改正通則法と重加算税の今後① 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一 重加算税は、「隠ぺい・仮装」をその要件の一つとしている。そして、「隠ぺい・仮装」は、不正手段による租税徴収権の侵害行為を意味し、「事実を隠ぺい」するとは、事実を隠匿しあるいは脱漏することを、「事実を仮装」するとは、所得・財産あるいは取引上の名義を装う等事実を歪曲することをいい、いずれも行為の意味を認識しながら故意に行うことを要するものといわれている(和歌山地裁昭50.6.23判決)。 ただ、その行為が客観的にみて、隠ぺい又は仮装と判断されるものであれば、納税者の「故意の立証」までも要求しているものではないと解されている。 したがって、「客観的な隠ぺい・仮装の事実」があれば、課税庁は「故意の立証」が要求されないということになる。逆にいえば、「客観的な隠ぺい・仮装の事実」がなければ「故意の立証」が課税庁に求められることになる。 今回の国税通則法74条の14の改正で、国税に関する申請却下及び不利益処分について、書面による理由附記が要求されることになった。したがって、重加算税も、不利益処分(下図参照)であるところから、その処分に対して「理由の附記」が要求されることになった。 そして、重加算税の「理由の附記」については、当然のこととして、その要件である「隠ぺい・仮装」の事実を明らかにしなければならない。 以上の重加算税の取扱いを前提とするならば、改正通則法の下の「税務調査」では、重加算税の課税の状況は、どのようになるのであろうか。 所得税法の旧通達においては、「隠ぺい・仮装」に該当するものとして、次のようなものを例示していた。なお、それぞれの例示における隠ぺい・仮装に係る「物的証拠」と考えられるものを、以下、示すこととする。 上記の例示の中で、課税庁は、どのような「隠ぺい・仮装の事実(又は物的証拠)」を把握することができるのであろうか。 思うに、多くの税務調査では、例えば、二重帳簿を発見するとか、虚偽の帳簿などの「隠ぺい・仮装の物的証拠」を見つけ出すことは容易ではない。 上記の③についても、仮に、棚卸資産の漏れが発見されたとしても、それが「故意」に行われたものなのか、「単なるミス」によって生じたものか、その判断のベースとなる「客観的な隠ぺい・仮装の事実」を掴むことは困難である。 平成25年1月1日からスタートする改正国税通則法において、理由附記が求められる重加算税の賦課決定処分の件数は、減少するのではないかと思われる。 (了) 【参考】拙著『第4版 事例からみる重加算税の研究』清文社(2012年)
制度改正と適用要件に注意! 青色欠損金の繰越控除制度 【第1回】 「平成23年12月改正を再確認」 弁護士 木村 浩之 1 はじめに 平成23年12月の税制改正(「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号))により、青色欠損金の繰越控除につき、その繰越期間が7年から9年に延長されるとともに、中小法人等以外の法人については、その控除額が欠損金額を控除する前の所得金額の100分の80相当額に限られるという、いわゆる「80%ルール」が設けられた(法人税法(以下、法法)57①)。 本稿は、青色欠損金の繰越控除につき、上記税制改正に伴う新制度の適用上の留意点について解説した上で、関連する論点についても解説することにより、改めて同制度の適用に当たっての論点整理を行うものである。 2 80%ルールについて (1) 適用対象法人 80%ルールの適用対象となるのは、中小法人等以外の法人であり、具体的な適用の有無については、下記表のとおりである(法法57⑪、法人税法施行令(以下、法令)14の10⑥)。 なお、資本金の額が1億円以下であるかどうかなど、中小法人等の要件に該当するか否かについては、各事業年度終了の時を基準として判定されることになる。 (2) 適用対象事業年度 80%ルールについては、平成24年4月1日以後に開始する事業年度の所得に係る法人税について適用され、同日前に開始した事業年度の所得に係る法人税については、従前どおり100%の繰越控除が認められるものとされている。 したがって、下記表のとおり、最も適用時期の早い3月決算法人については、平成25年3月期の法人税の確定申告から適用されることになり、最も適用時期の遅い2月決算法人については、平成26年2月期の法人税の確定申告から適用されることになる。 2 繰越期間の延長について (1) 適用対象欠損金 繰越期間が7年から9年に延長されるのは、平成20年4月1日以後に終了した事業年度において生じた青色欠損金である。同日前に終了した事業年度において生じた青色欠損金については、従前どおり、その繰越期間は7年となっている。 したがって、3月決算の法人を例にすれば、下記表のとおり、平成20年3月期に生じた青色欠損金については、平成27年3月期まで(7年)の繰越控除が認められるにとどまり、平成21年3月期に生じた青色欠損金については、平成30年3月期まで(9年)の繰越控除が認められることとなる。 (2) 関連する税制改正 なお、青色欠損金の繰越期間が9年に延長されたことに伴い、法人税に係る純損失等の金額についての更正の期限も、法定申告期限から9年(従前は7年)に延長されている(国税通則法(以下、通法)70②)。 また、併せて、法人税に係る純損失等の金額についての更正の請求期限も、法定申告期限から9年(従前は1年)に延長されている(通法23①)。 3 帳簿書類保存要件の新設 今回の税制改正により、青色欠損金の繰越控除を受けるための要件として、新たに帳簿書類保存要件が設けられることとなった(法法57⑩)。 すなわち、欠損金額が生じた事業年度の青色欠損金を繰越控除するためには、当該事業年度(繰越控除の適用を受けようとする事業年度ではなく、欠損金額が生じたときの事業年度)の帳簿書類を9年間保存している必要があることとされた。 従前は、青色申告法人については、もともと帳簿書類を7年間保存することが義務付けられていたこともあり、特段、青色欠損金の繰越控除を受けるための要件としては帳簿書類の保存義務は課されていなかった。 ところが、今回、青色欠損金の繰越期間が9年に延長されたことに伴い、青色申告法人の帳簿書類の保存年数(7年)との間に齟齬が生じたことから、改めて青色欠損金の繰越控除の適用要件として9年間の帳簿保存義務が課されることとなった。 したがって、今後は、青色欠損金の繰越控除を受けるために、もともと作成している帳簿書類のほかに別途新たな帳簿書類を作成する必要まではないものの、作成した帳簿書類については、7年間ではなく9年間保存しておくことが必要となる。 次回は上記改正事項を踏まえた同制度適用上、論点となる事項についてまとめる。 (了)
