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《速報解説》 中小企業強靱化法の施行日は2019年7月16日で確定~特定事業継続力強化設備等の特別償却適用に必要な事業計画・認定手続等を規定~

《速報解説》 中小企業強靱化法の施行日は2019年7月16日で確定 ~特定事業継続力強化設備等の特別償却適用に必要な事業計画・認定手続等を規定~   Profession Journal編集部   令和元年度(平成31年度)税制改正で創設された特定事業継続力強化設備等の特別償却制度(措法44の2、11の4)は、青色申告書を提出する中小企業者(適用除外事業者を除く)が防災・減災を目的とした一定の設備(特定事業継続力強化設備等)を取得等して事業供用した場合に20%の特別償却を受けられるというもの。 本制度は、6月5日に公布された「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律」(中小企業強靱化法)の施行日から令和3年(2021年)3月31日までが適用期間とされており、このほど経済産業省は、中小企業強靱化法の施行日が「2019年7月16日」となることを明らかにした(施行日を定めた政令は12日の公布予定)。 中小企業強靱化法は上記の法律の正式名称のとおり複数の改正法がセットになったものだが、創設された特別償却制度の適用を受けるためには、このうち改正中小企業等経営強化法に新たに規定された「事業継続力強化計画」を作成し、経済産業大臣の認定を受ける必要がある。近年創設の各設備投資減税と同様、適用には一定の事業計画の作成・申請を要することから、税理士等の支援も必要とされよう。 なお、中小企業強靱化法に関連する整備法や上記計画に係る基本方針等は5月31日から6月30日までの間、パブリックコメントに付されており、上記施行日政令と合わせて公布されるものと思われる。 【参考①】特別償却制度の概要 (※) 経済産業省ホームページより 中小企業強靱化法では他に、中小企業者等(ベンチャー企業)の社外高度人材活用に係るストックオプション税制の適用に必要な事業計画認定制度や、個人版事業承継税制の創設に伴い遺留分に関する民法特例の対象を個人事業者に拡大する等の経営承継円滑化法の改正などが織り込まれている。 【参考②】中小企業強靱化法の概要 (※) 経済産業省ホームページより ※本誌では8月下旬に、上記特別償却制度に関する解説記事を掲載する予定です。 (了)

#No. 325(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2019/07/10

《速報解説》 国税庁、定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ(全20問)を公表~新設9-3-5-の2の詳解や契約内容の変更等に係る取扱いを説明~

《速報解説》 国税庁、定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ(全20問)を公表 ~新設9-3-5-の2の詳解や契約内容の変更等に係る取扱いを説明~   Profession Journal編集部   先月(6月28日)に定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いを整備した法人税基本通達等の一部改正通達が公表され、既報のとおり、解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険を除く定期保険又は第三分野保険については、令和元年7月8日以後の契約分から新たな取扱いによることとされている。 このほど国税庁は7月8日、ホームページ上で、改正後の通達に関して寄せられた主な質問に対する回答を取りまとめた「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」を公表した。 今回示された全20問のFAQでは、改正通達の適用時期に関するQ1から始まり遡及適用は行われない旨示したほか、新設された法基通9-3-5の2に関するものが中心になっている。 例えば9-3-5の2の表内にある「期間」とは保険契約の開始の日(契約日)以後1年ごとに区分した各期間のうち特定の期間をいい法人の各事業年度とは異なる点や(Q3)、(最高)解約返戻率の計算等に用いられる「解約返戻金相当額」は、保険設計書等に記載された、個々の契約内容に応じて設定される金額として契約時に保険会社から保険契約者に示された金額によることとし、各保険商品の標準例としてパンフレット等に記載された金額ではない点が説明されている(Q4)。 またQ9では定期保険及び第三分野保険に係る保険料の原則的な取扱いとなる法基通9-3-5が適用される「年換算保険料相当額が30万円以下か否か」の判定に関し、追加加入や解約等をした場合の取扱い、Q13では改正通達が適用される前の契約に係る定期保険等について適用日後に契約内容の変更があった場合、特約に係る保険料を支払った場合(Q18)、現在加入している養老保険を定期保険又は第三分野保険に転換した場合(Q19)などの取扱いが示されている。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 325(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2019/07/09

