減損会計を学ぶ 【第17回】 「減損損失の測定」 ~正味売却価額と使用価値~ 公認会計士 阿部 光成 減損損失の認識の判定は、割引前将来キャッシュ・フローの総額を用いて、それが帳簿価額を下回るかどうかによって行う(「固定資産の減損に係る会計基準」(以下「減損会計基準」という)二2(1))。 減損会計における次のステップとして、減損損失の測定があり、減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とすることとされている(減損会計基準、二3)。 減損損失の測定のポイントは、回収可能価額の算定、すなわち正味売却価額の算定と使用価値の算定にあると解される。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅰ 回収可能価額 回収可能価額とは、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額をいい、正味売却価額及び使用価値について、次のように定義されている(減損会計基準注解注1)。 【回収可能価額などの定義】 Ⅱ 正味売却価額 「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号。以下「減損適用指針」という)は、正味売却価額の算定は、同指針28項の考え方に基づいて行うとしている(減損適用指針25項)。 1 現在時点の正味売却価額 減損適用指針28項は、減損損失の測定において、明らかに正味売却価額が高いと想定される場合や処分がすぐに予定されている場合などを除いて、必ずしも現在の正味売却価額を算定する必要はないが、正味売却価額を算定する場合には、以下のようにして求められた資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して行われることとなると述べている。 【現在時点の正味売却価額】 (※) 上表の原則法、簡便法は便宜のために付した名称であり、減損適用指針で用いられているものではない。 (出所:監査法人トーマツ編『Q&A減損会計適用指針における会計実務』(清文社、2004年4月)140~141ページを一部修正) 2 将来時点の正味売却価額 減損適用指針29項は、将来時点(例えば、経済的残存使用年数経過時点)における正味売却価額を算定する必要がある場合(減損適用指針107項)には、次のように算定すると述べている。 【将来時点の正味売却価額】 (※) 上表の原則法、簡便法は便宜のために付した名称であり、減損適用指針で用いられているものではない。 (出所:監査法人トーマツ編『Q&A減損会計適用指針における会計実務』(清文社、2004年4月)144~145ページを一部修正) Ⅲ 使用価値 使用価値は、資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値として、以下のように算定される(減損適用指針31項)。 (了)
建設業をめぐる労災制度のポイント 【第4回】 (最終回) 「建設業の労災事故」 社会保険労務士 菅原 由紀 1 平成26年1月~6月の労災事故の発生状況 厚生労働省の調査によると、今年1月~6月に労災事故で死亡した人が前年同期比71人増加の437人で、死亡者の業種別内訳で、建設業が159名と約36%を占めていることがわかった。 【平成26年における死亡災害発生状況(速報)より一部抜粋】 建設業で死因となった主な事故は、屋根やはしごからの転落、建設機械や部材でのはさまれ・巻き込まれによるものが目立っている。 また、労災事故で負傷し、4日以上の休業が必要となった人は47,288人で、建設業では6,922人となっている。 【平成26年における死傷災害発生状況(死亡災害及び休業4日以上の死傷災害)(速報)】 死亡や重い負傷につながる労災事故が増えている背景として、厚生労働省は「景気回復や消費税増税前の駆け込み需要で各業種とも人手不足になり、経験が足りない労働者が増えたことが要因にある。」と指摘している。また、建設業においては、業界で働く労働者の高齢化も一因となっているのであろう。 2 労災かくしとは 事業者は、労働災害が発生したときには「労働者死傷病報告書」を労働基準監督署長に提出しなければならない。 「労災かくし」とは、事業者が労災事故の発生を隠すために、「労働者死傷病報告書」を故意に提出しないこと、または虚偽の内容を記載して提出するこという。 それでは、なぜ労災事故を隠すのか。その主な動機には以下のものが考えられる。 労災を隠す動機は、これらの動機のうち、どれか一つということは稀であり、いくつかの動機が複合するケースが多くみられる。しかし、理由の如何にかかわらず、「労災かくし」は犯罪であり、被災労働者又は遺族に深刻な不利益をもたらすことになる。 なお、「労災かくし」は労働安全衛生法違反であり罰則もある。悪質な場合は書類送検等の処分が行われる。マスコミによって事件が公表され、会社の信用が失われることもあるだろう。検察庁への送検件数は年々増えており、厚生労働省はこの問題への対策を強化している。 「労災かくし」の最大の被害者は、事故に被災した労働者である。被災した労働者は、適切な労災保険の手続きが行われていれば、治療、休業に対する補償をはじめ、障害が残った場合や死亡した場合でも被災労働者やその遺族は労災保険制度によって手厚く保護されることになる。 * * * 労災事故防止に向け、職場で安全パトロールの実施や安全教育の徹底等により建設現場の就業環境の整備を推進するとともに、事業者や建設現場で働く労働者、中小企業の事業者や一人親方といった人々は、前回までに解説した適用対象を理解した上で、適切な労災保険へ加入し、万が一労災事故が発生した場合には、労災事故の届出を行って被災者を保護することが求められる。 (連載了)
