空き家をめぐる法律問題 【事例9】 「空き家の相続登記に関する問題」 弁護士 羽柴 研吾 - 事 例 - 高齢の父親が生前に居住していた実家は、現在、空き家となっています。父親の共同相続人である私を含む5人の兄妹間では、実家の遺産分割協議は行われておらず、父親の登記名義のままにして実家を物置として利用しています。 このような状態には、現在又は将来においてどのような法的問題がありますか(なお、本事例においては、相続税の問題は生じないものとする)。 1 はじめに 一般に、不動産の所有者の相続が開始した場合、遺産分割協議等を経て相続登記(所有権の移転登記)が行われることとなる。しかしながら、近時、相続登記が未了のまま放置されている不動産が増加しており、これが所有者不明土地問題や空き家問題の一因となっている旨指摘されている。このような問題に対応するために、法務省では、平成29年5月29日から、「法定相続情報証明制度」を開始するなど相続登記の促進に向けた取組みを実施している。 このように、相続登記は、空き家問題等と密接に関係することから、今回は、共同相続と相続登記の問題について若干の説明をすることとしたい。 2 相続登記が行われない理由とその弊害 相続登記が行われない大きな理由は、相続登記が共同相続人の義務ではないからである。雑駁な言い方をすれば、相続登記を含む権利登記は、第三者に対する対抗要件であって、登記をするか否かは権利者の判断に委ねられているということである。 また、法定相続情報証明制度が導入され、多少、相続登記手続の負担が減少したとはいえ、共同相続人は、相続登記の準備として、少なくとも相続人や被相続人の戸籍簿や除籍簿を自ら収集する必要がある(この点は、法定相続情報証明制度の導入後も変わりはない)。この手間を回避するため、司法書士等に依頼すると相当の報酬を支払わなければならないが、このような経済的負担も避けようとする結果、相続登記が行われない状態が続くことになる。 このような諸事情によって、相続登記が行われないままに数次相続(Aの祖父が死亡し、祖父の遺産分割協議をしない間にAの父母等が死亡し、結果的にAら孫世代が祖父の相続人になったようなケース)が生じた場合には、深刻な事態が生じることになる。 例えば、遺産分割協議を行おうとする場合には、全員で合意する必要があるところ、数次相続が生じることによって、相続人の数が増加するだけでなく、その所在の確認に相当の労力と費用を要するため、全共同相続人が合意することが困難となる。事案によっては、ひ孫世代以降の相続人の数が100人を超えるような場合もあり、その場合の所在調査や関係者の意思の集約の困難さは容易に想像できるであろう。 3 共同相続と登記の関係 共同相続が開始した後、遺産分割協議が行われていないにもかかわらず、特定の共同相続人が単独で相続した旨の事実と異なる登記がされることがある。これは、法務局の登記審査は、形式的審査主義が採られており、実態を確認することが想定されていないことに加えて、相続放棄によって相続人が1人になった場合や、遺産分割協議を経た場合については、当該不動産の取得者が単独で相続登記の申請をすることができる(昭和19年10月19日民甲692号司法省民事局長通牒参照)こと等が原因である。 問題は、共同相続人Aが、関係書類を偽造してA名義の相続登記を行い、当該不動産の単独所有者として第三者Cに売却した場合に、他の共同相続人Bは、登記なくして自らの権利を第三者Cに主張できるかである。 この問題について、最高裁は、いわゆる無権利の法理に依拠し、虚偽の登記は、他の共同相続人の持分に関する限り無権利の登記であり、登記に公信力がない以上、第三者は他の共同相続人の持分を取得することはできないとして、他の共同相続人から第三者に対する一部抹消登記手続を請求できる旨判示している(最判昭和38年2月22日民集17巻1号235頁参照。なお、当該最高裁判決は、共同相続人の配偶者が自らの借入金の担保に供するために、相続放棄の書類を偽造した事案であった)。 したがって、共同相続人Bは、登記なくして自らの持分を、第三者Cに対して対抗することができる。もっとも、共同相続人Bは、自らの持分を確保することができたとしても、第三者Cと共有状態となるため、自らの希望する時期や相手方に当該不動産を売却しようとする際に第三者Cから同意を得られないリスクが残ることになる。 4 その他-いわゆる死亡者課税の問題- 相続登記が行われない問題は、いわゆる死亡者課税の問題にも影響する。市町村が相続人を把握できないままに、被相続人名義を基準に、やむを得ず固定資産税の賦課決定処分を行った場合、当該賦課決定処分は無効と解される。その後、市町村が相続人を把握した後、改めて賦課決定処分を行った場合に、共同相続人は納税義務があるとはいえ、予期せぬ課税を受けることになる。 5 留意点 本事例の共同相続人の年齢構成や経済的事情等の個別事情は明らかではないが、遺産分割協議が行われないままに数次相続が発生すると、将来、遺産分割を行う場合に困難な問題が生じる可能性がある。また、遺産分割協議を行わない状態を放置すると、第三者との共有状態になるリスクもある。 このような事態を避けるために、遺産分割協議をして相続登記をすることが期待されるが、分割方法がまとまらないことを理由に、安易に法定相続分で遺産分割し相続登記することは、将来的な処分の際に全員の同意が必要となることから、このような遺産分割はできるだけ避けるべきであろう。 (了)
〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第15話】 「修正申告と更正等予知前」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一 「統括官、どちらに行かれるのですか?」 浅田調査官は、立ったままカバンに書類を入れている中尾統括官に尋ねる。 「・・・税務調査だよ。」 中尾統括官は、ぶっきらぼうに答える。 「統括官も・・・税務調査をされるんですか?」 浅田調査官は同情的な眼差しを向ける。 「・・・そうだ。統括官も年間2~3件ぐらいの税務調査をしなければならない。中間管理職は大変だ・・・」 中尾統括官は、ため息をつく。 「・・・もっとも、今から調査に行く納税者は、既に修正申告書を提出しているが・・・」 中尾統括官は苦笑する。 「えっ、税務調査が始まっていないのに・・・もう、修正申告書を出したのですか?」 浅田調査官は、呆れた顔をする。 「・・・どんな事案なのですか?」 浅田調査官が尋ねる。 「いや、税務調査の対象になったのは、申告分離の株式の譲渡所得が漏れていることが分かったからなのだが・・・」 中尾統括官は答える。 「ということは、納税者は税務調査の通知を受けて・・・株式の譲渡所得の申告をしなかったことが税務署に分かったということで・・・急遽、修正申告書を提出した・・・ということですか?」 浅田調査官は中尾統括官の顔を見る。 「そうなのだろうな。ただ、更正等の予知をしていたかどうかというと・・・その判断は難しい・・・」 中尾統括官は頸を傾げる。 「その納税者は、他にも所得があるのですか?」 浅田調査官の声のトーンが高くなる。 「いや・・・給与所得と不動産所得で・・・しかし、不動産所得は駐車場の収入300万円ぐらいしかないから、別段、調査をする必要はない・・・」 中尾統括官は苦笑する。 「平成28年度の税制改正で・・・税務調査通知以後から調査による更正等予知前までの加算税について・・・改正がありましたね。」 そう言うと、浅田調査官は、国税庁のパンフレットを開く。 (※) ( )書きは、加算される部分(過少申告加算税:期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分、無申告加算税:50万円を超える部分)に対する加算税割合を表す。 「この改正は・・・事前通知後に多額の修正申告又は期限後申告を行う納税者を保護する必要はなく、また、当初申告のコンプライアンスを高める観点から、このような新たな加算税が創設された・・・となっています。」 浅田調査官は、説明文を棒読みする。 「しかし・・・問題は、更正等の予知の判断ですね・・・」 浅田調査官は腕を組んでいる。 「今回の場合・・・税務調査によって、納税者が更正されることを予知していたといえるのではないか・・・と思うのですが・・・」 浅田調査官は独り言のようにつぶやく。 「そうだなあ・・・」 中尾統括官も思案顔になる。 「・・・実は、この修正申告書が提出される前に、税理士から電話があって、税務調査に着手する前に修正申告書を出したら・・・過少申告加算税は5%になるのかという問い合わせがあったんだ・・・」 中尾統括官は説明する。 「それで・・・どう答えたのですか?」 浅田調査官は、統括官のような口調になる。 「実は、あまり覚えていないのだが・・・」 中尾統括官は、不安そうな表情になる。 「・・・確か・・・調査の時に、更正等の予知について、納税者に確認しなければ・・・分からないと言ったと思う・・・」 中尾統括官の声は小さい。 「そうですよね・・・更正等を予知してされたものである場合には、調査の有無にかかわらず、通常の加算税は課されますから・・・」 浅田調査官の声が大きくなる。 「東京地裁平成24.9.25判決では、更正等の予知について、次のように「客観的確実時期説」を採用しています。」 そう言いながら、浅田調査官は自分のパソコンを操作すると、画面上の判例を指す。 「ということは・・・税務調査が開始された後でも、税務職員が申告漏れを発見できる客観的な確実性が認められない限り、国税通則法65条5項は適用される・・・ということだな。」 中尾統括官は画面を見て頷く。 「ところで・・・統括官・・・もう調査に行かなければならないのでは?」 中尾統括官は、浅田調査官の声に、慌てて席を立った。 (つづく)