《速報解説》「時価の算定に関する会計基準」及び同「適用指針」等が公表される~原則2021年4月1日以後開始事業年度から適用、経過措置に留意~

《速報解説》 「時価の算定に関する会計基準」及び同「適用指針」等が公表される ~原則2021年4月1日以後開始事業年度から適用、経過措置に留意~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2019年7月4日、企業会計基準委員会は、次のものを公表した。これにより、2019年1月18日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 これは、国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)が公正価値測定についてほぼ同じ内容の詳細なガイダンスを定めていることとの整合性を図るものである。 国際財務報告基準(IFRS)においてはIFRS第13号「公正価値測定」(以下「IFRS第13号」という)、米国会計基準においてはAccounting Standards Codification(FASBによる会計基準のコード化体系)のTopic820「公正価値測定」である。 上記の会計基準等に合わせて、日本公認会計士協会の次の実務指針等も改正されており、コメントの概要とその対応も公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 IFRS第13号の定めを基本的にすべて取り入れているが、「公正価値」の用語を用いず、「時価」の用語を用いている(時価算定会計基準24項、25項)。 1 範囲 時価算定会計基準は、次の項目の時価に適用する(時価算定会計基準3項)。 金融商品については、国際的な会計基準と整合させることにより国際的な企業間の財務諸表の比較可能性を向上させる便益が高いものと判断し、会計基準の範囲に含める(時価算定会計基準26項)。 例えば、年金資産については、その額を期末における時価により計算することとされており(「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号)22項)、金融商品が年金資産を構成する場合には、当該金融商品の時価の算定に時価算定会計基準が適用される。 金融商品以外の資産及び負債については、時価算定会計基準の範囲に含めた場合の整合性を図るためのコストと便益を考慮し、原則として、金融商品以外の資産及び負債は時価算定会計基準の範囲に含めていない(時価算定会計基準26項)。 棚卸資産会計基準におけるトレーディング目的で保有する棚卸資産は、時価算定会計基準の範囲に含まれる(時価算定会計基準27項)。 「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」(実務対応報告第38号)における仮想通貨は、時価算定会計基準の範囲に含まれない(時価算定会計基準27項)。 2 時価の定義 「時価」とは、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格をいう(時価算定会計基準5項、31項、金融商品会計基準6項)。 時価の定義の変更に伴い、改正前の金融商品会計基準におけるその他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる定めについては、その平均価額が改正された時価の定義を満たさないことから削除する(金融商品会計基準注解(注7)の削除)。 ただし、その他有価証券の減損を行うか否かの判断については、期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる取扱いを踏襲している。この場合であっても、評価差額の算定には期末日の時価を用いることとなる(「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号)91項、284項)。 3 時価の算定単位 資産又は負債の時価を算定する単位は、それぞれの対象となる資産又は負債に適用される会計処理又は開示による(時価算定会計基準6項)。 しかし、一定の要件のすべてを満たす場合には、特定の市場リスク(市場価格の変動に係るリスク)又は特定の取引相手先の信用リスク(取引相手先の契約不履行に係るリスク)に関して金融資産及び金融負債を相殺した後の正味の資産又は負債を基礎として、当該金融資産及び金融負債のグループを単位とした時価を算定することができる。本取扱いは特定のグループについて毎期継続して適用し、重要な会計方針において、その旨を注記する(時価算定会計基準7項)。 4 時価の算定方法 時価の算定方法として、次の事項が規定されている(時価算定会計基準8項~15項、時価算定適用指針5項~23項)。 時価の算定にあたっては、状況に応じて、十分なデータが利用できる評価技法(そのアプローチとして、例えば、マーケット・アプローチやインカム・アプローチがある)を用いる(時価算定会計基準8項)。 評価技法を用いるにあたっては、関連性のある観察可能なインプットを最大限利用し、観察できないインプットの利用を最小限にする(時価算定会計基準8項)。 時価の算定にあたって複数の評価技法を用いる場合には、複数の評価技法に基づく結果を踏まえた合理的な範囲を考慮して、時価を最もよく表す結果を決定する(時価算定会計基準9項)。 時価の算定に用いるインプットは、次の順に優先的に使用する(レベル1のインプットが最も優先順位が高く、レベル3のインプットが最も優先順位が低い。時価算定会計基準11項、12項)。 時価は、その算定において重要な影響を与えるインプットが属するレベルに応じて、レベル1の時価、レベル2の時価又はレベル3の時価に分類する(時価算定会計基準12項)。 負債又は払込資本を増加させる金融商品(例えば、企業結合の対価として発行される株式)については、時価の算定日に市場参加者に移転されるものと仮定して、時価を算定する(時価算定会計基準14項)。 負債の時価の算定にあたっては、負債の不履行リスクの影響を反映する。負債の不履行リスクとは、企業が債務を履行しないリスクであり、企業自身の信用リスクに限られるものではない(時価算定会計基準15項)。 5 第三者から入手した相場価格の利用 取引相手の金融機関、ブローカー、情報ベンダー等、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断する場合には、当該価格を時価の算定に用いることができる(時価算定適用指針18項)。 ただし、時価算定適用指針18項の定めにかかわらず、総資産の大部分を金融資産が占め、かつ総負債の大部分を金融負債及び保険契約から生じる負債が占める企業集団又は企業(以下「企業集団等」という)以外の企業集団等においては、第三者が客観的に信頼性のある者で企業集団等から独立した者であり、公表されているインプットの契約時からの推移と入手した相場価格との間に明らかな不整合はないと認められる場合で、かつ、レベル2の時価に属すると判断される場合には、一定のデリバティブ取引については、当該第三者から入手した相場価格を時価とみなすことができる(時価算定適用指針24項)。 総資産の大部分を金融資産が占め、かつ総負債の大部分を金融負債及び保険契約から生じる負債が占める企業とは、銀行、保険会社、証券会社、ノンバンク等が想定されている(時価算定適用指針49項)。 6 市場価格のない株式等の取扱い 時価算定会計基準においては、時価のレベルに関する概念を取り入れ、たとえ観察可能なインプットを入手できない場合であっても、入手できる最良の情報に基づく観察できないインプットを用いて時価を算定することとしている。 このような時価の考え方の下では、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券は想定されないことから、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券の定めを削除している(金融商品会計基準19項及び81-2項)。 ただし、市場価格のない株式等に関しては、たとえ何らかの方式により価額の算定が可能としても、それを時価とはしないとする従来の考え方を踏襲し、引き続き取得原価をもって貸借対照表価額とする取扱いとしている(金融商品会計基準19項及び81-2項)。 これにより、これまで時価を把握することが極めて困難であるとして、取得原価又は償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としていたもののうち、市場価格のない株式等に含まれないものについては、時価をもって貸借対照表価額とすることとなる。 市場価格のない株式とは、市場において取引されていない株式をいい、出資金など株式と同様に持分の請求権を生じさせるものは、同様の取扱いとする。これらを合わせて「市場価格のない株式等」という(金融商品会計基準19項)。 市場価格のない株式等(金融商品会計基準19項)については、時価を注記しないこととし、当該金融商品の概要及び貸借対照表計上額を注記する(金融商品時価開示適用指針5項)。 7 開示 金融商品時価開示適用指針では、基本的に、IFRS第13号の開示項目との整合性を図っているが、一部の開示項目についてはコストと便益を考慮して採り入れていないとのことである。 金融商品時価開示適用指針は、金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項として次の開示項目を注記するとしている(金融商品会計基準40-2項、金融商品時価開示適用指針5-2項、四半期適用指針80項)。 8 設例 時価算定適用指針では、IFRS第13号の設例を基礎として、次の設例を設けている。 また、金融商品時価開示適用指針では、「時価をもって連結貸借対照表価額とする金融資産及び金融負債」の記載例が示されており、レベル1、レベル2、レベル3の開示や時価の算定に用いた評価技法及びインプットの説明などが記載されている。   Ⅲ 適用時期等      Ⅳ 主なコメントの概要とその対応 2019年7月30日、企業会計基準委員会は、次のものを公表した。 公開草案に対して多くのコメントが寄せられており、会計基準等を理解するに際して有用なものと考えられる。 説明や設例の追加を求めるコメントも多く寄せられているが、IFRS第13号が規定していない具体例を示すことは、IFRS第13号への解釈を示しているとの誤解を与えるおそれがあると考えられるなどとして、特段の対応がなされていないものもある(コメント対応(21)など)。 例えば、次のようなコメントとその対応が記載されている。 (了)

