特別事業再編(自社株対価M&A)に係る 課税繰延措置等特例制度の解説 【第1回】 「M&Aをめぐる創設の背景」 太陽グラントソントン税理士法人 マネジャー 税理士 川瀬 裕太 1 創設の背景 自社株式を対価とする買収は、手元資金の確保や外部からの資金調達を要しない買収手法として、大規模なM&Aの際に、欧米等では広く用いられている。日本では、会社法の規制、株主に強いられる譲渡益課税がネックとなり、普及に至っていないというのが現状であった。 ◆会社法の規制とその緩和措置について 会社法において、買付会社の自社株式を対価とする公開買付け(以下「自社株対価TOB」という)は、対象会社株式を現物出資財産として買付会社が株式の発行又は自己株式の処分(以下「株式の発行等」という)を行うこととなることから、①対象会社の株式の時価に一定のプレミアムを付した交換比率で自社株対価TOBを行った場合、買付会社において有利発行の株主総会決議(会社法199)が必要となる可能性がある。また、現物出資に係る規制がかかることから、②検査役の調査(会社法207)が原則必要となり、公開買付けの日程が確定できないという不都合が生じ得る。 株式の発行等に係る募集事項の決定から当該株式の発行等まで一定の間隔が生ずることにより、当該期間中に対象会社株式の価格が下落し、株式の発行等の際の対象会社株式(現物出資財産)の価額が、募集事項に定めた価額に著しく不足する場合は、③応募株主の出資財産価額填補責任(会社法212)や④買付会社の取締役等の同責任(会社法213)が生じる可能性がある。 これに関する規制緩和の措置として、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法(以下「産活法」という)の認定事業再編計画に従った自社株対価TOBに際する株式発行等の場合には、その募集事項の決定(※)において、払込金額の代わりに、自社株式と対象会社株式との交換比率を定めることで足りることとし、現物出資規制や有利発行規制は適用されないこととなった。平成26年に産活法は廃止されたが、産業競争力強化法において同種の定めが規定されている。 (※) 原則として株主総会の特別決議が必要となるが、簡易要件(公開買付けの対価として交付する買付会社の株式の数に1株あたり純資産価額を乗じて得た額が、買付会社の純資産価額の5分の1以下)を満たす場合には、取締役会決議で足りる。 ◆経済産業省からの税制改正要望 上記①~④のような問題が指摘されていたところ、経済産業省は平成24年度及び平成25年度税制改正要望の中で、自社株対価TOBが用いられた場合に、当該TOBに応募した対象会社の株主について生じ得る株式譲渡損益を繰り延べるべきである旨の要望を行っていたが、そのような措置の導入は見送られてきた。 平成30年度税制改正要望においても、下記のような改正要望が挙げられていた(経済産業省「平成30年度税制改正要望書」より一部抜粋)。 2 平成30年度税制改正 平成30年度税制改正において、第4次産業革命に対応し、企業の迅速かつ大胆な事業ポートフォリオの転換を支援するために、欧米で一般的な株式対価M&Aに係る株式譲渡益の課税の繰延措置(特別事業再編を行う法人の株式を対価とする株式等の譲渡に係る所得計算の特例(措法66の2の2))が創設された。 ◆制度概要 法人が、改正産業競争力強化法の施行日(平成30年7月9日)から平成33年3月31日までに改正産業競争力強化法の特別事業再編計画の認定を受けた事業者の行ったその認定に係る特別事業再編計画に基づく同法の特別事業再編により、その有する株式を譲渡し、その認定を受けた事業者の株式の交付を受けた場合には、その譲渡した株式の譲渡損益の計上を繰り延べることとされる(措法66の2の2)。所得税についても同様の取扱いとされる(措法37の13の3)。 〈制度イメージ〉 ◆株式対価M&Aの活用について これまで被買収会社の株主に課税が生じることなどが制約要因となって行われてこなかった自社株式等を対価とした株式取得による買収について、今回の税制改正により、それらの制約要因が解消されれば、株式を対価とした大胆な事業再編が促進され、以下のような効果が期待される。 ●株式市場で将来の成長が期待されているが足元の資金に余裕のない企業(新興企業等)にとって、買収が行いやすくなる。 ●大型案件で銀行借入による資金調達に制約がある場合でも、買収が可能になる。 ●買収に自己株式を用いることができるため、手元資金を他の使途(設備投資、人件費等)に回せるようになる。 ●売り手(買収対象会社の元々の株主)が買い手企業の株を持つ結果、売り手がM&Aによるシナジー(相乗効果)を享受できるとともに、売り手にもM&A後の企業価値向上へのインセンティブが生じ、売り手と買い手の協同による企業価値向上が期待される。 * * * 次回は本特例制度の適用を受けるために必要な特別事業再編計画の認定要件について解説する。 (了)
