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Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第18回】「〔第4表〕純粋持株会社、医療法人の業種区分の判定」

Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第18回】 「〔第4表〕純粋持株会社、医療法人の業種区分の判定」   税理士 柴田 健次   Q A社は純粋持株会社に該当し、100%の株式を保有し支配している子会社のグループ経営企画、財務管理、監督等の業務を行っており、子会社からの受取配当金以外に収入はありません。 また、B社は医療法人(歯科診療所)に該当します。 この場合におけるA社及びB社の類似業種比準価額の計算で使用する業種目は、何に該当するのでしょうか。 A A社及びB社の業種目は、いずれも「その他の産業」に該当することになります。類似業種比準価額の計算で使用する業種目の判定は、本連載【第17回】の「類似業種比準価額の計算で使用する業種目の判定手順」をご確認ください。また、医療法人の出資の評価方法については、【第8回】をご確認ください。  ◆  ◆  ◆ ① 直前期末以前1年間の取引金額を日本標準産業分類に基づき区分 「日本標準産業分類(平成25年10月・第13回改定)」では、純粋持株会社は「細分類番号7282」に、医療法人(歯科診療所)は「細分類番号8331」に該当し、それぞれ下記の通り記載がされています。 7282 純粋持株会社 8331 歯科診療所   ② 対比表を基に業種目を確認 「日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価額計算上の業種目との対比表(平成29年分)」の区分に当てはめると下記の通りとなりますが、純粋持株会社は、「専門サービス業(純粋持株会社を除く)」とされており、医療法人は、「医療、福祉(医療法人を除く)」とされています。したがって、他の業種目においても純粋持株会社及び医療法人に該当する記載がありませんので、分類不能となり、「その他の産業」に該当することになります。 【日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価額計算上の業種目との対比表(平成29年分)(一部抜粋)】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ※赤色の下線は筆者による。   ☆実務上のポイント☆ 日本標準産業分類と対比表を基に分類することが重要となりますが、純粋持株会社と医療法人については、日本標準産業分類と対比表がそのまま当てはまらない特殊なものとしておさえておきましょう。 (了)

