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《速報解説》 「所得税法等の一部を改正する法律」(平成25年法律第5号)の一部改正規定の内容について(平成25年5月30日 財務省公開情報)

《速報解説》 「所得税法等の一部を改正する法律」 (平成25年法律第5号)の 一部改正規定の内容について (平成25年5月30日 財務省公開情報)   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   (1) 情報の概要 5月30日付で財務省より次の情報が公開され、本年3月29日に可決・成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(平成25年法律第5号)の改正規定の一部に、税制改正大綱等との齟齬があることが公表された。 毎年の税制改正は、税制改正大綱の内容に基づいており、本来であれば税制改正大綱と改正規定の内容は一致しているはずである。しかし、税制改正関係の政令の策定作業中に、租税特別措置法41条の19の3(いわゆる「バリアフリー改修に係る投資減税」)の一部に、経過措置の規定もれがあることが発覚した。 この規定もれにより、投資減税の対象となる改修工事限度額の一部について、税制改正大綱等の内容と法律の規定が齟齬を来した状態となっている。   (2) 税制改正大綱の内容と租税特別措置法の規定 「平成25年度税制改正の大綱」(平成25年1月29日閣議決定)等において、「バリアフリー改修に係る投資減税」における改修工事限度額と控除率については、入居時期に応じて、次のように説明されている。 (表1) 税制改正大綱等における記載内容 経過措置の規定もれが生じたのは、居住年が「平成25年1月~平成26年3月」の部分である。 租税特別措置法41条の19の3第1項1号では、投資減税の対象となる改修工事限度額を「・・・(当該金額(筆者注:改修工事等に要した費用の額)が200万円を超える場合には200万円とし、平成24年分については、当該金額が150万円を超える場合には150万円とする。)・・・」と規定している(下線:筆者)。 この規定内容によると、平成24年分の改修工事限度額は150万円となるが、平成25年分以後の限度額は200万円となる。 本来であれば、改正税法の附則等において、経過措置として、「平成25年1月から平成26年3月入居分の改修工事限度額150万円」が規定されるべきであったが、この経過措置の規定もれにより、上記の条文(租税特別措置法41条の19の3第1項1号)に従い、平成25年1月から平成26年3月入居分の改修工事限度額は200万円となり、当該金額を150万円とした税制改正大綱等の内容と整合していないこととなる。   (3) 取扱い このように現状の改正規定は、税制改正大綱等の内容と齟齬を来しているが、 から、平成25年1月から平成26年3月までの入居分については、改修工事限度額を現行の条文通り「200万円」とすることとなった。 このため、上記(表1)を租税特別措置法の規定に従って修正すると、下記(表2)の通りとなる。 (表2) 実際の取扱い (了)

#No. 22(掲載号)
#篠藤 敦子
2013/06/12

《速報解説》 「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査上の留意事項について」(公開草案)の解説

《速報解説》 「訂正報告書に含まれる 財務諸表等に対する 監査上の留意事項について」 (公開草案)の解説   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年5月31日付けで、日本公認会計士協会は、「監査・保証実務委員会研究報告「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査上の留意事項について」(公開草案)を公表した。 意見募集期間は、平成25年6月20日までである。 公開草案の本文は、日本公認会計士協会のホームページから入手できる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 公開草案の内容 1 公開草案の趣旨 公開草案は、近年における、上場会社において不適切な会計処理が発覚しそれを原因として訂正報告書が提出されることになった場合の事例を基に、監査人として、監査業務の受嘱、監査計画の策定と監査手続の実施、第三者委員会又は内部調査委員会の調査報告書の利用の可否等の判断、監査人が交代している場合の対応、監査意見の表明等において監査上留意すべき事項を取りまとめ、実務上の適切な対応に資することとしたものである。 公開草案に関連するものとして、次のものがある。 2 監査人の留意点 公開草案は、監査人に対して、訂正報告書に含まれる財務諸表の監査を行う場合においても、職業的専門家としての正当な注意を払い、懐疑心を保持、発揮して監査業務を遂行することとなるが、本研究報告に記載されている留意事項を踏まえて対応することが望まれると述べている。 公開草案は、監査基準委員会報告書等に触れながら、監査上留意すべき事項を述べているが、訂正後の財務諸表等に対する監査の受嘱は、新規の監査契約の受嘱であり、財務諸表全体の監査が必要であるため、すべての監査基準委員会報告書等に準拠することになると述べられている。 また、財務諸表監査に当たっては、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠することが求められることから、訂正後の財務諸表に対する監査においても、監査契約受嘱の可否の決定から監査報告書提出までの業務の品質管理について、通常の財務諸表監査と同様、適切に行われる必要があると述べられている。 訂正後の財務諸表に対する監査は、通常の財務諸表の監査と同様、監査対象は訂正箇所だけでなく、それを含んだ財務諸表全体である。実務上、訂正後の財務諸表を開示する方法として、訂正した部分だけを開示する方法も見受けられるが、監査人は、通常の財務諸表と同様に、訂正後の財務諸表全体に対し、監査意見を表明することに留意する必要がある。 このため、訂正後の財務諸表等について監査を実施する際には注意が必要と思われる。 3 公開草案が扱っている項目 公開草案では、次の事項を取り扱っている。 全体として46ページからなる大部のものであり、また、詳細に説明がなされているので、訂正後の財務諸表等に対する監査の実務において、有益な内容であると思われる。 (了)

