検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10909 件 / 3091 ~ 3100 件目を表示

遺贈寄付の課税関係と実務上のポイント 【第7回】「不動産や株式等を遺贈寄付した場合の取扱い」

遺贈寄付の課税関係と実務上のポイント 【第7回】 「不動産や株式等を遺贈寄付した場合の取扱い」   税理士・中小企業診断士・行政書士 脇坂 誠也   前回までは、現預金を遺贈寄付した場合の取扱いについて解説をしたが、今回から、不動産や株式など(以下「不動産等」とする)の現物資産を遺贈寄付した場合の課税上の取扱いについて解説していくことにする。 遺贈寄付は、現預金の寄付であれば通常の寄付とそれほど大きな違いがあるわけではなく、実務的な難易度はそれほど高くないが、不動産等の現物資産を寄付する場合には、受遺団体の手続きも、寄付者の課税上の取扱いも複雑になり、難易度が高まる。 今回は、現物資産の寄付の相続税、所得税の取扱いについて説明した後、現物資産の寄付で大きな問題になるみなし譲渡所得税について説明することにする。   1 現物資産を寄付する場合の相続税の取扱い 現物資産を寄付する場合の相続税の取扱いは、現預金の寄付と同じである。 (1) 遺言による寄付 遺言で非営利団体に寄付をする場合には、寄付先が、特定公益増進法人や認定NPO法人などの税制優遇団体であるか、一般社団法人や一般財団法人、認定を受けていないNPO法人など税制優遇団体でないかに関わらず、原則として相続税は課税されない。法人は原則として相続税の納税義務者にならないからである。 ただし、遺贈により、遺贈をした者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるときについては、法人を個人とみなして、相続税が課税される。 つまり、遺言により不動産等を寄付した場合には、その寄付が租税回避行為とされない限りは、その寄付をした財産に相続税は課税されない。 (2) 相続財産の寄付 相続財産の寄付は、原則として相続人に相続税が課税されるが、相続又は遺贈により取得した財産を相続税の申告期限までに国、地方公共団体、特定の公益法人等に寄付をしている場合には、相続税は非課税になる(措法70①)。 ただし、寄付により相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるときには、法人を個人とみなして相続税が課税される。 つまり、相続又は遺贈により取得した不動産等を相続税の申告期限までに国や地方公共団体、特定の公益法人等に寄付をした場合には、寄付をした財産に相続税はかからない。   2 現物資産を寄付する場合の所得税の取扱い (1) 遺言による寄付 遺言で不動産等を寄付した場合で、その寄付をした不動産等に含み益がある場合には、みなし譲渡所得税が課税される場合がある。遺言による寄付の場合には、みなし譲渡所得税は、被相続人の準確定申告で申告することになる。 ただし、これらの財産を公益法人等に寄付をした場合に、その寄付が一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときは、所得税を非課税とする特例がある(措法40)。 (2) 相続財産の寄付 相続人が相続により取得した財産を寄付した場合で、その寄付をした不動産等に含み益がある場合には、みなし譲渡所得税が課税される場合がある。相続財産の寄付の場合には、みなし譲渡所得税は、相続人の確定申告で申告することになる。 ただし、一定の要件を満たす場合に所得税が非課税になることは遺言による寄付と同様である。   3 みなし譲渡所得税 (1) みなし譲渡所得税とは みなし譲渡所得税とは、個人がその有する資産を法人に贈与若しくは著しく低い価額で譲渡した場合に、その贈与又は譲渡があった時に、その時における時価で譲渡があったものとみなして所得税を課税するという制度である(所法59①)。 生前寄付あるいは遺贈寄付で、非営利団体に不動産等を寄付する場合に、その寄付をした資産に含み益があると、みなし譲渡所得税が課税される場合がある。 みなし譲渡所得税が課税される税率は、所得税が15%(+復興特別所得税0.315%)、住民税が5%である。ただし、遺言による寄付であれば、住民税は、亡くなった年は課税されないので、所得税の15.315%だけが課税される。 《みなし譲渡所得税の概要》 ※遺言による寄付の場合には住民税は課税されない。 (2) みなし譲渡所得税の納税義務者 みなし譲渡所得税の趣旨は、贈与の時までの年々の値上り益(キャピタルゲイン)は、譲渡した人に帰属するものであるから、資産がその所有者から離れるときには、その時点でキャピタルゲイン課税の清算をすべきであると考えるからである。 したがって、みなし譲渡所得税は寄付者が負担することになる。そのため、相続人による相続財産の寄付であれば、相続人が納税義務者となる。一方で、遺言による寄付の場合はどうであろうか。遺言による寄付であれば、寄付者はすでに死亡している。 遺言による寄付の場合には、包括遺贈の場合には受遺団体が、特定遺贈の場合には相続人が負担することになる。 包括遺贈の場合には、遺贈を受けた受遺団体は、相続人と同一の権利義務を有する。したがって、含み益のある不動産等の寄付を受けて、その不動産等にみなし譲渡課税が発生すれば、その税負担は、受遺団体が引き継ぐことになる。 一方、特定遺贈の場合には、消極財産は特定遺贈の目的となっていない限り承継しないので、みなし譲渡所得税は、受遺団体には承継されず、相続人が負担することになる(通法5①)。 包括遺贈で受遺団体が財産を取得した場合に、その財産を売却できればいいが、売却できないとすると、その税額を受遺団体が負担しなければならず、「その財源をどうするのか」という問題が出てくる。そのため、みなし譲渡所得税を支払うことができる預貯金も寄付をしないと、受遺団体としても受け取ることができない。 また、特定遺贈の場合には、受遺団体は所得税を負担せず、相続人がみなし譲渡所得税を全額負担することになる。相続人の立場としては、不動産等を被相続人の遺志で法人に遺贈することは許容できる場合でも、その分の所得税まで負担するということは許容できないケースもあり、トラブルが発生する可能性が高い。 このような問題があるため、現物資産の寄付については事前に対策を講じておく必要があるのである。 次回以降、どのような対策が考えられるのかを見ていくことにする。   (了)

#No. 455(掲載号)
#脇坂 誠也
2022/02/03

〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第15回】「外国関係会社の租税負担割合の算定における外国法人税の範囲」

〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第15回】 「外国関係会社の租税負担割合の算定における外国法人税の範囲」   公認会計士・税理士 霞 晴久   〔Q〕 外国関係会社の租税負担割合の算定における外国法人税の範囲は、どのように規定されているのでしょうか。 〔A〕 外国税額控除(法法69)の対象となる外国法人税をいうと規定されています。 ●●●〔解説〕●●● 1 外国関係会社の租税負担割合 (1) 概要 平成29年度税制改正前の外国子会社合算税制では、適用の有無をその入口で判断する、いわゆる「トリガー税率」が設けられていた(※1)が、同改正では、租税回避リスクを、改正前の外国子会社の租税負担割合により把握する制度から、所得や事業の内容によって把握する制度に改められることとされ、トリガー税率は廃止された(※2)。 (※1) 租税負担割合が20%以上の場合には、合算制度の適用対象となる「特定外国子会社等」に該当しないとされていた(旧措法66の6①)。 (※2) 財務省『平成29年度税制改正の解説』689頁参照。 しかしながら、外国関係会社の判定に際し、改正前の制度との継続性を踏まえつつ、また企業の事務負担を軽減する観点から、特定外国関係会社にあっては租税負担割合が30%以上、対象外国関係会社にあっては同割合が20%以上である場合には、会社単位の合算課税の適用が免除されることとされた(措法66の6⑤)。 (2) 租税負担割合算定上の外国法人税 外国子会社合算税制における租税負担割合は、外国関係会社の各事業年度の所得に対して課される租税の額を当該所得の金額で除して計算した割合とされる(措法66の6⑤一、措令39の17の2①)。この割合は分数式で示されるが、その分子については、その本店所在地国又は本店所在地国以外の国若しくは地域において課される外国法人税の額と規定されている(措令39の17の2②二)(分母については省略)。ここでいう外国法人税とは、租税特別措置法施行令39条の14の3第8項5号イで、法人税法69条1項《外国税額の控除》に規定する外国法人税をいうとされている。 外国子会社合算税制における租税負担割合の計算において、外国法人税該当性について争われたのが次の事案である(以下、引用する法令等はいずれも当時のもの)。   2 過去の裁判例 《ガーンジー島事件最高裁一小平成21年12月3日判決》(※3) (※3) 平成20年(行ヒ)第43号、TAINSコード:Z259-11342。 (1) 事案の概要 本件は、Y(被告・被控訴人・被上告人)が、損害保険業を営む内国法人であるX(原告・控訴人・上告人)(※4)の本件各事業年度の法人税について、Xがチャネル諸島のガーンジーにおいて設立した子会社であるBは租税特別措置法66条の6第1項に規定する「特定外国子会社等」に該当するとして、その未処分所得の金額のうち所定の金額をXの所得の金額の計算上益金の額に算入して更正処分等をし、また、別途、Xからの更正の請求に対して更正をすべき理由がない旨の通知をしたため、Xが、Bは特定外国子会社等に該当しないとしてこれらの処分(本件各処分等)の取消しを求めた事案である。 (※4) 損害保険ジャパン株式会社。 Bは、Xが自ら又はグループ会社のリスクを専門に引き受けさせるために、ガーンジーにおいて設立されたキャプティブ保険会社である。Bは、現地の税務当局に対し、平成11年から同14年までの各事業年度につき、いずれも、適用期間を1年間とし適用税率を26%(※5)とする国際課税資格(下記で詳述)の申請をし、税務当局からこれを承認する資格証明書の発行を受け、所得税(本件外国税)を納付した。 (※5) 当時の我が国外国子会社合算税制のトリガー税率25%を意識したものであることが窺える。 (2) 認定事実(ガーンジー島における課税関係について) ガーンジーに本店を有する法人は、事業年度(暦年)の全所得を課税標準として20%の標準税率により所得税を課される(標準税率課税)。一方、税務当局は、所定の要件を満たす団体から法令で定められた申請料を納付して免税の申請がされたときは、これを免税とすることができる。また、所定の要件を満たす保険業者は、所定の所得のみを課税標準として、当該所得の金額に応じて段階的に異なる税率により所得税を課されること(所得の金額が一定の金額に達するまでは20%の税率であるが、それを超えると、超えた部分についてはこれより著しく低い税率が適用され、しかも、金額が増えるにつれて段階的にその税率が下がっていくという仕組みである。以下、この課税を「段階税率課税」という)を選択することができる。さらに、所定の要件を満たす法人は、申請により、「国際課税資格」という税制上の資格を取得することができる。国際課税資格を取得した法人(国際課税法人)の所得に対して適用される税率は、当該法人が、0%を上回り30%までの間で申請し、税務当局により承認された税率となる。 (3) 第一審及び控訴審の判断 本件の第一審(※6)及び控訴審(※7)は、次の①②から以下のように判示した。 (※6) 東京地裁平成18年9月5日判決(平成17年(行ウ)第69号、TAINSコード:Z256-10495)。 (※7) 東京高裁平成19年10月25日判決(平成18年(行コ)第252号、TAINSコード:Z257-10802)。 (4) 最高裁の判断 上記(3)の判断に対し、最高裁は、「本件外国税は、その税率が納税者と税務当局との合意により決定されるなど、納税者の裁量が広いものではあるが、その税率の決定については飽くまで税務当局の承認が必要なものとされているのであって、納税者の選択した税率がそのまま適用税率になるものとされているわけではない。また、ガーンジーにおいて、所定の要件を満たす団体が免税の申請をした場合(略)に、常にそれが認められるという事実は確定されていない。したがって、Bは、その任意の選択により税負担を免れることができたのにあえて国際課税資格による課税を選択したということもできない。むしろ、(略)Bは、税率26%の本件外国税を納付することによって実質的にみても本件外国税に相当する税を現に負担しており、これを免れるすべはなくなっているものというべきである(※8)。そうすると、本件外国税を同項(筆者注:外国法人税に含まれないとする法人税法施行令141条3項)1号又は2号に規定する税に類する税ということもできない」とし、本件外国税は、「外国法人税に該当することを否定することはできない」と判示したことで、Xの逆転勝訴となった。 (※8) 本件最高裁判決には、上告受理申立て理由書として、志賀櫻弁護士の鑑定意見書が添付されており、そこでは、「国際租税法においては、国際的に課税権を認められた主権国家ないし管轄地域の政府(なお、英国王室直轄の王領であるガーンジーにあるガーンジー政府はこれに該当する)が、その法令によって『税』としているものは税である、ということは確立されており、日本国が、これを『税ではない』と見なすことは、国際慣習法に違反すること、アークリー社(B)がガーンジー政府に対して納付した税は、国際租税法の観点から見て法人所得税に該当することは明らかであって、これに反する解釈は、やはり国際慣習法に違反する」と述べ、原審判決が憲法98条2項《条約及び国際法規の遵守》に違反すると論じており、本鑑定書が、最高裁の最終判断に強く影響したものと思われる。   (了)