《速報解説》 不適切会計や品質データ偽装等企業不祥事事案の発生を受け、 監査役協会より「企業不祥事の防止と監査役等の取組」が公表される ~監査役向けアンケート結果では企業不祥事防止に向けた取組実態を紹介~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成30年12月3日、日本監査役協会のケース・スタディ委員会は、「企業不祥事の防止と監査役等の取組-最近の企業不祥事事案の分析とアンケート結果を踏まえて-」を公表した。 これは、不適切会計や品質データ偽装などの企業不祥事事案が発生していることから、第三者委員会報告書の分析やアンケート調査を行い、企業不祥事の防止に有効な手段を探るとともに監査役等に期待される役割についても検討を行ったものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 企業不祥事の類型 表紙を含めて76ページあるので、以下では主な内容について解説することとする。「別紙1 不適切事案に関する調査報告書の概要」、「別紙2 企業不祥事予防の観点からのアンケート 集計結果」がある。 近時の企業不祥事として特に留意すべき類型として、次の5つの類型を示している。 企業不祥事の類型や会社の規模・業種などの違いはあるものの、共通する要因としては、以下の①から⑥の特徴があるとのことである。 そこで、監査役等としては、企業不祥事を他山の石として捉え、以下の①から⑥の要因が自社のガバナンス体制において十分に考慮されているか、例えば、必要に応じて関連部署等との意見交換を通じて情報収集を図るなどして、重点的に監査することが望ましいとしている。 Ⅲ 企業不祥事防止に向けた取組 日本監査役協会の監査実務部会の登録監査役等を対象に実施したアンケートに基づいて、企業不祥事防止に向けた取組を記載している。 監査役等として企業不祥事の防止に向けて特に注意を払っている類型としては、「労働関係法令違反」が最も多く、回答の6割近くに上ったとのことである。 次いで、「粉飾決算、財務報告の虚偽記載」、「ハラスメント」も全体の4割前後の回答があったとのことである。 また、企業不祥事の主な要因として考えていることを類型別に調査したところ、「現場職員のコンプライアンスに対する意識の欠如」が最多となった類型が最も多かったとのことである。 会社として特に有効性を実感して実施している取組等としては、「トップのコンプライアンス重視の経営」(35.7%)、「トップの姿勢の浸透」(34.0%)が高かったとのことである。 内部通報制度については、97.5%が「存在する」と回答しているとのことである。特に、従業員数が多くなるにつれて設置割合が高くなり、従業員10,000人以上の規模の会社の設置率は100%であった。 Ⅳ 監査役等の視点と留意すべきポイント 企業不祥事防止に向けた取組に対する監査役等の視点として、次のことが記載されている。 最後に、委員会でまとめた企業不祥事防止のために監査役等として常に留意しておくべきポイントについて、次のことが記載されている。 (了)
《速報解説》 会計検査院、中小企業等の貸倒引当金の特例の適用状況から 法定繰入率の貸倒損失発生率との乖離等を指摘 ~H31.3.31期限切れの繰入限度額の割増措置については適用対象を問題視~ Profession Journal編集部 会計検査院は平成30年11月30日付けで「租税特別措置(中小企業等の貸倒引当金の特例)の適用状況及び検証状況について」を公表、会計検査院法第30条の2に基づく国会及び内閣への随時報告として、中小企業等の貸倒引当金の特例(措法57の9)の適用状況と減税額、及び関係省庁によるこの特例の検証状況をめぐる検査結果を明らかにした。 今回検査対象となった「中小企業等の貸倒引当金の特例(措法57の9、措令33の7)」は、中小企業又は公益法人等若しくは協同組合等について、一括評価金銭債権(売掛金、貸付金等の一般的な金銭債権)の繰入限度額の計算において、過去3年間の貸倒実績率を用いた原則的方法に代えて、①事業区分ごとの法定繰入率(※1)を用いてその額を計算できる簡便的な方法が認められる措置であり、さらに②公益法人等又は協同組合等の場合、これら計算による繰入限度額からさらに10%の割増を受けられるというもので、②については平成31年(2019年)3月31日までの時限措置となっている(※2)。 (※1) 事業区分ごとの法定繰入率は以下のとおり。 ・卸売及び小売業(飲食店業及び料理店業を含む):10/1000 ・製造業(電気業、ガス業等を含む):8/1000 ・金融保険業:3/1000 ・割賦販売小売業等:13/1000 ・その他の事業:6/1000 (※2) 平成29年度税制改正により割増率12%→10%への引下げ及び適用期限の2年延長(H29.3.31→H31.3.31)が行われている(詳しくはこちら)。 今回の検査によると、まず①の繰入率特例について、財務省の説明によれば「法定繰入率が必ずしも貸倒実績率に比べて有利となるわけではなく税負担の軽減又は繰延べを行う措置ではない」とし、昭和60年(1985年)度以降、法定繰入率の見直しは行われていないが、会社標本調査の対象となった内国普通法人を対象として(※3)、事業区分ごとの貸倒損失発生率(※4)を算出したところ、下表のように全事業区分において法定繰入率が貸倒損失発生率を大幅に上回っており、特に金融保険業では法定繰入率が貸倒損失発生率の30倍高い状況にある結果となった(報告書p17)。 (※3) 農業協同組合等、信用金庫等及び信用組合等についても貸倒実績率を調査したところ、537対象法人のうち402法人の貸倒実績率が1000分の0.1となっている(報告書p18)。 (※4) 平成23終了事業年度から27終了事業年度までの各終了事業年度について、事業区分ごとにそれぞれの年度に計上した貸倒損失額等が、それぞれの年度の期末一括評価債権額に占める割合を算出し、算出した割合の5か年度分の合計を5で除することで算出。 〈事業区分ごとの法定繰入率及び貸倒損失発生率〉 上記検査結果を踏まえ、報告書では「このように、法定繰入率と貸倒損失発生率との間に大幅なかい離があることなどから、繰入率特例における繰入限度額は合理的に測定されるなどしたものとなっているとはいえないおそれがあると認められる。」としている。 次に②の割増特例については、まず割増特例の目的を「割増特例対象法人について、貸倒引当金の繰入限度額を引き上げることにより財務基盤を強化することなどとされており、財務基盤を強化するためには、内部留保を充実させることが必要であるといわれている」とした。 その上で、e‐Taxデータ(平成27終了事業年度)を基にした分析等を行ったところ、割増適用金融機関(※5)277法人における割増適用減税額は計18億1,472万余円となっており、割増特例を適用している法人1,285法人に係る割増適用減税額の97.6%を占めている点、また割増適用金融機関の多くについて、自己資本比率が銀行平均値である10.7%以上となっており、利益剰余金の額が平均利益剰余金(※6)である8億8,649万円以上となっていることなどから、「その財務基盤は充実していると思料される」との見解を示し「財務基盤の強化を図るという割増特例の目的に照らして、割増特例の対象が必要最小限のものとなっているとはいえないおそれがあると認められる」とした。 (※5) 割増特例を適用している協同組織金融機関(協同組合等であって金融保険業を営む法人である信用金庫等、信用組合等及び労働金庫等並びに預貯金取扱金融機関である農業協同組合等、漁業協同組合等及び農林中央金庫) (※6) 「法人企業統計調査結果(平成27年度)」(財務省)における「金融業、保険業」の平均利益剰余金の額 今回の検査結果から明らかとなった上記のような実態について、会計検査院は、関係省庁による政策評価に基づく検証が一部行われていなかった又は効果的ではなかったと指摘(報告書p31)、所見として以下のようにまとめている。 特に割増特例は来年3月31日で期限切れとなることから、平成31年度税制改正大綱の取りまとめにあたり、その延長可否について議論が行われているだろう。今回の報告がどのような影響を与えるのか、今後の情報に注視されたい。 (了)
《速報解説》 消費税率の引上げに伴う価格設定についてのガイドライン、公表される ~ポイント還元など支援予定の記載も~ Profession Journal編集部 消費税率10%引上げ前後の景気変動を抑制する方策については、自由民主党政務調査会・経済成長戦略本部が11月20日付けで政府に対し「消費税率引上げに伴う対策について」として、その具体的措置を織り込んだ申入れを行っており、政府内での検討も大詰めに入っているが、事業者としても来年10月以降の売上減を避けるため、その前後で値引きセールなどの実施を検討したいところ。だが一方で、「消費税はいただきません」といった“消費税還元セール”は消費税の適正な転嫁を阻害するとして消費税転嫁対策特別措置法によって禁止されており、悩ましい問題を抱えている。 このほど関係官庁は連名で、「消費税率の引上げに伴う価格設定について(ガイドライン)」を政府広報オンラインにて公表、事業者が2019年10月前後に行う価格設定に関し、その指針を示した。 