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《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(平成30年1月~3月)」~注目事例(重加算税の賦課決定処分の取消し)の紹介~

 《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(平成30年1月~3月)」 ~注目事例(重加算税の賦課決定処分の取消し)の紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   国税不服審判所は、平成30年9月27日、「平成30年1月から3月分までの裁決事例の追加等」を公表した。今回追加された裁決は表のとおり全15件で、7件が国税通則法関連で、かつ、「隠ぺい、仮装の認定」がそのうち5件となっている。 その他の税法別の分類は、所得税法が4件、法人税法、登録免許税法、消費税法及び国税徴収法がそれぞれ1件となっている。今回の公表裁決では、国税不服審判所によって課税処分等の全部又は一部が取り消された裁決が10件、棄却された裁決が5件となっている。 【表:公表裁決事例平成30年1月~3月分の一覧】 ※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された15件の裁決事例のうち、原処分庁が認定した「隠ぺい又は仮装」について、国税不服審判所が認めなかった裁決事例5件について、その判断のポイントを中心に紹介したい。いつものお断りであるが、論点を整理するため、複数の争点がある裁決については、その一部を割愛させていただいていることを、あらかじめお断りしておきたい。   1 重加算税の一部取消し(換地不交付清算金の未申告)・・・③ (1) 争点 本件の争点は、請求人が法定申告期限までに確定申告書を提出しなかったことについて、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすか否かである。 (2) 国税不服審判所の判断 原処分庁は、請求人について、 を理由に、重加算税の賦課要件を充たすと主張した。 これに対して、国税不服審判所は、請求人について、 を認めたうえで、原処分庁の調査担当職員が作成した質問応答書に記載された請求人の申述が信用できる根拠がなく、請求人自身が理事を務める土地区画整理組合が、原処分庁に対し支払調書を提出することは容易に察しうる状況にあることから、請求人が支払調書などを確定申告会場へ持参しなかったとしても、清算金の受領の事実を秘匿するための行動と評価するのは困難といわざるを得ないとして、原処分のうち、無申告加算税を超える部分を取り消す判断を示した。   2 重加算税の一部取消し(相続財産の一部除外)・・・④ (1) 争点 本件の争点は、請求人が一部の生命保険金等を除外した税理士提出用一覧表を作成した行為は、通則法第68条第2項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たるか否かである。 (2) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、請求人が受け取った無申告生命保険金等の額が、相続税の申告を行ううえで失念しやすい相続財産ではなかったといえるとしたものの、以下の理由から、請求人が本件税理士提出用一覧表を作成した行為は、無申告生命保険金等の存在を隠匿したとか、故意にわい曲したものと評価することはできず、通則法第68条第2項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たらないと言わざるを得ないと結論づけた。   3 重加算税の一部取消し(相続財産の一部除外)・・・⑤ (1) 争点 本件の争点は、請求人らの亡養母が相続税の申告に当たって被相続人の生前に預金口座から引き出した現金及び有価証券等(本件財産)を申告しなかったことについて、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たすか否かである。 (2) 国税不服審判所の判断 原処分庁は、請求人らは、本件財産を申告しなければならないと認識していたにもかかわらず、相続税を安くする目的の下、本件財産などの記録がされたUSBメモリを相続税の申告を依頼した弁護士に渡さず、請求人らが現金を出金したことも弁護士に伝えなかったうえ、請求人の1人は、調査の際、USBメモリを本件弁護士に渡した旨の事実と異なる申述をしたことから、重加算税の賦課要件を満たすと主張する。 これに対して、国税不服審判所は、請求人の1人が、弁護士に対してUSBメモリを交付していたものと認められ、当審判所の調査及び審理の結果によっても、請求人らに、「当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動」があったことをうかがわせる事情は見当たらないことから、請求人らの亡養母が本件財産を申告しなかったことについて、重加算税の賦課要件は満たさないと判断した。   4 重加算税の一部取消し(領収証名目の書き直し)・・・⑥ (1) 争点 争点は、以下の3点であるが、本稿では③のみをとりあげる。 (2) 国税不服審判所の判断 原処分庁は、請求人が、弟に対して支払った金員について、離農補償金ではないため、譲渡費用にならないことを認識していたことを前提に、各領収証における各金員の名目を「離農補償費」又は「離農補償金」としたことが、請求人による隠ぺい、仮装と評価すべき行為であると主張した。 これに対して、国税不服審判所は、請求人は、農地法上の耕作権がない者に対しても慣例に従って金員を支払う必要があると認識していたこと、各不動産の貸借関係についての紛争解決のために金員を支払ったことなどから、請求人が支払った各金員について、離農補償金ではなく、譲渡費用にならないと認識していたことを直ちに推認させるものではなく、各領収証における各金員の名目を「離農補償費」又は「離農補償金」としたことは、請求人による仮装と評価すべき行為に該当するとは認められないと判断し、請求人は、平成26年分の所得税等の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を仮装し、又は事実を隠ぺいしたとも認められないと結論づけた。   5 重加算税の一部取消し(相続財産の一部除外)・・・⑦ (1) 争点 本件の争点は、次に掲げる4点であるが、本事例でも、争点②の「隠ぺい又は仮装行為」に関する不服審判所の判断を検討する。 (2) 国税不服審判所の判断 原処分庁は、請求人Eは、引き出した被相続人名義の預金(本件金員)が相続財産であることを十分認識したにもかかわらず、遺産分割協議書に本件金員を記載せず、また、申告代理人に対し、被相続人名義の預金口座の残高証明書のみを提示することにより、過少な相続税額が記載された本件申告書を作成させた。請求人Gは、相続財産の調査及び本申告手続を請求人Eに委任していたところ、その選任及び監督に過失がないとする事情は認められず、請求人Eの隠ぺい又は仮装の行為を請求人Gの行為と同視することができると主張した。 これに対して、国税不服審判所は、請求人Eは、被相続人が倒れたことによる入院費用や死亡時の費用の支出に備えて預金の引き出しを行ったものと認めるのが相当であり、申告代理人が、請求人Eに対し、被相続人名義の預貯金に係る通帳の提示や相続の開始前後の入出金について説明を求めなかったことからすると、請求人Eは、申告代理人に対し、過少な相続税額が記載された本件申告書を作成させるため、被相続人名義の預貯金に係る通帳を提示せず、残高証明書のみを提示したものと評価することは困難であるといわざるを得ないと認定して、請求人Eが、当初から過少に申告する意図を有していたとか、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められないことから、請求人Eについて、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があったとは認められないと判断した。   《まとめ》 原処分庁調査担当者が作成した質問応答書が信用できないと認定した事例(前掲表③)、明らかに間違った回答をした弁護士による訂正を認めなかった原処分庁の主張を一蹴した事例(前掲表⑤)など、原処分庁による、やや行き過ぎた重加算税賦課決定処分を戒めるような裁決が目立った。 また、5件の裁決のうち、3件が相続財産の一部申告漏れ事案であった。相続開始後短期間で、被相続人の財産のすべてを把握し、申告納税することは決してたやすいことではなく、また、⑦の事例にみられるように、被相続人の入院費用や葬式費用のため、生前に相続人が被相続人名義の預金を引き出すことはよくあることであろう。 その結果、申告した相続財産の一部を除外していたとして、「当初から過少に申告する意図を有していた」から「隠ぺい又は仮装行為」が認められるとして、重加算税だと結論づけるのは、いささか納税者の事情に対する思慮が足りないようにも思える。 (了)

