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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第56回】「共通支配下取引の事業譲渡」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第56回】 「共通支配下取引の事業譲渡」   RSM清和監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 今回は、親会社と100%子会社の間で行われる共通支配下取引の事業譲渡を解説する。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 子会社以外を分離先企業として、現金等のみで事業分離を行う場合、個別財務諸表上、原則として「投資の清算」となる。そのため、譲渡した事業に係る株主資本相当額と現金等の差額を移転損益として認識する(企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」10)。 親会社が子会社から事業を譲り受ける場合、垂直関係の企業再編であるため、個別財務諸表上の帳簿価額ではなく、連結財務諸表上の帳簿価額により譲り受ける(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」41、(注9))。また、現金等と移転事業に係る株主資本相当額の差額は、「のれん又は負ののれん」として認識する(企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」448(2))。 共通支配下取引の場合、事業譲渡前後で連結全体に変わりはないため、【STEP1】で認識した移転損益と【STEP2】で認識したのれん又は負ののれんを消去する。   《設例》 Y社はX社が設立し、X社が保有するY社株式は5,000である。 Y社(100%子会社)はX社(親会社)に現金を対価(5,000)として、A事業を譲渡した。 Y社のA事業の事業譲渡日前日の貸借対照表は以下のとおりである。 なお、「個別財務諸表上の帳簿価額=連結財務諸表上の帳簿価額」である。 〈会計処理〉 1 分離元企業Y社の会計処理 (※1) 帳簿価額。 (※2) 差額。 2 分離先企業X社の会計処理 3 連結財務諸表における会計処理 《開始仕訳》 《移転利益の修正》 *  *  * 以上、3つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 433(掲載号)
#西田 友洋
2021/08/26