ガイドラインではまず、欧州諸国では付加価値税導入後に税率の引上げを積み重ねているが、どのようなタイミングでどのように価格を設定するかは事業者それぞれが自由に判断しているため、税率引上げの日に一律一斉に税込価格の引上げが行われることはなく、大きな駆け込み需要・反動減は発生していないと説明している。 これを踏まえ、冒頭述べたように、消費税率引上げ後に小売業者が値引きを行う場合、消費税転嫁対策特別措置法により消費税と直接関連した形で宣伝・広告を行うことは禁止されているものの、事業者の価格設定のタイミングや値引きセールなどの宣伝・広告自体を規制するものではないとし、例えば、「10月1日以降〇%値下げ」「10月1日以降〇%ポイント付与」などと表⽰することは問題ないとした。 (※) 政府広報オンラインより さらに中小・小規模小売事業者に対しては、消費税率引上げ後の⼀定期間に限り、ポイント還元といった新たな手法などによる支援措置を行う予定であるため、消費税率引上げ前後に需要に応じて柔軟に価格設定できる幅が広がるようになるとし、大企業に対しても、消費税率引上げ後、自らの経営資源を活用して値引きなど自由に価格設定を行うことに何ら制約はないとしている。 ただし、消費税率引上げ後に講じられる一定の支援措置は消費の平準化を図るためのものであるため、事実に反して、消費税率引上げ前に「今だけお得」といった表示を行うことは、消費者に誤認を与え駆け込み購入を煽る行為として景品表示法に違反する可能性があるとしているため注意が必要だ。 なお、価格表示については、消費税転嫁対策特別措置法に規定する総額表示(税込価格の表示)義務の特例として「事業者が表示する価格が税込価格と誤認されないための措置を講じているときは、税抜価格を表示できる」と規定しており、この取扱いについて特に変更はないとのことだ。 (※) 軽減税率の実施に伴う価格表示については、既報のとおり本年5月に指針となる情報(消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について)が中小企業庁等から公表されているため、こちらも合わせて確認しておきたい。 (※) 政府広報オンラインより このように政府としては、事業者の自由な価格設定(自由競争)を促進することにより景気変動の抑制を図っていると考えられるが、転嫁対策法の規定を緩和するものではなく、上記のように消費税の適正転嫁を阻害するようなセール表示は禁止されており、また事業者間取引において消費税増税分の減額を求めるといった行為についても引き続き転嫁Gメンによる監視や関係機関による周知を厳格に行うことも明らかにしている。 (※) 政府広報オンラインより (了)
《速報解説》 「監査上の主要な検討事項」(KAM)の記載事項を織り込んだ 改正監査証明府令等が公布される ~原則平成33年3月31日以後終了年度から適用も経過措置規定あり~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成30年11月30日、「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令及び企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第54号)が公表された。「『財務諸表等の監査証明に関する内閣府令』の取扱いに関する留意事項について(監査証明府令ガイドライン)」の一部改正も行われている。 これにより、平成30年9月26日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 これは、「監査基準の改訂に関する意見書」(企業会計審議会、平成30年7月5日)により、監査報告書において「監査上の主要な検討事項」を記載することなどを受けたものである。 「『財務諸表等の監査証明に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)』等に対するパブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」が公表されているので、監査証明府令の理解に資するものと考えられる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 1 「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」の一部改正 監査報告書等の記載事項について、次のように規定する。 2 「企業内容等の開示に関する内閣府令」の一部改正 「企業内容等の開示に関する内閣府令」19条の臨時報告書の記載内容等に関する改正である。 Ⅲ 適用時期等 改正後の府令は公布の日(平成30年11月30日)から施行する。 以下の経過措置が規定されている。 「企業内容等の開示に関する内閣府令」の一部改正に伴う経過措置も規定されている。 (了)
