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〔顧問先を税務トラブルから救う〕不服申立ての実務 【第3回】「再調査の請求(異議申立て)制度の基礎知識」

〔顧問先を税務トラブルから救う〕 不服申立ての実務 【第3回】 「再調査の請求(異議申立て)制度の基礎知識」   公認会計士・税理士 大橋 誠一   1 再調査の請求とは 再調査の請求は、税務署長などが行った更正・決定や差押えなどの処分に不服がある納税者が、審査請求をする前に自ら選択して、当該処分を行った税務署長などに対して、処分の取消しや変更を求めて不服を申し立てる制度である。 平成28年4月1日以後の処分に係るものが対象であり、その前日以前の処分に係るものについては「異議申立て」というが、後者よりも不服申立期間の延長など若干の権利の拡充が図られている。   2 再調査の請求書 (1) 法定様式はない 再調査の請求は、以下に掲げる事項を記載した書面を提出してしなければならない。 また、不服申立期間(処分があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内)の経過後に請求する場合には、その正当な理由も併せて記載しなければならない。 (出所) 国税庁ホームページ 再調査審理庁(原処分をした税務署・国税局)には上記の様式が備置されているが、これは法定様式ではなく、前述の記載事項が記載された書面であれば足りる(弁護士代理人が訴状を参考にして作成することもある)し、例えば、表題が「嘆願書」「異議申立書」等となっていても、内容からして実質的に再調査の請求書と認められるものであれば、再調査の請求書として取り扱われる。 しかし、上記の様式に従って記載する方が、不備による補正の可能性が減少することは言うまでもない。 (2) 原処分の対象に係るよくある補正事項 (3) 請求の趣旨に係るよくある補正事項 「⑪再調査の請求の趣旨」とは、取消しを求める範囲を特定することである。 例えば、重加算税の取消しを求める場合において、重加算税は過少申告加算税に代えて賦課される性質があるところ、過少申告加算税の取消しまでは求めていない(例えば、過少申告加算税が課されない「正当な理由」がある旨の主張をしない)ときには、「1:全部取消し」ではなく「2:一部取消し」を選択し、下部の記載欄に「過少申告加算税を超える部分の重加算税の取消し」などと記載することになる。 (4) 「再調査の請求の理由」の記載 争点が単純であれば上記の様式の行数に収まるように簡記してもよいが、詳細な事実関係等を記載したい場合には、「別紙参照」と記載して適宜の用紙を添付するのがよい。 肝要なのは、その課税される要件(又は軽減措置のような課税されない要件)である「課税等要件の充足・不充足」を意識して記載することである。 また、原処分通知書には処分の理由が(詳細の程度はともかく)記載されているはずであり、原処分庁による法令解釈や事実認定の非違を指摘することを意識して記載すべきであろう。 (5) 「計数的に説明する資料」の提出 更正処分・決定処分等の立証責任は原処分庁が負担するのが通常である。 しかし、例えば、以下の争いについては、立証責任が納税者側にあるとされている。 また、原処分庁が立証責任を負担するといっても、納税者しか知り得ない(納税者がもっとも事実に迫ることができる)事項については、納税者が積極的に主張した方が、自己に有利な判断を手繰り寄せることにつながるため、自己の主張を裏付ける資料(証拠書類又は証拠物)については積極的に提出することが望ましいし、それを提出しない(できない)となると、判断権者に「納税者はこう主張するが、後付けで話を作っているだけではないか」という心証を抱かせることにもなりかねない。   