租税争訟レポート 【第60回】 「税理士損害賠償請求訴訟~調査拒否と仕入税額控除の否認 (千葉地方裁判所令和3年12月24日判決)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【判決の概要】 【事案の概要】 本件は、遊技場を経営する会社である原告が、平成26年2月から平成27年6月までの間に行われた国税局の職員による税務調査において帳簿及び請求書等(以下「帳簿等」という)を提示しなかったため、A税務署長から、平成27年6月8日付けで、帳簿等を保存しない場合に当たることを理由として消費税法30条1項の規定による仕入に係る消費税額の控除(以下「仕入税額控除」という)を否認する消費税及び地方消費税の更正及び過少申告加算税の賦課決定を受けたことについて、原告から税務代理を受任し本件調査に対応していた被告に善管注意義務違反、指導助言義務違反及び忠実義務違反があったと主張して、被告に対し、不法行為の規定による損害賠償又は税務代理委任契約上の債務不履行による損害賠償として、上記更正等による増額等に係る消費税及び過少申告加算税に相当する38億2,539万3,900円の一部である3億円と弁護士費用2,000万円との合計3億2,000万円並びにこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年5月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 【事案の経緯】 【判決の概要】 1 争点 本件の争点は、 の2つであるが、原告が更正処分によって課された消費税額及び過少申告加算税額の合計が38億円を超え、原告の損害賠償請求額3億2,000万円は、その10分の1に満たないことから、〔争点1〕において裁判所が被告の義務違反を認めた場合には〔争点2〕は大きな問題にはならないとの観点から、本稿では、〔争点1〕に絞って、原告及び被告の主張並びに裁判所の判断を検討したい。 2 原告の主張 原告は、被告には善管注意義務違反があるとして、次のように主張した。 さらに、被告による、本件調査の開始に当たり事前通知がされていなかったことが違法であるという主張に対しては、本件調査については事前通知を要しない理由を説明すべき法令上の根拠はなく、また、事前通知がなく調査が行われたことについて不服申立ての途はないことから、事前通知がないこと及び事前通知を要しない理由を説明しないことは、その後の調査を拒否する理由にならないとして否定している。 3 被告の主張 一方、被告は、本件調査担当者に対し、本件調査への協力や帳簿等の提示を拒否したものでなく、質問調査を行う法的根拠を確認していたにすぎず、本件調査に対する対応について、被告に税務代理委任契約上の善管注意義務違反及び指導助言義務違反はないと主張した。 その理由として、本件は、税務調査に当たり、国税庁長官の通達にある事前通知を行わない場合に該当しないにもかかわらず、調査対象者や税務代理人に対して最後まで執拗に事前通知を行わなかった点で特異な事案であり、本件調査担当者からは連絡票なるものが送付されてきたが、連絡票が国税通則法に定める事前通知か確認したところ、事前通知を要しない場合に当たると回答があった。被告は、法律に根拠がない連絡票を送付するのはおよそ正しいやり方でなく、調査対象者や税務代理人を威嚇し追い込むための不当な恫喝と思われ、被告はますます対応に悩むことになった。 さらに、被告は、各更正等は、違法であり、取り消されるべきであったにもかかわらず、別件訴訟で敗訴したのは原告の責任であり、被告に責任はないと主張した。その理由として、次のように述べた。 4 裁判所の判断 千葉地方裁判所は、東京国税局による抜き打ちの税務調査開始日である平成26年2月4日から、原告が各更正等の通知書等の受取りを拒否して、処分行政庁となったA税務署の職員が、原告会社に臨場し、郵便ポストに各更正等の通知書等の差置送達をした平成27年6月8日までの詳細な状況を分析した上で、次のように判示した。 まず、裁判所は、税理士が負う善管注意義務について、他人から税務代理を受任した税理士は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、当該委任に係る税務代理に関する事務を処理する義務を負う(民法644条)ところ、被告は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場(税理士法1条)でありつつも、全ての国税に関わる原告の正当な利益を実現し又は保持するため、善良な管理者の注意をもって、当該委任に係る税務代理に関する事務を処理する義務を負っていたというべきであるという一般論を述べた。 その上で、これを本件の事実関係に即してみると、被告は、原告の税務代理人として、本件調査に対する対応を行うに当たり、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、税法の解釈に関する自らの見識を有しつつも、適時に、原告に対し、本件調査の状況と見通しを客観的かつ真摯に説明し、原告から、本件調査に対する対応の方針について、十分に知識、情報を与えられた上での指示ないし同意を得た上、かりそめにも、原告が、本来受けることができた青色申告の承認を受けることによる税法上の特典を受けることができなくなることや、本来受けることができた消費税の仕入税額控除を否認されることがないよう、細心の注意をもって、適切に対応を行う義務を負っていたというべきであるという判断を示した。 こうした前提の上で、裁判所は、被告について、被告は、本件調査担当者から、各連絡票の送付を受け、法人税、消費税等の納付の基となる全ての帳簿書類を提示し税務調査に応ずることを求められ、その求めに応じなければ、青色申告の承認の取消処分を受け、消費税の仕入税額控除を否認されるという、重大な不利益処分がされる可能性があることが明示されたにもかかわらず、原告の本店所在地を異動することやF国税局に対してA税務署の調査であれば税務調査に応ずる旨の文書を提出することを決定するなどの弥縫びほう策をとったのみで、本件調査が原告に対する事前通知を行うことなく開始されたことの違法を主張して本件調査に応ずることを拒否するというそれまでの方針を維持することの可否について、課税当局の対応見込みを踏まえて原告(X2)と真摯に検討することがなかったという認定事実に基づいて、被告は、他人から税務代理を受任した税理士が負う義務に違反し、原告は、そのことによって、帳簿書類を提示し税務調査に応ずる機会を失い、各更正等を受けるに至ったと認めることができるから、被告に対し、これによって生じた損害の賠償を請求することができると結論を示した。 5 結論 裁判所は、被告による各更正等が違法であるという主張に対して、各更正等に重大かつ明白な瑕疵があると認めることはできず、各更正等が当然に無効であるということはできないから、各更正等は、それが権限を有する行政庁の職権又は裁判所の取消判決により取り消されない限り、その効力を否定することができないという判断を重ねて示した。 その上で、被告の義務違反行為によって原告に生じた損害は合計38億4,090万6,206円であり、その一部である3億円と弁護士費用2,000万円との合計3億2,000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年5月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める原告の請求は理由があるから、これを認容するという結論を述べた。 