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ハラスメント発覚から紛争解決までの企業対応 【第23回】「少人数の会社・部署におけるハラスメント対応策のポイント」

ハラスメント発覚から紛争解決までの 企 業 対 応 【第23回】 「少人数の会社・部署におけるハラスメント対応策のポイント」   弁護士 柳田 忍   【Question】 当社は全社員数が十数人の小さな会社です。先日、社員Aから、「上司Bからハラスメントを受けている」との相談を受けました。早速事実確認を行い、ハラスメントの事実が確認できたらしかるべき処分を行いたいと考えていますが、気をつけるべき点があれば教えてください。 【Answer】 少人数の会社や部署においては、事実調査において被害者や目撃者の協力が得られにくいという問題や、被害の拡大や再発を防止するために被害者と加害者を隔離することが難しいといった問題があります。これらに対する対応策としては、ヒアリングにおけるオープンクエスチョンの活用やダミーのヒアリングの実施、在宅勤務制度の活用などが考えられます。   1 はじめに 少人数の会社や部署におけるハラスメント事案の対応策を講じるに際して特に問題となるのが、①事実調査を行おうとしても被害者や目撃者からの協力を得られない場合が多いという点と、②被害の拡大や再発を防止するために被害者と加害者を隔離することが困難であるという2点である。 以下、それぞれの問題点のポイントについて説明する。   2 ①の問題点(被害者らの協力が得られない)のポイントについて (1) 問題の所在 ハラスメント事案においては、原則として加害者に対するヒアリングも行うことになる。その際に、問題とされている具体的な言動を挙げて加害者の言い分を聞くことになるが、被害者や目撃者が、「当該言動に関する発言者が自分(被害者や目撃者)であったことを伝えないでほしい」と希望することが多い。これが、少人数の会社や部署におけるハラスメント事案になると、被害者や目撃者が、自分が発言者であることを伝えることだけでなく、当該言動自体の有無等について加害者にヒアリングすることすらも嫌がることが多いことが特徴である。 すなわち、被害者や目撃者が、「加害者に対するヒアリングにおいて具体的な言動を挙げて質問をすると、自分(被害者・目撃者)が申告者であることが加害者に知れて、加害者から報復を受けるから嫌だ」と主張するのである。このような場合は、まずは、以下のポイントを被害者や目撃者に説明し、説得を行うことになる。 被害者の中には、(目撃者の証言があれば)加害者のヒアリングは不要であると考える者がいる。しかし、加害者に弁明の機会を与えずに懲戒処分を行った場合、懲戒処分は無効となる可能性が高く(拙稿【第15回】参照)、また、その場合、会社の責任が認められる可能性もある。よって、そのような被害者に対しては、加害者のヒアリングの必要性を説明し、納得を得るよう試みるべきである。 また、被害者が会社に対して、「私(被害者)が加害者から報復を受けないことを約束してほしい」と希望することも多い。会社としては、加害者の言動をコントロールできない以上、上記b及びcを約束することで納得してもらえるよう、被害者を説得することになる。 (2) オープンクエスチョンやダミーのヒアリングの活用 被害者や目撃者が上記のような抵抗を示した場合の加害者に対するヒアリングの実施方法としては、加害者に対してオープンクエスチョンを行うという方法がある(拙稿【第5回】参照)。オープンクエスチョンとは、「職場で何か問題がありませんか」といった、相手の回答範囲を制約しないタイプの質問であり、調査担当者がどの件に着目しているのかを相手に察知されにくくする効果がある。 このようなヒアリング方法では問題となる事案に関する発言を得られないのではないかという懸念もあろうが、筆者がヒアリングを行った経験上、オープンクエスチョンの方法が功を奏することは多い。加害者においても少なからず問題の言動の自覚があることが多く、(聴取者が弁護士であることもあって)この機会に弁明しておこうと考えるようである。 なお、加害者が複数の事案について言及を行うことも多く、その場合には、問題の事案以外の事案についてもヒアリングを行うことを忘れないようにしなければならない(その他の職場環境の問題を見過ごさないためでもあるし、会社が問題の事案について調査を行っていることを加害者に気づかれないためでもある)。 更に、加害者の他、ランダムに数人の社員を選び、これらの社員に対して、「社内の職場環境における問題点について調査を行っている」という建て付けで、いわばダミーのヒアリングを併せて行うことにより、会社が加害者に対してフォーカスしていることを加害者に知られることなくヒアリングを行うことが可能となり、被害者や目撃者への報復のおそれを低減することもできる。   3 ②の問題点(被害者と加害者の隔離が困難)のポイントについて ハラスメントの事実調査が終了する前であっても、取り急ぎ、被害の拡大を防ぐために、被害者と加害者の職場を引き離す等の対策が必要になる場合があるし(拙稿【第4回】参照)、ハラスメントの存在が明らかになった場合に、再発防止措置として、加害者や被害者の配置転換を行うことが必要となる場合もある(拙稿【第6回】参照)。 しかし、従業員数が少ない会社の場合、被害者と加害者の間の業務上の接点を完全になくすことが難しい場合が多く、また、被害者と加害者の勤務場所を分ける物理的な余裕がないことも多いであろう。一方、従業員数が少ない部署の場合は、被害者又は加害者を他の部署に配置転換することを検討するべきであるが、被害者ないし加害者のスキル等の観点から他の部署に異動させることが難しい場合もあるであろう。このような場合には、被害者と加害者が業務上接する場面に極力他の従業員を関与させるなどすることが考えられる。 また、コロナ禍において多くの会社において導入されたであろう在宅勤務制度を利用して、被害者と加害者の出勤日をずらすといった手段も有用である。もっとも、在宅勤務については、リモート会議におけるハラスメントに注意する必要があるため、被害者と加害者の間でリモート会議が行われるような場合には、他の従業員も参加させるなどの予防策も検討に値する。 (了)

