検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10360 件 / 5441 ~ 5450 件目を表示

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第51回】「前期損益修正」~過去の事業年度に係る外注費の損金算入が認められないと判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第51回】 「前期損益修正」 ~過去の事業年度に係る外注費の損金算入が認められないと判断した理由は?~   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して行われた「過去の事業年度に係る外注費を当該事業年度の損金に算入することはできないこと」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた東京地裁平成27年9月25日判決(税資265号順号12725。以下「本判決」という)を素材とする。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注)  素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本判決の判断 本判決は、大要次のとおり、法人税法130条2項が求めるものとして欠けるところはないと判断した。 (1) 求められる理由付記の程度 (2) 理由付記の十分性   4 検討 (1) 関係法令等の確認 法人税法22条3項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上「当該事業年度の損金の額に算入すべき金額」は、別段の定めがあるものを除き、「当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額」(1号)、「前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額」(2号)、「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」(3号)であることを規定している。 本件外注費は1号の原価に該当するため、対応する収益の帰属する事業年度の原価の額として計上されることになる。ここでは、対応する収益の帰属する事業年度において原価として計上していなかった場合に、後の事業年度で3号の損失として計上できるかどうかという点には立ち入らないが、平成21年3月期に「損失の発生」といえるような事実があったかどうか、という問題が生じることを指摘しておく。 また、対応する収益の帰属する事業年度において原価として計上していなかった場合に、法人税法22条4項を根拠として、企業会計上の前期損益修正処理を行い、その処理を行った事業年度の損金の額に算入できるかどうかという問題もある。 本判決は、次の点を指摘して、単なる計上漏れのように、本来の事業年度で計上すべきであった損益を、後の事業年度において、前期損益修正として計上するような処理を公正処理基準に該当するものとして認めることはできないと判示している。 (2) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、X社が、帳簿において、S(株)に対する過年度の外注費に計上漏れがあったとし、平成21年3月31日付で外注費勘定に「H13、計上漏れ S(株)」として〇〇〇円を計上し、当事業年度の損金の額に算入していることを前提とするものである。すなわち、X社が、過年度において計上することを漏らしていたS(株)に対する外注費について、当該事業年度の外注費として計上していることを前提として、当該金額は、平成12年11月分から平成13年10月分までのS(株)に対する外注費であると認められることから、当事業年度の損金の額に算入されないというものである。であれば、本件更正処分は、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当すると考える。 したがって、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、いずれも法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件更正処分は、過年度の外注費を当該事業年度の外注費として計上しているX社の処理を認めないものであるから、その根拠法令は、「当該事業年度の」損金の額に算入すべき金額を「当該事業年度の」原価・費用・損失の額とする法人税法22条3項であると理解し得る(なお、前期損益修正に係る否認を行う際に、理由付記として法人税法22条4項に関する記載を行うべきであるかという点について、本連載【第50回】参照。ただし、本件では、X社の帳簿等において、企業会計の取扱いに即して前期損益修正処理を行ったことが明示されていたわけではないようである)。 また、本件理由付記は、簡潔ではあるが、本件外注費の修正処理について、当該金額は、平成12年11月分から平成13年10月分までのS(株)に対する外注費であると認められることから、平成21年3月期である当事業年度の損金の額に算入されないことを記載している。 以上からすれば、本件理由付記は、その記載内容から処分の根拠となる法令及び具体的な事実を理解することができるものであり、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものであるといえる。 であれば、本件理由付記は、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の制度趣旨を充足する程度に具体的なものであるということができ、理由付記として十分なものであると評価し得る。 *  *  * 本連載は今回をもって一旦休載させていただくが、判決等事例の蓄積により機を見て再開させていただく予定である。 (了)