#No. 288(掲載号)
#米澤 勝
2018/10/05

プロフェッションジャーナル No.288が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年10月4日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.288を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/10/04

monthly TAX views -No.69-「消費増税の準備はなぜ進まないのか?」

monthly TAX views -No.69- 「消費増税の準備はなぜ進まないのか?」   東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 森信 茂樹   2019年10月からの消費税率10%への引上げまで1年をきったが、事業者の準備が進んでいない。 今回の引上げの特色は、わが国で初めての8%の軽減税率が飲食料品などに導入されるという点である。軽減税率の導入に際しては、食料品などを販売する小売店や外食関連の店は、8%と10%という2つの税率に対応したレジへの切り替えや価格表示、さらには経理事務が必要となる。 日本商工会議所が9月28日に公表した「中小企業における消費税の価格転嫁および軽減税率の準備状況等に関する実態調査」によると、軽減税率制度については、約8割の事業者が準備に取りかかっていない。とりわけ「5千万円以下の事業者」等の小規模な事業者の準備が遅れている。 *  *  * このことは、中小の小売事業者に対するレジの導入やシステムの改修等の補助金の申請状況が芳しくないことからもうかがわれる。 今回、中小の小売事業者に対しては、小売り段階の支援(BtoC)と流通段階の支援(BtoB)の2つについて、複数税率対応レジの導入への補助金や、受発注システムの改修支援などに対する補助金が用意されているが、未だ2割程度の申請状況だという。 (※) 財務省資料 今回は軽減税率の導入ということだけでなく、外食と食料品の適用税率が異なる(イートインは標準税率、テイクアウトは軽減税率)ことから来る価格表示の問題もある。準備不足では事業者も国民も混乱し、消費税への不信につながっていく。 *  *  * では、なぜ事業者の準備が遅れているのか。 それは、「安倍首相はこれまで2度、消費増税を引き延ばした。今回もまた延期するに違いない。」という期待感(?)が国民や事業者にあるからだ。 特に2度目の延期が行われた16年6月には、大きな国際経済変動もない中で、「リーマンショック並みの経済変動」と言って延期したので、国民にはこの記憶が残っている。トランプ政権の政策や米中経済対立など様々な不確実要因がある中で、引上げ延期の理由は山ほどあると言っていい。 増税を信じる気にならなければ、準備をする気にもならない。 一方、霞が関では、消費増税は織り込み済みである。幼児教育や高等教育の無償化など具体案が議論され、年末の予算編成に向けて、各省での議論が始まっている。また、駆け込み需要やその反動減の主因となる、自動車や住宅などへの購入支援など、需要変動を平準化するための税制・予算も議論が始まっている。 増税は予算編成の大前提となっているのだ。 *  *  * もう1つ、筆者が注目すべきだと考えるのは、小売事業者などへの補助金をうまく使って、わが国経済の生産性向上に結びつけることができるという点である。 わが国経済の生産性の低さの主因は小売事業者の生産性の低さにある。この際、補助金を活用して、レジや商品マスターの設置を行ったり、電子的に受発注を行うシステムの改修を行っていけば、生産性向上につながっていく。補助金支給の要件がネックになっている(厳しい)という話もあるが、そうであればもっと弾力化するよう政府に要請すべきだ。 いずれにしても、安倍総理は今度こそ消費税率を引き上げるという確たる意思表明を行い、不確実な現状を改める必要がある。 (了)