2018年11月29日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.296を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
これからの国際税務 【第10回】 「ポストBEPSにおける『税の安定性プロジェクト』の進捗」 早稲田大學大学院会計研究科 教授 青山 慶二 1 増幅が懸念される「税の不安定性」リスクへの対応 BEPSプロジェクトの成果物は、国際課税ルールの間隙をついて二重非課税の便益を不当に得ている多国籍企業をターゲットにした各種処方箋であり、BEPS防止措置実施条約の締結や移転価格税制の改正などがその具体例である。 しかし、近年はBEPSプロジェクト以前から、二重課税事案の解決のための相互協議が増加しその解決が遅延していることが問題視されていたことから、新規の処方箋については、その解釈・適用の如何によっては新たな二重課税リスクを追加し、納税者・当局の双方にとって予測可能性をさらに弱めることが懸念されていた。条約における主要目的テスト(PPT)や評価困難な無形資産への移転価格税制の適用など、BEPSが新規導入した課税メカニズムの中には、各国での経験が豊かとはいえないものも含まれていることも、その懸念を増幅させていたのである。加えて、BEPSの実行段階において、国内法制の整備に際してBEPS合意の枠を超えた一国限りの立法も急に目立ち始めた。 G20の政治リーダーシップをバックにした「税の安定性(Tax Certainty)プロジェクト」は、そのような状況下での税の不安定がもたらす諸リスクを解消すべく、BEPSプロジェクトの推進主体であるOECD等の国際機関によって、BEPSと並行的に取り組まれている。納税者からの期待の高い分野であるので、今回は本プロジェクトの理念と代表的なプログラムを紹介する。 2 税の安定性確保に向けた3つの設計指針 本プロジェクトは、国際課税の文脈では、国境越えの貿易及び投資に悪影響を及ぼす二重課税発生等の不安定性を除くことに尽きるが、そのための施策設計に当たっての3つの指針を、以下の通り示している。 まず1つ目は、各国の税制立法において複雑性を除去し明確な条文とすることであり、手続き上は立法過程での事前コンサルテーションや遡及適用の回避などが求められている。2つ目は執行段階の留意点であり、税務当局によるタイムリーな解釈通達の開示や、個別案件における事前合意を含む納税者指導が内容とされた。また、3つ目は、効率的な紛争解決メカニズムの装備であり、BEPS行動14でミニマムスタンダードとされた諸施策の実行を内容としている。 そして、国際機関の下での取り組みでは、共有した課税情報の調和された評価に向けたプログラムと、国際合意に沿った調和された課税を実現する方向で途上国の弱い立法・執行能力に対し実施する支援プログラムが進行中であるので、以下に代表的なものを紹介する。 3 特に注目すべきパイロットプロジェクト (1) 国際コンプライアンス保証プログラム(ICAP) 国際コンプライアンス保証プログラム(ICAP:International Compliance Assurance Programme)とは、OECDの税務長官会議を構成する主要8ヶ国(我が国を含む)による、課税上低リスクの多国籍企業にコンプライアンス上の安心感を保証するパイロットプログラムである。 ICAPは、具体的には、国別報告書(グループ企業の国別の収入、税引前利益、納税額、従業員数、保有資産等を開示するもの)をはじめとした多国籍企業グループの活動情報に基づき、税務リスクの有無について協調した評価をグループ企業の所在地国当局間で合意することにより、低リスクと認定された場合には、事後2年間は関係国による照会や調査などの接触をしないで済ませるというスキームである。ただし、その分析に際しては国別報告書のみならずマスターファイル、ローカルファイル、バリューチェーン分析、税務上の和解等の資料も共有して行うこととされている。 本来は、課税主権のもとで課税リスクの評価は各国が勝手に行う建前であり、その結果同じ事実について評価が異なることにより二重課税が発生すると、厄介な事後的紛争解決手続きが不可欠とされてきた。このプロセスでの税務コストは納税者と当局の双方にとって膨大であり、改善が求められてきていたのである。 各国から保証レターが発出されることにより確定される強力なリスク評価の保証の対象となるのは、当面、移転価格と恒久的施設帰属所得が中心であるが、将来はその他の項目への拡大も予定されている。