3 標準審理期間 (1) 標準審理期間は「3ヶ月」 平成26年6月に、行政不服審査法について抜本的な改正が行われるとともに、これに併せて国税通則法における国税不服申立制度についても所要の改正が行われた。 この改正を契機として、国税局長又は税務署長は、再調査の請求書が到達してから再調査の決定をするまでに通常要すべき標準的な期間である「標準審理期間」を3ヶ月と定めた。 この「3ヶ月」という標準審理期間は、再調査の請求に係る審理期間の目安として定められたものであり、標準審理期間内に再調査の決定をする義務を定めたものではない。 そうはいうものの、再調査の請求における3ヶ月以内の処理件数割合については毎年度の開示が要求されることから、余程の複雑な事案でない限り、上記期間内で処理されることになる。 (2) 最近の3ヶ月以内の処理件数割合 令和2年度における再調査の請求の3ヶ月以内の処理件数割合は99.9%であるが、これは新型コロナウイルス感染症等の影響を除外した数値であり、当該影響を含めた同割合は87.9%(令和元年度は91.1%)となっている。 ちなみに、新型コロナウイルス感染症の影響がなかった平成30年度と平成29年度の3ヶ月以内の処理件数割合はそれぞれ99.5%、96.6%であり、平成28年度以前の推移を辿っても概ね95%以上の割合で処理されている。   4 「3ヶ月」で再調査審理庁がしなければならないこと (1) 対審構造の簡易化 後の回で解説する予定の国税不服審判所長に対する審査請求における標準審理期間は「1年」であることからすると、再調査の請求の審理手続が、審査請求やその後の訴訟に比較して迅速なものであると言える。 しかし、その迅速性の犠牲として、納税者に認められた手続が限定的であるとも言える。 具体的には、納税者と原処分庁との対審構造の完成度が、訴訟、審査請求、再調査の請求の順に緩くなることを意味する。 (2) 担当者のタイトな日程管理 上記のような事情から、再調査の請求の審理期間である「3ヶ月」の間に再調査審理庁が実施することは、以下の内容で精一杯といったところであろう。 良かれ悪しかれ「組織」で動くため、その意思決定に所要の時間を費消し、窓口担当者である所轄税務署の各課税第1部門所属の不服申立担当調査官は、日程管理にやきもきすることが多い。 これに、国税通則法において納税者に認められている口頭意見陳述の申立てが入ると、更に日程が窮屈になる。   5 再調査の請求の取消し基準 【第2回】で解説したように、再調査の請求を審理する担当者は、たとえ同じ税務署所属の職員であっても、当初の税務調査を担当した調査官とは異なる職員によって行われることになり、当初の税務調査による処分を取り消すか否かの判断基準は、その処分を維持した場合に、その後工程に位置する国税不服審判所が自分達の判断に与くみしてくれるか否かの心証に懸かっている。 仮に、審査請求において処分が取り消される可能性が高いと判断すれば、審査請求の前段階に位置する再調査の請求において事前に取り消しておかねばならない(取消裁決の事績が残ることによって将来の税務調査の足枷を設けたくない)という思考が働く。 また、再調査決定において原処分を維持する場合には、その維持される処分を正当とする理由を再調査決定書において明らかにしなければならないこともあり、当初の税務調査による横車を押し通せないと判断した場合は取消しの判断に傾くことが期待できる。 (了)

