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改正法案からみた民法(相続法制)のポイント 【第8回】「家事事件手続法の見直し」

改正法案からみた 民法(相続法制)のポイント 【第8回】 (最終回) 「家事事件手続法の見直し」   弁護士 阪本 敬幸   最終回となる今回は、相続法改正に伴う家事事件手続法の改正について確認する。   1 はじめに 民法改正に伴い、家事事件手続法も重要な点として2点の改正が行われることとなった。 1点目は、預貯金債権の仮分割の仮処分(以下、「仮払仮処分」という)制度(改正家事事件手続法200条3項)の新設である。最高裁平成28年12月19日決定により、預貯金債権が遺産分割の対象とされることとなった。もっとも、生活費・相続債務の弁済・葬儀費用等の支払のために、預貯金債権を行使すべき必要性が存在する場合もあることから、新たに仮払仮処分の制度が設けられることとなった。 2点目は、特別の寄与に関する審判事件に関する定めの新設である。本連載【第7回】でも解説した通り、相続法改正により、特別寄与者による特別寄与料請求制度が新設され(法案1050条)、特別寄与者・相続人間で特別寄与料の支払に関する協議が成立しない場合には、家庭裁判所が協議に代わる処分を行うこととなった。これを受けて、家事事件手続法においても、特別の寄与に関する審判に関する定めが新設されることとなった。 その他、民法改正による表現の変更に伴い、家事事件手続法における表現も若干修正された。   2 仮払仮処分制度について (1) はじめに 上記の通り、預貯金債権は相続により当然分割されず、遺産分割等の対象となることとなった。このため、預貯金債権については、遺産分割が終了するまで、共同相続人全員で行使しなければならないこととなり、葬儀費用や共同相続人の生活費等の、早急に必要な支払ができないという不都合が生じることとなった。 この不都合に対応するための1つの方策として、相続開始時に存在した預貯金債権額の3分の1に各相続人の相続分を乗じた額について、各相続人が単独で行使できるようにする旨の改正がなされた(法案909条の2)ことは、本連載【第4回】で解説した通りである。 不都合に対応するもう1つの方策が、仮払仮処分制度の新設である。現行法上、遺産の仮分割仮処分制度に関する規定(家事事件手続法200条2項)はあるが、同制度は事件の関係人の「急迫の危険の防止」の必要性という厳しい要件が要求されていることから、緩和された要件の下で、預貯金債権に限って仮払を認める制度が新設されることとなった。 (2) 仮払仮処分の要件 (3) 仮払仮処分が認められた場合の効果 裁判所は、仮払の必要を認めたときは、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を、仮払仮処分の申立人に対し仮に取得させることができる。 仮払の必要がある場合に預貯金債権の全部を仮に取得させることができるということは、仮払の額は必ずしも申立人の法定相続分に限定されることはないということである。例えば、相続債務の支払のために仮払が必要なときなどには、法定相続分を超えた額の仮払がなされることもあり得る。 なお、この処分は仮処分であるから、本案における遺産分割においては、仮処分の事実を考慮することなく、仮払された預貯金債権を含め、遺産分割の調停・審判が行われる。 もっとも、仮払によって特定の相続人が預貯金債権を取得し、金融機関から実際に支払を受けた場合、金融機関との関係では有効な弁済となるから、その後の調停・審判の中で仮払仮処分と異なる判断がなされたとしても、弁済の有効性が事後的に覆る余地はないと考えられる。   3 特別の寄与に関する審判事件に関する定めについて (1) 特別の寄与に関する民法上の定め 詳細は本連載【第7回】に記載した通りだが、特別寄与者と相続人との間で、特別寄与料に関する協議が調わず、又は協議ができないときは、特別寄与者は家庭裁判所に対し協議に代わる処分を請求することができ(法案1050条2項)、家庭裁判所は寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めるとされた(法案1050条3項)。 (2) 家事事件手続法の定め (連載了)

#No. 283(掲載号)
#阪本 敬幸
2018/08/30

プロフェッションジャーナル No.282が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年8月23日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.282を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/08/23