#No. 275(掲載号)
#泉 絢也
2018/07/05

[IFRS適用企業の決算書から読み解く]収益認識会計基準導入で売上高はどうなる? 【第2回】「その売り手は「主役」か「脇役」か?」

[IFRS適用企業の決算書から読み解く] 収益認識会計基準導入で 売上高はどうなる? 【第2回】 「その売り手は「主役」か「脇役」か?」   公認会計士 石王丸 周夫   ◆本人か代理人か、それが問題である 子供のために親が預金を積み立てているという家がよくあります。口座を開いたのも管理しているのも親ですが、口座名義は子供の名前で、将来、通帳ごと子供にあげるというものです。 あれは親が主体的に積み立てているわけですが、子供のためにしていることであり、親は子供の代理人と見ることもできます。つまり、親は脇役で子供が主役というわけです。 どちらが主役でどちらが脇役なのかというのは、映画やドラマでも判断が難しい場合がよくありますが、収益認識会計基準が適用になると、収益の認識に際しても、売り手がその取引において主役なのか脇役なのかが問われるようになってきます。 収益認識会計基準の用語でいえば、「本人」なのか「代理人」なのかという話です。   ◆IFRS移行で売上急減 まず、以下のグラフを見てください。 ※動かない図はこちら このグラフは、(株)光通信の2013年3月期から2017年3月期の5年度分について、売上数値(連結ベース)を並べたものです。一見してわかるとおり、2017年3月期の売上が、前年比で25%減少しています。 といっても前回取り上げた豊田自動織機の例と同様に、この例も業績には何の問題もありません。売上が急減した原因は、採用する会計基準にあります。 上のグラフを見るとわかりますが、売上が急減した2017年3月期は、それまでの日本基準からIFRSに会計ルールが変更されています。 売上の急減は、他でもないそのせいでした。   ◆代理人取引は純額表示 では、IFRSに変更したとき、なぜ売上が減ってしまったのでしょうか。 光通信は、携帯電話の販売からウォーターサーバーによる水の宅配まで、様々な分野の事業を手掛けている会社ですが、IFRS採用による売上減少と関係しているのは、携帯端末の販売取引です。 取引の概要は以下のとおりです(光通信をA社に置き換えて、一般的ケースとして図示しています)。 上図は、A社が代理店経由で最終顧客に携帯端末を販売する取引を図示したもので、ここでは、A社はキャリア(通信事業者)から80,000円で仕入れた端末を代理店に80,000円で卸すと仮定しています。A社は端末から利ザヤを得るわけではなく、端末を販売できた場合に、キャリアから販売手数料を受け取ることにより、利益を獲得する仕組みです。 この場合、会計上、売上の計上はどのようになるかというと、日本基準とIFRSで様子が違ってきます。表に整理すると以下のようになります。 A社の帳簿計上金額(単位:円) 日本基準では、端末の販売代金80,000円と仕入代金80,000円を、売上と売上原価に計上します。つまり総額計上です。一方、IFRSでは、売上も売上原価も0円です。販売代金80,000円と仕入代金80,000円を純額処理するというわけです。 IFRSでは、企業が自ら当事者として販売に関与している取引は、売上収益及び売上原価を総額表示し、別に当事者がいて、企業自らはその代理人として関与しているだけの取引については、純額表示します。携帯端末を代理店経由で販売する場合については、端末自体はA社をスルーするだけの取引ととらえ、その取引において、A社は代理人として位置付けられると考えるのでしょう。 光通信の売上で起きた変化は、取引の詳細は知りえませんが、ごく単純化するとこのようなものであろうと推定されます。   ◆IFRS移行で利益率は上昇 財務指標への影響も見ておきましょう。 ※動かない図はこちら 上のグラフは、光通信の売上総利益率(=売上総利益/売上高、粗利率のこと)の推移です。2017年3月期に、売上総利益率が跳ね上がっていることがわかります。 このグラフだけ見ると、会社が急に儲かり出したかのように思えてしまいますが、それは違います。単なる数字のいたずらです。 売上と売上原価が総額表示から純額表示に変わった結果、分母の売上高が圧縮されたけれども、分子の利益自体は変わらないため、利益率が上がるのです。 代理人としての取引がある場合、売上は圧縮され、利益率は跳ね上がる。これが、日本基準からIFRSへ移行したことによる変化です。収益認識会計基準が適用されると、同様のことが起こると予想されます。   ◆おわりに それはともかくとして、「代理人」という表現はどことなくマイナスイメージを伴うので、使い方には気を付けたいですね。これは会計上の概念として「代理人」なのであって、そう判定されたからといって、会社の役割が脇役的なものであるという意味ではありません。そうした説明なしにこの用語を聞いた場合、誤解が生じる可能性も否定できません。 これまでの日本の会計基準では、収益の計上に関する関心事は、「いつ計上するのか」と「いくらで計上するのか」の2つでした。収益認識会計基準は、この2つ以外の視点を収益認識プロセスに持ち込んだところが目新しいわけです。「本人なのか代理人なのか」という視点は、「売り手の属性」(誰が当事者なのか)を確認するというものです。 こうした新しい視点が、経営の場において浸透していくか、あるいは会計の世界だけの特殊な常識になってしまうかは、今後の実務を待ってみなければわからないところです。 (了)

#No. 275(掲載号)
#石王丸 周夫
2018/07/05

税効果会計における「繰延税金資産の回収可能性」の基礎解説 【第6回】「解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い」