【解説】 国税通則法では、税務調査において行使される税務職員の質問検査権に対し、答弁をしない者や偽りの答弁をした者、帳簿書類等の提示・提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じない者や偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類を提示、提出した者については、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」旨の規定を置き(第128条)、納税者には、税務調査において、質問に答え、検査を受任する義務がある。 本件では、原告の顧問税理士である被告は、国税局による税務調査に当たり、事前通知がなかったことを理由に調査を拒み続け、結果的に、原告は法人税において青色申告の承認を取り消されたのみならず、消費税の申告において仕入税額控除の全額を否認されたことから、多額の追徴課税処分を受けた。 1 事前通知を要しない税務調査 国税通則法は、無予告の税務調査について、次のように定めている(一部、条文の文言を省略し、条文番号を補っている)。 本件の原告はパチンコ店を営んでおり、判決文のなかでは、原告自身が、パチンコ店について、「原告が属するパチンコ業は、売上、仕入に現金を取り扱い、過去に脱税行為に及ぶことが少なからず見受けられた業種」であることから、本件調査については事前通知を要しないと認めている。 原告が、平成26年2月に始まった税務調査当時からこのような認識を有していたのか、被告に対する損害賠償請求を行うなかで、被告の「事前通知のない税務調査は違法である」との主張を崩すために展開されたものかは判然としないものの、税務調査を拒否し続ける顧問税理士に対して、原告代表者がどのように考えていたかは、判決からは読み取れない。 2 国税局調査担当者による連絡票 税務調査が思うように進展しない国税局の調査担当者は、本件では、合計9件の連絡票を原告及び原告の税務代理人に送付している。「連絡票1」から「連絡票9」の記載事項を見ると、その内容は以下のように変遷している。 〈連絡票1(平成26年6月12日付)〉 国税通則法による罰則規定が説明されているのは「連絡票1」のみである。 その後、「連絡票4(平成27年3月9日付)」では、「今後も税務調査の進展が図られないと思われる場合は、やむを得ず当方で独自調査を進める」という条項が加わり、「連絡票5(平成27年3月27日付)」からは、「青色申告の承認取消処分」と「消費税の仕入税額控除の否認」という条項が、「独自調査」条項に代えて、説明されるように変遷している。最後となる「連絡票9」の記載事項は次のとおりである。 〈連絡票9(平成27年4月28日付)〉 被告は、「連絡票」は国税通則法に規定する「事前通知」には該当せず、また、法的根拠のない書類であるとして、税務調査に応じなかったが、結果的には、原告は「連絡票9」に記載されたとおりの更正処分を受けることとなり、裁判所は、被告に善管注意義務違反を認めて、原告の損害賠償請求を認容した。 被告である税理士は、国税通則法が改正される前に、事前通知がないことを理由に原告の税務調査を拒否した結果、税務調査そのものがなくなった経験を有していることが判決では述べられているが、平成23年度12月の国税通則法の改正が、「質問検査の手続が整備・改善され(中略)、質問検査を容易ならしめ、納税者の権利を保護することを目的とする大きな改正(※)」であることをどのように理解していたのだろうか。 (※) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂、2021年、995ページ)。 (了)
〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第31回】 「特定居住用宅地等に係る別居親族の「持ち家なし」の範囲」 税理士 柴田 健次 [Q] 被相続人である甲(相続開始日:令和4年4月3日)は、東京都内にA土地及び家屋を所有し、相続開始の直前において1人で居住していました。そのA土地及び家屋を取得した者が次のそれぞれの場合には、特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例の適用を受けることは可能でしょうか。 相続人は、長男、二男、三男の3人で、いずれも被相続人と生計を別にしています。 居住状況については、下記のとおりとなります。 【親族の居住状況】 [A] 長男、二男、二男の子がA土地及び家屋を取得した場合には、特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例(以下、単に「特例」という)の適用を受けることはできませんが、三男が取得した場合には、他の要件を満たせば特例の適用を受けることができます。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 特定居住用宅地等に係る別居親族の要件 被相続人の居住用宅地等を取得した親族が次に掲げる要件の全てを満たすことが要件となります(措法69の4③二ロ、措令40の2⑭⑮、措規23の2④)。 平成30年度の税制改正により、持ち家がない状況を作出して特例を受けることが問題となり、下記の④の下線部部分が追加となり、⑤の要件も追加となりましたので、注意する必要があります。 なお、平成30年度の税制改正は、原則として平成30年4月1日以後の相続又は遺贈から適用されますが、平成30年4月1日から令和2年3月31日までの間に相続又は遺贈により取得した居住用宅地等がある場合には、改正前の要件を満たせば、特例を適用することができる経過措置があります(附則118②)。 2 本問への当てはめ 〔長男について〕 上記1④及び⑤の要件を満たしませんので、特例の適用を受けることができません。 〔二男について〕 二男から見て長男は二親等内の親族に該当し、上記1④の要件を満たしませんので、特例の適用を受けることができません。 〔三男について〕 上記1④の要件を満たしているかどうかが問題となります。被相続人は、三親等内の親族に該当しますが、「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く」とされていますので、相続開始前3年以内にA土地及び家屋に居住していた場合でも要件は満たされることになります。 〔二男の子について〕 二男の子から見て長男は三親等内の親族に該当し、上記1④の要件を満たしませんので、特例の適用を受けることができません。 ★実務上のポイント★ 別居親族の持ち家なしの要件が複雑になっていますので、相続人等からヒアリングをして要件をしっかりと確認することが重要となります。経過措置もありますので、相続開始時期にも注意して判定を行う必要があります。 (了)
街の税理士が「あれっ?」と思う 税務の疑問点 【第6回】 「配偶者居住権と相続税及び被相続人の空き家特例との関係」 城東税務勉強会 税理士 大塚 進一 問 題 ① 令和3年3月に父が死亡しました。生前に父と母が住んでいた1戸建て建物(昭和50年築、非耐震)とその敷地は父が全部を所有していました。 なお、法定相続人は母と子供2人(長女・次女)です。また長女は別居しており別生計ですが、次女は同居しています。母が引き続き居住(安定的に無償で)するには、どのように遺産分割するのが相続税対策も含め、良いのでしょうか。 回 答 ① 相続税対策としての遺産分割は、その敷地について、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例の要件(詳細は【第4回】参照)を満たすようにします。別居かつ別生計である長女が取得する場合には特例は受けられませんので、母又は次女、もしくはその両者が取得するようにします。母が法的に安定し無償で居住するためには、配偶者居住権と通常の所有権が考えられます。 配偶者居住権とは、配偶者が居住していた建物に住み続ける権利ですが、配偶者居住権には設定された建物の敷地を利用する権利が付随します。その敷地利用権は、「土地の上に存する権利」に該当し、小規模宅地等の特例が適用できます。一方、配偶者居住権により制限された不動産の所有権を得る相続人がいます。 