#No. 456(掲載号)
#柳田 忍
2022/02/10

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第38回】「遺言書の種類と作成」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第38回】 「遺言書の種類と作成」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 日野 有裕   相談内容 私Kは30歳で人材派遣会社のC社を起業し、妻Rとともに事業を拡大してきました。40歳になった今は妻と子供2人(子供は2人とも小学生)という家族構成です。今後上場するつもりもないので、2人目の子供が生まれたときに無議決権株式を導入し、その無議決権株式を2人の子供に贈与しています。私は健康ですが、万が一、自分の身に何かあった時のためにも遺言書を書いておこうと考えていますが、遺言書にはどのような種類があり、どのように書いたら良いでしょうか。 なお、現段階における私の希望は、私が持っている普通株式を妻に相続してほしいということだけです。C社は社歴も浅いため社内に会社を任せられるほどの人材が育っていないので、役員や取引先、メインバンク等と相談して、M&Aにより株式を他社へ売却したうえで事業を継続してほしいと願っています。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ 今回のケースで、遺言書を作成する最大の理由は、相続時の手続きをスピーディーに行うことにあります。仮に、子供が未成年のうちに相続が発生し、遺言書がない場合は、家庭裁判所において子供2人の代理人を選定してもらい、その代理人と妻とで財産の分割協議を行うことになります。 このような手続きを踏んでいると、社長がいなくなった会社で株主が決まらない状態が何ヶ月も続く可能性があります。そこで遺言書が必要となるわけです。 [1] 遺言書について 遺言については、以下の3種類があります。いずれについても、法律によって厳格に様式が定められており、それに従わない遺言書はすべて無効となります。もちろんビデオ録画等によるものも遺言としての法的効力はありません。 (1) 自筆証書遺言(民法968条) 自分1人で作れるため内容を秘密にでき、しかも簡単で費用がほとんど掛かりません。遺言内容全文・日付・氏名を手書きし、署名の下に押印することにより作成します。ただし、2019年1月13日より財産目録については、パソコンでの作成や通帳のコピーの添付も認められるようになりました(各ページに署名・押印が必要です)。 また、今まで自筆証書遺言書は本人、相続人、弁護士等が保管していましたが、紛失や隠匿というリスクがありました。 そこで、2020年7月より法務局による自筆証書遺言書の保管制度が始まりました。この保管制度のメリットは主に以下の通りです。 (2) 公正証書遺言(民法969条) 法律の専門家である公証人と証人2名以上が立ち会って行う遺言で、公証人は遺言者の遺言能力や遺言の内容の有効性について助言を行い、遺言者の意向に沿った遺言書を作成します。公正証書遺言のメリットは遺言が無効になるリスクが低いため、相続人間での争いが予想される場合には特に有効です。ただし、財産額に応じた手数料が発生しますので、事前に確認が必要です。 (3) 秘密証書遺言(民法970条) その名の通り遺言書の内容を秘密にするため、遺言者が遺言の内容を記載した書面に署名・押印をし、この遺言書を封筒に入れた上、公証人及び証人2名により遺言書が入っていることを公正証書の手続きで証明する方法です。実際の相続の際には家庭裁判所の検認が必要であり、また原本の紛失のリスクもあるため実務上はあまり見られません。   [2] 遺言書の内容 ご相談の場合は具体的な財産・負債が不明ですが、妻にC社株式が確実に相続でき、遺産分割協議の余地がなければ子供に代理人を選定しなくて良いため、シンプルに以下のような内容で自筆証書遺言を作成してはいかがでしょうか。   [3] 結論 ご相談の遺言は紛争の回避というよりは、K氏のもしもの時の相続をスピーディーに行い、従業員・取引先に心配をかけないよう事業の継続を確実にするためのものです。遺言書の内容やその意味については、妻R氏と共有しておくべきでしょう。ただし、この遺言書では妻に普通株式を相続させますが、10年、20年後であれば子供に相続させる可能性や幹部社員に経営を任せるという選択肢も考えられます。 したがって、時の経過に伴う事業・家族構成の変化に応じて、遺言書を書き換える必要があります。数年に1度は具体的に遺言書の内容を検討することが必要でしょう。 実際の手続きに際しては、弁護士や税理士等の専門家に相談することをお勧めします。   (了)