#No. 455(掲載号)
#霞 晴久
2022/02/03

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第71回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第71回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也   (6) 棚卸資産の引渡しの日の判定(法人税基本通達2-1-2) ア 概要 棚卸資産の販売に係る収益の額は、原則として、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入する(法法22、22の2①)。平成30年度改正前は、かかる引渡基準を明定する条文は存在しなかったが、旧法人税基本通達2-1-1《棚卸資産の販売による収益の帰属の時期》は、「棚卸資産の販売による収益の額は、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入する」と定めていた。 法人税基本通達2-1-2は、平成30年度改正後における棚卸資産の引渡しの日の具体的な判定について、次のように定めている。旧通達2-1-2も並べておく。比較しやすいように、適宜、改行し又は下線を引いている。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 引渡しの日の判定基準は「棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日による」としており、新旧通達で変わっていない。 その具体例に関する記述を見ると、新通達では旧通達と比べて、「船積みをした日」、「相手方に着荷した日」が追加された一方、「検針等により販売数量を確認した日」が削除されていることがわかる。 引渡しの日の判定基準は、棚卸資産の種類等に応じて柔軟かつ弾力的に収益計上基準の選択適用をできるような定めになっており、かかる取扱いの法的根拠はどこにあるのか、という問題がある。この点は色々と議論のあるところであるが、法人税法22条の2第1項の引渡しという語そのものに柔軟性・弾力性がビルトインされているという解釈論を候補として示しておく(泉絢也「法人税法と収益認識会計基準(1)-収益の計上時期を決する諸原則(引渡基準と権利確定主義・無条件請求権説・実現主義・管理支配基準)-」千葉商大論叢58巻3号19頁以下参照)。 他方、法人税法22条の2第2項が定める近接日の判定基準について、法人税基本通達は具体例を示すにとどまる(本連載第22回参照)。 通達の立案担当者は、「近接する日の幅とはどの程度なのかということを聞かれたりするのですけれど、取引がさまざまある中で、どこまでだったら近接する日で、どこまでだったら近接する日ではないのかというのを示すのが非常に難しかったので、その幅は示せておりません。そこは個別に判断していくしかないと思っております。ただ、今までやってきた会計処理が認められなくなるというようなことは考えておらず、従来の取扱いは改正後も引き続き適用できます。」と説明している(髙橋正朗「平成30年度法人税基本通達等の一部改正について」租税研究832号19~20頁)。 イ 本通達の趣旨 本通達の趣旨は要旨次のとおりである(趣旨説明39頁以下)。 《企業会計の状況》 まず、企業会計の状況である。 企業会計原則においては、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」(企業会計原則第二の三B)とされ、この「実現」に関する会計上の証拠は、原則として企業の生産する財貨又は役務が外部に販売されたという事実に求められるので、いわゆる販売基準によって収益計上すべきものとされている。 販売基準による収益の発生の時点は、財貨又は役務の移転に対する現金又は現金等価物の取得の時点であるとされているが、実務上は、出荷基準、引渡基準又は検収基準等が採用されている。 収益認識会計基準においては、企業は約束した財又はサービス(資産)を顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、収益を認識することとされ、また、資産が移転するのは、顧客が当該資産に対する支配を獲得した時又は獲得するにつれてであるとされている(基準35)。 資産に対する支配とは、当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力(他の企業が資産の使用を指図して資産から便益を享受することを妨げる能力を含む)をいうこととされている(基準37)。 支配の移転を検討する際には、例えば、企業が顧客に提供した資産に関する対価を収受する現在の権利を有していること、顧客が資産に対する法的所有権を有していること、企業が資産の物理的占有を移転したこと、顧客が資産の所有に伴う重大なリスクを負い、経済価値を享受していること、顧客が資産を検収したことといった指標を考慮することとされている(基準40)。 したがって、顧客が資産を検収したことの指標に従えば、検収日を履行義務の充足の時とする向きもあろうが、商品又は製品の国内の販売において、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時(例えば顧客による検収時)までの期間が通常の期間である場合には、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することができることとされている。 この場合の商品等の出荷時から商品等の支配が顧客に移転される時までの期間が通常の期間である場合とは、当該期間が国内における出荷及び配送に要する日数に照らして取引慣行ごとに合理的と考えられる日数である場合をいう(指針98)。 これは、これまで我が国で行われてきた実務等に配慮すべき項目がある場合には、比較可能性を損なわせない範囲で代替的な取扱いを追加するという開発方針に基づいて手当されたものである(基準97)。 《法人税法の状況》 次に法人税法の状況である。 平成30年度改正前の法人税法においては、商品の販売等に係る収益の帰属の時期については明確な規定は設けられていなかったが、企業会計原則においていわゆる販売基準によって収益計上すべきものとされていること及び判例においても販売基準により収益計上することが支持されており、これと同旨のものとして、その引渡しの日の属する事業年度の益金の額に算入することとしていた(旧法基通2-1-1)。 具体的に棚卸資産の引渡しの日がいつであるかについては、広く企業会計上も採用されている出荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日等を例示し、当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるものとしていた(旧法基通2-1-2)。 平成30年度改正において、収益認識会計基準の導入を契機として、収益の認識時期について、法令上通則的な規定が設けられ、資産の引渡し又は役務の提供の時点を収益認識の原則的な時点とする従来の考え方が踏襲された。 資産の販売等による収益の額は、目的物の引渡し又は役務提供の日の属する事業年度の益金の額に算入することが原則とされた(法法22の2①)。 また、従来の取扱いを踏まえ、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従ってその資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供に係る契約の効力が生ずる日その他の引渡し又は提供の日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合には、その経理した事業年度の益金の額に算入することが明確化された(法法22の2②)。 このため、棚卸資産の販売による収益の額は、その引渡しの日の属する事業年度の益金の額に算入することとする旧通達2-1-1《棚卸資産の販売による収益の帰属の時期》の取扱いを削除することとした。 また、従来の取引慣行からしても課税に最も適する時期と認められる「目的物の引渡しの日」については、旧通達2-1-2の前段の取扱いを維持することとした。加えて、従来から会計慣行として認められる船積日基準や、収益認識会計基準適用指針において明示された着荷基準についても引渡しの日の例示としてふさわしいと考えられるため、平成30年度改正を契機として追加することとした。 ウ 法人税法22条の2第1項の引渡概念との関係 旧通達で引渡基準の範疇に含めていた検針日基準を除外する本通達のような解釈ないし取扱いが法人税法22条の2第1項の解釈として合理的であるとすれば、少なくとも、同項は、これまで旧通達が採用してきた引渡概念ないし引渡基準をそのまま法律化したものではないということになる。 検針日基準について、改正後の通達2-1-4で法人税法22条の2第2項の近接日基準として認められていることも考慮すると、同通達2-1-2の背後には、「検針」のように引渡し本来の語義(差し当たり、民法上の引渡概念を想定)からの乖離が許容値を超えるようなものを引き続き解釈論で引渡しの範疇に含めることには無理があるという考えがあったのかもしれない。 このことは、引渡概念が法人税法に明文化された以上、それは、より法的なものへと純化していく、さらにいえば法人税法固有の概念としての性格が色濃くなっていく可能性を示唆している(泉・前掲論稿参照)。   (了)

