検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10297 件 / 2971 ~ 2980 件目を表示

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第89回】「業務委託に関する契約書④(コンサルタント業務委託契約書)」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第89回】 「業務委託に関する契約書④(コンサルタント業務委託契約書)」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   当社はコンサルタント会社です。ウェブサイトの運用等に関する助言等の受託をするにあたり、下記の「コンサルタント業務委託契約書」を作成する予定ですが、印紙税の取扱いはどうなりますか。 委任に関する契約書に該当し、課税文書には該当しない。   [検討1] コンサルタント業務の委託契約とは 一般的に、経営や技術などについて専門的な知識や経験に基づく助言を受け、これに対して報酬を毎月一定額支払う契約をいう。 このため委託者は、受託者の専門的な知識や経験を信頼して業務を委託するものであり、あらかじめ一定の仕事の完成を約するものではないことから、委任契約に該当する。   [検討2] 請負契約に該当する場合は コンサルタント業務の委託契約は[検討1]に記述のとおり、一般的には委任契約に該当し、不課税文書となるが、例えばウェブサイトに係る集客の調査書を作成し、委託者に提供することによって報酬が支払われる場合などは、仕事の結果と報酬の支払いが対応関係にあるものであり、請負契約に該当する。   ▷まとめ コンサルタント業務の委託契約は、委託者が受託者から経営、技術等の専門的な知識や経験に基づく助言を受け、これに対して報酬を支払うこととされている契約であることから、一般的には委任に関する契約に該当して不課税文書となる。しかし、特定の案件処理にあたり、あらかじめ企画書や報告書等を作成して委託者に提供し、これに対して報酬が支払われることが対応しているような契約等の場合は請負契約に該当する場合がある。 したがって、印紙税の課否判定を行う場合には、くれぐれも標題にまどわされず、その文書における個々の内容を検討したところで課否の判断をしなければならない。   (了)

#No. 426(掲載号)
#山端 美德
2021/07/01

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第16回】「「中小M&A推進計画」を対象企業の見方・見られ方に活かす(中編)」

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕 対象企業の見方・見られ方 【第16回】 「「中小M&A推進計画」を対象企業の見方・見られ方に活かす(中編)」   公認会計士・税理士 荻窪 輝明   《今回の対象者別ポイント》 買い手企業 ⇒「中小M&A推進計画」を売り手・支援機関に対する見方に活かす。 売り手企業 ⇒「中小M&A推進計画」を買い手・支援機関に対する見方に活かす。 支援機関(第三者) ⇒「中小M&A推進計画」を支援機関の体制づくりや今後の支援と助言に活かす。 その他の対象者 ⇒「中小M&A推進計画」を対象企業の見方・見られ方のヒントにする。   1 「中小M&A推進計画」が示す今後の対応の方向性 【第15回】では、中小企業庁が2021年4月28日に取りまとめた「中小M&A推進計画」のうち、主に中小M&Aの意義を通じて中小M&Aにおける対象企業の見方・見られ方のポイントを解説しました。今回も前回に続き「中小M&A推進計画」をテーマに解説します。 「中小M&A推進計画」は、経営者の高齢化や新型コロナウイルス感染症の影響といった現状の中小企業が抱える諸課題に対応し、将来に向けて中小M&Aを推進するため今後5年間に実施すべき官民の取組を示すものです。このため、本計画を読むと、中小M&Aに関してこれから何が行われようとしているのかを知ることができます。現状のM&Aの諸課題に対する今後の対応の方向性が示されていますので、今後M&Aを予定する、あるいは、M&Aに関心を抱く買い手・売り手や支援機関などのM&Aプレイヤーが、どういう姿勢で臨めばよいかの視点を磨くために活用できそうな内容が多く掲載されています。 今回は対象企業の見方・見られ方そのものからは少し外れるかもしれませんが、「中小M&A推進計画」のうち、今後の対応の方向性に記載された内容を今後のM&Aに活かすのは各当事者にとって有益ですので、本計画の内容にも触れつつご紹介します。   2 区分に応じた中小M&A対応の方向性とポイント 中小M&Aといっても、案件の規模によって異なるM&A支援機関の支援内容や、中小M&Aの実績が積み上がる中で明らかになった制度的な諸課題など、様々な状況に応じた対応が求められます。 そこで、本計画では次の区分による対応の方向性が示されていますので、この区分に沿って、各M&Aの当事者の立場から見たポイントを解説します。 〈図表〉中小M&Aの類型と検討の視点 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 中小企業庁「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ(案)~中小M&A推進計画~(2021年4月28日)」17ページ (1) 小規模・超小規模M&Aの円滑化のポイント 売り手企業の売上高が1億円以下の案件を目安とする小規模・超小規模M&Aの区分における、本計画に基づく今後の対応の方向性のポイントは次のとおりです。 これらに伴うM&Aの各当事者から見たポイントは次のとおりです。 〈図表〉後継者人材バンクの登録者数及び成約件数の推移 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 中小企業庁「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ(案)~中小M&A推進計画~(2021年4月28日)」21ページ (2) 大規模・中規模M&Aの円滑化のポイント 売り手企業の売上高が1億円超の案件を目安とする大規模・中規模M&Aの区分における、本計画に基づく今後の対応の方向性のポイントは次のとおりです。 〈図表〉M&Aプロセスにおいてやり直したい取組 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 中小企業庁「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ(案)~中小M&A推進計画~(2021年4月28日)」26ページ これらに伴うM&Aの各当事者から見たポイントは次のとおりです。 (3) 中小M&Aに関する基盤の構築のポイント 本計画に基づく、中小M&Aに関する基盤の構築に関する今後の対応の方向性のポイントは次のとおりです。 〈図表〉中小M&Aガイドラインの浸透状況 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 中小企業庁「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ(案)~中小M&A推進計画~(2021年4月28日)」35ページ 今後予定されるこれらの対応を通じて、M&Aに関わる各当事者が安心してM&Aを進められる環境の整備やM&A支援機関への信頼感醸成が期待できます。 *  *  * 次回も「中小M&A推進計画」をテーマに、中小M&Aの実施状況からみたM&A各当事者の対象企業の見方・見られ方について解説します。 (了)