〈事例から学ぶ〉不正を防ぐ社内体制の作り方 【第9回】「会社の有効な仕組み作りとトレードオフの関係」

〈事例から学ぶ〉 不正を防ぐ社内体制の作り方 【第9回】 「会社の有効な仕組み作りとトレードオフの関係」 米国公認会計士・公認内部監査人 打田 昌行   はじめに 東京オリンピックは今までにないメダルラッシュとなりました。大きな声援が送られた一方で、新型コロナウイルスによるパンデミックがとどまることはなく、残念なことに感染者の増加もみられました。そうしたなか、経済活動と感染予防策について、オリンピック中も繰り返し報道がされていたのは、みなさんご存じのとおりです。オリンピックを円滑に運用して成功に導くために、これ以上感染の広がりを防ごうとすれば、酒類の提供を禁止し、営業活動を制限するなどして経済を犠牲にせざるを得ません。 こうして、さみしいことに、わが街にある馴染みの居酒屋や飲食で多くの人が賑わう路地裏が次々と姿を消しつつあります。逆に経済をしっかりしようとすれば、感染対策が緩みます。極端な言い方をすれば、経済をとるのか、国民の命をとるのかということになります。もし経済をとれば、政府は国民の命を犠牲にしているといわれ、他方国民の方を向けば、経済が立ち行かなくなります。こうした対策のゆらぎが繰り返されているのはご存じのとおりです。 このようなお互いに相容れない関係を「トレードオフ」といいます。自分が欲しいと思っているメリットや価値を手に入れようとすれば、他の大切なものを手放すか、犠牲にせざるを得ません。今、経済と国民の命は、お互い相容れない、トレードオフの関係にあります。 実はこのトレードオフの関係を理解することは、会社の仕組み作りを考える場合にとても大切です。そこでトレードオフの関係を正しく理解するために、いくつかトレードオフの具体例を以下に挙げてみます。   《1》 トレードオフを考える たとえば、速く走るクルマを開発しようとする会社が、車体の軽量化に取り組み、車体の厚みを薄くすることで開発に成功したとします。しかし、クルマの速度の高速化が実現できたとしても、車体の厚みが薄くなれば、運転者の身体に対する安全が危ぶまれかねません。この場合に、クルマの速度の高速化と運転者の身の安全はトレードオフの関係にあるといえます。 また、もの作りの会社、とりわけ中堅・中小の会社では、親会社や顧客から常に短納期が求められます。つまり、顧客による発注から納品までのリードタイムをいかに短期化するかが求められています。なんとか納期を守って納品しようとするあまり、品質管理がないがしろとなり、品質検査の偽りが問題となるケースが後を絶ちません。対応の仕方によっては、このリードタイムの短縮と品質管理は、トレードオフの関係となります。 最近報道された三菱電機の検査体制をめぐるコンプライアンスの問題も、単なる製造、検査部門の怠慢と捉えるのではなく、顧客の厳しい短納期要請になんとか応えようとする社内構造の問題が根本にあるのではないかと考えることもできます。   《2》 会社の仕組み作りとトレードオフの関係 トレードオフという関係を念頭においたうえで、具体的な会社の仕組み作りについて考えます。会社の仕組み作りのなかで、誤りや不正を防ぐための典型的なアプローチの1つであり、基本的なスタイルのなかに相互牽制があります。みなさんもご存じの仕組みです。2人以上の者が合理的な意思を持って、会社のために、お互いの仕事を確認し合う仕組みを指します。担当者が起案をして、権限者がそれを決裁、承認する。一方の者がシステムにデータを入力し、他の者が入力した結果の正確さや漏れのないことを確認する。どこの会社でも行われる身近な仕組みです。 この相互牽制のメリットはお互いに仕事を分担、確認し合うので、一方が休んだり、出張で不在となっても、業務が滞ることはありません。またお互いのチェック機能が働くため、誤りや不正を予防することもできます。 相互牽制には、こうした多くのメリットを見出すことができますが、他方で仕事を複数人の間で分担するため、1人で行うよりも効率性は相対的に下がり、分担によって人手がかかる分、人件費などコストの増加にもつながります。 相互牽制は会社の仕組み作りのなかで、重要な働きをする一方で、それを導入する場合は、背景にトレードオフの関係が存在していることを十分に認識する必要があります。仕組みの利便性を理解しつつも、現場にいるみなさんが、どのような仕組みが会社にとって最善なのかを具体的に判断するということが、大切になります。   《3》 トレードオフを加味した有効な仕組み作り それではどのようにその判断をするのか、具体的な事例を挙げて考えます。 (1) 実地棚卸を例に考える 商品や製品など在庫を倉庫に保管する会社では、実際の商品や製品が帳簿上の数と比べて差がないか、定期的に実地棚卸を行っていると思います。この商品や製品を数える作業は、二人一組で実施するのが原則です。一方が数え、他方が数量を記録します。一見すると1人で数え、記録をした方が効率的でコストも要しないと考えがちですが、もし1人でそれを行えば、商品や製品を盗み、数量を操作することができ、記録を誤る恐れもあります。このため在庫を数える際には二人一組に基づく相互牽制を使って、互いの牽制を図ります。大切な会社資産を守るために、棚卸の効率やコストを加味したとしても、相互牽制によって得られるメリットが勝るという判断が、そこには働いています。 こうした実地棚卸は、たとえば銀座の高級宝石店のバックヤードでも行われていますので、二人一組による相互牽制を怠ると、たいへんな損害を被りかねないということを理解できると思います。 (2) 小口現金の管理を例に考える それではもう1つ、小口現金の管理を例に考えます。小口現金の払出しと、出納簿への記帳をするという2つの仕事を、1人の担当者に任せてしまうと、個人的な利益のために現金を着服したうえに、領収書を偽装して、自分で残高を記録し、不正を隠ぺいできます。そのため、必ず2人で分担し、相互牽制を図る必要があると一般にはいわれます。 確かに、その通りだと思います。しかし、事業所あるいは小規模な営業所によっては、それほど多額な額に到らない小口現金のために、人件費をかける余裕などはないと考えるところもあるでしょう。つまりこれは、先ほどの実地棚卸の例とは正反対に、相互牽制によって得られるメリットより、犠牲として支払うコストの方がはるかに上回ると考えるケースです。 このように判断できる場合は、なにも常に2人による相互牽制のかたちに拘泥する必要はありません。たとえば払出しと残高の管理は1人の担当者に任せて兼務させながら、上長や上司が定期的に状況を確認して、牽制を図るという工夫が考えられます。さらに上長や上司が多忙で、確認をする余裕がないというのであれば、抜き打ちによる確認を行って、担当者が適切な管理を怠っていないかどうか、適時牽制を図るということもできるはずです。 上司や上長による抜き打ちの確認は、定期的な確認ほど強い効果はもたらしませんが、少なくとも担当者に対して管理者の眼を意識させる一定の心理的な牽制効果をもたらすことは間違いありません。   《4》 犠牲に見合うメリットを踏まえた会社の仕組み作り 相互牽制は、どの会社にも見られる身近なアプローチですが、裏側で働くトレードオフの関係をよく理解し、適切に用いることが必要です。相互牽制を導入したことによって、負担する犠牲にふさわしい、あるいはそれを凌ぐメリットを、みなさんがきちんと手に入れることができているのかどうかを具体的に判断し、現場にふさわしい仕組みや工夫を取り入れてほしいと思います。 (了)