山本守之の法人税“一刀両断” 【第50回】「「リバースモーゲージ」と「ビアジェ」」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第50回】 「「リバースモーゲージ」と「ビアジェ」」   税理士 山本 守之   1 リバースモーゲージ 自宅を担保に老後資金を借り入れる「リバースモーゲージ」という制度があります。この制度は、持ち家のある高齢者が、その家を担保に老後の生活費などを一時金または年金形式で借りられる貸付制度です。この制度を使って自宅にそのまま住み続けながら生活費を確保することができます。長寿社会の老後破綻を回避する方法のひとつです。 しかし、この制度はあまり広がっていません。どうしてでしょうか。 【リバースモーゲージが成立しなかった場合】 Bさんは、栃木県宇都宮市で夫であるAさんと2人暮らしをしていましたが、Aさんが病気で死亡しました。Bさんは長男であるCさんと一緒に住むつもりはありません。そこで、Bさんは宇都宮にある住居を担保に融資を受け、その資金を介護施設の入居費用に充てるつもりでした。 Bさんは、家を失うことなく生活費を調整したかったのですが、リバースモーゲージは成立しませんでした。Bさんの場合、担保価値が少なかったのが原因でした。 日本の住居(融資対象)の大部分は木造で、家屋の大半は担保として評価されず、土地に準じて不動産評価額が決められることが常です。すると、リバースモーゲージは成立しない場合があります。 リバースモーゲージには次のようなリスクがあります。 ①~③の状況により、担保割れにつながる恐れがあるため、金融機関が融資額を固めに設定するのです。 この制度のメリットは、自宅を売却することで融資が受けられるという点です。建物は担保価値がないと考えられているので、一般的にマンションは対象外のところがあります。また、子供などの推定相続人の同意が必要になります。 将来の相続も見据える必要から、相続人である子供などが拒否する場合、リバースモーゲージは使えないことがあります。 【リバースモーゲージが成立した場合】 Dさんは東京都港区に住居(一戸建)60坪を持っています。60歳で妻と2人で暮らしています。これからは2人で趣味の旅行を楽しみながら生活したいと思い、リバースモーゲージを申し込みました。 Dさんに収入はありませんが、立地条件が良く担保価値は十分あるので、リバースモーゲージが成立しました。死亡後に売却する場合、貸主にとって危険がなかったためです。   2 ビアジェ フランスでは「ビアジェ」という権利があります。これは、高齢者が不動産(自宅など)に住み続けながら行える所有不動産の売却システムです。 買い手は初期費用に加え、売り手の死亡時まで定期的に支払を行います。売り手は、ゆとりある老後を送るために定期的な収入を受け取れるのです。 買い手のメリットは、売り手が早く死亡すると定期支払金を払わなくてよくなるので、通常よりも低い価格で不動産を取得できることです。 初期費用と定期支払金の金額は、通常の不動産売買と同様に、不動産の価格の鑑定から行い、売り手がその家に住み続けるのであれば、売り手の年齢から計算して平均余命を元に価格を設定します。 事例1 ビアジェを利用し得をしたEさんの場合 総支払額は一時金と合せて56,000€でした。Eさんは市場価額からみて割安でこの物件を買ったことになります。 一方、高齢のHさんのような取引もあります。 事例2 ビアジェを利用し損をしたGさんの場合 Hさんは84歳と高齢であり、物件はパリ屈指の16区と好立地なので、Gさんの毎月の支払額は5,000€と高額でした。このマンションの市場価格は60万€なので、Hさんが8年以内に亡くなればGさんの得となりましたが、Hさんは100歳で亡くなったので、Gさんの支払総額は一時金と合わせて108万€となり、大損になりました。 いつ亡くなるかは誰にも分からないので、早く物件を手に入れて得をするかもしれないし、すごく長生きして損をしてしまうかもしれないのです。そのため、ビアジェの前には健康調査が行われることも多いのです。   3 検討すること 日本のリバースモーゲージはあくまで銀行や国(地方自治体)の融資ですが、フランスのビアジェは物件の譲渡ですので、損得は当然あります。 どちらの方法が良いかは条件にもよりますが、日本ではビアジェは使えません。日本の制度が融資だけにとどまるので、フランスに比べて遅れていると批判されてもしかたありません。 (了)

#No. 282(掲載号)
#山本 守之
2018/08/23

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第51回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第51回】   公認会計士 佐藤 信祐   (《第8章》 平成18年から平成21年までの議論) ⑩ 主要な資産及び負債がない場合 拙著『組織再編における税制適格要件の実務Q&A(第3版)』(中央経済社)242-243頁では、ほとんど資産及び負債がない場合であっても、ノウハウや顧客名簿などの無形資産があったり、事業に付随する偶発債務があったりする場合には、これらを移転すれば、主要資産等引継要件を満たすことができるとした。 資産及び負債に含み損益がない場合には、適格分割であっても、非適格分割であっても、譲渡損益が実現しないはずである。そのため、ほとんど資産及び負債がない場合において、実務上、譲渡損益が発生する事案として問題とされているのは、のれんに対する譲渡損益を実現させる場合である。 このような場合には、のれんに相当する重要な無形資産が移転していると考えられるため、事業単位の移転という制度趣旨からしても、現在も同様に解すべきであると思われる。 ⑪ 事業に関連性のない資産の移転 前掲の拙著244頁では、分割事業に係る主要な資産及び負債を移転させる必要があるものの、それ以外の資産及び負債を移転させることについては制約がないため、事業に関連性のない資産の移転については主要資産等引継要件に抵触しないものとした。ただし、移転する資産の含み益と分割承継法人の繰越欠損金を相殺することを目的としている場合には、包括的租税回避防止規定(法法132の2)のリスクがあるものとした。 事業単位の移転という制度趣旨からすれば、事業単位の移転の範疇から外れるような事業に関連性のない資産の移転により、法人税の負担を不当に減少させる行為については、包括的租税回避防止規定が適用されるリスクがあると考えられる。 ⑫ 分割事業とそれ以外の事業に従事している者の取扱い 実務上、分割事業のみに従事している者やそれ以外の事業のみに従事している者だけでなく、分割事業とそれ以外の事業の両方に従事している従業者も存在する。会社分割における従業者引継要件の判定は、分割事業の従業者を引き継いでいるかどうかで判定することから、分割事業に係る従業者をどのように判定すべきかが問題になる。 この点につき、法人税基本通達1-4-4では、「分割事業とその他の事業とのいずれにも従事している者については、主として当該分割事業に従事しているかどうかにより判定する」ことが明らかにされているが、具体的にどのような場合に「主として当該分割事業に従事している」ということができるのかは明らかにされていないからである。 そのため、前掲の拙著246-248頁では、「分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針(平成12年労働省告示第127号)」において、以下のように定められていることから、法人税法における従業者引継要件の判定においても参考にすべきであるとした。 すでに本連載でも解説したが、平成13年当時において、従業者引継要件が労働承継法を意識しながら運用されていたことからも、現在においても同様に解すべきであると考えられる。 ⑬ 事業の一部のみの移転 実務上、飲食業を営んでいる法人が北海道事業部のみを分社型分割により移転させる場合には、飲食業という事業の一部とそれに係る一部の資産及び負債、従業者が移転するため、主要資産等引継要件、従業者引継要件及び事業継続要件に抵触するのではないかという議論があった。 そこで、前掲の拙著256-257頁では、以下のように解説を行った。 50%超100%未満グループ内で行われる組織再編成であっても、事業単位の移転が行われているものであれば、税制適格要件を満たすものと整理したことから、対象となる分割事業が事業として認められるのであれば、税制適格要件に抵触させるべきではないため、現在においても同様に解すべきであると考えられる。 前述のように、実務で問題となっていたのは、北海道事業のみを移転させる場合である。しかし、平成19年度税制改正により、事業関連性要件における関連性の範囲がかなり広いことが明らかになったため、理論上、建設業と不動産賃貸業を営んでいる法人が、不動産賃貸業のみを移転させる事案であっても、同様に考えるべきであることが明らかになった。 そのように考えると、分割法人に残る事業(建設業)と一体的に営まれている分割事業(不動産賃貸業)を移転することが事業単位の移転ではないと解してしまうと、全部の事業を移転する場合を除き、税制適格要件を満たさないという不都合が生じる。そう考えると、北海道事業のみを移転した場合に、税制適格要件に抵触するという議論が生じることは、今後は考えにくいと思われる。 *   *   * 次回では、繰越欠損金、特定資産譲渡等損失の内容について触れる予定である。 (了)