大きく変わる?税務調査手続 【その2】 「平成25年1月1日以降の変更点」 税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦 (承前)平成23年12月2日に公布された国税通則法の改正の中、調査手続に関する規定は原則として平成25年1月1日以降開始される調査から適用されるが、一部は平成24年10月1日から先行実施されている。 前回【その1】では、先行実施された項目については解説したが、今回はそれ以外、来年1月1日の本格施行後に初めて適用される規定について解説する。 なお、「1月1日以降開始する調査に適用される規定」と、「それ以前に開始している調査について1月1日に適用される規定」があるので、注意が必要である。 1 平成25年1月1日以降の変更点 (1) 1月1日以前に開始している調査にも適用される規定 次の事項については、1月1日以前に既に開始している調査についても、1月1日から適用になる。 イ 提出された物件の留置き 質問検査権の内容として、必要があるときは当該調査において提出された物件を留置くことができるとされた(改正通則法74条の7)。留置きとは、税務官庁の庁舎内において占有する状態をいう(手続通達2-1)。 事務運営指針によれば、留め置く必要がある場合や、相手方の負担軽減から留置きが合理的であると認められる場合に、留め置く必要を説明し、提出者の理解と協力の下、その承諾を得て実施するとしている。返還を求めたにもかかわらず返還されない場合は、不服申立てができることを教示しなければならない(事務運営指針第2章3(5)注)1)。 現場では、コピーの取扱いが問題になるかもしれない。 調査官が、納税者の提示した書類を納税者のコピー機でコピーした場合、そのコピーは納税者の所有する書類であるから、特に断りのない限り返還を求めることができると考えられる。 ただし、手続通達2-1によれば、「提出された物件が、調査の過程で当該職員に提出するために納税義務者等が新たに作成した物件(提出するために新たに作成した写しを含む。)である場合は、当該物件の占有を継続することは法第74条の7に規定する「留置き」には当たらないことに留意する。」としており、コピーが新たに提出したものであるときは、留置きに当たらないとしている。しかし、コピーを許諾することは必ずしも写しを提出したとは限らないので、この点の認識の食い違いがあると、トラブルになる可能性が考えられる。 最初にコピーを許諾する際に、コピーは後で返すように求めるか、預り証の項目の中に含めることによりトラブルを避けることができるだろう。 ロ 処分理由の附記 原則として、すべての不利益処分について、理由附記が行われることになる。 ただし、自主的な期限後申告書の提出や源泉の期限後自主納付の場合の無申告加算税又は不納付加算税の賦課は、質問検査等を行うものではないので、理由の附記はしないこととされている(手続通達1-1)。 なお、個人の白色申告者については、平成25年中には記帳義務が課されない者については、平成26年1月1日以降適用となる。 (2) 1月1日以降開始の調査に対してのみ適用される規定 以下の点が変更される。 イ 質問検査の根拠となる法律 従前は各税法に定められていた質問検査権の根拠規定が、国税通則法74条の2から74条の6に変わる。 ロ 事前通知 1月1日以降開始の調査については、下記表1の11項目すべてについて事前通知が行われる。 表1 事前通知事項 来年1月1日以降無予告調査が入った場合は、通則法74条の10の要件(「申告や過去の調査結果その他の情報から、違法又は不当な行為を容易にし正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすと認める場合」)を満たしていることが必要になる。 事務運営指針によれば、無予告の場合には、臨場後速やかに表1の中のNo.4からNo.9に当たる項目を通知し、No.11の項目を説明することに留意するとしている。 なお、事前通知を行わないことが許容される要件が法定されているが、その中で「その営む事業内容に関する情報」という文言の意義について、手続通達4-7は「単に不特定多数の取引先との間において現金決裁による取引をしているということのみをもって事前通知を要しない場合に該当するとはいえないことに留意する。」として、単に現金商売というだけでは無予告の理由には足りないとしている。 ハ 終了の手続 ① 是認通知 調査の結果更正決定等をすべきと認められない場合は、書面による通知が出されることとなった(改正通則法74条の11第1項)。 積極的に是認する場合だけでなく調査打切りの場合を含むかどうかは明らかでないが、更正決定等をすべきと認められる場合以外はすべて「更正決定等をすべきと認められない場合」に当たると考えれば、調査打切りの場合でも調査は終了したことになり、書面による通知は行われなければならないであろう。 手続通達3-1(1)によれば、通知は税目・期間ごとに行わなければならない。 ② 調査結果の説明 更正決定をすべきと認める場合には、調査官は調査結果の内容を説明しなければならないし、修正申告の勧奨を行う場合には、前回【その1】の2(2)で述べた口頭の教示と書面の交付を行わなければならないこととされた(改正通則法74条の11第2項)。 事務運営指針(第2章4(2))によれば、「当該非違の内容等……について原則として口頭により説明する。その際には、必要に応じ、非違の項目や金額を整理した資料など参考となる資料を示すなどして、納税義務者の理解が得られるよう十分な説明を行うとともに、……質問等があった場合には分かりやすく回答するよう努める。」としている。また、「当該調査結果の内容の説明等をもって原則として一連の調査手続が終了する旨を説明する。」としている。 したがって、修正申告の勧奨を行った場合に、納税者がそれを受け入れない場合であっても、それ以上調査を続けることはできないことになる。 従来は修正申告の勧奨を受け入れない場合には調査を続行することも可能であったが、今後はそれができなくなる。この点は納税者にとっては非常に好ましい変化である。 ただし、手続通達5-4によれば、「調査結果の内容の説明を行った後、当該調査について納税義務者から修正申告書……の提出がなされるまでの間……において、当該説明の前提となった事実が異なることが明らかとなり当該説明の根拠が失われた場合など当該職員が当該説明に係る内容の全部又は一部を修正する必要があると認めた場合には、必要に応じて調査を再開した上で、その結果に基づき、再度、調査結果の内容の説明を行うことができることに留意する。」としている。 調査結果の説明を受けた結果、調査官の事実認識が誤っていることが明らかになり、納税者が別の証拠を提示した結果理解が得られ、調査結果の修正が行われた、といった場合がこれに当たるだろう。 なお、結果説明は納税者本人の同意がある場合には、税務代理人に対してすることができる。 ニ 再調査 改正通則法74条の11第6項では、是認通知、修正申告、更正決定をした年分についても、「新たに得られた情報に照らして非違があると認められる場合」には再調査ができることとされた。 どのような場合に「新たに得られた情報に照らして非違があると認められる」のかが問題になるが、事務運営指針第2章4(6)では、法令及び手続通達(5-7,5-8,5-9)に基づき、個々の事案の事実関係に即してその適法性を適切に判断するとして、再調査に対して慎重な対応を要求している。「新たに得られた情報」とは、調査結果の説明を行った時点で、説明を行った調査官が有していた情報以外の情報をいう(手続通達5-7)としているので、その解釈によれば、客観的に気づくことができる範囲に存在する情報であったのに見過ごしていただけであっても、新たに得られた情報ということになるだろう。 しかし、このような通達の解釈が法律の文言である「新たに得られた情報」の解釈として適切かどうかについては議論の余地があろう。 再調査となる範囲については、手続通達3-1は、「税目と課税期間によって特定される納税義務」を単位と捉えており、同一の「課税期間」の意義については、手続通達3-2に規定している。それによると、課税期間がある国税については原則として暦年又は事業年度が課税期間となる。源泉税の場合は、同一の法定納期限となる源泉所得税を一の課税期間として取り扱うこととしている。 