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ハラスメント発覚から紛争解決までの企業対応 【第14回】「マタハラの「被害者」と周囲の労働者との調整を図るうえでの留意点」

ハラスメント発覚から紛争解決までの 企 業 対 応 【第14回】 「マタハラの「被害者」と周囲の労働者との調整を図るうえでの留意点」   弁護士 柳田 忍   【Question】 当社のA部署の社員Bは、育児休業から復帰後、短時間勤務制度を利用していますが、当社の経営状態が芳しくないため、A部署の増員はなされておらず、社員Bの育児休業取得・短時間勤務制度利用によりA部署の他の社員の業務負担が増しています。 しかし、社員Bは、他の社員への気遣いを見せることなく、当然のように他の社員に仕事を押しつけて帰宅するため、他の社員から不満が出ています。そこで、社員Bの上司Cが、社員Bに対して、「短時間勤務制度を利用するのは結構なことだけど、君の代わりに君の仕事をしなければならない他の社員にも配慮してほしい」と指導したところ、社員Bから「マタハラだ」との指摘を受けました。 上司Cの発言はマタハラに当たるのでしょうか。 【Answer】 マタハラには該当しない可能性が高いものと思われます。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 1 はじめに 産前産後休業、育児休業や短時間勤務制度等は、法令上、妊娠・出産・育児等を行う労働者に認められた制度であり、要件を満たす労働者は当然にこれを利用することができる。しかし、その一方で、労働者がこれらの制度を利用することによって、当該労働者の業務の穴埋めをさせられることになった労働者から上記のような不満が寄せられることは多く、両者の関係をどのように調整すればよいか、頭を抱えている担当者も少なくないのではないかと思われる。 そこで、本稿においては、妊娠・出産・育児等を行う労働者と周囲の労働者との調整を図るとの観点から、マタニティハラスメント(マタハラ)の定義や指針等について概観する。   2 マタニティハラスメント(マタハラ)とは マタハラとは、一般に、①妊娠・出産・育児休業取得等(以下「妊娠等」という)を理由とする解雇・雇止め・降格・減給等の不利益取扱いや、②職場の上司・同僚からなされる妊娠等を理由とした職場環境を害する言動を指す。 本件で問題となりうるのは②のタイプのマタハラであるが、②のタイプのマタハラには「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」とがあり、具体的な内容については以下のとおりである(厚生労働省「第164回労働政策審議会雇用均等分科会」の資料6「妊娠等を理由とする不利益取扱いについて」参照)。   3 指針について 妊娠・出産・育児等を行う労働者と周囲の労働者との調整を図るとの観点において、指針における以下の記載が参考となる。 (※) 「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針」(平成21年厚生労働省告示第509号)第2.14.(三)ニ抜粋。「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(平成28年厚生労働省告示第312号)4.(4)も同内容。なお、下線は筆者による。 上記によると、使用者が、妊娠・出産・育児等を行う労働者に対して周囲の労働者との調和の意識を持つよう促すことは許されることであり、また、妊娠・出産・育児等を行う労働者と周囲の労働者との調整を図るよう配慮することは使用者の義務であるとも言える。   4 本件について 以上をもとに、上司Cの発言について検討すると、まず、上司Cの発言は解雇その他の不利益取扱いを示唆するものではない。また、社員Bの短時間勤務制度の利用を前提とした発言であり、制度等の利用の請求や制度等の利用を諦めざるを得ない状況をもたらすものとまでは言えないと思われる。更に、上司Cの発言は、社員Bの配慮を希望するものに過ぎず、就業する上で看過できない程度の支障が生じる状況をもたらすものにも該当しないであろう。 よって、上司Cの発言はマタハラには該当しないものと思われる。 ただし、本件でA部署において社員Bの周囲の社員に業務負担が生じているのは、会社がA部署の人員の補充を行わないためであるから、会社としては、社員Bに配慮を求める前に、適切な人員配置を行う等して周囲の社員の業務負担の軽減を図るべきである。 (了)