#No. 426(掲載号)
#荻窪 輝明
2021/07/01

対面が難しい時代の相続実務 【第3回】「想定される場面(その1)」-オンラインでの相談対応-

対面が難しい時代の相続実務 【第3回】 「想定される場面(その1)」 -オンラインでの相談対応-   クレド法律事務所 弁護士 栗田 祐太郎   これから数回にわたり、相続実務の場面を具体的に取り上げ、場面ごとのオンライン対応のノウハウや留意点を説明していくことにしたい。 今回は、相続に関する相談をオンラインで行う場面を取り上げる。 【想定される場面(その1) 相続に関する相談】   1 オンライン相談を実施してきた感想 第1回で紹介したように、筆者がオンラインでの相談に本格的に取り組み始めてから、2021年7月の時点でまだ1年数ヶ月程度しか経過していない。 オンライン相談を始める際には、「スマホの携帯電話回線をそのまま利用できれば簡単だが、途中でフリーズしてしまわないだろうか?」、「専門的な機器を用意せずにスマホだけで、満足いくオンライン会議ができるのだろうか?」、「相談者の満足度はどうであろうか?」等々いろいろな不安があった。 しかし、多数の機会でオンライン会議を実施した結果、思いのほか最低限の機器だけで十分間に合うということは第2回で紹介したとおりである。 会議の内容的な面を見ても、筆者の個人的な感想では、オンラインでの相談や会議も、感覚としてはリアルの場で対面して打ち合わせるのとほぼ変わりないと感じている。リアルタイムでお互いの顔や表情を見ながら会話をしているため、電話でのやり取りよりも更にリアルのコミュニケーションに近い感覚がある。 特に企業で働く方々にとっては、オンラインでの会議やコミュニケーションが日常的なものとなっているため、初対面でも始めからオンラインでの相談や打ち合わせを希望されるケースも多くなった。 また、頻繁に参照する書籍や参考資料を手元に置いておけば、それもまた打ち合わせ中に参照できるし、関連情報をその場でインターネット検索することも可能である。 これらを考え合わせると、コロナの状況が今後どう推移するかとは関係なく、将来的には相談や打ち合わせの場がますますオンラインへと移行していくことは間違いないであろう。   2 オンライン相談の導入・準備 筆者が使用している機器については、第2回で紹介した。 オンラインでの相談については、「You Tube」等で動画配信するのと異なり、最小限度の機器・設備で十分である。 使用するプラットフォームについては、筆者の場合はほぼ全件で「Zoom」を利用している。相談者や依頼者の側からのリクエストも「Zoom」がほとんどである。 なお、相談者・依頼者の側から特にオンラインでの打ち合わせの希望が出ない場合には、筆者の場合には、従来どおり対面か電話による相談で対応することにしている。相談の内容的なものがかかわっているのかもしれないが、あえてオンラインではなく対面で相談したいという希望も、相談者・依頼者によっては根強くある。   3 オンライン相談での工夫と留意点 オンラインでの相談を実施している中で、筆者自身が工夫してきたことや留意すべきと考える点を説明したい。 (1) できる限り前もって、親族関係図・遺産(所有財産)の一覧表・これまでの経緯の時系列表などの参考資料を、相談者に作成・送付してもらう リアルな対面の場での相談においては、相談者が持参してきた資料を一緒に見ながら、あるいは持参した大部の資料の中から相談に関係しそうなものをピックアップし、一緒に内容を確認しながら打ち合わせを進めていくのが通常である。 しかし、オンラインの場では、このような資料のやり取りをすることが難しい場合が多い。相談者にその場で手書きで図解してもらっても、映した画面が反転してしまうときもあるし、相談者が画面共有の操作になれていないことも多い。 そこで、オンライン会議をスムーズに進めるためには、上記の各種資料を事前に入手して検討しておき、相談内容全体のイメージを把握してから会議に臨めるようにしておきたい。そうした方が、会議における内容の充実化にもつながる。 (2) 表情・しぐさ・体勢といった「オンラインでの見え方」に注意を払い、相手に与える印象について意識する 特にオンラインの場で相談者と初対面となるケースでは、相談者は、画面に映る限定された範囲内から、こちらの態度や印象を判断することになる。 そのため、オンラインという特別な場において相談者に与える印象や見え方等について常に意識を向け、注意を払う必要がある。 筆者も始めは手探りでオンライン相談を始めたため、しばらくの期間は相談を無事にこなすことができるかが一番の関心事であった。その後、ひととおりこなせるようになってくると、次第に、相談中に画面に映る自分の姿が気になったり、あるいは他人の会議での仕草等を見ることで、改善を要する点が少なくないことに気づき始めた。 オンラインの場において効果的なコミュニケーションを図っていくためにはどうしたらよいか、また相談者・依頼者との信頼関係を築いていくためにはどうしたらよいかについては、現在、多数の書籍が出版されている。 筆者が接した中では、元NHKキャスターの経歴を持つスピーチコンサルタントである矢野香氏の書籍(『オンラインでの「伝え方」 ココが違います!』(すばる舎、2020年10月))が、すぐに取り組める実践的な方法をわかりやすく説明しており、大変参考になった。 ここでは、同書の中から特に重要と感じた以下の2点を紹介したい。 〈オンライン会議でのポイント〉 なお、同書では、他にも「映像のオン・オフの効果的な使い分け」、「ビジネスにふさわしい効果的な背景セットの仕方」、「3部構成で作る会議・ミーティングの時間配分」などのすぐに役立つ情報が豊富に説明されている。関心を持たれた方は、ぜひご参照いただきたい。 (3) 予定時間を設定し、相談中のタイムマネジメントを意識する オンラインでのやりとりは、自宅等で環境的にもリラックスした状態で話ができることに加え、移動の時間も要しないため、意識しないと打ち合わせの時間が長くなりがちである。 筆者が実際に聞いた例では、数十名の仲間内でのリラックスした雰囲気のオンライン勉強会で、夜9時に始まった講師の話が終わった後に、参加者からの質問がずっと続き、最終的に朝5時頃にようやく終了した会もあったそうである。 ビジネスの場ではさすがにここまでのことにはならないと思われるが、相談者のタイプによっては、途中から同じ話の繰り返しになったり、不安からか仮定のもとでの質問がいくつも続くなどして、打ち合わせ時間が長くなることもよくある。 このようなことも考えると、30分なり1時間なり、打ち合わせの内容を見越しておおよその予定時間や時間配分をあらかじめ考えておくべきであろう。 必要に応じて、打ち合わせの最初に、ある程度のタイムスケジュールをアナウンスしておくという配慮をしてもよいのではないかと思う。 (了)