#No. 325(掲載号)
#阿部 光成
2019/07/08

《速報解説》 配偶者居住権、二次相続(配偶者の死亡)での課税関係は生じず、期間中途の合意解除等の場合はみなし贈与課税~財務省が「令和元年度 税制改正の解説」で見解示す~

《速報解説》 配偶者居住権、二次相続(配偶者の死亡)での課税関係は生じず、 期間中途の合意解除等の場合はみなし贈与課税 ~財務省が「令和元年度 税制改正の解説」で見解示す~   Profession Journal編集部   今月1日より改正相続法が本格的に施行され今後の遺産分割実務への影響も大きいところだが、本改正のうち税理士等からの注目度の高い「配偶者居住権の創設」は、来年(令和2年)4月1日以後開始の相続から適用される。 配偶者居住権については、令和元年度税制改正で相続税法によってその評価方法(※)が定められたが(相法23の2、相令5の8、相規12の2~4)、配偶者居住権を有する配偶者が死亡した場合(いわゆる二次相続の場合)、配偶者居住権は消滅するものの、配偶者の相続税の計算上、配偶者居住権を加味する必要はないのか等、取扱い上の疑問が残されていた。 (※) 配偶者居住権の評価方法と計算例については下記を参照されたい。 「相続税の実務問答 【第31回】「配偶者居住権に係る相続税課税」」 この点については、今後公表される相続税法基本通達の一部改正によって明記されると見る向きもあるが、7月3日付で財務省が公表した『令和元年度 税制改正の解説』において、その見解が示された。 『令和元年度 税制改正の解説』(503ページ)では、「配偶者居住権に関するその他の取扱い」として、配偶者が死亡した場合には民法の規定により配偶者居住権が消滅し、居住建物の所有者はその居住建物について使用収益できることとなるとした上で、これは民法の規定により(予定どおり)配偶者居住権が消滅するものであり、配偶者から居住建物の所有者に相続を原因として移転する財産はないため、相続税の課税関係は生じないとする見解を示した(配偶者居住権の存続期間が終身ではなく10年等の有期で設定され存続期間が満了した場合も同様)。 この見解について財務省は、居住建物の所有者が使用収益することが可能となったことを利益と捉え、その居住建物の所有者に対してみなし課税をするという考え方もあるものの、次の事項を踏まえれば、課税の公平上問題があるとも言えないことから、みなし課税をする必要はないとした。 また、後述する「期間の中途での消滅の場合」と異なり、「配偶者は、その死亡による配偶者居住権の消滅の時に、当初設定した配偶者居住権に基づき建物の使用収益の完了に至ることから、移転し得る経済的価値は存在しないと考えられ、相続税法第9条の規定の適用もないと考え」るとした。 さらに、配偶者居住権の評価に用いる存続年数は原則として平均余命によることとされているが、実際には、配偶者は相続税の課税時期における平均余命より早く亡くなる場合もあれば、それより長く生存する場合もあり、課税時期に想定された平均余命による評価額と実際の死亡時期を用いた事後的な評価額とでは結果的に差を生じることとなる点について、同じく平均余命によっている定期金に関する権利の評価(相法24)と同様に、「平均余命による評価は、課税時期における最も合理的な評価方法であると考えられることから、この差を生じたことに伴い事後的に税額を調整する必要はないものと考えられ」るとしている。 (※) なお、上記ケースとは異なり「配偶者より先に所有者が死亡した場合」の取扱いについては、この場合、配偶者居住権は存続中であるため、居住建物の所有権部分の評価においては、相続税法上に定められた通り配偶者居住権の価額を控除することとしている。 一方で、配偶者による放棄や所有者との合意解除、配偶者が民法第1032条第1項の用法遵守義務に違反した場合などの事由によって、配偶者居住権の存続期間の満了前に配偶者居住権が消滅する場合、居住建物の所有者は期間満了前に居住建物の使用収益ができることになるが、この場合は配偶者居住権が消滅したことにより所有者に使用収益する権利が移転したものと考えられることから、相続税法第9条の規定により配偶者から贈与があったものとみなして、居住建物の所有者に対して贈与税が課税されるとした。 『令和元年度 税制改正の解説』では上記のほか、配偶者居住権及び居住建物の物納の扱い(503ページ)や、配偶者居住権が設定されている場合の小規模宅地等の特例適用における調整計算について事例が示されている(539ページ)。 (了)