#No. 391(掲載号)
#柴田 健次
2020/10/22

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第46回】「外国の不動産の相続税評価額は鑑定評価額か財産税評価額か」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第46回】 「外国の不動産の相続税評価額は鑑定評価額か財産税評価額か」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 被相続人が外国に賃貸用不動産を遺して亡くなりました。相続税評価額を算定するに際し、現地の固定資産税評価相当額と遺産税の申告の際に算定した鑑定評価額があります。 固定資産税評価額の方がはるかに低い価額なので、この価額を採用して借家権部分の控除はできますか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷国外不動産の価額はどのように評価するのか 相続税や贈与税の課税標準は相続、贈与時の財産の価額に基づくため、財産の価額をどのように評価するかが重要なポイントとなる。相続税法22条では「財産の取得の時における時価」に基づくとされているが、これではよく分からない。そこで詳細な算定方法が、財産評価基本通達で定められている。 財産評価基本通達では、宅地や建物は路線価や固定資産税評価額に基づいて算定されるとしているが、外国にある宅地や建物には路線価や固定資産税評価額が存在しないため、これらの方法を使った評価額の算定はできない。 この場合、「この通達の定めによって評価することができない財産については、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するものとする。」(評基通5-2)とされているが、具体的にどのような価額が売買実例価額、精通者意見価格等を参酌した評価となるのか。 今回は、アメリカの賃貸不動産について2つの評価額があり、どちらの価額を採用するのか、また、評価額から借家権部分を控除して評価できるかで争われた裁決事例を紹介する(平成22年3月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・H28-02-04公表裁決)(TAINSコード:J102-4-13)。   ▷どのような事案か 米国の賃貸不動産事業を営む任意組合契約を締結していた者について、平成22年3月〇日に相続が発生し、賃貸不動産の価額を評価する必要があった。 その賃貸不動産の評価額について、財産税の評価額に基づき、借家権割合を控除して相続税の申告をしたところ、課税庁が州遺産税の申告における鑑定評価額で更正処分を行い、処分に不服な納税者である相続人が審査請求した事案である。本件において、財産税評価額は鑑定評価額と比較して著しく低かった。 ちなみに米国では、遺産は死亡と同時に相続財産は遺産財団に移管され、相続の手続が進行することになるが(前回参照)、米国の相続税(遺産税)は連邦税と州税の2種類があり、当時、連邦税は課税が停止されていた。   ▷争点に対する納税者と課税庁の主張は 幹となる争点は、外国不動産の相続税評価額は鑑定評価額か、財産税評価額かであるが、納税者と課税庁の主張が対立する3つのポイントは次のとおりである。 ① 取引事例3件の合理性 納税者は、鑑定評価額は取引事例が3件程度であり売買事例として不適当であるが、財産税評価額は多くの比較取引事例の売買事例価額を考慮して計算され平準化される形で算出されているから、評価通達5-2による「売買事例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するもの」として適切であると主張した。 他方課税庁は、鑑定価額は、近隣の比較取引事例各3件以上の売買事例価額を調整して考慮しているから「売買事例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するもの」に該当する。財産税評価額は、売買事例価額と比較して大きく乖離していることから、「売買事例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するもの」とは認められないと主張した。 ② 財産税評価額の基準日の合理性 納税者は、財産税評価額の評価基準日が平成21年1月〇日、平成22年1月〇日であるが、不動産取引価格は短期で大きく変動するとは考えにくいから、両日の価額が近似値であるなら、この間の平準化した価額が相続開始日の価額と同額であると推認できると主張した。 他方課税庁は、財産税評価額の基準日は、相続開始日ではないと主張した。 ③ 借家権の控除の合理性 納税者は、財産税評価額は、借家権の負担がない物件をサンプルとして算出したことが予測され、賃借権の設定による評価額の減少が評価されていないから、100分の30の借家権割合を控除すべきと主張した。 他方課税庁は、評価通達5-2に定める「この通達に定める評価方法に準じて」評価することができない財産だから、借家権の価額を控除することはできないと主張した。   ▷審判所の判断は 審判所は以下のように判断して、納税者の請求を棄却した。 ① 取引事例3件の合理性 鑑定価格は米国で申告を行うための適正な市場価格を求めるためのものであり、不合理なところは見当たらず、州当局から是認されていることを考慮すると、客観的な交換価値を表すため適正だ。比較取引事例が3件程度と少数であることをもって鑑定評価額が不適当という納税者の主張は採用できない。 ② 財産税評価額の基準日の合理性 財産税評価額の評価基準時は、相続開始日と異なるし、財産税評価額は収益方式により、必ずしも市場価格や売却価格を志向するということはできない。収益方式により評価された結果、市場価格との相関関係は見出せず、売買価額と比較すると物件によっては5割~6割、あるいは8割~9割程度低くなっている。さらに評価額の不安定性が市監査官より指摘されている。これらのことから、財産税評価額は時価と認めることができない。 ③ 借家権の控除の合理性 この不動産は評価通達に定める方法に準じて評価することができない財産だから、借家割合控除のみ許容すべき理由はない。 *  *  * このように本事案は、外国の不動産が相続財産になる場合の評価方法の算定にあたって参考になる事例である。   (了)

#No. 391(掲載号)
#菅野 真美
2020/10/22

〈ツボを押さえて理解する〉仕訳のいらない会計基準 【第5回】「会計基準のプロフィール紹介(後編)」-決算開示制度を支える会計基準、決算時や特定事象の出現時などに適用する会計基準-

〈ツボを押さえて理解する〉 仕訳のいらない会計基準 【第5回】 「会計基準のプロフィール紹介(後編)」 -決算開示制度を支える会計基準、決算時や特定事象の出現時などに適用する会計基準-   公認会計士・税理士 荻窪 輝明 3回にわたって見てきた、会計基準のプロフィール紹介も今回がラストとなります。 今回も、第2回「会計基準の世界を俯瞰する」で分けたジャンルを踏まえて、その会計基準がどのジャンルにどの程度の割合で属しているかイメージを付しました。あくまで個人の見解によるものですが、こちらも参考にしてください。 今回は5つに分けたジャンルのうち「」と「」を見ていきます。 〔ジャンル属性の説明〕 *  *  * 3回にわたって、代表的な会計基準のプロフィールをみてきました。これだけ会計基準が多いことには驚きですが、「いきなりすべてを理解するぞ!」と気負うことなく、理解しやすい会計基準や興味をもった会計基準から触れていくうちに、自然と会計基準への理解も進んでいくはずです。 次回は、第1章の最終回です。会計基準のない世界から、何をきっかけに会計基準を適用していくのか、会計基準を適用する会社の財務諸表は適用しない会社の財務諸表と比べて何が異なるのかといった視点から、会計基準の理解を深めましょう。 (了)