#No. 426(掲載号)
#栗田 祐太郎
2021/07/01

事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第18回】「地面師事件とコンプライアンス体制の充実(上)」

事例で検証する 最新コンプライアンス問題 【第18回】 「地面師事件とコンプライアンス体制の充実(上)」   弁護士 原 正雄   2017年6月、S社が詐欺師集団に騙され、不動産の売買代金として金63億819万3,309円を騙し取られるという事件が起こった。いわゆる「地面師事件」である。 本件は2018年1月24日に社外役員らによって当時の社長の責任を指摘する調査報告書が作成された。ところがその後、当時の会長と社長の対立が生じ、会長が会社を去る事態へと発展した。さらにその後、当時の社長の責任を問う株主代表訴訟が提起されるなどの経緯を辿った。S社は、2020年12月7日、「総括検証報告書」を公表した。同報告書は、本件の責任を社長のみに問うのは妥当ではなく、過去からの経営者共通の問題であるとしている。 本件にはコンプライアンスの観点から参考になる点が多々見られる。本稿で本件の全てについて述べることはできないが、「総括検証報告書」をベースにいくつかの論点をピックアップし、「上」と「下」の構成で2回にわたって解説したい。   1 本件の始まり (1) 公証人による認証 本件は、東京の五反田駅近くの不動産(以下「本件不動産」という)を舞台とするものである。本件不動産は東京都心近くの優良物件であり、多くの不動産業者が開発を希望していたが、所有者X氏(女性)が売却を拒み、開発されずに残されていた。不動産業者の中では有名な物件であった。そうした中で地面師グループは、本件不動産の所有者として偽Xを仕立て上げた。 本件は、2017年3月頃、地面師グループから本件不動産の売却の話を聞いたH氏が、S社の東京マンション事業部の営業次長に話を持ち掛けたのが始まりであった。H氏が所有者X氏から本件不動産を60億円で購入し、それをS社に70億円で転売する、との話であった(厳密にはH氏の関係する法人であるが、省略する。以下同じ)。 H氏は、営業次長に、偽Xとの間の売買代金60億円の売買契約書のコピーを送付した。併せて、公正証書と写真を送付した。公正証書には、X氏が本人であることを公証人が認証した、と記載されていた。写真は、H氏が偽Xと一緒に写っているものであった。 実際は、同公正証書は偽造パスポートに基づくものであり、公証人は騙されていた。しかし、営業次長は、公証人が認証したことで、X氏の本人確認は信用性が高いと判断してしまった。その後、S社は、本件不動産の取得に向けて進んでいくことになる。 (2) 評価 公証人による認証は、実はそれほど厳密なものではない。公証人が騙されて虚偽内容の公正証書を作成してしまうことは、珍しくはない。筆者も弁護士として、そうした事例を取り扱ったことが複数回ある。 しかし、世間では、公証人による認証は信用性が高いとされている。S社の担当者が公証人の認証を信用したことは、世間一般の感覚からすればやむを得ない。これは、S社の担当者の落ち度というよりは、公証人制度の問題である。また、この時点では、取引の端緒の話があったにすぎない。ここでいきなり厳密な本人確認を求めるのも、現実的ではないだろう。そのため、この時点でのS社の対応に問題があったとは言えない。   2 社長の決裁 (1) S社における意思決定 会社の意思決定は、取締役会が行うのが原則である。ただし、一定以上の重要事項を除けば、取締役に意思決定を委ねることができる(会社法362条4項)。 S社においては、100億円を超える土地を取得する場合、取締役会において慎重な審議を行い、そのうえで意思決定をしなければならなかった。他方、100億円未満の土地の取得は社長に意思決定を委ねており、取締役会決議は不要とされていた(S社コーポレートガバナンス報告書)。 (2) 本件不動産取得の決裁過程 本件不動産の購入価格は70億円であった。そのため、取締役会決議は不要で、社長の決裁を得れば足りるとされていた。 2017年4月14日、東京マンション事業部において本件不動産の購入に関する稟議書が作成された。本件稟議書には、売買契約の内容や本件不動産に関する情報、事業収支計画等が記載されていた。他方、直接の売主であるH氏や、所有者であるX氏についての情報はほとんど記載されていなかった。 本件稟議書は、東京マンション事業部からマンション事業本部に回付された。その後、不動産部を経て、経営企画部、経理財務部、法務部にも回付された。不動産部は、営業部門が行う土地の購入について指導、調整、統括管理などを行う部署であり、法務部は、重要な契約書の審査などを行う部署であった。 本件稟議書は、その後は回議者4名(常務2名、専務、副社長)の承認を得てから社長に回付されるのが原則であった。ところが本件では、東京マンション事業部が至急対応の要請をしていた。そのため、回議者4名の承認を得ずに、いきなり社長に回付されてしまった。回議者4名が押印したのは、社長が決裁した後であった。 (3) 評価 ① 経営判断の原則 取締役は、ときには果敢な決断をしなければならず、その決断が失敗に終わることも当然あり得る。しかし、この場合に失敗したことのみを理由に責任を問うのでは、取締役が委縮してしまう。その結果、会社の発展が阻害され、かえって株主の利益が害される。 とはいえ、漫然と意思決定をしたために失敗した場合まで、取締役を免責するのも妥当ではない。 