#No. 433(掲載号)
#打田 昌行
2021/08/26

収益認識会計基準を学ぶ 【第11回】「取引価格に基づく収益の額の算定と取引価格の算定」

収益認識会計基準を学ぶ 【第11回】 「取引価格に基づく収益の額の算定と取引価格の算定」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 収益認識会計基準の5つのステップの3番目は、取引価格を算定することである(収益認識会計基準17項(3))。 今回は、取引価格に基づく収益の額の算定と取引価格の算定について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 取引価格に基づく収益の額の算定 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、取引価格(収益認識会計基準54項の定めを考慮する)のうち、当該履行義務に配分した額について収益を認識する(収益認識会計基準46項)。 収益認識会計基準54項は、収益認識会計基準51項に従って見積もられた変動対価の額については、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含めると規定している。   Ⅲ 取引価格の算定 1 定義 取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額をいう。ただし、第三者のために回収する額は除かれる(収益認識会計基準8項)。 取引価格の算定にあたっては、契約条件や取引慣行等を考慮する(収益認識会計基準47項)。 取引価格の算定は、変動対価又は現金以外の対価の存在を考慮し、金利相当分の影響及び顧客に支払われる対価について調整して行う(収益認識会計基準17項(3))。 次の事項に注意する(収益認識会計基準48項、49項)。 2 取引価格の算定要素 取引価格を算定する際には、次の①から④のすべての影響を考慮する(収益認識会計基準48項)。 3 変動対価 変動対価とは、顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分をいう(収益認識会計基準50項)。 例えば、次のものである(収益認識適用指針23項)。 契約において、顧客と約束した対価に変動対価が含まれる場合、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ることとなる対価の額を見積もることになる(収益認識会計基準50項)。 次の事項に注意する(収益認識会計基準51項~55項、140項~143項、収益認識適用指針24項~26項、126項)。 4 契約における重要な金融要素 契約の当事者が明示的又は黙示的に合意した支払時期により、財又はサービスの顧客への移転に係る信用供与についての重要な便益が顧客又は企業に提供される場合には、顧客との契約は重要な金融要素を含むものとする(収益認識会計基準56項、144項、収益認識適用指針27項)。 収益認識会計基準57項に従って、重要な金融要素の影響について約束した対価の額を調整するにあたっては、契約における取引開始日において企業と顧客との間で独立した金融取引を行う場合に適用されると見積もられる割引率を使用する(収益認識適用指針29項)。 次の事項に注意する(収益認識会計基準57項、58項、収益認識適用指針28項、127項、128項)。 5 現金以外の対価 契約における対価が現金以外の場合に取引価格を算定するにあたっては、当該対価を時価により算定する(収益認識会計基準59項)。 また、現金以外の対価の時価を合理的に見積もることができない場合には、当該対価と交換に顧客に約束した財又はサービスの独立販売価格を基礎として当該対価を算定する(収益認識会計基準60項)。 次の事項に注意する(収益認識会計基準61項、62項)。 6 顧客に支払われる対価 顧客に支払われる対価は、顧客から受領する別個の財又はサービスと交換に支払われるものである場合を除いて、取引価格から減額する(収益認識会計基準63項)。 顧客に支払われる対価が顧客から受領する別個の財又はサービスと交換に支払われるものである場合には、当該財又はサービスを仕入先からの購入と同様の方法で処理する(収益認識適用指針30項)。 ただし、顧客に支払われる対価が顧客から受領する別個の財又はサービスの時価を超えるときには、当該超過額を取引価格から減額する。顧客から受領する財又はサービスの時価を合理的に見積もることができない場合には、顧客に支払われる対価の全額を取引価格から減額する(収益認識適用指針30項)。 顧客に支払われる対価に変動対価が含まれる場合には、取引価格の見積りを収益認識会計基準50項から54項に従って行う。 顧客に支払われる対価は、企業が顧客(あるいは顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者)に対して支払う又は支払うと見込まれる現金の額や、顧客が企業(あるいは顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者)に対する債務額に充当できるもの(例えば、クーポン)の額を含む(収益認識会計基準63項、145項)。 顧客に支払われる対価を取引価格から減額する場合には、次の①又は②のいずれか遅い方が発生した時点で(又は発生するにつれて)、収益を減額する(収益認識会計基準64項)。   (了)