#No. 282(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/08/23

〈平成30年度改正対応〉賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の適用上の留意点Q&A 【Q7】「教育訓練費、比較教育訓練費、中小企業比較教育訓練費の意義」

〈平成30年度改正対応〉 賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の 適用上の留意点Q&A 【Q7】 「教育訓練費、比較教育訓練費、中小企業比較教育訓練費の意義」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   [Q7] 平成30年度の税制改正によって新たに設けられた、上乗せ控除のための要件とされている教育訓練費の取扱いについて教えて下さい。   [A7] ◆教育訓練費の範囲は、①自社実施、②他者委託、③他者実施研修等への参加の各ケースについて定められています。 ◆比較教育訓練費は大企業向け、中小企業比較教育訓練費は中小企業者等向けの上乗せ控除制度の適用要件として用いられます。 ◆比較教育訓練費は過去2年平均、中小企業比較教育訓練費は前年度の教育訓練費の額を基礎に算定します。 【解説】 (1) 上乗せ控除のための適用要件 改正後の制度では、人材投資に積極的な企業に対して、税額控除の上乗せ措置を講じることとされており、そのための要件は大企業と中小企業者等で下表のように異なる。 大企業については教育訓練費の要件のみ定められており(措法42の12の5①三)、中小企業者等については継続雇用者給与等支給額の要件及び、教育訓練費の要件又は経営力向上の要件のいずれかを満たすことが必要である(同②二)。 (2) 教育訓練費の意義 所得拡大促進税制における「教育訓練費」とは、法人がその国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する一定の費用とされ(措法42の12の5③十)、具体的には以下のような費用が該当する(措令27の12の5⑱、措規20の10③~⑤)。 また、教育訓練費とならない費用についても、経済産業省から公表されているガイドブックの中で、以下のように明示されている。 上で示された教育訓練費の範囲は、平成17年4月1日から平成20年3月31日まで(中小企業者等については平成24年3月31日まで)の間に開始する事業年度において適用されていた「人材投資促進税制」(教育訓練費が増加した場合の法人税額の特別控除)における教育訓練費の範囲とほぼ同じであるが、当時の制度で含まれていた「教科書その他の教材費(H17措令27の12③四)」は除外されている。 なお、対象となる教育訓練等は「国内雇用者」に対するものに限られるから、受講者の範囲についても留意が必要である。 (3) 比較教育訓練費の意義 比較教育訓練費とは、法人の適用年度開始の日前2年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額の合計額を当該2年以内に開始した各事業年度の数で除して計算した金額をいい(措法42の12の5③十一)、大企業向けの上乗せ控除制度の適用要件の判定に用いられる。 この点に関し、当該2年以内に開始した各事業年度の月数と適用年度の月数が異なる場合には、当該教育訓練費の額に当該適用年度の月数を乗じてこれを当該各事業年度の月数で除して計算した金額に補正される(月数補正)。 なお、比較教育訓練費の額がゼロである場合には、適用年度の教育訓練費の状況に応じて以下のように取り扱われる(措令27の12の5㉓)。 したがって、過去において教育訓練費の支出がなく、当事業年度(適用年度)に初めて教育訓練費を支出する場合には、比較教育訓練費に係る要件を満たすものとして、上乗せ控除の適用を受けることができる。 (4) 中小企業比較教育訓練費の意義 中小企業比較教育訓練費とは、中小企業者等の適用年度開始の日前1年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額の合計額を当該1年以内に開始した各事業年度の数で除して計算した金額をいい(措法42の12の5③十二)、中小企業者等向けの上乗せ控除制度の適用要件の判定に用いられる。 この点に関し、当該各事業年度の月数と適用年度の月数が異なる場合には、当該教育訓練費の額に当該適用年度の月数を乗じてこれを当該各事業年度の月数で除して計算した金額に補正される(月数補正)。 なお、中小企業比較教育訓練費の額がゼロである場合には、適用年度の教育訓練費の状況に応じて以下のように取り扱われる(措令27の12の5㉔)。 したがって、過去において教育訓練費の支出がなく、当事業年度(適用年度)に初めて教育訓練費を支出する場合には、中小企業比較教育訓練費に係る要件を満たすものとして、上乗せ控除の適用を受けることができる。 (5) 新制度適用初年度における比較教育訓練費及び中小企業比較教育訓練費の額の算定 法令上の定めはないが、経済産業省及び中小企業庁から公表されたガイドブックにおいて、新制度適用初年度における比較教育訓練費及び中小企業比較教育訓練費(以下「比較教育訓練費等」という)の額の算定方法に関する例外的な取扱いが示されている。 それによれば従来、教育訓練費に該当するものと該当しないものを区分して管理又は会計処理がされていない場合において比較教育訓練費等を計算する際には、当該年度分の教育訓練費について、教育訓練費を包含する費用について企業実態に即した合理的な方法(自社の定めによる教育訓練費の範囲)により計算することが認められることとされている。 ただし、このような計算は適用初年度のみ認められる点、及び、自社の定める教育訓練費の範囲の中に財務省令で定める教育訓練費の範囲((2)参照)の一部又は全部を含まないものが含まれている場合には、これによる計算は認められないので留意が必要である。 (6) 中小企業者等における上乗せ控除制度の選択適用 【Q6】で説明したとおり、中小企業者等は、上乗せ控除制度に関しては大企業向けの取扱いを選択することができ、その場合には、大企業向け上乗せ控除制度の要件を満たす必要がある(措法42の12の5③)。 このような選択適用が認められたのは、教育訓練費の水準によっては、前事業年度からの増加要件を満たすことはできなくても過去2年平均の金額からの増加要件を満たすことが考えられ、その場合には上乗せ控除率は低くなるが大企業向けの制度の適用を認めることにより、広く人材投資の促進機会を確保するためと考えられる。 (7) 添付書類 法人が、比較教育訓練費又は中小企業比較教育訓練費の要件を満たすものとして上乗せ控除制度の適用を受けようとする場合には、これらの規定の適用を受ける事業年度の確定申告書等に教育訓練費の明細を記載した書類を添付しなければならない(措令27の12の5⑲)。 当該明細書には特に定められた様式はないが、以下の事項を記載することが必要である(措規20の10⑥)。 (参考) 明細書のイメージ (出典) 経済産業省ホームページ「平成30年度創設賃上げ・生産性向上のための税制ご利用ガイドブック」 (8) 決算・申告上の留意点 以上説明したとおり、比較教育訓練費又は中小企業比較教育訓練費については、範囲の確認を含めて既に集計が可能であると考えられる。決算申告の時期を迎える前に、あらかじめ金額を集計し、上乗せ控除の適用を受けられるかどうかの事前検討をすることが望まれる。   (了)