#No. 427(掲載号)
#大橋 誠一
2021/07/08

令和3年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第3回】「連結欠損金の控除上限の特例の創設」

令和3年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第3回】 「連結欠損金の控除上限の特例の創設」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   [3] 連結欠損金の控除上限の特例の創設 連結納税制度においても、コロナ禍の厳しい経営環境の中、赤字であっても果敢に前向きな投資(カーボンニュートラル、DX、事業再構築・再編等)を行う大企業の連結グループに対し、コロナ禍の影響を受けた2年間に生じた連結欠損金額について、その投資額の範囲内で、最大5年間、連結欠損金の控除限度額を最大100%とする特例を創設している。 具体的には以下の取扱いとなる(新措法68の96の2、新措令39の121の4)。   (了)

#No. 427(掲載号)
#足立 好幸
2021/07/08

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第57回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第57回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也   8 法人税法22条の2第7項 法人税法22条の2第7項は次のとおり、政令への委任規定である。 この委任規定を受けて、法人税法施行令18条の2が定められている。以下では、この政令の内容を検討する。 (1) 収益認識会計基準への対応 収益認識会計基準では、契約において、顧客と約束した対価に変動対価が含まれる場合、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ることとなる対価の額を見積もる(基準50)。 変動対価とは、顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分をいう。例えば、値引き、リベート、返金、インセンティブ、業績に基づく割増金、ペナルティー等の形態により対価の額が変動する場合や、返品権付きの販売等がこれに該当する(基準50、指針23)。 変動対価の額の見積りに当たっては、最頻値法又は期待値法のうち、企業が権利を得ることとなる対価の額をより適切に予測できる方法を用いる(基準51)。 かように、収益認識会計基準では、値引き、リベート、返金、インセンティブの取決めがある又は返品権が付されているなど契約上の対価について変動する可能性のある部分を織り込んで取引価格を算定する。よって、契約上の対価の額と会計上の取引価格が一致しない場合がありうる。 上記に従って見積もられた変動対価の額については、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含める(基準54)。 見積もった取引価格について、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点まで何もしなくていいというわけではない。見積もった取引価格は、各決算日に見直す必要がある。見直しによって、取引価格が変動する場合には、収益認識会計基準74項から76項の定めを適用することになる(基準55)。 例えば、同基準74項では、取引価格の事後的な変動については、契約における取引開始日後の独立販売価格の変動を考慮せず、契約における取引開始日と同じ基礎により契約における履行義務に配分すること及び取引価格の事後的な変動のうち、既に充足した履行義務に配分された額については、取引価格が変動した期の収益の額を修正することが定められている。 かように収益認識会計基準において取引価格の事後的な変動と収益の額の事後的な修正に関する定めが用意されていることを受けてであろう、資産の販売等に係る収益の額につき修正の経理をした場合等の処理に関するルールが法人税法施行令18条の2に設けられている。 収益認識会計基準を適用すると、企業会計の処理において、変動対価を見積もった取引価格を各決算日に見直し、取引価格が変動する場合には収益の額の修正等を行うというのであるから、場合によっては、変動対価の額が確定していないにもかかわらず、その修正の経理が行われうる。 かような修正経理に関して、法人税法の観点からすると、収益計上を行った事業年度に遡及して修正処理しないのか、変動対価の額が確定するまで益金又は損金に算入しないような処理をすべきか、といった疑問が出てくる。 以下においては、この点について、法人税法はどのような態度で臨んでいるのかという視点をもつことが理解の助けとなる。   (了)

#No. 427(掲載号)
#泉 絢也
2021/07/08

収益認識会計基準を学ぶ 【第8回】「履行義務の識別③」

収益認識会計基準を学ぶ 【第8回】 「履行義務の識別③」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 【第6回】及び【第7回】に引き続き、「履行義務の識別」について解説する。 今回(第8回)は、「一連の別個の財又はサービス」に関する履行義務の識別について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 履行義務の識別 契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、次の①又は②のいずれかを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別する(収益認識会計基準7項、32項)。   Ⅲ 一連の別個の財又はサービス 1 概要 前述のように、収益認識会計基準では、履行義務として、「②一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり、顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス)」を規定している(収益認識会計基準7項(2)、32項(2))。 「一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり、顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス)」の定めは、特性が実質的に同じ複数の別個の財又はサービスを提供する場合に、当該複数の別個の財又はサービスを「単一の履行義務として識別する」ものである(収益認識会計基準128項)。 一連の別個の財又はサービスの例として、「清掃サービス契約」のように、同質のサービスが反復的に提供される契約等に適用できる場合があるとされている(収益認識会計基準128項)。 2 要件 収益認識会計基準32項における「一連の別個の財又はサービス」は、次の①及び②の要件のいずれも満たす場合には、顧客への移転のパターンが同じであるものとする(収益認識会計基準33項)。 3 収益認識会計基準38項の要件 収益認識会計基準38項は、次の(1)から(3)の要件のいずれかを満たす場合、資産に対する支配を顧客に一定の期間にわたり移転することにより、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識すると規定している(収益認識会計基準38項、134項~138項)。 4 収益認識会計基準41項及び42項の要件 収益認識会計基準41項及び42項は履行義務の充足に係る進捗度に関する規定である。 一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見積もり、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識する(収益認識会計基準41項)。 一定の期間にわたり充足される履行義務については、単一の方法で履行義務の充足に係る進捗度を見積もり、類似の履行義務及び状況に首尾一貫した方法を適用する(収益認識会計基準42項)。 完全な履行義務の充足に向けて財又はサービスに対する支配を顧客に移転する際の企業の履行を描写する進捗度(履行義務の充足に係る進捗度)の適切な見積り(収益認識会計基準41項)には次の方法があり、財又はサービスの性質を考慮して、その方法を決定する(収益認識適用指針15項)。   (了)