ホ 理由附記 行政不服審査法は行政上の不利益処分を行う場合には理由附記を原則としているが、従来、国税に関する法律に基づく申請に対する拒否処分や不利益処分を行う場合については、国税通則法によって原則として理由附記は不要とされていた(改正前通則法74条の2)。ただ、青色申告の更正については、個別税法で例外的に理由附記が必要とされ、それが青色申告の特典のひとつとされていた。 平成23年度の国税通則法の改正により、原則として、すべての申請の拒否や不利益処分について理由附記を要することとなった。 青色申告については従来から理由附記の対象になっているが、その内容については、計算過程しか書いておらず更正の根拠が分からないため、不服申立てをすべきかどうかを判断するには不十分だという声が聞かれることが多い。 今回の改正をきっかけに、改善が期待できるのであろうか。 事務運営指針(第2章5)によれば、「処分の適正性を担保するとともに処分の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を図るとの理由附記が求められる趣旨が確保されるよう、適切にこれを行う。」としている一方、「青色申告に係る更正の理由附記は従前のとおり理由附記を行うことに留意する」としているので、青色申告の理由附記については従前のレベルにとどまるかもしれない。 白色申告者に対する更正の理由附記が開始する時期は、①平成20年から25年までのいずれかの年において記帳義務・記録保存義務があった者については平成25年1月から、②それ以外の者は平成26年1月1日からとなる。 (次ページへ続く) 2 更正の請求の期間延長と増額更正期間の延長 〈更正の請求期間が5年に〉 調査手続の改正とは異なるが、平成23年12月2日公布の通則法の改正においては、更正の請求期間を原則1年から原則5年に延長するとの改正も行われた。 この改正の目的は、「法定外の手続により非公式に課税庁に対して税額の減額変更を求める「嘆願」という実務慣行を解消するとともに、納税者の救済と課税の適正化とのバランス、制度の簡素化を図る観点から、納税者が申告税額に減額を求めることができる「更正の請求」の期間を延長する」(平成23年度税制改正大綱)ことにある。 更正の請求期限が延長されたことに伴い、調査の結果修正申告を行った後でも、更正の請求を出すことが可能となった。 調査官は修正申告の勧奨を行う際に、「不服申立てはできないが更正の請求はできることを説明し書面も交付しなければならない」ことが法定された(改正通則法74条の11③)。勧奨に従って修正申告をしても、再度検討した結果誤りがあった場合には、原則法定申告期限から5年以内であれば更正の請求をすることができる。 例えば、調査の際には見つからなかった書類が後日見つかったことによって、当初申告の内容が正しいことが明らかになったようなときには、法定納期限から5年以内なら更正の請求ができることになる。 〈増額更正期間の延長〉 今回の改正では、同時に増額更正の期間も原則3年から5年に延長された。これにより、増額更正の期間と更正の請求の期間は一致することとなった※。 ※原則5年の例外は、贈与税6年、移転価格税制適用法人税6年、法人税の純損失の金額9年、脱税7年である。 これにより、法人税調査は従来どおり5年間遡及で変わらないが、個人所得税や消費税の調査は、従来の3年遡及から5年遡及が可能になる。 これらの改正は、平成23年12月2日以降に法定納期限が到来する国税について適用される。 〈事実を証する書類〉 更正の請求に際しては、更正の請求の理由の基礎となる、「事実を証明する書類」の添付が義務化された(改正前の「添付するものとする。」から、「添付しなければならない。」と改正された)(改正通則法施行令6条2項)。この改正は、平成24年2月2日以後に行う更正の請求から適用される(改正通則法附則1条1号)。 〈罰則〉 また、偽りの記載をして更正の請求書を提出した者に対する罰則が創設され、内容虚偽の記載をして更正の請求書を提出した者に対して1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されることになった(改正通則法127条)。この改正は、平成24年2月2日以後に行う更正の請求から適用される。 〈更正の申出書〉 平成23年12月2日より前に法定申告期限が到来する国税の申告については、従来同様、更正の請求期限は1年であるが、国税庁は「更正の申出書」の提出があれば減額更正を実施するよう努めるとしている。 この取扱いは、従前から「嘆願書」により運用として行われてきたものを尊重する趣旨であり、嘆願書と同様、却下されても不服申立はできない。この「更正の申出書」の提出できる期間は、改正前の増額更正期間と同じである。「更正の申出」を行う際には、「事実を証明する書類」の提出が必要である。 3 更正の請求の範囲の拡大 当初申告の際、申告書に適用金額を記載した場合に限り適用が可能とされていた措置のうち、一定の措置については、更正の請求(又は修正申告書)の提出により事後的に適用を受けることができるようになった。1つは当初申告要件の廃止、もう1つは控除額の制限の見直しである(下記【参考】参照)。 これも実務的には極めて大きな改正であり、納税者にとって好ましい改正である。 4 おわりに 今回の改正は、納税者にとって好ましいものになっている。 課税庁にとっては、調査手続を一つ一つ履行する手間が増えることは確かだと思われる。 税制改正大綱に当初盛り込まれていた納税者憲章を創設する案が廃案となったことが示唆するように、この流れを逆行させようとする力は常に働いている。今回の改正の趣旨を生かすためには、調査の場面における納税者と税務代理人の持続的な努力が求められると思われる。 (連載了) 【参考】国税庁ホームページ ・「当初申告要件が廃止された措置」 ・「控除額の制限が見直された措置」
特定役員退職手当等の 実務上の留意点 税理士 柴田 知央 1 退職所得の改正の概要 退職所得は、原則、退職手当等から退職所得控除額を控除した後の金額の2分の1が課税対象となる。 しかしながら、平成24年度の税制改正により、特定役員に対する退職手当等(以下「特定役員退職手当等」)については2分の1が廃止され、退職手当等から退職所得控除額を控除した金額が、そのまま課税対象となる。 この改正により、特定役員退職手当等に係る退職所得は、課税対象が従来の倍となるため、税負担が非常に重くなる。 2 いつから適用されるのか この改正は、平成25年分以後の所得税について適用される。退職所得の収入計上時期は、退職手当等の収入すべきことが確定した日の属する年分の所得となる。 「収入すべきことが確定した日」とは、原則、退職手当等の支給の基因となった退職の日をいう。 役員に支給する退職手当等については、株主総会など権限を有する機関の決議を要するものについては、その役員の退職後、その決議があった日となる。 ただし、その決議において、具体的な支給金額を定めていない場合には、支給金額が具体的に定められた日となるので、注意が必要である。 3 特定役員退職手当等とは この改正の影響を受けるのは、特定役員退職手当等だけである。 したがって、特定役員退職手当等以外の退職手当等(以下「一般退職手当等」)の場合、従来通り、2分の1の適用が存続される。 「特定役員退職手当等」とは、役員等勤続年数が5年以下である人が、その役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払いを受けるものをいう。 したがって、役員等勤続年数が5年以下であるかどうかによって、税負担が大きく左右される。 