税効果会計における 「繰延税金資産の回収可能性」の 基礎解説 【第6回】 「解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い」   仰星監査法人 公認会計士 永井 智恵   1 はじめに 前回の連載【第5回】では、タックス・プランニングの実現可能性に関する取扱いについて解説を行った。会社の分類によっては、タックス・プランニングの実現可能性が、繰延税金資産の回収可能性の判断に大きく影響してくるということを説明した。 さて、今回は「解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い」について説明する。 重要な用語である「将来減算一時差異」(連載【第1回】)や「一時差異等加減算前課税所得」(連載【第2回】)の意味や、「スケジューリング」(連載【第2回】)及び会社の「分類」(連載【第3回】・【第4回】)の考え方をしっかりと理解したうえで、読み進めていただきたい。   2 解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異とは 連載【第2回】で解説したように、将来減算一時差異や将来加算一時差異が税務上でどのように認容されていくか、つまり、どのように解消されていくかを検討することを「スケジューリング」という。 そのスケジューリングの結果、企業が継続する限り、長期にわたるが将来解消され、将来の税金負担額を軽減する効果を有する一時差異のことを「解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異」という。 「解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異」として、具体的には、建物の減価償却超過額(※1)や退職給付引当金(※2)に係る将来減算一時差異が挙げられる。 連載【第3回】及び【第4回】で解説したとおり、将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性に関する取扱いは、会社の分類に基づく取扱いが原則的な取扱いとなる。 しかし、解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異については、繰延税金資産の回収可能性に関して、原則的な取扱いとは異なる取扱いが認められている。 (「解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異」と、原則的な取扱いをする将来減算一時差異とを区別するために、ここでは便宜上、原則的な取扱いをする将来減算一時差異のことを「通常の将来減算一時差異」という。) 【図1】 解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異として例示した建物の減価償却超過額や退職給付引当金に係る将来減算一時差異について、通常の将来減算一時差異と異なる取扱いが認められているのは、解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異が通常の将来減算一時差異とは異なる性格を有しているためである。 例えば、建物の減価償却超過額に係る一時差異は、会社の採用した償却方法に基づき規則的な償却を行うことで、当該一時差異が長期間にわたり償却を通じて規則的に解消されるという性格を有している。また、退職給付引当金に係る将来減算一時差異は、従業員の退職による退職金等の支給により当該一時差異が解消されるため、解消されるまでの期間が長期に及ぶという性格を有している。 なお、固定資産の減損損失や役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異も、その解消見込年度は長期にわたると考えられるが、これらは「解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異」とは異なる取扱いが定められている。 固定資産の減損損失や役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異の個別的な取扱いについては、【第7回】以降で解説する。   3 会社分類ごとの解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い 通常の将来減算一時差異(例えば、賞与引当金や未払事業税に係る将来減算一時差異など)と、建物の減価償却超過額や退職給付引当金に係る一時差異のように解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異とでは、前述したように会社の分類によっては繰延税金資産の回収可能性の取扱いが一部異なるため、注意をしなければならない。 ここからは、会社の分類ごとに、通常の将来減算一時差異と解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異との取扱いがどのように異なるのかを解説する。 (1) 分類1について 分類1の場合、過去(3年)及び当期のすべての事業年度において、期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が発生しており、将来においても課税所得が安定的に生じることが予測されるため、通常の将来減算一時差異と同じように、解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異に係る繰延税金資産は、その全額に回収可能性があると判断される。 (2) 分類2について(連載【第4回】の【図2】において分類2に該当する会社を含む) 分類2の場合、通常の将来減算一時差異と同じように、解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異に係る繰延税金資産は、その全額に回収可能性があると判断される。 分類2の会社には高い収益力と安定的な課税所得の発生が見込まれているため、分類1と同様に繰延税金資産の回収可能性に懸念が生じないためである。 (3) 分類3について(連載【第4回】の【図2】において分類3に該当する会社を含む) 分類3の場合、通常の将来減算一時差異は、将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)以内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、当該見積可能期間の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があると判断する。したがって、見積可能期間を超えて通常の将来減算一時差異が解消する場合、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産には回収可能性が認められない。 一方で、解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異に係る繰延税金資産は、将来の合理的な見積可能期間において当該将来減算一時差異のスケジューリングを行った上で、当該見積可能期間を超えた期間であっても、当期末における当該将来減算一時差異の最終解消見込年度までに解消されると見込まれる将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断される。 分類3に該当する会社は、利益や課税所得に大きな増減があり将来の合理的な見積可能期間を超える期間の見積りの精度が低くなるため、通常の将来減算一時差異については見積可能期間を上限として回収可能性を判断している。しかし、見積可能期間を超えた期間についても一定の一時差異等加減算前課税所得を安定的に獲得するだけの収益力があると考えられるため、建物の減価償却超過額や退職給付引当金に係る将来減算一時差異に関する繰延税金資産の回収可能性はあるものと考えられ、通常とは異なる取扱いが定められている。 【図2】 分類3の場合は、将来の合理的な見積可能期間を超えた期間についても解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性は認められるという点に留意しなければならない。 (4) 分類4について(連載【第4回】の【図2】において分類2及び分類3に該当する会社を除く) 分類4の場合、通常の将来減算一時差異については、翌期の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、翌期の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。 一方で、解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異に係る繰延税金資産についても、通常の将来減算一時差異と同様に、翌期に解消される将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断される。 分類4に該当する会社は、通常、将来において一時差異等加減算前課税所得を安定的に獲得するだけの収益力があるとはいえないが、翌期において一時差異等加減算前課税所得が生じるのであれば、その部分については繰延税金資産の回収可能性が認められるといえるため、翌期に限り繰延税金資産の計上が認められるからである。 【図3】 (5) 分類5について 分類5の場合、通常の将来減算一時差異と同様に、解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異に係る繰延税金資産についても、原則として、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性はないと判断される。 分類5に該当する会社は、通常、将来において一時差異等加減算前課税所得が発生する可能性が低く、将来減算一時差異等に将来の税額負担を軽減する効果がないと想定されるためである。 以上の取扱いをまとめると、【表1】のようになる。 【表1】 各会社分類における繰延税金資産の回収可能性の判断 (通常の将来減算一時差異と解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異との比較) (※1) 連載【第4回】の【図2】において分類2に該当する会社を含む。 (※2) 連載【第4回】の【図2】において分類3に該当する会社を含む。 (※3) 連載【第4回】の【図2】において分類2及び分類3に該当する会社を除く。 次回は、今回説明した「解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異」と同様に解消見込年度は長期にわたるものの、今回とは異なる取扱いが設けられている「固定資産の減損損失に係る将来減算一時差異の取扱い」について解説する予定である。 (了)