#No. 419(掲載号)
#柳田 忍
2021/05/13

〔一問一答〕税理士業務に必要な契約の知識 【第17回】「税理士法上の懲戒処分とその具体例」

〔一問一答〕 税理士業務に必要な契約の知識 【第17回】 「税理士法上の懲戒処分とその具体例」   虎ノ門第一法律事務所 弁護士 高橋 弘行   〔質 問〕 税理士にとって、懲戒処分を受けることは最も注意しなければならないことです。税理士法上、税理士に対する懲戒処分は、どのような種類のものがあり、どのような場合に行われることとされているのでしょうか。 また、具体的な事例も教えてください。 〔回 答〕 税理士に対する懲戒処分の種類として、税理士法(以下、「法」といいます)第44条は、(1)税理士業務の禁止、(2)2年以内の税理士業務の停止、及び(3)戒告の3種類を規定しています。 このような懲戒処分は、税理士に対し不利益をもたらす処分ですので、懲戒処分の構成要件である懲戒処分事由は、法第45条及び法第46条において明確に規定されています(法第45条:不真正の税務書類の作成及び脱税相談等をした場合の懲戒、法第46条:一般の懲戒)。 これらの懲戒処分の基準・考え方・類型については、「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方」として財務省告示(平成20年3月31日財務省告示第104号)により定められています。 ◆◆◆◆ 解 説 ◆◆◆◆ 1 懲戒処分の種類 税理士法は、税理士が、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図るべく活動することを期待し、これをその使命として規定(法第1条)するとともに、税理士又は税理士法人でない者は、原則として税理士業務を行ってはならないこととし(法第52条)、税理士業務を独占業務として法的保護を与えている。 このような法的保護が与えられている反面、税理士業務の執行は、一般納税者に対してのみならず、税務行政に対しても重大な影響を与えるものであることから、こうした点を踏まえ、監督上の行政処分として、税理士に対する懲戒処分制度が設けられている。 法第44条は、税理士に対する懲戒処分の種類として、(1)税理士業務の禁止、(2)2年以内の税理士業務の停止、及び(3)戒告の3種類を規定している。 (1) 税理士業務の禁止 税理士業務の禁止は、税理士業務を行ってはならない旨を命ずる処分、すなわち、不作為義務を命ずる処分であり、税理士に対する懲戒処分のうち最も重い処分である。 税理士業務の禁止処分を受けた者は、法第4条第7号の規定により処分を受けた日から3年を経過する日まで税理士となる資格を有しないこととなり、法第26条第1項第4号の規定により税理士登録を抹消されることとなる。 (2) 2年以内の税理士業務の停止 2年以内の税理士業務の停止は、税理士業務を行うことを一定期間やめることを命ずる処分である。 2年以内の税理士業務の停止処分を受けた者は、その停止期間中は税理士業務を行うことができないが、税理士登録は抹消されない。 (3) 戒告 戒告は、本人の将来を戒める旨の申渡しをする処分であり、懲戒処分としては最も軽いものである。 戒告処分を受けた者は、税理士業務あるいは税理士の資格について特に制約を受けないので、引き続き税理士業務を行うことができる。   2 法第45条(不真正の税務書類の作成及び脱税相談等をした場合の懲戒)による懲戒 (1) 定義 財務大臣は、税理士が、故意に、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は法第36条(脱税相談等の禁止)の規定に違反する行為をしたときは、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができることとされている(法第45条第1項)。 この場合の「故意」とは、事実に反し又は反するおそれがあると認識して行うことをいうものとされている。 また、法第36条は、「税理士は、不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき、指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為をしてはならない」と規定し、税理士による脱税相談等を禁止している。 (2) 具体例 ① 脱税相談をした場合 ② 故意に不真正の税務書類の作成をした場合 【A】 税理士自らが仮装行為をし、不真正の申告書を作成した場合 【B】 関与先から真正の事実を知らされていたにもかかわらず、不真正の申告書を作成した場合 【C】 関与先からの依頼を受け、不真正の申告書を作成した場合 【D】 関与先からの依頼はないものの、自ら不真正の申告書を作成した場合   3 法第46条(一般の懲戒)による懲戒 税理士が、上記法第45条に該当する場合を除き、法第33条の2第1項若しくは第2項(計算書類、審査事項等を記載した書面の添付)の規定により添付する書面に虚偽の記載をしたとき、又は税理士法若しくは国税若しくは地方税に関する法令の規定に違反したときは、戒告、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分の対象とされている。 また、法第46条の懲戒事由については、告示において以下のとおり対象となる行為が例示されている。 (了)