役員等とは、次に掲げる者が該当する。 また、「役員等勤続年数」とは、退職手当等に係る勤続期間のうち、その者が役員等として勤務した期間の年数(1年未満の端数がある場合には、その端数は1年に切上げ)をいう。 勤続年数の計算の基礎となる勤続期間は、それぞれ暦に従って計算し、1月に満たない期間は日をもって数え、これらの年数、月数及び日数をそれぞれ合計し、日数は30日をもって1月とし、月数は12月をもって1年として計算する。 受給者が、一時勤務していなかった期間がある場合には、勤続期間の調整が必要となる。 4 使用人から役員に昇格した者に対し、退職手当等を支給する場合の税額の計算 例えば、入社してから退職するまでの勤続年数が40年であっても、役員等勤続年数が5年以下であれば、退職手当等のうち役員退職金部分については、特定役員退職手当等に該当する。 このときの、退職所得の金額及び税額は、次のとおりである。 【退職所得の金額】 ① 特定役員退職手当等分:(1,000万円-200万円(注1))=800万円 ② 一般退職手当等分:(2,200万円-2,000万円(注2)))×1/2=100万円 ③ 退職所得(①+②): 900万円 【課税退職所得金額に対する税額】 ① 所得税及び復興特別所得税:(900万円×23%-63.6万円)×102.1%=1,464,114円 ② 住民税:900万円×10%(注3)=900,000円 ③ 税額合計(①+②):2,364,114円 退職所得の源泉徴収税額の速算表(平成25年分) 仮に、退職手当等がすべて一般退職手当等に該当すれば、税額は1,084,522円(注4)となり、その差は1,279,592円にもなる。 そのため、実務上、役員等勤続年数には、常に注意を払っておく必要がある。 5 使用人の期間と役員の期間が重複する場合の退職所得の計算 使用人の勤続年数と役員等勤続年数が重複する場合の退職所得の金額は、次のように計算する。 【退職所得の金額】 ① 特定役員退職手当等分:(1,000万円-160万円(注5))=840万円 ② 一般退職手当等分:(2,200万円-2,040万円(注6))×1/2=80万円 ③ 退職所得(①+②): 920万円 6 取締役から監査役に就任した場合の役員等勤続年数 取締役及び監査役は、いずれも法人税法第2条第15号に規定する役員に該当する。 役員等勤続年数は、役員等として勤務した期間の年数なので、取締役及び監査役として勤務した期間の合計が役員等勤続年数となる。 (了)
〔平成9年4月改正の事例を踏まえた〕 消費税率の引上げに伴う 実務上の注意点 【第3回】 税率変更の問題点(2) 「レジスター等のシステム変更」 アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 1 システムの変更について 現在使用しているレジスター等については、この税率変更に伴ってシステムの変更をしなければならない。 販売する商品等のバーコードラベルなどをバーコードスキャナで読み込んで集計するレジシステムの場合には、発行側のバーコードの情報変更と読取り側のレジシステムの情報変更の双方を行わなければならず、かなりの事務作業となるため、早急に対応策を検討しなければならない。 また、外部にシステム設計を依頼している場合には、システム設計会社側が各企業より同時に発注を受けることとなり、その構築に必要以上の時間がかかる可能性もあるので注意しなければならない。 さらにPOSレジシステムなどを採用している企業の場合には、販売管理システムや会計システムと連動しているケースも少なくないことから、システム変更につき多額のコストが発生することとなり、設備投資資金も踏まえて検討する必要がある。 レジシステムの変更においては、レシートや領収書の表示についても5%から8%又は10%に変更しなければならず、注意が必要である。 平成9年の税率変更の際には、本体価額を集計しその合計額に税率を乗じる「外税方式」の計算システムが主流であったため、税率のみを変更するだけで容易に集計システムや表示方法を変更することができた。 しかしながら、平成16年の総額表示義務規定により消費税を含めた「内税方式」により計算しなければならなくなったことで、1円単位の端数処理をどのように処理するのか、レシート等の表示について消費税額をどのように表記するのかといった問題が生じるため、事業者側でどのようなルールで処理するのかを選択した上で、レジシステムを変更しなければならない。 さらに、このレシート等の表示については、レジシステムを内税方式により計算し、1円未満の端数処理後の消費税額を明示しなければ旧消費税法施行規則22条1項の規定を適用することができないことから、この対応も含めて検討しなければならない(下記2参照)。 また、税率変更前に販売した商品等が税率変更後に返品された場合については、5%で返品処理をすることとなり、その対応をレジシステムで処理しなければならないことから注意が必要である。 2 旧消費税法施行規則22条の適用について 事業者が売上代金に係る決済上受領すべき金額について、本体価格とこれに係る消費税額等とを区分して領収している場合において、その消費税額等につき本体価格に税率を乗じて生じた1円未満の端数を処理しているときは、その端数処理後の消費税額等の合計額を基礎としてその課税期間中の課税標準額に対する消費税額を計算することが、消費税法施行規則22条1項の『課税標準額に対する消費税額の計算の特例』(下記具体例参照、以下「旧規則22条」という)の規定により認められていた。 この旧規則22条の規定は、総額表示義務規定により税込価格で計算することが前提となったため、税抜価格で表示されている場合の端数処理の問題は生じないということから、平成16年3月31日に廃止された。 しかしながら、当時において、税抜価格を前提とした外税方式により処理をしていた事業者が多いこと、税込価格を前提とした内税方式のレジシステム等に変更するために相当の時間を要することなどの理由により、以下のような3つの経過措置が設けられた。 上記の各経過措置を適用するためには、それぞれの経過措置に定める方法により1円未満の端数処理を行った後の消費税額等とその基礎となった税込価格又は税抜価格とを領収書又は請求書等において明示することが要件となっているため、そのためのレジシステムを構築することが必要となる。 ただし、実際の運用については、期限付きで認められていた【経過措置3】のように税抜価格に税率を乗じて計算するレジシステムを採用している事業者が未だに少なくないことから、今回の改正においてもこの【経過措置3】を認める方向で検討されている。 具体的には、『転嫁対策・価格表示に関する対応の方向性についての検討状況(中間整理)』において「いまだに外税方式による税額計算をせざるを得ない業界に対しては、その事情を把握した上で、必要があれば『外税方式の端数処理の特例』を再び措置する方向で検討する。」としている(『消費税の円滑かつ適正な転嫁・価格表示に関する対策の基本的な方針(中間整理の具体化)』にも明記されている)。 したがって、レジシステム等の変更については、上記の経過措置の規定を適用するかどうかも含めて検討する必要がある。 3 システムの運用について レジシステム等の変更については、税率が変更される施行日(平成26年4月1日)から稼働しなければならないが、その導入時期をいつにするのかも検討する必要がある。 24時間営業をしている事業者の場合には、変更したレジシステム等を導入した後でも施行日前に販売したものは旧税率により計算し、施行日の0時からは新税率により計算することとなる。 同様に、商品等のバーコードについてもそのラベルをいつ貼り替えるのか、あるいは新旧税率に対応できるラベルに変更するのかも含めて検討しなければならない。 また、このシステム等の変更についても、今回の税率変更が2段階であることから、8%と10%の両方を対応させるのか、それぞれに分けて対応させるのかといった点についても検討が必要である。特に回転率が悪い商品等を取り扱う事業者にとっては重要な項目となる。 さらに、現在の政府の検討事項である複数税率について、導入されることとなればシステム変更がより一層複雑になることから、今後の法改正にも注意しなければならない。 (了)