#No. 325(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2019/07/04

プロフェッションジャーナル No.325が公開されました!~今週のお薦め記事~

2019年7月4日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.325を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2019/07/04

monthly TAX views -No.78-「一般的否認規定の検討を」

monthly TAX views -No.78- 「一般的否認規定の検討を」   東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 森信 茂樹   先日、日本経済新聞社から、ソフトバンクグループが修正申告をした件につき、コメント依頼があり、スキームの詳細は知らないという前提で、以下のように答えた。 限られた紙面なので、意が尽くせない部分もあり、以下、もう少し詳しく述べてみたい。 *  *  * 違法である脱税と合法である節税の中間に位置する租税回避は、国際的にも国内的にも拡大の傾向にある。これに対してわが国を除くG7諸国は、適用要件を明確にした上で、その取引の税法上の効果を否認できるよう一般的な否認規定(GAAR:General Anti-Avoidance Rule)を導入して、租税回避へのけん制も含めた対応を行っている。 一方、わが国にはそのような規定がない、あるいはこれから述べるように、個別否認規定があっても、法律の文言が抽象的で、納税者にとって、経済取引の予見可能性や法的安定性が欠けるといった大きな問題が生じている。 IBM事件やヤフー事件では、個別否認規定の文言が抽象的で、事実認定に基づく解釈を巡り裁判所の見解が異なるという問題が生じている。 この原稿を書いている最中の6月28日付の朝刊各紙は、ユニバーサルミュージックの組織再編が否認された事案について、東京地裁が「組織再編には経済的な合理性があった」として課税処分を取り消す判断が下された旨報道している。 このように、わが国の経済取引の予見可能性や法的安定性は大変低下している。 *  *  * 租税回避否認規定を整備している各国のアプローチは、大きく分けて、米国型と欧州(大陸法)型の2つがある。 米国では、その取引に経済合理性(economic substance)があるかどうかによりその取引の税務上の効果が判断されるが、経済実質があったかどうかについて、主観的要件と客観的要件という2つの基準が明確化されている。 一方、欧州諸国の一般的否認規定は「法の濫用アプローチ」と呼ばれ、取引が法律の趣旨・目的に反しているかどうかで判断される。欧州司法裁判所(ECJ)は、ハリファックス事件やキャドバリー・シュウェップス事件(いずれも2006年)で、法の濫用アプローチを確立して、その成果を踏まえたものになっている。 もっとも、米国のアプローチと大陸法のアプローチに大きな相違があるわけではなく、双方は「コインの裏表」の論理であるといってもよい。 筆者が推奨するのは、英国のアプローチである。アーロンソン報告書を経て2013年にGAAR(General Anti-Abuse Ruleで、Avoidanceではない)を導入した。注目すべきは、租税回避の認定に当たって、経済界の専門家で構成される諮問委員会(GAAR PANEL)への付議が要求されていることで、税制専門家や法曹だけでなく、広く経済界の見解も取り入れて判断していることである。カナダやフランスも同様の委員会を設置している。 翻ってわが国の状況を見てみよう。平成29年度の与党税制改正大綱では、補論として、租税回避スキームの開発・販売・利用者に税務当局への報告を義務付ける『義務的開示制度』の検討が記されている。 わが国で一般的否認規定の議論を開始するにあたっては、まずはこの点から議論していくことが望ましい。議論の機は熟している。 (了)

#No. 325(掲載号)
#森信 茂樹
2019/07/04

定期保険及び第三分野保険に係る改正法人税基本通達の取扱いとその影響 【第1回】「見直しの契機となった保険商品の特徴」

定期保険及び第三分野保険に係る 改正法人税基本通達の取扱いとその影響 【第1回】 「見直しの契機となった保険商品の特徴」   税理士 三輪 厚二   国税庁は2019年(令和元年)6月28日付けで「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」を公表、同年4月11日から5月10日にかけてのパブリックコメント(意見募集)を経て、かねてから問題視されていた企業向けの保険商品を使った節税策を規制する見直しを行った。 保険会社により名称は異なるが、今回の規制のきっかけとなったのは「一定期間災害保障重視型定期保険」と呼ばれる保険商品であり、その仕組み及び特徴をまとめると、おおむね次のようなものである。 【一定期間災害保障重視型定期保険(イメージ図)】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【設計書(例)】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 この保険は、死亡保障が付いた定期保険ではあるが、保険期間の前半(第1保険期間)は病気による死亡保障が付いておらず、ケガや事故による保障(傷害死亡保険金)だけとなっているという点に特徴がある。 日本生命が2017年に「プラチナフェニックス」として売り出したのが始まりで、保険料は全額損金、しかも数年後に解約した場合は80%を超える返戻金があり、税効果を含めた実質解約返戻率は100%を超える効果が見込まれるというトークで販売され、一躍人気商品となった。 利益が見込まれる決算に、この保険に加入して保険料を年払いすれば、利益が圧縮され、節税効果が見込まれるほか、解約返戻金のピーク時に解約すれば高額の返戻金が戻るため、大きなメリットが享受できるというわけだ。 その後、東京海上日動あんしん生命やアクサ生命、朝日生命、第一生命グループのネオファースト生命などから同様の災害保障重視型の定期保険が発売され、解約返戻率のピークが5年になるようなものまで様々な商品が開発された。さらには、保険料を構成する「付加保険料(保険会社の経費などからなるもの)」の割合を引き上げ、保険料を高く(節税効果を大きく)しようとする商品までもが登場した。 このような状況に対して金融庁がこれを問題視し、節税効果を高めるための恣意的な付加保険料の操作は合理性がないとして、法人向け定期保険の付加保険料の実態調査を行ったうえで、生保各社に是正するよう指導が行われた。 一方、国税庁としては、これまでも保険料の損金算入に規制をかける個別の通達によって手当てを行ってきたが、その都度、新たな規制をかいくぐる保険商品が開発されるという“いたちごっご”のような状況が続いてきたことから、これまでの保険の種類に応じた個別通達を廃止したうえで、最高解約返戻率を指標とする抜本的な見直しを行うこととなった。 国税庁は4月11日に本改正案である「「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)ほか1件の一部改正(案)(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)等に対する意見公募手続の実施について」を公表、5月10日までパブリックコメントに付された後、冒頭の通り令和元年6月28日に改正通達を公表した。 改正通達では、これまで取扱いが明らかでなかった保険期間が終身で保険料の払込期間が有期である第三分野保険の保険料及び解約返戻金のない短期払いの定期保険等についても、その取扱いが明確にされた。 なお、改正通達は令和元年7月8日以後の契約に係る定期保険又は第三分野保険の保険料について適用され、遡及適用はされない。ただし、定期保険又は第三分野保険のうち、解約返戻金がなく(ごく少額の払戻金がある契約を含む)、保険料払込期間が保険期間より短いものについては、令和元年10月8日以後の契約分からの適用となる。 改正された通達のポイントは、次のとおりである。 次回は改正通達における取扱いについて解説を行う。 (了)