#No. 391(掲載号)
#荻窪 輝明
2020/10/22

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第162回】収益認識基準⑦「履行義務の充足による収益の認識」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第162回】 収益認識基準⑦ 「履行義務の充足による収益の認識」   仰星監査法人 公認会計士 渡邉 徹     〈事例による解説〉   〈会計処理〉(単位:千円) A社のX1年3月31日現在(期末決算)の仕訳は、次のとおりである。 ① 風力発電所新設工事に係る収益の計上 (※1) 発生費用のうち、回収が見込まれる額で収益を認識する。 ② 既存風力発電所の設備保守契約に係る収益の計上 (※2) 400×3/24(※3)=50 (※3) X0年4月1日~X0年12月31日までの9ヶ月の売上高は、第3四半期までに既計上であるものとする。 A社のX1年6月30日現在(第1四半期決算)の仕訳は、次のとおりである。 ③ 風力発電所新設工事に係る収益の計上 (※4) (取引価格5,500-タービンの調達原価1,500)×工事進捗度80%(2,000÷2,500×100%)+タービンの調達原価1,500=4,700 (※5) 4,700(※4)-500(※1)=4,200 ④ 風力発電所新設工事に係る原価の計上 (※6) 発生したその他の原価2,000+タービンの調達原価1,500=3,500 (※7) 3,500(※6)-500(※1)=3,000 ⑤ 既存風力発電所の設備保守契約に係る収益の計上 (※8) 400×3/24=50   〈会計処理の解説〉 1 会計処理 企業は約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、収益を認識します。 資産が移転するのは、顧客が当該資産に対する支配を獲得した時又は獲得するにつれてであるとされています。 次の(A)から(C)の要件のいずれかを満たす場合、資産に対する支配を顧客に一定の期間にわたり移転することにより、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識します。 なお、上記のいずれの要件も満たさない場合には、資産に対する支配が顧客に移転した一時点で履行義務を充足し収益を認識します。 【履行義務の充足による収益の認識のイメージ図】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   2 設例へのあてはめ (1) X1年3月31日(風力発電所新設工事に係る収益の計上) 風力発電所新設工事は、「(C-1) 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること」かつ「(C-2) 企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること」に該当する契約であると考えられるため、A社は約束した財又はサービスを充足するにつれて、収益を認識します。 X1年3月31日時点では、進捗度を合理的に見積れませんが、発生費用を回収することが見込まれるため、原価回収基準で会計処理します(企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準第45項」参照)。 そのため、発生費用(500千円)に基づいて売上高及び工事原価を計上します。 なお、原価回収基準とは、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができないものの(企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準第45項」参照)、当該履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれる場合に、履行義務を充足する際に発生する費用のうち、回収することが見込まれる費用の金額で収益を認識する方法をいいます(企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準第15項」参照)。 (2) X1年3月31日(既存風力発電所の設備保守契約に係る収益の計上) 既存風力発電所の設備保守契約は、「(A) 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること」に該当する契約であると考えられるため、A社は約束した財又はサービスを充足するにつれて、収益を認識します。 また、サービスの性質から、進捗度を忠実に描写する方法は、アウトプット法が適合すると考えられます。 なお、アウトプット法は、現在までに移転した財又はサービスの顧客にとっての価値を直接的に見積るものであり、現在までに移転した財又はサービスと契約において約束した残りの財又はサービスとの比率に基づき、収益を認識する方法です(企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針第17項」参照)。 アウトプット法による場合、提供したサービスの時間に基づき固定額を請求する契約等、現在までに企業の履行が完了した部分に対する顧客にとっての価値に直接対応する対価の額を顧客から受け取る権利を有している場合には、請求する権利を有している金額で収益を認識することができるとされています(企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針第19項」参照)。 設例の設備保守契約は、契約期間に基づくことで現在までに移転した財又はサービスと契約において約束した残りの財又はサービスとの比率を合理的に見積れると考えられるため、契約期間で収益認識額を計算します。 (3) X1年6月30日(風力発電所新設工事に係る収益の計上) 「(1) X1年3月31日(風力発電所新設工事に係る収益の計上)」の検討のとおり、A社は約束した財又はサービスを充足するにつれて、収益を認識します。 また、財又はサービスの性質から、進捗度を忠実に描写する方法は、インプット法が適合すると考えられます。 なお、インプット法は、履行義務の充足に使用されたインプットが契約における取引開始日から履行義務を完全に充足するまでに予想されるインプット合計に占める割合に基づき、収益を認識する方法です。インプット法に使用される指標には、消費した資源、発生した労働時間、発生したコスト、経過期間、機械使用時間等があります(企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針第20項」参照)。 今回の設例では、発生費用(発生したコスト)が適合すると考えられるため、発生費用に基づいて収益を計算しています。なお、タービンに係る発生費用は設例の前提にあるとおり、進捗度の見積り計算から除いています(企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針第21、22項」参照)。 (4) X1年6月30日( 風力発電所新設工事に係る原価の計上) X1年6月30日までの発生費用3,500千円から、X1年3月期に既に原価計上した500千円を控除した3,000千円を工事原価に計上します。 (5) X1年6月30日(既存風力発電所の設備保守契約に係る収益の計上) 上記の「(2) X1年3月31日(既存風力発電所の設備保守契約に係る収益の計上)」と同様に契約期間で収益認識額を計算します。 *  *  * (了)