#No. 275(掲載号)
#永井 智恵
2018/07/05

空き家をめぐる法律問題 【事例4】「空き家の管理に関する行政上の責任」

空き家をめぐる法律問題 【事例4】 「空き家の管理に関する行政上の責任」   弁護士 羽柴 研吾   - 事 例 - 父は、祖父から相続した老朽化した建物を所有していますが、空き家の状態になっています。今後、私は、その建物を相続する可能性があります。最近、空き家を適切に管理していないと、行政によって建物を取り壊されることがあると聞いたのですが、父の相続に備えて、知っておくべき行政上のルールにはどのようなものがあるのでしょうか。   1 空き家の管理と行政上の責任 空き家の管理に関して、民事上の責任のほかに行政上の責任が問題となる場合がある。行政との関係で問題となる法令として、建築基準法、消防法、道路法、廃棄物処理法、災害救助法などが想定されるところであるが、本事例においては、2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空き家特措法」という)を念頭に、空き家の所有者が留意しておくべき事項について解説することとしたい。 なお、上記各法令の概要については、本誌掲載の拙稿「〈実務家が知っておきたい〉空家をめぐる法律上の諸問題【後編】」を参照されたい。   2 空き家特措法の仕組み (1) 基本的な仕組み 空き家特措法は、市町村による空き家等に関する施策を推進するために必要な事項などを定めているが、その中核をなすのが、市町村長が特定空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という)に対して行う助言・指導、勧告、命令、行政代執行である(空き家特措法第14条)。 この権限行使の対象となるのは、「空家等」のうち「特定空家等」であるが、その定義は次のとおりである(同法第2条)。 「空家等」の定義にある「居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの」とは、おおむね1年利用されていない場合をいい、年に数回の利用がある場合には「常態」にないと解されている(北村喜宣ほか(編)『空き家対策の実務』(有斐閣・2016年)19頁参照)。 例えば、空き家を倉庫代わりに用いており、年に何回か訪れて整理等をしている場合には、空き家特措法が適用されないことになるものと解される。 (2) 特定空家等とは 上記のとおり、特定空家等は上記①から④の4類型からなるが、具体的内容は法令には規定されておらず、『「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)』の別紙1~別紙4に、具体的な判断基準が定められている。 当該ガイドラインの別紙2によれば、次のような状態にあるものは、上記②の「そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態にある空家等」に該当するものとされている。 これに対して、当該ガイドラインの別紙3によれば、次のような状態にあり、周囲の景観と著しく不調和な状態にあるものは、上記③の「適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態にある空家等」に該当するものとされている。 上記の比較からも分かるように、空き家特措法が規定する「特定空家等」は、②のように、周辺住民の生命、身体、財産への危険が及ぶ可能性が高いものと、③のように、その程度にまで至っていないものが含まれていることが分かる。そして、この相違は、次の表のように、市町村長が特定空家等の所有者等に対して講じることができる措置の内容に表れている。 特定空家等の類型③や④から除却措置が除外されているのは、この類型の特定空家等は、地域住民への危険性が低く、それにもかかわらず、侵害程度の強い除却措置まで認めるのは、合理性を欠き、比例原則に反すると考えられているためである(前掲・北村37頁参照)。 (3) 市町村長の権限行使と代執行によって被る不利益 特定空家等の所有者等が市町村長からの助言・指導に応じない場合、市町村長は、勧告することができる(空き家や特措法第14条第2項)。そして、この勧告を受けると、特定空家等の敷地が住宅用地特例制度の対象から除外されることになり、固定資産税及び都市計画税の負担が増加することになる(地方税法第349条の3の2第1項)。 また、特定空家等の所有者等が正当な理由なく勧告に従わず、特に必要がある場合、市町村長は、勧告に係る措置を命じることができる(空家特措法第14条第3項)。この場合、特定空家等の所有者は、自ら又は代理人を通じて、市町村長に対して、意見書及び自己に有利な証拠を提出することができるほかに、これらの書面等の提出に代えて公開による意見聴取を求めることができる(同条第4項、第5項)。 市町村長は、措置命令を出したにもかかわらず、履行されない場合、行政代執行法に基づいて代執行を行うことができる(空き家特措法第14条第9項)。行政代執行法第2条によれば、代執行を行うためには、義務が不履行であることに加えて、「その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるとき」という公益要件を満たす必要があった。しかし、空き家特措法は、公益要件を代執行の要件から外しているため、市町村長はより容易に代執行を行うことが可能となっている(同法第14条第9項)。 特定空家等について代執行が行われた事例は少ないが、実際に行われた場合、その費用は特定空家等の所有者等が負担しなければならない(行政代執行法第6条)。具体的には、代執行の作業員の賃金、請負人に対する報酬、資材費、第三者に支払うべき補償料が想定され、その総額が数千万円になる場合も生じうる。代執行に要した費用の請求権は、国税滞納処分の例による強制徴収が認められるため、特定空家等の所有者等は、この点にも留意しておく必要がある(同条第1項、第2項)。   3 条例に対する留意-神戸市の条例を参考に- (1) 条例を理解する必要性 空き家特措法は、全国に適用されるルールを定めたものであるが、市町村の条例による拡充を一切排除するものではなく、現に市町村において空き家特措法の内容を拡充する条例が定められている。 そこで、神戸市空家空地対策の推進に関する条例(以下「神戸市条例」という)を題材として、空き家特措法の内容を拡充している例を簡潔に説明しておくこととする。 (2) 神戸市条例の特徴 神戸市条例の特徴は、次の図のように、空き家特措法の規制対象に関する条項の他に、「類似空家等」、「特定類似空家等」のカテゴリを作り、空き家特措法と同様の助言・指導、勧告、命令、行政代執行の規制の仕組みを採用している点にある(空地等の説明は割愛する)。 【空き家特措法と神戸市条例との関係】 (出典) 神戸市住宅都市局安全対策課「神戸市空家空地対策の推進に関する条例(逐条解説)」(平成28年9月)3頁 神戸市条例の「類似空家等」とは、空家等に準じる状態のものであり、上記逐条解説によれば、「類似空家等」には、盆、正月だけ利用する住宅のように使用頻度が年に数回程度に留まるものや最近空き家になったものなどが含まれるものとされている。 これは、空き家特措法が想定する空家等にまで至っていない状態の空き家も規制することによって、より速い空き家の適正管理を達成しようとするものである。 (3) 神戸市条例独自の仕組み 神戸市条例は、空き家特措法第14条に基づく勧告について、同法が規定していない意見陳述の機会を付与している(同条例第12条)。これは、空き家特措法に基づく勧告は、上記2の(3)で指摘した地方税法上の不利益に直結するため、条例によって特定空家等の所有者の手続保障を充実させたものである。 一方で、神戸市条例は、空き家特措法に基づく勧告や同条例に基づく勧告を受けた場合に、その者が正当な理由なく従わなかった場合に、氏名、住所等を公表するものとしており、空き家特措法にない義務履行確保の手段を設けている(同条例第13条)。   4 まとめ 空き家の所有者等は、空き家特措法に基づいて、行政庁から規制権限を行使され、代執行にまで至った場合には多額の費用負担を強いられる可能性がある。また、市町村の定める独自の条例によって、より早期の段階から規制権限の行使が行われる可能性があることにも配慮しておく必要がある。 (了)