現代金融用語の基礎知識 【第10回】 「バーゼル銀行監督委員会」 事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹 1 バーゼル銀行監督委員会とは バーゼル銀行監督委員会とは、主要27ヶ国・地域の中央銀行と銀行監督当局の代表で構成される組織であり、そこでは参加国が協調して銀行監督に当たるための意思決定が行われている。 具体的には、国際的に活動する銀行の自己資本比率などについての基準を決定し、公表している。その基準は特に法的拘束力を有するものではないのだが、参加国はもちろん、それ以外の多くの国でも採用されている。 なお、「バーゼル」とは地名で、スイスのバーゼルのことである。スイスのバーゼルにある国際決済銀行に事務局が置かれていることから、そのように名付けられた。ちなみに、国際決済銀行とは、60ヶ国・地域の中央銀行で構成される組織であり、中央銀行間の協力を促進する役割を果たしている。 2 「バーゼル合意」と「BIS規制」 新聞の金融欄で「バーゼルⅢ」や「BIS規制」といった言葉を目にしたことがあるのではないだろうか。 実は、この2つの言葉は同じ意味である。 まず「バーゼルⅢ」とは、バーゼル銀行監督委員会が決定し、公表している、国際的に活動する銀行の自己資本比率などについての基準である。 「Ⅲ」が付いているように、「バーゼルⅠ」と「バーゼルⅡ」もあり、1988年に最初に決定されたものが「バーゼルⅠ」、「バーゼルⅠ」を改訂して2004年に決定されたものが「バーゼルⅡ」、「バーゼルⅡ」をさらに改訂して2010年に決定されたものが「バーゼルⅢ」である。 それらを総称して「バーゼル合意」あるいは「バーゼル規制」という。 一方、「BIS規制」の「BIS」とは、国際決済銀行のことで、Bank for International Settlementsの略称である。 バーゼル銀行監督委員会の事務局が国際決済銀行に置かれていることから、「バーゼル合意」のことを「BIS規制」ということがあるのだが、「バーゼル合意」は国際決済銀行が決めているわけではないため、正確な言葉とはいえない。 3 バーゼルⅢの日本の銀行への影響 バーゼル銀行監督委員会には日本も参加しており(日本からは日本銀行と金融庁が参加)、バーゼル合意は日本でも採用されている。 2010年に決定されたバーゼルⅢは、2013年から日本でも段階的に適用されており、2013年3月から、海外に営業拠点のある銀行に対して、バーゼルⅢに基づく自己資本比率規制が導入されている。 バーゼルⅢでは、自己資本比率規制以外にも、レバレッジ比率規制(過大なリスクテイクを抑制)や流動性比率規制(流動性の高い資産の保有を促進)が定められているが、それらも2019年初めまでには完全に実施される予定である。 (了)
2014年9月18日(木)AM10:30、Profession Journal No.86 が公開されました。 - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
日本の企業税制 【第11回】 「法人税改革は2段階で」 一般社団法人日本経済団体連合会 常務理事 阿部 泰久 1 はじめに 6月24日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2014」では、 とされており、平成27年度税制改正は法人税改革の初年度となる。 問題は、数年で20%台の具体化であるが、経団連では、平成27年度から平成29年度までの3年間で20%台を確保し、さらに25%を目指すことを提言している。いわば『2段階方式』であるが、なぜ、このような主張であるのかを解説しておきたい。 2 まずは20%台確保を 法人税改革は、アベノミクスの3本目の矢である成長戦略の一環である。成長戦略の内容によって達成目標とされる期間は様々であるが、最も喫緊のターゲットは「3年間でリーマンショック前の設備投資水準(70兆円/年)を回復する」との集中投資期間の設定であり、そのために平成26年度税制改正のいわゆる「秋の陣」で、生産性向上設備等投資促進税(期間:平成26年1月20日~平成29年3月31日)や研究開発税制の増加型の拡充をはじめとする大胆な投資減税が措置されている。 法人実効税率の引下げを柱とする法人税改革は、これらの政策措置と相伴って民間設備投資や研究開発投資を促進するとともに、政策措置の期限終了後には、その効果を確実に引き継ぐものとならなければならない。 