#No. 22(掲載号)
#阿部 光成
2013/06/11

《速報解説》 平成25年度税制改正法に係る政省令の公布(5/31)について

《速報解説》 平成25年度税制改正法に係る 政省令の公布(5/31)について   弁護士 木村 浩之   1 はじめに 平成25年5月31日付けで、平成25年度税制改正法(平成25年3月30日付けで公布された所得税法等の一部を改正する法律)の施行に伴う関係政省令の改正について、公布がなされた(官報:平成25年5月31日付(特別号外第15号))。 例年であれば、法律の改正と時期を同じくして政省令の改正についても公布がなされるところ、平成25年度税制改正では、平成24年末における政権交代等の影響から、法案の提出時期が遅くなり、それに伴って、一部の政省令について改正法の公布までに改正が間に合わず、先送りとなっていたものである。 今般、残りの政省令の改正がなされたことにより、平成25年度税制改正に伴う規定の整備がひととおりなされたことになる。   2 改正の概要 今回改正がなされた政省令は、主に改正された法律(特に租税特別措置法)の施行に伴う用語の整備や必要な細目の制定が中心となっている。 中でも、租税特別措置法の改正として大幅な見直しがなされた金融・証券税制のうち、①金融所得課税の一体化の拡充に関連する用語の整備が多くみられ、そのほか、重要なものとしては、②事業承継税制の見直しに関する租税特別措置法施行規則(省令)の改正がなされている。 以下では、これら①②の改正について簡潔に解説することとする。   3 金融所得課税の一体化の拡充に関連する改正 平成25年度税制改正では、金融所得課税の一体化の拡充の一環として、公社債等及び株式等に係る所得に対する課税について見直しがなされた。 すなわち、従前の公社債等の利子等に対する課税方式(一律源泉分離課税)及び公社債等の譲渡所得等に対する非課税措置を改め、公社債等を国債や公募公社債等の特定公社債等とそれ以外の一般公社債等に分けた上で、特定公社債等に対しては、利子等についても、譲渡所得等についても、一律20%(国税15%、地方税5%)の申告分離課税とされた。 その上で、特定公社債等に係る所得等(利子等及び譲渡所得等)については、上場株式等に係る所得等(配当等及び譲渡所得等)との損益通算が可能とされ、金融所得課税の一体化が拡充されている。 今回の政省令の改正では、この公社債等及び株式等に係る所得に対する課税の見直しに伴い、関連する政省令において用語の整備及び必要な細目の制定がなされている。   4 事業承継税制の見直しに係る改正 いわゆる事業承継税制(非上場株式等に係る相続税等の納税猶予制度)については、その適用要件が厳格であったことから、利用の低迷が指摘されていた。そこで、平成25年度税制改正では、より多くの中小企業経営者が利用しやすい制度に改めるために、適用要件の緩和等が図られている。 すなわち、改正法では、適用要件の緩和として、①後継者の親族要件の廃止(従前は親族間での承継が必要であったものが、親族に限らず、親族以外の従業員を後継者とすることも可能とされた)、②雇用確保要件の緩和(事業承継後、毎年8割以上の従業員の雇用確保が必要であったものが、5年間平均で8割以上であればよいとされた)などの改正がなされている。 さらに、今回の省令改正により、③先代経営者の役員退任要件の緩和(従前は役員から退任する必要があったものが、代表者を退任すれば、役員として残留することも可能とされた)などの改正がなされている。 なお、これらの適用要件の緩和に係る改正については、平成27年1月1日以降の贈与等に適用されることになる。  (了)

#No. 22(掲載号)
#木村 浩之
2013/06/06

monthly TAX views -No.5-「金融所得一体課税、次の課題は「金融所得」の創設」

monthly TAX views -No.5- 「金融所得一体課税、 次の課題は「金融所得」の創設」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   日本版ISA(NISA)や教育資金一括贈与非課税措置の創設などに注目が集まる平成25年度税制改正だが、金融所得の一体課税が平成28年1月から大きく進むことが決定されたことも忘れてはならない重要事項である。 平成16年6月、旧政府税制調査会が「金融所得課税の一体化についての基本的考え方」と題する報告書を公表して以降、自民党政権下の平成21年から上場株式等の譲渡損と配当の損益通算が可能になり大きな一歩を踏み出したが、それ以来の進展である。 筆者が重要と考える点は、公社債の利子所得が含まれることになった点と、債権についてもリーマン債のように価値を喪失した場合、それを損失とみなして損益通算、繰越控除の対象とすることができるようにした点である。 価値喪失のような損失を、特定口座で管理されていれば損益通算可能としたことは、「損失」の概念を広げることであり、資産の運用がリスクを帯びる中で、リスク軽減を図るためには大変重要な話だと考えている。 これにより、金融所得と一括りにされる株式譲渡損益、配当と並んで、利子所得までカバーされることになったわけで、残るは、大口定期の利子所得やデリバティブなどだけとなった。これらの対応についても、順次進んでいくものと思われる。 以下、残された課題について上げてみたい。 多くの金融商品・金融所得が一体課税になり相互に損益通算されるようになると、法律の規定ぶりが大変複雑になる。 そこで、筆者は、「金融所得」という概念(いわば「箱」)を税法に設けて、そこに金融取引・商品を一つずつ指定していく方式をとっていくことを提言している。そうすれば、複雑な損益通算規定もすっきりしたものになるはずだ。 もう一つ重要な提案がある。 それは、「金融所得」の経費・損失の取扱いである。 現行制度では、利子所得には経費が認められず、配当所得には負債利子控除のみが認められ、株式譲渡所得の損失の取扱いも制限的である。 しかし、投資信託における投資顧問料、口座保管手数料などは、金融所得を得るために「直接必要な費用」であるので、所得税の考え方に沿って経費性を認めるべきではないか。 諸外国の事例を調べると、ドイツでは、年間801ユーロの定額控除が経費として認められている。スウェーデンでも資本所得の利子についての控除が認められている。 金融所得は人為的に損失を発生させやすく、租税回避に使われることもある。そこで損失の取込みについては何らかの制限をすることはやむを得ないが、そもそも金融所得一体課税のもとでは、金融所得と勤労所得との損益通算は原則認められていない。それによって、租税回避は基本的に防止されているとはいえ、金融所得の中での経費・損失については、もっと前向きに考えてもよいのではなかろうか。 そして、将来の金融所得一体課税化に向けた具体的な手順を、工程表としてあらかじめ公表すれば、納税者や市場関係者の法的安定性や予測可能性が増加し、スムーズに一体化が進むものと考えている。 1,500兆円の金融資産をどう活用していくかという点は、アベノミクスで株価が上昇する中で、わが国経済政策としても重要なポイントだ。新たな発想で、金融所得一体課税を進めていくことが、高齢社会を迎え、貯蓄を運用する時代にふさわしいと考えている。 (了)