#No. 282(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2018/08/23

平成30年度税制改正における「一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し」 【第4回】

平成30年度税制改正における 「一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し」 【第4回】   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   (3) 平成30年度税制改正の内容 前回の(2)でみたような一般社団法人を用いた相続税・贈与税回避スキームに対する、平成30年度の税制改正の内容は以下の通りである。 ① 一般社団法人等(※1)に対する贈与税等の課税規定の明確化 (※1) 一般社団法人又は一般財団法人で、公益社団法人等の非営利型法人その他一定の法人を除く。 現行の相続税法によれば、個人から一般社団法人等に対して財産の贈与又は遺贈があった場合には、贈与等により、その贈与等を行った者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときには、その一般社団法人等を個人とみなして相続税又は贈与税が課税される(相法66④)。 ただし、次の要件を満たしている場合には、相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果になるとは認められないものとされる(相令33③)。 (※2) さらに、法令解釈通達(昭和39年6月9日直(審)24、直資77、平成20年課資2-8改正)「贈与税の非課税財産(公益を目的とする事業の用に供する財産に関する部分)及び持分の定めのない法人に対して財産の贈与等があった場合の取扱いについて」の「15 その運営組織が適正であるかどうかの判定」において、例えば、定款等に法人の理事の定数が6人以上、監事の定数が2人以上であることが定められていることというように、「運営組織が適正である」かどうかの判断基準が細かく規定されている。 前回の(1)で見たとおり、一般社団法人等は持分が存在しないため、相続発生前に被相続人がその財産を法人に贈与することにより移転してしまえば、原則として、相続時において当該財産につき相続税が課されないこととなる。このような取扱いは、一般社団法人等に被相続人がその財産を移転すれば、以後当該財産は被相続人や相続人の支配下から外れることを前提としていると考えられるが、実際には、財産移転後も一般社団法人等の運営を相続人やその親族が担っている場合には、当該財産を相続人等が引き続き支配し続けることが可能となっており、租税回避を許容しているとも考えられるところである。 このような場合、現行税制の下でも課税庁は、上記(イ)の要件を満たしていないものとして、贈与税を課税するという対抗措置を採り得る。しかし、上記規定の文理解釈上、「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果になるとは認められない」場合とは、(ア)~(エ)の「いずれもすべて満たす」場合なのか、それとも「いずれか1つを満たす」場合なのか、必ずしも明確ではなかったところである。 仮に、後者であるとした場合、いずれか1つの要件を満たせば十分(不当減少に該当しない)ということになり、贈与税の課税はかなり限定されたケースにとどまることから、多くの租税回避事例が放置されるという不合理な結果となることが懸念されるところであった。 そこで、今回の改正においては、このような文理解釈上の不明確さを解消するため、相続税法施行令33条3項で規定する「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果になるとは認められない」場合に挙げられた上記(ア)~(エ)の要件のうち、「いずれか1つでも満たさない」場合には課税されることが明確化されたところである(相令33④)。さらに、「贈与又は遺贈前3年以内に国税又は地方税について重加算税等を課されたことがないこと」という新たな要件も課されることとなった(相令33④三)。 そのため、例えば、理事の過半数が3親等内の親族により構成されている一般社団法人等に対して、理事が財産の贈与を行った場合、一般社団法人等に対して贈与税が課税されることとなる。 また、個人から一般社団法人等に対して財産の贈与又は遺贈があった場合において、その財産が譲渡所得の起因となる資産等の贈与(寄附)である場合には、贈与者に対しても所得税が課される点にも留意すべきであろう(みなし譲渡所得課税、所法59)。 なお、当該改正は平成30年4月1日以後に贈与又は遺贈により取得する財産に関する贈与税又は相続税に適用される。 ② 特定一般社団法人等に対する相続税の課税 一般社団法人等のうち、特定一般社団法人等(※3)に該当するものの役員(理事に限る)である者(理事でなくなった日から5年を経過していない者を含む)が死亡した場合には、以下により、特定一般社団法人等に相続税が課税されることとなる(新相法66の2)。 (※3) 以下に掲げる要件のいずれかを満たす一般社団法人等をいう。 ① 相続開始の直前における同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超える。 ② 相続開始前5年以内において、同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上である。 (ア) 課税対象額 特定一般社団法人等の純資産額をその死亡時における「同族理事(被相続人を含む)」の数に1を加えた額で除して計算した金額に相当する金額を、特定一般社団法人等が被相続人から遺贈により取得したものをみなして、相続税が課税される。この場合、特定一般社団法人等は一親等の法定血族及び配偶者以外の者であることから、相続税額の2割加算の対象となる(相法18①)。 なお、上記でいう「同族理事」とは、一般社団法人等の理事のうち、被相続人又はその配偶者、3親等内の親族その他の被相続人と特殊の関係がある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)をいう(新相法66の2②二)。 (イ) 贈与税及び相続税の控除 上記(ア)により特定一般社団法人等に相続税が課税される場合には、その相続税の額から、贈与又は遺贈により取得した財産について既に特定一般社団法人等に課税された贈与税又は相続税の額が控除される(新相法66の2③)。 (ウ) 適用関係 当該改正は、平成30年4月1日以後の一般社団法人等の理事の死亡に係る相続税に適用される。ただし、同日前に設立された一般社団法人等については、平成33年4月1日以後の当該一般社団法人等の理事の死亡に係る相続税について適用し、平成30年3月31日以前の期間は、特定一般社団法人等を判定する際の2分の1を超える期間(※4)に該当しないものとされる(改正法附則43⑤⑥)。 (※4) 前記(※3)の②の要件に係る期間をいう。   (了)