すなわち、秋の陣で措置された各種投資減税が終了する平成28年度末の翌年度である平成29年度までには、法人実効税率20%台を確保する必要がある。これが、平成29年度税制改正までの3年間で20%台までの引下げを求める理由である。 3 さらに25%を目標に しかし仮に法人実効税率が29%台となったとしても、国際標準とされる水準とはなお乖離がある。 現在、先進国だけをみてもOECD加盟諸国の法人実効税率の平均は既に24%台となっている。直接、国際競争の相手国である韓国、台湾、ASEAN加盟国等のアジア諸国では、さらに低い水準であり、「日本の立地競争力を強化するとともに、我が国企業の競争力を高める」ためには、早急に25%台までの引下げを図る必要がある。 短期間で25%台までの引下げが実現できればよいのであるが、わが国の厳しい財政状況を考えれば、それは極めて困難である。「経済財政運営と改革の基本方針2014」では、法人実効税率引下げの実施に当たっては、 とされており、この考え方には経団連としても賛同している。 政府見通しでは、消費税率を予定通り来年10月から10%に引き上げ、その後の経済状況が順調に推移する「経済再生ケース」が実現できたとしても、2020年度(平成32年度)の国・地方合せた基礎的財政収支は対GDP比1.9%程度のマイナスであり、黒字化目標の達成のためには、さらなる収支改善が必要とされている。全体としては、さらなる増税が必至とされる中で、法人税収を減少させることはできない。 逆に考えれば、2020年度までのどこかで、財政再建目標を達成するためには、より大規模な税制改革がなされなければならず、それは単に消費税率の大幅引上げだけではなく、個人所得課税、資産課税等を含めた国税・地方税にわたる税制の抜本的な再構築になるはずである。 その中で、日本経済の持続的な成長のために、法人税をどのような形に改めていくことが必要であるのかも議論されなければならない。場合によっては、単に従来型の法人の所得に課税する税ではない形態、例えばキャッシュ・フローベースの法人税の導入までも議論の対象になり得るであろう。 法人実効税率25%台を目指すのであれば、そこまでを視野に入れて、どのような議論を展開するのかを準備する必要がある。 4 財源をどうする 法人実効税率引下げを図る上で、当然のことながら、最大の問題は財源である。 「経済財政運営と改革の基本方針2014」では、法人実効税率引下げの財源については、 とされている。 ここで重要であるのは、法人税収の増加分の中で「アベノミクスの効果により日本経済がデフレを脱却し構造的に改善しつつあること」の成果として、恒常的な税収改善と考えられる部分は財源になると位置づけられていることであり、政府税制調査会の取りまとめの中でも、いわゆる法人税の中での税収中立や単年度の税収中立ではないことは明記されている。 しかし、法人実効税率を6%引き下げるのであれば2兆6~7千億円の財源を要する。仮に、税率引下げを5年×1.2%あるいは6年×1%程度のペースで行うならば、成長による法人税収の自然増収だけで賄うことができるとの見方もあるが、そのような考え方ではなく、3年間で6%の引下げを目指すからには、実質減税を確保しながらも法人税の課税ベース見直しでの対応も必要であると考える。 その上で重要であるのは、課税ベースの見直しをどのような順番、組み合わせで考えていくかである。例えば、減価償却制度や、租税特別措置の中での研究開発や設備投資促進に関わる制度は、集中投資期間のうちに縮減・廃止されることとなってはならない。見直すとしても平成29年度の課題であると考える。一方、欠損金や受取配当益金不算入制度は、法人税の基本的仕組みであり、平成27年度改正の中で正面から議論すべきであると考える。 法人事業税の見直し=外形標準課税の拡充は、それが所得割部分から付加価値割分への単純な移行に終わるのであれば、見かけ上の実効税率を下げたとしても法人企業の税負担軽減にはつながらないが、法人実効税率に占める地方法人課税のウエイトを考えれば、この問題も避けては通れないのであろう。しかしながら、付加価値割の大部分を報酬給与額で占める人件費課税であることからは、とりわけ、政府が賃金引上げ、所得拡大を求めている中で、何らかの配慮がなされるべきである。さらに、現行資本金1億円超である課税対象法人を中小法人に拡げることは、絶対あってはならない。 5 おわりに 平成27年度税制改正における法人税改正は、既に年明けから、経済財政諮問会議や政府税制調査会を通じて実質的な検討が始まっており、9月下旬から自民党税制調査会の審議が開始されれば、一挙に最終盤を迎えることになる。 経団連では、ここで述べたような方針での対応を図っていくが、その状況については逐次、お知らせしていくこととしたい。 (了)