#No. 275(掲載号)
#羽柴 研吾
2018/07/05

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第10話】「人生100年時代と賦課方式」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第10話】 「人生100年時代と賦課方式」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「中尾統括官・・・賦課方式って・・・なんですか?」 浅田調査官は遠慮がちに中尾統括官に尋ねる。 昼休みで新聞を読んでいた中尾統括官は顔を上げる。 「年金制度の・・・賦課方式のことかい・・・?」 浅田調査官は頷く。 「ええ・・・実はこの本で、我が国の賦課方式について書かれていまして・・・この賦課方式は、将来、破綻するというのです・・・」 浅田調査官は手に持っていた『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)-100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社、2016年)という本を見せる。 中尾統括官は表題に興味を持ったらしく、本を手に取る。 「なかなか面白そうだな・・・著者は、イギリスのリンダ・グラットン(心理学者)とアンドリュー・スコット(経済学者)か・・・」 そう言いながら、ページをめくる。 「浅田君が言うのは・・・この箇所のこと?」 中尾統括官は、その箇所(69頁)を指す。 「ええ・・・」 浅田調査官は本を覗きながら頷く。 「なるほど、そういうことか。つまり賦課方式というのは・・・」 中尾統括官は、ペンを持って、罫紙に図を描く。 「つまり、毎年の保険料収入は、同時にその年の年金給付に充てられるということで、この図を見ればわかるように、年金給付を受ける人は退職世代で、一方、その年金等を負担するのが現役世代になっている・・・これが賦課方式だ。したがって、この賦課方式は・・・世代間で不公平が生じている・・・」 浅田調査官は中尾統括官の説明をじっと聞いている。 「・・・そうすると、高齢化が進むことによって、現役世代が支える年金受給者が増加し、現役世代の負担が増大することになるので、近い将来、賦課方式は破綻するであろうと考えられる・・・この本は、そういうことを我々に忠告しているわけだね。」 中尾統括官は本をペラペラめくりながら説明をする。 「・・・僕なんかあと2年で退職するから・・・年金制度は切実な問題だよ・・・」 中尾統括官はつぶやくように言う。 「そうですね・・・しかし、この調子だと、私たちの世代が退職するときには・・・間違いなく年金はもらえなくなる・・・ということですかね。」 浅田調査官は自嘲気味に言う。 「公務員は60歳で定年だけど・・・再雇用をしてもらって、まだ働かなければ・・・老後が心配だよ・・・」 中尾統括官は、真面目な顔になる。 「この本にも書いてあるけど・・・国連の推計によると、2050年までに、日本の100歳以上の人口は100万人を突破することになっている・・・今から32年後といえば、僕は90歳だ・・・しかし、そのときまで生きていれば、僕よりも年上の人は、少なくとも100万人以上いるということになるな・・・」 そう言うと、中尾統括官は苦笑する。 「・・・ところで、中尾統括官は、退職後、税理士になるのですか?」 浅田調査官が尋ねる。 「税理士?」 中尾統括官は、驚いたような表情になる。 「税理士になんて・・・なれないよ。」 中尾統括官は憮然という。 「でも、中尾統括官は、もう税理士の資格を取得しているのですから・・・当然、退職後は税理士になるのかと・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の顔を見る。 「バカを言え・・・税理士になっても・・・損害賠償が怖いし・・・それに、クライアントを獲得する自信もないよ・・・」 中尾統括官は、自嘲の笑みをもらす。 「僕は定年で退職しても、とりあえず、再雇用で65歳まで税務署で働いて・・・その後は、どこか小さな会社の経理などをしながら、ほそぼそと生きていく・・・ということを考えているんだ・・・」 「そうなんですか・・・この本では、これからの若い人の、人生100年時代においては、85歳まで働かなければ、人生の終焉をむかえるまでに破綻してしまうと・・・警告しています・・・」 浅田調査官は腕を組んでため息をつく。 「暗い話だね・・・」 中尾統括官はそうつぶやきながら、『LIFE SHIFT』と大きく書かれた表紙を見つめた。 (つづく)