配偶者居住権は、「その配偶者の死亡によって消滅」するため、その権利を相続させることはできません。よって、配偶者居住権が消滅した後は、制限付きの所有権として相続していた者が、その不動産の権利すべてを得て、通常の所有権を持つことになります。 ここで、母に配偶者居住権を設定し、次女は配偶者居住権が設定された不動産の所有権を取得することにした場合、二次相続において配偶者居住権に相当する部分が自動的に次女の所有権に移転することになります。これにより、配偶者居住権に相当する部分には二次相続時において、相続税は課されないことになります。 一方、一次相続において母が所有権を得ていた場合、その所有権は二次相続時の母の相続財産に含まれ、相続税の対象になります。この差により、配偶者居住権を設定する方が相続税の負担を抑えられます。 考 察 ① 配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が相続開始時に被相続人が所有、又は被相続人と配偶者が共有する建物に居住しており、遺産分割や遺贈により取得した場合、その建物全部につき終身又は一定期間、配偶者に無償で使用及び収益することができる権利です。 建物の所有権を取得しなくとも配偶者がその建物に引き続き居住することができ、配偶者居住権は通常の所有権より低額に評価されるため、より多くの現預金等が取得可能となり、老後生活の安定に資します。 また、被相続人の居住用建物が配偶者以外の者と共有されている場合、配偶者居住権が設定できないので、配偶者以外との共有状態を被相続人の生前に解消する必要があります。 なお、上記回答①では母がその建物に無償で安定して住み続ける法的な権利を得るため、所有権と配偶者居住権を考えましたが、一次相続において次女がすべて所有権を相続した方が、二次相続との相続税額の合計は、抑えられる場合もあるので注意が必要です。 * * * 問 題 ② 上記問題①において、令和4年3月 (父死亡の1年後)に次女には結婚の予定があり別居する見込みです。その後は母が1人で住む予定で、母の死亡後その家屋は空き家になり、相続人が建物取り壊しの上、売却する事も考えています。仮に第3者の他人にその土地全部を5,000万円で売却することが考えられる場合、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(以下、空き家特例という)は、父死亡時にどのように遺産分割すれば、土地全体の売買につき適用できますか。 回 答 ② 空き家特例には、様々な要件がありますが(詳細は【第5回】参照)、相続又は遺贈により一定の要件を満たす家屋及びその敷地等を取得した相続人が、一定の条件下でその家屋又は敷地を売却した場合、譲渡益から3,000万円を控除できる特例です。 回答①においては、父死亡時の一次相続で、母に配偶者居住権を設定する方(又は考察①では次女がすべて取得することも考えられる)が、相続税額を抑えることができました。 母が配偶者居住権を得ていた場合、母が死亡すると配偶者居住権が消滅し、その後は所有権を持つ次女が住むことも、建て替えることも、取り壊して売ることも可能になります。 しかし、二次相続時、次女は相続により対象となる家屋及びその敷地等を取得していないことになるので、空き家特例を受けることはできません。土地全体の売買につき空き家特例を受けるためには、父死亡の一次相続時に母が全部の所有権を得る必要があります。 なお、母と次女(又は長女)の共有の所有権で相続した場合、母の所有権の部分のみ、空き家特例は適用可能です。 考 察 ② 配偶者居住権は、被相続人の配偶者が相続開始時に、被相続人と配偶者のみで共有する建物に居住している場合にも設定可能です。この場合、配偶者居住権は父の持分だった部分にのみ効果が及び、もともと母が持っていた部分は、そのまま引き続き所有権を持つことになります。 母死亡時には母の配偶者居住権が消滅し、その部分は自動的に次女の所有権に転じますが、もともと母が持っていた所有権は相続により、相続人(長女又は次女)に移転します。よって、もともと母が持っていた所有権部分についてその他要件を満たせば、空き家特例は適用されます。 * * * 問題①及び②のように、相続税対策として配偶者居住権を利用したとしても、配偶者の死亡後には空き家になる場合、その不動産を売却しても空き家特例は受けられず、譲渡による所得税が多額になります。最近、相続される土地家屋が空き家になることが多く、税対策としては二次相続のみならず、相続不動産の出口戦略まで注意する必要があります。 (了)
遺贈寄付の課税関係と実務上のポイント 【第9回】 「不動産や株式等を遺贈寄付した場合の取扱い(その3)」 ~清算型遺贈の課税関係~ 税理士・中小企業診断士・行政書士 脇坂 誠也 不動産や株式を遺贈寄付した場合の取扱いについて前回に続き確認する。 今回は、清算型遺贈の場合の課税関係を解説する。 1 清算型遺贈とは 清算型遺贈とは、不動産などの財産を売却して現金化し、その得られた現金を遺贈するということを遺言書に盛り込んだものをいう。遺言者がお亡くなりになった後には、その遺言に基づき、遺言執行者が手続きを実行することになる。 遺贈寄付の場合、受遺団体の中には、不動産等の現物での寄付を受け付けていない団体も多く、不動産等の寄付をする場合には、現金化したうえで寄付をしてもらうことを条件にしているところもいくつかある。 このような清算型遺贈についての課税関係については、税法に明確な規定がなく、実際に清算型遺贈の遺言に基づき執行が行われた場合、どのような形で納税するのかは悩ましい問題である。 2 清算型遺贈の具体例 清算型遺贈の具体例について、以下に記載する。 不動産に限らず、動産、株式などの有価証券などの財産を清算型遺贈により、相続時に売却してお金に換えて寄付することも可能である。本稿では不動産の清算型遺贈をすることを例に考えていく。 3 不動産の清算型遺贈をする場合の手続き 不動産の清算型遺贈をする場合には、その不動産をいったん法定相続人全員への相続登記をした後に、買主に売買による移転登記をするという形になる。 売却をする際には、亡くなった方から直接買主への名義変更ができないため、いったん相続登記をする必要がある。受遺団体は、売却代金を受け取るだけで所有権を受け取っているわけではないので、名義変更することは適切でない。そのため、不動産登記上は、清算型遺贈があった場合には、相続人全員の法定相続分による共有での相続登記が必要なのである。 4 譲渡所得税の納税義務者は誰なのか そうすると、清算型遺贈により寄付をした相続税の納税義務者は誰なのか、という疑問が出てくる。不動産の売買は、遺言を書いた被相続人が死亡した後に、相続人に登記変更したうえで売却が行われる。しかし清算型遺贈では、相続人は何も利益を受けておらず、売却手続きも名目上だけのものである。 税法に明確な規定はないが、実質所得者課税(所法12(※))の考え方から、受遺団体を納税義務者と考えるのが一般的である。その場合でも、相続人の譲渡所得税を相続人の代わりに受遺団体が支払うと考えれば、住民税は課税されるが、被相続人のみなし譲渡所得税を被相続人に代わって支払うと考えれば、死亡した年の所得になるため、住民税は課税されない。この点につき税法の取扱いの明確化が望まれている。 (※) 所得税法第12条 〈清算型遺贈の流れ〉 ※クリックすると別ページで拡大表示されます。 5 納税の手続きはどうするのか 譲渡所得税を納付していないと、登記上は相続人の名義になっており、受遺団体の名前は出てこないので、相続人に対して、税金の督促が来る場合がある。 実際の納税は、遺言執行者が行い、税金を差し引いた金額を受遺団体に渡すケースと、遺言執行者が受遺団体に売却代金を渡して納税は受遺団体が行うケースがあるようである。どちらの場合も、事前に所轄の税務署と相談して、譲渡所得税の支払いは遺言執行者等が責任をもって行うので、相続人には確定申告書の送付はしないように伝えておく必要がある。 (了)