マンション保有者のための相続税対策とその留意点 【第1回】 「既存のマンション保有者が検討すべき対策」 ミレニア綜合会計事務所 代表税理士 甲田 義典 【はじめに】 来年からはじまる相続税の増税により、相続税対策についての関心が高まっている。 特に近年では、購入代金のうち建物部分の比率の占める割合の高い都心の高層マンションを取得することで、評価の低い建物に組み替えて財産の評価額を減らし節税をはかることを検討しているケースもあるようだ。 このような背景を踏まえ、本稿では相続税対策を中心に居住用・投資用を目的とした区分所有によるマンション保有者または購入検討者に焦点を当てた税金対策について、①既存のマンション保有者と②購入検討者に分け、全2回にわたり解説する。 第1回は、既存のマンション保有者が検討すべき対策について解説したい。 1 『居住用マンション』を保有している場合 居住用のマンションを保有している場合には、主に以下の特例の活用が考えられる。 (1) 贈与税の配偶者控除 贈与税の配偶者控除は、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合において、110万円の贈与税の基礎控除のほかに、最高2,000万円までの控除(配偶者控除)をすることで、合計で年間2,110万円までの贈与を無税で行うことが認められている(相法21の6)。 したがって、マンションの評価額が2,110万円以下であれば、マンションの所有権のすべてを無税で配偶者へ移転することが可能である。ただし、この特例を受けた居住用不動産や金銭は、贈与を受けた配偶者の二次相続の相続財産として相続税の課税対象となるため、二次相続対策もあわせて検討する必要がある。 (2) リフォームした場合の所得税の特例 リフォームをする場合においても、相続税対策では、マンションの取得と同様に現金が「修繕費」や「資本的支出」というかたちで建物へ組み替えられるため、財産の評価額を減らす効果が期待できる。 また、所得税についても、居住者が住宅ローン等を利用して一定要件を満たすリフォームを行った場合には、そのリフォームに係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除する「住宅借入金等特別控除(居住年が平成26年4月1日以降で認定住宅であれば控除期間最長10年間、控除額最大500万円)」又は「特定増改築等住宅借入金等特別控除(居住年が平成26年4月1日以降で控除期間最長5年間、控除額最大62.5万円)」の適用が認められている(措法41、41の3の2)。 そのほか、住宅ローン等を利用しない場合であっても、居住者が既存住宅について一定の要件を満たす住宅耐震改修をしたとき、バリアフリー改修工事若しくは省エネ改修工事をしたときは、それぞれの規定により定められた金額を、その年分の所得税額から控除する「住宅耐震改修特別控除(控除額最大25万円)」、「住宅特定改修特別税額控除(控除額最大 バリアフリー:20万円 省エネ:35万円)」の適用を受けることが認められている(措法41の19の2、41の19の3)。 なお、適用要件や手続規定の概要は、国税庁ホームページの以下のリンク先を参照されたい。 (3) 小規模宅地等の特例 相続の開始の直前において被相続人等(被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族。以下同じ)が使用していた一定の居住用宅地で240㎡(平成27年1月1日以後の相続又は遺贈により取得した場合には330㎡)までの部分は、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、その部分の80%を減額することができる(措法69の4)。 小規模宅地等の特例は、相続税対策の出口戦略(すなわち相続発生時の税金対策)として検討していくのが通常である。しかし、区分所有によるマンションの場合には、土地(敷地利用権)部分の価値が相対的に低いケースが多いため、節税効果は限定的なものになると考えられる。 2 『投資用マンション』を保有している場合 (1) 不動産管理会社の活用 投資用マンションを複数保有している場合には、法人へ名義変更して家賃収入を個人から法人への付け替えを検討することが可能と考えられる。 一般的に不動産管理会社を利用した節税効果には、不動産を保有する者に集中する不動産賃貸収入を、相続人等が出資した不動産管理会社を通じて役員となった親族等へ給与を支払うことにより分散させ、不動産を保有する者の不動産所得に係る所得税等を節税できるほか、年間の不動産収入に係る相続財産の増加を防ぐ効果が期待できる。 また、親族等が得た給与収入は、将来の相続税の納税資金として確保することが可能であるだけでなく、不動産管理会社にプールされた内部留保を役員退職金として支給することで所得税等を軽減させることが可能と考えられる。 (2) リフォームをした場合(修繕費と資本的支出) 上述のとおりリフォームによる支出は、マンションの取得と同様に現金が建物へ組み替えられ財産の評価額を減らす効果が期待できる。 投資用マンションのリフォームに係る修繕費で、通常の維持管理や修理のために支出されるものは不動産所得の必要経費になる(所法37)。