そこで、取締役が経営判断をするに先立ち、正しい意思決定過程を経て、前提となる事実を正しく認識していたのであれば、経営判断が失敗に終わった場合でも免責されるという原則が裁判例によって確立された。これを「経営判断の原則(business judgement rule)」という。 ② 意思決定の過程 本件は、70億円の取引である。社長にとって、100億円未満の土地取得という決裁権の中でも上限に近い。そのため、上記原則の適用に当たっては、相応の対応が求められる。 まず、意思決定過程について検討する。問題となるのは、稟議書は、回議者4名(常務2名、専務、副社長)の承認なしに社長に回付されてしまった点である。 社長は、稟議書に回議者4名の承認がないことを把握したはずであり、通常であれば、稟議書を押し戻すべき場面である。他方、稟議規則では緊急を要する場合であれば直ちに決裁者に回すことができるとされていた。緊急を要する事情が稟議書に記載されていれば、稟議書を押し戻さずに決裁をしたのも当然と言える。 ただ、本件では、稟議書に緊急を要する事情が記載されていたかどうか、また、記載がなくとも口頭での説明がなされたのかどうか、不明である。 ③ 前提事実の認識 次に、社長が決裁に当たって経営判断の前提となる事実を正しく認識していたかどうかについて検討する。 取締役が経営判断の前提となる事実を正しく認識するためには、必要な資料を収集し、それら資料に基づいて関係者が会議での審議を尽くし、その結果について報告を受けていることが望ましい。必要に応じて、取締役が自ら資料に目を通し、会議に参加する。場合によっては、関係各部署のメンバーからなるプロジェクトチームを立ち上げてもよい。 本件では、稟議書作成の時点で、上述のとおり公証人の公正証書を入手していた。本人確認に関してその時点で入手可能な資料を入手していたと評価できる。 他方、この時点で、マンション事業本部や東京マンション事業部のみならず、法務部や不動産部など関係各部署が集まって会議が開催された形跡はない。稟議書には上述のとおり所有者X氏についての情報はほとんど記載されていなかったが、仮にそうした会議が開催されていれば、その点が問題視された可能性は否定できない。 例えば、X氏は本件不動産を長年売りに出なかったのに、なぜ急に売ることにしたのか。X氏が本件不動産をH氏に60億円で売却し、H氏がS社に70億円に転売するとされているが、なぜH氏に10億円の利益を与えるのか。こうした問題点が指摘されれば、以後のS社の対応はもう少し慎重になった可能性もある。 とはいえ、地面師グループの詐欺手法を見ると、仮にS社が相当慎重に対応していたとしても、それでも騙された可能性も否定できない。   3 手付金14億円の支払い (1) 本人確認の方法についての事前の検討 2017年4月20日、東京マンション事業部が本人確認方法に関して弁護士からの回答を得た。その内容は、概要、以下のとおりであった。 上記から、東京マンション事業部がX氏の本人性について一定の問題意識を持っていたことが分かる。ただ、上記メールがS社内でその後、どのように取り扱われたかは不明とのことであった。法務部や不動産部に共有されたかも明らかではない。 (2) 偽Xとの初めての面談 弁護士から上記回答を得た同日、S社は初めて偽Xと面談した。S社からは、東京マンション事業部の営業次長や司法書士などが出席した。 偽Xは、本人確認書類としてパスポートと印鑑証明書を呈示した。また、本件不動産の所有を示す書類として権利証を呈示した。もっとも、パスポートは偽造であり、印鑑証明書は偽造パスポートによって登録、取得されたものであった。また、権利証は原本ではなくカラーコピーであった。偽Xは、その際に作成した書類において自らの住所(居所)の番地以降を誤って記載してしまい、書き直すというミスを犯した。 (3) 仮登記申請の受付と、手付金の支払い 2017年4月24日、S社の会議室に、偽Xをはじめ関係者が訪れた。S社からは、東京マンション事業部の営業次長や司法書士などが出席した。そこで、偽XとH氏との60億円の売買契約書と、H氏とS社との70億円の売買契約書が締結された。 その際、司法書士が、偽Xの持参したパスポート、印鑑証明書、権利証の原本を確認した。パスポートと印鑑証明書は上述のとおりであった。権利証の原本は非常に精巧に作られた偽造であった。 その後、法務局に仮登記が申請され、法務局はその申請を受け付けた。法務局もこうした書類の偽造に気付かなかった。 S社は、H氏に手付金として14億円を支払った(12億円は小切手、2億円は振込)。H氏はS社から受け取った12億円の小切手をそのまま偽Xに交付した。この時点で、地面師グループは12億円という多額の金員の詐取に成功した。しかし、地面師グループはこれに満足しなかった。さらにS社から多額の金員を詐取すべく、その後もS社に対する欺罔行為を継続する。 (4) 評価 当時のS社は、X氏の本人性が問題になり得ることは理解していたようである。そのうえで、偽Xは、住所(居所)の記載を間違えるというミスを犯した。 とはいえ、偽Xは、本人確認書類として、パスポートと印鑑証明書を提出している。パスポートは偽造であったものの、かなり精巧に作られていたようである。また、印鑑証明書は偽造パスポートによって登録・取得されたもので、ある意味では本物であった。それに加え、権利証も精巧に偽造されていたことから、司法書士も法務局も、完全に騙されてしまった。 したがって、この時点でX氏が偽物であることにS社の担当者が気付かなかったのは、やむを得なかったであろう。 (次回に続く)