#No. 325(掲載号)
#三輪 厚二
2019/07/04

平成31年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第2回】「研究開発税制の見直し(その2:総額型のベンチャー企業に係る見直し)」

平成31年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第2回】 「研究開発税制の見直し(その2:総額型のベンチャー企業に係る見直し)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   (2) 総額型の「控除限度となる法人税額基準額」について、連結納税グループがベンチャー企業の要件に該当する場合、調整前連結法人税額に乗じる割合(控除限度割合)を25%ではなく、40%とする。 控除限度割合が25%から40%に引き上げられるベンチャー企業の要件は以下のとおりとなる(措法42の4②、68の9②)。 なお、総額型の控除限度割合は、一定の要件を満たした場合、最大10%が上乗せされるため、ベンチャー企業の要件を満たした場合、総額型の10%上乗せ後の控除限度割合は、最大50%となる。 【控除限度割合が40%になるベンチャー企業の要件】 ※1.総額型の適用を受ける事業年度又は連結事業年度をいう。 ※2.繰越欠損金の控除限度割合が100%となる新設法人の特例で定める設立日をいう(法法57⑪三、法令112⑱)。したがって、原則、その法人の設立日となるが、合併をした場合は、合併法人(対象法人)と被合併法人の設立日のうち最も早い日とするなど、組織再編による「みなし規定」がある。 ※3.連結欠損金の控除限度割合が100%となる新設法人の特例で定める設立日をいう(法法81の9⑧三、法令155の21の2⑤)。したがって、原則、その連結法人の設立日となるが、合併をした場合は、合併法人(連結法人)と被合併法人の設立日のうち最も早い日とするなど、組織再編による「みなし規定」がある(『連結納税適用法人のための平成27年度税制改正【第3回】』参照)。この場合、連結子法人の設立日も、連結親法人と同様に、当該連結子法人を連結親法人とみなした場合の新設法人の特例で定める設立日とする。 このベンチャー企業の控除限度割合の引上げ(25%⇒40%)について、単体納税と連結納税の違いは、単体納税は個社ごとに、連結納税は連結納税グループ全体でベンチャー企業に該当するかどうかを判定することにあるが、それ以外にも、以下のように、それが適用できる事業年度の範囲について、単体納税と連結納税で異なることになる。 単体納税の場合 控除限度割合が40%になるベンチャー企業(以下、「ベンチャー企業」という)に該当するためには、繰越欠損金を保有していないといけない。 一方、研究開発税制が適用されるためには、そもそも法人税額が発生している必要がある。 そして、繰越欠損金の控除限度割合が100%となる場合で、繰越欠損金の未使用額が残る場合、法人税額が発生しない。 ここで、繰越欠損金の控除限度割合が100%となる場合は、内国法人が「中小法人」、「経営再建中の法人」、「新設法人」のいずれかに該当する場合となる(なお、本稿では経営再建中の法人に該当しないことを前提とする)。 したがって、適用年度が以下に該当する場合、繰越欠損金の控除限度割合が100%となるため、ベンチャー企業に該当しても、法人税額が0となり、研究開発税制を適用することはできない(法法57⑪、法令112⑭~⑲)。 言い換えると、単体納税において、対象法人がベンチャー企業に該当し、控除限度割合が40%になるケースは、以下に該当する場合となる。 (注1) 決算期変更をしていないと仮定した場合となる。なお、設立日が、期首日(決算日の翌日)以外の日である場合、第9期から第11期となる。また、上場後に終了する事業年度は、新設法人の特例は適用できないため、その場合、「設立日から同日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する事業年度」であっても、上場後に終了する事業年度は上記①を満たすことになる。 (注2) ただし、大法人(資本金の額が5億円以上である法人)の100%子法人、100%グループ内の複数の大法人に発行済株式(自己株式等を除く)の全部を保有されている法人、株式移転完全親法人に該当する場合を除く。 連結納税の場合 連結納税では、特定連結欠損金を有している場合、連結欠損金の控除限度割合が100%になる場合であっても、連結欠損金の未使用額が残りつつ、連結法人税額が発生するケースが生じる(法法81の9①⑧)。 つまり、連結納税では、特定連結欠損金を有している場合、すべての連結法人の設立日が10年以内であれば、連結親法人が中小法人又は新設法人に該当する場合であっても、ベンチャー企業の控除限度割合の引上げ(25%⇒40%)を適用することが可能となる。 ここで、特定連結欠損金を有している場合とは、設立から10年以内に連結納税を開始した場合で、連結子法人の連結納税開始前の繰越欠損金が特定連結欠損金となる場合や10年以内に連結子法人が加入した場合で、連結納税加入前の繰越欠損金が特定連結欠損金となる場合が該当する。 この場合、すべての連結法人(加入した連結子法人を含む)の設立日が10年以内、かつ、連結親法人が大法人(資本金の額が5億円以上である法人)の100%子法人、100%グループ内の複数の大法人に発行済株式(自己株式等を除く)の全部を保有されている法人、株式移転完全親法人のいずれにも該当しない場合、ベンチャー企業の控除限度割合の引上げ(25%⇒40%)を適用することが可能となる。 なお、連結納税グループが非特定連結欠損金しか有していない場合、連結納税グループがベンチャー企業に該当し、控除限度割合が40%になるケースは、以下に該当する場合となる。 (注1) 適用年度中に10年以内であればよい。 (注2) 決算期変更をしていないと仮定した場合となる。なお、設立日が、期首日(決算日の翌日)以外の日である場合、第9期から第11期となる。また、連結親法人の上場後に終了する連結事業年度は、新設法人の特例は適用できないため、その場合、「設立日から同日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する連結事業年度」であっても、上場後に終了する連結事業年度は上記②を満たすことになる。 (注3) ただし、大法人(資本金の額が5億円以上である法人)の100%子法人、100%グループ内の複数の大法人に発行済株式(自己株式等を除く)の全部を保有されている法人、株式移転完全親法人に該当する場合を除く。   (了)