#No. 288(掲載号)
#森信 茂樹
2018/10/04

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第57回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第57回】   公認会計士 佐藤 信祐   (《第8章》 平成18年から平成21年までの議論) (3) 分割型分割により取得した分割承継法人の株式に係る相続税額の取得費加算 相続又は遺贈による財産の取得をした個人で、当該相続又は遺贈につき相続税額があるものが、当該相続の開始があった日の翌日から当該相続に係る申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に当該相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された資産の譲渡をした場合には、譲渡所得に係る取得費の計算上、当該相続税額のうち当該譲渡をした資産に対応する部分を加算することが認められている(措法39①)。 これに対し、藤田良一「分割型分割により取得した分割承継法人の株式に係る相続税額の取得費加算」税務通信2945号54-59頁(平成18年)では、相続開始後に分割型分割を行った後に、分割法人株式及び分割承継法人株式を譲渡する事案に対して、取得費加算の制度を利用することができるかどうかにつき検討している。 藤田氏は、租税特別措置法39条の文理解釈では、分割承継法人株式に対する取得費加算を認めているようには解せないものの、分割承継法人株式のみが交付される分割型分割を行った場合に取得費加算を認めないとすると、金銭等不交付型分割により取得した分割承継法人株式に対応する部分の譲渡所得について、取得費加算をする機会を逸してしまうことから、取得費加算を認めるべきであるとしている。 そして、藤田氏は、当時の租税特別措置法通達39-3において、換地処分等により取得をした資産を譲渡した場合についても取得費加算を認めていることから、分割型分割についても同様に取り扱うべきであるとしている(ただし、現行通達上は、同通達の規定は廃止されている)。 たしかに、阿部輝男『平成22年版譲渡所得・山林所得・株式等の譲渡所得等関係 租税特別措置法通達逐条解説』1025頁(大蔵財務協会、平成22年)では、換地処分等による資産の譲渡については、納税者の選択の有無にかかわらず強制的に課税繰延べが適用されることから、換地処分等によって取得した資産と相続等により取得した資産と同一性が保持されていることを理由として、同通達の規定が定められたことが明らかにされている。そう考えるのであれば、組織再編成により、旧株の対価として取得した新株についても同様に取り扱うべきであるとも考えられる。 この点については、当局の公式見解は公表されていないし、文理解釈上はそのように解釈することができないため、実務上、慎重な対応が必要になる。 (4) 負ののれんと消費税 上杉秀文「負ののれん代が生ずる事業の譲受けに係る対価の額の計算」税務QA 65号 31頁(平成19年)では、 としている。そして、同稿32頁では、具体的な計算方法として、総資産の時価が5億3,000万円であり、総負債の時価が3,000万円であり、譲渡対価が4億5,000万円(すなわち負ののれんが5,000万円)である事案に対して、譲渡対価と負債の引受の合計額である4億8,000万円を合理的に各資産に係る譲渡対価の額に按分した事案を紹介されている。 このような上杉氏の見解は、現在でも有効な解釈であると思われるが、当時に比べて、会計コンバージェンスの結果、企業結合会計において、負ののれんをなるべく計上しないように修正されたという事実がある。 具体的には、企業結合に関する会計基準33項では、負ののれんが生じた場合には、以下のように取り扱うことになった。 このように、現行企業結合会計では、負ののれんが生じた場合には、個別の資産及び負債に配分する形を採用していることから、租税法上も、個別の資産及び負債に配分していくべきであると考えられる。 例えば、負ののれんが生じる事案では、買い手サイドが、固定資産に対して相続税評価額よりもかなり低い金額で評価していることが少なくない。このような場合には、負ののれんとして処理するのではなく、固定資産の評価額を引き下げることも検討すべきであると考えられる。 (5) 組織再編と事業所税 森田貴子「経理シャイン養成講座 第12回組織再編と事業所税」旬刊経理情報1196号34頁(平成20年)では、 と指摘されている。 森田氏の指摘のほか、組織再編により、事業所税の課税標準である資産割や従業者割が変動することも考えられる。筆者も、組織再編に伴う事業所税への影響をほとんど検討したことがないが、森田氏の指摘のように、一応は検討しておかなければならない事項であると思われる。 (6) 小括 このように、平成18年から平成21年までの間には、条文で明らかな部分についてはともかくとして、条文で明らかではない部分に対する課税当局の公式見解はほとんど公表されておらず、税務専門家としても、それほど踏み込んだ解釈を公表していないことが分かる。 記憶をたどっていくと、組織再編税制に関与する税務専門家が、極端な文理解釈を採用した時代でもあった。その後のヤフー・IDCF事件において、そのような傾向は改善されていったが、平成18年から平成21年までの文献を紐解くと、条文に書かれていることを分かりやすく解説することを目的とする文献が多かった。 これに対し、組織再編税制が導入されて10年近くが経過すると、様々な問題が生じるようになった。 平成22年度税制改正により導入されたグループ法人税制は、条文の不備を整備するという意味で、重要な改正であったことは明らかであるが、それ以上に、当時のグレーゾーンを明確化した改正であったということも言える。 平成22年度税制改正をスタートとして、国税庁のHPに掲載されている文書回答事例、質疑応答事例が充実し、平成24年には、日本租税研究協会から「外国における組織再編成に係る我が国租税法上の取扱いについて」が公表されるに至っている。 *   *   * 次回以降では、平成22年度から平成28年度までの税制改正に触れたうえで、その期間に公表されている財務省、国税局及び税務専門家の見解について解説する予定である。 (了)