#No. 456(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2022/02/10

《速報解説》 金融庁、「記述情報の開示の好事例集2021」を更新~経営方針、経営環境及び対処すべき課題等・事業等のリスク・MD&Aの開示に関する好事例を追加~

《速報解説》 金融庁、「記述情報の開示の好事例集2021」を更新 ~経営方針、経営環境及び対処すべき課題等・事業等のリスク・MD&Aの開示に関する好事例を追加~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年2月4日、金融庁は、「記述情報の開示の好事例集2021」の更新を公表した。 これは、2021年12月21日に公表した「記述情報の開示の好事例集2021」(サステナビリティ情報)に関する開示の好事例を更新するものであり、次のものについて好事例を追加している。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等の開示例 1 投資家・アナリストが期待する主な開示のポイント 次の事項をあげている。 2 好事例のポイント 次のことが記載されている。   Ⅲ 事業等のリスクの開示例 1 投資家・アナリストが期待する主な開示のポイント 次の事項をあげている。 2 好事例のポイント 次のことが記載されている。   Ⅳ 経営成績、キャッシュ・フロー等の分析の開示例 1 投資家・アナリストが期待する主な開示のポイント 次の事項をあげている。 2 好事例のポイント 次のことが記載されている。   Ⅴ 重要な会計上の見積りの開示例 1 投資家・アナリストが期待する主な開示のポイント 次の事項をあげている。 2 好事例のポイント 次のことが記載されている。 (了)

#No. 455(掲載号)
#阿部 光成
2022/02/08

《速報解説》 EDINETで提出する監査報告書について、「KAMのXBRLタグ付け方針等の一部追加」及び「2022.3.31以後に終了する事業年度から「その他の記載内容」に関するXBRLタグ付けの追加」を会計士協会が公表