#No. 22(掲載号)
#森信 茂樹
2013/06/06

消費税に関するシステム構築思想と税率引上げへの対応 【上】「消費税に関するシステム構築の基本的考え方」

消費税に関するシステム構築思想と 税率引上げへの対応 【上】 「消費税に関するシステム構築の 基本的考え方」   株式会社クロスフィールド 取締役 税理士法人あおやま 代表社員 公認会計士・税理士 松元 良範   今回の消費税増税に関するシステム対応の話をする前に、まずはこれまでの消費税に関するシステム構築の基本思想について、いくつか述べることにする。 基本思想としては、例えば以下のような点があげられる。 以降、上記の各点について述べることにするが、いずれも現時点で優等生的なシステムの場合であり、必ずしも世の中に存在するすべてのシステム(企業が自社で開発したシステム、市販の会計パッケージなどを問わず)がこのようになっているわけではない、という点には注意が必要である。   1 消費税率などの情報は商品毎ではなく各商品に共通の消費税マスタとして保持する 商品毎にシステム上保持している代表的な項目として、商品コード、商品名、売価、などがあげられるが、売価に含まれる消費税額やその計算の根拠となる消費税率は、商品毎では保持しないのが通常である。 商品毎に消費税額(率)を持たせてしまうと、税率改定になった場合、売価と消費税額の両方を商品毎に変更しなければならず、メンテナンス作業が膨大になってしまうからである。3%から5%となった1997年の税率改定の経験を踏まえ、一般的に優良なシステムでは、消費税マスタとして情報を保持するのが通常である。 図1   2 消費税マスタは適用開始日別に税率を設定できるようにする 1997年の増税を踏まえ、消費税マスタは将来の税率変更に対応できるよう適用開始日別に税率を設定できるようになっている。実際の取引が発生した時に、その取引日付と消費税マスタの適用開始日との関係から、適用すべき消費税率を判定するのである。 図2   3 同時期に複数の税率を設定できるようにする 1997年の増税時に適用された経過措置(一部の取引に関する旧税率の適用)や、増税前後の返品や貸倒れへの旧税率適用などの経験をもとに、同時期に複数の税率を設定できるようになっているシステムも少なくない。 具体的にどのような設計になっているかはシステムによって異なるが、考えられる対応パターンは以下の通りである。 ① 個々の取引に適用する税率を手動で個別に選択する システムで自動的に判定するのではなく、個々の取引へ適用する税率を人が個別に判断して選択設定する。会計システムで仕訳毎に消費税の課税区分を選択するのと同じようなイメージである。 図3   ② システムで自動適用した税率を必要に応じて他の税率に手動で変更 消費税マスタの適用開始日と個別取引の取引日とから自動的に適用すべき消費税率を判定するが、必要に応じてその結果を人の手で変更することができるようになっている。 下図は、システム上は取引日によって一旦、取引AもB も5%が自動的設定されたが、取引Aについては手動で3%に変更した例である。 図4   ③ 契約日及び取引日等によって適用する税率を取引毎に自動判別 経過措置などの例外的な適用税率について、システムで自動判定させる。例えば、取引日以外に契約日情報なども見ながらシステム的に自動判定を行う。 下図は、取引Aの例外的な税率適用についてもシステムで自動的に行う例である。 図5 なお、この機能の重要性は業種によって差が大きく、実際に対応しているシステムは少ないと思われる。企業のメインビジネスにおいて契約日と取引日が異なる会社(リース会社など)や貸倒れ・返品が多い会社にとって本機能の重要性は高いが、該当する取引ボリュームや金額が僅少な場合には、わざわざお金をかけてシステム対応するよりは人手で対応してしまうのも現実的な考え方である。   4 消費税は商品1個1個でなく決済単位(レシート等)でも計算できるようにする 近所のスーパーやコンビニで商品棚を眺めると、各商品は税込で価格表示されている。これは2004年から適用された消費税の総額主義によるものだが、そこに含まれる消費税の計算はどのようになっているのだろうか。 レシートをよく見ると分かることだが、購入した商品1個毎に消費税が計算されているとは限らない。通常は一度の買い物で購入した商品の合計単位、すなわち1枚のレシートの合計金額に5/105を乗じ、切捨てした金額が消費税額として内訳表示されている(消費税を明示していない場合もあるが)。 下図は、スーパーでミルクとチョコレートを購入した場合のレシートイメージである。 内消費税10円はミルクとチョコレートの合計代金(税込)215円から計算されている。 図6 レシートイメージ ただし、このようにレジでの税額計算をレシート単位で行う場合でも、商品分類別の税抜売上集計の必要性等から、後続する工程において、別途、商品明細毎の税額を計算し、その合計額とレシート単位で計算された合計額との差額はレシートの中で最も金額の大きい商品に寄せるなどの処理を行うケースもある。 なお、消費税申告時の計算単位については税法で定められているものの、上記のような取引時の計算単位については、「課税標準額に対する消費税額の計算の特例」を適用しない限り企業の任意である。したがって、システム上どのような単位で計算するかは企業の方針に従うことになる。 以上、消費税に関するシステム構築の際の基本思想についていくつか簡単に述べたが、次回はこれらの内容を踏まえ、2014年以降の消費税改正に向けたシステム対応について触れることにする。 (了)