#No. 288(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/10/04

租税争訟レポート 【第39回】「消費税の適正な転嫁と課税庁による外注費の給与認定」

租税争訟レポート 【第39回】 「消費税の適正な転嫁と課税庁による外注費の給与認定」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   平成26年4月1日に行われた消費税率の引上げに伴い、中小企業庁/公正取引委員会は、消費税額等の適正な転嫁に向けて広報活動を繰り広げている。そうした中、免税事業者に対する消費税額等の取扱いについて、中小企業庁/公正取引委員会と国税庁との間で、見解に齟齬があるのではないかという懸念を抱いている。 本稿では、免税事業者に対しても税率引上げ後の消費税額等の適正な転嫁を推進する中小企業庁/公正取引員会の取組みと、外注費等について給与認定を行うことによって課税仕入れに該当しないものとして取り扱い、仕入税額控除を否認すると同時に、源泉所得税の徴収洩れに伴う納税告知処分を行っている税務調査の現場と、これを認容する国税不服審判所の判断を参照しながら、免税事業者と消費税について、論考を行いたい。   1 中小企業庁/公正取引委員会による消費税の適正な転嫁促進措置 消費税率が5%から8%に引き上げられたことに伴い、公正取引委員会は、「消費税の転嫁拒否等の行為に関するよくある質問」を公開して、以下のとおりの解説が掲載されている。 「Q19」では、免税事業者である納入業者に対する消費税の上乗せをしないことは、「合理的な理由がない限り」、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(以下、「消費税転嫁対策特別措置法」と略称する)違反であることが明示されており、同じく「Q20」では、「雇用関係にある場合には該当しない」旨のなお書きが付されている。 免税事業者に対する消費税額等の上乗せ支払いは、支払う側にすれば、国に消費税額等を納付するか、免税事業者からの課税仕入れとして消費税額等を支払い、仕入税額控除の規定に従って消費税の申告・納税を行うため、実際の損益に与える影響はないが、いわゆる「益税」問題として、本来は国庫に納付されるべき消費税額等が、免税事業者の収入となるという弊害が生じていることは、言うまでもないことである。   2 国税不服審判所の公表裁決(外注費等が給与所得であるとして、仕入税額控除が否認された事例) こうした中小企業庁/公正取引委員会の転嫁促進措置を読みながら、大変気になる点がある。それは、税務調査において、納税義務者が外注費として課税仕入れに計上した費用が給与であると認定されて、仕入税額控除が否認されている事例である。 国税不服審判所が公表している裁決要旨検索システムで、「課税仕入れ等の範囲」を争点とする裁決要旨を検索すると、課税仕入れとして仕入税額控除の対象とした外注費等が給与認定されて、仕入税額控除が否認された事例が、以下のとおり存在する。 上記6件の裁決のうち、要旨ではなく裁決本文が公表されているのは、裁決事例集No.59及びNo.94のみであるが、いずれも、雇用契約がないにもかかわらず、「業務の一環としてその指揮命令下、役務を提供するものであり、個人が独立して顧客に対してその役務を提供するものではないといえるから、役務の提供は、雇用契約に基づいて提供されたものであると認定するのが相当」である、「請求人の指揮監督ないし組織の支配に服して、場所的、時間的な拘束を受けて継続的に労務を提供し、業務に当たり費用負担もないと認められる」ことから、「雇用関係がある」という課税処分について、国税不服審判所が、課税庁の主張を認めたものである。また、裁決要旨検索システムで見る限り、類似事例で、納税者である審査請求人の主張を認容したものは存在しない。   3 事業所得と給与所得の課税上の相違について 上記の国税不服審判所名古屋支部平成26年2月17日裁決が引用している、最高裁判所昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁)から、事業所得の定義を確認しておきたい。 この、あまりにも有名な判例は、「雇傭契約又はこれに類する原因」に基づく労務の対価を給与所得として捉えており、雇用契約に基づかない役務の提供であっても、給与所得に該当することがあることを示したものである。その結果、「ある経済活動が事業に該当するかどうかは、活動の規模と態様、相手方の範囲等、種々のファクターを参考として判断すべきであり、最終的には社会通念によって決定するほかはない」(※1)と論じられている。 (※1) 金子宏『租税法(第22版)』227頁以下 雇用契約を締結していない外注業者が得る収入は、外形的には雇用関係に基づく役務提供によるもの、すなわち、給与所得ではなく、そうなると、中小企業庁/公正取引委員会の立場からすれば、消費税額等を適正に転嫁して外注費を支払わなければならないことになるわけだが、一方、前項で見た公表裁決事例のとおり、税務調査においては、雇用契約の有無にかかわらず、給与所得であると認定されて、仕入税額控除の否認に伴う過少申告加算税及び延滞税の賦課決定処分、源泉徴収すべき所得税の納税告知処分と不納付加算税及び延滞税の賦課決定処分が課されるリスクがあることとなる。   4 消費税法における免税事業者制度について 消費税が導入された1989(平成元)年4月1日当時、「小規模零細事業者の事務負担を軽減する」(※2)ため、基準期間における売上高が3,000万円以下の事業者は、消費税の納税義務を免除されており、その後、平成15年度税制改正において、この免税点が1,000万円以下にまで引き下げられ、現在に至っている。 (※2) 金子、前掲(※1)746頁 ところが、税率が3%の段階では、徴収できる消費税額よりも小規模零細事業者の事務負担の軽減を優先した格好の消費税法であったが、消費税率が5%、8%と引き上げられるにしたがって、免税事業者に対する益税問題が大きく浮上してきた。 消費税の免税事業の存在を容認することが、「小規模零細事業者の事務負担の軽減」だけを理由とするのであれば、消費税率の引上げを議論する過程で、帳簿の作成、保存義務を負う青色申告を行う事業者については、すべて課税事業者として取り扱うよう、消費税法を改正することも可能であったはずであるが、残念ながら、そうした議論が行われたという話があったのかどうか、寡聞にして存じていない。 一方、消費税法における免税点が残置されたまま、小規模零細事業者の事務負担は、所得税の面で大きくなっている。2014(平成26)年から実施されている、白色申告を行う事業者に対する帳簿の作成及び帳簿等の保存の義務化である。 消費税法には簡易課税制度が存在し、課税売上高が5,000万円以下の事業者は、基本的には売上高を集計すれば、納付すべき消費税額等の計算が可能となる。消費税の免税事業者が白色申告をしているとは限らないとはいえ、白色申告の事業者にも帳簿の作成が義務化された以上、「小規模零細事業者の事務負担の軽減」という消費税の免税点の存在理由は、もはや無くなったものと考えるべきではないだろうか。 現状は、中小企業庁/公正取引委員会が、消費税率の引上げに伴う消費税の転嫁を指導すればするほど、国庫に入るべき消費税収は益税として免税事業者の収入となり、免税事業者である個人事業主との取引に依存せざるを得ない特定事業者は、税務調査において給与課税認定に伴う仕入税額控除の否認による追徴課税処分と源泉所得税の徴収洩れによる納税告知処分に怯えながら、行政指導に従わざるを得ない。 1つの方策としては、益税の発生を最小限にするため、事業所得として所得税を申告する者については、消費税の申告納税義務を負わせることとすることが考えられよう。そうした法改正がなされて初めて、中小企業庁/公正取引委員会が推し進める消費税の適正な転嫁が実現するのではないだろうか。 (了)