2022年3月期決算における会計処理の留意事項 【第5回】 (追補) 史彩監査法人 公認会計士 西田 友洋 ◎ 最近の不安定な世界情勢下における会計処理等の留意事項 現在の世界情勢の不安定及び物価上昇等が企業に重要な影響を及ぼす可能性がある。そこで、以下では、このような状況下における3月決算で留意すべき主な論点を解説する。 1 関係会社株式の評価 世界の情勢不安、物価上昇等の影響により、関係会社(子会社及び関連会社)の業績が悪くなっている場合があると考えられる。この場合、関係会社株式の評価を慎重に検討する必要がある。非上場の関係会社株式の評価における具体的な検討は、以下のとおりである。 (注) 上場の関係会社株式の評価は、時価に基づき評価する。評価に際して、特段の論点はないため、本解説では取り扱っていない。 (1) 株式の評価 関係会社の財政状態の悪化(下記①参照)により実質価額が著しく低下(下記②参照)した場合は、減損処理する。 ただし、実質価額について、関係会社の事業計画等をもとに回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合には、減損処理は不要である。 事業計画等は実行可能で合理的なものでなければならず、回復可能性の判定は、特定のプロジェクトのために設立された会社で、当初の事業計画等において、開業当初の累積損失が5年を超えた期間経過後に解消されることが合理的に見込まれる場合を除き、おおむね5年以内に回復すると見込まれる金額を上限として行う。 したがって、回復可能性を監査人に説明する際には、基本的に5ヶ年の実行可能で合理的な事業計画を作成し、どうしてそのような数値になるのか、具体的に説明する必要がある。 【会計処理】 (2) 投資損失引当金の計上 関係会社株式の減損処理を行う必要はないと判断したが、以下のとおり、健全性の観点から、投資損失引当金を計上できる場合がある。 【会計処理】 (3) 債務超過に対する引当金 関係会社が債務超過である場合、実質価額がマイナスであるため、関係会社株式はゼロまで減損処理する。一方、関係会社の債務超過額は、最終的には、親会社が負担(子会社の場合は、全額負担、関係会社の場合は、他の株主との契約で決められた分の負担)する可能性が高いと考えられる。そのため、債務超過額のうち、負担する部分について関係会社事業損失引当金等で損失処理する必要がある。 【会計処理】 2 固定資産(のれんを含む)の減損 世界の情勢不安、物価上昇等の影響により、業績が悪化している会社、店舗、支店、工場等が多くなっている可能性がある。業績が悪くなっている場合、固定資産(のれんを含む)の減損についても慎重に検討する必要がある。具体的な検討は、以下のとおりである。 【会計処理】 3 貸倒引当金 世界の情勢不安、物価上昇等の影響により、得意先(関係会社を含む)の業績が悪化し、売上債権の回収が延滞したり、貸倒れが発生する可能性がある。また、関係会社へ貸付を行っている場合、関係会社の業績の悪化により、貸付金の回収が延滞したり、貸倒れが発生する可能性がある。 そのため、貸倒引当金についても慎重に検討する必要がある。具体的には、期末日以前のみならず、期末日後の回収状況や法的整理等の情報を適時に入手した上で、債権を以下の3つに区分し、それぞれの区分ごとに貸倒引当金を算定する必要がある。特に、「貸倒懸念債権」又は「破産更生債権等」に該当する得意先、関係会社がないか、慎重に検討する必要がある。 【会計処理】 貸倒引当金繰入額は、原則、その性質に応じて販管費又は営業外費用に計上するが、非常に特殊な事象で、貸倒引当金繰入額が多額に発生する場合には、特別損失に計上することも考えられる。 4 債務保証損失引当金 世界の情勢不安、物価上昇等の影響により、関係会社の業績が悪化し、経営難に陥り、関係会社において取引先に対する仕入債務の返済や金融機関への借入金の返済が滞る可能性がある。このような場合に、関係会社の仕入債務や借入金について、親会社が債務保証を行っている場合、債務保証に係る損失が発生する可能性がある。 そのため、債務保証損失引当金についても慎重に検討する必要がある。具体的には、期末日以前のみならず、期末日後の関係会社の仕入債務の支払状況や金融機関への借入金の返済状況に関する情報を適時に入手し検討する必要がある。 【会計処理】 債務保証損失引当金繰入額は、発生事由等に応じて営業外費用又は特別損失に計上することが考えられる。 5 リストラクチャリング関連の引当金 世界の情勢不安、物価上昇等の影響により、業績が悪化し経営難に陥った場合、将来に向けての立て直しのためにリストラ(支店・店舗・工場等の閉鎖、早期退職の募集等)を決定することが考えられる。このような場合、例えば、以下のような損失について見積もった上で、リストラクチャリング関連の引当金の計上を検討する必要がある。 (※) 従業員が早期退職制度に応募し、金額を合理的に見積もることができる時点で費用処理する。 【会計処理】 上記の勘定科目は例示であるため、各社の実態に応じて、適切な名称を付すことが考えられる。 6 繰延税金資産の回収可能性 世界の情勢不安、物価上昇等の影響により、会社の業績が悪化している場合、繰延税金資産の回収可能性の検討において、以下の点について、慎重に検討する必要がある。 (1) 税効果の企業の分類 業績の悪化により、課税所得が減少する場合、税効果の企業の分類を変更しなければいけない可能性がある。 (2) 一時差異等加減算前課税所得の見積り 分類3から分類4の会社において、繰延税金資産の回収可能性の検討に当たっては、一時差異等加減算前課税所得の見積りは非常に重要である。 しかし、世界の情勢不安、物価上昇等の影響により将来の業績への影響が不透明な場合、合理的で説明可能な事業計画を作成することが難しいため、一時差異等加減算前課税所得を見積もることが困難となる可能性がある。そのため、社内での情報収集を早めに行うことが重要である。 また、物価上昇等によるコスト増加要因がある場合、それについても事業計画に反映させる必要がある。 なお、事業計画を監査人に説明する際には、合理的で説明可能な事業計画を作成し、どうしてそのような数値になるのかを、具体的に説明する必要がある。 【会計処理(繰延税金資産を取り崩す場合)】 7 棚卸資産の評価 通常の販売目的で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。 世界の情勢不安による経済状況の停滞及び物価上昇等の影響により、以下のような状況が発生する可能性がある。 このような状況が発生した場合には、多額の棚卸資産評価損を計上しなければいけない可能性がある。そのため、当期の販売実績及び翌期以降の販売に関する情報を収集し、正味売却価額を合理的に見積もった上で、棚卸資産評価損の計上を検討する必要がある。 【会計処理】 棚卸資産評価損は、原則、売上原価に計上するが、収益性の低下に基づく簿価切下げ額が臨時の事象に起因し、かつ、多額であるときには特別損失に計上できる。 8 連結範囲の検討 世界の情勢不安、物価上昇等の影響により、子会社及び関連会社の以下の指標について、グループに占める割合が変動する可能性がある。そのため、従来、非連結子会社及び持分法非適用会社であった会社について、連結又は持分法の範囲に含める必要がないか検討する必要がある。 (1) 連結の範囲の指標 なお、上記の量的基準のみならず、赤字会社か、債務超過があるか、グループ内での位置づけはどうか等の質的重要性も考慮して連結の範囲を決定する必要がある。 (2) 持分法の範囲の指標 9 後発事象の注記 後発事象には、以下の2つがある。 現在の状況下では、期末日後に様々な事象が発生したり、意思決定を行うことが考えられる。後発事象の発生時点や内容により、修正後発事象又は開示後発事象のいずれに該当するかが異なるため、上記のいずれかに該当しそうな事象がある場合、適宜、監査人に確認することが望まれる。 