#No. 455(掲載号)
#泉 絢也
2022/02/03

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第23回】「中小M&Aに向けた事前準備」~良き相談相手を得る~

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕 対象企業の見方・見られ方 【第23回】 「中小M&Aに向けた事前準備」 ~良き相談相手を得る~   公認会計士・税理士 荻窪 輝明   《今回の対象者別ポイント》 買い手企業 ⇒M&Aの売り手における事前準備段階の理解を深める。 売り手企業 ⇒M&Aの検討段階において良き相談相手を探すためのヒントを得る。 支援機関(第三者) ⇒売り手の相談段階のニーズを知り、支援機関ごとに助言や支援に活かす。 その他の対象者 ⇒売り手の対支援機関の視点を通じて対象企業の見方・見られ方のポイントをつかむ。   1 会社規模に応じた相談相手 中小企業において、M&Aの売り手が、自らM&Aの必要性を実感して計画的に準備を進めるケースは決して多くなく、売り手の状況を知る誰かに勧められるか、日頃から付き合いのある相談相手に助言を求めてから、M&Aを検討するケースが多いと思われます。 検討が遅れると、必要に迫られて、M&Aをしなければならない段階になってはじめて検討せざるを得ないので、後継者不在や、廃業のリスクを背負わなくてもいいように、事業承継上の課題があれば、経営者1人で、あるいは、親族だけで悩みを抱え込まないようにしたいものです。 以下は、規模別にみたM&Aの主な相談相手をまとめた資料です。かかりつけ医のように、日頃から、経営に関する様々な相談をしやすい相手がいれば、M&Aを検討すべきかどうかの率直な意見を得やすいと思いますが、普段は本業で忙しく、会社外部の関係者との接点を十分に持てずにいる場合もあると思います。以下を参考に、会社規模にあった相談相手や、M&Aの準備にあたって適切な助言を受けられそうな相手を今から探しておくのもM&Aに向けた大切な準備の1つとなります。 (出典) 中小企業庁「事業承継ガイドライン改訂検討会(第1回)配布資料」の「資料3 事務局説明資料」37ページ。 この資料によれば、相対的に会社規模が大きい場合だと、助言や情報を得る相手として、顧問をはじめとする「士業専門家」や、「取引金融機関」、「他社の経営者」などが頼りになりますし、準備の後押しを望む段階では、より具体的なアクションを支援できる士業専門家や取引金融機関の存在が期待できそうです。一方で、小規模になると、「商工会・商工会議所」といった商工団体の存在感が際立ちます。 相談相手としてこの資料に登場する「民間M&A仲介業者」や「事業引継ぎ支援センター」は、実際のM&A検討・実行段階で関わる主要なプレイヤーですが、民間M&A仲介業者は相対的に大きな規模の会社で、事業引継ぎ支援センターは相対的に小規模な会社で関わるケースが多くなりそうです。   2 売り手にとって良き相談相手とは 中小企業のM&Aでは、売り手や買い手といったM&Aの当事者がもつノウハウや知識が、M&Aの支援機関がもつそれに比べて圧倒的に少ないために、当事者にとって納得、満足のいくM&Aに至らない恐れがある点がリスクです。 M&Aの譲渡側(売り手)の目的は、調査結果によると以下のとおりであり、多くの売り手経営者、なかでも高年齢の経営者ほど、会社そのもの、人材、設備といった経営資源の存続と維持を望んでいます。 また、M&Aという手段によって承継相手(買い手)と手を結ぶことで、事業の再建、浮上、成長への期待も膨らんでいます。 (出典) 中小企業庁「事業承継ガイドライン改訂検討会(第1回)配布資料」の「資料3 事務局説明資料」28ページ。 支援機関としてはこれらのニーズを外さないのが売り手視点での優先事項であり、逆に売り手からすれば、支援機関がこうしたニーズを軽視して成約ありきになっている場合は、相談相手を直ちに変えるべきです。 通常、売り手は統合後のわが社の行方を心配します。それに対して、支援機関の多くは統合までの関与にとどまりますので、そもそも興味や関心の時点が異なるかもしれません。ですから、売り手にとって譲れない考えがあれば(社名の存続、従業員の雇用の維持、創業の地にとどまるなど)、売り手自らが積極的に支援機関へ伝える熱意や根気も必要です。 この意味で、M&A後も関与が継続すると予想される士業専門家や取引金融機関がいれば、これらのプレイヤーの多くは、関与の継続による報酬の継続や融資の継続も期待できるので、決して自身の利益のためだけに動くわけではないですが、力になってくれやすい存在だといえます。   3 主な支援機関別の相談段階における留意点 以下では、中小企業のM&Aにおいて、売り手の相談段階から継続して売り手に直接関与し続ける可能性の高い主な支援機関(「士業専門家」と「取引金融機関」)について、相談段階におけるそれぞれの機関の留意点について触れたいと思います。 (1) 士業専門家 M&Aの相談段階から売り手に関わっている士業専門家は、顧問として関与する税理士、公認会計士が大半と思われます。 決算書の内容を中心に、過去から会社経営全般について理解がある場合が多く、M&Aにあたって頼りになるケースが多いですが、なかには士業専門家がM&Aにあたってのデメリット、障害になるかもしれません。 (2) 取引金融機関 廃業による地域経済の衰退を防ぎ、持続可能な地域づくりに貢献する地域金融機関にとって、M&Aは重要な手段の1つですので、売り手の相談にも快く応じてくれる場合が多いと思いますが、次の点に留意します。 士業専門家も、取引金融機関も、自らの数字を背負っていますから、完全に売り手の意向を汲んだ動きを期待するのは無理があります。それでも、明らかに売り手の意向に反する考えや行動が示される場合は、売り手の良き相談相手にはなってくれません。こうした場合には、M&Aの検討や相談の段階から、各商工団体、M&A専門業者、事業引継ぎ支援センターを頼る方が円滑に進むかもしれません。 将来M&Aが必要になる状況を想定して、今のうちからネットワークを広げるのも得策です。 (了)