#No. 288(掲載号)
#米澤 勝
2018/10/04

企業の[電子申告]実務Q&A 【第5回】「義務化に際して連結申告法人が注意すべき点」

企業の[電子申告]実務Q&A 【第5回】 「義務化に際して連結申告法人が注意すべき点」   SKJ総合税理士事務所 税理士 坂本 真一郎   ●○●○解説○●○● (1) 消費税申告について 消費税及び地方消費税の申告については、その申告主体ごとにその資本金の額又は出資金の額で対象か否かを判断することとなります。 したがって、連結子法人の事業年度開始の時における資本金の額又は出資金の額が1億円超である場合は、その連結子法人の消費税申告は電子申告の義務化の対象となります。 (2) 個別帰属額等の届出書について 連結子法人が所轄税務署に提出する「個別帰属額等の届出書」は、納税申告書には該当しないため、電子申告の義務化の対象となりません。しかしながら、「個別帰属額等の届出書」は、連結親法人の法人税申告の添付書類として提出する必要があり、連結親法人が電子申告の義務化の対象となる場合には、各連結子法人の「個別帰属額等の届出書」を含めてe‐Taxにより提出する必要があります。 なお、e‐Taxの利便性向上の施策の1つにより、2020年4月以後は、電子申告の義務化の対象か否かにかかわらず、連結親法人が確定申告書をe‐Taxにより提出する際に、各連結子法人の「個別帰属額等の届出書」及びその添付書類の記載事項をe‐Taxにより提供したときは、連結子法人は所轄税務署に対して個別帰属額等の届出書を提出する必要はありません。 本施策は、連結親法人が電子申告の義務化対象法人であるかどうかにかかわらず適用があるため、例えば、連結親法人が資本金1億円以下の電子申告の義務化対象外の中小法人であっても、 e‐Taxで確定申告書を提出する際に各連結子法人の「個別帰属額等の届出書」を添付して提出すれば、各連結子法人は「個別帰属額等の届出書」を提出する必要はありません。 (連結親法人がe‐Taxで提出する際は、「会社事業概況書(子法人分)」の添付も必要です。) 【個別帰属額等の届出書の提出先一元化】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)