#No. 433(掲載号)
#阿部 光成
2021/08/26

税理士事務所の労務管理Q&A 【第3回】「労働時間の管理②(労働時間の把握義務)」

税理士事務所の労務管理Q&A 【第3回】 「労働時間の管理②(労働時間の把握義務)」   特定社会保険労務士 佐竹 康男   労働時間の管理は、使用者の責務です。第3回は労働時間の把握義務について解説します。 * * 解 説 * * 1 労働時間管理の義務化 「働き方改革」により「労働安全衛生法」が改正され、2019年4月から企業(事業所)には従業員の労働時間の把握が義務化されました。 (1) 適用される事業所 労働時間の把握義務化が適用される事業所は、労働基準法が適用されるすべての事業所です。規模、業種を問いませんので、税理士等の士業の事務所もその適用対象になります。 (2) 対象となる労働者 労働時間の把握義務化の対象となる労働者は、管理監督者や裁量労働制(連載【第2回】参照)の適用労働者も含め、高度プロフェッショナル制度の対象者(※1)を除くすべての労働者です。雇用形態、勤務時間、役職等にかかわらず、すべての労働者についての労働時間の把握が義務化されています。 (※1) 高度プロフェッショナル制度とは、一定の年収要件(年収1,075万円以上)を満たし、高度の専門知識等を有する労働者を対象に、労働時間に基づいた制限を撤廃する制度です。 (3) 事業所としての対応 使用者には労働時間を適正に把握する責務があります。労働時間の適正な把握を行うためには、1日何時間働いたかではなく、労働日ごとに始業時刻及び終業時刻を使用者が確認・記録し、これに基づき何時間働いたかを次の方法により把握する必要があります。 ① 客観的な記録による労働時間の把握 従業員の労働時間の把握方法として、以下のとおり、原則として、タイムカード等の客観的な記録により労働時間を確認し、記録する必要があります。 〈労働時間の把握方法〉 (※2) 「自ら現認する」とは、使用者自ら、あるいは労働時間管理を行う者が、直接始業時刻や終業時刻を確認することをいいます。 (※3) タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基本情報とし、必要に応じて、例えば使用者の残業命令書及びこれに対する報告書など、使用者が労働者の労働時間を算出するために有している記録とを突き合わせることにより確認し、記録します。 ② 例外的に自己申告による把握が認められる場合 事業場外労働等でやむを得ず客観的な方法により労働時間を把握できない場合には、例外的に下記の措置を講ずることにより、「自己申告」による労働時間の把握が認められます。 労働者に正しい自己申告を求めることと、その申請によって使用者も労働者に不利益を被らないよう注意することが、適切な対応として定められています。 〈自己申告制が認められるために講ずべき措置〉 (参考) 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」   2 労働時間の記録に関する書類の保存期間等 (1) 賃金台帳への適正な記入 使用者は事業規模にかかわらず、事業場ごとに賃金台帳を調製し、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数等を適正に記入しなければなりません(労働基準法第108条)。 残業代の未払い等は、使用者が労働時間を適切に管理していない場合に生ずることが多いため、労働基準法では、賃金台帳に労働時間を適正に記入することを使用者に義務付けています。 (2) 労働時間の記録に関する書類の保存 使用者は労働者の出勤簿やタイムカードなどの労働時間に関する記録を、賃金台帳などとともに5年間(経過措置により、当分の間3年間)保存しなければなりません(労働基準法第109条)。 出勤簿・タイムカード等は、その他労働関係に関する重要な書類に属します。 具体的には、使用者が自ら始業・終業時刻を記録したもの、タイムカード等の記録、残業命令書及びその報告書、労働者が自ら労働時間を記録した報告書等が該当します。   3 適切な労働時間管理の実施 労働時間の管理は、労働者ではなく使用者の責務です。就業規則の作成義務は従業員数が10人未満の場合は生じませんが、労働時間管理は1人でも従業員を雇っていれば、原則としてすべての事業所で義務が生じます。 しかし、従業員人数が少ない小規模の企業は、労働時間管理を安易に考え、適切な管理を怠っている事業所も少なくありません。 税理士事務所等の士業においては、事業場外労働は少ないと思いますので、タイムカード等の客観的な記録により労働時間を確認し、記録する必要があります。現時点でまだ労働時間の把握が十分でないのであれば、早急に適切な対応が必要となります。 また、賃金台帳を適切に調製していない場合や、労働者のタイムカードなどの労働時間に関する記録の保存期間に違反した場合には、罰則(30万円以下の罰金刑)もありますので注意が必要です。 (了)