改正「退職給付会計」の要点と 実務上のポイント 【第4回】 「退職給付制度・年金資産運用の再検討」 有限責任監査法人トーマツ 堀田 晃裕 2012年5月17日に企業会計基準委員会より、企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」が公表された。改正後基準(前述の会計基準及び適用指針を総称してこう呼ぶことにする)の改正前基準からの主な変更点は5点あり、以下のとおりである。 前回は改正適用時の実務(財務諸表への影響)について述べたが、今回はそれらを踏まえ、退職給付制度や年金資産運用について再検討すべきポイントなど、いくつか検討ポイントを挙げてこれについて述べる。 なお、本記事は執筆者の私見であり、有限責任監査法人トーマツの公式見解ではないことをあらかじめお断りしておく。 本改正の財務諸表への影響 第1回でも述べたとおり、本改正によって損益計算書の取扱いに変更はない。「退職給付債務及び勤務費用の計算方法」の変更により、改正前基準と改正後基準で勤務費用の水準は変動することが予想される。また退職給付債務の計算方法が変更されることで、利息費用の水準は変動することが予想されるし、数理計算上の差異の発生の仕方も変わるので数理計算上の差異の費用処理額も変動することが見込まれる。 しかし「退職給付費用=勤務費用+利息費用-期待運用収益±数理計算上の差異の費用処理額±過去勤務費用の費用処理額」が損益計算書に計上されるという大枠が変更されるわけではない。 本改正によって大きく変わるのは、貸借対照表の「純資産の部」である。発生した数理計算上の差異は、(翌期からこれを費用処理する会計方針の企業では)その発生した期にはその他の包括利益を通じて、純資産の部のその他の包括利益累計額に「退職給付に係る調整累計額」として計上される。したがって数理計算上の差異の発生は貸借対照表の「純資産の部」を直接増減させることになる。 これによって「純資産の部」の変動が大きくなることが見込まれる。 なお数理計算上の差異は、年金資産から発生するものと退職給付債務から発生するものに分けられる。年金資産から発生する数理計算上の差異は、期待運用収益と実際の運用収益の差から生じる。また退職給付債務から発生する数理計算上の差異のうち金額的影響が大きいのは、割引率の変更によるものである。 退職給付制度の再検討 退職給付制度を再検討することによって何を期待するかは、企業の置かれている状況によって異なる。コスト削減すなわち退職給付費用の絶対額の削減を求める場合もあるだろうし、今般の会計基準改正を受けて数理計算上の差異の発生の抑制を追求する場合もあるだろう。あるいはその両方という場合も考えられる。 ただ留意しておきたいのは、コスト削減は従業員側から見れば給付削減に他ならないということである。 以下で退職給付制度を構成する要素(給付水準、支払方法、給付算定式、制度の枠組み)ごとに再検討のポイントを見ていく。 これらから退職給付制度の再検討の方向性は、 コスト削減を目指すのであれば、給付水準・支払方法を従業員の同意を得られる範囲で適正化する 数理計算上の差異の発生を抑制するのであれば、確定給付企業年金を確定拠出年金へ移行することを検討する、あるいはキャッシュバランスプランの導入を検討する などが考えられる。 確定拠出年金は2001年に日本で導入されて以来、何度かの拠出限度額の引上げや従業員による拠出(いわゆるマッチング拠出)の導入など着実に規制緩和が行われてきている。ただ60歳まで原則として引出しができないことや、拠出限度額の関係で(給付水準が比較的高い企業の場合は)退職給付をすべて移行できるとは限らないことから、退職給付制度をすべて確定拠出年金とするのではなく、他制度と併用するのが現実的かもしれない。 年金資産運用の再検討 前述のとおり、年金資産から発生する数理計算上の差異は、期待運用収益と実際の運用収益の差から生じる。数理計算上の差異の発生を抑制するためには、期待運用収益と実際の運用収益の差があまり生じないようなリスクのより低い資産運用に移行する必要があり、その結果、多くの場合は期待運用収益を引き下げざるを得ないだろう。 なお、退職給付制度を再検討して必要に応じこれを見直した場合、年金資産運用も再検討する必要があるだろう。従来型の年金ALMを通じてリスクのより低い資産運用に移行するだけでなく、LDI(Liability Driven Investment、年金債務に基づく投資)のような手法の採用も検討対象となるだろう。 その他の検討すべき事項 期末における退職給付債務や年金資産の金額は、これまで期末の財務諸表に反映されることはなかった(数理計算上の差異を翌期から費用処理する会計方針の会社の場合)。 本改正により連結財務諸表の貸借対照表上、未認識項目が廃止され退職給付債務と年金資産の差額がそのまま負債又は資産として計上されることとなるため、従来は主に開示のために入手していた期末における退職給付債務や年金資産の額を、よりタイムリーに入手する必要があるだろう。また年金資産については開示目的で株式・債券などの種類ごとの割合又は金額の入手が必要になる。 こういった情報は子会社の分に関しても同様に入手が必要となるので、その内容やスケジュールについて事前に関係者間での十分な擦合せが必要となろう。 (連載了)
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第2回】 コマニー中国事業 取引に関する不適切な処理 「第三者調査委員会調査報告書」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【概要】 【コマニー株式会社の概要】 コマニー株式会社(以下「コマニー」という)は石川県小松市に本店を置く、間仕切りの製造・販売会社で、年商27,673百万円、経常利益651百万円。国内に2社、中国に5社の連結対象子会社を有している(数字はいずれも2012年3月期)。名古屋証券取引所上場。 【報告書のポイント】 1 第三者調査委員会を設置するに至った端緒 2012年9月11日、証券取引等監視委員会による立入調査があり、格満林(南京)実業有限公司(以下「格満林」という)を含む中国子会社(以下「格満林グループ」という)における会計処理の妥当性及び平成23年8月に買収して子会社とした南京捷林格建材有限公司(以下「捷林格」という)と格満林との取引にかかる関連当事者取引の該当性、捷林格の子会社該当性の有無などが指摘された。 2 コマニーグループの中国における業務体制と会計監査 【図表1】事業系統と会計監査体制(有価証券報告書を簡略化して作成) (1) 格満林の2009年12月期決算 格満林は、監査を担当していたKPMG南京事務所から、2009年12月期決算について、監査報告書を発行しない旨の通告を受けため、既に捷林格の監査を担当していた江蘇興瑞会計士事務所に監査を依頼、適正意見に相当する監査証明を得た。 