また、ICAPのメリットとしては、上記のリスク評価過程に納税者も参加でき、当局における国別報告書等の活用のされ方を知ることができる点も挙げられる。 なお、申請者はノーリスク・低リスクだと思っていたが、検討してみると税務リスクが認識された場合には、より詳細で包括的なリスク評価手続きが用意されている。すなわち、すぐに各国の調査に委ねるわけではなく、ICAPの枠内で参加国の協調した調査により対応し、二重課税リスクは極小化される方向となっている。 (2) 途上国における税の協調のためのプラットフォームとツールキット 途上国における税の安定性を図るための特別なプロジェクトの代表として、「税の協調のためのプラットフォーム(PCT)」に向けた各種ツールキット(施策マニュアル)の作成が挙げられる。 G20の開発ワーキンググループからのmandate(委任)によりPCTを立ち上げたのは、IMF、OECD、国連、世銀グループであり、そこでは、国際法人課税で8つの領域を特定して、途上国にとって立法・執行のガイダンス文書となる各ツールキットが起草されつつある。現在2つのツールキットが公開済みで、残りは今後2年間で完成する予定である。 公開済みのものは、まず投資奨励策の立法及び施行に関するツールキットであり、これはインセンティブ税制の制度設計と執行に関するもので、最も早く2015年に公表された。次に、移転価格の比較対象データの入手困難性への対応に関するツールキットが2017年に起草されたが、これには中間財として売買される鉱物資源の値付に関する情報ギャップへの対応も含まれており、いずれも途上国側のニーズが高い項目である。 今後公表予定のツールキットは、①持分のオフショア間接譲渡への課税に関するもの、②効果的な移転価格文書化の実施に関するもの、③条約交渉に関するもの、④税源浸食の支払手への対応に関するもの、⑤サプライチェーン再編に関するもの、⑥BEPSリスク評価に関するものであり、いずれも、多国籍企業が途上国で直面する税リスクについて、協調的な理解を促進し、納税者に税の安定性を保証する方向に貢献することが期待される項目である。 (3) 我が国多国籍企業の対応 ICAPパイロットへの申請者名は守秘義務により開示されていないが、本年中にはその成果のとりまとめが公表され、今後の本格実施が呼びかけられよう。また、各種ツールキットの作成過程では、ビジネスからの貢献も求められている。 税の安定化プロジェクトは、納税者・当局双方の協調の下にコンプライアンスリスクを低下させ人的資源の効率的活用に資する点で、双方にとってウィン・ウィンのプロジェクトである。租税回避性向の低いと評価されている我が国多国籍企業にとっては、今後の活用や貢献が大いに期待される領域といえよう。 (了)
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【第2回】 「法人税の課税所得計算と損金経理(その2)」 国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦 (3) 損金にならない不正な支出 前回(1)で触れた「通常性」の要件を満たさないと考えられる不正な支出のうち、加算税や延滞税等は、所得税法の場合と同様に、損金算入が否定されている(法法55③④)。具体的には、延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税、印紙税の過怠税、延滞金、過少申告加算金、不申告加算金、重加算金、罰金、科料、過料、国民生活安定緊急措置法・独占禁止法・金融商品取引法・公認会計士法による課徴金及び延滞金である。 また、上記に加え、通常性の要件を満たさないと考えられる不正な支出については、平成6年の最高裁決定(最高裁平成6年9月16日決定・刑集48巻6号357頁[株式会社エス・ヴイ・シー事件(※1)])等を受けて、平成18年度の税制改正で以下の通り新たな規定が設けられ、損金算入が否定されている(法法55)。 (※1) 本件で問題となった「脱税協力金」は収益獲得に貢献するものではないから、企業会計上の「費用」には該当せず、そのような支出につき損金算入を認めることは公正処理基準に反するといえるだろう。 第一に、内国法人が所得の金額もしくは欠損金額又は法人税の課税要件事実の全部又は一部の隠蔽・仮装により法人税の負担を減少させ、又は減少させようとする場合には、その隠蔽・仮装行為に要する費用の額、又はそれにより生ずる損失の額は損金に算入しないこととなった(法法55①)。当該規定は、法人が納付すべき法人税以外の租税にも準用される(法法55②)。 