#No. 419(掲載号)
#高橋 弘行
2021/05/13

《速報解説》 中小企業庁、経営者の高齢化や新型コロナの影響に対応し「中小M&A推進計画」を取りまとめる~今後5年間に実施すべき官民の取組を示す~

《速報解説》 中小企業庁、経営者の高齢化や新型コロナの影響に対応し 「中小M&A推進計画」を取りまとめる ~今後5年間に実施すべき官民の取組を示す~   公認会計士・税理士 荻窪 輝明   中小企業庁は、2021年4月28日に「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」における検討を踏まえ、中小M&Aを推進するため今後5年間に実施すべき官民の取組を「中小M&A推進計画」として取りまとめた。 本計画は、経営者の高齢化や新型コロナウイルス感染症の影響に対応し、中小企業の貴重な経営資源の散逸を回避するとともに、事業再構築を含めて生産性の向上等を実現するため、中小企業の貴重な経営資源を将来につないでいくことを目的に策定されたものである。   1 中小M&Aの意義 本計画は「経営資源の散逸の回避」、「生産性向上等の実現」、「リスクやコストを抑えた創業」の3つの観点から、中小M&Aを推進する意義を説明している。   2 中小M&A対応の方向性 中小M&Aの実施件数は右肩上がりで増加しており、潜在的に対象となり得る事業者数は約60万者との試算もなされている。よって、中小M&Aは拡大途上にあると考えられ、希望する中小企業が円滑にM&Aを実施できる環境を速やかに整備することが必要である。 しかしながら、M&A支援機関が提供している支援について、案件規模によって内容や地域等に差があることから、中小M&Aを一緒くたに取り扱うのではなく、案件規模に応じて課題を把握し対応するとともに、中小M&Aの推進に向け制度的な課題にも対応していくために、本計画では以下の区分によって対応の方向性が示されている。 ① 小規模・超小規模M&Aの円滑化 (※) 経済産業省「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ概要」より ② 大規模・中規模M&Aの円滑化 (※) 経済産業省「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ概要」より ③ 中小M&Aに関する基盤の構築 (※) 経済産業省「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ概要」より (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 418(掲載号)
#荻窪 輝明
2021/05/11

《速報解説》 会計士協会が「非財務情報の充実と情報の結合性に関する実務を踏まえた考察」を研究資料として公表~情報開示における結合性の必要性と結合性強化のための枠組みの考えを示す~

 《速報解説》 会計士協会が「非財務情報の充実と情報の結合性に 関する実務を踏まえた考察」を研究資料として公表 ~情報開示における結合性の必要性と結合性強化のための枠組みの考えを示す~   公認会計士 阿部 光成     Ⅰ はじめに 2021年4月15日付けで(ホームページ掲載日は2021年4月30日)、日本公認会計士協会は、「非財務情報の充実と情報の結合性に関する実務を踏まえた考察」(会計制度委員会研究資料第6号)を公表した。 近年、非財務情報を含む企業報告の質を高める動きが加速し、非財務情報と財務情報又は非財務情報相互間における開示内容が有機的に結合し、経営者の認識に基づいた一貫した企業報告に対する投資家の期待の高まりがみられる。 そこで、開示される情報間の「結合性」に焦点を当て、結合性が求められる要因と求められる結合性の側面を考察し、研究資料として公表するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 研究資料は、目次を含めて70ページに及ぶものであるので、以下では主な内容について解説する。 1 情報開示における結合性の必要性 次の考えが示されている。 2 結合性強化のための枠組み 結合性を高めるべき視点として、次のことが記載されている。 味の素、カルビー、ユニリーバ及びBASFの4社について、上記①から④の視点から分析を行っている。 結合性に関する実務上のヒントも記載されている。 (了)

#No. 418(掲載号)
#阿部 光成
2021/05/07

《速報解説》 会計士協会から「合意された手続業務に関する実務指針」の改正(公開草案)が公表される~実施結果報告書における独立性に関する記載、見出しの追加、配布及び利用制限等について言及~