#No. 433(掲載号)
#佐竹 康男
2021/08/26

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例62】株式会社グローバルダイニング「2021年12月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2021.7.30)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例62】 株式会社グローバルダイニング 「2021年12月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」 (2021.7.30)   公認会計士/事業創造大学院大学教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、株式会社グローバルダイニング(以下「グローバルダイニング」という)が2021年7月30日に開示した「2021年12月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」である。前年同期は、コロナ禍の影響により売上高が2,451百万円、最終利益が△940百万円の赤字であったのに対して、当期は売上高が4,714百万円、最終利益が587百万円にまで回復した。 これは、コロナ前の2019年12月期第2四半期を上回る好業績である。同期は売上高が4,683百万円、最終利益が7百万円だったのである(2019年8月2日開示「2019年12月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」)。   2 業績予想を修正 グローバルダイニングは、今回の開示と同時に「営業外収益の計上及び通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」も開示している。2021年2月12日に開示した「2020年12月期決算短信〔日本基準〕(連結)」では、2021年12月期の業績予想について、売上高は6,000~7,000百万円、最終利益は未定としていたが、売上高を9,484百万円に上方修正し、最終利益を1,023百万円と予想した。 コロナ前の2019年12月期の売上高は9,610百万円、最終利益は△331百万円であったので(2020年2月12日開示「2019年12月期決算短信〔日本基準〕(連結)」)、売上高はコロナ前の水準に戻ると予想している。「修正の理由」は次のとおりである。 2021年12月期第2四半期の業績が回復したのは、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置下において、営業時間の短縮や酒類の提供自粛の要請に応じず、通常営業を行ったからである。コロナ禍のなか外食への需要は全体として低下しているはずだが、多くの飲食店が要請に応じるなか、グローバルダイニングの店舗は通常営業を行っているため、同社の店舗へ外食を求める人達が押し寄せたのだろう。 「この調子で行けば」と考え、業績予想を修正したようである。しかし、同社に追随する飲食店が増えれば、また、コロナの影響がより深刻になれば、修正後の予想の達成は難しくなるかもしれない。   3 賛否両論 グローバルダイニングの方針については賛否両論あるだろう。しかし、現状、多くの人達が会食等を控え、多くの飲食店が時短営業等の要請を受け入れているなかでは、「否」の方が多数派なのではないだろうか。 確かに一律の営業時間の短縮や酒類の提供自粛の要請はおかしいと思う。感染拡大に影響するかどうかは、店舗によって異なるはずである。仮に完璧な感染予防対策がなされている店舗であれば、営業時間を短縮する必要もないし、酒類を提供しても問題ないだろう(今後登場するかもしれないが、会食する場合でも、個人間が完全に透明な板で区切られていれば、感染の心配はないだろう)。 また、「おひとりさま」であれば、何時まで食事をしていようが、お酒を飲もうが構わないはずである。そういえば、この7月からテレビ東京系でドラマ「孤独のグルメ」の新しいシーズンが始まった。相変わらず主人公は1人で飲食店に入り、黙って(心のなかでつぶやきながら)食事を楽しんでいる(お酒は飲まないが)。ただ、これまでと異なり、お店に入る際は手指消毒をし、食事のとき以外はマスクを着用している。 徹底した対策を行ったうえで、「当社の店舗における感染予防対策は完璧であり、感染を拡大させることは絶対にありませんので、通常営業を継続させて頂きます」と宣言すれば、「賛」の方が多数派になったかもしれない。   4 集団免疫ができている? ウイルスやワクチンについて様々な情報が流布しており、戸惑うことが多い。専門家がいうことも同じとは限らない。冷静にならないと、自分に都合良く情報を解釈してしまうおそれがあるのだが、企業の経営者のなかにも独自の見解を持つ方がいるようである(従業員のワクチン接種を禁じる経営者や、マスク着用を禁じる経営者もいるらしい)。 グローバルダイニングは、適時開示ではないが、ホームページ上で「グローバルダイニング代表・長谷川の新型コロナウイルスに対する考え方」をこれまで2回開示している。なお、「グローバルダイニング代表・長谷川」とは、同社の創業者であり代表の長谷川耕造氏である。ちなみに、長谷川氏は2020年12月末時点で同社の株式を6割超保有しており(第48期有価証券報告書)、同社において絶対的な存在だといえる。 まず2020年4月24日の1回目の開示には次のような記載がある。 次に2020年8月5日の2回目の開示には次のような記載がある。 そして、2021年7月30日、今回の開示と併せて行った記者会見で長谷川氏は次のように発言している(2021年7月31日付日本経済新聞)。 集団免疫が既にできているか否かについて、感染症の専門家ではない筆者には判断できないが、本稿執筆時点(2021年8月10日)において感染拡大が収まる気配は見られない。 (了)