中国では、監査証明が入手できない場合には、税務申告などができず、営業許可証が発行されないために事業停止となる危険性があったためである。 (2) あずさ監査法人による連結監査 あずさ監査法人は、格満林グループについては、連結売上高等に占める重要性が低いことを理由に、連結監査の中で分析手続等を行い、数年に一度の往査手続を実施、KPMGとはメールによる情報交換を行っていた。また、内部統制報告制度についても、重要性の観点から、評価の対象外としていた。 調査委員会は、こうしたあずさ監査法人の連結監査手続については、不適切な点は認められないと判断している。 なお、あずさ監査法人は、捷林格について、2011年8月のコマニーによる買収までは、連結対象であるという認識を有していない。 3 格満林グループの不適切な処理に対する監査上指摘事項とその検証 (1) KPMG南京事務所による指摘事項 KPMG南京事務所からは、長期滞留売掛金に対する貸倒引当金の設定不足、長期滞留在庫に対する引当金の設定不足など合計6項目にわたる指摘があった。 (2) 検証結果 調査委員会は、例えば、貸倒引当金の設定については、KPMG側が、滞留期間1年以上の売掛金には30%、2年以上の売掛金には50%、3年以上の売掛金には100%という設定を求めた(簡便法)のに対し、格満林グループ側は、個々の売掛金ごとに回収見込みを検討(個別法)して設定したものであり、妥当な処理と判断した。また、その他の指摘事項についても、格満林グループ側の処理は、概ね妥当な処理として認めており、不適切な会計処理には当たらないと判断した。 4 捷林格の子会社該当性及び関連当事者取引 (1) 捷林格の出資形態 【図表2】捷林格の出資形態 捷林格は、コマニーが中国市場における第2ブランド品(低価格品)の販売を模索する中で、格満林の副総経理Cが自らの経営する成光インターナショナル有限会社から20万USドルを出資させて設立したものであるが、この資金は、C副総経理がマンション購入資金と偽って、コマニーの社長から借り入れた2,500万円が原資であった。 (2) 子会社該当性 コマニーは、捷林格とは資本関係を有していないが、調査委員会は、C副総経理がコマニー又は格満林の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者(緊密な者)に該当し、C副総経理の有する議決権が過半数に達していることをもって、コマニー又は格満林が捷林格の議決権の過半数を有しているとみなして、設立当初より、捷林格はコマニー又は格満林の子会社に該当すると判断した。 前述したように、この判断は、あずさ監査法人の見解とは異なっている。 (3) 関連当事者取引 C副総経理が所有する捷林格との取引が関連当事者取引に該当するかについて、調査委員会は、Cは格満林の副総経理であってコマニーの役員ではなく、格満林事態も中核企業とは言えないことから、関連当事者には該当しないと判断した。 この判断は、あずさ監査法人の見解と一致するものである。 5 調査報告書の特徴 調査委員会の結論は、格満林グループの会計処理は適切であり、捷林格は、コマニー又は格満林の子会社に該当するとして、証券取引等監視委員会の指摘のうち、ひとつを認めたものとなった。しかし、捷林格を連結の対象とするか、非連結とした場合に同社との取引を関連当事者取引として開示するかは、その重要性を基準として判断すべきであるとしただけで、過年度の有価証券報告書等の訂正までは求めていない。 一方、監査に当たった会計士については、本件で問題となった事象に対し、「コマニー担当の会計士の対応や判断、発言には疑問が残ると言わざるを得ない」と断言し、改善点として、監査法人本部による積極的な関与が有効であるという、かなり踏み込んだ意見を表明している。 裏を返せば、会計士の対応が適時・適切に行われていれば、証券取引等監視委員会から指摘を受けて、第三者委員会を設置するまでの問題にはならなかったのではないかという、第三者委員の見解が込められているように感じられた。 第三者調査委員会の報告を受けて、コマニー株式会社は11月9日、「平成25年3月期第2四半期報告書の提出遅延及び当社株式の管理銘柄(確認中)への指定見込みに関するお知らせ」という適時開示を行い、この中で、捷林格を連結子会社として過去5年間にわたる過年度修正を行うことを発表している。 (了)
外国人労働者の雇用と在留管理制度について 【第1回】 「外国人雇用をめぐる主な注意点」 KPMG BRM株式会社 マネージャー 申請取次行政書士 佐々木 仁 1 はじめに 昨今のグローバル化の波は、大企業だけでなく、中規模あるいは零細な企業の雇用の現場にも押し寄せてきている。有用な人材は国の枠を超え、就学や就職の場を海外に求めている。 将来的に生産拠点や市場を海外に、と考える企業であれば、相互の社会や文化に理解のある、あるいは日本に関心を持つ外国人労働者を雇用することは、当面のニーズに応えるだけでなく、将来にわたって、その企業の発展に大きな影響を及ぼすだろう。 そこで本稿では、今後も増え続けることが予想される外国人労働者の雇用に関して、日本の在留管理制度の観点から想定される問題点及び本年7月9日から新たに施行された在留管理制度について、概括的に述べることにする。 2 外国人を雇用する場合に想定される問題点 外国人を雇用した場合、企業はどのようなことに気をつけなければならないか。 初めから既にスキルや知識を持っている外国人を呼び寄せて雇用する場合も多いが、ここでは参考例として、日本の大学を卒業する留学生を雇用するケースを取り上げてみたい。 日本の社会や文化にある程度慣れており、また多くの場合、語学にも堪能なことから、企業が卒業予定の留学生を雇用するケースが増えている。 日本に来る多くの留学生は優秀な人材が多く、将来的に大いに活躍が期待されるが、他の日本人労働者と大きく異なる点として、日本に居住し活動するための適切な「在留資格」への変更、または取得手続が必要なことを忘れてはならない。 留学生は「留学」の在留資格を得て来日している。そのため、例えば授業の合間にアルバイトとして働く場合でも、入国管理局から「資格外活動」の許可を事前に得る必要があり、かつ、労働時間に上限が定められている(原則週28時間以内、長期休暇期間除く)。 また、当初留学生としての在留資格をもって在留していても、大学を卒業し留学生でなくなれば、日本に居続けるためには、期限内に在留資格を変更しなければならない。 あるいは在留期限が近日中に迫り在留資格を変更するだけの残存期間がなければ、一旦本国に帰国したうえで、日本にいる親族や代理人等に日本の入国管理局から「在留資格認定証明書」を取ってもらい、その証明書を外国人本人が本国の日本大使館に持参して査証(「ビザ」)を取得し、日本に再度上陸する必要がある。 企業が外国人を雇用するときは、通常、本人の資質や印象に注目するため、本人が保有している在留資格の内容について注意が払われることは少ない。ところが、もしその在留資格が適切なものでなければ、予定したとおりその外国人が働くことができないこともあり得るので、十分注意していただきたい。 在留資格に基づかない、いわゆる「ビザなし就労」は不法在留であり、露見すると本人が強制退去命令を受けるほか、コンプライアンス上、雇い入れた企業にも多大な損害が起きる恐れがある。 なお、在留資格の変更や在留資格認定証明書の取得には申請から取得まで数週間かかり、さらに本国でビザを取得して来日するまでは就労することができない。