#No. 427(掲載号)
#阿部 光成
2021/07/08

ハラスメント発覚から紛争解決までの企業対応 【第16回】「ワクチンハラスメントに関する注意点」

ハラスメント発覚から紛争解決までの 企 業 対 応 【第16回】 「ワクチンハラスメントに関する注意点」   弁護士 柳田 忍   【Question】 当社において、新型コロナウイルスのワクチンの職域接種を実施することになりましたが、ワクチンハラスメントとの関係でどのような点に注意すべきでしょうか。 【Answer】 主に、従業員に対してワクチン接種を強要しないことと、従業員のワクチン接種に関する情報を適切に管理することが重要になります。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 1 ワクチンハラスメントとは 昨今、我が国においても新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでおり、職域接種も始まっている。そこで、本稿においては、いわゆるワクチンハラスメントに関する注意点について、職域接種の場面も踏まえつつ、論ずるものとする。 ワクチンハラスメントとは、新型コロナウイルスのワクチンの予防接種を強要されたり、接種を受けたこと・受けなかったことについて不当な取扱いや嫌がらせ等を受けたりすることを指す。 ワクチンハラスメントとの関係で、会社が法的責任を負わないために気をつけるべき主なポイントは、①従業員に対してワクチン接種を強要しないこと、及び、②従業員のワクチン接種に関する情報を適切に管理することの2点である。①については、接種を強要すること自体に問題があるうえに、接種を強要された従業員に健康問題が発生した場合等に会社の責任となり得るし、②については、従業員のワクチン接種に関する情報の管理を誤ると、従業員に対する事実上のワクチン接種の強要に繋がったり、ワクチンを接種していない従業員に対する他の従業員からのハラスメントを引き起こす可能性が生じ、それらについて会社の責任となる可能性がある。   2 ワクチン接種を強要しないための注意点 新型コロナウイルスのワクチンの予防接種には、まれにではあるが、重大な副反応(アナフィラキシー(急性のアレルギー反応)等)が現れることがあると言われており、国や会社が接種を強制できるものではない。予防接種法は新型コロナウイルスのワクチン等の「予防接種を受ける努力義務」を定めるが、「努力義務」とは目的実現のため、心身を労して努めることをもって義務を達成したことになるものであり、接種を受けるか否かはあくまで個人の判断に委ねられている(厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A」等参照)。 よって、会社は従業員の同意がなければワクチンの予防接種を受けさせることはできないが、労使関係においては、労働者の同意という形をとっていても、実際は使用者の圧力により同意させられたという場合があり得ることから、労働者の自由な意思に基づいてなされたものであると認めるに足りる合理的な理由がなければ同意が否定される可能性があると思われる。 したがって、従業員に対して、予防接種を受けるか否かは個人の自由であること、接種を受けたことないし受けなかったことが人事評価等において不利に考慮されないことなどを説明するべきであるし、逆に、懲戒処分の対象になるとか、人事評価等において不利に考慮されるなどと示唆する場合には、仮に形式上従業員の同意を得たとしても、事実上接種を強要しているものであり、当該従業員の自由な意思に基づいてなされたと認めるに足りる合理的理由はないと評価される可能性が高い。 一方、会社は、従業員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負うことから、会社としては、1人でも多くの従業員にワクチンの予防接種を受けてほしいと思うところであろう。この点、従業員に対して接種を促すことは可能だが、不当な心理的圧力を与えてその自由な意思形成を阻害する場合には、接種の強要になってしまう。どの程度の「勧奨」であれば「強要」に当たらないかについては、退職勧奨と退職強要の判断基準が参考になる。すなわち、従業員が接種を受けない意思を明示した場合であっても、接種を受ける場合のメリットとリスクを丁寧に説明して接種を促すことは不当な心理的な圧力にはならないであろう(拙稿第11回参照)。   3 ワクチン接種に関する情報管理における注意点 新型コロナウイルスのワクチンの接種を受けたか否かは個人情報に該当する。よって、その取得に際しては、原則として、利用目的を特定して公表又は通知等をする必要がある(個人情報保護法第18条第1項、第2項)。また、個人データ(個人情報を検索できる形で体系的に構成したもの)を第三者に提供するに際しては、原則として予め本人の同意が必要となる(同法第23条第1項)。ここで言う「第三者」には自社は含まれないため、個人情報保護法上、ワクチン接種の情報を社内で共有すること自体については本人の同意は不要であるが、プライバシーの観点からの配慮が必要となる。 このように、ワクチンの予防接種歴については個人情報保護法やプライバシーの観点から慎重な取扱いが求められるわけだが、加えて、上記のとおり、ワクチン予防接種に関する情報が漏洩することにより、他の従業員によるハラスメントに繋がったり、当該従業員が他の従業員からのハラスメントをおそれてワクチンを接種せざるを得ない心理状態に追い込まれ、事実上接種を強要されることに繋がりかねないという問題がある。 よって、従業員のワクチン接種に関する情報管理は極めて重要となるが、特に職域接種を実施する場合、実施や運営の方法によっては、誰が接種を受けたか(すなわち誰が受けなかったか)が他の従業員に知られてしまうとの懸念を耳にする(例えば、小規模な企業や部署単位で職域接種を実施する場合、接種会場にいるかいないかで接種を受けたか否かが知れてしまう場合がある)。就業時間中に職域接種を行う場合は、複数の接種日を設定したり、同日に行う場合は時間帯をずらすなどして、接種の有無を極力知られないようにすることが重要である。 また、イントラネット等により従業員のスケジュールを共有している会社においては、接種の予定をイントラネット等に登録させないなどの配慮を行うべきである。 なお、上記2及び3については、文部科学省・厚生労働省の令和3年6月22日付の「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種を生徒に対して集団で実施することについての考え方及び留意点等について」が参考になる。   (参考) 新型コロナウイルス感染症に係る予防接種を生徒に対して集団で実施することについての考え方及び留意点等について(抜粋) (注1) 同文書は「中学校、義務教育学校後期課程、高等学校、中等教育学校、特別支援学校の中等部及び高等部並びに専修学校高等課程の生徒がワクチン接種を受ける場合を想定したもの」である。 (注2) また、同文書は、学校集団接種について、「その実施方法によっては、保護者への説明の機会が乏しくなる、接種への個々の意向が必ずしも尊重されず同調圧力を生みがちである」等の理由により、現時点で推奨するものではないとしている。 (了)