#No. 288(掲載号)
#坂本 真一郎
2018/10/04

〈平成30年度改正対応〉賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の適用上の留意点Q&A 【Q10】「比較雇用者給与等支給額に関する調整計算」-(4)分割等が行われた場合の調整計算(分割承継法人等)-

〈平成30年度改正対応〉 賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の 適用上の留意点Q&A 【Q10】 「比較雇用者給与等支給額に関する調整計算」 -(4)分割等が行われた場合の調整計算(分割承継法人等)-   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   [Q10] (再掲) 平成30年度の税制改正によって、組織再編を行った場合の比較雇用者給与等支給額に関する調整計算はどのように変更されたのでしょうか。   [A10] (再掲) ◆新たに「基準日」という概念が設けられ、基準日から適用年度開始の日の前日までの期間が「調整対象年度」と定義されました。 ◆具体的な調整計算については大きな変更はありませんが、計算期間が「前年度」から「各調整対象年度」に変更されています。 【解説】 (4) 分割等が行われた場合の調整計算(分割承継法人等) ① 適用年度において分割等が行われた場合 適用年度に分割等が行われた場合、分割等の日の属する月以後、分割法人等から引き継いだ国内雇用者に対する給与等支給額が加味され、雇用者給与等支給額が大きく増加することとなる。 このとき、分割承継法人等の比較雇用者給与等支給額については、調整対象年度ごとに、分割法人等の各調整対象年度に係る移転給与等支給額のうち分割等の日の属する月から適用年度末までの月数に対応する金額を加算調整した金額に基づき計算することとされた。これにより適切な大小比較を可能とする(下図参照)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 比較雇用者給与等支給額の調整 以下の金額を合計した額となる(措令27の12の5⑨二イ)。 ここで「月別移転給与等支給額」とは、その分割等に係る分割法人等の当該分割等の日前に開始した各事業年度等に係る移転給与等支給額をそれぞれ当該各事業年度等の月数(分割等の日を含む事業年度等にあっては、当該分割事業年度等の開始の日から当該分割等の日の前日までの期間の月数)で除して計算した金額を当該各事業年度等に含まれる月(分割事業年度等にあっては、当該分割事業年度等の開始の日から当該分割等の日の前日までの期間に含まれる月)に係るものとみなしたものをいう(措令27の12の5⑩)。 すなわち月別移転給与等支給額は、分割法人等において算定された「移転給与等支給額」に基づくものであるが、その月別変動を平準化させるために、月平均額を算定しているものである(合併における月別給与等支給額と同趣旨)。 ② 基準日から適用年度開始日の前日までの期間において分割等が行われた場合 適用年度は年度を通じて全て分割等実施後の規模で給与等支給額が発生することとなるが、引き続き、前年度の給与等支給額について調整が必要となる(下図参照)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 比較雇用者給与等支給額の調整 以下の金額を合計した額となる(措令27の12の5⑨二ロ)。   (了)