#No. 282(掲載号)
#安部 和彦
2018/08/23

〔Q&A・取扱通達からみた〕適格請求書等保存方式(インボイス方式)の実務 【第3回】「適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件」

〔Q&A・取扱通達からみた〕 適格請求書等保存方式(インボイス方式)の実務 【第3回】 「適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件」   アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩   【請求書等の保存】 仕入税額控除の適用を受けるための請求書等に該当する仕入明細書等は、相手方の確認を受けたものに限られる。 この相手方の確認を受ける方法としては、例えば、以下のようなものがある。   任意組合の共同事業として課税仕入れを行った場合に、幹事会社が課税仕入れの名義人となっている等の事由により各構成員の持分に応じた適格請求書の交付を受けることができないときにおいて、幹事会社が仕入先から交付を受けた適格請求書のコピーに各構成員の出資金等の割合に応じた課税仕入れに係る対価の額の配分内容を記載したものは、その他の構成員における仕入税額控除のために保存が必要な請求書等に該当するものとして取り扱われ、その保存をもって、仕入税額控除のための請求書等の保存要件を満たすことになる。 また、任意組合の構成員に交付する適格請求書のコピーが大量となる等の事情により、立替払を行った幹事会社が、コピーを交付することが困難なときは、幹事会社が仕入先から交付を受けた適格請求書を保存し、精算書を交付することにより、幹事会社が作成した(立替えを受けた構成員の負担額が記載されている)精算書の保存をもって、仕入税額控除を行うことができる。   他社が立替払をした場合、その他社宛に交付された適格請求書をそのまま受領したとしても、当社の適格請求書とすることはできない。 この場合において、立替払を行った会社から、立替金精算書等の交付を受ける等により、経費の支払いを行った他社の課税仕入れが当社のものであることが明らかにされている場合には、その適格請求書及び立替金精算書等の書類の保存をもって、当社は、課税仕入れに係る請求書等の保存要件を満たすこととなる。   当社が事務所を賃借しており、口座振替により家賃を支払っている場合で、不動産賃貸契約書は作成しているが、請求書や領収書の交付は受けておらず、家賃の支払の記録としては、銀行の通帳に口座振替の記録が残るだけであっても、適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を併せて保存することにより、仕入税額控除の要件を満たすこととなる。 なお、取引の都度、請求書等が交付されない取引について、取引の中途で取引の相手方(貸主)が適格請求書発行事業者でなくなる場合も想定され、その旨の連絡がない場合には貴社(借主)はその事実を把握することは困難となる可能性があるが、その場合には、国税庁のホームページで相手方が適格請求書発行事業者か否かを確認することとなる。   【帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合】 取引先への移動に際し、券売機で乗車券を購入し、公共交通機関である鉄道を利用した場合において、適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるが、3万円以上の公共交通機関を利用した場合には、その利用に係る適格請求書の保存が仕入税額控除の要件となるので注意が必要である。 ただし、3万円以上であっても、公共交通機関である鉄道事業者から適格簡易請求書の記載事項を記載した乗車券の交付を受け、その乗車券が回収される場合は、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる。   古物営業法上の許可を受けて古物営業を営む古物商が、適格請求書発行事業者以外の者から古物(古物商が事業として販売する棚卸資産に該当するものに限る)を買い受けた場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる。 なお、相手方が適格請求書発行事業者である場合は、適格請求書の交付を受け、それを保存する必要がある。   社員に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものとして取り扱われる。この金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる。   従業員等で通勤する者に支給する通勤手当のうち、通勤に通常必要と認められる部分の金額については、課税仕入れに係る支払対価の額として取り扱われる。この金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる。   【帳簿の保存】 平成31年10月1日から平成35年9月30日(適格請求書等保存方式の導入前)までの間は、仕入税額控除の要件について、現行の請求書等保存方式を基本的に維持しつつ、軽減税率の適用対象となる商品の仕入れかそれ以外の仕入れかの区分を明確にするための記載事項を追加した帳簿及び請求書等の保存が要件(区分記載請求書等保存方式)とされているが、適格請求書等保存方式では、現行の請求書等保存方式において必要とされている記載事項に、次の事項が追加される。   請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、次の取引については、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる。 この場合、帳簿の記載事項に関し、通常必要な記載事項に加え、以下の記載が必要となる。 【参考】 免税事業者からの仕入れに係る経過措置 適格請求書等保存方式導入から一定期間は、適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられている。 なお、この経過措置の適用を受けるためには、次の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が要件となる。 1 帳簿 区分記載請求書等保存方式の記載事項に加え、例えば、「80%控除対象」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が必要となる。 具体的には、次の事項となる。 2 請求書等 区分記載請求書等と同様の記載事項が必要となり、具体的には、次の事項となる。   (了)