#No. 455(掲載号)
#荻窪 輝明
2022/02/03

収益認識会計基準を学ぶ 【第22回】「開示②」

収益認識会計基準を学ぶ 【第22回】 「開示②」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 【第21回】に続いて、「開示(表示及び注記事項)」について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 注記事項の概要 1 重要な会計方針の注記 顧客との契約から生じる収益に関する重要な会計方針として、次の項目を注記する(収益認識会計基準80-2項)。 上記以外にも、重要な会計方針に含まれると判断した内容については、重要な会計方針として注記する(収益認識会計基準80-3項、164項)。 収益認識会計基準80-2項(2)の「企業が当該履行義務を充足する通常の時点」と「収益を認識する通常の時点」は、通常は同じであると考えられる。 しかしながら、例えば、収益認識適用指針98項における代替的な取扱い(出荷基準等の取扱い)を適用した場合には、両時点が異なる場合がある。そのような場合には、重要な会計方針として「収益を認識する通常の時点」について注記する(収益認識会計基準163項)。 2 会計方針の変更 収益認識会計基準80-2項及び80-3項に従って重要な会計方針として注記した内容を変更する場合、「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)4項(5)及び「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第24号)8項に従って、会計方針の変更に該当するか否かの検討が必要になる(収益認識会計基準165項)。 3 開示目的 収益認識会計基準は、開示目的を規定しており、それは、顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示することである(収益認識会計基準80-4項)。 4 収益認識に関する注記 収益認識に関する注記として、次の項目を注記する(収益認識会計基準80-5項)。 ただし、次の項目に掲げている各注記事項のうち、開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる注記事項については、記載しないことができる(収益認識会計基準80-5項、167項)。 5 注記事項に関する留意事項 収益認識に関する注記に際しては、次の事項に注意する(収益認識会計基準80-6項~80-9項、167項~173項)。   (了)

#No. 455(掲載号)
#阿部 光成
2022/02/03

対面が難しい時代の相続実務 【第10回】「相続実務とオンラインの“これから”」

対面が難しい時代の相続実務 【第10回】 (最終回) 「相続実務とオンラインの“これから”」   クレド法律事務所 弁護士 栗田 祐太郎   今回は最終回として、今後の相続実務における見通しにつき、筆者が思うところをざっくばらんに述べて本連載を閉じたいと思う。   1 オンライン化を検討する際の考え方 (1) オンライン化はあくまで手段 相続実務における各種業務のオンライン化が注目されるのは、それが、①実務家自身の利便性・効率性を高めるだけでなく、②顧客の利便性や満足度を高めることにもつながるからである。 このように、非対面化・オンライン化というのはあくまで手段・方法論に過ぎず、「対面」と「非対面・オンライン化」のどちらかが一方的に優れているという議論ではない。オンライン化が1つの大きなトレンドであることに間違いはないが、それ自体が目的化してしまっては、本末転倒である。 本連載では相続実務における様々な場面を取り上げて解説してきたが、業務の内容や場面、依頼者・相手方の属性、そして実務家自身のITスキルや物理的な環境等によって、対面・非対面の方式をうまく使い分けていくことが現実的な対応である。 (2) 「効率性」と「効果性」という2つの視点 日々の業務にどこまでオンラインを取り入れるか、また顧客からのオンライン化の要望にこたえるか等を検討するにあたっては、「効率性」と「効果性」の2つの視点を念頭に置くのがよいと思われる。 〔「効率性」の視点〕 まずは、「効率性」に関して、「当該業務をオンライン化することが、業務の効率性をアップさせることにつながるか」を検討することになる。 たとえば、関係者が多く、しかも遠方に居住しているという事案の場合には、逐一リアルで面談するよりも、オンラインにて打合せや協議を手軽に行えたほうが効率的であるといえる。 しかし、関係者の大半が高齢で、PCやオンライン機器の取扱いに不慣れであるといった場合もある。そのようなケースでもわざわざ非対面でのオンライン化を導入しようとすることは、関係者に対してIT機器の導入や使い方の説明から始めなければならないことになり、むしろ双方にとって多大な労力が生じる。これではわざわざオンライン化する意味がない。 したがって、当該業務や打合せをオンライン化することが、全体として見て本当に業務の効率性を高めることにつながるかを慎重に検討する必要がある。 〔「効果性」の視点〕 次に、「効果性」に関して、「当該業務をオンライン化することが、顧客満足の度合いを高めることにつながるか」を十分に検討するべきである。 実務家の側では、内容的に見てオンライン又は電話での打合せで十分足りると考えていても、顧客のほうではそれを望まず、対面での打合せを希望するケースも少なくない。これは、普段は仕事などでオンラインや電話での打合せの経験を豊富に有している相談者・依頼者の場合にも、このような希望が出ることは少なくない。 筆者が感じるに、これはおそらく、これから案件を依頼しようとする相談相手の人物を見極めたい(信頼できる専門家であるかどうかを実際に会って確かめたい)という気持ちや、重要な内容を打ち合わせる際には、質疑応答をはさみながら自分の率直な気持ちをストレートに伝えたいといった心情に基づくものと思われる。 このようなケースでは、実務家の一方的な都合で対面での対応に難色を示し、無理にオンラインや電話での対応を押し付けることは、顧客との信頼関係を失わせることにもなりかねず、顧客満足の度合いも低下させる。 したがって、オンライン化と「効果性」という視点も、念頭においておく必要がある。 以上で述べたような「効率性」と「効果性」という2つの視点を持って、各場面での非対面化・オンライン化のあり方を考える必要があろう。   2 非対面化・オンライン化へのシフトは、今後より一層進む 新型コロナウイルスの感染拡大も、いわゆる第5波がピークアウトした2021年秋頃からは終息に向かうと思われたが、同年12月中旬以降、今度はオミクロン株の拡大により再び感染者数が急増している。 新型コロナウイルスの問題が表面化した2020年初頭からこれまでの状況の推移を見れば、今後も当面は、感染者数の増加と収束との波が随時繰り返されていくものと思われる。 そうすると、新型コロナウイルスへの対応を直接の契機とした非対面化・オンライン化の要請は、上記のような社会情勢を見る限りは、少なくとも今後当面は変わるところはないといえる。 他方で、近時よく目にする「電子契約」、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」、「リーガルテック」、「裁判のIT化」といったキーワードも、すべて法律実務のオンライン化を志向しており、時代は確実にこの方向で進んでいる。 さらにいえば、コロナ禍の実務の現場で、オンラインの導入による利便性を一度体験してしまった我々としては、このような便利な道具を手放すことはもはやできない。我々は、もう元には戻れないのである。 そうしてみると、今後、新型コロナウイルスの感染拡大がどのように推移するか、あるいは終息するかとはもはや直接関係せずに、この先の将来もより一層、相続実務が非対面化・オンライン化へとシフトしていくことはまず間違いないと思われる。実務家においても、この流れに抗うことはもはや不可能である。 実際に、本稿執筆の2022年1月時点でも、これまでは当事者の出頭が要求されていた「離婚調停成立に際しての意思確認」も、ウェブ会議の方式にて行えるよう法改正される予定であると報道されている。 本連載で紹介した取り組みは、ごく平均的なITスキルしか持たない筆者の、最低ラインの実践例を紹介したものにすぎない。 本連載の内容が、読者の皆様の日々の業務の非対面化・オンライン化を考える上での少しのヒントにでもしていただければ幸いである。 (連載了)