【開示後発事象の例示】 (注) 上記項目は、開示後発事象としての例示であるが、発生時点等によっては、修正後発事象に該当する可能性もある。 10 継続企業の前提に関する注記 (1) 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況 世界の情勢不安、物価上昇等の影響により、業績が悪化している場合、新たに「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況(以下、「事象又は状況」という)」が存在する場合に該当する可能性がある。 そのため、「事象又は状況」が存在する場合に該当していないかどうかを慎重に検討する必要がある。 【継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況の例示】 (2) 継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるとき 期末において、「事象又は状況」が存在する場合には、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策(効果的で実効可能なもの)を検討する必要がある。具体的には、以下の対応が必要であると考えられる。 そして、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する「重要な不確実性」が認められるときは、継続企業の前提に関する以下の事項を計算書類及び有価証券報告書に注記する。 なお、貸借対照表日後において、「事象又は状況」が解消し、又は改善したため、継続企業の前提に関する「重要な不確実性」が認められなくなったときには上記の注記を行う必要はない。ただし、この場合には、当該「事象又は状況」を解消し、又は改善するために実施した対応策を重要な後発事象として注記することも考えられる。 (3) 有価証券報告書の「経理の状況」より前における記載 上記(2)の注記が必要でない(「重要な不確実性」がない)場合であっても、「事象又は状況」が存在する場合には、有価証券報告書の「事業等のリスク」に事象又は状況が存在する旨、内容を記載し「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に対応策を記載する。 また、上記(2)の注記をする場合でも、当該注記に係る「事象又は状況」が発生した経緯及び経過等について、「事業等のリスク」及び「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載する。 (4) 事業報告における記載 会社法に基づく事業報告においても、株式会社の現況に関する事項(会社法施行規則120①四、八、九等)に、適切な開示をすることが望まれる。 (5) 後発事象の注記 貸借対照表日後に「事象又は状況」が発生した場合で、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する「重要な不確実性」が認められ、翌事業年度以降の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼすときは、重要な後発事象として、以下の事項を計算書類及び有価証券報告書に注記する。 上記のような後発事象のうち、貸借対照表日において既に存在していた状態で、その後、その状態が一層明白になったものについては、継続企業の前提に関する注記の要否を検討する必要がある。 11 監査対応 世界の情勢不安、物価上昇等の影響により、決算で検討すべき会計上の論点が多くなることが想定される。そのため、早めに監査人と協議を行うことが重要であると考えられる。 また、海外子会社については、決算の遅延又は資料提出の遅れも想定されるため、監査人とスケジュールを十分に調整することが重要であると考えられる。 (連載了)
〔中小企業のM&Aの成否を決める〕 対象企業の見方・見られ方 【第25回】 「M&Aの形態によって異なる相手の見方・相手からの見られ方」 ~形態別で考えるM&A検討のきっかけ・目的・着目点~ 公認会計士・税理士 荻窪 輝明 《今回の対象者別ポイント》 買い手企業 ⇒M&Aの形態によって異なる売り手の見方について理解を深める。 売り手企業 ⇒M&Aの形態によって異なる買い手からの見られ方について理解を深める。 支援機関(第三者) ⇒M&Aの形態によって異なる対象企業の見方を知り助言や支援に活かす。 その他の対象者 ⇒M&Aの形態によって異なる対象企業の見方・見られ方のポイントをつかむ。 1 形態によって異なるM&Aの戦略 中小企業のM&Aと一口に言っても、様々な形態があります。コロナ禍では、自社の行う事業と全く異なる事業、特に、自社の業績の動き方とは逆方向になるような事業をM&Aによって取得することによって、互いのリスクをヘッジし合い、有事における最悪の展開を回避できるような相手先を探す例も見られます。 しかし、このパターンでは、買い手の売り手事業に対する理解や経験値の不足から、統合後の失敗リスクも低くはないでしょう。ですから、現状でも、中小企業M&Aの多くは、同業種同業態企業との統合(水平統合)か、商流の川上や川下企業との統合(垂直統合)が自然な選択肢となります。 このとき、買い手がM&Aを検討するきっかけや目的は、希望するM&Aの形態によって異なりますので、売り手としては、買い手がなぜ当社へのM&Aを希望し、何に期待するのかを知って対応するのが良いと思われます。 そこで、今回は、M&Aの形態別に、買い手がM&Aに何を期待し、売り手の何に着目するかを知ることで、買い手、売り手の見方・見られ方を考えます。 2 買い手から見たM&Aを検討したきっかけや目的 次の図は「2021年版中小企業白書」に掲載されたものです。希望するM&Aの形態別(水平統合と垂直統合別)に、買い手側がM&Aを検討したきっかけや目的が並んでいます。 (出典) 中小企業庁「2021年版中小企業白書」Ⅱ-378ページ 水平統合の場合、買い手は「売上・市場シェアの拡大」をM&Aの主な目的としています。「新事業展開・異業種への参入」「人材の獲得」も相対的に高い割合を示しますが、調査結果からは、統合によるグループの売上・市場シェアを伸ばせる相手を好む傾向にありそうです。 一方、垂直統合では、水平統合と同じように買い手は「売上・市場シェアの拡大」を主な目的としつつも、水平統合に比べるとその割合は少なく、これに次ぐ「新事業展開・異業種への参入」「人材の獲得」「技術・ノウハウの獲得」が高い割合となっているのが特徴的です。 水平統合の場合、すでに買い手が売り手と類似のビジネスでノウハウを十分に蓄積しており、しかも、通常は売り手よりも買い手のビジネスの方が順調にいっている可能性が高いわけですから、売り手の現有資産やノウハウにはそれほどの興味がなく、ビジネスとして統合後にどれだけ売上や市場シェアを拡大できるかの志向が強くなります。 売り手軽視というわけではありませんが、買い手としては、売り手自体の魅力よりも、今後お金になる事業かどうかを吟味している可能性が高くなります。 売り手としては、このような事情を理解した上で、良いビジネスパートナーとなりうるかを見定めるのが水平統合による留意点となります。 垂直統合の場合は、水平統合と異なり、買い手は、商流の川上から川下まである程度の理解はあるものの、自らのビジネス範囲を超えるノウハウまでは備えていないケースが多いです。ですから、売り手に期待する内容も売上・市場シェアだけでなく、売り手そのものが持っている価値や魅力に関するものが多くなりやすいです。M&Aを機に、売り手の持つ強みを積極的に取り入れたい、売り手から教わりたいという希望も含まれます。 売り手としては、水平統合の場合と比べ、ある程度、売り手の独立性を保った上で事業展開がしやすくなること、買い手と対等な立場で交渉を進めやすいことから、売り手の事業に魅力があるほど、買い手との交渉は有利に進みやすくなります。 