#No. 427(掲載号)
#柳田 忍
2021/07/08

〔一問一答〕税理士業務に必要な契約の知識 【第19回】「株式の譲渡契約の締結方法とそれにまつわる注意点」

〔一問一答〕 税理士業務に必要な契約の知識 【第19回】 「株式の譲渡契約の締結方法とそれにまつわる注意点」   虎ノ門第一法律事務所 弁護士 石橋 輝之   〔質 問〕 顧問契約を締結している株式会社の社長から、その会社の複数の少数株主から株式の譲渡を受けたいとの相談がありました。どうも、先代社長がその会社を立ち上げた際の取締役に、少数の株式を持たせていたようです。少数株主が死亡して相続が発生すると株式が拡散しますし、事業を親族等に承継する際にも面倒なことになることから、株をまとめたいとのことでした。 株の譲渡契約を締結するに際して、注意すべきことはありますか。 〔回 答〕 株券不発行会社の株式の譲渡に際しては、株式譲渡契約を締結し、代金の決済を行って、買主・売主の共同で、会社に対して株主名簿の書換請求をすれば問題ありません(株式の譲渡制限会社の場合は、会社の取締役会等の承認が必要です)。 もっとも、平成18年5月に施行された会社法(それ以前は会社法という法律はなく、商法の中で会社に関する規定が置かれていました)で株券不発行が原則となりましたが、それ以前から存在する会社は、定款で「株券を発行しない」旨の規定を置いていない限り、株券を発行しなければならない会社(株券発行会社)でした。そういった会社については、会社法施行後も株券発行会社になっています。 株券発行会社の場合、株式を譲渡する場合には、売主から買主への株券の交付が必要です。交付がなければ、株式譲渡の効力が生じません。 株式譲渡契約を締結し、譲渡代金を払ったものの株券の交付をしなかったという場合、株式譲渡の効力が否定され、後に混乱を生ずる可能性があります。 そのため、株式譲渡契約書を作って契約を締結し、代金のやり取りをするだけでなく、必ず株券の交付をしてもらう必要があります。 ◆◆◆◆ 解 説 ◆◆◆◆ 1 株券発行会社かどうかの確認 株券発行会社であるかどうかは、会社の全部事項証明書を確認すれば記載があるので簡単に分かる。 平成18年5月に施行された会社法では、株式は不発行が原則とされた。そのため、平成18年5月以降に設立した会社は、そのほとんどが株券不発行会社である。平成18年5月以降に設立した会社でも、敢えて「株券を発行する旨」の定款を定めれば株券の発行は可能であるが、そのような規定を設けている会社はほとんどないだろう。 もっとも、平成18年5月より前に設立された会社は、原則として株券発行会社である。例外的に、そういった会社であっても、株券を発行しない旨の定款を設けていれば、株券不発行会社となることができた。 会社法の施行時において、「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が制定され、仮に、その会社の定款に「株券を発行する旨」の定めがなくても、「株券を発行する旨」の規定が定款に定められているとみなされることになった。つまり、平成18年5月の会社法施行より前に設立された会社であって、「株券を発行する旨」の定款の定めがなくても、会社法施行時以降、その規定があることになったわけである。結果、職権により、そういった会社の全部事項証明書には「株券を発行する旨」の登記がなされている。 そうすると、今でも株券発行会社というのは、かなりの数が存在しているということになる。平成18年5月より前に設立された中小企業の大半は、株券発行会社になっている可能性があるといえる。   2 株券発行会社の株式譲渡方法 株式の譲渡について、会社(取締役会か株主総会)の承認が必要である旨の定款規定がある会社を譲渡制限会社という。譲渡制限会社における株式の譲渡方法については、今回は説明を割愛する。