#No. 288(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2018/10/04

海外移住者のための資産管理・処分の税務Q&A 【第7回】「金融資産④(移住後に非上場会社である内国法人の株式譲渡を行う場合)」

海外移住者のための 資産管理・処分の税務Q&A 【第7回】 「金融資産④(移住後に非上場会社である内国法人の株式譲渡を行う場合)」   税理士・行政書士 島田 弘大   Question 私は来年、海外へ移住することを検討しています。現在、日本の非上場会社の株式を10年以上にわたり100%保有していますが、移住後にその株式を売却する可能性があります。 移住後に売却した場合の課税関係を教えて下さい。   Answer 1 はじめに 海外への移住を検討している日本の居住者(個人)が日本の非上場株式を保有しているケースは多くある。 【第6回】では移住後にその日本の非上場会社から配当を受け取った場合の課税関係について検討したが、今回は移住後にその非上場会社の株式を売却して譲渡所得を得た場合の課税関係を検討する。   2 非居住者が内国法人である非上場会社の株式を売却した場合の課税関係 【第6回】で検討した流れと同様に、まずは日本の所得税法(国内法)を確認し、さらに居住地国の所得税法を、最後に日本と居住地国との間の租税条約を確認して、各国における課税関係の結論を導き出す流れになる。 以下では検討の流れが分かりやすいように、具体的に移住先がシンガポールであった場合を例にとって説明したい。 なお、日本の所得税法の取扱いは、どの国に移住したとしても当然同じである。したがって、居住地国がシンガポール以外の国である場合には、その国の所得税法及び日本とその国との租税条約を確認すればよいため、ケースごとに応用していただきたい。 (1) 日本の所得税法 ① 非居住者の課税所得の範囲 日本の所得税法上、居住者は原則として、日本国内だけでなく国外も含めた全世界所得が課税対象とされるが、非居住者は日本国内で稼得した「国内源泉所得」のみが課税対象とされる(所法161)。 ② 国内源泉所得の範囲と課税方法 日本国内に恒久的施設を有するかどうかで課税方法は異なってくるが(所法164)、個人の場合、日本国内に恒久的施設を有しないケースが一般的である。 恒久的施設を有しない非居住者が株式等を譲渡した場合、次の(1)~(6)のいずれかに該当する所得については、課税対象になる(所令281、措法29の2)。言い換えると、(1)~(6)のいずれにも該当しない場合には、日本では課税されないことになる。 なお、(1)~(5)に該当する所得は申告分離課税、(6)に該当する所得は総合課税として、いずれも確定申告を行うことになる。 (2) 居住地国(シンガポール)の所得税法 次に、居住地であるシンガポールの所得税法を確認する。シンガポールではキャピタルゲインは非課税とされているため、キャピタルゲインに該当するかどうかが重要になる。 キャピタルゲインかどうかを判断するにあたっては、下記のような要素を考慮すべきとされている。 実務的には判断が難しいところだが、2012年6月から「売却の前に少なくとも24ヶ月以上にわたって、20%以上の株式保有比率を有している」場合にはキャピタルゲインに該当する、という明確な判断基準が設けられている。 つまり、非上場会社の株式の全部を長年保有している場合などは、基本的にはキャピタルゲインに該当し、シンガポール国内法に基づくと、その譲渡所得は非課税になると考えられる。 なお、この「24ヶ月以上・20%以上保有」の基準に該当しないからといって直ちに課税対象になるというわけではなく、前述の要素をもとに総合的に判断されることとなる。 (3) 日本・シンガポール租税条約 最後に、日本・シンガポール租税条約の規定を確認する。譲渡所得については下記の通り規定されている。 上記の通り、日本・シンガポール租税条約では、不動産関連法人の株式の譲渡であれば日本でも課税できるとされている。また、それ以外の株式譲渡については、いわゆる「事業譲渡類似株式等の譲渡」に該当する場合には日本でも課税できる(逆に「事業譲渡類似株式等の譲渡」に該当しない場合には日本で課税できない)と規定されている。 (4) 結論 ① 日本側の課税関係 まずは日本の国内法であるが、非居住者である個人(日本国内に恒久的施設を有しない)が非上場会社である内国法人の株式を長年にわたって100%保有しており、その株式に係る譲渡所得が生じた場合には、当該株式の譲渡は「事業譲渡類似株式等の譲渡」に該当する可能性がある。 質問者の場合、長期的に100%保有しているため「所有株数要件」は満たしていると考えられる。もう1つの要件である「譲渡株数要件」も満たす場合には、日本の所得税法上、課税対象(申告分離課税)とされる。つまり、5%未満の譲渡であれば「事業譲渡類似株式等の譲渡」には該当しないため日本で課税されないが、5%以上の譲渡であれば課税対象になると考えられる。 次に、日本・シンガポール租税条約であるが、租税条約においても同様に「事業譲渡類似株式等の譲渡」の規定が設けられている。つまり、日本の所得税法と同様の内容が租税条約にも規定されているだけであり、租税条約による税率等の減免もない。したがって、質問のケースでは、5%以上の譲渡かどうかで日本側での課税関係が最終的に決まってくると考えられる。 ② シンガポール側の課税関係 質問のケースでは、10年以上にわたって100%を保有しているため、「売却の前に少なくとも24ヶ月以上にわたって、20%以上の株式保有比率を有している」という要件を満たしキャピタルゲインに該当する、つまりシンガポールでは非課税になると考えられる。 (了)

#No. 288(掲載号)
#島田 弘大
2018/10/04

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第63回】「輸出免税物品購入記録票に貼付・割印するレシートの課否」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第63回】 「輸出免税物品購入記録票に貼付・割印するレシートの課否」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   当社はホテル業ですが、海外からの旅行客が多いことから、ホテル内の売店にて輸出物品販売場の許可を受けています。 非居住者(外国人旅行者等)のパスポートに添付する「輸出免税物品購入記録票」を作成する際に、購入される物品が多いなどの場合は品名、数量、単価及び販売価格の明細を記録票に記載する代わりにレシートの写しを貼り付けて割印を押して、パスポートに貼り付けることがあります。この場合、第17号の1文書(売上代金に係る金銭の受取書)に該当しますか。 輸出物品販売場を経営する事業者が購入者から金銭を受領した事実を証明するために作成されたものでないため、第17号の1文書には該当しない。   [検討] 金銭の受取書とは 金銭の受取書とは、金銭を受け取った者が、その受領事実を証明するために作成し、引渡者に交付する単なる証拠証書とされている。 したがって、事例の「輸出免税物品購入記録票」に記入する品名等の明細を記録票に記載する代わりにレシートの写しを使用するものは、金銭の受領事実を証明するために作成されたものではないため、金銭の受取書には該当しない。   ▷まとめ レシートの写しは、購入記録票に記載することとされている品名、数量、単価及び価格の明細を記載することに代えて貼付されるものであり、なお、購入記録票との間に割印がされることから購入記録票の一部とされ、印紙税法上における契約書には該当せず、第17号の1文書には該当しない。   (了)