《速報解説》 会計士協会から「合意された手続業務に関する 実務指針」の改正(公開草案)が公表される ~実施結果報告書における独立性に関する記載、見出しの追加、配布及び利用制限等について言及~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年4月30日、日本公認会計士協会は、「専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」の改正」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、国際監査・保証基準審議会(IAASB)「国際関連サービス基準(ISRS)4400「Agreed-Upon Procedures Engagements」」(2020年4月3日)の公表に伴うものである。 意見募集期間は2021年6月30日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 合意された手続業務では、業務依頼者が実施される手続を業務の目的に照らして適切であると認めた場合に、業務実施者が、業務実施者と業務依頼者が合意した手続を実施する(6項)。 合意された手続業務は、監査業務、レビュー業務又は監査及びレビュー業務以外の保証業務ではない(8項)。 合意された手続業務では、いかなる場合でも、業務実施者が意見又は保証の結論を表明することを目的として、証拠を入手することはない(8項)。 主な改正点は次のとおりである。 1 合意された手続業務における職業的専門家としての判断の明瞭化 業務実施者は、業務の状況を考慮して、合意された手続業務の契約の新規の締結及び更新、並びに実施及び報告において職業的専門家としての判断を行使しなければならない(19項)。 2 独立性に関する事項 独立性が要求されていない合意された手続業務についても、実施結果報告書において独立性に関する記載を行う(独立性の保持が要求されていない旨の記載。33項(12))。 3 「合意された手続実施結果報告書の目的」に関する見出しの追加 合意された手続業務(契約)の目的の明瞭化のため、改正版専門実4400では、実施結果報告書に「合意された手続実施結果報告書の目的」に関する見出しが追加されている。 4 実施結果報告書の配布及び利用制限 改正版専門実4400では、関係者のみに実施結果報告書を配布及び利用する旨の要求事項はない。 配布及び利用制限については、業務実施者の判断に基づいて決定する。   Ⅲ 適用時期等 2022年1月1日以降に契約を締結する合意された手続業務に適用する。 (了)

#No. 418(掲載号)
#阿部 光成
2021/05/07

《速報解説》 会計士協会、「監査及びレビュー等の契約書の作成例」(法規・制度委員会研究報告第1号)の改正を公表~リモートワーク定着化を考慮した対応、「その他の記載内容」に関する規定の新設等行う~

《速報解説》 会計士協会、「監査及びレビュー等の契約書の作成例」 (法規・制度委員会研究報告第1号)の改正を公表 ~リモートワーク定着化を考慮した対応、「その他の記載内容」に関する規定の新設等行う~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年3月25日付けで(ホームページ掲載日は2021年4月30日)、日本公認会計士協会は、「監査及びレビュー等の契約書の作成例」(法規・制度委員会研究報告第1号)の改正を公表した。 これは、監査基準委員会報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」(2021年1月14日)、リモートワークの定着化を考慮した対応などに関連して改正するものである。 なお、2021年1月召集の第204回通常国会に提出されている「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」を構成する公認会計士法において、監査報告書の電子署名が盛り込まれているが、当該改正の対応については、法案成立後に行うとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 1 監査基準委員会報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」に伴う対応 監査基準委員会報告書 720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」に対応して、監査約款に、「その他の記載内容」(監査した財務諸表等を含む開示書類のうち当該財務諸表等と監査報告書とを除いた部分の記載内容)の検討に関する規定を設けている。 2 リモートワークの定着化を考慮した対応 リモートワークの定着化によって、各種契約書をはじめとした脱押印に対応し、電子契約にも考慮した文言の見直しを行っている。 例えば、「電子契約の場合は、電子署名等の、記名押印に相当する電磁的な処理操作」と記載されている。 3 無限責任監査法人の指定社員の通知 2021年1月召集の第204回通常国会において、無限責任監査法人の指定社員の通知について、被監査会社の承諾を得た場合に電磁的方法によることを可能とする改正法案が提出されている(「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」8条による公認会計士法34条の10の4第7項の追加)。 同改正法が成立・施行された場合は、監査契約上で、指定社員の通知を電磁的方法により行うことについて改正法に基づく被監査会社(委嘱者)の承諾を得ることが考えられる。 4 監査手法・監査ツールの開発や改良に際して秘密情報を利用する場合を想定した監査約款の「守秘義務」規定の見直し 監査法人(受嘱者)が AI・デジタル技術を活用した監査手法・監査ツールを利用する場合、当該監査手法・監査ツールの開発や改良に際して被監査会社(委嘱者)の秘密情報を利用することがありうる(AIによる機械学習での被監査会社のデータ利用など)。 このため、監査手法・監査ツールの開発・改良を目的として入手した秘密情報の利用目的を明確化するために 、「Ⅲ 監査及び四半期レビュー契約書の作成例」 「2.契約書の記載内容」の「(13)守秘義務その他受領情報の取扱い」に、新たに⑧として記載例を追記している。 (了)