もっとも、今回のお問い合わせの場合、株を買いたいと希望しているのはその会社の社長であるから、譲渡制限会社であるからといって、その点で問題に突き当たる可能性は低いといえる。粛々と会社法に従った処理をすればいいということになる。 株式を譲渡する場合、株式譲渡契約書を締結するのが通常である。その契約書の書式などは、巷に溢れているし、その内容が難しいということもない。 問題なのは、株券発行会社の場合、株式の譲渡の効力が生じるためには株券の交付が必要となっていることである。 会社法は、以下のとおり規定している。 会社法で明確に、株式の譲渡には株券の交付が必要とされている。 そのため、仮に株券発行会社であるのに株券が発行されていない会社の株式を譲渡する場合は、まず譲渡人である株主側で、会社に対して株券の発行を請求しなくてはならない。 会社法にこの規定があるので、会社は株主から請求を受けた場合、株券を発行しなければならない。 もっとも、実際上は、株券を発行せずに、株式の譲渡契約だけを締結して決済を済ませるということが非常に多くあるように感じている。その上で、会社は、税理士に持株数が変動したことを伝え、これを受けて、税理士も確定申告書の「別表二 同族会社の判定に関する明細書」に会社から申告のあった持株数を記載しているのではないだろうか。 株券の交付のない株式譲渡契約書の効力については、以下で説明する。   3 株券交付のない株式譲渡契約書の効力 株式の譲渡は、株券の交付がないと効力が生じないと会社法第128条第1項で明記されていて、株式の譲渡に際し株式の交付がないと、当事者間において株式譲渡の効力は発生しない。単に、譲受人は、譲渡人に対し、株券を交付するよう要求する権利が発生するだけになる。 株券の交付を要求する権利は、株式譲渡契約により発生する債権的な権利でしかないため、時効にかかることになる。 民法第166条第1項に以下の規定がある。 この規定から、最短で5年、最長でも10年で株券交付請求権は時効にかかることになる。時効を援用することが信義則に反するというような特別な事情があれば別だが、そうでなければ、譲受人は時効により株券の交付を請求することもできなくなり、結果として株主になれないという事態が生じ得る。 仮に株式を社長に集めることができず、その後、株主間において、その会社の支配権を巡って争いが生じた場合、ある株主がある人に対して株式を譲渡したつもりであったのに、その効力が生じていないという事態が発覚する可能性がある。 株券は、インターネット通販でも簡単に購入できる。そこに会社で記名押印をすれば株券を作ることは簡単である。難しく考える必要はない。そのため、株式の譲渡に際しては、会社から株券を確実に発行してもらい、株式の交付を行うようにする必要がある。本件の場合、社長が株の譲受人であるから、株券を会社がなかなか発行してくれないというような事態が生じることも想定できない。 なお、最高裁昭和47年11月8日判決は、会社において株券発行の不当な遅滞があった場合、株券の交付がなくても、会社は「譲受人を株主として遇しなければならない」と判断している。当然、前提として、当事者間の株式譲渡も有効と解していることになる。ただ、これは例外的な事案であるし、「不当な遅滞」というためには、前提として、譲渡人が会社に株券の発行を請求したのに会社が株券を発行しないという状況が必要であるから、株式譲渡に際し、株券発行会社において株券の発行を会社に依頼することの重要性は変わらない。   4 株券不発行会社の譲渡方法 株券不発行会社の場合は、株券が存在しないため、株券の交付は必要ない。 株式譲渡契約書を締結し、代金の決済を行って、会社に対し共同で株主名簿の書換請求をすれば足りる。譲渡制限会社であれば、会社に対し同時に株式の譲渡承認請求もすることになる。 この手続さえきっちり済ませていれば、問題ない。 (了)