《速報解説》 EDINETで提出する監査報告書について、「KAMのXBRLタグ付け方針等の一部追加」及び「2022.3.31以後に終了する事業年度から「その他の記載内容」に関するXBRLタグ付けの追加」を会計士協会が公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年2月4日、日本公認会計士協会は、「EDINETで提出する監査報告書へのXBRLタグ付けについて(お知らせ)」を公表した。 すでに、2021年3月31日以後に終了する事業年度からEDINETで提出される監査報告書については、監査上の主要な検討事項(KAM)がXBRLのタグ付けの範囲に含まれることになっている。 2021年11月に金融庁から公表されたXBRL関連ガイドラインの改訂において監査上の主要な検討事項のXBRLタグ付け方針等が一部追加されたことや、2022年3月31日以後に終了する事業年度から監査報告書におけるその他の記載内容に関するXBRLタグ付けが追加されることから、「お知らせ」として公表するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 XBRLタグ付け 監査上の主要な検討事項の記載区分においてXBRLタグ付けの対象となるのは、「監査上の主要な検討事項」の全体と、記載項目ごとに分けた「全体概要」、「見出し」、「開示への参照」、「内容及び理由」、「監査上の対応」であり、それらのXBRLタグがEDINETタクソノミに用意されている。 今回のXBRL関連ガイドラインの改訂では、監査上の主要な検討事項を表形式で記載する場合の「内容及び理由」と「監査上の対応」のレイアウトに関する注意事項及び「連結と同一内容である旨」のXBRLタグの使用方法が明確化された。 図表を用いて、XBRLタグ付けの留意点について記載されている。 2 その他の記載内容のXBRLタグ付け 2022年3月決算に係る財務諸表の監査から、監査報告書において「その他の記載内容」が記載されることになった(早期適用可能)。 これに伴い、金融庁が公表した2022年版EDINETタクソノミからその他の記載内容をタグ付けするためのXBRLタグが追加された。 具体的には、「その他の記載内容」のタグと「未修正の重要な誤り」のタグが、EDINETタクソノミの連結財務諸表に対する監査報告書及び個別財務諸表に対する監査報告書の区分に、それぞれ追加されている。 図表を用いて、XBRLタグ付けの留意点について記載されている。 (了)

#No. 455(掲載号)
#阿部 光成
2022/02/08

《速報解説》 CGコード改訂を受け「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」が公表される~知財・無形資産の投資・活用を促し、維持・強化に向けた投資戦略構築を求める~