#No. 418(掲載号)
#阿部 光成
2021/05/07

プロフェッションジャーナル No.418が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年5月6日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.418を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/05/06

monthly TAX views -No.100-「消費税電子インボイスと事業者の生産性向上に向けた官民の取組み」

monthly TAX views -No.100- 「消費税電子インボイスと事業者の生産性向上に向けた官民の取組み」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   筆者は2014年3月、欧州諸国のインボイス導入状況等の調査を目的に、英国やフランスなど各国の税制当局や会計事務所を訪問した。そこで見たのは、2013年1月のEU指令以降、急速に普及した消費税電子インボイスの状況であった。 電子インボイスは、VAT支払いのためだけでなく、調達や受発注など一連の証票と連動し、会計処理や税務処理、さらには調達システムの効率化に役立つ。そして、それらのサービスを全般的に提供する、オラクルに代表される一大産業群の存在がある。 *  *  * わが国でも2023年10月から、適格請求書等保存方式、つまり欧州型インボイス制度が開始する。従来の請求書などに「登録番号」「適用税率」「税率ごとの消費税額」の記載を義務付け、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝える機能がある。 適格請求書(インボイス)を交付することができるのは適格請求書発行事業者(登録事業者)のみで、本年10月1日から登録事業者の申請受付が開始される。制度開始から登録事業者となるためには、23年3月末までに申請を行う必要がある。 売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、適格請求書(インボイス)を交付しなければならず、自ら適格請求書(インボイス)の写しを保存しておく必要がある。買手は仕入税額控除の適用を受けるために、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けた適格請求書(インボイス)の保存等が必要となる。 *  *  * この制度が導入されたのは、複数税率制度の下で、仕入税額控除を正確かつ効率的に行うことを可能にするためであるが、適格請求書(インボイス)を発行することにより、点々流通する過程で取引の相手方に価格転嫁がスムーズに行えるようになるというメリットがある。 わが国の事業者にとっては、インボイスの電子化を進め、バックオフィスの業務全体をデジタル化により効率的にして、業務全体の生産性の向上を図るようにしていくことが重要ではないか。 そのための取組みが、「電子インボイス推進協議会(EIPA)」(代表幹事法人:弥生株式会社)において始まっており、SAPジャパン、TKC、弥生などが参加し、電子インボイスの標準仕様策定等に向けた協議が行われている。 ホームページを見ると、「中小・小規模事業者から大企業に至るまで幅広く、容易に、かつ低コストで利用でき、加えてグローバルな取引にも対応できる仕組みとするために、準拠する標準規格としてPeppolを選定し、日本の法令や商慣習などに対応した『日本標準仕様』を策定することを決定した」と書かれている。 また、平井デジタル改革担当大臣も、「国としても一緒にやらせていただきたい。Peppolで進めていくことは大賛成」と前向きな姿勢を示し、「受発注から請求、会計、税務処理と、ものすごく生産性が上がる可能性がある。ちょうど(来年創設される)デジタル庁の初仕事になるので、フラッグシッププロジェクトとしてやらせていただく」と話したことが記されている。 *  *  * デジタル・ガバメント実行計画(令和2年12月25日 閣議決定)を見ると、「8.4 事業者のバックオフィス業務の効率化のための請求データ標準化」の項で、以下のように記載されている。 「デジタル敗戦」にならないためにも、電子インボイスの導入、事務効率の向上に向けて検討を急ぐ必要があるようだ。 (了)