#No. 426(掲載号)
#原 正雄
2021/07/01

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第46話】「外国法人等に対する源泉徴収」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第46話】 「外国法人等に対する源泉徴収」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   昼休みに、浅田調査官は所得税法の条文を見詰めながら、ひとりごとをつぶやく。 「・・・所得税法212条は源泉徴収義務について定めているが・・・この1項では『非居住者』と『外国法人』に対して国内源泉所得(所得税法161条1項)の支払いをすると・・・源泉徴収をしなければならない・・・」 そして、机の上にある罫紙にメモを取る。 「所得税法161条1項12号は給与所得だから・・・外国法人については、12号が源泉徴収の対象から除かれている・・・」 浅田調査官は、自らの説明に、軽くうなずきながら図を描く。 「問題は、源泉徴収義務者が本来の納税義務者である外国法人・非居住者を確認しうるだけの、十分な情報を得ることができるかどうか・・・ということだ・・・確認できなければ、源泉徴収洩れが発生する可能性がある・・・」 浅田調査官は、腕を組んだまま、自分の描いた図を見つめる。 「何を真剣に考えているんだ?」 浅田調査官の後ろには、昼食を終えた中尾統括官が、爪楊枝をくわえたまま立っている。 「もう12時半を過ぎているぞ・・・昼食は?」 中尾統括官が尋ねる。 「・・・まだです・・・」 浅田調査官は、そう答えると、再び思案顔になる。 「・・・この源泉徴収義務者は、本来の納税義務者である外国法人や非居住者の情報を持っていないケースが多く、もし源泉徴収をしなかった場合・・・手取り契約とすることによって、本来の源泉徴収税額以上の税額を納めなければなりません・・・」 浅田調査官は、傍らにある通達集を手に取る。 「所得税基本通達181~223共-4では、次のようになっています。」 中尾統括官は首を伸ばして、開かれたページをのぞきこむ。 「その通りだ、源泉徴収をしなかったら・・・逆算して計算することになる。」 中尾統括官はハッキリとした口調で言う。 「例えば・・・100万円に対して10%の源泉徴収をしなかった場合、10%の源泉徴収をした結果が100万円になると考える・・・したがって、100万円を0.9で割ると・・・1,111,111円になり・・・これに10%を乗じると・・・源泉徴収税額は111,111円となる・・・」 そう言いながら、中尾統括官は、机の上にある罫紙に算式を並べる。 「これだと・・・源泉徴収義務者は、本来であれば、100万円に10%を乗じた10万円の源泉徴収税額を納付すればよかったのだけど・・・源泉徴収しなかった場合、11,111円(111,111円-100,000円)多く納付しなければならない・・・」 浅田調査官は、不満そうに言う。 「そして・・・この会計処理は、次のようになります。」 浅田調査官は、罫紙に仕訳を書く。 「さらに・・・源泉徴収義務者が支払った源泉徴収税額については、現実には外国法人等に対して求償権を行使することが難しいので、結局は源泉徴収義務者が負担することになります・・・もっとも、支払手数料がその分増加していますから、自動的に損金算入されるか、又は必要経費になりますが・・・」 浅田調査官は納得できない様子で説明を続ける。 「源泉徴収制度そのものが・・・徴税の便宜から導入されたものだから、このような問題は往々にして起こるのだろう・・・しかし、非居住者や外国法人に対する源泉徴収の問題は、課税権行使の関係から、さらに複雑になるだろうな・・・」 中尾統括官も腕を組みながら、渋い顔をする。 壁に掛かっている時計は、12時45分を示している。 「おい、もうそろそろ、食事に行ってきたら・・・」 中尾統括官は心配そうに声をかける。 浅田調査官は、まだ通達をにらみながら、考えをめぐらせている。 (つづく)