#No. 427(掲載号)
#石橋 輝之
2021/07/08

《速報解説》 令和3年度税制改正におけるセルフメディケーション税制の見直し対象となる医薬品が明らかに~経過措置適用期限は令和7年12月31日~

 《速報解説》 令和3年度税制改正におけるセルフメディケーション税制の見直し対象となる医薬品が明らかに ~経過措置適用期限は令和7年12月31日~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   セルフメディケーション税制は、令和3年度税制改正において、対象となる医薬品の範囲等が見直された上、適用期限が令和8年12月31日まで5年間延長された。 改正後の対象医薬品の範囲等については、租税特別措置法施行令26条の27の2各項において「厚生労働大臣が財務大臣と協議して定めるものとする」と規定されていたところであるが、このたびその具体的な範囲等が定められ、厚生労働大臣より6月25日付けの官報第521号において告示された。 本稿では、セルフメディケーション税制の見直しの概要をまとめた上、上記告示との関係を解説する。   【1】 令和3年度税制改正の概要 (1) 対象医薬品の範囲の見直し 令和3年度税制改正において、対象となる医薬品の範囲が、次のとおり見直された(措法41の17➀②③、措令26の27の2)。本改正は、令和4年分以後の所得税から適用される。 (注) スイッチOTC医薬品・・・医療用医薬品(医師又は歯科医師によって使用される、あるいは医師又は歯科医師による処方せん等によって使用されることを目的として供給される医薬品)から、要指導医薬品(処方せんは不要、薬剤師が対面で情報提供や指導する必要がある医薬品)及び一般用医薬品(自らの判断で使用することを目的として供給される医薬品)に転用された医薬品。 (2) 提出書類の見直し 制度の適用を受けるには、健康診断や予防接種など健康のための取組をしていることが要件とされており、その取組を明らかにする領収書や結果通知などを、確定申告書へ添付又は申告時に提示することが求められていた。 この取扱いについて、令和3年分以後の確定申告書を令和4年1月1日以後に提出する場合には、取組の名称等を医療費の明細書に記載することにより、取組を明らかにする書類の添付又は提示が不要とされた(措法41の17④、所法120④)。 ただし、税務署長は、確定申告期限等から5年間、取組を明らかにする書類の提示又は提出を求めることができるとされている(措法41の17④、所法120⑤)。   【2】 2021年6月25日に公布された告示の概要 セルフメディケーション税制に関する厚生労働省告示(6月25日)の概要は、次のとおりである。 (了)