#No. 325(掲載号)
#足立 好幸
2019/07/04

《相続専門税理士 木下勇人が教える》一歩先行く資産税周辺知識と税理士業務の活用法 【第3回】「税理士が「本当に」認識すべきは問題解決ツールとしての民事信託」

  《相続専門税理士 木下勇人が教える》 一歩先行く資産税周辺知識と税理士業務の活用法 【第3回】 「税理士が「本当に」認識すべきは問題解決ツールとしての民事信託」   公認会計士・税理士 木下 勇人   税理士は「民事信託」について聞かれたとき、「課税関係」だけを答えればよいだろうか。筆者は、税理士としては課税関係よりも、民事信託で何ができるのか、つまり、どんな問題解決が可能なのかを知ることが何よりも先決と考える。 そこで今回は、問題解決ツールとしての民事信託の機能のうち「財産管理機能」を取り上げ、各場面に連動する課税関係についてフォーカスしたい。   1 問題解決ツールとなる財産管理機能 自分(委託者)の保有する財産を受託者に引き渡し、自分(委託者)の代わりに受託者が財産の管理運用を行う。これを信託における「財産管理機能」と呼ぶ(他に転換機能、倒産隔離機能があるが割愛する)。 財産管理委任契約は、委任者や受任者の両方又は一方が死亡した場合に契約が終了するが、信託契約の場合には、①委託者が死亡した後も受託者による財産の管理運用が可能であり、②受託者が死亡した後も次の受託者を指定しておけば、次の受託者によって財産の管理運用は可能となる。 また、民事信託では多くのケースで、受益者等課税信託(受託者をパス・スルーして受益者に課税される導管課税)での課税が多いため、委託者と受益者が同一(自益信託)か、異なる(他益信託)かによって課税関係を判断する。 (1) 認知症リスクのある本人(委託者)のための財産管理 父(委託者)が認知症になった後では、成年後見制度を導入しても特に実家売却のハードルが高くなる。しかし、民事信託契約を締結し、受託者(例えば長男)へ管理処分権限を委譲しておけば、受託者の権限で実家の修繕や売却が可能となる。 自益信託として設定しておくと、管理段階での所得は発生しないが、処分段階で譲渡所得税の問題が生じる。ただし、税務上の各種特例(居住用不動産の特例など)の適用は可能となる。 税理士としては、処分段階での申告実務を担うことはもちろん、信託期間中の受託者サポートをすることで受託者の負担を軽減することができる。 (2) 認知症リスクのある本人(委託者)のための収益不動産の管理処分 父(委託者)が認知症になると、収益不動産の賃貸管理、修繕、処分などが実行不可能となり、そのままでは不動産の収益性低下を招くことなる。そこで、民事信託契約を締結し、受託者(長男)に管理処分権限を委譲しておけば、受託者(長男)の権限で収益不動産の収益性を保つことが可能となる。ただし、一般に賃貸管理の全てを受託者(長男)が担うことは難しいため、賃貸管理業者へ外注するケースが多い。 自益信託として設定しておくと、毎年の不動産所得は受益者(父)の所得として確定申告を行うことになる。なお、受託者の権限で受益者(父)の生前に収益不動産を売却した場合は、受益者(父)の譲渡所得として申告が必要になる。 税理士としては、毎年の確定申告のみならず、信託口座の管理など、信託期間中の受託者へのサポートは、上記(1)のケースよりも負担が大きくなると想定しておくべきである。 (3) 認知症リスクのある配偶者のための財産管理 民事信託が本人(委託者)のための財産管理ツールとなることは上述のとおりであるが、本人(受益者:自益信託と想定)に相続が発生した場合に、その受益権を承継(遺言代用信託など)することや、その承継後の財産管理までを含む設計が可能である。 具体的には、受託者を長男、第一次受益者を本人(父)の自益信託としておき、本人(父)の相続発生後の第二次受益者を配偶者とし、受託者である長男に継続して信託財産の管理を担わせることが可能である。配偶者が認知症の場合には、配偶者が相続で財産を取得したとしても、配偶者自ら財産管理できなくなるため、本人(父)は生前、不安な毎日を過ごすことになってしまう。そこで、生前に受託者(長男)と民事信託契約を締結し、上記スキームを構築する。 委託者(父)としては、自らの財産のうち、どの財産を信託財産として受託者(長男)に管理を任せるべきか、真剣に考える必要がある。全ての財産を信託する必要はなく、信託しない財産は遺言で承継を確実にすることにより、自らの財産の安定的な承継を望む委託者(父)本人の想いを実現することができる。 課税関係としては、受益者を父とする自益信託を設定しておくことが一般的であるが、父の想いを実現するためには、第一次受益者(父)に相続が発生した場合に備えて、第二次受益者として配偶者を設定しておき承継をさせる。その際、信託法では受益権の消滅と発生が同時に生じるが、税務上は受益権が相続されたとみなされ相続税の課税対象となる。 信託財産の中に小規模宅地等の特例が適用可能な不動産があれば、要件を満たすことで適用可能となる。また、信託財産に自宅敷地が入っていれば、本人(父)の生前に受益権の一部を配偶者へ贈与することが可能であり、その場合の課税関係としては、贈与税の配偶者控除の適用も可能となる(相基通21の6-9)。   2 民事信託に携わる税理士が把握しておくべき留意点 今後の民事信託実務にあたり、税理士として留意すべき事項を列挙する。 (1) 財産移転に対する抵抗感 登記簿謄本上の所有権は、「信託」を原因として受託者(例えば長男)へ移動することになる。所有者にとって所有権移動の心理的負担は大きな障害となるため、所有者には民事信託の仕組みを十分理解してもらう必要がある。 (2) 受託者を誰にするか? 信託期間中、委託者の想いを実現してもらうに足る信頼性のある者に受託を依頼する必要がある。民事信託組成にあたり、親族が受託者としての責任を十分に理解しているかの確認は必須となる。“名ばかりの受託者”では、信託する意味をなさない。 (3) 受託者の権限濫用に対する監督機関の設置 成年後見制度の代用として民事信託を組成した場合、受託者は家庭裁判所の管理外で信託財産を管理処分等するため、権限濫用の恐れが残る。そのため、信頼に足る者に信託監督人として受託者の監督を依頼するのも、委託者の想いの実現のためには必要な場合がある。 (4) 金融機関による対応遅れ 民事信託の組成にあたっては、信託口口座の開設、信託内借入の問題など、金融機関が関与する場面において未だ多くの問題が残る。徐々に対応可能な金融機関は増えてきたものの、相続対策としての民事信託の運用が広がりを見せるためには、金融機関の早期対応が望まれる。 (5) 他の法制度(遺言・後見など)との調整 信託だけでは、問題解決ツールとしては不十分であることは言及したが、遺言や任意後見制度などを併用することを推奨したい。本人の想いを実現するために、どの問題解決ツールを適用するかを検討し実行するのが今後の税理士の役割ともいえる。 (了)