#No. 433(掲載号)
#鈴木 広樹
2021/08/26

プロフェッションジャーナル No.432が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年8月19日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.432を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/08/19

日本の企業税制 【第94回】「令和4年度税制改正の課題」

日本の企業税制 【第94回】 「令和4年度税制改正の課題」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   この8月末には例年、各省庁の概算要求と税制改正要望の取りまとめが行われる。それに伴い本稿では、令和4年度税制改正に向けた課題を概観したい。 今年は、衆議院議員の任期満了が10月21日であることから、年末の税制改正シーズンの開始の前にいずれにせよ総選挙が実施されるため、落ち着いて税制改正の議論をする時間は限られている。   〇法人課税-オープンイノベーション及び5G導入促進税制の期限到来- 令和元年度税制改正で創設されたオープンイノベーション促進税制と5G導入促進税制とがそろって期限を迎える。 オープンイノベーション促進税制(特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例)は、「既存企業が従前の閉鎖的でコストの高い自己開発にこだわることなく、新たな分野に投資するなど自ら事業革新を進めることは、この時代において企業が生き残るために必要不可欠である」との観点から、一定のベンチャー企業への出資を通じて新たなビジネスの創造に取り組む企業に対して、「極めて異例の措置」として、そのベンチャー企業の株式の取得価額の25%相当額の所得控除を認めることとされたものである。 ただ「極めて異例の措置」であることから、その適用要件は厳しく、例えば、取得する株式の額が、出資を受けるベンチャー企業(特別新事業開拓事業者)が内国法人である場合には、1億円(出資する企業(適用対象法人)が中小企業者である場合には、1,000万円)以上とされている。 また、その株式が特別新事業開拓事業者の資本金の額の増加に伴う払込みにより交付されるものであること、すなわち、特別新事業開拓事業者が第三者割当増資をする際に発行する株式など金銭の払込みにより取得するものに限られている(新株予約権の行使により金銭を払い込んで取得する株式も該当する)。 適用対象法人は、青色申告書を提出する株式会社、相互会社、中小企業等協同組合、農林中央金庫並びに信用金庫及び信用金庫連合会であり、投資事業有限責任組合等を通じて出資を行う場合の一定の組合員等であるこれらの法人も該当するが、合同会社がその対象に含まれていない。 Society5.0の実現に不可欠な社会基盤である5G(第5世代移動通信システム)を安全・信頼性、供給安定性、オープン性を保証しつつ早期に整備するため、特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律の認定導入事業者であるものが、その法人の認定導入計画に記載された認定特定高度情報通信技術活用設備の取得等をして、その事業の用に供したときに、その取得価額の30%の特別償却と15%の税額控除との選択適用ができることとされている。また固定資産税についても、認定導入計画に従って導入される一定の償却資産の課税標準が最初の3年間、価格の2分の1とする特例措置が講じられている。 5G環境の構築は首都圏を中心に急速に進展がみられるものの、対象エリアの拡大にはまだ時間を要することからその延長は不可欠とみられる。   〇中小企業税制-交際費等の損金算入の特例等の期限到来- 中小企業関係では、交際費等の損金算入の特例が期限切れとなる。 現行制度では、接待飲食費(交際費等のうち飲食費であって、その飲食費であることにつき法人税法上その整理保存を義務付けられている帳簿書類に一定の事項が記載されているもの)に係る損金算入の特例として、その各事業年度において支出する交際費等の額のうち接待飲食費の額の50%相当額以下の金額は、その事業年度において損金の額に算入できることとされている。 また、中小法人については、中小法人に係る損金算入の特例として、定額控除限度額(年800万円)を超える交際費等の額を、その損金の額に算入しないこととすることができることとされている。令和2年度税制改正では、接待飲食費に係る損金算入の特例の対象法人からその事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額が100億円を超える法人が除外されている。 新型コロナ感染症の長期化による影響が甚大な飲食業界からの期待も大きい課題である。 また、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例も期限を迎える。 この制度は、中小企業者等が取得等をし、その中小企業者等の事業の用に供した減価償却資産で、その取得価額が30万円未満であるもの(少額減価償却資産)を有する場合には、その事業の用に供した日を含む事業年度において、その取得価額の全額を損金の額に算入できるものである。   〇土地・住宅税制-土地に係る固定資産税への対応及び住宅ローン控除制度の期限到来等- 土地に係る固定資産税については、令和3年度税制改正において、「感染症により社会経済活動や国民生活全般を取り巻く状況が大きく変化したことを踏まえ、納税者の負担感に配慮する観点から、令和3年度に限り、負担調整措置等により税額が増加する土地について前年度の税額に据え置く特別な措置を講ずる」こととされたことから、改めて令和4年度税制改正における対応が注目される。 住宅ローン控除制度は本年末に期限を迎えるが、令和3年度税制改正大綱では、 とされており、令和4年度税制改正の議論において大きな課題の1つとなる。 住宅関係では、住宅ローン控除の他、新築住宅に係る固定資産税の軽減特例、居住用財産の買換え・売却に伴う特例、住宅取得資金の贈与特例、住宅取得に係る登録免許税の軽減特例、住宅及び住宅用土地の取得に係る不動産取得税の特例、認定住宅に係る特例など多くの制度の適用期限が到来することにも注意が必要である。   〇金融税制-金融所得課税の更なる一体化- 金融所得課税の更なる一体化が課題である。平成25年度税制改正において、損益通算範囲が特定公社債の利子・譲渡所得にまで拡大されて以降、デリバティブ取引について検討が進められてきたが、令和3年度与党税制改正大綱においては、 との記載が盛り込まれたことから、改正に向けた期待が高まっている。 (了)