#No. 275(掲載号)
#八ッ尾 順一
2018/07/05

AIで士業は変わるか? 【追補】「士業は変わり続ける」-連載を終えて-

AIで 士業は変わるか? 【追補】 「士業は変わり続ける」 -連載を終えて-   Profession Journal編集部   税務・会計Web情報誌プロフェッションジャーナルの創刊5周年記念特集として本年2月から連載が開始され、全20回、計21名の方々にご寄稿いただいた『AIで士業は変わるか?』は、先週公開号をもって一旦その役目を終え、最終回の掲載を迎えた。 本連載ではAIを中心としたIT技術の急速な進化によって、会計・税務の世界がどのように変化するのか、あるいはすでに変化しているのか、また、公認会計士、税理士という職業自体が代替され消滅してしまうのか、各回の筆者による見解や本職に対する想いを披露していただいた。 諸般の事情により掲載が適わなかった方もおられたが、結果として上記のとおり21名の方々による原稿を掲載させていただいたなかで、編集部として意識したのは、一定の幅を設けつつも様々な立場の方々にご登場いただきたいというものだった(詳しくは後述)。 もちろん公認会計士又は税理士の有資格者が多いものの、その所属する組織(又は個人)や経歴・立場、職務内容、業務方針(人生設計)等がバラエティに富んだ筆者陣となっているのは、実際に同じ実務の現場で活躍されている会員読者の方々にはご理解いただけるものと思う。本当にこれら職業の働き方というのは幅広いものなのだなと、あらためて感じた次第である。 *  *  * そもそも本連載を企画するに至ったきっかけは、昨年秋頃から、そして現在においてもなお、多くの経済誌・ビジネス誌、新聞等において、AIによって士業、とりわけ公認会計士、税理士という職業が代替され成立し得なくなる未来が到来することを謳った特集が組まれていたものに対し感じた違和感によるものであった。 職業柄、執筆者を中心とした多くの公認会計士、税理士の方々にお会いする機会に恵まれているが、最新の法制度や時流をキャッチアップし、クライアントのために考え悩む先生方の姿を見るに、ロボットとはいえないまでも人間以外の何らかの機器がすべてを代替し解決するような状況は、想像しがたい。 一方で、AIを含むIT技術の進化は目覚しいどころの速さではなく、本誌創刊の2013年当時と比べてすら、社会経済を一変させるインパクトをもたらしており、すでに実務への導入が始まっているのも事実であり、我々の想像を超えた技術開発をめぐる現況も受け止めなくてはならない。 このような、いわば過渡期の状況を見るに、職業がなくなる、なくならない、といった極端に単純化された答えは、まさに現在、第一線で活躍しておられる実務家の方々にとっては意味を成さないのではないかと考えるようになった。 そして様々な立場の方にご意見を伺えば、その共通するところが、この時代に士業が向かうべき道として浮かび上がってくるのではないかと考えた。 *  *  * 本連載では、大手の監査法人、税理士法人において会計監査、税務支援、さらには実際にAIをこれら業務に活用する最先端の取組みを行っている公認会計士、税理士の方々から、専門性の高いサービスを提供するためあえて個人もしくは小規模での事務所等にて活躍されている方々、さらにはこれら業界とも関係の深い研究者、会計ソフトベンダー、弁護士、不動産鑑定士、そして本サイトの運営会社プロフェッションネットワークの関連会社である資格の学校TACの代表取締役社長に至るまで、冒頭に述べたとおり、それぞれの考えを率直に書いていただいた。 そこでは、AIに関する最前線の取組みから、会計・税務の支援業務を棚卸ししAIに代替しうるものと代替しえないものを詳細に検証したもの、会計士・税理士の業界全体を見据えて問題提起を行うものまで、会員読者の方々へ今後の仕事への取組みのアドバイスとなるような玉稿が集まった。 そして、これらの中で共通していたのは、公認会計士、税理士という職業の本来の姿を捉えなおすこと、そして、その本来の姿さえ見失わなければ、「技術革新が職業を奪う」といったような情報に惑わされることはない、というものであったと考える。 すべてが手書きであった時代から、自動計算、デジタル化の時代まで、公認会計士、税理士の方々は時代ごとの最新の技術を取り込み、サービスを進化させつつも、その本来の姿を変えることはなかった。 だとすれば、AIという新たな存在に対しても、それらを吸収し進化を続けていくと考えるのが、現実的な回答ということになるのではないだろうか(そういう意味を込めて、本稿のタイトルを「士業は変わり続ける」とさせていただいた)。 *  *  * ある税理士の方とお会いした際、本連載について紹介したところ、次のような言葉をいただいた。 この方がおっしゃるように、今後、再びこのような問題が提起されるとき、それはAIの次に到来する“何か”なのかもしれない。冒頭に述べたとおり、本連載は一旦その役目を終えたものの、本誌ではこのテーマについて、今後も引き続き検証を行っていくこととしたい。 最後に、一見すると突拍子もない本テーマに関する原稿依頼にもかかわらず、真摯に受け止めていただき、ご自身の見解を余すところなくご紹介いただいた本連載の筆者の方々には、この場を借りて心よりお礼を申し上げたい。 (了)