#No. 22(掲載号)
#松元 良範
2013/06/06

「生産等設備投資促進税制」適用及び実務上のポイント 【第2回】「適用にあたっての基本要件」

「生産等設備投資促進税制」 適用及び実務上のポイント 【第2回】 「適用にあたっての基本要件」   マネーコンシェルジュ税理士法人 税理士 村田 直   ◆要件把握のポイント 前回の第1回は、「生産等設備投資促進税制」について、導入された経緯や背景、税制の全体像と条文構成をお伝えした。 今回からは、具体的な要件の検討に入っていきたい。 大まかに述べると、「生産等設備投資促進税制」は以下の①及び②の要件を満たした場合、新たに国内において取得等をした機械・装置について、30%の特別償却又は3%の税額控除(法人税額の20%を限度)を認める、というものである。 従来の投資優遇税制と大きく異なるのは、投資する固定資産1単位当たりの取得価額要件が全くなく、「国内における生産等設備への年間総投資額」に対しての要件として規定されている点である。 ただし、「国内における生産等設備への年間総投資額」に対する要件は前提条件に過ぎない。実際に特別償却や税額控除の対象になるのは、「生産等設備」ではなく、「機械・装置」となる。 このあたりの要件が持つ意味をしっかり理解しておくことが、この税制を活用する上での大きなポイントとなるであろう。 さらに、この「生産等設備投資促進税制」においては、「生産等設備」や「比較取得資産総額」などといった耳慣れない用語が登場する。こういった用語の定義もしっかり把握しておく必要があるだろう。 また、特別償却については30%であるため、通常の設備投資税制と変わりないが、税額控除については“3%”であるところもこの税制の特徴である。 既存の「中小企業投資促進税制」などについては、税額控除は7%となっており、その違いを意識しておかなければならない。   ◆基本項目についての要件確認 では、まずは基本項目について、「生産等設備投資促進税制」の要件を確認していくこととする。 〈対象者〉 対象者は、「青色申告書を提出する法人」、「青色申告書を提出する個人」となっている。 法人については、青色申告のみが要件となっているため、中小企業者かどうかを問わず、大企業も含めて適用できる。 これは、特別償却だけでなく税額控除についても同様で、資本金要件などはないため、大企業でも税額控除が適用できる制度となっている。 〈対象期間〉 対象期間は、法人の場合、「平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度」となっており、2年間の時限措置となる。ただし、設立の日(外国法人にあっては外国法人に該当することとなった日、公益法人等及び人格のない社団等にあっては収益事業を開始した日)を含む事業年度、解散(合併による解散を除く)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度を除く、とされている。 これは、設立事業年度は前事業年度との比較ができないこと等を踏まえての規定と推察される。 個人については、「平成26年又は平成27年の各年」とされている。ただし、平成26年又は平成27年に事業を開始した個人のその開始した日の属する年(相続又は包括遺贈によりその事業を承継した日の属する年を除く)及びその事業を廃止した日の属する年を除く、とされており、法人と同様の規定がされている。 〈生産等設備の「取得等」〉 またこの税制においては、「生産等設備の取得等」が前提となるわけだが、その「取得等」については、取得又は製作若しくは建設をいう、とされている。 なお、法人の場合には、合併、分割、贈与、交換、現物出資又は法人税法2条12号の6に規定する現物分配による取得その他代物弁済としての取得を除く、としている。個人の場合も同様に、相続、遺贈、贈与、交換又は法人税法2条12号の6に規定する現物分配による取得その他代物弁済としての取得を除く、としている。 所有権移転外リースについては、平成20年4月1日から原則売買処理に変更になっており、税制においても、平成19年度税制改正によって売買処理が原則となっている。そのため、本税制においても、所有権移転外リース取引により取得した機械等は税額控除の対象になる。ただし、特別償却については対象外となる(個人も同様)。 〈特別控除の留意点〉 また、特別控除については、適用対象年度における税額控除限度額が、その法人の適用対象年度の所得に対する法人税の額の20%に相当する金額を超えるときは、その控除を受ける金額はその20%に相当する金額が限度となり、その20%超部分についての翌期への繰越しは認められていない(個人も同様)。 〈特別償却の留意点〉 なお、特別償却については、機械等の償却費として損金に算入した金額が、普通償却費と特別償却費(取得価額の30%)の合計額に満たない場合には、その機械等を事業の用に供した事業年度の翌期の所得の金額の計算上、その機械等の償却費として損金に算入する金額は、その機械等の普通償却費とその満たない金額以下の金額で損金に算入した金額との合計額に相当する金額とすることができる(個人も同様)。 次回は、本制度適用時の重要なポイントとなる「生産等設備」「年間総投資額」の要件について解説する。 (了)