〔平成30年度税制改正で創設された〕 コネクテッド・インダストリーズ税制(IoT税制)のポイント 【第1回】 「制度創設の背景と概要」 税理士・公認会計士 新名 貴則 平成30年度税制改正において、「革新的情報産業活用設備を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度」(いわゆる「コネクテッド・インダストリーズ税制(IoT税制)」)(措法42の12の6)が創設された。本連載では、当該税制の概要や手続等について解説する。 【第1回】では当該税制が創設された背景と、税制の概要について解説する。 1 制度創設の背景 近年のIoT(Internet of Things:様々なモノがインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組み)の発達により、データの流通が劇的に増加している。このような状況において、日本の製造現場等に蓄積されている膨大なデータを活用することが、日本の成長のカギとなっている。 そこで、データの収集・活用等を行う民間事業者を支援する措置を講じて、産業競争力の強化や社会問題の解決に向けたデータの利活用を促進するため、生産性向上特別措置法が平成30年6月6日に施行された。 税務面においては、革新的データ産業活用計画の認定を受けた事業者が、当該計画に必要なシステム等の導入を行った際の減税措置が創設されている。 2 税制の概要 ① 概要 生産性向上特別措置法に規定する「認定革新的データ産業活用事業者」である青色申告事業者が、認定革新的データ産業活用計画に基づいて、指定期間内に一定の設備(革新的情報産業活用設備)への投資を行う場合に、30%の特別償却又は3%(一定の賃上げを伴う場合は5%)の税額控除を認める制度である。 ② 適用要件 当該税制を適用するためには、具体的には次の要件を満たすことが必要となる。 (※) 具体例:データ収集機器(センサー等)、データ分析により自動化するロボット・工作機械、データ連携・分析に必要なシステム(サーバ、AI、ソフトウェア等)、サイバーセキュリティ対策製品など ③ 税制措置の内容 対象資産を事業供用した事業年度において、30%の特別償却又は3%(ないし5%)の税額控除を選択適用できる。 ◆特別償却 特別償却限度額 = 革新的情報産業活用設備の取得価額 × 30% ◆税額控除 税額控除限度額 = 革新的情報産業活用設備の取得価額 × 3%又は5%(※) (※) 次の通り3%以上の賃上げを行った場合、控除率は5%が適用される。 適用年度の継続雇用者の給与総額 ≧ 前期の継続雇用者の給与総額 × 103% ただし、次のいずれにも該当しない大企業等については、税額控除の規定は適用されない。 ④ 申告手続 本制度における特別償却の適用を受けるためには、確定申告書等に革新的情報産業活用設備の償却限度額の計算に関する明細書を添付する必要がある。 また本制度における税額控除の適用を受けるためには、確定申告書等に控除の対象となる革新的情報産業活用設備の取得価額、控除を受ける金額及びその金額の計算に関する明細書を添付する必要がある。 (了)
〈平成30年度改正対応〉 賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の 適用上の留意点Q&A 【Q8】 「「経営力向上が確実に行われたこと」の意義」 公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎 [Q8] 中小企業者等向けの上乗せ控除制度の要件とされている「経営力向上が確実に行われたこと」とは、具体的に何を示せばよいのでしょうか。 [A8] ◆「経営力向上」という用語は中小企業等経営強化法において定義され、経営力向上のためのターゲットとなる指標は事業分野ごとに異なります。その具体的な内容を含めた各種資料は中小企業庁のホームページにおいて公開されています。 ◆経営力向上が確実に行われたことを示すための書類としては、「経営力向上計画に係る実施状況報告書」が該当するものと考えられます。 【解説】 (1) 上乗せ控除のための経営力向上に係る要件(【Q7】参照/再掲) (2) 経営力向上計画の意義 ここでいう「経営力向上」とは、事業者が、事業活動に有用な知識又は技能を有する人材の育成、財務内容の分析の結果の活用、商品又は役務の需要の動向に関する情報の活用、経営能率の向上のための情報システムの構築その他の経営資源を高度に利用する方法を導入して事業活動を行うことにより、経営能力を強化し、経営の向上を図ることをいう(中小企業等経営強化法2⑩)。 そして、中小企業者等の上乗せ控除制度の適用要件として用いられている「経営力向上計画」とは、同法第13条に定める「経営力向上計画」であり、具体的には以下の事項を記載したものである(同法13②)。 中小企業者等は、上の事項を記載した経営力向上計画を主務大臣(経済産業大臣)に提出して、その経営力向上計画が適当である旨の認定を受けることができる(同法13①)。認定を受けた場合、主務大臣から、計画認定書及び計画申請書の写しが交付される。 経営力向上計画を含めた、本制度の詳細なガイドラインについては、中小企業庁のホームページに掲載されている。 (3) 「経営力向上が確実に行われたこと」の意義 「経営力向上が確実に行われたこと」とは、経営力向上計画に記載した指標につき、経営力向上のための取組みの実施期間中に所定の目標に向けて指標が向上していることをいい、具体的には、経済産業大臣に対して提出する「経営力向上計画に係る実施状況報告書」によって明らかにするものと考えられる。 