#No. 426(掲載号)
#八ッ尾 順一
2021/07/01

《速報解説》 金融庁が「監査に関する品質管理基準の改訂」の公開草案を公表~経済社会の変化に対応し、監査事務所による監査の品質管理を見直す~

《速報解説》 金融庁が「監査に関する品質管理基準の改訂」の公開草案を公表 ~経済社会の変化に対応し、監査事務所による監査の品質管理を見直す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年6月30日、企業会計審議会監査部会は、「監査に関する品質管理基準の改訂について(公開草案)」を公表し、意見募集を行っている。 これは、経済社会を取り巻く環境変化が加速し、監査業務にも変化が生じていることから、監査事務所において、より積極的に品質管理上のリスクを捉えて、当該リスクに対処する品質管理体制の構築へとするものである。 意見募集期間は2021年7月29日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ リスク・アプローチに基づく品質管理システムの導入 リスク・アプローチに基づく品質管理システムとは、監査事務所自らが、品質管理システムの項目ごとに達成すべき品質目標を設定し、当該品質目標の達成を阻害しうるリスクを識別して評価を行い、評価したリスクに対処するための方針又は手続を定め、これを実施することである。   Ⅲ 品質管理システムの構成 品質管理システムの項目ごとの主な改訂点は次のとおりである。 1 監査事務所のリスク評価プロセス 監査事務所の主体的な品質管理を可能とするため、監査事務所に対し、品質管理システムの項目ごとに、品質目標を設定し、当該品質目標の達成を阻害しうる品質リスクを識別して評価を行い、評価した品質リスクに対処するための方針又は手続を定め、実施することを求める。 2 ガバナンス及びリーダーシップ 監査事務所に対し、次のことを求める。 3 職業倫理及び独立性 監査事務所に対し、次のことを求める。 4 監査契約の新規の締結及び更新 監査事務所に対し、次のことを求める。 5 業務の実施 より質の高い監査の実施を可能とするため、監査事務所に対し、次の事項に関する品質目標を設定することを求める。 6 監査業務に係る審査 原則としてすべての監査業務について審査を求めるとともに、品質管理の方針又は手続において、意見が適切に形成されていることを確認できる他の方法が定められている場合には審査を受けないことができることを規定する。 7 監査事務所の業務運営に関する資源 監査事務所に対し、人的資源に加え、テクノロジー資源、知的資源等の業務運営に関する資源の取得又は開発、維持及び配分に関する品質目標を設定することを求める。 8 情報と伝達 監査事務所の内外から適時に情報を収集し、監査事務所の内外と適時に情報の伝達を行うことが重要であるので、情報と伝達に関する品質管理システムの項目を新たに追加する。 9 品質管理システムのモニタリング及び改善プロセス 監査事務所が、監査事務所自身によるモニタリング、改善活動の実施、監査事務所の外部からの検査及びその他の関連する情報から得られた発見事項の評価を行うことを明確化する。 10 監査事務所間の引継 監査事務所に対し、監査事務所間の引継について品質目標を設定し、不正リスク対応基準において求められる引継に関する手続をすべての監査に対して求める。   Ⅳ 監査事務所が所属するネットワークへの対応 監査事務所に対し、品質管理システムにおいてネットワークの要求事項を適用し、又は業務運営に関する資源等を利用する場合には、監査事務所としての責任を理解した上で、適用又は利用することを求める。   Ⅴ 品質管理システムの評価 監査事務所の品質管理システムに関する最高責任者に対し、少なくとも年に一度、基準日を定めて品質管理システムを評価し、当該システムの目的が達成されているという合理的な保証を監査事務所に提供しているかを結論付けることを求める。   Ⅵ 適用時期等 改訂品質管理基準は、2023年7月1日以後に開始する事業年度又は会計期間(公認会計士法上の大規模監査法人以外の監査事務所においては、2024年7月1日以後に開始する事業年度又は会計期間)に係る財務諸表の監査から実施する。 改訂品質管理基準中、品質管理システムの評価については、改訂品質管理基準の実施以後に開始する監査事務所の会計年度の末日から実施することができる。ただし、それ以前の事業年度又は会計期間に係る財務諸表の監査から実施することを妨げない。 (了)