#No. 22(掲載号)
#村田 直
2013/06/06

中小企業のM&Aでも使える税務デューデリジェンス 【第3回】「ケース・スタディ(中小企業の買収)」

中小企業のM&Aでも使える 税務デューデリジェンス 【第3回】 「ケース・スタディ(中小企業の買収)」   公認会計士・税理士 並木 安生   第3回では、前回までに解説した各買収形態における税務上の取扱い、及び税務デューデリジェンスの具体的内容を、実際の買収時にどのように当てはめ活用するかについて、事例を用いて解説する。   1 前提 買い手B社が、オーナー株主(個人)が所有する中小企業A社に対して、株式交換の手法による買収を申し出たとする。 A社とB社は買収以前において資本関係が全く存在しない、競合他社同士であるとする。   2 税務デューデリジェンス結果の活用 税務デューデリジェンスの結果発見した税務リスクの性質次第で、買収価額への反映方法、買収実行の対応が異なってくる。 以下、関係会社間取引に係る寄附金認定の税務リスクが発見された場合を例として、パターンごとの対応を記載する。 ① 税務リスク額が試算可能な場合 A社に対して税務デューデリジェンスを実施した結果、過年度における関係会社への役務提供の際に用いた取引価額が税務上の時価を上回っている可能性があることが判明したとする。買い手としては、法人税基本通達9-4-2(子会社再建のための支援損に係る通達)等を検討した結果この差額について損金算入できるかどうか疑わしいと判断したため、税務上寄附金として認定する必要があったと考えたが、過年度の法人税確定申告書上で加算・社外流出処理を行っていなかったものとする。 買収交渉の結果、最終的にオーナー株主もその税務リスクの内容について合意し、かつ、税務上の時価が算定できる場合は、リスク金額を株式交換比率算定の基礎となるA社株式買収価額に織り込むことになる。 この点、株式価額の算定方法としていわゆるDCF法を用いる場合は、将来納税する可能性のある追徴税額を試算し、割引現在価値を算出する基礎となる将来のキャッシュ・フローを減額させることとなる。また、いわゆる時価純資産価額法を用いる場合は、税務リスク金額を未払法人税や繰延税金資産・負債の額へ反映させ、時価資産額を減額させることとなる。 ② 買収交渉で見解の相違が生じた場合又は税務リスク額が試算不可能な場合 関係会社への役務提供の取引価額に係る税務上の時価の考え方について、買い手と売り手との間で見解の相違が生じてしまった場合(例:オーナー株主としては、実際の取引価額は税務上の時価と一致しており、寄附金認定リスクは生じる恐れはないものと主張する場合)、実務上は買収契約書(株式交換契約書)上に「表明保証条項」を織り込むことで対応するケースが多い。 つまり、A社におけるこの役務提供取引に関して税務リスクはないとオーナー株主(売り手)に表明させ、買収後の税務調査で寄附金認定による追徴課税を受けた場合は、納税による金銭的負担を売り手に負わせるという条項を織り込むことで、買い手は税務リスクを回避・軽減することが可能となる。 また、役務提供の取引価額に係る税務上の時価について試算・算出が困難な場合(例:役務提供の内容と取引価額との関係性が明らかにアンバランスであり、適正な税務上の時価に基づく取引を行っていない可能性が高いと考えられるものの、その算出の明確な指針がないこと等から時価の算定が困難である場合)についても、上記と同様に表明保証条項を買収契約書上に織り込むことで対応するケースが多いといえる。 ③ 買い手にとって税務リスクが受入困難な場合 役務提供に係る寄附金認定の税務リスクが定量的・定性的に非常に大きく、買収の実行に著しい悪影響を及ぼすと判断された場合、買収自体を断念せざるを得ないケースもある。 ただし、株式交換以外の買収形態に変更することで税務リスクを遮断し、買収を実行するという解決策も考えられる。 株式交換の場合は、買収対象会社A社の買収前の事業年度に係る税務リスクを買収後も引き継ぐことになるが、例えば事業譲渡等の他の方法を採用した場合は、原則として買収前の税務リスクを引き継ぐことはなくなるため、解決策として適した代替的方法であると考えられる(前回参照)。   3 株式交換の実行可能性の検討 株式交換は税務上の組織再編行為に該当するため、組織再編税制適用下の影響を検討した上で、株式交換が買収形態として利用できるか否かを判断することが必要である。 主な検討ポイントは、次のとおりである。 ① 適格要件の判定及び非適格再編時の課税への影響 本事例は、買収直前の時点において、買収対象会社A社と買い手B社との間に資本関係がないことから、資本関係が50%以下の場合の適格要件、いわゆる共同事業要件(下表aからgまでのすべてを満たす必要がある。ただし、e-1とe-2はいずれか1つを満たせばよい)を判定する必要がある。 なお、この株式交換が非適格再編として判定される場合、A社が保有する一定の資産に関して評価損益を税務上認識しなければならない。特に資産評価益は課税対象となるため、納税による資金負担の影響は非常に大きくなる可能性がある。 そのため、買収前における事前判定の結果、非適格再編として認定される恐れがある場合は、予め評価対象となる資産を洗い出し、その評価損益を試算しておくことが有用であるといえる。 ② 代替案の検討 上記2③でも触れたとおり、税務デューデリジェンスの結果次第では、他の買収形態へ変更せざるを得ないケースもある。 その場合、予め網羅的な検証を行い、買収手続を抜かりなく進めるためにも、同時並行的に代替案の検討も行っておくことが効果的である。 例えば、代替案として事業譲渡が考えられる場合、事業譲渡対象資産・負債の時価及び譲渡損益の試算、消費税計算に与える影響等を分析しておくことが望まれる。 〈株式交換を活用する際のポイント〉 [ステップ1] [ステップ2] (了)