経営力向上計画に係る認定申請書には「経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標」を記載することとされ、その指標は、経営力向上計画に係る事業の属する事業分野において事業分野別指針が定められている場合にはその指標を記載することとし、定められていない場合には労働生産性とすることとされている(経営力向上計画に係る認定申請書 記載要領5)。 〈例〉事業分野別指針に定められている指標 (『事業分野別指針の概要について(平成30年3月)』経済産業省) ここで「労働生産性」は、以下の式によって算定される。 (営業利益+人件費+減価償却費)÷ 労働投入量(※) (※) 労働投入量・・・労働者数又は1人あたり年間就業時間 (4) 添付書類 経営力向上に係る要件を満たしているものとして上乗せ控除制度の適用を受けようとする場合には、これらの規定の適用を受ける事業年度の確定申告書等に経営力向上が確実に行われたことを証する書類として以下のものを添付する必要がある(措規20の10①)。 (了)
〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第29回】 「別表6(23) 雇用者給与等支給額が増加した場合又は給与等の引上げ及び設備投資を行った場合の法人税額の特別控除に関する明細書」及び「別表6(23)付表1 給与等支給額、当期償却費総額及び比較教育訓練費の額の計算に関する明細書」〈その2〉 公認会計士・税理士 菊地 康夫 Ⅰ はじめに 本連載では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 前回より、平成30年度の税制改正により見直しが行われたことによりその様式も改正された、賃上げ・投資促進税制(改正前 所得拡大促進税制)関連の別表を次の適用パターンごとに分けて採り上げている。 ※ 中小企業者とは、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人でその発行済株式又は出資の総数又は総額の一定割合以上を大規模法人に所有されていない法人及び資本又は出資を有しない法人で常時使用する従業員の数が1,000 人以下の法人をいい、それ以外を大企業等という。 今回は、パターン②の場合における、「別表6(23) 雇用者給与等支給額が増加した場合又は給与等の引上げ及び設備投資を行った場合の法人税額の特別控除に関する明細書」及び「別表6(23)付表1 給与等支給額、当期償却費総額及び比較教育訓練費の額の計算に関する明細書」の記載の仕方を採り上げる。 Ⅱ 概要 この別表は、青色申告書を提出する法人が平成30年度改正後の租税特別措置法第42条の12の5第1項の規定の適用を受ける場合に作成する。 平成30年度改正のいわゆる賃上げ・投資促進税制は、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度において、以下の(イ)及び(ロ)の要件をすべて満たした場合、国内雇用者(注1)に対する給与等支給額(注2)の対前年度増加額について、その一定割合の税額控除ができる(当期の法人税額の20%が上限)制度である。 (注1) 国内雇用者とは、法人の使用人(法人の役員及びその役員の特殊関係者を除く)のうち国内事業所に勤務する雇用者(労働基準法第108条に規定する賃金台帳に記載された者)をいう。 (注2) 給与等支給額とは、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合はその金額を控除した額)をいう。 (注3) 継続雇用者給与等支給額とは、雇用者給与等支給額のうち継続雇用者(適用年度及び適用年度の前事業年度の期間内の各月において給与等の支給を受けた国内雇用者)に対する当該適用年度の給与等の支給額をいう。 ▼ 注意!▼ 上記の継続雇用者は、雇用保険の一般被保険者に該当するものに限られる。また、継続雇用制度(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第9条第1項第2号に規定する制度)の対象者は除く。 ▼ 注意!▼ 改正前の旧所得拡大促進税制における「継続雇用者」は、適用年度及びその前年度において給与等を受けた国内雇用者をいうので、当期と前期にそれぞれ1ヶ月以上の支給実績があれば継続雇用者に該当したが、改正後の新制度では2期間内のすべての月で支給実績がなければ該当しないことに留意する。 (注4) 国内設備投資額とは、適用年度において法人が取得等(取得又は製作もしくは建設をいい、合併等による取得を除く)をした国内資産でその適用年度終了の日において有するものの取得価額の合計額をいう。 この制度による税額控除限度額は、次のとおりである。 給与等支給増加額(給与等支給額-前事業年度の給与等支給額)×15%+加算額※1 ※1 当期の教育訓練費(注5)の額の比較教育訓練費の額(注6)に対する増加割合が20%以上である場合には、控除率を5%上乗せして合計20%の税額控除とすることができる。 ➡ ただし、その適用年度の調整前法人税額の20%相当額を超える場合には、その20%相当額が限度額となる。 (注5) 教育訓練費とは、国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるための費用で次のものをいう。 (注6) 比較教育訓練費の額とは、適用年度開始の日の前2年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額(当該各事業年度の月数とその適用年度の月数とが異なる場合には、その各事業年度の教育訓練費の額にその適用年度の月数を乗じてこれをその各事業年度の月数で除して計算した金額とする)の合計額を当該2年以内に開始した各事業年度の数で除して計算した金額をいう。 なお、改正前の制度(旧 所得拡大促進税制)で採用されていた「基準雇用者給与等支給額」や「平均給与等支給額」などは廃止されている。 Ⅲ 「別表6(23)」及び「別表6(23)付表1」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成30年4月1日以後開始する事業年度(改正後の制度適用のため)。 (3) 別表の記載例 (4) 別表の各記載欄の説明 ◆別表6(23) 〔継続雇用者給与等支給増加割合の計算〕欄 〔国内設備投資に係る計算〕欄 〔教育訓練費増加割合の計算〕欄 〔税額控除限度額〕欄 ◆別表6(23)付表1 〔基準雇用者給与等支給額の計算〕欄 〔比較雇用者給与等支給額の計算〕欄 〔平均給与等支給額及び比較平均給与等支給額の計算〕欄 〔継続雇用者給与等支給額及び継続雇用者比較給与等支給額の計算〕欄 〔当期償却費総額の計算に関する明細〕欄 〔比較教育訓練費の額の計算に関する明細〕欄 (了)
平成30年度税制改正における 「一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し」 【第5回】 (最終回) 国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦 (4) 平成30年度税制改正の影響 一般社団法人等を用いた節税策に対し、平成30年度の税制改正はどの程度影響があるのであろうか。 まず、前回解説した(3)の①(一般社団法人等に対する贈与税等の課税規定の明確化)の方は、現行規定の文理解釈の明確化を意図した改正であり、一般社団法人等が代表者やその親族といった特定の者によって支配され、その財産をあたかも自分の所有財産のように自由に利用・処分できるというような租税回避的なケースに規制をかけるという意味で、一定程度の効果があるものと考えられる。 また、(3)の②(特定一般社団法人等に対する相続税の課税)の方は、一般社団法人等の理事の過半数が同族関係者によって支配されている場合において、当該法人の理事に相続が発生したときには、当該法人の純資産額のうちの一定金額につき相続税が課されることとなるため、上記①と同様に、一般社団法人等が代表者やその親族といった特定の者によって支配されているケースに規制をかけることが可能となるだろう。 一般社団法人等を用いたものに限らず、相続税の節税・租税回避スキームは一般に、課税庁による「後出しじゃんけん」のリスクにさらされていることを、対策をアドバイスする者及び受ける者ともに認識する必要がある(※1)。 (※1) 拙著『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第2版)』(中央経済社・2017年)92-93頁参照。 すなわち、相続税法の適用(納税義務の成立)は原則として相続発生時(相続又は遺贈による財産取得時)である(通法15②)一方、相続税対策は相続発生の相当程度前から行うため、相続税対策検討・実行時には適用がなかった租税回避否認規定(相続税法、租税特別措置法のみならず通達も含む)が、相続発生時には適用される(それは遡及立法ではない)ということが頻繁に起こるということである。本件はその典型例といえよう。 これに対し、所得税や法人税は原則としてプランニング時に遡っての租税回避否認規定の適用がないため(遡及立法に当たるため)、一般に「後出しじゃんけん」のリスクは小さいこととなる。 これらの関係を図示すると、以下の通りとなる。 〇相続税対策と「後出しじゃんけん」 したがって、相続税のプランニングは、プランニング時と相続発生時との(短くない)タイムラグに伴う(不可避な)否認リスクに常にさらされているということを意識することが不可欠ということになる。 そのため、仮に後出しじゃんけんにより当初のプランニングが意味をなさないことになっても、そのダメージを最小化するような代替的なアイディアである「プランB」を予め用意しておくことができれば、税務アドバイザーに対する納税者の信頼も盤石なものとなるであろう。 (5) 租税回避といえないスキームに対する課税 上記平成30年度税制改正のネガティブな影響としては、租税回避といえないスキームに対する課税が起こり得るという点があるだろう。例えば、以下のようなスキームに対して問題となることが想定される。 子供のいない者がある一定年齢に達して、それまでの人生で稼得した財産をわが国の将来を担う幅広い層の子供たちへの給付型奨学金(※2)に充てる原資として残したいと考えたとき、一般財団法人を設立してそこに遺贈するという方法を採ることで、設立者の生死を超えた奨学金給付事業の持続性・永続性が確保されることとなる。