#No. 288(掲載号)
#山端 美德
2018/10/04

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《税効果会計》編 【第1回】「税効果会計の適用(1)」

〔事例で使える〕 中小企業会計指針・会計要領 《税効果会計》編 【第1回】 「税効果会計の適用(1)」   公認会計士・税理士 前原 啓二     はじめに 「中小企業会計指針」では、税効果会計の適用を省略できるのは、一時差異に重要性がない場合に限定しています。 今回は、税効果会計を適用する初年度の会計処理をご紹介し、税効果会計を適用する場合と適用しない場合の税引前当期純利益に対する法人税計上額の比率についても例示します。 【設例1】 (1) 当社(3月31日決算、資本金30,000,000円)の×1年3月期(当期)における課税所得は、次のとおりです。 (注1) 買換建物は完成・稼動時から、当該建物の減価償却費の計上に対応させて、積立金(×1年3月期:1,512,000円)を取り崩して益金の額に算入しました。 (注2) 特定資産の買換えの場合の圧縮記帳の特例を積立金方式にて適用しました。 (2) ×0年3月期末における繰延税金資産と繰延税金負債はないものとします。 (3) 実効税率は、{法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率}÷(1+事業税率)にて算定しますが、×1年3月期及びそれ以降の実効税率は簡便的に35%とします。 (4) 当期末貸借対照表の未払法人税等残高に未払事業税5,000,000円(簡便的に事業税率を10%とします)が含まれています。×0年3月期末における未払事業税はないものとします。 (5) 実効税率={法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率0.1}÷(1+事業税率0.1)より、×1年3月期の法人税等{=法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率0.1}は、簡便的に課税所得50,000,000円×35%×(1+0.1)=19,250,000円とします。 1 仕訳 ×1年3月期の期末における仕訳は、次のとおりです。 (ⅰ) 未払事業税 (ⅱ) 賞与引当金繰入額 (ⅲ) 退職給付引当金繰入額 (ⅳ) 建物圧縮積立金 (ⅴ) 繰延税金資産(固定)と繰延税金負債(固定)の相殺表示 会計上の利益と税務上の課税所得には差異があり、その差異原因は永久差異と一時差異に分けられます。永久差異には、会計上は費用でも税務上は損金不算入とされる一定の交際費・役員賞与等や、会計上は収益でも税務上は益金不算入とされる一定の受取配当金等があります。 また、一時差異には、会計上の費用計上期に税務上の課税所得に加算するものの、その後の期において課税所得から減算戻入する将来減算一時差異(未払事業税、賞与引当金、退職給付引当金等)と、会計上の収益計上期に税務上の課税所得から減算するものの、その後の期において課税所得に加算戻入する将来加算一時差異(建物圧縮積立金積立額等)があります。 これらの一時差異を多額に含む極端な本設例では、税効果会計を適用しない場合、会計上の税引前当期純利益が黒字であるにもかかわらず、法人税等を差し引いた税引後当期純利益がマイナスになっています(会計上の税引前当期純利益9,488,000円、法人税等19,250,000円、税引後当期純利益△9,762,000円)。 税効果会計は、一時差異がある場合、利益を課税標準とする法人税等の額を適切に期間配分することにより、税引前当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手段です(中小企業会計指針62)。 この設例では、税効果会計を適用した場合、法人税等調整額15,929,200円(益)が追加計上され、税引後当期純利益は6,167,200円のプラスに、「{法人税19,250,000円-法人税等調整額15,929,200円(益)}÷税引前当期純利益9,488,000円」は、35%と実効税率に等しく(この設例では永久差異がないため実効税率と一致し、例えば損金不算入の交際費等加算永久差異が減算永久差異より大きい場合には実効税率よりも高く)なります。 税効果会計における一時差異は、貸借対照表に計上される資産及び負債の金額(会計上の簿価)と課税所得計算上の資産及び負債の金額(税務上の簿価)との差額です。 この設例では、未払事業税、賞与引当金、退職給付引当金に将来減算一時差異が生じており、未払事業税に係る当期末一時差異5,000,000円に実効税率35%を乗じた1,750,000円を繰延税金資産に計上(相手勘定は法人税等調整額)し、賞与引当金、退職給付引当金についても同様に繰延税金資産を計上します。建物圧縮積立金には将来加算一時差異が生じており、その当期末一時差異54,488,000円に実効税率35%を乗じた19,070,800円を繰延税金負債に計上(相手勘定は法人税等調整額)します。 繰延税金資産及び繰延税金負債は、これらに関連した貸借対照表上の資産・負債の分類に基づいて流動区分と固定区分に分けて表示します。また、同じ区分に属する繰延税金資産と繰延税金負債がある場合には、それぞれ相殺して表示します(中小企業会計指針65)。 当期における繰延税金資産及び繰延税金負債、並びに法人税等調整額は、次のとおりに集計されます。   2 決算書 決算書の金額は、次のとおりです。 ×1年3月期 〈貸借対照表〉 〈損益計算書〉   3 損益計算書の当期純利益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 損益計算書の当期純利益から法人税申告書の課税所得を算出する際の法人税申告書別表四において、法人税等調整額15,929,200円を減算・留保します。 〈当期法人税申告書別表五(一)〉 当期末未払事業税5,000,000円の加算留保は記載省略しています。 ⑥の計=15,929,200円:法人税等調整額 ⑦の計=179,200円:繰延税金資産(固定)   (了)

#No. 288(掲載号)
#前原 啓二
2018/10/04
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