3 買い手がM&Aを実施する際に重視する確認事項 次の図も「2021年版中小企業白書」に掲載されたものです。希望するM&Aの形態別(水平統合と垂直統合別)に、買い手側がM&Aを実施する際に重視する確認事項が並んでいます。 (出典) 中小企業庁「2021年版中小企業白書」Ⅱ-380ページ あくまで回答に基づくものですが、この結果を見ると、水平統合の場合は、「直近の売上、利益」「借入等の負債状況」などの財務面を重視する傾向にあり、垂直統合の場合は、「既存事業とのシナジー」「事業の成長性や持続性」などの事業そのものを重視する傾向にあります。これらから、M&Aの形態によって、買い手が重視する確認事項にはっきりと差が生まれることがわかります。 売り手から見れば、水平統合と垂直統合では、買い手が売り手に興味を抱く要素が異なるわけですから、売り手がM&Aを検討する際には、水平統合と垂直統合のいずれが自社にとって望ましい選択肢になるかを考える決め手の1つになります。水平統合を希望する買い手候補との交渉がうまくいかなくても、垂直統合を望む相手とはマッチするという可能性があることを示しています。 買い手にとっても、希望するM&Aの形態の違いが重視する確認事項の違いにつながるわけですから、確認事項の優先順位をつけやすくなる意味で、効率的な相手探しができるようになります。また、売り手候補を探す過程で、当初は水平統合を念頭に置いていたが、案外、垂直統合がうまくいくのかもしれない、といった気づきになり、買い手に合うM&Aの形態が発見できるかもしれません。 今回は、水平統合、垂直統合の形態別に、「2021年版中小企業白書」に掲載の調査結果から対象企業の見方・見られ方の違いを紹介しましたが、実務上のノウハウや知見について、こうした公表資料からヒントを得られる場合が決して少なくありません。「2021年版中小企業白書」には、これ以外にもM&Aに関する情報が多数掲載されていますので、積極的に活用して、各社のM&Aの成功につなげていただければと思います。 (了)
空き家をめぐる法律問題 【事例37】 「ライフラインの設備の設置・使用に関する民法改正」 弁護士 羽柴 研吾 - 事 例 - 自宅の土地は公道と接しておらず、公道の地下に埋設されている給水管に接続することができなかったため、以前から隣地の空き地部分に給水用配管を設置してきました。給水用配管も老朽化してきたこともあり、令和5年4月以降に取替工事を行うことを検討しています。 隣地は空き家となっており、隣家の方の連絡先や行方も分かりません。このような場合に、どのようにして給水用配管の取替工事を行えばよいでしょうか。 1 ライフラインの設備の設置等に関する民法改正の経緯 現代の生活において、電気、水道、ガス等のライフラインの確保は必要不可欠である。しかし、民法には、ライフラインを確保するために、他人の所有地に導管等の設備を設置することや、他人の所有する導管等の設備を使用することに関する一般的規定が置かれていなかった。そこで、所有者不明土地問題に関する民法改正の一環として、ライフラインの設備の設置権等に関する一般的規定が新設された。なお、以下、改正前の民法を「改正前民法」と表記し、改正後の民法を「改正後民法」と表記する。 2 民法改正前までの裁判例の状況 改正前民法には、①高地の所有権者の低地への排水権(民法第220条)や②高地又は低地の所有権者が所有する通水設備の使用権(同法第221条)に関する規定のような、ライフラインに関する規定が限定的に置かれていた。また、下水道に関しては、前記各条の特則である下水道法第11条が、他人の土地に排水設備を設置し、他人の設置した排水設備を使用できることを認めていた。 他方で、裁判例においては、民法改正前から、上記各規定の場面に限らず、ライフラインを確保するために他人の所有地に導管等の設備を設置等することは認められてきた。 もっとも、その法的根拠は、①民法第220条を類推適用するものや、②同法第209条、同第210条、同第220条、同第221条や下水道法第11条の趣旨を類推適用するものなどがあり、必ずしも統一されていなかった(なお、設備の設置ではなく、既設の設備の利用の可否が争われた最判平成14年10月15日民集56巻8号1791頁は、民法第220条及び同法第221条の類推適用と判示していた)。 また、類推適用による法的効果(権利の内容)についても判断は分かれており、①土地の所有権者は一定の場合に他人の所有地に設備を設置し、既設の設備を利用する権利を有するとするものや、②設備の設置等の承諾を求める権利を有するとするものなどがみられた。なお、②は、地方公共団体が工事に先だって利害関係人の承諾を求めてくることに対応することを意図したものとされている。 3 ライフラインの設備の設置権等に関する規定の内容 (1) 設備設置権・設備使用権の新設 改正後民法においては、土地の所有権者は、他人の土地(注:隣地や囲繞地に限られない)に配管等の設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ、電気、ガス、水道等の供給を受けられない場合、損害が最も少ない方法によって、他人の土地に設備を設置し、他人が所有する設備を使用する権利を有することとされた(改正後民法第213条の2第1項、同条第2項)。 立法過程では、下級審裁判例のように、設備の設置等の承諾を求める権利とすることも提案されていたが、承諾を求める権利の内容が明らかではない等の批判を受けて、端的に設備設置権・設備使用権とすることとされた。ただし、設備設置権や設備使用権は土地の所有権者に認められた権利ではあるが、自力救済まで認めるものではない。 (2) 2種類の通知義務と留意点 土地の所有権者は、設備設置権や設備使用権を行使する場合、設備を設置する土地の所有権者や設備の所有権者、現に土地を利用している者に対して、あらかじめ目的、場所、方法を通知しなければならない(改正後民法第213条の2第3項)。この通知は、隣地使用権の事後の通知の規定(改正後民法第209条第3項ただし書)が準用されていないため、通知の名宛人が行方不明の場合等には公示による意思表示(民法第98条)による必要がある。 なお、当該設備を現に使用している当該設備の所有権者以外の者がいる場合、法律上、当該者に対する通知は求められていないが、事実上、通知を行っておくことが望ましいとされている。 また、土地の所有権者は、設備設置権や設備使用権を行使するために、設備を設置する土地や設備が設置された土地を利用することができる。この場合、隣地使用権の規定に準じて通知等を行う必要がある(改正後民法第213条の2第4項)。この通知は、設備設置権・設備使用権を行使する際の通知と同時に行うこともできる。 (3) 償金の支払義務 設備設置権者は、設備の設置工事等のために一時的に土地の利用を制約し、その後も継続的に土地の利用を制約することになるため、設備設置権の行使を受ける者に対して償金の支払義務を負う。また、設備使用権者も設備の接続工事等のために一時的に土地の利用を制約することになるため、設備使用権の行使を受ける者に対して償金の支払義務を負うほか、設備の設置、改築、修繕、維持に要する費用を分担しなければならない。 【償金の種類等】 (※) 条文番号はいずれも改正後民法。 4 改正後民法の適用関係 改正後民法は令和5年4月1日から施行され、個別の経過措置がない限り施行日より前から発生している権利義務関係についても改正後民法が適用されることになる。設備設置権や設備使用権に個別の経過措置は規定されていないため、施行日より前から他の土地に設備を設置していたり、既設の設備を使用している場合であっても、施行日以降は改正後民法が適用されることになる。 5 本件について 給水用配管の取替工事(=新たな設備の設置)は令和5年4月以降に予定されているため、改正後民法第213条の2の適用を受けることになる。また、取替工事のために隣地を使用する必要があるため、給水用配管の取替えを行うこと及び土地を利用することの通知をする必要があるところ、隣地の所有権者が行方不明であるため、公示による意思表示の方法によって通知を行うことになると考えられる。 次に、隣地の所有権者が行方不明である場合に、訴訟を経ずに設備設置権を行使することが違法な自力執行に当たらないか問題となりうる。この問題に関して、法務省の見解によれば、隣地を実際に使用している者がおらず、かつ設備の設置等が妨害されるおそれもないような場合には、訴訟を経ずに設備の設置を適法に行えることが示されている。 従前から同じ場所に給水用配管が長期間設置されてきたことや、隣地が空き家となっていることからすると、隣地の所有権者が給水用配管の取替工事を妨害するおそれは低いと考えられる。したがって、訴訟を経ずに給水用配管の取替工事を行うことができる。 また、隣地の所有権者に対する償金を支払う必要があるかも問題となりうる。個別の判断にならざるを得ないが、取替工事時に隣地の所有権者に実損害が発生せず、取替工事後も空き家の利用を制限しないような場合には償金の支払義務が発生しないこともありうるように思われる。 (了)
〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第55話】 「過少申告加算税等の加重措置」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一 「・・・最近の税制改正は、いい加減な納税者に対して、厳しい対応を採る内容になっていると思わない?」 久しぶりに、中尾統括官は、浅田調査官を誘って、軽く1、2杯ということで、居酒屋で飲んでいる(新型コロナウイルス対策を徹底している居酒屋にて、マスク会食をしていることを申し添えておく)。 「もっとも、我々の仕事にとっては、都合が良いけれどもね・・・」 中尾統括官は、焼酎のお湯割に口を付ける。 コロナ禍で、2人とも、長い間、外でほとんど飲んでいなかったので、飲む動作が何となくぎこちない。 「また、仕事の話ですか?」 浅田調査官は、生ビールを飲みながら、顔をしかめる。 「まあ、まあ、そう言わずに、聞いてくれ・・・君と話をするときは、税金のことしか頭に浮かばないのだから・・・」 中尾統括官は、苦笑いをする。 そう言いながら、中尾統括官は、カバンから『令和4年度税制改正大綱』を取り出して、「納税環境整備」の箇所を開く。 「・・・この中に・・・帳簿の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の整備・・・という項目がある・・・」 そう言うと、中尾統括官は、カッコ書きを飛ばして、それを読み上げる。 読み終えると、中尾統括官は、冷めた焼酎を口に運ぶ。 「・・・これは、売上金額などをごまかした帳簿を納税者が税務職員に対して、提示又は提出をすると、ペナルティーが重くなるということですか?」 1杯目の生ビールで、既に顔に赤みが差している浅田調査官が訊ねる。 「例えば、税務調査中に、税務職員が納税者に対して、帳簿の提示又は提出を求めた場合、それに従わなかったときやその帳簿の売上金額等の記載が著しく不十分又は不十分の場合には、ペナルティーが加重されるということになる」 中尾統括官が答える。 「・・・その著しく不十分とか不十分は・・・どのように判定するのですか?」 頬を染めている浅田調査官は、質問を終えると、生ビールを注文する。 中尾統括官は、テーブルの上に罫紙を置き、図を描く。 「この10%又は5%の加算は、過少申告加算税と無申告加算税についてで・・・それから一定帳簿とは、仕訳帳とか総勘定元帳などが該当することになる」 浅田調査官が大綱の内容を確認する。 「これによって・・・国税通則法65条と66条が改正されることになる・・・まだ、改正された条文は見ていないけれど・・・」 と言うと、中尾統括官も2杯目の焼酎を注文する。 「ところで、君は、国税通則法65条の規定を読んで、過少申告加算税の額を計算できる?」 中尾統括官は、さすがに顔は赤くなっていない。 「・・・例えば・・・法人税の当初申告税額が300万円であったが、税務調査の結果、その申告税額が800万円(修正申告)となったとする・・・そして、その調査中、税務職員から帳簿の提示を求められ、納税者は、著しく不十分な帳簿を提示していたとする・・・そうすると、過少申告加算税はいくらになるか?」 中尾統括官は、お酒が入っても、計算には自信があるらしい。 「ややこしいですね」 浅田調査官も、スマートフォンで、国税通則法65条を検索し、考え始める。 「・・・この規定では・・・次のように過少申告加算税を計算することになるのでは・・・」 そう言うと、浅田調査官は、罫紙の上に図を描き始める。 「・・・しかし、令和4年度税制改正が導入されると、更に、10%(50万円)が加重されることになりますから、過少申告加算税の額は、110万円になる・・・これって、納税者には重いペナルティーになりますね・・・この法律は、令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税から適用されますから、まだ時間はありますが・・・」 浅田調査官は、グラスに残っているビールを飲み干すと、腕時計を見ながら、「そろそろ帰りましょうか」と中尾統括官に告げる。 (つづく)
《速報解説》 会計士協会、法人税等会計基準等の改正案を受け、 「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」を含む5つの公開草案を公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2022年3月30日、日本公認会計士協会は、次の公開草案を公表し、意見募集を行っている。 これは、同日、企業会計基準委員会が公表した企業会計基準公開草案第71号(企業会計基準第27号の改正案)「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準(案)」等を受けたものである。 意見募集期間は2022年6月8日までである。 文中、意見に関する部分は私見であることを申し添える。 Ⅱ 税金費用の計上区分(その他の包括利益に対する課税) 企業会計基準委員会の公開草案では、原則的な方法として、当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、その発生源泉となる取引等に応じて、損益、株主資本及びその他の包括利益に区分して計上することが提案されている(法人税等会計基準改正案5項、5-2項)。 そのため、外貨建取引等実務指針等の改正(案)では、株主資本及びその他の包括利益の各項目(評価差額及び繰延ヘッジ損益等)について、従来の繰延税金資産又は繰延税金負債に対応する額を控除した金額を計上することに加えて、各項目に対して課税された法人税等の額についても控除した金額を計上することとする。 Ⅲ グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果 企業会計基準委員会の公開草案では、グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果の取扱いについて、連結財務諸表上のみ、売却時に税金費用を計上しないようにすることが提案されている。 そのため、持分法適用会社における留保利益、のれんの償却額、負ののれんの処理額及び欠損金について、税務上の要件を満たし、課税所得計算において売却損益を繰り延べる場合(法人税法61条の11)に該当する当該持分法適用会社の株式売却の意思決定を行った場合には、税効果を認識しないようにする。 Ⅳ 適用時期等 改正後の「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)等を適用する連結会計年度及び事業年度から適用することを予定している。 (了)