これは正に公益法人制度改革の理念に沿った公益法人の利用方法である。 (※2) 無論、設立者の親族は奨学金給付の対象外である。 このとき、遺贈する財産が巨額で専任の職員を雇用する規模のケースであればともかくとして、それが数千万円から数億円規模であれば、一般財団法人を設立する際に遺贈者(設立者)の身近な親族(兄弟や甥、姪など)を理事や社員とするのが一般的であろう。そうなると、今回の税制改正で、一般財団法人の理事の過半数が同族関係者によって支配されていることから、特定一般社団法人等に該当し、相続税が課税されることとなる。 〇個人財産を奨学金の給付を行う一般財団法人に遺贈する場合 上記のケースのように、純粋で公益的な目的を持った一般財団法人であっても、今般の改正により、単にその構成員につき設立者の親族が多数を占めるという事実のみをもって「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する」又は「相続税等の租税回避スキーム」と解して課税するのは妥当といえるのか、疑問が残るところである。 (連載了)
措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の 譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第1回】 「非課税措置の概要と承認特例の改正」 公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香 - 質 問 - 公益法人等に財産を寄附した場合の譲渡所得の非課税措置とはどのようなものですか。また、その手続の簡素化が図られた承認特例制度について教えてください。 - 回 答 - 通常、無償で財産を寄附した場合、寄付者の個人に対しては時価で譲渡したものとみなされ譲渡所得税が課税されます。ただし、寄附の相手が公益法人等であり、その寄附が一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときには、当該所得税について非課税とする制度(以下「非課税措置」という)が設けられています。 また、手続きが簡素化された承認特例制度(以下「非課税承認特例」という)もあり、こちらの制度では、承認申請書を国税庁長官に提出した場合で、その提出した日から1ヶ月以内(株式の場合は3ヶ月以内)に、その申請について国税庁長官の承認がなかったとき、又は承認しないことの決定がなかったときは、その申請について承認があったものとみなされることになっています。 ○●○◆ 解 説 ◆○●○ 1 制度の概要 個人が、土地、建物などの財産を法人に寄附した場合には、これらの財産は寄附時の時価により譲渡があったものとみなされ、これらの財産の取得時から寄附時までの値上がり益に対して所得税が課されます(所法59①一)。 ただしその寄附が公益法人等へのもので、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他の公益の増進に著しく寄与することなど一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときは、当該所得税について非課税とする制度が設けられています(措法40①後段)。 2 非課税措置の承認要件 非課税措置に係る国税庁長官の承認を受けるには、その公益法人等に対する財産の寄附について、以下の3つの要件すべてを満たす必要があります(措令25の17⑤)。 3 非課税承認特例の制度 公益社団・財団法人、学校法人、社会福祉法人に対する現物寄附、かつ、以下の要件がすべて満たされる寄附において、国税庁長官に承認申請書を提出した日から1ヶ月以内に、その申請について国税庁長官の承認がなかったとき、又は承認しないことの決定がなかったときは、その申請について承認があったものとみなされ、所得税は非課税とされます(措令25の17⑦⑧)。 なお、平成30年度税制改正により、次の場合も非課税承認特例の対象となりました。 ただし、国立大学法人等については、寄附者が寄附を受けた法人の役員等及び社員並びにこれらの人の親族等に該当しないこと、の承認特例の要件は不要です。 また、株式についても新たに非課税承認特例の対象となりましたが、申請書の提出があった日から1月以内ではなく、3ヶ月以内に国税庁長官の承認をしないことの決定がなかった場合に、その承認があったものとみなされます。 (了)