《速報解説》 CGコード改訂を受け「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」が公表される ~知財・無形資産の投資・活用を促し、維持・強化に向けた投資戦略構築を求める~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年1月28日付けで、「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(座長:加賀谷哲之一橋大学商学部教授、事務局:内閣府知的財産戦略推進事務局・経済産業省経済産業政策局産業資金課)は、「知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver1.0~知財・無形資産の投資・活用戦略で決まる企業の将来価値・競争力~(投資家や金融機関等との建設的な対話を目指して)」を公表した。 これは、2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂により、上場会社は、知財への投資について、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきであることなどが規定されたことを受けたものである。 ガイドラインは、「価値協創ガイダンス」(経済産業省「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス-ESG・非財務情報と無形資産投資-」、2017年5月)と併せて活用することが期待されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 知財・無形資産と5つのプリンシプル(原則) ガイドラインでいう「知財・無形資産」は、「知財を始めとする無形資産」を指している(21ページ)。 そのスコープは、特許権、商標権、意匠権、著作権といった知財権に限られず、技術、ブランド、デザイン、コンテンツ、データ、ノウハウ、顧客ネットワーク、信頼・レピュテーション、バリューチェーン、サプライチェーン、これらを生み出す組織能力・プロセスなど、幅広い知財・無形資産を含めている。 これは、国際統合報告の資本の分類のうち、「知的資本」「社会・関係資本」等をカバーするものである。 【図表4:本ガイドラインの全体像】では、ガイドラインの全体像がわかりやすく示されている(8ページ)。 ガイドラインは、近年、知財 ・無形資産は、競争力の源泉としてより重要な経営資源となっているとの認識を示し、その背景として、急速な技術革新、社会的課題への関心の高まりといった経営を取り巻く環境の急速な変化を挙げている。 ガイドラインは、企業の知財・無形資産の投資・活用を促し、知財・無形資産の維持・強化に向けた投資戦略を構築することを求めている。 当該取組を進めるにあたり、次のように、企業、投資家や金融機関に求められる5つのプリンシプル(原則)を挙げている。 2 「価格決定力」あるいは「ゲームチェンジ」につなげる 次のことが重要である。 特にメーカーにおいては、売上高や稼働率優先になってしまう傾向が見られることから、経営者は価格にこだわり、価格の決定は経営そのものであるという認識を持つことが重要であると述べている(26ページ)。 京セラ創業者の稲盛和夫氏は、「値決めは、経営者の仕事であり、経営者の人格がそのまま現れるのです。」と述べているとのことである(27ページ)。 3 「費用」でなく「資産」の形成と捉える イノベーションで新たな市場が確立されるまでの市場創成期においては、ある程度の赤字を覚悟してでも十分な知財・無形資産への投資を行っていくことが重要である。 そのためには、経営者は、知財・無形資産の投資は単年度「費用」でなく「資産」の形成という発想を持つことにより、安易に削減の対象とすることのないよう意識することが重要である。 現在の会計ルールでは、研究開発費は発生時(単年度)に費用処理されるが、研究開発費などの知財・無形資産投資を営業利益に足し戻し、その償却年数と合わせて資産として捉えるような取組は、企業が知財・無形資産投資をポジティブに捉えるインセンティブを与える効果的な手法であると述べている(28ページ)。 4 「ロジック/ストーリー」としての開示・発信 投資家や金融機関等からの資金の獲得につなげたり、社内外の関係者との戦略の共有化を図ったりするために、知財・無形資産の投資・活用戦略を「ロジック/ストーリー」として説得的に説明することが重要である。 5 全社横断的な体制整備とガバナンス構築 社内の幅広い知財・無形資産を全社的に統合・把握・管理し、知財・無形資産の投資・活用戦略の構築・実行・評価を取締役会がモニターするガバナンスを構築することが重要である。 経営陣は、自社の持つ知財・無形資産の価値に気づき、価格にこだわり、安易な値下げを回避することが重要であると述べている(52ページ)。 そのためには、価格の決定は経営判断事項であるとの認識を持ち、営業現場や社内調整の中で安易な値下げが行われないような体制を構築することが求められるとのことである(52ページ)。 知財部門が、従来の業務の枠を超えて、経営戦略の策定に参画し、全社的な提言を行っていくことなどにより、中心的な役割を果たすことも考えられる(53ページ)。 6 中長期視点での投資への評価・支援 知財・無形資産の投資・活用は長期的な取組であり、価値創造やキャッシュフローの創出につながるまでに一定のタイムラグが生じることも多い。 このため、投資家や金融機関は、企業の取組を長期的な観点から評価し、納得できる説明があるのであれば、短期的には収益を圧迫したとしても、その経営方針を支持し、大胆な知財・無形資産への投資を理解し支援する姿勢が求められる。 投資家や金融機関には、企業の知財・無形資産の投資・活用戦略をファンダメンタルズ分析に取り込み、投融資判断を行うことができる人材育成と環境整備が求められる(59ページ)。 7 知財・無形資産の投資・活用のための7つのアクション 知財・無形資産の投資・活用のための7つのアクションとして、次のことが記載されている。 (了)