#No. 391(掲載号)
#渡邉 徹
2020/10/22

税効果会計を学ぶ 【第15回】「連結財務諸表固有の一時差異の取扱い③」-子会社に対する投資を一部売却した場合の取扱いなど-

税効果会計を学ぶ 【第15回】 「連結財務諸表固有の一時差異の取扱い③」 -子会社に対する投資を一部売却した場合の取扱いなど-   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回は、連結財務諸表固有の一時差異の取扱い(連結財務諸表)のうち、子会社に対する投資に係る一時差異の取扱いとして、次のものについて解説する。 「連結財務諸表固有の一時差異」とは、連結決算手続の結果として生じる一時差異のことをいい、課税所得計算には関係しないものである(税効果適用指針4項(5))。詳細は本シリーズの【第4回】を参照願いたい。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 子会社に対する投資の一部売却後も親会社と子会社の支配関係が継続している場合 1 基本的な考え方 子会社に対する投資を一部売却した後も親会社と子会社の支配関係が継続している場合、連結財務諸表上、当該売却に伴い生じた親会社の持分変動による差額は、資本剰余金として計上し、関連する法人税等相当額は、資本剰余金から控除する(連結会計基準29項及び(注9)(2))。 このため、子会社に対する投資を一部売却した場合、売却に伴い生じた親会社の持分変動による差額に対応する法人税等相当額については、税効果適用指針28項に規定されているとおり、連結財務諸表上、法人税、住民税及び事業税などその内容を示す科目を相手勘定として資本剰余金から控除するとされた(税効果適用指針117項)。 次のことにも注意する(税効果適用指針118項)。 2 会計処理 子会社に対する投資を一部売却した後も親会社と子会社の支配関係が継続している場合、連結財務諸表上、次のように会計処理する(税効果適用指針28項)。   Ⅲ 子会社に対する投資を一部売却したことにより親会社と子会社の支配関係が継続していない場合 1 基本的な考え方 子会社に対する投資を一部売却したことにより当該被投資会社が子会社等に該当しなくなった場合、利益剰余金に計上されていた当該被投資会社の留保利益(又は負の値である場合の留保利益)の親会社持分相当額とのれんの償却累計額又は負ののれんの利益計上額との合計額(差引額)のうち、残存する当該被投資会社に対する投資に相当する部分は、連結株主資本等変動計算書上の利益剰余金の区分に、連結除外に伴う利益剰余金減少高(又は増加高)等その内容を示す適当な名称をもって計上する(資本連結実務指針46項)。 このため、上記の処理に伴い当該投資の帳簿価額への修正により解消した一時差異について税効果適用指針27項に従って計上した繰延税金資産又は繰延税金負債は、売却時に取り崩し、当該取崩額を法人税等調整額に計上するのではなく、利益剰余金から直接控除する(税効果適用指針119項、120項)。 2 会計処理 子会社に対する投資の一部売却により当該被投資会社が子会社等に該当しなくなった場合、連結財務諸表上、残存する当該被投資会社に対する投資は個別貸借対照表上の帳簿価額をもって評価する(連結会計基準29項なお書き)。 この場合、税効果適用指針27項に従って法人税等調整額を相手勘定として計上した当該子会社に対する投資に係る連結財務諸表固有の一時差異に関する繰延税金資産又は繰延税金負債のうち、当該売却に伴い投資の帳簿価額を修正したことにより解消した一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債は、利益剰余金を相手勘定として取り崩す(税効果適用指針29項)。   Ⅳ 子会社に対する投資を売却した時の親会社の持分変動による差額に対する繰延税金資産又は繰延税金負債についての取扱い 1 親会社の持分変動による差額に対して繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していた場合 連結税効果実務指針では、連結財務諸表上、追加取得や子会社の時価発行増資等により生じた資本剰余金の額について、法人税等調整額に相当する額を控除した後の額で計上し、売却時に繰延税金資産又は繰延税金負債の取崩額を法人税等調整額に計上することにより、適切な額を税金費用として計上すると規定されていた(税効果適用指針123項)。 上記の取扱いを踏襲し、税効果適用指針では、親会社の持分変動による差額に対して繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していた場合に、当該子会社に対する投資を売却したときには、次のように会計処理すると規定している(税効果適用指針30項)。 2 親会社の持分変動による差額に対して繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していなかった場合 子会社に対する投資の売却の意思決定とその売却時期が同一の事業年度となったことなどにより、資本剰余金を相手勘定として当該親会社の持分変動による差額に係る繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していなかった場合、税効果適用指針27項(2)に従った処理をしていないことから、資本剰余金の額が法人税等調整額に相当する額を控除した額とならない(税効果適用指針124項)。 このため、資本剰余金の額が、売却前に繰延税金資産又は繰延税金負債を計上した場合と同じ結果になるように、当該子会社に対する投資を売却したときには、次のように会計処理する(税効果適用指針31項、124項)。 (了)