平成30年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第9回】 (最終回) 「その他の税制改正」 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸 [5] その他の税制改正 1 収益認識に関する会計基準への対応 企業会計基準委員会(ASBJ)が平成30年3月30日に公表した「収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第30号)」について、その適用に対応するため、税務上の収益の認識基準に関して新たな改正又は既存の取扱いの明確化が行われた。 この「収益認識に関する会計基準」への対応に係る改正について、連結申告法人では、法人税法第81条の3により単体申告法人と同じ条文が適用される。 したがって、具体的な内容は、当該改正に係る他の記事を参照してほしい。 2 組織再編税制に係る改正 組織再編税制に係る改正は以下のとおりである。 これらの組織再編成に係る改正について、連結申告法人では、単体申告法人と同じ条文が適用される(法人税法第81条の3により適用されるものを含む)。 したがって、具体的な内容は、当該改正に係る他の記事を参照してほしい。 3 特別事業再編を行う法人の株式を対価とする株式等の譲渡に係る連結所得の計算の特例の創設 法人が、改正産業競争力強化法の施行日(平成30年7月9日)から平成33年3月31日までの間に、産業競争力強化法に規定する特別事業再編計画について認定を受けた法人の行った、その認定に係る特別事業再編計画に係る特別事業再編により、その有する他の法人(特別事業再編対象法人)の株式等を譲渡し、その認定を受けた法人の株式の交付を受けた場合には、その譲渡に係る対価の額は、その譲渡に係る原価の額とし、その特別事業再編対象法人の株式等の譲渡損益の計上を繰り延べることとされた(措法66の2の2、68の86、措令39の10の3、39の110)。 連結申告法人に係る『特別事業再編を行う法人の株式を対価とする株式等の譲渡に係る連結所得の計算の特例』は、租税特別措置法第68条の86及び租税特別措置法施行令第39条の110で定められているが、その内容は、租税特別措置法第66条の2の2及び租税特別措置法施行令39の10の3で定める単体申告法人に係る取扱いと基本的に同じである。 したがって、具体的な内容は、当該改正に係る他の記事を参照してほしい。 4 外国子会社合算税制に係る『一定の株式譲渡益の適用対象金額からの控除の特例』 M&Aによって傘下に入ったペーパーカンパニーが所有する外国関係会社の株式を一定の期間内に国内親会社又は他の外国関係会社に譲渡した場合に、その株式譲渡益を合算対象から除外する措置を講ずることになった。 連結申告法人の外国子会社合算税制に係る『一定の株式譲渡益の適用対象金額からの控除の特例』は、租税特別措置法施行令第39条の115第1項第5号及び第2項第18号で定められているが、その内容は、租税特別措置法施行令39の15第1項第5号及び第2項第18号で定める単体申告法人に係る取扱いと基本的に同じである。 したがって、具体的な内容は、当該改正に係る他の記事を参照してほしい。 (連載了)
フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第42回】 「資本関係のない会社間での事業譲渡」 仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋 【はじめに】 今回は、資本関係のない会社間での事業譲渡を解説する。分離先企業(買手)にとっては、事業譲渡の範囲を契約で定めることで、帳簿外にある債務(簿外債務、偶発債務等)を引き継ぐことを防止できる。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 事業を譲渡する側である分離元企業の個別財務諸表における会計処理は、以下のとおりである。 子会社や関連会社以外を分離先企業として、現金等の財産のみを受取対価として行われる事業譲渡は、移転事業に対する投資が精算されたものとして会計処理する。具体的には、以下のとおりである。 事業譲渡日の前日に決算又は仮決算を行い、事業譲渡に係る資産及び負債の適正な帳簿価額を確定させる(企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準(以下、「事業分離基準」という)10、77)。そして、原則として対価である現金等の財産を時価により計上し、この時価と移転事業に係る株主資本相当額の差額を移転損益として計上する(事業分離基準16、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(以下「指針」という)96(1))。 【留意点】 現金等の財産のみを対価として事業譲渡を行った場合であっても、以下のように分離元企業の重要な継続的関与によって、分離元企業が移転した事業に係る成果の変動性を従来と同様に負っている場合には、投資が精算されたとみなされず、移転損益を計上できない(指針96(1))。 ➤移転した事業に対し買戻しの条件が付されている場合 ➤移転した事業から生じる財貨又はサービスの長期購入契約により当該事業のほとんどすべてのコスト(当該事業の取得価額相当額を含む)を負担する場合 重要な継続的関与があるため、受取対価に現金を含むが移転損益を認識しない場合には、移転した事業を裏付けとする金融取引として会計処理する(事業分離基準76)。 事業を譲り受ける側である分離先企業の個別財務諸表における会計処理は、以下のとおりである。 分離先企業にとっては、取得(【第39回】参照)による事業譲受となる。したがって、取得した事業の取得原価は、現金の支出額となる(指針44)。 