#No. 325(掲載号)
#木下 勇人
2019/07/04

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例7】「医療用検査機器の機械装置該当性」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例7】 「医療用検査機器の機械装置該当性」   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、東京都内にある臨床検査を行う株式会社に勤務しております。私の勤務する会社では、近隣の病院やクリニックから委託を受けて、様々な臨床検査を行うことを主たる業務としております。その際、各種臨床検査機器を利用することとなりますが、会社の方針として、高額の医療機器は原則リースではなく購入により導入することとしております。 その際、医療機器を扱う商社から、わが社の場合、規模も小さく、法人税法上も中小企業者等に該当するため、導入した検査機器は特別償却の対象となる旨アドバイスを受けました。そこで、わが社の経理担当者はそのような経理処理を行っていたものと聞いていました。 さて、実は先日受けた税務調査で、専門商社から購入し既に事業の用に供している検査機器の特別償却が問題となりました。検査を担当している私も調査官に呼ばれていろいろヒアリングを受けましたが、その最後に、特別償却を適用した検査機器はすべて「器具備品」であって「機械装置」ではないから、適用対象外である、と言い渡されました。 私はそれに対し、「これは紛れもなく医療用の『検査機器』であり、機械装置であるか器具備品であるかどうかは関係ない」と反論しましたが、調査官は苦笑いするのみでした。経理担当者はおろおろするばかりで全く頼りにならないのですが、この問題はどのように対処すべきなのでしょうか、教えてください。   【A】 減価償却資産のうち、機械装置に該当するものは、判例上、標準設備(モデルプラント)を形成していることが求められており、それは資産の集合体が集団的に生産活動やサービスを行っていることを意味すると考えられます。 したがって、本件の医療用の検査機器のように、それぞれが独立して機能するものについては、機械装置ではなく器具備品に該当すると解するのが妥当ということになります。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 中小企業者等に対する特別償却制度 法人税に関しては、有形固定資産について、その使用又は時間の経過によって減価するのに応じて徐々に費用化する減価償却制度を採用しており、一般にこれは公正妥当な会計処理の原則に適合しているものと解されている。 しかし、一定の政策目的を達成するために、特定の減価償却資産については、その事業の用に供した日を含む事業年度において、普通償却限度額に加えて、取得価額の一定割合の金額につき償却することを認める「特別償却(初年度特別償却)」制度が採用されている。そのうちの1つが、本件で問題となった租税特別措置法第42条の6第1項第1号に規定する、中小企業者等が機械及び装置等を取得した場合の特別償却制度(※1)である。 (※1) なお、当該制度は1998年に導入されたもので、特別償却と特別控除の選択適用となっている。 本件の取引を図示すると、概ね以下の通りとなる。 〇本件の取引概要図 特別償却制度に基づき減価償却を行った場合と通常の減価償却を行った場合とを比較すると、初年度の減価償却費は特別償却制度のケースの方が多くなるが、耐用年数を通じた減価償却費総額(累計額)は、いずれの場合も同額となる。したがって、特別償却制度は非課税措置ではなく課税繰延措置であるといえる。 (2) 減価償却費の計上の要件 前回もみたところであるが、法人が固定資産(減価償却資産、法法2二十三)の減価償却費を各事業年度の損金の額に算入するためには、以下の2つの要件を満たす必要がある。 上記要件は、特別償却制度に基づき減価償却費を計上する場合も満たす必要がある。本件は、上記①②のいずれの要件も満たしているため、この点に関しては問題とならない。 (3) 判例上の「機械装置」の意義 本件で問題となった、租税特別措置法第42条の6第1項第1号に規定する中小企業者等が機械及び装置等を取得した場合の特別償却制度に関しては、裁判例(東京高裁平成21年7月1日判決・税資259号-124順号11237、訟月36巻7号1996頁(※2))があるので、以下で検討しておきたい。 (※2)  上告不受理・確定(最高裁平成22年9月7日決定・税資260号-146順号11502)。 当該裁判例は、中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別償却又は法人税の税額の特別控除を定めた租税特別措置法(平成18年法律第10号による改正前のもの(※3))42条の6の適用の有無が問題となった事案である。 (※3) 改正前は、いわゆるリース税額控除制度(旧措法42の6③)があったが、平成20年4月1日以降に締結される契約による所有権移転外リースが「売買、資産の取得」とされたことから、改正後の措置法42条の6第1項の特別償却制度は、リース取引により取得した機械装置等に対しては適用がない。 