よって、在留資格の変更申請や在留資格認定証明書の交付申請のタイミングが遅れると、当初予定していた雇用の開始日に間に合わなくなる可能性も出てくる。 このように、留学生を卒業後雇用する場合は、現在の在留資格の有無及び有効期限の確認と、有効な在留資格の取得または変更までに必要な時間を見越した、ある程度の時間的な余裕を忘れないようにしたい。雇用が決まったら、できるだけ早く手続することが望ましい。 3 在留資格について そこで、これまでに何度も出てきた「在留資格」とは何であろうか。 「在留資格」とは、外国人が日本に在留する間に「出入国管理及び難民認定法(入管法)」で定められたカテゴリーに基づいて活動を行うことができる資格である。 入管法に定められた活動以外は日本国内で行うことが認められておらず、観光目的等の短期滞在(在留期間90日以内)でビザの取得が免除される場合を除き、適切な在留資格に基づいた入国管理の手続を経ることなく日本に在留することはできない。 一般的に外国人が日本に3ヶ月以上在留する、中・長期在留者として入国するための手続は次のとおりである。 在留資格に基づき、該当する外国人(申請人)は、親族や代理人等に依頼して日本国内の入国管理局で「在留資格認定証明書」を取ってもらい、申請人がいる本国に送付してもらう。 申請人本人が「在留資格認定証明書」を持参して本国の日本大使館に出向き、査証(ビザ)を取得する(在留資格認定証明書の有効期間(上陸申請まで):交付後3ヶ月以内)。 入国する際に、査証が貼付されたパスポートと「在留資格認定証明書」を入国審査官に提示する。 日本に居住する外国人に認められている在留資格は、「特別永住者」を除き、就労可能資格及び就労不能資格と合わせて合計27種類にわたるが、そのうち就労目的に来日する外国人に該当する在留資格で、一般的なものは下記の4種類である。 各資格の活動内容、及び認定されるための最低限の基準は、以下のとおりである。 ① 企業内転勤 ② 人文知識・国際業務 ③ 技術 ④ 投資・経営 上記に記載されたもの以外にも、各資格にそれぞれ定められた基準があるので、雇用が予定されている外国人がどの在留資格に該当するか、また必要な手続についての詳細は、専門家にご相談いただきたい。 次回は、新たな在留管理制度について解説する。 (了)
福岡魚市場株主代表訴訟 ~判決から読む会社経営者の子会社管理責任(2) 弁護士 中西 和幸 1 はじめに 前回は、魚市場の株主代表訴訟(福岡地裁、高裁では役員が敗訴し、上告中である)の概要を説明した。 今回は、地裁、高裁判決から役員として、「何をしなければならないか」について解説したい。 なお、本稿は、当該裁判に対する論評や被告取締役の責任を追及する目的を有するものではないことを了承されたい。また、略称は前回使用したものはそのまま用いている。 2 「しなかった」ことの責任 本件で忠実義務・善管注意義務違反(以下「注意義務違反」という)が認められた事実は、 簿外取引に対する監視・監督義務のうち、遅くとも平成14年11月18日に公認会計士からの指摘を受けた時点で具体的かつ詳細な調査を行わなかったこと 簿外取引発覚後の連帯保証契約 簿外取引発覚後の当初融資 である。 1については、直接「しなかった」ことの責任が問われているが、2、3も、実質的には「しなかった」ことの責任が問われているので、順に解説する。 (1) 「不作為」とは 「不作為」とは、一定の行為を行う義務がある者が当該義務があるにもかかわらず行為が必要な時期に当該義務を履行しないことをいう。この不作為によっても、取締役や監査役としての法令違反や注意義務違反は発生する。 例えば、取締役会設置会社の業務執行取締役は、取締役会に対し3ヶ月に1回以上自己の職務の執行の状況を報告しなければならない(会社法363条2項)のであり、かかる報告をしない取締役は、何もしていなくとも(何もしていないからこそ)、報告がなかったことにより会社に損害が発生すれば当該条項違反の責任を問われることになる。 例えば、不良品の発生について現場から報告を受けていたにもかかわらず取締役会に報告しなかったことにより会社が製品の回収等の対策を行わず、その結果、当該製品の利用者が負傷し、会社が損害賠償を行った場合が考えられる。 (2) 役員の「作為義務」を考える(役職員をどこまで信頼するか) それでは、役員が本判決で問題となった監視義務につき具体的な作為義務を負う、つまり監視義務の一環として調査義務まで負うのは、どの段階か。 この点、取締役が現場の従業員が行っているすべての行為について、監視義務があるとして疑いの目を向けて調査をする義務があるとまでは、本判決では述べられていない。確かに、日常業務については、役職員間の相互の信頼の下に行われており、実務上はかかる信頼関係を前提として組織・体制を築いているのであるから、特別な事情が発生していない平時には役職員のすべての行為を逐一監視する義務はなく、更に調査義務が発生しているとは言えない。 逆に、他の役職員との相互の信頼関係を疑わせる事情があったときは、監視義務が厳格化し、役員に事実関係の調査義務が発生する、すなわち「作為義務」が発生すると考えることが適切ではなかろうか。 (3) 平時と有事 それでは、他の役職員との信頼関係を前提としてよい時期を「平時」とし、信頼関係が崩れている時期を「有事」とすると、いかなる事態を取締役が認識した場合に、「有事」であることを前提とした作為義務が発生するといえるであろうか。 本判決では、会計士から指摘を受けた時点で具体的かつ詳細な調査を行わなかった不作為について、責任が問われている。ただし、詳しく読むと、判決が指摘した「有事」を疑わせる事情は、単なる会計士の指摘だけではなく、(ア)Y1らが、フク社役員の立場として、不良在庫の発生及び大幅な短期借入金の増加を認識していたこと(イ)魚市場の取締役として、在庫の増加が問題とされ常勤取締役会において在庫管理状況の徹底チェックと長期在庫の処分方針が決められたにもかかわらず在庫が減少せず大幅に増加していることを認識していたことを、調査を行うべき作為義務の根拠としているのである。 以上のように、本判決は、「有事」であることについて複数の通常でない状況を認識していること、それも、親子会社の役員を兼任しているY1らについて、親会社役員と子会社役員のそれぞれの立場での認識を区別して、根拠としている。 したがって、役員としては、それぞれの立場に立って、通常の業務である「平時」と異なる事実を認識したときは、「有事」である可能性があるものとして、監視義務に基づき様々な情報を集めて適正に対応する義務があるということになろう(※)。もっとも、どのような事実が「平時」と異なる事実であるかということについては、会社毎のリスクに応じて考えられるものであり、残念ながらどの会社にも共通するような「これ」といったものはない。したがって、役員としては、こうしたそのリスク感覚を日々磨き上げ、情報を収集して対応することになる。 (※)この点、「重大な企業不祥事の疑いを感知した際の監査役等の対応に関する提言」(平成24年9月27日・日本監査役協会)が参考になろう。 (4) 子会社情報の入手 会社役員が自社の情報、とりわけ不正、事故等の不利益な情報を入手することは容易ではない。不正や事故に関わった役職員は、自らの保身のために隠匿する動機があるからである。そこで、役員として、職制の整備、内部監査、内部通報制度等の内部統制体制(システム)を構築・運用・監査し、その中で情報を取得することになる。子会社の情報を入手するためには、子会社も含めた企業集団全体で内部統制体制(システム)を構築・運用し、また監査しなければならない。 ただし、企業集団全体で体制を構築・運用したとしても、そこで入手できた情報を生かすのは役員次第ということを念頭に置かなければならない。 3 まとめ 以上をまとめると、役員としては、 をすればよい、という、実は当たり前のことを本判決が述べているにすぎないことがわかる。ただ、「当たり前」のことがなかなかできないものが実務であり、それ故、役員の業務は難しいとも言える。 (次回につづく) (参考文献:金融商事判例1367号41頁、1399号24頁、旬刊商事法務1970号15頁) (了)