#No. 432(掲載号)
#小畑 良晴
2021/08/19

保険契約等に関する権利の評価に係る改正所得税基本通達の取扱いとその影響

保険契約等に関する権利の評価に係る 改正所得税基本通達の取扱いとその影響   税理士 三輪 厚二   令和3年6月25日、国税庁から所得税基本通達の改正が公表された。パブリックコメントによる意見公募を経ての改正で、いわゆる低解約返戻金型保険を使った節税策がこれにより封じ込められることとなった。   1 改正に至った経緯 今回、問題とされた取引の流れは、おおむね次のとおりである。 【設例】でその課税関係を確認すると、概略次のようになる。 [法人] [個人] [税効果] 一連の取引は、このような流れになるのだが、ここで問題になるのが、改正前の所得税基本通達36-37(保険契約等に関する権利の評価)の「使用者が役員又は使用人に対して支給する生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する共済契約に関する権利については、その支給時において当該契約を解除したとした場合に支払われることとなる契約返戻金の額により評価する」である。 【設例】では、80万円がその金額になるのだが、国税庁では、低解約返戻金型保険など解約返戻金の額が著しく低いと認められる保険契約等については、第三者との通常の取引において低い解約返戻金の額で名義変更等を行うことは想定されず、支給時解約返戻金の額で評価することは適当でないということから、今回の改正となった。   2 改正通達の内容 改正通達では、原則的な取扱いは従来どおりとし、法人税基本通達9-3-5の2(定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い)の適用を受ける保険契約等については、次の取扱いとされた。 (注1) 使用者は、法人又は個人を問わない。 (注2) 支給時資産計上額とは、使用者が支払った保険料の額のうちその保険契約等に関する権利の支給時の直前において前払保険料として法人税基本通達の取扱いにより資産に計上すべき金額をいい、預け金等で処理した前納保険料の金額、未収の剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額を加算した金額をいう。 (注3) 復旧することのできる払済保険その他これに類する保険契約等とは、保険契約等を変更した後、元の保険契約等に戻すことができる保険契約等の全てが含まれる。 (注4) 法人が他の法人に保険契約等に関する権利を移転する場合も同じ取扱いになる。   3 改正通達の効果 通達の改正前と改正後の効果を上記1の【設例】で見てみると、次のようになっており、税効果はほぼ押さえ込まれた形となった。   4 施行日とその前後の取扱い 改正後の通達は、令和3年7月1日以後に行う保険契約等に関する権利の支給について適用されるが、法人税基本通達9-3-5の2の取扱いが、令和元年7月8日以後に締結する保険契約等について適用されていることから、同日前に締結した保険契約等は、原則として見直しの対象にならないこととされた。 なお、今回の見直し対象は、法人税基本通達9-3-5の2の適用を受ける保険契約等に関する権利であったが、法人税基本通達の他の取扱いにより保険料の一部を前払保険料に計上する「解約返戻率の低い定期保険等」及び「養老保険」などについては、保険商品の設計などを調査したうえで、見直しの要否を検討するとしているので、今後注意する必要がある。 (了)