#No. 425(掲載号)
#阿部 光成
2021/06/30

《速報解説》 会計士協会、2020年度の品質管理レビューの概要等を公表~今後の行動計画としてKAMの報告への対応、新型コロナに関する対応等を予定~

《速報解説》 会計士協会、2020年度の品質管理レビューの概要等を公表 ~今後の行動計画としてKAMの報告への対応、新型コロナに関する対応等を予定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年6月25日、日本公認会計士協会は、次のものを公表した。 これらは、監査法人又は公認会計士が行う監査の品質管理の状況をレビューする制度(品質管理レビュー制度)に基づくものであり、基本的な対象は、監査法人又は公認会計士である。 しかしながら、これらに記載されている内容については、一般の事業会社における会計処理等にも関連するものがあるので、実務において参考になるものを紹介する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 会計処理等に関連する改善勧告 改善勧告事項は、次の項目から多く発生しているとのことである(「2020年度 品質管理レビューの概要」(本編)、36ページ)。 「会計上の見積りの監査」に関して、次の改善勧告事項が見られたとのことである(「2020年度 品質管理レビューの概要」(本編)、36ページ)。 また、「不正による重要な虚偽表示リスクの識別、評価及び対応」では、「収益認識」や「経営者による内部統制を無効化するリスク」が多かったとのことである(「2020年度 品質管理レビューの概要」(本編)、36ページ)。 具体的には次の改善勧告事項である。 次の事項に関する改善勧告事項が述べられている(「2020年度 品質管理レビュー事例解説集」、13、25、30、31、40、41、43、44、45、46、47、48、50、54、56ページ)。 より具体的な内容は、「2020年度 品質管理レビュー事例解説集」をお読みいただきたい。   Ⅲ 今後の行動計画 次の対応を行うとのことである(「2020年度 品質管理レビューの概要」(本編)、45、46ページ)。   Ⅳ 会計監査人の異動理由 2020年4月1日から2021年3月31日までに生じた会計監査人の異動のうち、2021年4月30日までに前任監査人及び後任監査人から届出書の提出があった103件の会計監査人の異動について、その理由を集計している(「2020年度 品質管理レビューの概要(資料編)」、18、19ページ)。 異動理由として「監査報酬」、「継続監査期間」をあげている例が多い。 一方、後任監査人は、「監査人の対応の適時性や人員への不満」も「継続監査期間」と同程度を異動理由として挙げており、前任監査人及び後任監査人の回答件数が最も大きく乖離しているとのことである。   Ⅴ IFIAR の調査結果 監査監督機関国際フォーラム(以下「IFIAR」という)は、世界各国・地域の監査監督機関から構成された組織である。 IFIARによる「上場会社の監査業務における品質管理の項目別の指摘数」では、次のものがあげられている(「2020年度 品質管理レビューの概要(資料編)」、23ページ)。 公正価値測定を含む会計上の見積りの監査については、指摘数は前年度から減少しているが、前年度同様、整合性のない監査証拠の検討を含む経営者の仮定の合理性を十分に評価していないという指摘がほぼ半数を占めているとのことである(「2020年度 品質管理レビューの概要(資料編)」、23ページ)。 (了)

#No. 425(掲載号)
#阿部 光成
2021/06/29

《速報解説》 監査役協会が監査役監査基準等の今後の改定スケジュールを公表~令和元年改正会社法・監査基準及びCGコードの改訂の反映を予定~

《速報解説》 監査役協会が監査役監査基準等の今後の改定スケジュールを公表 ~令和元年改正会社法・監査基準及びCGコードの改訂の反映を予定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年6月25日、日本監査役協会は、「監査役監査基準等の今後の改定スケジュールについて」を公表した。 これは、次のものを反映させる改定スケジュールを示すものである。 現時点での予定であり、今後の検討状況によって時期が変更となることもあるとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 改定版の公表時期については次のとおり見込んでいる。 (了)