#No. 455(掲載号)
#阿部 光成
2022/02/08

《速報解説》 令和3年分所得税の確定申告期限の一律延長は見送りもコロナの影響を理由とした個別延長申請は可能に

《速報解説》 令和3年分所得税の確定申告期限の一律延長は見送りも コロナの影響を理由とした個別延長申請は可能に   Profession Journal編集部   令和4年2月3日、国税庁は、オミクロン株による感染の急速な拡大に伴い、確定申告期間(申告所得税:令和4年2月16日(水)~令和4年3月15日(火))にかけて、感染者や自宅待機者のほか、通常の業務体制が維持できないこと等により、申告が困難となる納税者が増加することが想定されることから、令和3年分確定申告について、新型コロナウイルス感染症の影響により申告等が困難な方については、令和4年4月15日(金)までの間、簡易な方法により申告・納付期限の延長を申請できるようにすることを公表した。 新型コロナウイルス感染症の影響により昨年までは2年連続で申告期限を一律延長してきたが、今年は一律延長を見送り、簡素化した手続きによる個別延長へとシフトする。 具体的な期限延長手続としては、期限後に申告が可能となった時点で申告書の余白等に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」などと記載することで申請をできるとし、合わせて記載例についても公表している。 また、申告所得税以外の税目も同様の取扱いとされており、詳細については「国税の申告・納付期限の簡易な方法による延長に関するFAQ」の問4にて言及されているため、適宜参照されたい。 なお、上記の個別延長申請に関する公表に伴い、同日付で国税庁は、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」を更新した。 上記FAQでは、「1 申告・納付等の期限の個別延長関係」に関する8問含む16の設問につき更新(3つの設問につき追加)を行っている。 今回新たに追加・更新された設問及びリンク先は以下の通り。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 455(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2022/02/03

プロフェッションジャーナル No.455が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年2月3日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.455を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/02/03

monthly TAX views -No.109-「人的資本の向上と税制」

monthly TAX views -No.109- 「人的資本の向上と税制」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   岸田政権が掲げる「新しい資本主義」には、成長戦略がないといわれている。経済成長しなければ分配も一回きりで終わり、さらなる成長にはつながらない。年金など社会保障の持続可能性を高めるためにも経済成長は欠かせない。 一方、有識者や経済学者のコンセンサスともいうべき成長戦略は、生産性を向上させるための人的資本の向上である。 わが国の労働人口は継続的に減少を続けていることから、成長のためには生産性の上昇が不可欠であり、企業レベル・産業レベルでの成熟、衰退分野から成長分野への移動や転換と、それにあわせた労働者の人的資本の向上(古くなった知識更新のためのリスキリングや能力開発)が必要だ。 これらがセットとして進んでいけば、産業構造の高度化が進み、生産性も向上し、賃金も継続的に増加していく。 このような再教育や能力開発は、正規雇用者にとどまらず、非正規雇用者や、働き方改革で増加するフリーランス、さらにはギグワーカー(単発の契約で労務を提供する個人事業者)にも広がっていくことが望ましい。 ジョブ型雇用形態の導入が進んでいけば、労働者は次のジョブに移るため、ますます自らスキルを高める努力を行っていかなければならない。 一方、これまでわが国の人的資本の向上は、OJT(On The Job Training:職場内で実施される訓練)という形で企業が担ってきた。ところが今後労働の流動性が高まる(流動性を高める)となると、企業は自らのコストで行う人的資本の向上のための再教育・リスキリングを躊躇したり縮小することが予想される。せっかく鍛え上げても、他の企業に転職されてはたまらないからだ。 そこで、税制でこのような人的資本の向上を支援する必要が出てくる。 *  *  * 法人税の分野では、人材確保等促進税制(いわゆる「賃上げ税制」)が導入され、企業が行う教育訓練費を増加させた場合には税額控除額を増やしてきた。令和4年度税制改正でこの点をさらに深堀する。 個人所得税の分野では、平成24年度改正で給与所得者の特定支出控除を拡充し、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費や、図書費、交際費等勤務必要経費が特定支出に追加された。 「100年時代の人生戦略」(リンダ・グラットン)を考えるには、個々人が不断にスキルや能力を高めていくことが重要であり、そのためにはさらなる税制でのインセンティブが必要となろう。 例えば、現在特定支出控除の適用を受けるためには、給与等の支払者の証明書を添付する必要があるが、上述のように、個人が人的資本向上のための投資をする時代には、この要件は見直す必要があろう。 また、失業中に学費を払って教育・研修を受ける場合には、その支出を繰越欠損金のような形で、転職後複数年に渡って控除可能とするような仕組みも考えられるのではないか。知恵の絞りどころである。 (了)