#No. 432(掲載号)
#三輪 厚二
2021/08/19

[令和3年度税制改正における]子育て助成に係る給付金の非課税措置

[令和3年度税制改正における] 子育て助成に係る給付金の非課税措置   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   令和3年度税制改正では、子育て支援の観点から、国や地方公共団体が実施する子育てに係る助成等について、所得税を非課税とする措置が講じられた。以下、解説を行う。   【1】 改正前の取扱いと改正の趣旨 国や地方公共団体が実施する子育てに係る助成等(※1)については、原則として課税の対象(雑所得)とされてきた。 (※1) ベビーシッター利用支援事業における利用料助成や、認可外保育施設等に対する地方公共団体独自の利用料助成等。 一方で、学資に充てるため給付される金品(学資金)は所得税法において非課税所得とされており、また、令和元年10月にスタートした幼児教育・保育の無償化の制度により国から受ける補助についても非課税とされている(所法9➀十五、子ども・子育て支援法十八)。 今回の改正は、これまで課税の対象とされてきた国や地方公共団体が実施する子育てに係る助成等を、学資金や幼児教育・保育の無償化による助成と同様に非課税とするものである(※2)。 (※2) 新型コロナウイルス感染症対策として、企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置における割引券及び東京都のベビーシッター利用支援事業の特例措置における助成については、従来から非課税とされていた(国税庁「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」問9-2参照)。   【2】 改正後の取扱い 令和3年1月1日以後、国又は地方公共団体が(1)保育その他の子育てに対する助成を行う事業その他これに類する一定の事業により、(2)その業務を利用する者の居宅その他一定の場所において、(3)保育その他の日常生活を営むのに必要な便宜の供与を行う業務又は認可外保育施設その他の一定の施設の利用に要する費用に充てるため支給される金品については、所得税を課さないこととされた(所法9➀十六、所規3の2)。 (1) 非課税とされる事業の範囲 国又は地方公共団体が行う次の事業が非課税の対象となる。 (※3) ベビーシッターや生活援助、家事支援のサービスを含む。 (2) 非課税とされる事業が行われる場所 非課税とされる事業は、次の場所で行われるものが対象となる。 (3) 非課税とされる助成の範囲 (1)の事業により支給される金品で、次に掲げる業務又は施設の利用に要する費用に充てるために支給されるものが非課税の対象となる。 (注) 対象となる費用は、「利用に要する費用」とされていることから、送迎や家事支援サービス料、主食費や副食費等、サービスや施設利用と一体として提供される費用に対する助成も非課税の対象となると考えられる。 (了)

#No. 432(掲載号)
#篠藤 敦子
2021/08/19

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第42回】「買換家屋が50㎡未満でも、その物置が10㎡ある場合」-買換家屋の床面積要件の判定-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第42回】 「買換家屋が50㎡未満でも、その物置が10㎡ある場合」 -買換家屋の床面積要件の判定-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、12年間居住の用に供してきた家屋とその土地を売却しましたが、多額の譲渡損失が発生しました。 新居の購入にあたっては銀行で住宅ローンを組み、小さな家屋(床面積48㎡)とその物置(床面積10㎡)がある土地を購入し、現在、居住の用に供しています。なお、その家屋と物置の附属家屋は一体として利用しています。 買換家屋の床面積(50㎡以上)に係る要件以外の適用要件が具備されている場合に、Xは「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。 A 家屋と一体として利用される物置等の附属家屋は、その家屋の床面積に含まれることから、「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 「居住用財産買換の譲渡損失特例」に係る買換家屋については、一棟の家屋の床面積のうちその個人が居住の用に供する床面積が50㎡以上であるものと規定されています(措令26の7⑤一)。 そして、買換家屋である床面積のうちその個人が居住の用に供する床面積が50㎡以上のものであるかを判定する場合において、その家屋と一体として利用される離れ屋、物置等の附属家屋は、その家屋に含むものとして取り扱われています(措通41の5-14(買換家屋の床面積要件の判定)(1))。 したがって、本事例の場合、その家屋と一体として利用される物置であることから、Xは、「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受けることができることとなります。 (了)

#No. 432(掲載号)
#大久保 昭佳
2021/08/19
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