#No. 418(掲載号)
#森信 茂樹
2021/05/06

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例29】「ガソリンスタンドに対する売掛金の減額処理の寄附金該当性」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例29】 「ガソリンスタンドに対する売掛金の減額処理の寄附金該当性」   国際医療福祉大学大学院教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、関西で石油製品卸売業を営むA株式会社で経理部長をしております。わが社が扱っている石油製品は主としてガソリンや灯油などの民生用エネルギーであり、特約店・販売店と呼ばれる石油販売業者を通じて一般消費者に販売されます。 わが国においては、少子高齢化の進行や人口減少、若者の自動車離れといった経済構造の変動に加え、昨年来の新型コロナウイルス感染症の蔓延という現象も相まって、わが社が扱っているガソリンや灯油の需要が低迷しており、その結果として、わが社の取引先である中小規模のガソリンスタンドの多くが経営危機に陥っております。そのような状況下において、取引先のガソリンスタンドの中には、わが社に対する債務の支払いが長期間滞っているばかりでなく、後継者難等で将来的にその経営状況が改善する見込みが極めて薄い特約店・販売店も存在することから、そのような特約店については、事業の継続を断念してもらい、代わりに廃業に伴い発生する様々な資金の援助を行うようにして、わが社が被る負担を最小限に留める方策を採っております。 ところが先日受けた税務調査で、経営危機に陥っている特約店等に対する売掛金について減額処理を行ったものにつき、回収可能性が消滅したわけではない当該売掛金を一方的に減額処理したとするわが社の税務処理が問題視され、単純な費用ではなく寄附金に該当することから、全額損金に算入することはできない旨言い渡されました。 わが社が売掛金を減額処理した特約店は、いずれも深刻な経営難に陥っており、経営者が高齢化して後継者も不在であることから、将来的にも経営が改善する見込みはないのであり、そのような特約店との取引をズルズル継続することは、更なる負担増につながることが懸念されるところです。そのような判断に基づき、特約店との話し合いにより行った廃業要請に伴う売掛金の減額処理は、わが社の事業遂行上、真にやむを得ない措置であり、税務上も寄附金に該当する余地はないものと理解しております。わが社の判断に問題がないか、アドバイスをお願いします。 【A】 現在及び将来予想される石油業界の厳しい経済環境を踏まえ、主としてA社側の経営遂行上の必要性から、経営状況が思わしくなく後継者にも恵まれないことから将来性が極めて乏しい取引先である特約店等に対して、積極的に廃業を促しそのための資金援助の一環として売掛金を減額処理する今回のA社の経理及び税務処理は、そのような対応をしなければ今後さらに大きな損失を被ることが予想されるなど、客観的にみて経済合理性を有することから、その費用につき損金に計上した金額は、寄附金には該当しないものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 石油製品の流通 石油製品の流通に関しては、一般に、主として重油・ナフサなどの産業用エネルギーに関し、出光興産やENEOSといった石油元売会社(又は総合商社)から直接需要家に販売されるいわゆる「直売方式」と、ガソリンや灯油などの民生用エネルギーに関し、特約店・販売店と呼ばれる石油販売業者を通じて需要家(一般消費者)に販売される「小売方式」とに分類される。 後者の小売方式の場合、特約店・販売店は石油元売会社の系列で元売会社のブランドマーク(ENEOS等)を使用するケースと、元売会社とは異なる独自ブランド(JA、ホームセンター等)によるサービスステーションを運営するケースとがある。 〇 石油製品の流通形態 〈直売方式〉・・・主に重油、ナフサなど 〈小売方式〉・・・主にガソリン、灯油など なお、経済産業省によれば、主要な石油製品の今後の需要見通しは、以下の表の通りとなっており、今後の需要はどの製品も概ね右肩下がりの状況が続くものと見込まれている。 〇 主要な石油製品需要見通し ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 2017年度は実績、2018年度は実績見込、2019年以後の年度は見通し。 (出典) 経済産業省「2019~2023年度石油製品需要見通し(案)」(平成31年3月29日)を元に筆者作成。   (2) 売掛金の減額に係る寄附金該当性 本件は、上記(1)の流通形態のうち、ガソリン・灯油などの販売を行う小売方式のケースで、石油製品卸売業者であるA社がその取引先である特約店・販売店に対して有している売掛金につき、将来それらの特約店等の経営が好転する見込みが薄いとして、当該売掛金を減額処理した場合、当該減額処理により発生する費用が損金に算入されるのか、それとも損金算入限度額が設定されている寄附金に該当するのかという点が問題となっている。 