そして、取得原価を受け入れた資産・負債のうち、事業譲渡の日において識別可能なものに対して、時価を基礎として配分し、取得原価の配分額との差額をのれん(又は負ののれん)とする(指針51)。 分離元企業と分離先企業に資本関係はないことから、事業分離による分離元企業及び分離先企業の連結財務諸表への影響はない。したがって、連結財務諸表では分離元企業及び分離先企業ともに会計処理は不要である。 なお、分離元企業の株主、分離先企業の株主においても特段の会計処理は必要ない。 《設例》 X社は資本関係のないY社に現金を対価(10,000)として、A事業を譲渡した。 当該事業譲渡はY社によるA事業の取得に該当する。 X社のA事業の事業譲渡日前日の貸借対照表は以下のとおりである。 土地の時価は2,000である。 〈会計処理〉 1 分離元企業X社の会計処理 (※1) 帳簿価額 (※2) 差額 2 分離先企業Y社の会計処理 (※3) 時価 (※4) 差額 3 連結財務諸表における会計処理 事業分離年度において、共通支配下の取引や共同支配企業の形成に該当しない重要な事業分離を行った場合、分離元企業は以下の事項を注記する。 なお、個々の取引については重要性が乏しいが、事業分離年度における取引全体について重要性がある場合には、以下の(1)及び(2)について、当該取引全体で注記する。 また、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同じとなる場合には、個別財務諸表においては、連結財務諸表に当該注記がある旨の記載をもって代えることができる(事業分離基準28)。 分離元企業は、貸借対照表日後に完了した事業分離や貸借対照表日後に主要条件が合意された事業分離が、重要な後発事象に該当する場合には、上記に準じて注記を行う(ただし、貸借対照表日後に主要条件が合意された事業分離にあっては、上記(1)及び(3)に限る)。 また、当事業年度中に事業分離の主要条件が合意されたが、貸借対照表日までに事業分離が完了していない場合(ただし、重要な後発事象に該当する場合を除く)についても、上記(1)及び(3)に準じて注記を行う(事業分離基準30)。 なお、計算書類では、上記のような注記は必ずしも求められていない。 * * * 以上、4のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 (了)
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第142回】 企業結合会計⑩ 「現物配当」 仰星監査法人 公認会計士 永井 智恵 〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① A社の会計処理 (※) A社におけるB社株式の簿価50×B社におけるC社株式の簿価40/B社の純資産額(50+150)=10 ② B社の会計処理 〈会計処理の解説〉 株主が現金以外の財産の分配を受けた場合、交換等の一般的な会計処理の考え方に準じて、原則として、これまで保有していた株式が実質的に引き換えられたものとみなして、会計処理します(事業分離会計基準143項)。 本事例においては、上図の通りA社にとって、従来はB社を通してのC社への間接投資が、B社によるC社株式の現物配当によりC社への直接投資になったに過ぎません。そのため、A社にとっては、投資の継続性が認められます。 A社では、これまで保有していたB社株式の帳簿価額のうち、実質的にC社株式に引き換えられたものとみなして算定された金額でC社株式を計上します(①の仕訳を参照)。 このとき、A社においてB社株式のC社株式との引き換えからは損益は認識されません。 実質的にC社株式に引き換えられたものとみなされるB社株式の金額の算定方法には、本事例のように関連する帳簿価額の比率で按分する方法のほか、関連する時価の比率で按分する方法や時価総額の比率で按分する方法が考えられます(企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」295項、参照)。 一方でB社では、配当原資が繰越利益剰余金であるため、C社株式の帳簿価額をもって繰越利益剰余金を減少させます(②の仕訳を参照)。 このときも、企業集団内の企業に対する配当であるため、B社において損益は認識されません。 なお、現物配当であっても会社法上の分配可能額の規制の対象となりますので、剰余金の分配可能額の範囲内で行わなければならないことに留意しなければいけません。 (了)