#No. 22(掲載号)
#並木 安生
2013/06/06

他の者を介して金銭の支出をした場合の使途秘匿金課税

他の者を介して 金銭の支出をした場合の 使途秘匿金課税   日本税制研究所研究員 朝長 明日香   企業の違法又は不当な支出を抑制するという目的の下、平成6年度税制改正において使途秘匿金課税制度が創設されたことは、周知のとおりである。 本稿では、法人が他の者を介して金銭の支出をした場合の使途秘匿金課税制度の適用関係について解説することとする。 金銭の支出が他の者を介して行われた場合には、その支出をした法人の帳簿書類には他の者の氏名等が記載されており、他方、他の者の帳簿書類にはその金銭を受け取った者の氏名等が記載されていないことが考えられる。 このようなケースにおいては、その金銭の支出が使途秘匿金の支出に該当するとされるのか否か、また、使途秘匿金の支出に該当するとされる場合には、いずれの者に対して追加課税がなされるのかといった疑問が生ずることとなる。   1 使途秘匿金課税制度の概要 法人が使途秘匿金の支出をした場合には、その法人の各事業年度の所得に対する法人税の額は、その使途秘匿金の額に40%を乗じた金額を加算した金額とされている(措法62①)。 この「使途秘匿金の支出」とは、法人がした金銭の支出(贈与、供与その他これらに類する目的のためにする金銭以外の資産の引渡しを含む)のうち、相当の理由がなく、相手方の氏名等をその法人の帳簿書類に記載していないものをいい、取引の対価としてされたことが明らかなものは除かれる(措法62②)。 相手方の氏名等を帳簿書類に記載しているのか否かの判定は、その事業年度終了の日に行うこととされており(措令38①)、その事業年度に係る確定申告の期限までに帳簿書類に記載されている場合には、その事業年度終了の日に記載があったものとみなされる(措令38②)。 使途秘匿金課税制度は、「使途秘匿金の支出」を課税標準として追加的に法人税を課すという税額の計算に関する仕組みであり、同制度の適用関係を考えるに当たっては、所得の金額の計算の場面と使途秘匿金課税制度による税額の計算の場面とを混同しないように注意しなければならない。 所得の金額の計算においては、法人税法22条3項各号(各事業年度の所得の金額の計算)に掲げる額のいずれかに該当するものが損金とされる。 例えば、ある会社から商品を仕入れたがその会社の名称や所在地を帳簿書類に記載していないという場合においても、仕入の事実を推認し得るときには、その仕入金額は損金の額に算入されることとなる。 ただし、金銭の支出の事由(使途)が明らかでない場合には、その金銭の額は、法人税法22条3項各号に掲げる額に該当するものと認めることができず、損金不算入とされる(法基通9-7-20)。 金銭の支出に係る取引自体が架空と認められる場合には、その金銭の額は、寄附金と認められない限り、損金の額に算入する余地がないこととなる。 このような所得の金額の計算に対し、使途秘匿金課税制度による税額の計算においては、相手方の氏名等の帳簿書類への記載の有無を「使途秘匿金の支出」に該当するのか否かの判断基準としているため、相当の理由がなく、相手方の氏名(名称)、住所(所在地)及びその事由を帳簿書類に記載していない場合(注)には、その金銭の支出は「使途秘匿金の支出」に該当することとなり、その支出した額に対して追加課税がなされることとなる。 (注) 租税特別措置法62条2項においては、「その相手方の氏名又は名称及び住所又は所在地並びにその事由」を帳簿書類に記載していないものと規定されているため、「若しくは」と「又は」という用語を用いて規定される場合とは異なり、「氏名又は名称」、「住所又は所在地」と「その事由」の3つのいずれをも帳簿書類に記載していないもののみが「使途秘匿金の支出」ということになる。   このように、使途不明金の支出に該当するものが、直ちに、「使途秘匿金の支出」として追加課税の対象となるわけではなく、その金銭の支出に損金性があるのか否かということと「使途秘匿金の支出」に該当するのか否かということは明確に区別して判断する必要がある。   2 他の者を介して金銭の支出をした場合の使途秘匿金課税 金銭の支出の相手方の氏名等を故意に伏せている場合には、その支出をした法人に対して、法人税の追加課税が行われることとなるわけであるが、使途秘匿金の支出を隠ぺいするために、下図のように、他の者を介して金銭を支出するといったケースも見受けられる。 ※A社及びB社、B社及び「仕入先」との間の外注と仕入の取引はいずれも実態のないものであり、売上割戻しや交際費その他対価性のある支払いでもない。   他の者を介して金銭を支出するといったケースにおいては、金銭の支出をした法人(A社)及び他の者(B社)の双方に使途秘匿金課税制度による追加課税がなされるのか、それとも、A社又はB社のいずれか一方に追加課税がなされるのか、という疑問が生ずることとなる。 また、いずれか一方に追加課税がなされるという場合には、A社とB社のいずれに追加課税がなされるのか、という疑問も生じてくる。 このような疑問を解決するために、租税特別措置法施行令38条3項において、次の規定が設けられている。 このように、租税特別措置法施行令38条3項においては、帳簿書類に記載された者が単なる名義人であって、その者以外の者に金銭の支出がなされていると認められるものについては、その支出をした法人(上図においては、A社)の「使途秘匿金の支出」に該当するものとされている。 他の者を介して金銭の支出をした場合におけるその金銭の支出がその支出した法人の「使途秘匿金の支出」に該当することは上記のとおりであるが、租税特別措置法施行令38条3項に規定する「その記載された者」(上図においては、B社)における金銭の受取り及び支払いの処理をどのように行うのか、ということに関しては、疑問が残るところである。 A社から無償で金銭を受け取ったと考えれば、「受贈益の額」として益金の額に該当することとなり、仕入先へ無償で金銭を交付したと考えれば、法人税法37条(寄附金の損金不算入)の「寄附金の額」に該当することとなる。これらの処理は、B社における消費税法上の課税売上割合や仕入税額控除の計算にも影響を及ぼすこととなるため、慎重に判断しなければならない。 しかし、本件のように、他の者を介して金銭の支出をするといったケースにおいては、B社がA社から受け取った金銭を仕入先へ支出することが当初から決められていると考えられること、そして、租税特別措置法施行令38条3項において、本件のB社が該当することとなる「その記載された者」が使途秘匿金を支出するに当たって通ずる者と理解されていることからすると、B社においては、A社において「使途秘匿金の支出」とされるものに関しては、単に自己を通過する金銭と考えて、「仮受金」等の科目をもって処理するのが適当であると考えられる。 以上の点を踏まえて、上図のケースのA社及びB社の処理を是正する場合の取扱いを考えてみると、次の2のとおりとなる。   2 上記1の図のケースにおける各法人の税務上の取扱い (1) A社における取扱い ① B社への「外注費」2,000,000円のうちの1,500,000円の取扱い A社がB社への「外注費」として支出した2,000,000円のうち、1,500,000円については、実際にA社がB社に外注を行ったという事実がなく、架空の取引であると認められるものであり、法人税法22条3項各号に掲げる額に該当しないため、損金の額に算入されない。 また、この1,500,000円の支出に関しては、「使途秘匿金の支出」に該当することから、600,000円(1,500,000円×40%)の追加課税がなされることとなる。 ② B社への「外注費」2,000,000円のうちの500,000円の取扱い A社がB社への「外注費」として支出した2,000,000円のうち、500,000円は、B社に不正行為に加担してもらうために支払われた金額である。 このため、このB社への不正加担料500,000円は、法人税法55条1項(不正行為等に係る費用等の損金不算入)の「隠ぺい仮装行為に要する費用の額」に該当し、損金の額に算入されないこととなる。 (2) B社における取扱い ① A社からの「売上」2,000,000円のうちの1,500,000円の取扱い B社がA社からの「売上」として支出した2,000,000円のうち、1,500,000円についても、「売上」の事実がない架空の取引によるものであり、法人税法22条2項の「収益の額」に該当しないため、益金の額に算入されない。 この1,500,000円に関しては、「仮受金」等として処理するのが適当であると考えられる。 ② A社からの「売上」2,000,000円のうちの500,000円の取扱い B社が不正行為に加担したことで受け取った不正加担料500,000円に関しては、A社に対する役務提供の対価であることは間違いなく、法人税法22条2項の「収益の額」に該当するものであるため、「雑収入」等として益金の額に算入される。 ③ 仕入先への「仕入」1,500,000円の取扱い B社が仕入先への「仕入」として計上した1,500,000円については、上記(1)①と同様の理由により、架空の取引であると認められるため、損金の額に算入されない。 また、B社における仕入先への1,500,000円の支出は、A社からの「仮受金」等の払出しとして処理するのが適当であると考えられる。 (了)