#No. 275(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/07/05

《速報解説》 国税庁、平成30年分の路線価を公表~都市部は依然上昇傾向、地方も訪日客効果で一部上昇の兆し~

《速報解説》 国税庁、平成30年分の路線価を公表 ~都市部は依然上昇傾向、地方も訪日客効果で一部上昇の兆し~   Profession Journal編集部   国税庁は7月2日、相続税や贈与税の算定基準となる平成30年分の路線価等を公表した。 平成30年分の全国平均路線価は対前年比0.7%の上昇となり、3年連続の上昇となった。また、路線価が上昇した都道府県数も昨年の13から18へと増加している。 路線価上昇の主な背景としては、訪日外国人客(インバウンド)の増加や都市部の大規模再開発の影響によるものとみられる。 なお、ここ3年の全国平均路線価の対前年比率をみると、下表のように今年が最も高い上昇率となっている。 〇都市部を中心に地価上昇続く 東京都は、企業のオフィス需要及び訪日客のインバウンド需要などを背景に路線価の上昇が続いており、昨年の3.2%を上回る4.0%の上昇率となった。 東京都のベッドタウンを擁する神奈川県(上昇率0.6%)、千葉県(0.7%)、埼玉県(0.7%)も住宅需要等により上昇が続いており、これら首都圏の4都県は5年連続の上昇となっている。 また、大阪府(1.4%)、愛知県(1.5%)といった大都市も依然上昇傾向にあり、大阪府は5年連続、愛知県は6年連続で前年より上回った。 なお、今年も地点別の最高路線価は、東京都中央区銀座5丁目の「鳩居堂」前が4,432万円(1㎡当たり)で33年連続のトップとなり、昨年に続き過去最高価格を更新した。   〇地方でも観光地や繁華街では路線価上昇 観光地や繁華街は訪日客のインバウンド需要により上昇がみられ、都道府県別の上昇率では沖縄県が5.0%と全国トップとなり、各都道府県庁所在地の最高路線価も水戸市を除いて、上昇がみられる。 なお、このように地方においても観光地化の影響で急激な路線価の上昇がみられる地域もあるため、思わぬ税負担が生じないよう留意しておきたい。   〇各国税局が最高路線価を公表 ちなみに、同日付で各国税局がそれぞれ平成30年分の国税局管内各税務署の最高路線価を公表している。 〈各局が公表した最高路線価(別表)のページ〉 (了)