#No. 455(掲載号)
#栗田 祐太郎
2022/02/03

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第53話】「逋脱犯と重加算税」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第53話】 「逋脱犯と重加算税」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「・・・何を・・・読んでいるのですか?」 昼食後、浅田調査官は、中尾統括官の傍らにやって来る。 「うーん・・・」 中尾統括官は、新聞を見ながら渋い顔をしている。 「脱税事件ですか・・・」 浅田調査官は、中尾統括官が手にしている新聞を覗く。 「これって・・・理事長の自宅で1億円以上の現金が発見されたと報道されていたのですが・・・」 中尾統括官は、軽く頷く。 「大学の関連業者らから受け取ったリベート収入を除外するなどして、2018年と2020年の所得、約1億1,800万円を隠蔽し、約5,200万円の所得税を免れたとして起訴されたということなのだが・・・」 「凄い金額ですね・・・しかも、家宅捜査で現金そのものが見つかっていることから、脱税の言い逃れは難しいですね」 浅田調査官は、少し興奮して、新聞記事を読む。 「所得税法違反となっているけれど・・・所得税法238条1項に該当するということですか?」 浅田調査官は、傍らにある税務六法を捲りながら、条文を読む。 「・・・これは、逋脱犯ともいわれ、納税義務者又は徴収納付義務者が、偽りその他不正の行為により租税を免れ、又は還付を受けたことを構成要件とする典型的な犯罪だよ」 中尾統括官は、厳しい表情で説明を続ける。 「・・・この・・・偽りその他不正の行為とは・・・最高裁昭和42年11月8日判決では・・・逋脱の意図をもって、その手段として税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるような何らかの偽計その他の工作を行うこと・・・と述べている」 中尾統括官は、再び、新聞記事に目を向ける。 「当初は・・・妻に全てを任せていて、自分はそのカネの受取りについては、知らないと理事長は供述していたらしいが・・・」 新聞記事では、現金の流れは、おおよそ、次のように説明されている。 「・・・でも、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金というのは少し重くはありませんか・・・」 浅田調査官は、中尾統括官を見る。 「そんなことはないだろう・・・今回の理事長の脱税金額は、1億1,800万円で、それだけの金額を納税者として申告しなかったのだから・・・」 中尾統括官は、憮然と答える。 「ところで・・・この事件では・・・これだけ巨額な脱税ですから、重加算税も当然、賦課決定されているでしょう・・・もっとも、重加算税については・・・偽りその他不正の行為ではなく、隠蔽・仮装が課税要件になっています・・・これって、どう違うのですか?」 浅田調査官は、頭を掻きながら、訊ねる。 「なかなか良い質問だ」 中尾統括官は、ニコニコしながら答える。 「・・・解釈論としては・・・逋脱犯の場合、『故意』がその過少申告自体に必要であるのに対して、重加算税の場合、隠蔽・仮装の行為の認識で足りるという考え方がある・・・この考え方を採るならば、重加算税の課税要件の方が、逋脱犯のそれよりも広いと解することが可能になる・・・もちろん、両者は、重複する部分が多いが・・・」 中尾統括官は、机の上にある罫紙に簡単な図を描く。 「そして、そのように解釈する方が、逋脱犯に対する罰則が、行為の反社会性、反道徳性に着目して、厳格に課税要件が適用されることから妥当なように思う・・・もっとも、異なる考え方もあるが・・・」 そう言い終わると、中尾統括官は、新聞を畳んで、ポンと机上に置く。 (つづく)

#No. 455(掲載号)
#八ッ尾 順一
2022/02/03

《速報解説》 各省庁等連名で「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」を公表~全7問のQ&A及び事例等を示し、違反とならない取引価格の設定方法等を明らかに~