#No. 22(掲載号)
#朝長 明日香
2013/06/06

法人税の解釈をめぐる論点整理 《減価償却》編 【第1回】

法人税の解釈をめぐる論点整理 《減価償却》編 【第1回】   弁護士 木村 浩之   1 はじめに 減価償却をめぐっては、もとより、税務調査等において、資本的支出と修繕費の区分が問題となることが非常に多いといえるが、そのほか、減価償却資産とその他の資産との区分(減価償却資産の範囲)、固定資産の取得価額、少額の減価償却資産等の判定、耐用年数表の適用、除却損失の計上など、その論点は多岐にわたっている。 また近年、減価償却に関する重要な税制改正が相次いでなされており、償却限度額を計算するに当たっても、留意すべき事項は多いといえる。 そこで、本稿では、減価償却をめぐる主要な論点について整理し、6回にわたって解説することとしたい。取り上げる予定のテーマは、以下のとおりである。   2 減価償却資産の範囲 (1) 減価償却資産の一般的要件 減価償却の対象となる資産は、法人税法上、「建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう」とされている(法法②二十三)。 これを受けた政令は、「棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)」として、減価償却資産に該当する資産を具体的に列挙した上で、その範囲から一定の資産を除外している(法令13)。 また、明文に規定はないものの、他人の保有する資産を事業の用に供したとしても、それは自己の減価償却資産とはならないのであるから、減価償却の対象となる減価償却資産については、「自己が保有するものであること」が当然の前提であると解されている。 そこで、減価償却資産に該当するための一般的な要件として、 という要件が導かれる。以下、順に解説する。 (2) 棚卸資産等に該当しないこと ア 棚卸資産との区分 棚卸資産とは、法人税法上、「商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産で棚卸しをすべきものとして政令で定めるものをいう」とされ(法法②二十)、政令がこれらをより具体的に列挙している(法令10)。 列挙されているものに共通する考え方は、棚卸資産となるのは、販売用の資産であるか、あるいは販売用資産の製造等に使用されて短期間に消費されるものであるということである。 したがって、次の要件のいずれかを満たすものは棚卸資産に該当し、減価償却資産と区分されることになる。 例えば、①についていえば、販売促進を目的とした展示物がある場合、それを後に販売する予定であれば棚卸資産に該当することとなり、販売が予定されていなければ減価償却資産に該当することとなる。 また、②についていえば、製造に使用される資材がある場合、それが反復継続して使用されず、短期間に消費されるものであれば、棚卸資産(貯蔵品)に該当することとなり、反復継続して使用されるものであれば、減価償却資産に該当することとなる。 イ 繰延資産との区分 繰延資産とは、法人税法上、「法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもので政令で定めるものをいう」とされ(法法②二十四)、政令は、「法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるもの」として、繰延資産に該当するものを具体的に列挙した上で、その範囲から一定のものを除いている(法令14①)。 この繰延資産から除かれるものとして、「資産の取得に要した金額とされるべき費用(固定資産の取得価額を構成するもの)」がある。このことから、法人が支出する費用のうち、固定資産の実質的な対価となるものについては繰延資産には該当せず、そのような対価関係のない事実上の効果を有するにすぎないものが繰延資産に該当することになる。 例えば、商標や意匠(デザイン)等の作成費用については、権利として登録する場合には、その実質的な対価として権利(固定資産)の取得価額を構成するのに対して、権利として登録しない場合には、そのような対価関係のない事実上の効果を有するにすぎないものとして、固定資産ではなく、繰延資産に該当し得ることになる。 (3) 事業の用に供していること 「事業の用に供している」というためには、単に「資産を保有している」というにとどまらず、その資産を実際に使用し、それが収益を生む源泉となっていると認められることが必要である(最判平成18年1月24日・民集60巻1号252頁参照)。 したがって、いわゆる稼働休止資産については、収益を生む源泉とはなっていないことから、事業の用に供しているとはいえず、減価償却資産とはならない。 もっとも、現実に収益を生んでいないとしても、単に保管するだけにとどまらず、いつでも事業の用に供することができるように維持管理等されているものについては、潜在的には収益の源泉となるべきものであるから、減価償却資産に該当し得ると解される。 例えば、賃借人のいないマンションであっても、入居者を募集している場合には事業の用に供しているといえるのであり、減価償却資産に該当することになる。