#No. 391(掲載号)
#阿部 光成
2020/10/22

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例52】株式会社日本取引所グループ「システム障害に係る調査委員会の設置について」(2020.10.5)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例52】 株式会社日本取引所グループ 「システム障害に係る調査委員会の設置について」 (2020.10.5)   公認会計士/事業創造大学院大学准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、株式会社日本取引所グループ(以下「JPX」という)が2020年10月5日に開示した「システム障害に係る調査委員会の設置について」である。極めて簡潔な開示なので、開示全体を以下に掲載する(一部省略)。 東京証券取引所(以下「東証」という)は、2020年10月1日、株式売買システムに障害が発生したため、株式の売買を終日停止した。この開示は、東証の親会社であるJPXが、そのシステム障害の原因等を調査するため、同社の社外取締役で構成される調査委員会を設置したという内容である。 なお、本連載は「〔検証〕適時開示からみた企業実態」であり、適時開示を取り上げなければならないのだが、実はこの開示は適時開示ではない。JPXはこの開示をTDnetに掲載しておらず、同社ホームページの「JPXからのお知らせ」に掲載しているだけである。   2 今回の開示に至るまで JPXは東証一部上場会社であり、投資家の投資判断に対して影響を及ぼす重要事実に関して適時開示を行わなければならない会社である。しかし、東証のシステム障害発生後、本稿執筆時点(2020年10月12日)まで、それに関する適時開示は一切行っていない。 2020年10月1日にシステム障害が発生し、まず東証は同日中に記者会見を行った。しかし、JPXは、翌日の2日になって、その記者会見に関する「記者会見要旨」を、参考資料である「本日(10月1日)の事象」とともに、同社ホームページの「JPXからのお知らせ」に掲載した。 そして、3日後の5日、JPXは、「(参考)共有ディスク装置の内部構造」とともに「arrowheadの障害に関する原因と対策について」をまたも同社ホームページの「JPXからのお知らせ」に掲載した。これも極めて簡潔な開示なので、開示全体を以下に掲載する(一部省略)。JPXのプレスリリースとされているが、東証からの開示として記載されている。 今回取り上げた「システム障害に係る調査委員会の設置について」は、これと同日に開示されたものである。   3 なぜ適時開示を行わないのか なぜJPXは、子会社である東証におけるシステム障害とそれによる終日株式売買停止に関して、適時開示を行わないのだろうか。投資家の投資判断に対して及ぼす影響は小さいと考えているのだろうか。あるいは、マスコミによって大々的に報道されたので、適時開示は不要と考えているのだろうか。 例え話だが、ある有価証券を取引する市場を運営する会社「A取引所」が、東証の市場に上場していたとする。そして、あるとき、A取引所において、システム障害が発生し、有価証券の売買を終日停止することになってしまった。A取引所と東証の間では、以下のようなやり取りが交わされるはずである。 上場しているのが、A取引所ではなく、A取引所の親会社である「Bグループ」であったとしても、Bグループと東証の間で同様のやり取りが交わされるはずである。 ちなみに、東証が定める有価証券上場規程の第7編は「日本取引所グループが発行する有価証券」とされており、その最初の規定は次のとおりである。東証は、JPXに対しても、他の上場会社と同様に適切な適時開示の実施を求めなければならないと思われるのだが。 (了)