しかし、一般に「修繕費」といわれるものでも資産の使用可能期間を延長させたり、資産の価額を増加させたりする部分の支出は原則として「資本的支出」として「修繕費」とは区分され、不動産所得の計算上、減価償却の方法により投資用マンションの耐用年数にわたり各年分の必要経費として算入されることになる(所令127、181)。 (3) 相続時精算課税制度の活用 相続時精算課税制度は、贈与時に贈与財産に対する贈与税を納め、その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行う制度である。 適用対象者は、贈与年の1月1日現在において贈与者は65歳以上(平成27年1月1日以後の贈与は60歳以上)の親、受贈者は贈与者の推定相続人である20歳以上の子(子が亡くなっているときには20歳以上の孫を含む。なお、平成27年1月1日以後の贈与は、推定相続人であるかを問わず20歳以上の孫も含まれる)とされ、贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はなく、選択届出書の提出などの一定の手続きを行うことで、贈与者1人あたり最大2,500万円までの財産を贈与税が課されることなく移転することが認められている(相法21の9他)。 例えば、この2,500万円の非課税枠を活用して子や孫に贈与すれば、マンションの家賃収入は子・孫に付け替えることが可能となるため、相続税対策と同時に親のアパート収入に係る所得税を軽減させる効果が期待できる。 ただし、相続時精算課税制度を選択した場合の相続税計算上取り込まれる贈与財産の価額は、贈与時の価額(時価)となる。したがって、生前贈与したマンションが相続時に値下がりしていたような場合には、相続税負担が増える可能性があるため留意が必要である。 (4) 小規模宅地等の特例 相続の開始の直前において被相続人等が不動産賃貸業の用に供していた一定の貸付事業用宅地で200㎡までの部分は、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、その部分の50%を減額することができる(措法69の4)。 なお、区分所有のマンションを保有している場合の節税効果が限定的なものになる点に関しては、居住用の場合と同様である。 (了)
有料老人ホームをめぐる 税務上の留意点 【第2回】 「有料老人ホームにおける法人税実務のポイント」 税理士 齋藤 和助 1 はじめに 『有料老人ホーム』とは【第1回】「老人ホームの種類と特徴」でみたように、公的な補助を受けることのない民間施設であり、その特徴等は次のようなものであった。 有料老人ホームの会計は、入居時に高額な入居一時金を預かることから、厚生労働省が「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」(以下「指導指針」という)を設け、経理会計の独立性、事業収支計画の策定、情報公開と監査制度等を定めている。 有料老人ホームの税務は、株式会社形態のものと非営利法人形態のものでは課税対象が異なり、株式会社形態の場合は、すべての所得が法人税等の課税対象となるが、非営利法人形態の場合には収益事業から生じた所得のみが法人税等の課税対象となる。 今回は、有料老人ホームの会計と法人税におけるポイントについてみていく。 2 有料老人ホームの経営主体 有料老人ホームの設置主体は、少なくとも個人経営ではなく、少数の個人株主等による独断専行的な経営が行われる可能性のある体制でないことが必要とされる。また、他業を営んでいる場合には、その財務内容が適正であり、さらに公益法人にあっては、有料老人ホームの事業を行うに当たって主務官庁の承認を得ていることが必要である。 つまり、事業を確実に遂行できるような経営基盤が整っているとともに社会的信用の得られる経営主体であることが必要とされる。また役員等の中には、有料老人ホーム運営について知識、経験を有する者等を参画させる必要がある(指導指針2)。 3 介護付有料老人ホームにおける介護保険給付 混合型特定施設(要介護者に限らず、要支援や自立者も入居できる施設)として指定を受けた介護付有料老人ホームは、介護保険上のサービス提供が可能となる。そして、対価として利用者の代理受領方式よって介護保険給付を受けることができる。 特定施設として指定を受けた有料老人ホームは、「指定介護老人福祉施設等会計処理等取扱指導指針」による会計処理が必要となる。 4 有料老人ホームの特徴(終身利用契約) (1) 終身にわたり施設の利用及びサービスの提供を行う 事業者が入居者より、入居一時金(終身にわたって受領する家賃相当額の前払金)として一括受領することにより、入居者に終身にわたり、施設・設備を提供する。 また、入居一時金と併せて介護一時金(介護保険給付対象サービス以外のサービス、介護職員等の過配置に対応するいわゆる「上乗せ」サービスについて将来必要と考えられる費用を入居時に一時金として受け取るもの)を徴収するホームもある。 なお、管理費、食費、水道光熱費、自己負担分の介護費用等は毎月入居者から徴収する。 (2) 安定した継続経営の維持が重要 有料老人ホームは老人を対象に、終身利用の施設及びサービスを提供していることから、入居者の保護と生活の安定を重視するとともに、安定的かつ継続的な事業運営が求められる。 (3) 二重構造の収入による運営 事業運営の収入基盤は、入居一時金と月額費用からなっている。入居一時金は固定的収入であり、月額費用は変動的収入である。 したがって、このような収入とのバランスのとれた支出を計画し、管理する事業運営が求められる。 5 有料老人ホームの会計実務のポイント 有料老人ホーム事業は、一般企業が行う製造、販売、サービス等といった事業と同様に社会に対して財貨及び役務の提供を行っていることから、一般企業と同様に、「企業会計原則」「会社法」「財務諸表等規則」等の影響を受ける。 その中で、特に留意すべき事項には次のようなものがある。 (1) 経理会計の独立 有料老人ホームの会計は、独立して行われることが求められる。すなわち、有料老人ホーム以外にも事業経営を行っている経営主体については、その有料老人ホームについての経理・会計を明確に区分し、他の事業に流用しないことが求められる(指導指針8(4))。 (2) 資金収支計画及び損益計画 有料老人ホームは、長期安定的な経営が求められることから、最低30年以上の長期の資金収支計画及び損益計画を策定し、少なくとも3年ごとに見直しを行うことが求められる(指導指針8(3))。 (3) 介護サービス事業別の算出 有料老人ホームが介護サービス事業を行う場合には、施設又は事業所の単位ごとに経理を区分するとともに、さらにそれぞれの介護サービス事業別に会計を区分して行うことが求められる。 (4) 入居一時金の管理と運用 有料老人ホームの会計の特徴は、多額の入居一時金を預かることにある。この資金は、その本来の目的に使用されなければならず、他の事業に流用してはならない。そのため、他の事業と区分して、入出金や残高の管理を行う必要がある。またその資金の運用に当たっては、元本が回収される可能性が高く、かつ、なるべく高い運用益が得られるような方法で管理することが望ましいとされる。 (5) 有料老人ホームの情報公開等 入居一時金を受け取る有料老人ホームは、貸借対照表及び損益計算書又はそれらの要旨についても、入居者及び入居希望者の求めに応じて閲覧に供することが求められる。また、事業収支計画についても閲覧に供するよう努めるとともに、貸借対照表等の財務諸表について、入居者等の求めがあればそれらの写しを交付するよう配慮が求められる。 また、すべての有料老人ホームは、毎年7月1日現在の直近年度の貸借対照表、損益計算書等の財務諸表を都道府県知事等に提出することが求められている。 6 入居一時金の処理 (1) 入居一時金の会計処理 ① 入居一時金の性格 老人福祉法では、入居一時金として家賃、敷金、介護等のサービス費用等以外の権利金等を受領することを禁じている。指導指針において、入居一時金は次のいずれかの方法により算定することが求められている。 ② 入居一時金の償却 入居一時金はそれぞれの区分に応じて次のように計算し、「入居金収益」に計上する。 (2) 入居一時金の税務処理 法人税法上は、契約の終了と同時に返還される保証金や敷金などは、単なる預り金であり課税の対象とはならないが、返還しない金額は益金の額に算入する。その計上時期は、以下の通達にあるように、契約の終了時ではなく、返還しないこととなった日の属する事業年度である。 したがって、上記②ロの計上時期は(ⅰ)となるため、(ⅱ)を採った場合には申告調整が必要になる。 (3) 返還と保全措置 入居者が想定居住期間内に死亡又は退去した場合には、入居一時金の返還が生じる。そのため、入居一時金は銀行保証等の保全措置を講じることが求められる。 老人福祉法では、 とされている。 7 非営利法人形態の有料老人ホームに対する課税 株式会社形態の有料老人ホームは、すべての所得に対して課税を受ける。非営利法人形態の中でも、非営利型法人以外の一般社団・財団法人や医療法人が運営する有料老人ホームについても、株式会社形態の有料老人ホームと同様の全所得課税である。 非営利形態の有料老人ホームの中で、公益社団・財団法人、社会福祉法人、社会医療法人、宗教法人、NPO法人、非営利型法人に該当する一般社団・財団法人などは、収益事業に該当する事業から生じた所得に対してのみ課税を受ける。 * * * 次回は、「有料老人ホームにおける消費税実務のポイント」についてみていく。 (了)
平成26年度税制改正における 消費税関係の改正事項 【第5回】 (最終回) 「輸出物品販売場制度(外国人旅行者に係る消費税免税制度)の見直し」 税理士 金井 恵美子 平成26年度税制改正においては、外国人旅行者に係る消費税免税制度について、免税対象物品の拡大、手続の簡素化等の改正が行われた。 1 改正事項 2 改正の理由 輸出物品販売場を経営する事業者が、所定の手続により、非居住者に対して、通常生活の用に供する物品を譲渡した場合には、消費税は免税となる(消法8①、消令18①)。これは、日本国内で譲渡されたものであっても、外国人旅行者が国外に持ち出す目的で購入し、国内で消費しないものの譲渡は、事業者が輸出販売するのと同じ結果となることから、免税の取扱いをするものである。 