#No. 426(掲載号)
#篠藤 敦子
2021/07/06

《速報解説》 国税庁、令和3年度税制改正等を踏まえ「グループ通算制度に関するQ&A」を改訂~移行時の手続等に係る14問を新設~

 《速報解説》 国税庁、令和3年度税制改正等を踏まえ「グループ通算制度に関するQ&A」を改訂 ~移行時の手続等に係る14問を新設~   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   令和3年6月28日に、国税庁「グループ通算制度に関するQ&A」が改訂された。 この「グループ通算制度に関するQ&A」は、通算制度に係る税務上の取扱いを図表や計算例を用いQ&A形式で解説したもの。今回、令和3年度の税制改正等を踏まえた既存のQ&A(9問)の改訂が行われるとともに、実務家が気になる新たなQ&A(14問)の追加が行われている(全65問→全79問)。 以下では新設・改訂されたQ&Aのポイントを紹介する。 上記に紹介した以外にも、次のQ&Aが追加されている。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 426(掲載号)
#足立 好幸
2021/07/06

《速報解説》 国税庁、令和3年度税制改正等に係る「法人税基本通達等の一部改正」を公表~税制改正の他、改正会社法に係る見直しも~

《速報解説》 国税庁、令和3年度税制改正等に係る「法人税基本通達等の一部改正」を公表 ~税制改正の他、改正会社法に係る見直しも~   Profession Journal編集部   国税庁はこのほど「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」を公表、法人税基本通達及び租税特別措置法関係通達(法人税編)関係の他、連結納税制度やグループ通算制度関係の通達改正を行った。 今回の改正通達では、措置法通達において「第66条の2の2《株式等を対価とする株式の譲渡に係る所得の計算の特例》関係:措通66の2の2-1~3」が新設されるなど令和3年度税制改正を受けた見直しが行われているが、6月16日に公布された改正産業競争力強化法は税制関連の規定の施行日が未定のため、認定等手続を同法に依るDX投資促進税制(措法42の12の7、68の15の7)や認定事業適応法人に対する欠損金の繰越控除の特例(措法66の11の4、68の96の2)、中小企業事業再編投資損失準備金制度(措法55の2、68の44)等に係る項目の新設等は行われていない。 また本年3月1日に施行された改正会社法及び関連規定を受け、役員の将来の所定の期間における役務提供の対価として譲渡制限付株式又は譲渡制限付新株予約権が交付される給与であって、役務提供を受ける法人においてその期間の報酬費用として損金経理が行われるようなものは、その役員において所得税法上の退職手当等に該当するものであっても、退職給与には該当しないことを明確化する規定(法基通9-2-27の2)が新設されるなどしている。 なお税制改正大綱には記載されていない事項だが、中小企業向けの各投資減税措置において、これまで研究開発税制(措法42の4)と中小企業投資促進税制(措法42の6)に分かれていた「中小企業者」の定義規定が前者に統一されたことによる規定の削除等が行われている。 (※) 令和3年度税制改正前は、中小企業経営強化税制(措法42の12の4)や被災代替資産等の特別償却(措法43の3)、特定事業継続力強化設備等の特別償却(措法44の2)については、適用対象となる中小企業者の定義を中小企業投資促進税制(措法42の6①)の規定に依っていたが、すべて研究開発税制(措法42の4⑧七)の規定に依拠する形となっている。 (了)

#No. 426(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/07/02
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