#No. 391(掲載号)
#鈴木 広樹
2020/10/22

《速報解説》 国税庁ホームページ内に「インボイス特設サイト」が開設される~登録申請手続ページ公表も提出は令和3年10月より~

《速報解説》 国税庁ホームページ内に「インボイス特設サイト」が開設される ~登録申請手続ページ公表も提出は令和3年10月より~   Profession Journal編集部   令和5年10月からの適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)導入に向け、来年(令和3年)10月1日からはインボイスを発行できる適格請求書発行事業者の登録申請受付が開始される。 令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、原則として令和3年10月1日から令和5年3月31日までの間に、納税地の税務署長へ申請書を提出する必要がある。 インボイス制度下では、登録事業者の番号を記載しなければインボイスとして認められず仕入税額控除の対象とならないため、課税事業者は登録申請の手続が必要となるが、申請受付開始まで1年を切った中、国税庁はホームページ内に関連する情報をまとめた「インボイス特設サイト」を開設した。 今回開設された特設サイトは、これまで軽減税率制度とインボイス制度の両制度に関する情報がまとめられていた①のページを、②インボイス制度と③軽減税率制度それぞれのページに枝分かれさせ、各種情報(制度概要(パンフレット等)、Q&A、通達、様式、動画など)を掲載したもの。 インボイス特設サイトで新たに公表された情報は少ないが、Q&Aは9月30日付けで改正電帳法等に即した記載の見直しが行われており(問67等)、また「適格請求書発行事業者の登録申請書(国内事業者用)・(国外事業者用)」が掲載された「適格請求書発行事業者の登録申請手続」のページが公表されている(ただし提出は来年10月から)。 今後は登録申請関係の情報も多く公表されると考えられるため、特設ページにおける最新(更新)情報には留意しておきたい。 新制度開始までまだ時間があるとはいえ、日本商工会議所が10月9日に公表した次の調査結果によると、回答した事業者の約7割が「インボイス制度導入に向けて特段の準備を行っていない」とするなど対応の遅れが目立つ中、経理システムの改修といった時間のかかる対応については早めに検討・準備を始めておきたい。 なお同調査結果では、課税事業者の約2割が「免税事業者との取引は(一切または一部)行わない」、「経過措置の間は取引を行う」と回答し、免税事業者との取引を見直す意向を示した」ことが明らかとなるなど、注目される情報も多数掲載されているため、参考にされたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 390(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2020/10/15

プロフェッションジャーナル No.390が公開されました!~今週のお薦め記事~

2020年10月15日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.390を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2020/10/15