従来、消耗品(食品類、飲料類、たばこ、薬品類及び化粧品類並びにフィルム、電池その他の消耗品)は、出国までに国内で消費する可能性を排除できないことから、この免税の対象となる物品から除くものとされていた。 しかし、現状において、アジアからの観光客を中心に、食品類、薬品類、化粧品類等を自国へ持ち帰り、土産物とする実態が多く見られ、化粧品や飲食料品等を免税対象とすれば、外国人旅行者の利便性向上により、日本国内での旅行消費の拡大を期待することができる。 そこで、外国人旅行者の増加を図るとともに、訪日外国人の旅行消費を拡大することにより、我が国の経済成長や地域の活性化を達成する目的から、免税対象物品に消耗品を加えることとされた。 3 免税となる譲渡の要件 今次の改正により、輸出物品販売場における譲渡の免税は、一般物品または消耗品の別に、それぞれ次のように整理された(消令18②二、⑦二)。 (1) 一般物品 一般物品のうち、次のような方法により譲渡するものは、免税となる(消令18②一、⑦一)。 一般物品とは、通常生活の用に供する物品のうち消耗品以外のものをいう(消令18①)。 (2) 消耗品 消耗品のうち、次のような方法により譲渡するものは、同一店舗で1日に販売する対価の額の合計額が50万円までの範囲内のものに限り、免税となる(消令18②二、⑦二)。 消耗品とは、食品類、飲料類、たばこ、薬品類及び化粧品類並びにフィルム、電池その他の消耗品をいう(消令18①)。 4 免税対象金額の判定 同一の輸出物品販売場において、同一の日に、同一の非居住者(外国人旅行者等、外国為替及び外国貿易法6条1項6号に規定する者をいう。)に対して複数の一般物品又は消耗品を譲渡した場合には、一般物品又は消耗品等の区分に応じて、それぞれの対価の額の合計額により、免税の対象となるかどうかを判断する(消基通8-1-2)。 【具体例①】 【具体例②】 【具体例③】 【具体例④】 【具体例⑤】 なお、同一の輸出物品販売場において、同一の日に、同一の非居住者に対して時間又は売場を異にして、複数の一般物品又は消耗品等を譲渡した場合も同様である(消基通8-1-2)。 5 書類の保存 輸出物品販売場における免税は、輸出物品販売場を経営する事業者が、外国人旅行者から提出を受けた購入者誓約書を保存しない場合には、適用されない(消法8②)。 また、同一店舗で1日に販売する一般物品の対価の額の合計額が1万円超であるため旅券等の写しの提出を受けた場合は、その写しを保存しなければならない(消令18⑧)。 ただし、災害その他やむを得ない事情によりその誓約書等を保存することができなかったことをその輸出物品販売場を経営する事業者において証明した場合は、この限りでない(消法8②)。 6 購入記録票等の様式の弾力化と記載事項の簡素化 購入記録票及び購入者誓約書については、改正前は消費税法施行規則において様式が定められていたが、改正により、特定の様式ではなく、法令に定められた事項が記載された書類であればよいこととされた(消規6①~④)。 また、購入記録票等に記載すべき事項の全部又は一部が記載された明細書等(購入者に対し交付する領収書の写しなど)を購入記録票等に貼り付け、かつ、その明細書等と購入記録票等との間に事業者が割印をした場合には、その明細書等に記載された事項については、購入記録票等への記載を省略できることとされた(消規6⑦)。 7 適用時期 この改正は、平成26年10月1日以後に行われる課税資産の譲渡等に適用される(消令附則2)。 8 留意点 なお、輸出物品販売場における免税の取扱いについて、国税庁消費税室は、「輸出物品販売場制度に関するQ&A」(平成26年8月)を公表している。 (連載了)
貸倒損失における税務上の取扱い 【第26回】 「判例分析⑫」 公認会計士 佐藤 信祐 第25回においては法人税基本通達9-6-2についての基本的な内容についての解説を行った。 第26回目にあたる本稿においては、日本興業銀行事件において論点となった「社会通念」についての解説を行う。 (ⅱ) 社会通念 第1審判決、最高裁判決のいずれにおいても、社会通念上、回収不能な状態にあったということで貸倒損失の計上を認めている。 この「社会通念」という内容であるが、中里実教授が原告側として裁判所に提出した鑑定書において、債権の無価値とは、 と述べられている。このように、社会通念とは法解釈だけでなく、事実認定においても考慮されるべきものであるため、本事件においても、回収可能性の判断において、「社会通念」という概念を織り込んだものといえる。 また、社会通念という概念について、渡辺充教授は、 としたうえで、 と指摘されている。 このように、社会通念により回収可能性を判断するというのは至極当然のことであり、法人税基本通達の前書きにおいても、 と書かれており、法人税基本通達9-6-2において、「その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合」とあるが、これを社会通念に基づいて判断するということになる。 しかしながら、社会通念という概念については、多種多様に理解される余地があり、その結果、納税者の地位が極めて不安定になってしまうということは否めない。