詳しく解説するが、日本ではデジタルフォレンジックスという言葉が広義に使用されている印象を受ける。典型的なデジタルフォレンジックスは、保全した電子媒体から消去ファイルの復元などを行い、そこから隠れている証拠の断片を探していくなど、1つの媒体を深堀りする詳細かつ緻密な作業である。 デジタルフォレンジックスが使用される典型的な例としては、 情報漏洩における漏洩経路の特定 タイムスタンプの分析による発生事案の日時特定 隠しファイルの特定 などである。会計不正調査などにおいて、関係者から収集した大量なメールデータに対して横断検索をかけ、検索ヒットしたメールのレビュー作業に関しては、デジタルフォレンジックスというよりは、eディスカバリーに用いられる手法を用いた調査業務である。しかしながら、デジタルフォレンジックスは、eディスカバリーを構成する一要素であり、これら2つを切り離して考えることはできない。   2 現実のデジタルフォレンジックスの姿 米国のCSIシリーズなどに代表されるテレビドラマなどのメディアにおいても、しばしば容疑者の使用していたコンピュータを調査する場面がみられるが、ドラマで見られる調査シーンは、実際のあるべき姿とは異なった描写をされていることが多い。 実際のデジタルフォレンジック調査は、何時間にもわたりコンピュータの画面を注視し続ける地道な作業であり、華やかさは全く無いと言っても過言ではない。しかしながら、テンポの速いテレビドラマにおいては華やかな調査に誇張されて描かれている傾向がみられる。 ただ、指摘しなければならないポイントもある。ドラマにおいてデジタルフォレンジックスが描かれている多くのシーンでは、調査官が容疑者のコンピュータに直接アクセスをし、あっという間にその場で証拠を特定する様子が描かれている。しかし、実際の調査では証拠の特定までに数日、検証まで含めると数週間かかるケースも少なからずある。 また、よほどの理由が無い限り、容疑者が使用していたコンピュータに調査官が直接アクセスすることは、実際の調査において「最もやってはいけないこと」の1つである。 容疑者が使用していたコンピュータに直接アクセスすることは、殺人現場に落ちている血の付いたナイフを素手でつかむことに等しく、証拠の汚染へと繋がる。電子データは非常に変わりやすい特性を持っていることから、証拠保全を行わないまま直接コンピュータに触れることは、不正行為に使われていた状態を変えてしまい、証拠の改ざん又は証拠が消失するなどのリスクが発生する。 筆者がデジタルフォレンジックス調査の依頼を受ける際、テレビドラマなどで描かれるデジタルフォレンジックスを実際の調査の様子だと信じ込んでいるクライアントの期待値の調整にはしばしば苦労する。中には午前中に証拠保全を行い午後には結果が出ることを期待している依頼者もおり、実際に調査に要する期間を説明すると、テレビドラマを例に挙げて反論されることがある。 本連載の読者諸氏には、現実には、難易度の低い調査でも検証も含めた最終的な結果を出すまでには数日程度要することをご理解いただきたい。 また、デジタルフォレンジックスは「どんなことでもわかってしまう魔法のような調査手法」ではないことも併せて強調しておきたい。 デジタルフォレンジックスを行えば必ず何らかの証拠が見つかると信じている依頼者も少なからずいるが、不正行為を行う全員が会社で支給されるコンピュータを使って不適切な行為を行っているとは限らず、必ず証拠が発見される保証はない。 中には大胆に会社支給のコンピュータや会社のメールを使用した不正行為が行われている場合もあるが、多くは個人携帯や個人コンピュータを使うなど、会社支給のコンピュータの使用は最小限に止め、都合の悪い情報は消したり隠したりしている。 どのような不正行為でも「完全犯罪」は無く、不正行為者の油断や間違いから生まれる情報のほころびを特定するのがデジタルフォレンジックスなのである。 (了)

#No. 143(掲載号)
#池田 雄一
2015/11/05
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