《速報解説》 各省庁等連名で「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」を公表 ~全7問のQ&A及び事例等を示し、違反とならない取引価格の設定方法等を明らかに~   税理士 石川 幸恵   令和4年1月19日、「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(以下「Q&A」という)が、財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省の連名で公表された。 インボイス制度が導入されると、免税事業者からの課税仕入れにつき、仕入税額控除が制限される(※)ことを踏まえて、免税事業者本人の取引への影響や、自身は課税事業者であるが、仕入先が免税事業者である場合の対応に関する考え方について、Q&Aが全7問示され、1月24日には(参考)として下請法等の考え方の2事例、建設業法上の考え方の1事例を提示して解説している。 (※) 免税事業者からの課税仕入れについては、経過措置としてインボイス制度の実施後3年間は、仕入税額相当額の8割、その後の3年間は同5割の控除ができることとされている。 特に、自身は課税事業者で仕入先が免税事業者である場合に、取引価格の交渉はどこまで可能なのかについて関心が高いと思われるが、「(参考)インボイス制度後の免税事業者との取引に係る下請法等の考え方」の【事例1】によれば、「『報酬総額11万円』で契約を行った」が、「取引完了後、インボイス発行事業者でなかったことが請求段階で判明したため、下請事業者が提出してきた請求書に記載された金額にかかわらず、消費税相当額の1万円の一部又は全部を支払わないことにした」のは、下請法違反であると明示している。 また、「(参考)インボイス制度後の免税事業者との建設工事の請負契約に係る建設業法上の考え方」の事例でも、建設業の元請負人と下請負人の取引について、同様に消費税相当額の一部又は全部を免税事業者である下請負人に支払わないこととするのは、建設業法違反としている。 一方、Q&AのQ7では、免税事業者からの課税仕入れについて仕入税額控除が制限される分について、免税事業者の仕入れや諸経費の支払いに係る消費税の負担をも考慮した上で、双方納得の上で取引価格を設定すれば、独占禁止法上問題となるものではない、としている。 独占禁止法では、自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の事業者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることが優越的地位の濫用として問題となる。 既に、一部の企業では仕入先に対して、適格請求書発行事業者の登録をするかどうかを聞き取っているようであるが、インボイス導入前の準備段階から交渉を進めて、取引価格の改定を行っていくことが重要であると考えられる。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 454(掲載号)
#石川 幸恵
2022/01/31

《速報解説》 「AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響」の研究をJICPA協力のもと理研が実施~10年後、主査業務の34.7%がAIに代替されるとの推計も~

《速報解説》 「AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響」の研究を JICPA協力のもと理研が実施 ~10年後、主査業務の34.7%がAIに代替されるとの推計も~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年1月26日付けで(ホームページ掲載日は2022年1月27日)、国立研究開発法人理化学研究所が実施し、日本公認会計士協会がその実施に協力した研究「AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響」(以下「研究報告書」という)が公表された。 日本公認会計士協会は、会員に対して、「理化学研究所による研究報告書「AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響」の公表を受けて」も公表している。 これは、人工知能(Artificial Intelligence:AI)等のテクノロジー(以下「AI」という)によって公認会計士業務の中核的な業務とされる監査業務の代替可能性、代替されうる具体的な業務などを調査したものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 AI等のテクノロジーによる代替可能性 監査の役割分担は、監査責任者、主査、補助者などに分担される。 監査責任者、主査、補助者で負っているタスクが異なるので、各役職でのタスク分類を考慮して、代替可能性等を推計している。 ただし、研究報告書では、調査の対象から監査責任者は除外し、監査業務のタスクが特定しやすい主査と補助者を対象としている(9ページ)。 監査責任者については、経営層とのコミュニケーション等、AIに代替不能な業務が大半を占めているという仮説は自明であるとして、特段の調査項目は設定していない(11ページ)。 研究報告書は、10要素に分解した主査と補助者の業務について、AI等のテクノロジーによる代替可能性を評価しており、日本公認会計士協会の会員向けの「理化学研究所による研究報告書「AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響」の公表を受けて」の2ページでは、平均して、主査業務については30年後に45.6%、補助者業務については30年後に60.6%がAIに代替されると予測されるとしている。 また、10年後には、主査業務で34.7%、補助者業務で50.5%がAIに代替されると推計されている。 10要素に分解した主査の業務内容とは、クライアントとの調整(交渉、議論、報告等にかかる各種コミュニケーション)、企業環境の理解及び監査リスクの評価など)などである(13ページ)。 10要素に分解した補助者の業務内容とは、クライアントとの調整(交渉、議論、報告等にかかる各種コミュニケーション)、証憑突合、帳簿突合、分析的手続、表示チェックなどである(13ページ)。 2 人事評価 研究報告書は、今回の調査対象である主査、補助者の各業務に対する人事評価との紐づけを通じて、代替可能性と生産性の評価とを結びつけた推計を行っている。 研究報告書は、主査と補助者が実施する業務を10項目(上記を参照)に分類し、どの業務(属性)が昇進という観点から重要であるかを評価している。 その結果、主査への評価項目に関しては、代替可能性の低い業務項目について人事上高い評価がされており、特に「⑧監査上の重要事項に係る検討及び判断」が突出して高い評価となっている(18ページ)。 補助者への評価項目に関しては、最も代替可能性の低い「②クライアントとの調整」が、人事評価上も最も重要である(22ページ)。 ただし、代替可能性が最も高いと評価されている「⑦証憑突合等」に関しては、人事評価上も一定程度重要である。 3 生産性分析 監査業務の一部をAIに代替させた場合を仮定し、人事評価に関する分析と組み合わせた結果、主査業務については10年後に32.0%、30年後に42.5%生産性が向上する可能性があると評価されている(24ページ)。 また、補助者業務については10年後に48.4%、30年後に58.0%生産性が向上する可能性があると評価されている(24ページ)。 4 結論 研究報告書の結論としては、すべての業務がAIに代替される可能性は低いものの、AIに代替可能な業務も存在する(2、26ページ)。 AIに代替可能な業務の一部は、監査法人での昇進のための重要な要素となっていることから、監査法人の人事評価にも影響することになる(2、3ページ)。 主査については、AIによって代替される領域が一定程度存在するのは事実であるものの、人事評価の過程において、代替可能性が低い業務が重視される傾向にあるため、代替可能性が高い業務については積極的にAIのテクノロジーに代替し、代替可能性が低い業務に注力するインセンティブが働くであろうと述べている(26ページ)。 補助者は主査と比較して全体的にAI等による代替可能性の高い業務を担っている。人事評価との関係では、最も代替可能性の低い「①クライアントとの調整」が、人事評価上も最も重要であるものの、代替可能性が最も高い「⑦証憑突合等」に関しては、人事評価上も一定程度重要であると捉えられている(26ページ)。 (了)