すなわち、主として臨床検査、公害検査、水質検査等を目的とする会社であり、医療機関ではない控訴人が、臨床検査で使用するリース物件である原判決別表1及び別表2記載の各資産(※4)(以下「本件各資産」)について、これが措置法42条の6第1項1号の減価償却資産に該当し、同条3項の規定が適用されるとして法人税の確定申告をしたところ、所轄税務署長から、同規定の適用を否定する内容の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受けたため、控訴人は、これらの処分の取消を求めたところである。 (※4) 全自動染色装置や血液ガス分析装置などである。 旧措置法42条の6第1項1号においては、減価償却資産として「機械及び装置並びに器具及び備品(特定機械装置等)」が挙げられている。このうち「器具及び備品」について、同号は財務省令で定めるものに限ると規定するが、同号の委任を受けた財務省令である旧租税特別措置法施行規則20条の2の2第1項には、本件各資産に該当するものが存在しない。 そこで、この点につき納税者は、本件各資産は旧措置法42条の6第1項1号の「機械及び装置」に該当すると主張したが、原審は、同号の「機械及び装置」並びにこれと区別される「器具及び備品」の意義を一義的に決することはできないとし、ある減価償却資産がいずれに該当するかの判断に当たっては、法的安定性の観点から、関連法規との整合性が図られるような解釈をする必要があるとした上で、本件各資産は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(平成19年財務省令第21号による改正前のもの)(別表第二)の「機械及び装置」ではなく、耐用年数省令(別表第一)の「器具及び備品」のうちの「医療機器」に当たるから、旧措置法42条の6第1項1号の「機械及び装置」に該当しないとして、控訴人の請求を棄却した。これに対し、納税者(控訴人)が控訴したところである。 控訴審における裁判所の判示は以下のとおりで、原審を維持した。 (4) 本件への当てはめ 現行法は、上記裁判例で問題となった旧法と若干規定が変わっており、対象となる減価償却資産として、「機械及び装置並びに工具」が挙げられている。そのため、現行法ではそもそも「器具備品」に該当する場合、特別償却制度の適用は受けられず、納税者側は臨床検査用医療機器が「機械装置」に該当すると主張するしかない。 上記裁判例では、「機械装置」といえるためには、標準設備(モデルプラント)を形成していなければならず、資産の集合体が集団的に生産手段やサービスを行っていなければならない、としている。通常、臨床検査用の医療機器は、検査項目等の使用目的は共通でなく、それぞれが独立して機能するものであることから、機械装置に該当すると解することは困難である。そうなると、本件で問題となる臨床検査用の医療機器は、機械装置ではなく器具備品と解するのが妥当ということになるであろう。 なお、平成20年度税制改正で、耐用年数省令別表第二の「機械及び装置」の区分が、従来の369から55に整理統合された。これにより、機械装置と器具備品の区分問題の解釈が変更されるか否かであるが、これについて、国税庁の通達改正の趣旨説明(平成20年12月26日付課法2-14ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明)によれば、 とされており、当該改正が「機械及び装置」の概念そのものに変更を加えているものではない、ということになる。したがって、上記裁判例で示された区分の考え方は、改正後も引き続き有効であると考えられる(※5)。 (※5) 藤曲武美「機械装置と器具備品等との区分」『税務弘報』2014年1月号111-112頁参照。 (5) 医療用機器の特別償却制度 ところで、医療用機器に関しては、租税特別措置法に別途特別償却制度がある(措法45の2)。それによれば、対象となる償却資産は医療用の機械及び装置のみならず器具及び備品も含まれるが、青色申告法人で医療保健業を営む法人であることが要件とされている。 そうなると、本件のような検査会社が対象となるのか問題となるが、通達によれば、法人の営む事業が措置法45条の2第1項に規定する医療保健業に該当するか否かは、総務省の日本標準産業分類を基準とするとある(措通45の2-4)。そこで日本標準産業分類を確認してみると、8492(検査業)は中分類84(保健衛生)の中の849(その他の保健衛生)に含まれていることから、本件のような検査会社も措置法の適用対象となるものと考えられる。 なお、前述(3)の裁判例では、措置法45条の2第1項に規定する医療機器には「機械装置」がある点も控訴人は主張しているが、裁判所は、 と判示している。 (6) 適用状況の統計 最後に、中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別償却(措法42の6)及び医療用機器の特別償却(措法45の2)の適用状況に関する統計を掲げてみる。 一見してわかる通り、適用業種の幅が広い前者の方が後者よりも件数・金額ともに2桁ほど規模が大きく、税収に与える影響も大きいといえる。 〇特別償却に係る適用状況の統計 (出典)財務省「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」(第198回国会提出) (了)

#No. 325(掲載号)
#安部 和彦
2019/07/04
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