事例で学ぶ内部統制 【第3回】 「限られた人員で 経営者評価の独立性を いかにして保つか?」 株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦 はじめに 今回は、内部統制の評価において主要な役割を担う監査部のあり方に目を向ける。 監査部は、企業の中にいながら、経営者の代理人として社内の内部統制の有効性を評価する。そのため、この経営者評価がお手盛りになることを防ぐため、監査部は評価される部門から独立していることが求められる。 ところが、企業の実務家による交流会で意見交換したところ、現場では限られた人員で監査部を組成するため、経営者評価の独立性を保つことに苦心している実情が浮かび上がった。 それでは、限られた人員で、どのように経営者評価の独立性を保っているのか。現場が抱える課題と解決のための創意工夫を紹介しよう。 内部統制の経営者評価をめぐる3つのパターン 議論の冒頭、筆者(株式会社スタンダード機構)より、 「内部統制の評価者は、経営者に代わって、社内で運用されているコントロールが財務報告の信頼性の確保に有効であることを評価するわけであるから、そのコントロールを運用する業務に関与できないこととなる。 例えば、売上計上プロセスで、売上伝票と証憑を照合するコントロールが運用されている場合、評価に携わる監査部の皆さまは、日々の照合業務や伝票への査閲印などという業務を担っていないだろう。これを“経営者評価の独立性”と呼ぶ。 では、実際に皆さまの会社では、どの程度の独立性が確保されておられるのか」 と切り出したところ、経営者評価の体制は3つのパターンに分かれた。 【パターン1】 監査部による第三者評価 参加企業Aは、「独立性を確保するため、すべてのコントロールの評価で、評価される部門から独立した第三者による評価を徹底した。 例えば、決算・財務報告プロセスについては、子会社監査役、財務管理部門経験者などからなる12名の評価チームを編成し、その他業務プロセスについては、内部統制部門からなる23名の評価チームを編成し、35名を統括するチームリーダーを監査部長とした。 この人数は多いと思われるかもしれないが、わが社の場合、過去に現業部門による不祥事が発生したためだ」(プラント会社)と、第三者評価を通じた監査部によるけん制が不可欠と判断した経緯を話した。 参加企業Bは、「当初は、評価される各部門に内部統制責任者を設置し、各部門で自己評価を実施し、その結果を本社に集める方式を考えた。 しかし、やってみたところ、各部門による評価のスタンダードがなく、評価結果がバラバラなため、本社側の内部統制担当者が評価レベルを揃えるのに苦労した。 そこで、評価の独立性を確保するために、本社にある独立した監査部の中に評価部署を設置し、すべての評価は監査部が行うこととした」(精密機器メーカー)と、評価の品質を保つためにも独立した監査部による第三者評価が有効であると指摘した。 【パターン2】 コントロールオーナーによるタスキがけ評価(クロスチェック) 参加企業Cは、「わが社の監査部は2名だけなので、すべてのコントロールの評価を監査部が行うことは不可能だった。 そこで、約30%のコントロールは監査部が評価に直接関与せず、現業部門が評価することとした。 その場合、評価を担う現業部門は、業務プロセスで日々運用を担当するコントロールオーナーが関与しない業務プロセスを担う者にし、相互に相手の業務プロセスのコントロールをタスキがけで評価することとした」(医療機器メーカー)と、監査部の人員の制約により、現業部門に属するコントロールオーナーによるクロスチェックを許容した実情を話した。 参加企業Dも、「恥ずかしながら、わが社の監査部も増員が認められない状況だったので、内部統制報告制度が始まる当初から監査部にすべてのコントロールの経営者評価を任せるという発想はなかった。 そこで、監査法人と相談し、管理部門の部課長から任命された者で構成される財務統制委員会を作って、すべてのコントロールの評価を実施することとした。 この財務統制委員会が経営者に代わって、評価範囲や体制やスケジュールなどの評価計画、評価、報告ができると社内規程で定めて権威づけをした。なお、財務統制委員会による経営者評価の結果に監査法人が依拠できるようにするため、自分が所属する部門の評価をしないようにした」(商社)と、監査法人との協議を経てクロスチェックに至った経緯を強調した。 【パターン3】 コントロールオーナーによる自己評価(セルフチェック) 参加企業Eは、「全体の約90%のコントロールは監査部による第三者評価だが、約10%に当たる海外部門の一部の経理プロセスのコントロールは、経理部門でコントロールを担うコントロールオーナーによる自己評価を行っている。 ただし、その自己評価結果を独立評価部署である監査部又は内部統制推進部が閲覧して評価の実施状況を確認している」(建設会社)と、海外の経理プロセスの評価に自己評価を導入していることを話した。 前出の参加企業Cは、「コントロールオーナーによるセルフチェックは、70%のコントロールの評価に導入した。結局、全体の30%はクロスチェック、70%はセルフチェックだ。 そして、監査部が評価の実施状況を後から確認するのは、セルフチェック部分の70%とクロスチェック部分の一部に相当する10%の合計80%のコントロールとなっている。 監査部の人員が制約され、作業負荷を考えると、これが最適解だった」と、自己評価を積極的に導入した実情を話した。 決算・財務報告プロセスの評価の独立性 多くの参加企業から相談が寄せられたのは、経理部が担う決算・財務報告プロセスの評価で独立性をどうやって保つかという問題であった。 参加企業Fは、「決算・財務報告プロセスの評価には会計知識が必要だが、わが社の監査部は、独立性を確保するあまり、経理・財務部門以外の組織が評価しているため、評価が表面的で形式的なものになりがちだ。 経理・財務部との定期的な勉強会を開催しているが、専門性が高く監査部担当者の知識が追いつかない。 実際の業務を理解して、有効な評価を行うために、他社ではどのような工夫をされているのか。逆に、経理・財務部門内の組織が評価に当たっている場合、独立性をどのように確保されているのか」(情報通信会社)と、問題を投げかけた。 これに対して、参加企業Gは、「経理部経験のある会計知識に明るいベテランを監査部に異動させ、決算・財務報告プロセスの評価をして、独立性と専門性を保った」(部品メーカー)と、人事異動で対応したと話した。 参加企業Hは、「わが社では、経理部員を監査部に異動させるだけの余裕がなかった。かといって、経理未経験者では、経理部のリスク評価ができない。 そこで、同じ経理部の中で、決算・財務報告プロセスを経験していた者が現在の起票を担当しないことを条件にクロスチェックすることとした。 評価者は、人事上は経理部員だが、経理部内の一切の経理伝票を起票しないため、内部統制報告制度においては、第三者として位置づけている」(建設会社)と、職務分離を図ることで対応していた。 次回は、監査部員1名当たりのコントロール数を比較検証する。 (了)