《速報解説》 ASBJが「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の改正案を公表 ~税金費用の計上区分及びグループ法人税制適用の場合の子会社株式等の売却に係る税効果の取扱いを示す~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2022年3月30日、企業会計基準委員会は、次の公開草案を公表し、意見募集を行っている。 これは、次の2つの論点についての取扱いを示すものである。 意見募集期間は2022年6月8日までである。 なお、上記の公開草案を受けて、日本公認会計士協会の実務指針等を改正する公開草案も公表されている。 文中、意見に関する部分は私見であることを申し添える。 Ⅱ 税金費用の計上区分(その他の包括利益に対する課税) 1 概要 その他の包括利益に計上された取引又は事象が課税所得計算上の益金又は損金に算入され、法人税、住民税及び事業税等が課される場合がある。 公開草案は、その他の包括利益に対して課される法人税、住民税及び事業税等のほか、株主資本に対して課される法人税、住民税及び事業税等も含めて、所得に対する法人税、住民税及び事業税等の計上区分について見直しを行うものである。 2 その他の包括利益に対して課税されるケース 公開草案の対象となるものとして、例えば、次のようなケースが考えられる。 なお、株主資本に対して課税される場合については、すでに「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第28号)等において規定されており、⑤の場合を除いて、公開草案による影響はない。 3 会計処理の見直し 原則的な方法として、当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、その発生源泉となる取引等に応じて、損益、株主資本及びその他の包括利益に区分して計上する(法人税等会計基準改正案5項、5-2項)。 例外的な方法として、課税の対象となった取引等が、損益に加えて、株主資本又はその他の包括利益に関連しており、かつ、株主資本又はその他の包括利益に対して課された法人税、住民税及び事業税等の金額を算定することが困難である場合には、当該税額を損益に計上することができる(法人税等会計基準改正案5-3項(2))。 これに該当する取引として、公開草案では、退職給付に関する取引が想定されている。 また、重要性が乏しい場合の取扱いとして、損益に計上されない当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等の金額に重要性が乏しい場合には、当該法人税、住民税及び事業税等を当期の損益に計上することができることとする(法人税等会計基準改正案5-3項(1))。 4 株主資本及びその他の包括利益に計上する金額の算定に関する取扱い 株主資本及びその他の包括利益に計上する金額の算定に関する取扱いとして、次のことを規定する(法人税等会計基準改正案5-4項)。 税効果適用指針28項では、子会社に対する投資を一部売却した後も親会社と子会社の支配関係が継続している場合において、親会社の持分変動による差額として計上される資本剰余金から控除する法人税等相当額は、売却元の課税所得や税金の納付額にかかわらず、原則として、親会社の持分変動による差額に法定実効税率を乗じて計算すると規定されている(法人税等会計基準改正案29-8項)。 公開草案は、実務上の配慮は、税効果適用指針で定める取引以外についても同様に必要になると考えられることなどから、上記の規定を提案している。 5 その他の包括利益の組替調整に関する取扱い その他の包括利益の組替調整(リサイクリング)に関する取扱いとして、次のことを規定する(法人税等会計基準改正案5-5項)。 6 関連する繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していた場合の取扱い 税効果適用指針30項における、親会社の持分変動による差額に係る連結財務諸表固有の一時差異について、資本剰余金を相手勘定として繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していた場合で、当該子会社に対する投資を売却し、一時差異が解消した際の繰延税金資産又は繰延税金負債の取崩しについては、資本剰余金を相手勘定として取り崩す(税効果適用指針改正案9項(3)、30項、31項)。 7 その他の包括利益の開示に関する取扱い 「包括利益の表示に関する会計基準」(企業会計基準第25号)8項における、その他の包括利益の内訳項目から控除する「税効果の金額」及び注記する「税効果の金額」について、「税金費用(法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金及びそれらに関する税効果の金額をいう。)の金額」に改正する(包括利益会計基準改正案8項)。 Ⅲ グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果 グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却(連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益について、税務上の要件を満たし課税所得計算において当該売却損益を繰り延べる場合(法人税法61条の11))に係る税効果の取扱いについて、以下に述べるように改正する。 なお、公開草案の規定する会計処理が適用されるのは、100%子会社を所有する親会社の連結財務諸表において、その100%子会社同士あるいは当該親会社とその100%子会社との間で、当該親会社あるいはその100%子会社が所有する子会社株式等を売却し、当該売却に伴い生じた売却損益について、グループ法人税制が適用される場合である。 1 連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益を税務上繰り延べる場合の連結財務諸表における取扱い及び子会社に対する投資に係る連結財務諸表固有の一時差異の取扱い 連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益について、税務上の要件を満たし課税所得計算において当該売却損益を繰り延べる場合(法人税法61条の11)、連結財務諸表において次の処理を行う(税効果適用指針改正案39項、143項、143-2項、22項、23項、105-2項、106-2項)。 2 連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益を税務上繰り延べる場合の個別財務諸表における取扱い 連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益について、税務上の要件を満たし課税所得計算において当該売却損益を繰り延べる場合(法人税法61条の11)、当該子会社株式等を売却した企業の個別財務諸表における処理については、現行の税効果適用指針17項の取扱い(当該売却損益に係る一時差異について、税効果適用指針8項及び9項に従って繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する)を見直さない(税効果適用指針改正案143-2項)。 Ⅳ 適用時期等 2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。 ただし、2023年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる。 なお、会計方針の変更に関する取扱いに注意する。 グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果については、遡及適用が困難となる可能性は低いと考えられるため、特段の経過的な規定を設けない予定である。 (了)