第二に、内国法人が供与する刑法第198条に規定する賄賂又は不正競争防止法第18条第1項に規定する金銭その他の利益の合計額に相当する費用又は損失の額は、損金に算入しないこととなった(法法55⑤)。 また、平成21年度の税制改正で、外国もしくはその地方公共団体又は国際機関が納付を命ずる、独占禁止法の課徴金及び延滞金に類するものについても、損金に算入しないこととなった(法法55④三カッコ書)。 更に、平成27年度の税制改正で、景品表示法の規定による課徴金及び延滞金についても、損金に算入しないこととなった(法法55④六)。 損金に算入されない不正な支出をまとめると、以下の表の通りとなる。 〇損金に算入されない不正な支出の一覧表 (4) 資本等取引と損金 前回(1)で触れた、法人税法第22条第5項の「資本等取引」と損金とは、どのような関係にあるのであろうか。 資本等取引とは、出資や配当といった、法人と株主との間の取引と、設立・解散・分割・合併といった法人の組織再編に関するものに分類することができる。ここで損金の意義を規定した同条第3項第3号を確認すると、以下の通りとなっている。 当該事業年度の損失の額で資本等取引の以外の取引に係るもの 上記規定から明らかなとおり、資本等取引は損金から除外されていることが分かる。これは益金の規定である同条第2項で、資本等取引を益金から除外しているのと同様である。要するに、法人税法においては、資本等取引からは益金も損金も発生しないのである。法人税法における当該規定は、基本的に企業会計における資本取引・損益取引区分の原則(企業会計原則第一・三(※2))に準拠しているものと考えられる。 (※2) 「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。」 ただし、学説上は、資本等取引の中には、現物配当やデットエクイティスワップ(DES)、自己株式の取得のように、損益取引の要素を含んだ取引も存在するが、当該取引は資本等取引と損益取引の混合取引であるとして、損益取引の要素からは損益が生じるので課税すべきとするものが有力である(※3)。 (※3) 金子宏『租税法(第二十二版)』(弘文堂・2017年)328頁。 (了)
企業の[電子申告]実務Q&A 【第13回】 「e‐Taxの送信容量の拡大・受付時間の拡大」 SKJ総合税理士事務所 税理士 坂本 真一郎 ●○●○解説○●○● (1) 送信容量の拡大 e‐Taxシステムへのデータ送信容量については、2019年1月以後の申告から、送信1回当たり、申告書についてはXML形式で現状(10メガバイト)の2倍となる20メガバイト(約5,000枚)、添付書類についてはイメージデータ(PDF形式)で現状(1.5メガバイト)の5倍以上となる8メガバイト(約100枚)の送信が可能になります。 また、申告書データ(XML形式)については通常1回限りの送信となりますが、イメージデータ(PDF形式)の場合には、申告書データと同時に送信する「同時送信方式」に加えて、申告書データを送信した後に追加で送信する「追加送信方式」が最大10回まで可能となっているため、2つの方式を併用すれば最大11回まで送信が可能です。 したがって、添付書類をイメージデータ(PDF形式)で送信する場合には、1回あたりの送信容量となる8メガバイト×11回で最大88メガバイトの送信が可能ということになります。 【e‐Taxの送信容量の拡大】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出典:e-Taxホームページ) (2) 受付時間の拡大 e‐Taxシステムにログインして申告等データを送信したり、メッセージボックスを確認したりすることができる時間帯(「e‐Taxの受付時間」)については、サービス開始以降、順次拡大が図られてきました。 例えば、2009年1月以降は確定申告期間中(1月中旬から3月中旬)の「24時間受付」が始まり、2013年8月以降は、8時30分~21時00分までだった平日(月曜日~金曜日)の受付時間が8時30分~24時00分までに延長されました。また、2016年5月からは、法人税申告書の提出件数が多い5月、8月、11月の最終土日にe‐Taxの受付がスタートしました。 さらに、今回の見直しにより、2019年1月以降は、これまで確定申告期間中のみに行われていた「24時間受付」が平日(月曜日~金曜日)すべてに拡大されるとともに、土日についても、特定月の最終土日のみの受付が毎月の最終土日の受付(8時30分~24時00分)へと拡大されます。 なお、受付時間の拡大は2019年1月以降に実施される予定です。 【e‐Taxの受付時間の拡大】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出典:e-Taxホームページ) (了)