#No. 282(掲載号)
#島添 浩
2018/08/23

平成30年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第8回】「連結納税における『電子申告の義務化』と実務上の留意点(その2)」

平成30年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第8回】 「連結納税における『電子申告の義務化』と実務上の留意点(その2)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   〈5〉 連結納税を電子申告で行う場合、連結子法人は『連結子法人の個別帰属額等の届出書』(添付書類を含む)の提出をしなくてもよい。 連結親法人が電子申告を行った場合に、『連結子法人の個別帰属額等の届出書』(添付書類を含む)をe-Taxを使用する方法又は光ディスク等を提出する方法により当該連結親法人の納税地の所轄税務署長に提出した場合には、連結子法人が『連結子法人の個別帰属額等の届出書』(添付書類を含む)を当該連結子法人の所轄税務署に提出したものとみなし、連結子法人による提出を不要とする(法法81の25②、法規37の17②)。 この場合、『連結子法人の個別帰属額等の届出書』の記載事項のうち連結子法人の法人番号及び添付書類のうち連結子法人の会社事業概況書(又は法人事業概況説明書。以下、「会社事業概況書」とする)は、連結確定申告書の記載事項及びその添付書類とはなっていないため、連結親法人は電子申告に際し、各連結子法人の法人番号及び各連結子法人の会社事業概況書を提供する必要がある。 なお、法人の選択による電子申告の場合、添付書類を書面で送付することも可能であるが、添付書類を書面で提出した場合は、この提出省略の措置は適用されない。 また、この取扱いは、連結親法人が連結納税に係る修正申告書をe-Taxによる電子申告で提出した場合についても同様となる(法法81の25④)。 なお、資本金が1億円以下の連結親法人が書面申告を選択した場合、連結子法人は改正前と同じように自社で『連結子法人の個別帰属額等の届出書』(添付書類、会社事業概況書を含む)を所轄税務署に提出する必要がある。 【連結法人に係る個別帰属額等の届出書の提出先の一元化】 (出典) e-Taxホームページ「大法人の電子申告の義務化の概要について『2 電子申告の義務化に伴い導入する利便性向上施策等』」 〈6〉 連結納税システムについて、正確性・迅速性・効率性が確保された電子申告を実現できるシステムを使用することが重要となる。 特に、e-Tax又はeLTAXでの提出において、システムからe-Tax又はeLTAXに申告データを直接流し込む方式を取っている連結納税システムは問題ないが、システムで作成した申告データをいったんCSV形式へ変換し、それをe-Tax又はeLTAXに流し込む方式を取っている連結納税システムについては、①流し込む際にエラーチェックを行わなければならないこと、②複数の地方公共団体へ提出が必要な場合、1つの地方公共団体ごとに提出作業をしないといけないことから大きな事務負担が生じることが予想される。 〈7〉 連結子法人は連結納税の承認申請・加入・離脱に係る届出書の提出をしなくてよい(旧法令14の7①④、法令14の7③、14の9②)。 連結納税を開始する場合、連結納税に加入する場合、連結納税から離脱する場合、連結親法人は、『連結納税の承認の申請書』、『完全支配関係を有することとなった旨を記載した書類』、『連結完全支配関係等を有しなくなった旨を記載した書類』を提出する必要がある(法法4の3①、法令14の7③、14の9②)。 また、改正前の現行制度では、連結子法人についても『連結納税の承認の申請書を提出した旨の届出書』、『完全支配関係を有することとなった旨を記載した書類』、『連結完全支配関係等を有しなくなった旨を記載した書類』を提出する必要がある(旧法令14の7①④、14の9②)。 それが、改正後は、連結子法人について、『連結納税の承認の申請書を提出した旨の届出書』、『完全支配関係を有することとなった旨を記載した書類』、『連結完全支配関係等を有しなくなった旨を記載した書類』の提出が不要となる(法令14の7③、14の9②)。 ただし、改正後も、地方税については、改正前と同様、各連結法人ごとに、各地方公共団体に『法人税に係る連結納税の承認等の届出書』の提出をする必要がある(ただし、その添付書類となっていた連結子法人の法人税に係る届出書の写しはなくなることになる)。 なお、従来から「完全支配関係を有することとなった旨を記載した書類」及び「連結納税への加入時期の特例を適用する旨を記載した書類」※として利用されていた『完全支配関係を有することとなった旨等を記載した書類』は、平成30年6月29日付で新様式『完全支配関係を有することとなった旨を記載した書類及び連結納税への加入時期の特例を適用する旨を記載した書類』に改められている。 ※ 連結子法人の加入時期の特例規定(完全支配関係発生日の前日の属する月次決算期間の末日の翌日に連結納税に加入したものとみなす取扱い)を適用する場合、その特例が適用されない場合の完全支配関係発生日の前日の属する事業年度に係る確定申告書の提出期限までに、『連結納税への加入時期の特例を適用する旨を記載した書類』を提出する必要がある(法法14②)。 以上をまとめると次のとおりとなる。 【改正前】連結納税の電子申告又は書面申告を行うケース 【改正後】連結納税の電子申告を行うケース 【改正後】連結納税の書面申告を行うケース 【今後の改正動向の注意点】 控除対象個別帰属調整額に係る添付書類の提出について、電子申告における提出方法又は電子申告を行った場合にその提出を不要とする措置は、現時点の改正法では定められていないため、今後の改正の有無に注意する必要がある。 連結適用前欠損金額が生じた事業年度後最初の連結事業年度について、控除対象個別帰属調整額がある場合には、第6号様式別表2「控除対象個別帰属調整額の控除明細書」とともに、以下の連結法人税確定申告書の別表の写しを地方公共団体に提出する必要がある。 この提出がない場合には、以後の連結事業年度又は事業年度において、控除対象個別帰属調整額を個別帰属法人税額又は法人税額から控除することはできない(地法53⑧、321の8⑧)。 この控除対象個別帰属調整額に係る添付書類の提出について、電子申告における提出方法又は電子申告を行った場合にその提出を不要とする措置は、現時点の改正法では定められていない。 ただし、電子申告の義務化によって、国税と地方税の提出先の一元化が図られることになるが(例えば、事業税の申告に財務諸表の添付が不要になる)、仮に、今後、法人税の確定申告書の別表等について、税務署から地方公共団体に自動的に転送されることになった場合、控除対象個別帰属調整額に係る添付書類の提出が不要になるのか、今後の改正の有無に注意する必要がある。 また、地方税では、申告内容確認のため、地方公共団体から次の別表等の写しの提出を依頼される場合がある。 これらについても、電子申告の義務化にあたってその提出が不要になるのか、今後の改正の有無に注意する必要がある。 (了)

#No. 282(掲載号)
#足立 好幸
2018/08/23

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例65(法人税)】 「過大支払利子税制の適用を失念し、修正申告でこれを行ったため、超過利子額の損金算入ができなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例65(法人税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆過大支払利子税制(措法66の5の2) 過大支払利子税制とは、所得金額に比して過大な利子を関連会社間で支払うことを通じた租税回避を防止するために平成25年4月1日以後に開始する事業年度より適用されるもので、関連会社等への支払利子等の額の合計額から一定の受取利子等の額の合計額を控除した残額(以下「関連者純支払利子等の額」という)が調整所得金額の50%相当額を超える場合には、その超える部分の金額は、各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないとするものである。 損金不算入額 = 関連者純支払利子等の額 - 調整所得金額 × 50% ◆調整所得金額 繰越欠損金の損金算入、受取配当等の益金不算入等一定の規定を適用せず、かつ、寄附金の全額を損金の額に算入して計算した場合の所得金額に、関連者純支払利子等の額、損金の額に算入された減価償却費及び貸倒損失の額を加算した金額をいう。 ◆適用除外 その事業年度の関連者純支払利子等の額が1,000万円以下である場合又は関連者支払利子等の額の合計額が総支払利子等の額の50%以下である場合には、過大支払利子税制は適用されない。この適用除外の適用を受けるためには、確定申告書に一定の書面及び計算に関する明細書の添付をし、かつ、計算に関する書類を保存する必要がある。 ◆超過利子額の損金算入(措法66の5の3) 過大支払利子税制の適用により損金不算入とされた超過利子額は、7年間繰り越され、調整所得金額の50%から関連者純支払利子等の額を控除した残額を限度として、損金の額に算入される。なお、この規定は、超過利子額に係る事業年度のうち最も古い事業年度以後の各事業年度の確定申告書に当該超過利子額に関する明細書の添付があり、かつ、損金算入の規定の適用を受けようとする事業年度の確定申告書等に、これらの規定の適用を受ける金額の申告の記載及びその計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用する。       (了)