日本の企業税制 【第84回】「各府省庁の「令和3年度税制改正要望」を概観する」

日本の企業税制 【第84回】 「各府省庁の「令和3年度税制改正要望」を概観する」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   9月末に、各府省庁から令和3年度税制改正要望が出揃った。 今回の要望項目数は、単純合計で、国税236項目、地方税239項目、重複排除ベースで、国税153項目、地方税166項目であった。   〇廃止・縮減項目 一方、廃止・縮減項目数は単純合計ベースで国税7項目、地方税5項目、重複排除ベースで国税3項目、地方税4項目であった。 今回、廃止・縮減項目として挙げられた国税の3項目(重複排除ベース)は、国土交通省の「過疎地域における事業用資産の買換えの場合の課税の特例措置の廃止(所得税・法人税)」、経済産業省・国土交通省・農林水産省・環境省の「省エネ再エネ高度化投資促進税制(再生可能エネルギー発電設備等の特別償却)の廃止(所得税・法人税)」、経済産業省の「事業承継ファンドから出資を受けた場合の法人税等の特例の廃止(法人税)」であった。 また地方税では、経済産業省の「事業承継ファンドから出資を受けた場合の法人税等の特例の廃止(法人住民税・事業税)」、経済産業省・環境省の「コージェネレーションに係る課税標準の特例の廃止(固定資産税)」、国土交通省の「特定都市河川浸水被害対策法に規定する雨水貯留浸透施設に係る課税標準の特例措置の廃止(固定資産税)」及び「特例事業者等が不動産特定共同事業契約に基づき不動産を取得した場合に係る課税標準の特例措置の縮減(不動産取得税)」の4項目(重複排除ベース)であった。   〇研究開発税制の拡大・延長 経済産業省の要望の筆頭には研究開発税制の見直しが掲げられた。特に今回の要望では、①研究開発投資の増加を促すための「税額控除上限」の引上げ、②リアルデータ・AIを活用したビジネスモデルの転換に不可欠でありながら、現状制度の対象外となっている、クラウド環境で提供するソフトウェアに係るアルゴリズム構築等の研究開発行為を税制の対象に追加等の措置が盛り込まれた。 このほかにも、期限を迎える総額型の控除率の上乗措置の適用期限の延長、試験研究費の額が平均売上金額の10%超の場合の上乗措置の適用期限の延長、中小企業者等について、試験研究費が8%超増加した場合の上乗措置の適用期限の延長も要望されている。 研究開発税制の拡充は、経済産業省の他、内閣府、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、環境省、防衛省の要望にも掲げられている。   〇自社株式等を対価としたM&A等 経済産業省の要望では、昨年の会社法改正で創設された株式交付制度も念頭に、企業の機動的な事業再構築を促すための株式を対価とするM&Aの円滑化を図るため、事前認定を不要とするなど実効的、かつ恒久的な制度として、被買収会社株主の株式譲渡益への課税繰延措置の創設が掲げられている。 また、同省は、ウィズコロナ/ポストコロナ時代のビジネスモデル変革の促進の観点から、こうした経営改革を前提に、①コロナ禍による厳しい経営状況からのV字回復の実現と、②ビジネスモデルの変革に資するDX投資の促進に対し、租税特別措置(投資への特別償却・税額控除、繰越欠損金の控除上限の引上げ等)を講ずるよう要望している。   〇中小企業税制 新型コロナ禍から立ち上がる中小企業の成長支援、地域経済の活性化の観点から中小企業税制関係の項目が多数の省庁で挙げられている。 まず、中小企業による経営資源集約化等(事業譲渡、株式譲渡、合併等)に係る税制措置の創設が、経済産業省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省から要望されている。 また、期限を迎える中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制については、経済産業省のほか、総務省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省(商業・サービス業・農林水産業活性化税制は国土交通省を除く)からも2年の延長が要望されている。 これらの他、中小企業者等の資金繰り負担の緩和の観点も踏まえ、中小企業者等の法人税率の特例の延長が経済産業省から要望され、また、金融庁からは、第三者への事業承継に係る課税猶予措置の創設、中堅・中小企業向けプロパー融資(金融機関が実行する国内勘定の企業向け融資のうち信用保証協会の保証がない融資)の前年度比増加額の一定割合について損金として認められる税制特例の創設も要望されている。   〇国際金融ハブ取引 金融庁は、昨今の香港の情勢を踏まえ、金融事業者・高度金融人材の日本への受け入れを加速し、日本を国際金融ハブとして確立するための税制措置を経済産業省とともに要望している。また、期限を迎える教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の延長は文部科学省とともに、結婚・子育て資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の延長は内閣府とともに要望している。   〇確定拠出年金の拠出限度額 厚生労働省からは、企業型・個人型確定拠出年金の拠出限度額の見直しが要望されている。 企業型確定拠出年金(企業型DC)の拠出限度額は、現行は月額5.5万円となっており、企業型DCと確定給付企業年金(DB)を併せて実施する場合は、月額5.5万円からDBの掛金額を控除する必要があるが、現行制度では全てのDBの掛金額を月額2.75万円と一律に評価し、企業型DCの拠出限度額は残りの月額2.75万円となっている。しかし、現在のDBの掛金額の実態は、月額2.75万円より低い場合が多く、DB間で格差も大きい。また、個人型確定拠出年金(個人型DC)の拠出限度額は、現行は企業年金(DB・企業型DC)の加入状況によって異なっている(月額2万円、1.2万円等)。こうしたことを踏まえ、企業型DC・個人型DCの拠出限度額について、DBごとの掛金額の実態を反映し、より公平な算定方法に改善を図るよう求めている。   〇固定資産税の評価替え 土地関係では、3年に1度の固定資産の評価替えのタイミングにあたる中、近年商業地の地価が上昇しており、地価上昇地点においては税負担額が増加するおそれがあることから、国土交通省は、現行の負担調整措置等を3年間延長するとともに、新型コロナ禍の影響により経済が大きな打撃を受けているという状況に応じて所要の措置を講じるよう求めている。経済産業省からも同様の要望がなされている。 また、現在、法制審議会の民法・不動産部会では、所有者不明土地問題への対処の観点から検討が進められているが、法務省は、①相続登記の促進のための登録免許税の特例措置の拡充及び延長と、②相続登記等の申請の義務化等を含めた不動産登記法等の見直しに係る登録免許税の減免措置、を要望している。 (了)