この点につき、大渕博義教授は、 と指摘されている。 これに対し、本判決を受けて、「平成16年12月24日最高裁判決を踏まえた金銭債権の貸倒損失の損金算入に係る事前照会について」として国税庁のHPに公開しているが、本判決を受けた結果として課税当局の対応が変わったという話は聞いていない。さらに、 という事情もある。 すなわち、事前照会のような提出される事実関係に限界があるようなケースでは、当然のことながら、課税当局の回答としても提出される事実関係を前提とした回答になってしまうため、社会通念のような曖昧なものについてどこまで回答できるのかは疑問である。 そもそも、事前照会を行うような納税者はどちらかというと保守的に租税法を解釈する納税者が多いため、「社会通念」のような曖昧なもので、かつ、意図的ではないにしても、事前照会で提出した事実関係とは異なる事実関係が知らないところで存在し、それが税務調査で指摘されてしまうリスクを考えると、それに頼った対応というのはあまり望ましくないというのも実態である。それを考慮すれば、子会社の再生において、第2会社方式により旧会社を特別清算するという手法を選択しているケースが多いが、法人税基本通達9-6-1(2)により形式的に判断できるやり方の方が好ましいというのも実態である。 しかしながら、平成23年度税制改正により、貸倒引当金制度は、銀行、保険会社その他これらに類する法人及び中小法人等に限定され、それ以外の法人は貸倒引当金を認識することができなくなったという事情を考慮すると、これらの法人が保有する不良債権について、法人税基本通達9-6-1(4)、9-6-2又は9-6-3により貸倒損失を計上するということは十分に考えられ、そのような場合には、「債権者側の事情、経済的環境等も踏まえ、社会通念に従って総合的に判断」し、回収可能性を判定していくことも必要になってくると考えらえる。 ※渡辺充教授は石井良三氏の論文(「判例における社会通念(一)(二)」『判例時報』235号、238号)を紹介されている。また、社会通念について深く調べたい読者には、法律時報52巻5号の特集において「社会通念と法」が挙げられているため、こちらを参考にされたい。 (ⅲ) 日本興業銀行事件における法人税基本通達9-6-2の検討 本事件においては、修正母体行責任を無視すれば債権の一部が回収可能性であり、修正母体行責任を考慮すれば債権の全部が回収不能であったということになる。控訴審においては修正母体行責任が無視されたのに対し、第1審、上告審においては修正母体行責任が考慮されたという意味で、非常に興味深い判決である。修正母体行責任を考慮するのであれば、実際に回収不能であることは明らかであるため、法人税基本通達9-6-2の適用は当然に問題にならない。 しかしながら、修正母体行責任を考慮するという意味で、法人税基本通達9-4-1の要素が混入しており、そうであるならば、債権放棄の効力が確定していたのであれば、法人税基本通達9-6-1(3)(4)ではなく、法人税基本通達9-4-1により判断すべきであったということにもなり、法人税基本通達9-4-1の位置付けに疑問を感じさせる裁判でもあった。 また、最高裁においては、回収不能であったという点のみが判断され、債権放棄の効力については判断されなかったが、法人税基本通達9-6-2が認められれば、他は判断する必要がないということであったと推定される。 いずれにしても、本判決については、様々な議論が行われたという意味で重要な判決ではあるが、実際に、債権者の事情も考慮した上で貸倒損失の判定を行うことは稀であり、また、債務者の事情についても社会通念や経済事情をどれだけ織り込めるのかという点については、実務上、かなり保守的にならざるを得ないため、本判決によって実務が変わったということは聞いていない。そのため、本判決が実務に与える影響はかなり限定的であるというのが個人的な感想である。 (了)
生産性向上設備投資促進税制の実務 【第10回】 (最終回) 「各制度の比較」 税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 小幡 修大 生産等設備に関する特別償却や税額控除といった税制措置には、本連載で取り上げた「生産性向上設備投資促進税制」(措法42の12の5)のほかに、平成25年度改正により創設された「生産等設備投資促進税制」(措法42の12の2)が存在する。 この他にも設備投資に関する特別控除や税額控除の税制措置については「中小企業投資促進税制」(措法42の6)という制度も存在し、さらに生産性向上設備投資促進税制については、前回取り上げたように「中小企業投資促進税制の上乗せ措置」も存在することから、適用の検討に当たっては、各制度について横断的に理解する必要がある。 そこで今回は、本連載の最終回として、設備投資に関する各税制について整理し理解を深めるために、一覧表にしてその概略をまとめることとした。 各制度の比較表 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (連載了)