また、稼働休止中の資産であっても、稼働中の資産の控え(スペア)等としてメンテナンスを継続されている場合には、減価償却資産に該当することになる(法基通7-1-3参照)。 (4) 時の経過により減価すること 減価償却資産に該当するためには、時の経過により減価する(価値が低減する)ものであることが必要である。ここでいう減価には相場の変動といったものを含まず、資産そのものが消耗等することによって減価するものであることが必要である。 したがって、土地等が減価償却資産には該当しないことはもちろん、美術品、芸術品、骨董品、クラシックカーなど、主にその資産が持つ物理的な効用以外に大きな価値が認められているものについては、減価償却資産には該当しない(法基通7-1-1参照)。 (5) 自己が保有する資産であること 減価償却の対象となる資産は、原則として、自己が所有する資産である必要がある。ただし、次の例外がある。 ア 形式的な所有権の場合 自己が所有する資産であっても、その所有権が形式的なものにすぎない場合には、実質的な資産価値を保有するものとはみられず、減価償却資産とはならない。逆に、他人が所有する資産であっても、その所有権が形式的なものにすぎず、自己が実質的な資産価値を保有するとみられる場合には、減価償却資産となり得る。 例えば、自己所有の資産を譲渡担保によって所有権移転した場合であっても、その所有権移転は担保提供を目的とした形式的なものであり、実質的な資産価値の移転を伴ったものとはいえないことから、その資産は自己が保有するものといえる。 また、同様に、自己が購入した資産を所有権留保によって所有権移転していない場合であっても、その留保された所有権は担保目的の形式的なものであり、実質的な資産価値の移転はあるといえることから、その資産は自己が保有するものといえる。 イ 他人の資産に対する資本的支出の場合 他人の資産に対する資本的支出であっても、その価値を実質的に保有するとみられる場合には、減価償却資産となり得る(耐通1-1-4参照)。すなわち、賃借した他人の土地や建物に資本的支出をした場合であっても、その価値が増加した部分を自己が使用収益し、かつ、その使用収益に関する何らかの権利性が認められるのであれば、自己の保有する減価償却資産に該当することになる。 裁判例においても、自己の事業の用に供している他人の資産につき、資本的支出があった場合には、仮にその資産を正当に使用する権限がなかったとしても、実際に使用収益しており、かつ、費用償還請求権などの権利を有している場合には、その実質的な価値を保有するものとして、自己が保有する減価償却資産に該当することが認められている(大阪高判昭和38年7月18日・税資37号795頁参照)。 これに対して、資本的支出によって価値が増加した部分に権利性があるとまでは認められず、その実質的な価値を保有するものではない場合には、繰延資産又は寄附金に該当することとなる。 なお、賃借建物に対する造作についても、以上と同様に解することができる(耐通1-1-3参照)。 次回は固定資産の取得価額について整理する。 (了)

#No. 22(掲載号)
#木村 浩之
2013/06/06

交際費課税Q&A~ポイントを再確認~ 【第2回】「交際費に該当しない支出」

交際費課税Q&A ~ポイントを再確認~ 【第2回】 「交際費に該当しない支出」   公認会計士・税理士 新名 貴則   税務上の交際費等は、以下のとおり定義されている(措法61の4③)。 ただし、次に掲げる費用のいずれかに該当するものは除くとしている。 このうち②については次回以降に解説することとし、今回は①及び③について解説する。 まず①については、「交際費等」と「福利厚生費」の区分の問題である。 会社としては従業員に対する福利厚生のつもりで支出したものでも、そのすべてが税務上も福利厚生費として認められるとは限らない。つまり、会社としては福利厚生費のつもりでも、税務上は交際費等や給与に該当してしまう場合もある。 そこで、「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用」は、税務上の交際費等には該当しない(福利厚生費になる)と規定されている(措法61の4③一)。 また、この他にも次のような費用は、交際費等ではなく福利厚生費として扱う(措通61の4(1)-10)。 しかし、やはりここでも「通常要する費用」の判断が必要になる。あくまで「社会通念上妥当な範囲の支出」であるかどうか、という基準で判断することになるので、判断が難しいケースも多い。 ひとつの判断材料として、社員旅行費用を福利厚生費として処理できる基準は以下のとおりとされる。 ただし、上記の条件を満たしている場合でも、旅行に参加しなかった者に金銭を支給する場合には、参加・不参加に関係なく全員に対して給与を支給したと判断されるので、注意が必要である。   次に③ついて、この「政令で定める費用」には、以下のものがある(措令37の5②)。 (了)

#No. 22(掲載号)
#新名 貴則
2013/06/06
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