#No. 390(掲載号)
#小畑 良晴
2020/10/15

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第19回】「使用人兼務取締役に係る役員報酬と事業報告」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第19回】 「使用人兼務取締役に係る役員報酬と事業報告」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 使用人兼務取締役の位置づけ 会社法上、監査役は使用人を兼ねることができず(会社法335②)、監査等委員である取締役は、監査等委員会設置会社等の使用人を兼ねることができない(会社法331③)。しかし、これら以外の取締役に関してはこのような規定がなく、株式会社において使用人と取締役を兼ねる例は従来から多数存在していた。現在では、使用人兼務取締役を認める考えが支配的見解となっている。使用人兼務取締役は、その名の通り委任契約に基づく取締役としての地位と(※1)、労働契約に基づく使用人としての地位の2つの地位を有することとなる。 (※1) 取締役と会社の関係については【第10回】参照。 これに対し、法人税法は「使用人兼務役員」と称して、使用人と取締役を兼ねる立場を対象とした規定が設けられており、法人の役員のうち、部長、課長、支店長、工場長、営業所長、支配人、主任等の、法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するもののみが使用人兼務役員となることができると示されている(法法34⑥、法基通9-2-5)。したがって、社長や理事長、副社長や専務等の職制上の地位を有する役員は、使用人兼務役員となることはできない(法令71①、法基通9-2-4)(※2)。 (※2) 「専務取締役」に選任されていない役員が当該名称を付した名刺を持ち営業活動を行っていた場合に、使用人兼務役員に該当するとされた事例として、国税不服審判所昭和56年1月29日裁決(裁決事例集No.21-107頁、TAINS:J21-3-03)がある。 また、【第1回】のみなし役員と同じく、同族会社の特定株主等に該当する役員も使用人兼務役員とは取り扱われないこととなる(法令71①五、法基通9-2-7)。   (2) 使用人としての給与部分の取扱い このような使用人兼務取締役に対して報酬を支給する場合、取締役に対する役員報酬については株主総会等で決議することは当然として、使用人としての給与部分も役員報酬と同様、株主総会等で決議するべきなのかという問題がある。 この点については、既に最高裁判決が存在しており、「使用人として受ける給与の体系が明確に確立されている場合においては、使用人兼務取締役について、別に使用人として給与を受けることを予定しつつ、取締役として受ける報酬額のみを株主総会で決議することとしても、取締役としての実質的な意味における報酬が過多でないかどうかについて株主総会がその監視機能を十分に果たせなくなるとは考えられない(下線部筆者)」と示している(※3)。 (※3) 最高裁昭和60年3月26日判決(判例時報1159号150頁、TAINS:未搭載)。仮に各取締役が使用人としての給与を自由に決定できるのであれば、会社法上の利益相反取引とみなされる可能性もあるため(会社法356①二)、株主総会にその事実を開示して承認を受ける必要があると思われる。 その上で、法人税の所得計算においては、使用人兼務役員の使用人としての給与や賞与は損金算入されるということが前提となる(法法34①括弧書き)。この場合において、使用人としての賞与に関しては事前確定届出給与に関する届出書の提出も不要となる。しかし、使用人としての賞与について、他の使用人と異なる時期に支給したり、通常の賞与時期に支給せず未払金として計上したりした場合には、当該使用人賞与部分は損金不算入となる(法令70三、法基通9-2-26)。 使用人兼務役員に係る役員給与を考える上で特に注意したい点は、このような過大役員給与の判定である。すなわち、過大役員給与の判定の場面で(※4)、実質基準については使用人の給与部分がその判定対象に含まれ(法基通9-2-21)、形式基準においては、株主総会等で役員給与部分のみ決議していることを前提に、使用人としての職務相当として認められる範囲のみが形式基準判定の対象外となることに留意したい(法令70一ロ)。 (※4) 詳細は【第3回】参照。 したがって、会社法上、税務上双方において、このような使用人と取締役を兼ねるリスクを回避するためには、使用人としての給与額は給与テーブル等を設定し、客観的に決定することが最低限必要となる。また、使用人としての職務相当を超えた額を形式的に使用人給与として支給した場合は、税務上の疑義が生じるだろう(※5)。 (※5) 使用人としての給与の適正額の考え方は法人税基本通達9-2-23に示されており、それによると、①類似職務に従事する他の使用人に対して支給した給与額に相当する金額、②比準すべき使用人がいない場合には、当該使用人兼務役員が役員になる直前に受けていた給与の額等、を斟酌して適正額を判断することとなる。   (3) 事業報告への反映 本件は上場企業であるため、公開会社としての事業報告が必要となる(会社法施行規則119以下)(※6)。事業報告では、株式会社の会社役員に関する事項のうち、役員等の報酬の総額や、各会社役員の報酬等の額又はその算定方法に係る決定に関する方針の概要などを明らかにしなければならない(会社法施行規則121四~六)。 (※6) 会社法上は、公開会社につき、発行する株式の全部又は一部について譲渡制限を課していない会社と位置付けている(会社法②五)。 すなわち、冒頭の質問にあった使用人としての給与部分の取扱いは会社法施行規則で明示されていないため、事業報告に反映させる義務はないと考えられる。しかし、「会社役員に対する重要な事項」であれば事業報告に反映させる必要があるため(会社法施行規則121十一)、例えば取締役としての役員報酬部分よりも使用人としての給与の方が極端に高額な場合等は、使用人兼務取締役が支給を受ける金額全てを示す必要もあるだろう。 なにより、上場企業であれば、株主総会で使用人兼務取締役に係る人件費について質問を受けることもある。株主からの信頼を獲得するためには、使用人兼務取締役が支給を受ける総額のうち、役員報酬部分と使用人部分の割合等、ある程度の情報は開示する必要があるのではないかと思われる。したがって、使用人の給与額の割合を高め、事業報告に反映させないようにすることは、リスキーだと言わざるを得ないだろう。 (了)

#No. 390(掲載号)
#中尾 隼大
2020/10/15
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