#No. 274(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/07/03

《速報解説》 民泊新法による住宅宿泊事業の所得は原則雑所得に~宿泊者への提供面積によっては住宅ローン控除の適用要件を充たさなくなるケースも~

《速報解説》 民泊新法による住宅宿泊事業の所得は原則雑所得に ~宿泊者への提供面積によっては住宅ローン控除の適用要件を充たさなくなるケースも~   Profession Journal編集部   急増する外国人観光客への対応等を目的として、本年6月15日から住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)が施行され、個人が都道府県知事等への届出手続を経ることで、住宅宿泊事業者として自己が居住する住宅を宿泊者へ提供できるようになった。 民泊というと一般的なホテルや旅館に比べ宿泊料がリーズナブルなイメージもあるが、この住宅宿泊事業を行うことで一定の収入も見込まれ、この所得に対する課税の取扱いが気になるところだ。 国税庁が公表している「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」では、住宅宿泊事業を行うことによる所得税の取扱いを7問のFAQで解説している。 本情報では、まず、不動産の貸付けによる所得は原則として不動産所得に区分されるものの、住宅宿泊事業者には宿泊者の衛生・安全の確保義務や一定の設備要件が定められていること等から、住宅宿泊事業は一般的な不動産の貸付け(賃貸)とは異なるとし、また住宅宿泊事業に利用できる家屋は次のものに限定され宿泊日数も制限されている(年間180日を超えないもの)ことを説明している。 これらを踏まえ、住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業を行うことによる所得は、原則として雑所得に区分されるとし、住宅宿泊仲介業者に支払う仲介手数料や宿泊者用の日用品等購入費、水道光熱費、通信費など、必要経費として差し引くことのできるものの例を紹介している。 ただし、不動産賃貸業者が賃貸契約期間満了後、次の賃貸契約が締結されるまでの間に行う住宅宿泊事業による所得は不動産所得に含めることとして差し支えないとし、また専ら住宅宿泊事業による所得で生計を立てているなど所得税法上の事業として行われていることが明らかな場合は事業所得に該当するとした。 ここで上述の居住要件に基づき、いわゆる自宅を宿泊者に提供するとした場合、必要経費として例示された水道光熱費や通信費など、1つの支出が業務用部分と生活用部分の両方に関わりのある費用については、その取扱いに留意が必要だ。 本情報では、これら家事関連費のうち必要経費として認められる範囲について、住宅宿泊事業における届出書等に記載した事業に利用している部分の床面積の総床面積に占める割合や、実際に宿泊客を宿泊させた日数を基にするなど、合理的な方法により按分して計算する必要があるとし、計算例を示している。 さらに、住宅宿泊事業を行う住宅について住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受けようとする場合、住宅ローン控除は床面積の2分の1以上に相当する部分を専ら自己の居住の用に供しているなどの要件を満たす必要があるため、本情報ではこの点について、対象となる住宅の総床面積のうち生活用部分に占める割合が2分の1を超えるか否かで判断するとし、具体的な区分の仕方や生活・業務の併用部分の判定が難しい場合の算出方法、計算例などを紹介している。 このように、積極的に住宅宿泊事業に参画した結果、上記面積要件を充たさず、昨年まで受けられていた住宅ローン控除が受けられなくなるといったことのないよう、宿泊者への提供部分の面積についても気をつけておきたい。 本情報によると、自宅を特定の期間(年間合計で1ヶ月未満程度)に限って住宅宿泊事業に供している場合には、その家屋の全体を生活用部分として住宅ローン控除の適用が受けられるとしている。 ちなみに、年末調整済みの給与所得を有する方で、住宅宿泊事業を営むことで生じる所得が 20 万円以下の方については、その他に所得がない場合、確定申告は不要となる。 (了)

#No. 274(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/07/02

《速報解説》 IFRS9号を踏まえた金融商品会計基準の改正検討を前に会計士協会より信用損失の会計処理に関する研究資料が公表される~19の論点で日本基準と国際基準を比較、見直しに当たっての課題一覧も~

《速報解説》 IFRS9号を踏まえた金融商品会計基準の改正検討を前に 会計士協会より信用損失の会計処理に関する研究資料が公表される ~19の論点で日本基準と国際基準を比較、見直しに当たっての課題一覧も~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年6月29日、日本公認会計士協会は、「我が国の銀行等金融機関の会計実務を踏まえた信用損失の会計処理に関する研究資料」(業種別委員会研究資料第1号)を公表した。 企業会計基準委員会では、今後、IFRS第9号「金融商品」の内容を踏まえた「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)の改正に着手するか否かを判断することとし、2018年夏を目途に意見募集文書を公表する予定である。 研究資料は、今後、金融商品会計基準の検討を議論する際に、関係者が現状を理解した上で議論に臨めるよう、我が国における会計基準及び実務上の取扱いとIFRS及び米国基準における取扱いの違いが理解できるよう比較調査したものである。 表紙を含めて74ページあるので、以下では、主な内容について解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 信用損失の会計処理 信用損失の会計処理は、我が国の会計基準においては、金融商品会計基準に「貸倒見積高の算定」として定められているが、IFRS及び米国基準のような国際的な会計基準改正の動向を踏まえた見直しは、現時点では行われていない(5項)。 なお、研究資料は、債務保証等に係る信用損失も範囲に含めるため、対象とする論点を「信用損失の会計処理」としている(7項)。   Ⅲ 論点の識別 次のように信用損失の会計処理に関する論点の識別を行っている。 以下では、基本的に、IFRS9号と比較しており、米国基準については割愛している。 なお、付録3として、「会計基準等の見直しに当たっての課題の一覧」が記載されている。 (了)

#No. 274(掲載号)
#阿部 光成
2018/07/02

新刊書『税理士が知っておきたい「認知症」と相続・財産管理の実務』発刊のお知らせ

『税理士が知っておきたい「認知症」と相続・財産管理の実務』 発刊のお知らせ

#Profession Journal 編集部
2018/06/29
#