#No. 425(掲載号)
#阿部 光成
2021/06/29

《速報解説》 会計士協会、「監査報告書に係るQ&A」の改正を公表~証券発行に関する文書におけるその他の記載内容の適用範囲等について示す~

《速報解説》 会計士協会、「監査報告書に係るQ&A」の改正を公表 ~証券発行に関する文書におけるその他の記載内容の適用範囲等について示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年6月25日、日本公認会計士協会は、監査基準委員会研究報告第6号「監査報告書に係るQ&A」の改正を公表した。これにより、2020年10月21日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 「監査基準委員会研究報告第6号「監査報告書に係るQ&A」の公開草案に対するコメントの概要及び対応について」も公表されており、発行市場における「その他の記載内容」の範囲について、海外における資金調達の際に現地国の法令に従って発行される証券発行に関する文書に関するコメントが寄せられている。 「監査報告書に係るQ&A」の改正に関する公開草案は、監査基準委員会報告書720「監査した財務諸表が含まれる開示書類におけるその他の記載内容に関連する監査人の責任」の改正について(改正後の名称:監査基準委員会報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」)」等(公開草案)の適合修正として公表されていたものである。 なお、2021年1月14日付で(ホームページ掲載日は2021年2月12日)、監査基準委員会報告書720「監査した財務諸表が含まれる開示書類におけるその他の記載内容に関連する監査人の責任」の改正(改正後の名称:監査基準委員会報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」)及び関連する監査基準委員会報告書の改正が公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 主な改正内容は、監査基準委員会報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」の改正に伴う、監査報告書におけるその他の記載内容についての解説及び証券発行に関する文書におけるその他の記載内容の適用範囲についてのQ&Aの追加である。 1 その他の記載内容(Q1-1等) 「その他の記載内容」とは、監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容をいう。 例えば、「Q1-1 従来の監査報告書と新しい監査報告書の変更点及び共通点」では、「その他の記載内容」区分が新設されたことなどが記載されている。 2 証券発行に関する文書におけるその他の記載内容の適用範囲(Q1-8) 我が国における証券発行に関する文書としては、有価証券届出書及び目論見書並びに新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)が存在し、これらの文書には監査した財務諸表及びその監査報告書が含まれる。 このため、これらの文書はいずれも監査基準委員会報告書720の適用対象となると考えられる。 一方、海外における資金調達の際に現地国の法令に従って発行される証券発行に関する文書については、監査基準委員会報告書720の適用対象外になると考えられる。 (了)

#No. 425(掲載号)
#阿部 光成
2021/06/29

《速報解説》 パブコメを経て改正所得税基本通達36-37が確定~R1.7.8以後締結分の保険契約等でR3.7.1以後の権利の支給について適用~

《速報解説》 パブコメを経て改正所得税基本通達36-37が確定 ~R1.7.8以後締結分の保険契約等でR3.7.1以後の権利の支給について適用~   Profession Journal編集部   既報のとおり4月28日付でパブコメに付されていた低解約返戻金型保険等の評価に係る所得税基本通達36-37の改正案が、6月25日付で確定、公表された。 なお、改正案からの変更は行われていない。寄せられた意見に対する国税庁の考え方についても下記※ページにおいて示されている。 現行(改正前)は、使用者が役員や従業員に対し保険契約等(生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する共済契約)に関する権利を支給した場合、支給時において保険契約等を解約した場合に支払われることとなる解約返戻金の額で評価する取扱いとされている。 ただし、「低解約返戻金型保険」や「復旧することのできる払済保険」など解約返戻金の額が著しく低いと認められる保険契約等については、第三者との通常の取引において低い解約返戻金の額で名義変更等を行うことは想定されないことから、支給時解約返戻金の額で評価することは適当ではないとして、今回の見直しに至った。 改正後は、保険契約等に関する権利について、支払保険料の一部を前払保険料として資産に計上する取扱いが定められている法人税基本通達の取扱いを踏まえ、使用者が、役員や従業員に対して、解約返戻金の額が著しく低いと認められる次の保険契約等に関する権利を支給した場合には、それぞれ次の金額で評価することとしている。 (注) 「支給時資産計上額」とは、使用者が支払った保険料の額のうちその保険契約等に関する権利の支給時の直前において前払保険料として法人税基本通達の取扱いにより資産に計上すべき金額をいい、預け金などで処理した前納保険料の金額、未収の剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額を加算した金額をいう。 改正後の取扱いは令和3年7月1日以後に行う保険契約等に関する権利の支給について適用され、同日前に行った保険契約等に関する権利の支給については、改正前の取扱いによる(改正通達附則)。 ただし、見直しの対象となる保険契約等に関する権利は上記の通り「法人税基本通達9-3-5の2の取扱いの適用を受けるものに限る。」とされており、この法基通9-3-5の2は令和元年の改正通達によって新設され令和元年7月8日以後に締結する保険契約等について適用するとされていることから、同日前に締結した保険契約等は、原則として見直しの対象にならないことになる(詳しくは[こちら]を参照)。 なおパブコメ概要では、「今回の見直しの対象は法人税基本通達9-3-5の2の適用を受ける保険契約等に関する権利としているが、法人税基本通達の他の取扱いにより保険料の一部を前払保険料に計上する『解約返戻率の低い定期保険等』及び『養老保険』などについては、保険商品の設計などを調査したうえで、見直しの要否を検討する」としている。 〈所得税基本通達36-37の新旧対照表〉 (了)

#No. 425(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/06/28
#