本件については、A社がその取引先である特約店・販売店に対して行った売掛金の減額処理が、法人税基本通達9-4-1にいう「損失負担等につき相当な理由があると認められる」場合には、当該減額処理の金額は寄附金の額に該当しないこととなる。法人税基本通達9-4-1の本文では、子会社等を整理する場合において損失負担等をしたケースで、それをしなければ今後より大きな損失を蒙ることになることが明らかであると認められるため、やむを得ずそれを行ったときには寄附金には該当しないとしているが、ここでいう「子会社等」には、親子会社のような資本関係を有するケースのみならず、取引関係、人的関係、資本関係等において事業関連性を有する者が含まれる旨が、上記通達の注書きにおいて明らかにされている。したがって、本件のような取引先に対して行った売掛金の減額処理も、当該通達の適用対象となり得る。 裁判例においても、関連会社に対する売上値引きの寄附金該当性(経済的利益の無償の供与)が争われた事例で、裁判所は、債権の回収が不能であるためこれを放棄する場合、それから発生する損失を負担しなければより大きな損失を被ることが明らかであるため、やむを得ず負担を行う場合など、その経済的利益の供与が十分に首肯しうる合理的な理由がある場合には、当該経済的利益の供与は寄附金には当たらないとされている(東京高裁平成4年9月24日判決・行裁例集43巻8=9号1181頁(TAINSコード:Z192-6972)参照、なお争われた事例については寄附金とされている)。   (3) 特約店に対する売掛金の減額処理の損金性が争われた事例 本件と同様に、特約店に対する売掛金の減額処理の損金性ないし寄附金該当性が争われた裁決事例(国税不服審判所平成11年6月30日裁決(TAINSコード:J57-3-24))があるので、それを以下で確認しておきたい。 ① 事例の概要 原処分庁は、石油製品卸売業を営む法人である請求人がその特約店であるK社、L社、M社及びN社の4社に対し、平成9年3月31日に商品売上高及び消費税相当額の売掛金37,649,767円を減額した処理について、法人税法第37条(寄附金の損金不算入)第6項(本稿執筆現在は第7項)に規定する寄附金に該当すると認定し、法人税法施行令第73条(寄附金の損金算入限度額)第1項の規定により、寄附金の損金算入限度額の再計算を行い、損金算入限度額を超える37,151,895円は本件事業年度の損金の額に算入できないとして、本件法人税の更正処分を行った。 しかしながら、本件売掛金の減額処理は、請求人の経営改善策の一方策として請求人の将来の損失を少なくするためのやむを得ない事情に基づき処理したものであり、このことは、事業遂行上、真にやむを得ない費用であり、経済的利益の無償の供与の性格のものではなく、原処分庁は本件規定の適用を誤っているので、請求人がその取消しを求めたものである。 請求人が特約店に対する売掛金の減額処理を行った背景として、請求人は以下の通り説明している。 なお、審判所は本件取引に関連し、以下の事実を認定している。 ② 本件の争点 請求人がその特約店に対し、平成9年3月31日に売掛金の減額処理を行ったことが、法人税法に規定される寄附金に該当するか否か。 ③ 審判所の判断 ④ 本裁決事例からいえること 本件は、経営が悪化した取引先である特約店に対する支援の方法として、売掛金の減額処理の方法を採ったものであるが、これは実質的には債権放棄と認められる点が審判所により指摘されており、妥当な判断と考えられる。したがって本件は、経営が悪化した取引先である特約店に対する債権放棄が、経営遂行上、真にやむを得ない費用であり、客観的にみて経済的合理性を有し、社会通念上も妥当視される処理と認められるのであれば、法人税法上寄附金には該当せず、損金処理が認められることとなる。 本件において、審判所は、「経営遂行上、真にやむを得ない費用であり、客観的にみて経済的合理性を有し、社会通念上も妥当視される処理と認められる」かどうかを判断するに当たっては、「社会、経済環境をも十分に配慮した検討がなされるべきである」旨を指摘している。本件が争われた時期(平成9年3月期)よりも現在の方が石油業界を取り巻く環境はより厳しくなっているものともいえようが、本件により審判所が示した判断基準は、今後の実務の参考になるものと考えられる。   (4) 本件へのあてはめ 現在及び将来予想される石油業界の厳しい経済環境を踏まえ、主としてA社側の経営遂行上の必要性から、経営状況が思わしくなく後継者にも恵まれないことから将来性が極めて乏しい取引先である特約店等に対して、積極的に廃業を促しそのための資金援助の一環として売掛金を減額処理する今回のA社の経理及び税務処理は、そのような対応をしなければ、今後A社自身がさらに大きな損失を被ることが予想されるなど、客観的にみて経済合理性を有するといえる。 したがって、A社が売掛金の減額処理に伴う費用につき損金に計上した金額は、寄附金には該当しないものと考えられる。 (了)

#No. 418(掲載号)
#安部 和彦
2021/05/06
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