#No. 282(掲載号)
#齋藤 和助
2018/08/23

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第20回】「著作権の譲渡対価か開発委託費か」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第20回】 「著作権の譲渡対価か開発委託費か」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 弊社はゲームソフトを製造販売している日本法人です。このたび外国でヒットしたソフトの日本バージョン制作のために、そのソフトを開発した外国法人X社と業務委託契約を結び、弊社のコントロールの下、日本バージョンのゲームソフトの開発を行いました。成果物であるソフトの著作権はX社と弊社が2分の1ずつ共有するものとするとします。 このX社に対する業務開発費の支払いは、外注費の支払いと考えて、非居住者や外国法人に支払ったとしても源泉税の対象とはならないのでしょうか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷非居住者や外国法人に著作権の使用料を支払った場合の課税関係 非居住者や外国法人に対して国内源泉所得となるような支払いが生じた場合、日本での課税権を確保するために、一定の国内源泉所得については支払時に所得税及び復興特別所得税を源泉徴収する。著作権収入が国内源泉所得となる要件は、所得税法で下記のように定められている。 上記によると、日本国内でソフトウェアの製造販売を行っている法人が国内業務に関連して外国法人に著作権の譲渡の対価を支払った場合は国内源泉所得に該当し、支払時に20.42%の税率で所得税等が源泉徴収されるのが原則である(所法213①一、復興財確法28)。 しかし、使用料等の支払いについては、租税条約において国内法と別段の定めが設けられている場合が多く、その場合は租税条約の定めに従うことになる(所法162)。 使用料の場合、国内法においては上記のように「どこで使用されるか」で決まるが、租税条約においては「債務者(使用料の支払者)がどこにいるか」で決まると定められているものもある。また、使用料の範囲も租税条約により国内法と異なる取扱いとなるケースもあるので、租税条約による確認が必要である。 なお、著作権については税法で定義されていないので、著作権法の定義を借用することになり、「著作物」「著作者」はそれぞれ次のように定められている。 以下では、今回のケースの元となった裁決事例から、外国法人への支払いは著作権の譲渡か業務開発費か、ひいては、著作権は最初誰にあったのかを検討する(平成14年7月、平成15年3月、平成15年11月、平成16年7月、平成16年11月及び平成16年12月の各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分・棄却・平21-12-11裁決)。   ▷裁決事例の概要 この事案は、今回のケースと同様に、日本法人のZ社が、外国で販売されていたゲームソフトをベースに日本語のロールプレイングゲームを制作するにあたり、外国版のゲームソフトの著作権を有するY社に日本向けソフトの開発を委託し、その対価として開発委託費を支払い、著作権をZ社とY社がそれぞれ2分の1ずつ取得することを契約で定めた。 Z社のY社への開発委託費の支払金額は人工計算により行われ、国税職員から開発委託費については源泉徴収の必要はないという指導を受けた。しかし、税務調査によりこの開発委託費は著作権の譲渡対価であると指摘されたことから、Z社がその取消しを求めた。   ▷争点は・・・ この事案の争点の中心は、このソフトの著作権をY社とZ社が2分の1ずつ取得したか否かである。それぞれの主張は以下のとおり。 〈国税の主張〉 Y社単独で著作権を原始取得している。なぜならば、開発計画書等でソフトの制作を主体となって行っているのはY社であり、Z社が詳細な作業指示を与えた事実はない。支払いの基準が人工計算であったことが著作権の譲渡の対価とならない理由にはならず、国税職員から源泉徴収の必要性がないという指導があったという事実は認められない。 〈Z社の主張〉 開発委託費である。Z社は、試作品に対して日本における趣味嗜好の違い等詳細な指示を与えた上で完成まで導いている。開発委託費が請負の対価であり、著作権が発生と同時にY社とZ社に帰属すると契約書に明示している。国税職員から、開発委託費は源泉徴収不要だが、成功報酬は源泉徴収が必要という指導を受けた。   ▷結論は・・・ Y社とZ社が共に著作権を原始取得するのではなく、Y社単独で原始取得するものとした。 著作物は 思想又は感情を創作的に表現したものであり、このソフトウェアのシナリオ、プログラム、グラフィック、ムービーサウンドを制作していたのはY社であるから、このソフトウェアを具体的に表現し、創作したのはY社である。よってY社が著作権を原始的に取得した。 他方、Z社でこの開発に従事したのは1名の従業員だけであり、従事内容も日本で発売できる商品にするためのY社に対する指示にとどまり、ソフトウェアの思想又は感情を創作的に表現したということはできないことから、著作権を原始的に取得していない。 契約書における著作権の2分の1共有とは、両者が原始的に取得していることを意味するものではなく、Y社が原始取得した著作権の2分の1相当の譲渡とみるのが相当である。 請負の対価として支払う定めが開発委託契約書に記載されたとしても、目的や内容から対価の性質を考えると著作権の譲渡対価となる。課税庁から開発委託費の源泉所得税の取扱いについて指導を受けたとは認められない。   ▷事例から学ぶべきポイント 例えば、源泉税について当初不要と判断して開発委託費100を支払い、後に税務調査で否認され源泉税部分が20追徴課税されたとしても、この20部分の返金を支払先の外国法人に請求することは難しい。 ソフトウェアの開発委託費については、契約書等を表面的に読んで判断せず、実際にはどのような取引なのかを深掘り検討してアドバイスしなければ、将来的に大きな損害賠償責任を税理士が負う懸念があることをこの裁決事例は教えてくれる。   (了)

#No. 282(掲載号)
#菅野 真美
2018/08/23
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