#No. 454(掲載号)
#阿部 光成
2022/01/28

《速報解説》 会計士協会、「イメージ文書により入手する監査証拠に関する実務指針」を公表~令和3年度税制改正の国税関係書類の電子的な保存の要件緩和における留意点も示す~

《速報解説》 会計士協会、「イメージ文書により入手する監査証拠に関する実務指針」を公表 ~令和3年度税制改正の国税関係書類の電子的な保存の要件緩和における留意点も示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年1月26日付けで(ホームページ掲載日は2022年1月27日)、日本公認会計士協会は、「監査・保証実務委員会実務指針第104号「イメージ文書により入手する監査証拠に関する実務指針」」を公表した。これにより、2021年11月19日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対するコメント対応も公表されている。 これは、令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しに伴い、スキャナ保存制度について要件緩和がなされたことや電子取引に係る電子情報の保存が義務付けられたことを受けて、今後、企業の取引情報の電子化の一層の加速が見込まれることなどに対応し、監査人が監査証拠を電子データの一種であるイメージ文書で入手する場合の実務上の指針を提供するものである。 実務指針においては、電子帳簿等保存制度を参考とすることが多いが、企業の電子帳簿等保存制度への準拠や適合の状況に関する監査人の対応について直接に取り扱うものではないとのことである(10項)。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 適用範囲 監査人は、観察や質問等によって得る情報に加えて、書面又は電磁的記録(以下「電子データ」という)により監査証拠を入手するが、実務指針の適用範囲は、電子データのうち、書面の取引証憑と同等の記載内容を保っているPDF等のイメージ文書である(2項)。 「イメージ文書」とは、情報システムの使用により可読性のある電子データであり、書面の取引証憑と同等の記載内容を保っているデータをいう(12項(5))。 ファイル形式としては、PDFファイルや他の画像ファイル(BMP、TIFF、JPEG、PNG等)が想定されている(12項(5))。 電子データであっても、EDI(Electronic Data Interchange)取引等によって情報システムで生成される一覧型のシステム取引データは、イメージ文書とは異なる監査上のリスクを考慮する必要があり、従前からの監査手続により対応が図られていることから、実務指針の対象としていない(2項)。 実務指針は、次の両方のイメージ文書を対象としている(2項)。 さらに、原本である書面を電子化する場合には、企業が関連する法令等に従って電子化する場合と、監査の過程で監査人が依頼したことで電子化される場合があり、実務指針はこの両方を対象としている(2項)。 次の付録も記載されている。 2 原本 「原本」とは、イメージ文書に変換する前の元になったものであり、書面又は情報システムから出力された可読性のある電子データをいう(12項(6))。 実務指針は、監査の過程で監査人が監査証拠として入手する可能性のあるイメージ文書を取り扱っているため、原本という用語をイメージ文書と対比する目的で、上記のように定義している。 実務指針では、イメージ文書の作成を前提としていない書面等についての原本を定義することを目的としていないため、他の法令等における定義とは異なる場合があるとのことである(12項(6))。 監査人は、イメージ文書の元になった原本が被監査会社の管理下に存在し、それが監査の目的に関連する情報であり、監査人が監査証拠として必要と判断する場合には、経営者に対し当該原本の提供を求めることがある(14項)。 公開草案に対するコメントとして、公開草案全体からは、可能な限り書面の原本を廃棄してほしくないというようなトーンがうかがえるが、必ずしも監査人の立場から書面の原本の廃棄を禁止するものではない旨を冒頭部分等において明確にした方がよいのではないか、また、実務指針は、スキャナ保存に係る内部統制の整備及び運用を強制するものではないという理解でよいかとのコメントが寄せられた(コメントNo.1)。 これに対して、実務指針では、書面の原本の廃棄を禁止したり、被監査会社に要請したりするといった立場ではないこと、また、被監査会社にイメージ文書の真正性確保に関する内部統制の整備及び運用を強制するわけではないことが記載されている。 全体として、イメージ文書に取り込む前の原本の方が、証拠力が高いというスタンスではないかとの受けとめに対しても、コメントを踏まえ全体を見直し原本を確かめる必要性を強調しないよう修正しているとのことである(コメントNo.3)。 3 イメージ文書に係るリスクの識別と評価 監査人は、電子取引において受領又は交付したイメージ文書が複製であることのみを理由に監査証拠として十分かつ適切ではないと判断する、又は、情報の信頼性を何ら検討せずにイメージ文書が複製元の原本と全く同一の記載内容であると判断する、といった先入観を持たず、入手したイメージ文書が有する証明力並びに監査証拠としての十分性及び適切性を適切に評価して対応する(20項)。 監査人は、入手したイメージ文書に対して、重要な虚偽表示リスクの程度が高いと評価し、より確かな心証が得られる監査証拠を入手する場合には、監査証拠の量を増やすことや、より適合性が高く、より証明力の強い監査証拠を入手することがある(42項、43項)。 後述のように、スキャナ保存に関しては、令和3年度(2021年度)税制改正により、スキャナ保存後直ちに書面の原本を廃棄することが可能となっている。 そのため、監査人は、監査上必要と判断する一定金額以上の契約書など、重要な監査証拠となり得る記録や書面の原本の取扱いに関して被監査会社と事前に十分に協議し、例えば、次のような対応を検討することが考えられるとしている(64項)。 4 令和3年度(2021年度)税制改正による監査への影響 令和3年度(2021年度)税制改正により、国税関係書類の電子的な保存のための要件が緩和されており、イメージ文書の保存に関して以下に留意する(32項)。 5 内部統制 監査人は、監査に関連する内部統制を理解する際に、監査基準委員会報告書315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」第12項に従い、内部統制のデザインを評価し、これらが業務に適用されているかどうかについて、企業の担当者への質問とその他の手続を実施して評価する(34項)。 イメージ文書の作成、受領及び保管に関する内部統制(IT全般統制を含む)を理解するに当たってのポイントなどが記載されている(37項ほか)。   Ⅲ 適用時期等 実務指針は、2022年1月1日以後に開始する事業年度に係る監査及び同日以降に開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。 ただし、それより前の決算に係る監査から実施することを妨げない。 なお、実務指針の公表により、2022年1月26日付けで、次のものが廃止されている。 (了)

#No. 454(掲載号)
#阿部 光成
2022/01/28
#