土地問題をめぐる2018年法改正のポイント 【第2回】 「今後の所有者不明土地対策の動向・改正都市再生特措法等の概要」 弁護士 羽柴 研吾 1 所有者不明の土地問題が民事基本法制に与える影響 (1) 所有者不明土地特措法の位置付け 政府は、2018年6月1日、所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議を開催し、「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」(以下「所有者不明土地対策基本方針」という)を公表した。この基本方針は、同月15日の閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針2018について」においても確認されている。 所有者不明土地対策基本方針は、全8項目から構成されている。 ① 国会提出法案の円滑な施行 ② 土地所有に関する基本制度の見直し ③ 地籍調査等の着実な実施、登記所備付地図の整備 ④ 変則型登記の解消 ⑤ 登記制度・土地所有権等の在り方、相続登記の促進 ⑥ 所有者不明土地の円滑な利活用、土地収用の活用及び運用 ⑦ 土地所有者情報を円滑に把握する仕組み ⑧ 関連分野の専門家等との連携協力 上記①の国会提出法案は、所有者不明土地特措法(前回参照)を意味しており、このことからも分かるように、所有者不明土地特措法は、政府が取り組む所有者不明の土地問題の一部をなすものである。 また、所有者不明土地対策基本方針には、「所有者不明土地等問題 対策推進のための工程表」も添付されており、土地所有に関する基本制度や民事基本法制の見直し等の重要課題については、2018年中に制度改正の具体的方向性を提示した上で、2020年までに必要な制度改正を実現するものとされている。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) 国土交通省ウェブサイトより (2) 注目すべき検討事項 所有者不明土地対策基本方針で言及されている民事基本法制の見直しは、従来の物権法の基礎理論に大きな転換を迫る内容を含むものである。債権法の改正、相続法の改正に続く民事基本法制の大きな改正となりうることから、実務家としては、その動向に注視しておく必要がある。そこで、注目すべき検討事項3点について若干言及しておきたい。 2 都市再生特別措置法等改正法の概要 都市再生特別措置等改正法は、都市のスポンジ化対策として、3つの観点から新たな仕組みを設けている。その主な内容は、次のとおりである。 (1) 低未利用地の集約等による利用の促進(都市再生特別措置法及び都市開発資金の貸付けに関する法律関係) ① 「低未利用土地権利設定等促進計画制度」の創設 この制度は、低未利用土地の所有権にこだわらず、使用権を設定するなどして低未利用土地を集約するための制度である。そのイメージは、次の図のとおりである。 (※) 国土交通省ウェブサイトから抜粋 市町村は、立地適正化計画に記載された低未利用土地権利設定等促進事業区域内において、当該事業を行おうするときは、低未利用土地権利設定等促進計画を作成することになる。そして、当該計画の公告があったときに、当該計画に定めるところによって、地上権、賃借権、使用貸借による権利の設定・移転又は所有権の移転が生じることになる。 また、市町村は、立地適正化計画に低未利用土地利用等指針を作成し、低未利用地の管理について、地権者に対して勧告することが可能となった。 ② 都市再生推進法人の業務に、低未利用地の一時保有等を追加 まちづくり団体等の都市再生推進法人の業務に、低未利用地の一時利用等が追加された。 ③ 土地区画整理事業の集約換地の特例 低未利用土地を柔軟に集約し、まちの顔となるような商業施設や医療施設等の敷地を確保しやすくするために、土地区画整理事業の集約換地の特例が設けられた。なお、この特例に基づく換地を実現するために、土地区画整理事業への都市開発資金の無利子貸付けの活用を図ることとされている。 (2) 身の回りの公共空間の創出(都市再生特別措置法及び都市計画法関係) ① 「立地誘導促進施設協定制度」の創設 本制度は、土地所有者等の全員の合意によって、空き地や空き家を活用して交流広場、コミュニティ施設等を整備・監理するための制度である。 本協定には、協定の公告をした後に立地誘導促進施設協定の区域内の土地の所有者になった者にも効力を及ぼさせる「承継効」が認められている点に特徴がある。 また、当該協定に反対する土地所有者等がいる場合に、賛成する土地所有者等が、市町村に対して、当該協定への参加に反対する土地所有者等に働きかけることを要請できるものとされている。 ② 「都市計画協力団体制度」の創設 住民団体や商店街組合のような団体を、市町村長が「都市計画協力団体」として指定することによって、当該団体は、都市計画の決定や変更を提案することができることになった。 (3) 都市機能のマネジメント(都市再生特別措置法及び都市計画法関係) ① 「都市施設等整備協定制度」の創設 本制度は、都道府県や市町村が都市計画を定める際に、当該計画に係る都市施設等の整備を行うものと見込まれる者と協定を締結し、これが公告されることによって、当該施設整備予定者に対する開発行為の許可があったものとみなす制度である。 ② 誘導すべき施設(商業施設、医療施設等)の休廃止届出制度の創設 立地適正化計画に記載された都市機能誘導区域内において、都市機能誘導区域に係る誘導施設の休止や廃止をする場合に、市町村長に対する届出義務が創設された。 (4) その他都市の遊休空間の活用による安全性・利便性の向上(都市再生特別措置法、都市計画法及び建築基準法関係) 都市の遊休空間の活用による安全性・利便性を向上するために、①公共公益施設の転用の柔軟化、②駐車施設の附置義務の適正化、③立体道路制度の適用対象の拡充が行われている。 (5) 施行時期 都市再生特別措置法等改正法は2018年7月15日から施行されている。 (連載了)