#No. 455(掲載号)
#森信 茂樹
2022/02/03

〔令和4年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第1回】「「中小企業の設備投資を支援する措置の延長等」 「中小企業経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の創設」」

〔令和4年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第1回】 「「中小企業の設備投資を支援する措置の延長等」 「中小企業経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の創設」」   公認会計士・税理士 新名 貴則   令和3年度税制改正における改正事項を中心として、令和4年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。本連載では、その中でも主なものを解説する。 【第1回】は、「中小企業の設備投資を支援する措置の延長等」及び「中小企業経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の創設」について、令和4年3月期決算申告において留意すべき点を解説する。   1 中小企業の設備投資を支援する措置の延長等 中小企業の設備投資を支援するための税制措置が、令和3年度税制改正により延長されている。したがって、令和4年3月期の決算申告においては適用されることになる。具体的には次の通りである。 (1) 「中小企業経営強化税制」の見直しと延長 「中小企業経営強化税制」とは、青色申告書を提出する中小企業者等が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、一定の設備を取得し指定事業に供用した場合に、即時償却又は税額控除(7%又は10%)を認める制度である。 (※) 資本金又は出資金3,000万円以下の中小企業者等。 適用対象となる設備は次の通りである。また、令和3年度税制改正により、計画終了年度に修正ROA又は有形固定資産回転率が一定以上上昇する経営力向上計画を実施するために必要不可欠な設備が、「経営資源集約化設備(D類型)」として対象設備に追加された。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (※1) 情報通信業や医療保険業においては、一定の場合に制限あり。 (※2) 医療保険業を行う事業者が取得等するものは除く。 (※3) 複写販売用の原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く。 令和3年3月31日までの間に取得等して事業供用した資産が対象とされていたが、これが2年延長され、令和5年3月31日までに取得等して事業供用した資産が対象とされた。したがって、令和4年3月期の決算申告においては適用が継続される。 (2) 「中小企業投資促進税制」の見直しと延長 「中小企業投資促進税制」とは、青色申告書を提出している中小企業者等が、特定の機械装置などを取得等して、指定事業に供用した場合に、その事業の用に供した事業年度において、30%の特別償却又は7%の税額控除を認める制度である。 (※) 資本金又は出資金3,000万円以下の中小企業者等。 適用対象となる設備は次の通りである。 対象となる指定事業に「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」の対象業種が追加されるなど、令和3年度税制改正により、下記の通り一定の見直しが行われている。 令和3年3月31日までに取得等をして事業供用した資産が対象であったが、これが2年延長され、令和5年3月31日までに取得等して事業供用した資産が対象とされた。したがって、令和4年3月期の決算申告においては適用が継続される。 (3) 「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」の廃止 「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」とは、青色申告書を提出する中小企業者等が認定経営革新等支援機関等の指導及び助言を受け、一定の器具備品及び建物附属設備を取得した場合に、30%の特別償却又は7%の税額控除を認める制度である。 令和3年度税制改正により、「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」の対象業種が「中小企業投資促進税制」に追加されたことを受け、「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」は令和3年3月31日をもって廃止された。   2 中小企業経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の創設 令和3年度税制改正において、中小企業のM&Aのリスクに備えた措置として、「中小企業事業再編投資損失準備金」が創設された。 「中小企業事業再編投資損失準備金」とは、青色申告書を提出する中小企業者が、認定経営力向上計画に従ってM&Aを行い、損失に備えるために準備金を積み立てた場合に、その積立額の損金算入を認める措置である。 具体的な適用要件は次の通りである。 準備金の積立額について、積み立てた事業年度の損金に算入できる。 積み立てた事業年度終了の日の翌日から5年経過した日を含む事業年度から、5年間で残高の均等額を取り崩して益金算入する。 ただし、主として次のようなケースには準備金の取崩しと益金算入が必要となる。 この改正は、「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」の施行日(令和3年8月2日)から適用される。したがって、令和4年3月期決算申告においては適用が開始されている。 (了)

#No. 455(掲載号)
#新名 貴則
2022/02/03
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